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2018年11月9日 第3回「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会 議事録
健康局健康課栄養指導室
○日時
平成30年11月9日(金)15:00~17:00
○場所
中央労働委員会会館 講堂
○出席者
構成員<五十音順・敬称略>
雨海 照祥 (武庫川女子大学生活環境学部食物栄養学科 教授) |
伊藤 貞嘉 (東北大学大学院医学系研究科 教授) |
宇都宮 一典 (東京慈恵会医科大学内科学講座糖尿病・代謝・内分泌内科 主任教授) |
柏原 直樹(川崎医科大学腎臓・高血圧内科 主任教授) |
勝川 史憲 (慶応義塾大学スポーツ医学研究センター 教授) |
木戸 康博 (金沢学院大学人間健康学部健康栄養学科 教授) |
葛谷 雅文 (名古屋大学大学院医学系研究科 教授) |
斎藤 トシ子 (新潟医療福祉大学健康科学部健康栄養学科 教授) |
櫻井 孝 (国立研究開発法人国立長寿医療研究センター もの忘れセンター長) |
佐々木 敏 (東京大学大学院医学系研究科 教授) |
佐々木 雅也 (滋賀医科大学医学部看護学科基礎看護学講座・滋賀医科大学医学部附属病院栄養治療部 教授) |
柴田 克己 (甲南女子大学医療栄養学部医療栄養学科 教授) |
土橋 卓也 (社会医療法人製鉄記念八幡病院 理事長・病院長) |
横手 幸太郎 (千葉大学大学院医学研究院細胞治療内科学 教授) |
横山 徹爾 (国立保健医療科学院 生涯健康研究部長) |
事務局
武井 貞治(健康課長) |
橡谷 真由(健康課長補佐) |
清野 富久江 (栄養指導室長) |
塩澤 信良 (栄養指導室長補佐) |
○議題
(1)ワーキンググループからの報告事項(策定方針及び策定の基本的事項等)
(2)その他
○議事
○清野栄養指導室長 それでは、ただいまより第3回「日本人の食事摂取基準」策定検討会を開催いたします。
構成員の皆様方には、御多忙のところ御出席いただきまして、まことにありがとうございます。
配付資料の確認をさせていただきます。まず初めに、議事次第、座席表、資料1としてスケジュール(案)。資料2、佐々木敏構成員提出資料。資料3、佐々木敏構成員提出資料。参考資料1、各疾患ガイドラインにおけるエビデンスレベルの記載等。参考資料2、検討会の開催要綱。参考資料3、ワーキンググループ開催要綱。参考資料4として平成29~30年度厚生労働行政推進調査事業費補助金の概要ということで、配付させていただきます。紙ファイルに第1回、第2回の検討会の資料を挟んで配付させていただいております。
不足がございましたら、事務局へお申し出ください。
それでは、以降の進行は伊藤座長にお願いいたします。
○伊藤座長 少しおくれて申しわけございませんでした。
まず初めに、事務局から本日の流れと今後の策定スケジュールについて、御説明をお願いいたします。
○塩澤栄養指導室長補佐 それでは、お手元に資料1を御用意いただけますでしょうか。こちらは食事摂取基準2020年版の策定スケジュール(案)となっております。ごらんいただきますとおり、これまで本検討会、4月、5月と2回ほど行われておりまして、そこで2020年版の策定方針を決定いただいたということがございました。これを踏まえて、各成分とか総論とかそういったところの具体的な内容について、ワーキンググループで合計6回ほど御議論いただいております。これを受けて、今回第3回検討会で「報告書(案)の方向性について」ということで、御議論いただくことになっております。ボリュームが非常に大きいということもございますので、今回の第3回では報告書(案)のうち、成分横断的な総論の案のところについて御議論をいただくということを予定してございます。
そして、12月の第4回の検討会は、「報告書(案)についてマル1」となっておりますけれども、報告書(案)のうちの各論、各成分の値などを中心に御議論いただいて、第5回、第6回という形で、3月末までに報告書の取りまとめということを予定してございます。
なお、従前お伝えしておりました策定スケジュールでは、ワーキンググループの後に3回ほど予定しておりましたが、議論の対象の分量が多いということもございますので、申しわけないのですけれども、1つふやして、ワーキンググループの後は4回の開催ということを予定しております。
その後のスケジュールといたしましては、来年度に厚生労働省の告示という形で、「食事による栄養摂取量の基準」を公表いたしまして、2020年度から今回の2020年版が適用になるというスケジュールでございます。
以上でございます。
○伊藤座長 何か御質問ございませんでしょうか。1回会議がふえたということと、本日は詳細ではなくて、全体の方向性について御議論いただくということでございます。よろしいでしょうか。
それでは、早速本日の議題に参りたいと思います。ワーキンググループからの報告書について進めていきたいと思います。ワーキンググループは6月から10月まで計6回開催して、策定方針を踏まえて作業を進めていただきました。本日は、そのワーキンググループで整理していただいたことにつきまして、佐々木構成員から御報告をいただきたいと思います。
ワーキンググループの委員長でございますので、よろしくお願いいたします。
○佐々木(敏)構成員 かしこまりました。ワーキンググループからの報告、基本的事項等ということで、30分ほどのお時間をいただいて報告をさせていただきます。
6回の話し合い、並びにそれぞれの専門家の先生方、またそのグループが大変な作業をしてくださっております。まず初めに、ワーキンググループの構成員とそれを支援してくださっています研究者、専門家の皆様にお礼を申し上げたいというふうに強く感じております。しかしながら、まだこの後、作業は続きます。きょうはそのための御示唆をいただけたらと考えております。
それでは、資料2に基づきましてお話をさせてください。表紙をめくっていただきまして、策定方針のところをごらんください。今回2020年版をつくるに当たって、2015年版の文章に加筆をしたり、修正したりし、きょう先生方にこの方針でよいかどうかお諮りしたいところを赤文字、そして下線を引いてございます。その他のところで目を落としていただきたいところが黒文字のままで下線を引いてございます。それ以外のところは、時間の関係上割愛させていただくことがありますので、御了承ください。
策定方針です。冒頭は変わりません。けれども、今回、日本人全体の高齢化、その栄養問題を注視しまして、その文章を一文入れるということを考えております。具体的には「高齢者の低栄養予防やフレイル予防も視野に入れて策定を行う」。大切なことは「も視野に入れる」というわけで、これだけではないということでございます。
それを図にしたものが図1でございます。図1の太赤枠で囲ってあるところが追加事項となります。ちなみに、この図は下から上に矢印が向かっておりまして、下から上に積み上げていくという形になっております。上から下に読み下すものではございませんので、そのように御留意いただいて図をごらんいただければと思います。文章と同じことが図中に反映されているとお考えいただければありがたいです。
2ページは、対象者でございます。対象者のところで健康な個人及び健康な人を中心とする集団は変わりません。しかしながら、高血圧等に関するリスクを有するという個人並びに集団が入ってまいりました。2020年版は、それに加えまして「フレイルの状態にあっても自立した日常生活を営んでいる者を含む」としたいと私たちは考えております。すなわち、ここでのポイントは、自立しているということを必要条件としたいと考えております。重症化予防に関しましては、これとは別に重症化予防のところで触れます。しかしながら、食事摂取基準の対象者、対象集団としましては、このように記載したいと考えております。
そして、4行ほど飛びまして、統一された概念がないということで、ここでは専門の先生方の御助言をいただきまして、健常状態と要介護状態の中間的な段階に位置づける考え方と、ハイリスク状態から重度障害状態までをも含める考え方がある。しかしながら、食事摂取基準においては、食事摂取基準の対象範囲、他の疾患等や健康状態等の整合性も考えまして、前者の考え方を採用するというふうに現在は考えております。このあたり、後の御議論のところで御意見をいただければありがたいです。
3ページ目、策定の対象とするエネルギー及び栄養素に関しましては、特に新たな栄養素を追加したり、または既に収載されている栄養素を削除するということは、今回はしない方針です。
そして、ここでは黒のままで下線を引きましたが、黒丸の2ポツの文章の2行目から3行目「諸外国の食事摂取基準も参考に検討する」。これは国際的なハーモナイゼーションの問題もございますので、このあたりを参考に検討するというやわらかい文章にとどめますが、このようなものを含めたいと考えております。
4ページ目、指標の目的と種類でございます。栄養素の指標は、従前の5つの指標で構成するということは変わらない。これで私たちは作業をしてまいりました。しかしながら、目標量のところに関係するわけですが、生活習慣病の予防のところを「発症予防を目的とする指標から構成する」というふうに、「発症予防」ということをきちんと記述したいと考えております。
これはどういうことかと申しますと、今回重症化予防のところの御担当の先生方からそれぞれの指標や記述をしていただいて、それも収載しようと考えております。そこで、食事摂取基準としての目標量は発症予防であるということをきちんと明確に示すということで、「発症予防」という言葉をこの文章並びにその下の図に加えるということを考えております。修正は以上です。
次は年齢区分でございます。ここが大きく変わるところでございます。といっても、1つのところだけですが、赤で書きました。高齢者でございます。高齢者は、現在は50~69歳、そして70歳以上という2区分。50歳からですので、高齢とは言えないわけですが、そのようになってございます。それを2020年版では「65~74歳」「75歳以上」ということにしたい。すなわち、「50歳から」のところが「64歳」になり、そして「65~74歳」になり、そして「75歳以上」というふうに、一番年齢の高いところの2年齢区分が3年齢区分に変わるということになります。ここはたくさんの御議論があるところだと思いますし、私たちもいろいろ考えたのですけれども、行政的な年齢の区分とできるだけ整合性を合わせる、それから高齢者の人口を十分に加味し、使いやすいものにするという2点を重要だと考えて、このようにしたいと私たちは考えております。
しかしながら、後から出てくるかもしれませんが、このところは摂取量の数値をつくるためのエビデンス、研究論文がかなり欠如しているところでございます。したがって、後のどう使うかというところでそこをもう少し説明させてください。
6ページ、策定の基本的事項です。指標の概要に関しては全く変わりません。エネルギーの指標は、推定エネルギー必要量であり、そして体重を維持する消費量のバランスの維持を指標として用います。また、2015年版で出しましたBMIを用いる方法、推定エネルギー必要量を用いる方法を併存させるということを踏襲したいと私たちは考えております。しかしながら、内容を現在アップデートし、数値を固めているところでございます。
その次が栄養素でございます。これも基本的に指標そのものは変わりません。推定平均必要量、ページをめくっていただいて、実際に使うことの多い推奨量。推定平均必要量から算出されます。算出方法も同じでございます。そして目安量。それから耐容上限量。そして目標量ですが、ここは「発症予防を目的として」という文章を挿入することを考えております。
その下の赤字のところで重症化予防並びにフレイル予防のところに触れたい。すなわち、「生活習慣病の重症化予防及びフレイル予防を目的とした量を設定できる場合は」。できない場合がございますので、「できる場合は」と書きまして、発症予防を目的とした量とは区別して提示したいと考えております。このように発症予防と重症化予防、並びにフレイル予防というものを、どちらかがユーザーにしっかりわかるようにしようというところでございます。
次は、レビューはどのように行ったかというところであります。最初の2つのところに書いてございますことは、この種のガイドラインづくりではほぼ行うべきことであります。可能な限り科学的根拠に基づいた策定を行う、そして系統的レビューを行う、そして国内外の学術論文や入手可能な資料を最大限に活用する。そして、私が代表を務めさせていただいておりました厚労省の補助金でそのレビューを前年度行い、それを土台として今年度それぞれのワーキンググループの先生方に引き続き、並びに欠けているところを補っていただきながら具体的な策定を行っているという流れでございます。
赤にしたところに「特に」書いてございます。食事摂取基準が他のガイドラインと大きく異なるところは、摂取量の数値の算定を目的とするものであるということでございます。すなわち、臨床系の治療ガイドラインで典型的なというべきだと思いますが、数字ではなくて、こういう行動を勧めるということではなく、食事摂取基準は、○○グラムというように数値をきちんと出さなければなりません。その意味で、「定性的な予防及び治療指針の策定を目的とする他のガイドラインで求められるレビューの方法とは異なる」というところがあります。これに関しましては、現在諸外国も食事摂取基準はどうレビューされるべきかという総説も出てまいりまして、諸外国ともに考えている途中であるという様子が見えてまいりました。そのために、我が国といたしましても、食事摂取基準に特化したレビューの方法の開発、向上及びその標準化を図る必要があると考えております。では、どうすればよいのかという結論までは今回は出せないのではないか。しかし、できるところはやってみようと。何をしたかはこの後、少しお話しさせていただきます。
そして、その何をしたかのところですが、その下です。メタアナリシス等が食事、食事摂取基準に関連するものでもかなりふえてまいりました。この5年間における食事関係のメタアナリシスの論文の登場数は指数関数的なものがございまして、大変ふえてまいりました。そこで、今回の策定では目標量に限りましてエビデンスレベルを付すことができないかということを考えまして、今、その準備を進めております。これはきょう別のところで紹介させていただき、御議論いただきたいと考えております。したがって、これはこの30分内の私のところには具体的に含めません。
次のページは、「指標及び基準改定の採択方針」と書いてございますが、これに関しては、特に15年版と変わっておりませんので、紹介、説明は割愛させてください。9、10ページを飛ばします。
11ページは、年齢区分の再掲でございます。先ほど申しましたように、「50~64歳」「65~74歳」「75歳以上」と区分分けをしたいと考えております。しかしながら、この文章にも書きましたように、「ただし」のただし書きを加えまして、栄養素によっては、高齢者における各年齢区分のエビデンスが必ずしも十分ではない点に留意すべきである旨を記載する。特に実験が必要で、それによって数値を定めるような栄養素に関しては、このような高齢者において実験を行うということは非常に難しいというか、それは無理なところがございます。したがって、成人から外挿するしかないわけですが、年齢が上がるほど外挿の信頼区間が広がっていって信頼度が下がるということを、活用していただく場合に十分に留意していただきたいと私たちは考えておりますというか、願っております。
12ページ、参照体位です。参照体位は、2つのデータソースを持っております。表の脚注をごらんください。0~5歳は、平成12年の乳幼児身体発育調査のデータです。その次の6~17歳、すなわち、小児が同じく平成12年の学校保健統計調査のデータでございます。すなわち、乳児、幼児、小児のところまでは平成12年のデータで、それ以降更新できるデータソースがございませんでした。したがって、このデータを使います。その結果、2015年版と数値等も変わらないということになります。一方で、成人のところは、新しいデータ、すなわち平成28年の国民健康・栄養調査におけるデータ、身長と体重の中央値を用いるということを考えまして、この数値を使いまして現在各栄養素等の数値算定を進めているところでございます。
13ページは、具体的にどの栄養素をどの指標で策定するかというところであります。細かいところは、きょうはお話を控えさせていただくとしまして、こういう構造で作表し、このような栄養素にこのような指標をつくりましたということであります。
ポイントだけお話をさせてください。栄養素のコレステロールのところが赤文字で書いてございます。目標量のところが横線が引いてありまして、上つき文字で5と書いてございます。脚注5を見ていただきますと、重症化予防を目的とした量を表の脚注に記載したいと考えております。すなわち、発症予防としては数字を挙げないけれども、重症化予防として数字、量を挙げたい。それを表の脚注でございますが、発症予防の目標量を策定しないと考えている関係上、それを類似の疾患が想定される飽和脂肪酸のほうの表の脚注に書き込むという構造になるのかなというところで、作業を進めております。確定ではございませんが、現在このような理論的、かつ活用しやすい形の作表を順次進めているというところでございます。
推定平均必要量と推奨量のところをごらんいただきますと、たんぱく質にb、b、ビタミンAにa、aとついてございます。これは何かと申しますと、推定平均必要量の必要量とは何か、何をもって必要とするかの定義が栄養素の間で異なることがございます。例えばある体内量を維持するのに必要な量という定義の栄養素もございますし、体内量が飽和していることをもって必要量とするというものもございますし、ある健康でないこのような状態が発生したときの摂取量をもって必要量とするということもございます。それぞれ活用においてどれぐらいシビアに考えなければならないのか。不足した場合の扱いが、何をもって必要量と考えるかによって大きく異なってまいります。
活用上、やや問題が起こっているという情報もいただきまして、今回は、この必要量というものはどういう理論的な必要量なのかということをまずこの表で分類して見せておきたいと考えております。そのために、たんぱく質はbという分類になり、ビタミンAはaという分類になり、その他、推定平均必要量と推奨量が決められる栄養素に関してはa、b、c、その他xというものが付されるということになります。
しかしながら、これは作業途中でございまして、xやa、b、cも含めて、まだこれで決定というものではございません。今後このようにしてここに見せることによって活用の便を図りたいとワーキンググループとしては考えています。このように御理解いただきたいところでございます。この表が中心になりますので、非常に大切なところでありますが、この程度で御説明とさせてください。
15ページは、摂取源です。摂取源は現行と変わりません。食事として経口摂取されるものに含まれるエネルギーと栄養素を対象とするということです。マル1は2015年版と同じで、耐容上限量につきましては、健康食品やサプリメント由来のエネルギーと栄養素も含みます。原則は通常の食品のみといたしますが、通常の食品のみでは期待される予防等に必要な量を満たすことが困難であり、かつ栄養政策上優先度が高いと考えるべき栄養素に限り、通常の食品以外の食品を含むものとするという、やや例外規定を設けております。これも2015年版、またはそれ以前からこの原則は葉酸のところで取り入れておりますので、そのまま続けるということになります。しかしながら、葉酸に関連する神経管閉鎖障害のリスクに加えまして、高齢者におけるフレイル予防に資すると考えられる栄養素に関しても加えられないかという検討を現在進めていますという報告をさせてください。
16ページです。レビューをしている途中で、レビューをされている先生方複数からどうすればいいのかという質問が出ました。サプリメント等を用いた介入研究をこの食事摂取基準の中でどのように扱えばよいのかという御質問であります。そこで、このような文章を現在考えております。全文読みますと多いですので、下線が引いてあるところだけ読ませてください。
「通常の食品以外の食品から大量に特定の栄養素を摂取することが妥当か否かに関しては、慎重な立場をとるべき」。これは、介入研究がその後の類似の介入研究で否定をされたりということもございます。したがって、5年間使うものに関しまして、そして5年、その次の改定と続いていくものに関しては慎重な立場をとるほうがよかろうと私たちは考えております。
その次、「通常の食品以外の食品を除いた通常の食品の組合せでは摂取することが明らかに不可能と判断される量」。ややこしいのですけれども、これは通常の食べ物をどう組み合わせてもそれほどたくさんは食べられないよねと。そういう量を食べさせて行った介入試験というものは、結局、この食事摂取基準に使えないという考えがございます。したがって、そのような研究については数値の算定に用いないという原則で私たちは作業をいたしております。
しかしながら、なぜそのようなことが起こるのかという、メカニズムの説明であるような場合には役に立つこともあろうかと考えまして、検索、収集、読解には必要に応じて含めるということをしていただいております。
17ページ以下はややスピードを上げて説明をさせてください。エネルギーでございます。エネルギーも基本的には策定方針を変更はしないつもりであります。しかし、内容をさらに拡充したい、充実したいと考えております。1つ目、BMI=22で示されるいわゆる「標準体重」について、根拠論文も踏まえた歴史的経緯をこの機会に整理をしようと。それぞれの体格指数というものはどのような意味とどのような価値とどのような歴史を経てきたのかということを活用者に理解していただきたいと考えております。
BMIと総死亡率を中心とした望ましい摂取量に関しましては、2015年版でつくられたものであります。そして、その後かなりのデータが世界的に追加されました。そこで、新しいデータも踏まえて数値が変わるかどうかを、方法は書いておりませんが、作業を進めております。同様に、基礎代謝基準値につきましても網羅的に再検索いたしまして、現在勝川先生に大変な作業をしていただいております。高齢者、小児のところも同様でございます。
その下に「今後の課題」というところがありますが、時間の関係がありますので、これは先生方で関係するところがございましたら読んでいただいて、御議論のところで挙げていただければと思い、私からの説明は省略をさせていただきます。
18ページ、たんぱく質でございます。たんぱく質は、特段の変更はしないつもりなのですけれども、実は新しい必要量の算定実験法がかなり広まってきました。指標アミノ酸酸化法と申します。その論文がかなり出てきまして、現行の出納法と数字の違い、乖離が起こっておりまして、各国で議論になっております。しかしながら、我が国といたしましては、少なくとも2020年版は従来の出納法を踏襲し、指標アミノ酸酸化法の数値が今後どうなるかの動向を見たいと考えております。
高齢者に関しましては、フレイル予防の観点がございますので、実態を十分に見、実態の摂取分布との絡みを見ながら、目標量の下限を策定するという作業をしております。その結果、決定ではございませんが、現在の13%エネルギーを少し引き上げることになろうかと考えております。ただし、きょうは数値等はお示ししてございません。そして、たんぱく質関係について、フレイル予防の関係をここに加筆することを予定しております。
19ページは、脂質でございます。脂質は、大きな変更はありませんが、飽和脂肪酸の目標量が2015年版は成人のみでございます。けれども、諸外国も非常に多くの国が小児のところも目標量を設定しております。幸いなことに、飽和脂肪酸に関しては、成人は摂取量分布から目標量を決めております。したがいまして、小児の正確な摂取量分布の研究論文が必要だったわけですが、幸いにその論文が存在しますので、この5年間でできましたので、それを参考といたしまして、また国民健康・栄養調査等のデータも加味いたしまして、3~17歳に諸外国と同様に目標量。我が国では「目標量」と呼んでおり、各国、指標の名称は異なりますが、その目標量を設定したいと考えております。
実は諸外国の目標量に相当するものの上限を見ると、日本人の子供たち、そろそろ目標量をきちんと定めないといけないなという数値でございます。しかしながら、活用をしっかりと考えて、使いやすいもの、ちゃんと御理解いただいて、現状で使えるようなものにつくり上げたいと準備しております。
コレステロールは、脂質異常症の重症化予防を目的とした量を設定したいということでございます。
20ページは、炭水化物です。炭水化物は、基本的に変更はございません。目標量等は、脂質、たんぱく質の算として決められております。この方法に関しても変更はございません。しかしながら、炭水化物の健康に資する量という論文、かなり質の高いものが世に出てまいりまして、それなども新たに引用しております。しかしながら、現在数値そのものは大きく変わらないのではないかと考えております。
一方で、食物繊維です。近年の報告を踏まえて、現在は6歳以上というところなのですが、そこよりも一つ年齢区分の低い、3~5歳のところにも目標量を設定したい。一つは小児の便秘の問題、もう一つは循環器疾患等を中心とする生活習慣病の小児からの発症予防に資するということを考えての目標量の設定とお考えください。
炭水化物に関しては、本来ほかの国との整合性を考えますと、糖類についての目標量などを出さねばならないところなのですが、幾つかの研究論文が日本に存在することが確認されました。しかしながら、数値を算定し、活用に資するにはまだ少し早いかなと考えまして、世界的には「フリーシュガー」と呼ばれますが、フリーシュガーに関しての目標量、また、それに類する指標の算定は、今回は見送るということを私たちは考えております。これに関しても御議論いただければと考えます。
21ページ、エネルギー産生栄養素バランスです。これは、たんぱく質、脂質、炭水化物の項の目標量ができますと、それの合体したものになります。したがいまして、特に新たな変更はございません。既に申し上げたところにおさまります。
22ページからが非エネルギー産生栄養素でありますビタミン(脂溶性ビタミン)です。脂溶性ビタミンは、策定方法の変更はございません。しかしながら、ビタミンDは特殊な栄養素でございます。その理由は、経口摂取だけではなく、紫外線暴露によって体内合成されるということであります。そのために、体内量をもって摂取量を決めるということが困難であるという栄養素であります。そこで、ビタミンDの御担当の田中清先生に随分お考えいただきまして、今回はアウトカムというものを、骨折のリスクを上昇させないということを考えて、そこから目安量を策定できないかという方法をお探りいただいております。しかしながら、そのためのビタミンDを全て経口でとりなさい、またはそれをもって目安量としますというものではなくて、その下にありますように、ビタミンD、骨折やフレイル予防などとの関係を記述し、日照時間を考慮に入れる重要性を記述するということで、今回はビタミンDの摂取量とアウトカムや、摂取量と生体指標や、そういうものとの関連の研究論文だけではなく、日照時間によるビタミンD産生の研究論文も含めてレビューをしていただき、それらを統合して摂取基準に含めるという試みをしているということを御報告させていただきます。
今後の課題は、読み上げるのは控えまして、次のページに行かせてください。
24ページ、水溶性ビタミンでございます。基準の策定方法は変更はございません。しかしながら、先ほど全ての栄養素の一覧表のところで必要量とは何の必要量かということをa、b、cで書きたいと申し上げました。その一例として、ビタミンB1、B2、Cというものは、尿中の排泄量が増大し始める摂取量(体内飽和量)というものから算定されております。そうしますと、日本はこれを十分に考えておかなければならないと私たちは考えておりまして、災害時等のときは通常の推奨量を摂取させるということは必ずしも正しいことではございません。したがって、このようなことにも活用がうまくされるように、どのような必要量であるかということをきちんと書く。特にこの3つのビタミンに関して、本文中にもしっかりと書き込む。既に書かれているのですけれども、さらに読み手の理解が図られるようにということを配慮して書いていただいているところであります。
24ページ、ミネラル(多量ミネラル)です。カルシウム、マグネシウム、リンの基準の策定方法に変更はございません。
ナトリウムは、策定方法そのものには変更はないのですけれども、どの体重を用いるかとか、数字をつくる計算式のところで少し変わりまして、数値が少しだけ変わるかもしれません。しかし、大きなものではございません。
重症化予防に関しましては、高血圧症、慢性腎臓病のほうの御担当の先生方にお願いをしまして、重症化予防を目的とした量を新たに設定し、これをナトリウムの食事摂取基準の表の脚注に書き込めないかということで、準備をいただいております。
その次はカリウムです。カリウムは、食物繊維と同じで、3~5歳という幼児のところの目標量が算定されていませんでした。しかしながら、カリウムの摂取量は、日本人のこの年齢、幾つかの研究論文、調査データで明らかになっておりますし、また、WHOを初め、諸外国、世界的に目標量に類する数字を算定してございます。したがいまして、日本も2020年版をもって3~5歳のカリウムの目標量、数字を算定したいと考えて、作業を進めております。
以下は付記事項でございまして、ナトリウム、カリウムのそれぞれの栄養素の量を出すというのが食事摂取基準の最たる目的なのですけれども、ナトリウムとカリウムは比も重要であるという研究論文が多数ございます。したがいまして、このようなことも本文中に書き込むことを予定し、そのように作業を進めていただいております。これは一例でございます。
25ページ、今後の課題は割愛させていただきます。
26ページ、ミネラル(微量ミネラル)でございます。鉄は非常に難しい栄養素で、鉄は、要因加算法を用いている関係上、幾つかの要因が大きいほう、または小さいほうに複数振れますと、最終的に算定される値がかなり真実からずれるという理論的問題をはらんでおります。そこで、それぞれの要因をかなり丁寧にチェックしていただく必要がある、レビューしていただく必要があるというところが鉄の問題でございます。
その結果、現在上がってきているところでは、妊娠中期以降の鉄吸収率を40%程度とすることによって付加量を引き下げる。これは実際これだけ鉄を食べるのは非常に大変だという現場の声もあるのですが、それとは独立に研究論文をしっかりとレビューしていただいて、今回このような変更をしたいとワーキンググループとしては考えております。
次の赤がヨウ素です。ヨウ素は非常に難しい。摂取源のほとんどが昆布由来である。昆布は摂取量がはっきり調べられないということ。でも、幾つかの論文、かなりふえてきまして、ありがたい限りでございます。それと吸収率の問題も加味しなければなりません。したがって、そのあたりを加味して、小児と授乳婦のあたりの値を少し変更しようということで、現在吉田先生に進めていただいております。
クロムは、成人の耐容上限量を新たに策定したいと現在準備していただいていること。
モリブデンは、小児の推定平均必要量がなかったのですけれども、これはやや不思議だったという話で、ほかの微妙ミネラルは外挿しているのに、なぜモリブデンだけ成人から外挿していないのかということで、成人からの外挿を用いることによって、小児の推定平均必要量及び推奨量を新たに策定するということを準備いただいております。
27ページは、ミネラル関係の課題でございます。
28ページは、対象特性でございます。ここは具体的に書いていなくて、これは栄養素を縦としますと、対象特性は横になりますので、栄養素の先生方と対象特性の先生方は互いにお話をしていただいて、対象特性の先生方の御意見や調べていただいたレビュー結果も入れていただいて、先ほどの栄養素ベースができ上がっているとお考えください。そして、両者のところの整合性を図りつつ、妊婦・授乳婦、乳児・小児、そして高齢者のところをつくるという流れでございます。しかしながら、高齢者のところは、先ほど来何度も出ておりますが、フレイル及びサルコペニアと栄養の関連に関して、各栄養素の項において見直した点をまとめていただいて、追記をしていただこうと。
これは今まで出てこなかったのですけれども、高齢者で、社会的にも大きな医療の課題でございます認知機能の低下及び認知症と栄養の関連について、最新の知見と申しますが、現在どのような関連があるかということを本文中に記載していただけるように今、お願いをし、作業を進めていただいているところでございます。しかしながら、このところを食事摂取基準の数字に反映させるという意図ではないということを御承知おきください。
29ページ以下が生活習慣病とエネルギー・栄養素との関連でございまして、いわゆる重症化予防のところでございます。きょうは2015年版のそれぞれの疾患の冒頭に挙げられておりますエネルギー・栄養素と各生活習慣病との関連図をここに再掲いたしております。これを重症化予防の御担当の先生並びに関連する学会や御専門の先生方に考えていただいて、修正をお願いしております。しかしながら、現在のところ、少しの修正は必要であるかもしれないが、基本的にこのような図を2020年版に掲載することがよかろうという御返事を4つの疾患の先生方からいただいております。どの矢が1プラスで、どの矢が2プラスで、どの矢があって、どの矢がないというところは、まだ十分には定まっておりませんが、12月の回までには定めて、先生方に実際に見ていただいて、御指導を仰ぎたいと考えております。この図を掲げ、それぞれの重症化予防に関しての本文を、重症化予防の4つの疾患の先生方に現在つくっていただいているというところが進捗でございます。
時間をとってしまいまして申しわけございません。私からの報告は以上でございます。
○伊藤座長 佐々木先生、ありがとうございます。
これまでの先生方の大変な作業がここに反映されておりまして、本当にありがとうございます。
それでは、時間も押してまいりますので、策定方針と策定の基本事項について、スライド16まで検討しておきたいと思います。論点が2つありまして、一つは指標の概要というところ、もう一つは年齢区分でございます。6ページの指標の概要。エネルギーの指標、栄養素の指標、5つの指標で構成するというところでございますが、重要なことは、発症予防を目的とした指標であるということを明確にしたということであって、重症化予防とは違うという観点からそれをきちんと明記したということでございますが。
○佐々木(敏)構成員 全く違うというよりも、混同を避けたいということです。
○伊藤座長 混同を避けるということですね。明確にしたということですね。
○佐々木(敏)構成員 はい。
○伊藤座長 そういうことでございますけれども、これにつきまして、先生方、御意見、御質問ございませんでしょうか。どうぞ。
○横山構成員 今の生活習慣病の発症予防と重症化予防という言葉の定義を確認したいのですが、生活習慣病と普通に言うと、例えば脳卒中とか虚血性心疾患とかも指すわけですが、ここで言う発症予防というのは、高血圧、糖尿病、脂質異常などで、脳卒中とか虚血性心疾患が高血圧などの人から起きてくるというのを重症化予防と呼んでいると。そういう理解でよろしいのでしょうか。
○佐々木(敏)構成員 基本的にはそのように考えてよろしいかと思います。すなわち、脳卒中を考えますと、食事以外の要因もかなり入ってきたり、そして横山先生がおっしゃったように、高血圧があって脳卒中が起こるというような二段階のものもあります。かなり複雑になってまいりますので、ここでは高血圧症を中心に考え、その向こうにある脳卒中等は前面には書かないというふうに私としては考えております。高血圧症の御専門の先生から御意見をいただければありがたいです。
○土橋構成員 高血圧学会の土橋でございます。
この後、中座させていただきますので、先に発言させていただきます。おっしゃるとおりで、三浦先生とも話し合いをしたのですけれども、例えば今、8グラムと7グラムというのは発症予防、6グラムが重症化予防と言えるわけですが、高血圧の定義自体が今、変わろうとしていてアメリカでは130/80を高血圧の基準としました。日本高血圧学会も、130は正常ではなくて高値血圧としようということになると、今までは140以上になったら6グラムだけど、それまでは7、8でいいですよという言い方をしていた部分がありますが、それがより下がってくるということになりますとグレーゾーンができるというか、連続変数を扱っている疾患なので、非常に難しいです。特定健診・保健指導との関係もありますが、最低8と7だけど、高血圧に近い人は6をめざすといった言い方になるのではないかという気がしております。
○横山構成員 ありがとうございます。そのあたりの説明を総論のところにちゃんと書いておかないと、ちょっと混乱するのかなと思ったのです。
○佐々木(敏)構成員 そうですね。ありがとうございます。
○伊藤座長 大変いいポイントで、脳卒中とかが起こってしまったもの、そういう病気も含めて生活習慣病というふうに大きく言えば、それも入るのですけれども、ここでの定義をある程度はっきりさせておいたほうがリーダーにはわかりやすいと思いますね。これはよろしいですか。柏原先生、どうぞ。
○柏原構成員 最後に図表をつけていただいているということが、生活習慣病と臓器障害、合併症との関連で御説明いただいていると理解したのですが、そういう意味では、この報告書の中での生活習慣病は、高血圧、脂質異常症、糖尿病、慢性腎臓病、そういう位置づけで、この4つの主要疾患の発症予防を目標としていると。そう理解したらよろしいということですね。
○佐々木(敏)構成員 そのとおりでございます。生活習慣病の中で重要な疾患、食事摂取基準が扱えるエビデンスが存在し、それを国民の健康、食生活改善に資するべきと考えられたのが現在この4つの疾患であるというのが2015年版の考え方であり、私たちは2020年版でもそれを踏襲しようと考えたというところです。
○柏原構成員 わかりました。ありがとうございます。
○伊藤座長 それをどこかで明記したほうがいいですか。
○柏原構成員 割と早い部分にお書きいただいたほうがわかりやすいかもしれません。
○伊藤座長 この報告書の中の早い部分に、生活習慣病の今回の対象はこういうものであるということを書いておかれたほうがいいですね。
○柏原構成員 はい。
○伊藤座長 よろしいですか。
○佐々木(敏)構成員 わかりました。ありがとうございます。
○伊藤座長 ありがとうございます。
ほかに御意見ございませんか。横手先生、どうぞ。
○横手構成員 千葉大学の横手と申します。
本当に大変な作業をありがとうございました。そして、今回コレステロールについて、重症化予防、脂質異常症の重症化予防における目的とした量を欄外に記載していただけるということ、これもすばらしい進歩であり、ぜひお願いしたいと存じます。
このことに関して1つだけコメントがございます。2015年版の115ページ、先ほど飽和脂肪酸の表の欄外にコレステロールを記載するとおっしゃいました。コレステロールの制限は、専ら高コレステロール血症の重症化予防、つまり動脈硬化予防を目的に行います。一方、飽和脂肪酸は、2015年版において、コレステロールもさることながら、インスリン抵抗性にも寄与するということが明記され、飽和脂肪酸を制限することの目的は、脂質異常症のみならず、糖尿病やインスリン抵抗性の改善にも資するという広い意味合いがあると思います。そういう意味で、コレステロールを独立させずに飽和脂肪酸の欄外へ書くことが最も適当なのか、そのあたりをぜひもう一度お考えいただきたい。結果的にそうなるのであればよろしいと思うのですが、コレステロールを書いていただくことはぜひお願いしたいと思いつつ、場所が飽和脂肪酸の欄外でよいのかというところを、ぜひワーキンググループでいま一度ディスカッションをお願いできれば幸いでございます。
○佐々木(敏)構成員 ありがとうございます。確かに私どもが困っているというか、迷っている、考えているところでありまして、横手先生がおっしゃることは、私どももそのとおりで、どこに重症化予防の数値を置こうか、落ちつきのよいところを模索しているところでございます。
○横手構成員 よろしくお願いします。
○伊藤座長 ありがとうございます。
そこはもう一度検討ということですね。
○佐々木(敏)構成員 はい。
○伊藤座長 よろしくお願いします。
どうぞ。
○葛谷構成員 1ページ目の策定方針のところで、高齢者の低栄養予防、フレイル予防が生活習慣病の発症予防、重症化予防の上にあるというのはいいのですが、右側に出てくる矢印というのは微妙なところにあって、これはどこを指して、どういうふうにしたらいいかということ。これは多分両方またいでいるのでしょうか。
○佐々木(敏)構成員 済みません。矢印の位置がやや上にずれております。もう少し下で。
○葛谷構成員 これは、高齢者のところも生活習慣病も両方ともかかるような感じでよろしいですか。
○佐々木(敏)構成員 はい。両方かかるという理解です。書き方をもう一度考えます。
○伊藤座長 右側にあるのは社会的背景ですね。
○佐々木(敏)構成員 はい。
○葛谷構成員 あと、ここで言っていいのかどうかわからないですけれども、脂質に関して、私もコレステロールが重症化予防に入ったのは大変ありがたい話だなと思いますが、前回も多少議論になったかなと思うのですけれども、トランス脂肪酸に関しては、今回はどういう取り扱いをされるかということをお願いします。
○佐々木(敏)構成員 トランス脂肪酸に関しましては、食事摂取基準として定めない方針です。その理由は、ほとんどのトランス脂肪酸が食品加工の途中で人工的につくられているものであり、自然由来ではないということです。しかしながら、それが他の脂肪酸と同様に無視できないほどの健康問題を諸外国で引き起こしているということは事実です。したがいまして、脂質の章の中に「トランス脂肪酸」という項を設けましてレビューはしまして、レビューの文章は入れたい。しかしながら、数値をつくるとしたら目標量になると思うのですが、目標量という数値の算定は避けるという方向で現在進めております。これが進捗状況です。
○伊藤座長 ほかにはございませんでしょうか。よろしいですか。よろしいでしょうか。
それでは、2点目は年齢区分でございます。スライドの11枚目にございます。ここにはエビデンスはないけれども、一応このような形で分けてありますということで、十分にそういう点を記載するということになっておりますが、これに関しまして、皆さん、よろしいですか。これは政策上もこういう形でやるということで、できるだけのことはいっぱいやったけれども、やはりエビデンスが不十分なところがあるので、注意して判断してくださいということになろうかと思いますが、これでよろしいですね。どうぞ。
○葛谷構成員 年齢区分に関して65歳、75歳という区分になったのは大変良いと思います。ただ、今まで歴代、70歳以上とかそういう枠組みが一応あったわけですね。例えば私が長年の経緯を見たいなと思ったときに、2020年から70年以上のデータが出てこないとなると、結構困る人がいるのではないかと思うのですが、それも併記するとか、そういうのは難しいのでしょうか。
○佐々木(敏)構成員 データが出てこないというのは、どういう意味ですか。
○葛谷構成員 この表などでは70歳以上の項目がなくなるわけですね。
○佐々木(敏)構成員 そうですね。65~74と75以上に。
○葛谷構成員 今まで何年間もずっとそのデータというのは残ってきたわけですね。
○佐々木(敏)構成員 データというか、食べるべき量ですね。
○葛谷構成員 値とか。それが2020年から全く途切れてしまうというのは、私は別に構わないですけれども、困る方が結構いるのではないかなと思って、そこはちょっと危惧するところです。
○佐々木(敏)構成員 こういうものを変えるときは、先生がおっしゃるように、何かメリットがあったら、何かデメリットが起こりますね。先生が一つ御提案いただいたように、私どもワーキンググループ、数字をつくる側としては、正直に申しますと、余りやりたくはないのですが、今回2020年版に限って、その後どうなるかはわからないということにしまして、2015年版の年齢区分における数値もどこかに付表みたいにしてつけておくということがあるかもしれません。外挿法を用いて決めたものに関しては、関数の係数等を入れかえる話で、それほど作業量がふえたり、またはなぜかという根拠を求められることも少ないと思うのですけれども、たくさんの実験研究や観察研究等の値をまとめて、それを丸めて数字をつくったもの。これは実際に使うように四捨五入という作業をして、ここは切り上げ、ここは切り下げとか、私たちは一つ一つずつ全部やるのです。2015年版の年齢区分でもそれをやったときに、栄養素の担当の先生が、なぜここは切り上げたのかとか、なぜここは切り下げるのかということを一つずつ考えていただく必要がございまして、かなりの作業がふえるかと思います。
けれども、このように年齢区分を変えるという大きなことを行う場合は、今回に限って2015年版の年齢区分で摂取すべき量はこういうふうになるということができるかどうか検討はしたい。けれども、それをするというふうに私個人ではお返事を避けさせてください。検討課題としてワーキンググループに持ち帰りたいと思います。
○伊藤座長 それをもう一度やるとなると大変な作業のようですね。こういうときはぱっと変えてしまわなければいけないというのもあるかもしれませんね。
あとはその数字の間で読んでもらうとか、その程度やってもらうということになるかもしれませんね。
年齢に関しまして、ほかにございませんか。先生、どうぞ。
○雨海構成員 今回の2020年版のキーワードとしてフレイルが一つあると思います。健康寿命の延伸の観点から考えましても、健康寿命がたまたま今は75歳周辺であり、今回ご提案の75歳が、まさに健康寿命とぴたり重なり、今回の摂取基準2020年版のテーマとも合致していると思います。以上の理由からも、可能であればこの年齢区分をぜひお願いしたいと個人的に思っております。
○伊藤座長 一つの理由になるかもしれない。佐々木先生。
○佐々木(敏)構成員 プッシュするなら、過去を消してしまうほうがよいかもしれないと。これで行きましょうというのかもしれませんね。
○葛谷構成員 私、個人的にはそれでいいです。
○佐々木(敏)構成員 わかりました。
○葛谷構成員 そこを待っている方もおられるかなと。
○伊藤座長 よろしいですか。先生、どうぞ。
○櫻井構成員 2ページ目、フレイルの定義はまだ確定していないというところがあって、あえて書いていないのだろうと考えます。もう一つ、3行目の「フレイルの状態にあっても自立した日常生活」の「自立した日常生活」も実は定義がないというところがあります。「生活自立」は、高齢であるほど非常に曖昧な概念でございます。ですから、できれば「おおむね」という言葉を入れておいたほうが安全かと考えております。
○伊藤座長 「おおむね自立した」ということですね。
○櫻井構成員 はい。
○佐々木(敏)構成員 自立の定義がないので。
○伊藤座長 確かにここで書いてありますように、フレイルの定義がはっきりしていないというので、現在は前者の状態として一応今回は作成するということですね。おおむねですね。よろしいと思います。
年齢区分の前のところまでで何か御質問等がございますでしょうか。よろしいですか。概要について。よろしいですか。
それでは、今、年齢区分のことが終わりましたので、次はその他の内容ということでございます。各論に行く前に、例えば先ほどのフレイルのところで御質問とか御意見とかございませんか。大丈夫ですか。どうぞ。
○雨海構成員 これは用語だけの確認をさせてください。7ページのマル5で括弧の中に英語が書いてありまして、preventingの後、”life-style related diseases”の語句についてです。国際的には、Non-communicable diseases(NCD)を使うことが多い気もいたします。そこで原案どおりの表記とNCDのどちらがよいのか、ご検討いただきたければ、と思います。
○佐々木(敏)構成員 そもそも「目標量」という指標は、日本国産でありまして、他の国はこの名称を使っておりません。したがいまして、その英語名称も国産でありまして、それでNoncommunicable diseasesとせずに、そのままの直訳であるlife-style relatedにしたという経緯なのではないかというふうに記憶を。これは私の記憶の範囲内です。しかし、2020年版として、これを国際的に浸透させる目的としてしっかりとそのような国際基準としての名称づくりも考えるべきだと改めて思いました。ここも検討させてください。
○伊藤座長 私も賛成ですね。life-style related diseasesとちゃんと書いておいてほうがいいだろう。このごろは論文でも時々出てきますね。高血圧とかそういうところでもこういう名前で出てきますね。
○佐々木(敏)構成員 そうすると、言葉はこれでよろしいということですか。
○伊藤座長 life-style related diseasesという文章が出てくることがありますね。横手先生。
○横手構成員 はい。
○佐々木(敏)構成員 わかりました。ありがとうございます。
○雨海構成員 了解いたしました。ご検討ありがとうございました。
○伊藤座長 ほかにはいかがでしょうか。よろしいですか。
それでは、各論のほうに参りたい。17ページ以降でございます。ここはエネルギーとかたんぱく等についてでございますが、これについて御質問や御意見をお願いしたいと思います。たんぱく質につきましては、フレイル予防を図る上で、それをちゃんと考えて。少し上がるだろうというお話もありました。では、エネルギーから行きますか。何か御質問ございますか。よろしいですか。BMIを基準として行うということ。どうぞ。
○葛谷構成員 これはいろんなところで言っているのですが、これはBMIでやるしかないと僕も思いますが、高齢者にとってBMIはかなり厳しいものがあって、中身でそこら辺を書いていただけるとありがたいなと思うのです。高齢者のBMIがどこまで信用できるかどうかとか、身長が基本的に縮んでいってしまうので、BMIというのを成人と同じように評価していいかどうかとか、そこら辺を中身で少しだけ言及していただけるとありがたいなと思います。
○佐々木(敏)構成員 それに関しては、対象特性の高齢者のところに書き込むのがよいのかなと考えます。
○葛谷構成員 はい。
○伊藤座長 よろしいでしょうか。
では、次にたんぱく質について。数値ではなくて、このような方針でやるということですので、これもよろしいですか。フレイル予防との関係を記述するということ。
脂質はいかがでしょうか。小児の目標量を設定したというところが新しい。それから「脂質異常症の重症化予防を目的とした量を新たに設定し、飽和脂肪酸」。これは先ほど横手先生からお話があったところなので、ちょっと考えていただくということになりますね。その点でよろしいですね。
炭水化物ですね。
糖類については今回見送るということ。
○佐々木(敏)構成員 糖類の目標量は、今回は見送りたいと予定しております。けれども、糖類のことが世界的に定められているとか、日本人の摂取分布がどうかというところは、本文に書き込んでおくつもりでおります。
○伊藤座長 はい。
よろしいでしょうか。
次はエネルギー産生栄養素バランスです。これは前回と変わらないということですね。
○佐々木(敏)構成員 はい。
○伊藤座長 今後の研究課題が書いてあるということです。
ビタミン。先生、どうぞ。
○佐々木(雅)構成員 2点ほど意見があります。1点は水溶性ビタミンですけれども、「災害時の避難所における食事提供の」という箇所です。そういう緊急時にはもう少し少なくてもいいという意味だと思うのですが、これは水溶性ビタミンに限ったことという理解でよろしいでしょうか。
○佐々木(敏)構成員 これは正しくは総論のほうで書くべきお話です。これは柴田先生からの御指摘で、水溶性ビタミンで非常時における使い方をきちんと示しておくべきだろうという御意見をいただいていることがございまして、きょうは水溶性ビタミンの中に書き込みました。けれども、概念的、そして活用上は、これは総論の活用のところで書くのが正しいだろうと考えています。
○佐々木(雅)構成員 了解しました。
もう一点、よろしいですか。
○伊藤座長 どうぞ。
○佐々木(雅)構成員 きょう午前中に消費者庁の流動食の許可基準の委員会がありました。その許可基準のなかで、特にビタミンの量については、この摂取基準の数値がベースになってくるのです。ところが、脂溶性ビタミンについては目安量しかないもので、それをいかに活用するかというのが議論になったところです。つまり、この食事摂取基準でビタミンDの目安量が上がると、それでその数値の許可等について、またハードルが高くなってしまうということが起こり得るのです。特にビタミンDの場合、皮膚での合成ということがあるのであれば、食事の摂取量の目安量の変更につきましては、ぜひそこは慎重にお願いしたいというところです。要するに、摂取基準が上がると許可基準の下限値も上がってしまう可能性があって、それによって許可されるためのハードルが高くなるということが連動して起きる可能性があるのです。皮膚でも合成されるのであれば、食事としての摂取量というものの数値は、そのあたりを慎重に検討していただきたいと思っております。
○佐々木(敏)構成員 佐々木雅也先生おっしゃることそのものでございます。私どももそこに注意をして策定しております。と申しますのは、具体的にアメリカのビタミンDは、日照の照射がない条件下で必要量を定めるという方針をとっております。これはアメリカがアラスカ等を含んでいるという地理的問題があるのだろう。もう一つ、他の欧米諸国が日本よりも全体として高緯度地域にあり、日照からのビタミンD合成量が少ない。また、冬期、合成できない期間が存在する国があるというところであります。けれども、それらの数値を持ってくるのではなくて、日本としての紫外線照射の時間を入れて、そこからの合成量を推定できないかという試みもしておりまして、私たちは日本という場所において通常の日照を受けていて、ビタミンDが合成される量を考えて、では、そこと別に、経口でどのくらいのビタミンDがあれば十分かという目安量を策定しようということで、かなり慎重に、上げない方向というか、いきたいというふうに私たちの中ではコンセンサスが得られています。
○佐々木(雅)構成員 ありがとうございます。
○伊藤座長 どうぞ。
○斎藤構成員 ビタミンDの活用に当たっての留意事項のところで、「日照時間を考慮に入れる重要性を記述」ということなのですが、細かいところで、「日照時間(季節)を考慮に入れる」という形で。活用側にとっては、日照時間だけですと、なかなか捉えにくいところがあります。実は私たちが研究した新潟県民のデータで、同じものを食べていても夏と冬で血中ビタミンDの濃度が大分違うという結果がでています。多分これは日照時間の問題が大きいのだろうと思うのですが、活用側にとって、「(季節)」という表記を入れていただけるとありがたいです。
○佐々木(敏)構成員 これは学術的には有効日射量というのを使いまして、ルクスと時間ですけれども、論文としてはそういうものが出てまいります。今おっしゃっていただいたことはまさしくそのとおりで、ビタミンDのこのところに、日射の弱い季節や確度の低いときには合成量は少なくなるから注意をするようにという文言、活用にも資するという形の文章をつくって入れていただけるようにビタミンDの先生にお願いしようと思います。
○斎藤構成員 よろしくお願いします。
○伊藤座長 つまり、もう少し詳しく書くということですね。
○佐々木(敏)構成員 はい。ところが、正直に言いますと、紫外線からのビタミンD合成量の研究というのは日本は乏しく、かつ緯度が違うために欧米の研究が余り使えないのです。なので、非常に難しいという点がありまして、少数の論文からつくられる数字というもので数字を決めるということに対して、私たちはためらいがあるというのも事実でございます。ですので、どういう形で最終的なものにできるかは、やや自信はないのですけれども、何とか日照時間、季節、強さ等を数値としてレビューをし、文字として書き込むことを検討しているというふうに御理解ください。
○伊藤座長 ありがとうございます。
ミネラルに関してはいかがですか。マル7-1、24ページから26ページまでになります。27ページは今後の課題ですね。高血圧、慢性腎臓病等について。これは重症化予防を目的としたという形で追記するという形になりますね。よろしいですか。柏原先生、どうぞ。
○柏原構成員 24ページ、ミネラルで、カリウムについてですが、「高齢者における活用に当たっての留意事項として、腎機能障害や糖尿病に伴う高カリウム血症に注意する必要がある」と。高齢者がGFRが低下しているので、高カリウム血症に注意する必要がある。これは本当にそのとおりだと思うのですが、一方で、高齢者の特性として、糸球体の機能、GFRのみならず、尿細管の機能も障害されていて、データベースのデータなどを見ますと、加齢に伴って低カリウム血症、高カリウム血症、両方のリスクが上がってくるということが示されています。ナトリウムも低ナトリウム血症のリスクも上がる。そこまで細かく書くかどうかわかりませんが、もし高カリウム血症に対する注意が必要であるということを追記いただくのであれば、そのようなことも少し書いていただければいいのかなと思ったりはします。食事の摂取量が変わるというふうには思わないのですが、何か注意文書を書くのであれば、書いていただければなと思います。
○佐々木(敏)構成員 ありがとうございます。
あくまでも食事摂取基準ですので、食事の摂取量に影響が及ぶレベルか否かということを十分に考えつつ、この文章の高カリウム血症のところを、先生がおっしゃってくださった高齢者の特性を十分に考えて、文章の修正が必要であれば、それをしていただけるように担当の先生と相談をいたします。ありがとうございます。
○伊藤座長 これはむしろ高齢者の特性というふうな、高齢者のところで書いた。
○佐々木(敏)構成員 このように栄養素という列と年齢区分という行がありまして、そうすると、ある一つのものを決めるときには、その栄養素の御担当の先生とその年齢区分の御担当の先生と一緒に相談をしなければならないということで、そのように進めさせてください。どちらで記述すべきかということに関してもそのお二人の先生に諮りたいと思います。
○伊藤座長 そうですね。高齢者にはいろんなあれがありますので、それを含めて相談をしていただいて。
○佐々木(敏)構成員 はい。
○伊藤座長 ミネラルに関しまして、ほかにはよろしいでしょうか。よろしいですか。
続きまして、対象特性につきまして御意見。一番初めのところは、妊婦・授乳婦、乳児・小児、高齢者、あとは各種生活習慣病ということですが、恐らく各種生活習慣病に関しては、それぞれの専門の先生方にもう一度チェックいただくと。矢印の太さ、点々、それを含めて全部やっていただくということですが、初めの1、2、3の項目については、何か御意見ございますか。ほかのことでも結構ですが。よろしいですか。どうぞ。
○木戸構成員 今回生活習慣の予防と重症化予防を明確に分けるということで、例えば疾患別のCKDのところで予防の矢印と重症化予防の矢印が混在していると思うのですが、そこのあたりを少し整理していただけると全体としてわかりやすくなるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○佐々木(敏)構成員 これはかなり難しい問題で、4つの疾患のこの図は、重症化予防のページ、章に入ります。したがって、基本的には重症化予防を念頭に置いてつくられているとお考えください。しかしながら、この関連というものに関しては、発症予防にも使える考え方であると私どもは考えています。また、そのような健常者を用いた研究論文等もかなり参考にしてつくっております。またはハイリスクの人への介入試験やそういうものも入っております。したがいまして、木戸先生がおっしゃるように、これをどの部分が主に発症予防で、どの部分が重症化予防かということを分けるのはかなり難しいです。かなり難しいです。
○伊藤座長 連続性がありますからね。
○佐々木(敏)構成員 はい。連続性があることと、それを分けるためには、もとの論文を分ける必要がありまして、その作業をしなければなりません。その考え方は、発症予防と重症化予防という考え方が食事摂取基準に入ったときに本来すべきことなのですけれども、研究論文のほうがそのような形でうまく書かれていなかったり、それから両方に役に立ちそうだったりというようなグレーの部分がありまして、私たちワーキンググループとしては、分けてお見せするというところの作業まではできていないというのが正直なところです。
そういう意味では、木戸先生の御発言は、むしろそういうことを本来はすべきではないかという今後への課題として残していただけるとありがたいかなと思います。また、そういう方向で今回少し手をつけたり、または次回に向けてできるような、そういうレビューの方法があり得るかどうかを私たちワーキンググループの中で議論をしておくということも次回のために役に立つことだろうと考えます。
○伊藤座長 ありがとうございます。
柴田先生、どうぞ。
○柴田構成員 このワーキングのメンバーに入っていて、ここで発言するのも恐縮なのですけれども、乳児の0~5カ月という非常に大きく成長する期間で、1つの値しかないということが問題かもしれないという点をあげておきたいと思います。私どもが哺乳量とかいろんな栄養素をはかった経験から、課題として将来もう少し細かくしたほうが、お母さんの心配がなくなるのではないかなという気がずっとしているので、ここで課題として挙げておいていただいて、将来研究してくださる人が出たらうれしいなと思います。
○伊藤座長 よろしくお願いします。
○佐々木(敏)構成員 とても大切なことなのですが、乳児のところがなぜ0~5カ月で1つになっているか、その理由は、哺乳量の疫学研究がほとんどないのです。結局、分けようとすると、哺乳量を細かく1カ月児、2カ月児というふうに調査しなければなりません。ところが、哺乳量調査はすごく難しくて、なかなかいい研究論文が出てこないという実情がございます。それと同時にそれぞれの母乳の成分の変化というものとの掛け算になりますので、これは一つのかなり大きな研究課題として取り上げるべきものではないかと考えています。僕たちがつくっていて、この部分をもう少し細かく分けられたらなという気持ちは、柴田先生と私も同じでございます。
○伊藤座長 よろしいでしょうか。どうぞ。
○葛谷構成員 2015年ではたんぱく質のいわゆる耐容上限量は定めないという話だったと思う。そのときはエビデンスがまだないということだったのですけれども、今回はいかがでしょう。私は高齢者専門ですが、高齢者の方はいいと思うのですが、昨今、成人でかなり高たんぱく食をとっている人たちがふえてきているのではないかと思って、それに対する指標がここの中でできるといいなと思ったのですけれども、今回、いかがでしょうか。
○佐々木(敏)構成員 耐容上限量をつくれないかというレビューも少しいたしました。けれども、耐容上限量として出せるだけの強固なエビデンスとまではまだ至っていない。ただ、この5年間でその分野の研究が進んできたのは事実だと感じております。そして、先生への直接のお答えは、それは目標量を用いてしばらくはやりたい。すなわち、目標量の上限というものを用いて行い、耐容上限量、それを超えたら健康障害が起こりますよというレベルではなくて、健康を保っていく上の摂取量範囲を守ってくださいという形で活用したいと考えています。
○伊藤座長 高たんぱく食に関する研究も文章の中では。
○佐々木(敏)構成員 はい。少しだけですが、文章で入れられるかと思います。
○伊藤座長 わかりました。
ほかにはよろしいですか。
それでは、次の資料3「目標量の設定に関するエビデンスレベルについて」ということで、佐々木先生からお願いします。
○佐々木(敏)構成員 それでは、1枚紙、資料3「目標量の設定に係るエビデンスレベルについて」をごらんください。疾患の治療ガイドライン等、いろいろなガイドラインでエビデンスレベルを示すということは、学術的にも大切であり、かつそれ以上に活用上、非常に有用なものでございます。そこで、エビデンスレベルを付せないかという案が出ました。しかしながら、諸外国の食事摂取基準におきましてエビデンスレベルを付している食事摂取基準は、現在私たちが調べた範囲ではございません。
なぜかと申しますと、数値をつくるというのが目的であるものであり、定性的な言葉を自信を持って言うか、そうでないかというものではないために、エビデンスが付せないというところがあるように感じております。しかしながら、その数字の確度に対してのエビデンスレベルがつけられないのかということを考えました。そこで、今回は目標量に限ってエビデンスレベルを設定することができるのではないかと考えて、このような案を提示させていただきます。
その背景としまして、目標量ですから、基本はコホート研究という観察研究、介入研究等が複数あるということが必要になってまいります。そしてそれらを集めたメタアナリシスがあるということがその上のレベルで必要になってまいります。
先ほどの資料2の説明の初めのほうで申し上げましたが、食事摂取基準が数値をつくるという性格上、従来のメタアナリシスの表現方法であるフォレストプロットが適切な方法とは言いがたいという面がございます。フォレストプロットは相対的な強さをあらわすものであり、絶対量を示すプロッティングの方法ではありませんので、フォレストプロットを使ったものは数値を算定しにくいという弱点があります。それに対して、この10年くらい、栄養疫学の分野でDose-response Meta-analysisという量反応関係を表現するメタアナリシスがふえてまいりました。たくさんの研究がふえてきました結果、こういうDose-Responseまでメタアナライズしようということがふえてまいりまして、この5年間で、Dose-Response Meta-Analysisを栄養素に関して、そして生活習慣病やその手前の指標をアウトカムとして行うということ、その論文がふえてまいりました。
その結果、3つできます。すなわち、コホート研究または介入研究、そしてそのメタアナリシス、そしてメタアナリシスがさらにDose-Response Meta-Analysisということになります。そこで、それらをこのように考えてエビデンスレベルをつくろうかなと考えた。これはまだ私の頭の中でのお話でありまして、これからこれを実際にできるかどうかをワーキングの先生方に諮らせていただきたいと考えております。その前にきょう先生方から御議論いただいて、御指導いただければと考えます。
A、B、Cと分けました。AがDose-Response Meta-Analysisがある場合です。A1とA2はどこが違うかといいますと、Dose-Response Meta-Analysisが1つ以上あり、かつそれ以外にもメタアナリシスがある場合です。すなわち、メタアナリシスが複数ある。そして、そのうちの少なくとも1つはDose-Response Meta-Analysisであるという場合です。最近、メタアナリシスが相当にはやって、たくさんの論文が出てきますと、メタアナリシスAとメタアナリシスBの間のコンフリクトが起こっています。そこで複数のメタアナリシスが類似の結果を出しており、かつそのうちの1つ以上が量を決定できる指標となるであろうDose-Response Meta-Analysisである場合をA1としました。
それに対して、A2は、Dose-Response Meta-Analysisが1つだけある。やや弱くなります。または通常のメタアナリシスが2つ以上ある。2つ以上あるものからワーキンググループの御担当の先生が数字を読み取るというものであります。したがって、メタアナリシスが1個か、または通常のメタアナリシスが2つ以上ということで、エビデンスレベルを少し下げまして、A2といたしました。
Bは、Dose-Response Meta-Analysisがない場合です。
Cは、メタアナリシスがない場合です。けれども、複数の介入研究やコホート研究があり、その複数も3つ以上といたしました。すなわち御担当の先生が介入研究またはコホート研究、その合計数を3つ以上そろえて、そこから数字を読み取るという作業をなさるというケースがCとなります。
DとEがそれらに当たらないケースでありまして、Dは他の国の食事摂取基準や、またはそれに類する基準を借用するという場合でございます。その国の食事摂取基準や、またはそれに類する基準がワーキンググループの御担当の先生の目から判断していただいて、我が国にその数字を援用、使ってもよかろうと判断されるという場合であります。
Eは、それにも何も当たらないということでありまして、本来Eはないほうがよいなと考えているものであります。
このようなものを試作としてつくってみました。やや複雑でありまして、できればもう少し理論的、かつ活用上、単純化してお見せすることができないかなと考えております。難しくするより、まとめ上げて簡単にするほうの御示唆をいただければ、作業している私どもとしてはありがたいです。よろしくお願いします。
○伊藤座長 ちょっと難しい話になりますけれども、今回は目標量に関してはエビデンスレベルをつけるということですね。それから、今までのガイドラインは定性的なものが多かったので、今回とは性質が違うので、量を決めなければいけないということなので、一つは、Aに関しては2つ以上の介入研究またはコホート研究のメタアナリシスがあって、かつ1つ以上が用量反応曲線をちゃんと見たメタアナリシスが必要だという、かなり強いエビデンスと言うことができるということ。
A2のほうは、それよりちょっとあるのですけれども、「かつ」ではなくて「又は」ということで、1つ以上の用量曲線のメタアナリシスがある場合という形になって、あとはメタアナリシスはあるけれども用量反応曲線がないというふうなレベルになってきているわけですが、これに関しましていかがでしょうか。横手先生、どうぞ。
○横手構成員 目標量に限って数値の正確度を示すエビデンスレベルをあらわすということで、よくわかりました。また、これまでのガイドラインとの違いというところも明確に御説明いただきました。我々構成員の中ではその特性やこれまでのガイドラインの違いが明確にわかるわけですが、このまま世の中に出たときに、少し心配があります。と言いますのは、これまでに多くの診療ガイドラインが普及していますが、その中でA、B、C、Dという表記は、専ら推奨グレードに使われているのです。
○佐々木(敏)構成員 そうだ。
○横手構成員 特に参考資料1でお示しいただいた4ページ、5ページが一番オリジナルに近いと思います。高血圧学会とCKDの学会のガイドラインなのですけれども、グローバルにA、B、C、Dの「D」というのは、科学的根拠から、「逆に行ってはいけない」ということが定着しているのですね。このため、使うほうの現場で混乱を招いてしまうのではないかという懸念がございます。つきましては、この区分について、どういう文字あるいは数字で表現するのかというところをぜひ慎重に御検討いただきたいと思いました。
○佐々木(敏)構成員 大変プラクティカルな御示唆をありがとうございます。確かにそのとおりですね。考えさせてください。
○伊藤座長 そのとおりなのですね。A、B、C、Dは、推奨グレード1、2、3とかそういうのがエビデンスレベルということで、これは推奨とはちょっと。量としてここまで食べましょう、ここまでやめましょうという推奨とちょっと違うので、もう一度それを。確かにそのとおりですね。
ほかには御意見ございますか。いかがでしょうか。
それでは、佐々木先生、こちらの右側のほうはよろしいとして、左側のあらわし方をどういうふうにするのか。A、B、C、Dでいくのはやめたほうがいいかもしれませんね。
○佐々木(敏)構成員 わかりました。私もそれは同意見でございます。
○伊藤座長 ということで、それを検討していただくということにしたいと思います。
ほかにこのエビデンスに関して。柏原先生、どうぞ。
○柏原構成員 血圧とこのイベントの関係のガイドラインをつくるときに議論になったのですが、例えばコホート研究と介入研究の質の違いの議論ですけれども、コホート研究では、例えば120を超えると直線的にイベントがふえてくる。ところが、その仮説のもとで130未満に強力に高圧してイベントが減るかというと、それが示されなかったということで、介入試験がエビデンスレベルが高く、特にRCTですけれども、コホート研究はその下という位置づけが最近のトレンドではないかと思うのです。食事はまた別であると思いますが、そのあたりはどういう整理でしょうか。
○佐々木(敏)構成員 そのあたりも当然ながら考えに入れなければなりません。実際に研究論文を整理しておりますと、目標量を決めるための研究は、観察型のコホート研究がかなりの割合を占めていること。それから介入試験が、特にサプリメント等のそういうHigh Doseではなくて、食事由来の栄養素を調べているものに関しては、介入試験がどうしても期間が短くて、どれぐらい摂取させているかというコントロールがなかなかうまくいかないというような。実は介入していても、実際に介入できているかどうかを調べてみたら、それほどうまく食べられていなかったということが、食品や献立を使って実際に食べていただく介入試験では相当問題になっております。
それを考えますと、介入研究とコホート研究、観察と介入のエビデンスレベルの違いというものではない、栄養、食事特有の問題があって、どちらを上、下に持ってきて、幾つ組み合わせたらよいのかということが、ほかの国の研究者も十分にまだ結論を出せていないようでございまして、私どもの頭の中もまだ結論を出せていないという状態で、きょうはこのようにさせていただきました。そして、これ以上分けるとさらに分類されるので、それは避けたほうがよいだろうという考えがありました。
○伊藤座長 佐々木先生、どうぞ。
○佐々木(雅)構成員 介入研究あるいはコホート研究の対象が日本人か、日本人でないかということは、同じ扱いなのでしょうか。
○佐々木(敏)構成員 日本人のほうが摂取量の分布や介入される量や種類が、食事摂取基準が扱うものに近いというか、日本人ですから望ましいというのは当然でありまして、日本人の研究とそうでないものを分けるということをしたいと思うのですが、そこまでなかなかできない。数がない。ゼロになるという問題がありまして、定性的には本文の中で幾つかは書けると思うのですけれども、このガイドラインをつくるときの規則として、一つの研究を大きく扱い過ぎないということがありますね。そのために質のよいメタアナリシスを使いなさいというのが、ガイドラインをつくるときの非常に重要な点だと思うのです。そうしますと、日本における研究を使おうとすると、諸外国のまとめのメタアナリシスと日本の1つ、2つの研究とどちらを大切だと考えるのかという難しい問題が生じてまいります。
今回はDose-Response Meta-Analysisがあれば、そちらを優先するのと、もう一つは、私たち、海外の研究であっても、摂取量が日本人の摂取量分布から大きく外れていないかどうかのチェックをしております。最初にサプリメント等で食品から摂取できるところから逸脱しているものは数値の算定に用いないと書きましたが、それと同じようなことを一応チェックするようにしております。したがいまして、日本人の摂取量分布から大きく異なる集団を用いたメタアナリシスの結果というものは、本来一つ下げてみるべきなのだろうなと思います。けれども、なかなかそこまで丁寧にチェックができなかったり、それでもってそのメタアナリシス全体を使わないのかと言われると、また難しいですので、正直に申しまして、この種のエビデンスレベルをつけるというのは、今回は試みというところで御理解いただいて、そして課題としても記述するということをさせていただきたいなと考えています。
○伊藤座長 これは試みということであって、できるだけこの報告書がエビデンスにちゃんと基づいて公平な立場からやった。それを判断するものとしてエビデンスというものを取り入れたのだ。ただし、これはまだ論文の数も少ないし、国際的ないろんな違いもあるので、そういうことは限界として置きながらも、そういう試みを始めましたと。そういう形できちんと表現していただくのがよろしいと思いますね。
どうぞ。
○雨海構成員 今回、佐々木先生を初め、エビデンスレベルを誰でもわかる形できちんと透明化したい、とのご配慮で目標量の非常に教育的で透明化された、ということが非常に斬新なことだなと思います。
実際に使う側としても、一つの目標量がこのエビデンスレベルだという、その背景には具体的なリファレンスがあるということがわかります。そこでご質問なのですが、このガイドラインを使う側としては、この目標量に関しては、このエビデンスレベルのもとになるリファレンスが具体的に提示されるのかどうか、教えていただきたいと思います。
○佐々木(敏)構成員 本文中にどの論文を用いたかということが書かれますので、それは参考文献を読んでいただければ。読んでいただかないとわかりませんが、読んでいただければわかるような構造になっているはずです。
○伊藤座長 よろしいですか。このエビデンスについて、新しい試みですけれども、非常にサイエンティフィックに公平にきちんと判断したという一つの証拠として、これは試みですが、ちゃんと行うということにしたいと思います。
全体を通じて何かお話はありませんでしょうか。宇都宮先生、何か。必ず当てますので。
○宇都宮構成員 先生方の御意見のところで大体問題点は出尽くしたと思いますので、ワーキングのほうでも具体的なことについてさらに検討したいと思います。
○伊藤座長 勝川先生、どうぞ。
○勝川構成員 年齢の件に関して、75歳以上のデータが非常に少なくて、70歳以上で区切っても、75歳以上で区切っても、実際上それほど変わらないというのが、少なくとも私の分野では言えることだと思います。そういう現状も知っておくために出すというのも一つの方法かと思います。今後の課題がより明らかになるのではないかと思います。
○伊藤座長 その辺は文章の中できちんと御説明いただくということが必要かと思いますね。
ほかに全体を通して御意見、御質問等はございませんか。よろしいですか。
本日はどうもありがとうございました。
それでは、事務局、お願いいたします。
○清野栄養指導室長 大変有意義な御意見をたくさんいただきまして、ありがとうございます。
今後のスケジュールでございますけれども、冒頭に資料1でお伝えしたとおり、次回第4回の検討会では報告書(案)について御議論いただきたいと考えております。なお、次回の検討会は12月21日(金)15時~17時に開催いたしますので、よろしくお願いいたします。
最後になりましたが、健康課長の武井から御挨拶をさせていただきます。
○武井健康課長 本日は、他の要務のため遅参しまして、大変失礼いたしました。また、きょうは雨の中、このように皆さんに御参加いただきまして、心より御礼を申し上げたいと思います。
さて、今回のこの検討会は、日本人の食事摂取基準2020でございまして、5月の第2回検討会で策定方針を整理していただいた後に、6月のワーキングにおいて作業が進められ、きょう御報告いただきまして、まことにありがとうございました。
現在、政府全体といたしまして健康寿命の延伸という観点から、例えば骨太の方針ですとか、厚生労働省としても健康寿命の延伸につきましては、大臣を本部長とする会議体を設置しておりまして、その中でも栄養というのは非常に重要なパーツになっているところでございます。フレイル対策にも資する新たな食事摂取の活用を図るという点が骨太の中でも書かれてございますし、国民全体の健康づくりの取り組みを各地域において一層推進するということが示されているところでございます。
こうした中、食事摂取基準の期待値も非常に高まっていると考えておりますし、今後の御議論の中でさらに検討を深めていただき、次回以降も活発に御議論いただきますようにお願い申し上げたいと思います。
本日はどうもありがとうございました。
○伊藤座長 先生方、どうもありがとうございました。
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