ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 保険局が実施する検討会等> 医療・介護データ等の解析基盤に関する有識者会議> 第2回医療・介護データ等の解析基盤に関する有識者会議議事録(2018年5月30日)

 
 

2018年5月30日 第2回医療・介護データ等の解析基盤に関する有識者会議 議事録

保険局医療介護連携政策課

○日時

平成30年5月30日(水) 10:00~12:00

 

○場所

全国都市会館 第1会議室(3階)

○議題

(1) 参考人ヒアリング(医療・介護分野のデータベースを活用した研究等)
(2) レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)及び介護保険総合データベース(介護DB)の連結について

○議事


○遠藤座長 それでは、定刻になりましたので、これより第2回「医療・介護データ等の解析基盤に関する有識者会議」を開催したいと思います。
構成員の皆様方におかれましては、朝早いうちから御参集いただきまして、まことにありがとうございます。
会議に先立ちまして、本日の構成員の出欠状況について、事務局から御報告をお願いしたいと思います。
○黒田課長 事務局でございます。
本日の皆様の出席状況ですが、松山構成員から御欠席の御連絡をいただいております。また、武藤構成員は20分ほど遅れて参加されるという御連絡をいただいております。
あわせまして、今回から栃木県保健福祉部次長、國井隆弘様に構成員として御参加いただくことを御報告いたします。
本日は代理といたしまして、栃木県庁の工藤香織様に御出席をいただいております。
また、これを踏まえまして、本有識者会議の開催要綱別紙の構成員名簿を一部改正しておりますので、参考資料1として配付いたしましたので、適宜御参照いただければと存じます。
事務局からは以上でございます。
○遠藤座長 ありがとうございます。
それでは、頭撮りをされている方はこれまでとしていただきたいと思います。
本日は、前半に議題1としまして、医療・介護分野のデータベースを活用した研究について、4名の参考人の方々からヒアリングを行って、後半に議題2としまして、レセプト情報・特定健診等情報データベース及び介護保険総合データベースの連結に関する論点について、意見交換を行おうと考えております。
では、参考人の皆様につきまして、事務局から御紹介をお願いしたいと思います。
○黒田課長 事務局でございます。
それでは、順次御紹介申し上げます。
まず、奈良県立医科大学教授、今村知明参考人でいらっしゃいます。
国立大学法人千葉大学予防医学センター教授、国立長寿医療研究センター老年学・社会科学研究センター老年学評価研究部長、近藤克則参考人でいらっしゃいます。
一般財団法人医療経済研究・社会保険福祉協会医療経済研究機構研究部研究副部長、満武巨裕参考人でいらっしゃいます。
京都大学医学部附属病院診療報酬センター准教授、加藤源太参考人でいらっしゃいます。
事務局より、以上でございます。
○遠藤座長 どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、今後の進め方でございますけれども、まず、議題1の運営に関しましては、初めの30分間で主に介護分野の視点からの研究に関しまして、今村参考人と近藤参考人よりプレゼンテーションをいただいて、その後、この2つに関して質疑応答をさせていただきたいと考えております。
さらに、後半の30分で、主に医療分野の視点からの研究に関して、満武参考人と加藤参考人よりプレゼンテーションいただいて、残りの時間は質疑応答に充てたいと考えております。
なお、時間の都合上、大変恐縮でございますけれども、プレゼンテーションはお一人につき約10分でお願いしたいと思いますので、よろしくお願いします。
それでは、初めに今村参考人から御報告をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
○今村参考人 奈良医大の今村でございます。きょうはこのような機会をいただきましたことに心から感謝申し上げます。
きょうお話しする内容としましては、NDBと介護データベースをくっつけたらどんないいことがあるのかということを主眼にお話しさせていただきたいと思います。
資料2-1の内容に沿って、まず1ページ、私どもは今までどういう取り組みをしてきているかというところからお話をさせてもらいたいと思います。我々は今まで地域医療構想とか医療計画の指標作成とかデータの地域別分布などを見るためにNDBをずっとさわってきたという経緯があって、それとあわせて、一般の研究者が普通のコンピューターを使ってNDBをどうやって分析するのかということについても分析してきているという過程でございます。
今まではNDBをさわってきた感じとして、いろいろな問題点と解決策を考えていまして、まずはNDB、こういう国家データベース全体に言えることかもしれませんけれども、匿名化されて非常に細かくデータを区切ってもらうので、ミンチ化したデータからステーキ肉をつくっていくような作業をやっておりまして、それもデータが非常に巨大ですので、牛の解体をフランス料理のシェフがやっているような感じで、なかなかどこを切り出せばステーキになるのかがわかりにくい。それをうまくこなしている。ただ、NDB自身には問題点がありまして、何をしたかははっきりわかるのですけれども、アウトカムになる部分が非常に弱いということがある。どんな状態かとか、どうなっていたかがなかなかわかりにくいというのが、実感として感じている部分であります。
3ページ、今まで我々が医療構想・医療計画、AMEDなどで研究している体制でございますが、ここにおいでの先生もおられますけれども、NDBのオンサイトセンターの東大、京大のメンバーと、知見を多くお持ちの松田先生らと、奈良医大で協力して、どうやって分析するかを考えている。
4ページ、NDBそのものが物すごく威力があるなという実感がありまして、これは言うまでもなく保険診療のほぼ悉皆データでありまして、分析している中で、国民の9割以上は受診しているようだと。それを追跡できるすごいデータだということを実感しております。
5ページ、これは細かい字で恐縮なのですけれども、全体の結果の概要でございまして、今まで我々の研究の成果として、データをくっつけるというミンチ肉をステーキ肉にしていくという意味で、名寄せとか、1入院を1データ化して、1外来を1データ化して、それを1患者1データ化していく。それに今まで物すごく時間がかかっていたのですけれども、それを通常の時間の範囲内で、入院ならば30分から3時間ぐらいでできる、外来ならば10時間ぐらいかければ大概の分析はできるというところぐらいまでは持ち上げてきたというところであります。ですから、粗集計などは割と単純にできるようになって、複雑な集計もある程度できるようになってきた。例えば日本で一番使われている薬は何ですかというと、ロキソニンですねということがわかるようになってきた。
その展望として、6ページ、今、レセプトの束であったものをつなぎ合わせて、1人の患者単位で入院や外来のデータを一元化して、これを時系列で追いかけられるようにデータを整備していまして、巨大過ぎて扱いづらい点というのは解決しつつあって、今、巨大なコホート化に向かって動いている。今まではわからなかった有病率とか罹患率といったものがわかるようになって、それを追跡できる。恐らく死亡率もわかるので、コホート化はできる。これをすると、物すごく宝の山だと。ただ、アウトカムとして乏しいというところがこのデータの弱いところであります。
7ページ、NDBに介護保険の総合データベースがくっつくと、最強の国家データベースになるのではないかと思っていまして、連結できれば新しい未来が見えると思っています。
8ページ、実際の介護データベースの情報とNDBを並べてみましたけれども、NDBのほうは、入院と外来の診療の部分で何をやったかがわかる情報で、それに対して、介護データは、今、どのような状態かがわかるデータです。ADLや認知症の度合いとかです。そして、どれだけ訪問介護に来てもらったか、どのような施設に入ったかということがわかるのですけれども、何がイベントとしてあるかというのはわからない情報なのです。脳卒中があってその施設に入っているのかというのがなかなかわからない。それに対してNDBのほうは、どうも脳卒中のようだということはわかっても、その後どうなったのかというのは、退院して外来に来たときのことはわかるのですけれども、介護度などはわからないということで、アウトカムのわからない状態とイベントがわからない状態が2つのデータとしてある。これをくっつけると、一連のデータとして、一人の患者さんが入院から介護にどうやって移っていくのか、その中で状態がどう変化していくのかを追いかけることができると考えます。
9ページ、では、どんなメリットがあるのでしょうかということを自分なりに整理してみたのですけれども、まず1つ目としては、アウトカムがわかるだろうと。ADLや介護度や認知症の進行度というのが介護DBからはある程度わかるので、いわゆる健康寿命というものをより精緻に見つけていくことができる。
さらに、メリットの2つ目として、医療と介護の連携の度合いを見ることができるのではないかと。私は介護の調査、特に医療系の調査をずっとやっているのですけれども、どこから来てどこへ行くのかということさえもわからないのです。医療と介護、特に高齢者では複雑に絡み合っていて、それぞれの相手方ではどうなったかというのがなかなかわからない。その連携状態がわかるだろうと。
3つ目として、総費用というものがわかるだろうと。個人で見たときに、一人の人に医療でどれだけかかって、介護でどけだけかかっているのかがわかるのではないかということです。
では、それをもうちょっと細かく御説明いたしますと、10ページ、NDBは「何をしたか」がわかる。例えば手術や特定の薬を始めたということがわかる。介護の関係で言うと、急性のリハをどれだけやったのかというのもわかるのです。それに対して、介護は、どんな病気があったのかはわからないですけれども、介護度の進達やADLや認知症の進行ということがわかる。こういうアウトカムをイベントとくっつけるという非常に大きなメリットがあるのではないかと。
11ページ、これは今、NDBのほうで死亡確定ということをずっとしておりまして、NDBのほうでほぼ死亡が確定できそうになってきています。すると、長期間生存率というものができるだろうと。イメージとしてお示ししておりますけれども、年齢階級別にある手術をした後、どれだけ死亡されたかというのを時系列で追いかけるということがNDBの中でできるようになる。それに対して、隣の図は、超過死亡というものを計算できるのです。SMRに当たるものですけれども、年齢階級別に普通に亡くなっていく方とこの手術した後の方がどれだけ死亡率に差が出るか。その差が超過死亡という形になって、年齢が上がるほど上がっていくのではないですかというイメージを、今、お示ししております。
12ページ、それと全く同じなのですけれども、実際に時系列での死亡率が低いような場合は、超過死亡そのものが高くないというケースも想定されて、ほとんど超過死亡がないようなヘビーな医療行為というのもわかるだろうと。これは今、死亡はわかるのですけれども、日常生活にどれだけ保てましたかというのはわからないのですね。これをADLに変えていく、認知症に変えていく、介護度に変えていくということで、健康寿命に近いような形でこれを見つけていくことができるのではないかと思います。
13ページ、今のお話のおさらいですが、NDBは死亡情報までは何とかいけそうですけれども、健康寿命がいつ終わるかというのはNDBではわからないであろうと。手術や投薬開始後、アウトカムとしてのADLや認知症、介護度がわかるということは、今までですと、どれだけ生き延びたかという観点で見ていたのが、どれだけ元気で暮らせたかということが見えるようになる。この年齢階級別に出せるということは、超過ADL低下率とか、超過認知症進行率というものも恐らく出せるのですね。ですから、くっつけることによってこういう未来がある。
2つ目のメリットとして、医療・介護の連携がわかるだろうと。実際に多くの介護施設ですと、どういう施設からやってきて、どういうところに出ているのかというのは、毎年介護の実態調査ではやっていますけれども、それはそういう調査をしないとわからないのですが、これをくっつけると恐らくわかるのです。組み合わせの利用量がわかる。地域ごとに医療と介護とどんな役割分担をしているのかということもわかるようになるので、この連携体制を調べることができるのではないかということは大きなメリットだと思います。
3つ目、15ページ、最後ですけれども、医療と介護の総費用というものがわかるのですと。今まで医療は医療、介護は介護で費用を見てきたと思うのですけれども、一人の人を追いかけたときに、本当にどれぐらいかかったのでしょうかということが見える。今、医療費が高くても介護費が安くなるということは十分考えられるわけで、逆に医療費が低くても介護費が高くなってしまうことも考えるのですけれども、それを実証することがなかなか難しい。それを見つけることができるのではないかということが考えられます。
以上、メリットとしてお示ししましたけれども、今までわからなかったことが大きくわかるようになるだろうという意味で、この2つのDBをくっつけることのメリットは非常に大きいと考えています。
御説明としては以上です。
○遠藤座長 ありがとうございます。
ちょうど10分間で、ありがとうございました。
続きまして、近藤参考人から発表をお願いします。
○近藤参考人 このような機会をいただいたことに感謝いたします。
医療・介護データ等の解析基盤の可能性と課題、両面感じていることについて、意見を述べさせていただきます。
1枚めくっていただきますと、保健、健診データのようなものから医療、さらに、介護のデータ、これがいよいよつながる時代がやってくるということです。私どもは今まで黄色く塗った介護の部分を中心にいろいろやってきた。その経験から、感じている可能性、及び今までやってきたことで感じた課題を御紹介します。
まず、私どもがやっていることは、次の日本地図にあるような、日本老年学的評価研究、ジェイエージズとかジェイジズと略していますが、2016年ですと全国で40ほどの市町村に御協力いただいて、20万人の高齢者に御回答をいただきました。国が勧める、介護予防・日常生活圏域ニーズ調査の拡張版に当たる調査をやってまいりました。それと市町村からいただいた要介護認定データをつないで、主には介護予防、健康寿命を保てるためにどのような施策に意味があるのだろうかということを中心に研究してまいりました。
4ページ目、その一つの成果が社会保障審議会介護保険部会等でも使われております。今まではハイリスクな個人の要因をわかっていたのですけれども、ビッグデータにしたことで、地域単位で集計して比較することで、健康な町と不健康な町があって、その関連要因が何かということが見えてまいりました。
例えば右上でいきますと、点1つが小学校区になります。一番転ぶ人が少なかった小学校区では11%、それに対して、一番多かったところは34%の方が転んだと答えておりまして、日本国内に3倍転びやすい町があることがわかって、大変驚いたわけです。
それで、関連要因を探してみましたら、スポーツの会に行っている高齢者が4割いるような町は転ぶ人が少なく、1割程度しか行っていない町は転んでいる人が多いという関連が見えてきました。当時、介護予防事業はハイリスクアプローチで、基本チェックリストでひっかかった人たちに案内をして介護予防教室にきてもらおうとしていたのですが、余り来てくれなくて定員が埋まらないなどという実態もありました。400億円ぐらいかけたのに高齢者人口の0.8%しか来ませんでしたから、このグラフでいきますと、40分の1目盛りも動かなかったことになります。それに対して、まちづくり、皆さんで通いの場をつくりませんかと促すのはどうか。実際に参加者が10%多い町は実在するわけですので、そんなまちづくりを通じて健康なまちづくりをめざす。そういう方向に政策が変わっていった一つのきっかけになったものです。
左下は、縦軸が鬱、メンタルヘルスの指標でして、横軸が趣味の会参加率。趣味の会に参加する高齢者が多い町はメンタルヘルスがよい。追加分析しますと、自殺も少ないということが出てまいりました。
右下は、縦軸が認知症リスクでして、認知症リスク者が2倍多い、2倍認知症になりやすい町があるなどということも見えてきました。これまた横軸は地域にある趣味の会、スポーツの会などなど、8種類の会いずれかに参加している方の割合で、7割を超えるような町は認知症リスクを持っている方が少なく、参加している方が2~3割にとどまるところでは認知症リスクを持っている方が多い。こんなことが次々と見えてきて、社会参加、生涯現役社会は健康寿命保持の面でもとても大事なのだということがわかってまいりました。
これらは2010年のデータでした。次の5ページは2016年の調査データで、これらの知見に再現性があるかどうか確認したものです。この図は本邦初公開、本日のために用意させていただきました。結論としては、やはり再現性がありました。厚労省が一生懸命やっている介護予防活動については、2013年当時は関連がなかったのですけれども、2016年になってようやく関連が出始めているという結果が出てきて、ほっとした面がございます。重回帰分析で、ひとり暮らしの高齢者の割合とかの影響をさし引いても、係数はむしろ調整したほうが大きくなる。社会参加を促すことで健康なまちづくりが進むという方向はそんなに間違っていないのではないかと見えてまいりました。
こういうことを積み重ねてきて、レセプトデータなどとつなげたら何ができるか、あるいは認定データとつなげたら何ができるか。個票レベルでやったものが6ページ、7ページあたりです。6ページは認定データとくっつけることで、基本チェックリストの10問に答えた方に縦断研究の結果にもとづき重みづけして、0~50点ぐらいのリスクスコアというものをつくりました。そうしますと、点数が上がるごとに3年以内に認定を受ける確率がどんどん上がっていくという関係が大変きれいに出てきました。これは都市部でも農村部でもほぼ同じような曲線を示しております。この点数を町全体で下げるような取り組みをして、健康なまちづくりの進み具合を評価できる指標が、データをつないでいただくことで縦断研究が可能になります。
レセプトデータをつないだ分析例が7ページです。先ほどの点数1点当たり大体介護費用が3,600円にあたる。こんな計算もできるようになりました。こういうものを組み合わせていくことで、シミュレーションシステムのようなものをつくれないか。この町であと5%参加する人がふえたら、介護費用で幾らぐらい低減が期待できますよ、そういうことを関係者で共有することで施策を進めやすくなるのではないかと考えています。
ここまでは可能性の面でした。一方で、課題も少し見えてまいりました。次の8ページ、左の未調整と書いて方は、厚労省が公表している通いの場の箇所数、1,000人当たりの箇所数と認定率の関係を単純に見たものです。通いの場をふやすほど認定率が高いことを意味する右肩上がりの関係が出てきて、何だこれはということになります。しかし、これは実は後期高齢者の割合が多い農村部、市町村ほど、通いの場づくりを一生懸命進めていて、そういう後期高齢者が多い地域ほど認定率が高いという第3の要因、後期高齢者割合の影響を受けていることがわかりました。
それを調整したのが右側のマル2という図です。後期高齢者割合を調整しますと、右肩下がりで、被保険者当たりの通いの場が多い保険者ほど認定率が低い傾向があるということが確認できます。交絡要因と言いますけれども、こういうものを探して、その影響を適切に差し引かないと、誤った影みたいなものを見てしまうということです。こういう研究をして、妥当な指標づくり、妥当な見せ方をしないと、誤った解釈をしてしまうおそれがある。こんな課題があることを実感しております。
9ページ、データの質も大事だという課題です。右側のマル2というのが私どもがデータの質を管理するようにいろいろ気をつけてやった調査データです。それでは右肩下がりのスポーツの会、趣味の会に参加率が高い市町村ほど認定率が低いという関係が出てくるのですが、同じニーズ調査項目を各市町村がそれぞればらばらの調査会社に頼んで実施したニーズ調査のデータを御提供いただきました。そのデータでプロットしてみたら、ごらんのとおり、関連がないという結果が出てまいりました。このニーズ調査のデータは今回の介護保険の総合データベースに載っているのです。この現象が、先ほどの交絡要因を調整していないせいなのか、データの質のせいなのか、さらに吟味は要りますが、期待した関連が出ない場合がある。ひょっとしたら調査会社がばらばらであることによって、データの質にばらつきが大きいと、本来ある関連が見えなくなっているおそれがある。このように、今後さらにデータの質を高めていく努力も要るのではないかと思います。
10ページ、一部の市町村から健診データもいただけるようになったので、介護のデータと健診データをくっつけた分析にも着手しております。その一部ですけれども、10ページでは、まず健診データについても、同じ市内に思いのほか地域間格差がありまして、高血圧や糖尿病が2倍多いエリアが見つかったりする。そのような現実に対して、重点対象地域等を設定して、要因を分析して、アプローチするということが、今後大きいデータベースができることで進めやすくなるのではないかと思います。
11ページ、その一例ですけれども、私どもは社会参加が大事らしいということを感じているものですから、それとの関連を見たところ、健診の項目の一部ですけれども、このような関連が出てきました。社会参加を促す取り組みで、健診についてもいい結果が期待できるのではないかと感じております。
12ページ、交絡要因は調整したのかという御質問をよくいただきますので、個人レベルのデータを使って、右に書いてあるようないろいろな要因を調整してみましたが、それでも社会参加している方たちでは高血圧が少ない。これはまだ横断分析ですけれども、今後縦断追跡が可能になれば、縦断のデータでも分析できます。
もう一つの課題を考えるために、13ページに、マル1の政策・事業のインプットから、マル8の長期効果、インパクトまでフローチャートを示しました。今度のデータベースで、マル1からマル8までデータがそろえば、きめ細かく、マル1はいいのだけれども、マル2がちょっと調子が悪くてパフォーマンスが落ちているとか、そこはいいのだけれども、マル5の変化が乏しいのだとか、いろいろな分析をして施策を、打ち手を見直すというマネジメントサイクルが回るようになるのです。が、今回、これら全てのデータが載っているかという視点で見ますと、14ページに書きましたが、マル7、マル8のデータはすごく充実するので、課題の設定は飛躍的に進むと思います。しかし、マル1からマル10まで全部そろっているのかというと、まだそろっていないものもありそうで、その辺も徐々に整備していかないと、状況はわかるのだけれども、その要因がわからない。どうしたらどう変わるのかというところは見えないままに終わってしまうのではないか。そこは意図的に、あるいは並行して、例えばマル1からマル3に当たるどういう施策をどの自治体がどのようにやっているのかという情報も一方でつくっていって、それを結合すると、こういう打ち手がより効果が大きいということがわかるようになるのではないかと期待しております。
後期高齢者割合の一例を示しましたが、交絡要因、調整すべき要因の情報も集めておかないと判断を誤りますので、そこはある程度研究が要るのではないかと思います。
それから、データの質の管理が必要だということも紹介しました。
このような課題についての吟味が必要ですので、どのように活用するのかという方法論についての研究班、あるいはそれを使っていろいろ分析したいという市町村を支援するような事務局機能もあわせて御検討いただきたいと思います。
以上です。
○遠藤座長 ありがとうございました。
それでは、ただいまのお二方の御報告に関して、御質問、御意見があれば承りたいと思います。いかがでございましょう。
石川構成員、どうぞ。
○石川構成員 日本医師会の石川でございます。
どうもありがとうございました。医療・介護データの結合で、私たちは医療と介護の行く先といいますか、アウトカムは、今村先生の場合は死亡という形で一つ明確に出しておりましたけれども、私は社会参加というのは、医療も介護も、基本的にはそれが目的だと思うのです。だから、本当はICFのようなものがどかっと入ってくると、より鮮明になると思うのです。恐らくそういったICFの概念を医療と介護のデータをつなげることによってより一層近づくのではないかと。より一層見えてきた感があります。
以上です。感想です。
○遠藤座長 ありがとうございました。
ほかに何かございますか。
樋口構成員、どうぞ。
○樋口構成員 今、近藤先生のお話からも、ここで議論しているのは医療関係のデータと介護関係のデータをまず結合して、突合して、その上で大きなデータベースとして分析していくと何か出てくるだろうと。しかし、今のお話の中で、それだけではまだ足りない部分もある。それはこの検討会で、まずその段階が過ぎてからの話なのかもしれませんけれども、もう少しこの時点でさらに他のデータとの結合などの希望があるのならば、という点についてどういうことなのかを補足していただけるとありがたいということが一つです。
もう一つは、これは素人考えなのですけれども、ビッグデータというのは、今村先生のものもそうだし、近藤先生のものも、はっきり一定の目標あるいは仮説をつくっておいて、それで比較してみるという話が、ビッグデータになるとAIが何でもやってくれるのかどうかよくわからないのですけれども、思いがけず初めに想定していなかったものが出てきて、なるほどというような経験をするという話を聞いているわけです。これまでのこの研究でそういう話が、意外にこういう話が予想もしていなかったのにというものがあったのかどうかを教えてくださるとありがたいと思います。
○遠藤座長 そうしますと、お二方に、不足しているデータはあるかどうか、あるいは仮説検証型の研究ではないようなものについてどう考えるか、こういう御質問です。
では、近藤参考人、今村参考人の順でお願いします。
○近藤参考人 まず、どのようなものが必要なのかということで、概念レベルでいきますと、13ページに示したマル1からマル8のもの、あるいは、費用対効果なども中長期的にはぜひ見るべきだと思いますから、そうすると、費用データですね。レセプトという意味ではすごく充実するのですけれども、どんな取り組みにどれぐらい人を割いてどれぐらい効率的に各保険者でやったのかという情報は、タイムスタディー的なこともやらないと見えなかったりするので、その辺は何に使いたいのかによって必要になる情報が結構あるのではないかと。国も健康格差の縮小を目指すと言っているとすると、例えば所得階級別のとか、正規の人と非正規の方で健康状態は違うのかとか、それらを比べてみようと思うとそういう情報も必要になる。その辺は何に使うかによっていろいろあるかと思います。
2番目のAIを使った分析。実は昨日AIの研究会をある企業とやっていたのです。可能性はすごく感じています。一方で、パラメーターチューニングと言うのだそうですけれども、結局AIでやっていくときに、この変数には、例えば線形を仮定するのか、Uシェイプを仮定するのか、その辺を機械学習でやらせる手もある。しかし既にわかっていることについては、例えば肥満も痩せもよくないのだから、BMIについては3群に分けてやるべきで、どうもこの辺がカットオフ値らしいなど、そのようなことはかなり蓄積がある。そういうことまでAIに最初から全部やれというのももったいない話で、そういう意味では、わかっていることを組み込んだ上で未知だったものを効率的に探すような、言うならばコラボといいますか、AIと人間が一緒に対話をしながらやるというのが実際のところなのだと理解しております。
○遠藤座長 ありがとうございます。
今村参考人、お願いします。
○今村参考人 不足のデータに関しては、近藤先生のお話にもあった、リスク情報とかステージ情報がないというのが非常に困る。NDBは何をやったかがわかるのですけれども、どんなステージの人に何をしたのかがわかるわけではないので、行為に対しての結果はわかるのですが、リスク調整というものがなかなかできない。それが本当に医学の、我々がふだんやっているリスク調整ということのできないというのは弱いところなのです。ただ、全数ですので、抽出の誤差なども出ませんので、そういう意味では、行為に対しての結果は物すごく意義があると思うのですけれども、我々としては事前のリスクとか、どういう状態の方なのかが欲しい。そういう意味では、介護情報はそういう情報がある程度は入っていますので、ステージの状態に近いものは今回、入ってくるとは思うのですけれども、医学的なリスクは載っていないというのが、今の状況だと思います。
びっくりするような何か大発見がありますかというのは、実はNDBをさわっていると毎日のようにびっくりすることが見つかります。でも、NDBそのものがまだ解析されていないので、それがうそか本当か全然わかりません。それが診療報酬の点数のとり方が特殊なのか、その地域の特徴なのか、前段で何かステップが踏まれて起こっているのかが、実はわからないのです。ですから、いろいろな変わったことは見つかるのですけれども、それがうそか本当かという検証に実際には手間取っていて、今までの言われていることの復唱的なことは割と表に出しやすいのですけれども、そこから先、これは本当かなという検証が難しいです。
先ほどのAIと実はそこは関係するのですけれども、私どもAIでディープラーニングなどをさせているのですが、教科書データと言われるものがないわけです。ですから、本当に正しいデータというものがないと、巨大なデータであっても、どれが正しいのかがわからないので、なかなか機械学習の世界に合わない。実際、我々はディープラーニングをやってみて、普通の医療解析とどちらが勝ちますかといったら、まだまだ普通の医療解析が勝つのです。それはNDBそのものがどういうデータかという解析がまだ十分にできていないので、どういうところに注意しないと教科書データにならないかまだわからないというところがある。物すごく可能性を秘めているのですけれども、もっともっと中を調べていかないと、AIで本当に力を発揮するところまではいかない状態だと私の個人の感想ですけれども、理解しています。
○遠藤座長 ありがとうございます。
大体予定した時間なのですけれども、何かまだ御質問があれば承りたいと思いますが、いかがでしょうか。
田中構成員、どうぞ。
○田中構成員 すごく将来予測といいますか、全体がどうなっているのかが見やすいデータになっていると思います。ただ、前回も言いましたけれども、人口減少で、今後市町村の人口規模はぐっと小さくなってきます。例えば高知県の大川村というところは、2040年の社人研の推計ですと、171人しか村民がいません。そうなると、このNDBとKDBを含め、医療費適正化だったり、市町村の介護保険事業計画だったり、つくるわけですから、そういう小さい市町村でこれをやっていくのは基本的に無理ではないかと。そうすると、全体の圏域で見ていく仕組みでやるとこうなるみたいなことも、この会議の議論ではないですけれども、そういう視点もどこかに要るのではないかと聞きました。
以上です。
○遠藤座長 御意見ということで、今のことで何かコメントはございますか。
今村参考人、どうぞ。
○今村参考人 私がやっている医療計画の分析は、松田先生もやっていただいていることなのですけれども、市町村にこのデータを分析して提供していくということも一つの目的で、特に松田先生にデータブックをつくっていただいて、各市町村に配っているので、ここである程度分析して、各市町村の指標になるようなものができてくれば、それを分析して配付するということはできると思うのです。それの試行錯誤も、今、我々の研究班でもさせていただいている状況であります。
○遠藤座長 近藤参考人、何かあれば。
○近藤参考人 私ども、いろいろ分析してみると、先ほどもごらんいただいたように、かなり地域間格差があるということが見えてまいりまして、その結果を住民たちにお返しすると、もっと自分たちのエリアのことを知りたいというリアクションは思いのほかあります。例えば、自分たちの小学校区は転びやすいのか転びにくいのか、あるいは、認知症になりやすいのか、なりにくいのか、どちらなのだと。なりやすいなどと出ると、どうしてだという話になって、ほかの地域はもっと皆さん体を動かしていますよと言うと、では、俺たちもやるかなど、いい循環につながった例もあります。ですから、その辺は道具ですので、使い方がとても大事で、それも一緒に開発していくというか、事例を積み重ねることが必要かなと感じております。
○遠藤座長 ありがとうございます。
それでは、後半に移りたいと思いますので、続きまして、満武参考人から御報告をお願いしたいと思います。
○満武参考人 医療経済研究機構の満武と申します。
配付資料、「超高齢社会における特定健診・医療・介護データを連結した研究と次世代NDB」につきまして、御説明させていただきます。
2ページ目、当方らの研究グループは、国民健康保険、後期高齢者医療広域連合、介護保険広域連合の保有する給付データ、レセプトデータに加えて、被保険者台帳も収集して、特定健診・医療・介護データの連結を実現し、分析を進めております。
具体的には、保険者との覚書や契約に基づき、個人情報、個人情報の例としては、氏名や生年月日の日付等でございますけれども、こういった情報を削除して、そして、介護被保険者番号と医療被保険者番号を匿名化した後に国民健康保険、つまり、市町村が保有する介護被保険者台帳に記載されている国民健康保険及び後期高齢者の被保険者番号等、こういったものを活用することで、医療と介護レセプトの連結をしているといったものでございます。
本日は、連結したデータの分析例として、4つ、1つ目が、死亡前の医療費と介護費、これはターミナル・看取加算別に集計したものです。2つ目は、ターミナル・看取加算の算定状況の推移、これは市町村別です。そして、3つ目としては、医療・介護の地域連携、これは超急性期脳卒中対象加算患者というのをレセプトデータから判別しまして、これを地域連携診療計画管理料算定別に医療費と介護費、また、平均在院日数等を見たといったものが3つ目でございます。
最後は、特定健診の受診回数と医療費ということで、これは健診を受けていない人と受けた方がどうなのかといったところについて御紹介します。
3ページ目、これが、我々は今フィールドを三重県に置いておりますけれども、三重県において収集している代表的なファイルです。まず、NDBにはまだ被保険者台帳が収集されておりませんが、我々は特に真ん中の国保・被保険者台帳や介護・被保険者台帳といったもの、あと、その下に後期・被保険者台帳とございますけれども、こういった3種類の被保険者台帳を収集しております。特に右から2番目の介護・被保険者台帳には、上から保険者番号や被保険者番号、個人番号、性別などが記録されています。これらを一番右の介護レセプト、介護給付費のデータとの突合に使います。また、その下に異動事由というものがございまして、こういった異動事由には、死亡や転出、また、生活保護の受給開始や国籍の喪失、その他喪失等の情報が記録されています。この異動事由を活用することで、次のスライド等で御紹介させていただいている死亡等の分析を行っております。
また、介護の被保険者番号と医療レセプトに記載されている被保険者番号は当然介護と医療は異なりますので、番号が異なります。75歳以上の後期高齢者となった場合も、国保の被保険者番号とは異なるといったものになっております。そのため、連結するために、我々は三重県の市町村が保有する介護・被保険者台帳、ここには、上のところには介護関係の被保険者番号等が入っておりますけれども、その下に国保及び後期高齢者の被保険者番号が記録されておりますので、左側に示したファイルの国保・後期とのレセプトデータとの連結が可能になります。そして、一番左の特定健診情報、これも受診券情報でございまして、特定健診の対象となっている人なので、受けていない方の被保険者番号等も記録されておりますので、未受診者の分析もできるといったところでございまして、こういったものを入手することによって連結を可能としております。
つまり、まとめますと、3ページ目の右下に囲っておりますけれども、こういった介護・被保険者台帳に記載された複数の被保険者番号等のレコードを利用することで、医療・介護レセプトの連結を実現しているといったところでございますので、この被保険者台帳がないと、医療レセプト、介護レセプトの連結ができない状況になっておりまして、先ほど御質問がありました新しいデータ項目といったところで、一つ、こういったものも必要になってくるのではないかと考えております。
4ページ目、これは国保と後期高齢の先ほど御説明した資格喪失事由により死亡を特定しております。そして、その死亡した患者さんの医療と介護レセプトを連結して、ターミナルケアに関連するこのターミナル・看取加算別に集計したものでございます。左側がターミナル・看取加算がない方で、1万3,743人としております。右側はターミナル・看取加算ありでございます。左のターミナル・看取加算がない場合は、赤色とピンクのところが入院の医療費になります。ピンクのところがDPC・入院となりますので、大体入院の医療費が、死亡月がゼロで、1カ月前、2カ月前、3カ月前、6カ月前まで見ておりますけれども、こういったところで当然死亡月も入院・DPCの価格が高くなっております。
ところが、このターミナル・看取加算がある場合は、死亡月、右側のグラフですけれども、ゼロ月のところのブルーのところが外来の医療費になっておりまして、在宅で亡くなっておられるので、この外来の医療費が多くの割合を占めておりますけれども、大体各月も25万円程度で安定しているといったところが見てとれるところでございます。ただ、これは在宅ターミナルが可能な地域と可能でない地域もございますので、こういった地域別にどういう違いがあるのかとか、医療計画の立案等を考えていこうということで、三重県と一緒に分析しているといったところでございます。
5ページ、これは三重県の例ではございませんけれども、死亡前の医療費・介護費を分析したもので、ほぼ同じ方法論での分析が、これは千葉県の柏市のデータですけれども、可能になっているといった一例でございます。
続きまして、6ページ目を御説明させていただきます。まず、左側の図は、我々研究チームが開発した可視化ツールの一例でございます。先ほどのターミナル・看取加算の算定状況をWebブラウザ上で可視化して、これはデータを提供していただいた保険者や三重県庁、県医師会に提供しています。きょう御説明する可視化や分析は、三重県の医師会、歯科医師会、薬剤師会、三重大学、県病院会や在宅医療支援病院の代表者で構成される三重県庁の在宅医療推進懇話会との連携のもとに実施しているといったところでございます。
表示は、ピンクの方が居住地域になっておりまして、右のブルーの方は、どこの医療機関にかかったかといったところを示しております。こういった国保・後期高齢者の被保険者台帳の保険者の情報、これは市町村や郵便番号も含まれておりますので、こういったものから居住地域、そして、どこの医療機関にかかったかがわかるといったところでございます。
一例です。こういったものが幾つかWebで我々は提供しておりまして、三重県のステークホルダーの方たちが利用できるようになっておりますけれども、ターミナル・看取加算に関しては、上の四日市市や津市は増加傾向にあるといったところが、平成25年が上の図で、下の図が平成27年でございますけれども、こういったもので見られますけれども、下の東紀州はすこし少なくなっているといった例を示して、減少傾向にあるといったところを示しております。
7ページ目、これは超急性期脳卒中の患者について、地域連携に関連する診療報酬点数を請求している場合としていない場合を比較したものでございます。これも医療と介護の連結をしておりますけれども、超急性期脳卒中の治療は、DPCの病院で治療され、ここの在院日数が両方とも大体平均して17日ぐらいでほとんど差はないという結果が出ておりますけれども、連携がある場合は、DPCの退院後に入院をされるわけですが、恐らく回復期リハビリテーションに左側、連携加算がある場合は62日の平均在院日数があるのに対して、連携加算がない場合は20日になるといったところでございます。こういったところは、回復期リハビリ病院を有する地域と有さない地域との地域差があるのではないかといったところで、これも三重県と一緒に分析を深めているところでございます。
8ページ目、特定健診の受診の受診率向上が保険者さんの一番興味のあるところでございますので、医療費にどう関係しているかといったところで、特定健診受診回数をゼロ回が青、1回から2回が赤、3回が緑色となっておりますけれども、この受診回数別に医療費等を観察しているといったところでございます。そうすると、入院の医療費の累積に少し差が出るとか、こういった結果が出ておりますといったところで、こういった分析も被保険者台帳等があるとできるといったところで進めてございます。
最後のスライドになりますけれども、ここも幾つか、我々が使っているデータファイルの一覧を左の方に示させていただきました。一番上が医療費、真ん中が特定健診、下が介護となっております。黒の矢印のファイルは、現在でもNDBが保有しているファイルでございますけれども、白もつけ加えることで今回紹介したような分析が可能となるのではないかと考えております。既に我々はデータベース化しており、多くの研究者が多様な研究を行うことが可能となるプラットフォーム機能を有しております。先ほどから御発表がございますけれども、この1億人を超える医療と介護費のデータを保有するという日本のデータは、まさに国家資産とも言え、世界中から今、こういう悉皆性、網羅性を持った分析、そして、データベースができるのかといったところで注目されているところでございます。我々の成果がわずかでも貢献することができればと考えております。
御清聴ありがとうございました。
○遠藤座長 どうもありがとうございました。
それでは、最後になりますが、加藤参考人、よろしくお願いします。
○加藤参考人 よろしくお願いいたします。
本日、このような機会をいただき、まことにありがとうございます。私からは、海外におけるレセプトデータ等の利活用の動向について、レセプトデータを初めとする保健医療データがどのように利用者に提供され、二次利用に活用されているのかということを御報告させていただきたいと思います。
1ページ、当報告の背景でございます。NDBの利活用の推進は、2011年に第三者提供が開始されて以降、これまでさまざま場面で重要な課題として議論されてまいりました。一方で、NDBの利用件数自体は年々ふえてきておりまして、数の議論もさることながら、今後はデータ利活用の推進にかかわる内容、質に関してより議論が活性化していくのではないかと考えております。
そこで、今回レセプト情報を初めとするこういった保健医療データの二次利用が海外においてどのような経緯や手順、あるいはどういったニーズ、どういった事例に対して行われてきているのかということについて、複数の地域でインタビューを行ってまいりましたので、それらの調査の概要を整理して、現在議論されている医療・介護データ等の解析基盤の質的向上に寄与し得る情報として御提供させていただきたいと思っております。
2ページ、調査対象や対象データ等のマトリックス表になっております。これは私、あるいはその他共同研究をしている者が伺って、いろいろ話を聞いてきた事項を整理しておりますが、各国ともに、これが全てではありません。このほかにも例えば民間や保険者等で公式にデータ提供しているような事例もあるかと思いますので、これが全てというわけではないのですが、比較的代表性のある組織、代表性のあるデータベースの提供主体から情報収集を行っておりますので、こちらのマトリックス表に並べております。アメリカ、イギリス、フランス、韓国、台湾とございまして、調査対象はデータ提供の主体になるわけですが、アメリカでは、省庁の傘下組織及び研究の支援グループがデータ提供を行っております。CMSが省庁傘下組織になりまして、CMSと契約関係にあるResDACという組織が研究者向けの支援グループとなっており、後ほど説明させていただきます。イギリスはCPRD、クリニカル・プラクティス・リサーチ・データリンクという省庁の傘下組織がデータを管理し、データ提供を行っています。フランスの場合は保険者、「クナム」と読みますが、CNAMTSというのは、簡単に言うと被用者保険であり、被用者およびその家族を対象としております。韓国の場合は保険者、NHISを対象としています。韓国はこのほかにいわゆる審査支払機関でありますHIRAというものもございますが、今回調査したのはNHIS、保険者です。台湾は省庁、衛生福利部を対象としています。
これら各国がどのようなデータを扱っているかと申しますと、イギリスを除いては、主にレセプトデータを取り扱っています。その下にありますように、レセプト以外にも、各国それぞれに保険データですとか、あるいはがん登録データなどをつなげて、より情報量の多いデータをサービスとして提供している事例がございます。イギリスの場合は、このCPRDというところが管理している、いわゆるクリニカルデータ、臨床医から提供を受けたデータを核として、研究者向けのデータをつくっているということです。悉皆のレベルですが、アメリカ、イギリスは悉皆ではございません。フランスはほぼ悉皆で、韓国と台湾は悉皆であるということです。
3ページ、各国とも、韓国を除いて比較的早い時期からデータ提供が開始されております。それから、提供件数ですが、少し提供件数はばらつきがあります。例えばイギリスでは、共同研究や試行的に政府などにデータ提供している場合を事例として含めるのかどうかで数値が変わるため正確な数はわからないということでしたが、例えばアメリカでは年に300件から400件、イギリスでは発行論文数が年200件とありますので、仮に1研究者あるいは1研究チームが1本や2本論文を書いているとして、100件以上はデータ提供しているのではないかということが推測されます。フランスの事例は、2013年のデータですが、50名の研究者が定期的にデータベースを利用する状況にあるとのことです。韓国は昨年で729件、台湾は2011年以降で1,000件以上データ提供が行われていると伺っております。
利用料の徴収ですが、フランス以外は利用料が徴収されています。フランスでも、事前にデータ利用に関する講習をCNAMTSが提供しておりまして、ここを受講しないとデータ提供がされませんが、この講習料は別途発生するということです。
それから、民間の利用ですが、アメリカ、イギリス、フランス、韓国、台湾のうち、韓国以外はデータを提供しています。ただ、例えばアメリカやフランスのように審査がより厳しく行われるというような事例もございます。
4ページ、各国事情をもう少し詳しく説明していきたいと思います。アメリカの事例です。アメリカにおきましては、省庁傘下組織以外に、ResDACという組織がございます。ResDACはミネソタ大学公衆衛生学部医療政策・管理学科に設置されている組織であり、メディケア・メディケイドデータに関するCMSの契約事業者として利活用支援に注力しています。すなわち、利活用支援を第一目的としたNPO組織であって、CMSと契約を結んで利用者に向けたサービスを提供しているということでございます。ResDACがあるので、CMSは基本的にデータ管理業務に専念できているということです。
このデータ利用料金なのですが、対象範囲次第です。すなわち、データ量が極めて限られる場合は少額なのですが、非常に長期間にわたり詳細なデータを全て必要とする場合には、情報量が細かいデータの場合には、場合によっては100万ドルを超えたりすることもあるということです。
メディケア・メディケイドのレセプトデータを利用者が手続する際に必要となる書類作成ですが、今のNDBでも、提供依頼申出者が申出書を提出する際の手続きにおいて、書類作成支援などの利用者向けのサービスは外部機関にある程度委託されています。ResDACではこういった支援するだけでなく、研究に適したデータをどう使ったらいいかとか、研究に関連するアドバイスなどにも対応したサポートを行っていたり、そうした個別支援だけでなく、CMSデータの活用方法を関連学会で講演するなど、幅広い教育支援を行っております。
15名を超えるスタッフがこのデータ利用サービスのためだけに存在しているということになります。
5ページ、イギリスにおきましては、CPRDは保健省の傘下組織でございまして、総合内科医から集めたデータにがん登録情報や社会経済的地位情報といったソーシャルエコノミックなデータも含めて連結させて、世界中の公衆衛生領域の研究者に対してデータ提供を行っています。これはデータを買ってもらうという形になるわけです。データに含まれる登録者数ですが、悉皆ではないのですが2,000万人、大体イギリス全土の3分の1程度の人口はカバーしているということです。
データ提供時の利用料を活用して、スタッフの充実など、サービスを拡充することを心がけているということでした。
6ページ、フランスにまいります。このCNAMTSというのが、いわゆる被用者及びその家族をカバーする全国被用者疾病保険金庫でありまして、データベースを1999年以降拡充させて、現在に至っています。こちらも100分の1のサンプルデータや行政機関向けのデータマートなど、さまざまなデータを用意しています。先ほど申しました講習料金ですが、利用者向けの講習料金が約3,000ユーロということです。また、現在、データ利用の有料化について検討がなされているということです。こちらも100名を超えるスタッフで運用されているということでした。
7ページ、韓国に移ります。韓国の保険者、NHISですが、韓国は保険者は単一ですので、このNHISが管理するデータを提供しております。その際に、データ提供を円滑に運用する組織として、直下にNHISSという組織が設置されています。データ利用に際しては、オンサイトセンターに出向いて使うことになっています。所定の金額を支払うのですが、これが例えば1日幾らという形で定められております。これはホームページからも閲覧できます。
データマネジメントのスタッフは50名前後所属しており、中でも研究者支援として、研究リテラシーを持った専門職のようなスタッフの雇用を進めていると聞いております。
最後、台湾になりますけれども、台湾は日本の厚生労働省に相当する衛生福利部の中にオンサイトセンターが設置されていまして、ここの中に26台の端末が設置されております。利用者は研究目的及び倫理審査委員会の承認書を提出した上で申請をするわけですが、最終的な利用の可否は省、衛生福利部が行うということです。利用料金は午前と午後で分けられていまして、いずれも約2,700円、一日通してやると5,400円ということです。利用に際して、年余にわたって利用するような事例はほぼないということでした。スタッフの数は15人ですが、非常に不足しているということを聞いております。
以上、まとめますと、この9ページ目のスライドになりますが、日本のように省庁がほぼ全てを管理しているのは台湾のみで、アメリカのように研究者利用の運用とデータ管理の運用を別組織で明確に分けている事例やイギリスのように傘下組織が管理する事例、フランスや韓国のように保険者が管理する事例など、まちまちでございました。
また、利用料につきましては、フランス以外はどこも利用料を徴収している状況です。
民間提供に関しては、韓国以外では認められていましたが、より厳格な審査が課されるという仕組みをとっている国もございました。
各国ともにデータ運用、提供について、程度の差こそあれ、比較的充実した体制のもとで行われていたのではないかと思われました。
私の報告は以上になりますが、今回の情報収集に当たりまして、こちらの最後のページのウエブサイトを参照させていただきました。もし関心のある方々がおられたら、こちらをご覧いただけたらと思います。
以上になります。
○遠藤座長 どうもありがとうございました。
それでは、ただいまのお二方のプレゼンテーションにつきまして、御意見、御質問があれば、お願いいたします。
石川構成員、どうぞ。
○石川構成員 日本医師会の石川です。どうもありがとうございました。
満武先生にお聞きしたいのですけれども、4ページ目なのですが、死亡前の医療費と介護費の比べ方で、これはみとり加算で在宅と入院は分けたと考えてよろしいと思うのですけれども、そうすると、従来在宅は意外と費用がかかるぞと言われたのですが、これで見ると明確に入院のほうが費用がかかる感じになっております。やはり医療費だとか介護費だけで考えるとこうなのかもしれないのですけれども、先ほど近藤先生の発表の中にちらっとあったように、家族の労働だとか、そういったことをやると、こちらがふえるのかなと考えました。
それから、ゼロ月の医療費については、これは1カ月のデータとは考えられないので、これはどうなのかなと思いました。ここら辺のところは後で解説いただければと思います。
もう一つ、加藤先生のお話なのですけれども、2ページ目ですが、各国の悉皆性だけではなくて主な対象データ、ここでいろいろなレセプトデータとほかのデータも突合している国があるのですけれども、この突合するIDみたいなものは何か情報はありますでしょうか。教えていただきたいと思います。
○遠藤座長 それでは、まず満武参考人からコメントをいただいて、その後に加藤参考人からお願いしたいと思います。
○満武参考人 御質問ありがとうございました。
4ページ目の見方でございますけれども、これは御指摘のとおりでございまして、疾病のコントロール等もしておりません。ただ単純に集計したらこのような結果が出たといったところでございまして、御指摘の家族やその患者さんの状況によって、トータルのコスト、間接要因も含めたものもかかわってくるといったところでございます。
また、ゼロ月となっておりますけれども、これも月単位で集計をしておりますので、御指摘のとおりで、日単位にまでさかのぼって行っているわけではないといったところでございます。
ただ、こういった基礎的なデータがあると、次の地域医療構想をどうしていった方がいいかとか、地域によってターミナル加算をとれる診療所といったところが全くないような地域、あるいは、これからもう少なくなっているような地域を、保険者さんあるいは地域医師会に提示すると、大体皆さんの実感と同じといったところの感想を得ておりますので、そういったところから、今後、将来どのようにしていったらいいかということを考えるための資料として、保険者様の方に我々も情報提供しているといった状況でございます。
御質問ありがとうございました。
○遠藤座長 ありがとうございます。
加藤参考人、どうぞ。
○加藤参考人 2ページのマトリックス表に関しまして、御質問ありがとうございました。国ごとに状況は異なるのですが、例えばイギリスのCPRDですが、CPRDが扱うデータでは登録者の社会経済的な情報を繋げていると申しましたが、こうした情報を繋げる場合には、いわゆるこのCPRDが持っているIDからまた別IDを出して、それをCPRDでは個人が特定できない形で、別組織においてつなげるという、二重、三重に、IDから個人を特定できないような仕組みを使って紐付けていると伺っております。
これは一例なのですが、どの国もデータの運用側がすぐに個人の台帳に当たって、個人に当たれるという仕掛けにはしないよう腐心しているということがわかりました。細かいことに関しては国ごとに状況が違うのですが、今、申しましたように、IDを異にして管理するなどといった工夫は各国でとられているということでございます。
○遠藤座長 ありがとうございます。
石川構成員、よろしいですか。
ほかにございますか。
樋口構成員、どうぞ。
○樋口構成員 樋口です。
まず、満武先生には1点だけ、最近いろいろなところで高齢者のフレイルという状況にどういうことが関係しているのかという専門家の話を聞く機会があって、この先生の資料の中に歯科レセプトが入っているというお話だったので、歯科口腔ケアとの関連性が非常に大きいのだと教えてくださる人がいて、そういう話が出てきたのかどうかみたいな話、これは質問です。
もう一点は加藤先生で、今の石川さんの質問でカバーされているのかもしれないのですけれども、この会議で多分大きな問題になるのは、日本の場合は法的問題なのです。特にGPDRと言うのでしたか。25日に施行されたEUの個人情報規則というのが一方で大騒ぎになっていて、日本も他人ごとにはならないわけですね。この中にイギリスもあり、フランスもあり、イギリスは出ていくと言っているけれども、出ていっても適用はありますから。韓国だって、台湾だって同じこと。アメリカは独自に何か調整をしたらしいのですが、法律の専門家ではないのに申しわけないのだけれども、こうやって調査に行ったところで、個人情報保護の指針であれ、規則であれ、ほかでもいいのですけれども、法律上の問題が非常に気になっていて、こういうデータベースの利用活用についてどう整理しているのかというお話も聞けたのかどうかをお伺いしたいと思っております。
○遠藤座長 それでは、満武参考人、加藤参考人の順でお願いします。
○満武参考人 ありがとうございます。
歯科、フレイルに関してでございますけれども、我々の共同研究者がフレイルのデータとこういったデータをつなげて行おうとしているところでございます。そして、歯科に関しては残念ながらまだレセプト電算化率が低かったというところもありますので、十分な分析ができていないのです。ただ、三重県の在宅医療推進懇談会等でこのデータを出すと、歯科の先生たちが在宅医療をかなり熱心に行っておられて、こういった実態、在宅医療が必要な患者さんがどこにいるのか、歯科の先生たちがどこまでカバーできているのかは是非出してもらいたいという要望が来ておりまして、そういったところで、電算化率が上がったときには分析を是非してもらいたいといった要望が寄せられているところでございます。
○遠藤座長 加藤参考人、どうぞ。
○加藤参考人 御指摘ありがとうございます。
私が今回インタビューをした対象というのは、主に研究者向けのサービスをいろいろ運用している人たちが中心なので、法律の専門家というわけではないので、余り詳しいことはわかりません。ただ、今回のこの報告に当たって、各国のウエブサイトを見ていますと、研究者向けの説明ページがあるのですが、かなり冒頭のところで、我々はこれこれの法律に基づいてやっているのです、といった前提となる法律上の立て付けの説明が出てくるようになっていたりして、そういう意味でもかなりセンシティブにやられているのだなということを感じました。
○遠藤座長 ありがとうございます。
ほかにございますか。
松田構成員、どうぞ。
○松田構成員 今の樋口先生の御質問に対してなのですけれども、その前の石川先生の御質問に関しては、私が知っている限りでは、全てのここにある国は個人のIDを持っています。生涯変わらないIDがあって、フランスと台湾の場合には、ICカードが個人別に作成されていて、その情報にアクセスするためには、個人のIDカードと医療IDカードが一緒に入らないとアクセスできないという形での管理をやっているようです。
樋口先生の今のお話で、例えばフランスの場合だとCNILというものがありまして、これは何かというと、情報及び自由に関する国家委員会というものがありまして、個人情報を使う人は全てその委員会での許可を得ないとデータが使えないという法的な根拠はあります。
簡便に使う場合、これは実は日本で言うDPCに相当しますけれども、フランスの場合も病院からこういうDPCみたいなデータを出すのですが、そのデータを出すということに関しても簡易のチェック表で審査を受けなければいけない。毎年毎年やらなければいけないのですけれども、そういうものが情報の提供とか利用に関しては法律で定められているという状況があります。
また、御参考までにそれについて書いた論文がありますので、お送りさせていただきます。
○遠藤座長 ありがとうございました。
ほかに何かございますか。
まず武藤構成員、それから、葛西参与の順でお願いします。
○武藤構成員 御発表ありがとうございました。
満武先生の御発表について、4ページのような資料を出していただくと、次に何をしたらいいのかを考えるアイディアをいただけることがわかりました。多分この手のデータ分析の意義の大きい特徴ではないでしょうか。実態をつぶさにあらわすことが目的というよりも、大きな見取り図を描くことで次のアイディアにつなげることが目的だと考えられるという意味ですばらしいなと思いました。
加藤先生にお尋ねしたいことが2点ございまして、一つは、資料の3ページにある利用料の件です。先ほどの御説明の雰囲気と資料を通じて、例えばアメリカとかイギリスは、利用料といっても、ある意味、データを売っているという感じの印象を受けましたが、台湾とかフランスはわずかな手数料を取っているという感じで、利用料といっても位置づけが随分違う印象を受けました。アメリカとかイギリスに関しては、データの販売に近い位置づけをしているとの理解でよいのでしょうか。また、データがたくさん利用されるほど価格を高くでき、出すデータ量にも制限がないのかということをお伺いしたいです。
もう一点は、民間利用に関して、通常の申し出者よりも公益性を満たすかどうかについてはより厳しい審査があるところもあるというお話だったのですが、その場合、どの部分が厳しさとして加わるのかということについて、少しヒントがあれば教えていただきたいと思います。民間の利用で申し出たときに、付加される価値とか制限事項は一体何かということです。
以上です。
○遠藤座長 では、加藤参考人、お願いします。
○加藤参考人 御質問ありがとうございます。
まず、データの提供料に関しては、武藤先生がおっしゃるとおりで、韓国と台湾はオンサイトの使用料、一方で、アメリカとイギリスは、かなり高い金額でデータを売っているというイメージではありました。ただ、アメリカにもイギリスにも言えるのは、この利用料を活用して運用体制を充実させている、ということです。だから、データ提供を支援するスタッフですとか、アメリカに関してもデータ利用料は時として高額になるのですけれども、基本的にはこの利用料を原資として、サーバーを増築したり、スタッフを雇ったりしており、この利用料を原資として運用体制の維持拡大を図ろうという発想から、利用料は設定されているのだと聞いています。なので、逆に言うと、この利用料でデータベース構築やデータ提供の各種運用についてかなり自走できており、国の税金などは入っていないとは言わないですけれども、かなり少ないと聞いています。そういう発想の違いがあるということです。
2点目の具体的な事例、審査基準ということなのですけれども、例えばフランスで伺ったのは、民間のある団体がデータを使うにしても、自社の商品をセールスするためのマーケットリサーチに使ってはいけないとかという基準があると聞きました。アメリカもそのあたりのところはだめと聞いたわけではないのですが、しっかりと見ているのではないかと思います。
もう一つ興味深かったのは、アメリカでそういうことをして、どんどん民間の人がこれを使っているのかというと、必ずしもそうではない。データの中身ですとか、この審査がなかなか大変だということを聞いて、思ったほど利用率が高くないという回答をいただいています。
イギリスに関しては、利用料が民間のほうが高く設定されています。逆に言うと、民間を対象とした利用料に対して、一般研究者に対する利用料を低く抑えて差別化を図っていると聞いております。
以上になります。
○遠藤座長 ありがとうございます。
では、お待たせしました。葛西参与、お願いします。
○葛西参与 私からは加藤先生にまず1つ目の質問がありまして、アメリカ、フランス、韓国もかな。教育プログラムがあると思うのです。前半、近藤先生の話もあって、私もITで統計とかAIを開発するのでわかるのですが、例えば交絡要因の話をされていたと思うのですが、調整因子がないと因果の逆転みたいなことが起きて、これは正しいのかどうかと悩みますねとか、AIだと当然鞍点があるのでチューニングをしないと正しさは得られないだろうと。こういったことについて、例えば私どもが考えるときに、公衆衛生とか健康医療政策という政策レベルの統計としては、既に統計がありますから、これはある一定の正しさをもって公表するものなのですけれども、これが急に例えばEBMとかEBHとかと言い始めると、まして、HTAとかと言い始めるとどきどきしてくるというか、どのぐらいこのデータを信用すればいいのだろうかと。そのときに、統計のことがわかっていない方が安易にデータを活用することの危険性というものは感じていまして、そういうことに対する教育プログラムが各国の教育プログラムに入っているのかどうかというのが、加藤先生へのまず1つ目の質問です。
2つ目、満武先生には、同様なのですけれども、近藤先生とか今村先生、どちらもデータの利活用されているシーンを私は勉強させていただいたことがあるので、何となくわかっているつもりなのですけれども、満武先生のところでやられた場合に、まさに調整因子であるとか、例えば自動化をしたときのサドルポイントの回避をしたとか、何らかデータをIT化するときにチューニングする作業が結構あったと思うのです。そういったところの御苦労はどんなことがあったのか、簡単に御説明いただけるとありがたいと思います。
○遠藤座長 加藤参考人からお願いします。
○加藤参考人 御質問ありがとうございます。
実際に各国ともに非常に運用体制は充実しており、国によっては100人を超える体制でデータ提供しているとありますが、例えばフランスなどの事前講習に関しても、聞いたところによると、フルセットで受けると3,000ユーロということでしたので、もしかすると、その他のコースがあるのかもしれません。
例えばアメリカでは、学会で細かいデータの使い方ですとか、こういう調査に使ったらこういうアウトカムが出ますということもかなりResDACで情報提供しておられて、そのかわり、そのセミナーに参加するにはまたお金がかかったりするわけですが、利用を志す研究者がデータ利用に必要な情報にアクセスできる体制が組まれています。
イギリスのCPRDでも、半ば研究デザインをつくるところから支援するような体制を組んでいるとも聞いています。
台湾も、省と連携している公教育機関が幾つかあって、例えばここにある倫理審査委員会の研究承認書というのは、多くはそういう連携機関からの研究助言や指導を踏まえて行われているものと思われます。韓国はそこまで細かく聞いていないのですが、研究スタッフをたくさん雇用する流れになってきているところを見ると、研究者への支援の必要性を認識していらっしゃるのではないかと感じました。そう考えますと、各国ともに葛西参与がおっしゃっておられたような懸念があって、それに対する仕組みを各国なりに構築していっているのかなと感じている次第です。参与がおっしゃられるように、利用者のリテラシーを向上させるということは、これらのいずれの事例においても提供する組織の中でかなり主要な問題意識として持っておられるという印象を受けました。
以上です。
○遠藤座長 ありがとうございました。
それでは、満武参考人、コメントをお願いします。
○満武参考人 調整因子等の前に、またIT化、データベース化、分析をする上で、またチューニングという話もありましたけれども、一番我々が苦労しているのは、レセプトデータ、介護データも、医療制度、介護制度に基づくデータですので、まずその制度を知って、そして、実態がどうなっているのか、どのように運用されてこのデータがつくられているのかということをきっちり把握しないと、御指摘のように全く現実とは違う結果が出てくるといったところでございます。
例えば、今日は死亡に関して、異動事由というところを使って判別していると言いましたけれども、ここも異動事由にすぐ死亡のデータが入って、死亡されたら反映されるといったところではなくて、ここの捕捉率も100%ではないといった前提を踏まえなければいけません。
また、加入日、喪失日というのがございまして、ここのデータも使って、本当にこの方がこの期間に、この保険者に加入されているかといったところもプログラム上で判別して検出しなければいけない。あるいは、もっと細かい話になると、被保険者番号に関しましても、いろいろなデータの持ち方、半角であったりとか、全角であったりとか、途中でハイフンが入ったりとか、そういった様々なところがありまして、そういったことを踏まえた上でデータ分析しないと、繰り返しになりますけれども、全く現実と異なるデータが出てきますので、そこが一番苦労しているといった点でございます。
そのほか、統計解析に関しては、様々な手法やソフトウエアがありますので、それを活用すればいいという理解で我々は分析を進めているというのが現状でございます。一番時間がかかっているのは、制度と実態と運用がどうなっているのか。そこをきっちりと把握するといったところが一番時間のかかるところでございます。
○遠藤座長 ありがとうございます。
よろしゅうございますか。
まだ御質問はあるかと思うのですけれども、もう一つアジェンダがございますので、本日はこれぐらいにさせていただきまして、もし御質問があれば個別にお聞きいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
参考人の皆様、本当に有意義な御発言ありがとうございました。今後検討会で議論をしていく上で非常に有益であったということで、改めてお礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。
(参考人退席)
○遠藤座長 それでは、次の議題に進ませていただきます。議題2について、事務局から資料の説明をお願いします。
○黒田課長 それでは、お手元の資料3に沿いまして、御説明申し上げます。
この資料は、前回第1回の会議の資料中で、検討テーマを6つお示ししておりますが、その中の(2)と(3)につきまして、第1回の有識者会議で出されました御意見を踏まえて、事務局のほうでたたき台として御用意したものでございます。
下のところに通しページが打ってありますが、その1ページでございます。主な検討テーマは前回の資料の中で6つお示しをしておりますが、その中でこの資料は(2)と(3)を整理しておりますということをお示ししております。
その次の2ページ以降で、第1回の会議における構成員の皆様からの主な御意見を記載しております。2ページの(2)でございます。まずはデータの収集・利用目的につきまして、かなり具体的な御指摘を構成員の先生方からいただいておるところでございます。例えば介護データベースの根拠法、NDBの根拠法、その規定ぶりに差があるといった御発言もございましたし、また、その公益性ということを今回の連結というテーマと照らし合わせたときに、この幅の考え方といいますか、きちんと考えていかないといけないというお話。
公益性に関しては、さまざまな場面でテーマ設定が具体的にされますので、そういったことも念頭に置くべき、あるいは、国民の方々にもメリットが具体的にわかりやすく示していかなければいけないという御意見。
それから、一番下になりますが、個別の保健指導にお使いいただくKDBと今回のNDB、介護DBとの役割分担、両方とも必要なわけですが、それに関する御意見等もございました。
3ページ、先駆的な研究例として、KDBを活用した研究もございましたが、それと今回のNDB、介護DBの連結との役割分担はどうしていくのかということもございました。
また、その下、個人特定可能性の関係の御発言もございましたが、介護DBとNDBはそれぞれ匿名のデータベースなわけですが、それを匿名の状態で突合することで課題設定をした場合でも情報量がふえますので、リスクが増大するという点にどのように対応するのかという点。それから、収集の過程でのプロセス等々についての留意も必要だという話でございました。
また、3ページの一番下にございますが、NDBはこれまでガイドラインでやってきたということから、実効性を担保するための措置が、いわば運用ベース、合意ベースになっているという点が課題だというお話もございました。
4ページ、第三者提供の関係では、先ほどの前半のセッションとも重なりますが、諸外国の例でも、さまざまな研修を受けた上での利用ということもございますということ、それから、これまでのデータ構築のサイト同様に、試行運用してみて、課題抽出して、拡大をしていくといった運用もあるのではないかといった御意見もございました。
こういったかなり具体的な御意見を前回いただいておりますので、前回の資料をベースに事務局で御用意したものでございます。5ページ以降をごらんください。
まず5ページ、(2)データの収集・利用目的、対象範囲の中のデータの収集・利用目的でございます。
6ページ、まず法律に書いてある規定の整理を改めてさせていただいておりますが、NDB、介護DBともに、収集・利用目的は法定をされておりますが、その下の表にございますように、法律上の規定ぶりに若干の差がございます。特に計画の部分については両方とも記載がございますが、介護DBの側については、それにプラスアルファの規定もされているということがありまして、この両方の規定ぶりに差があるということがございます。
7ページ、この法定の利用目的、収集目的をガイドラインで拡大をするという運用になっておりまして、その部分につきましては、医療の質の向上、学術の発展といった形で運用されているところでございます。
8ページ、そういたしますとということで、論点I-1として添えさせていただいておりますが、今回の連結というテーマも一つ契機にした上で、この収集・利用目的の法的な位置づけ等についてどのように整理するのかという点を論点として挙げさせていただいております。特にその下にございますが、法定の目的と運用の組み合わせのやり方、それから、法律の中でどこまで書いていくのかという点が論点でございます。
その下に幾つか添えさせていただいておりますが、そのページの一番下のところに表形式で置かせていただいております。現在は運用でやっている部分がかなり多いわけですが、それと、法律に書くというやり方と、2つ方法がありますので、その2つの方法のメリットと課題を並べております。
まず、運用のやり方というのは、特に一から始める、初めて始める、この範囲が社会的な合意の範囲なのだということを確認しながらやっていく方法として非常にすぐれたやり方だと。その運用を積み重ねることによって社会的な合意の幅が確認をされていくということですので、そのやり方のメリットは今、申し上げた点だろうと考えます。
一方で、運用に委ねられておりますので、強制力はないという点、それから、合意ベースであるということと表裏ですが、透明性という点で課題はあろうかと思います。
また、右側の制度にするというアプローチにつきましては、それと表裏の関係になりますが、強制力は持たせることが可能で、透明性も法定の部分が出てくればある程度は向上いたしますが、その裏表の関係といたしまして、その運用のルールについては透明でなければいけないという点が求められます。
9ページ、I-2でございますが、利用目的等々を整理した上で、連結ということ自身を収集・利用目的との関係でどう位置づけていくのかという点がもう一つの課題でございます。それぞれの目的の中に含まれていればよいという考え方もあろうかと思いますし、連結ということを特出しして何か位置づけていくのかという点も課題だろうと思います。
10ページ、個人特定可能性への対応でございます。
11ページ、冒頭御説明申し上げましたように、この点に関しましては、匿名での連結ということを前提に置いた上で情報量が増えるという面への対応をどうしていくのかという課題設定でございます。
現在のやり方を11ページ以降で少し整理させていただいておりますが、この部分につきましては、現在のガイドラインに基づく運用の中では、事前の個別審査と事後の研究成果が出てきたときの成果の公表の段階のチェックという2段階で人の目を入れて確認していくというやり方をとっています。
その中で、次の12ページに幾つか書かせていただいているような目的のチェックと、公表される段階で、例えば患者数が非常に少ないケースについてはマスキングをするといった手法とを組み合わせる形で、事前のチェックだけではなくて事後のチェックも確認するということで、この部分については対応しております。
13ページ、これまでのやり方が達成してきたことも踏まえつつ、それから、匿名での連結だという状況とを考え合わせた上でということですが、その下の部分について少し整理させていただいておりますが、匿名性が維持させることが前提ですので、そうしますと、これまでやってきた事前と事後で確認するという取り組みというものもベースにしながら、プラスアルファの対応が必要かどうか、さらに、こういった点も制度のほうに挙げていくのかどうか等々について検討するということかと思いまして、そのような形で論点のII-1として置かせていただいております。
14ページ、マル3、収集・利用目的との整合性の確保でございます。
15ページと16ページ、17ページで現状を添えさせていただいておりますが、まず15ページにありますように、現在の運用は、事前の確認、事後の確認、2つの段階に大きく分けることができると思いますが、その2段階で目的に合った利用なのかということを確認するというやり方になっております。その中で、15ページにありますような幾つかの分類に沿ってそれぞれの項目について確認していくというやり方になっております。
16ページ、その中の事前の部分について幾つか書かせていただいておりますが、目的との適合性を確認するプロセスだということでございます。
なお、こうした個別審査の中で、幾つか対象外になるカテゴリーとして置かせていただいておりますが、例えばレセプト病名のみを使って患者数を推計するといった、もともとレセプトだという制約があるわけですが、利用目的が達成されない可能性があるようなものは個別審査の中で一定の制約をかけている。
それから、特定の例えば遺伝性の疾患のような、非常にメッシュの細かい形で示されるということを通じて差別を惹起するような可能性があるようなものも一定の制約をかけておりますし、また、非常に細かいメッシュで特定の薬剤の使用状況がわかったりするということも、これは例えば営業で使われることも考えられますので、こういったものにつきましては、個別の審査の段階で制約をかけているところでございます。
17ページ、これは事後の部分ですが、先ほどの個人特定可能性の部分と重なりますが、公表の段階での一定の確認、メッシュも含めての確認と、それから、データの返却等々もあわせてお願いしているということでございます。
18ページ、こうした運用をこれまでやってきているわけですが、前半のところで収集・利用目的が確認をされることを踏まえまして、その適合性を確認するための仕組みや手続についてどのように考えるかということで置かせていただいております。特に法律、あるいは法定プラス運用という形で一定の目的が確認されることを前提にしまして、この中では、目的に着目をして適合性を確保する仕組みとしてまずは考えてみるということではないか。その中で制度のアプローチ、運用のアプローチという位置づけをどう考えていくのかという点を置かせていただいております。
19ページ、(3)第三者提供でございます。以上の部分の中で、いわゆる目的なりその目的と合っているかどうかという確認がされることになりますので、この部分では、公益目的が確認されるというものについて、速やかに提供していくという部分を中心にごらんいただこうと思います。特にこの20ページの真ん中のところに記載してございますし、前回の資料でも添えさせていただいておりますが、これまでサーバーの制約等々の中で、提供が決定されてから実際に提供されるまでにかなりの時間を要してきたということにつきまして、さまざまな場面で課題の指摘がされておりました。一定の運用の改善の中で、ある程度の改善が見られてきたところではあります。
また、利用者に対する一定のサポートですとか、オンサイトの話等々も少しずつ進めてきたところではございますし、それに連結という要請も入ってくるということでございます。
21ページ、この点につきましては、論点は2点添えさせていただいております。1つ目は、公益目的だということが確認されるということを前提にいたしまして、迅速な提供に向けた実務上の課題についての対応が求められるという点でございます。特に個別の申請に対する対応もさることながら、事前のサポート、オンサイト等々の活用も含めて、トータルで研究等々にお使いいただく際の事前の予見可能性を確保していくことも重要な課題かと考えます。
22ページ、論点の2つ目ですが、これは将来の利用ニーズの増大にも対応できる仕組みとしてどのように考えていくのかという点でございます。連結というニーズも考えると、これまでのNDBの提供自身もふえてきていますが、連結ということも重ね合わせて考えると、利用の増加ということも考えられますので、こういった点からの課題の解決、課題の位置づけも求められる。特に、これまで個別の申請とあわせてオープンデータ等々の取り組みを行っておりますので、そういったこともあわせてなるべくトータルで活用していただくということを踏まえた課題の整理をしていきたいと考えます。
これらの点につきましては、本日の前半のお話、あるいは先生方のお話も踏まえて、私どもで随時加筆しながら資料としてお示ししていきたいと思います。
以上です。
○遠藤座長 ありがとうございます。
事務局から今のような論点案が出されておりますけれども、時間も限られておりますので、本日は個別論点ごとの議論ということはいたしませんが、御意見あるいは御質問があればどこでも結構でございますので、御指摘いただきたいと思います。いかがでしょうか。
石川構成員、どうぞ。
○石川構成員 日本医師会の石川でございます。
きょうの御報告にもあったのですけれども、私もあの後いろいろと調べてみまして、この介護データベースの最初の内容といいますか、それが調査票とレセプトというこの2つがもとですね。いろいろ調べますと、きょうのお二人の、特に今村参考人と近藤参考人の中にありましたように、生活データのようなものがこの中にどのぐらい入っているのか、これは市町村で結構違うようなのです。例えば家族構成だとか、そういったものについても記入しているところと記入していないところがどうもあって、特記事項の中で書いてある市町村だとか、そういうものもさまざまなのです。これは恐らく、先ほど言いましたように、社会参加だかとかアウトカムのところまでいくのだとすれば、絶対に必要になる要素だと思うのです。今は無理かもしれませんけれども、今後においてそこら辺のところを変えていくとかということを考えていかないと、介護データベースというのは充実しないのではないかと思うのですけれども、その辺はどうでしょうか。最初のインプットデータというのが、お考えか何かあるかどうか、お聞かせいただきたいのですが。
○遠藤座長 事務局、お願いします。
○鈴木課長 御質問ありがとうございます。
介護DBにつきましては、先般お話しさせていただいておりますが、介護のレセプトデータと、介護の要介護認定に使っているデータということで入っています。先生がおっしゃいました要介護認定のときに認定調査員が収集しなければいけないデータは決まっておりますが、ただ、その中で、いわゆる先生がおっしゃいました特記事項ということで、フリーテキストで書けるところもあります。そこにつきましては、今、データベース化はされていない状態になっていまして、そうしますと、認定調査の調査用紙そのものを変えていくということと、もう一つは、データベースの中に新たに項目を追加していくということの2つの作業が今後発生してくると思います。これにつきましては、そもそも論として認定にどのような形でどのような項目が必要なのかといったところから考えていかなければいけない話になってきますので、そういったところは今後認定調査の見直し等を行うのであれば、そういった中でも検討していきたいと思っているところでございます。
○遠藤座長 ありがとうございます。
石川構成員、どうぞ。
○石川構成員 ちょっとした私の提案なのですけれども、ぜひ、私もいわゆる認定員をやったりしたこともあるのですが、例えば家族が調査のときだけいるのか、本当に日中はどうなのかとか、それは非常に大事なことで、もちろん介護の認定のときも必要ですし、今後の介護データをつくっていく上でも大事なので、ぜひその辺は、今すぐとは言いませんけれども、将来に向けて定式化したほうがいいのではないかと思います。
○遠藤座長 事務局としては御検討いただきたいと思います。よろしくお願いします。
ほかにいかがでしょうか。
樋口構成員、どうぞ。
○樋口構成員 2点申し上げますけれども、とりあえずきょうの主な論点案のところで、論点I-1、ページで言うと8ページです。一番初めに問題になっているのが、こういうデータベース収集・利用目的の法的位置づけという話になっていますね。現状・課題で、ナショナルデータベースについては、レセプトは法定目的に基づく利用に加えて、ガイドラインを根拠として公益目的のための利用が行われている。それに対して、介護保険法は、保険法自体に目的が割に広範に書いてあるから問題ない。それを今度結合するということで、法律上の根拠をもう少ししっかりしたらいいのではないかという話が出ているのですけれども、やはり私は先回に出て、ある意味びっくりしたのです。レセプト情報の利用について、昔の話で私も記憶が必ずしも明確ではないけれども、開原先生が座長になって検討会をやって、とにかくこういうデータを利用しましょうとなった。ただし、いろいろ問題があるから限定的にという枠組みをつくったときに、つまり、そういう話ではなかったと思うのです。こちらに高確法というものがあるという話はありました。それはそのときにも聞いていたと思うのです。それが根拠になると。この根拠に外れて目的外利用で、しかし、ガイドラインでやっているという話はあり得ないのです。厚労省が今までそんな不法なことをやってきた話があるわけないではないですか。我々もですけれどもね。だから、発想が間違っているのではないかと思い直したのです。先回、そうか、こういうように狭い目的だったのにガイドラインでうまくやってきたのだと思ったのだけれども、そんなわけがないのです。
ちょっと余計なことだけ言うと、私は法律に基づく行政は、国民の権利に影響を与えるような場合に、つまり、こういう非常に公益性の強いところにそういう話がそもそも適用にならないのではないかと本当は思っているけれども、行政法の専門家でない私が言ってもしようがない。
だから、2つ目として、法律上の根拠なくガイドラインだけでやっているという何か自虐的な話はやめてもらいたい。そんなわけはないのです。これはある行政法の専門家に教えてもらったのですけれども、結局これは行政機関が保有する個人情報の保護に関する法律がもう一つあるわけですね。それを気にしているわけで、急に私も法学部にいるという感じでちょっと読んでみますけれども、8条2項で「行政機関の長は、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し、又は提供することができる」と。その中の4号というところには、学術研究の目的のためにとか、行政機関が法令の定める所掌事務の遂行に必要な限度でどうのこうのと、2号であれ、3号であれ、4号であるわけです。それのどれかにちゃんと基づいて、その上で、その下にガイドラインがあって、我々はやってきましたという話で十分なのです。
だから、先ほど加藤先生か誰かが、どこかの国でもこういう法律に基づいて我々はちゃんとやっているのですと言っていますという話を、何かここで疑わせるような形で、法改正しないと今、危ないのではないかということ自体が、ちょっと過敏な対応だと考えます。全く大丈夫なのですということを私が言ったって絶対大丈夫だとみんな思わないかもしれないけれども、発想が、ちゃんと条文の根拠があって、何とか何とかの個人情報保護の関係に基づく8条の2項の4号であれ、2号であれ、3号であれ、それに基づいてその下でガイドラインをつくっていますよと言ってくださればいいのに、どうしてそう言ってくれないのか。これは意見です。だから、受け入れられなくて、やはり改正しようよという話になるのかもしれないのですけれども、改正などする必要はないというのが私の意見です。
2つ目は、これは本当に調べる能力がなくてできていないのですけれども、伝聞なのでよくわからないのですが、統計法というものがありますね。統計情報を利用するように、統計法というものが改正されてきた。しかも、その新しい改正法は、今国会でまた一つ通って、6月1日に施行されるという話らしいのです。その枠組みが、今回でそうなったのか、前の統計法の改正で既にそうなっているのかはわからないけれども、統計情報は結局国民の情報であって、それを広く使ってもらおうという話になっている。そのときの枠組みが、ここに出てくるような相当の公益性のあるもので利用してもらいたいとか、初めに透明性というので、この計画が明らかになっていて、成果が出てきたときにも明らかになっているという話になっているとしたら、これは厚生労働省が管轄している法律ではないのだけれども、こういうデータをどうやってみんなに利用してもらうかという点では同じなのです。だから、同じ枠組みで考えるのは日本国政府として当たり前なので、もし可能ならば、もし私の情報が間違っていなかったら、統計法の利用の仕方について、こういう話ができてきて、こういう枠組みになっていますと。我々もこれと同じでやりますか、あるいは、我々はそれ以上に何かをやりますかというような話で、何か比較をしてくださるようなことを次回でも御教示願えませんでしょうか。
○遠藤座長 事務局、コメントをお願いします。
○黒田課長 2点いただきました。
後半の点につきましては、統計法の考え方などを含めて整理させていただいて、資料としてお出ししたいと思います。
前半のお話です。先生がお話しくださった行政機関が保有する個人情報の法制がございますが、あれは個人情報だということが前提になっているのですけれども、NDBや介護DBの情報が、匿名化をしてから国にいただいている情報なので、そのまま適用されるかという意味でいくと、そのままは適用されないというお話がある。そこに書かれている基本的な考え方なりというもので、私どもが横に置かせていただいてというところはあるのですけれども
あとは、収集をしていることの根拠は資料でもお示ししていますように、適正化計画なのですが、それで一旦国の持ち物になりますと、各府省の設置法というものがありまして、その法律に基づいて適切に管理するというのはもちろん許容はされているわけで、不法だということではありません。そこは前提です。
その上で、あとは個別法の書きぶりをどうしましょうかという話は課題としてありますねということをこの資料ではお示ししているということです。
今のガイドラインに基づく中でも、そうした考え方に基づいた上で運用しているということだと私どもは受けとめておりますが、その点も資料の中でわかるようにお示ししていきたいと思います。ありがとうございます。
○遠藤座長 樋口構成員、いかがでしょう。よろしいですか。
関連で、山本座長代理、どうぞ。
○山本座長代理 私も有識者会議に出ていて、不法行為をしているつもりは全くないのですけれども、このガイドラインを運用していく上で、法律に書いていない部分が多いのです。したがって、例えば第三者提供するときに、これは法的な契約を結ぶ必要があり、契約主体を特定しないといけない。そうすると、大学の場合は総長という形になり、総長から契約委任を受けた医学部長などと契約するわけで、一般に言う研究者のレベルよりもかなり上のレベルで契約しなくてはならず、これが研究者にとってはかなり不自由や不便があるのですね。
もう一つは、今の法律自体に、例えばこの利用に関して何か起こった場合の対応が全く書かれていないので、その場合は、我々が提供した情報が仮に不正に使われた場合の対応が、やはり契約上の対応しかとれない。契約上の対応しかとれないので、ガイドラインでかなり縛らなくてはいけないという要素もあるのです。したがって、それが本当に法律とは言いませんけれども、法に基づく省令等できちんとルールが決まっているのであれば、何もここまで書かなくてもというガイドラインでもあるのです。全くそういうことが起こらないようにということで書きますので、研究者にとっては使い勝手のいいガイドラインになっていないかもしれません。
だから、そういう意味では、スムーズに運用するために、もうちょっと強制力のあるルールがあったほうが全体としてスムーズに運用できるのではないか。これが介護総合データベースとNDBが違っていると、突合すると非常にルールが複雑になりますので、その意味では添えるべきだと思っていて、それで2つの法律が違っているというところをもう少し検討するべきで、法律でなくてもいいので、若干法制度的な追加を検討してはいかがかと申し上げているのです。違法なことをやっているという意味では全然ないです。
○遠藤座長 ありがとうございました。
違うテーマでも結構でございますが、いかがでございましょう。
葛西参与、お願いいたします。
○葛西参与 私が主に気になっているのは、公益性というポイントが、きょう結論が出るようなものではないと思っているのですが、もうちょっと具体的に言うと、当然営業的に何かこのデータを使うことというのは公益性に反している。特定の企業の、何か営業でデータとして使うことはないと思うのですが、具体例で、先ほどのアメリカの場合、CMSがありますという加藤先生からのお話がありましたけれども、CMSですと、たしか薬剤の償還可否には使っているはずなのです。ところが、HTAには法的には使わないことになっているというような、いわゆるデータのエビデンスとして公衆衛生とか健康政策とか、医療政策ということに使ったときに、どのぐらいのエビデンスとして、例えば医療実務、医療行為のエビデンスとして使っていいのかどうかという話、このあたりがどこのところで線引きができるのかというのは、非常に気になっています。
例えば薬の場合、PMSからリアルワールドデータと、今、話題ですけれども、薬事承認後の調査からどんどんリアルワールドデータにとなるのですが、その中でも、薬剤ターゲットをこのデータから決めていいのかとか、製薬会社のマーケティングは何だろうとか、医療の新技術開発にはこれは使っていいのかとか、各論の部分で何らかルールは必要なのではないかということを気にはしております。これは当然私一人で何か話す話でも、厚生労働省だけで決める話でもなくて、さまざまな意見を聞きながら、ガイドラインの詳細なユースケースを決める必要があるのかなというところを気にしていると。このあたり、先生方からぜひ御意見をいただけるとありがたいという気がしますというものです。
○遠藤座長 石川構成員、どうぞ。
○石川構成員 今の御意見ですけれども、質問ですが、NDBのときは公的に研究で使いますと、公益性が高いとかというのは、皆さん、申し出をしてくる方は大体そのようなことで言います。しかし、有識者会議で見ますと、どう見てもこれは違うのではないか、要するに、もう少しその研究を進めますと、その申し出者が所属するところの利益みたいなものにつながることもありそうだということが見えてくることもあるのです。ですから、私はケース・バイ・ケースで、今までのNDBの中でもそういうことはありましたし、有識者会議で判定するということを幾つか積み重ねていくことが極めて大事だと考えております。
○遠藤座長 ありがとうございます。
どうですか。利用の範囲について、何か御意見はほかにございますか。
ほかのことでも結構でございますが、いかがでございましょうか。
支払基金のオブザーバー、お願いいたします。
○社会保険診療報酬支払基金 オブザーバーの立場で恐縮ですけれども、1点、今の点に関連してコメントさせていただきます。
今、葛西参与からもお話があったとおり、民間における利用目的、公益に資する目的と企業利益に資する目的は隣り合わせになることが多々あるのかなと思っております。その観点から、当然事前の審査の中で、公益性に資するかどうかという審査が行われるかと思いますけれども、同じデータが公益目的でも営業目的でも使い得るということがあったときに、目的外での利用がなされないための仕掛けというものが必要なのかと思っております。現行のNDBのガイドラインでも、利用中の措置であるとか、不適切事案への対応等々とあると思いますけれども、こちらに関して、仮に民間にデータ提供を広げていくとなった場合に、こういった利用後の措置であるとか、不適切事案への対応に関して、変更が求められるものかどうか、ぜひ御議論いただければと思っております。
○遠藤座長 ありがとうございます。
山本座長代理、お願いいたします。
○山本座長代理 NDB、この資料の中に提供範囲が書いてあって、かなり限定されているのです。その有識者会議の中ではずっと議論されていて、例えば民間でも公益的な調査を行うところはたくさんある。ですから、いつかはそのような所に提供できるように検討しましょうと数年間の有識者会議で何度もその話題が出てきています。それはそのとおりで、現状、大分改善はされたもののNDBの処理能力の問題もあり、提供に時間がかかる。それで、民間のものまで受けてしまうと、とても回らなくなるという事情で検討を先延ばしにしてはきています。
例えば、〇〇総研など、民間でも公益的な調査をするところがたくさんあるので、民間であるとか、ここに載っているであるとかという区別は、私の中では現実的な制約によるもので、原理的なものではないと考えているのです。そういう意味で、ガイドラインをつくってきていますので、たとえ民間企業であってもガイドラインをしっかり守っていただければ、他所に漏えいすることはないと思いますし、目的外利用も当然抑えられるはずなのです。問題は、そのガイドラインの強制力で、当然ガイドラインですから強制力はないわけですけれども、何か一部であっても多少強制力を持つようなことにしておくことによって、より実効性が高くなる。
一方で、公益というのは、なかなか難しい問題があって、一見公益に見えなくても世の中が幸せになることはたくさんあるわけですね。例えばスマートフォンが開発されたからよくなったという方もいらっしゃるでしょうし、スマートフォンは完全にビジネスで、公益ではないわけですけれども、でも、全体として社会に発展するようなことがあって、これをとめる必要はないと思うので、そういう意味でのDBでつくったのがオープンデータであり、オープンデータとして十分か不十分かの議論はあっても目的を限定しないで使える。つまり、誰が使ってもいいし、海外からダウンロードしても構わないという形でオープンデータをつくって、これは毎年毎年いろいろな方々から改善の意見を伺って、それを有識者会議で議論をして、ここまではいいのではないかと検討を繰り返しながら毎年育てているのです。
そういう形で、ある意味使えるもので、全く患者さんや医療機関や介護機関に何の損害も与えないようなものなら、オープンにしたほうがよくて、オープンにすることによって公益に限定しない利用、広い意味で世の中が発展するような利用ができると思うのです。だから、今回の論点にもあるように、突合した結果もオープンにできるものがあればオープンにしていって、それは皆さん自由に利用できるという形をとるほうがいいと思うのです。
一方で、本当に公益性が高くて、多少リスクがあってもやらないといけないような研究もあるので、その場合は厳重に管理をしていただいて、利用目的をしっかり審査させていただいて、なおかつ、公表ルールもきちんと守っていただいて使うということだろうと思うのですけれどもね。
○遠藤座長 ありがとうございます。
非常に重要な御指摘をいただいておりますので、今後もこの利用の範囲については、また皆様と御議論を進めていきたいと思います。
本日は、もう時間がございませんので、これぐらいにさせていただければと思います。
それでは、次回の日程につきまして、事務局から何かありますか。
○黒田課長 次回の日程につきましては、また追って御連絡を差し上げます。ありがとうございます。
○遠藤座長 ありがとうございました。
長時間にわたって積極的な御意見を賜りました。ありがとうございます。
それでは、本日の会議はこれにて閉会にしたいと思います。ありがとうございました。
 
 

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 保険局が実施する検討会等> 医療・介護データ等の解析基盤に関する有識者会議> 第2回医療・介護データ等の解析基盤に関する有識者会議議事録(2018年5月30日)

ページの先頭へ戻る