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2022年4月13日 第2回医療分野における仮名加工情報
の保護と利活用に関する検討会

医政局総務課

○日時

令和4年4月13日(水)15:00~17:00

 

○場所   AP虎ノ門 東京都港区西新橋1-6-15 NS虎ノ門ビル3F 【Web開催】


○議事

○厚生労働省事務局:事務局でございます。
それでは、ただいまから第2回の検討会を開催いたします。
構成員の皆様方は、本日も大変御多忙の中、御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。
本日の構成員の先生方の出欠状況でございますけれども、中島先生は御欠席、落合先生と松田先生が16時頃に御退室、また、宍戸構成員が16時半頃に御退室という御予定であると伺っております。
まず、本日の会議資料の確認でございますけれども、会議資料は事前に各先生方にお送りをしておりますが、議事次第と委員名簿のほか、資料1から3まで御用意しております。過不足等がございましたらお知らせいただければと存じます。
本日の議題でございますけれども、前回の第1回の検討会で、どういうユースケースがあるのだろうかというところを現場の皆様方からしっかり御教示いただかなければいけないというお話がございました。そういうものですから、今回は日本製薬工業協会の安中様、小林様、次世代医療基盤法の認定事業者でもございますけれども、一般社団法人Life Data Initiativeの吉原様、それから、国立国際医療研究センターの國土様、4名の方に御参加をいただいております。
それでは、以降の議事進行につきましては、森田座長によろしくお願いいたしたいと存じます。森田座長、よろしくお願いします。
○森田座長:皆様、こんにちは。森田でございます。
それでは、早速始めたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
先ほど事務局から御紹介がございましたけれども、本日はヒアリングを行います。現場の実態あるいはこの分野に長年関わってこられた方々から御知見を賜りたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
順番といたしましては、最初に製薬協の方、次に吉原先生、最後に國土先生という順番で、それぞれ短くて恐縮でございますけれども、15分程度プレゼンテーションをしていただきたいと思います。その後で一括して質疑応答、意見交換に入りたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
早速ですが、最初に製薬協からプレゼンテーションをお願いいたします。どうぞ。
○日本製薬工業協会:ありがとうございます。製薬協の安中と小林でございます。
本日は大変貴重な発表の機会をいただきまして、座長の森田先生をはじめ、関係者の皆様に感謝申し上げます。
それでは、私ども製薬企業のデータの利活用の実例あるいは現状の課題認識などについて御説明させていただきます。
まず、データの利活用事例でございます。こちらはイスラエルにおけるCOVID-19ワクチンの実例でございます。イスラエルでは20年ほど前から全人口の出生から死亡までをカバーする医療分野の統合データインフラを構築しております。これを活用してCOVID-19ワクチンの効果を検討した成果が論文化されております。この結果はさておき、注目すべきはそのスピードだと思っております。右下の青枠にありますとおり、2021年2月1日までにCOVID-19ワクチンを投与された100万人以上というかなり多くの方々のデータを解析し、たった3週間で2月24日には医学会の最高権威でありますNEJMに論文掲載されているという事実でございます。パンデミックのような公衆衛生の危機の際にこのぐらいのスピード感で分析できる環境が日本にも必要ではないでしょうか。
コロナの例を取りましても、ワクチン接種から検査、濃厚接触者の認定後の隔離、感染、発症後にどのような転帰をたどっていくのかという一連の情報を収集することが、新型コロナの病態の解明あるいは医薬品の安全性や有効性の検証、さらには医療政策の立案に必要であるということにつきましては、今回のパンデミックで多くの皆様が認識されたことだと思います。
また、新型コロナウイルス感染症では、後遺症が長く続くということもございますし、時間がたってから後遺症が出てくることもございます。一般に医薬品の副作用も、中には時間が経過しないと現れないものもございますし、さらには本人ではなくて催奇形性の問題でお子さんに影響が出てくる場合もございます。したがいまして、ライフコースデータ、さらには世代をまたいだ調査ができるような環境が必要だと考えております。
薬害再発防止の観点からも、健康・医療データの利活用は大変有益でございます。過去の政府の検討会の提言では、膨大で多様な安全性情報を様々な専門家が効率的さらには効果的に活用できるよう組織・体制の強化を図るとともに、電子レセプト等のデータベースから得られた情報を活用して、薬剤疫学的な評価基盤を整備することが必要であると述べられております。これを基に日本でもMID-NETなどが構築されたと認識しておりますが、残念ながら、それ単体で確認あるいは検証できる副作用リスクは今のところは限定的でございます。したがいまして、今後つながる医療データが増えれば増えるほど特定できる副作用リスクも増えてきて、ひいては患者さんの安心・安全につなげることができると考えております。
医薬品の開発におきましても、リアルワールドデータの活用が世界中で進んできております。お示ししておりますのは、パルボシクリブという女性の乳がんの適応でFDAから承認された抗がん剤でございますけれども、2019年に男性の転移性乳がんの追加適応が承認された事例でございます。承認の根拠データはFlatiron Health社の電子カルテ等から得られたデータですとか、あるいは別の保険請求データベースからの解析結果でございます。実臨床の腫瘍縮小効果、特定の有害事象、さらには治療の継続期間について評価したところ、一定の有効性と安全性が認められたということで、これをFDAが評価いたしまして、リアルワールドデータ、リアルワールドエビデンスによって承認が得られた事例として大変注目を集めました。
詳細は割愛しますけれども、一番上は御紹介したパルボシクリブの事例でございまして、それ以外にもレアながんに対する抗がん剤がまずは初めになりますが、こういったところからリアルワールドデータの活用が進んでおります。下のほうのように、承認申請に直接ではなくても臨床研究で活用していく事例も増えてきています。ただ、残念ながら、御覧いただいていますとおり、データベースは米国のものが中心で、海外での取組が先行しているという認識でございます。
続きまして、こちらは医療データの基盤構築とその利活用に関するOECDの2017年のレポートでございます。簡潔に申し上げますと、青い枠で書かれているところでございますけれども、横軸が電子カルテ等の医療情報基盤の整備具合、縦軸がそのデータベースをどれだけ政策立案等で利活用できているかということを示した表になります。残念ながら日本はOECDの加盟国の中で最下位だという評価でございます。こういったところも改善が必要ではないかと考えます。
医療データの利活用によりまして、患者さんの個人に合った治療がこれから提供できるのではないかという期待がございます。それは患者さんのQOLの向上ですとか、健康寿命の延伸が実現できるということにつながります。製薬企業といたしましては、創薬のスピードやあるいは成功確率が飛躍的に向上すると考えております。このことはひいては開発コストの低減につながり、さらには医療コストの効率化にもつながり得ると考えております。これらを実現するためには、一番下にありますとおり、データ基盤の構築と利活用するための法制度の整備、これを両輪で進めていく必要があると考えております。
続きまして、仮名化データの利活用環境整備に対する期待について少しお話をさせていただきます。
こちらが製薬企業におけるデータの利活用目的と必要なデータのイメージをお示ししたものでございます。研究では、日常診療の情報に加えましてゲノムや画像データなどの詳細な情報が必要になってまいります。次の開発の段階では、薬事申請に利用できるような信頼性を確保したデータが重要でございます。市販後になりますと、研究・開発よりも情報の質については多少落ちたとしても今度は情報の量が必要になってきます。このように、製薬企業のバリューチェーンの中におきましても、目的ごとに必要なデータの量や質が変わってくるということをお示しした図でございます。特に赤枠の研究・開発向けのデータ基盤の整備は、私どもの目線からは少しまだ足りていないのではないかと捉えております。
もう一つ、皆様にぜひ御理解いただきたいという内容がこちらでございまして、製薬企業は患者さんの氏名や住所、連絡先の情報は必要とはしていないということを御説明させていただきたいと思います。データを利用する主たる目的は、個人のデータを統計解析して、その統計解析情報を基に研究・開発に利活用するということでございまして、患者さんに直接例えば住所や電話番号を基に連絡する、コンタクトするということは望んでおりません。例えば治験のデータにつきましては、下のポンチ絵にありますように、医療機関において氏名を被験者識別コードというもの、番号や記号に置き換えた上で入手しております。治験では、我が国においては新GCP下で20年以上治験を行っておりますけれども、この間、患者さんのプライバシーを侵害する重大な事故は私の知る限りでは特段起きていないのではないかと理解しております。製薬企業はこれまで安心・安全に使ってきた経験があるということはぜひ御説明させていただければと思いまして、このスライドを入れさせていただきました。
製薬企業は治験データや安全性情報などを利活用しておりますけれども、これらは薬機法や個情法などの関連法規に基づき適切に入手し、利活用しております。個人情報保護法では、赤枠にございますような例外規定がございます。ただし、こちらにつきましては、製薬企業の単独の研究・開発で公衆衛生例外や学術研究例外を適用できるケースはほとんどないのではないかと考えております。ですから、基本的には同意を取得してデータを入手し利活用するケースがこれまでは一般的であったところでございます。
そのような中で、下にありますような仮名加工情報ですとか、次世代医療基盤法の匿名加工医療情報という概念が出てきております。こちらの捉え方について少しお話をさせていただきます。
まず、4月1日に施行された改正個人情報保護法で新設された仮名加工情報につきましてでございます。これは企業が既に保有している情報を仮名加工することで、当初の目的外で利用できるようにするものでございます。これにつきましては、企業が保有している主には治験データあるいは自社の研究目的で得た医療情報、これを社内で分析して利活用するケースは、青字で書いたとおり文言上は利用できるケースはあると思いますが、ただ、実際のところは赤枠にありますとおり、ニーズは少ないのではないかと考えております。
その理由といたしましては、最近の治験では2次利用につきましても被験者の方から同意を取得しているケースが増えておりまして、仮名加工情報の新設による影響は、昔の治験の古いデータであれば使える可能性がありますが、実際には限定的なのかなと考えております。それから、仮名加工情報は内部分析に限られるということで、外部にデータを持ち出すことができません。これは薬事目的での利活用には大きな障壁になりますし、また、臨床試験データの透明性の向上の取組、あるいは論文投稿で被験者レベルのデータを出さなければいけないということがございますが、これには使えないということ、あるいは共同研究という枠組みはありますが、後づけではできないという制限もございます。したがいまして、個情法の仮名加工情報の利活用は残念ながら限定的なのかなと捉えております。
続きまして、次世代医療基盤法でございます。これは医療分野の研究・開発の推進を目的といたしまして、医療機関にあるデータをそのまま国が認定する認定事業者にお渡しし、認定事業者が匿名加工という個人を絶対に特定できないようにデータを加工した上で、企業を含む第三者に提供することを可能とする法律でございます。しかし、データをどのように加工したのか、つまり元のデータから実際に私どもが入手させていただくデータがどのように変化しているかという大事なことを我々は知ることができません。つまり、データの品質が利用者の視点からいえばブラックボックスのような形になっております。
そのため、製薬企業といたしましては、本来はこの右側の小さい丸にありますように、例えば薬事承認申請や創薬研究などに活用したいというニーズはあるものの、それは難しいと考えておりまして、実際に次世代医療基盤法でのデータの利活用の主な目的は、左側にありますような市販後の自主研究等で何らかの健康を分析するとか、あるいはプロトコルをつくるときの当たりをつけるといったフィージビリティー調査のような形で使うことが中心になるのではないかと想定しております。
このように、次世代医療基盤法や個情法の改正では、残念ながら私どものニーズを完全に満たすものにはなっておりません。解析結果の信頼性を高めて、そのデータを薬事利用するためには、課題が幾つあると思っております。それが青枠の中でございます。1ポツ目が、解析に用いるデータは当然のことながら加工されていないほうが信頼性は高まります。2ポツ目で、例えば薬事申請あるいは論文投稿をする際に、解析に用いたデータをPMDAに提出しなければいけない、あるいは論文のレビュアーに出さなければいけないという現実がございます。
そのため、本日一番申し上げたいことでございますけれども、これらの課題を克服し、解析結果の信頼性を高め、利活用を促進するという観点では、赤枠の3つの仕組みについてぜひ御検討いただいて、実現いただければありがたいと考えております。具体的に1つ目は、仮名化データ、これは氏名、住所、連絡先等を削除し付番する程度の加工、いわゆる治験の世界と同程度の加工で利用者に提供できるような仕組み。2つ目が、分析に用いたデータと元のデータとの間に齟齬がないことを、リアルワールドデータの世界ですので100%確認するというのは現実的ではないと思っていますが、何かしら重要な情報あるいは解析結果に疑義がある場合など、特定の場合にだけ例えば第三者が確認できるような仕組みがあると良いと思っております。そのためには、小さいポツにありますけれども、解析に用いるデータの値が加工の前後で一致していることが確認できることと、次世代医療基盤法では削除しなければいけない削除情報等、対応表ですね、こちらが保管し続けられるという枠組みが必要だと考えております。3つ目に、解析に用いたデータを薬事申請あるいは論文投稿等のために国内外の第三者に提供できる仕組み、これがあると大変ありがたいと考えております。
次ページは、そちらを匿名加工情報や匿名加工医療情報、仮名加工情報と比較した表でございます。加工方法は直接識別子を加工する程度とし、再識別、これはデータの信頼性確保のために本人を特定することを想定していますけれども、最低限利用者ではなくて管理者ができるような形にしていただきたいと思っております。原データとの信頼性の確保、これも管理者ができるような形で。そして、特定の目的内での第三者提供、具体的には薬事申請等で規制当局等に提出可能とすることにつきましては、管理者に加えて利用者もできるような形にしていただけると大変ありがたいと思っております。
仮名化データが利活用できるようになると、次の4つが実現できます。1番目は、薬事申請データとしての利活用が増えて、治験のスピードアップあるいは効率化を実現できます。2番目が、長期の追跡研究が可能となります。これによってより詳細な有効性・安全性の評価が可能になります。3番目に、まずは希少疾患・難病、超高齢者といった領域のリアルワールドデータを用いた研究が拡大していくものと想定しております。最後に、個別化医療を見据えたゲノム情報や画像等を用いた研究も拡大していくものだろうと想像しております。
それを文章にしたものがこちらでございます。1番目が、希少疾患・難病のリアルワールドデータを用いた治験、2番目が、医薬品の長期にわたる有効性・安全性の評価、最後に、個別化医療に向けたがん治療薬の有効性、副作用の予測でございます。
お時間の関係で全て読み上げませんが、一番上の事例をポンチ絵にしてみるとこういう形になるのかなと思っております。具体的には、仮名化データの利活用環境整備によりまして、全ての疾患ではなくてまずは希少疾患・難病あるいはパンデミック対応等の利活用が拡大するのではないかと。さらには、長期研究を含むエビデンス創出により患者さんにその成果を還元できるようになるのかなと思います。さらに私どもといたしましては、研究・開発のスピードアップあるいは治験へのアクセス機会の増加にもつながりまして、結果として革新的医薬品や診断技術等をいち早く患者さんに御提供できるようになるのではないかと期待しております。そして、このようにリアルワールドデータの利活用経験が蓄積すれば、さらなるリアルワールドデータの利活用の拡大にもつながりまして、患者さんへの還元も増えてくる、いわゆる好循環が実現するのではないかと考えております。ぜひこのような環境整備について御検討いただければ幸いです。
最後になります。繰り返しになりますが、次世代医療の実現にはデータ基盤の構築とともに法制度等の環境整備が極めて重要でございます。データ保護とともに、国際連携あるいは国際競争で日本が優位に立てるという視点でぜひ検討いただければと思います。特に健康・医療・介護分野の仮名化データ、これを広く医療分野の研究・開発等で活用できるような法制度の整備に大変期待しております。
以上でございます。ありがとうございました。
○森田座長:ありがとうございました。
続きまして、吉原先生、お願いいたします。
○吉原参考人:Life Data Initiativeの吉原と申します。
我々のプロジェクトというのは、実は1995年から医療情報の標準化といいますか、共通化のプロジェクトから始まっておりまして、2002年から我々がつくった共通規格を基にしたEHR、病院などの連携を始めております。その後、東京、京都などにそれを展開していって、2011年がターニングポイントだったのですけれども、ここで地域ごとのデータセンターを廃止しようということに考え方をシフトしまして、2015年から今、運営している千年カルテというプロジェクトがスタートしたと。これは日本で物理的にも今のところ1か所ですけれども、データの集約を行っている。2019年から医療情報の2次利用を始めております。
これが概要ですけれども、データセンターがまずあります。そこに今は106の医療機関がつながっておりますが、毎晩データがアップロードされる仕組みになっております。そのデータはEHRということですので、診療情報の共有、いわゆる連携医療に使ったり、患者さんに対してそれぞれのカルテデータの一部を開示するサービスもやっております。そして、ここに一旦集まったデータを、我々の認定事業者であるLDI、Life Data Initiativeにデータを送っていただいて、これを基に研究ごとに匿名加工を施してデータを研究者に提供するという仕組みで今のところ動いているということでございます。
現状ですけれども、ここに赤いドットがありますが、病院の所在地です。東京以西が非常に多いわけですけれども、一番北は北海道北見地方のあたりから、南は沖縄地方までカバーをしているということでございます。現在106施設で、初年度が100万人を超えるユニーク患者数が集まっておりまして、現在130万人ぐらいで推移しているということです。参加施設は、このように国立大学、公立、私立大学も含めますと23、自治体立病院が33、その他公立が約20、民間系が30弱ということで参加をしていただいております。当面の目標としては、これを300まで増やしたいと考えております。
我々が集めているデータなのですけれども、主に歴史的にテキストデータを中心にしております。ただ、最近は画像の需要も増えてまいりましたので、別の事業者さんと連携をした形で、DICOMやJPEGもそうなのですけれども、そういう生のデータをこちら側に集めておりますが、これと我々の情報をタイアップした形で認定事業者に提供するというスキームで画像のサービスも始めようとしているところでございます。
ゲノムについては、まだ見通しが立っておりませんで、具体的に着手はしていません。現時点での検討では次世代法のスキームであるLDI側、認定事業者側に直接データが来て、そして、オプトアウトするということが一番望ましいのですけれども、問題はそのゲノムの匿名化がなかなか難しいということです。40塩基で個人識別符号とされていることがその原因なのですけれども、したがって、今のところでは個別同意を取った上でのオプトインという形でデータを収集するのが一番現実的かと思っております。これも後でも述べますけれども、今の法律の限界によるものでして、これをオプトアウトで集められるような体系ができればいいなと思っております。
私たちが一番悩ましく思っているのは、集まったデータの利用の形態などももちろんそうなのですけれども、その前に、電子カルテから集まってくるデータが必ずしも100%集まっているわけではないということです。ここにありますように、これはプロジェクト早期のデータなのですけれども、こちら側が電子カルテベンダーです。こちら側は我々が受皿として用意しているデータ形式、大分類で17種類、サブクラスも入れると25種類ぐらいあります。例えば病名、検査の結果、注射、処方などなのですけれども、構造化されたデータとしてちゃんと出てきているかどうかなのですが、ここで見て分かりますように、例えばこの×というのはもともと出てこないデータです。それから、このJPEG/PDFというのはいわゆる非構造化データとして、人間が見れば分かるような形なのですけれども、出てきてしまいます。したがって、データベース化するのは極めて難しいということでして、この辺りはなるたけ早く解決されないと幾ら集めても漏れが生じると。しかも、ベンダーによって違いますので、同じデータでも集まっているもの集まっていないものがあるというむらが生じているということです。これが非常に大きな問題です。
そうはいっても、集まっているデータでいろいろと研究も始まっておりまして、これは現時点では17あるのですけれども、そのうち14がタイトルを公開することに同意された分です。ここに挙げますようにバラエティーに富んだ研究テーマで利用が始まっているということであります。今のところ、利用者は民間企業のほうが大変多い状態でございます。
今日の本題なのですけれども、我々が抱えている問題点はここに列挙したようなものがございまして、次世代法の改定に向けていろいろと問題点を洗い出しておりますけれども、その中にはこういう問題が大分含まれているということになります。
次世代法に関して、次世代法ではデータ提供が任意なのです。ですから、なかなか協力してくれる病院が少ない。次世代法のプロジェクトが始まって、2015年からですから、既に7年近くたっているのですけれども、我々に協力していただいているところは100ちょっとしかないというのが現状でございます。裏を返すと、参加することのインセンティブが非常に少ないのです。その辺りが問題だということです。
それから、これは後で述べますが、運営コスト、これが非常に我々の事業を成立させるためには問題が多くなっている。特にデータベースの基盤、導入時の負担というのは金銭的な負担なのですけれども、これが非常に問題になっています。
それから、丁寧なオプトアウトということで、個人への通知が前提となってしまっているので、いわゆる目視の同意だけでは駄目だということになっておりますので、不明者や死者のデータが利用できません。これも非常に大きな問題でございます。
それから、行政・学校のデータで、例えば自治体が持っている死亡日時のデータや死亡診断書、学校健診のデータですね。このようなものが今のところは取得するのが非常に難しい状態です。
こちらは後にしまして、先ほど申し上げましたように、電子カルテシステムを基本的に改善して、運用も改善していただかないと、電子カルテにせっかく入力されたデータがちゃんと出てこないという問題があります。
それから、頼りになる医療等IDですね。これがまだまだ運用に乗っていないということがありまして、名寄せをするときのツールとして非常に期待されるのですけれども、これがまだまだ使えない状況です。
それから、ちょっと細かい話になりますけれども、匿名加工のとき、その都度破棄を義務づけられている対応テーブルですね。これが破棄をせざるを得ませんので、例えば複数回のデータ抽出、例えば今年やります、来年、再来年とやるときに、匿名IDでの一貫性が保てないことになります。したがって、例えば来年もう一回やるときは、今年の分も含めてまとめて匿名加工してIDを付け替えるということをせざるを得なくなるということで、かなり非効率な状況になります。この辺りが主な問題点でございます。
先ほどの事業者への負担とデータの収集がなかなか進まないという問題なのですけれども、今の状態はこんな感じです。医療機関からEHR側、我々のプロジェクト側にデータが飛んでくるわけですけれども、このとき、まず医療機関がお願いベースになりますので、任意であるということで、非常に少ない割合でしか御協力いただけないということ。それから、データを取り出すためのインターフェース、これはベンダーごとにつくっていただくデータの抽出用のアプリケーションや、この間を結ぶVPNなどの秘匿された通信回路及びその装置ですね。こういうものを全部認定事業者側が負担をしている状態です。我々のプロジェクトの場合、電子カルテベンダーにプログラム開発をお願いするのに1000万から2000万ぐらいを提供しておりますし、毎回病院ごとにこのような設置をするときに当然ベンダーさんにも動いてもらう必要がありますので、そこにお支払いしている費用が1件当たり500万ぐらいかかってしまうということで、これは将来どんどん増やしていくと、こちら側の支出ばかり増えていくという問題があります。
これをこのように変えてはどうかと私たちは思っておりまして、まず、法律を変える必要が出てくるのですけれども、医療機関からデータを取り出すことについては義務化をするということです。これは法律に基づくことになります。それから、インターフェース及び通信料などについては、基本的には国の運営にするということです。まずデータを国レベルのリポジトリに集める。これはデータベースにする必要は特にありませんで、ファイルサーバーで十分なのですけれども、とにかく集めてもらって、そのデータを例えば認定事業者のような厳しい認定を通過した事業者が優先的に利用する。それから、EHR事業者は実はたくさんあるのです。全国で100以上動いていると思いますけれども、どのような形でそこに提供していくかということはありますが、そうしますと、このようないわゆるアプリケーションレイヤーに特化した形で認定事業者、EHR事業者などが国が集めたデータを利用していくこと、これが一番それぞれの立場に特化した形で動いていくということで、全体としてはうまくいくのではないかと思っております。
以上です。どうもありがとうございました。
○森田座長:吉原先生、ありがとうございました。
続いて、國土先生、お願いいたします。
○國土参考人 このような機会をいただきまして、ありがとうございます。
私、ナショナルセンターの代表をしておるのですけれども、私どものところでクリニカル・イノベーション・ネットワークの支援事業をやっている関係で、恐らく今日こういう機会をいただいたのかと思いますので、その話と、もう一つ、個人的には私は肝癌研究会の理事長をしておりまして、一つの狭い領域ではありますけれども、肝がんというレジストリを長年経験してきましたので、その経験に基づいてお話をしたいと思います。
クリニカル・イノベーション・ネットワークは、御存じかと思いますが、レジストリ、リアルワールドデータをできるだけ創薬に活用しようというイニシアチブです。私どもで日本にどのぐらいレジストリがあるかをまず調査させていただきました。大体700を超えるレジストリがあったのですが、レジストリの目標、目的を見ていただくと分かるように、治験などの創薬に関する目的は非常に少なくて、大半が臨床情報の収集ということでありまして、私どもの肝がんもここに入るわけであります。対象疾患はICD分類で表記されていますので少し分かりにくいのですけれども、翻訳すると新生物、がんや精神、行動の障害、循環器系の疾患、筋骨格系などの疾患のレジストリが多いのですが、肝がんは当然がんの中に入ります。
実際どのぐらい利活用できるかという視点で調べてみますと、実はまだ残念ながらなかなか難しい状況でありまして、例えば登録についての同意、左を見ていただきますと、オプトインは半分ぐらい、肝がんはオプトアウトということになります。それから、学術研究利用についての包括的な同意もまだ十分取られていない。肝がんもまだオプトアウトという状況でありますし、企業の利用についての包括的な同意もそういうことになります。
データの第三者提供についても、ほとんどのレジストリはまだまだでありまして、肝がんは検討中という段階なのかと思います。実績があるところも非常に少ないということであります。
企業の側からどういうレジストリの利活用が期待されるかという調査を行いました。まず期待されているのは治験の対照群のデータとしての利用です。特に先ほどもお話がありましたが、希少疾患などで使えるのではないか、あるいは製造販売後の調査に使えるのではないかというところが期待されるわけです。ただ、実際には企業にお声がけしても、なかなかまだ体制が整っていないのが現状であります。
肝がんのデータベースについて少し詳細に御紹介します。肝癌研究会という学会は1960年代に設立されたわけですが、その大きな事業としてこのレジストリが当初からございました。2年に1回、全国400から600の病院から肝がんの患者さんのデータを収集します。カバー率でいうと全国の肝がんの3分の1から4分の1ということで、これはかなり高いカバー率だと考えられています。世界的に見てもこういうデータベースはほとんど無く、世界に誇る日本の財産かと思っております。
現在までに10万例を超える肝がんのデータが登録されておりまして、当然亡くなっていく方もいるのですけれども、2年ごとにフォローアップをして予後を追跡しています。
私の若い頃はこういう調査用紙にデータを記入していたわけですが、それがCD-ROMにオフラインでデータを入れて送る、集める形になって、現在はオンラインでNCDのプラットフォームを使って集めるようになっています。
集計したデータは2年ごとにこういう冊子にまとめられて報告されておりますし、論文もたくさん発表されています。これは40年以上前の論文でありますが、それと同時に、がんの取扱い規約にも基本データが利用されました。これも第6版が発刊されておりますけれども、こういう形で取りまとめられて肝がんの日常診療に役に立つ、そういう基盤になっています。
学術的には、スライドに論文のリストをお示ししましたけれども、雑誌の名前を見ていただくと分かる方もいらっしゃると思いますが、インパクトファクターでいうと20ぐらいあるような雑誌も入っておりまして、世界のトップジャーナルに日本のデータに基づいたいろいろな肝がんに関する知見が報告されているわけです。ただ、残念ながら創薬に関するものはまだ一編もありません。
これだけは追加のスライドで恐縮です。肝がんのレジストリの特徴をもう一回まとめてみました。このレジストリはアカデミアが主体で、公的資金ゼロでスタートして、現在もそういう状況です。50年以上の歴史があって、世界に類を見ない貴重なデータベースになっている。参加施設は一般病院を含む全国数百の病院ということで、研究施設だけではないということであります。同意はオプトアウトでありまして、インセンティブは現状手弁当で担当医あるいは事務の方が入れるわけですけれども、最近一部に例外的に厚労科研で支給されている部分があります。それでも1例1,000円とか、そういう非常に少ないレベルのインセンティブであります。
ここからが問題でありまして、企業への提供、創薬の活用を考えてはいるのですが、製薬メーカーとも相談しておりますけれども、現状ではなかなか活用が難しいということであります。
もう一つ、先ほども行政のデータという話がありましたが、肝癌研究会のレジストリーは行政データと紐付けできていない臓器がん登録に分類されます。全国がん登録データのような患者さんの生死が分かる情報と連結しておらず、これを是非連結して欲しいと関連学会共同で現在申し入れているところです。
最近の動きを御紹介します。肝がんの領域で今、非常にホットなところは、新しい薬がどんどん出ていくところであります。2009年にソラフェニブという分子標的薬が初めて登場したのですが、その後10年間、次の薬が出てきませんでした。そして、2018年頃にレゴラフェニブ、レンバチニブ、ラムシルマブという新しい薬が次々に出てきて、4つぐらいの薬が1番目、2番目、1次治療、2次治療で使えるようになりました。
さらに、一昨年にアテゾリズマブという免疫チェックポイントインヒビターが承認されました。最近さらに、これにもう一つカボザンチニブという薬が入りましたので、6つの薬をどういう順番に使うか、最初に何を選ぶべきか、その次はどうするか、ということが大きなクリニカルクエスチョンになったわけです。これをそれぞれ1対1でランダム化比較試験をするわけにもいきませんので、リアルワールドデータを収集して何とか解決できないかということで研究をスタートいたしました。
もう一つの大きな問題は医療費の問題でありまして、このグラフにありますように、分子標的薬も高かったのですが、免疫チェックポイントインヒビターが出るとさらに高額になります。医療費の面からも最適な治療の組合せを考える必要があるわけであります。
現在オンゴーイングの研究ですので、ここでは方法だけ御紹介しますと、最大6ラインまでということでありますが、1回目に何を使って、2回目、3回目、と6回目まで選択肢があり得ますので、それぞれをどのように使ったか全部記録を取るような入力のこういうプラットフォームをつくりました。全国のデータを集めて、現在5,000人ぐらいの患者さんのデータが集まっておりますので、それを解析しようということであります。
もう一つはAIの活用でありまして、これはAIホスピタル事業の一環で研究費をいただいて実施しているのですけれども、先ほどの薬のコンビネーションあるいは薬以外の手術やラジオ波というものがあるのですが、そういう治療法をどのように選ぶか、どういう順番で使うと最も患者さんの生存期間が延びるか、というところをAIを使って解答を見いだそうということでやっております。
ただ、このときに、匿名加工情報を使うことを検討したのですけれども、それに必要ないわゆる丁寧なオプトアウトの準備ができていないことがわかりました。急いで準備をしようと当初考えたのですけれども、かなり大変なことであることを後で認識しまして、現在これは諦めて、まず研究として行うということで開始したところです。
本題に戻りますけれども、仮名加工情報はそういう中で先ほどのAIの研究には使いやすいのかなと第一印象としては思っているわけですが、こういう新しいカテゴリーができて創薬に使える可能性が増えることは、非常に関係者としてはウエルカムであると考えております。ただ、第三者提供の原則禁止というところが引っかかるのですが、例えばAIで非常にすばらしいアルゴリズムができたと。アルゴリズムといいますか、プログラムができたとした場合に、その知財を企業として営利に使えるかどうか、そこが今、非常に大きなハードルになっておりまして、現状では学術研究でとどめるという約束の下にやっております。ここが懸念材料であります。
私どもの倫理の専門家なども新しい制度についていろいろ検討させていただきました。その中で、この仮名加工情報の説明を読ませていただくと、既に作成されたものだけというのはかなり一つの制限になるのかなと感じております。
もう一つは、これも先ほどお話があったかと思いますが、ゲノムデータでありまして、ゲノムデータはそれだけで個人識別符号になりますので、そもそも加工が不可であるという現実があります。専門家にもいろいろ相談したのですが、少しでも加工してしまうと結局使いものにならないということですので、ゲノムについては扱うことはできないという理解になると思います。
もう一つは、個情法の例外規定であります。学術研究機関プラス学術研究目的と書いてありますが、これについて一般病院が参加する場合にどういう扱いになるのか。我々が先ほど御紹介しました肝がんのデータベースでも大半が一般病院でありますので、そういう情報を使えないというのであれば、これはかなり使いにくいということになります。
もう一つは、例外規定に「公衆衛生の向上」というものがございます。これを拡大解釈すればかなりのところが例外規定に入ってしまうわけですが、これがどの程度認められるのかが字面だけを読んでもわからず非常に気になるというところであります。
このスライドも例外規定ですね。ここに書いてありますが、全て公衆衛生の向上で逃げてしまうことは非常に批判が出てくると思いますので、これについてのある程度の基準が必要であると思います。ただ、あまり限定的に運用されると本当に研究が萎縮してしまう懸念があると感じます。
もう一つは、それに関連すると、各施設の倫理委員会が判断することが起こり得るわけで、その施設ごとの判断基準が変わってしまう。現実にもそういうことが起こっているわけで、ここに関する統一が必要であろうと思います。
もう一つここで、臨床情報の利活用、特に営利企業を含む企業による創薬は公益に資するという世論調査のような情報を紹介します。私自身非常に勇気づけられた論文なのですけれども、これは一般の方の意識調査という理解でいいかと思います。5年前に行ったわけですが、これによると、どういう臨床情報の利用が公益にかなうかという3,000人の国民の御判断ということになるかと思います。保険会社の調査など、そういうものは当然公益性が低い一方で、学術機関による純粋学術目的、これは最も公益性が高いと評価されています。そして驚くのは、その中間の製薬企業による副作用の情報収集も公益性がかなり高い。それ以外の新薬の開発評価、市場調査、リクルートなど、この辺もほとんど同じぐらい公益に叶うと判断されています。これが本当の国民の意見かと突き詰められると私もちゃんと回答はできませんけれども、少なくとも3,000人の方の意見としてこういうことがあるということなので、国民の理解もかなり得られているのではないかと私としては解釈しております。
ということで、この医学研究をどのように扱うか、このスライドはかなり哲学的な絵で恐縮ですけれども、医学研究と学術研究、医学研究が学術研究の中にあるとしてしまいますと、先ほど言ったような一般病院の参加が非常に難しいということになりますので、医学研究は学術研究ではあるけれども、少し違う部分もあるという認識で法体系を考えていただければと思います。
最後のまとめでありますが、全部はお読みいたしませんけれども、仮名加工情報に関して、第三者提供のハードルが高いという懸念がありますが、匿名加工に比べると情報量が十分あるということで、こういうカテゴリーもあっていいのではないかと考えております。第三者提供について今後どうするのかということをぜひ御検討いただければと思います。例外規定についてはもう一度よく検討いただいて、医学研究が萎縮しないようにぜひ御配慮いただければと思います。
以上であります。御清聴ありがとうございました。
○森田座長:お三方、大変貴重なプレゼンテーションをありがとうございました。
それでは、時間も押しておりますので、早速ディスカッションに入りたいと思います。ただいまのプレゼンテーションを踏まえまして、御意見などがございましたら御発言をお願いしたいと思います。では、松田先生、よろしいですか。お願いいたします。
○松田構成員:プレゼンテーションをありがとうございました。
大変興味あるものでありまして、問題意識の提示は本当にそのとおりだと思います。例えば吉原先生が提示された問題点はほかの国でもかなり議論されたことで、結局、フランスやアメリカ、それから、カナダは何をやったかというと、電子カルテの中で収集すべき情報をまず決めて、その記述に関して標準化をすると。それを非常に典型的にやったのがオーストリアのELGAプロジェクトなわけですけれども、日本の場合には、日本の電子カルテの難しさは、言語の問題があるのですが、ほかの国の標準的な記載をしにくいという特徴があるのだろうと思います。そうすると、そういう情報をいかに吸い上げるかというところで、いろいろな技術的な問題が出てくるというのが一つポイントだろうと思います。
そうはいっても、これはやらなくてはいけないわけで、そうすると、コアとなる情報が何かをまず決めていただいて、これは専門家のパネルでそれぞれのところで決めていただかないといけないと思うのですけれども、それを抽出できるようなアプリを国のほうでどこかにつくってもらうのか、整備するか。それを全てのベンダーに入れてもらうということをやって、それを使って収集するというやり方があっていいのではないかなと思います。
今回、実はコロナでもアメリカはECRといって、アメリカも電子カルテはばらばらなわけですけれども、そこから共通の情報を抜き出すアプリを政府で準備をして、通常診療の中でコロナに関連する情報を収集できる仕組みをつくって、リアルタイムでいろいろなことをやっているのですね。そういうことをやらないと、日本の今のこの電子カルテの状況の中で、将来的にいろいろなところからもう少し広く集めていこうと思ったときに行き詰まってしまうのかなと思います。そういう意味で日本の電子カルテをやっている会社の方も含めて、各臨床系の学会の先生方なども交ざって、どういう情報をどう集める、集めるべき情報の標準化をやらないと先に進めないのではないかという気がしています。
國土先生のお話は非常に重要で、日本はいろいろな症例登録の仕組みができているのですけれども、先生がお話になったように、創薬につながったものがほとんどないのです。これはまずいと思います。僕は日本の医療は国際的に見ても非常に高いレベルでやっていると思うのですけれども、その貴重ないわゆる知財が創薬につながるとか、新しいデバイスの開発につながるという形でやられないというのは、もともとこれをやっているデータベースを維持するあるいは改善していくための原資の確保もできないことになってしまうので、今回のコロナのことでワクチンもそうですけれども、日本の製薬メーカーは本当にこのままで大丈夫なのかなという危機感を多くの人が持たれているだろうと思います。そういうことも含めて、EHRからいろいろな情報を集めて、それを技術系の治療システムの開発ですね。デバイスや創薬につながっていくようないいサイクルをつくっていくことをやらないといけないのではないかと思います。これはもともとAMEDの目的でもあるわけですけれども、それがもう10年になりますが、進んでいないことに非常に危機感を覚えましたので、今日お話しいただいた3人の先生方の問題意識を基にして、標準化を本気になって取り組むべき時期に来ているのではないかと思いました。
以上です。
○森田座長:ありがとうございました。
続きまして、落合先生、お願いいたします。
○落合構成員:ありがとうございます。私も途中で出てしまうこともありますので、何点か気がついた点を先に述べさせていただきます。
1点目ですが、仮名加工情報について、各先生方、製薬協の方々からも御発表をいただきました。そちらを伺っておりまして、仮名加工情報でも十分に利活用できるのかどうかは、やや情報として疑問があると考えます。もちろん仮名加工情報はあって悪い仕組みではありませんし、既にある制度なので、その使える範囲で使っていただくことがよくないと申し上げるつもりは全くありません。しかし、あえて情報を利活用できるルートを整備するときに、仮名加工情報という方法を取る必要があるのかという問題があると考えております。
そうしたときに、情報の利活用ができていないことについては、適切に創薬や研究につなげられていない実態は皆様におっしゃっていただいていたところです。本日については特に学術研究や研究・開発に関する御発表というか、そういう視点での御発表が多かったと思うのですが、そのほかに大きくは1次利用と言われる個人のために使うサービスの部分ですとか、もう一つ、コロナの中でも重要になっていたと思いますが、行政政策目的、こういう利用目的をちゃんと整理した上で、どういった利活用がその中で必要なのかを検討する必要があります。このような検討の際には、前回と繰り返しになりますが制度だけではなくてデータベース等についての整備も重要になると考えます。
2点目ですが、本日も公衆衛生例外や学術研究例外についても御指摘があって、なかなかこれだけでは使えないというのは私も同意見です。前回も述べさせていただいたところでしたので、全くそのとおりだなと思いました。一方で、同意に全て依拠するのがよいのかというのは、それはまた別の問題としてあるのだろう思います。欧州においても例えばGDPRにおいて同意が情報を利用できる場合に該当する一つの類型として捉えられるわけですけれども、一方で、レジティメイトインタレストのような形で整理をしていくということもあります。そういった中では、必ずしも同意だけではなくてしっかりどういう形で情報を使っていくのかを定義した上で、これは必要に応じて法整備をしなければならないこともあろうかとは考えます。そういったことであったり、さらに、ただ利用目的を定めるだけではなくて同意に代わる実質的なガバナンスは何なのか。これをしっかり整備をしていく必要があるということなのだと考えます。
ガバナンスについては、日本国内のヘルスデータについては現時点ではOECD等の評価を踏まえると必ずしも十分なガバナンスはないということになるかと思います。その部分については、まだ今回はさらに具体的な方法まで議論する場面ではないと思いますが、それは追って検討する必要があるのではないかと考えております。
何点も述べてしまって恐縮ですけれども、第3点目として、吉原先生からリポジトリに関する議論がありました。北欧やエストニアのような国を念頭に置いて議論された内容だったと私としては受け止めた部分もございました。一方で、ヘルスデータの利用が進んでいる国・地域として、英国、台湾であったり、ほかの国が挙げられることもあると認識しております。必ずしも北欧の行っている方法と同じとは限らないようには思いますので、その方法だけが唯一の方法とは現時点では思わない部分はございます。一方で、全体としてデータをどういうプレーヤーがいて蓄積と連携をできるようにしていくか、こういった全体像を描くことが重要であるという点については重要な御指摘をいただいたのではないかと思っております。そういう全体としてのデータベース整備と併せて、利用範囲、ガバナンスについても整備をしていくということが重要と考えております。
最後ですけれども、欧州のほうではもともとGDPRの前からヘルスデータについては一定の規律を設けておりました。GDPRでは各国の実施法での修正や医療分野の特別法という言い方かとも思いますが、そういう方形式により整備をされている場合があります。さらに今般においてもデータ法案、データガバナンス法案がそれぞれ公表されている上で、直近では医療分野についても別途法整備をする可能性があると言われております。そういった意味では、必ずしも一般法の議論だけではなくて医療、公衆衛生、社会保障、こういった側面を踏まえた個別性のあるような議論を行っていくことが重要ということは、日本よりデータ保護が進んでいると思われる欧州でも同様の議論となっているかと思いますので、そういったものも参考にさらに日本でも議論できるといいのではないかと考えております。
すみません。長くなりました。以上でございます。
○森田座長:ありがとうございました。
吉原先生、國土先生、製薬協 安中さま、コメント等がございましたら簡潔にお願いしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
○吉原参考人:吉原ですけれども、先ほど標準化といいますか、どういうデータを共通化して集めるかという話があったと思います。まさにそのとおりだと思います。ただ、今、我々が感じているのは、例えばAならばAという標準があって、そのようにデータを出してくださいとベンダーさんにお願いするのですけれども、ベンダーさんの力量の差はすごくあるのです。ですから、そこのデータのバリデーションに膨大な時間がかかってしまうという非常に具体的な悩みがあります。
共通化するのはもちろん大事なのですけれども、共通化にしても、例えば簡単な例ですが、処方箋のデータは薬品コードと薬品名と1日何錠でどういう飲み方をしてという基本的な項目がありますね。その項目を極めて単純な形で出してもらう。それを共通の、例えば今はHL7FHIRという話が出ているのですけれども、そちら側に変換するのは我々サイドというか国サイドでやってしまうような現実的な割り切りは本当に必要だと思います。本当にややこしいフォーマットを書けというのは無理があるなというのが、現場でやっている者の感想でございます。
以上です。
○森田座長:ありがとうございました。
國土先生、いかがでしょうか。
○國土参考人:國土ですが、松田先生、落合先生、コメントをありがとうございました。
アカデミアが手弁当でつくったレジストリがなかなか創薬に使えていないというのは非常に認識しているわけですけれども、今後どうするかというところで、構築の段階からその方向につくらなくてはいけないだろうと思います。同意について、先ほど同意に代わるものがあるかもしれないというコメントがあったのは非常に興味深かったのですが、今、丁寧なオプトアウトは、誤解を恐れずに敢えて言えば、意外と大変な割にメリットが少ないようにも感じます。そうであれば最初から前向きにやるときは同意をとにかく丁寧にいただいてから始めようという考え方に傾きつつありまして、そういうことでいいのかどうかを、この法整備を見ながらもう一回内部で関係者と考えていきたいと思っております。
ありがとうございました。
○森田座長:製薬協さま、よろしいでしょうか。
○日本製薬工業協会:先生方、ありがとうございます。
2点ございます。先生方御指摘のとおり、私どもの資料の10ページでも御説明しましたとおり、データインフラの整備と利活用の環境法整備、これは両輪でやる必要があるというのはまさに御指摘のとおりだと思います。
2点目です。一般法たる個人情報保護法で今の医療の世界あるいは医療分野の研究・開発を縛るのはもはや限界に来てるのではないかと、いろいろな方と意見交換させていただくと感じているところです。そういった中で、落合先生が御指摘されたEUのほうでも医療分野の立法論があることについては、我々も高い関心を持って注視しているところでございます。引き続き御指導いただければ幸いでございます。
ありがとうございます。
○森田座長:ありがとうございました。
松田先生、落合先生、よろしいでしょうか。
○松田構成員:1つだけ、とはいえ、例えばオーストリアなどですと国民の95%以上が個人のデータを提供することに同意をしてやっているわけです。イギリスなどもそれに近い形で運用している。それは国がきちんと国民に説明をしているのですね。なぜこのデータが必要なのかと。今、僕らはどっちかというとアカデミアや法律の関係者だけで話し合っているのですけれども、国民の理解が前提だと思うのです。国民がそういうことに使われることをきちんと理解すれば、オプトインなのかオプトアウトなのかというのはありますけれども、オプトアウトでかなりの部分はできてしまうのではないかと思います。
特に若い世代の人たちはそこをかなりドライに考えている子たちが多いので、そういう意味で、諸外国でどのように国民の同意を取るようにソーシャルマーケティング活動をしてきたのかということに関する調査を少しやったほうがいいのではないかと思います。それなしで技術的なことで何かやろうとしていっても、すごくお金がかかる割には何もできないということになりかねないので、それよりはこういうことをやることに関する意義を理解していただく。ただ、それが日本でなかなか進まないのは、残念ながら、政府や我々こういうことをやっている者に対する国民の信用がまだないのではないかと思います。それなしでは進まないと思いますので、そういうことで、諸外国がどのように国民の理解を得るような努力をしてきたのかを、人文科学的な研究にはなると思うのですけれども、それを少しやられたほうがいいのかなと思いました。
特に、フランスは日本以上に個人情報の保護がきつかった国なのですけれども、今はかなりいろいろなものが使えるようになってきています。それはCNILという組織をつくって、いろいろな情報を使うことに関する手続を透明化して、それを公開してという結構長い努力をしてきているわけですが、そういうところから私たちの国が学ぶべきところはあるように思います。
以上です。
○森田座長:ありがとうございました。大変お待たせいたしました。落合先生。
○落合構成員 私も2点ほどです。今、松田先生におっしゃっていただいた一般的な国民的な理解を得ていくのが重要というのはおっしゃるとおりと考えております。解釈だけで技巧的に整理してしまうと、そういった理解を得る機会がなくなってしまいます。このため、しっかりと立法プロセスであったり、法令の枠組みを使っていくことが重要と考えます。もしくは直接的にも対話できるような機会をつくっていくことも含めて、あまり隠れてこそこそやっているような形にならないよう、議論の過程が見えるような形で行っていくことは重要だと考えます。
吉原先生からおっしゃっていただいた作業がというお話は非常に重要な点だとは思っております。結局手間がかかってしまうと何にしろ使われなくなり、デジタル技術を利用したサービスもそうだと思いますが、手間がかかると避けられることになります。単純に抽象的につなげられるとかだけではなく、関係者の労力をいかに合理的なものにできるのかを考えながら議論していくこともまた重要だと認識しております。
以上でございます。
○森田座長:ありがとうございました。
それでは、大変お待たせしましたけれども、長島先生、そして、山口先生、その後、また途中で退室される宍戸先生に御発言をお願いいたします。
どうぞ。
○長島構成員:日本医師会の長島です。
まず、今お話があった国民の理解ということは、私ども次世代医療基盤法に基づく匿名加工事業をやっていて、本当にひしひしと実感しております。患者さんや住民の御理解を得るというのは大変苦労していて、小まめに様々な説明会や集会を開いて、それでもなかなか伝わらないということですので、これは国を挙げて、全体でまずどういうメリットがあるのか、どういう意義があるのかを十分に御説明するだけではなくて、一つはこういう成果がありますというフィードバックをしっかり積み重ねていく。次世代医療基盤法で実際にこういう開発がされましたとか、地域でこういうメリットがありますというのも小まめにフィードバックしていく。この両方をやっていかないと無理だろうと思っています。ただし、ここは絶対に必要だと思っています。それをやりながら、そういうことで例えば通知の在り方や同意の在り方の負担を減らしていくことも同時並行でやっていくべきだと思っています。
もう一つ、松田先生がお話しになったことで重要なことが、電子カルテの標準化という場合に規格の標準化ばかり言われていますが、もっと重要なのは内容の標準化です。これは別にデジタル、アナログを問わず、紙の診療録でも記録の在り方を標準化していくのは極めて重要です。と申しますのは、記録をしっかり標準化していくことが、患者さんに提供する医療の質の標準化に直結するということです。したがいまして、各学会等で代表的な疾患や病態に関して記録をこのように取っていこう、標準的なものということで、こういうものは必ず記録しようとか、こういう形で記録しようと。例えばこれが学会の疾患レジストリなどと関連づけてやられると効果的かと思いますけれども、そういう形でしっかり記録すべき内容とどのような形で記録するか、これを標準化して、それを電子カルテの中に必ず実装させて、電子カルテを使うことで標準的な記録がやりやすくなる、電子カルテを使ったほうが質の高い記録がよりやりやすくなるという支援機能を持たせる。そうすると、医師にとってもメリットがあるということなので、これは必ず実装させて、例えばそういうものでないと補助金の対象にならないなどの形で実効化されることが重要かと思います。
また、先ほどお三方からいろいろな御紹介がありましたけれども、その内容からすると、仮名加工というよりは現在の次世代医療基盤法に基づく匿名加工をもっと使いやすくする。個人識別のリスクは、そのまま安全性は保ったままで、今、次世代医療基盤法の見直しのところで、例えば対象テーブルの問題や仮IDが1回しか使えない問題、様々な制限がありますが、そこのリスクは上げずにきちんと使いやすくすることが十分可能かと思いますので、そのような観点で進めていくといいかなと感じました。
私からは以上です。
○森田座長:ありがとうございました。
それでは、山口先生、お願いします。
○山口構成員:ありがとうございます。
私も長島委員とほぼ同じようなことを考えていたのですけれども、先ほど松田委員もおっしゃっていましたし、吉原参考人の資料の11ページのところで、医療機関等からの情報を義務化して国が情報を取得する、これをやっていかないと本当に進んでいかないのではないかと私も思います。特に認定事業者の負担ばかりが増えると、認定事業者自体も増えないと思いますので、きちんと利活用していけるような方策を国が中心になって考えていくことが必要なのだろうなということと、この仮名加工情報はもう少しユースケースがあるのかと思っていましたけれども、あまり使い勝手がよくないというか、とても限定的ということですので、私も次世代医療基盤法のところでもう少しうまく使えるように改正していったほうがいいのかなと思いました。
製薬協の方に質問がございますが、特に製薬協の方、製薬企業から見たときに、この仮名加工情報が使えるのは非常に限定的だというお話がございました。そこで、19ページで仮名化データの法制度が望まれるという提案をなさっているのですけれども、海外ではここで提案されているようなことが実際に実現しているのかどうかということと、それをすることによって問題点は起きていないのか。こういった仮名化データの法制度をすると、限定的なことがもう少し何かプラスになることが出てくるのかということをお聞きしたいと思いました。
以上が質問です。よろしくお願いします。
○森田座長:それでは、製薬協さま、御質問にお答えいただきましょうか。
○日本製薬工業協会:山口先生、御質問ありがとうございます。
安全に使えるかどうかという点につきましては、今回御提案している仮名化データにつきましては、説明した治験レベルのデータと考えております。私ども新薬を開発する製薬企業においては、新GCP下で20年ぐらい使ってきて大きな問題を起こしていないということを御説明させていただいたので、この枠組みでも罰則規定をどうするのかという議論と並行して、私どもにはこのデータを託して使わせていただければありがたいなと思っております。
海外の事例につきましては、共同参考人の小林から御説明させていただきます。
○日本製薬工業協会:製薬協の小林です。
先ほどの山口委員の御質問に関しまして、正直なところ、正確な回答は持ち合わせていないのですけれども、例えば我々として実際に期待する形としましては、18ページに示させていただきましたような、データの信頼性が確保できるというところが重要だと感じておりまして、このようなことをできるという意味におきましては、仮名化されたデータを信頼性が確保された上で利用できるような国はございます。ただ、それが19ページで示している一番右のデータの類型がないとできないかと言うと、そういうわけではございません。今の匿名加工情報、仮名加工情報という並びの中で、各要件を並べたところで我々が期待するとしたらこういう形になるというイメージとして示させていただいたものとして受け止めていただけるとありがたいかと思っております。
○山口構成員:ありがとうございました。
言い忘れたことがあるので、追加で申し上げてよろしいでしょうか。
○森田座長:簡潔にお願いします。
○山口構成員:先ほど国民に対しての説明が必要だとおっしゃったこと、まさしく本当にそうだと思っていまして、この用語だけでも取っつきにくいですし、まずは分かりやすく必要性とか、国民にとってこういうことが進むと何がプラスになるのかということをしっかり説明していくことが必要ではないかということを一番に言おうと思って忘れておりましたので、追加いたします。
以上です。
○森田座長:ありがとうございました。
それでは、宍戸先生お願いいたします。
○宍戸構成員 ありがとうございます。東京大学の宍戸でございます。
貴重なプレゼンテーションをいただき、ありがとうございました。私が感じていることは退室された落合構成員がおっしゃったこととほぼ重なりまして、あまり独自の発言というのもないのでありますけれども、何点か申し上げたいと思います。
第1に、仮名加工情報制度でございますけれども、初回も申し上げたかと思いますが、仮名化された情報のことを指して、そして、それだったらこういう効果がついているというよりは、個人情報保護法で定義された制度、取扱い込みでの仮名加工情報という仕組みであって、仮名化された情報をくまなく規律しているものでも何でもないということだろうと思います。そして、これはそこで想定された場面においては十分なニーズのあるものだろうと思いますが、今ここで議論しようとしている医療、医学研究、創薬などとの関係だとどうにも使い勝手が悪い部分がある制度であるというところで、さてどうしようという議論をしているのだということが、まず全ての出発点かなと思います。
ただ、この点でもう一点追加で申しますと、本日、個人情報保護委員会事務局様も御参加されておられますけれども、先頃、委員会様でスタッフレポートを、それまで匿名加工情報についてのものだったと思いますが、仮名加工情報も加えて改定をされたと承知しております。私が見るところではかなりいろいろなことをお書きいただいているのだろうなと思いますので、一度この場に何らかの形でそのペーパーについてインプットをいただいて、こういうことに使えるのではないかとか使いにくいところはあるねということは一度整理をしておいたほうがいいのではないかということで、これは座長、事務局に御提案をさせていただきたいと思います。委員会事務局様からすると仕事を増やすなと思われるかもしれませんが、そういうところでございます。
その上で2点目でございますけれども、ではということで、医療情報、医学であったり、創薬であったりで、本日、具体的なニーズ、どういう個人情報の取扱いをされたいのか、それによってどれだけのメリットがあることが想定されるのかについて具体的な御提案をいただきましたので、その具体的な御提案についてきちんと考える。第一には法的な整理ですけれども、現行法のどの法律の体系の問題なのか、解釈でいけるのかいけないのか、いけるのだけれどもそれだけだと不安定なのでガイドラインあるいはこういう類型だよということで明確化するのか、あるいは立法を手当てするのかといった議論を少し具体的にブレークダウンして落としていったらいいのではないかと思います。
とりわけ、個人情報保護法の議論のベースに乗せようとしますと幾つかのステップがございまして、利用目的はどうですか、第三者提供はどうですか、仮名化はどうですか、安全管理はどうですかと基本的には一つの情報の取扱いのプロセスに応じて個別の法律の規律があるわけであり、それについてガイドラインなどで緻密な解釈の体系がございまして、緻密な解釈の体系については、本日、日置構成員がおられますのできちんと整理してくださるものと思っておりますが、問題はそうではなくて横串なのだろうと思うのです。一個一個の緻密な解釈をした上で、例えば医療分野について創薬の目的でこういうことをしたいというのであれば、目的の段階を特定し、情報はこう加工し、そして、こう規律したと。先ほど製薬協さんから御説明がありましたけれども、ああいったものをパッケージ化して、このパッケージだと得られるメリットはこうですね、それに対してプライバシー、国民の懸念などのリスクはこの程度のものですから、比べて見たときにこれでいきますねとか、あるいは追加的な安全管理措置や利用者への説明、患者さんへの説明、関係者への留意があれば具体的に書き起こす。それで一つの類型をきちんとつくることが解釈でいけるのであれば、ガイドラインに新たに書くなどやればいいでしょうし、それができないのであれば、繰り返しになりますが、立法するということだと思いますが、今のようなものをきちんと考えていくことがこの場で必要なのではないかと思っております。
最後、3点目でございます。先ほど山口構成員もおっしゃったとおり、この全体像をきっちりつくって、そして、それを国民に対して分かりやすく説明していく、国民の納得、理解を得ていく。そういったことのためにも、ちゃんとボトムアップで積み上げて、現行法のところでここはこう解釈できるとか、ここは立法で突破するという全体像を示した上で、それによってこの全体のパッケージで得られるメリットはこういうものが出てきます、これに対してこういう懸念はあるかもしれませんけれども、この懸念はこのようにそれぞれ潰していくので大丈夫です、あるいは抜けがありませんとか、裏をかくようなことが、複数の制度をコンタミにして悪いことをするようなことが起きないようになっていますとか、そういったことを全体を積み上げて見せる、説明できるようにする作業をしっかりやることが重要ではないかと思っております。
私からは以上でございます。
○森田座長:ありがとうございました。
後でまたディスカッションすることにしまして、今の宍戸先生の御要望に応えるかどうかともかくとしまして、日置先生、発言をお願いいたします。
○日置構成員:宍戸先生のおっしゃっておられるような、どういった形で全体像を見て、どこでどう法的なハードルがあるのか、それとも技術的なハードルがあるのか、あるいは政策面のハードルがあるのかというところを積み重ねていって必要な措置を講じていくというところには賛成でございます。
その中で、製薬協様や吉原先生や國土先生のお話を伺いながら思っていたのが、データベースを全体的に国としてつくっていく、あるいは一つの主体が中心になってデータをプールしていくことが多いのか、それとも、今あるデータを連携するという発想で、後者のほうが最近トレンドになっているのかなと思うのですが、どちらの発想で進めていくのかというのも一つ課題なのかと思って話を伺っておりました。というのも、どういう法令が適用されるのかというところもありますし、そのときに最初からどうフォーマットを標準化するのかとか、その前提として集めるデータについてはかなり精緻な議論が必要だと思いますので、そちらの処理をどうしていくのか。その後、提供するところや共有するところで、そのときにニーズに合わせて仮名加工情報の制度が使えることもあろうかと思いますし、あるいは個人情報として同意を取っていくプロセスを経るほうがいいものもあるかと思います。どこが集めてどこが主体になってどう提供していくのか、そのときにどの制度を使うのかを整理するのがよろしいのかなと思いました。
他方、1か所に集めるとすると、次世代医療基盤法も同じだと思うのですが、ランニングコストが非常にかかると思っています。特に製薬協様からお話があったような追跡性やライフコースデータみたいな形で情報を収集していくことになると、相当のコストがあると思います。そこをフォローできるような形でどうデータを蓄積するのか、それとも連携するのかというところを一つ整理する必要があろうかと。そのときに、法的なところは残念ながら排除することができませんので、その辺をサポートさせていただくことは多くあるのかなと承っておりました。
製薬協様のお話を伺っていて、データの信頼性というお話があって、そこから仮名加工情報では難しいのではないかというお話もあったかと思うのですが、仮名加工情報の加工というのは、データの信頼性を前提に考えているというよりは、いかにして御本人への影響がないようにするかというところに尽きているものかと思います。そういった意味で、データの信頼性を確保しながら加工する仕組みをつくるというのは、また法律とは別途の政策的な問題であったり、あるいは業界やアカデミアと共通する部分かと承っております。あとは病院など全体を見てと。ですから、またそこの辺りをドライブするには、新しい法令なのか、どこかで御議論いただくのかというところが重要なのではないかと思っていたのですが、ここのところは私の理解が間違っていないのかだけコメントをいただければと思っております。
以上でございます。
○森田座長:ありがとうございました。
製薬協さまのほうは今のことでコメントはございますか。
○日本製薬工業協会:日置先生、ありがとうございます。
私どもが申し上げている信頼性につきまして、その定義について説明し切れていなくて失礼いたしました。私どもが申し上げている信頼性というのは、主に薬事目的で利活用する際の信頼性でございます。規制当局、PMDAさんに申請データを出すときに、個別の被験者データも出すというときには、通常、治験であれば医療機関にあるデータと私どもが症例報告書という形で入手するデータの中身が一致しているかどうか、ちゃんと存在しているかどうかという両面を確認します。申請後もPMDAさんが場合によっては実施医療機関に行って、製薬企業が持っているデータと医療機関にあるデータが一致しているかどうかを確認する必要があります。それがデータの信頼性と申し上げています。
それをやろうとしたときに、今の次世代医療基盤法の枠組みですと対応表がないので見られないとか、もともと見に行ってはいけないというハードルがございまして、現行、薬事で使うのは難しいのではないかと考えております。ここは次世代医療基盤法の匿名加工医療情報をどのように申請に利活用できるかという明確なガイドラインがないので、結論めいたものはないとは承知しているものの、現実問題としてかなり利活用は難しいのではないかと今は考えているところでございます。
○日置構成員:ありがとうございます。
なるほど。識別できないのでもともとの申請が担保できないというところは、そうなのだろうなと承りました。PMDA様のほうで、申請確保のために、識別はしないのだけれども、ここのデータを加工して、ここを変えて、これを治験のために申請していますという形で、それが承認されるのであれば差し支えがないのかもしれないなというのもお伺いしていて思ったところではありますので、柔軟な制度設計ができればいいのかとは直感的には思いました。ありがとうございます。
○日本製薬工業協会:もう一点だけ。実はもう一つは先ほど申し上げたデータそのものを加工してしまうということです。ですから、元の生データで解析した結果と加工したデータで解析した結果が全く同じ結果になるかどうかが、残念ながら利用者の中で分からない。それで先ほどデータがブラックボックスという表現をあえてさせていただいたのですが、そこをサイエンスの世界、統計の専門家の世界で考えたときに、匿名加工情報のそういった限界があるので、薬事申請ではなかなか難しい。ただし、例えば当たりをつけるとか、フィジビリティースタディーでは十分使えるという整理をさせていただいて、今日、発表させていただいた次第でございます。信頼性はその2点が重要なポイントだと認識しております。
○日置構成員:ありがとうございます。
今、お話ししていただいたほうが私の最初の質問にフィットしていたのかなと思います。理解いたしました。
○森田座長:お待たせいたしました。石井先生、お願いします。その後で吉原先生、よろしくお願いいたします。
○石井構成員:ありがとうございます。
先生方のお話を伺っていまして、解釈論よりは立法論も含めた検討が必要になっていくのかなということを感じたところではあります。先生方がおっしゃったことに追加させていただくような形のコメントになりますけれども、同意のところですね。GDPRで同意が取扱いの適法化の根拠の一つとして使われているというのは落合先生からお話があったところですけれども、同意自体の解釈や定義、要件の違いがGDPRと日本の法制度においてはありまして、日本の法制度の場合は個人情報保護制度においては同意について何かしら具体的な定義を設けたり、要件をつくったりということはしていないわけですけれども、GDPRは目的ごとの取扱いに対する個別の同意を取れということが適法に同意を使う要件になっていますので、そこの個人情報保護制度における同意の在り方といいますか、同意の解釈、解釈でままならないときには何かしら法制度を見直すこともあるのかもしれないのですけれども、同意の概念にも少し切り込んだ検討が必要になってくるのかなとは思ったところです。
医療の世界ですと、インフォームド・コンセントや適切な同意という仕組みもありますけれども、それは研究活動に対する同意ということで、個別の目的ごとの個人情報の取扱いに対する同意というわけではないので、そこを混在させる形で議論するのは望ましくはないのかなと思っているところであります。GDPR以外にも、アジアですと、例えばシンガポールが同意に関する法制度を割と細かい形でルール化していたりするというところも制度としては一つ参考になるところかもしれませんし、今のような日本の法制度において包括的な同意も許容するような部分を維持したままで仮名加工情報の制度や匿名加工情報の制度を運用している、この体制がいいのかどうかということを問われることになるのかもしれないと思いました。
GDPRの正当なレジティメイトインタレストの規定も、同意はそもそもGDPR上使いにくい仕組みになっているので、別の根拠に依拠する可能性は十分あろうかと思います。ただ、その場合は個人の利益とのバランスをはからないといけないという制約もありますので、その辺も留意が必要になってくるかと思いました。
個人情報保護委員会様からの事務局レポートについては、私もぜひ議論してみると議論が深まると思いますので、この検討会で一度取り上げてみていただくとよろしいかとは思います。
以上です。
○森田座長:ありがとうございました。
個人情報保護委員会のほうはまた事務局と相談の上お願いしたいと思いますけれども、よろしくお願いいたします。
それでは、吉原先生、お待たせいたしました。どうぞ。
○吉原参考人:先ほどの日置先生の御意見に対するコメントです。データを集中的に国が集めるのか、それとも分散したものをマージするのかというお話だったのですけれども、私の感覚的には、まず、認定事業者が独立採算を前提とされてしまっているということがあります。ですから、収入と支出のバランスから考えると、今、私どもと日本医師会系のJ-MIMOさんとありますけれども、恐らく500に満たないぐらいしか、基幹病院クラスで500程度だと思います。それ以上はもう採算が合わない、認定機関自体が潰れるという話になっていくと思います。
一方で、病院の数は約1万あるのですね。残り9万近くがクリニックです。実は患者の流れを見たり、診療の流れとか、いろいろな意味で製薬系ももちろん必要なのだけれども、基幹病院のデータだけでは駄目なのです。クリニックは非常に細かいものの集合体なので、そこからデータを集めるのもなかなか大変で、我々はまだ手がついていない状態です。ですから、全体の5%で統計学的にはぎりぎり、全体性とまではいかないと思うのですけれども、何とかなるかなとは思うのですが、どう考えたって少ないわけです。ですから、この壁を突破するためにはデータを集める。単純に集めるだけでいいのですけれども、それは国の基盤としてちゃんとやるべきだと。そのデータを例えばクレンジングするとか、いろいろな加工をする技術はそれぞれの認定事業者が持つわけですから、そこで競っていく図式にしたほうが国のもともとの目標には合うのではないかと私は考えています。
以上です。
○森田座長:ありがとうございました。
それでは、皆さんに御発言いただきました。途中で退席されました中島先生からコメントがチャットに入っておりまして、簡単に紹介させていただきますと、現在蓄積されているデータベースの2次利用をするということから話が始まりましたが、1次利用目的でもばらばらで標準化されていないデータなので、症例数が増えても正しい結果が出ないことが危惧されます、今、行われている2次利用の努力を続けながら、同時にデータヘルス改革などにより1次利用として施設間や患者にデータを流通することが特に重要であろうと思います、データが流通することによりデータが標準化され、格段にデータ品質が上がるからですというコメントが入っておりますので、紹介をさせていただきます。
それでは、あと15分ぐらいですけれども、さらに御発言がございましたらいかがでしょうか。
國土先生、どうぞ。
○國土参考人:仮名加工情報は使ったことがないものですから、懸念とかそういうものばかり、後ろ向きな発言が多かったかなと反省しているのですけれども、ぜひ活用はさせていただきたいと個人的には思います。
それから、製薬協の方の御発言の中で思いついたのですけれども、企業治験データの2次利用というお話があったと思います。これについて私は昔から問題意識を持っておりまして、大変貴重なデータであるのに十分に活用されていない、あるいはそのままネガティブデータだと闇に埋もれてしまうようなデータがあるわけですね。お金をかけたのは企業ですから、企業のお考えもあるのだと思いますけれども、例えば一定時間が経過すればもう少し自由に使えるとか、あるいは企業とアカデミアの提案、相談で2次活用できるような仕組みがあればいいかと思っておりまして、その目的のために仮名加工情報化することによって促進されるのであれば非常にいいのではないかとお話を伺って思っておりました。
以上です。
○森田座長:ありがとうございます。
他にいかがでしょうか。大変重要な論点が幾つか出てきたかと思います。今回、また、次回もそうですけれども、少し我々のほうで勉強して、論点を絞り込んで議論をしていこうということですが、吉原先生、國土先生、製薬協の方は今日だけですので、ぜひ何かさらに聞きたいということがあれば御質問いただければと思いますが、よろしいでしょうか。
製薬協さまから手が挙がりました。どうぞ。
○日本製薬工業協会:学術研究について、一言コメントさせていただければと思います。
先ほど國土先生からも御提案いただいたような、製薬企業としてもレジストリのような非常にすばらしいデータを使わせていただきたいというニーズは多くございます。ただ、今、それができない理由は、同意が取れていないとか、製薬企業に第三者提供ができないというところにあるのかなと思っております。そういう意味で今日の皆さんのプレゼンからもあったのですけれども、学術研究例外というのも、例えば我々製薬企業が求めているところとして、先生のスライドにもありました対照群として使うといった目的がありますが、これは製品開発につながるということになってしまいます。製品開発につながるものが学術研究として認められないことになっているのが、一つ我々としても難しいところかとは思っておりますので、その辺りも含めて御検討いただけるとありがたいかとは思っております。
以上です。
○森田座長:よろしいでしょうか。
それでは、私から一言だけコメントさせていただきますと、松田先生、宍戸先生が退席されて、間違っていたら困るのですけれども、先ほどできるだけ国民に分かりやすくメリットを説明して、できるだけ多くの同意を得るような仕組みをつくるべきだというお話がありまして、オーストリアの場合には90%とか、北欧諸国はもっとというお話がございました。私自身は、本業は医療政策でも社会保障でもITでもなくて、もともとは政治学者です。その観点からいいますと、ヨーロッパの国、特に東のほうの国でなぜあれだけ国民の同意といいましょうか、データ提供が行われるかといいますと、一言で言いますと、ロシアの脅威です。
今回のロシアによるウクライナ侵攻のようなことが起こったときに、国民を避難させなければいけないわけですけれども、その人たちに対してケアをするためには、どういうお薬を飲んでいるか、どういう病気の状態であるか、その情報がいかに早く正確に入手できるかによって、その人たちのケアの在り方は変わってくるということでして、これからどうなるか分かりませんけれども、今回、それが如実に明らかになったと思っております。その脅威があるから国民は国を信頼してデータをちゃんと蓄積して、その代わり、いざというときにそれで自分たちのケアをしてくれると考えている。そういう意識は非常に強いと思っております。これにつきましては、いろいろな国があり、ヨーロッパ内でも事情が違いますけれども、かねてからフィンランドやデンマーク、エストニアの場合には、そのための仕組みとそういう形での国民のデータ利用について、蓄積についての了解が、言わば国民の全体的な合意として成り立っていたと私は理解しています。
そういう意味で、日本の場合に同じようなことが言えるかどうかは分かりませんけれども、どういう形でこのデータを使うかが、国民、我々一人一人にとってどういうメリットがあるかということについては、もう少し掘り下げて考えていく。その中で同意を位置づけるのか、あるいは同意に代わる方法を考えていくのか検討していいのではないかと思っております。最後に場違いな話をしてしまいましたが、そういう事情もあるのではないかと思っているところでございます。
それでは、特に御発言はよろしいでしょうか。
特に御発言がないようでございますので、そろそろ終了にしたいと思います。
それでは、進行を事務局にお返しいたしますので、よろしくお願いいたします。
○厚生労働省事務局:本日も闊達な御議論をいただきまして、誠にありがとうございました。
また、製薬協さま、それから、吉原先生、國土先生、お忙しい中最後まで御議論に御参加いただき、誠にありがとうございます。改めて御礼を申し上げます。
本日、様々な論点をいただきました。次回の会議でございますけれども、1週間後の4月20日水曜日15時からを予定しております。今日いただいた論点を全て網羅的に整理してということまでは難しいかとは存じますけれども、諸外国の事例等々も整理をしているところでございますので、その辺りを一部でも御紹介し、さらに議論を深めていただきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、本日の会議はこれで閉会といたします。また来週、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
 

(了)

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