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2022年3月23日 第1回医療分野における仮名加工情報
の保護と利活用に関する検討会

医政局総務課

○日時

令和4年3月23日(水)15:00~17:00

 

○場所   TKP新橋カンファレンスセンター 千代田区内幸町1-3-1 16階カンファレンスルーム16B 会議室


○議事

○厚生労働省事務局:定刻になりましたので、ただいまから第1回医療分野における仮名加工情報の保護と利活用に関する検討会を開催いたします。構成員の皆さま方におかれましては、ご多忙のところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
それでは、まず会議に先立ちまして、構成員の先生方、本日の会議を途中で出られる方もいらっしゃいますので、その点だけご紹介申し上げます。まず、中島構成員におかれましては本日はご欠席と事前に伺っております。また、石井構成員、落合構成員、宍戸構成員、松田構成員の4名が16時ごろに退室のご予定と伺っておりますので、あらかじめご了承いただければと存じます。
また、本日はコロナ対策の観点からウェブの開催とさせていただいております。また、この検討会の内容でございますけれども、厚生労働省のYouTubeチャンネルにおいて公開をしております。
委員の皆さま方におかれましては、発言を希望される際にはZoomの挙手機能によりご発言の意思を表明していただきますようお願いをいたします。
続きまして、本日の会議資料でございます。委員の皆さまには事前にお送りをしておりますけれども、議事次第、委員名簿のほか、資料1から資料4までご用意をしております。不足等がございましたらお知らせいただければと存じます。
それでは、まず初めに検討会の開催に先立ちまして、医政局長より一言ごあいさつを申し上げたいと思います。
○医政局長:厚生労働省の医政局長でございます。
本日は、医療分野における仮名加工情報の保護と利活用に関する検討会、第1回の開催に当たりまして、年度末の大変お忙しい中、お集まりいただきまして誠にありがとうございます。委員の皆さま方におかれましては、日頃から厚生労働行政に格別のご理解とご協力を賜っておりますこと、この場をお借りして厚く御礼を申し上げます。
また、先ほど申し上げましたように、現下の情勢、まん延防止等重点措置は解除されましたけれども、なお油断できない状況が続いております。こうした中でウェブ会議という形での開催ですけれども、ご容赦いただきたいと思います。
さて、厚生労働省では、昨年の6月ですけれども、データヘルス改革に関する工程表を策定いたしました。この工程表の中で、来月から始まります令和4年度中に医療情報の保護と利活用に関する法制度の在り方に関して検討し、結論を得る、こういうこととされております。
この後、個人情報保護委員会、あるいは内閣府の健康・医療戦略推進事務局、こちらからご説明があると思いますけれども、ご承知のように、近年、医療分野では、個人情報の保護と同時に、これをどうやってうまく利活用していくか、この双方の側面からさまざまな議論があり、そしてさまざまな制度改正がなされてまいりました。
こうした到達点の中で、さらに医療分野の個人情報を、権利保護と利活用の双方の観点から、もう少し、もう一歩進んで整理をしていこう、これが今回のこの検討会のテーマだろうと思っております。
われわれ、この検討会では、国民一人一人に対する良質な医療の提供、あるいは多様な疾患に対する有効な治療法の開発、さらにさまざまな研究開発等に資する、こうした視点からもう一歩進んで医療情報の利活用と保護の両立を図るための仕組み、これをぜひお考えいただきたい。われわれも知恵を出していきたいと思っていますけれども、そこにいろいろアドバイス、あるいは具体的な建設的な提案をお願いしたいと考えております。これから議論を始めてまいりますけれども、ぜひ忌憚(きたん)のないご意見を賜っていただきまして、課題を整理していきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。
このテーマに関しましては、国民の皆さまからの期待は非常に高いわけですが、同時に個人情報の取り扱いに関するご心配、ここにもしっかり応えていくと。なかなかの難しい課題ではございます。ぜひここでの議論を通じまして、さらなる良き知恵が紡ぎ出されて、次につながる大きな骨格というか、考え方、仕組み、これを考え出していただきたいと思っていますし、われわれもそのつもりで一生懸命努力していきたいと思っております。何卒、最後までよろしくお願いいたします。
以上、簡単ではございますけれども、会議開催に当たりまして私のあいさつとさせていただきます。よろしくお願いいたします。
○厚生労働省事務局:ありがとうございました。なお、医政局長でございますけれども、公務の関係がございますので、途中で退席させていただきますことをあらかじめご容赦いただければと存じます。また、円滑な議事進行のため、頭取りはここまでとさせていただきます。よろしくお願いいたします。
それでは以後の議事運営につきましては、森田座長によろしくお願いいたします。
○森田座長:森田でございます。皆さま、こんにちは。私は座長を拝命いたしましたが、今後の進行につきましては、どうぞ皆さま方の協力によるものですので、よろしくお願い申し上げます。
それでは、時間がないということでございますので、早速ですが本日の議題に入らせていただきます。本日の議題は、医療分野における仮名加工情報の保護と利活用に関する現状と課題についてでございます。
最初に事務局から説明をお願いしたいと思いますが、個人情報保護委員会、内閣府からもご説明があると伺っておりますので、厚生労働省、個人情報保護委員会、内閣府、厚生労働省の順番で説明をお願いしたいと思います。それでは、厚生労働省からお願いいたします。
○厚生労働省事務局:厚生労働省でございます。まず、冒頭の資料1と資料2-1について、私のほうから説明を申し上げたいと存じます。
資料1は検討会の開催要項でございまして、趣旨でありますとか検討事項、これらにつきましては、先ほど医政局長より触れさせていただきましたので、この場では説明は割愛を申し上げます。
それでは資料2-1、お手元にファイルをお持ちの方はお開きいただければと存じます。資料1を1ページおめくりいただきまして、医療情報に関連する最近の制度改正の動向ということでございます。
元々、先ほど医政局長のほうからもごあいさつがございましたけれども、厚生労働省におきましては、データヘルス改革の工程表というものを昨年6月に策定いたしまして、さまざまな取り組みを進めております。参考資料ということで3ページ目以降に添付をしておりますけれども、この医療分野におけるデータヘルス改革というのも大変重要な課題の一つであると考えておりまして、例えば電子カルテの標準化に向けた取り組み等々、これはまた別の場でもご議論いただいておりますけれども、そういう取り組みを進めつつ、また、医療情報に関連する検討、これもしっかりと進めていこうということで、今回のこの検討会の場でご議論いただくというものでございます。
1ページ目でございますけれども、詳しくは後ほど個人情報保護委員会、あるいは内閣府のほうからご説明を頂くということになりますけれども、1ページ目、ざっと、この5~6年ぐらいの医療情報に関する最近の制度改正の動向を整理いたしております。
先生方はご案内の内容が多数ございますけれども、まず2015年に個人情報保護法の改正というものがあり、ここで、例えば要配慮個人情報の規定の整備でありますとか、あるいは匿名加工情報に関する規定の整備、こういったものが行われました。それから2017年、こちらでは次世代医療基盤法が成立しまして、翌年、2018年から施行がされております。また2020年、2021年、いわゆる令和2年、令和3年の個人情報保護法改正ということで、例えば仮名加工情報の創設でありますとか、あるいは2021年、令和3年の改正でありましたら、官民一元化、法律が3つあったものを1本の法律にしていこう、そんなような改正等々も行われております。そして、令和2年、令和3年の改正、先ほどもご紹介をいたしました仮名加工情報の話等々につきましては、基本的にはこの4月から施行されると。こういう形でこの数年、さまざまな制度改正が行われているという状況でございます。
それ以降の参考資料、この場では説明を割愛いたしますので、引き続き個人情報保護委員会さんのほうからご説明を賜ればというふうに存じます。よろしくお願いいたします。
○森田座長:それでは続きまして、個人情報保護委員会の方からご説明をお願いいたします。
○個人情報委員会事務局:個人情報委員会でございます。それでは私のほうから資料2-2に基づきまして、令和2年、令和3年の個人情報保護法の改正の内容についてご説明いたします。
まず最初に2ページでございます。ご覧になっていただいてお分かりになると思いますが、近年の個人情報保護に関する関心の高まりや、また技術の進歩等を踏まえまして、それに対応するために、近年頻繁に広範な法改正を行っているところでございます。
続きまして3ページでございます。このうち、令和2年には、いわゆる3年ごとの見直し規定に基づく法改正といたしまして、個人の権利利益の保護と活用の強化、また越境データの関係のリスクへの対応、AI、ビッグデータ時代への対応等を目的に法改正を行っております。この法律の中身はこの後程説明いたしますが、来週4月1日に全面施行されるということになってございます。
続きまして、下のほうの令和3年の法改正でございますが、これはデジタル庁設置に伴う法案の関連法として成立していただいたものでございますが、先ほどご説明があったとおり、官民一元化等をその目的としております。この法律につきましては、国に関係する部分については今年の4月1日に施行されることになっておりまして、地方自治体に関係する部分については、来年、令和5年の春ごろの施行を予定してございます。
それでは、令和2年改正法についてご説明したいと思います。資料の5ページでございます。見ていただくと分かるとおり広範な改正を行っておるわけでございますが、例えば2のマル1のところにございますように、漏えい等が発生して大きな影響を与えるような場合、一定の類型を定めまして、委員会への報告や本人への通知を義務化するといったような改正を行っております。
また、この検討会でも議論のテーマになると思っておりますが、4のマル1のところにございます、氏名等を削除した仮名加工情報という枠組みを創設いたしまして、内部分析に限定することなどを条件に一定の義務を緩和する、そういったような改正を行ってございます。
資料の6ページでございます。現行のほうを見ていただきたいと思います。まず、個人情報に該当する場合には、一般的なルールとしまして、利用目的の制限とか第三者提供の制限に関する規律が適用されます。端的に言うと、原則同意を取ってからこういったことを行ってくださいということになってございます。この個人情報の原則に対しまして、平成27年法改正で匿名加工情報という枠組みを設けております。これは右上のところにありますとおり、特定の個人を識別することができず、復元することができないというような情報になります。加工の程度としては、本人か一切分からない程度まで加工したものということになります。よって、対応表のようなものも削除いただくということになっております。これにつきましては、個人を識別できない、復元できないということから、利用目的の制限だとか第三者提供同意取得義務というものが不要とされております。ただ、識別行為は禁止されております。
これに対しまして、令和2年改正で、イノベーションを促進する観点から仮名加工情報という新しい枠組みを創設させていただきました。これは内部分析に限定するということを条件に、以下の義務を適用除外とするというものでございます。改正後の右側に書いてありますとおり、利用目的の変更の制限でありますとか、漏えい等の報告等でございますとか、開示・利用停止等の請求対応、こういったものについて義務を除外するというような枠組みを創設しております。
仮名加工情報というのは、他の情報と照合しない限り特定の個人を識別することができない、つまりそれ単体では誰の情報か分からない程度の加工を求めるといったものでございます。対照表と照合すれば本人が分かる程度まで加工するといったものになります。
これについては、先ほど申しましたように、漏えい等報告、開示・利用等の請求対応といったようなものが対象外となっております。識別行為は禁止されておりますが、あと、第三者提供につきましては原則禁止で、他の法令上の定めがある場合に限って認められるということになっております。
この仮名加工情報ですが、当初の想定としましては、製薬企業等において研究開発する際に、当初の目的とまた別の目的で研究するような可能性があるといったような場合に活用できる枠組みということで想定しておりますし、いったん当初の利用目的を達成した個人情報について、仮名加工情報に加工した上で保管して、後々利用するといったようなことを想定しております。
続きまして、令和3年改正法についてでございます。マル1にありますとおり、まず現在、現行と書いてある左の資料にありますとおり、総務省と個人情報保護委員会がそれぞれ所管する行政機関向け、独法向け、民間向けと3つに分かれている個人情報保護法を一本化しまして、個人情報保護委員会がまとめて所管するという改正を行っております。
2つ目は、同じ病院であっても、それが国公立の病院なのか、民間の病院なのかによりまして、現行適用される規定が異なることになっておりますが、これを民間の規定に統一するという改正をやっております。マル2の部分でございます。
3つ目でございますが、学術研究機関が学術研究目的で個人情報を利用する場合は、現行の個人情報保護法では適用除外とされております。これをいったん適用ということにしまして、規律を精緻化しております。具体的には左にあるとおり、現行法では学術研究については適用除外となっておるものを、利用目的の制限だとか要配慮個人情報の取得制限、第三者提供の制限のようなものについては引き続き例外規定として位置付けた上で、例外的な取り扱いを許容している一方で、安全管理措置等については学術研究機関等による学術研究にも適用があるというような整理を行っております。
以上、非常に駆け足になりましたが説明を終わります。
○森田座長:ありがとうございました。それでは続きまして、内閣府のほうからご説明をお願いいたします。
○内閣府健康・医療戦略推進事務局:内閣府健康・医療戦略推進事務局でございます。次世代医療基盤法につきまして、簡単にご説明をさせていただきたいと思います。
画面を共有しておりますが、まず1ページ、この制度の概要でございます。次世代医療基盤法と略称で呼んでおりますが、正式名称はここに記載しているとおり、医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律ということでございます。カルテなどの個々人の医療情報を匿名加工して、医療分野での研究開発の活用を促進しようという法律でございます。
先ほどの個人情報保護法の中では、医療情報は要配慮個人情報というカテゴライズがされておりますので、第三者提供に際しては、あらかじめ本人同意が必要になってまいりますが、次世代医療基盤法の中でこの部分に特例を設けまして、下の図で見ますと、病院などから患者さまに利用するという通知をしまして、申し出などにより提供停止を希望されない場合には、医療情報を、認定事業者という、特別に厳格な管理と確実な匿名加工の技術を持った事業者に提供するということを可能としているものでございます。
この認定事業者につきましては、内閣府をはじめとする主務府省による厳格な審査に基づいて認定をして、守秘義務、それから厳格な情報セキュリティの下で、個人情報として医療情報を保有することを認めてございます。
その上で、実際には匿名加工をした上で、大学、製薬企業などの研究現場に医療情報を提供し、ここで研究に役立てていただく。そして、その成果を新薬の開発などの形で社会に還元をする、こういうエコサイクルを回すための法律ということで制定されてございます。
認定事業者につきましては、現在2つ存在してございますけれども、このような厳しいセキュリティを国として求めているところでございます。例えば情報セキュリティの面で見ますと、組織的、人的なリスク要因の徹底的な排除、また、基幹システムについてはオープンネットワークから分離をするということを求めております。また、多層的な防御対策ということで、アクセスログの監視、また暗号化、そういったことも厳しく求め、実際に内閣府として実地での監査をするなどして担保しているところでございます。
また、利用、提供する際につきましても、認定事業者におきまして、実際に利用申請された方の利用目的、それから利用内容が科学的なのかどうか、そういったことも審査をし、また、研究開発に係る金銭的な状況、そういったものも審査をした上で、個別に提供を決定してございます。
また罰則につきましても、個人情報保護法よりも重たい罰則、また、国家公務員の守秘義務違反よりも場合によっては重たい罰則というものを科して、厳重に管理をするということを行ってございます。
そういった管理下で、現在2つの事業者が運営していただいておりますけれども、一般社団法人ライフデータイニシアティブ、こちらが2019年12月から事業を開始しておりまして、契約施設、医療機関の数、55施設と契約をし、2月現在で約130万人分の医療情報、カルテデータを収集してございます。実際にこのデータをもとに14件の利活用の実績につながってきてございます。
もう一つ、一般財団法人日本医師会医療情報管理機構、こちらについては2020年6月からスタートしておりますけれども、52施設と契約し、2月現在で73万人分ということで、2つの認定事業所を合わせますと約200万人分を超える医療データが集積しつつあるということでございます。また、こちらについても利用実績2件ということで、まだ少なくはございますけれども着実に伸びてきているというところでございます。利活用実績の事例ですけれども、このような形で、まだフィジビリティスタディのものが多い部分もございますけれども、徐々に増えてきているという状況でございます。
次世代医療基盤法が2017年に成立しまして、18年5月から施行されてございますけれども、施行後5年目の見直しということが法律に規定されてございまして、その見直しの必要性や内容について検討するためのワーキンググループを、設置を昨年12月から開始してございます。座長につきましては、この検討会の構成員も務めていただいております、宍戸先生にお願いをして進めているところでございます。
検討事項といたしましては、医療情報の収集に関する事項ですとか、また利活用のしやすさ、そういったことについての検討、そういった幅広く検討してございますが、昨年12月から合計3回ヒアリングを行ってまいりました。実はちょうど明日、第4回目のワーキンググループで論点整理を議論する予定でございますが、その後、あと2回ほど議論をした後、夏ごろには一定の方向性を取りまとめていきたいというふうに考えているところでございます。
以下、参考資料に少し付けておりますが、こちらが医療情報を提供いただく医療機関の分布でございます。まだ大きな大病院中心ではございますけれども、一部、例えば青森県弘前市のように自治体ぐるみで提供しようという、そういった試みも始まっているところでございます。
また、これはワーキンググループでの検討の中で頂いた主なご意見を、ここに参考資料として添付してございます。本人への通知をもう少し簡素化して医療機関の負担を軽減するべきではないか、そんなご意見も頂いておりますし、また、匿名加工して使うわけですけれども、その基準について、もう少し規制の強化と併せて柔軟化する余地があるのではないか、そんなご意見も頂いているところでございます。
簡単ではございますけれども、次世代医療基盤法についての施行状況、検討状況についてのご紹介でございます。ありがとうございました。
○森田座長:ありがとうございました。それではもう一度、厚生労働省のほうからお願いいたします。
○厚生労働省事務局:厚生労働省でございます。では私のほうから最後、資料3の資料についてご説明を申し上げたいと存じます。ページ数を前後いたしまして大変恐縮です。一番最後のページ、3ページ目をご覧いただければと存じます。
ただいま、個人情報保護委員会でありますとか、あるいは内閣府から、それぞれの制度改正、あるいは制度の運用状況をご説明いただきました。そういったものをイメージといいますか、概念図ということで、分かりやすくわれわれなりに整理をしたものが、資料3の3ページ目でございます。
横軸が情報の粒度といいましょうか、個人情報、顕名の情報なのか、真ん中、仮名加工情報で、一番右側が匿名の加工情報。下の縦軸が、一次利用か、二次利用かということでございまして、基本的に一次利用で使う場合には、患者さん個人は治療目的でありますから、ご本人に同意を得て使っている、例えば病院で情報を取得する、あるいは紹介先の病院に情報を提供する、そういうやりとりになりますので、ここについて問題になるということは基本的にはないだろうというところでございます。
その上で、下の二次利用というところで、少しいろいろとビジーな資料になっておりまして、若干恐縮ではございますけれども、一番左側、個人情報、顕名という欄を縦にご覧いただきますと、こちらは例えばがん登録推進法のように特別な立法措置を作りまして、データベース、ご本人の同意を得ないで顕名の情報を取得するケース、あるいはその下に難病とか小児慢性とか、あるいは学会等のレジストリ、こちらは基本的に同意を取って顕名情報を取得するケースという形で、個人情報を二次利用する場合のケースというものは縦に整理しております。
それから、逆に一番右側、匿名の加工情報というところでございまして、これは右側のちょうど真ん中ぐらい、例えば高齢者医療確保法等々ということで、これはNDBの関係でこういう形で法的な手当てがございますし、一番右下、次世代医療基盤法、ただいまご紹介がございましたけれども、丁寧なオプトアウトというものを前提に、個人情報を認定匿名加工事業者に提供すると。こういう法的な手当てがなされているわけでございます。
ちょうど真ん中を埋める形で、今回、個人情報保護法が改正をされまして、仮名加工情報という仕組みができたといいますか、4月から施行されるわけでございますけれども、まず先ほどの個人情報保護委員会のほうからもご紹介がございましたけれども、内部分析等への利用ということであれば改めてご本人の再同意を取る必要はないというところで、ここまでは法的な手当てができているというところで、残されているといいますか、それを第三者へ、例えば提供するという場合については、そこについては法的な手当ては今のところ行われていない。ちょうど一番下の黄色い点線の部分です。こういう形で全体のマトリックス、鳥瞰(ちょうかん)図を整理しております。
こういう中で、1ページ目、2ページ目に戻っていただきまして恐縮でございますけれども、本日ご議論いただきたい事項ということで、事務局のほうで若干文字に起こした形で整理をしております。
1ページ目は個人情報保護、データの利活用という観点からです。1ページ目でございます。2ページ目は患者本人の納得とか理解、いわゆる情報の保護という観点から論点立てをしております。
まず、1ページ目のほうを簡単にご説明申し上げますと、まず1ページ目の大きな1本目の柱、個人情報保護法の改正により期待される効果ということで、令和2年の個人情報保護法改正、令和3年の個人情報保護法改正、さまざまな課題に対応する形で改正が行われてきたわけでございますけれども、それによって個人情報保護法でいろいろと指摘されてきた課題、医療情報の利活用と保護という観点から、どの程度解消されて、まだ依然として課題が残っているのだとすればそれはどういったものだろうかという観点で、一つ論点を起こしております。
それから、一番大きな柱の2つ目でございますけれども、先ほどの個人情報保護委員会の資料にもありましたけれども、イノベーションの促進という観点から仮名加工情報という仕組みを作ったわけでございますけれども、これにつきましても内部分析目的であれば、当初の利用目的には該当しない場合であっても、匿名加工情報よりは詳細な分析が可能という形になっておるわけでございますけれども、これによって創薬等の場面でどういう効果が見込まれるだろうかという点について、ご意見を賜れればと考えてございます。これが1番目の柱でございます。
それから1ページ目、下2本目の柱、研究開発あるいは創薬、医療機器開発等の場面で必要な情報とその利活用の実態ということでございまして、そもそもこういう研究開発とか創薬、医療機器開発等の場面で、実際に具体的な情報としてどういうものが必要なのだろうか、あるいはこういう場面で医療情報が十分に利活用されていないとすればどういう課題があるのだろうか。それは法的な課題もあるのでしょうし、あるいは運用面、実務面での課題もあるでしょうし、そのあたりを若干の仕分けをするような形でご議論いただければと思っております。これが大きな2点目でございます。
それから2ページ目でございますけれども、大きな3点目。情報使うというのはもちろんそうなんですけれども、患者ご本人の理解、あるいは納得というものが大変大事なわけでございます。2ページ目の一番上の黒丸、個人情報の目的外利用とか、あるいは第三者提供等に当たっては、公衆衛生の例外規定等々に該当する場合を除きまして、原則ご本人の同意が必要になるわけでございます。また、医療情報の多くは要配慮個人情報に当たるわけですけれども、これについても取得に際して原則ご本人の同意が必要ということでございます。
そういう中で、この同意というものを考えてみた場合に、いろんな指摘があるわけでございますけれども、そもそも同意を取るという手続き、これが大変だというようなお声があることは一定事実であるわけであります。一方で、また患者ご本人にとってみても、どの範囲、あるいはどういう目的で同意を与えたのかというのが明確じゃないと。ですので、そういう意味でご本人さまはもとより、情報を使う側にとってもなかなか使いにくいという指摘がされることもございます。
また、その一方で、そもそもお医者さまと患者との関係が必ずしも対等ではないのでなかろうかと。それから、患者自身が本当に理解している、あるいは納得した上での同意になっているのだろうか。また、医療情報の意味とか価値に対する理解、ここもギャップがあるのではないか。そういうことを踏まえた対応が必要ではないかという指摘もあるということでございます。
こういった点なんかも踏まえながら、患者ご本人のお立場、あるいはご意向に十分配慮した、より透明で客観性の高いルールの在り方、同意の在り方も含めてということになりますけれども、そのあたりについてどう考えていけばいいだろうかという点について、忌憚のないご意見を賜れればというふうに考えてございます。
厚生労働省からの説明は以上でございます。
○森田座長:ありがとうございました。ほぼご時間どおりに進行しております。本日は第1回目の会議でございますので、皆さん、いろいろなご意見をお持ちだと思いますし、今後どういう形で議論を進めていったらいいかということについて考える手掛かりといたしましても、委員の皆さまから忌憚のないご意見をまず伺って議論を進めていきたいと思いますけれども、それでよろしいでしょうか。ありがとうございます。
それでは、お一人ずつご発言いただきたいと思いますけれども、冒頭にお話がございましたように、石井先生、落合先生、宍戸先生、松田先生は16時をめどに退出されるということでございまして、あと25分ぐらいでございますので、その4先生からの取りあえずご発言を頂ければと思います。
それでは、石井先生、よろしいでしょうか。お願いいたします。
○石井構成員:中央大学国際情報学部の石井です。よろしくお願いいたします。ちょっとトップバッターでにわかに緊張が高まっておりますけれども、ご説明を伺いまして、少し検討してみたらいいかなと思ったことについてお話させていただきたいと思います。
この検討会は、医療情報を仮名加工情報にして利活用していきたい、そのような趣旨の検討会であると理解しておりますけれども、例えば次世代医療基盤法の、資料2-3の例えば利活用実績一覧を拝見していまして、着実に進んでいるというご説明ではあったんですけれども、このスピード感でいいのかとか、仮名加工情報以外の利活用の場面でも課題があったりしないのかとか、総合的に検討しなきゃいけないかなというふうに思ったという点が1点あります。
令和3年の個人情報保護法改正で学術研究利用の例外の在り方が変わりましたけれども、これによって医療情報がどのようなケースで使うことができるのか。3点セットというのですかね。学術研究利用と次世代医療基盤法と仮名加工情報と。それぞれの制度を用いて、医療情報がどこまで利活用し得るのかをユースケースなどを踏まえて検討してみて、何が利活用の足かせになっているのかということを洗い出していって、初めて適切な議論の在り方が見えてくるのかなと思ったというのが1点ありました。
それから、同意のところなんですけれども、ページでいいますと資料3の2ページです。同意取得手続きの煩雑さですとか、患者自身がどういう範囲で同意を与えたか明確でないですとか、情報を利活用する主体にとっても使いにくいというご指摘のところは、これは同意をしたかどうかが見えるような仕組みを作っていく必要があるのかなと思います。これは医療情報に限らないかもしれませんが、ダッシュボードみたいな感じで、何に同意を与えたかをあとから確認できるような何かしらの仕組みがないと、この課題というのはいつまでも残り続けてしまうかなという感じが、印象を受けたという点があります。
それから、仮名加工情報自体については内部分析等に利用可能という制限があるわけですけれども、この制限で仮名加工情報を使いたい側の、医療情報を使いたい側の専門の先生方にとって、この制度が果たして期待どおりのものなのかどうかというのも認識を合わせていく必要があるかなと。そのようなことをご説明を伺いながら感じた次第です。
非常に雑ぱくですけれども、差し当たり以上となります。ありがとうございます。
○森田座長:ありがとうございました。それでは落合先生、お願いいたします。
○落合構成員:ありがとうございます。本日はまず広く議論ということですので、何点か、さまざま気付いたところについて、コメントさせていただければと思っております。
1つが、まず医療情報の利活用に当たって、ルール面の整備は重要ですし、運用という点にも特に着目して、資料のほうは整理いただいている部分があります。しかし、それに劣らず、基盤となるようなデータベースの整備だったり、それに対する連携が進むような仕組みというのをどういうふうに整備をしていくのか、これの両軸がやはり必要なのかなと思っております。諸外国でも医療情報の利活用が進んでいるといわれる国などでは、やはりデータ連携についての司令塔をつくって、ルール面もそうですし、データの基盤の分野でも整備をしていることがあろうかと思います。
ですので、今回のスコープにどこまで入るのかはあるとは思いますが、基盤となる部分をどう考えていくのかは、やはり念頭に置きながら議論すること自体が重要だろうと思っております。
2点目として、ご議論いただきたい事項というので書いていただいた2番の中で、医療情報の利活用について、法制度なのか、運用面、実務面なのかということで記載いただいているところがあると思っております。先ほど申し述べた基盤については、ここでもやはり基礎になるとは思います。そもそも情報を集めること自体に手間が掛かったりですとか、それによって仕事が増えるという形ですと難しい面が出る可能性があります。コロナの対策なんかでもなかなか情報を適時に入力してもらえないこともありました。そもそもそこを指して実務と言うべきなのかはあると思いますが、着目すべきことではあろうかと思います。また、自治体と健康医療に関して進める際には、スマートシティーの文脈などでもよく議論されることがございます。そういう中では必ずしもルールそのものだけではなくて、現場でご判断される方にとって、どういう事項を考慮して、どういう相手であればどういう形でデータを渡してよいのか、といったあたりの、ルールそのものというよりは、もう少し実務運用が重要だと思います。そういった整理がなかなかされていないので情報を授受しにくい場合があるということです。私が参加している会議体として、東京のウェルネスデータの利用に関する検討会がありますが、自治体の方からそういうお話があったりしました。そういう問題を解決するために、ルールよりもう一段下の実務上の課題の整理だったり、事例集の整備も行っております。私も本職のほうはルールに関する業務ですが、ルールのことはおっしゃられる先生が多いのではないかとも思いましたので、それ以外の運用ですとか基盤に関する事項について主に申し上げさせていただきました。
最後にルールについてですが、今回の会議の中で、仮名加工情報だけではなく公衆衛生例外や学術研究例外の部分についても整理がされている部分があります。確かに個情委さんのほうもそこで、例えばコロナの研究に使ってもらいたいということで、公衆衛生例外のところのQ&Aなんかも整備されているとは思います。もちろん個別具体の差し迫ったユースケースにおいてこういうものが整備されているのはいいことだと思いますが、国全体の情報利活用の基盤になるようなルール整備を、そこの公衆衛生例外のQ&Aの解釈のところだけに委ねるというのは、ちょっと難しいところがあると考えております。学術研究例外についても、医学研究者の中で使っていただく部分にはよいということもなるかとも思いますが、一方で医療機器メーカーや製薬企業が関わってきた場合には、十分なルートにはならないであろうと思われます。そういった中で、匿名加工情報や仮名加工情報という議論になってきているのだろうとは認識しております。
特に匿名加工情報のほうについて考えますと、やはり次世代医療基盤法の議論があると思っております。諸外国と比べたときに、例えばイギリスですとかフィンランドですとかを調査したことがございますが、そういうところと比べると、匿名加工を行う機関があるというだけではなくて、それとデータベース自体をどうつなげるかまで考えられております。個別に交渉して集めていくという方式ですと、なかなか情報の匿名加工での利用は進みにくいというところはありますので、全体として合わせて整備していくことも重要だろうと考えております。
私のほうは、どちらかというと仮名加工情報以外の周辺的な論点の議論が多かったかもしれませんが、そういう点についてもぜひ今後の議論の際に取り上げていただけるところがあれば、念頭に置いて議論いただければと思いました。すみません。雑ぱくでしたが以上でございます。
○森田座長:ありがとうございました。それでは続いて、宍戸先生、お願いいたします。
○宍戸構成員:東京大学の宍戸でございます。私からも冒頭に何点か、途中で退出して申し訳ございませんが、申し述べたいと思います。
1つは、これまでお話がありましたように、医療情報の利活用と保護のバランスを取るということは、個人情報保護委員会が所管されている個人情報保護法の下で、厚労省でこの場でこういうご検討されるということと、先ほど健康・医療戦略室からお話がありましたように、現在、次世代医療基盤法の運用、それから見直しを巡って議論している。
それからもう一つは、いわゆる準公共分野の代表例ということで、デジタル庁においてもご検討がなされていると承知をしています。
これらのそれぞれの検討が有機的に連動するように、差し当たり私について申しますと、先ほどありました次世代医療基盤法の見直しと、ここの場での検討ということがあろうかと思いますが、うまく連携しながら、そしてそれぞれの役割を的確に果たしながら進めていくということが大事かなと思っております。これが進め方に関してでございます。
2点目で、仮名加工情報の利活用についてでございますが、座長から自由に発言していいとおっしゃいましたので、自由に発言をさせていただきますが、これに過剰な期待をあおるような議論は私はしないほうがいいだろうと思っております。基本的には今日、個人情報保護委員会様からお話がありましたように、内部利用をする、それから本人を識別することをしない前提での制度でございますし、言ってみたら、元々個人情報である、個人情報としての規律はかかっている。ただ、仮名化することによって安全管理上、一定の規律を逃れたり、また利用目的を超えて、利用目的を超えたら本来捨てなければいけないわけですが、持っていて何か違うことに使えるようになった。それは非常に大きな進歩でありまして、ただ、それを超えて、この仮名加工情報というのはイノベーションを実現するための制度なんだ、だからイノベーションのために何にでも使えるんだという感じのものではないはずのものであります。
そうした観点から見たときに、この仮名加工情報という制度が、現在の医療、創薬、それから医学研究において、果たして今の制度だとどういうニーズがあるのか、どういうことにうまく使えるのか。それに対して差分といいますか、本当はこういうことがやりたいんだけれども、この仮名加工情報制度では実はこういうことはできないということを丁寧に明らかにした上で、さてどうしようかということをしっかり議論することが大事なのかなと思っております。
同じことは、これまでご発言がありましたように、同意に基づく個人情報の利用、それから公衆衛生例外としての利用、そもそも利用目的を特定しての利用といった、個人情報保護法上の基本的な規律、それから今申し上げた仮名加工情報、それから匿名加工情報、それぞれについて言えることでありまして、それぞれの制度の本義から見たときに、使える部分、使えない部分、そしてその総和の中で、やりたいんだけれどもやれないことは何だろう、あるいはこの仕組みをうまく使えば実はやれるんじゃないかといったことを的確に整理していくということが、存外行われていないように感じますので、していったほうがいいのではないかということを申し上げておきたいと思います。
大体私が申し上げることは石井先生と基本的に同じこと程度しかないですけれども、同意についても石井先生と同意見でございまして、健康・医療戦略推進本部で健康・医療データ利活用基盤協議会でも若干そういう議論をしたことがございますけれども、基本的には同意のマネジメントの基本的な仕組みというものを最終的には作っていくということが考えられるのではないかと思います。
それからもう1点だけ申し上げますけれども、令和3年改正によって、先ほどお話がございましたように、公的部門と民間部門、それから、来年になりますが、国と地方の間の規律が統一される、それから地方公共団体の病院、それから地方の独法の病院も含めて全部規律がそろうわけでございます。
規律がそろうわけでありますが、果たしてそれでうまく連携医療をきっちりやっていけるのか、そこに向かってどういう課題があり、個情委さんでいろいろお考えになることがあろうかと思いますけれども、こと医療という分野においての一次利用といいますか、医療を的確に進めるためにいろいろな自治体病院と、あるいは民間病院と公的な病院の連携について、どういう点が問題があるか、あるいはこういうことを情報発信していったらいいのではないかというようなこともきっちり整理していった上で、委員会さんに進言するということもこの場からあっていいのかなと思ったところでございます。
長くなりましたが、私からは以上でございます。
○森田座長:ありがとうございました。それでは、松田先生、お願いいたします。
○松田構成員:松田でございます。もう今までにいろんな先生が言われたことともかぶるんですけれども、特に落合構成員が言われたことは非常に重要でありまして、使う情報の標準化みたいなものをきちんとやっておかないと、多分これが一番問題になるのが、それぞれのユースケースで、例えば倫理審査なんかを通すときにばらばらになってしまうのです。現時点では倫理審査を受けるときに、それぞれのところの情報の持ち方とかがばらばらになっているためにかなりの混乱が起きています。あるところではかなり厳しかったり、あるところではすごく緩かったり、いろんなことが起こってきます。
結局、そういうところからいろんな穴が出てきて、そこでいろんな事例が出て、あまり好ましくない事故が起こってしまいますので、そういう意味では諸外国がやっているように、情報基盤の標準化ということをきちんと併せてやっていかないとまずいだろうなと思います。
あと、もう既にいろんなところでいろんなことがやられていて、でも、実際にこれで何ができるのかという具体的なユースケースを考えながらやっていかないとまずいのかなと思っています。私自身が考えるのは、多分こういうことをやることによって、恐らく今までなかなかできなかった多施設の共同の臨床研究みたいな、特に治験ができるようになってくるのだろうと思うのですけども、そのときにそれができるためには情報基盤がそろっていること。それから、あと、いろんな関連のルールが共通化されていることが大事になります。いわゆるルールがそれぞれの倫理委員会とかでばらばらになっているとできませんので、そういう意味では国にきちんとした方針を示していただくことがとても重要なのかなと思っています。
あと、こういうのは諸外国はやられているのですけれども、フランスなんかだとCNILという組織があって、いろんなものを国で一括で審査するという仕組みができています。委員会があって、そのときに情報のセキュリティのレベルに応じて、委員会でやるもの、あるいは形式的に書類だけ出してもらうものという形でやられているのですけれども、あと、いろんな審査のやり方とか監査のやり方とかそういうものを参考にして、少し、いろんな委員の先生が言われたみたいに、ルールも大事なんですけれども、それを適用するための枠組みについても併せて考えていく必要があるだろうと思います。以上です。
○森田座長:ありがとうございました。あと5分ぐらいございますけれども、今、ご発言いただきました4人の先生方で、さらに追加的にご発言はございますでしょうか。よろしいですか。
それでは、それ以外の先生方にご発言いただきたいと思います。どなたからでも結構でございますので、挙手をしていただいてお願いいたします。それでは長島先生、どうぞ。
○長島構成員:日本医師会の長島です。先ほどから話題に出ている、そもそもの情報データの標準化に関しては極めて重要かと思いますが、今、そちらは電子カルテの標準化などを検討する会のほうで検討中ですけれども、そちらとこちらである意味連携をしながらこの話を進めていくということが必要かと思います。
そのときはその患者さんの一次利用、例えば地域の医療連携において直接患者さんが使う場合の情報共有と、このような形のある意味二次利用におけるデータ活用というのがありますが、一次利用でちゃんとできるようにすれば、それが自動的に二次利用でも役立つというような立て付けにすることが重要だろうと思っております。
次に全般的な話として、資料3の一番最後の3ページの医療情報に適用される法令の全体像、概念図で申しますと、匿名加工情報の右側の高齢者医療確保法に関するNDBデータ、あるいは介護データベースデータの情報提供に関する審査の委員をしておりますけれども、ここでも非常に厳しく厳格な審査をしておりますし、また、当初は非常に厳格なルール、判断の下で始めて、状況を見ながら、安全性を確認しながら少しずつ活用範囲を広めていったという経緯があります。やはりこのような形が望ましいと思います。
また、下側の次世代医療基盤法に関しましては、一般財団法人日本医師会医療情報管理機構、これが国から認定を受けた匿名加工事業者ですけれども、そこの統括管理責任者もしておりますが、まず、ここの国から認可を受ける時点で極めて厳しい審査でした。さらに情報提供に関しても審査会でしっかりと審査しているというところです。
ここがまだ始まったばかりですけれども、これからの活用ということであれば、そちら側の委員会で出ているような、例えばNDBなどの公的データベースとの連携、あるいは現在は削除しなければいけないとなっている情報を、ある程度安全性が保たれたということを確認した上で削除しなくても済むとなれば、さらに有効活用ができるだろうと考えています。
極めて厳格な審査をしてきた匿名加工情報の視点から加工仮名情報を見てみますと、やはりまずは国民、患者さんからしっかりと安心感、信頼感を獲得するということが大前提だと思っています。従って、前に同意した情報が、自分が思ってもいない、全然知らないところで他の目的に使われるんだということは、まだほとんどの国民、患者は知らないと思います。従って、このことをきちんと周知する必要があると思います。
あるいは、これからは同意を得るときに、それが将来、仮名加工情報という形で、ご自分が知らないところで知らない形で使われるんだということもきちんとお知らせする必要があると。その場合、例えば私はAという薬とかBという治療法に関する研究に関する情報提供は同意しますが、それ以外のことには同意しませんという権利が担保される必要があるんじゃないかと思っています。
これからまさに始まるところですので、国民、患者から信頼を得るために、きちんと各施設、研究機関等でこれが安全に実行されることが重要です。そのためにはしっかりとしたガイドラインなり、例えば外部委員も含めたしっかりとしたチェック体制など、そして、そのような情報を公開して、きちんと安心してできますよということが重要かと思います。
そして、先ほどもご指摘がありましたが、これは内部分析に利用するということだから本人の再同意なくして使えるんだということなので、これが例えば第三者提供できないということは非常に重要なので、ここに過大な期待をするべきではないと。しっかりとした本人同定ができないような形のものでやるべきであると。
仮名加工のときに共同利用というようなものがありますけれども、そこのところもよく注意して、安易に使われないようにするということも非常に重要だろうと思います。
従って、まずはここに関しては、国民、患者の信頼感が得られるような形で、まずしっかりと行う。それを進める上で、もう少し安全が確認されたら広げていくというやり方が重要。それよりはむしろ匿名加工情報のほうを、常に安全性が確保されているというとこで、むしろそこを広げていくというほうがいいのではないかと考えております。以上です。
○森田座長:ありがとうございました。それでは山口先生、手が挙がっていますので、どうぞ。
○山口構成員:ありがとうございます。COMLの山口でございます。私も、複数の方がおっしゃっていましたけれども、私もこの仮名加工情報を使った分析ということがどんなことに有効なのかという、そういったユースケースをまず具体的に教えていただいて、その上で議論をしていくということがないと、なかなかどんなことに有効でどんなことに有効でないのかということとか、気を付けないといけないこともなかなか分からないのかなと思いましたので、今後進めていく中でヒアリング等もあるようですけれども、そういったことを共有して始めたいと思っております。
1つ、事務局の方に質問なのですが、さっきから内部分析という言葉が何度か出てきていますけれども、この内部というのがどの範囲なのか。先ほど、例えば多施設共同研究みたいな話があったのですけれども、そうなったときに幾つかの医療機関で研究が行われているというときの内部がどうなるのかとか、例えば1つの病院だけという場合もあれば、複数の病院を持っていらっしゃるような法人もあるわけですので、その内部というところをどう規定されているのかを教えていただきたいというのが1つ、質問です。
ただ、患者本人の理解、納得をという3つ目の論点のところですけれども、私は今日説明の中でいろいろ制度改正が頻繁に行われてきたというようなご説明があったわけですけれども、こんなに頻繁に制度が変わっているということ自体、ほとんどの国民はついていけていないというのが現状だと思います。
そもそも次世代医療基盤法とか仮名加工情報とか匿名加工情報とか、オプトイン、オプトアウトもそうですけれども、そういった言葉を知っている方のほうが少ないということからすると、この制度や用語の理解の前提がないと、しっかり理解した上で同意するというようなことが国民にできないんじゃないかと思いますので、現状ではしっかり理解した上で同意するということは非常にハードルが高いのではないかなと思っています。
ですので、実際に運用するときに何に同意したのか、先ほどもご意見がございましたけれども、記録としてあとから確認できるようなものは不可欠じゃないかと思いますことと、いろんな言葉が非常に難しいので、何か用語解説集みたいなものが必要になってくるのではないかと思っています。
先ほど、さまざまな、いろんなところで関連の会議が行われていて、それの連携が必要だというお話がございましたけれども、私も次世代医療基盤法のワーキングに入っていますけれども、もちろんいろんなところで話し合われている内容の連携ということも大事なんですけれども、そういったことがある程度結果が出たときに、総合的な内容をどう国民に周知していくのか、そこを同時進行で考えないと、一部の専門家の方たちだけで議論していて、多くの国民は説明されて、なんかよく分からないけれども同意してというふうになってしまいかねないと思います。
先ほど長島委員からも、国民の信頼とおっしゃったのですけれども、信頼できるかどうかということを判断するときに、全く内容が分からないと信頼できるかどうかということの判断もできないと思いますので、これまでほとんど国民向けの周知ということが行われてこなかった分野ではないかなと思っていますので、ぜひそのあたりも同時進行で考えていきたいことだと思っております。私からは以上です。
○森田座長:ありがとうございました。それでは日置先生、どうぞ。
○日置構成員:ありがとうございます。各構成員の先生方からもうお話があったところ、重複するところが多くて恐縮ですけれども、まず、医療、ヘルスケアのデータの取り扱いを考えるときに、幾つか軸になるところがあるように考えております。
1つはニーズ。ここで言うと、落合先生からあったような連携基盤というケースもあるでしょうし、それが単体の機関であることもありますし、複数機関が関係すること、また、行政機関が入ってくることや地公体が入ってくること、主体がもろもろあるだろうというところと、あとはニーズというものがさまざまあるでしょうと。それが学術研究に限定されるものなのか、それとも開発になるのか、あるいはビジネスとしてヘルスケアのデータを使っていきたいというのか、そういったところの関係が一つと、もう一つが実務のワークフローとしてコストの問題、参入障壁なども考えなければいけないでしょうと。今と取り扱いが大きく変わるとか、あるいは対応できないということであると、そこで一つ障壁が生まれてしまうので、ニーズと実務フローというものはまず見なければいけない。
そこに対して、さらに個人情報保護法や次世代医療基盤法、こういったものを相関的に照らし合わせながら、実際にどうやっていくのかというのと、できそうにないという話が出てきたとき、ハードルが出てきたときには課題として整理してどう対応するのかというお話が出るかと思います。
さらにもう一つ大きな枠として、プライバシーリスクという観点もあろうかと存じます。ここまで、同意ですとか情報提供の仕方というお話がございましたけれども、ここはプライバシーリスクというものの工程を考えながら、法的にはこういう整理が可能だけれども、実際に実施するのか、あるいは実施するときに加えて何か措置を講じるべきなのかというところもお話が出てこようかと思います。
あとは、個人情報保護法と次世代医療基盤法のところに少しフォーカスさせていただいて、細かなところですが、まず学術研究例外に該当するのかですとか、あるいは公衆衛生の関係の例外に該当するのかというところで、一つ外れるのかというところがあるかと思います。次が匿名加工情報制度と匿名加工医療情報の取り扱いというところが出てこようかと思います。その上で仮名加工情報制度というものも検討していくのではないかと。
このときに、やはり例外規定というのは非常に強いものですので、該当性というのはかなり狭い範囲に限定されてしまうであろうと。そうすると、そこだけで対応していくというのは、先ほどのニーズですとか主体の関係、全部は難しそうだなという話が出てこようかと思います。
その上で、匿名加工情報といったとき、行政機関と、あとは国立大学ですとか、そういった国立の研究機関、こちらになると行政機関匿名加工情報の話になってしまいますので、なかなか民間と情報共有するというところがハードルが出てくると。募集提案をして、募集をして、審査をして、契約するなどというところもありますので、果たして匿名加工情報制度は使いこなすことができるのかというのが一つ課題かと思います。
また、匿名加工情報について対応表を残すなという形で運用変更がございましたので、仮IDを付けたり、要は同じ方のデータを匿名加工情報にして蓄積していって、それを経過観察するなんていうことができなくなるのではないかというところが、一つ課題としてございます。
ですので、今やれていることが、今後改正法施行後、4月1日からできないということもあり得ますので、果たして匿名加工情報で今ニーズを見たし得るのかは一つ検討課題になろうかと思います。
その上で、仮名加工情報のところですが、これは仮IDでなくても、IDを残してデータを蓄積して分析するということができますので、そういう意味では一つ、匿名加工情報ではできないけれども仮名加工情報ではできるというところが出てくるのかと思います。
他方、加工の程度との関係で、内部分析、要は1つの個人情報取扱事業者に主体をまず想定していただきたいのですが、こちらの1つの主体が仮名加工情報を作成して、利用目的の変更が自由ですので、そこで分析をしていきたいと。元々の利用目的とは違うものを使えるよと。
あとは事業者ごと、必ずしも一つの目的だけで動いているわけではなくて、A事業での利用目的、B事業での利用目的と分けて、プライバシーリスクにも配慮して対応しているケースがございます。そうすると、Aの目的というものとBの目的というものを定めた個人情報保護を突合しながら勝手に使う、マージして使うということはしづらいですので、そこの目的変更をして、Aの事業のデータもB事業も併せて仮名加工情報化して分析対象にするというのが、一つ、仮名加工情報のプラス要因なのではないかと思います。
さらに共同利用と委託、こちら、第三者提供を仮名加工情報は禁止されておりますけれども、共同利用であればアライアンス先を明確にしながら対応していくということは可能です。
先ほど来、プライバシーリスクの観点というお話もございましたけれども、なかなか個人情報保護法全般で、医療、ヘルスケアにフォーカスして、全てユースケースを洗い出して対応するということは難しいかと思いますので、この場で検討すべき課題なのではないかなと。実際のデータ、どのようなデータがあって、どのような主体がステークホルダーとして登場をして、そしてどのような法令、ルールがあって、それに対してニーズを満たしていくためにどうするかというのを見ていくのは、一つなのかなと思います。このときに実際にデータの突合の仕方ですとか、IDをどう残して共有していけるのかとか、そういったところの細かな問題も洗い出せればよいのかなと思います。
具体的な取り組みと運用ルール、モデルを作らないと、なかなか一般的に普及しないということと、さらにデータの主体の皆さまのご理解を得るための説明がし難いというところがあろうかと思いますので、一般的なルールの策定というもの、あるいはモデルケースの見せ方というのも、今回課題として設定していただくのがよろしいかなと考えております。以上でございます。
○森田座長:ありがとうございました。これで、本日は中島先生がご欠席ですので、一応一巡をしたかと思いますけれども、さらにこれからご議論を続けていきたいと思います。松田先生いかがでしょか。
○松田構成員:何か議論をするのに参考になるものがあったほうがいいと思います。この後、欧米のいろんな先進事例が出てくるということですので、そういうものも参考にしていただけたらいいなと思います。
個人的には、NHS、それからカナダ、それからオーストリアが非常に面白いと思っています。特にオーストリアは、国がインセンティブでいろんな情報の標準化といろんな運用ルールとかも作っていますので、あと、フランスも同じような形かと思います。そういうのを少し調べていただいて、あと、日本の状況の適用についてもいろいろと参考にしていただければいいんじゃないかと思います。
いずれにしても、どの国も、先ほどどなたかが指摘されていましたけれども、中央でちゃんと管理する仕組みを作っているんです。日本は、何となく今までいろんな情報を個別にいろいろやってしまう傾向があって、結局うまく整合が取れなくなっちゃうことがあると思いますので、そういう意味で欧米の先進事例を参考にしながらきちんと作っていただけたらいいなと思っています。以上です。
○森田座長:ありがとうございました。それでは、あとは自由にご発言いただきたいと思いますけれども、いかがですか。長島先生、どうぞ。
○長島構成員:先ほど申しましたけれども、仮名加工情報が具体的にどのように加工されるのかというところが分からないと、国民は安心できないということなので、やはりそこのガイドラインなりチェック機能を確立しないと、実際に安心して進めないということなので、ここはぜひ検討をお願いします。
○森田座長:それも重要な論点だと思います。他にいかがですか。山口先生、どうぞ。
○山口構成員:すみません。先ほど1つ質問をしたんですけれども、その回答を。
○森田座長:失礼しました。厚労省のほうにご質問が出ていたと思います。内部分析の内部の範囲というのはどこを指すのかというご質問でしたね。
○厚生労働省事務局:すみません。厚労省でございます。恐らく厚労省より個情委さんにお答えいただいたほうが、個人情報保護法の今回の改正の経緯の中身にもなりますのでよろしいかなと思いますが、いかがでしょうか。
○個人情報保護委員会事務局:個情委でございます。先ほどご質問がありました内部についてですが、原則としては法人単位で考えるということになります。先ほど、ご紹介がありましたが、共同利用という仕組みがございますので、共同研究のようなものも、そういった、要は内部に含まれる可能性はあり得ると考えております。以上です。
○山口構成員:そうしますと、多施設共同で研究している場合に内部ということになると、複数の医療機関ということも想定されるということでしょうか。
○森田座長:個人情報保護委員会、いかがでしょうか。
○個人情報保護委員会事務局:個人情報保護委員会でございます。共同利用の要件を満たせば可能というふうに考えております。
○山口構成員:分かりました。ありがとうございます。
○森田座長:長島構成員、どうぞ。
○長島構成員:共同利用というところが非常に危ないところでもあります。もしできるだけたくさんの情報を使いたいと思っている人がいると、最初からできるだけ多くの施設を共同のところに入れておく。そして、ご本人からできるだけ同意が取りやすいような形の研究目的等でまず同意を得てしまう。あとは本人の同意なく自由に使えるというような形で、ある意味悪行も可能なので、やはりこのあたりはきちんとチェックできるということが重要だと思っています。
○森田座長:日置先生、どうぞ。
○日置構成員:ありがとうございます。長島構成員がおっしゃっているところも含めてなのですが、個人情報保護法はかなり今いろんな義務規定がございまして、最初に悪意を持って情報を提供しやすい目的を言って情報提供を受けるという話ですと、また仮名加工情報の制度とは別の適正取得義務というのがございますので、そちらに抵触するというような形になろうかと思いません。
ですので、どういったリスクがあるのか、それが取得の経緯なのか、利用の中身なのか、それとも加工の程度が甘いのかですとか、識別リスクがどの程度あるのか、それがアライアンスを組むことによってどの程度上がるのかですとか、精緻な議論ができれば、より皆さまにも理解していただきやすい普遍的なルール作りやユースケースの見せ方ができるのではないかなと思いました。以上でございます。
○森田座長:長島構成員、どうぞ。
○長島構成員:まさにそういうルールがあるのだけれども、一方、仮名加工情報のところには利用用目的の変更は可能とだけ書いてあるわけですよね。そうすると何でも可能ではないかと思ってしまうので、きちんとしたガイドライン等で、具体的にそのあたりを決める必要があるのではないか、そしてそれが守られているかチェックする必要があるのではないかということでございます。以上です。
○森田座長:日置先生、、どうぞ。
○日置構成員:ありがとうございます。変更の幅はそのような形で自由ということになりますけれども、利用目的を公表していただかなければいけないというようなところの義務は残りますので、情報発信はしていただいて、それに対してどのようなリアクションが来るのかというところで、義務ではないですけれども、プライバシーリスクに配慮しながらご納得いただけるだけの説明を、要は識別されませんということや使い方の安全性を併せて説明するですとか、そういったところのルール化がお話を伺っていると必要なのかなと感じました。以上です。
○森田座長:ありがとうございました。他にいかがですか。ならば、私も進行役ですけれども、少し思いを述べさせていただきますと、私自身は医師でもありませんし情報の専門家でもありませんし、法律の専門家でもないので、ではなぜおまえが司会をしているのかと思われる方もいらっしゃるかもしれませんけれども、これは行き掛かり上とご理解いただきたいと思っております。これまでこの分野について、いろいろと会議に出席してきたということでございます。
私自身、この問題について、印象を述べさせていただきますと、今までの議論はどうしても法律の専門の方が個人情報保護の制度をどうするか、仮名加工情報をどうするかということを論じられるのですけれども、実は別な形で観点から見ますと異なる面がみえてくると思います。私自身はヨーロッパ、──松田先生のほうがお詳しいかもしれませんけれども──、北欧諸国とかフランスもイギリスもそうですけれども、何回か見に行って話を聞いたことからいいますと、この医療情報といいますのは非常に貴重な、ある意味で情報資源でありまして、これを利活用することによって医学が進歩すると同時に患者さんにとっても大変大きなメリットがあると。
従いまして、外国の観点から言いますと、最初に専門家のお話を伺った場合には、この情報をどういうふうに活用していくのが一番国民のためになるのか、社会のためになるか。これは治療もそうですし、創薬もそうですし、研究もそうですし、もっと言いますと、医療保険財政といいましょうか、医療資源の最適利用のあり方に関してもこういう情報は非常に貴重であるという発言があるわけです。
しかしながら、これは個人情報である以上はどんどん自由に使っていいというわけではなくて、やはりプライバシーが侵害されるようなケースに関してはそれを保護しなければいけない。利活用がまずベースにあって、しかし、それがリスクを持つ場合には、そのリスクはコントロールしなくちゃいけないという考え方になっていると思います。
わが国の場合の議論はどちらかというとそうではなくて、先にリスクの話が出てくるわけです。ユースケースにしてもそうですが、どういう形で利活用して、どういうメリットがあるのかということについて、もう少しそちらに目を向ける必要があるのではないかと思っております。
1点、それについて申し上げますと、実はOECDが2016年に加盟国の中の医療情報の情報化の程度について調べた資料がございまして、それは2つの軸からなっていて、1つはテクニカル&オペレーショナル・レディネスですから、技術的な基盤がどうなっているか。もう1つはデータガバナンスがどうかという2軸で調べております。一番進んでいるのがフィンランドであるとか北欧諸国ですけれども、なんと日本は最下位なんです。非常にランクが低いんです。
要するにシステムの整備のほうも利活用の技術的な基盤のほうも、またデータガバナンスのほうも非常に低いというので、実は私はこれに大変ショックを受けて、日本の医療の情報化というのはそれなりに進んでいましたし、データベースもあるんですけれども、OECDの基準でいうと最下位なんです。
データの取り方がおかしいとか、OECDの偏見だとか、そういう議論があろうかと思いますけれども、結論から申しますと、そうは言ってもトップクラスにはいくらデータを修正してもならないだろうと思います。その意味で言うと、わが国が置かれている状態はどういうことなのか、海外でこのデータ利用というのはどのように行われているのか、それをもう一度見ていく必要があると思っております。事務局に伺いますと、これから、ユースケースといいましょうか、関係者のヒアリングも行われるようですけれども、どういう形でこれが使われているのか、使うべきなのかということについて、やはりわれわれはもう少し知る必要があると思います。
私自身もささやかな知識ですけれども、医薬品関係のことについては若干調べましたが、明らかに医薬品に関して申し上げますと、海外でお薬を開発するというのは、コロナで明らかになりましたけれども、国際的に開発をして、いろんな国で承認を得て作っていくことです。
その中で、当然のことですけれども、それぞれの国において薬事の承認のための申請をするためには、データをどんどん海外に持ち出して、そちらで使うということになります。
そのときに、例えば2年分のデータである国では承認を受けたとしても、別の国に持っていって3年分必要ということになりますと、これは仮名加工情報の話ではないんですけれども、そのデータの追跡ができないとデータとしてそもそも使えないというような評価も得てしまうことになりかねません。
あまり司会者が長く話してはいけないのかもしれませんが、そういう意味で、まさにユースケースといいましょうか、利用面、こちらについて目を向けていく必要があるのではないか。もちろんプライバシーを保護する、人権を保護するということは重要ですけれども、国民の健康をきちんと管理していくという価値の重要性というものも、バランスの片方において考えていく必要があると思います。今日のご議論を聞いているとどうしても法律の話が多くなったようなので、一言余計なことを申し上げましたけれども、そのように考えております。
司会者ですのであまり余計なことは申しませんので、どうぞ皆さん、ご議論いただければと思いますが、いかがでしょうか。それでは日置先生。
○日置構成員:すみません。ありがとうございます。なかなか法律、ルール面というところのお話しが多くなってしまって恐縮だなとは思っているのですが、やはり海外の事例を踏まえた上で、日本でどういうニーズがあるのか、どういうふうに進んでいくのかというお話がありきで、ルールのところはサポートとして、ツールとして出てくるものだと私は理解しております。
ですので、まず、今後事務局のほうからはさまざまな事例紹介等があるのだと思いますので、それを踏まえた上で精緻な議論をさせていただければというふうに思っております。感想めいたところですが、以上でございます。
○森田座長:ありがとうございました。では、他にいかがでしょうか。それでは山口先生、どうぞ。
○山口構成員:ありがとうございます。私も、リスクはもちろんそうなんですけれども、どちらかというとさっき座長がおっしゃったように、どんな利活用があるのかというようなことを前向きにまずは話し合って、どんどん進めていくということをまず前提に置いた上で、そういうときにそれを進めるに当たってどういったリスクがあるのかは、その次の段階にしたほうが議論としてはとても前向きになると皆さんのお話をお聞きしながら思いましたので、ぜひその方向で今後ヒアリングも、それから資料提供もお願いしたいと思います。
○森田座長:ありがとうございます。松田先生、どうぞ。
○松田構成員:先ほど山口委員、長島委員も言われましたけれども、何のためのかという形になってくると、究極的にはこの事業が国民の厚生水準に寄与する、その方針がしっかりしていることが必要で、実はフランスにおいては、その事業を進める上での基本的な考え方になっているのが、デモクラシーサニテールという、保険民主主義という考え方です。
この保険民主主義という考え方は何かというと、医療サービスの提供を患者さん中心にして考えていこうと。ですから、情報も含めて、患者のためにこれを使って、患者を中心に考えていこうということで、どこの国も結局こういういろんな枠組みがパーソナル・ヘルス・レコードのほうにいっています。
要するに、医療とか介護の情報というのは患者個人の持ち物であるという自覚のもとに、方針のもとに、患者さんが自分の情報を管理する枠組みというのをきちんと作って、そこをベースにしていろんなルールを作っているわけですけれども。
ですから、いろんな委員の方が言われたように、これを進めていくためには国民の理解が一番重要になってくると思いますので、そういう意味では、フランスが望ましい、ベストだとは思いませんが、一応、法体系としては結構いろんなことをやっているので、そういう中の、これを作っていく上での基本理念みたいなものの共有を少し全体でやらないとうまくいかないんじゃないかと思います。
そういう意味では、海外事例の研究につきましては非常に期待しております。以上です。
○森田座長:ありがとうございました。私も海外をいろいろ見てまいりまして、とにかく日本と発想が違うというところに非常に印象を受けたものですから、本当に患者さんのために、国民の健康のために何をするかという観点から、貴重なリソースとしてのデータという位置付けというのはすごく重要と思っております。
その意味で言いますと、先ほどOECDのランキングが最下位でショックを受けたと言いましたけれども、実は今日も次世代医療基盤法で承認されて行われている研究が、16件といいますのは、全体の医療研究がいくつあるかは知りませんけれども、ちょっと悲しいなという、またショックを受けたような気がしたんですけれども、皆さんはいかがでしょうか。これから拡大していくかと思いますけれども、そうした面でのデータ利用というものがもう少し考えられるべきではないか。それが病気で苦しんでいる人を早く治すための、あるいは新しいお薬を開発するため、そういう意味で国民のメリットになるということをいかに理解していただくかということが、非常に重要と思った次第です。
また余計なことを言ってしまったかもしれませんけれども、いかがでしょうか。特にご発言がないようでしたら、事務局、このあたりで今日は閉じてもよろしいでしょうか。
○厚生労働省事務局:結構でございます。あとは座長のお仕切りにお任せしたいと思います。
○森田座長:ありがとうございます。それではお忙しい方もいらっしゃると思いますので、特にご発言がなければこのあたりで今日は終わりにさせていただきまして、先ほど、海外の事例であるとか、実際のユースケースもそうですが、事務局のほうである程度準備はされているようですけれども、さらにこういう点をというご要望があれば、事務局のほうにお伝えいただければと思います。
いずれにしましても、今日の議論、個人情報保護法の改正によって何ができるか、何が課題かというようなことが議論の中心になったと思いますけれども、実際にデータの使われ方、あるいは集められ方、そういうものも含めましてこれからご議論いただければと思っております。
それでは、大変有意義な意見交換ができたと思いますが、それでは最後になりますけれども、事務局からこれからのこと、その他につきまして、ご説明をお願いいたします。
○厚生労働省事務局:厚生労働省でございます。資料4でございますけれども、今後の進め方ということでございまして、先ほど各委員の皆さまからご指摘ございましたユースケースのお話、それから海外のお話、今、調整あるいは整理をしている状況でございます。4月中にはヒアリング、それから海外の事例も含めた上での会合をセットできるように、今、調整を進めている状況でございますので、そのあたりで議論を重ねていただきながら、夏ごろを目途に一定の整理ができないか、こういう形でこの検討会、ご議論いただきたいというふうに思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。厚生労働省からの説明は以上でございます。
○森田座長:それでは予定より少し早いですが、本日は議論が尽きたようですので、このあたりで終了とさせていただきます。それでは、あとの進行は事務局にお返しします。
○厚生労働省事務局:それでは本日、第1回目ということで活発なご議論を頂戴いたしまして、誠にありがとうございました。次回の開催は4月を予定しておりますけれども、具体的な日付等々につきましては追ってご連絡を申し上げたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
それでは、本日の検討会はこれで閉会といたします。先生方におかれましては、お忙しいところ誠にありがとうございました。
 

(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 第1回 医療分野における仮名加工情報の保護と利活用に関する検討会(2022年3月23日)

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