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2018年4月19日 第20回保健医療情報標準化会議議事録

政策統括官付情報化担当参事官室

○日時

平成30年4月19日(木)16:00~18:00


○場所

スタンダード会議室虎ノ門ヒルズFRONT店3階大ホール


○出席者

出席者

石川 広己 (構成員) 大江 和彦 (座長) 大原 信 (構成員)
大道 道大 (構成員) 柏木 公一 (構成員) 唐沢 治男 (構成員)
木村 通男 (構成員) 合地 明 (構成員) 近藤 克幸 (構成員)
澤 智博 (構成員) 杉山 茂夫 (構成員) 田尻 泰典 (構成員)
中島 直樹 (構成員) 山上 浩志 (構成員) 山本 隆一 (構成員)

○議題

(1)厚生労働省標準規格とすべき規格について
(2)構成員及び有識者からのプレゼンテーション
(3)その他

○議事

○須磨田補佐 では、定刻より少し早いですが、ただいまから第20回「保健医療情報標準化会議」を開催させていただきます。

 構成員の皆様には、御多忙のところ御出席いただきまして、誠にありがとうございます。

 開催に当たりまして、政策総括官の酒光より御挨拶申し上げます。

○酒光統括官 政策統括官の酒光でございます。情報政策を担当しております。

 本日は、皆様におかれましては、大変お忙しい中、本標準化会議に御出席いただきまして、本当にありがとうございます。また、ここにいらっしゃる先生方には、いろいろな場面で厚生労働省はお世話になっておりまして、この場を借りて厚く御礼を申し上げます。

 この保健医療情報の標準化ということで申し上げますと、厚生労働省はこれまで16の規格を厚生労働省標準規格として採択しておりまして、普及を図ってきたところでございます。このたび、医療標準化推進協議会、いわゆるHELICS協議会におきまして、1件の規格がHELICS標準に採択されたということですので、これを厚生労働省の標準規格として採択してはどうかということで、本日、御検討をお願いするところでございます。この標準規格は、いろいろな場面で活用されておりますので、この結果を踏まえまして標準規格ということで採択されましたら、この浸透ということについても厚生労働省として一生懸命図ってまいりたいと思っております。

 それから、もう一つ、本日、御検討をお願いしたいことがございますが、それはいわゆる標準化の流れということでございます。昨年5月に次世代医療基盤法ができまして、いろいろな形で医療情報の活用をしていくということと、昨年からですけれども、データヘルスということで、健康・医療・介護における情報連携を図ろうと考えております。そういった情報連携、情報の活用という意味で、標準化というのは非常に大事なことになります。本検討会におきましても、このHELICS協議会で採択されました規格の認定に加えまして、こうした新たな標準化・標準規格についても御検討いただければと思っております。

 本日は、議事次第にもございますけれども、澤様、中島様、それから、PMDAから宇山様にお越しいただきましてプレゼンテーションしていただきたいと思っておりまして、そのプレゼンテーションを踏まえまして御議論いただければと思っております。

 どうぞよろしくお願いいたします。

○須磨田補佐 ありがとうございました。

 では、頭撮りはここまでとさせていただきます。

 続きまして、構成員の交代がありましたので、御紹介させていただきます。お手元の資料の一番下になりますが、構成員名簿がございます。今回より、石川構成員、唐沢構成員、杉山構成員に御就任いただいております。

 また、本日は、有識者として、独立行政法人医薬品医療機器総合機構の宇山部長にも御出席いただいております。

 なお、本日は、八木構成員から欠席の御連絡をいただいております。また、大道構成員から10分ほど遅れるとの御連絡をいただいております。

 続きまして、資料の確認をいたします。

 議事次第。

 座席表。

 資料1「医療情報標準化指針提案申請・採択状況」

 資料2「HELICS事務局 医療情報標準化指針提案申請書等(山本構成員提出資料)」

 資料3「新たに厚生労働省において保健医療情報分野の標準規格として認めるべき規格について(提言案)」

 資料4「医療等分野情報連携基盤に関する経緯と現状」

 資料5「データの利活用も見据えた標準規格策定の方向性に関する研究(澤構成員提出資料)」

 資料6「解析の向上に直結する標準化(中島構成員提出資料)」

 資料7「MID-NET構築の経験を通じて得られた医療データ標準化における今後の課題(宇山部長提出資料)」

 参考「保健医療情報標準化会議開催要領」

 資料の不備等がございましたら、お申しつけください。

 また、本会議は公開となっておりますので、本日の資料及び議事録につきましては、これまでと同様に厚生労働省のホームページにて公開いたします。

 なお、本日付で、参考の資料にございます「保健医療情報標準化会議開催要領」についてですが、構成員の交代、構成員の皆様の任期及び6の経過措置を設けたことが改正させていただいた内容となっております。

 では、ここから先の議事進行につきましては、大江座長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○大江座長 それでは、本日の議論に入りたいと思います。

 まず、議題1の「厚生労働省標準規格とすべき規格について」であります。新たにHELICS標準化指針に採択された規格がありますので、HELICS協議会会長の山本構成員より、まず規格の御説明をお願いいたします。

○山本構成員 資料1が、今までHELICSHELICS標準化指針として認められたもののリストであります。その最後の「処方・注射オーダ標準用法規格」というものをHELICS標準化指針として認めて、まだ厚生労働省の推奨標準になっていないということで、ぜひこの規格を御審議いただきたいと考えております。

 資料2がその提案書でございまして、和名が「処方・注射オーダ標準用法規格」で、提案団体が日本医療情報学会でございます。これは2016年に御提案がございましたので、理事長が今の大江先生ではなくて、前理事長の岡田美保子先生のお名前になっております。

 中身は、真ん中の和文の説明にありますように、一般社団法人日本病院薬剤師会より公表されている「標準用法用語集」に掲載された用法と用語を対象として、コーディングシステムを構築していただきました。余り詳しい説明をすると長くなりますので、この程度で置いておきますけれども、HELICSの基準としましては非常に重要性が高い標準コードであるということと、メンテナンス体制が明確であるということ。それから、規格の入手ですけれども、医療情報学会のホームページから誰でも簡単に入手できるということで、基準を満たしておりますので、推奨標準とさせていただいております。

 もし何か御質問がありましたらお答えしたいと思いますけれども、説明は以上とさせていただければと思います。

○大江座長 それでは、この規格について、厚生労働省標準規格とするかどうかについての観点からの御意見、あるいは今の御説明に対する御質問があればお願いしたいと思います。いかがでしょうか。

○山本構成員 厚生労働省がお進めになっている電子処方箋の実装には必須の規格でありますので、ぜひよろしくお願いいたします。

○大江座長 木村構成員。

○木村構成員 もともとMERIT-9で定めていたものをMEDISさんで拾っていただいたのですか。MERIT-9規格というのを私がつくっていて、それをMEDISさんに拾っていただいたというものですね。MR-9と書いてある。

○山本構成員 はい。それをここに書いています標準用法用語集に記載されているものを全てカバーできるようにということで、それぞれ字句を設けて記載していただいているコード集であります。

○木村構成員 15年ぐらい前につくったものです。ありがとうございます。

○大江座長 これは、規格自体は15年ぐらい前からつくられていたMERIT-9をベースに、日本医療情報学会で大幅に拡充した規格ということですね。

○山本構成員 はい。

○大江座長 医薬品関係の用法に関することですけれども、いかがでしょうか。田尻構成員、何か。

○田尻構成員 いえ。

○大江座長 よろしいでしょうか。

 資料をご覧になって、御質問、追加御発言ございますか。

 それでは、厚生労働省標準規格として、これを採択することについて、異存、御意見は特段ございませんでしょうか。

 特にございませんので、本規格を厚生労働省標準規格として認めさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○大江座長 ありがとうございます。

 それでは、新たにHELICS指針に採択されました規格について、厚生労働省標準規格として認めてもよいということになりましたので、資料3のとおり、本会議として提言することになろうかと思いますが、資料3を御確認いただきまして、特にこれについても御意見ございませんでしたら、これをもって提言するということでよろしいでしょうか。

 木村構成員。

○木村構成員 もちろん、今の件は結構ですけれども、HELICSでタイトルを変えていただいたものがあるのではないか。HS009の、IHE統合プロファイル「可搬型医用画像」というものは、「可搬型」というのをやめて「連携用」に変えるというのをJAMIから出して、HELICSは変わっているように思うのですけれどもね。

○山本構成員 そうですか。確認しておきます。

○木村構成員 というのも、これは退院時の電子データ加算をとるときに、このデータの固まりでとるというケースが多くて、「可搬型」というのはちょっとそぐわないので、「連携用」とかにしたのです。ぜひ、それはお願いいたします。

○山本構成員 わかりました。

○大江座長 そうしますと、資料1と資料3、両方について、HS009の名称に関する確認ということですね。

○木村構成員 画像だけでもないということもあって、この辺もちょっと変えていただいて。CDDVDで診療報酬はとれないので、「可搬」はちょっとまずいということで、「連携用」にしていただいた。

○大江座長 そうすると、2008年にこれが採択された後で名前が変わったのではないかということですので、それについて確認していただいて、もし必要ならばその修正をしていただくということですね。事務局、よろしくお願いします。

○木村構成員 お願いします。

○大江座長 ありがとうございました。

 ほかに、御意見、お気づきの点、ありますでしょうか。

 特にほかにないようでしたら、先ほどの点を確認して、必要なら修正を加えるということで、資料3のとおり提言することとします。

 それでは、ほかに現在、HELICS協議会で審議中の規格や、今後、HELICS協議会で申請を予定している規格などがありましたら、一言お願いいたします。

○山本構成員 今、審議中の規格が3件ございます。

 1件は、恐らく後で関係するかもしれませんけれども、ベーシックアウトカムマスターということで、これは実は審査がかなりもめているといいますか、規格が若干わかりにくいところがあって、大幅に修正していただいている最中でございます。

 それから、あと一つが、退院時サマリーが審議の最中であります。

 もう一つは、デンタルフォーミュラの歯式のコードの標準を、これは標準化委員会で審議することに決まって、まだ審査委員会はやられていませんけれども、する予定になっています。

 この3つが今、審査中でございます。

○大江座長 情報の提供、ありがとうございました。

 今の御発言も含めて、何か御質問とか御意見、あるいは今後、HELICS規格に提言したいようなものがありましたら、御意見いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

 特にないようでしたら、次の議題に移りたいと思います。

 それでは、次の議題に移らせていただきます。本日は、澤構成員、中島構成員、及び有識者として御参加いただいておりますPMDAの宇山部長にそれぞれプレゼンテーションを御用意いただいております。

 まず初めに、「医療等分野情報連携基盤に関する経緯と現状」について事務局のほうから御説明をお願いいたします。

○笹子政策企画官 政策企画官の笹子でございます。

 資料4をおめくりいただきまして、本日、澤構成員、中島構成員、宇山部長からプレゼンテーションしていただく際のご参考に、政府等を取り巻く状況について御説明させていただきたいと思います。

 2ページ目でございます。こちらは「未来投資会議 構造改革徹底推進会合」というものが政府で開かれてございますけれども、昨年10月に厚生労働省のほうからこの会議に提出させていただいた資料でございます。

 保健医療情報分野における標準規格の整備・普及促進ということにつきましては、今日、お集まりの構成員の皆様を初めとする、長年にわたる努力の賜物で進んできているということでございます。さらにデータの2次利用ということも踏まえながら推進していく必要があるだろうということで、対応の方向性というところをご覧いただきますと、厚生労働省のこの標準化会議に標準規格案が諮られるように、私ども厚生労働省としても医療関係者の御意見を聞きながら、規格作成団体あるいは医療情報学会などともさらに密接な関係を築いていくという方向性を報告させていただいてございます。

 3ページ目は、右側の下線部にございますように、厚生労働省標準規格の実装をいかに図っていくのかということがポイントになってくるかと考えているところでございます。

 4ページ目以降でございます。厚生労働省といたしましても、データヘルス改革ということで、医療・介護を初めとする厚生労働省に関係する情報をいかに収集し、連結し、これを活用していくかといった視点を持つべきだという観点から、データヘルス改革推進本部を、5ページ目にございますように、厚生労働大臣を本部長といたしまして、関係局長を本部員とする体制をとっております。

 右上にございますように、アドバイザリーということで、各分野の専門家の先生方にもアドバイスをいただきながら、右下にございますような事務局体制、事務次官級の医務技監のもとで各プロジェクトチームを9つほど設けまして、担当審議官、関係課室長を定めて責任感を持って進めていくという体制をとっているところでございます。

 そういった体制のもとに、6ページ目でございますけれども、具体的には、一番上、8つのサービスを2020年度に向けて具体化を進めるということでございまして、このデータヘルス改革関連ということで、先般、85.4億円ということで平成30年度予算が成立したということでございます。昨年度、17.1億円ということでございますので、約5倍ということでございます。

 具体的には、左にございますように、ゲノム情報とかAIといった最先端技術の導入を図りつつ、右側にございますように、個人、医療・介護等の現場でのデータの活用を図っていくためのサービスを提供していくというプロジェクトを進めてございます。

 データの活用という右側のすぐ下にあるところでございますけれども、保健医療記録共有あるいは救急時医療情報共有ということで、現在でも地域医療連携ネットワークがございますけれども、初診時に医療関係者が患者の過去の健診・診療情報等を共有できるサービスの全国的なものができないのかといった観点からの検討。

 中段にございますように、データを解析いたしまして、健康スコアリングということで、健康保険組合等の加入者の健康状態や健康増進の取組状況を組合ごとにスコアリングして、経営者に通知することによって国民の健康増進につなげていくといったサービス。

 あるいは、その右にございますように、データヘルス分析関連サービスということで、ナショナルデータベースを初めとした、さまざまなデータベースで保有する関係の情報を連結して、分析可能な環境を提供していくといったサービス。

 その下でございますけれども、乳幼児期・学童期の健康情報といったものも、特に乳幼児期につきましては、市区町村で項目等についても必ずしも標準化されておらず、ICT化もされていないという現状を踏まえて進めていくということ。

 その左でありますけれども、自立支援につながる介護ということで、そのエビデンスをためていくといったプロジェクトも進めさせていただいているということでございます。

 以上が厚生労働省の取組でございますけれども、データの2次利用という観点からは、大江座長を初め、御臨席の皆様も関与されている次世代医療基盤法というものがございます。こちらにつきましては、8ページ目でございますけれども、法律の目的で、医療分野の研究開発を進めていくという観点から、匿名加工された医療情報に関して、様々な規制を定めることによってデータを収集し、ひいては健康・医療に関する先端的研究開発、新産業創出を促進し、もって健康長寿社会の形成に資することを目的とするということで、昨年5月に公布された法律でございます。来月の5月11日までに施行されるということで、内閣官房を中心として、私ども厚生労働省も主務大臣ということでございますので、連携して法律の施行準備をしているということでございます。

 ポイントは、法律の内容の2.でございますけれども、匿名加工する認定事業者を主務大臣が認定するということでございまして、認定事業者の責務として、医療情報の取り扱いを目的の達成に必要な範囲に制限する。情報漏えいがあってはならないので、漏えい等の防止のための安全管理措置を講じるなどの責務をお守りいただけるところを、認定事業者として主務大臣が認定するということでございます。

 その認定事業者は何ができるか。3.認定事業者に対する医療情報の提供ということで、御案内のとおり、改正個人情報保護法が昨年5月に施行されたものでございますけれども、医療情報は要配慮個人情報ということで、同意が必要であるということでございます。この仕組みにおいては、医療機関などはあらかじめ本人に通知し、本人が提供を拒否しない場合、オプトアウトということでございますけれども、そういった場合には、認定事業者に対して医療情報を提供することができるといった仕組みでございまして、個人情報保護法の特例ということでございます。

 今、私が申し上げたような仕組みを、内閣官房の資料でございますけれども、9ページ目で図示させていただいております。10ページ目、次世代医療基盤法によって実現できることということで、様々なデータを連結し、収集することによって、左上にございますように、最適医療の提供であったり、異なる医療機関や領域の情報を統合した治療成績の評価ができるのではないか。例3として、左下にあるような最先端のAIも活用しながら、画像データを分析して診療支援ソフトの開発ができるのではないか。医薬品の市販後調査の高度化、効率化ができるのではないかということで、オプトアウトという方式によって医療情報を安全に収集できる仕組みということで来月施行される予定でございます。こういった状況を踏まえて、医療情報の標準化というものをさらに進めていかなければならないといった視点を私ども厚生労働省としても持っているということでございますので先生方の御意見等を賜りながら、私どもも進めてまいりたいと考えてございます。

 以上でございます。

○大江座長 ありがとうございました。

 もし、何か御質問がありましたら、お願いします。

 近藤構成員、どうぞ。

○近藤構成員 この会議での質問に合うかどうか、ちょっとわからないのですけれども、僕自身が整理できていなくて、教えていただけるとありがたいなと思います。

 今、次世代医療基盤法のところで認定事業者の御説明がありましたけれども、民間の病院はほとんど関係ないのですが、国の機関ですと非識別加工情報制度というものが、個人情報保護法の改正と同時に、今年から動いていると思います。要は、研究のために匿名化を医療機関が自発的にしてもらうというスキームじゃなくて、活用したい企業が、国立大学病院も含め、国の関係機関にこういう情報を使わせてほしいと提案してくると、こちらの機関のほうは、どこかの業者さんに匿名化、非識別加工してもらって、非識別加工したデータを利用したいという民間事業者さんに提供するという制度になっているかと認識しています。

 そういう場合に、うちの大学ではどういった個人情報開示方法を持っているかというのをあらかじめ公開して、これを使いたいという業者さんが出たら対応しなければいけないということになっていて、そこに患者さんの電子カルテのデータを、利用できる可能性のファイルの一つとして、こういうファイルがありますよと書いている大学病院と、それは何らかの理由で対象にならないだろうということで、書いていない大学病院とで、初年度で結構ばらけている感じがするのです。

 一方で、匿名加工を適切にできる業者ということで、認定事業者がこちらのほうではできているじゃないですか。ところが、非識別加工情報の制度のほうでは、どの事業者に委託するというのは全く規制されていないので、電子カルテの情報を、あの膨大なデータをどこの業者さんが匿名加工するのかが、よくわからないような状況になっていると思うのです。

 個人的には、機微情報をたくさん含む医療情報は、非識別加工情報制度を使って民間事業者が使いたいという申し出があった場合には、例えばこの認定事業者のようなところに匿名加工を依頼するという形が一番すっきりするのではないかと思っていたのですが、現行の制度を見る限り、2つの制度は独立しているので、相互に全く関係ないように見えるのですけれども、そこの点は何か話題になっていたり、今後整理しようという話が出ているのでしょうか。

○大江座長 事務局、どうでしょう。あるいは、詳しい山本先生、何か情報はありますか。

○山本構成員 間違っているかもしれませんけれども、非識別加工情報はどういう基準なのか。この非識別加工情報の基準は、個人情報保護委員会が決めるとなっているのです。したがって、個人情報保護委員会が出している匿名加工の指針をそのまま準用するのが、多分、非識別加工情報として扱えるのだろうと思います。あれは、別に委託しなくてはいけないというルールはなくて、御自身でやられてもよくて、基準を満たしているかどうか、御自身でやっても構わない。

 それから、行政機関個人情報保護法というのは、個人情報保護法という側面と、行政機関の情報開示に関する法律との両方に関係しているのです。求められたら、主務大臣が最低1,000人以上ないと出せないとか、細かいルールが法律で決まっていますけれども、少なくとも加工する基準としてはそんなに違うわけではないですね。意味づけが違うだけの話です。

 それから、次世代医療基盤法は法律ですから、あれは個人情報保護法、行政機関個人情報保護法、独立行政法人個人情報保護法、並びに各自治体の条例をオーバーライトするのです。したがって、次世代医療基盤法に従ってデータを提供する場合は、行個法とか各都道府県の条例とか市町村の条例をオーバーライトして、あの法律に従って提供することが可能になります。国の場合は、行政機関個人情報保護法ですけれども、あの法律に従って提供する場合は、あの法律だけに従えばいいことになります。

 業者の選択基準というものはそこにはないので、例えば次世代医療基盤法の匿名加工基準というのは、個人情報保護委員会の匿名加工基準に対して、やや狭めたといいますか、強くした基準になっています。それから、次世代医療基盤法で認定された認定匿名加工医療情報作成事業者は、その法律に従って集めた個人情報を匿名加工以外には使えないのですけれども、その事業者として、次世代医療基盤法の業務以外をやってはいけないという規則はないので、そういう意味では、匿名加工あるいは非識別加工も委託して受託することはできる。それは、個人情報保護委員会の基準に則ったデータを開示することはできる。

 そこは、そういう選択肢の一つになるというだけの話で、本来、法律の趣旨は、自分でやってもいいわけですから、委託しなくてはいけないというルールじゃないので、委託先の事業者は、個情委のつくっているガイドラインを遵守すること以外の契約的な縛りはないのではないかと思います。

○近藤構成員 今は、どこに委託してもいいし、自分でやってもいいので、電子カルテは申し込みがあればそういう形で提供する形で、非識別加工情報制度が運用され始めています。ただ、そうは言っても、電子カルテの膨大なデータを本当に適正に非識別加工を丸きりやったことがないところができるのだろうかとか、いろいろ心配なところもある。そういう意味では、せっかくこういう制度ができたのであれば、そういった方向に委託するのが望ましいみたいな話が出てこないのかなと、ちょっと思ったりしたのです。

○大江座長 この会議体で議論することと、少し視点が違うと思います。今の話は、各国立大学法人が非識別加工をするときにどこに委託すべきかということであり、それは各法人が考えればいいことであると思いますし、この標準化会議で議論すべきこととは違うように思いますので、また別のところで議論いただきたいと思います。

○近藤構成員 了解しました。

○大江座長 ほかに、先ほどの事務局からの御説明で何か御質問ありますでしょうか。

 よろしければ、続きまして、有識者の皆様からのプレゼンテーションをお願いしたいと思いますけれども、まず最初に、澤構成員からプレゼンをお願いいたします。

○澤構成員 帝京大学の澤です。

 資料5をご覧ください。我々のほうで「データの利活用も見据えた標準規格策定の方向性に関する研究」というタイトルで研究を進めております。このタイトル自体は、我々が定めたものではなくて、いただいたものですので、すごく壮大なのですけれども、そんなことをやっているのだという形で聞いていただければと思います。

 研究班は、私、岡田美保子先生、木村通男先生、小出大介先生、嶋田元先生、美代賢吾先生で構成しておりまして、研究目的は、研究開発などにおける医療データの分析・利活用を見据え、医療情報の標準化を促進するための医療分野の標準化策定ロードマップを策定するという壮大なものではあるのですけれども、一言で、調べるのがすごく大変ですね。日本の場合は、標準というものは一つのホームページにある程度まとまっているものですけれども、それ以外に標準になろうとしているものも含めると、それがどこにあるのか、どういうふうに解釈すればいいのかというところも、情報を専門としている者から見てもなかなか難しいなと思いながら進めています。

 研究自体は調査研究でして、1つは、調査における4つの視点ということで、左下の四角の中に入っております4つ。国内の標準規格、海外の標準規格、国内の標準規格候補、そして、それらの規格を使うユースケースとか活用ドメインという視点で調査を進めております。

 それを右上の四角にあります、現状を俯瞰することからロードマップにつなげようということで、現在は現状俯瞰をしているところかなと考えております。4つ、プラス1のフレームワーク。一番基礎に情報技術のデータ形式とか通信方式があるのは技術的なこととして、医療・医学という視点で言いますと、用語・コード、電文・通信、文書・画像、モデル・構造という形で、4つのフレームワークを考えながら調査を進めております。

 期待される効果は、ロードマップを策定し厚生労働省が政策的に必要と考えている標準規格を明示することで、各種業界団体や学会における標準規格策定の動きが加速する。

 2つ目は、標準規格が普及し標準化されたデータが医療機関に蓄積することで、臨床効果データベースに代表される各種症例データベースの精度が高まり、研究開発などデータの分析・利活用が円滑に進むという効果が期待できる。

 3番目は、標準化され精度の高まった医療データを用いることで、医療分野におけるビッグデータ技術の開発や人工知能の開発に必須である良質なデータをソフトウエア開発に提供することができるようになるという形で設定しております。

 今、文章で申し上げたことを図式化したものが次のページの図になりまして、左側から、調査の視点は国内の標準規格、海外の標準規格、規格化候補とユースケース・ドメインという形で4つ設けておりまして、それを先ほどの用語・コード、電文・通信、文書・画像、モデル・構造という形でフレームワークを設定しております。目指すべきは、右側の四角の中に入っているものですけれども、こちらは後で詳しく御説明したいと考えております。

 次のページです。標準規格の適用箇所と左上に書いてあるもので、カラフルな画像のあるものです。これも、まだ不完全なのですけれども、医療施設という四角が真ん中あたりにありまして、医療施設の中で、電子カルテ・PACS・部門システムのシステム連携には、当然、標準規格を使っているところが多いと思いますけれども、医療施設という視点で言いますと、システム更新するときには、例えば標準規格を採用していると効率的になりますねということで、四角でシステム更新と書かせていただいております。

 診療録・医療記録の活用の仕方で、上の方向に向かっている医療ビッグデータ大規模レポジトリというのは、収集・蓄積して分析するという動き方でしょうし、患者の視点になりますと、下のほうに行きまして、括弧して生涯の医療記録という形。今の医療は、一つの医療施設では完結しませんので、いろいろな複数の医療施設から集めてきて、それを一つのレポートにして患者さんの役に立てるという形で動いているのかなと思います。

 医療者の立場から言いますと、右側の真ん中辺に医療者というものがありますけれども、そこで意思決定支援、診療支援のデシジョン・サポート・システムとかガイドライン。あとは、これから未来に期待されるAIとか機械学習という形で、それらが活用されるようになるといいのかなという形で、この図は置いてあります。

 次のページ、1つ目です。国内の標準規格の現状考察ということで、先ほど申し上げました用語・コード、電文・通信、文書・画像、モデル・構造という形で四角を設けますと、現在の厚生労働省規格標準の16を枠の中に入れますと、大体こんな感じになるのかと思います。

 違うところもあるかもしれないですけれども、用語・コードの中には、薬剤、検体検査、病名。これは医科と歯科。看護の実践用語です。

 上の段の電文・通信になりますと、こちらも病院情報システムの中でメッセージングされている薬剤、検体検査とか。特に充実しているのは放射線関係です。

 文書・画像も、放射線が先鞭を切っておりますDICOM規格がある。

 モデル・構造のところには、SS-MIXが入ってくるのかなと、私なりには解釈しております。

 この視点をちょっと変えて、次のページをご覧ください。現状考察(2)になります。これは、医療を実践する中で、こんな場面がありますねという形で、特に外科系の患者さんを想定して考えています。

 一番下に来ているのは、患者基本情報。これは、年齢・性別・住所・職業で、次に受診形態ですね。これも、電子カルテ上で初診の患者さんを探すのが意外と難しかったりするのですけれども、初診・再診・外来・入院・一般・救急がございます。

 その上に行きますと、患者さんが訴えている主訴・問診、現病歴・既往、アレルギーというものをとりまして、その上はプロブレムとか経過を見て、診断をつける。診断をつける前に恐らくやると思いますけれども、さらに上は、検体、検査、画像、生理、内視鏡、病理がございます。

 薬剤があって、処置があって、手術。最近は、血管内の処置ですとか放射線もあると思いますので、侵襲的な治療ですね。

 場合によってはリハビリという形になるのですけれども、この枠と、縦軸の用語・コード、電文、文書・画像、モデル・構造をクロスさせて、どの辺が充実していて、どの辺が余り充実していないのかというところを見るために、充実しているものを緑にしています。充実していなさそうなものをオレンジにしていまして、その中間あたりを黄色にしているという形になっております。

 充実しているのは、検体、検査とか薬剤とか診断に関係があるところですね。そちらは、用語・コード、電文、文書、モデル・構造に至るまで充実しているという形で見ていいのかなと思います。

 一方で、充実していなさそうなところは、文書・画像、特に報告書のところ、診療記録・観察用語等々になるのかなと思って、この図は描いています。

 これも、恐らくまだブラッシュアップが必要だと思いますけれども、標準というのは、今のところこんな形で日本の場合は使われているかなと見るための参考資料と考えていただければと思います。

 次のページをご覧ください。現状考察(3)です。ものすごく控え目ですけれども、余り大きなことは言えませんので。

 実現できていることは、施設内にて電子カルテ・PACS・部門システム間のコード・交換規約は充実していることと、SS-MIXによりまして標準規格が適用されているデータ種での交換・連携が可能になってきているというところ。

 もう一つ、課題にありますのは、診療記録、標準規格の適用が十分ではない箇所が当然あることと、データ連携が技術・構造・syntacticなレベルとなっている。これは後でお話ししますけれども、そのような状態でしょうと。

 次のページをご覧いただきますと、標準規格の適用を考慮する領域ということで、ここでは8つ書いていますけれども、少し説明させていただければと思います。

 1つ目は、当然ですが、診療の質・精度向上ということです。実は、このタイトルは、数日前までは診療録とか診療データとか医療情報の質・精度の向上だったのですが、後で説明させていただく内容を踏まえまして、これ自体は診療の質としています。それは、もともと電子カルテが登場するときに世の中が期待していたのは、情報化によって診療の質が上がるだろうと言われていた。今も多分そう思って、情報の方々は仕事をしていると思います。それがありまして、この形にしています。関連しているところは、後のページに出てきますが、IOMからのレポートがありまして、そこで言及させていただければと思います。

 次は、右側に移りまして、信頼できる情報連携・共有ということで、これはセキュリティ、アクセス、閲覧権限。こちらは、ネットワーク化すると、誰にオーソリゼーションを発行してよくて、その中でどのような閲覧権限とか書き入れの権限を与えるのかというのが非常に重要になってきますので、そこを考えなければいけない。

 3つ目は、医療ビッグデータですね。効率的なデータ収集・蓄積・管理・分析ということができないといけないということ。

 真ん中の左側に行きまして、医療安全・質の管理。これは、アメリカだとAHRQがやっていることですけれども、デシジョン・サポート・システム、ガイドライン、指標類、医学知識へのアクセスというのは、標準化が進むことによって実現できるだろうと言われているものです。

 真ん中は、効率的・効果的な情報資産管理。これは、医療施設におけることで、病院情報システムを抱えることによって、お金ばかり出ていくというのが今の医療施設の不満の一つであると思いますので、標準化によって、それが少し解消できればと思います。

 左下は、医療AIです。これは、高品質な教師データ。ディープラーニングによって、コンピューターには何も教えなくても、勝手にデータを解釈して人間に有用な知見を提示してくれるという話もあるかもしれませんけれども、学習の仕方は人間と同じで、スーパーバイズラーニング、アンスーパーバイズラーニング、リインフォースメントラーニング等々ありますので、その中の一つは、当然、高品質な教師データがないと、コンピューターも学習曲線という点では余りうまく作動しないと思いますので、その点で医療AIの品質ということですね。

 下の精密医療をご覧ください。こちらも中島先生からお話があるかもしれないですけれども、GenotypingPhenotypingを意識した精密医療ということと、最後はオンライン診療・モバイルヘルスです。

 次のページをご覧ください。海外における標準規格活用動向ということで、最近、トピックスとして大きいのは、このImproving Diagnosis in Health Careということで、これは旧IOMで、20年前にとりあえずヒューマンで提唱されていたことです。そのときは、オーダリングシステムをうまく活用することによって医療事故を減らしていくのだという話があり、その後、10年前にラーニング・ヘルスケア・システムという概念が出てきて、これが一番最初に出てきたものです。

Diagnosis Errorをどう減らしていくか。このプロセスの中に、病院情報システム、医療情報システムをうまく活用しなければいけないですし、そこには標準化というものは効率的には避けられないということで議論されているものですので、一番最初は診療録の質を高めると考えていたのですが、医療というのは医療の質を考えなければいけないということです。

 次のページをご覧ください。こちらは海外における標準規格活用動向の(2)です。CMS.govCenters for Medicare & Medicaid Servicesです。こちらでやっている、お聞きになられた方も多いと思いますが、Blue Buttonです。これもかなり参考になるものでして、どこの段階で標準化しなければいけないのかということを考えるにはいい資料です。

 下のほうに、どんな標準規格が使われているかということで、Additional ReferencesのところにHL7 PHIROAuth2.0SMART On FHIRという項が見られると思いますけれども、標準化はデータを蓄積する段階で標準化しなければいけないのか、それとも他者と連携するときに標準化すれば、それでいいのかという視点があると思いまして、このBlue Buttonは後者のほうで、他者と連携するときまでに標準化されて情報連携がなされるという考え方です。それがうまく使われたのが、このCMS.govBlue Buttonだと思います。

 次のページをご覧ください。3番目ですが、これは、ONCThe Office of the National Coordinator for Health Information Technology)で、こちらはShared nationwide interoperability roadmapという形で、もう5年以上前に出たものだと思いますけれども、これが2024年ぐらいまでにこうしたいというロードマップが示されていて参考になる。

 一番最新のものは、さらに次のページご覧いただいて、動向(4)です。これが今、一番ホットな話題だと思いますが、ONCTrusted Exchange Frameworkです。これがネットワークのネットワークということで、米国も日本と似たような状況もある。小さい地域連携ネットワークがいっぱいありまして、そこをまとめ上げるためには、こういう標準を使う。

 あるいは、次のページをご覧いただきまして、データの要素はこういう形がいいですねというのが動向(5)のUSCDIです。US Core Date for Interoperability Glide Pathに示されているデータ項目になります。これがバージョン1から順番にありまして、5年ごとぐらいにバージョン2、バージョン3という形で標準項目を広げていくという考え方を示したものです。

 最後、ちょっと尻つぼみになってしまうのですけれども、標準規格策定の方向性に関する考察ということで、現在できているTechnical/structural/syntactiinteroperabilityからsemanticinteroperabilityに、皆さんそう思って動いていると思いますけれども、動かなければいけないだろうと考えています。

 あと、用語・コードから文書・モデルへというのが1つ。

 次が、検査・投薬という粒度の小さいところから、時系列をまとめ上げた診療記録にどうやって標準をはめていくのかということを考えなければいけないですし、ユースケースの設定という点では、院内システムの情報連携から診療記録の連携・共有へ。

 最後は、ちょっと難しいと思いますけれども、ポリシーの整備ということで、同じ研究班にいらっしゃる木村先生によれば、どんなふうにパスを与えるかという形で、使っていない人に対して、拘束はできないと思いますけれども、どういうふうに使う方向に向けていくのか。そこは技術だけじゃなくて、考えなければいけないところかなと考えております。

 以上になります。

○大江座長 ありがとうございました。

 それでは、ただいまのプレゼンテーションについて御質問などありましたら、お願いします。

 木村構成員、どうぞ。

○木村構成員 ムチだけじゃなくて、アメ。だから、この間の紹介状の電子的加算をアメでいただいて、それなりに進んでいます。実施設でのメリットを標準化にというのは、リプレイスのときにデータが見えないということを感じるということですけれども、連携になってくると、ぐっとそれが身近になってきますから、そういうところにアメとムチがあればと思います。

○大江座長 ありがとうございます。

 ほかに御質問ございますか。

 それでは、続きまして、中島構成員からプレゼンテーションをお願いします。

○中島構成員 九州大学の中島です。よろしくお願いします。

 資料6をご覧ください。私は、少し夢のある話をさせていただきたい。10年後とかではなくて、割と近い将来にこの標準化によって何かいいことが起きるのかという話の例を挙げたいと思っております。題は「解析力の向上」へ繋がる標準化と書いたのですが、もちろん医療そのものは、1次利用といいますか、その患者さんのためである。それから、標準化も1次利用ということが一番の目的でありますが、昨今はたくさんのデータを集めて解析して、医療の質あるいは効率の改善をすることが求められているわけであります。

 次のページをご覧ください。そういうことを考えますと、現在の保健医療情報活用ということを考えたときに、まず大事なことは実社会データ、リアル・ワールド・データというキーワードがありますし、それから、もちろん一つの医療施設だけではデータの数が足りないということで、複数の施設が要る。これは、右側に書いてありますように、既にできています厚生労働省規格などを使って、そういう標準コードへの正確なマッピングをします。そして、できるだけ高いデータ品質を使うことが必要ということが言えます。

 それから、もう一つ、今日特に申し上げたいことが、この診療行為解析からアウトカム解析へということです。このアウトカムというものが、データとしてはなかなか整備されておらず、後でお話ししますけれども、これから詳細なアウトカムを把握する仕組みが必要ではないか。ここのところがこれからの標準化には重要ではないかと考えています。

 そこで、この標準アウトカムマスター、クリニカルパス標準データモデル、これはどちらも、もともとは工業から始まったクリティカルパスがモデルとして医療に取り入れられましたクリニカルパスというものの標準化が今、少しずつ進んでおりますので、その紹介をさせていただきたいと思います。

 次の図はご覧になったことがあると思いますが、内閣官房が次世代医療ICT基盤の中でよく示される図です。2015年にはレセプトデータ、これは診療行為データですね。アウトカムデータではなくて、何をしたかというデータですが、それが2019年には検査結果等のアウトカムデータというものが入ってきていまして、2025年にはさまざまなアウトカムデータというものがそこに入ってきているわけです。その中には、生活環境におけるとか、さまざまなものがあるわけです。このことによって解析をどんどん進めていこうということが、この図であります。

 次のページをご覧ください。今、医療情報学会とほかの学会が標準化をそれぞれの領域で進めておりますけれども、特にアウトカムに関連する標準化を進めている事例、私が関連しているところを2例挙げています。

 1つは、ミニマム項目セット。例えば、糖尿病になったら、少なくともこの項目だけは、こういう表し方をして、この粒度で、この単位で集めましょうという決まりごとをつくっております。これに関しましては、今日は時間の関係で余り示すことができませんけれども、なぜ解析力を向上するかというと、糖尿病だと、何百、下手をしたら何千というさまざまなデータ項目があるわけですが、それを集めてきても、ある患者さんはこの項目はあるけれども、この項目はないという、解析をするときにデータ欠損があるわけです。このミニマム項目セットに関しては、データ欠損を少なくして、名称とか粒度とか単位をそろえていくということです。

 これに関しましては、これまでにも既に、例えば糖尿病学会のJ-DREAMSとか腎臓学会のJ-CKD-DBとか、日本医師会の石川先生が進めておられますJ-DOMEにこれを使っていただいておりますし、それから山本先生がやられていますPHR事業など、幾つかのPHR事業でも使っていただいております。これも一つのアウトカムの標準化の例であります。

 それから、もう一つ、今日お話ししたいのは、日本クリニカルパス学会との協同で、先ほどHELICS規格の審査のところで少しありましたけれども、標準アウトカムマスター、BOMと言います。これは、恐らく4月中には再審査の申請が出てくるのではないかと思っておりますが、かなり標準化が進んでおります。

 それと、もう一つは、それに基づくクリニカルパスの標準データモデルというものがあります。先ほどの澤先生のお話では、上のマスターが用語マスターで、下がモデル・構造というところになると思います。

 その次、電子カルテの課題をそこに書かせていただいておりますが、右側に電子カルテの絵がありますけれども、問題点が幾つかあります。例えば、症状というものに関してはほとんど構造化されておらず、フリーテキストで書かれていたりします。それから、診察、検査をして、その結果、診断がつきます。その診断に基づいて治療して、そして結果が出るという流れになっておりますけれども、この中で構造化されていないものもあるということと同時に、診療行為を行う目的というものが標準的にはなかなか書かれない。

 それから、患者の状態。検査結果に関してはありますけれども、例えば血圧とか栄養状態とか患者さんの理解度とか、さまざまな、本当に必要なアウトカムが構造化された形で書かれることはない。

 それから、診療行為でも、診療報酬の請求対象でないものに関してはなかなかない。

 それから、診療のプロセスが正確に書かれていない。あるいは、診療行為の時間が書かれていないということがあります。

 このような電子カルテからも、今、さまざまなデータを集めて解析していますけれども、なかなか限界があるだろうと感じます。

 次のページをご覧ください。次世代電子カルテをつくることが、10年後、20年後にはいいのだろうと思いますが、実は今、クリニカルパスというものが既に多くの施設に入っております。200床以上の病院の7080%には使われているだろうということになっておりますので、8,500の病院の中で恐らく1,000から2,000近くは電子パスが入っているだろう。ただ、効率よく使われていない、あるいは標準化されていませんので、施設を超えた解析ができない。

 この既に使って解析しようとしているパスを標準化することによって、近い将来にかなり有用な解析ができるのではないか。右側にありますけれども、結局、ひもづけですね。この症状に対して、この検査をして、そしてその結果、この診断を得て、その診断に基づいて、この治療をして結果を得るということが、パスの中では既に実現されているということになります。

 このパスに非常に相性がいいのが、その下にありますLearning Health Systemという概念があります。これは、アメリカで発達してきて、日本ではまだほとんどやられていないのですが、2006年の図です。左側のPoint of Careというのが現場です。Knowledgeと書いてあるところが解析ですね。

 これは、現場のデータを解析して、解析の結果を現場のルール変更に入れていって改善するということで、当たり前なのですが、工学界といいますか、例えばトヨタの工場などでは当然行われているのですが、医学の世界では、この解析のところがやることは、学会発表、論文、ガイドライン作成です。つまり、現場が参考になるのは、ガイドラインを見てルールを変えていくということしか、今はほとんどのところではやられていません。ところが、このパスというのはルールが明確化していますので、直接解析の結果をこのルールの変更で改善することができるということで、非常にきれいなPDCAサイクルが回ります。

 次のページをお願いします。これは、我々がある医療機関とLHSをしましょうということを宣言して、それからデータを集め始めてやった1例目の解析です。脳出血701名で、この脳出血というのは約20%に誤嚥性肺炎を合併して、これが予後に非常に影響するし、在院期間が長くなってコストが高くなるということでした。

 これを解析、機械学習しますと、ジャパン・コーマ・スケール、意識障害レベルが一番に出てきまして、そのほかに出血量は割と当たり前の結果が出るのですが、第1週目でLHSの1回目なので、最初はジャパン・コーマ・スケールでやりましょうということになりました。これも今までのパスがあったのですが、ゼロ桁、1桁は軽症パス。2桁、3桁は重症パスと、パスを分けました。どちらもギャッジアップで頭部30度挙上。そして、重症パスは、ちょっとコストというか、人件費がかかるのですが、口腔ケアを1日3回ということを徹底してやったということになります。それがこの黄色い部分ですね。

 途中でトライアルがあるので3期になっていますが、それの結果が下になります。誤嚥性肺炎の発症率の比較は、軽症パスを適応しているところでは、1桁のところで誤嚥性肺炎の発症が抑えられた結果になりました。残念ながら、重症パスのところでは有意に抑えられたということはありませんでした。

 ところが、死亡率を比較したところ、軽症パスでは誰も亡くなりませんので、これは有意差がないのですが、重症パスにおいて、特に3桁で死亡率が半減以下になった。それで、この3桁の人たちのCRP、炎症反応を比較したところ、有意に差が出る。つまり、肺炎は起こしているけれども、肺炎の重症度が違ったのだろうという考察がありました。

 これは一つの病院なのですが、大きな病院でたくさん発生する疾患ではできるのですけれども、もっと小さい病院でこういうことをするためには、標準化してベンチマークして、そしてデータを集積してやらないといけないということが言えると思います。

 次のページをご覧ください。データ・ユニットの関連。これは、工学的なクリティカルパスに近いのですが、こういうユニットに分けて考えます。

 そのデータ・ユニットというものを下に書いておりますけれども、例えばアウトカムを1つ決めます。その日に行う五つ六つの医療工程があるわけですが、例えば術後2日目であれば、術後感染症がないというアウトカムがあったとします。

 そうすると、例えばアセスメントは、発熱がない。38度以下である。白血球が1万以下である。アセスメント3は術創に感染がないということであれば、タスク1は熱をはかる。タスク2は白血球をはかる。タスク3は創部を観察するということで、それが全て目的を持って医療をやっている一つのユニットを組んでいって、これの集合体がパスということになります。これをアウトカム志向のクリニカルパスと言っています。これは、パス学会が十数年前から打ち出している概念であります。

 それを、今回、パス学会と医療情報学会、それからJAHIS、工業会も入っていただいて行っているのがこういう形で、例えば遠隔転移がないことを確認するアウトカムがあるとします。そうすると、遠隔転移がないことを標準的に確認するためには、脳転移がない、肺転移がない、遠隔リンパ節転移がない、その他の明らかな転移がないことを確認する。そのためには、脳CT、肺CT、腹部エコー・腹部CT、そして病歴などを確認するということがあります。これをもとに、パスではオーダを電子的に飛ばします。これがマスター部分になります。

 その結果として実施したというのがタスクです。そして、脳転移がない、肺転移がないという一つ一つの判断がアセスメントで、全部なければ、標準的には遠隔転移がなかったと言えるということをやっていることになります。

 次のページをあけていただきまして、このアウトカムの部分が、先ほどのHELICSで最終段階に入っています標準アウトカムマスターと呼ばれるところでありまして、アセスメントのところの標準化が進んでおります。

 その下にその標準アウトカムマスターをベーシックアウトカムマスターという名前で書いておりますけれども、これは厚生労働省標準規格のMEDISの看護実践用語標準マスターとひもづけされておりますし、既に450以上の医療施設が購入しております。

 次のページをご覧ください。そのユニットの書き方としては、最終的には実装の概念図が、17ページにありますけれども、患者の基本情報にひもづいた形で乗ってくることになります。

 つまり、こういう概念が今までベンダーごとに全く異なっていて、パスというものを漠然とした概念のまま進めてきたために、ベンダー間では交換することが全くできなかったわけですね。例えば、九州大学はベンダーを5年前に変えましたけれども、そのときには全てのマスターを手で打ち直した。マスターを電子的に移行することも全然できないということで大変な思いをしたのですが、そういうことも標準化によって変えることができると思います。

 次のページをご覧ください。結局はそういう構造のものを出していくために、今、モデル概念をつくっているところでありまして、最終的な出力に見合ったような入力などを網羅する必要がありますが、これが達成できますと、19ページにありますように、それぞれのベンダーでクリニカルパスのデータベース、ここは独自の仕様でいいと思います。先ほどの澤先生の話もありますが、ここの時点で完全な標準化が必要かどうかと言われると、それはそこまではないと思いますが、インタフェースを介して、クリニカルパスの標準データリポジトリという標準的なモデル、構造をつくることができます。

 次のページをご覧ください。そうすることによって、これはリポジトリ同士のパスの移行とか、パスを途中までやっている人のデータの移行も可能になりますし、それを集積することによって、アウトカムを含む診療プロセス解析ができる。これは、もちろんベンチマーク解析だけではなく、データ統合解析ができる。もちろん、そのパスだけを解析するわけじゃなくて、そこにはその患者さんのDPCとかレセプト、SS-MIX2データもありますので、それをあわせて解析することによって、大きな改革を起こすような結果を出すことができるだろうということになります。

 このようなアウトカム解析を今はまだできないわけです。今はそれぞれの病院で実装はされているけれども、ローカルコードで実装されているようなものに関しての標準化は進んできたのですが、まだないようなアウトカムデータを、パスの中では既に実現できているので、まずはここを標準化して解析まで持っていくことが重要かなと思っています。

 もう一つは、先ほどの20ページの図ですが、これを集めるためには、病院間を超えてデータを統合しなければならないのですが、それぞれの病院、特に小さい病院はデータを解析したがっているのです。つまり、提出してデータを統合することによって、自分たちのところにフィードバックしたいのだけれども、ここに次世代医療基盤法が使われるのではないかと考えています。つまり、次世代医療基盤法ではデータ提供側にはメリットが余りないかもしれないのですが、ここでは今の時点でもデータを提出して解析したいというモチベーションが存在している部分だと考えています。

 最後のスライドは、こういうことによって起きることを書いておりますが、以上です。ありがとうございました。

○大江座長 ありがとうございました。

 それでは、ただいまのプレゼンテーションについて御質問などありましたら、お願いいたします。

 木村構成員、どうぞ。

○木村構成員 パスの記述とすればCDAになっているのですね。使う文法としてはCDA R2、もしくはR3かと思いますが、そういう実装のトライはしておられますか。

○中島構成員 実装に関しては、今年度、いろいろと。今、JAHISに入っていただいて、その実装モデルについて、今年から着手することになっていますが、まだそのグラントといいますか、原資がはっきりしていませんので、そことの兼ね合いになります。

○木村構成員 そういう場合、データ入力のシーンというのは、パスを文書として考えたときの文書システムでみんな書き込んでいくのか、それとも看護は看護で看護記録を書きながら、あるいは医者は医者で聞きながら、1枚の文書をみんなで書くのか、それとも1枚の文書のいろいろな部品をそれぞれが書いて持ち寄るのか。どうでしょう。

○中島構成員 インターフェースの問題であれば、1枚のインターフェースで書いていく形ですが、ほかの人の入力もよく見える形になっています。基本的には、全部、構造化データで選ぶ形になっています。ただ、バリアンスのところだけの記載は、将来的には何か構造的なものにしたほうがいいと思っていますけれども、まだそこまではいっていないです。今、パスの中では、全部の入院期間を見渡すオーバービューと、一日一日の日めくりという部分が、それぞれベンダーごとに意味合いが違うのですけれども、標準的には存在していて、それを使っているという状態まではなっていますね。だから、そこまで行っているのに標準化されていないので解析ができないという、非常にもったいない話になっている。

 パス学会は、毎年3,000人ぐらい来るのです。小さな病院は、割と大きな病院の解析を見て、大変もどかしさを感じている。なぜできないのだろうということがあるので、かなり沸点に近くなってきているので、ここで標準化すると非常に喜ばれるし、前に進みそうな気がしています。

○木村構成員 もう一つ。これがもともと工学的な意味でのクリティカルパス、もしくはパートの記述というか。要するに、ノードと先行作業の関係という記述であるならば、当然、それの記述を助けるシステムは、このプロセスが先に終わっていないと次に行かないという先行関係が記述できていないといけないのです。そういうものを実装したシステムというところに困難があるのですか。

○中島構成員 フェーズパスという概念がありまして、まさにおっしゃるとおりで、これは時系列が非常に大事なのですが、問題なのは、相手は工業製品ではなくて人なので、実際には一日一日で区切っていかないといけない。そこで一日の固まりができてしまうことにはなりますが、基本的には、これを達成したか、達成していないかで次の日に進む。ただ、相手は人なので、達成していなかったら次に進まないわけではなくて、それはバリアンスとして判断して、それは先に進んでいいのか、それとももう一日延ばすのかという判断をそこでするわけですね。それによって在院期間が延びることになれば、そのままでやることになる。そういうバリアンスが発生することは、解析には逆に非常に有効になるわけです。

 先ほど、LHSの1週目で死亡率が半減したというのは、我々もびっくりしたのですが、今、2週目に入っていて、ほかの項目も含めてスコアをつけながら、どれぐらい改善するのかを見ているところですが、これがもっとたくさんの病院でデータをアップすることになると、大変有効ではないかと思っています。

○大江座長 合地構成員、どうぞ。

○合地構成員 標準化という意味で非常に大切なことで、私もパスはモデルとして非常に有用だと思うのですけれども、今、言われたフェーズパスとか、いろいろなパスの形態を、この標準化という場合に、恐らくステップ・バイ・ステップで進めていかないとだめだと思うのです。システム構築からしていくと、フェーズパスとか、いろいろなところまで踏み込んでいくと、恐らく各ベンダーが今、足並みがそろっていない状況で、なかなか難しいと思いますけれども、このあたりはどうでしょうか。

○中島構成員 おっしゃるとおりです。そういう運用のところまでの標準化が非常に大事だと思います。JAHISに入っている4つのベンダーで、200床以上の病院の電子カルテ、つまりパスのシェアの7割ぐらいを占めています。この4つのベンダーが、強制ではないのですけれども、標準的なパスを、同じような運用をするやり方でつくっていただくと、もちろんそれぞれの特徴があっていいと思うのですが、最低限のルールを守っていただくと解析ができるのではないかと思っています。

○合地構成員 今回は、BOMを標準化規格にという提案ですか。

○中島構成員 今、HELICSにかけているのはBOMで、将来的には実証を終えて、モデルもできれば標準規格にさせていただきたいと、それはちょっと先のことになると思います。

○合地構成員 ぜひ進めていただけたらと思っています。先ほど澤先生が言われたことでも、我々は地域連携でいろいろ苦労しているのですけれども、ベンダー間の足並みがそろわないのですね。それで、標準化してもらったら、つくりますよと言われるのですけれども、その標準化のステップまでにものすごく時間がかかってしまう。そうすると、前へ全く進めない状況になってしまうので、そのあたりをどう考えていったらいいのかなというのが一番の悩みです。

○大江座長 御意見ありがとうございました。

 ほかに御質問ありますでしょうか。

 では、私から1つ質問したいのですけれども、このベーシックアウトカムマスターというのは、入院のパスで使うアウトカム用語集と考えればよろしいですか。それとも、外来でも使えるようなものでしょうか。

○中島構成員 今のところは、必ずしもパスに使うという目的だけではないのですが、基本的には入院のアウトカムを大体網羅している形になります。今後、外来のもの、それから連携のアウトカムなどを入れていくと聞いています。

 また、BOMに関しても既に英語版ができていますので、そういう普及も考えている。こういうアウトカムマスターというのは、ないことはないと思いますけれども、パスを使うマスターの整備というのは余りできていない。アセスメントとアウトカムというところを考えているということを聞いております。

○大江座長 ありがとうございました。

 ほかに御質問ありますでしょうか。ありがとうございました。

 それでは、引き続きまして、PMDAの宇山部長からプレゼンテーションをお願いいたします。

○宇山部長 御紹介ありがとうございます。PMDAの宇山でございます。

 このたび、厚生労働省のほうから「MID-NET構築の経験を通じて得られた医療データ標準化における今後の課題」というのを紹介してほしいという依頼をいただきましたので、今回、先生方に多少なりとも御参考になればということで御紹介をさせていただきます。

 3ページに、MID-NETの概要を書かせていただいております。

 この事業は、医療情報データベースを活用した薬剤疫学的手法による医薬品等の、主に安全対策を推進するということで、厚生労働省の医薬安全対策課を中心に進めてきた事業でございます。

 構成自体は、SS-MIX2の標準化を用いておりまして、医療データを収集するためのデータベースを各拠点に構築させていただく。

 それから、その下の図に描いてありますが、それをクローズドネットワークで連携して、PMDAのほうでもその情報を解析できるようにシステム構築を進めてきたということでございます。

 この会議の中でも、日ごろよりお世話になっている先生方がたくさんいらっしゃいますが、特に大江先生、木村先生、中島先生には、協力医療機関の一つとして、日ごろより御協力いただいており、こういった先生方の御協力の中、本年4月1日から本格運用を開始できたということで、改めてお礼を申し上げたいと思います。

 4ページ目ですけれども、これがMID-NETのシステム展開の構成ですが、左上のほうにオンサイトセンターと書かせていただいておりますが、ここは利活用者が実際に解析の条件を設定する、スクリプトを作成するような場所になります。ここでつくったスクリプトが各拠点、MID-NETの場合は10拠点ございますので、10拠点に同時にこのスクリプトが送信されるという仕組みになっております。

 その下のほうに行きますと、各拠点ごとに統合データソース、抽出、1次システムというものができておりまして、この統合データソースには、もともと病院で日常診療に使われております病院情報システムから必要なデータが集積されるようになっている。スクリプトを投げますと、そこで、例えば何とかの薬、アセトアミノフェンならアセトアミノフェンを処方された患者さんのデータがその都度抽出されて、同時に集計処理も行われますので、例えば年齢ごととか性別ごとといった集計結果も同時に作成されるということでございます。この段階で匿名化処理を行っておりますので、全ての匿名化処理というのは、各医療機関の中で完結する仕組みになっております。

 最終的には、分析用データセットとか集計表というものが、各拠点から外部の、右上に書いてありますけれども、複数施設統合データ処理センターに送信されてくるということで、利活用者はここにリモートでアクセスすることによって、10拠点の結果の統合解析ができるという仕組みになっているものでございます。

 5ページ目を見ていただきますと、このMID-NETの特徴を簡単にまとめさせていただいていますが、現在、10拠点、23病院ございますけれども、多数の病院データを、ほぼリアルタイムで、1カ所のオンサイトセンターで解析できるというものでございます。平成30年度、この4月1日運用開始時には、約400万人分のデータが利活用可能となっています。

 それから、もう一つは、多数の種類のデータが利活用可能ということで、電子カルテ情報を初め、レセプト、DPCのデータが同時に利用可能です。特に、電子カルテの情報でも、検体検査をやったかどうかではなくて、実際の結果そのものを利活用できるというのが一つの特徴と考えており、こういった検査結果を用いることで、より客観的な評価ができるのではないかと思っております。

 3つ目は、データの信頼性が高いレベルで確保されているということで、先生方と協力しながら、PMDAのほうで品質管理を進めてきておりまして、継続的かつ網羅的な品質管理によるデータ信頼性の確保をすることができております。

 それから、データの特徴を把握した上での標準コード付与を行っておりますので、複数の施設から送られてくるデータですが、それを統合解析する際の信頼性が確保できている。

 それから、各種手順書等を同時に作成しておりますので、こういった業務の標準化による信頼性ということで、国が進めている製造販売後調査の規約にも適合する形で整備が進められていたものでございます。

 次のページをお願いいたします。おかげさまで、このMID-NET運用を開始することができたのですが、こういった中で、これまでどういったことに対応してきたかということを御紹介させていただければと思っております。

 次のページに書いてありますが、我々の前提というのは、信頼性の高いデータと適切な解析計画の両方がそろわないといけないということで、まずはデータベースに集積されたデータが、いかに信頼性の高いものであるかということを確認しようということで、協力医療機関の先生方と協力しながら対応を進めてきたということでございます。

 8ページでございますが、今回、10拠点、23病院の先生方と協力しているのですが、先生方も御存じのとおり、各拠点はそれぞれ異なった電子カルテあるいは異なった部門システムが入っておりますので、MID-NETの場合にも、ハードウエアベンダーひとつとってもさまざまな企業と連携しており、また、アプリケーションのベンダーについても、1社ではなくて複数社と対応させていただいているということ。また、医療情報学会をはじめ、関連する学会の先生方にも御助言等を得ながら進めてきたということで、こういったさまざまな関係の先生方、専門の方々と協力しないと、このMID-NETを構築することはなかなか難しかったのではないかと思っているところでございます。

 それから、データの品質確保です。先ほど申し上げた信頼性あるデータというのは、どうやってつくり上げてきたのかということで御紹介させていただきたいと思います。

10ページをあけていただければと思いますが、このMID-NETの中では、病院情報システムにあるデータがオリジナルデータですけれども、オリジナルデータから適切な形でこの統合データソースにデータが送られるということを確認しようということで、ここにあるオリジナルデータと統合データソースのデータを比較するという手法をとらせていただいております。

 当初は、全拠点でデータの不整合があったのですけれども、これはさまざまな過程に起因しておりまして、各拠点共通する課題もございましたが、各拠点の運用上の問題に起因するもの、両方がありました。

 そこにデータ不整合の例と書いてありますが、処方中止のデータが通常の処方データと区別されずに送信されていたとか、1日量、1回量、全量といったものが、各医療機関ごとに運用上、異なっていたために、送信されてきたデータを見ますと、1回量と1日量が混ざった形で送られてきている場合。あるいは、標準単位がないもの、そういったさまざまなものがございました。

 当初、単一の病院ではなくて、複数拠点から送られてきた結果をそのまま解析するということにはなかなか限界があったということで、先生方の御助言を得ながら、これが信頼性の高いものになるように検討を進めてきたということでございます。

11ページを見ていただきますと、MID-NETでは、通常ベンダーが実施するような検証に加えまして、PMDAと協力機関の先生方で協力させていただいて、主に5つの観点で信頼性を確認してきたということでございます。

 1つ目は、データの信頼性と書かせていただいておりますが、ここが先に申し上げた病院情報システムとMID-NETの統合データソースのオリジナルデータとの一致性というものを確認している。

 それから、後で少し御紹介しますが、統合データソースに入ってきたデータについて、標準コードを付与させていただいておりますけれども、その標準コードについても、各拠点間での違い等を考慮しながら付与している。

 それから、3つ目は抽出機能ということで、データソースにあるものが正しく抽出されるかどうかという確認を別途、行っておりますし、4番目の送信機能の信頼性ですが、抽出されたデータが正しく送られてくるか。

 最後は、SASのデータセットという形でファイルができ上がりますけれども、SASの変換が正しくできているかといったこともあわせて確認しながら、このシステム全体の信頼性確認に努めてきたということでございます。

 次、12ページをご覧いただきますと、こういったMID-NETの経験を踏まえて申し上げられることとしましては、SS-MIX2標準化ストレージをもちろん活用して標準化されているわけですが、特に、複数のさまざまな拠点のデータの品質管理をするという観点からは、以下のような点についても精査し考慮することが必要ではないか。

 1つは、典型的なサンプルデータを送るということではなくて、MID-NETでは、数カ月の実データをとって一致性を確認しているということで、これによってリアルワールドで発生するデータバリエーションを考慮した品質管理ができております。

 それから、病院側での電子カルテ運用とか部門システムの影響ということで、ベンダーが同じであっても、電子カルテがカスタマイズされている例もございますので、そういう各医療機関での電子カルテの運用状況も確認しながら、データの送信あるいは品質管理というものを進めないと、信頼性の高いデータベースとなるのは難しいのではないかということが経験として得られております。

 それから、13ページ目からは標準コード付与でございますけれども、14ページをあけていただきますと、ここは1例ですが、MID-NETでは、病名はICD-10コード、医薬品についてはYJHOT、検査についてはJLAC10コードなどを採用させていただいております。

 標準コードはもちろん付与しておるのですけれども、実際には医療機関のローカルコードに対して標準コードを付与する際の付与の方法が拠点ごとに異なっている場合があったということ。特に検体検査というのは、さまざまな材料や手法等がございますので、同じ検査項目に対して別のコードが付与されているケースがあったり、あるいは別の検査項目だけれども、同じコードが付与されているということで、病院の実際の検査の中身をよく確認しながら付与していかないと、効率的なコード付与はなかなか難しいという状況でした。

MID-NETではどうしたかということでございますが、15ページ目を見ていただきますと、各医療機関のデータ分布を確認しながら、A病院、B病院、C病院となっておりますけれども、上のパターンですと単位の違いでして、ある病院はμ、ある病院はmgという場合で、単位換算をしてやると分布がぴたっと合うケースです。こういったものに関しては、単位を統合することで、適切な単位変換を行った上でMID-NETのデータソースに確認することで、別の病院から送られてきたデータであっても適切に解析に使うことができるというものでございます。

 下のほうは、こういうぴたっと合うケースももちろんあるのですが、そうじゃない場合もございまして、単位換算をしても中央値が違うとか、最大値がほかの拠点とは異なっていることもございます。これは、ある意味、そこの検査がどういう形で使われているかということで、例えば、ほかの病院では一般の患者さんですけれども、ある病院では妊婦さんによく行われている検査があって、検査自体は一緒だけれども、母集団が異なることによって分布が異なってくる内容もございましたので、そういった実態をよく把握しながら、コード分布を確認していく必要があると考えております。

16ページ目ですけれども、こういった複数拠点ですね。MID-NETの場合は、さまざまな医療機関からのデータを統合して解析することが目的ですので、こういう拠点横断的に適切なコードを付与するためには、以下のような点について、個別に精査し考慮が必要ではないか。

 1つ目は、各拠点でのコード付与プロセス。どういう形で付与が行われているのかということで、どのような付与方法かというのを正確に理解しておかないと、正しいコードの付与がなかなかできないということ。

 それから、拠点間での標準コードの差異があった場合には、その検査方法の詳細(測定法、材料、試薬など)といったものを把握した上で、先生方と御相談しながら、どのコードを付与するのが最も適切かといった検討をしてまいりました。

 あとは、先生方も御承知のとおり、医薬品の採用が新規に行われる、あるいは検査項目が変更されるといったことは定期的に発生しますので、そういったものを把握しながら標準コードをタイムリーに更新・変更することが必要になってまいりますので、そのあたりもMID-NETでは先生方と御相談して進めてきたということでございます。こういったことをしないと、つけていたコードがいつの間にか別のコードに変わってしまうとか、新しい検査が採用されたのだけれども、標準コードが付与されないまま格納されているという状況がございますので、できるだけタイムリーに付与していく仕組みが必要だと思います。

 それから、データ標準化における将来的な課題ということで、18ページ目をご覧下さい。先ほど厚生労働省の笹子企画官のほうから御説明がありましたが、次世代医療基盤法等で、今後、国のデータヘルスなり、病院の情報だけじゃなくて、さまざまな医療データ、ヘルスデータというものを連携しながら利活用していくことを目指すということを前提として、そこにMID-NETでの経験というものがどのように役立つのかと考えさせていただきました。

 まず、課題としては、いかに効率的にデータ規模を拡大していくのかという問題。MID-NETの場合、多くは大学病院ですけれども、今後、ナショナルセンターとかクリニックといったさまざまな規模の医療機関データを統合解析できる仕組みの構築が必要になってくると思われます。

 それから、データ連携に対しては、電子カルテ、レセプト、DPCだけではなくて、現在、学会中心に行われている患者レジストリのデータとか、死亡(戸籍)情報、健康診断(発症前)の情報、あるいは介護の情報といったさまざまなデータが2次利用可能となることによって、よりいろいろな目的のエビデンスが集積されるということですので、こういった我が国の貴重な医療データの適切な利活用を促進して、質の高いエビデンスを生み出すためには、効率的なデータベース構築プロセスが必要だと思います。

 現状のMID-NETの手法は、一つのモデルにはなりますけれども、これは今、協力させていただいている医療情報の専門家の先生方を初めとして、さまざまなスタッフの御協力があってできることですので、これが全ての病院でできるというのはなかなか現実的ではないと思いますから、規模の拡大、あるいはさまざまな別のデータとの連携を行うということでは限界があるのかなと思っております。

19ページ目ですけれども、今後の課題として、これはあくまでも私の私見ですが、2次利用を考慮した入力段階でのデータ標準化ということで、先ほど澤先生のほうからもお話がありましたが、多数の拠点とかデータ種別の連携を念頭に置くと、さまざまな生成・入力方法で発生したデータを、発生後に標準することには限界があるのではないか。もちろん、発生後に標準化するというのも必要ですけれども、先ほど申し上げたように、病院の情報だけじゃないような情報との連携も、今後、想定されていることを念頭に置くと、入力段階での標準化というのもある程度進めていく必要があるのではないかと考えているということでございます。

 それから、2つ目は標準コードの中央機関での付与と書かせていただいていますが、検査、試薬等が医療現場に販売されて、病院の先生方はそれぞれの中でベストな判断をされてコードを付与されるわけですけれども、それが日本全体になりますとばらけるということですので、こういったものが使用される前に、どこか中央機関で迅速に標準コードを付与することができれば、病院間あるいはデータベースを超えてばらつきがなくなり、効率的な標準化が可能になるのではないかということで、入力段階とコードの付与プロセスをどう統一化するかということが、今後の次世代医療基盤法が施行された後の世界を考えるときには必要になってくる課題ではないかと考えたところでございます。

 私の御説明は以上です。ありがとうございます。

○大江座長 ありがとうございました。

 それでは、ただいまのプレゼンテーションについて御質問ありましたら、お願いします。

○木村構成員 19ページ、一番最後のページの「2次利用を考慮した入力段階で」というと、どういうデータ種を念頭に置いておられますか。

○宇山部長 入力段階のさまざまな時点、例えば電子カルテを入力するときに、中央機関で付与されたコードを先生方が入力したときに、その段階で標準コードが入っていくとか。

○木村構成員 医師が入れるというと。

○宇山部長 医師が付与するのではなくて、それをシステム的に付与できるような仕組みにする。病院のスタッフの方々に負荷をかけるのは現実的ではないので。

○木村構成員 下のほうはそうですね。上の入力段階でのというのは、例えば検体検査のことですか。

○宇山部長 そうです。

○木村構成員 さすがに所見項目ではない。わかりました。

 下のほうは、まさにそのとおり。本当にそう思います。最近は、HOTコードもやっと認可の段階です。それで、ぜひ検体、検査、試薬の認可の段階でつけるとか、仕組みを検討いただいていると思っています。結局、病院としては、市販された後にコードが出ても、すぐに使いたいから、先にコードを振ってしまうのです。したがって、発売の段階じゃなくて、認可の段階でHOT9JLAC10をその段階でつけていただくと、我々病院としてもそれを使う。ぜひおっしゃっていただいて、そういう仕組みができると大変いいと思います。

○大江座長 今、話題になった中央機関での付与というのは、新しい医薬品が認可されたり、あるいは試薬が認可されたりした時点でコードをつけるというのは、もう既にMEDISのほうで事業としてやっておられて、それが意外に知られていないのではないかと思いますけれども、そのあたり、山上構成員、いかがでしょうか。

○山上構成員 MEDISの山上でございます。

 私どもで、平成28年、29年度に厚生労働省医政局から委託を受けましてやった事業について、少しお話ししたいと思います。JLACコードにつきましては、5要素から成る17桁ということで、各医療機関で付番したコードが不一致になってしまうということが問題点としてあったということでございます。事業におきまして、私どもは体外診断用医薬品の添付文書を4,700余り収集いたしまして、それに対してJLAC10及びJLAC11のコードを付番いたしました。

JLACコードというものが物にひもづいて見えてきたということでは、これは非常に有効性があり、実際に17桁コードの範囲をかなり限定することができるということがありまして、コーディング作業が効率的になること、それから正確性も上がるということが明らかになったということでございます。

 少し具体的な数字を挙げると、製造販売承認等の番号が決まりますと、91%は17桁コードが3つ以内に候補が絞れるということがわかりました。したがいまして、検索条件に承認等番号があって、それに材料や結果表記というものを多少添えることで、ぴたっと17桁のコードがそろうのではないかというところまで来たように思っています。

 ただ、少し課題もございまして、いずれにしても添付文書がもとになります。添付文書を収集するというところの作業が、実はなかなか手ごわくて、添付文書はPMDAのサイトにも掲載されておりますが、私どものやった作業の中では78%ぐらいしか掲載されていないということがあります。

 それから、新しく承認・認証・届出された製品については、リストをまず入手して、それを分母にして、PMDAサイトに登録されていないものについて、企業から直接入手いたします。承認のリストにつきましては、日薬連のホームページに1週間遅れで出てきます。ところが、認証品目になりますと、PMDAのサイトに2カ月遅れの情報が出てきます。それから、届出品目につきましては、どこを探しても公表された情報がないという状況がありまして、非常に非効率な面がございます。そのあたりが今後、改善されていく必要があるということを、この場をお借りしてお願いしたいところでございます。

 以上です。

○大江座長 ありがとうございます。

 いわゆるソースコーディングといいますか、出たところからIDがついているようにする、には、まだまだいろいろ効率化が必要だということだと思いますので、そのあたりも、今後、標準化の課題の一部として議論していくことが必要なのかなという印象を受けます。

 ほかに御質問はあるでしょうか。

○宇山部長 先生、追加でいいですか。

○大江座長 どうぞ、宇山部長。

○宇山部長 今のコードの話に関しては、まさに御指摘のとおりですけれども、コードをつけるという問題もあるのですけれども、標準コードが決まったものを、興味のある医療機関の先生方はもちろんやられると思いますけれども、それがどう自動的に付与されていくのかみたいなことのシステム的な検討といいますか、付与することに対するインセンティブというものが必要なのかもしれない。

 そうしないと、コードは決まったけれども、現実問題、発生する医療情報に対して、そういう標準コードがつかないまま集積されてしまう。そうすると、後で振り直すとか、そういう作業が発生してくるので、それをどう促進していくのかについても検討が必要かなと思っていますけれども、そのあたり、先生方はどうお考えですか。

○大江座長 つまり、今のは、試薬に標準コードはついているけれども、今度は各病院が採用した試薬を使う検査に、各病院が標準コードをきちんと入力しておくというシステム的なことをどうやって推進するかということですね。何か御意見ありますでしょうか。

 木村構成員、どうぞ。

○木村構成員 システム的というのと行政的。行政的というのは、通知1枚。システム的には、添付文書に書かれてPDFで読めるというのではなくて、それなりにXMLか何かでコードがちゃんととれるような形でソースマップする。薬屋さん、試薬屋さんは、どこか定められた形で公開する。そうすると、電子的にそれを取り込んで、タイプミスなくマスターに付与するという仕組みは、ベンダーがサポート機能としてつけるという流れですね。情報システム的・行政的には。

○宇山部長 そこのインセンティブです。

○木村構成員 インセンティブは、研究への参加とか、MID-NETへの参加。それから、研究費のあるような研究への参加。一番効くのは、紹介時に診療報酬がついているところで、それによるということですよ。それが一番強いインセンティブだと思いますというのを、いらっしゃる皆様の前で言わせていただきました。

○大江座長 ほかに御意見ございますでしょうか。

 今の話は、私も以前から申し上げているアイデアが1つありまして、各病院の例えば医薬品のマスターとか臨床検査のマスターは、それぞれ薬剤師さんや検査技師さんが業務で採用したときにマスターデータベースに入力して登録されると思うのですけれども、そこがすごく省力化されていれば、もうそういうものだと業務マニュアルに書かれてしまえば、毎日1個増えるということはないようなたまの作業ですので、簡単にできると思うのです。

 その省力化の一つのやり方としては、自分のところの病院が採用した、例えば試薬であれば、試薬の外箱のJANコードをバーコードで読めば、それだけでそのJANコードに対応するJLAC10コードが入力されるとか、あるいは薬ですとGS1がついているわけですから、GS1バーコードを読めば、それに対応するHOT9コードが自動的にと入力されるような仕組みを普及させると、バーコードさえ読めば勝手に標準コードが設定されるという世界になるのではないかと思っていまして、そのあたりも少し推進していくといいと思います。

 そのためには、例えばJANコードとJLAC10との対応テーブルを各ベンダーが持っているという仕組みがいいと思いますけれども、そういったいろいろな方策でやっていかないといけないのかなと思っているところです。

 ちょっと私も発言させていただきました。ありがとうございます。

 ほかに何か御質問ありますでしょうか。

 それでは、お三方のプレゼンテーションが一通り終わりましたけれども、全体を通して、そういえば、もう一度最初のプレゼンテーションに対して質問したかったとか、思い起こすことがあれば、御質問いただきたいと思いますが、よろしいですか。

○木村構成員 コメントを一言だけ。

○大江座長 木村構成員、どうぞ。

○木村構成員 データヘルスのほうにも出てきますが、最近、思うのは、例えばアメリカのHIMSSなどに行くと、在宅ケアデバイスもしくはIoT系のウエアラブルデバイスのデモが非常に盛んに行われていて、これはIoTベンダーということで企業の投資も進んでいると思います。近隣の各国で見ても、韓国とか台湾などがそれに近い。

 日本はIoTベンダーは、患者デバイス系がちょっと足らない。なぜかと思うと、対応する工業会がないのと、対応する学会がないせいかという気もします。もちろん、ISO規格には結構なっています。IEEE1073番シリーズが11073番シリーズになっていますから。結構ISO規格にはなっているのですが、これをHELICSの場に持ってくる人は誰だろうというのがある。もちろん、IHE協会、私、IHE協会の副理事長ですけれども、そのプロセスの部分まで含めると、IHEPCDのシリーズというのはPatient Care Deviceのシリーズでもあって、あれをこちらに持ってきたほうがいいのかな。

 個々の通信形式に関しては、既にISOにもIEEEにもなっているので、それを見ろと引用はされている。そんな感じでやったほうが、多分、データヘルスの話も出てくるし、日本の得意な分野でもある。ところが、得意な分野で機械をつくっているベンダーは、必ずしも医療機器ベンダーではないから、厚生労働省からちょっと離れているところがあって、対応する工業会がないということもある。そのせいにばかりしていてはいかないので、IHE協会としても考えるようにしますけれども、どういうものをお持ちすると現場が混乱しなくていいかと思いますけれども、ちょっとそれが足らないなという感じはしました。

○大江座長 重要な領域の標準化の話だと思います。ありがとうございます。

 ほかにございますでしょうか。

 中島構成員。

○中島構成員 今の話に少し関連するのですけれども、これまでこの会議は、どちらかというと申請されたものを承認する会議だったのですが、さっき澤先生のお話の中にも、充実しているところと弱いところと中ぐらいのところという話があったのですけれども、全体を見回してみて、もっと標準化したほうがいいというところを、例えばこの会議からプロモートをかけていくようなものは、今の木村先生のお話もそうですけれども、必要じゃないかなと思います。

 というのは、申請してきたところは、大分時間をかけて、かなりそこで混乱があって、その結果で上げてきているので、それは一つの形なのですが、今年度からがんゲノム医療拠点病院が始まります。あれは、がん細胞の遺伝子のものなので、ちょっと特殊なものだろうと思います。これは、恐らく中央に集めて標準化されることになるだろうと思いますけれども、そのほか、例えば糖尿病のプレシジョンメディスンなどもこれからどんどん始まると思います。

 そのときに、がんの情報の標準化とか、そういうことはまだ遅れているので、そこをスムーズにやるために、例えばそういうことを少しプロモートしたほうがいいのではないかと思います。特定健診などでは、トップダウンで標準化が進むので、経験はあると思います。ぜひそういうことをやっていただければと思います。

○大江座長 重要な御意見ありがとうございます。

 恐らく、この会議体が、これまでは標準化指針を決めるだけのような会議体として存在していたような部分もありますが、今日、お三方にプレゼンテーションいただいたことからしても、今後、この会議体でどういう領域を標準化していく必要があるのか。あるいは、具体的にどういう方法で新しい標準をつくっていくのかということも、この会議で議論して、必要なら提言を出していくという形に持っていく考えも事務局ではおありなのではないかと思いますけれども、そのあたりも今後、事務局でこの会議での役割というのを御検討いただけるのではないかと期待しております。

 もし何か、そういう観点で事務局のほうから御発言が可能であれば、お願いいたします。

○笹子政策企画官 事務局でございます。

 まさしく、先生方から今、御議論いただいたとおり、私どもも標準化をさらに進めるために何ができるかということを考えていたところ、澤先生、中島先生、宇山先生のようなお取り組み、あるいは先生方にも悩みがあるということを共有していただきました。また、私自身もさまざまな病院の先生方から伺うと、先ほどの薬の認可がされてもコードがなかなかつかないという誤解があるということもあったりするので、そういった観点からすると、誤解があるものがあれば、私どもからPRする方法もあるでしょうし、PRだけで足りなければ、座長が先ほどおっしゃったような、現場で工夫できることもあるでしょうし、実は様々な形でできることがあるのではないかと感じました。

 そうは言っても、領域を決めて、今まで標準化そのものができていないところを掘り起こすというのは、またそれは大変なことかもしれませんが、重要なことかと思います。ただ、ターゲットを決めるというステップを踏むことは大事だと思っていますので、そういった意味で先生方からまた引き続き御助言等々、いただければと考えております。

○大江座長 合地構成員、どうぞ。

○合地構成員 今日の最初のオーダの標準用法規格ということで、HELICSが相当前から検討されていたことなので、あえて言わなかったのですけれども、先ほどの宇山先生の話では、1回量処方と1日量処方とか。それから、処方箋のところが絡んでくるので、また見直すような格好にならないかどうかというところが気になるところなので、処方箋の標準規格というものも、本当にどこまで進んでいるのかということになると思うのです。それとあわせて整合性をとっていかないと、という気がしましたので、一言申し上げました。

○大江座長 重要な御意見ありがとうございます。

 あと、ちょっと私から。先ほど木村構成員から出たIoTの話とも関連するのかもしれませんが、最近、聞くところによりますと、ISOに新しいTCが設置されて、生活圏における在宅の血圧とか体重とか、さまざまな在宅測定機器における標準化ということが進められるということも聞いていますので、そういう領域もこの標準化のこれからの非常に重要な領域ではないかと思いますから、またそういう議論もどういう形でしていく必要があるのかということも検討いただきたいと思います。

 そのほか、よろしいでしょうか。

 それでは、そろそろ予定した時間になりつつありますので、最後に今後のスケジュール等について事務局から御説明をお願いいたします。

○笹子政策企画官 事務局でございます。

 本日は、大変貴重な御意見をいただきまして、誠にありがとうございました。いただいた御提言を踏まえて、新たにHELICS指針に採択された規格につきましては、厚生労働省の標準規格に採択し、厚生労働省標準規格の追加に関する通知という形で、地方公共団体、関係団体等々に速やかに発出させていただきたいと思ってございます。

 また、本日、大変活発に御議論いただきましたけれども、今後の標準化のあり方につきまして、本日、御講演いただいた内容あるいは御意見をもとに論点を整理いたしまして、また改めて座長とも御相談の上、構成員の方々にお諮りしたいと思っているところでございます。

 本日はまことにありがとうございました。

○大江座長 本日は熱心な御議論をいただきまして、ありがとうございました。

 それでは、これをもちまして本日の会議を終了いたします。


(了)
<照会先>

政策統括官付情報政策担当参事官室
標準化推進係長 大野(内線7427)

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