ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 社会・援護局(社会)が実施する検討会等> 生活保護受給者に対する就労支援のあり方に関する研究会> 第6回生活保護受給者に対する就労支援のあり方に関する研究会 議事要旨(2019年1月22日)

 
 

2019年1月22日 第6回生活保護受給者に対する就労支援のあり方に関する研究会 議事要旨

社会・援護局保護課

 

○議題

 生活保護受給者に対する就労支援のあり方の見直し・具体的な改善策について

○議事

 事務局から資料説明を行い、生活保護受給者に対する就労支援のあり方の見直し・具体的な改善策について、出席者による意見交換を行った。主な意見は以下のとおり。

1.自立支援のあり方について
○ ケースワーカーは担当世帯数が多く、全ての世帯にアセスメントできる状況ではないと思う。全受給者を対象にアセスメントするべきだが、福祉事務所に、今それを実施できるかどうか。上から言われて形だけ、となれば全く効果がない。バランスを考えることが必要。
○ 負担のないように全員に対してアセスメント等を実施するとしても、ケースワーカー、査察指導員はもちろんのこと、就労支援員、特に自治体に1人しかいないという場合では、負担が大きくなることが予想される。また、その他、情報共有に係る負担についても留意すべき。
 
2.様々な課題を抱える者に対する就労支援の在り方
○ 「就労体験や中間的就労などの場の確保」の中に、社会的有用感・自己有用感を育てるようなプログラムとか、当事者グループ等が必要であると強く感じたので、そのような内容を盛り込むべき。
○ 就労支援の対象を拡大することは、良い方向性だが、稼働能力が十分でない人まで無理に働かせて保護費の削減を求めている、と解釈されかねないので、働くことの有用感の面からの支援、という説明は必要。併せて就労指導と就労支援それぞれの定義づけ、保護の要件との整理も必要である。
○ 稼働能力が十分ある人と全くない人、その間の様々な段階において、今回の支援の対象について、ある程度の基準は示していただきたい。
○ 働くという方向性だけが前面に出て、誤って受けとめられることがないように、全体としての書きぶりについて配慮が必要。
○ 支援の体制が整わない中で、今まで対象外だった方にも一律に、就労に向けた働きかけがなされることがないよう、慎重に議論した上で方向性を出していくことが必要。
○ 生活困窮者、生活保護受給者の方々も働くことというのは、単にお金を稼ぐことだけではなく、社会に参加するという点でも意義がある。
○ 個別求人開拓について、事業者側もそういう方々を積極的に受け入れることが地域や社会に貢献することだという、意識を持っていただく土壌づくりが必要。「地域共生社会の実現」が国民的合意を得ることで、結果的に事業者への理解促進につながると考える。
○ 生活保護の就労は4条を起点としたものになりがちだが、勤労は権利である。生活保護の就労支援が特別なことではなく、大切なことを実現していく支援という考え方を前提に、ディーセントワークも意識しながら考えられないか。
 
3.就労支援を実施するための体制強化・連携強化
○ ハローワークとの連携強化に関して、生活保護受給者向け特定雇用者開発助成金は、本人が会社に生活保護を受けていることがわかるのが嫌だという方が多く、利用が伸びておらず、本人に対しても分かりやすいメリットがない。また、ハローワークの定着支援についても、本人への定期的な確認をすることにとどっている事例も聞いている。
○ 保護を受けているかどうか企業が知る必要はないので、名称なり枠づけなりを変えてはどうか。名称を変えることで、生活保護に対する差別感のようなものを緩めるような工夫が必要。
○ 短時間、短期間就労を繰り返すことでフルタイムや正社員にステップアップするということは確かにあり、職種の合う合わないについても、就職・離職を繰り返すことでうまくいく場合もある。
○ 「生活困窮者自立支援制度との一貫した支援」は、困窮支援と生活保護の一体的運用ということも進めるが、一方では、結局、経済的困窮の枠を超えないものでしかない、そういう印象を与える可能性があるので、困窮者支援のあり方にはとどまらないニュアンスも必要である。
○ 障害者施策との連携・活用、という視点は必要だと思う。縦割りにならないよう連携協力体制を築く必要がある。
○ 就労支援員は、査察指導員、ケースワーカーと、三位一体になって就労支援に取り組んでいるが、他方で、就労支援員の位置づけ、例えば雇用上の地位、身分的な保障、あるいはそれに対する財源的な手当なども考慮できないか。
 
4.就労支援の実績状況の評価
○ 「参加率・就労率など就労支援の評価指標」における事業参加率の計上の仕方について、分母が稼働能力のある人となっているため、十分に稼働能力を活用している人も分母に入ってしまう。福祉事務所が稼働能力を十分活用していると認定するほど参加率が下がってしまうと思うが、計上方法について検討してほしい。
○ 事業参加率について、自治体によってかなり差がある点は、分母のとり方の違いというのがかなり影響していると考えており、客観的な計上方法・評価指標というのを考えていかなければいけない。
 
5.稼働能力の評価、指導指示のあり方
○ 稼働能力の評価については、信頼関係を基礎として本人自身や本人を取り巻く状況等を丁寧にアセスメントする必要がある。外形的な状況や本人の訴えだけで、拙速に判断することのないようにすることが大事。
○ 就労について、生活保護の要件論と自立助長の支援を整理して考えることが重要。稼働能力活用の要件については、就労支援のあり方の見直しも含めてしっかり検討していくということが必要。
○ 就労支援と就労指導とを使い分けるのではなくて、指導指示は「それが必要な状況に対して」行われるものであり「就労指導という用語は使わない」というような整理の仕方もあり得るのでは。
○ 指導というと、最終的には27条に基づく指導に結びつくと思われる。27条に基づく指導を行うと、従わない場合は保護の変更や停廃止にまで至る。就労指導の対象者を広げるということにすると、とにかく指導、指導となって、十分な稼働能力がないような人にまで、27条に基づく指導指示まで行ってしまわないか懸念される。
○ 対象者を広げるということは、就労指導の対象を広げることではない。就労指導の通知と就労支援に関する通知というのがあり、複雑になっている。
○ これまで議論になっているように、合理的な判断について困難な方たちがいる。指示文書を出されても対応せず、場合によっては、保護廃止になりホームレスとなる等がある。このような合理的な判断について困難な方と、保護要件の稼働能力活用をつなげて考えるから無理が生じる。
 
6.その他
○ 自治体によってはケースワーカーの充足率が十分ではなく、生活保護実施体制について自治体のガバナンスにも言及できないか。また、ケースワーカーの経験年数についてもガバナンスに言及していただくことで、経験が長くなれば、人数が少ないながらも、今より充実したケースワークが実践できるのでは。
○ 臨床心理士、精神保健福祉士、社会福祉士等の専門職をケースワーカーとして配置、稼働能力判定会議やケース診断会議などに専門職の参加を通じて、ケースワークの質の向上に役立つのではないか。
○ このたび議論した今後の支援のあり方においては、これまで支援の行き届かなかった方へのアプローチが必要で、そのためにはケースワーカーの対人援助技術の習得が大切である。ケースワーカーは現場で、計算事務や対人折衝もあり、ケース数も多く持つ中で、経験の浅いケースワーカーが対人援助技術をしっかり持つというのは、困難な面もあるが、どう取り組んでいくかが課題である。
○ 生活保護の就労支援も、支援員の研修やサポートと同様に、企業に対する支援、サポート等も、これから必要になってくるのではないか。
○ 地域共生社会と結びつけることが必要でないか。住民や国民に対するメッセージであり、就労支援の供給側とも言える自治体、事業者に対するメッセージにもなる。
○ これまでの生活保護の枠組みの中でやってきた就労支援には、一定の意義や成果が認められ、それが生活困窮の就労支援にもつながっている。一方で、内部努力だけで解消できる課題ばかりではないので、地域共生社会の話とうまくつながると良い。
○ 自治体が就労支援をどう行っていくかも課題であると考える。制度はあくまでツールである。就労支援は市民を起点に進めていくと、社会や地域の理解も深まるかと思う。就労支援を、個人の尊厳の保持と、支援を通じた地域づくりを理念とする、生活困窮者支援と一体的に推進するということが、有効な手立てかと思う。
○ 本研究会第4回の当事者ヒアリングや、当事者の率直な思いこそ、支援の質を向上させると思うので今後もそういう機会や、調査なども実施してもらいたい。

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 社会・援護局(社会)が実施する検討会等> 生活保護受給者に対する就労支援のあり方に関する研究会> 第6回生活保護受給者に対する就労支援のあり方に関する研究会 議事要旨(2019年1月22日)

ページの先頭へ戻る