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2018年8月29日 第3回生活保護受給者に対する就労支援のあり方に関する研究会 議事要旨

社会・援護局保護課

 

○議題

(1)就労支援のあり方について
(2)就労支援の対象とすべき者の明確化(稼働能力の評価)について
(3)稼働能力の活用が不十分な者に対する有効な指導指示のあり方について

○議事

事務局から資料説明を行い、各自治体や事業者から実施している支援の実情について、上記議題に沿って報告を受けた後、出席者による意見交換を行った。主な意見は以下のとおり。

 
【生活困窮者自立支援制度との一貫した支援】
・ 生活困窮者自立支援事業は社会福祉協議会に委託しているものの、相互の会議等に参加するなど、顔の見える関係が構築できている。
・ 一貫した支援は実施していないが、円滑な連携が図られるよう配慮している。
・ 生活困窮者自立支援と被保護者就労支援を直営で実施、同一課内のため連携できている。
・ 両制度の就労準備支援事業を一体的に実施しており、長期的な計画、途切れない支援、それらの共有や、就労以外の支援の幅も広がっている。
・ 生活困窮者自立支援制度から生活保護制度への移行は進んでいるが、生活保護脱却後、生活困窮者自立支援制度への移行は必ずしも進んでいない。
・ 日常生活自立、社会生活自立、就労自立、という3つの自立の概念と、働くことの意味を、同じ考え方のもとで一体的に支援を実施することが必要。
・ 生活困窮者自立支援制度と被保護者就労支援制度の一貫した支援、一体的な実施のために、研修の一体的実施も必要ではないか。
 
【ハローワーク等との連携】
・ 庁舎内に無料職業紹介所を開設しており、その職業指導員とも連携している。
・ ハローワークの常設窓口が同庁舎内に設置されており、各種会議等にも参加してもらっており、連携はとれている。
・ ハローワークの常設窓口に、被保護者就労支援員が輪番制で1名常駐し、ケースワーカー、就労支援員、ハローワークのナビゲーターで連携している。
・ ハローワークが求めるすぐ就労につながりそうな支援対象者は割合が減っている。以前は、福祉事務所側とナビゲーター側の、稼働能力に対する見立てや支援の認識にずれが生じていることが課題であったが、最近はハローワークも、就労意欲が十分でない者の支援要請も受けるようになってきている。
・ 就労移行支援事業、障害者就労支援(A型、B型)事業や障害者職業センターなどと連携し、職場見学や就労体験を実施している。
 
【就労支援事業の評価方法】
・ 就労支援事業について、事業対象者数、参加率、増収率、廃止率等、既存の評価指標以外は特に用いていない。
・ 委託で実施する場合、求人開拓件数を事業評価としている。
・ 求職機関に通う日数や、支援開始から終了までの期間は指標になり得る。
・ 年齢によって就労のしやすさや繋がりにくさに差があるので、年齢階層別の評価指標は必要。
・ 就労準備段階や、日常生活自立・社会生活自立については、既存の経済的・定量的な評価指標では達成度の評価が難しい。個別評価のガイドラインが必要。
・ 事業評価ガイドラインを作成し、対象者における日常生活、社会生活、就労における自立度についての変化を、数値で評価している。数字で表せない微妙な変化に対する評価と、数値の客観性に課題は残る。
・ 職場定着率も評価指標としている。職場定着支援を行う際には、事前に本人の同意を得ることとしているが、拒否はほとんど無い。
 
【就労支援各事業の対象とすべき者の範囲の明確化(稼働能力の評価)】
○稼働能力の有無をどのように判断しているか
・ 稼働能力の評価について特に指標を用いず、総合的に判断している。
・ 主治医の所見を基本としつつ、個々の特性を考慮してケース会議などで総合判断。
・ 国で示されている様式をもとに、就労準備状況チェックリストを作成、その数値を参考としている。数値を基準として一律に判断するのではなく、最終的には総合的に判断している。
・ 障害等により、一定の条件を満たせば就労可能となりそうな方でも、地域によっては条件を満たす就労の場がないことがある。それによって就労支援事業の対象から外れることは課題である。
 
○稼働能力の有無について一定の基準を設けることの是非
・ 稼働能力の有無について一定の基準を設けることで、稼働能力なしと判断されて支援から漏れる可能性がある。再アセスメントの機会が必要。
・ 精神障害のある方には、障害者就業・生活支援センター等の専門職による、稼働能力の有無について判断を仰ぐのも一つの方法ではないか。
・ 一定の基準を設けるのは難しく、本人の持つ背景なども含め総合的に判断する必要がある。
・ 保護の実施要領や現行の通知は、その趣旨を理解して、福祉事務所が事実認定を行い行政処分すれば、審査請求や裁判で原処分が取り消されるほど抽象的ではないと考えている。
 
○稼働能力を活用する意思の有無をどのように判断しているか
・ ケースワーカー・就労支援員との約束を遵守しているか、希望の職種について自身の能力とかけ離れていないか、形式的な応募でないか、により判断。
・ 客観的な指標はなく、個々のケースごとに様々な観点から総合的に判断している。
 
○稼働能力を活用する場の有無を、どのように判断しているか
・ 中山間地域のため、稼働能力活用の場の判断には苦慮している。
・ チェックリストの判定と本人の希望をもとに、地域資源を確認している。
・ 有効求人倍率は高いものの、全ての求人が受給者にマッチしたものではない。
・ 就労訓練の場や、居場所機能を持つ場などの社会資源が、量・質ともに地域によって大きな差があるのが課題である。
 
○事業対象者をどのように選定しているか
・ 会議等による総合的な判断。
・ ケースワーカーが主に見立て、就労支援員に相談の上、査察指導員や課長を交えた協議により決定。
・ チェックリストを用いて組織的に選定している。
 
【稼働能力の活用が不十分である者に対する有効な指導指示のあり方】
・ 基本的には口頭で指導しているものの、形式的な指導では好転しない。
・ 合理的理由がなく、再三の指導に従わなかった例で、指導指示を実施。
・ 求職活動をしないが、検診命令を行っても医療機関に行くことが出来ないケースは判断ができない。
・ 医師の所見で「就労可」と判断されても、日常生活能力が乏しく現実的な求職活動が行えない者が多く存在する。その場合、法第27条に基づく指導指示や保護の停廃止を行っても、根本的な日常生活能力が改善していないため再申請となる。
・ 指導指示よりも就労への阻害要因を探って、支援していくことが重要ではないか、指導指示によって一時的に改善してもその状態は長続きしない、という意見もある。
【その他】
・ 稼働能力判定会議やケース会議に、社会福祉士、精神保健福祉士、臨床心理士、保健師などの専門職を交える必要があると考える。
・ 特に日常生活自立、社会生活自立を目指す対象者には、福祉事務所職員も、ハローワーク職員もケアの視点が必要ではないか。
・ 「就労は経済的自立に資するのみならず、日常生活自立や社会生活自立につながる」という考え方をケースワーカーが持っているか。就労支援と就労指導の違いを意識しているか。
・ 保護要件の話と就労支援の話を整理して議論する必要がある。課題や苦慮する点、評価基準も、保護の要件と就労支援では異なるのではないか。
・ 現場では、就労支援の中で保護要件の意識が強いと感じる。
・ 保護要件を意識した就労に関する通知と、就労支援に関する通知があり、明確に体系付けて整理しきれていない。
・ 生活保護法第1条における「自立の助長」の自立に、議論のあった3つの自立の概念が含まれており必ずしも経済的自立を目的としないのであれば、就労支援事業の評価指標が、数値化に偏っているのではないか。

 

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