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2022年5月19日 第133回先進医療技術審査部会 議事録

 
 


(1)日時:令和4年5月19日(月)16:00~

(2)場所:TKP新橋カンファレンスセンター「ホール14D」(オンライン)

(3)出席者
山口座長、一色座長代理、天野構成員、伊藤(澄)構成員、伊藤(陽)構成員、上村(尚)構成員、上村(夕)構成員、掛江構成員、神村構成員、北川構成員、後藤構成員、坂井構成員、真田構成員、柴田構成員、戸高構成員、飛田構成員、藤原構成員、松山構成員、榎本技術専門委員

(事務局)
医政局研究開発振興課長
医政局研究開発振興課 治験推進室長
医政局研究開発振興課 課長補佐
医政局研究開発振興課 先進医療係長
医政局研究開発振興課 主査
保険局医療課 医療技術評価推進室長
医薬・生活衛生局医薬品審査管理課 審査調整官


【議題】

1.総括報告書の評価について
2.新規申請技術の評価結果について
3.試験実施計画の変更について
4.協力医療機関の追加について
5.先進医療Bの試験終了に伴う取下げについて
6.その他

【議事録】
○山口座長
 定刻となりましたので、第133回先進医療技術審査部会を始めさせていただきたいと思います。御多忙の折お集まりいただき、ありがとうございます。本日はオンラインでの開催となります。
 まず、先月から新たに先進医療技術審査部会構成員に着任された北川雄光構成員が本日は御出席ですので、北川構成員から一言御挨拶をお願いします。
 
○北川構成員
 慶應義塾大学外科学の北川でございます。専門領域は消化器外科です。これまで技術専門委員として加えていただいておりましたが、今回、この審査部会に参加させていただくことになりました。何とぞ、よろしくお願い申し上げます。
 
○山口座長
 ありがとうございました。北川先生、よろしくお願いします。
 
○北川構成員
 よろしくお願いします。
 
○山口座長
 本日の構成員の出欠状況ですが、本日は佐藤雄一郎構成員、田島優子構成員より御欠席の連絡を頂いております。また、本日は技術専門委員として、榎本隆之委員も御出席の予定であります。また、一色高明座長代理には、本日は会場で出席いただいております。どうもありがとうございます。本日は20名の構成員のうち、現在17名の構成員にお集まりいただいていることから、本会議が成立していることを申し添えます。それでは早速、配布資料と本日の審査案件の確認を事務局からお願いします。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 よろしくお願いいたします。傍聴者の方の撮影はここまでとさせていただきます。御協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
 配布資料につきまして確認をさせていただきます。議事次第から、座席表、開催要綱及び運営細則、構成員及び技術専門委員名簿と続きます。続きまして、総括報告書の評価について資料1-1~資料2-3、新規申請技術の評価結果について資料3-1~資料3-5、試験実施計画の変更について資料4~資料9、協力医療機関の追加について資料10-1及び資料10-2、先進医療Bの試験終了に伴う取下げについて資料11、会議資料の最終ページは89ページとなります。お手元の資料に乱丁、落丁等ございましたら、事務局までお知らせください。また、構成員の皆様には本日送付いたしましたが、資料3に関する追加の資料もございますので、併せて御確認ください。
 続きまして、利益相反の確認です。申請医療機関との関係、対象となる企業又は競合企業について、事務局から事前に確認させていただいております。今回、告示番号旧2の技術、福島県立医科大学病院からの総括報告に関して、北川構成員から御報告があり、500万円以上の該当がございました。つきましては、議事の取りまとめを含む検討及び事前評価に加わることができませんので、当該技術に係る審議の際は、一旦、御退席いただければと思います。また、当該技術について、一色座長代理、上村夕香理構成員、掛江構成員及び飛田構成員からも御報告がありましたが、いずれも50万円以上500万円未満でしたので、議事の取りまとめのみ加わることができません。また、当該技術について、天野構成員からも御報告がありましたが、50万円以下でしたので、当該技術の議事取りまとめ及び事前評価に加わることができます。事前の届出以外に、もし何らかの利益相反がございましたら、この場で御報告をお願いいたします。
 それでは、該当なしということで承知いたしました。
 また、今回は資料を事前にメールでお送りしております。会議資料と区別して、構成員・事務局限りの届出書類等を「タブレット資料」と御案内します。なお、会議資料とタブレット資料の内容は異なっておりますので、発言者は、会議資料の何ページ、又はタブレット資料の何ページと、あらかじめ御発言を頂けますと議事の進行上助かります。
 本日はオンラインでの開催となり、構成員の先生方には大変御不便をお掛けいたします。御発言いただく際には、初めにお名前をおっしゃっていただくようお願いいたします。その他、途中で接続トラブル等ございましたらお知らせいただけますようお願いいたします。また、web会議ソフトには手挙げ機能が付いておりますので、こちらも適宜御活用いただければと存じます。以上でございます。
 
(榎本技術専門委員入室)
 
○山口座長
 ありがとうございました。では、議事に入りたいと思います。総括報告書の評価結果について、事務局から説明をお願いします。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 御説明いたします。資料1-1の15ページを御覧ください。先進医療Bの総括報告書に関する御評価を頂きますのは、告示番号旧24、「内視鏡下手術用ロボットを用いた腹腔鏡下広汎子宮全摘術」です。申請医療機関は東京医科大学病院です。審査担当構成員は、主担当が山口座長、副担当が飛田構成員、技術専門委員が榎本委員となっております。
 それでは、資料に沿って御説明させていただきます。試験の概要につきましては、資料1-1のほか、資料1-3、31ページの概要図も併せて御覧ください。da Vinci surgical system(DVSS)は、近年、米国を中心に急速に普及してきた腹腔鏡手術支援ロボットであり、従来の腹腔鏡手術の多くの欠点を補うことに加え、短期間での習熟が可能であると報告されている。広汎子宮全摘術は、子宮頸がんの標準術式であるが、その難易度は高く、合併症率が高いとされる。本研究では、根治手術可能な子宮頸がん患者を対象として、DVSSを用いたロボット支援広汎子宮全摘術と従来の腹式広汎子宮全摘術を比較検討し、その有効性・安全性を評価することにより、ロボット支援広汎子宮全摘術の低侵襲性手術としての有用性について検討する。本試験は単群試験であり、ヒストリカルコントロールとして当先進医療参加4施設における2012あるいは2013年の腹式広汎子宮全摘術の短期成績を用いるとあります。
 主要評価項目は出血少量手術成功、副次評価項目は、1)手術時間など、お示しするとおりでございます。目標症例数は100例で、登録症例数は100例となっております。試験の概要につきましては以上でございます。
 なお、本技術の審議につきましては、山口座長に総括報告書の御評価を頂いておりますので、一色座長代理に進行をお願いいたします。以上でございます。
 
○一色座長代理
 ありがとうございます。それでは、私が代わりまして進行させていただきます。では、本技術の評価につきまして、主担当の山口座長から御説明をお願いいたします。
 
○山口座長
 よろしくお願いします。17ページを御覧ください。概要につきましては今の御説明のとおりですが、主要評価項目が300mL以下の出血かつ断端陰性である割合であります。100例中87例でそれが達成できたという点では、ヒストリカルコントロールではありますが開腹手術よりは良好な成績が得られたということで、有効性に関しましてはBにいたしました。Aとしなかったのは、まだ観察期間が短いので断定はできませんが、T1b2とか、それ以上の比較的進行したがんについては再発が30%とかなり多いので、根治性に関しては不安が残るということです。確かに出血に関しては有効でありますけれども、技術全体に対する有効性にはまだ不安が残るということでBといたしました。それから、安全性に関してはB、あまり問題なしと判定いたしました。
 技術成熟度はCとしました。かなり経験を積んだ医師を中心とした体制が必要ということにいたしました。これは、本日の資料の28ページを御覧いただけますでしょうか。そこに、A、B、C、Dという4つの施設があり、これは多くの症例を出した所ですけれども、ここの再発率とか平均手術時間、出血量とかいろいろ見てみますと、例えば平均手術時間がBの施設では311分ですから大体5時間です。一方で、Aのほうは618分と、その倍なのです。5時間と10時間の差があることになります。それから、少し気になりますのは、再発率がAでは8.3%でCでは37.5%とか、かなり差があります。これはひょっとしたら、この技術が十分に標準化されていなくて、均てん化されていない可能性があると思います。そういう意味では、どの施設でもできるという技術ではなくて、かなりしっかり経験を積んで、実績のある所でないとできないのではないかということで、そういう評価にいたしました。
 以上の結果を大体まとめて、18ページの総合コメントにお書きしました。今、述べたとおりなのですが、今回の評価というのは1年のところでフォローアップが行われていますけれども、実際には5年経過したものもたくさんあります。それを、今まで分かっている範囲でどうかということを問い合わせしましたら、24~27ページに、それぞれの症例のフォローアップ期間とか再発の有無、それから死亡が書いてあります。それによると、ある程度時間がたつと再発、死亡がかなり増えてきております。従来から開腹手術に比べて腹腔鏡手術の出血量は少ないということは大体分かっていて、胃がん、大腸がんをはじめ、多くの術式で明らかになっています。その意味では、この研究における主要評価項目の出血量に関しては、こういう結果は十分予想できたと考えます。一方で、根治性に関しては、幾つかの腹腔鏡下手術では、低侵襲手術は開腹手術に比較して良いというデータもありますけれども、劣っているという報告も認められます。特に子宮頸がんには、2018年に米国で報告されましたRCTがあって、LACCという試験ですけれども、比較的早期の子宮頸がんに普通の開腹手術、低侵襲手術を各群300例ほどで比較しています。これで低侵襲手術のほうが10%ほど生存率が低かったという結果が出ているのです。このように、根治性に関しては必ずしも安全ではないという外国のデータがありますので、今回、出血量は少ないということは大変いいことではありますけれども、根治性などそれ以外の点については、今後、十分に注意して見ていかなければいけないということだと思います。
 したがいまして、この技術が有効であるということが今回示されたわけではなくて、今後まだ十分にフォローしなければいけないという結論にいたしました。また最終的に、やはり腹腔鏡手術との比較も必要かと思います。以上です。
 
(真田構成員入室)
 
○一色座長代理
 ありがとうございました。続きまして、副担当の飛田構成員より御評価をお願いいたします。
 
○飛田構成員
 よろしくお願いします。私のコメントは18、19ページに記載させていただいております。まず有効性に関しては、Bという評価をさせていただきました。今回、初版で提出された総括報告書には、対象となった患者さんの人口統計学的及び他の基準値の特性値に関する要約が明記されておりませんでした。その辺りについて、総括報告書中には統計解析計画書ではなく統計解析手順書が作成されていたと記載されていたので、手順書の提出を含めて事務局を通じて確認させていただきました。実際に提出されたものは統計解析計画書でしたが、プロトコールに記載されている以上の詳細な内容はなく、人口統計学的データを含めて、追記された解析のどこまでが事前に計画されていたのかという点は定かではないような状況になっております。ですが、一応、データとしては、収集されている患者背景の情報等が現在の総括報告書にはアップデートされております。
 今回の試験の対象は、平均が47歳程度の患者さんで、術前の臨床進行期分類が1b1期から2b期の子宮頸がん患者100例を対象に、本技術による広汎子宮全摘術における出血量が300mL以下かつ切除断端陰性である出血少量手術成功割合を主要評価項目として、従来の開腹術のヒストリカルデータから設定した閾値75%と比較する単群試験です。主要評価項目である出血少量手術成功割合は100人中87人、87%と、計画時に期待した90%に近い結果であり、信頼区間の下限値が78.8%と、閾値75%を上回ったことから、計画時に設定した基準は満たしているという成績になっています。その他の副次評価項目にあるような手術完遂とか開腹移行についても、全例で開腹手術に移行することなく完遂されていますが、全生存期間や無再発生存期間については、先ほど山口先生の説明があったとおり、術後1年までの評価は報告されましたが、今後、新たな観察研究で引き続き評価するような計画になっている状況になります。
 以上より、従来の開腹術によるヒストリカルデータとの短期的な成績の比較では、本技術の有用性、有効性が示されたと考えますが、長期的な治療効果及び腹腔鏡アプローチとの比較まではいまだ不明であることから、Bという評価をさせていただいております。
 続いて、安全性についてです。平均手術時間は開腹手術のヒストリカルデータと比べて延長しているのですけれども、有害事象については、参考文献として提示された他の規模の大きい臨床試験で報告されている有害事象の発現頻度と同程度であることから、Bという評価をさせていただきました。
 技術的成熟度につきましては、術中有害事象8件のうち、手術操作に伴う偶発症と考えられるような重篤な有害事象が4件に認められていることから、Bという判断をさせていただいております。以上となります。
 
○一色座長代理
 ありがとうございました。続きまして、榎本技術専門委員より御評価をお願いいたします。
 
○榎本技術専門委員
 まず、この評価をする前に、皆様に御理解いただきたいこととして、子宮頸がんに対する広汎子宮全摘術の適応が、この先進医療が始まってから学会で大きく変化しております。特に進行期との関連で言うと、当初は、子宮頸がんの2B期といいまして、子宮頸部から外側にはみだして浸潤しているものに関しまして、開腹で広汎子宮全摘をやっていたのですけれども、2B期に関しましては開腹広汎子宮全摘術を行っても予後が悪いということが分かってきまして、放射線や、CCRTで治療されるようになってきております。それで、1つややこしいのは、進行期も最近新分類に改訂されたところがあるのですけれども、新しい進行期で言いますとpT1b2期、せいぜいそこぐらいの進行期までの癌は広汎子宮全摘術をしますけれども、それより進行した癌は、最近はほとんどの施設がCCRTで治療しております。
 そのような背景がある中でこの評価をしますと、有効性につきましては、先ほども御発言がありましたように、主要評価項目である出血量は大幅に減少してきていると。副次評価項目である手術完遂率も100%で、開腹移行でもなかったということです。手術時間は確かに開腹手術に比べて少し長い印象がありますけれども、その他の副作用・合併症はそれぞれ問題にならないということで、有効性と安全性ともに一応Bとさせていただきました。
 それで、一番問題となる技術的成熟度につきましては、先ほど言いましたように、私は進行期別でこの予後というのは考える必要があると思いますけれども、こういったがんに対する手術で一番大事になってくるのは、やはり患者さんの予後ですよね。一応、副次項目としましては1年後の予後を評価することになっておりますけれども、多くの症例が5年近くまで評価されていることで、その腫瘍のサイズあるいはステージごとに、もう一度データを取り寄せて検討してきました。そのことにつきまして、次のページ(22ページ)をお願いします。
 それで見ますと、赤で書いたのが新しい進行期で書いた場合ですけれども、それを低侵襲手術のもう1つの腹腔鏡による手術と比較してみました。腹腔鏡下の手術で言いますと、腹腔鏡下手術の1年全生存率はT1b1で100%であったと、2年全生存率は100%であったのですが、こういった腹腔鏡の手術のデータを、今回のロボット手術の同じ進行期、がんの大きさで比べたところ、全く遜色がないと。1年、2年の無再発生存率に関しましても全く差がないと。それより進んだT1b3とかT2a、T2bの転帰は症例が少ないけれども、あまり芳しくないと。実際のところは、日本産婦人科学会も、T1b3とか2aあるいは2bに対する広汎子宮全摘術というのは、腹腔鏡下では推奨しないというような形で一応提案しています。実際に保険診療として行う腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術に対する指針というのを学会が出して、その中で施設要件あるいは対象症例、術者要件を厳しく規定しております。
 こういったことから、このがんの治療で一番大事な予後につきましては、腹腔鏡下手術とほとんど遜色ないことから、一応、術者、施設、それから、施行する進行期を細かく規定すれば、保険診療として実施できるというように考えます。したがいまして、私はこれをAと評価いたしました。
 
○一色座長代理
 詳細な御説明ありがとうございました。それでは、山口座長から何か追加のコメントがございましたらお願いいたします。
 
○山口座長
 特にございません。
 
○一色座長代理
 それでは、この報告に対しまして何か御意見等がございましたらお願いいたします。天野構成員、どうぞ。
 
○天野構成員
 御報告ありがとうございました。今の報告書並びに委員からも御指摘があったところですが、1b期という早期の患者さんの再発が何例か見られて、申し上げるまでもなく、根治を目指すべき病気の患者さんで再発が見られるということについては、やはり慎重な対応が必要だということだと思います。
 1点確認でございますが、こういった早期の患者さんでも再発が見られるというのは、これは技術の特性に基づくところが大きいのか、若しくは施設間格差が大きいところに基づくのか、その辺りの御見解があれば教えていただければと思います。
 
○一色座長代理
 これは榎本技術専門委員、いかがでしょうか。
 
○榎本技術専門委員
 このときの進行期は古い進行期で記載されているので、いわゆる局所の部分の進行期なのですね。ということは、局所が小さくてもリンパ節転移があるような症例は、当然ながら再発します。だから1b1とかのがんでも、やはり再発する症例は必ずあるのです。だから、そういった意味では、新分類ではリンパ節転移があれば3期になりますので、ちゃんと新分類で進行期を規定すれば問題ないと考えます。
 
○一色座長代理
 天野構成員、よろしいでしょうか。
 
○天野構成員
 そうすると、施設間格差というのはあまり考慮しなくても、この研究の結果については大丈夫という理解でしょうか。
 
○一色座長代理
 これにつきましても、榎本技術専門委員いかがでしょうか。
 
○榎本技術専門委員
 施設あるいは術者につきましては、やはり細かく規定する必要があると思うのですね。腹腔鏡下手術が保険収載されたときも、日本産婦人科学会がやはりそういった術者基準を細かく決めて、例えば何例経験した人がやるとか、資格としまして腫瘍専門医プラス腹腔鏡の技術認定医がどちらもいる施設に限るとか、細かく決めております。そういう形で、施行できる術者および施設をきちんと決めることによって、十分質を担保できるというように考えます。
 
○天野構成員
 分かりました。ありがとうございました。
 
○一色座長代理
 ほかにいかがでしょうか。
 
○山口座長
 山口です。私から1つ、榎本先生に教えていただきたいのですが、10時間掛かる手術が、片方では5時間で終わっているというのは、これは、1、2時間の違いであれば分かるのですけれども、何かやっている手術が本当に同じかどうかという疑問さえ出るのですが、その辺りはいかがですか。
 
○榎本技術専門委員
 手術時間に関しては、1つは、進行期がやはりすごく重要で、2b期のがんというのは非常に手術が難しいと思うのですね。開腹術でも、場合によっては7、8時間掛かることはあると思うのですよね。だから、この先進医療が始まった頃には、2b期の子宮頸癌に対して開腹でやっていたのですけれども、今、2b期に対して手術しない施設が増えています。だから、せいぜい1B2までのいわゆる小さながん、余り進んでいないがんに対してロボット手術を適応することによって、そういった長時間の手術というようなことは避けられると考えます。実際に腹腔鏡下手術の場合でも、2b期に対して手術をやりますと、とんでもない時間が掛かると思うのですけれども、最近は保険で行う腹腔鏡下広汎子宮全摘術は症例を限ってやっていますので、施設間の手術時間の差もなくなってきております。
 
○山口座長
 アメリカの試験でも、実は低侵襲の中に15%ぐらいロボットが入っているのです。それを含めて悪いので、やはりその辺りは重視していただいたほうがいいのではないかと思います。
 
○榎本技術専門委員
 それと、アメリカのあのデータでやはり批判がありまして、何が批判されているかと言いますと、アメリカは、子宮頸部にがんがあるのに、そこにマニピュレーターといいまして、子宮の頸部の所に道具を突っ込んで子宮を拳上しているのです。そういう手術をやることによって、腫瘍が拡散する可能性があると言われています。今、日本でされているロボット手術、それから、内視鏡の手術に限って言いますと、マニピュレーターを使っている施設はほとんどありません。それから、リンパ節も集めるときに必ず袋に入れて回収する形に日本はしているのですけれども、外国ではそういうことをせずに、臍部の切開創から引っ張り出すようなこともやっていて、その辺の細かい配慮というのは、やはり日本のほうがちゃんとやっていると思います。
 
○一色座長代理
 山口座長、よろしいでしょうか。
 
○山口座長
 はい、分かりました。
 
○一色座長代理
 ほかにはいかがでしょうか。どなたかございますか。今のやり取りを拝聴しておりまして、私の印象ですけれども、手術時間に差があるということが、そのような施設間差等を含めて、この報告書の中ではあまり考察がされていないように思うのですけれども、この辺については、少し追及していただいたほうがいいのかという気がしております。山口座長、いかがでございましょうか。
 
○山口座長
 そのとおりだと思います。その辺りも是非調べていただいて、御報告いただいたほうが誤解がないと思いますけれども。
 
○一色座長代理
 その点は事務局から何かコメントはございますか。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 御指摘ありがとうございます。申請医療機関のほうに申し伝えさせていただきます。よろしくお願いします。
 
○一色座長代理
 ほかに何かコメントはございますでしょうか。
 
○榎本技術専門委員
 再度申し上げますが、いいですか。やはり大事なことは術者基準、施設基準、対象症例をしっかりと決めてやること、これが大事だと思います。だから、そこのところは、やはり最低限担保しないといけないところだと思いますけれども。そこのところをちゃんとやっていただくと、この技術は十分患者さんに還元できる技術だと思います。
 
○一色座長代理
 伊藤澄信構成員、どうぞ。
 
○伊藤(澄)構成員
 この報告書を拝見すると、昔に比べて内視鏡手術は随分変わってきたのだなと思いました。この技術の評価として、開腹術と比較するところに多少違和感があって、本来、内視鏡手術と比較しなければいけなかったのではないかという気がします。それについては、榎本先生の御説明を聞いて得心がいったところもあるのですけれども、この評価表がこの部会の評価として出る以上、そこについてもう一言併せてコメントされたほうがいいのではないかと思います。この試験を認定する段階で、開腹術のヒストリカルコントロールと比較するのがよかったのか、内視鏡手術のヒストリカルコントロールと比較するのがよかったのかは、報告書をお読みになる方は疑問を持たれるのではないかと懸念しますので、評価表に一言コメントを入れていただいたらと思いました。以上、意見です。
 
○一色座長代理
 貴重な御意見だと思いますので、事務局もそれを含めてお願いできますでしょうか。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 御指摘ありがとうございます。事務局のほうで調整させていただきます。ありがとうございます。
 
○一色座長代理
 ほかによろしいでしょうか。
 
○榎本技術専門委員
 もう一点だけ、すみません。引用しました最後のコメント、下のほうをめくっていただけますか、今、出ている所(21ページ)の下のほうです。ここのインターナショナル・ジャーナル・オブ・クリニカルオンコロジーのほうに出ている論文は、一応、開腹のヒストリカルコントロールとも比べたようなデータも、確か出していたと思うのですね。それで見ますと、内視鏡の手術とヒストリカルコントロールとは差がないというような発表になっていたと思います。だから、内視鏡の手術と開腹の手術はほぼ差がないと。特に腫瘍径の小さな癌について比較した場合には。それで、内視鏡の手術とロボット手術もほぼ差がないという、レトロ同士の比較になりますけれども、そういうことは最低限言えるのではないかというように思います。以上です。
 
○一色座長代理
 ありがとうございました。そういうことも含めまして総括報告書の中に含めていただきたいという判断というように理解しております。それでは、よろしいでしょうか。よろしければ、以下の審議につきましては、山口座長に進行をお戻しいたします。また、榎本技術専門委員におかれましては、以降は御退席いただいて結構でございます。今日はありがとうございました。
 
  (榎本技術専門委員退室)
 
○山口座長
 一色先生、どうもありがとうございました。続いて、次の総括報告書の評価結果について、事務局から説明をお願いします。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 資料2-1の33ページを御覧ください。先進医療Bの総括報告書に関する御評価を頂くのは、告示番号旧2「重症低血糖発作を伴うインスリン依存性糖尿病に対する脳死ドナー又は心停止ドナーからの膵島移植」です。申請医療機関は福島県立医科大学附属病院です。審査担当構成員は、主担当が松山構成員、副担当が柴田構成員となっております。なお、冒頭に申し上げたとおり、北川構成員においては利益相反の関係で、本議題の審議に際し御退席いただきたく存じます。御協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
 
(北川構成員退室)
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 試験の概要については、資料2-1のほか、資料2-3、41ページの概要図も併せて御覧ください。インスリン依存状態糖尿病患者の日常生活に著しい障害を来す血糖不安定性からの解放を目指し、血糖感受性にインスリン分泌を可能にする治療として、膵臓移植と膵島移植という移植医療が位置付けられている。臓器移植である膵臓移植は、Ⅰ型糖尿病の治療の一選択肢として既に確立しているが、血管吻合を伴う難易度の高い開腹手術を必要とし、移植手術そのものに起因する合併症も少なくない。一方、組織移植に分類される膵島移植は、提供された膵臓から分離された膵島組織を、点滴の要領で門脈内に輸注する先進的な低侵襲治療である。しかし、これまでのプロトコールでは長期成績の改善が必要とされ、欧米を中心に新たな免疫抑制プロトコールが探索されている。本研究では、欧米で第Ⅲ相試験が行われているプロトコールを参考に、導入時に抗胸腺細胞グロブリンと抗TNFα抗体、維持はカルシニューリン阻害剤とミコフェノール酸モフェチルを用いる新規のプロトコールの下での多施設共同臨床研究を行い、本プロトコールに含まれる免疫抑制剤を膵島移植に対する薬事承認申請につなげるための科学的に評価可能なデータを収集するとあります。
 主要評価項目は、初回移植から1年後にHbA1c値7.4%未満であり、かつ初回移植後90日から移植後365日にかけて重症低血糖発作が消失した患者の割合です。副次評価項目は、(1)初回移植から2年後にHbA1c値7.4%未満であり、かつ重症低血糖発作が消失する患者の割合等、お示しするとおりです。目標症例数は20例で、登録症例数は9例となっております。なお、本医療技術は、海外での膵島移植の普及や成績の改善と本臨床研究の結果を資料とし、日本移植学会より膵島移植を保険収載とするための医療技術評価提案が行われた結果、本技術の有用性を示せるデータと判断され、2020年4月に「同種死体膵島移植術」として保険収載されております。試験の概要については以上です。
 
○山口座長
 では、本技術の評価について、主担当の松山構成員から御説明をお願いします。
 
○松山構成員
 ようやく我が国で膵島移植が保険適用され、重症低血糖発作を起こされるようなシビアな患者に、素晴らしい治療が届けられるようになったこと、本当にありがとうございます。
 今回、先進医療のプロトコールで8例させていただいて、8例中6例の患者、75%でHbA1cが7.4以下であることに加え、重症低血糖発作が消失しているということです。最も患者自身が不安に思っておられる、あるいは例えば車の運転などで、低血糖発作による意識消失で事故というのが昔ありましたが、そういう不安の中で患者は非常に苦しんでおられたそれらの患者が、この膵島移植と新規の免疫抑制プロトコールによって、移植した膵島が長持ちする、非常に長期生着するというデータが得られて、今回、75%の患者がリカバリーされたということです。非常に素晴らしいデータで、Aの従来の医療技術を用いるよりも大幅に有効であるという形で評価させていただきました。
 安全性に関しては、膵島移植は、膵・膵島移植学会のほうから、例えば再生医療法下で行う場合のいわゆる3管理基準書をはじめとする資料の一式の御提供を受けるということで、膵島を取ってくるときの手技が非常に安定化していて、クオリティーの高いものが得られています。しかも、点滴で門脈に入れるので、さほど手技が複雑ではない、非常に低侵襲であるということもあって、安全性上懸念があることもなく、Aの問題なしとさせていただきました。
 技術的成熟度に関しては、やはり一定程度は膵島移植をするときも膵島のコレクション、単離が必要で、それはやはり教えてもらわないとできないところがありますので、当該分野を専門として数多くの経験を積んだ医師又は医師の指導の下であれば実施できるという形で、Bとさせていただいております。
 総合的なコメントですが、重症低血糖発作を生じ得るⅠ型糖尿病の患者にとって、膵島移植はその不安から逃れることができる希望、福音です。一方で、脳死ドナー又は心停止ドナーの方々から膵島を御提供いただくという治療であることから、臓器移植を承諾してくださった御本人あるいは御家族の想いも胸に、当たり前の医療ではないことを理解した上で、医師も治療し、患者にも治療を受けていただきたいと思います。
 今回、我が国で膵・膵島移植学会が中心となって、新規に免疫抑制剤プロトコールを立案されて、非常にいいデータが得られていますが、やはり3年目以降5年目ぐらいまで、どの程度この有効性が持続したのかというのは、これからデータを収集していただいて、是非とも公知情報として論文化していただければ有り難いと思っております。私からは以上です。
 
○山口座長
 続いて、副担当の柴田構成員より御評価をお願いします。
 
○柴田構成員
 今映っている所(37ページ)です。有効性についてはB、従来の医療技術を用いるよりもやや有効であると付けさせていただきました。登録された患者数が少ないので、エビデンスの確実さの面では弱い部分があるとはいえ、本試験において、こちらの条件を満たす患者が8名中6名いらっしゃって75%であったことは、高く評価されるべき結果だと考えております。得られた成績の点推定値、この75%という数字だけを見ますと、Aとし得る結果でありますが、患者が少ないことに起因する不確実性は残ると思いますので、本評価表ではBとしました。
 補足ですけれども、資料の39ページをお願いいたします。ストッピング・ルールで判断するときに、ベイズ流の推論をしています。ベイズ流の推論は、事前に得られている知識をあらかじめ設定し、それに対して今回の臨床試験で得られたデータを加え、最終的な結果を得るという推論の方式です。テクニカルなことは省略しますが、この試験では、もともとこちらに書いてあるBeta(12,5)という事前分布を設定して、その結果、今回の8例の情報を追加し、達成割合40%という閾値を超える確率が99.9%を超えたということを御説明いただいておりました。ただ、これにはちょっとミスリーディングなところがあります。もともとBeta(12,5)という事前分布を置いた時点で、この確率は結構高かったのです。それを確認して、もともと99.5%だったものが99.9%になったものであるということは、改めて明確にしていただきました。この事前分布は、先行研究のデータに基づく17例中12例がエンドポイント成功例であるということを踏まえて設定されているので、あまり変な設定ではありませんし、一連の議論のプロセス自体は妥当だと思いますが、一般の方に99.9%という数字が一人歩きしないように、あえて追記していただくようにしました。本文書の評価表の34ページにも、結果の取りまとめ、結果の概要の欄にも、この旨追記していただいておりますし、総括報告書本体にも追記していただくことを御了解いただいて、記載整備をしていただいております。
 評価表に戻って安全性です。こちらは、問題なしといたしました。技術的成熟度は、技術的には一定の要件が必要なものと考えましたので、Bとしております。私からは以上です。
 
○山口座長
 それでは松山構成員から、もし何か追加のコメントがありましたら、どうぞお願いします。
 
○松山構成員
 統計の部分は柴田先生に御説明していただいて、私も非常によく理解できました。ありがとうございます。総合的なコメントのところで先ほどお伝えさせていただきましたが、ドナーの方がいらっしゃるということで、その想いを胸に医療を進めていただければ有り難いと思います。
 
○山口座長
 ただいまの御説明について何か御質問はありませんか。素晴らしい成果だと思いますが、よろしいでしょうか。それでは、告示番号旧2については、ただいま御審議いただいた結果を取りまとめて、先進医療会議に御報告いたします。では、北川構成員にはお戻りいただくことといたします。
 
  (北川構成員入室)
 
○山口座長
 続いて新規申請技術の評価結果について、事務局から説明をお願いいたします。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 資料3-1、43ページを御覧ください。先進医療Bとして新規に御評価いただく技術は、整理番号127、「精神症状を伴う更年期障害患者を対象としたピリドキサミン療法」です。申請医療機関は東京医科歯科大学病院です。審査担当構成員は、主担当が上村尚人構成員、副担当が後藤構成員、伊藤陽一構成員となっております。なお、冒頭にもお知らせいたしましたが、資料3-3の指摘事項に対する回答の差し替えに当たる資料を、当日配付資料として追加しております。こちらは、申請医療機関の御希望により、担当構成員からの評価表を頂いた後に、差し替えとして御提出があったものであることを補足させていただきます。
 では資料3-5、65ページを御覧ください。審議に先立ち、先進医療を実施可能とする保険医療機関の要件について、事務局より御説明いたします。まずⅠ.実施責任医師の要件です。診療科は婦人科。資格は、日本産科婦人科学会専門医又は日本女性医学学会認定女性ヘルスケア専門医が必要となっております。当該診療科の経験年数は5年以上が必要。当該技術の経験年数は5年以上が必要。当該技術の経験症例数は不要となっております。
 Ⅱ.医療機関の要件です。診療科は婦人科が必要。実施診療科の医師数は常勤医師2名以上が必要。他診療科の医師数は不要。その他医療従事者の配置は薬剤師が必要。病床数は不要。看護配置は不要。当直体制は、救急・急変対応できる医師配置(内科系、外科系が、それぞれ1名以上が含まれる)が必要。緊急手術の実施体制は不要。院内検査の24時間実施体制は必要。他の医療機関との連携体制は不要。医療機器の保守管理体制は不要となっております。医療安全管理委員会の設置は必要。医療機関としての当該技術の実施症例数は不要となっております。
 Ⅲ.その他の要件として、頻回の実績報告は不要となっております。事務局からは以上です。
 
○山口座長
 この65ページの要件について、何か御意見はありませんか。よろしいですか。特にないようなので、この様式第9号についてはお認めすることといたします。
 次に、技術の概要と実施体制の評価について、主担当の上村尚人構成員より御説明をお願いいたします。
 
○上村(尚)構成員
 よろしくお願いします。更年期障害に対しての標準治療というのがありますけれども、それについては現在、女性ホルモンの少量補充というのが行われております。しかし、申請者が御指摘になっておりますが、いろいろな有害事象等もあって、国内においてはその使用率が非常に低い状態で、2%前後にとどまっているというのが現状であるようです。医学的なニーズとしては、より安全に更年期障害の様々な症状を緩和できる治療法が望まれていますので、そこに対して、申請者の先生方は、更年期障害と診断された患者に、ビタミンB6の一種であるピリドキサミンを6週間投与します。それによる関連したうつ症状の改善というのが主要評価項目、それから、ホットフラッシュの改善、不安症状の改善が副次評価項目ということで、こういった臨床上の症状の改善が期待できるとお考えになっておられて、プラセボを対照としたランダム化比較試験を提案されております。
 試験のデザインとしては、プラセボのrun-inがあり、その後に1対1のランダム化を行って、実薬とプラセボに割り付けるという、比較的オーソドックスな試験デザインになっているかと思います。この提案は、今申し上げたとおり、プラセボとの比較試験になっており、先進医療の評価の中では、比較的オープンラベルの試験を提案してこられる先生方が多いのですが、これはその中にあってプラセボコントロールド、プラセボ対照の試験ということで、新しいエビデンスを構築していくという意味においては、非常に強みと言えるのではないかと思っております。したがって、この試験についても適切に実施されることを期待しております。
 一方で、この御提案にはかなり多くのリミテーションが存在しております。今回の1つの議論のポイントとしては、この案件が先進医療として実施可能かどうかという議論です。そこについては慎重な議論が必要であろうと考えております。その背景として、これから少し御説明いたします。
 問題点としては、この治療法を開始するに当たって必要となる科学的な根拠、scientific rationaleの薄さというのが、正直あろうかと思います。申請者の先生方は、更年期のうつ症状に関しては、酸化ストレスが関与しているということを挙げられております。ところが、そもそも御提案されているピリドキサミンの用法・用量を人に投与したときに、実際に酸化ストレスが軽減するといったハードデータは存在していないと理解しております。すなわち、臨床レベルでのターゲットの捕捉と言いますか、target engagement、具体的には、創薬ターゲットとなっているメカニズムを人で確実に捉えているという確固たる証拠が確認されていないので、いわゆる臨床開発のテーマとしては非常にprematureな、非常にアーリーな段階にあると考えてよろしいかと思います。同様に、糖化最終産物(AGEs)の生成を抑制し、カルボニル化合物を消去し、カルボニルストレスを抑制するというのが、作用メカニズムとして提案されておりますが、これも、今回提案されているこの薬の用法用量で人にピリドキサミンを投与したときに、そのような薬力学的な反応が確実に得られるという確固たるtarget engagementを示すデータが示されていないということです。さらに、仮にそういったことが人で認められたとしても、そういうメカニズムが実際に更年期障害が起こっている患者の、今回は例えばうつ症状やホットフラッシュの改善を目指していらっしゃるわけですけれども、そういった症状の発現とどのように関連しているのかが、薬理学的あるいは薬力学的な反応として説明がなされていないと。ここが非常にクリティカルな弱さかと思いました。
 今回は臨床試験を御提案されているわけですけれども、動物を使った薬効薬理試験と言われるような試験は、必ずしも必須とは言えないと思います。しかし、少なくともうつ症状や更年期といったものについては、複数のモデル動物が存在しております。そういった中で、いわゆる非臨床レベルでの薬効薬理試験が全く実施されていないということになっています。したがって、ピリドキサミンの薬物動態と薬効の関係性が明らかになっておりません。専門的にはこれを「PK/PDの関係性」、「PK/PD relationship」という言い方をしますが、そういった関連性が全く分からない状態なので、結果的には臨床、つまり患者に使ったときに患者の体の中にお薬が入っていくわけですが、そのときの暴露量と実際の薬効の関係も分かっていないのです。ですので、一体どのぐらいの薬の量を使ったらいいのか、そういったターゲットになる暴露量が決まっておりませんから、それを達成するための臨床用量の推定もできないという状態ではないかと推測しております。
 とは言うものの、いろいろなお薬の中には非常にリッチな臨床データがあります。そういった中で臨床試験が新たに組まれるということは、これまでも幾つも事案はあるわけですけれども、臨床データがどういうようになっているかというところを、少し御説明いたします。
 過去の観察研究の結果というのがあります。その中で、精神症状を伴う更年期障害に対しては有効であるということが解明されたというように、申請書には書かれております。ところが、引用されている論文の観察研究は、文字どおり観察研究でありまして、これはcross sectionalな研究ということで、ホットフラッシュやうつ症状に対して、ビタミンB6の摂取量との間に逆相関が存在しているということを言われていますが、これは必ずしもその間に因果関係があることを証明したことにはなっていないというように理解しております。また、どのぐらいの影響が及んでいるかということに関してオッズ比が算出されておりますが、いずれの症状においても、そのオッズ比は点推定で0.9前後です。信頼区間に関しては有意差が付いておりますので、信頼区間の上限がちょうど1.0をぎりぎりかわすぐらいの状態ということで、臨床的なエビデンスとしてそのエビデンスレベルを冷静に判断すると、決して高いものではないと考えます。
 実は、前向きの臨床試験も組まれておりますけれども、精神症状ということに関して言うと、関連する試験としては、カルボニルストレスを有する統合失調症患者を対象とした第Ⅱ相臨床試験が実施されております。この試験は、試験デザインにかなり弱さがあります。すなわち、統合失調症の患者を対象としたこの第Ⅱ相試験のデザインは、オープンラベルでのdose escalation studyになっております。
 そういったこともあって、ピリドキサミンの臨床的な有効性は十分に示されていないというように、私は考えました。私のこの意見は、論文の論調とは若干異なることを少し付け加えておきます。論文の中では、一定の有効性が示されたという論調のように感じましたが、オープンラベルの試験の中で、確かに何名かの患者は良くなったということかと思いますが、ここで有効性が示されたというように考えるには時期尚早ではないかと考えております。
 これは、まだアーリーな段階での臨床開発の案件だと考えるわけですが、人に投与するということに関しては、非臨床試験での特に安全性に関するデータの充足性というのが、非常に問題になってくると思います。この中で、実は治験薬概要書が構成員の先生方の所には共有されていたかと思いますが、比較的リッチな毒性データパッケージが存在しております。臨床試験をこれから始めていくということに関して言うと、非常にリッチなデータを持っておられますので、十分な検討が可能になる状態ではあるかと思います。ところが、一方で毒性試験のデータの読み方として私は重要だと思うのが、「トキシコキネティックス(TK)」という言い方をしますが、各毒性試験で得られている動物での全身暴露量です。このTKの具体的なデータが開示されておりません。一応、文章では幾つかのコメントが付いてはおりますけれども、実際にどのぐらいの暴露量だったのかということが一切出ていない状態です。これについては、申請者との間でやり取りがありまして、提供されている概要書の中に、それ以上の情報はないということが確認されております。
 ということは、今回、臨床試験を実施しようとされているわけですけれども、臨床試験の中で得られるであろう人での暴露量とトキシコキネティックス上の例えば無毒性量との間の乖離がどのぐらいあるのかといったことが、検討できていないという状態です。ですので、このことは、早期開発の案件としては非常に大きな懸念になるということではないかと思います。
 その問題の毒性試験はかなり高い用量でされており、その点については評価できるのですが、様々な臓器、例えば下垂体や甲状腺、さらに肝臓等での所見が認められております。また、先ほど申し上げた統合失調症の臨床試験では、10名の患者にピリドキサミンが投与されておりますが、その中で4名の患者に9件の重篤な有害事象が発生しております。その中には、てんかん及び昏迷1例各1件、てんかん及びウェルニッケ脳症が1例、てんかん、ウェルニッケ脳症、亞イレウス及び意識消失が1例各1件、及び肺炎が1例ということです。
 また、これは海外で実施された臨床試験ですけれども、I型又はⅡ型糖尿病患者での臨床試験、糖尿病性腎症患者を対象とした第Ⅱ相試験においても、実薬投与群で、この海外試験では全体で57例に投与されていますが、7例の患者が死亡されております。特に糖尿病性のケトアシドーシスが1例の患者に出現しており、それに引き続いて、セカンダリーなものかもしれませんけれども、心停止、昏睡、気管支肺炎といったことで死亡例が出ております。これについては、当時の治験責任医師の見解として、「明らかに関連あり」というように評価がされております。ちなみに、この死亡例等の事象については、今回の同意説明書の中では触れられていないということも、少し指摘させていただきたいと思います。
 そういった意味で、様々なリスクというものが存在していると思うのです。やはり臨床試験を実施するためには、こういった非臨床又はこれまでの臨床試験のデータに基づいて、既に明らかになっているリスク、さらに、想定されるひょっとしたら起こり得るかもしれないリスクをしっかりと同定した上で、例えばリスク回避の方法として、患者の組入れの基準をしっかりと組むとか、除外基準でリスクの高い患者が適切に除外されるかどうかと、そういったことをしても、ある一定の確率で何らかのいろいろな事象が起きますので、そういった事象が起きても、早い段階で対応できるような体制が取られているのか。そういったリスクマネジメントという観点で、もう一歩踏み込んだ御対応を頂く必要があるかと感じました。ということで、実施体制という意味では、この試験はまだ非常にアーリーな段階なので、可能であれば、早期開発に長けた、臨床薬理等に精通した医師、あるいは、そういった方は国内にはそんなにたくさんいないかと思いますけれども、例えば内科系の医師の中でも、こういった早期の案件に精通した方がいらっしゃいますので、そういった方にコンサルトできるような体制は必要かと思います。
 また、今回の臨床試験は、精神症状を1つの評価項目として置いております。当然組み入れられる患者は、精神症状を伴った患者ということになりますので、こういったことをやられるときには、やはりしっかりとした体制で臨まれる必要があるかと思います。例えば自殺念慮や自殺企図の評価も含めて必要になってきますので、精神科医に対するコンサルトがしっかりできるような体制の構築は必要かと思います。
 これらの相談ができる体制というのは、治験等においては、例えば医学専門家を置くといったことで対応されるわけです。あるいは、最初から分担医師として入っていただく。恐らくそちらのほうがハードルは高いと思いますので、実施体制の中でこういった専門の先生との連携を取られることを強くお勧めいたします。「効果判定評価委員会」とかCRBの中に、そういった専門の先生がいらっしゃるという御回答もあったのですけれども、実際にはリアルタイムで速やかに様々な安全性に対する評価等を行う必要がありますので、迅速な対応ができるような体制が必要だということで、コメントさせていただきました。これについては、本日の差し替え資料の中で、そういった体制を構築しますということで御回答を頂いたところです。いずれにしても、安全性については、しっかりとした考え方で臨んでいただきたいと考えております。
 以上をまとめますと、現時点では、この技術は有用性という意味で十分なデータが示されておらず、“将来的な保険導入のための評価を行うものとして、未だ保険診療の対象に至らない先進的な医療技術等”というのが、恐らく先進医療のスコープになりますが、そういったところに現時点では該当していないのではないかということと、リスクマネジメントについても、もう一歩進んだ対応が必要だと考えており、先進医療として実施することについては、一旦不適にさせていただきました。臨床試験自体ができないと言っているわけではありませんけれども、もう少し詰めてプランニングをしっかりされたらいかがかと思いました。
 有効性と安全性については、いまだに不確かな部分が多く、より慎重な評価が必要な早期開発テーマなので、先進医療というよりは、むしろ最初から医師主導治験とか、あるいは企業治験とか、場合によっては特定臨床研究のようなところで探索的な評価を頂いた上で、特に有効性と安全性に関しての一定の臨床上のエビデンスを構築されてから、先進医療に臨まれるほうが適切ではないかと思っております。この辺については、部会としてどういうように取り扱っていくべきかというところは、最終的な議論が少し必要かと思いますが、私からはそういう評価をさせていただきました。私の評価としては、そういうことになります。
 実施条件をちょっと付けました。これはもうほとんどまとめになります。1つには、用法用量については、今までいろいろな試験でこのぐらい使っているということではなく、設定根拠というものが必要になるかと思います。具体的には、患者で予測される薬物動態学的な暴露量、薬理作用から見て必要とされる暴露量を十分達成できるのかといった議論、それから、安全性というところから見て、非臨床での毒性試験で得られた無毒性量との間の関係性から、適切な安全性のマージンが確保できるかという議論を、しっかりとしていただくということです。
 それから、リスクマネジメントをしっかりやってくださいということです。特に有害事象についての同意説明文書をしっかりと記載していただいて、適切なリスク管理を行っていただきたい。てんかんやうつ病、自殺念慮、自殺企図の既往とか。更年期障害というのは、基本的には診断基準もないということのようですので、逆に言えば、しっかりとした除外診断が要るということだと思います。内分泌系の疾患、特にⅠ型糖尿病やⅡ型糖尿病については、重篤な有害事象が出ておりますから、積極的に除外する必要があるかと思います。また、下垂体機能異常や甲状腺機能低下症については、単純に毒性試験でそういった症状が出ているというだけではなく、更年期障害との間の鑑別診断でも非常に重要なポイントかと思いますので、しっかりとした評価をしていただいて、更年期障害の患者をしっかりと入れるようにしていただきたい。特に安全性に関して、しっかりと対応できるような、相談できるような体制をやってくださいということです。
 もう一点、サイエンスとは関係のない話になりますけれども、寄付講座のお金を使われるというような記載がありました。ここに関して、今朝の御回答の中で、お金の出所等については開示がありました。特に問題になるようなものはないかと思っていますが、御対応いただけるように思います。長くなりましたけれども、ここで一旦止めたいと思います。ありがとうございました。
 
○山口座長
 続いて、副担当の後藤構成員より、倫理的観点からの御評価について御説明をお願いします。
 
○後藤構成員
 後藤からお話させていただきます。今の縷々御説明があったことについて、実は私も漠とした不安というのを抱えていたということは、ここで確認していきたいと思います。
 それは何かと言うと、ピリドキサミンのビタミンB6がかなり大用量で使われると。その用量について、今御説明があったように、全くその用量が適切かどうかというのが分かっていなくて、私も安全性についてかなり疑問を持っておりました。ちょっと伺ったりはしたのですけれども、水溶性のビタミンB6にピリドキサミンを足したものを多量に投与すると、先ほどもありましたように、どうして急にいろいろな副作用が出るのか、ウェルニッケ脳症とかそういうのが出るのかが、私はよく分からなかったのです。それがなぜ分からなかったのかというのが、今、主担当がお話になった形で、なるほどだから分からなかったのかというのが、今日の時点で分かったということになります。
 いろいろやり取りはさせていただきました。今日の配布資料の照会回答1と3について、ずっといろいろなことを伺いました。やはりなかなか説明同意文書について何かまだはっきりしないことが多いなということで、かなりいろいろ書いてはいただきました。この私の評価というのは、あくまでもこの申請者が言っている仮説に基づいて、その仮説についての説明が十分になされているのかということについてです。ピリドキサミンを多量投与するとウェルニッケ脳症等になるというような有害事象も書かれていましたので、その仮説に基づいて仮説についてきちんと伝えているのか、仮説が正しいかどうかというのは、今のお話でかなり疑問があったということですけれども、仮説に基づいた説明がされているかという観点で、書かれているべき同意文書はいろいろ直していただいたので、それでいいという判断をしました。
 また、補償についてもそうなのですけれども、そもそも論がやはり薬効薬理がどういう機序なのかなというふうに私も思っていたところでありまして、そこが適切に解明されていないので記載はされていません。記載されなくても、ビタミンB6は水溶性ということで一般論としては安全であるというようなことを事務局からも言われて、安全なものが突然安全でなくなるというのがどういうメカニズムなのかとは思ったのですけれども。そういうビタミンであるということが安全性を劇的に変化させる、その薬効薬理の機序が、私はちょっと分からなかった。それでも、ビタミンが危険になる可能性がもしあるのであれば、それについて、どうしてそのような劇的な変化が起きるのかということについて、分からない以上は、やはりちょっと難しいかなというように思っております。
 ですので、この私の評価は、あくまでも申請者の仮説に基づいて、仮説に基づいた説明がきちんとされているのかということで適にいたしましたけれども、今の御説明を縷々聞いていて、やはりその辺の薬効薬理の機序というのが明らかになって、それが説明されるということがないと、なかなかちょっと難しいかなというように現在では思っております。現在の気持ちをこの評価表にどのように反映させたらいいのか分かりませんが、取りあえず、私が適とした理由と、今はそれについて疑問を持っているということについて、御説明させていただきました。以上です。
 
○山口座長
 続いて、副担当の伊藤陽一構成員より、試験実施計画書等の評価について御説明をお願いします。
 
○伊藤(陽)構成員
 試験実施計画書等の評価を行いました。症例数の設計の根拠のところで疑義がありましたので、申請者に問合せをしました。参照論文の数値を誤記しており、書かれている数値と参照論文の数値が食い違っていたということで訂正がありました。訂正の結果、症例数の設計に関しては、特に変更というか、再計算しても同じ結果ですというふうな形で回答を頂いております。
 あと、主要評価項目に関する解析の方法に関しては、経時的に取られているCES-D、不安に関する評価項目を、経時データ解析の1つであるMMRMと言われる方法で解析をして、最終時点の群間差で評価しますということでした。ですので、その解析方法に基づく症例数の設計の根拠を行っていますかという質問を行ったところ、特にその解析方法に基づいて行っているのではなく、最終時点におけるt検定を想定した症例数の設計を根拠していると。基本的に、途中の欠測等がなければ類似の症例数が算出されるということなので、正確に症例数の設計を根拠しているということではないのですが、大きく間違った方法ではないということで、適というようにいたしました。
 1つ質問したのは、本剤、本治療法で、ある種の有害事象が出るので、ビタミンB1だったと思うのですけれども、それを併用薬として入れますということだったのですが、プラセボのほうにもビタミンB1が必ず入るということで、それは大丈夫なのですかということを問い合わせたところ、普通のビタミンB1の普通の用量なので特に問題はないという回答を頂いています。回答に関しては、こちらの疑義に関して適切に回答されたと思いますので、一応問題ないということで、実施計画等の評価としては適というような判断をいたしました。以上です。
 
○山口座長
 では、1~16の総評について、主担当の上村尚人構成員よりお願いいたします。
 
○上村(尚)構成員
 これは、総合評価としてはかなり悩みました。継続審議というのもありかなと思いましたので。ただ、かなりメジャーな指摘事項もあって、今日明日にすぐに解決しないところもあるのかなと思いましたので、先進医療としてこの案件を実施することについては、一旦、不適とさせていただいて、いろいろなことが解決するのであれば、また仕切り直していただいたほうがクリアなのかなと思いました。不適という言葉がすごく重たい感じがするので、ちょっと躊躇するところもあったのですけれども、こういう形にさせていただいています。
 実施できないということを言っているわけではないのですけれども、繰り返しになりますけれども、やはり、この試験を実施するに当たって、実施をしてもいいという十分な科学的根拠、scientific rationaleを示していただきたいということがあります。と言うと、エビデンスがないから、こういったsmall studyで、きちんとしたdouble blindでRCTをやりたいのだということではないかと思うのです。私は、それは方向性として間違ってはいないと思います。ただ、それをこの先進医療という場でやるべきなのかというところがポイントになるかとは思います。
 それと、実施の条件が付くとすれば、これは先進医療であろうが治験であろうが特定臨床研究であろうが私は同じだと思うのですけれども、やはりしっかりとした用量設定というのをなされたほうがいいかなと思います。有効性を期待できる暴露量がどのぐらいなのかという推定、これは必須だと思いますので、その中で臨床用量というのを決定していただけたらと思います。既にフェーズⅠのデータがありますので、人でどのぐらいの投与量にすれば、どのぐらいの暴露量になるかは、比較的容易に推定できるのです。問題なのは、どの程度の暴露量が本当に必要なのかというところ、そこをもう少し丁寧に議論していただきたいということです。
 それから、単純に用量を上げていけば確かに効くのかもしれませんが、上げたら上げた分だけ、どんな薬もそうですけれど、やはり毒性というのは出るはずです。逆に毒性が出ないようなものは薬ではないはずなので、これが本当に薬であるのであれば、やはりそこはしっかりとした議論が必要かと思います。なので、先ほどもちょっとコメントの中でも御説明しましたけれども、この非臨床試験で得られた毒性の所見、特に所見と対応した動物での全身暴露、これをしっかりと見ていただいて、実際に今回提案されている投与量が、有効性という意味で適切な用量かもしれませんけれども、であったとしても、安全性というところでのマージンがしっかり取れているのかといったところの再確認はしていただきたいと思います。
 あとは、リスクマネジメントという観点で、もう少しいろいろなところを考えていただきたい。それは、患者選択の話であったりとか、安全性に対するモニタリングの仕方であるとか、これは実施体制という意味で専門家との連携みたいなものを図るとか、そういったところ、それだけではないかもしれませんので、もう少し計画を練られたらいいかなと思います。
 これは早期の非常に探索的な臨床試験の御提案ということですので、これを先進医療という枠の中で実施するということについては、まだそういった状態には至っていないのではないかというのが、私からの結論です。以上になります。
 
○山口座長
 それでは御討議をお願いします。いかがでしょうか。
 
○藤原構成員
 私は上村先生の不適を支持したいと思います。今日送られてきたプロトコールとかIC文書とか、16日付けの回答書などを見ましたけれども、先ほど上村先生がおっしゃっていましたが、治験薬概要書も入っていて、今ずっと見ていました。回答書などを見てみても、今第Ⅱ相の医師主導治験がやられていて、そこではピリドキサミン1200mgと1500mgが使われているので、トキシコキネティックス等は問題あるかもしれませんけれども、一応、治験届をPMDAが認めて1200mgと1500mgをやっているので、今回のこの試験の1200mgでしたか、その辺のデータはそんなには問題ないのかなと思います。ただ、見たプロトコールは、どう見ても企業が作った治験のプロトコールをそのまま流用したような感じで、どう見ても医者が作ったとは思えないような記載振りでしたし、IC文書もそうでした。
 それから、上村先生が何度も指摘されていますように、背景ですね。治験薬概要書を見ると、日米でたくさんの他の領域での臨床試験もやられていて、多分治験だと思いますけれども行われていて、結構データはリッチなのだけれども、その辺がプロトコールの用量設定などにも全然反映されていませんし、非常に奇異に映る試験ですので、major revisionではなくて一旦rejectしたほうがいいと思います。
 ただ心配なのは、医科歯科大のCRBがこれを通しているということ自体が非常に不思議で、そういう点は普通にプロトコールを見たら分かるはずです。あと、モニタリング手順書とか監査手順書も今回付けてもらっていますので、それを拝見しましたけれども、モニタリングのほうは医科歯科大の中の部門、臨床研究支援部門が多分やると理解しましたけれども、監査は相変わらずどこがやるのかも分かりません。それから、プロトコールを拝見しましたけれども、中には開発した機関との契約などが書いてあって、CROはこのプロトコールのどこにも書いていなくて、そんな金がどこにあるのかも分からないような状況なので、全面改訂が必要かと思います。
 最後、先進医療に応募されてきたのは、医師主導治験にあるAMEDの研究費が多分取れなかったのか、あるいは、この疾患領域はものすごく大きな市場ですから、十分企業も投資価値はあるのですけれども、企業がそれをやらないのもまた不思議なところもあります。保険外併用療養費をやりたいから先進Bに応募されてきているのだと思いますけれども、今回リジェクトしたときに私が心配なのは、最近もいろいろな臨床試験の臨床試験登録を調べていたら、結構ファースト・イン・ヒューマン、国内未承認薬であっても先進でやらずに特定臨床研究でやっているのがあります。特定臨床研究というのは地方の厚生局が受け取るので、その辺でファースト・イン・ヒューマンとかの判別は多分せずに、CRBが承認したからそのまま特定臨床研究として受けているのだと思いますけれども、先進Bで承認しなかったら、そちらに逃げてしまって、闇のうちにこれがやられるということが非常に心配です。私はほかにもたくさんAMEDの研究費を審査していますけれども、先進医療ではない未承認薬・適応外薬使用のAMEDの特定臨床研究というのを時々拝見するので、これは制度自体をちゃんと運用していかないと危ないということ。だから、闇雲にリジェクトしてそのままフォローしないと、そちらに行ってしまって気付いたらとんでもないコンフュージョンとか精神症状とかが出てくるということになりかねないので、そこは心配です。事務局、その辺よくウォッチをお願いしたいと思います。以上です。
 
○山口座長
 今の御意見に何かコメントはありますか。いいですか。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 貴重な御指摘をありがとうございます。事務局としても注視していきます。ありがとうございます。
 
○山口座長
 不適という判断に賛成という御意見ですが、ほかにありませんか。私も最初にこれを読んだとき、第一感として、やはり臨床のエビデンスがあまりにもなくて、近々、保険収載される方向に向かうようなものかなという感じがしました。総評の一番最後にありますように、「本研究は、早期探索的な臨床開発ステージであり」というコメントは、私もうなずくところです。何か別の御意見はありますか。よろしいですか。
 それでは、皆様の御意見も一致したということで、整理番号127については「不適」ということにいたします。
 続いて、試験実施計画の変更について、事務局から説明をお願いします。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 今回、試験計画等の変更申請が6件提出されています。資料4、67ページを御覧ください。東京西徳洲会病院からの申請で、告示番号29「腎悪性腫瘍手術により摘出された腎臓を用いた腎移植」です。適応症は、末期腎不全(慢性維持透析が困難なものに限る。)です。
 御審議いただく主な変更内容について、67ページ下方を御覧ください。主な変更内容として、(1)ドナー除外基準について一部変更、(2)その他記載整備です。
 変更申請する理由としましては、(1)ドナー除外基準について一部変更、第130回先進医療技術審査部会における指摘に対応して、ドナー除外基準を変更した。具体的には、ドナー除外基準の5)が該当する。変更後の下線部を御覧ください。5)腎部分切除が適切であると判断された症例としていまして、設定の根拠として、(5)基本的には、「部分切除可能な方はドナー対象にはならない」という方針に変わりはなく、4.1.2.選択基準2)において規定されているとおり、腎部分切除が適応となると判断された症例は除外されるべきである、としています。(2)その他記載整備、人事情報の更新等。以上です。
 
○山口座長
 本変更内容について、何か御意見はありませんでしょうか。適切に直されたということですね。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 はい。
 
○山口座長
 よろしいでしょうか。それでは、告示番号29の変更については認めることといたします。
 続いて、次の試験実施計画の変更について、事務局から説明をお願いします。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 資料5、69ページを御覧ください。医療法人徳洲会湘南鎌倉総合病院からの申請で、告示番号32「自家末梢血CD34陽性細胞移植による下肢血管再生療法」です。適応症は、下肢閉塞性動脈硬化症(疼痛又は潰瘍を伴う重症虚血を呈するものであって、維持透析治療を行っているものに限る。)です。
 御審議いただく主な変更内容について、70ページを御覧ください。1)研究期間の延長として、登録期間及び実施期間をともに3年間延長、2)CD34陽性細胞の品質特性検査の変更、3)データマネジメント担当機関及び担当責任者の変更とあります。
 変更申請する理由として、1)選択基準の1つに「血管形成術、バイパス手術の適応がない患者、あるいはこれらの既存治療を受けたにもかかわらずRutherford分類4群又は5群に属する患者」があるが、血管形成術に供する医療機器の進歩により、選択基準に合致する患者が先行研究実施当時より減っている。特に当院では循環器科にてステント治療、バルーン治療が積極的に行われており、さらに2020年初頭からのコロナ禍の影響で症例登録が進まなかった。事前に設定根拠とした施設収集可能症例数の20例を上限とした16例~20例について、現在、徳洲会グループ内外の複数の病院を協力医療機関とし、対象となる患者数を増やすことを模索中であり、3年間の延長で達成可能と判断した。
 2)多重染色によるFlow Cytometry解析委託先の都合により、委託が不可能になったため。なお、品質特定の検討項目としてCD184が測定不能となっているが、プロトコール上投与する細胞に変化はない。3)実施体制の変更。以上です。
 
○山口座長
 本変更内容について、何か御意見はありますでしょうか。まだ登録は1例なのですね。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 御指摘のとおりです。
 
○山口座長
 これは見守っていかなければいけないと思いますけれども、何かありますか。ないようですので、告示番号32の変更についてはお認めすることといたします。
 続いて、次の試験実施計画の変更について説明をお願いします。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 資料6、71ページを御覧ください。国立がん研究センター中央病院からの申請で、告示番号34「プローブ型共焦点レーザー顕微内視鏡による胃上皮性病変の診断」です。適応症は、胃上皮性病変です。
 御審議いただく主な変更内容について、72ページ以降を御覧ください。1)患者登録の再開と研究期間の延長として、総研究期間及び登録期間の2年4か月の延長、2)選任製造販売業者、国内販売代理店の変更、人事変更、記載整備です。
 変更申請する理由として、1)Cellvizio100システム及びCellvizioミニプローベの国内製造販売業者である株式会社インクリース研究所が製造販売業務を廃止したことに伴い、これまで保守修理対応を行っていた国内販売代理店である株式会社アムコより、今後の販売、保守、修理等、全ての取扱いが中止された。このため安全に試験を継続することが困難であることを鑑み、患者さんの安全を担保するため、2020年7月9日に患者登録を中止した。 その後、新たに選任製造販売業者である株式会社グッドケアがCellvizioミニプローベの第三者認証の取得、Cellvizio100システムの届出を完了し、国内販売代理店となる有限会社アクセスポイントテクノロジーズが保守を担当することになり、本試験で使用する医療機器の販売、保守、修理等について迅速かつ恒常的な対応が可能となった。
 登録期間は1年6か月であったが、研究開始から登録中止時までの7.5か月間、患者登録可能であった施設が国立がん研究センター中央病院のみであったことから、2次登録数が11例と当初の予定よりも少なかった。2019年12月より新型ウイルス感染症の影響による内視鏡検査及び治療症例の低下も関連していると考えられる。今後、多施設での患者登録が可能と見込まれる。既に慈恵医科大学附属病院、国立がん研究センター東病院は協力医療機関として承認済みであることから、すぐに3施設での登録が開始可能である(登録ペースが同等と考えると、7.5か月で33例の登録が可能)。また、現時点で埼玉医科大学国際医療センター、藤田医科大学病院については各施設の担当部門との調整を進めており、今後、施設の追加も検討している。新型ウイルス感染症の影響にて近年の治療内視鏡件数及び治療後の定期検査受診数(試験エントリー対象症例)は増加していることから、登録ペースが約2倍となるとすると、3施設1.5年で約198症例の2次登録が予想される。さらに、追加2施設が1年以内に同等の登録ペースになると仮定すると、残り6か月で更に約44例の登録が可能となり、約250例の症例登録が見込まれると考えられた。このため、患者登録に更に1年6か月を要すると考え、患者登録を再開するに当たり、総じて2年4か月の研究期間延長とした。
 2)上記1)における選任製造販売業者である株式会社グッドケア、及び国内販売代理店となる有限会社アクセスポイントテクノロジーズについて、関連文書の記載修正を行った。以上です。
 
○山口座長
 本変更の内容について、何か御意見はありませんでしょうか。機械の保守修理を勝手にやめてしまうということが、できるのでしょうか。何か業者にも責任があるように思うのですが。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 事務局より御紹介しますが、申請医療機関からは、次の業者に関しては大丈夫だという言葉を頂いています。
 
○山口座長
 ありがとうございます。何かありませんか。特にないようですので、告示番号34の変更についてお認めすることとします。
 続いて、次の試験実施計画の変更について、事務局からお願いします。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 資料7、75ページを御覧ください。慶應義塾大学病院からの申請で、告示番号36「イマチニブ経口投与及びペムブロリズマブ静脈内投与の併用療法」です。適応症は、進行期悪性黒色腫(KIT遺伝子変異を有するものであって、従来の治療法に抵抗性を有するものに限る。)です。
 御審議いただく主な変更内容につきまして、76ページを御覧ください。主な変更内容としまして、(1)先進医療実施届出書の様式第9号にて定めている実施医療機関の要件のうち、実施診療科(皮膚科)の医師数を「5名以上」から「皮膚がん診療を行っている医師2名以上」に変更、(2)記載整備とあります。
 変更申請する理由としましては、(1)これまでの様式第9号においては、「実施診療科の医師数」は「要」で5名以上に設定していますが、一般病院における皮膚科医のうち、主に皮膚がん診療に携わっている医師は2~3割ほど(当院の場合)であることを元に設定しておりました。一方で、多施設共同で臨床試験を実施しているJCOG皮膚腫瘍グループの実施施設には、皮膚がん診療を行っている医師の所属数が2名のみの施設もありますが、こちらで問題なく実施されています。このような他の状況も勘案しますと、本先進医療においても、皮膚がん診療を行っている医師が2名以上いれば実施体制として問題ないと考えられます。したがって、皮膚がん診療を行っている専門の病院/センターを含めた全ての施設に対して機能するような、必要な体制がより正確に表された要件にする必要があると考えたため、今回の変更をお願いしたいと考えております。なお、本先進医療の参加施設は、全てこの新たな基準を満たしております。(2)年度更新に伴う記載整備。以上です。
 
○山口座長
 本変更内容について、何か御意見はありませんか。確かに皮膚科医師が5名というのは、がん研でもいません。妥当かと思いますが、いかがでしょうか。特に御意見がないようですので、告示番号36の変更についてはお認めすることとします。
 続いて、次の試験実施計画の変更につきまして説明をお願いします。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 資料8、77ページを御覧ください。国立がん研究センター東病院からの申請で、告示番号39「周術期デュルバルマブ静脈内投与療法」です。適応症は、肺尖部胸壁浸潤がん(化学放射線療法後のものであって、同側肺門リンパ節・縦隔リンパ節転移、同一肺葉内・同側の異なる肺葉内の肺内転移及び遠隔転移のないものに限る。)です。
 御審議いただく主な変更内容につきまして、78ページを御覧ください。主な変更内容としましては、(マル1)治療変更規準における非血液毒性の規定の追加、(マル2)誤記の修正、情報更新とあります。
 変更申請する理由としましては、(マル1)6.3章「治療変更規準」において、化学放射線療法の治療変更規準に非血液毒性に関する規定が現行のプロトコールにはありませんでしたが、本試験の類似試験であるTORG1937試験の記載を見ましたところ、本試験で行う化学放射線療法の減量規準としても妥当と考えられたことから、同試験を参考に非血液毒性に関する規定を追加します。TORG1937試験は、切除不能Ⅲ期肺がんを対象に、化学放射線療法完遂翌日からデュルバルマブ維持療法を開始するレジメンの特定臨床研究であり、化学放射線療法において、非血液毒性の有害事象が発生した場合の治療変更規準が規定されております。これを参考に、本試験でも、化学放射線療法において、非血液毒性の有害事象が発生した場合の治療変更規準を設けることにしました。
 (マル2)「切除肺の処理と病理所見」に関連する収集項目について、プロトコール作成時は、分化度は収集不要の方針としておりましたが、削除を行っておりませんでした。そのため、分化度の記載を削除いたします。また、プロトコール治療に用いる使用機器に、定位放射線加速器システムを追加しました。以上です。
 
○山口座長
 本変更内容について、何か御意見はないでしょうか。ありませんか。これも妥当なことかと思います。よろしいでしょうか。特に御意見がないようですので、告示番号39の変更についてお認めすることとします。
 続いて、次の試験実施計画の変更について、事務局から説明をお願いします。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 資料9、79ページを御覧ください。慶応義塾大学病院からの申請で、告示番号46「抗腫瘍自己リンパ球輸注移入療法」です。適応症は、子宮頸がん(切除が不能と判断されたもの又は術後に再発したものであって、プラチナ製剤に抵抗性を有するものに限る。)です。
 御審議いただく主な変更内容につきまして、80ページ以降を御覧ください。1.エントリー期間、実施期間(追跡期間)の延長として、エントリー期間を、細胞提供者、患者いずれも1年6か月、追跡期間を1年間延長。2.その他情報更新、記載整備です。
 変更申請する理由としまして、1.COVID-19感染拡大の影響、及び試験手順の修正等に時間を要し、試験全体の進捗に遅れが生じた。このため、エントリー期間を1.5年、実施期間(追跡期間)を1年間延長した。現在までに2例を登録し、1例の治療を終了した。本治療では、TIL製造のため1cmの切除可能な腫瘍が必要となる。現在、治療を希望しているものの腫瘍が1cm以下のため治療を開始できず待機している患者が、4例存在する。これらの患者は、半年以内に適格基準を満たし、治療を開始できる可能性が高い。加えて、毎月、新たに3~4名程度の治療希望者からの問合せがある状況である。本研究の目標組み入れ症例数は14例、目標評価対象例数(治療患者数)は10例であり、2023年3月までに評価対象例数10例の確保は可能であると考える。2.その他情報更新、記載整備。以上です。
 
○山口座長
 本変更内容について、何か御意見はありませんか。よろしいでしょうか。では、特にこれも御意見はないようですので、告示番号46の変更についてお認めすることとします。
 続いて、先進医療Bの協力医療機関の追加について、事務局から説明をお願いします。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 資料10-1、83ページを御覧ください。告示番号52について2件、告示番号56について1件の協力医療機関の追加申請がありました。資料10-2、85ページ以降を御覧ください。事務局において、先進医療を実施可能とする保険医療機関の要件、様式第9号を満たしていることを確認しました。協力医療機関の追加として御了承いただきたく存じます。特に御意見がなければ、手続を進めさせていただきます。以上です。
 
○山口座長
 よろしいでしょうか。それでは、事務局は手続を進めてください。
 続いて、先進医療Bの試験終了に伴う取下げについて、事務局から説明をお願いします。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 資料11、89ページを御覧ください。先進医療の取下げとして告示番号12の1件、協力医療機関の取下げとして告示番号10について4件申請がありました。取下げ理由の所に記載がありますが、告示番号12につきましては、当初計画では10例を目標症例数として見込んでいたが、交通外傷が減少傾向にある昨今の社会状況、及び参加候補者の経済的負担による参加見送りなどの原因により、当初予定されていた症例登録が進まなかった。このため、研究期間の延長や関連施設へ対象患者照会を行うなどの症例収集の推進を行い、最終的に6例が登録されたが、観察期間及び試験期間の満了に伴い、研究計画者の中止規定に基づき試験を終了することとしたため。なお、総括報告書については提出準備中である。
 また、協力医療機関の取下げとして、告示番号10につきましては、目標症例数の登録が完了したが、当該医療機関においては症例登録がなく、追跡調査を必要としないため、とあります。以上について特に御意見がなければ、手続を進めさせていただきます。
 
○山口座長
 よろしいでしょうか。それでは、事務局は手続を進めてください。
 それでは、本日の議題は以上です。構成員の皆様、全体を通して何か御意見、御質問はありませんか。ないようですので、次回の日程を事務局からお願いします。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 次回は令和4年6月16日(木曜日)の開催といたします。時間は16時から18時までの予定で、詳細につきましては、別途御連絡させていただきます。また、本日の議事録については、作成次第、先生方に御確認をお願いし、その後、公開させていただきますので、よろしくお願いします。
 
○山口座長
 それでは、第133回先進医療技術審査部会を終了します。活発な御討論をどうもありがとうございました。

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