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2022年2月10日 第128回先進医療技術審査部会 議事録
(1)日時:令和4年2月10日(木)16:00~
(2)場所:TKP新橋カンファレンスセンター「ホール13A」(オンライン)
(3)出席者
山口座長、一色座長代理、天野構成員、伊藤(澄)構成員、伊藤(陽)構成員、上村(尚)構成員、上村(夕)構成員、掛江構成員、神村構成員、後藤構成員、坂井構成員、佐藤構成員、真田構成員、柴田構成員、田島構成員、飛田構成員、磯部技術専門員
(事務局)
医政局研究開発振興課長
医政局研究開発振興課 治験推進室長
医政局研究開発振興課 課長補佐
医政局研究開発振興課 先進医療係長
保険局医療課 先進・再生医療開発戦略専門官
医薬・生活衛生局医薬品審査管理課 審査調整官
【議題】
1.総括報告書の評価について
2.試験実施計画の変更について
3.協力医療機関の追加について
4.先進医療の取下げについて
5.その他
【議事録】
○山口座長
定刻となりましたので、第128回先進医療技術審査部会を始めます。御多忙の折、お集まりいただきましてありがとうございます。少し雪がひどくなってきたようですが、なるべく今日は要領よく進めたいと思います。よろしくお願いします。本日はオンラインでの開催となります。本日の構成員の出欠状況ですが、藤原康弘構成員、松山晃文構成員より御欠席の連絡を頂いております。また、本日は磯部光章委員に技術専門委員として御出席いただいております。どうもありがとうございます。
本日は18名の構成員のうち、現時点で16名の構成員にお集まりいただいていることから、本会議は成立していることを申し添えます。それでは、配布資料と本日の審査案件の確認を事務局からお願いします。
○医政局研究開発振興課長補佐
よろしくお願いいたします。傍聴者の方の撮影はここまでとさせていただきます。御協力のほどよろしくお願い申し上げます。配布資料につきまして、確認させていただきます。議事次第から、座席表、開催要綱及び運営細則、構成員及び技術専門委員名簿と続きます。続きまして、総括報告書の評価について資料1-1~資料2-3、試験実施計画の変更について資料3~5、協力医療機関の追加について資料6-1及び6-2、先進医療Bの取り下げについて資料7、会議資料の最終ページは59ページとなります。お手元の資料に乱丁、落丁等ございましたら事務局までお知らせください。
続きまして、利益相反の確認です。申請医療機関との関係、対象となる企業又は競合企業について、事務局から事前に確認させていただいております。今回、告示番号44の技術、大阪刀根山医療センターからの総括報告書に関して、本研究は国立病院機構の共同研究ということですので、伊藤澄信構成員におかれましては、御所属の機関との関係で、審議の際は一時御退席いただければと思います。また、当該技術について真田構成員からも御報告がありましたが、いずれも50万円以下でしたので当該技術の議事取りまとめ及び事前評価に加わることができます。また、告示番号旧32の技術、慶應義塾大学病院からの総括報告書に関して、飛田構成員より御報告がありましたが、50万円以上500万円未満でしたので、議事の取りまとめのみ加わることができません。事前の届出以外に、もし何らかの利益相反がございましたら、この場で御報告をお願いいたします。それでは、該当なしということで承知いたしました。
また、今回は資料を事前にメールでお送りしております。会議資料と区別して、構成員・事務局限りの届出書類等を「タブレット資料」と御案内します。なお、会議資料とタブレット資料の内容は異なっておりますので、発言者は会議資料の何ページ、またはタブレット資料の何ページと、あらかじめ御発言を頂けますと議事の進行上助かります。
本日はオンラインでの開催となり、構成員の先生方には大変御不便をおかけいたします。御発言いただく際には、はじめにお名前をおっしゃっていただくようにお願いいたします。その他、途中で接続トラブル等ございましたらお知らせいただけますようお願いいたします。また、Web会議ソフトには手挙げ機能が付いておりますので、こちらも適宜御活用いただければと存じます。以上でございます。
○山口座長
ありがとうございました。では、早速議事に入りたいと思います。総括報告書の評価結果につきまして、事務局から御説明をお願いします。
○医政局研究開発振興課長補佐
御説明いたします。資料1-1の15ページです。先進医療Bの総括報告書(主たる解析結果)に関する御評価を頂きましたのは、告示番号44「TRPV2阻害薬経口投与療法」です。申請医療機関は国立病院機構大阪刀根山医療センターです。審査担当構成員は、主担当が上村尚人構成員、副担当が飛田構成員、技術専門委員が磯部委員となっております。
なお、冒頭に申し上げましたとおりですが、伊藤澄信構成員におかれましては、御所属の医療機関との関係で本議題の審議に際し、御退席いただきたく存じます。御協力のほどよろしくお願い申し上げます。
(伊藤(澄)構成員 退席)
○医政局研究開発振興課長補佐
それでは、資料に沿って御説明させていただきます。試験の概要につきましては、資料1-1のほか、資料1-3、31ページ以降の概要図も併せて御覧ください。筋ジストロフィーは、人口10万人当たり20名程度の希少疾病である。その多くで運動機能障害に加えて、呼吸筋障害等による呼吸不全、心筋障害による心不全・不整脈を合併し、生命予後を規定する大きな問題となる。そこで、心不全を合併し、それに対する標準治療が行われている筋ジストロフィー患者に対し、トラニラストを6か月間投与する非盲検単群試験を行い、前後の心機能、運動機能、QOL、末梢血単核球表面TRPV2発現解析等で有効性・安全性を評価する。主要評価項目は投与開始前から24週までのBNPの変化量。副次評価項目は心イベント等、お示しするとおりでございます。目標症例数は20例で、登録症例数は28例となっております。
本試験は、研究計画書の規定に基づき、全ての対象者の投与24週時の検査・観察データが得られた時点で、主要評価項目、副次評価項目、安全性について「主たる解析時点での総括報告書」として先進医療技術審査部会の審議を受け、研究の継続・中止が判断されることとされているものです。試験の概要につきましては以上でございます。
○山口座長
ありがとうございます。では、本技術の評価につきまして、主担当の上村尚人構成員から御説明をお願いします。
○上村(尚)構成員
ただいま事務局から説明があったとおりなのですけれども、この研究ですが、心不全を合併している筋ジストロフィーの患者さんが対象で、BNPの値としては100pg/mL又はNT-proBNPですと400pg/mL以上の患者さんを対象にして、TRPV2阻害薬であるトラニラストを1日あたり300mgを投与した際の心機能の改善効果について評価することを目的として実施されたものです。
主要評価項目ですけれども、これは有効性に関しての評価をするということで、BNPの投与開始前から24週までの変化量で評価しています。このときの変化量は、20週、24週、28週のデータの平均値を取って、24週までの変化量として評価をするということです。過去の研究データ等を参考にして、BNP変化量のlog(BNP)の変化量として-0.18を設定して、そこに対して有意な変化があるかどうかを見ているということです。結果としては、統計的に有意な変化は認められませんでした。
log(BNP)の変化量-0.18というのは、logで言うと分かりにくいのですけれども、通常の数字でいくと、これは0.66に相当しますので、BNPの対数変換をしない前の変化量というか、率とすると0.66ということは、34%ぐらいが下がればいいというように研究者は考えていたということですけれども、そういった変化は見られなかったということです。
BNP自体は自然の変動も含めてですけれども、変動の大きな指標であることは知られています。ですが、少なくとも前後比較という制限はあるものの、臨床的に意味のありそうな現象というのは確認できなかったと私は考えています。
副次的な評価項目ですが、様々な評価をされていまして、左室の内径短縮率を1つと、hANPですね。それから、筋力、クレアチニンキナーゼについても比較されていますが、これらも有意な変化はありませんでした。
cTnT、トロポニンについては、これは投与前後での比較ということで見ているわけですけれども、微量ながら増加しているということが確認されていますが、一部、患者さんの中でアウトライヤー的な病態を示された方がいたりしますので、この平均値で見て、若干増加しているということに対しての臨床的な意義というのは乏しい変化ではあるというように私は評価いたしました。
副次的評価項目の中で末梢血の単核球表面のTRPV2の発現を見ていらっしゃいます。これは投与前後で明らかに変化、低下が認められていたということなのですけれども、少なくともこの薬剤を投与したときに何らかの標的、つまり、TRPV2でのエンゲージメントが何らかのレベルでの作用があったということですので、少なくとも患者さんはしっかりと薬を飲まれていて、その標的であるTRPV2に対しての作用というのは認められたと考えるのが妥当かと思います。一方で、それが見える形での臨床的な効果にはつながっていないということになります。
このことは、実はとても重要なポイントだと思っていまして、まず、この臨床試験の患者さんは、少数とはいえ、試験の中で、研究の中で新しい治療法として薬を投与して、いろいろな評価をしてみたわけですけれども、少なくとも主要評価項目についてはネガティブな結果として出ているわけですが、薬自体はターゲットに届いているということで、POC試験としてはしっかり成立しているというように考えていいと思いました。要するに、ターゲットに対してしっかりと作用しつつも、臨床的な効果が得られていないということが見えているわけなので、ネガティブな試験なのですが、そのことがイコール、試験としては成功したというように考えていいのではないかと感じました。
QOLに関しても、幾つか見ていらっしゃるわけですけれども、筋ジストロフィーのQOLの評価尺度であるMDQOL-60という所を見ていらっしゃいますが、そこも有意差は認めず、ただ、SF-12という、これは身体的、精神的、あるいは役割、社会的なサマリースコアの所の下位尺度である日常の役割等は有意に低下をしておりましたけれども、試験の性質上、この試験では対照群を設定しておりませんので、患者さんの多くは進行する病態をお持ちの患者さんですので、自然変動の中で少しずつ患者さんのQOLが変化していった可能性は大いにありますので、これが研究の中で低下したということ自体で臨床的な意義というのを論じるということは難しいのではないかと思います。
安全性については、おおむね良好というように思っていますが、1例ですが、重篤な有害事象が発生しておりまして、これはCase19という方なのですが、一旦薬を中止して、回復した後にもう一度お薬を再開されています。そうすると、また脱水や血圧の低下を伴うような下痢が発生し、それで入院ということになっています。これは結果的には試験薬のリチャレンジになってしまったということだと思いますけれども、そういった背景もあって、薬との因果関係はあるだろうと研究者の先生方は御判断されていて、それは妥当な判断かと思います。下痢自体は既知の有害事象ということでありますけれども、筋ジストロフィーの患者さんは、比較的フラジャイルな患者さんが多いということではないかと思いますけれども、そういった特殊な患者さんで、こういった下痢が発生するということについて、もし本当であれば、今後、研究を継続するということであれば、特別な注意をしていく必要はあるかと思いました。
この結果をもって、何かこの薬事申請という所につながるかということに関して言うと、先ほど申し上げたとおりで、この対象となった心不全合併の筋ジストロフィーの患者さんに関しては、心機能の改善というのは事前に設定された基準を満たすような薬効、すなわち、BNPの低下としては確認できませんでしたので、薬事申請というのは、現時点では難しいのかなと思っております。
一方で、既に患者さんの中では、こういった薬を投与されてフォローアップ中の患者さんもいらっしゃいます。その方をどうするかというのは少し議論が必要かと思いますが、少なくとも、この試験をこのままの形で投与を続けていくというのは、その妥当性については検討していく必要があるかなと思います。
研究者の先生方は、一応、この報告書の中ではBNPがほとんど変化しなかったことについて、本来であれば、自然経過の中でもっとBNPは悪化していく、つまり、上昇しているはずで、それに対してトラニラストを投与したことによって、その悪化を抑制した可能性ということを結論の中でも論じられているのですが、そこはやはり結論として論じるというより、ディスカッションとしてはあってもいいと思いますが、少なくともオープンアームの試験の中でそれを結論の中に入れるというのが、かなり無理があるのかなと感じますし、そこはこの試験がオープンの試験であるということでの限界ではあります。仮に、そこをこのままの形で試験を継続していっても、結論は出ないのではないかと思いますので、そういったところも含めて試験の継続については検討する必要があるかなと思っています。私からは以上になります。
○山口座長
上村先生、ありがとうございました。続いて、副担当の飛田構成員より御評価をお願いします。
○飛田構成員
よろしくお願いします。私のコメントは20ページから記載されていますので、そちらを御覧ください。まず、有効性に関してですが、「その他」と評価させていただきました。これは先ほど上村先生からの御説明のとおり、今回の主要評価項目であるBNP、副次評価項目に設定された様々な項目、何れも投与開始前から大きな変化は認められていません。これらの成績から試験治療薬であるトラニラストが対象疾患であるデュシェンヌ型筋ジストロフィーの病態進行や、心機能増悪を抑制しているかどうかということに関しては、コントロール群が設定されていない、かつ投与28週のデータから判断するのは困難ではないだろうかと考えています。
ただし、主要評価項目であるBNPに関しては、バラツキが大きいものの、平均変化は計画時に生理的変動幅として規定されていた閾値0.18よりも低下しています。BMPはバラツキが大きいためFASとPPSでの解析結果が異なっている点には注意が必要ですが、そのほかに薬理作用として評価されている末梢血単核球表面TRPV2発現には投与前に比べて発現低下が認められていることから、より長期投与時の有効性の結果を踏まえた上で本医療技術の有効性を評価するのが適当ではないかと考えています。
安全性に関しては、先ほど説明がありました副作用として下痢が認められていますが、既知の副作用であることから、「B」あまり問題なし、と判断させていただいています。
技術的成熟度に関しては「A」と評価しました。その他、コメント欄に、23ページから幾つか研究者の先生方に問合せをさせていただいた内容について記載させていただいております。今回の試験では、34人の同意が取得できたのですが、その後、同意取得後に行ったスクリーニングで脱落が10件、登録された後に投与開始に至るまでの脱落が10例あって、実際に投与開始例は18例になっています。本試験は単群のオープン試験ということもあり、トラニラストの投与が可能となるような対象がかなり限られている状況になっています。本試験で28週の時点では試験治療を受けておられた15名全員が試験薬投与の継続を希望しており、48週の時点で1名が同意撤回をしていますが、最長783日間の投与継続例もいるとのことで、今回の主要な解析である24週時点の他に96週時点でイベントに関する一次追加解析が行われる計画になっていることから、今後、開発を進めていくのであれば、より長期的な結果から、適切な投与対象集団の検討がされることを期待したいと考えています。
保険の適用範囲内で、本試験で投与に至らず、生存が確認できている7人中2例で実際にトラニラストが投与されている症例もいるとのことなので、より適切な投与対象を検討する必要があろうかと考えています。
なお、今後のロードマップについて研究者に問い合わせしたところ、29ページに本年の臨床研究・治験推進研究事業のAMEDの研究事業のプロトコル作成のステップ1に応募したという回答がされましたので、今後、本先進医療の試験成績等々も含めた上で、適切なデザインで開発が進んでいくことを期待したいと考えています。以上です。
○山口座長
どうもありがとうございました。続いて、磯部技術専門委員より御評価をお願いいたします。
○磯部技術専門委員
榊原記念病院の磯部でございます。私は臨床の心不全を専門としている立場としてコメントさせていただきたいと思います。今、上村構成員、飛田構成員がコメントされたことと大きく変わるところはございません。私のコメントは21ページから書いておりますけれども、有効性につきましては、端的に言えば、上村構成員が言われたとおり、この臨床試験は、結果はネガティブ、有効性が証明できなかったということですので、それは事実として動きません。ただ、いろいろこの研究、臨床試験の不利な点がやはりありまして、研究デザイン的にも、もとより非常に希少な疾患の患者さんを対象にしているということもあって、シングルアームで、数は20例という患者さんの対象数であるということと、エンドポイントについて、普通は心不全の研究というのはハードエンドポイント、再入院とか、心血管イベント、あるいは死亡をもってエンドポイントとすることが通例であります。かつ、心不全というくくりですと、数千例から数万例という臨床試験が組まれるのが通常でして、BNPをエンドポイントとする臨床試験というのはほとんど見掛けたことがございません。
その理由は、BNPは非常に変動が大きいことがあります。従ってこういった極めて少数例で、この値をもって薬剤の有効性を見るということが非常に難しいという背景があります。とは言え、希少疾患であるという観点から、こういう研究経過を組まれたと思いますけれども、結果としてBNPの変動が見られません。前後数回の平均を取り、かつ30%程度許容したとしても、心不全の改善を数値として表わすというのは、非常に難しい研究計画ではなかったかと思います。
安全性に関しましては、副作用があった3例中1例で強い下痢があって、恐らくトラニラストと関連性があるだろうということで記載があったと思いますけれども、下痢は循環動態に非常に大きな影響を与えます。特に重篤な下痢は、心不全の、場合によっては実際に命取りになりかねない副作用ですので、もし、これがトラニラストによって、ある一定頻度で起きる副作用であるとすれば、やはり心不全の観点からは看過し難い副作用ではないかと思いますので、今後、相当慎重に検討が必要であろうと思います。
全体として、先ほど申し上げましたように、この臨床試験計画としては30数例エントリーして、目標は20のところ、実際に解析できたのは、解析項目によっては13例です。13例のシングルアームだと、幾らブラインドであったといっても、有効性を示すのは非常に困難であると思います。この規模、このスキームでの臨床試験を継続しても、今後有益な結果が得られるとは正直言って思いませんので、やり口を変えて、結果が見込めるような臨床試験計画を組まれるとよろしいのではないかと思います。ということで、この結果をもってトラニラスト、診療、保険収載をするということは、現状では私は認められない結果ではないかと判断いたしました。以上でございます。
○山口座長
磯部先生、ありがとうございました。上村尚人構成員から何か追加のコメントがありましたら、お願いします。
○上村(尚)構成員
私も含めてですが、3人の評価者の意見は、ほぼ全体的には一致しているというように思います。BNPに関して言うと残念ながらネガティブだったと。一方で、もともと答えを出そうとしていた試験のクエスチョンですが、つまり、少数ですけれども、この治療法によってBNPが下がるのかどうかということについては、かなりクリアな答えが出たのではないかと思います。少なくともそこはロバストなそういう現象というのは見られないということですので、試験としては非常に意味のある結果を出されたのではないかと思います。
もう1つは、この試験の中でそれなりに数は苦労して入れられたのだと思います。もともと非常に数の少ない患者さんを対象にして、日々の診療で治療されているグループだと思いますので、その中で、かなりの患者さんが入ってこられたということですよね。それで、一定の安全性に関しての評価ですね、これがやはりできたということは、次のステップに進む上では、もし、進まれるのであれば非常に重要な安全性に関する情報が出てきたと思います。当初は不整脈の懸念とかあったわけですけれども、そこも多分、そこまで心配する必要はないのではないかというデータだと思います。
あとはBNPの話に戻ると、この対象の患者さんでの変動であるとか、どのぐらいのバラツキがあるかみたいなところもオープンなシングルアームではありますけれども、そこで出てきましたので、こういったデータを基にして、次のステップで、可能であれば、やはり対照群を置いた臨床試験に進まれるというのが妥当ではないかなと個人的には思います。恐らく、飛田先生、磯部先生もそういった趣旨での御発言だったのではないかなと思いますが、私からの追加のコメントとしてはそのくらいになります。
○山口座長
どうもありがとうございました。ただいまの御説明に関して、何か御質問はありませんか。3名の先生は大体御意見は一致しているようです。希少な疾患で、ようやく集めたのですけれども、このままの形で続けても結論は出ないので、難しいのではないかという御指摘がありましたが、試験自体は適切に行われたということかと思います。それから、対照群を置いてやるとかということを少し考えないと、なかなか結果は得られないのではないかという御指摘かと思いますけれども、何か御質問とか、御意見はございませんか。
○天野構成員
御説明ありがとうございました。1点だけ質問させてください。おおむね委員の間で意見の一致は見られているという御説明だったのですが、安全性については委員の間で若干評点に差があるように見受けられます。技術専門委員からは、1例とはいえ、重篤な下痢が発生したことは看過し難く、特に重症の心不全患者では、脱水を伴うような下痢は循環動態に与える影響も大きいという御指摘が出ているわけです。これは総合的にはどのような評価になっていると理解すればよろしいでしょうか。
○山口座長
上村先生はいかがでしょうか。
○上村(尚)構成員
総合的な評価、私の個人の評価としては「D」です。ちょっと評価が難しいというところで付けさせてもらったのですが、全般的にいくと、比較的安全な推移なので大丈夫だと思いますけれども、先ほど磯部先生からもお話があったように、場合によっては血圧の低下を伴うような下痢というのは、普通の患者さんでも大変なのに、心不全を持っている筋ジストロフィーの患者さんでこれが本当に起こるのであれば、やはり相当気を付ける必要はあるのかなと。ただ、それが本当に起こったかどうかというのは、これから数を増やしてしっかり見ていかないと評価が難しいのかなと思います。
このケースについては、19番の患者さんですけれども、先ほど少し説明させていただいておりますが、臨床試験で下痢はよく出るのです。下痢をして入院されるということも比較的よくある話なので、すごく評価は難しいのですが、この患者さんについては、1回やめた薬を、もう一回再開したらまた出ているのです。それで、そのときにやはり血圧の低下があったということが多分1つの医学的な判断だったと思いますけれども、入院されているのです。それはやはり気を付けておく必要があるのかなと個人的に思いますし、ただ、比較的安全な薬なので、研究者が言われている全般的なところでいくと、比較的安全であったということについてはおおむね同意はできるのですが、その1例については、かなり慎重に取り扱う必要があるかなということです。
○山口座長
天野先生、よろしいですか。
○天野構成員
ありがとうございました。
○山口座長
磯部専門委員、どうぞ。
○磯部技術専門委員
磯部です。上村先生のコメントに、おおむね同意いたします。母数が余りにも少なくて、20数名、28名でしょうか。そのうちの1名ということですので、トラニラストは多分、相当古くからリザベンとして我々は使っている薬ですので、そういった意味での使用経験は相当あるはずなのです。その中で特に筋ジスの患者さんにこういうことが起きやすいのか、特に筋ジスと心不全の患者さんで、この下痢が起こりやすいのかということは究明する必要があって、普通のアレルギーなどで使っている方での頻度がある程度分かって、その上で筋ジスの心不全患者さんで特にこういうことが起こりやすいということであれば、心不全に使うことは相当慎重な検討が今後必要であろうということで、警鐘という意味でこういうコメントをさせていただきました。以上です。
○山口座長
ありがとうございました。何千例という中での1例ではなくて、20例の中で1例ということと、やはり結果は極めて重大なことになるということで、今後投与するとしたら非常に注意して見ていくべきであるという御意見かと思いますけれども、これに関してどなたか御発言はありますか。それでは、ほかの点について何か御質問、コメントはございませんか。よろしいでしょうか。それでは告示番号44については、ただいま御審議いただいた結果を取りまとめて、試験の中止が適当と判断するということで先進医療会議に報告いたします。
また、磯部技術専門委員におかれましては、以降は御退席いただいて結構です。本日は御多忙のところ御出席いただき適切な御発言を頂きまして、誠にありがとうございました。
○磯部技術専門委員
どうもありがとうございました。失礼いたします。
(磯部技術専門委員 退席)
○山口座長
では、伊藤澄信構成員にお戻りいただくことにいたします。
(伊藤(澄)構成員 入室)
○山口座長
続きまして、次の総括報告書の評価結果について、事務局から説明をお願いします。
○医政局研究開発振興課長補佐
御説明します。資料2-1の33ページを御覧ください。先進医療Bの総括報告書に関する御評価を頂きますのは、告示番号旧32「ヒドロキシクロロキン療法」です。申請医療機関は慶應義塾大学病院です。審査担当構成員は、主担当が一色座長代理、副担当が柴田構成員となっております。試験の概要につきましては、資料2-1のほか資料2-3、43ページの概要も併せて御覧ください。
関節リウマチは破壊性関節炎を特徴とする自己免疫疾患である。現在の治療目標は寛解であるが、抗リウマチ薬治療でも約30%は寛解を達成することができず、また、有効性の高い薬剤は高額で経済的な理由から使用できず寛解に至らない患者も多い。本先進医療技術は、抗リウマチ薬抵抗性の関節リウマチ患者を対象として、24週間ヒドロキシクロロキンを内服する治療法であり、既存レジストリから傾向スコアマッチングによって抽出されたヒストリカルコントロール群と比較検討し、有効性と安全性を検証する。主要評価項目は、24週時ACR20改善率。副次評価項目は4・8・12・24週時疾患活動性のカテゴリーの1段階以上改善する達成率など、お示しするとおりです。目標症例数は60例で、登録症例数は60例となっています。試験の概要については以上です。
○山口座長
ありがとうございます。本技術の評価につきまして、主担当の一色座長代理から説明をお願いします。
○一色座長代理
一色です。今、概略の説明がありましたが、本件は2016年の第46回先進医療技術審査部会において承認された技術です。慢性関節リウマチは、広く存在する疾患でありまして、全国で80万人と言われておりますが、メトトレキサートを中心とする従来の薬物療法では寛解に至らない患者が約30%と多いことが問題とされてきました。近年複数の生物学的製剤が臨床応用されておりますが、先ほど御紹介がありましたように非常に高額であるということで、その使用をためらう患者さんも多いのが現状です。ヒドロキシクロロキン、本技術の薬剤ですけれども、これは欧米において、既に1950年代という非常に古くから使われている薬剤でありまして、本疾患に対する標準的治療薬として定着し、ガイドラインにも記載されています。然るに、我が国におきましては、数年前にSLEへの適応が取得されておりますが、慢性関節リウマチには適応がなく、また、十分な使用経験もありませんでした。これらの状況を踏まえて、今回は本薬剤の適応拡大の道筋を立てることを目標に掲げて先進医療制度を用いた研究が行われたということです。
会議資料の43ページを御覧ください。ここにプロトコルの概要が出ていますが、一番上の四角の所にある対象ですけれども、3か月以上にわたるメトトレキサートの単独投与、あるいは他の抗リウマチ薬の他剤併用によっても寛解に至らない慢性関節リウマチが対象となっております。ここにありますDAS28という数字ですが、DASというのは、Disease Activity Scoreのことで、28個の定められた関節の腫脹や圧痛などの所見を基に算出されるリウマチの活動性の指標であります。これの2.6未満ということが寛解の指標とされていることから、DAS2.6以上の寛解が得られなかった患者を対象としております。対象は60例で、ヒドロキシクロロキン200-400mgを投与して、24時間の追加併用投与の有効性と安全性を検討しております。
有効性の主要評価項目は24週時のACR20改善率となっております。ACRは米国リウマチ学会のことで、当学会が関節症状や炎症所見をもとに作成した治療効果の指標を示しており、それらの所見が20%以上改善したものがACR20です。50%以上改善した場合はACR50と表されます。上記主要評価項目の達成率を既存のレジストリから傾向スコアマッチングによって抽出されたヒストリカルコントロール群と比較、検討しています。結果ですけれども、2017年4月から2020年6月まで、予定どおりの60例が登録されています。7例が脱落し、53例を対象として傾向スコアマッチングが行われました。最終的にクロロキン群、ヒストリカルコントロール群、それぞれ46例ずつが比較されております。なお、試験開始時のDAS28の値は、両群ともに4.4でした。
有効性の結果ですけれども、主要評価項目である24週時のACR20改善率は、クロロキン群で25例、54.4%、ヒストリカルコントロール群で13例、28.3%で、P=0.007と、クロロキン群で有意に高いという結果が得られております。副次評価項目の中で、先ほど申し上げたACR50、それから、さらに臨床的に明確な寛解という指標とされるACR70の改善率につきましても有意差が示されており、また、DAS28が2.6未満を示した症例数についても有意差が示されました。
安全性につきましては、有害事象、クロロキンは比較的副作用が多いと認識がされているのですけれども、やはり36例、59件と、決して少なくない件数が示されました。その主なものは比較的中等症の感染症、あるいは消化管障害などでして、いずれも既知のものと評価されております。重篤とされたものは2例ありましたが、いずれも本薬剤との因果関係が否定されております。中止例が7例ありましたが、薬疹と下痢が2例ずつということで、あとは別の原因でした。
なお、懸念されていたクロロキン網膜症については今回の研究の症例の中には発生例がありませんでした。
以上を踏まえて評価をさせていただいております。36ページを御覧ください。主要評価項目でありますACR20改善率は、ヒストリカルコントロールと比べて有意に高値であったこと、副次評価項目でも有効性が示唆される結果が示されていたこと、そして、何よりも、この研究の対象者が治療抵抗性の慢性関節リウマチ患者であったということを考慮しますと、ヒドロキシクロロキンは一定の有効性を示したものと考えて「B」と判定致しました。安全性に関しましては有害事象の発生が少なくありませんでしたが、懸念された網膜症を含め、本薬剤による重篤な有害事象がなかったということで「B」としております。技術的成熟度につきましては、内服薬を用いる技術ということですので、「A」とさせていただきました。
一応私からはここまでとさせていただき、総合的評価につきましては、改めて述べさせていただきます。以上です。
○山口座長
ありがとうございました。それでは、続いて副担当の柴田構成員より、御評価をお願いいたします。
○柴田構成員
お手元の資料の37ページを御覧ください。まず、有効性ですが、ここは「B」、「C」と付けるか迷った所ですが、一応、ここでは「E」といたしました。コメント欄に書いてあるものを読み上げますが、ランダム化比較試験ではないものの、マッチングを取った外部対照(HCQ非投与例)との比較によりHCQの有効性が示唆されており、既存薬の一部と同程度と解釈できる可能性があると思いますので、有効性は示されていると考えてよいと思っております。ただし、既存薬の中には、例えば、生物学的製剤ですとか分子標的薬などというような、本剤に勝ると期待されるものもあることと、後ほど補足いたしますが、本薬は、薬効が存在することを示し得るデザインにはなっているのですが、既存薬との相対的な関係を評価するという観点ではデザインがそのようには組まれていないので、そこで、「B」、「C」とできる余地はあるとは思いますが、私は「E」といたしました。
相対的な関係が評価しにくい理由の1つですが、今回、有効性の主たる解析は適切に行われているのですが、これは何ら統計的には問題はないのですが、その臨床的な解釈可能性の点で注意が必要だということです。HCQが投与開始された患者さんは全部で60人いらっしゃいますが、途中で投与が継続できなかった方を除いたり、あるいは今回、レジストリとの比較においてマッチングの対照が見付からなかった患者さんを除いた46例での比較がなされています。この46例を絞り込んだ条件というのは、医学的な条件で絞り込まれたものではなく、1つ目の投与継続できなかったというのは医学的理由ですが、マッチングの対照が見付からなかったというのは純粋に統計学的な都合によるもので、そのような集団における治療効果の推定値というのを、他の臨床試験の成績と比較できるのかという課題があります。余り厳密にぎちぎち言うようなことではなく、効果があるかないかという観点では、そのような比較であっても比較対照と比べて成績がよいので、効果は存在している、プラセボではないことは示されていると思いますので、薬事承認への道は開かれているのではないかと思います。
長くなりましたが、そのような理由で、本剤が駄目だということではなくて、相対的な関係、既存の生物学的製剤ですとか分子標的薬との比較については今後詰めていただければいいのではないかと考えている次第です。
安全性ですが、あまり問題なし、「B」といたしました。短期間の投与・少数例での評価には留まっておりますが、本試験の範囲内ではクロロキン網膜症は観察されておらず、これは研究者の申請医療機関の先生方からされると当然な結果であると思われますが、ほかの事象も含め、当初の想定の範囲内の結果が得られていると解釈いたしました。
成熟度は「B」といたしました。数多くの経験を積んだ医師、又は医師の指導の下であれば実施できるとしております。長期に投与した場合のクロロキン網膜症に対するリスク等については、今後、臨床の現場で使われる中で経験が蓄積していけば解決する問題だと思うのですが、その辺のところは専門の先生方の御判断が必要だと思いますし、また、他剤との相対的関係、ガイドラインの中でどういう順番で使っていただくかなどについては、今後、臨床の先生方に丁寧に詰めていただいて、より適切に使える形でまとめていただければいいと思いますので、そういう観点で「B」とさせていただきました。
長くなりますが、この資料の34ページに結果の概要が載っているのですが、先ほど申し上げたことでちょっと補足しておきます。本試験に登録されたのが60例ですが、外部対照は申請医療機関で蓄積されているレジストリは1,649例ありまして、その中から一定の条件を満たす、臨床試験で言うところの適格基準を満たす患者さんが276名抽出されています。当初は、この登録された60例とマッチング対照60例で比較できればよいということで、43ページのschemeにもそのように書いてあったのですが、必ずしも似たような患者さんがいらっしゃるわけではないので、絞り込まれて46例での比較になったということです。46例ではHCQ群のACR20改善率が54.4%ですが、60例での改善率は45%で、10%ぐらい変わりますので、このように対照の絞り込みでこのくらいの数字が変わるということを前提に読んでいただければいいかなと思います。くどいようですが、そういう状況ではありながらも、本剤の有効性は示唆されていると解釈してよいと判断しております。私からは以上です。
○山口座長
ありがとうございました。それでは一色座長代理から、もし何か追加のコメントがありましたらお願いいたします。
○一色座長代理
柴田先生から、詳細な御説明がありましたが、本研究は盲検化されずにヒストリカルコントロールを用いたものということで、一定の条件下ということではありますが、結果からは臨床的な有効性は示唆されていると考えております。また、安全性についても既知の副作用以外には大きな問題点はなかったと評価ができると思っておりまして、従来の治療に抵抗性を示した患者に対する一定の有用性は示された研究であったと評価をしております。
なお、本医療技術は既に欧米のガイドラインにも記載されている治療法でありまして、さらに医療経済的にも非常に大きなメリットが想定されるというところを踏まえますと、薬事承認に向けての公知申請の資料としては一定の価値があるものとなるのではないかと評価をいたしました。私からは以上です。
○山口座長
ありがとうございました。ただいまの御説明について、何か御質問はありませんか。いかがでしょうか。あまり関係ないかもしれませんが、一色先生、欧米のガイドラインには随分前から載っていて、日本ではあまり検討されなかったというのは、やはり副作用の網膜症のことがあるので、慎重になってきたということなのでしょうか。
○一色座長代理
私も専門分野ではないのですが、クロロキン自体が非常に懸念をされて長く使用禁止薬という位置付けになっていたということで、2015年にSLEの承認が取れるまで、ずっと塩漬けになっていた薬剤だと聞いておりますので、そういうところが原因なのではないかと思います。
○山口座長
ありがとうございました。ほかに何か御質問、御意見はありませんか。よろしいでしょうか。大体、意見は一致しているようですので、それでは、告示番号旧32については、ただいま御審議いただいた結果を取りまとめて先進医療会議に御報告いたします。
続きまして、試験実施計画の変更について、事務局からお願いします。
○医政局研究開発振興課長補佐
御説明いたします。今回、試験計画等の変更申請が3件提出されております。資料3の45ページを御覧ください。関西医科大学附属病院からの申請で、告示番号36「S-1内服投与並びにパクリタキセル静脈内及び腹腔内投与の併用療法」です。適応症は、膵臓がん(遠隔転移しておらず、かつ、腹膜転移を伴うものに限る。)です。
御審議いただく主な変更内容について、46ページを御覧ください。1)試験期間の延長としまして、試験期間、登録期間、いずれも3年間の延長となっています。2)監査機関の決定で、監査実施施設が未定であったが、株式会社アクセライズに決定した。3)参加施設に関する更新。奈良県立医科大学附属病院を削除し、鳥取大学医学部附属病院を追加したとあります。
変更申請を行う理由としまして、1)本研究は2020年2月に開始となるも、COVID-19 pandemicの時期と重なり現在に至っており、患者さんの受診控えや検査の制限の影響があったこと、また、2021年9月からはnab-paclitaxelの米国からの薬剤供給が滞ったことにより試験中断を余儀なくされた。これらの患者集積が難しい状況が重なり、試験開始後2年を経過した時点でおよそ1/3の患者登録となっている(平均月3件登録;登録中断期間を除く)となっています。
一方で、参加施設において先進医療(特定臨床研究)の実施準備が進み、現時点では93%の施設で試験登録が可能になっている。今後少なくとも月3件の登録は確保されると考え、残りおよそ120名の患者登録を行うために、長期の延長ではあるが、3年間の延長とした。今後COVID-19 pandemicの収束の可能性、nab-paclitaxelの供給再開、登録可能施設の増加により、登録患者数の増加を見込んでいる。2)及び3)はお示しのとおりの記載整備です。以上です。
○山口座長
ありがとうございました。本変更内容について、何か御意見はありませんでしょうか。コロナで患者の受診控えとかがあることのほかに、nab-paclitaxelの供給が滞ったということで、随分これは臨床では影響が大きかったのですが、ダブルパンチで症例の登録が思うように進まなかったので延長ということで、いかがでしょうか。何か御意見はありませんか。それでは、ないようですので、告示番号36の変更についてはお認めすることといたします。
続きまして、次の試験実施計画の変更について、事務局より説明をお願いいたします。
○医政局研究開発振興課長補佐
御説明いたします。資料4の47ページを御覧ください。国立がん研究センター東病院からの申請です。告示番号73「シスプラチン静脈内投与及び強度変調陽子線治療の併用療法」です。適応症は、「頭頸部扁平上皮がん(喉頭がん、中咽頭がん又は下咽頭がんであって、ステージがⅡ期、Ⅲ期又はⅣ期のものに限る。)」です。御審議いただく主な変更内容について、48ページ以降を御覧ください。
(1)臨床標的体積(CTV)について下記の記載に変更。変更前は、リンパ節について、咽頭癌、喉頭癌につき、レベルⅡ~Ⅵまでとしておりましたが、変更後はこれらをⅤまでに、また、「両側の鎖骨上リンパ節もCTV subclinicalに含める」と記載しているのを削除しております。
(2)陽子線治療の品質管理・品質保証活動について下記の記載に変更。変更前は、参加施設のうち陽子線治療例登録施設が参加要件を満たすことを確認するためのcredentialing(品質保証活動)では、模擬症例を用いた治療計画のダミーラン、陽子線治療用人体模擬ファントムを用いた線量検証などを行い、基準を満たした施設のみから患者登録を可能とするとしておりましたが、変更後、credentialingでは、模擬症例を用いたコンツーリング評価、共通ROIを用いた治療計画のダミーラン、均質ファントムを用いた線量検証などを行い、基準を満たした施設のみから患者登録を可能とするとしております。
また、変更前は、全登録例に対し、放射線治療開始後早期と治療完了・中止後の時点で、放射線治療規定の遵守に関する評価を行うとしていたものを、変更後は、登録例に対し、放射線治療完了・中止後の時点で、放射線治療規定の遵守に関する評価を行うとしております。
(3)リンパ節領域の照射における記載の明確化。変更前は、強度変調陽子線治療の内容において、リンパ節領域の描出は、お示しのコンセンサスガイドラインに従う。以下の予防的照射領域を加えたものをCTVとするとしていたものを、変更後は、以下の予防的照射領域を加えたものをCTV subclinicalとし、CTV low riskに含むこととしています。
(4)同意説明文書などに施設間で異なることも含めた詳細な費用負担を記載。シスプラチンの薬品代が先進医療費に含まれる点を記載。
(5)強度変調陽子線治療におけるリスク臓器である甲状腺について明記。PRVの記載について削除。
(6)第一症例の登録日の記載、研究責任医師の所属する実施医療機関の管理者の氏名の変更、施設名の変更、誤字、記載漏れの修正などです。
変更申請する理由としまして、(1)臨床標的体積についての変更ですが、両側鎖骨上リンパ節領域およびリンパ節領域レベルⅥは、広範なリンパ節転移のある症例では含めうる領域であるが、他のリンパ節領域に比較して潜在的転移を生じる頻度は少ないと考えられている。そのため、全ての登録例で照射野に含めると規定した場合、食道線量や縦隔臓器への線量が増加する症例があることが懸念される。X線による強度変調放射線治療においても、今回の変更案の規定に基づく予防照射領域設定が一般的であること、さらに、これらの領域に対する予防照射の有無が、本研究で評価する有害事象への影響や有効性評価に与える影響は軽微と考えられることから、予防照射領域設定規程の変更を行った。
(2)陽子線治療の品質管理・品質保証活動についての変更。全ての参加施設を対象に、登録開始前のクレデンシャリング試験として本試験の適格基準を満たす仮想症例の治療計画を実施し、対応策も含め参加施設の治療計画の質を事前に評価している。また、全登録症例で治療終了後早期に同様の品質管理データの提出を求めており、その確認で早急なフィードバックが必要と判断した場合には、当該施設担当者へ連絡することで十分な品質管理・品質保証を行うことが可能と判断している。そのため、全例の治療開始後早期の品質管理データは不要と判断した。
(3)リンパ節領域の照射における記載の明確化。予防照射領域の定義が、CTV(臨床標的体積)との記載のみであったため、CTV subclinicalとわかりやすく分類し、CTV low riskに含めるものとして治療範囲を明確化した。
(4)同意説明文書などに詳細な費用負担を記載。化学療法にかかる費用は先進医療に含まれることを明記した。また、陽子線治療の費用や化学療法の実施に関して、施設間で費用が異なることも含め、費用に関連した記載を明記、修正したことによるもの。
(5)強度変調陽子線治療におけるリスク臓器などの記載。リスク臓器として甲状腺は明らかであるため明記。また、研究実施計画書41ページにセットアップエラー±3mm以上、レンジエラー±3%以上の範囲で不確実性を設定し、治療計画を実施する旨が記載されている。この記載により、リスク臓器に最低3mmのマージンを付けたPRVを作成していることと同義となり、重複する関連記載を削除した。
(6)は誤記修正、記載整備。以上です。
○山口座長
ありがとうございました。本変更内容について、何か御意見はありませんでしょうか。少し専門的な内容ですので、お分かりにくいところがあったかもしれませんが、何か御質問はありませんか。レベルⅥまでかけるというのは少しやり過ぎではないかということ、症例によっては、むしろ有害なことがあるのではないかということで、Ⅴまでに落とすというところがメインだと思いますが。何か御質問はありませんか。後藤先生、どうぞ。
○後藤構成員
後藤でございます。(2)の所で、全登録症例を登録症例に直すという点が、若干、分からないのですが。登録症例全部ではないけれども、場合によってはパイロット的に登録症例についてデータを集めるという、そういう意味だと理解すればよろしいのでしょうか。
○山口座長
事務局の方から何かありますか。
○医政局研究開発振興課長補佐
変更申請する理由の説明のところで、登録例ではなくて全登録例と明記されていますので、これは全登録例と理解して問題ないと思っています。以上です。
○後藤構成員
全登録例を登録例に変えるというのが、今回の変更ではなかったでしょうか。
○医政局研究開発振興課長補佐
御指摘ありがとうございます。記載上そうなっているのですが、申請者のほうでは全登録例として理解して書かれておりますので、こちらに関しては、全登録例ということできちんと解釈が間違わないように、申請医療機関にお伝えいたします。
○後藤構成員
分かりました。変更はないということでよろしいのですね。
○医政局研究開発振興課長補佐
そうです。記載上はそうなっていたのですが、中身は全登録例ということですので、こちらから誤解がないようにということでお伝えいたしますので、よろしくお願いいたします。ありがとうございます。
○後藤構成員
よろしくお願いいたします。
○山口座長
ほかにありませんか。それでは、特にないようですので、告示番号73の変更についてはお認めすることといたします。
続きまして、次の試験実施計画の変更について、事務局から御説明をお願いします。
○医政局研究開発振興課長補佐
御説明いたします。資料5、51ページを御覧ください。国立循環器病研究センターからの申請で、告示番号74、「テネクテプラーゼ静脈内投与療法」です。適応症は、脳梗塞(発症から4.5時間以内のものに限る。)です。御審議いただく主な変更内容について、51ページ下方を御覧ください。
(1)安全性検討フェーズにおける症例登録数の変更。(2)収集データの許容範囲の拡大。
変更申請する理由としまして、(1)試験実施計画書の規定に基づき、安全性検討フェーズとして3例登録した時点で、投与開始後72時間以内の症候性頭蓋内出血や重篤な有害事象の有無について独立安全性評価委員会(IDMC)に掲題し審議を受けた結果、「安全性検討フェーズの当初3例で主たる評価項目である出血合併症の程度は想定範囲を逸脱しないものの、痙攣発現を1例に認めたためさらに3例程度の症例追加が必要」と提言された。試験運営委員会でも症例数の変更が妥当であると判断し、プロトコル作成委員会のもと、安全性検討フェーズの症例数を3例からさらにもう3例程度の症例追加した6例へと変更したため、試験計画全体は223例から226例へと変更になった(ただし、IDMCからの提言により、安全性検討フェーズが6例未満で終了した場合は、226例未満になる可能性もある)。
(2)登録時の収集データであるHbA1cは時間外・休日などに測定できない施設もあり、また、HbA1cは登録の前後3日間で変動する値ではないため、許容範囲を「登録前後72時間の値」と新たに追記した。以上です。
○山口座長
ありがとうございました。本変更内容について、何か御意見、御質問はありませんか。これも特に問題ないと思いますが、ありませんか。それでは、告示番号74の変更についてはお認めすることといたします。
続きまして、先進医療Bの協力医療機関の追加について、事務局から御説明をお願いします。
○医政局研究開発振興課長補佐
それでは、資料6-1、53ページを御覧ください。告示番号65、告示番号76について、それぞれ1件の協力医療機関の追加申請がありました。資料6-2、55ページ以降を御覧ください。事務局において先進医療を実施可能とする保険医療機関の要件(様式第9号)を満たしていることを確認いたしました。協力医療機関の追加として御了承いただきたく存じます。特に御意見がなければ、手続を進めさせていただきます。以上です。
○山口座長
よろしいでしょうか。それでは、事務局は手続を進めてください。
続きまして、先進医療Bの取り下げについて、事務局から御説明をお願いします。
○医政局研究開発振興課長補佐
御説明いたします。資料7、59ページを御覧ください。先進医療の取り下げとして告示番号42の1件、協力医療機関の取り下げとして告示番号21の1件の申請がありました。取り下げ理由の所に記載がありますが、告示番号42については、症例登録及び全症例の観察期間が終了したため、当該先進医療の取り下げをいたします。総括報告書については現在、作成中となっております。また、協力医療機関の取り下げとして告示番号21については、当該医療機関においては、これまで患者等で登録の実績がなく、今後の見込みとしても登録困難であるためとのことです。以上について、特に御意見がなければ、手続を進めさせていただきます。以上です。
○山口座長
よろしいでしょうか。それでは、事務局は手続を進めてください。
本日の議題は以上です。構成員の皆様、全体を通して、何か御意見、御質問はありませんか。特にないようです。では、次回の日程を事務局からお願いします。
○医政局研究開発振興課長補佐
次回は令和4年3月10日(木)の開催とさせていただきます。時間は16時から18時までの予定で、詳細については別途御連絡させていただきます。また、本日の議事録については、作成次第、先生方に御確認をお願いし、その後、公開させていただきますので、よろしくお願いいたします。
○山口座長
それでは、第128回先進医療技術審査部会を終了いたします。ありがとうございました。
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