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2021年7月15日 第119回先進医療技術審査部会 議事録

 
 


(1)日時:令和3年7月15日(木)16:00~

(2)場所:TKP新橋カンファレンスセンター「ホール14D」(オンライン)

(3)出席者
山口座長、一色座長代理、天野構成員、伊藤(澄)構成員、上村構成員、掛江構成員、神村構成員、後藤構成員、坂井構成員、佐藤構成員、真田構成員、柴田構成員、田島構成員、飛田構成員、藤原構成員、松山構成員、平形技術専門委員

(事務局)
医政局研究開発振興課 治験推進室長
医政局研究開発振興課 課長補佐
医政局研究開発振興課 先進医療係長
保険局医療課 課長補佐
保険局医療課 先進・再生医療開発戦略専門官
医薬・生活衛生局医薬品審査管理課 審査調整官


【議題】

1.新規申請技術の評価結果について
2.先進医療の継続の可否及び試験実施計画の変更について
3.試験実施計画の変更について
4.協力医療機関の追加について
5.先進医療の取下げについて
6.申請医療機関からの報告について
7.その他
 

【議事録】

○山口座長
 定刻となりましたので、第119回先進医療技術審査部会を始めさせていただきます。御多忙のところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。本日は、オンラインでの開催となります。
 まずは、構成員に異動がありましたので、御紹介させていただきます。事務局からお願いいたします。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 先進医療技術審査部会構成員に異動がありましたので、御紹介させていただきます。まず、日本医師会より神村裕子構成員です。
 
○山口座長
 神村構成員、一言御挨拶をお願いいたします。
 
○神村構成員
 長島常任理事に代わりまして、今月から私、神村が構成員をさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 
○山口座長
 よろしくお願いいたします。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 ありがとうございました。どうぞよろしくお願いいたします。また、山中竹春構成員が御都合により辞任されております。以上です。
 
○山口座長
 本日の構成員の出欠状況ですが、本日は、伊藤陽一構成員より御欠席の御連絡を頂いております。また、本日は技術専門委員として、平形明人委員に御出席いただいております。本日は17名の構成員のうち、現在のところ15名の構成員にお集まりいただいていることから、本会議は成立していることを申し添えます。
 それでは、配布資料と本日の審査案件の確認を事務局からお願いいたします。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 よろしくお願いいたします。傍聴者の方の撮影はここまでとさせていただきます。御協力のほど、よろしくお願い申し上げます。配布資料について確認させていただきます。議事次第から、座席表、開催要綱及び運営細則、構成員及び技術専門委員名簿と続きます。
続いて、新規申請技術の評価について資料1-1~1-5、先進医療Bの継続の可否及び試験実施計画の変更について資料2、試験実施計画の変更について資料3及び4、協力医療機関の追加について資料5-1及び5-2、先進医療の取下げについて資料6、申請医療機関からの報告、資料7、会議資料の最終ページは68ページです。お手元の資料に乱丁、落丁等がございましたら事務局までお知らせください。
 続いて、利益相反の確認です。申請医療機関との関係、対象となる企業又は競合企業について、事務局から事前に確認させていただいております。今回、資料1の技術について、松山構成員より御報告がありましたが、50万円以下でしたので当該技術の議事取りまとめ及び事前評価に加わることができます。また、資料9の案件について、上村構成員、真田構成員におかれましては非常勤職員として御所属の医療機関、飛田構成員におかれましては御所属の医療機関ということですので、これまでと同様ですが、一時御退席いただければと思います。事前の届出以外に、もし何らかの利益相反がありましたら、この場で御報告をお願いいたします。それでは、該当なしということで承知いたしました。
 今回は、資料を事前にメールでお送りしております。会議資料と区別して、構成員・事務局限りの届出書類等を「タブレット資料」と御案内いたします。なお、会議資料とタブレット資料の内容は異なっておりますので、発言者は会議資料の何ページ、又はタブレット資料の何ページとあらかじめ御発言いただけますと議事の進行上助かります。
 本日はオンラインでの開催となり、構成員の先生方には大変御不便をおかけいたします。御発言いただく際には、はじめにお名前をおっしゃっていただくようにお願いいたします。その他、途中で接続トラブル等がありましたら、お知らせいただきますようお願いいたします。また、Web会議ソフトには手挙げ機能が付いておりますので、こちらも適宜、御活用いただければと存じます。以上です。
 
○山口座長
 では、議事に入りたいと思いますが、本来であれば1番の新規申請技術からなのですけれども、主担当の真田先生がちょっとお遅れになりますので、順番を変えて、2番の先進医療技術の継続の可否について、先にやりたいと思います。真田先生が到着されましたら1に戻りたいと思います。それでは、先進医療Bの継続の可否及び試験実施計画の変更について、事務局からお願いいたします。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 それでは、御説明いたします。資料2の37ページを御覧ください。東京都立小児総合医療センターからの申請で、告示番号55、「ボツリヌス毒素の膀胱内局所注入療法」です。本技術は、本申請医療機関が臨床使用実績の効率化要件に該当するため、使用実績のない状態で申請され、承認、告示されたものです。適応症は、神経因性排尿筋過活動による膀胱機能障害(5歳以上18歳未満の患者に係るものに限る。)です。
 試験の概要については、37ページを御覧ください。こちらの試験ですが、昨年1月に試験が開始されており、これまで3例の症例が登録されております。試験継続の可否の評価に必要な評価項目として、1)試験薬用量レベル1:100U(最大量3U/kg)を開始用量とし、治療後6週間を観察期間として、毒性を観察および評価する。2)まず、レベル1に3症例を登録し、全ての症例で治療後6週間の安全性評価が終了するまで一時的に症例登録を中断する。3)各症例において治療後6週間が経過した時点で、まず担当医師による有害事象評価を行う。3症例の情報が集積した時点で効果・安全性評価委員会を開催し、用量規制毒性(DLT)を含めた安全性評価を行う。4)なお、プロトコール治療の手技中に安全性以外の理由により中止となる等、DLTの評価を適切に行えない症例が生じた場合には、当該薬剤投与レベルに必要症例数を適宜追加する。5)効果・安全性評価委員会により、レベル1の最初の3例でDLTが観察されなければ試験継続可能と判断し、この判定結果を先進医療技術審査部会に提出して試験の継続について承認を得る。その後、試験薬用量レベル2:200U(最大量6U/kg)に症例登録を開始する。以上の内容が試験実施計画書にて規定されています。
 継続の可否に係る独立した委員会の審議結果ですが、研究責任医師の報告によると、投与後6週の評価を終えた時点で、3例中2例で3件の有害事象を認めたが、重篤な有害事象の発生はなく、すべて重症度はCTCAE Grade2で、原病の悪化以外はすべて回復の転帰をとっている。いずれの有害事象も試験薬との関連性はなかったと判断し、ボツリヌス毒素膀胱内の注入療法(試験薬用量レベル1)は安全に施行できたと考えられている。効果安全性評価委員会での審議の結果、実施計画書の変更等を条件に継続可とされ、下記の試験計画変更を行ったことから、試験継続可と判断されたとあります。
 主な変更内容は、マル3~マル6が効果安全性評価委員会の勧告に基づく変更ですが、(マル1)試験実施期間の延長の変更として1年半の延長、(マル2)監査体制の変更、(マル3)ボツリヌス毒素が米国で小児の神経因性排尿筋過活動に適応拡大したことによる変更、(マル4)CTCAEバージョンの改訂、(マル5)観察項目の追加、(マル6)研究計画変更に伴う再同意の必要性の追加、(マル7)異動等による研究組織の変更です。
 変更申請する理由は、(マル1)症例集積に伴う研究期間の変更。新型コロナウイルス感染症等による症例集積状況から、研究期間の延長を要するため変更した。(マル2)監査体制の変更。本試験では当初監査は予定していなかったが、臨床研究における信頼性の確保および臨床研究の対象者の保護の観点から臨床研究により収集された資料・情報の信頼性を確保するために監査体制を整備することとしたことから、監査体制について変更した。(マル3)ボツリヌス毒素が米国で小児の神経因性排尿筋過活動に適応拡大したことによる変更。試験薬であるボツリヌス毒素について、2021年2月に米国FDAは、小児の神経因性排尿筋過活動に適応拡大が認められ、添付文書の記載が修正された。試験薬に関わる重要な変更であり、研究の実施の合理性や患者の利益や不利益などに影響し、また、小児における神経因性排尿筋過活動膀胱患者へ行われた試験の安全性情報が提供可能になったことから、実施計画書や同意説明文書等の関連する記載の修正を要した。(マル4)CTCAEバージョンの改訂。CTCAEが4.0から5.0に改訂されたため、最新のものを活用するために変更した。(マル5)観察項目(血液検査)の追加。膀胱機能の低下をしている患者を対象とした試験のため、尿路感染症と無症候性細菌尿など、その鑑別などのために試験実施上、有害事象の評価に必要と思われる項目として血液検査項目としてCRPを追加した。(マル6)研究計画変更に伴う再同意の必要性の追加。試験変更に伴う再同意の必要性についての記載がなかったため、追記した。(マル7)異動等による研究組織の変更。異動に伴い人員・組織を変更した。以上です。
 
(真田構成員、入室)
 
○山口座長
 ただいまの試験継続の可否及び試験内容の変更ですが、2つのことが含まれています。まずは試験継続の可否ですが、3例で安全性が確認されたので継続してよろしいかということに関して、何か御質問、御意見はございませんか。よろしいですか。一応、重篤なものはなかったようですので、それでは試験継続は認めるということにいたします。
 次は変更内容について、米国NIHで適応が拡大されたことで説明文書を変えるとか、そういうことが書かれていますが、これについて何か御質問はございませんか。よろしいでしょうか。これも妥当なことだと思います。
 あと、症例が3例しか登録されていなくて、もう試験期間が終わってしまうので、これはやはり試験期間の延長もやむを得ないことかと思います。最近、コロナでこういうことは随分起きていて、この後どうなるかちょっと心配なところはありますが、一応、今回の変更内容について、特に御意見がなければ認めたいと思いますけれども、いかがですか。よろしいでしょうか。ありがとうございました。それでは、告示番号55の試験継続および変更については認めることといたします。
 それでは、真田先生がお出でになりましたので、1番の議題に戻りたいと思います。新規申請技術の評価結果について、事務局より説明をお願いいたします。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 それでは御説明いたします。資料1-1の15ページを御覧ください。先進医療Bとして新規に御評価いただく技術は、整理番号116、「遺伝性網膜ジストロフィーにおける遺伝子診断と遺伝カウンセリング」です。申請医療機関は、神戸市立神戸アイセンター病院です。審査担当構成員は、主担当が真田構成員、副担当が田島構成員、伊藤陽一構成員、技術専門委員が平形委員です。
 資料1-5、35ページを御覧ください。審議に先立ち、先進医療を実施可能とする保険医療機関の要件について御説明いたします。1番目の実施責任医師の要件ですが、診療科は眼科、資格は日本眼科学会認定眼科専門医が必要となっております。当該診療科の経験年数は5年以上、当該技術の経験年数は3年以上、経験症例数は不要となっております。
 2番目の医療機関の要件です。診療科は眼科、実施診療科の医師数は不要、他診療科の医師数は日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医(他病院からの参加でも可)が必要となっております。その他医療従事者の配置は不要、病床数は不要、看護配置は不要、当直体制は不要、緊急手術の実施体制は不要、24時間実施体制の院内検査は不要、他の医療機関との連携体制は不要、医療機器の保守管理体制は不要、倫理委員会による審査体制は、年間3回程度開催で必要時に随時開催が必要、医療安全管理委員会の設置は不要、医療機関としての当該技術の実施症例数は不要で、その他として、遺伝カウンセリング実施体制及びエキスパートパネル実施体制(または参加体制)が必要となっております。
 3番目、その他の要件として、頻回の実績報告は不要となっており、厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取り扱いのためのガイダンス」(平成29年4月)及び関係学会による「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」(平成23年2月)を遵守することが必要となっております。以上です。
 
○山口座長
 これらの要件について、何か御意見はございませんか。特にございませんか。伊藤先生、どうぞ。
 
○伊藤(澄)構成員
 教えていただきたいのですが、遺伝カウンセリング実施体制とかエキスパートパネル実施体制と漠として書かれているのですけれども、これについての手順書というのは作られているのでしょうか。若しくは遺伝カウンセリング実施体制というのが何を意味しているのかよく分からないところがあるのですが、教えていただけますか。
 
○山口座長
 何かありますか。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 参加すべき医師の要件については記載がございますが、具体的な人数については、詳細の記載はなかったと承知しております。
 
○山口座長
 それでは、決まり次第こちらに報告してもらうということでよろしいですか、伊藤先生。
 
○伊藤(澄)構成員
 はい。おっしゃるとおりなのですが、遺伝カウンセリング実施体制というのはカウンセラーがいるのかいないのか、そういう具体的なことで書かないとなかなか難しいのではないかなという気がしているので、やはり何らかの形で規定しておかれたほうがいいのではないかと思いました。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 承知いたしました。こちらで確認を取って申請医療機関に申し伝えさせていただきます。
 
○山口座長
 確かに漠として書いてありますので、どういう資格の人がどういう形で参加して体制が整えられたかということを、一度こちらにも御報告いただくということにしたいと思いますが、それでよろしいでしょうか。
 
○伊藤(澄)構成員
 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
 
○山口座長
 ありがとうございました。今のことを確認するということで、様式第9号についてはお認めすることといたします。
 次に、技術の概要と実施体制の評価について、主担当の真田構成員より御説明をお願いいたします。
 
○真田構成員
 真田です。皆様、今日は遅くなり、大変御迷惑をお掛けして申し訳ございませんでした。この技術について御説明申し上げます。概要については、先ほど事務局から御説明がありましたとおりですが、一番分かりやすい図示があります。資料の33、34ページの所を御覧いただきますと、33ページに技術の概要を一枚紙にしているものがあります。こちらを御覧いただきますと、従来の遺伝子パネル技術、先進医療Bに承認された技術と若干異なるのは、左半分の所にゲノム解析のIRDパネル検査システムの部分です。こちらは薬事未承認と書いてありますが、今回の技術はこちらのみを対象としているのではなく、これによって出たデータをエキスパートパネルで解析した上で原因遺伝子を特定し、それをカウンセリングや治療計画等とともに主治医から患者さんに返すというところまでを1つのくくりとして、先進医療技術として申請されているという点です。
 この機械についてはどういう扱いになっているかといいますと、次の34ページですが、この機械の分析性能試験については先進医療とは別の枠組みで行われるということです。それを踏まえた上で、私が今申し上げたところを包括したものを技術として先進医療で行い、その薬事承認・保険収載を目指すというところが今回の技術の特徴です。
 そこについては、遺伝性網膜ジストロフィーという、10の大きな疾患群を含んだ症候群についてそれぞれの原因遺伝子を特定することによって、今この10の疾患はいずれも残念ながら予後としては余り良くないのですが、対症療法や遺伝子特異的な諸方法について、カウンセリングを伴って患者さんに返すことができるようになるという点が有用だということと、それぞれの遺伝子についての原因治療が将来的に登場した場合、実はたくさんの原因遺伝子群のうちの1つは、もうすぐ国内治験が始まるということなのですが、そのような将来的な対応ができることも可能になるというメリットがあります。
 評価としては、18ページにお示ししておりますが、症候性に分類されていた一定の疾患群に対し、原因遺伝子に基づいた確定診断を与える性能の確保を目的とした技術であり、今後展開される遺伝子治療等への橋渡しとなる可能性を含んだ基盤技術という位置付けと認識しました。私は、実施責任医師の体制、実施医療機関の体制、医療技術の有用性等については問題ないものと解釈しました。
 特異的な質問としては、資料26ページから30ページまでにお示ししています。そこについては、10ある診断名ごとにそれぞれの現時点での治療選択や予後についての御説明を頂き、いずれも予後は不良なのだけれども、部分的には遺伝子治療等が海外、あるいは治験などで予定されているということです。それは未承認、適応外のものなのですが。あと、患者さんの情報について電子メール等で交換するということが書かれておりましたので、情報セキュリティについての考え方をお伺いしたところ、妥当な回答が得られたと判断したため、私としては「適」の判断をしております。細かい技術のメリット等については、平形先生からも御説明を頂けると思っております。また、田島先生、伊藤先生の御評価を頂いた後に、総合評価としてのコメントをさせていただきたいと思います。私からは一旦以上です。
 
○山口座長
 ありがとうございました。続いて、平形技術専門委員より、実施体制の評価について御評価をお願いいたします。
 
○平形技術専門委員
 眼科の平形です。網膜の専門医としての評価としては、遺伝性網膜ジストロフィーというのは、網膜色素変性症を中心として、最も治療が今まで何もなかった疾患に対して、最近はかなり遺伝型が表現型と結び付く報告が出てきていて、しかも予後を説明できる段階にかなり出てきております。そして、米国などを中心に、一部の遺伝性疾患に対しては遺伝子治療の認可が始まり、それについて国内でもそろそろ治験が検討されている段階ですので、まず遺伝ジストロフィーの遺伝子診断とカウンセリングに関して第一歩を踏むこの技術に対しては、かなり必要であるという認識です。ここに書かれている実施責任体制は、これは神戸アイセンター、iPSを中心として再生医療をやっている施設ですが、再生医療の目標がこういう遺伝性疾患ですので、その責任体制あるいは医療技術、病院の体制はしっかりできているものです。
 それから、私が質問したのは、31ページにあります。31ページに対象疾患10ということが、かなり遺伝性疾患は多くて、今まで大体100ぐらいの遺伝子異常が出ていますが、最初に書かれていた10疾患のうち2つが、ただ変性症という書き方で、degenerationという書き方でしたので、これだと加齢黄斑変性と一般的に老人になって萎縮する病気、それが全部含まれてしまいますので、遺伝性であるということを意識して直したほうがいいという指摘をしましたところ、2つの疾患に対してdystrophy、いわゆる遺伝性の疾患ということに修正いただきました。ということで、眼科的には、非常に有用な体制であって、医療技術の有用性は非常に高くて、全て適切であると評価させていただきました。遺伝のパネル検査システムとかに関しては、技術専門ではないので、眼科の網膜専門医としてこの技術の有用性を評価させていただきました。以上です。
 
○山口座長
 ありがとうございました。大変分かりやすい御説明をありがとうございました。続いて、副担当の田島構成員より、倫理的観点からの評価について御評価をお願いいたします。
 
○田島構成員
 田島です。倫理的観点から評価をさせていただきました。まず、同意に係る手続、同意文書について、説明文書の内容に不備がありましたので、事前に照会及び指摘をさせていただきました。全て適切に対応されたので、「適」と評価しております。事前の照会、指摘の内容は、会議資料の21ページから25ページに掲載されております11項目で、内容としては先進医療の目的について、先進医療というものについての説明内容、また、この治験の対象となる方々の表記、遺伝カウンセリングについて、遺伝子検査の方法、補償内容、予想される利益と不利益、他の治療方法に関する項目、先進医療の費用、データの保管期限の延長についてなどです。
 次に、補償内容について、当初、補償は一切ないということでしたので、少なくとも医療費・医療手当についての補償は検討していただきたいという要望をしたところ、御検討いただいて補償の対応がされることになっております。対応いただきましたので「適」としておりますが、私のほうでちょっと御回答の内容の見落としがありましたので、修正をお願いしたいと考えている点があります。まず、様式1-1について、タブレット資料の1ページで新旧対照表が示されており、補償について当初、補償金・医療費・医療手当、全て「無」となっておりましたが、この度、全て「有」に訂正いただいています。また、同じタブレット資料の3ページの様式1-1についても、新旧対照表と同様に全て「有」ということで訂正がなされております。
 また、説明文書について、これはタブレット資料1の66ページですが、健康被害に対する補償については、加入する医師賠償責任保険で補償を行いますという記載に訂正されておりますのと、プロトコールについても同様の記載があります。これに対して、先ほど申しました指摘事項、会議資料の23ページですが、補償に対する再検討を求めた項目の回答の所に、医療費・医療手当の補償を行うことを説明文書に追加しましたとなっており、ここでは補償金が抜けております。ここがちょっと整合しておりませんので、補償金について手当がなされているのかどうかをはっきりさせた上で、誤記の訂正をお願いしたいと思います。また、説明文書も保険に従って補償するということではなく、補償金・医療費・医療手当、それらについて具体的に記載をお願いしたいと思っております。以上です。
 
○山口座長
 ありがとうございました。幾つか訂正されていない文書があるということかと思います。続いて、副担当の伊藤陽一構成員が御欠席ですので、試験実施計画書等の評価について事務局から代読をお願いいたします。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 それでは代読させていただきます。資料1-2の18ページの中ほどから19ページにかけて、伊藤陽一構成員に試験実施計画書等について事前に御評価いただいておりますので、代読させていただきます。6の「期待される適応症、効能及び効果」から、16の「個人情報保護の方法」について、いずれも「適」の御評価を頂いております。コメント欄に記載がありますが、「適切に計画されていると思われます」とのことでした。以上です。
 
○山口座長
 ありがとうございました。では、1~16の総評について、主担当の真田構成員よりお願いします。
 
○真田構成員
 真田です。今、先生方より御説明いただいた項目を含め、私の総評としては「適」といたしましたが、先ほど御指摘のあった遺伝カウンセリング等々についても、やはり技術総体の中の一部の品質を成すものなので、その定義をはっきりしていただくということを含め、「適」という評価でいかがかと思います。私としては以上です。
 
○山口座長
 それでは御討議をお願いします。
 
○天野構成員
 天野です。御説明、ありがとうございました。倫理的な観点等も含めて、適切に指摘・修正がなされたものと理解しております。その上で今回、センシティブな内容の疾患を取り扱う試験なので、説明文書について患者の立場から3点、意見を申し述べたいと思います。
 1点目は、タブレット資料の65ページになるかと思います。遺伝カウンセリングの実施の部分で、「予想される遺伝形式や発症の可能性がある血縁者について説明し」という記載があります。また、別の所では家系図を作成するという説明もありました。基本的には研究参加者が意思決定を行うと理解しておりますが、一方で結果によっては、血縁者の検査の取扱いや情報提供の在り方、若しくは意思決定というのは、場合によっては「本人だけでは決められない」とおっしゃる方もいらっしゃいますので、血縁者も含めて行われる場合もあるかと思います。そこで1点目の指摘としては、血縁者についての説明等はどういう予定なのか。恐らくは、まず御本人の承諾を取ってその後ということに当然なると思うのですが、家族との関わりという部分の説明が、ちょっと不足しているかと思いましたので、遺伝カウンセリングの部分で、もし補記が可能であれば補記をお願いしたいと考えました。これが1点目です。
 2点目が、同じくタブレット資料の68ページです。いわゆる不利益の部分で、「患者さんご本人および血縁者において就学や就労、結婚・出産、保険加入等において不利益が起こる可能性が全くないとは言い切れません」という記載があります。これは丁寧に説明していただいていると理解しており、この記載は重要かと思うのですが、更なる補記が必要ではないかと考えました。この説明の意味するところは、例えば米国等であれば、遺伝情報差別禁止法等といった、社会的不利益から擁護するような法整備がされています。しかし現状、日本ではこういったものがないという状況を鑑みて、こういった記載をしていただいていると思います。ただ、一方で、いきなりこういった記載があると、むしろ参加する方が過大に不利益を評価してしまうのではないかというリスクも感じました。
具体的には、例えばこの試験に参加することで直ちにこれらの不利益が生じるわけではないと理解しております。原因となる遺伝子が同定されるものの、その情報はプライバシーとして厳重に秘匿されるわけですよね。それが御本人に知らされ、その後に不利益が生じうるという話になってくるかと思いますので、そういった部分を丁寧に補記していただきたいです。
 あとは、こういったことに対応するために今回、遺伝カウンセリングというものが組み入れられていると思います。もちろん医療関係者の方にとっては、遺伝カウンセリングとはどういったことがなされるかというのは、よくよく御承知でしょうけれども、参加している方については十分な知識がないと思うので、この部分に遺伝カウンセリングが対応可能だということも補記いただければというのが、2点目の指摘です。
 3点目の指摘は、同じくタブレット資料の71ページです。データの二次利用についてということで、「収集データや研究結果を他の機関や他の研究と共有する可能性があります」という指摘があります。これは非常にセンシティブな情報ですし、もちろん匿名化されるものとは理解しているのですが、例えば企業等と共有する可能性がないのか、また、海外の機関と共有する可能性がないのかということについても、分かれば補記をお願いできればと思います。私からは以上です。
 
○山口座長
 ありがとうございました。ほかにありませんか。上村先生、どうぞ。
 
○上村構成員
 上村です。教えていただきたいのですが、結局、これをやることでの臨床的なベネフィットが、よく理解できなかったのです。1つには、予後不良の遺伝子上の変異というのが明らかになれば、予後に対しての説明ができるというのは分かるような気もするのですけれども、治療法があるかどうかというのが、患者さんにとっては、やはりとても重要なことだと思うのです。実際に遺伝子上の変異が見られて、現時点でこの分子標的薬を使うといった治療提案というか、具体的なものが想定されているのでしょうか。
 治験が1個走りそうだという話は、先ほどの説明であったかと思うのですけれども、治験に関して特定の遺伝子の変異を狙ったものなどを、もし想定されているのであれば、その遺伝子変異を狙い撃ちするような検査の仕方でも事足りるわけです。今回のこの検査は、遺伝子の変異を、かなり包括的にスクリーニングを掛けるという話だと思うのです。実際に患者さんが適切な治療を見つけられる確率はどの程度で、もしそれが見つかったときに、想定されている治療があるとすれば、それは治療法としてかなり期待できるようなものなのでしょうか。
 
○山口座長
 真田先生、よろしいですか。何かありますか。
 
○真田構成員
 それぞれの遺伝子がどの程度、予後に対して影響があり、どのような治療が展開されつつあるかということについては、私が質問したところ、申請者からの回答資料の26~29ページまでに御説明を頂いています。今、確実に国内で治験が始まろうとしている疾患遺伝子については1種類と認識していますけれども、そのほかにも海外で既に承認されている治療とか、海外で治験が計画されている治療が複数あります。今までの遺伝子パネルにおいても、結局どのようなエンドポイントだったかというと、有用な治験や臨床試験に誘導できた割合ということで、その有用率を見ていた技術が複数あったというように私は理解しております。現在はそのような状況にはありませんが、近い将来、一定の確率でそのような状況に導かれる患者さんは一定数いらっしゃると考えましたので、従来のパネルと同様のスキームで「適」と判断しました。先生が御懸念のように、どのぐらいの確率でということについては、今は高い確率ではないと認識しております。近い将来の可能性も踏まえて、「適」としたという認識です。
 
○平形技術専門委員
 追加でよろしいですか。眼科の平形です。まず治療に関しては、先ほどちょっとお話しましたが、今では遺伝型と表現型がかなり解明されていて、網膜色素変性症といっても100種類ぐらいあるのです。同じ網膜色素変性症でも20代で失明にまで至ってしまう人、あるいは70~80代になって失明したけれども、それまでは普通に生活ができる人というように、非常にバリエーションが高い。網膜色素変性症は、3,000~4,000人に1人の割合である遺伝疾患で非常に多く、普通の仕事をしている人がどのくらいの進行度で自分の病気が進むのか、それを知っておくことが社会生活の計画、あるいは仕事の計画に随分関わるということが1つあります。
 それから、ロービジョンケアというのがあります。それは「ケア」という名前ですが、ある意味治療の1つで、周辺の視野がなくなった人に対して補助、エイドを使わせる、あるいは歩行訓練をするというものです。また、中央が見えなくなるタイプに対しては、拡大鏡に早くから慣れさせることで、社会生活が随分変わるわけです。このロービジョンケアというのは今、現実にかなり普及してきていて、保険診療にもなっている分野です。
 それから網膜所見。私たち眼科医が診断をする際に、眼底検査をして診るのですが、網膜色素変性症の100種類ぐらいあるパターンが全て類似しているので、そのパターンだけでは、予後に関してどのくらいの進行度であるかを説明し切れない。ですから、ロービジョンケアを更にアドバンスする意味で、遺伝子検索というのは非常に意味があると思います。
 また、先ほどお話にあった遺伝子治療というのは、米国では5歳までにほとんど失明に至る人が、その治療で歩けるようになったということで、『Science』を含めてかなり話題になった治療があります。それが今認可されて、日本でも始まろうとしています。それに近い治療がアメリカでは2種類か3種類、今行われております。それがどんどん進んでおり、治療という意味でもかなり近未来的に可能性があるので、現在この技術は適切な時期であると、眼科医としては考えております。以上です。
 
○山口座長
 大変分かりやすい説明を頂きまして、どうもありがとうございました。伊藤先生、何か御発言はありますか。
 
○伊藤(澄)構成員
 今までは群間を中心とした体細胞変異だったのですけれども、今回の申請は生殖細胞変異なので、少し気にしているのです。平形先生に教えていただきたいのですが、今回は遺伝性の網膜変性障害疾患という方です。しかしプロトコールを見ても、どこで遺伝性と判断するのか、孤発性と区別する方法がどうなのか。これは眼科の専門の先生が見れば、遺伝性なのか孤発性なのかという区別ができるのか。また、生殖細胞変異だと、ペネトレーションレイトというのが問題になると思うのです。そこら辺についてはないなという気がしています。まずは患者さんのリクルートの段階で、本当に遺伝性だと分かるのか、孤発性のような人をリクルートしてくるのかというのが1点です。
 もう1つは、もっと単純なことです。これは神戸だけでおやりになるのか、今後、施設をたくさん広げていらっしゃるのか、どちらかということを事務局にお尋ねしようと思って伺っております。以上です。
 
○山口座長
 では平形先生、最初の質問についていかがでしょうか。
 
○平形技術専門委員
 遺伝性か孤発性かということですが、網膜色素変性症に限定しても、遺伝性の方が常染色体性劣性・優性、伴性劣性、あるいはどうしても孤発性と考えられるものがあります。基本的に両眼が大体同時に特徴的な眼底所見を示しますので、遺伝性は大体眼底所見で分かります。ただ、その中の種類や進行の度合に関しては読めないのが現状です。網膜色素変性症以外の遺伝性疾患においても、大抵眼は両方ありますので、遺伝性疾患の場合は両方が大体並行で、よほど珍しい症例以外は両眼同時に、あるいはほとんど時に差はなく発症して、同じパターンで進むということが非常に特徴的で、degenerationからdystrophyというように区別しております。所見としては遺伝性であることは分かっておりますが、遺伝パターンがどうしても読めないときには、私たちは孤発性と付けております。もう1つの質問は何でしたか。
 
○伊藤(澄)構成員
 いわゆる「浸透率」と言われているものです。
 
○平形技術専門委員
 常劣やいろいろなパターンがあって、色素変性症、あるいはその類縁疾患だけでも100種類の遺伝子が見つかっていて、浸透率が高いものと低いものがありそうなので、どうしてもヒストリーを聞いただけでは分からないのです。その場合、私たちは遺伝性の疾患ではあるけれど孤発性としています。浸透率に関しても、今は遺伝子によってかなり分かっていると思います。
 
○山口座長
 次の質問は、これから施設の展開がどうなるかということですか。
 
○伊藤(澄)構成員
 はい、そのとおりです。
 
○平形技術専門委員
 東京では国立医療センターが、遺伝子解析の全国のセンターになっていますので、神戸センターだけではなくて幾つか大きく扱っている所が、大学だけでも私が知っている中で5つから10はあると思います。ただ網膜色素変性症自体は、全ての施設にたくさんある疾患として受診されるので、もしこれが認められるとなると、臨床遺伝子を持っているような大学病院では、パネルというのがどういうように使えるのか、そこが私には分からないのですが、それが使えれば、臨床遺伝の相談員がいる所であれば、可能ではないかと判断しています。ただ、現状ですぐということで私が思い浮かぶのは、5~10施設の間ではないかという感じです。
 
○山口座長
 事務局から追加はありますか。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 事務局です。タブレット資料の4ページにありますように、現時点で申請医療機関からは名古屋大学医学部附属病院の追加が、もう既に予定されているという状況です。以上です。
 
○山口座長
 ありがとうございました。藤原先生、どうぞ。
 
○藤原構成員
 最初にコメントとしては、私も昔、NGSを使ったがんの網羅的パネル遺伝子検査や先進医療などをやっていましたので、シスメックスさんと組んで将来的にパネル遺伝子検査の保険承認、薬事承認につなげるのであれば、資料の34ページにある分析性能試験を会社のほうでやっていただいて、臨床的な試験を今回の先進医療でやって、それを踏まえて体外診断薬の承認を取ると思うのです。それに対してのハードルは、そんなに高くないし、こういうようにやっていけばつながると思いますから結構だと思います。
 しかし幾つかあります。今、このプロトコールなどもザーッと見ていたのですけれども、まず、NGSを用いた網羅的遺伝子パネル検査の外部認証を受けた臨床検査室という所です。これは多分、理研ジェネシスさんがやるのですが、今、理研ジェネシスさんはオンコパネルかな、私もやった検査を受注している所なのです。プロトコールの中には、衛生検査所の登録とISOの15189の認証を受けていればいいと書いてありましたけれども、いずれもその2つの認証は、遺伝子検査の精査は余り規定されてないような基準なのです。
 がんのときにはアメリカのCLIAとかCAPという、遺伝子検査に特化したいろいろな厳しい基準をクリアしている所ということで、日本では確か理研ジェネシスさんとSRLさんぐらいしか、その認証を受けていません。そこでちゃんとやりなさいということになったので、そこを確認していただく。外部認証というようにぼかすのではなく、明示的にどういう認証か、遺伝子検査に関するちゃんとした認証を受けている所というように、具体名を書いていただきたいと思います。
 それから2つ目です。先ほど伊藤先生も御指摘されていましたけれども、施設基準に一番大事なのはエキスパートパネルの体制、あるいは遺伝カウンセリングの体制です。遺伝カウンセリングの専門家には、人類遺伝学会が認定しているような遺伝カウンセラー、あるいは、癌の場合であれば、遺伝性腫瘍学会(旧家族性腫瘍学会)が認定している遺伝性腫瘍コーディネーターや家族性腫瘍カウンセラーなどがいらっしゃいます。その人たちが関与すれば何も問題はないと思いますが、エキスパートパネルのところが非常に大事です。資料の33ページを見ると、臨床遺伝専門医とバイオインフォマティクスの専門家と遺伝カウンセラーとしか書いていませんけれども、一番臨床的判断を求められる者として、遺伝性の網膜疾患に対する眼科の専門医の先生たちが、ちゃんと入っておかないといけないのです。伊藤先生の指摘を踏まえ、保険医療機関の実施要件の所には、この辺を明示的に書いていただきたいと思います。
 最後は質問です。保険収載までのロードマップを見ると、4歳以上での参加も認めるというようになっています。しかし、こういう遺伝性疾患を子供に対してやるのは非常に難しいところがあります。資料が見切れなかったのですが、アセントなどがあって、子供が遺伝性の診断、遺伝学的検査を受けることに関して、ある程度理解をしてから同意を取るのか、その辺を説明していただければと思うのです。
 
○山口座長
 小児に関して、どなたかお答えされる方はおられますか。確かに4歳ぐらいだと、大変難しいと思うのです。
 
○平形技術専門委員
 眼科の平形です。ほとんどの疾患が多分、二十歳以上でいいと思うのですけれども、米国で最初に報告されたのが、1歳前に発症する重篤な網膜色素変性症なのです。それには明らかに、この遺伝子治療が劇的に有効であったという報告があるのです。しかし、その患者さんの数はものすごく少ないのです。非常に少ないのですけれども、4、5歳までに全く見えなくなってしまうのです。だから、そういうものに対して入れたのではないかと私は想像いたします。ただ、先生がおっしゃるように、その辺は私も煮詰めませんでした。
 
○山口座長
 4歳というか、低年齢の者についてはどのような形で同意を取ったり物事を進めていくつもりかということを、一度向こうにお聞きすることにしましょうか。
 
○藤原構成員
 藤原です。試験を開始するにしても、そういう事例は多分あると思うので、あらかじめちゃんと準備をしておかないと、そのときになって作って倫理審査委員会にかけると、とても時間が掛かると思うのです。そういうものは早めにしっかりと、小児科の先生方と相談されて、IC文書あるいは手順書をしっかり用意しておいていただければいいかなと思います。
 
○山口座長
 ありがとうございました。ほかにありませんか。掛江先生、どうぞ。
 
○掛江構成員
 成育の掛江です。今、藤原構成員から御指摘のあったアセントの件は、私も気になっていたので御質問させていただきたいと思います。タブレット資料の69ページの説明文書内の結果の伝え方の箇所に、「未成年者が遺伝子検査を受ける場合には、基本的に代諾者の意向を確認したうえで未成年者本人に説明をします。結果を伝える時期は、親権者と相談し、決定します」と書いてあるのですが、それしか説明文書には書いていない。プロトコルや、今回はSOPが付いているのでSOPの代諾やアセントの所を確認しますと、「研究対象者の理解力等を考慮のうえ、必要に応じて研究対象者本人からも同意を得る」と明記していただいているのですが、この「本人からも同意を得る」というのと、説明文書の「親の意向を確認した上で本人に説明する」という表現には、かなり乖離がある点が気になっています。
 また、プロトコルというか、SOPをもう少し拝見していきますと、こういう未成年者のケースがある場合、インフォームド・アセントの第12条の2項に、「アセントの手続を行うことが予測される研究を実施する場合には、その内容及び方法を研究計画書に記載する」とあるのです。これは藤原構成員が御指摘くださったとおり、今のところ想定していないという前提なのか。プロトコルには何も詳細が書いていないですし、アセントの文書等も見つかりませんでした。この研究計画のように御家族が対象になってくる可能性が出てくる場合には、普通に未成年者の被検者が存在されることが容易に想定できるのではないかと思いました。にもかかわらず、この段階で準備がされていないというのは、研究者のほうで作成してくださったSOPとも齟齬があるのではないかと感じました。その辺りは理解が足りていないだけかもしれないので、教えていただきたいと思います。
 あと、もう1点だけ追加します。アセントというか、先ほどの69ページの説明だけだと、結局、未成年者の知らないでいる権利や、遺伝子検査を受けないで生きていくという選択肢がなくなるということについて説明されない可能性があると思うのです。その辺りも踏まえて、結果の伝え方の箇所で、アセントの話や未成年者の話に触れる程度でいいものなのか。そもそも同意の取り方、アセントも含めこの研究への参加の意思を誰にどのように確認したらいいか、もう少し別の項目できちんと説明していただかなければいけないセンシティブな問題を含んでいるのではないかと思いましたので、コメントとさせていただければと思いました。以上です。
 
○山口座長
 ありがとうございました。事務局からどうぞ。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 事務局です。アセントの文書に関しては、タブレット資料の81ページと82ページに、年齢ごとに分けて、内容自体はあります。ただ、知らないでいる権利とか、その辺りの詳しい手順書の記載については申請医療機関に申し伝えます。
 
○山口座長
 よろしいでしょうか。
 
○掛江構成員
 資料を見落としていて申し訳ありません。今、アセントの文書を見つけました。ありがとうございます。今補足していただきました点については是非、申請者のほうに御確認いただければと思っております。
 
○山口座長
 ありがとうございました。ほかにありませんか。よろしいでしょうか。幾つか御意見が出ました。まずはエキスパートパネルのきちんとした明文化というか、どういうものであるかということが重要なポイントになり、藤原先生からも御追加がありましたので、これを是非やってくださいということを、1つの条件としたいと思います。
 もう1つは、田島先生からも幾つかありました。特に補償などに関して、指摘どおりの訂正が行われていない部分がまだあるので、これをきっちり直してもらうというのが2つ目の条件です。天野先生からも幾つかありました。例えば、不利益になることもあるかもしれないということだけでは駄目で、遺伝カウンセラーを利用して対応に参加できるとか、3つぐらいありましたので、これも是非申請者に問い合わせて、きちんと分かるように書くということを条件にしたいと思います。
 最後に、掛江先生からも藤原先生からも御指摘があった未成年者の場合に、やはりもう少しきちんとした手順を確立してからやってくださいということも確認したいと思います。今の点については一応条件として付けた上で「適」としたいと思いますけれども、いかがでしょうか。掛江先生、どうぞ。
 
○掛江構成員
 今、慌ててアセント文書を確認させていただいたのですけれども、10~16歳のアセント文書が1枚のみのものになっているのです。これは実際の対象者の理解力のレベルに合わないものではないかと感じます。それこそ民法改正により、18歳が成人と言われる時代になっているわけで、16歳の患者さんにこういう説明で、御本人の遺伝子診断について考えていただくというのは、ちょっと現場感覚と掛け離れているような気がしますので、その辺もできれば申し添えていただければと感じているのですが、いかがでしょうか。
 
○山口座長
 かしこまりました。膨大な資料なので、すぐと言われてもなかなか見られないので申し訳ないです。貴重な御意見をありがとうございます。ほかにありませんか。後藤先生、どうぞ。
 
○後藤構成員
 後藤です。今の点ですけれども、同意取得年齢が原則20歳以上で、例外的に4歳以上という形でいいのかどうかというのが、ちょっとよく分からないのです。つまり、4歳であれば劇的に効果があるのであれば、4歳以上としてきちんとしたプロトコールなどを作るほうが、研究として望ましいのではないかと思います。なぜ基本的に原則20歳以上にされているのかということも、併せて聞いていただいたほうがいいのかなというように思いました。以上です。
 
○山口座長
 正に今、ほとんどの患者さんが20歳以上ということでやるのですけれども、もしそういうことがあるとしたら、きちんと決めてくださいということは、ほかの構成員からも指摘がありましたので、後藤先生のおっしゃるとおりだと思います。それでは、今のような形で条件を付けて、「適」ということでよろしいですか。これはまたこちらへ報告しなければ駄目ですね。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 事務局から御報告させていただきます。
 
○山口座長
 たくさん御意見が出ましたのでよく整理をして、向こうからもきちんと答えていただいた上で、「条件付き適」ということにしたいと思います。活発な御討論をありがとうございました。平形委員からは非常に貴重な意見をありがとうございました。以降の審議は御退席いただくことといたします。
 
                            (平形技術専門委員、退席)
 
○山口座長
 続いて、試験実施計画の変更について、事務局からお願いします。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 資料3です。今回、試験計画等の変更申請が2件提出されております。41ページです。静岡県立静岡がんセンターからの申請で、告示番号15、「術前のS-1内服投与、シスプラチン静脈内投与及びトラスツズマブ静脈内投与の併用療法」です。適応症は、切除が可能な高度リンパ節転移を伴う胃がん(HER2が陽性のものに限る。)です。
 42ページを御覧ください。主な変更内容についてです。1.追跡期間の延長について、2.研究者情報、定型記載の更新とあります。変更申請する理由です。1.追跡期間の延長について。本試験は2015年3月26日に患者登録を開始したが、登録ペースが予想を大きく下回っていたため、2019年8月に適格規準を見直すプロトコール改正を行った(2019年11月13日 第91回先進医療技術審査部会承認)。その後、約半年ごとに進捗を確認したが、昨今の新型コロナウイルス感染症の影響もあり、予定登録期間での予定登録患者数の登録完遂は困難となった。2021年3月16日に、プロトコール「12.7.3.登録不良による試験早期中止」の記載に従って、JCOG効果・安全性評価委員会から試験中止勧告が出され、これ以上の登録ペースの改善は見込めないと判断し、予定登録期間終了日である2021年3月25日にて登録を終了した。登録終了時点での全登録患者は46名であり、登録患者のプロトコール治療分の無償薬剤提供については中外製薬株式会社より了承いただいている。 今後の追跡について、現行のプロトコールの「12.8.試験早期中止後の手続き」では、「試験早期中止となった場合、JCOGデータセンターはすみやかに主たる解析レポートもしくは最終解析レポートの作成を開始する。その後の追跡調査は行わない」と記載されているが、予定登録患者数には満たないものの、先進医療技術として実施した診療に関する長期の有効性と安全性の観察は必要であると考え、患者登録終了後の予定追跡期間である5年間の追跡を行うようにプロトコールを改訂する。全登録患者の術前化学療法と手術が終了した時点で、「主たる解析結果」として公表し、総括報告書として報告する。当初、主たる解析時期として予定していた登録終了後の追跡3年の時点では、追加レポートを作成し、結果公表と報告を行う。長期成績としては、予定通り最終患者登録後5年間の追跡を行い、主として予後の結果を取りまとめ、これを「最終解析結果」として公表し、総括報告書(増補版)として報告する。なお、今回のプロトコール改訂にあわせて臨床研究の終了予定日の日付を正確な記載に修正した。2.誤記訂正、人事異動の反映等の記載整備。以上です。
 
○山口座長
 本変更内容について、御意見はございますか。特にございませんか。それでは、告示番号15の変更について認めることといたします。続いて、次の試験実施計画の変更について、事務局から説明をお願いします。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 45ページの資料4を御覧ください。国立精神・神経医療研究センター病院からの申請で、告示番号50、「反復経頭蓋磁気刺激療法」です。適応症は、薬物療法に反応しない双極性障害の抑うつエピソードです。46ページ、主な変更内容です。1)試験期間の延長。試験期間を2年間延長したことに伴う変更で、日付を明記しています。2)研究分担医師の追加・削除とそれに伴う利益相反情報の更新、3)その他、微細な修正です。
 変更申請する主な理由ですが、1)本研究の目標症例数は、合計96名であり、登録期間2年、4施設共同研究のため1施設当たり年間目標症例数を12名としていた。しかしながら、COVID-19蔓延の影響は予想以上に大きく登録に遅れが生じていた。登録期間2年のうち、国立精神・神経医療研究センター病院8名、東京慈恵医科大学病院1名、慶應義塾病院1例と合計10名にとどまっていた。そのため、登録期間を含めた研究実施期間を2年間延長する。
 なお、登録症例10名のうち2名(1名のみ磁気刺激療法実施、有害事象なし)については登録期間を超過しての登録であり、プロトコールの逸脱であることが分かり、CRBへ報告した。本件は参加者に対する直接的・侵襲的な影響は認められないとのことで、重大な不適合には当たらないとされたとあります。この点は、不適合事案の報告として資料4の別紙にまとめています。2)人事異動等に伴う研究分担医師の変更、利益相反状況の確認、修正が必要であった。3)臨床研究法に基づく記載整備、誤字等の修正が必要であった。以上です。
 
○山口座長
 本変更内容について、何か御意見はございますか。藤原先生、お願いいたします。
 
○藤原構成員
 47ページのNCNPの責任医師からの報告の3)の詳細についてです。ぼやっとしているので、もう少し詳細に修正した文章にしていただきたいのです。本来は試験事務局が登録をチェックしていて、2月28日までの登録期間のところを6月に2例の登録を認めています。その辺りは、例えば、試験事務局とは別に登録を受け付ける機関のSMOやCROなどにやってもらっていて、そこは受け付けたのだけれども試験事務局が後から気付いたのかなど、その経緯をもう少し詳細に書いていただきたいとお願いしてもらえないでしょうか。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 承知いたしました。
 
○山口座長
 おっしゃるとおりで、これは答えになっていません。大して影響がなかったのでよかったという話になっていて、一体、何が悪かったのかがよく分からないので、私も是非、詳細をちゃんと調べてもう一度報告してもらいたいという意見に賛成です。ほかに何かございますか。
 あと、1施設だけ8例であとは1例しか入っていないのですが、これは本当にコロナの影響だったのでしょうか。この頃、何でもコロナで大変だったと言うのですが、努力が足りないのか、あるいは、そもそも計画が無理だったのかという辺りも一度問い合わせて、今後、ちゃんと登録されるのかどうかということも確認していただきたいと思います。ほかに何かございますか。
 それでは、今のことを少し指摘した上で、特に今回の原因についてもう少し解析して出してほしいということを申し添えた上で、告示番号50の変更については認めることといたします。
 続いて、先進医療Bの協力医療機関の追加について、事務局から説明をお願いします。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 51ページの資料5-1を御覧ください。告示番号36、告示番号48、告示番号55、告示番号71について、それぞれ1件の協力医療機関の追加申請がありました。
 53ページ以降の資料5-2を御覧ください。事務局において、先進医療を実施可能とする保険医療機関の要件、様式第9号を満たしていることを確認いたしました。協力医療機関の追加として御了承いただきたく存じます。よろしいでしょうか。特に御意見がなければ、手続を進めさせていただきます。以上です。
 
○山口座長
 よろしいでしょうか。続いて、先進医療Bの取下げについて、事務局から説明をお願いします。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 59ページの資料6を御覧ください。先進医療の取下げとして告示番号5の1件、協力医療機関の取下げとして告示番号15の1件がありました。
 取下げ理由に記載がありますが、告示番号5については、本試験は、予定症例数66例に対して23例を登録した時点から4年半にわたり症例が登録されておらず、コロナ禍の影響で新規症例組み入れが困難であった。また、医療環境が変化しており、頭頸部がんの診断と標準治療が過去の症例と大きく変化してしまった。そのため、「症例登録の著しい遅延」に当たると考え、細胞治療効果安全性評価委員会で審議を受けた。その結果、試験の早期中止の勧告を受けたために、研究実施計画書の記載に則り、本先進医療を取り下げる。なお、総括報告書については提出準備中であるとあります。
 また、協力医療機関の取下げとして、告示番号15については、本試験の新規症例登録が終了したが、当該機関においては症例登録がなく追跡調査を必要としないためとあります。以上について、特に御意見がなければ手続を進めさせていただきます。以上です。
 
○山口座長
 よろしいでしょうか。何か御意見はございますか。特にないようです。続いて、申請医療機関からの報告について、事務局から説明をお願いします。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 議題は、「申請医療機関からの報告について」です。大阪大学医学部附属病院から、告示番号旧17、「周術期カルペリチド静脈内投与による再発抑制療法」に関する御報告です。なお、上村構成員、真田構成員、飛田構成員におかれましては、御所属の機関との関係で、本議題の審議に際し御退席いただきたく存じます。御協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
 
                    (上村構成員、真田構成員、飛田構成員、退席)
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 それでは、資料に沿って御説明いたします。61ページの資料7を御覧ください。研究活動上の特定不正行為による特定臨床研究「非小細胞肺がん手術適応症例に対する周術期hANP(ハンプ)投与の多施設共同ランダム化第Ⅱ相比較試験」(先進医療告示番号旧B17)中止後の被験者保護および再発防止策の進捗状況に関する御報告です。
 次のページです。1段落の3行目です。観察研究にてJANP study参加者の健康観察を継続的に行うことを目的とした新たな研究「JANP study中止後における肺がん周術期ハンプ投与の安全性に関する臨床研究」についての御報告です。2段落目にあるように、JANP study参加者に対して対面での説明を開始し、またオプトアウト文書を大阪大学医学系研究科呼吸器外科学のホームページに掲載した。また、他の参加施設に対して同観察研究の倫理審査を依頼し、6月30日現在、4施設の倫理審査委員会で承認され研究を開始した。ほかの5施設では倫理審査を申請中である。
 大阪大学医学部附属病院(以下、報告書に沿って「当院」とします)では、JANP study参加者57名のうち、48名は現在も当院へ通院されている。通院されている被験者全例に対して、JANP study中止に至る経緯について対面または電話にて説明を行い謝罪した。さらに26名には、観察研究への参加を依頼し、25名から承諾を得た(1名は次回外来受診時に書面を持参予定)とあります。30日以降の重篤な有害事象の発生状況を確認したところ、5名(うち3名が被験薬ハンプ投与群)で入院を必要とする有害事象を確認したが、研究責任医師はいずれも被験薬との因果関係はないと報告したとあります。通院中の被験者は約半年ごとに来院されるため、順次観察研究について説明を行っていく。さらに、当院未来医療開発部データセンターで観察研究用の症例報告システムを7月より稼働予定であり、今後は参加施設も含めて30日以降の重篤な有害事象の発生状況についてシステムを用いて患者情報を収集し、症例報告システムに入力されたデータは、臨床研究事務局で確認を行い、入力状況や報告内容を研究代表者に報告する。研究代表者は、被験薬との因果関係が疑われる場合には、観察研究倫理審査委員会、病院長へ報告する。
 さらに、客観性の担保のため、入力された重篤な有害事象と被験薬との因果関係について、外部委員から構成される観察期間独立安全性モニタリング委員会へ定期的(約2か月ごと)に諮る。研究代表者は、被験薬に関連する重篤な有害事象および観察期間独立安全性モニタリング委員会の審議結果を病院長および認定臨床研究審査委員会へ報告し、必要に応じて、研究代表者は各参加施設の研究責任者と連携し、研究対象者への対応を行う。
 なお、観察研究「JANP study中止後における肺がん周術期ハンプ投与の安全性に関する臨床研究」の進捗状況について、令和3年6月2日開催の認定臨床研究審査委員会へJANP study定期報告の中で報告を行ったとあります。
 次のページです。2.JANP studyにて報告された術後30日以内の重篤な有害事象に関する検討。これまで、術後30日以内に、23件(事務局注:正しくは20件であった)の重篤な有害事象を認め、そのうち各施設の研究責任医師が被験薬投与との因果関係を完全に否定はできないと報告した事象が10件であった。重篤な有害事象については、各医療機関での報告が行われ、迅速に研究事務局より他の実施医療機関へ情報共有が行われた。また、研究実施計画書、独立安全性モニタリング委員会手順書に沿って、独立安全性モニタリング委員会を開催し、以下の点について審議された。
 (1)試験(JANP study)の進捗状況の評価と研究継続または延長の必要性、研究実施計画書改訂の要否。(2)試験で発生した緊急報告対象となる有害事象による本試験の中止または中断の必要性、研究実施計画書改訂の要否。(3)類似薬等によるその他の研究報告等からの新たな重大情報が得られた場合、その情報が試験全体の継続等に与える影響、研究実施計画書改訂の要否。審議の結果、報告された重篤な有害事象に関して、研究継続が勧告されており、当院未来医療倫理審査委員会にて、研究継続が承認されていた。
 JANP study中止に伴い、令和3年3月25日にElectronic Data Capture(EDC)に入力された症例報告書のデータを固定した。EDC確認から、23例(事務局注:正しくは20例であった)のほかに新たに3例において、有害事象によって入院期間の延長が疑われ、当該施設への問い合わせを行った結果、入院期間延長を要した事象と考えられ、術後30日以内に発生した重篤な有害事象と判断した。同3症例については、いずれも手術合併症と考えられる既知の事象であり、研究責任医師は被験薬との因果関係は否定できると判断したとあります。令和3年4月19日に、同3症例を含めて全26例分(事務局注:正しくは23例であった)の重篤な有害事象に関する報告書を外部委員で構成されるJANP study独立安全性モニタリング委員会の各委員に書面にて送付し、発生した事象と被験薬との因果関係についての審議を個別に依頼した。さらに、令和3年6月11日にWeb会議にて委員全員で審議を行った。結果、最終的に被験薬投与との因果関係を完全に否定はできないと判断された事象は4件(低血圧性ショック1例1件、脳梗塞3例3件)であった。重篤な有害事象の発生状況と被験薬との因果関係に関する審議結果については、総括報告書に詳細に記載を行うが、タブレット資料にあります別添資料3にて、同4件例についての審議内容および検討結果を報告するとあります。
 3.再発防止策の進捗状況。1)特定不正行為再発防止策。(マル1)研究活動により得られたデータの共有、保存に関する組織としての体制整備。次のページです。元医員が筆頭著者と責任著者を兼ねていたことから、責任著者にかわり共著者が確認し署名するよう「医学部附属病院における原著論文の確認に関する申合せ」を改訂し、令和3年6月10日開催の医学系研究科教授会、令和3年6月14日開催の病院運営会議にて付議し承認を得た。令和3年7月1日以降に投稿される論文より、本改訂に則り運用を開始する。
 (マル2)研究倫理に関する教育、指導の徹底。一般財団法人公正研究推進協会(APRIN)のeラーニングプログラム(eAPRIN)では、国際雑誌編集者国際委員会(ICMJE)の規定について言及されております。大阪大学医学系研究科及び当院では、教員、特任研究員、医員、技術職員を対象にeAPRIN受講を義務付け、また、大学院生については、修士課程・博士課程ともに1年次に「研究倫理オリエンテーション」を受講するとともに、eAPRIN受講を義務付けている。
 さらに、共同研究機関における適正な臨床研究実施体制の強化を行うために、令和3年5月10日に開催されたOCRネット(大阪臨床研究ネットワーク)の活動の中で、当該特定不正行為およびICMJEの「医学雑誌掲載のための学術研究の実施、報告、編集、および出版に関する勧告」の考え方を含めて、当院で講じていく再発防止策について共有した。
 (マル3)呼吸器外科教室の適正な臨床研究実施支援体制の構築。前項マル1・マル2の対象は全研究者であり、その実施状況を確認する手段も講じているが、その実効性を更に担保し、かつ、適正な臨床研究を指導するため、呼吸器外科学教室の研究者が実施する臨床研究に対して、研究監視指導員2名(未来医療開発部教授1名、講師1名)を配置し、令和3年4月1日より2年間の予定で監視している。主な業務は、以下のポツに記載のとおりです。
 次のページです。令和3年4月1日より呼吸器外科学教室に対する指導を開始し、まず以下の点について確認を行った。(1)CROCO(e-learningシステム)受講状況。CROCOは当院が提供する臨床研究に関するeラーニングサイトであり、研究者は臨床研究を実施するために受講が義務付けられている。今回、呼吸器外科教室に所属する研究者全員のCROCO受講状況および従事する臨床研究の種別につき書面で提出させ、適切に受講していると判断した。(2)教室における研究指導およびデータ確認体制。呼吸器外科教室では定期的な研究カンファレンスが開催されており、現状で研究指導・学会発表・論文投稿に関する指導等を行う体制が構築されていると判断した。 (3)投稿前の元データの内容の確認体制。呼吸器外科教室では、平成30年より論文執筆に関わる臨床データは、電子カルテの症例データ・フォルダに保存し、呼吸器外科データベースとともに教室内の研究者が全員アクセスし確認できる体制を構築していた。学会や論文作成に用いたデータを共有フォルダに保存することで、論文投稿時には、呼吸器外科データベースと比較して、その正確性を検証できると考えられる。基礎研究については、基礎研究カンファレンスにて、必ず元データを掲示し、出席者がスライド内でデータを確認できるように発表させていた。さらに、教授を含めた教官が、基礎研究カンファレンスにて教室内の研究者の実験ノートの確認を行い、実験回数や統計解析についても把握できる体制を構築していた。
 以上、(1)から(3)については、令和3年5月19日開催の病院長が議長を務める臨床研究総括委員会にて審議され、特に是正を求める点はないとした。呼吸器外科教室への指導状況については、2か月ごとに開催される本委員会で継続して報告され、必要に応じ是正勧告を行う。また、審議結果を呼吸器外科教室へフィードバックし、当該教室の全研究者へ周知を行う。
 (マル4)臨床研究データの収集・記録方法に関する手順について。今後、臨床研究データの収集および記録方法に関する手順について、臨床研究総括委員会で、当院および医学部としての方針を定め、令和3年8月を目途に研究者に通知する方針であるとあります。
 次のページです。2)医学系研究科・医学部附属病院の対応改善策。(マル1)特定不正行為に関する大阪大学、医学系研究科・医学部附属病院の情報共有体制の構築。本事案では、研究公正委員会宛てに不正行為の申立書が提出されてから、当院が組織としての対応を審議するまで、2年半を要した。その原因は、大阪大学、医学系研究科および当院の三者間での情報伝達の不備であり、その結果、本件が臨床研究に与える影響等について、当院で研究対象者保護の観点から議論することが遅れたものと考えられる。また、不正行為の調査にあたって、大阪大学研究公正委員会は当該論文の共著者に対して聞き取り調査の実施や元データの提出を指示していたが、特定不正行為と断定される前の調査段階において、共著者自らが論文疑義について相談できる体制はなかった。
 生命科学分野における論文不正においては、その論文を参考文献や根拠論文として他の臨床研究や臨床試験が実施されている可能性がある。また、臨床試験においては、研究対象者に好ましくない影響を与える可能性があり、特定不正行為が確定していない疑いの段階においても、関連する研究の中断・中止や、研究対象者への即座の対応が求められる場合がある。当院では、臨床研究に関する研究不正への対応マニュアル新版の運用を、令和2年12月10日の医学部教授会において未来医療開発部臨床研究センター長から説明した上で開始した。研究不正の情報が大阪大学、医学系研究科または当院のうちいかなる研究不正等告発窓口に通報された場合にも、その情報が本マニュアルに沿って速やかに医学系研究科長および病院長へ報告され、病院長が委員長を務める当院臨床研究総括委員会において、臨床研究等への影響について検討し、新規組み入れ中止、さらに研究の中断、中止等の対処が可能である。なお、緊急時においては、病院長は、臨床研究総括委員会に諮ることなく研究者等に命令できる旨、委員会規程に明記し、ガバナンスの強化を図った。これは別添資料6を御覧ください。この臨床研究に関する研究不正への対応マニュアル新版を運用することで、以下のような改善点が挙げられます。
 ・研究不正等告発が、病院以外の医学部や本部事務機構の窓口で行われた場合においても、臨床研究に関連している事案であれば、大阪大学研究公正委員会が予備調査を実施する時点で医学系研究科長・病院長に通知され、申立て早期に臨床研究総括委員会で組織として対応策等が検討され、必要に応じて速やかに厚生労働省等関連部署へ報告される。
 ・予備調査において、研究不正の疑義を申し立てられた論文について、臨床研究との関連の有無について、被申立者が所属する(又は所属していた)部局の長が行うことで、医学系研究科以外で告発された案件であっても、臨床研究に関連する場合は、当院で検討することができる。
 ・病院長が、新規組み入れ中止、研究の中断、中止等を早期に判断し、研究対象者保護を優先した対応が速やかに行われる。
 以上のように、研究不正等告発窓口から研究公正委員会等への情報の流れの中で、秘密保持を確保しつつ、臨床研究や臨床試験に関連する生命科学分野の論文不正疑い案件について、迅速に医学系研究科長および病院長へ報告される。医学系研究科長および病院長は、研究不正の疑義を申し立てられた論文と臨床研究との関連の有無について、被申立者が所属する(又は所属していた)研究室や診療科の長と連携して対応を行い、必要に応じて、臨床研究総括委員会は当該論文の関係者より意見を聴取する。さらに、医学系研究科以外で告発された案件であっても、医学系研究科長、病院長および臨床研究総括委員会は、被申立者が所属する(又は所属していた)部局の長と連携して同様の対応を行う。以上のように、医学系研究科長および病院長、さらには病院長が主催する臨床研究総括委員会の指示の下、当院は医学系研究科および生命科学に関わる研究科とともに、研究不正の疑義を申し立てられた論文と臨床研究の関係を速やかに審議し、組織としての対応を迅速に行い得ると考えているとあります。
 4.継続的な報告のスケジュールについて。1)被験者保護のための観察研究結果についての報告、2)再発防止策の進捗状況についての報告ですが、3)に記載のとおり、JANP studyに関する総括報告書を作成し、令和3年10月には認定臨床研究審査委員会および先進医療技術審査部会へ報告する予定であることから、その際とその後6か月を目途に、これらを認定臨床研究審査委員会および先進医療技術部会へ報告する予定です。
 5.当該論文の撤回について。当院元医員(医師)/国立循環器病研究センター元室長が発表し、特定不正行為と認定された臨床系論文2編については、令和2年11月に主著者(元医員)より学術雑誌編集社へ論文撤回の申出を行い、文献マル1については日本外科学会で審議中であり、マル2については撤回作業が終了した。
 次のページです。特定不正行為と認定されたJANP studyの根拠論文については、令和3年5月に国立循環器病研究センター理事長名で雑誌編集社へ論文撤回の意向を報告し、共著者より論文撤回についての同意を取得し、撤回に向けた手続きを開始した。以上です。
 
○山口座長
 本件について、何か御意見はございますか。藤原先生、お願いいたします。
 
○藤原構成員
 報告書の63ページの術後30日以内の重篤な有害事象に関する検討の所について、日時などがよく分からない。つまり、既にJANP studyの中で報告されていた23件(事務局注:正しくは20件であった)の重篤な有害事象について、新たに独立安全性モニタリング委員会でもう一度検証し直したと理解しました。その辺りは、読んでいて非常に分かりにくいと思いました。
 特に、JANP studyをやっている最中にも重篤な有害事象はちゃんと報告されていて、効果安全性評価委員会等で検証されて、ハンプ群に重篤な有害事象が起きていないということは見ていたはずなので、その辺りにアドオンして、後付けで、独立安全性モニタリング委員会でもう一遍見てもらったということが分かるような追記をしてほしいと思います。
 それから、今回、EDCを確認して新たに3例出てきたと書いてあります。最終的に3例と、63ページの下のほうに、被験薬投与との因果関係を完全に否定できないと判断された事象が4件あったというふうに書いてありますが、その重複の度合いがよく分かりません。新たに3件出たけれども、結局その人たちは、責任医師が、因果関係がないと判断して、それについて独立安全性モニタリング委員会でも関係ないと言われているのであれば大きな問題にはならないと思うので、事実関係を詳細に記してほしいと思います。
 それから、JANP studyの一番の問題点は、68ページにある国立循環器病研究センターからPNASに出したペーパーです。この根拠論文は、基礎研究部分がねつ造と言うか改ざんでしょうか。研究不正をやられたということで、今回、論文撤回までいったということは非常に好ましいと思います。PNAS側が最終的に論文撤回したら大騒ぎになると思いますので、いつ撤回されたのかということを早めに研発課に報告してくださいということ。
 それから、これは先進医療技術審査部会の仕事の対象からは外れるのかもしれませんが、この根拠論文がねつ造された経緯がみんなに大きな迷惑を掛けたので、こういうことが二度と起きないように国循の研究所がいろいろな対策を練られていて、恐らく、これは文科省に報告しているのではないかと思いますけれども、報告しているのであれば報告しているという文章を、我々にはその是非を判断する権限がないと思うので、国循がどういうことを文科省に報告しているのかを別途教えていただければと思います。
 
○山口座長
 ありがとうございました。文科省へ報告しているかどうかを確認してください。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 承知いたしました。
 
○山口座長
 それから、少し分かりにくいのですが、タブレット資料の657ページ(事務局注:別添資料2)にまとめて出ていて、658~666ページ(事務局注:別添資料3)に詳細が書いてあります。これを見ると、結構、低血圧を起こして脳梗塞が起きている例があります。このときの判断では、この薬剤はもともと血圧が下がる副作用があるので、予期された有害事象になっているわけです。研究が有意義であるという前提に立てばやむを得ないことかもしれませんが、本来、やっても意味がなかったかもしれない薬剤を投与してこういう有害事象が起きるのは、例えば、補償の対象になるかもしれませんし、その辺りも一度検討してもらいたいと思います。
 ほかに何か御意見はございますか。これを見ると、確かに、この薬剤は結構血圧が下がるので、脳梗塞を起こしやすいと思います。そういうリスクを冒したとしてもベネフィットがあればいいのですが、根拠が崩れたということになってしまうと、参加者にとっては単に危険なことをやったにすぎなくなってしまうので、余りよろしくないのではないかと思います。多くは回復していますが、一部で視野の障害が残ったりしていますので、その辺りも検討してほしいと伝えたいと思います。ほかに何かございますか。
 それでは、先ほどの藤原先生の御指摘も含めてお返ししたいと思います。ほかに御意見がなければ、原則的には御報告のとおりに進めていただくということでよろしいかと思います。それでは、申請医療機関からの報告については以上といたします。上村構成員、真田構成員、飛田構成員はもうおられないということですので、このまま進めさせていただきます。
 本日の議題は以上ですが、構成員の皆様から何か御意見、御質問はございますか。ないようでしたら、事務局から次回の日程をお願いします。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 次回は令和3年8月19日(木)の16~18時までの予定で、場所については別途御連絡させていただきます。また、本日の議事録については、作成次第、先生方に御確認をお願いし、その後、公開させていただきますのでよろしくお願いいたします。
 
○山口座長
 皆さん、長時間にわたって熱心な御討論をありがとうございました。それでは、第119回先進医療技術審査部会を終了いたします。どうもありがとうございま
した。
 

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