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2021年5月20日 第117回先進医療技術審査部会 議事録

 
 


(1)日時:令和3年5月20日(木)16:00~

(2)場所:TKP新橋カンファレンスセンター「ホール13A」(オンライン)

(3)出席者
山口座長、一色座長代理、天野構成員、伊藤(澄)構成員、伊藤(陽)構成員、上村構成員、掛江構成員、後藤構成員、坂井構成員、佐藤構成員、真田構成員、柴田構成員、田島構成員、長島構成員、飛田構成員、藤原構成員、松山構成員

(事務局)
医政局研究開発振興課長
医政局研究開発振興課 課長補佐
医政局研究開発振興課 先進医療係長
保険局医療課 先進・再生医療開発戦略専門官
医薬・生活衛生局医薬品審査管理課 審査調整官


【議題】

1.総括報告書の評価について
2.先進医療の継続の可否について
3.協力医療機関の追加について
4.申請医療機関からの報告について
5.その他
 

【議事録】

○山口座長
 定刻となりましたので、第117回先進医療技術審査部会を始めさせていただきます。御多忙の折、御参加いただきましてありがとうございます。本日はオンラインでの開催となります。
 今回より、先進医療技術審査部会の新しい構成員の方がお出でになりますので、まず御紹介させていただきます。事務局からお願いします。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 先新医療技術審査部会の構成員に異動がございましたので、御紹介させていただきます。5月6日より着任された坂井千秋構成員でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 
○坂井構成員
 坂井でございます。よろしくお願いいたします。所属は神戸市立医療センター中央市民病院で、専門科は脳神経外科でございます。特に、カテーテルを用いた脳血管内治療を専門としております。どうぞよろしくお願いいたします。
 
○山口座長
 よろしくお願いします。お会いしたかったのですが、残念ながらオンラインです。いつかお会いできるかと思います。
 
○坂井構成員
 是非、機会がございましたら、よろしくお願いいたします。
 
○山口座長
 本日の構成員の出欠状況でございますが、山中竹春構成員より御欠席の御連絡を頂いております。本日は18名の構成員のうち、現時点で16名お集まりいただいておりますので、本会議が成立していることを申し添えます。
 それでは、配布資料と審査案件の確認を事務局からお願いします。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 傍聴者の方の撮影はここまでとさせていただきます。御協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
 配布資料について確認させていただきます。議事次第、座席表、開催要綱及び運営細則、構成員及び技術専門委員名簿と続きます。続いて、総括報告書の評価については、資料1-1から資料1-3、先進医療Bの継続の可否に係る審議結果の報告については、資料2、協力医療機関の追加については、資料3-1及び資料3-2、申請医療機関からの報告は、資料4です。会議資料の最終ページは48ページとなります。お手元の資料に乱丁、落丁等がございましたら、事務局までお知らせください。
 続きまして利益相反の確認ですが、今回は特に御報告すべき利益相反はありませんでした。事前の届出以外に、もし何らかの利益相反がございましたら、この場で御報告をお願いいたします。それでは、該当なしということで承知いたしました。
 また、今回は資料を事前にメールでお送りしております。会議資料と区別して、構成員、事務局限りの届出書類等を「タブレット資料」と御案内いたします。なお、会議資料とタブレット資料の内容は異なっておりますので、発言者は「会議資料の何ページ」又は「タブレット資料の何ページ」と、あらかじめ御発言をいただけますと、議事の進行上助かります。
 本日はオンラインでの開催となり、構成員の先生方には大変不便をお掛けいたします。御発言いただく際には、初めにお名前をおっしゃっていただくようにお願いいたします。その他、途中で接続トラブル等がございましたらお知らせいただきますよう、お願いいたします。また、Web会議ソフトには手挙げ機能が付いておりますので、こちらも適宜、御活用いただければと存じます。
 
○山口座長
 では、議事に入りたいと思います。総括報告書の評価結果について、事務局より御説明をお願いします。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 資料1-1の15ページを御覧ください。先進医療Bの総括報告書に関する御評価を頂きますのは、告示番号 旧11「FDGを用いたポジトロン断層撮影によるアルツハイマー病の診断」です。申請医療機関は国立研究開発法人国立長寿医療研究センターです。審査担当構成員は、主担当が伊藤澄信構成員、副担当が山中構成員となっております。
 医療技術の概要です。目的として、アルツハイマー病(Alzheimer's disease,AD)の診断における2-deoxy-2-fluoro-18F-D-glucopyranoseを用いたPositron Emission Tomography(FDG-PET)の有用性を確立するために、ADとFrontotemporal lobar degeneration(FTLD)を対象とした前向き多施設共同研究です。臨床診断により、AD、FTLD、AD/FTLD以外のいずれに該当するか臨床診断により鑑別する。適格基準を満たし、同意取得したAD、FTLDの被験者に対し、4週間以内にFDG-PET検査、脳脊髄液(Cerebrospinal fluid,CSF)検査を行う。12か月後に神経心理検査、MRI検査を再評価する。登録時のFDG-PETについて、臨床診断、FDG-PET以外の検査結果、臨床経過を全て盲検化した上で、視察による画像評価、定量的関心領域(ROI)解析を行う。1年間の臨床経過を考慮した最終的な臨床診断を基準診断として、FDG-PET検査の診断能を評価する。
 2つ目の○、主要評価項目は、ADとFTLDの鑑別診断におけるFDG-PETとCSF中のp-tau181の感度の差。3つ目の○、副次評価項目は記載のとおりです。4つ目の○、目標症例数は190例です。
 資料1-3、25ページを御覧ください。中程にあるように、まずは臨床診断による鑑別を行い、FDG-PET検査、髄液検査を行い、経過観察の後、1年間の臨床経過を考慮して臨床診断を再評価し、診断名をブラインドした上で、画像評価、視察及びROI解析をした結果と比較することで、鑑別診断の診断能を検討する。主要評価項目としては、ADとFTLDの鑑別診断におけるFDG-PETと髄液p-tau181の診断能の差となっております。
 16ページに戻ります。医療技術の試験結果としては、有効性解析対象集団であるFAS(Full analysis set)と安全性解析対象集団は一致し、AD群89例、FTLD群19例、両群合わせて108例でした。本試験は十分な検出力があると考えられた、とございます。
 1つ目の○の有効性の評価結果として、FDG-PETによる診断の感度は94%、特異度は78%、正診率は92%であった。それに対して、p-tau181による診断の感度は62%、特異度は79%、正診率は65%であり、主要評価項目である感度はFDG-PETのほうが32%高く、副次評価項目である正診率は、FDG-PETのほうが27%高かった。上記の結果より、FDG-PET検査の診断能力はp-tau181よりも高く、有用性があると考えた。
 2つ目の○、安全性の評価結果として、FDG-PETが実施された135例のうち19例(22件)に有害事象が発現したが、FDG-PET検査との因果関係は、不明の1件(頭頂部から背部にかけての鈍痛感)を除き、関連なしであった。また、重篤な有害事象が2件に発現したが、いずれも髄液採取による低髄液圧症候群であり、FDG-PET検査との因果関係はないと判断された。
 3つ目の○、結論としては、本試験により、ADとFTLDの鑑別診断におけるFDG-PETの診断能(感度と正診率)は、CSF中のp-tau181よりも高く、FDG-PETの安全性についても問題ないことが示された。資料1-2の21ページ以降に、構成員の指摘事項に対する回答を付けております。
 
○山口座長
 では、本技術の評価につきまして、主担当の伊藤澄信構成員から御説明をお願いします。
 
○伊藤(澄)構成員
 評価の「その他」と書かせていただいておりますので、その説明からいたします。アルツハイマー病というのは、Aβの1から42が低下したり、リン酸化Tau蛋白が上昇したりということがバイオマーカー的には分かっている病気で、一方で、前頭側頭型認知症というのは、前頭側頭葉に限局した進行性の神経疾患で、認知症はあるのですが、Aβ42が減少はするのですが、p-tau181は上昇しないので、髄液診断として、p-tau181が使われていますが、それに比べて、このFDG-PETのほうが有効であるということを示そうとした試験です。
 ここで一番問題にしたのは、タブレット資料の47ページを御覧いただきますとお分かりになるのですが、FASとして2割ぐらいが除外されている。FASの除外が2割されている最大の理由が、Aβ42が正常な人を除外した上で評価していることにあります。
 そのことで、総括報告書を書かれている研究者と随分やり取りをいたしておりますが、最後まで納得がいくような状況、私の理解では、FASというのは、診断時に、PET検査をされた人を全部評価するのではないか、それがこちらの評価表の中でFASとして評価されているのは、PPSに相当する形で評価されているので、この数値だけをもって総括報告書を評価するのはなかなか難しいのではないかと思って、やり取りをさせていただいた結果、「評価がなかなか難しい」という書き方にさせていただいています。
 本来、こういったことについては統計学者、生物統計の担当者からの意見だろうと思ってはいるのですが、そのことも含めて、山中先生のコメントを御覧いただければと思います。Aβ42が正常範囲であったものが除外されるような状況で、有効であるというデータだけで本試験の有効性を判断するのは難しいという評価にしています。
 安全性に関しては特に問題はないですし、FDG-PETですので、特に問題があるものではないと思います。
 総合的なコメントとして書かせていただいておりますが、試験そのものの構築の仕方と評価の仕方について納得しにくいと総合的なコメントを書いておりますが、2012年には認められたリン酸化Tau蛋白そのものは、それほど精度の高いものではないので、それと比較した試験結果から、FDG-PETが臨床的にも大変有効であると断言するのはなかなか厳しいのではないかということを、まとめた形で薬事承認の評価にさせていただきました。こういった評価に関しては不本意な部分もありますが、今の率直な感じだと思っておりますので、このまま部会に出させていただきました。
 
○山口座長
 続いて副担当の山中構成員が御欠席ですので、評価の代読をお願いします。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 代読いたします。資料1-1、19ページを御覧ください。有効性についてはB、安全性についてはA、技術的成熟度についてはA。コメントとして、「今後の有望な診断法になりえると考えるが、症例数の点から本試験のみで感度・特異度を十分に評価することは注意を要する(特に特異度)。また、135例のうち、解析対象が108例となっており、20%(27/135)が解析除外例とされた。少なくない割合であるが、この解析除外の臨床的な妥当性について評価することが必要と考えます。有害事象の頻度や求められる技術的成熟度については、特段問題ないと考えます」。以上でございます。
 
○山口座長
 伊藤澄信構成員から、追加のコメントがあるようでしたらお願いします。
 
○伊藤(澄)構成員
 先ほど、思ったことは全て述べましたので、結構でございます。
 
○山口座長
 私から質問させてもらいたいのですが、伊藤先生は、何とも評価し難いということでした。一方山中先生は、ある程度の意義はあるというような判断になっていて、ここのところが違うと思います。FDG-PETを使えば脳脊髄液を取るという侵襲的なことをやらなくても、ある程度の診断能力が上がるということを目指して、それはある程度評価されたということなのでしょうか。あるいは、それは全く分からないということなのでしょうか。その辺りがちょっと分かりにくいので、説明いただけると有り難いのですが。
 
○伊藤(澄)構成員
 もし脊髄液を取らなければ診断が付かない病気というのであれば、FDG-PETを使って診断できるということは大切で、侵襲性の面からも大変意味があると思うのですが、最後の所に書きましたが、どうしても脊髄液を取らなければ診断の鑑別が付かないというわけではないと思います。この試験結果から、今現在、保険収載されている検査の代わりになるから、有効だから認めろというロジックにはならないのではないかと書いたのが、最後のところです。
 臨床的には、脳脊髄液を取らなくても鑑別ができ得る。しかも、これを見る限り、1年間フォローしているわけですが、1年間フォローする中に、Aβが正常値の人を外すという操作をして、こういった評価をしているところもあるので、自分に都合の悪いデータを排除して、よい結果が出ましたと言っているようにも、どうしても見えてしまうので、このままで評価するのは困難という書き方をさせていただいています。
 
○山口座長
 大変よく分かりました。
 それでは、ただいまの御説明について、何か御質問はありませんか。
 
○柴田構成員
 伊藤先生のコメントと山中先生のコメントを踏まえて、コメントさせていただきます。この試験については、デザインが妥当かどうかという話と、結果を踏まえて臨床的な有用性をどう解釈するかという話と、今後、このものがどのような開発ステップを踏んでいくのが妥当かという話と、3つあると思います。
 デザインについてですが、ここは私は少し伊藤先生とは考えが違い、プライマリーエンドポイントの感度の評価については、この試験のデザインは妥当です。FASで評価しないといけないというのは、診断方法の評価のプロセスを考えたときに不自然な話で、感度・特異度というのは、ゴールドスタンダードを決めて、そのゴールドスタンダードに対して当たったか当たらなかったかというのを判断するので、プライマリーエンドポイントの感度については適切です。たくさん除外例があることも適切です。
 ただし、伊藤先生の御指摘もごもっともで、それは診断能という漠然とした表現で申請医療機関の先生がおっしゃっていますが、具体的には陽性的中率とか陰性的中率というのは、このデザインでは評価できませんし、伊藤先生がおっしゃっているように、たくさん外されているところで、陽性的中率、陰性的中率は評価できません。この試験では陽性的中率、陰性的中率は評価していませんが、実は正診率を入れていて、正診率は伊藤先生の懸念を考慮した上で計算しないといけない数字です。
 ちょっと整理しますと、感度の値はそのまま評価していいです。一方、正診率は過大評価されているので、この数字に基づいて結論付けるのは難しいということになると思います。
 このようなデザインで抜ける人が出てくること自体は、診断方法の評価が、まずは感度・特異度を押さえて、次に陽性的中度、陰性的中度あるいは正診率を押さえて、その次に臨床的な有用性を評価するというステップを踏んでいくものだと考えるならば、この試験自体は妥当だったと思います。
 先ほどの2点目の話に進みますと、この結果を踏まえて、感度はちょっと上がっているけれども、それが臨床的なコンテクストで使ったときに、正診率がどうなるか、あるいは陽性的中率、陰性的中率がどうなるかということが今は分からないので、そこまで過大な評価をしてはいけないという話になると思うのです。その点については、私は伊藤先生と同じ意見です。
 また、山中先生がおっしゃっているように、特異度のほうは数が少なくて、まだ十分に押さえられていませんし、この結果に基づいて、すぐに保険収載したらいいですというエビデンスではないと思います。
 3点目ですが、この試験が最初に提案されたときには、ここまで除外される人は多くないのではないかと思われていたと思うので、今後、このものの評価をする次のステップの試験の組み方が難しくなったと思います。どういう患者を対象に、次のステップの評価をすればいいのかが難しくなったので、感度が上がって期待が見込まれるというところまではいったけれども、次のステップは慎重に考えて試験を組まないといけないと思いますし、これは言いすぎかもしれませんが、このままの結果で、すぐに先進医療Aに持ってきたらいいのではないかという話になるのはいきすぎだと思います。
 その点については、この技術が認められた際の先進医療会議の場で、担当された福田先生が、診断が精度だけでなく適切な診断が行えることによるメリットを評価して保険導入の議論をすべきだとコメントをされていますが、正に、その議論のための1つ前のステップとして、伊藤先生が御指摘されているような、除外例がたくさんあるような状況でのデータに基づいて診断が行えることによるメリットを評価することは難しいので、そこは工夫しないといけないという状況になっていると思います。長くなりましたが、以上がコメントです。
 
(真田構成員、入室)
 
○山口座長
 貴重なコメントをありがとうございました。大変よく分かりましたが、大変複雑でちょっと理解していないところもあるのですが、皆さんから何か御質問とか御意見はございませんか。伊藤先生から追加はありませんか。
 
○伊藤(澄)構成員
 正直、今のコメントを1か月ぐらい前に悩んでいるときに、柴田先生から頂きたかったなというのが、今の率直な気持ちです。なかなか統計の専門家からの御意見が頂けない中で、この評価をどうしようかと1か月間、悶々と事務局と一緒に苦しんでいたというのが正直なところですので、そういう意味で、大変すっきりしたコメントを頂いたと思っております。
 
○山口座長
 いつも難しい案件をご検討いただきありがとうございます。ほかにございませんか。
 
○上村構成員
 発言の前に、1点。実施機関の1つに大分大学が入っていることを見逃しておりまして、私の名前が入っているのですが、質問させていただいてよろしいですか。
 
○山口座長
 大丈夫ですので、どうぞ。
 
○上村構成員
 Aβの低い人を除外して解析されたということですが、それも入れた状態での解析というのは、どこにもないのですか。されてもいないということなのでしょうか。
 
○伊藤(澄)構成員
 されていません。
 
○上村構成員
 それはどうなのかというのは、非常に興味はあるのですが、そこは照会事項を出される中でも、その辺の具体的な数字は御覧になっていないということですね。
 
○伊藤(澄)構成員
 はい。多分、かなり詳細な生データに近いデータもあるので、自分で、再構築しようと思えばできないわけではなかったと思ってはおりますが、臨床的な観点から、感度・特異度のイメージがどうしても強くて、柴田先生がおっしゃったとおりなのですが、そういった意味で、自分の都合のいいデータだけを取り出して評価するというのは、なじめなかったので、そこは随分やり取りをしました。
 正直、もうちょっと強いやり取りの文書があるのですが、そこは今回公開させていただいてないのですが、最終的にデータの再解析をするしないのやりとりをしています。先方も統計解析書にないデータを別々に作るのはいかがなものかと。おっしゃるとおりなのですが、そういった仮のデータも見ていないので、こういった表現をさせていただいています。
 
○上村構成員
 結局、それはそれで、現時点では、そういうデータセットだということだと理解したのですが、そもそもの話で、このFDG-PETをして、アルツハイマー病と診断したという話なのですが、具体的に画像上の基準のようなものをもって診断をされているのですか。つまり、イメージングで見たときのFDG-PETでの特徴みたいなものがあって、それに対して診断をしているということでよろしいのですか。
 と申しますのは、これはPET スキャンなので、CTでの重ね合わせが出てくると思うのです。そうすると、前頭葉に、例えば萎縮があるかというのは、PET以前の話で、そこだと分かってしまうと思うのですが、その辺のディスカッションというのは何かあったのでしょうか。
 
○伊藤(澄)構成員
 画像に関しては、ブラインドで評価された結果を突合していて、画像診断の手順に関しては資料を出されていて、きちんと実施されていると認識しています。
 ただ、画像診断の進歩から考えれば、髄液の検査よりも感度・特異度が高くなるのは、当たり前と言えば当たり前の話なのではという臨床的なイメージはどうしてもあると思います。
 
○山口座長
 ほかにございませんか。ないようですので、告示番号 旧11については、ただいま御審議いただいた結果を取りまとめて先進医療会議に報告いたします。ありがとうございました。
 続きまして、「先進医療Bの継続の可否に係る審議結果の報告」について、事務局からお願いします。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 それでは、資料2の27ページを御覧ください。国立がん研究センター東病院からの申請で告示番号59、「周術期デュルバルマブ静脈内投与療法」です。本技術は、本申請医療機関が臨床使用実績の効率化要件に該当するため、使用実績のない状態で申請され、承認、告示されたものです。適応症は、肺尖部胸壁浸潤がん(化学放射線療法後のものであって、同側肺門リンパ節・縦隔リンパ節転移、同一肺葉内・同側の異なる肺葉内の肺内転移及び遠隔転移のないものに限る。)です。
 報告の概要については、28ページを御覧ください。2020年3月1日に試験が開始され、これまでに2例の症例が登録されております。「継続の可否の評価に必要な評価項目」として、化学放射線療法と術前デュルバルマブ療法後に手術を行った場合の安全性についてのデータはないため、本試験では、「臨床研究中核病院等又は国家戦略特区内における先進医療の特例を利用可能な医療機関」の4施設(国立がん研究センター東病院、国立がん研究センター中央病院、名古屋大学病院、九州大学病院)で試験を開始し、計2例の患者での手術までの安全性を確認する。2例の患者の安全性データなどが得られ次第、先進医療の継続の可否を先進医療技術審査部会に諮る。先進医療として継続することが可とされた場合は、上記4施設以外に協力医療機関の範囲を拡大するとされておりました。
 こちらに従って、「継続の可否に係る独立した委員会の審議結果」です。研究代表医師及び研究事務局の報告によると、登録された2名において、化学放射線療法・術前デュルバルマブ療法・手術・術後30日間の安全性評価期間を通して緊急報告を要する重篤な有害事象は認められなかった。効果・安全性評価委員会での審議の結果、「最初の2例の安全性について事務局見解を支持します」との判断結果であり、試験継続可と判断された。その結果を受けて、先進医療技術審査部会構成員、山口座長と副担当の飛田先生(生物統計担当)によって御審議(メール稟議)いただいた結果、先進医療継続可との評価を得たため、新規症例登録が再開されております。以上、御報告です。
 
○山口座長
 2例について安全性が確認できたという報告ですが、何か御質問はありませんか。よろしいでしょうか。それでは告示番号59については、ただいま御報告いただいたとおりに試験を継続いただきたいと思います。続いて、「先進医療Bの協力医療機関の追加」について、事務局から説明をお願いします。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 資料3-1の31ページを御覧ください。告示番号22について1件、告示番号59について16件、告示番号63について1件、告示番号68について1件、告示番号71について3件の協力医療機関の追加申請がありました。
 資料3-2の33ページ以降を御覧ください。事務局において、先進医療を実施可能とする保険医療機関の要件(様式第9号を満たしていること)を確認いたしました。協力医療機関の追加として、御了承いただきたく存じます。よろしいでしょうか。特に御意見がなければ、手続を進めさせていただきます。以上です。
 
○山口座長
 よろしいでしょうか。ありがとうございました。続いて、「申請医療機関からの報告」について、事務局から御説明をお願いします。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 議題は、申請医療機関からの報告についてです。関西医科大学附属病院から告示番号B36「S-1内服投与並びにパクリタキセル静脈内及び腹腔内投与の併用療法」に関する御報告です。資料に沿って御説明いたします。資料4の41ページを御覧ください。S-1内服投与並びにパクリタキセル静脈内及び腹腔内投与の併用療法(告示番号B36)における試験実施計画書の誤記に関する御報告です。本文の3行目に、本件については47ページ以降の参考資料にあるように、令和3年2月12日における先進医療技術審査部会で変更内容は承認されましたが、事案の経緯説明及び原因分析と再発防止策に関する報告が求められたため、本報告書にて御報告があったものです。
 1.「事案の経緯」です。令和2年11月に臨床研究の重要リスク評価が行われました。その中で1コースDay1におけるAST59U/L及びALT54U/Lの患者があり、変更前の投与基準である当該施設における施設基準値上限の1.25倍以上でT-Bil 0.4mg/dLであったため、コース開始基準遵守に違反し、不適合症例と認識された際に、試験実施計画書の記載において、AST,ALTの開始基準とT-Bilの開始基準が逆の値になっていることが判明いたしました。
 次に、42ページを御覧ください。表1にあるように、Nab-PTX及びGemcitabineの投与基準です。変更前はAST,ALTが基準値上限×1.25倍以下、総ビリルビン値が基準値上限×2.5倍以下でしたが、下線部が誤りであり、変更後はAST,ALTが基準値上限2.5倍以下で、総ビリルビン値が基準値上限1.25倍以下となっています。
 41ページに戻って2段落目です。なお、変更後の投与基準はAST、ALTともに施設基準値上限の2.5倍以上で投与を延期するという規定であり、これと照らし合わせるとASTの施設基準値上限の2.5倍は75U/L、ALTは57.5U/Lであるため、ともに本来遵守されるべき「変更後」の基準は遵守できております。T-Bilについては、改訂前・改訂後いずれの基準(施設基準値上限の2.5倍は3.75mg/dL、1.25倍は1.875mg/dL)も遵守できており、被験者の安全性は担保できていると考えております。
 これを受けて、次ページの黒ポツですが、令和2年12月時点に登録されていた20名の開始基準を確認し、公立大学法人和歌山県立医科大学臨床研究審査委員会(CRB)における討議の結果、変更前の試験実施計画書で逸脱する形となった症例は、前述の症例1例のみで、その他19名については、変更前と変更後のいずれの基準も偶然クリアしていました。
 その際に報告されたデータからは、基準値が逆であったことにより被験者の安全性が脅かされるというような事象は確認されておりません。修正前、つまり逆の基準値であった場合は、AST、ALTが本来のコース開始基準値よりも低い検査値で投与不可となり、T-Bilが本来のコース開始基準値に抵触していたとしても投与可能になっておりました。したがって、T-Bilを修正前(逆の基準値であった場合)の内容に従った場合、被験者の安全性が脅かされる可能性があったわけですが、報告されたデータを確認したところ、いずれの症例においても変更後のコース開始基準値、つまり正しい投与基準(適正使用ガイドライン)を遵守した状態で投与されており、被験者の安全性は担保されておりました。
 本事案発生を受け、試験実施計画書内のnab-paclitaxel及びGemcitabine投与基準の誤りを訂正するとともに、プロトコール全体を再度確認し訂正しました。本研究に参加する全ての医師等がプロトコールを熟読・確認し、修正版のプロトコールを全ての医師等に共有しました。
 本誤記については、変更申請依頼を令和2年12月1日付けでCRBに提出しており、プロトコール改訂についてはCRBの承認を受けました。これが令和2年12月24日です。
 各研究分担者等への周知は、令和2年12月5日付けで本試験の研究責任者から研究分担者・効果安全性評価委員会の皆様に一斉メールで、基準値が逆になっていたため12月にCRBで審議することを報告し、加えて12月25日付けでCRBにて承認されたことについても一斉メールで送付しております。
 これらの試験計画変更については、先進医療技術審査部会にも変更申請を届け出て承認を受けましたが、この際、原因分析と再発防止に関する報告を求められました。これが令和3年2月12日のことです。
 上記を受け、本事案を効果安全性評価委員会に諮り情報共有を行いました。効果安全性評価委員会からは令和3年2月23日付けで意見書が提出され、被験者への経緯の説明に加え、今後の対策等に関する提言を受けました。本事案の原因分析及び再発防止策を検討し、重大な不適合として令和3年2月24日付けでCRBに提出するとともに、本研究の研究分担者・効果安全性評価委員会・データセンターの皆様に本報告書の情報共有を行いました。
 令和3年3月19日に、重大な不適合報告に関してCRBの審議が行われ、令和3年3月29日付けで承認を受けました。同日、効果安全性評価委員会並びにCRBでの審議結果に関して、本研究分担者に対して電子メールにて情報共有を図りました。
 次ページに、2.「原因分析」として、(マル1)臨床研究実施計画書(プロトコール)の記載に重大な誤記があったことに気付かなかった、数字の逆転に気付かなかったという単純なミスに起因している。(マル2)プロトコールに記載のある投与開始基準に従わず、ガイドラインに則り、投与を実施していた。これはプロトコール違反です。本レジメンの投与は既に保険適用として実地臨床で広く行われている治療であり、研究者にガイドラインに沿った投与基準が既に記憶されており、ガイドラインとプロトコールに不整合はなく、ガイドラインに沿って治療を行うことでプロトコールも遵守できているという思い込みがあった。誤記のあったプロトコールではなくガイドラインに則り投与を実施していたため、偶然被験者への影響など倫理的な問題は回避されていますが、科学性・倫理性を担保した上で立案・構成されるプロトコールを遵守することは臨床研究を実施する上で必須のことであり、投与開始基準の誤記及びプロトコールの不遵守は重大な瑕疵であったと認識しております。結果的に問題はなかったものの、本事案が発生するに至った背景を重く受け止め、本問題点の再発予防といたしまして、研究分担者間で情報共有を行い、下記の対策を講じました。
 3.「今後の予定と再発予防策」として、(マル1)本症例の取扱いについてです。本症例は、記載されていた修正前の投与開始基準は満たしていなかったものの、計画書の登録症例の適格基準は満たしていること、重大な違反とまでは認められないことから、最大の解析対象集団(FAS)及び研究計画書に適合した対象集団(PPS)に含めてよいかをCRBに提案する。
 (マル2)当該被験者への説明についてです。患者様にはもともとの計画書にあった投与開始基準を確認せずに試験治療を開始したが、通常の薬物療法のガイドラインには遵守した上で治療は行われているので安全性上の問題は生じていないこと、本症例を受けて計画書はガイドラインに沿ったものに変更になったことについては説明を行う。また、全ての参加症例に対しても今回の件は報告しつつ、ガイドラインに沿った計画書変更が最終的に行われ、変更後の投与基準には適合しているので、安全に試験は施行されていること、今後も継続していくことを、各参加施設を通してお伝えする。
 (マル3)今後の計画書遵守に向けた改善点についてです。研究計画書を各施設の化学療法室と共有する。臨床研究としての化学療法を施行される場合は化学療法室、入院病棟看護師など治療を担当する部署に計画書を常置し、投与開始前に参照、適格に施行されているか確認する。
 (マル4)今後の計画書審議に向けた改善点についてです。計画書における適格基準、投与開始基準、継続基準について、どのような根拠で設定したかについて明記する。提出前に根拠の参考となった文献、ガイドラインの原本を参照し、計画組織の内部で必ず複数で確認する。審議に提出する文書において、これらの審査を担当する委員が上記事項を容易に確認できるようにしておく。
 再発防止策については、令和3年3月19日開催のCRBにて上記マル1の承認を頂きました。マル2~マル4についても、効果安全性評価委員会並びにCRBで審議され承認されました。被験者保護を最優先に掲げ、マル2に基づき、今回のプロトコールの誤記にかかる問題について登録被験者に説明を行い、再度同意を頂くことを各施設に依頼し、4月28日時点で症例登録を行っていた全施設から、被験者の同意が取得されたことを確認いたしました。さらに、マル3に基づき、全参加施設からプロトコールを各施設の化学療法室と共有したことを、5月5日時点で確認いたしました。マル4に基づき、プロトコールに記載された適格基準並びに試験群・対照群の投与基準の根拠を明記し、プロトコールの改訂を行いました。本改訂案はCRBに変更申請依頼を行い、5月21日(金)開催予定のCRBにて審議いただく予定です。以上です。
 
○山口座長
 何か御意見はありませんか。長島先生、どうぞ。
 
○長島構成員
 2月12日に、これは極めて重大な事案であるので、原因分析と再発防止に関する報告を求めるべきであるという提案を私がさせていただき、それが実現したものと思います。まず42ページですが、症例1例のみで、残り19名は偶然クリアしていただけであると。一番下の所を見ると、逆の基準値であった場合、被験者の安全性が脅かされる可能性があったということで、やはりこれは極めて重大な問題であったと思います。原因分析として、43ページの上に2つにまとめてありますが、チェックしたものの逆転に気付かないという単純なミスがあったことと、もう1つのもっと重大なところが、プロトコールを使わずにガイドラインに則って投与していた、何のためのプロトコールだったのかというところです。この2つの問題がある。
 そこに対して再発予防策が記載されています。1つは、このミスに気付かないところのチェックです。やはり思い込みというのが大きな要素であれば、チェックを行う人としては、直接ここに関わっていると思い込みが入りやすいというところで、ある程度部外者的な人のチェックがあったほうがいいのだろうと思います。もう1つ、プロトコールを必ず使うという意味では、それに従って統一を行う看護師等が、そのプロトコールに日付や時間や自分の名前をきちんと記入して、後でそれがきちんとつながっていたことを確認できるような仕組みが必要ではないかと思います。特にチェックをきちんと行うとか、プロトコールを必ず使うというのが、ほかの研究施設でもないかということで、こういうことがあったという情報は、全国の研究施設に知らせるべきではないかと思います。以上です。
 
○山口座長
 ごもっともな御意見だと思います。非常に情けないのは、やはりガイドラインを信用して、ほとんど研究計画書を見ていなかったのではないかということが暴露されてしまったという点です。先進医療に関する心構えが全然できていないと言われても仕方がない症例で、非常に重要な案件だと思います。是非、長島先生からの御指摘を伝えて、研究施設では、各自でできているかどうかということを確認してくれということを申し伝えたいと思います。そういうことでよろしいでしょうか。藤原先生、どうぞ。
 
○藤原構成員
 シンプルな修正依頼です。これは大学から出てきている報告書で、「薬物療法のガイドライン」とずっと記載されていますけれども、企業が作った適正使用ガイドであって、ガイドラインでも何でもないのです。適正使用ガイドに様々な違反というようにして、「ガイドライン」という名称は全部変えたほうがいいと思います。
 
○山口座長
 それは訂正するように申し伝えます。ほかにありませんか。天野構成員、どうぞ。
 
○天野構成員
 細かい指摘で恐縮です。44ページの「当該被験者への説明について」の部分です。「通常の薬物療法のガイドラインには遵守した上で治療は行われているので安全上の問題は生じていないこと、本症例を受けて計画書はガイドラインに沿ったものに変更になったことについては説明を行う。」という記載があります。そもそも本事例は偶然、被験者への影響が回避されていますけれども、結果的に問題がなかっただけであって、安全性に極めて重大なリスクがあったというように認識しなければいけないので、まずはお詫びをしていただかないといけないと思います。当然されているのではないかと思いますが、文書に記載がないので、念のために確認をお願いしたいと思います。以上です。
 
○山口座長
 その点も是非、申し伝えていただきたいと思います。これも確かにお詫びではなくて、たまたまうまくいったというような話になってしまっています。極めて申し訳ないということを申し上げた上で、その原因に対してこういう対応策をきちんと立てますということを御説明すべきだと思います。その辺りも是非、追加して確認いただきたいと思います。ほかにありませんか。
 ありがとうございました。それでは、申請医療機関からの報告については以上とします。本日の議題は以上です。構成員の皆様、何か御意見や御質問はありませんか。特にないようなので、次回の日程を事務局からお願いします。
 
○医政局研究開発振興課長補佐
 次回は、令和3年6月18日の金曜日の開催とさせていただきます。時間は16~18時までの予定で、場所については別途御連絡させていただきます。また、本日の議事録については作成次第、先生方に御確認をお願いし、その後、公開させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 
○山口座長
 それでは、第117回先進医療技術審査部会を終了いたします。皆様、どうもありがとうございました。
 

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