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2020年6月11日 第100回先進医療技術審査部会 議事録
(1)日時:令和2年6月11日(木)16:00~
(2)場所:航空会館 B101会議室
(3)出席者
山口座長、一色座長代理、天野構成員、石川構成員、伊藤(澄)構成員、掛江構成員、後藤構成員、真田構成員、柴田構成員、田島構成員、藤原構成員、松山構成員、山中構成員、山本構成員
(事務局)
医政局研究開発振興課長
医政局研究開発振興課 治験推進室長
医政局研究開発振興課 課長補佐
医政局研究開発振興課 先進医療係長
保険局医療課 医療技術評価室長補佐
保険局医療課 先進・再生医療迅速評価専門官
保険局医療課 先進・再生医療迅速評価専門官
医薬・生活衛生局医薬品審査管理課 審査調整官
【議題】
1.総括報告書の評価について
2.試験実施計画の変更について
3.先進医療の申請取下げについて
4.協力医療機関の追加について
5.先進医療の告示取下げについて
6.その他
【議事録】
○山口座長
それでは定刻になりましたので、第100回先進医療技術審査部会を始めさせていただきたいと思います。御多忙の折、また大変に足下の悪い中、お集まりいただきましてありがとうございます。
まず、本日の構成員の出欠状況ですが、本日は伊藤陽一構成員、上村尚人構成員、佐藤雄一郎構成員、飛田英祐構成員より御欠席の連絡を頂いております。石川構成員のほうから少し遅れるということでございます。あとは、まだ掛江先生がお見えになっていませんが、現在18名のうち12名が出席しておりますので、本会議は既に成立していることを申し伝えます。
それでは、配布資料と本日の審査案件の確認を事務局からお願いします。
○医政局研究開発振興課長補佐
よろしくお願いいたします。傍聴者の方の撮影はここまでとさせていただきます。御協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
配布資料を確認させていただきます。議事次第、座席表、開催要綱及び運営細則、構成員及び技術専門委員名簿と続きます。
続きまして、総括報告書の評価について、資料1-1から3-3、試験実施計画の変更について、資料4から資料7、先進医療Bの試験の申請取下げについて、資料8、協力医療機関の追加について、資料9-1及び9-2、先進医療Bの試験の告示取下げについて、資料10、会議資料の最終ページは75ページとなっております。お手元の資料に乱丁・落丁等ありましたら、事務局までお知らせください。よろしいでしょうか。
続きまして、利益相反の確認です。申請医療機関との関係、対象となる企業又は競合企業について、事務局から事前に確認させていただいております。今回告示番号旧8の技術(京都大学医学部附属病院からの総括報告)につきまして、山口座長、天野構成員、山中構成員より御報告がありましたが、いずれも50万円以下でしたので、当該技術の議事取りまとめ及び事前評価に加わることができます。また、告示番号3の技術(静岡県立静岡がんセンターからの総括報告)につきましては、山中構成員におかれましては、当該試験の統計解析部分の責任者ということですので、審議の際、一時御退席をお願いいたします。
事前の届出以外に、もし何らかの利益相反がありましたら、この場で御報告をお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。それでは、該当なしということで承知いたしました。
また、今回もタブレットを使用いたします。届出書類等につきましては、タブレットより閲覧をお願いいたします。なお、会議資料とタブレットの内容は異なっておりますので、発言者は会議資料の何ページ、又はタブレット資料何番の何ページと御発言いただきますよう、お願い申し上げます。以上です。
○山口座長
では、早速議事に入りたいと思います。総括報告書の評価結果について、事務局より説明をお願いします。
○医政局研究開発振興課長補佐
資料1-1の15ページを御覧ください。先進医療Bの総括報告書に関する御評価を頂きますのは、告示番号旧8「術後のホルモン療法及びS-1内服投与の併用療法、適応症は原発性乳がん(エストロゲン受容体が陽性であって、HER2が陰性のものに限る。)となっております。申請医療機関は京都大学医学部附属病院です。今回、審査を御担当いただきました構成員の先生は、主担当が山中構成員、副担当が山本構成員となっております。
試験の概要につきましては、資料1-1のほか資料1-3、29ページの概要図も併せて御覧ください。本試験の目的ですけれども、エストロゲン受容体陽性かつHER2陰性の原発性乳がんを対象としまして、標準的な術後内分泌療法単独に比べて、標準的な内分泌療法とS-1を併用することにより、再発抑制効果が高まることをランダム化比較第Ⅲ相試験により検証するというものです。
主要評価項目は15ページ中ほどにお示ししておりますけれども、Invasive Disease-free Survival(浸潤性疾患のない生存期間)、副次評価項目は、全生存期間等お示ししたとおりとなっております。目標症例数が1,860例ということで計画されておりましたが、実際に登録された症例数は1,959例ということで、こちらに関しては目標症例の登録が確実となった時点で登録を中止されましたが、それ以前に説明済みで同意取得待ちの患者様に対しては、不利益とならないように仮登録を容認したため、目標症例数を超過したとのことでした。試験の概要につきましては以上です。
○山口座長
では、本技術の評価につきまして、主担当の山中構成員のほうから御説明をお願いいたします。
○山中構成員
山中でございます。この試験は平成21年に、当時の高度医療評価会議で承認された試験で、乳がんの術後補助療法なので、時間は掛かって仕方がないと思うのですが、随分長期間掛かってやり抜いたという試験でございます。対象はエストロゲン受容体陽性かつHER2陰性の乳がんで、根治切除をした後に、どういう薬物療法を投与するか、という試験でございます。通常、ホルモン陽性乳がんは、切除後にホルモン治療を行います。ただ一部は再発しますので、何か微小な残存腫瘍が体内に残っているというわけですので、そのホルモン治療でたたき切れない微小残存腫瘍、がん細胞を化学療法によってたたこうということを目指した試験でございます。
先ほど言及がございましたように、主要評価項目は、Invasive Disease-free Survival、直感的に言えば、新しい病変が出てくるまでの期間です。これは世界標準で用いられている評価項目でございます。副次評価項目は、全生存期間を中心として幾つか挙げられているところでございます。約2,000例を登録した、これまでの先進医療として最大規模の第Ⅲ相試験でございます。
評価に関しまして、私の評価を述べさせていただきます。まず、有効性の評価なのですけれども、結果自体は中間解析で有効中止となりました。予定登録数は2,000例近くを既に登録し終えています。その後、乳がんですので、かなりフォローアップが長い試験なのですけれども、そのフォローアップの途中でキーオープンをして解析をしてみたところ、かなり差があった。その差に関しては、このままフォローアップを続けても、引っくり返ることはないだろうということが、統計的に推測されたので、であれば「今、止めて、有効中止という形で早期リリースしよう」という効果安全性評価委員会の勧告を受けて、止めたということでございます。
それを踏まえまして、有効性に関しましては、従来の医療技術に比べて、かなり有望ではないかと評価しました。特に主要評価項目であるInvasive Disease-free Survivalに関しましては、5年時点で5%上昇しています。5%が大きいか小さいかですけれども、もともとすごい予後不良というわけではないのですけれども、そういう予後良好のがんに関して、更に5%を上乗せしているということは、がんの領域ではかなりの治療効果と考えてもよかろうと思います。実際に2群の差を現わすハザード比が、0.63という数字で、こちらに関しては過去の乳がん術後補助化学療法の試験と比べても、かなり良い成績であると思います。実際、試験デザイン時の計画時の研究者の期待は、0.70というところを予想を比して、これはがん細胞をたたけていたという証なのだと思うのですが、こちらに関しては従来の医療技術を用いるよりも大幅に有効であると考えまして、A評価といたしました。
更に補足いたしますと、当該TS-1という化学療法を足すこと自体の有効性が示されたと思うのですけれども、科学的にはこの試験の対象に化学療法を追加するというコンセプト自体も新たに打ち立てたということで、二重の意味で評価できるかなと考えております。
続きまして安全性なのですが、安全性に関してはTS-1という化学療法を加えることによって、一定の有害事象、副作用が見られています。特にTS-1に関しては、口腔粘膜炎や食欲不振、悪心/嘔吐、下痢などの、いわゆる消化器症状が出るということは、よく知られているのですけれども、この試験の中でもTS-1を上乗せすることによって、これらの消化器症状が出るということが観察されています。消化器症状に関してましては、患者さんが直接感じる不快な副作用ですので、患者さんのQOLに直接関係してくるわけですが、ただ、これも予想されたことではありますが、グレード1の有害事象がほとんどでありまして、グレード3以上の頻度は少ないことが確認されております。発熱性好中球減少も、ほとんど観察されておりません。ですので、化学療法に慣れた医師であれば、副作用対策はできるのではないかと考えております。そのほかTS-1の特徴として、血球減少、すなわち、好中球減少とか白血球減少が見られますが、こちらに関しても予想された範囲内でございまして、十分マネージメントは可能であろうと思います。
安全性の評価ですが、そういった次第で、TS-1の有害事象として十分予想される範囲で、化学療法を専門としている医師にとっては、マネージメントできる範囲と考えられると思うのですが、ただし、グレード3以上の非血液毒性や血液毒性が出ていることは出ていますので、評価としましては、重い副作用が発生することがあるという「問題あり」といたしました。ですので、問題あるのかないのかと言われますと、恐らくがんの先生にとっては、これは問題ないだろうという判断をすると思うのですが、重い副作用は出ているか出ていないかと言えば出ていますので、安全性がC評価であることは申し添えます。
最後に、技術的な成熟度に関してましては、先ほど来何遍か申しておりますが、その専門ががんで経験を積んだ医師、又は医師の指導であれば、十分に投与できると思います。TS-1に関しては、既にパテントも切れるほど長期間処方された、十分使い慣らされたお薬ですので、技術的な成熟度はA評価と考えております。私の評価に関しましては、以上でございます。
○山口座長
ありがとうございました。続いて山本構成員から評価をお願いいたします。
○山本構成員
私の評価は、資料1-1の19ページでございます。まず有効性につきましてはBとさせていただきました。やや有効であると。山中先生はAなのですけれども、主要評価項目は達成されておりますので、有効性は示されていると思います。副次評価項目でOSで差がなかったということがございましたのと、あとは、ここでは書いておりませんけれども、再発の評価が、これは一応オープン試験なのですけれども、再発評価が各施設の医師がしておりまして、いわゆる独立の中央評価ではございません。開始された時期が高度医療評価時代で、今から考えると大分前ということと、かなり大きな試験ですので、そこはいろいろ仕方なかったと思いますけれども、今だと恐らくがんの再発については、やはり中央評価にするほうが、より中立的であるということになると思いますので、それも加味した上でBとさせていただきました。
なお、確認として頂きましたところ、OSで差がなかったというのは、これは新たに観察研究を立ち上げて、長期予後の観察はするということですので、またこの後に、どこかでOSについての情報は公表されるのではないかと思います。
安全性ですけれども、これは山中先生がおっしゃっていたのと全く同じことで、Cとさせていただいております。技術的成熟度は、これも山中先生と同じ評価ですけれども、使いこなれた抗がん剤ということでございますし、抗がん剤使用に慣れた先生であれば、普通に使える薬と思いますので、こちらについてはAとさせていただきました。以上でございます。
○山口座長
ありがとうございました。山中先生、何か御追加はありますか。
○山中構成員
大丈夫です。
○山口座長
それでは、ただいまの御説明に何か御質問はありませんか。
○天野構成員
御説明ありがとうございました。1点安全性の部分についてですけれども、山中先生が御指摘のように、口腔粘膜炎、食欲不振、悪心/嘔吐、下痢等の消化器症状が出るということで、多くはグレード1ということでマネージ可能だという評価だとおっしゃいまして、グレード3も出ているということなのですけれども、どの程度出ていたか、もし分かれば教えていただけますでしょうか。
○山中構成員
実は最初に研究者から出された有害事象の結果の一覧に、そういったグレードごとの情報が不足しておりまして、今、天野構成員がおっしゃいましたポイントは、非常に重要だと私自身も考えまして、新たに提出を求めました。そこで改めて確認させていただいたのですが、頻度が多い事情でもグレード3が1-2%未満で、予想される範囲内でした。TS-1単剤ですので、ごく予想される範囲内かと思います。
○天野構成員
ありがとうございました。ほかのがん種を含む従来のデータと多くは差がないということは理解したのですが、ただ、患者さんにとっては非常にきつい治療が出るという場合もあるということだと思うので、やはり適切な支持療法が重要かと感じた次第です。以上です。
○山中構成員
おっしゃるとおりだと思います。
○山口座長
ほかにございませんか。100回記念でこういうものが出てきたというのも、なかなかタイミングとしては貴重なことかもしれません。対象が非常にステージ1から3Bまでにわたっていて、26ページの所にサブグループ解析はなぜやらないのだというような質問があります。それで資料で一応出てきていますけれども、これはステージ1なども含まれておりこれらを一緒に評価することには、なかなか難しい問題があるのではないかと思うのですけれども。その辺り、今後は保険収載のときにはどういう形になってくるのでしょうか。
○山中構成員
すみません、まだ保険収載の可否の方は分からないのですが、サブグループ解析に関しては、なぜ病期がないのかというのを事前に聞いたところ、26ページにございますように、重要な予後因子として考えていなかったと御回答いただいております。臨床試験の考え方からすると、サブグループ解析と言っても、少し症例数が少なくなってしまって、判断が危うくなってしまっており、また、計画時にステージ1から3までを1つの集団として、どの集団でも一様にTS-1の上乗せ効果が期待されると考えて試験計画を実施し、我々ども当時は高度医療評価会議でしたが承認しておりますので、やはり一様に、どのステージでも効果があるというふうに、今のところは結論せざるを得ないかなと考えております。
○山口座長
ありがとうございました。ほかにございませんか。非常に粘り強くやって、大変立派な研究だと思いますけれども。一応きちんと成果が出て、良かったのではないかと思います。何かございませんか。それでは、ないようですので、ただいまの告示番号旧8については、ただいま御審議いただいた結果を取りまとめて、先進医療会議に御報告したいと思います。
○山中構成員
最後の総括報告を述べさせてもらってよろしいですか。18ページを御確認ください。まず、総合的なコメント欄としまして、こちらのコメントに関しましては、山本先生にも確認していただいています。
まず、総合的なコメント欄として、先進医療下で最大規模となるランダム化比較試験を実施しています。10年以上掛けてRCTを実施し、中間解析で有効中止となるほどの差が見られております。普通、中間解析で差が見られる、止めるほどの差が見られるということは、多く経験することではありません。それだけハザード比0.63、37%の再発リスク減の程度が大きいのだろうと思います。
一方、化学療法を上乗せしますので、予想される範囲内の副作用は見られます。しかし、5%から6%のiDFSの上乗せがあると考えますと、有害事象が上昇するというリスクの上昇と、iDFSが5、6%も伸びるというベネフィットの上昇、このリスク/ベネフィットのバランスは見合うと考えております。あと、これは今、術後補助療法の話ですが、日本においては転移性進行乳がんでは、極めて使い慣れている薬剤ですので、乳がんの専門医にとっても使いやすい薬剤でございます。それからTS-1に関しては、後発品が既に出ておりますので、価格的にも高価な医療技術ではないと思います。以上を踏まえまして、効率的な医療技術と考えております。
その上で今後、出口をどう考えるのかということが重要になってくるのではないかなと思います。先ほど座長が言及されたように第100回目というこの時期に、最大規模の先進医療下の第Ⅲ相試験の結果が有効中止で出てきておりますので、これは恐らくいろいろ考えなければいけないのではないかなと思うのです。まず術後補助化学療法のように、非常に時間が掛かります、10年は掛かります。ですので、症例集積や試験期間の点から、試験コストは著しく高いわけですので、製薬企業としては、やはり開発に手を出しにくい領域だと思うのです。一方で、がんの患者さんですので、アンメットニーズは非常に高い。製薬企業が開発に手を出しにくい領域ではあるが、アンメットニーズは高い領域であると思います。ここに先進医療を活用して、エビデンスを作っているということは評価されて良いだろうと思います。同様の試験をもう一回やれと言っても、それは難しいので、是非この評価を担当した者としては、この先進医療の結果の活用をどのようにしていくのかということを、考えなければいけない時期ではないかと考えております。
ただし諸外国では、TS-1は乳がんでは一切適応はありません。術後療法でも転移性の治療でも、TS-1の乳がんにおける薬事承認は外国では存在しませんし、使用実態もございません。ですので、今回の結果をどのように保険収載につなげていくかについては、繰り返しになりますが、いろいろと検討は必要であると考えます。以上です。
○山口座長
貴重な御意見、ありがとうございました。今のコメントに対して、何かございますか。
○柴田構成員
最後の点について、ちょっとコメントと言いますか、発言しておきたいのですが、諸外国でのS-1の乳がんに対する薬事承認というのはないのは事実で、例えば臨床試験の結果を医学・薬学上公知の枠組みで薬事承認申請ができるのかどうかという判断に、それが影響するのではないかという御指摘だと思います。
平成11年に出てきた、いわゆる2課長通知と呼ばれる医学・薬学上公知の申請について提示している通知の中では、外国における薬事承認というのは必ずしも求めないものになっていますので、通知上は、これが自動的に排除されるようなものにはなっていないのではないかという解釈で、ずっとこれまで高度医療評価会議の中でも、そういう議論をしてまいりました。
ただし、この試験に限らず、同様の公知申請を狙っている先進医療、あるいは高度医療の議論をPMDAと議論している際には、判断がぶれているというか、実際にはやってみないと分からないという判断がされているケースがありますので、ちょっとそこが分からないというのが山中先生の御指摘なのではないかなと思います。自動的に外形的要件で排除されるようなルールにはなっていないと解釈しているのですが、事務局の方から何か補足していただけますか。
○医政局研究開発振興課長補佐
貴重な御指摘をいただきましてありがとうございます。今、いただいたご質問に直ちにこの場で回答するのは難しいのですけれども、先進医療として得られた貴重な結果についてご活用いただけるように、医療機関及び省内の担当部局等と連絡を取りながら進めていきたいと考えてございますので、先生方には引き続きお知恵等をお貸しいただければと思います。
○柴田構成員
ありがとうございます。このような枠組みの、先ほど山中先生がおっしゃったように、10年仕事になるような臨床試験を企業にやってもらおうとか、それを薬事承認につなげてもらうというのは非常に難しい話で、日米欧の3極で考えても、米国などはそういうことを積極的にやるような薬事制度になっているかというと、なっていません。それは日本と米国と欧州の、それぞれの医療提供体制ですとか、薬事制度の違いによって、特にこういうものについては日本において、先に出て取り組まないといけない課題といえ、日本の薬事承認制度、保険制度の下では、外国の制度を横並びで見ながら、それを参考にして判断するということができない類型の治療評価になりますので、やはりこういうものが通常の診療の中に導入できるような形の制度運用をしていただけるようなことを、是非御検討いただければと思います。
○山口座長
ほかにございませんか。非常に貴重な御意見で、是非この点も報告のときにはお伝えしたいと思います。せっかくすばらしいデータが出たので、これが活用されなければ、やはり先進医療の意味がないと思いますので。よろしいでしょうか。貴重な御意見、ありがとうございました。
それでは次の総括報告書の評価結果につきまして、事務局より御説明をお願いします。
○医政局研究開発振興課長補佐
資料2-1の31ページを御覧ください。先進医療Bの総括報告書に関して御評価いただくのは、告示番号3、ペメトレキセド(PEM)静脈内投与及びシスプラチン(CDDP)静脈内投与の併用療法となっております。申請医療機関は、静岡県立静岡がんセンターです。今回、ご審査いただいた構成員の先生は、主担当が伊藤澄信構成員、副担当が柴田構成員となっております。なお、先ほども申し上げましたとおり、山中構成員におかれましては統計解析部分の御担当ですので、一時御退席いただきたく存じます。
(山中構成員退室)
○医政局研究開発振興課長補佐
試験の概要については、資料2-3の39ページに概要図がありますので併せて御覧いただければと思います。本試験の目的ですが、ペメトレキセドは非扁平上皮非小細胞肺がんに対して有用な薬剤であることが近年報告されており、非小細胞肺がんの術後補助化学療法として効果のエビデンスがあるビノレルビン(VNR)+CDDP併用療法と、今回のPEM+CDDP併用療法を比較した臨床試験は報告されておらず、また、我が国においてPEMは切除不能な進行・再発非小細胞肺がんで承認されておりますので、術後補助化学療法としての投与は適応外使用となるということです。
完全切除された非扁平上皮非小細胞肺がん(病理病期Ⅱ期又はⅢA期)に対するPEM+CDDP 併用療法の有用性を、標準治療であるVNR+CDDP併用療法とランダム化比較第Ⅲ相試験において評価し、術後補助化学療法における標準療法を確立することとなっております。
主要評価項目等は31ページの中ほどに記載しておりますとおりで、無病生存期間(DFS)、副次評価項目としては、全生存期間(OS)、治療完遂割合、有害事象発生割合となっております。目標症例数は800例で、実際の登録症例数が804例となっております。また、予定の試験期間は、登録期間は5年、追跡期間は登録終了後5年となっておりましたが、2018年の後半に中間解析を実施する計画のところ、2018年2月の中央モニタリングにおいてDFSイベントが既に385件発生しており、2018年の後半には予定のDFSイベントの420件に達している可能性が高いと予測されたため、中間解析は行わず2018年8月時点をデータカットオフとして最終解析が行われたところです。試験の概要については以上です。
○山口座長
では、本技術の評価について、主担当の伊藤構成員から御説明をお願いいたします。
○伊藤(澄)構成員
この試験も比較的大規模な試験です。まあよかったのだろうという試験結果が出ています。この評価は、本来は今年の3月ぐらいにさせていただく予定だったのが今になっていますが、5月20日に「Journal of Clinical Oncology」にペーパーとなっています。JCOにきちんと出ており外部の評価もされている試験結果です。本当はJCOに出る前にここで評価したかったという思いはあります。
2012年3月から2016年8月の間に、804人がランダム化されて784人が有効性の解析対象になっています。両群、大きな差がなく実施されておりますが、当初、OSでの評価だったのが、途中から無病生存期間の評価になり、早めに評価できる形になっています。
当初は新しい薬のほうが標準治療であるビノレルビンを使った治療よりもよくなるであろうと期待されたのですが、結果としては、プライマリーエンドポイントの部分については優越性は示されていません。ただ一方で、治療の完遂率と言うか、治療の受けやすさという意味では、ビノレルビンが1日目と8日目に注射が必要なのに比べて、ペメトレキセドは1日目だけだったのと血液毒性が少なかったせいもあり、プロトコルを完遂される方が多かったというデータが出ております。有害事象については、血液毒性がペメトレキセドのほうが少なかったという結果が出ております。
総評ですが、そのままでは標準治療と比較しにくいのは、通常は小細胞がんを除く肺がんのプロトコールが多いのですが、非扁平上皮がんというそれよりも少し狭い範囲を対象に試験が実施されていることです。そのグループに関しては、ペメトレキセドの方が有害事象が少なくて被験者にとっては受けやすい治療だったと思います。残念ながら有効性が勝っている、少なくともDFSで勝っているわけではないというところもあり、従来の医療技術と同程度ということにさせていただいております。
安全性に関しては、先ほどの山中構成員の評価とは随分違っていて、そこそこグレードが高い重篤なグレード3~5の頻度が高かったのですが、余り問題なしとさせていただいております。これは両群とも殺細胞性の抗がん剤ですので、血液毒性も含めて両群で差がないという意味で余り問題なしということなので、この再発予防投与そのものが安全であるということでは決してないと思います。
ただ、この領域で治療する人たちにとっては当然予測できる有害事象なので、十分に安全にされていると思っております。後で柴田構成員から御報告があると思いますが、個別の事象に関しても評価させていただいた上でこういう評価をしています。
総合的なコメントに関しては、今、申し上げたとおりです。少し気になったのは、ペメトレキセドを使うほうが薬価が高いということと、扁平上皮がんに関してはペメトレキセドは効かないので、扁平上皮がんに間違って使われることはないと思いますが、対象範囲がせまいところです。
非小細胞がんの中には腺がんと扁平上皮がんが混在しているタイプがあるという理解はしているのですが、症例数が余りにも少なく、それに関しては個別に評価してもしょうがないと思ったので報告者に聞いていません。
○山口座長
続いて、柴田構成員から、評価をお願いいたします。
○柴田構成員
お手元の資料の34ページを御覧ください。有効性については、CあるいはEのどちらにすべきかかなり迷うところです。本試験については、ランダム化をされていること、大規模な試験であることから、厳密に言うと、その他としか判断できないところですが、ここは状況証拠からCとしても良いかと判断したところです。
コメントに書きましたが、標準治療であるビノレルビン+シスプラチン併用療法に対する今回の試験治療であるペメトレキセド+シスプラチン併用療法の優越性の検証を試みたけれども、それは検証できなかったということは厳然たる事実ですので、この試験が予定どおりに終わったかというと、予定の検証はできなかったというのが事実で、それは明確に記録しておくべきだと思います。厳密に言えば、両者が同等である、あるいは、前者に対して後者が非劣性であるというサイエンティフィックな結論は導くことができません。そこは残念なところです。ただし、これだけの数のものが評価されて、しかもランダム化されている同時対照の試験ですので、一般的には同じ程度の有効性があると認識されるだろうという意味でのCです。これは最後までEにすべきかどうか迷ったところです。
安全性についてです。私もBであまり問題なしと書きましたが、手放しで問題なしと言えるようなものではないので少しコメント欄に実態を記しました。先ほど伊藤構成員からも御説明いただきましたように、抗がん剤治療をするという前提において、既存の抗がん剤治療と比べたときにさほど追加の重大な問題が増えていない、あるいは、場合によっては少し少なくなっているという事実に基づいて、余り問題ないと記しているだけなので、あくまで、これを患者に説明するときに軽い副作用しかないと説明するのはまずいという認識です。
これはあくまで相対比較で、現状この中で対照群よりも少し副作用の発現率が低いとか、あるいは、ペメトレキセドは、この対象ではありませんが臨床現場では広く使われている薬ですので、その経験も踏まえてCとまではしていませんが、実際には重篤な有害事象、重篤な副作用が出るものであるということは認識しておいていただく必要があります。
技術的成熟度としては、特に大きな問題は見られていないという認識です。ペメトレキセド+シスプラチン併用療法の安全性が既存のビノレルビン+シスプラチン併用療法よりも軽くなるのではないかというのは、実はあらかじめ想定されていたことです。この結果を見ると、もともと優越性試験ではなくて非劣性試験として組んでも良かったのではないかという視点も出てきます。そうすれば、もしかしたらポジティブ試験という結果になったのかもしれません。その辺りのところは、資料2-2の中に質問をしており、なかなか設定上難しいところもあったということが御回答としてあります。
私も高度医療評価会議の場で、この審議に立ち会っていたときに、あえて優越性試験ではなくて非劣性試験にすべきだというコメントは出しておりませんし、当時の認識として、ペメトレキセドの併用療法のほうが勝つのではないかという期待は、蓋然性があったものですので、試験の設定自体は問題ないと思います。
ただ、こういうものをもったいない結果にならないようにするには、少しハードルを下げておいて、非劣性が証明されたら優越性まで検証しにいくというテクニックを使うということも、もしかしたら、あったかもしれません。それに対しては、実は問題が2つあります。一時、先進医療の場で非劣性試験を受け入れないという判断をされていたことがあったということと、臨床試験の専門家の中で臨床試験の評価をするときに、この試験を非劣性試験でやろうとすると少しαを緩めるとかβを緩めるという形の試験設定になってしまいますが、現実の制約からそのような緩い設定をすることに対して余り理解が得られないという状況もありますので、こういう組み方にならざるを得なかったという背景はあったのかもしれないと、これは私が勝手に推察するところです。
裏を返すと、状況によっては緩い設定でやらざるを得ないシチュエーションも出てきます。実際、伊藤構成員も御指摘のように、これは非扁平上皮がんを対象にしていますが、今後こういう試験があったときに、扁平上皮がんを対象としてどうするのかみたいな話をしようとしたら、これの対象が4分の1程度になってしまいますので、ここまで大きな試験はできません。ここまで大きな試験ができないところでエビデンスを出して新しい治療を開発するというのを、例えば、先進医療としてそういうものが出てきたときに認めるのか認めないのかという議論は、別途、今後検討していく必要があるのかと考える次第です。
総合的に見て、しっかりやられた試験だと、先ほど「Journal of Clinical Oncology」に掲載されているという御紹介がありました。試験としてはしっかりまとめておられるので、プライマリーエンドポイントが証明できなかったという点はありますが、その他の点については大きな問題はないと解釈いたしました。以上です。
○山口座長
伊藤構成員、何か御追加はございますか。
○伊藤(澄)構成員
今後、腺がんに関しては、こういう治療だけではなくてドライバー変異によって治療法が区別されてきたりとか、様々に細かくなっていくのだろうと思います。本試験とは関係ありませんが、小細胞肺がんに関しては30年前の治療から変わっていないということを、こういう試験の結果を見ていて懸念をもちました。今後、何らかの形で開発していくべきではないかと強く思いました。
お金の話に関してはここで述べることではないのですが、薬価に関しては随分高くなると思います。JCOの中にも、This regimen showed a better tolerability as adjuvant chemotherapyと書いてありますので、そういう意味では、被験者の方にとっては、有害事象が少なくて、より受けやすい補助療法の1つになるだろうと思います。
これも先ほどの議論と一緒で、保険収載の問題とか、勝っていないので新しい標準治療に置き換わらならないと思いますが、オプションの1つとして、今後どういう形で日本の医療の中に組み込んでいくのかというのは大きな問題になるのではないかと思いました。以上です。
○山口座長
ただいまの御説明に対して、御質問、御意見はございますか。
○山本構成員
この試験に関する評価について、特に異議があるわけではありません。先ほどの柴田構成員がおっしゃった、少なかったときに、要は試験デザインと検出力の設定等のことです。これ以外にも以前に、多分、症例数が予定よりもそれほど見込めないので、現実的に集められることが可能な症例数を集めるために、最初の設定していた検出力を少し緩めて、この設定でいくというようなプロトコル変更が出たときに少し議論がもめたりしたことがあったと思います。
先進医療の位置付けは、直接的には保険収載を目的とするということになっています。多くの薬で1本で保険収載できるわけではないので、その結果、一つ一つの試験では余り良い結果が出ていなかったとしても、エビデンスを積み重ねたことで最終的に公知という形になっていき、間接的に保険収載にいくこともあると思います。そのときに重要なのは、ペーパーになることだと思うのです。
先ほど先生がおっしゃったように、これは幸いちゃんとしたピアレビューのペーパーになっていますが、ものによっては症例数が足りないということでペーパーにもならない。結局、結果がここの総括報告書には載っているけれども、英文でのピアレビューペーパーにならずに消えていくものがある。そうすると、今度は最初の予定どおりできなかったとしても、少なくとも途中である程度組み替えることで科学性を保って、何とかペーパーになるような形に持っていくということが、次の1つの目標になると思うのです。
柴田構成員もおっしゃっておりましたが、プロトコルを新規に審議するとき、それから、変更が出てきたときの、特にデザインの辺りの議論のときに、この1本で保険収載を目指すとみんな来られますけれども、それだけではなくて、それがピアレビュージャーナルにちゃんと載るような形の結果になるか。それはネガティブな場合でも、やはり載ってほしいと思います。臨床試験の目標は、別に成功することではなくて結果を公表することだと皆さん思ってやっていると思います。そのお手伝いがここでも少しでもできたらいいのではないかと少し思いました。
○山口座長
ほかに何かございますか。32ページに治療の完遂率があり72.7%対87.9%と15%ぐらい完遂率が高いのですが、完遂率が高いにもかかわらず成績に差が出ないというのは、少し考えると余り効かないのかという感じがするのですが、そうではないのでしょうか。
○伊藤(澄)構成員
本当はそれを聞きたかったのですが、柴田構成員から怒られました。完遂した人だけ取りだしたら良かったのではないかと聞きたいと思ったのですが、そういう聞き方はなじまないと怒られたので。
○山本構成員
これはパープロトコル解析はしていないのでしょうか。
○柴田構成員
完遂例だけに絞って解析をしてしまうと、その途中で状態の悪かった方を除いていることになるので、20年前ぐらいまではよくそういう解析が治験の結果でもされていたのですが、基本的には、解釈が困難な解析結果であるということでやらないほうが良いという話は、伊藤構成員にはお話させていただきました。
○山口座長
これは分けて解析しろということではなくて、むしろ、ドースが少なくて、そのために副作用が少なかっただけで、もう少し上げたら成績も良くなって同等の副作用でいい成績が出た可能性はないのでしょうか。
○柴田構成員
そこはこの試験に限らず、抗がん剤を使っている臨床試験でいつも問題になるところです。実際にはどのぐらいの用量が入っているかということを分析しながら、忍容できる毒性とのバランスを探っていくということにはなるのです。いかんせん、このような大規模な試験でないと最終的な結果が分からないので、瀬踏みと言いますか、トライアンドエラーが何度もできないというのが、なかなか難しいところです。昔から臨床試験の場で先生に御指摘いただいたようなことはいつも気にはなっているのですが、これといったゴールデンスタンダードなソリューションがないというのが実態です。
御指摘のとおり、本当はもう少し入ったのではないかという話は常にクリニカル・クエスチョンとしては重要なクエスチョンであると、恐らく、研究者の先生方も考えておられると思います。明確な答えが出せないところです。
○山口座長
ありがとうございました。大変よく分かりました。ほかに何かございますか。これはしっかりペーパーにしていただいております。先ほど山本構成員からも御指摘がありましたが、結果はどのような形であれ、そういう一流の雑誌に載ったということは大変立派なことでよかったと思います。それでは、告示番号3については、ただいま御審議いただいた結果を取りまとめて先進医療会議に報告いたします。山中構成員にお戻りいただきたいと思います。
(山中構成員入室)
○山口座長
それでは、お戻りいただきましたので、次の総括報告書の評価結果について、事務局より説明をお願いします。
○医政局研究開発振興課長補佐
資料3-1の43ページを御覧ください。今回、先進医療Bの総括報告書に関する御評価を頂くのは、告示番号旧6ゾレドロン酸誘導γδT細胞を用いた免疫療法。適応症は、非小細胞肺がん(従来の治療法に抵抗を有するものに限る)となっています。
申請医療機関は、東京大学医学部附属病院です。今回、審査を御担当していただきました構成員の先生は、主担当が松山構成員、副担当が柴田構成員となっています。
試験の概要については、お手元の資料3-3、53ページにも概要図がありますので併せて御覧いただければと思います。本試験の目的ですが、γδT細胞は血液中のリンパ球の一種で、がんや感染症等から生体を防御する役割や障害を受けた組織の修復を助ける働きを担っており、がん細胞の表面に発現する分子を主要組織適合抗原(MHC)に拘束されることなく認識することで、腫瘍細胞と正常細胞を区別し、腫瘍細胞に対する細胞障害活性を示すことに加え、サイトカインを産生するなどして抗腫瘍活性を発揮するということです。43ページの中ほどに記載がありますが、本試験においては標準治療抵抗性の非小細胞肺がん患者を対象として、患者の自己末梢血から単核細胞(PBMC)を採取し、その中に含まれるγδT細胞をゾレドロン酸とIL-2を用いて体外で14日間刺激培養した後、再び患者の体内に点滴静注して戻すもので、γδT細胞の投与は2週間ごとに6回実施し、効果が確認された患者ではさらに治療を継続したとなっています。
主要評価項目としては、無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目は有害事象等お示ししたとおりとなっています。なお、目標症例数は85例でしたが、実際の登録患者数は25例で試験が終了となっています。こちらの取下げに関しては、第88回の先進医療技術審査部会にて御審議いただいき、お認めいただいたものです。試験の概要については以上です。
○山口座長
ありがとうございました。それでは、本技術の評価について主担当の松山構成員からお願いいたします。
○松山構成員
結果的に非常に残念で、85例目標のところ、患者さんがエンロールできずということです。加えて半分ぐらいの症例が細胞の培養ができないということが、トライアルのところでありました。なかなか抗がん剤が入った患者さんのT細胞を増やすのは難しいということを非常に認識しています。ただ、半分が育たなかったということが特段悪いかというと、実はCAR-Tのstudyで見ていてもカルチャーできているのは6割から7割というところなので、特段細胞培養の技術が悪いということでは多分ないのだろうと、これは前提とさせてください。この研究期間の間にかなりドラスティックな情勢の変化があって、まずは分子標的薬の進化がありますが、特にPD1、PDL1が出てきたことによっていわゆるがん免疫療法を選択される患者さんが圧倒的に減ったところがあります。それで今回、エンロールの少なかったというところもあるのだろうと思っています。
まず有効性のところですが、こういう背景を鑑み、この研究が始まったときの医療技術ということを考えると、so soと言うか同程度と言っていいのかもしれませんが、PD1、PDL1がかなりの患者さんで有効なものがあるということを考えると、今時点の医療技術と比較すると劣ってしまうというのが現実かなと思っています。
安全性に関しては、総合的なコメント欄の所に記載していますが、1例でいわゆるサイトカインストーム的なものが起こって咳嗽等があったということなのですが、これは腫瘍の縮小効果があった症例で、しかもアンダーコントロールであったということで本来評価はBとしてさほど問題なしとすべきなのかもしれないと思っています。ただ、この総括報告書を書いてくださった先生が非常に誠実な先生で、γδT細胞に核型異常があったと、実際、核型異常があった細胞に関して患者さんに投与されていないということを記載されているので、安心しているのですが、やはり抗がん剤を投与された後の細胞というものはかなりカルチャーしにくいということに加えて、こういう何らかの核型異常が出てくるということは、やはり今後のいわゆるCAR-Tなどの治療法に対してのアラートになるということで、非常に価値があると考えたところです。
技術的成熟度に関しては、培養という技術が加わるということと、それからPD1、PDL1等のほかのいわゆるファーストラインセラピーと比較して、この治療法が適切であるかというディシジョンも含めて、かなり専門的な技術を持っている医師でなければできないという認識です。
非常に丁寧に誠実に書いていただいたということで、総括報告書に関してはうまくお化粧される総括報告書もある中で、私は非常に誠実に書いてくださって有難いと考えています。以上です。
○山口座長
ありがとうございました。では、続いて柴田構成員から評価をお願いします。
○柴田構成員
お手元の資料46ページになります。有効性ですが、これは見た目で形式的に判断するとCともできます。現状の治療体系を考えますと、Dともできるという状況でかなり迷ったのですが、ここでは判断がつかずEとしました。理由は先ほど松山先生に御指摘いただいたようなところがあります。基本的には、予想ほどは効いてなかったというのが事実です。
安全性ですが、こちらは問題ありに印を付けました。がんの当該疾患に対する既存の治療と比べたときに著しく副作用が増えているというわけではないのですが、これは日常診療で使われている治療法ではないことと、もう1つは有効性がどのような領域でも証明されていないということとのそういうリスク/ベネフィットバランスの問題もあります。
もう1つ、大事だと思っているのはこのコメント欄に書いてあるとおりです。本治療法全体に問題があるという判断ではないのですが、Grade3の肺炎が25例中1例出ています。治療効果に伴う生体反応の結果、サイトカイン放出症候群によるものと考察されているものなのですが、それ自体は当然、そういうことも予想されることで、それ自体は注意されれば問題ないと思いますが、本治療については今後の方向性として負担が少ないという特徴を踏まえて、抗がん剤治療が困難な病勢が進行した患者にも適用可能であると期待されている治療法であって、一方で先ほどの副作用の患者さんは基礎に肺気腫と間質性肺炎を伴っており、呼吸予備能が低下していたことから、投与後の免疫反応に対して入院治療が必要になったと考えられたと考察されていること、同患者は背景肺が肺気腫、間質性肺炎、胸水貯留を伴う易感染状態であることから、初回投与後の経過は、進行性肺がんの悪化に伴う肺炎の可能性が高いと考えたと記録されていることを踏まえますと、今後、本治療の開発の方向性が、仮に抗がん剤などが投与できない患者さんという方向に進んだ場合には、同様の事象が発生するリスクは相対的に高くなることになりますので、そういう意味で注意が必要であろうと考えた次第です。
まとめますと、上記副作用が観察された患者さんは、本試験下では25例中1例のみであったわけですが、それに基づいて過大に負担が少ないと解釈がされることがないように注意が必要であると思いまして、あえてCとしました。技術的成熟度についてはCとしました。まだまだ確立をしていないので、一定の専門の方に臨床試験を実施していただくということになろうかと思います。以上です。
○山口座長
ありがとうございました。松山構成員、もし何か追加がありましたらお願いします。
○松山構成員
同じようながん免疫療法が再生医療安全性確保法下で行われています。こういう総括報告書が出てきた後に、進めていいものかどうかということは、やはり広く考えていかなくてはいけないことだろうと、ですから総括報告書のこの結果というものをいかにしっかりと皆さんに周知していくかということは、私は非常にクリティカルなことではないかと考えています。以上です。
○山口座長
ありがとうございました。ただいまの御説明について、何か御質問はありませんか。免疫チェックポイント阻害剤が出てきて、登録がなかなか進まかったという事情はよく理解できますが、しっかりとした報告書を書かれていて、今後何かの役に立つ可能性は十分あると思います。こういう研究がどういう方向に進むかということを考えるときに、今回のデータが役に立てばいいかなと思います。何かありませんか。それではないようですので、告示番号旧6については、ただいま御審議いただいた結果を取りまとめて、先進医療会議に御報告します。
続きまして、試験実施計画の変更について事務局から御説明をお願いいたします。
○医政局研究開発振興課長補佐
今回、試験計画書の変更申請が4件提出されています。
まず1件目ですが、資料4の55ページを御覧ください。横浜市立大学附属病院からの申請です。告示番号19、LDLアフェレシス療法です。適応症は閉塞性動脈硬化症(薬物療法に抵抗性を有するものであり、かつ血行再建術及び血管内治療が困難なものであって、フォンタン分類ⅡB度以上のものに限る。)となっています。
御審議いただく主な変更内容については、56ページを御覧ください。今回の主な変更内容ですが、マル1登録期間、研究期間の延長、マル2独立データモニタリング委員の所属の変更、マル3第三者委員の変更となっています。
期間延長については、試験開始から実際の症例登録まで約1年を要したということで、本年5月現在で目標症例数35例に対し、27例が登録ということです。1年間の研究期間の延長を行って、残りの8例の登録を完遂する予定と伺っています。以上です。
○山口座長
ありがとうございました。本変更内容について、何か御意見はありませんか。56ページの図を見ますと、やはり最初の遅れがずっとそのまま引きずっていて、○と△がパラレルになっていますので、適切な期間を延長したら到達する妥当な計画だと思いますが、よろしいでしょうか。特に御意見はないようですので、告示番号19の変更については認めることとします。
次の試験実施計画の変更について、事務局からお願いします。
○医政局研究開発振興課長補佐
資料5の59ページを御覧ください。九州国際重粒子線がん治療センターからの申請です。告示番号B28、重粒子線治療です。適応症は、非小細胞肺がん(ステージがⅠ期であって、肺の末梢に位置するものであり、かつ肺切除術が困難なものに限る)となっています。
今回、御審議いただく主な変更内容については60ページを御覧ください。主な変更内容ですが、1番目が症例登録期間をもとの4年から8年に、4年間延長する。2番目が選択基準・除外基準を変更する。3番目が組織確定不能例の取扱い及び診断基準の変更となっています。
今回の変更申請を行う理由については、61ページに記載がありますが、1)の研究期間の延長については、現在、研究開始から4年の段階で目標症例数150例に対して43例が登録となっています。その原因としては、症例登録の開始や協力医療機関の追加が遅れたことが挙げられています。
2)の選択基準・除外基準の変更については、選択基準に関して肺野末梢型肺がんの基準の見直し、除外基準に関しては活動性重複がんの定義を見直すことで、いずれも登録のペースの改善が期待できると伺っています。
62ページの中ほどに記載がありますが、いずれも試験の本幹への変更、あるいは評価項目への影響は伴わないとのことです。
さらに3番目の組織確定不能例の取扱い及び診断基準の変更については、キャンサーボード等で小細胞肺がんの可能性が否定されていれば、NSEやProGRPが基準値を超えていても登録が許容されるということです。変更内容としては以上です。
○山口座長
この変更内容について、何か御意見はありませんか。そもそもこれは末梢型のStageⅠの肺がんで、肺切除が困難というのは矛盾する記載で、今、胸腔鏡が非常に発達して割と簡単に取れるものが圧倒的に多いと思うので、かなり難しい対象だとは想像できます。組入れ状況は61ページに出ていますが、ほとんどが増えていないので、今回の対策はいいかと思いますが、この先予定どおり行かない可能性はあると思いましたが、何か御質問はありませんか。できましたら、これもずっと期限までチェックしないということではなくて、予定どおりいくかどうか1度チェックしていただいて、やはり抜本的なことをやらないと、ずっといつまでも終わらない試験になってしまう可能性があると思います。何か御意見はありませんか。今回の変更申請は一応お受けしたいと思いますが、ちゃんと報告してくださいということをお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。それでは特にほかに意見がないようですので、告示番号B28の変更については認めるとしますが、一応、きちんと報告してくださいということを付議したいと思います。
次の試験実施計画の変更について、事務局からお願いします。
○医政局研究開発振興課長補佐
資料6の65ページを御覧ください。名古屋大学医学部附属病院からの申請で、告示番号37、S-1内服投与、シスプラチン静脈内投与及びパクリタキセル腹腔内投与の併用療法です。適応症は腹膜播種を伴う初発の胃がんとなっています。
今回、御審議いただく主な変更内容については、66ページを御覧ください。主な変更内容としては、研究実施期間の1年間の延長となっています。こちらの変更申請の理由ですが、本試験では症例登録完了2年後の本年2020年7月に評価項目の解析を行い、試験を終了することを予定していましたが、2020年5月現在、3施設7症例が試験治療を継続中であるということです。主要評価項目の解析により、有効性の評価は可能とは考えられるのですが、長期の有効性の評価のため、主たる解析の2年後まで試験期間を延長し、副次的に3年全生存の割合を評価することが必要と考えられたということです。以上です。
○山口座長
本変更内容について、何か御意見はありませんか。
○藤原構成員
これは一連のパクリタキセル腹腔内投与療法を巡る先進医療の1つなのですが、試験期間を延長した場合に総括報告書は試験期間延長後になるのですか。それとも主要評価項目は解析できるわけですから、もっと早い段階で総括報告書は出るのですか。パクリタキセル腹腔内投与は、結局何か曖昧なまま放ったらかしになっているので、粛々といろいろなものが出てきたら結果を出しておかないと困ると思いますが。
○山口座長
何かありますか。
○医政局研究開発振興課長補佐
貴重な御指摘を頂きまして、ありがとうございます。制度的には、主たる解析結果については試験終了前に提出いただくことは可能ですので、今回、部会としてそのような形で主たる解析結果については先に提出するようにとコメントいただけましたら、そのように研究者にお伝えするようにいたします。
○山本構成員
ちょっといいですか。パクリタキセルだからということかもしれませんが、一応、臨床研究法で研究終了前に主要評価項目が出たときは、出てから1年以内にCRBには報告することとなっていますが、全部試験終了してから、そこで公表するかどうかというのは選べることになっているはずです。主要評価項目が出ても研究全体が終了していない場合に、先にそれが公表されてしまうとjRCTに載ってしまうので、そうすると後でペーパーにするのが難しくなる可能性があるので、そこはこちらがパクリタキセルが重要だから出せということではなく、あくまでそれはCRBが審査して決定する権限がある話だったと思いますので、CRBの法律上の権限を通り越して、こちらが強要するのは法律を越える行為になるのではないかと思います。そこはちょっと注意が必要かと思います。
○藤原構成員
私が指摘しているのは、臨床研究法上の対応というよりも、ほかにもたくさん先進医療でやられているパクリタキセルの腹腔内投与に係る臨床試験の取扱い方です。結局、どれも何かここで議論した後に事務局からまたこういうことを伝えますと引き取られて、その後どのようになったかというのは、前の東大病院の事例などがそうですが、この前に近畿大学も多分やったと思いますが、結局、今どういう状態なっているのかというのが見えないのです。ですから、定期的に総括報告書は別として、このパクリタキセル腹腔内投与に関してはどうなっているかという進捗を示していただかないと、患者申出療養も何かどうなっているかが分からない状況なので、患者さんから見てパクリタキセルの胃がんに対する腹腔内投与は結局どういう評価になったのかというのが、未だにはっきりしないと思うのですが。ですから、せめてこういう試験が先進医療で走っていて、これは試験期間がいつまでで、ただ臨床研究法上の総括報告書はいつ頃に出ますなど、そういう予定の一覧表を時々ここで見せてもらうことをしていただくと、ユーザーフレンドリーかなと思いますが。これは天野さんに聞いたほうがいいかもしれませんが。
○山本構成員
ここの先進医療会議は技術部会のようにというのはいいのですが、臨床研究法が出てからややこしくなっているので、原則ここは公開になっています。もしCRBで終了するまで非公開にするということを決めながら、この公開の場でその結果を出させたりするようになると、それはややこしくなってきて、研発課は臨床研究法の所管をされているので、そこはやはり法律のほうが多分重いはずですので、法律を越えない形で適切に技術部会の構成員の指摘がもっともであった場合には、臨床研究法上の問題を起こさないような形で整理していただきたいなと思います。
こちらの制度のほうが、臨床研究法よりも先にできてしまっているので、後で臨床研究法ができていますから、若干そういう例えばCRBとこちらの法律上の責任がどちらが重いかなど、そういうところが今ちょっとまだ曖昧なままで走っていると思いますので、恐らく法律のほうが重いと思いますが、これからそういうところは整理して余りバッティングしないようにしていっていただきたいことと、最終的には先ほども申し上げましたが、結果、研究が最終的に適切な形でピアレビュージャーナルに出るというような、そこの成果を毀損することのない形でやっていっていただきたいなと思っています。
○山口座長
何かコメントはありますか。
○柴田構成員
割り込んでしまって申し訳ありません。山本先生の御指摘はごもっともなのですが、そもそもがんの領域では通常プロトコルの主たる解析と最終解析と分けて書いてある場合には、主たる解析が終わった段階で学会発表なり論文公表をします。それを今回の改正が本来3年でそうするといっていたものを、プラス2年まで、主たる解析のタイミングを延ばすということが妥当なのかということが1つの論点だと思うのです。逆に言うと、3年時点での解析を主たる解析として、プラス2年の解析を最終解析とするという枠組みを取るならば、主たる解析の段階で結果を公表しないというのは、がんの臨床試験において著しく不思議な対応です。ですので、それが論文公表までjRCTの結果を伏せるかどうかというのはテクニカルな問題として検討しないといけないのですが、通常は主たる解析のタイミングで主たる解析をやったら、その結果は速やかに学会発表をするので、その学会発表された段階で、ここで公表できないということはあり得ない。
○山本構成員
ただ、がんの常識とがん以外の領域での扱いが違う可能性があることと、jRCTの公表は通常、CRBで審議したら即座にjRCTに載せるということになるのです。ですので例えば論文公表まで待ってほしいということになったら、それはCRBに決定権限が法律上はあるのです。ですので、こちらからのリコメンデーションを最終的にはCRBで決定する権限があるという話と、こちらがCRBの権限を乗り越えて命令する権限は恐らく法律上はないのではないかなということです。
おっしゃるとおり、臨床研究法上は主要評価項目が出て1年以内に研究を終了しなくても、CRBに報告する義務があるのでCRBまでは絶対にいくはずなのです。
○医政局研究開発振興課長
すみません、法律とか法令の条文をしっかり読まないといけないのですが、基本的には最終の結果が出たときには公表しなくてはいけないという条文があったかと思います。一方で、公表してはならないというのは逆にありません。ただし、個人情報の守秘は、当然、法令上かかっていると記憶しております。ですので、公表するか、どういうタイミングで公表するかというのは、研究計画上どうなっているのか、また、それがCRBで承認されているのかというところに尽きるのかなと思っています。私の記憶の範囲なので、確認をさせていただきますが、おっしゃるとおりここで出せということが決まったからイコール絶対に出せるのかというのは、それは違うかなと思います。ですので、少なくとも今いただいた御意見については、こちらで研究者とも相談させていただいて、どういった情報が出せるのかということを法令上も含めて、しっかり整理をさせていただきたいと思います。
○藤原構成員
結果は別に報告してもらわなくてもいいので、CRBの中ではちゃんと試験期間が変更になれば当然報告されるわけです。CRBは自分の施設の1試験しか興味はないでしょうから、例えばこの試験をやっている医療機関が、名大さんのCRBは近大さんのCRBや東大さんのCRBが何をやっていても興味がないわけです。でも、臨床家からするとパクリタキセル腹腔内投与全体像がどうなっているかということは見たいので、各試験が今のCRBの登録の上ではこういう試験期間になっている、症例数がこうなっているなどというのは先進医療技術審査部会に適宜まとめて、示していただくということがいいのかなと思います。
これは先日の先進医療会議の親会議のほうでも、重粒子線や陽子線の治療が何か全然進んでいません、いい加減なデータしかそろっていないとなったのも、あれも1つ1つの試験を見ているとぼやっとするのですが、全体をちゃんと期限を区切って状況をまとめてあげて、こういった平場へ出していただく。それは当然、公表資料に基づくけれども、施設をまたがって出てくるということが、私はユーザーフレンドリーかなとは思います。結果にはこだわりませんので、どういう状況かということが一覧表か何かになっていると先進医療でみんなが評価したものが、その後結局どうなったかということが見えづらいところがあるので、公表されているデータを基に、まとめてもらえればなとは思いますが。
○柴田構成員
しつこくて申し訳ないのですが、課長がおっしゃったように通常プロトコルにどのタイミングで公表するかと書かれるものです。その内容に基づいて、ここでOKが出て、なおかつCRBでもOKが出ていてという話になっているはずです。そのタイミングを研究終了まで私たちは公表したくないというものを持ってこられたとしたら、多分ここで審査をするときにもっと早く公表しないと駄目だという意見が出て、プロトコル上そういうものが書かれるということになると思います。
例えば、これを20年やって20年後に結果を出しますという計画が出てきたら、それは絶対許容されずに、区切りのいいところで出しましょうという計画に基づいて実施されることになると思うので、法律上の解釈は別途あると思いますが、ここでのプロトコルの規定に基づいて公表する、しないということが適切なタイミングで定められるということになると思います。そこのところは、今回そのプロトコルでどのタイミングで公表するのかという話は、この中では出てこないので、そこがちゃんと詰められているのかというのは懸念事項です。
観察期間を延ばすということ自体は、サイエンティフィックにも医学的にも問題ないと思いますが、もともと先進医療で認めるときに余り長期に結果が出ないまま漫然とやられるというのは、保険収載をゴールとして考えたときに適切ではないのでこのぐらいの期間にするべきだという議論は、試験デザインの妥当性の所で議論されていることなので、今回の改定に伴って公表をどういう方針で行うのかというのは、詰めていただく必要があるのではないかなと思います。
○山本構成員
jRCTでパクリタキセルを使っている試験は、検索は可能です。そちらを見れば誰でも見ることは今はできます。ただちょっとここで申し上げておきたいことは、実際、私もクリニカルトライアルズ・ドット・ガブやjRCTなどで、幾つか検索をしてその結果をもって総説を書いたりしたこともあるのですが、jRCTの検索機能がクリニカルトライアルズ・ドット・ガブと比べて著しく悪いので、jRCTのほうのユーザーフレンドリーさを上げてほしいなと思います。そうすると余りこういうこと言わずに、一般市民もそうですし、研究者も知りたい情報をjRCTで適宜検索をして知るということができるようにはなると思います。
○医政局研究開発振興課長
大変貴重な御意見ありがとうございます。適宜、改善はしておりますが、具体的にこの辺が悪いという御指摘を頂いて、さらなる改善に努めたいと思います。
○山口座長
ちょっと確認ですが、66ページの変更というのは評価項目の解析を行わないわけではなく、7月にやります。ただ、今の時点で7人も継続して使っているので、観察期間を長くしたいということですよね。報告しないと言っているわけではないですよね。
○医政局研究開発振興課長補佐
もともとの試験期間を延長されたい動機としては、その7人の患者さんに先進医療として治療を継続したいということのようです。
○山口座長
そのための延長ということで、よろしいのではないかと思いますが。別に報告を遅らせるということは言っていないので。
○石川構成員
藤原先生の途中の言葉で、ユーザーフレンドリーということなのですが、先生はこの医療の中での先生方の使い方について指針になればということだと思いますが、私はこれをきちんと表にしてまとめて出してくれと何回か前に随分と言いました。かなりこのパクリタキセルは東大のものが出たときに、これはもしかしたらうまくいっているのかなという印象がすごくあったのが、結局、患者さんが途中で実験からずれてしまってうまく結論が出なかったという大変残念な状態だったのです。その後もいっぱいパクリタキセル腹腔内投与が出てきて、少なくとも私の頭の中ではぐちゃぐちゃになっていて、今現在、この先進医療会議だけではなくて、患者申出というものも出てきたりして、言ってみればユーザーということだけではなくて、国民、患者のほうにもこういった治療についてはかなり評価できるような、一覧できるようなものが必要とされているということだと思います。ですから、結論を出す、出さないというその区切りについては、法的ないろいろなルールがあるということはもちろんだと思いますが、私たちが分かるようにこのパクリタキセルの腹腔内投与の整理はしておいていただきたいと思いますので、是非、お願いします。
○天野構成員
今の御指摘と関連しますが、公開についての法令上の解釈やアカデミアにおける在り方というのは、それは専門の先生方の御意見に任せますが、先ほど藤原先生の御指摘に重ねて申し上げるならば、もちろん結果が分からない、有効性・安全性が分からない、だから臨床試験をやっているし、先進医療としてやっているというのが建前であるのは十二分に承知していますが、ただこれだけ長期間にわたって手を替え品を替え、この治療に関する先進医療が複数行われています。加えて、患者申出療養も行われていて、一部の施設では自由診療でやっている所もあります。そういった状態で、当然患者たちが期待して入ってきているわけです。期待している患者さんに対して、有効性・安全性に関する結果を途中で示せるのであれば結果を示すということは研究者に求められる責任であり、野放図に期間延長をしてやることは許容されないとは感じていますので、評価を出せるのであれば可能な範囲で出していただきたいと考えます。以上です。
○山口座長
ありがとうございました。ほかにはありませんか。幾つか御指摘がありましたが、1つはやはり今までのものを少し整理してもらいたいということ。今回もこれは7月に解析はしていただいて、その結果を報告いただきたい。例えば8月などその辺りをめどに、全体を取りまとめてこの結果を聞くなど、何か少し前に進んで分かりやすいような形にしていただけたらと思います。今回の申請は、長期生存が7例いるので、その方に引き続きやりたいということですので、お認めしてもよろしいでしょうか。いろいろ御議論いただきましたが、この申請に関しては、告示番号37の変更については認めることとします。貴重な御意見をありがとうございました、
続きまして、次の試験実施計画変更について事務局からお願いします。
○医政局研究開発振興課長補佐
資料7の67ページを御覧ください。こちらは東京西徳州会病院からの申請で、告示番号48、腎悪性腫瘍術により摘出された腎臓を用いた腎移植です。適応症は末期腎不全(慢性維持透析が困難なもの)となっております。
本先進医療については予定症例数42例に対しまして、現在の登録症例数が0例となっております。今回の主な変更内容ですが、1番目が申請医療機関における研究総括責任者の変更、2番目が申請医療機関の実施責任医師の変更。3番目が研究実施体制の変更となっております。
68ページにお進みいただきまして、変更申請を行う理由ですが、前任の研究総括責任者の退職に伴って、実施体制の変更が必要となったということで、具体的には、申請医療機関が移植実施施設の要件(責任者及び医療機関)を満たさないために、図にお示ししたとおり、移植実施施設から腎摘実施施設へ変更となる。一方で、移植実施施設として生体腎移植を多く経験している施設を新たに追加し、試験を実施できる体制としたいため変更申請に至ったとのことです。こちらの変更について、御了承いただき次第、IRBに試験計画の変更及び先進医療としての協力医療機関の追加の申請を行う予定となっているとお聞きしております。以上です。
○山口座長
はい、この変更内容について、何か御意見はございませんか。まだゼロですね。なかなかやはり腎部分切除が随分普及したので、対象になるような症例が大分減っていて、今後どうなるか、なかなかちょっと難しいかもしれませんね。どうぞ。
○真田構成員
若干形式的な御質問になるのですが、今回の変更承認状況のところで、こちらで認められ次第、各倫理審査委員会に申請をかけますということですが、建前上その流れが認められているのかどうかという疑問なのですが。
○医政局研究開発振興課長補佐
1つには、腎摘施設及び移植施設については、先進医療実施届出書の中で規定されていまして、今回の変更申請ではその届出書の記載内容の変更を認めていただきたいという趣旨です。
○真田構成員
そうだとすれば、試験計画書にもそのような記載があってしかるべしと思うのですが、その点の変更とかはかけられる予定はないのでしょうか。
○医政局研究開発振興課長補佐
試験計画書の変更としては研究責任者の変更等が必要となりますので、今後そのようなかたちで記載を変更いただくように伝えさせていただきます。
○真田構成員
この今回の変更の流れはあくまでも特異的なものであって、何らかの事情があるということであれば、解釈の余地もないではないのですが、一応どこがしかの倫理委員会で認められたものが上がってくるという建前だと理解をしていましたので、それが今回の件が前例となってそういうことに広くなってしまうと困るなと思っていたので、一応申し上げた次第です。
○医政局研究開発振興課長補佐
ヒト指針下で行われる試験については、必ずしもそのようには認識していないのですが、今回の研究実施体制の変更申請については、仮に試験計画書の変更を先に倫理委員会を通してしまって、こちらの部会で通らない場合に、先に進めなくなる可能性も憂慮された上で、このような御相談というか、変更申請に至ったと認識しています。
○山口座長
よろしいですか。ほかに何かございませんか。それでは特にないようですので、告示番号48の変更についてはお認めすることといたします。続きまして、先進医療Bの申請取下げを事務局から御説明をお願いします。
○医政局研究開発振興課長補佐
資料8の69ページを御覧ください。信州大学医学部附属病院から新規に申請がありました医療技術、一側性高度感音難聴に対する人工内耳挿入術について、今回取下げの申請がございました。本技術については、本年1月の第94回先進医療技術審査部会において、新規申請技術として御審議いただきまして、条件付き適の御評価をいただいていたものです。部会でいただきました御意見に基づいて試験計画書及び説明同意文書等を御修正いただきまして、最終的には部会として適の御評価を頂いていたところです。
本来であれば、先進医療会議での御評価に進むところではありますが、今回69ページ中ほどに取下げ理由を記載しておりますが、試験の実施責任者が2020年4月より当該医療機器の製造販売事業者の設置する寄付講座に異動したことにより、利益相反管理の上で研究責任者の変更が必要となり、申請医療機関からの申請が困難となったため、申請中の先進医療の取下げを行うということです。
今後については、当該先進医療で用いる医療機器の製造販売業者と利害関係のない責任医師の下で、他の医療機関からの申請を検討しているということです。以上です。
○山口座長
何か御質問はございませんか。これは折角審議したのに、結局責任者が寄付講座に異動したのでやれないという判断ということでよろしいですか。
○医政局研究開発振興課長補佐
はい。
○山本構成員
先ほどから臨床研究法の絡みもちょっと出てきていると思うのですが、やはり臨床研究法ができて、COIの管理とかがやはり一律になって、そういう意味では厳しくなっていいのですが、多分、そのあおりを受けてしまって、恐らくこの状況だと、ちょっとCRBを通せないというか、COIの管理の面でどうしてもうまくいかないということだと思います。以前はそういうことが余り表沙汰にならなかったのですが、ちょっと残念なのですが、法律ができたことによるこういう影響が出ているということなのだろうなと思います。
それでいうと、先ほど真田先生がおっしゃったことも、今までは指針で倫理委員会を通してこっちに上がってくるでよかったのですが、CRBのほうの手続きも煩雑で、かつ、かなり審議待機時間というか、待たされたりとか、ということもあるので、一律に全部CRBを通してからこっちに上げてこいというのも、ちょっとだんだん厳しくはなっているのではないかと思うので、どちらを先にするかというのも、合理的で効率的な方法を取っていただくほうがいいのかなとは思います。
○山口座長
寄付講座の方がこういう試験はやれないというわけではないのですよね、だからといって。利益相反がきちんとすれば、やれるはずですよね。
○山本構成員
多分、ちょっと難しい、要は特殊関係にあるほぼ社員になってしまうので、給与が100%そこから出ているような形で見ると、多分ちょっと難しいのだと思います。分担医師にすればいいのだろうと思いますが、責任医師は難しい。恐らく今回は、同じ部屋で、教室で責任医師を取れる人が他にいないのかもしれませんが。
○医政局研究開発振興課治験推進室長
基本はそういう形になるのだろうと思うのですが、一応今の運用上はどうなっているかと言いますと、まず、研究責任医師であれば、直接の利益相反関係はまず避けなければいけないということになっていて、避けなければいけないということは、例えば、自分は分担医師になって、責任医師は別の方に譲るとかという話があるのですが、ただ、どうしても状況として、他に代替者がいない場合、その方でないと責任が務まらないというケースがあるかと思います。そういう場合には、例えば監査を入れる、あるいはモニタリングをする、いろいろなそういった条件を付けた形で、定期的にフォローし、定期的に報告をさせる形にして、例外的に認めるという運用の仕方も実はあるかと思います。
最後はケース・バイ・ケースの判断になるのだと思うのですが、原則は今先生がおっしゃったとおり、避けるべきだというのが結論だと思います。
○山口座長
これ、信州大学のほうからも申請があるわけですから、そもそもそういう人事をやることがおかしいので、分かっているのになんでするかという気がします。あえて余人に代え難いことをやっている人をわざわざそういう講座に持っていって、折角皆さんに努力をしてもらったことが無になるというのもおかしいと思います。私としては信州大学に説明を求めたいぐらいです。
○一色座長代理
こういう場合は別な施設が見つかるまで1回凍結するなどして再審査にならないようにする方法はないのでしょうか。タイミングを図って再開したいという計画が明らかにあるのであれば、わざわざもう1回計画書の出し直しをして、同じような審査の手続きを踏むということの無駄を避ける方法は、何かないのかなと思いましたのでお聞きしたいと思います。
○医政局研究開発振興課長補佐
貴重な御意見をありがとうございます。基本的には先進医療B自体の申請が、医療機関からの申請という形になっています。今回、信州大学からの申請ということで、それができないということになると、医療機関を変えることで、また新たな別の先進医療という整理になってしまいます。ただ、先日の部会後も先生方には何度も御議論いただいて、プロトコルを固めていただきました。それはかたちとして残っておりますので、今後、それをもってご申請いただくことになるものと承知しておりますし、次に申請いただく予定の医療機関の具体的な名前もお聞きしております。一方で、CRBのほうの手続きとしましては、そこは医療機関等を変えるという手続きで可能のようですので、手続きは非常に簡略になっていると思います。いずれにしましても、医療機関及びご評価いただく構成員の先生方にも御負担の少ない形で進めていければと考えております。
○山中構成員
こういう類いの寄付講座は大学に結構あると思うのですが、人事は大体、臨床教室の主任教授が決めています。御存じかと思いますが。ただ、主任教授の中では、COIの概念は余り理解されておられない人もいるのではないかと思います。取りあえずメーカーさんが出してくれることになったので、ここの特任教授に、あるいは特任准教授になったらどうか、という教室員に対する声掛けが一般論として見られるかと思います。恐らく、今回もそういう経緯で、しかし、一方で信州大学の臨床研究支援センター等で、これはまずいのではないかみたいな議論になって、今回、先進のほうに報告してきたという経緯ではないかというように予想するのですが、やはり根っこはCOIに対する概念の理解というものを今一度、この主任教授の方にも理解していただいたほうがいいのではないかと考えています。
○山口座長
貴重な御意見をありがとうございました。
○真田構成員
今、議論になっているところは、やはり先進医療に入ってくる試験のいくばくかの割合が利益相反の法令上の整理が難しいという問題を抱えながら入ってきている試験というのがあって、例えば日本でも疾患のポピユレーションが小さい、あるいは研究しているポビュレーションが小さいような試験の場合、その研究を実施できる人が国内でも限られた人しかいないケースというのはよくあって、そういうものこそ真っ当に、例えば治験を通じた製品化等がし難い分野の方が先進医療を目指されてくるケースが多くて、そこは私、先ほど吉田室長の御説明を受けて非常に安心したというか、我々がかつてそういう疑問をお伺いしたときにも同じような結果をお伺いしていたので、その解釈は変わっていないということで安心したのですが、やはり余人に代えがたい場合の試験を、どのようにコンダクトしてもらって、臨床研究法に入ってくるかということについて、もう少し皆さんが分かるような形で議論が進めばいいなと思っています。
そもそもCOIというのはあれば駄目というのではなくて、それを出して公明正大に試験をして皆さんに評価してもらうということが目的で、出したから駄目よというのではなくて、出してもらうということが大事だということを、やはり皆さんに認識してもらった上で、その試験を評価するという必要がある一方で、今の世の中の議論では先ほどの寄付講座の方は外形的に駄目よという議論がどうしてもドミナントになってしまっているところがあるので、そこをもう少し例えば企業の人とかはもう臨床研究法でできないのですかという議論になってしまうわけですね。
今、企業も企業主導臨床研究などバンバンやろうとしているし、あるいは例えば臨床分野には専門家はいないけど、基礎の分野に専門家がいて、その人たちが臨床試験をやりたいという場合に、自分より全く専門ではない臨床の先生を探して責任者になってもらわないと臨床試験ができないという問題もあるのです。ですから、そういうことがクリアになるようにCOIの問題は扱っていただけたらいいなというように感じました。
○山口座長
ありがとうございました。信州大学はいろいろと御事情があったようですが、取下げ理由に沿って、特にほかに御意見がなければ一応お認めしたい、手続きを進めていただくようにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。はい、ありがとうございました。では、次に協力医療機関の追加について、事務局からお願いします。
○医政局研究開発振興課長補佐
資料9-1の71ページを御覧ください。告示番号36について、協力医療機関の1件の追加申請がございました。資料9-2、73ページにあります先進医療を実施可能とする保険医療機関の要件、様式第9号を満たしていることを事務局で確認しております。協力医療機関の追加として御了承いただきたく存じます。
○山口座長
よろしいですか。意見がないので、手続きを進めてください。続きまして先進医療Bの告示取下げ案について事務局からお願いします。
○医政局研究開発振興課長補佐
資料10、75ページを御覧ください。告示番号37について、協力医療機関の取下げ申請が1件ございました。取下げ理由としては、協力医療機関で登録された症例について、観察期間を含む全てのプロトコル治療が終了したためとのことです。以上について、特に御意見がなければ手続きを進めさせていただきたいと思います。以上です。
○山口座長
よろしいでしょうか。それでは本日の議題は以上です。構成員の皆さんは何か御意見、御質問はございませんか。第100回にふさわしい内容だったと思いますが、オンラインではなかなかこういう議論はやはりやりづらいですね。こうやって顔を突き合わせて久しぶりでやると、大変やりやすいなと、今日はあらためて感じました。それでは次回の日程を事務局からお願いいたします。
○医政局研究開発振興課長補佐
次回は令和2年7月9日木曜日の開催とさせていただきます。時間は16時から18時までの予定で、場所については別途御連絡をさせていただきます。また、本日の議事録については作成次第、先生方に御確認をお願いし、その後、公開させていただきますので、よろしくお願いいたします。以上です。
○山口座長
それでは第100回先進医療技術審査部会を終了いたします。どうもありがとうございました。
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