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ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会総会)> 中央社会保険医療協議会 総会 第539回議事録(2023年3月1日)

 
 

2023年3月1日 中央社会保険医療協議会 総会 第539回議事録

○日時

令和5年3月1日(水)10:00~

○場所

オンライン開催

○出席者

小塩隆士会長 秋山美紀委員 飯塚敏晃委員 笠木映里委員 永瀬伸子委員 中村洋委員
安藤伸樹委員 松本真人委員 間宮清委員 鈴木順三委員
長島公之委員 茂松茂人委員 江澤和彦委員 池端幸彦委員 島弘志委員 林正純委員 森昌平委員
吉川久美子専門委員 中村春基専門委員、田村文誉専門委員
<事務局>
伊原保険局長 眞鍋医療課長 中田医療技術評価推進室長
荻原保険医療企画調査室長 安川薬剤管理官 小嶺歯科医療管理官 他

○議題

○部会・小委員会に属する委員の指名等について
○新型コロナウイルス感染症の診療報酬上の取扱いについて

 

○議事 

○小塩会長
おはようございます。それでは、ただいまより、第539回「中央社会保険医療協議会 総会」を開催いたします。
なお、本日も新型コロナウイルス感染症対策の観点から、オンラインによる開催としております。また、今回も会議の公開につきましては、前回に引き続き、試行的にユーチューブによるライブ配信で行うこととしております。
まず、委員の出席状況について御報告いたします。
本日は、佐保委員、眞田委員、末松委員と羽田専門委員が御欠席です。
それでは、最初に委員の交代について御報告いたします。
公益代表の関ふ佐子委員におかれましては、2月28日付で退任され、後任として笠木映里委員が本日付で発令されております。
なお、笠木委員からは「自らが公務員であり、高い倫理観を保って行動する」旨の宣誓をいただいております。
それでは、新しく委員となられた笠木委員より、一言御挨拶をお願いいたします。
○笠木委員
おはようございます。このたび公益委員を拝命いたしました、笠木と申します。
社会保障法という分野の研究者をしておりまして、中医協については研究対象として長いこと関心を持って研究をしておりました。このたび、その中医協の公益委員という大変な重責を拝命いたしまして、緊張もしておりますけれども、真剣に務めてまいりたいと思います。これからどうぞよろしくお願いいたします。
○小塩会長
どうもありがとうございました。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、議事に入らせていただきます。
初めに、委員の交代について、部会及び小委員会に属する委員につきましても異動がございます。
部会、小委員会に属する委員につきましては、社会保険医療協議会令第1条第2項等の規定によりまして、中医協の承認を経て、会長が指名することとされております。委員のお手元に資料総-1といたしまして、新しい中医協の委員名簿とともに、異動のある部会及び小委員会の名簿の案をお配りしております。
今回は関委員から笠木委員への交代となりますので、4ページの診療報酬基本問題小委員会、続きまして、5ページの診療報酬改定結果検証部会、6ページ、薬価専門部会、7ページ、保険医療材料専門部会、8ページ、費用対効果評価専門部会につきまして、笠木委員に所属していただきたいと思いますが、そのように指名することとしてよろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○小塩会長
ありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきます。
続きまして「新型コロナウイルス感染症の診療報酬上の取扱いについて」を議題といたします。
事務局より資料が提出されておりますので、説明をお願いいたします。
○眞鍋医療課長
医療課長でございます。
それでは、資料総-2を用いまして「新型コロナウイルス感染症の診療報酬上の取扱いについて」、御説明をさせていただきたいと思います。
資料の説明に入ります前に、この新型コロナウイルス感染症につきましては、1月27日に政府の新型コロナウイルス感染症対策本部におきまして、今後5類感染症に位置づけること、それに伴いまして、各種の政策・措置について見直しを行い、医療提供体制等について3月上旬を目途に具体的な方針を示すという方針が決定されたところでございます。これを受けまして、診療報酬につきましてもこれまでは様々な特例があったところでありますけれども、類型見直しの議論や昨今のコロナの感染状況、診療体制を踏まえて、特例についてどのような対応をすべきかについて資料をまとめたところでございます。
それでは、具体の説明に入らせていただきます。ページを進めていただきまして、まず3ページから4ページ、5ページ、6ページまでが、最近の感染状況をお示ししたものでございます。
3ページでございますけれども、累計の陽性者数や死亡者数、そして、直近の感染者の数などが記載されてございます。
次、4ページを御覧いただければと思いますけれども、こちらは特徴的なのは、この黄色の折れ線グラフでございますけれども、見ていただきますと分かるとおり、オミクロン株が流行の主体となりました2022年以降、ここでは令和4年以降ということでございますけれども、それまでと比べて新規陽性者数は緑の折れ線グラフですけれども、増加をしておりますが、黄色の重症者割合は減少していることが示されているところでございます。
5ページが重症者の推移ということでございまして、それぞれこれまで各波があったところでございますけれども、このように重症者が推移をしていること。
そして、6ページでありますけれども、こちらは新規死亡者数の推移ということでございまして、こちらも御覧のように推移をしているところでございます。
7ページ、類型見直しに関する議論及び方針について御説明をさせていただきます。
8ページでございますけれども、ここから3枚が感染症部会における議論であります。感染症法上の位置づけにつきまして、感染症法に基づく私権制限に見合った「国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれ」がある状態とは考えられないことから、5類感染症に位置づけるべきとされています。その上で、医療機関の取組や地方行政について、位置づけの変更後も影響を緩和するための期間を設け、必要な準備を進めながら段階的な移行を行うべきとされているところでございます。
特に医療提供体制につきましては、9ページの中段、(2)とございますけれども、ここに入院、外来の取扱いについて、原則として、インフルエンザなど他の疾病と同様となることから、幅広い医療機関でコロナ患者が受診できるよう、必要となる感染対策や準備を講じつつ段階的に移行していくべきとされているところでございます。
11ページに進ませていただきます。先ほど冒頭で言及を行いました政府対策本部において決定されました対応方針を抜粋しているところでございます。ここは字が細かくて大変恐縮でございますが、若干詳しめに御説明させていただきますと、1ポツの感染症法の位置づけというところで、結語としては5月8日からでございますけれども、5類感染症に位置づけるとしているところ。そして、2つ目のポツの感染症法上の位置づけの変更に伴う政策・措置の見直しでございます。1つ目の○に、各種の政策・措置について見直しを行う、このうち患者等への対応と医療提供体制については3月上旬を目途に具体的な方針を示すとされており、1に「患者等への対応」、2に「医療提供体制」と項目が立てられているところでございます。1つ目の矢羽根で段階的な移行を目指すこと。そして、外来についてはということで、次の矢羽根でございますが、幅広い医療機関が新型コロナウイルス感染症の患者の診療に対応する体制へと段階的に移行していく。3つ目の矢羽根でございますが、入院については、現在感染症法の規定を根拠に講じられている入院措置・勧告が適用されないこととなる、幅広い医療機関が新型コロナウイルス感染症の入院患者を受け入れ、入院調整も行政が関与するものから個々の医療機関の間で調整する体制へと段階的に移行していく。4つ目の矢羽根ですが、今後診療・検査医療機関から広く一般的な医療機関による対応への移行、外来や入院に関する診療報酬上の特例措置や病床確保料の取扱いなど、幾つか例がございますけれども、各種対策・措置の段階的見直しについて、ウィズコロナの取組をさらに進め、平時の日本を取り戻していく道筋について具体的な内容の検討・調整を進めると記載がなされているところでございます。
12ページでございますけれども、こちらは現在実施されている措置を紹介してございます。こちらの自宅療養や宿泊療養を行うこと、外出制限、自治体による入院調整、陽性者に対するフォローアップなどがなされているところでございますけれども、類型見直しによりまして、こうした取扱いが段階的に見直されるということになるわけでございます。
続いて、14ページ以降でございますけれども、こちらが最近の感染対策の推奨事項ということで、表としておまとめしております。今年1月に関係学会のガイドラインが改定されております。字が小さくて恐縮でございますが、※7でございますけれども、2023年1月17日に改正され、その中でこの下で赤で囲ってございますけれども、「マスク」や「マスク以外の個人防護具」「病室・ゾーニング」のところに、それぞれ赤い字で変更されたところを書かせていただいてございますが、例えば「個人防護具」の「マスク以外の個人防護具」のところでは、手袋・ガウンに関しましては、患者及び患者周辺の汚染箇所に直接接触する場合に装着、直接接触しない場合は不要ということ。そしてまた「病室・ゾーニング」でございますけれども、専用病棟化は基本的に不要という内容に変更されているところでございます。
続きまして、15ページからが診療報酬上の特例の紹介でございます。
16ページに主なものを抜粋してございます。これまでコロナ診療における必要な感染対策や中等症・重症者患者への対応等を評価する観点から、累次の特例的な対応を設けております。外来における院内トリアージ実施料や入院における治療室の入院料の増点、そして、救急医療管理加算の特例などがあるところであります。
17ページから19ページ、この3ページにおきましては、こうした特例を設けてきた経緯について時系列で整理をしているところでございます。
例えば17ページの「1 外来」でありますけれども、この令和2年4月8日、それから、その下に※で初診からの電話や情報通信機器を用いた診療の実施について、これは最初の緊急事態宣言が発出された時期の措置ということになります。
また、18ページでありますけれども、例えば「2 入院」の一番下の令和3年8月27日、中等症2以上の中等症患者について、救急医療管理加算を6倍に引き上げるなどの措置を行ってございます。この頃、デルタ株の流行が非常に激しかった頃ということでございます。
ページを進ませていただきます。20ページ、21ページでございますけれども、こちらは特に算定回数が多いなど影響が大きいと考えられる特例の算定状況を掲載してございます。
20ページでございますけれども、外来におきましてコロナ疑い患者を診療した場合の院内トリアージ実施料、そして、診療・検査医療機関である旨を公表して対応した場合にさらに算定できる二類感染症患者入院診療加算、コロナ確定患者を診察した場合に算定できる救急医療管理加算について、算定回数の推移を掲載してございます。棒グラフはそれぞれの医療機関数でございます。
21ページでございますが、こちらは入院における救急管理加算の特例やICU等の入院料の特例の算定回数でございます。左側がICUやHCU以外の主に一般病棟ということになります。これまでの感染の波とともに増減しつつ、入院患者のうち中等症2以上の入院患者さんの割合は減少していることが分かります。右側がICUなどにおける入院料の特例でございますけれども、こちらも患者数は今年に入って増加しているものの、灰色の部分ですね。特定集中治療室管理料における入院の数が減少していることをお示ししているものでございます。
22ページ以降は、昨今のコロナ医療の実態に関する資料でございます。
23ページでありますけれども、オミクロン株が主体となってしばらくたった最近の状況について実態を把握すべく、私ども事務局で病院と診療所に対しましてヒアリングを実施しました。この概要にございますとおり、12病院及び8診療所に対して実施したものでございます。
まず、23ページには外来に関するヒアリング結果をまとめてございますけれども、医療機関によって対応は様々であったということでございますけれども、受入れ体制で大きく2つのパターンがございます。まずは1つ目のチェックでございますが、病院や敷地面積の大きい診療所におきましては、空間分離のためのプレハブや建物内の別室を設けまして、診療室や待合室として活用するケースが多く見られました。この場合、一度に多くの患者さんを診療することや、別室にいらっしゃる患者さんへの対応が必要となることから、看護師さんを追加的に1~2名配置する場合が多くございました。もう一つのパターン、これは2つ目のチェックのところでございますが、ビルにある診療所など敷地面積が小さい施設におけるというものでございますけれども、この場合は特に別にスペースを設けることが困難であるということで、時間的分離で対応していることが多い状況でした。この場合は、追加的な人員配置が必要ない代わりに、診療可能な患者さんの数が減少するということでございました。また、いずれの場合におきましても、「感染対策」のところにまとめてございますが、PPEの装着による業務効率の低下やストレスはあるということでございました。
24ページに進みまして、こちらは入院医療の状況でございます。まずは1つ目のチェックにありますように、入院患者さんの高齢化が見られることと、入院後に増悪して中等症、重症になる患者さんの割合は低下しているということでございました。一般病棟の看護職員の配置といたしましては、約半数の施設がコロナ以前の配置と同程度で対応し、もう半分はコロナ以前よりもやや手厚い配置で対応している状況でございました。通常よりも手厚い配置が必要となる理由としましては、高齢化によりまして、食事などの日常の介助、徘徊の防止の業務が増大していること。そして、2でございますが、看護補助者や清掃業者が病棟に入れないことにより、消毒や清掃、下膳などの業務も看護師が代替していることといったことがございました。このため、看護配置はコロナ以前と同程度でも介護福祉士等をコロナ病棟に追加で配置しているケースもございました。また、転院調整につきましては、自治体の調整が入らなければ、通常よりも多くの時間を要する場合があるとのことでありました。ICU等におきましては、ECMOを使用する患者さんの割合は低下しているということでした。その上で、ECMOを用いない場合におきましては、通常の配置と変わらないケースが多く、ECMOを使用する患者においては通常よりも手厚い配置をしているケースがございました。「感染対策」のところには、これは外来と同様でございますけれども、PPE交換の手間は慣れにより軽減されてきているが、業務効率の低下や、常時装着によるストレス・体力の消耗は依然としてあるということでございます。
「まとめ」で下に2つ文章を作らせていただいております。外来医療においては、発熱外来の整備状況や発生届の簡略化により、一部の業務が効率化している。一方で、空間分離または時間分離など必要な感染対策は継続しており、そのための人員の確保やPPEの使用を行っている。入院医療におきましても、重症化率の低下や経験の蓄積、看護補助者による介入によりコロナ発生当初より業務・人員配置の効率化がされている。一方で、院内クラスターへの防止のため必要な感染対策は継続しており、また、入院患者の高齢化に伴い、介護・リハビリや退院支援に関する業務が増大しているとまとめさせていただいております。
25ページからは、ただいまお話をさせていただいた入院医療の実態について、データを幾つか御紹介をさせていただきたいと思います。
25ページでありますけれども、2022年1月以降、入院患者さんのうち、介護施設等から入院する患者や65歳以上の患者が増加傾向となっているものをお示しするものでございます。
26ページでございます。こちらはコロナの入院患者さんがどういった病棟に入院しているかということをお示しするものでございまして、見ていただきますと、オレンジが「ICU等」、ブルーが「急性期一般」というところでございますけれども、多くの患者さんが急性期一般病棟に入院していることをお示しするものであります。
27ページでありますけれども、こちらは入院先の病棟につきまして、介護施設や福祉施設から入院した患者さん、または65歳以上の患者さんに限ったものをお示ししたものでございますけれども、こういった施設入所者や高齢者につきましても、ほとんどが急性期一般病棟に入院しているという実態があったということでございます。
次、28ページでございます。これは平均在院日数について、介護施設等からの入院患者さんにつきまして、在院日数が長い傾向にあることをお示しするために用意した資料でございます。
次、29ページになりますけれども、こちらは介護施設等からの入院患者さんのADLスコアを示したものでございますけれども、介護施設等からの入院患者は他の高齢者よりもADLスコアが低く、こうした入院患者さんが増加することによりまして、介護やリハビリ、必要なそういう業務が増加する状況にあることが考えられると思っております。
最後、論点でございます。31ページ、御覧いただければと思いますけれども、先ほど11ページで御紹介いたしましたように、政府全体の今回の2類、5類の見直しにつきまして、類型見直しに伴いまして、それぞれ段階的な見直しであること、そしてまた3月上旬にその具体をお示しをすること、その中でこの診療報酬の特例措置についても見直すということ、この流れの中でこのように論点を出させていただきました。
これまで、コロナ診療における感染対策や中等症、重症患者への対応等を評価する観点から累次の特例的な対応を実施してきた。
外来医療においては、発生届の簡略化や発熱外来における経験の蓄積等により効率化している業務がある。ただし、類型見直しに伴い、療養指導やフォローアップ、入院調整における自治体の役割が縮小し、医療機関がこうした業務を担う必要性が高まると考えられる。
入院医療においては、重症化率の低下に伴い診療内容・人員体制がコロナ発生当初よりも効率化されている。また、入院患者が高齢化するとともに介護施設等からの入院が増加しているものの、介護施設等入所者を含めた高齢者の多くが急性期病棟に入院をしている。
感染対策については、ガイドラインの改定によりPPEの活用や入院患者のゾーニングについて一定程度効率化した対応が示されてはいるものの、今後も必要な対策は継続する必要があり、医療機関、薬局等における医療従事者の負担は一定程度継続すると考えられる。
論点としまして、こうした現状を踏まえ、今後の診療報酬上の特例についてどのように考えるかとさせていただいてございます。
事務局からの説明は以上でございます。
○小塩会長
どうもありがとうございました。
それでは、ただいまの説明につきまして、御質問等ございましたらよろしくお願いいたします。
最初に、長島委員、お願いいたします。
○長島委員
ありがとうございます。
まずは、23ページ、24ページに、コロナ診療の実態に関するヒアリング調査結果が掲載されております。短期間において限られた医療機関であってもこのような現場の実態を調査いただいたことに感謝いたします。
23ページの外来医療では、各医療機関ではおのおのの機能やキャパシティーに応じて懸命に発熱外来等の対応をしていることが分かる結果となっております。新型コロナウイルス感染症が5類に変更になり、マスク着用の判断が個人に委ねられることを考えますと、これまで以上の患者数となることも想定する必要があり、外来医療においては多くの発熱患者に対する十分な対応力を維持しなければならないということが政策の転換点として極めて重要であることを申し上げたいと思います。そして、これまで発熱外来に尽力してきた医療機関が撤退するようなことのないような御対応をお願いしたいと思います。また、今後示される様々な変更の具体策の中で、こういった現状をどのように変えていけるのか、どういった具体策が必要となるのか、よく考えていく必要があります。
24ページの入院医療ですが、「一般病棟における医療・体制」の2つ目のチェックに、看護師配置について記載されており、通常よりも多く必要となる理由も記されております。コロナ以前の配置で対応しているところについても、特に民間病院では看護師を増やせない中、病院内でどうにか工夫して回している状況があり、現場の負担は大きくなっております。また、コロナ患者さんを担当する医療従事者のストレスや体力の消耗は大変なものであります。これまで報道されてきたように辞職する看護師が増えており、各病院では全体の看護職員をローテーションして対応するなどの工夫をしている実情があります。これも現場には大きな負担となっております。この点につきましては、後ほど吉川専門委員からコメントいただくことについて、小塩会長の御検討、よろしくお願いいたします。
それでは、31ページの論点についてコメントいたします。まず、今回新型コロナウイルス感染症の類型が変更されますが、ウイルスの感染性及び感染対策の必要性は変わるものではないということを、この中医協の共通認識とすべきであると強調させていただきます。その上で、実際には既に多くの医療機関ではふだんは自院に通院していない患者さんにも十分対応しておられますが、今後は地域を面としてより多くの医療機関にふだんは自院に通院していない患者さんも含め、幅広く御対応いただくように我々も努力していく所存でおります。
しかし、医療現場では、引き続き感染対策を講じる必要があります。今後示される医療提供体制の在り方や感染対策を踏まえ、今回お調べいただいた実態も参考にしていただき、診療報酬上の適切な評価を行っていただくことを強く要望いたします。その際、これまで保健所や地方自治体が対応してこられた入院調整や陽性患者のフォローアップ、療養指導などについては、今後医療機関が担うこととなります。新たな業務が発生することが予想されますが、その場合には財政支援も重要となります。
さらに、25ページ以降に様々なデータが示されましたが、患者さんの高齢化が見てとれます。高齢の患者さんは、もともと基礎疾患や機能障害あるいは低栄養等の特徴があり、重症化リスクが高い状態です。加えて、現場では日常の介助や認知症への対応などもあり、従事者の負担が増しております。オミクロン株が主流となって以降、要介護高齢者の感染が増加し、医療機関に介護の負担が増加していることを踏まえますと、これまでのように主に急性期病院で陽性患者を受け入れるだけでなく、特に高齢者に関しましては、中小病院が引き受けなければ、通常の医療提供体制に戻せません。介護保険施設等における医療支援を充実させるとともに、中小病院が陽性患者の入院を引き受けられるように、適切な対策を講じることも必要であります。つきましては、今後の各地域における医療提供体制への取組を支え、類型変更に伴い入院調整等の新たな業務への対応が必要になることも考慮に入れ、現在の特例を継続していただくよう強く要望いたします。
私からは以上です。
○小塩会長
ありがとうございました。
先ほど長島委員から吉川専門委員の御意見も伺ってはどうかというコメントいただきましたけれども、各号の委員の方々から意見を伺った後で吉川専門委員に御発言いただきますので、御準備をお願いいたします。
続きまして、島委員、お願いいたします。
○島委員
ありがとうございます。
事務局におかれましては、現在までの経緯、現状について詳しく解析していただいて、御説明をいただき、ありがとうございました。
それでは、31ページの論点について意見を述べさせていただきます。本年5月8日から新型コロナウイルス感染症が5類感染症に位置づけられることになり、外来、入院のコロナ感染症患者が減少してきていますので、ようやく3年以上にわたるコロナ感染症との闘いが一段落するとの思いがありますが、一方で、感染力の増強に伴い、院内クラスター発生によって診療抑制を強いられたり、高齢者罹患が増え、死者が増えてきていることを考えると、コロナ病床への看護配置、感染防御も含め、コロナ感染症患者に対応する体制は変わりなく行わなければなりません。2019年以前のコロナのない医療状況に早く戻りたいと誰もが思っておりますが、現実にはタミフルのような特効薬がない状態で、ウィズコロナの医療を行っていかなければなりませんので、現在のコロナ特例を継続してもらわなければ、医療施設は精神的にも体力的にも持ちこたえられないような状況にあります。このことは医療を受ける全ての患者さんにとっても大きな損失になると考えますので、どうぞ御配慮をよろしくお願い申し上げます。
以上でございます。
○小塩会長
ありがとうございました。
続きまして、林委員、お願いいたします。
○林委員
ありがとうございます。
総-2の31ページの論点の中で、特に感染対策について歯科の立場から発言させていただきます。歯科医療機関におきましては、新型コロナウイルス感染拡大以前より、スタンダードプリコーションを励行してまいりました。今回の新型コロナウイルス感染症初期には、歯科は感染拡大のリスクが高い職種と言われておりましたが、コロナ禍ではスタンダードプリコーションに加えて、ワンランク上の感染対策を即座に講じた結果もあり、歯科医療を介しての感染拡大やクラスター発生の報告は日歯の調査の結果ではほとんどなく、歯科医療を通じた明らかな感染の報告はありませんでした。歯科職種が安全に歯科医療を提供する上でも、引き続き感染予防策は必要と考えております。今回の新型コロナウイルス感染症の類型引下げは、医学的な収束によるものとは言えないことから、現在の感染予防策を緩和できる部分は少ないものと考えております。5類に変更になったとしても、歯科としてもコロナ特例については引き続き必要性を加味し、継続されることを強く要望いたします。
その上で、特に施設等における要介護者において、クラスター等の発生に伴い、歯科治療を中断するケースも多かったと聞いております。いまだコロナ前の状況には戻っていないとも思われております。口腔健康管理を定期的に実施していくことは、誤嚥性肺炎や熱発のリスクを軽減することから、非常に重要と考えております。厚労省におかれましては、このような視点も重視して、引き続きデータ等を整理していただきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
私からは以上でございます。
○小塩会長
ありがとうございました。
続きまして、森委員、お願いいたします。
○森委員
ありがとうございます。日本薬剤師会の森でございます。
まずは新型コロナウイルス感染症に係る現場の薬剤師、薬局の対応について説明させていただきたいと思います。新型コロナウイルス感染症の発生以降、常に徹底した感染防止対策に努め、地域住民にコロナ治療薬をはじめとする必要な医薬品の提供等に取り組んでまいりました。陽性患者に対しては、感染拡大防止の観点から、薬剤師が自宅、宿泊療養施設まで訪問し、必要な医薬品を届け、指導をしているところです。そのため、一定の負担が発生していることは、御理解と診療報酬上での御配慮をいただいているところです。
また、陽性患者は患者宅等へ届けることを原則としていますが、発熱外来を受診し、来局する患者の中には、コロナ疑いの患者だけではなく、陽性と判明した患者も含まれます。薬局では、患者の動線を分けることは難しいため、感染防止の観点から、車の中に待機していてもらい、そこで薬剤を交付する、後から自宅に届ける、駐車場にテントを張り、そこで交付するなどの工夫をして対応しています。また、コロナ治療薬について、地域での医薬品提供体制を確保するため、輪番制で休日対応をしている地域もございます。
これらのことを踏まえ、論点の診療報酬上の特例についてですが、コロナの類型が2類から5類に移行することによる患者動向の変化や、コロナ治療薬が国からの提供ではなくなることによる薬局・医療機関の負担の変化、さらに、通常処方箋が発行されない施設から処方箋が交付されるなど、様々な状況の変化が予想されます。これらの変化に対応し、現場においては引き続き感染対策を実施しつつ、必要なコロナ治療薬等の提供が行えるよう一定の負担が発生しているという視点も含め、今後の診療報酬上の特例については適切な対応や配慮などをお願いできればと思います。また、今後想定しない状況が発生した際には、柔軟な対応をよろしくお願いします。
私からは以上です。
○小塩会長
ありがとうございました。
続きまして、松本委員、お願いいたします。
○松本委員
ありがとうございます。
今日は「新型コロナウイルス感染症の診療報酬上の取扱いについて」ということでございますが、これまでの経緯も踏まえて基本的な考え方を最初に述べたいと思います。まず、これまで、そして、現在もコロナ治療に尽力される医療現場の皆様方に敬意を表します。そして、今後も新型コロナウイルス感染症がなくなるわけではありませんので、引き続き発熱外来や病床確保が必要になることも理解はしております。
そうした中で、今回1月27日の政府の対策本部決定に基づき、コロナ特例の見直しについて議論を行うことになり、診療報酬の面でもウィズコロナに向けて大変重要な分岐点を迎えると考えております。令和2年の春以降、17ページ、18ページに示しますような様々な診療報酬上の特例措置を講じ、コロナ治療に伴うかかり増し経費に対応してまいりましたが、この間にウイルスの変異や医療現場におけるノウハウの蓄積もあり、状況はかなり変わってきたと思います。さらに、令和4年度診療報酬改定では、感染対策の向上や重症なコロナ患者を想定した評価の充実も行われました。11ページにあります政府のコロナ対策本部が1月27日に決定した対応方針を踏まえ、5類への移行を一つの節目として、診療報酬の特例措置についても平時の姿に戻していくことが中医協に求められていると考えます。ソフトランディングのためにも、一部の特例を残すとしても、極めて限定的な対応とし、最終的に特例の完全廃止を目指すものです。
これの関係で、1つ質問がございます。11ページの政府の方針でございますが、2項の「医療提供体制」の中には「段階的な移行」という言葉が数多く含まれております。このためには、新規感染者あるいは重症者のモニタリングが必要かと思いますけれども、5月8日以降、こうしたものがどういった頻度でどういった形で行われるのか、もし現在ある程度決まっておれば御教示いただきたいと思います。現在は毎日のようにマスコミでそうした患者数が報道されておりますけれども、5月以降はそうならないと思いますので、質問する次第です。
続きまして、論点について具体的な意見を申し上げます。まず、外来医療については、23ページのヒアリング結果を見ますと、空間や時間の分離、感染対策で一定の手間が必要ということですが、経験の蓄積で業務が効率化されていることを踏まえれば、特例措置の縮小は可能だと考えます。特に、院内トリアージ実施料と二類感染症患者入院診療加算については、20ページの算定状況を見ますと、令和4年1月から6月まで、それぞれ月平均300万回程度算定されており、院内トリアージ実施料が300点、二類感染症患者入院診療加算が250点ということからいたしますと、医療費ベースで月に約165億円、半年間で約1000億円と、医療保険財政にはかなりの影響があります。昨年8月、10月に取扱いが見直され、そして、本日から院内トリアージ実施への上乗せが250点から147点になりますが、一方、令和4年度改定で外来感染対策向上加算を新設したことも踏まえれば、少なくとも147点は予定どおり今月末で廃止すべきです。さらに、ベースとなる院内トリアージ実施料については、本則と大きく異なる運用になっていますので、見直しを検討するべきと強く主張いたします。
また、課題では、類型見直しに伴い、療養指導やフォローアップ、入院調整における自治体の役割が縮小し、医療機関がこうした業務を担うということですが、担当する患者への療養指導や増悪時の入院調整は医療機関の本来業務であり、軽症患者の増加も踏まえ、救急医療管理加算の特例も見直すべきです。
次に、入院医療に関してですが、21ページの2つの図を見ますと、左側の図からは中等症2以上の患者が相対的に減少し、一方、右側のグラフを見ますと、ICUでの集中的な治療が減少し、ハイケアユニットでおおむね対応できていることがうかがえます。また、これまでは看護配置の増員が必要という理由でICUを3倍、救急医療管理加算を4倍から6倍としてきましたが、ヒアリング結果を見ますと、そこまでの増員は必要がなくなっていることが分かりました。重症者自体の減少や医療従事者のスキルアップ、ノウハウの習得など、要因は様々かと思いますが、少なくとも今のように通常の数倍という点数が妥当とは言えないと考えます。また、令和4年度改定でICUに重症患者対応体制強化加算が新設されたこと、人工呼吸やECMOの評価が拡充されたことも考慮し、特例点数は縮小すべきです。
一方で、高齢者のコロナ患者や介護施設からの入院が増加する中で、平均在院日数やADLの低い患者を急性期病棟で対応するというのは、医療の質や機能分化の観点から改善の余地があると考えております。ただし、単純な報酬による誘導だけではなく、患者の状態に合った病棟での受入れが進むよう工夫が必要です。
また、16ページの「入院」の欄の最後にございますが、コロナ回復患者の転院受入れの評価に関しましては、既に感染力のない患者を受け入れていることを考えますと、これまでは特例として後方病床の確保のために必要であったことは理解できますが、類型変更後は確実に縮小すべきであるものと考えます。点数も算定できる日数についても極力減らすべきです。
続きまして、感染対策についてですが、14ページにありますとおり、学会のガイドラインで個人防護具の装着が一部緩和され、専用病棟も基本的に不要とされたということですので、これまでより業務の効率化や病室の柔軟な運用が期待できます。通常の感染対策を超えてかかり増し経費が発生するのか、令和4年度改定で新設した感染対策向上加算や外来感染対策向上加算では対応できないのか、慎重に見極めるべきです。
課題には示されておりませんが、17ページの下の※にあります、初診からの電話や情報通信機器を用いた診療の特例は、医療の質の観点で極めて問題があると考えております。新型コロナ拡大の当初は、臨時的な特例措置として柔軟に対応することに意味があったと思いますが、令和4年度改定で公益委員の裁定までいただいて初診からのオンライン診療が恒久化され、特例措置は明らかに役目を終えたものと考えます。本則のルールに基づいて、安全・安心な体制で患者に向き合うことはあるべき姿として当然です。オンライン診療、オンライン服薬指導を健全に普及させるために、特例措置の即時廃止を求めます。
最後になりますが、ほかの委員の方々からも、今後こうした議論を深めていく上で、新たに必要なデータが発生した場合には事務局にお願いすることもあるかと思いますので、その点についても御配慮のほどよろしくお願いいたします。
私からは以上になります。
○小塩会長
ありがとうございました。
今、松本委員からは11ページの対応方針について御質問がございましたが、ほかの委員の方々からも御質問があるかもしれませんので、後でまとめて事務局から回答をお願いいたします。
それでは、鈴木委員、お願いいたします。
○鈴木委員
御指名ありがとうございます。
今回5類になるということですが、現状からすると医療関係者の方々は大変苦労されているというのも当然認識をしております。ただ、今回少しずつソフトランディングしながら特例の診療報酬を見直そうという話は当然出てくるとは思うのですが、その中で実際に5類になってこういった形に特例の診療報酬が下がっていくというか見直されているということで、平時に戻る基準は何なのでしょうか。これが全部なくなるときは何を基準にするのでしょうかということがデータとして基準があるのか、また、医療関係者の方々のヒアリングによって、そのときの状況や悪く言うと感覚で変わるのかが曖昧で分かりにくいので教えていただきたい。
逆に言うと、今回5類ですが、また何かの形で大きく増えた場合、そういった特例をどのようにしていくのかという基準もなかなか見えていないところで、ソフトランディングという言葉は分かるのですが、何を基準に、ゼロになるのはどの基準なのかというデータ的な根拠でやるのか、また新たにヒアリングをもって皆さんの医療関係者の方々の御苦労に報いるのか、この辺の基準をもう少し明確にしていただきたいと思っております。
私からは以上です。
○小塩会長
ありがとうございました。
鈴木委員からも何を基準にして制度変更をすべきか、するのかという御質問がありましたけれども、これにつきましても後ほど事務局から回答をお願いしたいと思います。
続きまして、安藤委員、お願いいたします。
○安藤委員
先ほどの松本委員の御意見に、全て私も基本的に賛同いたします。その上で、方向性につきまして、私からの意見を述べさせていただきます。新型コロナウイルスという未曽有の感染症に医療関係者が一丸となって対応し、国民が安心して医療を受けられる体制を構築する上で、診療報酬上の様々な特例が果たしてきた役割は大変大きいと考えております。一方で、今回の資料にもありますとおり、国内初の新型コロナの感染者が確認されてから3年以上の月日が経過し、5月8日からは新型コロナを5類感染症に位置づけるという形で、本格的に社会経済活動の再開にかじを切ろうとしております。論点にもありますとおり、医療従事者の負担やコロナ医療の効率化の状況をよく見極めながら、丁寧な議論を積み重ね、徐々に、しかし、着実に5類感染症としてのウィズコロナに向けた診療報酬体系への移行を進めていくべきであると考えます。
そして、先ほど鈴木委員からも御質問がありましたが、今後のウィズコロナに向けて使うデータにつきまして、今回示されている診療報酬上の算定状況に関するデータなどは、昨年の6月までのデータとなっております。できるだけデータとしては直近のデータを用いるようにしたほうがいいと思いますので、その点についてよろしくお願いしたいと思います。
以上です。
○小塩会長
ありがとうございました。
続きまして、池端委員、お願いいたします。
○池端委員
ありがとうございます。
私からも意見と、今、松本委員等のお話の内容についても少し私としての意見も言わせていただければと思います。まず、全体を通じては先ほど2号側の長島委員、島委員がおっしゃったとおりで、私も現状ではまだ緩めるべきではない、対応についても継続すべきではないかという意見です。ヒアリングの内容については、数は少なかったのですが、私の現場感覚としても非常におおむね了解できる、理解できる内容かと思いますので、改めて聞き取り調査をいただきました医療課に感謝申し上げたいと思います。
その上で、8ページ、9ページにありますように、今回5類になったときの対応ということで、大きく2つのキーワードがあるかと思うのです。まず、段階的という考え方、一方で、さらに感染症に対しては広く対応を求めるということも示されている。この両方を進めていこうという政府の方針かと思われますけれども、「段階的」ということをどう考えるかです。まだまだ科学的にもあるいは国民感情的にも、そして医療界の中でもそうですし、もちろん国民の中でもこのコロナが普通の通常の感染症になったという認識は持っていない方が大多数ではないかと思います。実際に5月8日に5類になった途端に感染症対応を全てやめてしまうことはあり得ない対応になりますし、それは本当に国民感情としてもあり得ないということをまずお話ししておきたいと思います。
そして、段階的にということでどこをどう減らすのか、加算をやめるのかという話が今、1号側の先生方からはありましたけれども、私はむしろこの5類ということを政府がお示しになられて、5類になったことで社会全体の動きがどうなっていくかを真剣に慎重に見定めながら、そして、そこに対する医療提供体制を少しずつ緩めていくことが必要で、まずはそれで活動も自由になって普通の日常生活が始まったときに、感染症が本当に再拡大しないかどうか、そこも見定めてからでないといけない。だからこそ広く対応を求めることになっていますので、この5類になった途端に広く対応を求めると言いながら、全ての加算等々を一気に取り下げてしまうことになれば、新たに参入しようと思ってもとてもできないことになります。段階的というのはあくまでもそういう意味での段階的ということと私自身は認識していますし、そうあるべきではないかと思っています。そういう意味で、もう少し慎重に、本当に半歩ずつ前へすすんでいくという感染対策の「段階的」対応が必要ではないかということを強く強調しておきたいと思います。
私の現場感覚的な不安材料として、入院調整、先ほど松本委員からは入院調整は本来業務ではないかという御意見もありましたが、まだ急性期病院ですら、新型コロナに関しては、確かに重症化は減っていますけれども感染力はかなり強い、通常のインフルエンザよりもさらに強いという認識、全ての医療関係者は同様の認識を持っていると思いますので、まだ通常の感染症と同じ扱いにはなっていないのが現状だと思います。その中で、コロナ対応に対する病床確保料等々がもしなくなったときに、本当に高度急性期を含めて急性期の先生方にちゃんと受け入れていただけるかどうかというのはすごく不安がありますし、それを病院、病病あるいは病診の連携で入院体制を全てやっていくことに対しては、相当の努力を要すると私自身は感じています。
現状、福井県の例を見ますと、福井県ではこのオミクロン株の第7波、8波になってから、保健所対応を要するものは10%を切っている状況です。ほとんどが病病、病診連携で入院調整ができています。ただ、これはあくまでも加算や確保料等々があって病床、病棟を確保していただいている段階でそれができているわけで、これがなくなるときに本当にそれができるかというのは非常に不安材料があります。ソフトランディングのためにもまずは様子を見て、それから少しずつ落としていくことが必要ではないかということを強く感じています。
病棟に関しても、病棟管理ではなくて病室管理でもいいから楽なのではないかという御意見もありましたけれども、これも実は病棟だったらその病棟全部コロナ対策で、一旦その病棟に入ったらずっとコロナ対応でいいのですけれども、病室ごとにコロナの病室と通常の患者さんの病室がある場合、当院もそれでやっていますけれども、手間は更に2倍、3倍かかります。コロナ病床の個室に入った後にまた全部脱ぎ着替えして通常の病室に入る、そしてまたコロナ病室に入ることは物すごく負担、精神的にも負担ですし、肉体的や労力、いろいろな費用面もかえって負担が多いと現場の感覚としては感じていますので、その辺は御理解いただければと思います。
いずれにしても、長い意味で段階的にソフトランディングしていこうということに対して決して反対するものではないし、いずれ通常に戻っていくことは医療界全体としてもすごく期待したいですし、そのように持っていきたいと思います。ただ少しスピード感の認識が違う気がしますので、その辺を十分御理解いただければと思います。
最後にもう一点、介護施設に対する医療提供体制、これは今後非常に不安材料になるので、ここに対してはしっかりとした手当てあるいはできる体制を維持していただきたい、これも強調しておきたいと思います。
長くなりまして申し訳ありませんが、以上です。ありがとうございました。
○小塩会長
どうもありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。
飯塚委員、お手が挙がっています。お願いいたします。
○飯塚委員
ありがとうございます。
本日は診療報酬上のコロナ特例の見直しの議論ですけれども、全体としてはコロナの状況の変化に応じて見直していくものと理解をしています。1点、事務局に質問なのですけれども、診療報酬上の特例の見直しの資料の5ページ、6ページでお示しいただいているもので、5ページは重症者は減っている、6ページは死亡者数は顕著に増えているというデータになっておりますけれども、これはどういう理由かを整理されていらっしゃるかと思うので、御説明をいただければというのが1点目です。
2点目は要望ですが、これは先ほど安藤委員からもありましたが、今後の診療報酬の扱いを議論したいわけなので、直近のデータが2022年6月というのは、8か月、9か月ですか、あまりにも古いと思いますので、速報値等でも結構なので最新のものをぜひ出していただきたいと思います。
以上です。
○小塩会長
ありがとうございました。
飯塚委員からも御質問いただきましたが、これについても後で事務局から回答いただきたいと思います。
ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。
それでは、吉川専門委員、御発言をお願いいたします。
○吉川専門委員
細かなデータをお示しいただきまして、本当にありがとうございました。
私からはスライド31枚目の課題と論点につきまして、看護の立場から3点ほど意見を述べさせていただきます。まず1点目、課題の3つ目のこの入院医療につきまして、新型コロナウイルス感染症が5類になったとしても、新型コロナウイルス感染症患者を受け入れる病棟では、個室管理やゾーニングでの管理が求められております。しかし、先ほどもお話にありましたように、特に個室管理をする場合は、個人防護具の着脱を伴う頻回な訪室や、観察に非常に時間を要します。また、入院治療が必要になる方は多くが高齢者であり、高齢者は依然として重症化リスクが高く、認知症の方も含まれますので、病棟に医療スタッフが少なくなる夜間については特に十分な看護提供体制がなければ、病棟全体の安全の確保が難しいと考えます。
次に2点目、課題の4つ目の感染対策についてですけれども、入院や外来のみならず、訪問看護においても継続する必要がありますので、継続した感染対策が可能となるよう、対応をお願いしたいと思います。
最後に3点目ですけれども、今後幅広い医療機関でのコロナ患者の受診が想定されていますので、対応する医療機関での感染対策が万全なものとなるよう、対応医療機関での感染管理認定看護師の活用ですとか、地域における相談体制の確立も重要であると考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
○小塩会長
ありがとうございました。
ほかに御質問、御意見はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
永瀬委員、お手が挙がっていますので、お願いいたします。
○永瀬委員
私も統計が前年の6月までというのは、もう少し新しいものがあったほうが議論できるのではないかと思いますので、その点はよろしくお願いしたいと思います。
以上でございます。
○小塩会長
ありがとうございました。
多くの委員の方々から御質問、御意見を頂戴いたしました。現時点で事務局から回答していただけることも幾つかあるかと思いますし、また、追加的なコメントもあるかと思いますので、御回答、御発言をお願いいたします。
○江浪結核感染症課長
健康局結核感染症課長の江浪と申します。よろしくお願いいたします。
私から、感染症対策の観点から3点ほど御質問に対してお答え申し上げたいと思います。まず、5類に移行した後の患者数、死亡者数などの把握方法と公表の頻度という御質問についてでございます。今の新型コロナウイルス感染症に関しましては、各診療しました医療機関から総患者数を毎日御報告いただいておりまして、また、新型コロナに罹患後に亡くなられた方につきましては、それも御報告をいただいて、それを日々公表させていただいているところでございます。これが5類に移行ということになりますと、その後のサーベイランスの在り方ということで厚生労働省の厚生科学審議会感染症部会におきまして議論いただいておりますが、2月24日に御議論を1回いただいておりまして、基本的には季節性インフルエンザと同様に特定の幾つかの医療機関からの御報告をいただく定点報告という形に移行するということで御議論いただいております。そうなりますと、患者数の報告に関しましては、基本的には週1回、先週の状況について毎週金曜日に公表という形が基本になってくるものと考えてございます。
死亡者数の把握につきましては、もともとコロナに罹患後に亡くなられた方について御報告をいただいているところでございますが、この新型コロナも病状が変わってまいりまして、新型コロナウイルス感染症による肺炎で亡くなられるよりも基礎疾患の悪化などによって亡くなられる方が多い状況になってきていることも含めまして、死亡者数の把握はなかなか難しくなってきておると考えてございます。この死亡者数の把握に関しましては、まだ厚生科学審議会におきましても御議論いただいておらず検討中ということでございますけれども、基本的には季節性のインフルエンザで確認しているように、総死亡に与える影響、超過死亡という形で見ていくことが基本になるのではないかと考えてございます。ただ、そうしますと、把握に相当程度時間がかかるという課題がございまして、もう少し迅速にデータを把握する方法がないかということについて、まだこれは事務局で検討中ということでございまして、成案が得られましたら厚生科学審議会で御議論いただくことを考えてございます。
2点目、この新型コロナウイルス感染症が5類に移行した後、どういった形で平時といいますか、そういったことになっていくのかということでございますけれども、今般の新型コロナウイルス感染症に関しましては、本日医療課長から御報告をいただきましたように、感染症法上の人権制約との関係も含めますと、5類に移行するということでございますけれども、昨年も新型コロナ発生以降3年間にわたって季節を問わず大きな流行を繰り返す感染症でございます。この感染症が今後どのようにこの人間社会になじんでいくのかということにつきましては、専門家の先生方もなかなか予見することが難しいという御意見をいただいております。したがいまして、5類移行後も一定程度感染拡大を繰り返すということになりますけれども、その感染拡大の状況とそれに対する医療提供の状況を評価しながら段階的に対策を進めていくということであろうと考えているところでございます。新型コロナウイルス感染症に関しましても、予防接種と流行による免疫の獲得によりまして徐々に当初の流行の形とは異なってくるだろうと考えられておりますけれども、どの程度でどういった形の流行に、インフルエンザのように毎年冬に1回流行するような形になるのか、それともそうならないのか、そういったことも見極めながら対策を進めていく必要があろうというところでございます。
3点目でございますけれども、今回お示しをしてございます患者数、重症者数、死亡者数の推移というところで、感染者数は相当大きくなっている、一方で、重症者数は過去に比べて少なくなっている、一方で、亡くなられる方の数は多いというこの点について、どう考えるかということでございます。患者数の把握に関しましては、引き続き全ての医療機関から患者数の報告ということでいただいておりますので、可能な限り幅広く取っている状況で、オミクロン株の特徴により非常に感染が拡大しているということ、感染力が強いということを受けて、患者数が増えているということでございます。
重症者数に関しましては、これはICUに入っているなどの一定の定義を置いた上での把握ということでございますけれども、先ほど申し上げましたとおり、新型コロナウイルス感染症によって、そのウイルス性肺炎によって急速に重症化してICUに入って亡くなられるというよりは、そういった病態を経ずに基礎疾患の悪化などで亡くなられる方が多くなっていることを受けて、重症者の数はその定義、ICUなどに入っている方というところで、その数が減っているように見えるということでございます。
一方で、この新規死亡者数の推移ということでございますけれども、感染が非常に拡大して基礎疾患の悪化などで亡くなる方も増えてございますので、それを受けて死亡者数も多くなっているということでございます。ただ、この患者数と死亡者数の比ということで見ますと、感染者数に比べて亡くなられる方の割合は少なくなってきてございまして、これはウイルス株の変異による特徴と、予防接種あるいは感染による免疫の獲得などによって重症化率、死亡率が下がってきているのではないかと評価をいただいているところでございます。
私からは以上です。
○眞鍋医療課長
続きまして、医療課長でございます。
私どもがお示ししているデータ、なるべく直近までという御指摘でございました。事務局といたしましては、まず今、お示ししているもので一定の御議論はできると思っておりましたが、そういう御指摘もございましたので、先ほど速報値でもという御言及もありましたけれども、どこまで出せるか事務的に確認をしてみたいと思います。
以上です。
○小塩会長
ありがとうございました。
追加で御質問、御意見はございますでしょうか。
池端委員、お手が挙がっています。お願いいたします。
○池端委員
ありがとうございました。
今の説明について、1点質問、1点意見を言わせていただこうと思います。まず、サーベイランスに関しては、これまでどおりの季節性インフルエンザと同じようなものになるということですが、実は福井県ではパイロット的にもう既にサーベイランス、コロナも含めてやっているのですけれども、ただ、一方で、季節性インフルエンザを含めたサーベイランスの対応の医療機関の中で発熱外来をやっていないところも幾つかあって、これに対しては福井県の場合は発熱外来をやっているところに置き換えてサーベイランスを両方実施しているのですけれども、5月8日以降、サーベイランスの医療機関は発熱外来をやるやらないということに対してはどういう対応をされる予定があるのか、もしあればお聞かせいただきたい。
それから、課長さんからお話があったように、今後5月8日以降、感染の拡大がどうなるかまだ分からないところもあるのでということをおっしゃっていただいた、まさにだからこそ広く受け入れて、いつでもまた次の拡大が来たときの受入れ体制を維持するべきではないかということで、そういう意味でも一定程度の加算等は維持すべきではないかということをあえてまた強調しておきたいと思います。この加算というのは基本的には体制の加算ではなく出来高の加算ですので、N(患者数)が減れば当然保険に対する影響も減ってくるわけですので、そういう意味での体制を残しておくことが必要ではないかということを感じました。
最後にもう一点、死亡者数に関しては、統計でかなり詳しくデータを取っているのですけれども、オミクロン株以前のデルタ株までは確かにコロナ感染症による直接の死亡原因というところが圧倒的に多かったのですけれども、オミクロン株になって以降は基礎疾患で亡くなる方がほとんどで、ただ、報告上、基礎疾患で亡くなっているのだけれども、たまたまその方がコロナ感染症を持っていればコロナの死亡ということで全部挙げているのが全国の統計だと思いますので、そういう形でかなり死亡数が(多めに)出てしまっているのではないかということを感じています。それから、ワクチンを1回でも打っている方の重症化は相当下がっていることも福井県のデータではありますので、御報告しておきます。
以上です。
○小塩会長
ありがとうございました。
池端委員からサーベイランスの仕方について御質問がありましたけれども、それについて御回答をお願いいたします。
○江浪結核感染症課長
結核感染症課長でございます。
先ほどは説明を省略してしまいまして、大変失礼いたしました。厚生科学審議会感染症部会におきまして御議論をいただいてございますけれども、新型コロナウイルス感染症と季節性のインフルエンザとこれから同時に流行していくことも考えられるところでございます。そうした観点から、季節性のインフルエンザと新型コロナの2つのサーベイランスに関しましては、基本的に同じ定点医療機関から御報告をいただくということで考えてございます。その際、御指摘のように発熱患者さんを診察されないという医療機関あるいはこれからも診察されないという医療機関が従来定点であったところがあるということでございましたら、定点の選び直しを自治体にしていただくことになります。新型コロナウイルス感染症、季節性のインフルエンザ、両方とも当初は発熱ということで見分けがつかないということでもございますけれども、その両方を受け入れている医療機関から御報告をいただきながら、定点報告ということで感染状況をモニタリングしていくことを予定してございます。これに関しましては、5類への移行に関しましても最終的には5月8日の前にもう一回感染症部会を開催いたしまして評価をいただいて、そこで5類に移行することを最終的に決定することになってございますので、そこで決定されることになれば、併せて定点報告にも移っていくことを予定しているところでございます。
私からは以上です。
○小塩会長
ありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。
飯塚委員、お願いいたします。
○飯塚委員
御回答ありがとうございました。
追加で教えていただきたいのですが、今のお話で5類に移行後は死亡者数というのは基本的には超過死亡で把握をするというお話がありましたけれども、その場合に例えばコロナとインフルが同時に起こっているような場合、あるいはその他の感染症が起こっているような場合は、コロナでどれぐらい超過死亡があったかというのは把握できるのでしょうか。
それから、死亡に関する要因、死因というのは、人口動態を見ている際に把握されていると思うのですが、そういう観点でコロナも死因の一つといいますか、そういう形で把握されることができれば、また別の観点からコロナの死亡者数が把握できるのかとも思いますが、その辺はいかがなのでしょうか。
○小塩会長
御回答をお願いいたします。
○江浪結核感染症課長
結核感染症課長でございます。
先ほどまたこれも御説明を省略してしまいまして、大変失礼いたしました。新型コロナウイルス感染症の死亡について超過死亡という形で把握していこうということになりますと、医師の死亡の診断書、その届出に基づいて、まさに人口動態統計のデータと同じデータで解析をしていくことになります。死亡の届出には死因でありますとか、そういったことも医師に記載していただいておりますので、超過死亡の中身をどういった疾患だったのかということで分けて見ていくことも一定程度可能ということでございます。しかしながら、このデータ、実際に統計として公表されるタイミングがおよそ総死亡ということで見ても4か月後、疾患ごとの死因ということになってきますと6か月後ぐらいということで、半年前の状況を見ていく形になります。季節性のインフルエンザの場合ですと、1シーズンを振り返ってどうだったのかという観点で見ておりますので、その遅れもあまり大きな問題にならないわけですけれども、新型コロナに関しまして、直ちにそういった状態になるということになりますとどうなのかという観点で、もう少し迅速に何かデータを取ることができないかという観点で検討しているところでございます。
私からは以上です。
○小塩会長
ありがとうございました。
ほかに御質問はよろしいでしょうか。
それでは、ほかに特に御質問はないようですので、本件に係る質疑はこの辺りとしたいと思います。
失礼いたしました。間宮委員、お手が挙がっておりますので、お願いいたします。
○間宮委員
その他で発言したいのですけれども、よろしいでしょうか。
○小塩会長
それでは、お願いいたします。
○間宮委員
今月の21日に薬食審の医薬品等安全対策調査会でゾコーバを投与された女性が流産したという報告があったと思うのですけれども、その議論の中で薬剤との因果関係が不明なのにもかかわらず自然流産の可能性も十分にあるのだと、だから、これまでどおり一般的な注意喚起の文書だけで十分だと、たった30分ぐらいの会議でそういう方向性になったということを聞きました。
これは本当に聞き捨てならない話であって、サリドマイド事件のときは被害者認定されたのが309名ですけれども、当時の薬の販売量から考えると1,000人から1,200人が被害を受けたのではないかと言われているのです。その309名の認定者以外の子供たちがどうなったかというと、それはもう流産や死産で命を落としているわけです。催奇形性のある薬を妊娠のごく初期に飲んだ場合は、流産する可能性は十分高いわけですね。そんなことは分かっているのにもかかわらず、この専門家の人たちはサリドマイド事件などの経緯についてレクチャーを受けているのですかね。非常に疑問ですね。サリドマイド事件のことがあったから、サリドマイドやサリドマイドの類似薬であるところの催奇形性のある薬の取扱いについては、非常に十分な安全対策をして安全管理をするということで世の中に出てきているわけですね。
これは薬害を起こしたのは当時の製薬会社と当時の厚生省です。サリドマイド訴訟の和解確認書、ここにありますけれども、この和解確認書の中に、厚生労働大臣はサリドマイド事件に見られるような悲惨な薬害が再び生じないよう最善の努力をすることを確約すると書いてあるのです。因果関係と責任を争ったことも謝っているのです。これは専門家がどういう意見を言おうと、当事者である厚生労働省が被害を一例も出さないという信念で、でき得る限りの安全対策に取り組む義務があるのです。それをしようという意志がこれは見られないですね。
これはこのまま追加の安全対策も講じないまま保険適用にするということで、点数、値段が決まって、中医協に上がってきて、それでいいですよということで承認するなどということになれば、中医協自体も問題ですよ。中医協の責任にもなると思います。私は何回も言っていますけれども、きちんと広く国民に危険性があるのだよということをお知らせすることも必要ですし、妊娠する可能性のある女性には投与しないということが必要だと思っています。自然流産の可能性もあるなどということを言い出したら、もし被害があったとしてもなかったことにされてしまうことにもつながってしまうので、その辺り、しっかり安全対策を講じるようにこれから再度議論していただきたいと思います。
以上です。
○小塩会長
ありがとうございました。
今の間宮委員の御意見について、コメントを事務局からお願いいたします。
○眞鍋医療課長
医療課長でございます。
本日ゾコーバについての議論をするというテーマ設定でなかったものですから、私どもの今の事務局体制として、間宮委員の御質問、御指摘に対して責任を持って御回答する者をこちらの場に準備させていただいてございませんでした。そこはおわび申し上げます。いずれにしろ、これまでの御議論も踏まえた上で、非常に重要な御指摘と思いますので、どのような対応ができるか考えさせていただきたいと思います。
○小塩会長
ありがとうございました。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、本日の議題は以上でございますが、冒頭にも御案内したとおり委員の御退任がございます。関ふ佐子委員が2月28日付をもって中医協の委員を御退任されております。関委員がいらっしゃっていますので、一言御挨拶をお願いいたします。
○関委員
いろいろと議論が大変な中、お疲れのところ、皆様の貴重なお時間をいただくことになりますが、退任の挨拶をさせていただきます。公益委員としてこの場で発言する機会が少なかった中、6年間の間に心に蓄積してきた思いを話させていただければと思います。
まず何よりこの中医協という場をつくってきてくださった現在、そして、歴代の1号側、2号側、専門委員、中医協を支えている様々な専門組織の委員会の委員の皆様、そして、その背後にいらっしゃる事務方の皆様、とりわけ厚生労働省の医療課の皆様に感謝申し上げます。皆様の真摯な御尽力に触れさせていただきながら、多くのことを学ばせていただきますとともに、重要な政策決定の場に携わらせていただき、どうもありがとうございました。
おかげさまで、この間、今後の日本の医療保障政策を左右し、これからも大きな議論を必要とする様々な議論に携わらせていただきました。高額医療・医薬品への対応、とりわけ費用対効果という新しい仕組みを医療保険に導入する際の様々な議論、妊婦加算の創設と廃止をめぐる加算という患者の負担を今後どう捉えていくかという課題、遺伝性乳がん患者の発症していない乳房や卵巣の予防的切除の保険適用といった予防医療をどう進めていくかといった課題などです。高齢社会に重要な終末期をめぐる議論や医療と介護の連携についての議論なども、研究者として関心の高い課題でした。さらに、関心の高い不妊治療の保険適用に関われたことは大きな喜びでもありました。例えば不妊治療についてはこれまで行われてきた特定治療支援事業などをベースに保険適用の範囲を定めましたが、少子化が大きな課題となる中で、保険の適用範囲についての議論が今後さらに進んでいくことを願っております。
こうした日本の医療保障政策を左右する具体的な課題に加えて、中医協という会議体の在り方についてもいろいろと考えさせられました。日本が世界に誇る長寿、それも健康寿命を享受しているのは、貧富の格差などに関係なく誰でも安全で効果的な医療をリーズナブルに受けられるという皆医療保険制度の存在があるからで、その根幹を支えているのがこの中医協であるという思いは、ここに参加されていらっしゃる多くの皆様に共通する思いかと存じます。その中医協の存在意義を揺るがすような政策決定が最近増えていることに、大きな危惧を覚えます。
中医協は、医療側、支払い側が協議を尽くし、それがかなわない場合は公益が裁定を下すという話合いの仕組みがあってこそ、その意思決定が成り立つ場です。中医協は協議会という名前がついているように、3者が協議し合意して医療の価格を決めることで医療費が抑えられるとともに医療の質を確保しているという世界的にもすばらしい仕組みが構築されています。ところが、その協議を軽視するかのような政治の介入を残念に思います。とりわけ新型コロナウイルスの感染拡大により、これが加速したと感じています。様々な決断を迅速にせねばならない状況は理解できるものの、コロナ対応をめぐって政治の判断がまずあり、これを受けて中医協が書面で開催されたのは、大きな問題であったと認識しています。また、最近ではオンライン資格確認の原則義務化をめぐる拙速な年末の議論に、多くの中医協委員がじくじたる思いをいたしました。
何らかの政策を定めるに当たって、現場の声を取り入れ、議論を尽くし、決定していくというプロセスは、民主主義の根幹です。これは時間のかかる煩雑な手続ですが、こうしたプロセスを経ることで結果的に合意形成が可能となり、国民の政策への理解も深まるのではないでしょうか。そのプロセスを吹き飛ばすような政策決定は、そのときはよいとしても、じわじわと日本の医療保険制度の根幹をむしばんでいくのではないかと危惧しております。もちろん例えば不妊治療の保険適用は、一介の研究者が論文で主張しても、医療課との事前説明で必要性を論じてもかなわなかったものが政治家の判断で可能となったように、社会保障政策において政治の果たす役割も大きいです。とはいえ、地道な議論の積み重ねが何より大切であり、政治家などには中医協の形骸化の弊害をしっかりと認識していただければと願っております。
そして、議論をしっかりと進めていくためには、それに時間をかける人が大切です。医療課やこれを支える外部の人たちをより関わらせていく体制づくりについても、議論を進めていってほしいと願っております。厚労省は働き方改革を進める省庁であるにもかかわらず、医療課から夜中や週末にメールが送られてくる体制の常態化は放置すべきではないと思います。しっかり休みを取って働ける環境なしに、これだけ多くの議論を堅実に進めていくのはとても大変なことです。
その一つの例として、診療報酬改定の結果検討委員会についてお話しさせてください。診療報酬改定の結果検証に係る特別調査の各検討委員会の委員長を、この6年間、昨日まで担わせていただきました。調査や分析の専門家ではない私でも、少したつと調査で得られた膨大な貴重なデータが十二分に検討されているのだろうかという疑問を持つようになりました。時間と人がより充実していたならば、さらなるデータの分析が行われるのではないかと思います。そこで、ここ数年間、例えば報告書は現在の形でまとめるとしても、その後に得られたデータを分析する委員会やワーキンググループを外部の有識者などを入れて開催し、次の調査に役立たせることはできないかといった提案を何度も医療課にはしてきました。しかし、それはいまだ実現していません。少し実現したのは、二度ある委員会の間に委員間でメールで意見を言える仕組みや事前説明への参加など、公益委員がより携われるようにする工夫などです。また、検討会議の委員長の私の後任にはより調査や分析になじみのある方になっていただくよう、今後に向けて公益委員の役割分担を変えていただきました。
とはいえ、これらは微々たる改革で、調査結果のさらなる分析に向けた工夫の余地はまだあるのではないかと思います。例えば検討委員会をアンケートの作成と報告書の作成を議論する委員会の間にもう一回開催し、どのような調査結果を分析するのかをあらかじめ議論する場を設けるなど、何らかの物理的に集まる機会をつくらないと議論をし尽くすことは難しいのではないかと考えています。
とはいえ、こうした追加の分析をする場を開くためには、これを準備する事務方が必要で、今でも多くのお仕事を抱えていらっしゃる医療課にそれを担っていただくのは、申し訳なくも思います。昨日の検討委員会でも、膨大な報告書を直前に送られてきても、それをしっかり検討し準備して委員会に臨むことは難しいと委員の先生からお叱りをいただきました。もっともな御指摘だと思っています。委員会後にメールで御意見をお寄せいただく形などで今回の報告書の分析を充実していこうということにはなりましたが、こうした調査分析の体制が今後も常態化しないようにするためには、何より人を確保する必要がございます。そうした事務方の体制づくりは、中医協、ひいては日本の医療保障を左右していくものであり、ぜひ長期的な視点で予算を確保するなどして人員を充実していっていただきたいと願っております。
長くなり恐縮ですが、最後に、公益委員の役割などについても私見を述べさせてください。中医協は1号側と2号側の利害調整の場であり、議論により調整できなかった場合の最終判断を公益裁定という形で行うのが公益委員です。そこで、公益委員は例えていえば裁判官のような役割を担っているのではないかと個人的には考えておりました。そして、支払い側と医療側が最終判断を託そうと思っていただけるような公益であるためには、どちらかに偏った意見を持つべきではなく、公平にその御意見を伺い、どうすべきかを考える必要があるかと思い、この中医協の会議の場ではとりわけ各側の利害の調整に直接関係しそうなことについては私見を述べることを控えておりました。私見を主張したいのが研究者ですので、6年間黙っているのは大変なことで、そのせいか委員ではない本日はしゃべり過ぎているわけですが、中医協のとりわけこの会議の場は、両側の意見を伺う場であると考えておりました。
とはいえ、医療保障に関心のある研究者であることに変わりはなく、私見は事前説明において医療課に伝えたり、例えば不妊治療の議論の際は私見をまとめたペーパーを医療課を通じて1号側と2号側の委員の皆様にお渡しいただきました。もしこうした役割を公益委員に期待したいのであれば、そうした議事録に残らない場での公益の声にもしっかり耳を傾けていっていただきたいと思います。単に司会をしたり、この場に座っているのみの役割を公益に求めるのであれば、研究者である公益は耐えられませんし、公益委員のなり手を確保するのも難しくなるのではないかと思っております。
公益委員に限らず、この会議に参加されるそれぞれの方々が日本の医療保障政策のために時間を費やし、真摯に議論し、政策をつくり上げていきたいと思うためには、それぞれの声にしっかりと耳を傾ける必要があります。そうした雰囲気づくりは、みんなでつくっていく必要がございます。それは調査を通じて現場の声に耳を傾け、しっかり分析していくことにも通じます。こうした時間のかかるプロセスを一つ一つ大切に実現していけるよう、それが可能な体制、人と時間の確保を政府全体で整えていっていただければと願っております。
今後の中医協の議論に向けて、皆様の御健康を心より祈念しつつ、実りの多い議論を楽しみにしております。どうもありがとうございました。
○小塩会長
中医協の在り方について、私たちの議論の基礎になる調査分析の在り方について、それから、公益委員の在り方について、非常に重い御指摘、御意見を頂戴いたしました。私も中医協の会長として重く受け止めさせていただきます。それから、医療課をはじめ事務局の方々にも検討をしていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
関委員、どうもありがとうございました。
○関委員
どうも皆様、お世話になりました。
○小塩会長
ありがとうございます。
それでは、これで本日の総会は閉会といたします。
次回の日程につきましては、追って事務局より連絡いたします。どうもありがとうございました。

 

 

<照会先>

保険局医療課企画法令第1係

代表: 03-5253-1111(内線)3288

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