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2018年3月26日 厚生科学審議会疾病対策部会リウマチ等対策委員会(第1回)

健康局がん・疾病対策課

○日時

平成30年3月26日(月)14:00~16:00


○場所

田中田村町ビル・貸会議室 8F 会議室8E


○議事

 

○貝沼がん疾病対策課長補佐 それでは定刻となりましたので、ただいまより第1回厚生科学審議会疾病対策部会リウマチ等対策委員会を開会いたします。委員の皆様におかれましては、大変お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。委員会開催にあたりまして、健康局長の福田より御挨拶申し上げます。

○福田健康局長 健康局長の福田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。委員の皆様方におかれましては、年度末の大変お忙しい中、御出席を賜りまして誠にありがとうございます。また、日頃より、リウマチ対策をはじめといたしまして、厚生労働行政の推進につきまして、多大なる御支援、御協力、また御指導をいただいておりますことを、この場をお借りして厚く御礼を申し上げたいと思います。

 リウマチにつきましては、その症状が継続的に悪化し、関節変形を伴います上下肢の機能障害などによって、患者さんの生活の質の低下、これが大きな課題・問題となっております。そしてまた、その病因・病態は、未だ十分に解明されているというわけではないと認識をしております。

 このため、厚生労働省としては、平成23年の8月に厚生科学審議会疾病対策部会リウマチ・アレルギー対策委員会に報告を取りまとめていただいた「リウマチ対策の方向性等」に基づきまして、リウマチ対策を今日まで実施してまいったところでございます。また、近年、生物学的製剤の普及などによりまして、医療の分野も大きく進歩していると認識をしております。一方で、専門医等への紹介基準ですとか、内科医と整形外科医の連携体制など、依然として取り組みが求められている、そういった部分も大きく指摘されているところでございます。

 前回の報告から7年が経過しようとしているところでございますので、今回、こうした課題を整理させていただき、今後のリウマチ対策の在り方につきまして、より具体的な議論が必要と考えまして、本委員会を設置させていただいたところです。

 委員の皆様におかれましては、活発な御議論をいただきますようお願い申し上げ、委員会の開催に当たりましての御挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。  

○貝沼がん・疾病対策課長補佐 なお、福田局長におきましては、後ほど公務のため退席させていただきます。初めに委員の御紹介をさせていただきます。委員の皆様におかれましては、一言ずつ御挨拶をお願いいたします。まず、市川朝洋委員です。

○市川委員 日本医師会の市川です。リウマチは何か最近、年々減少しているということでございますが、まだそれなりに患者さんがいらっしゃるということで、この委員会でいい結論が出ればと思っております。よろしくお願いいたします。

○貝沼がん・疾病対策課長補佐 金子祐子委員です。

○金子委員 慶應大学リウマチ・膠原病内科の金子です。リウマチの2014年のガイドラインの作成の所に入れていただいた関係で、このような御縁で入れていただきました。どうぞよろしくお願いいたします。

○貝沼がん・疾病対策課長補佐 小嶋雅代委員です。

○小嶋委員 名古屋市立大学の小嶋でございます。私も同じく、ガイドラインのお手伝いをさせていただいた関係で、今回お声を掛けていただきました。私は疫学者として、患者さんとリウマチ診療に携わる医療者をはじめとする様々な関係者の方々の間をつなぐような情報提供をしたいと思い研究活動を続けておりますので、その立場で発言をさせていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

○貝沼がん・疾病対策課長補佐 笹井敬子委員です。

○笹井委員 笹井です。私は都道府県の保健衛生行政を所管する部署の部局長の代表ということで出席させていただいております。どうぞよろしくお願いいたします。

○貝沼がん・疾病対策課長補佐 角田美佐枝委員です。

○角田委員 日本リウマチ友の会の角田です。患者の立場から、いろいろな御意見、情報を持って帰りたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○貝沼がん・疾病対策課長補佐 宮坂信之委員です。なお、後ほど御説明いたしますが、宮坂委員には本委員会の委員長を務めていただきます。

○宮坂委員 東京医科歯科大学の宮坂と申します。よろしくお願いいたします。5年前に定年退官をしましたが、まだ、診療、研究に携わっておりますので、その目線で議論に参加をしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○貝沼がん・疾病対策課長補佐 中板育美委員につきましては、御出席の御連絡を頂戴しておりますので、後ほど来られると思います。続きまして森雅亮委員です。

○森委員 東京医科歯科大学生涯免疫難病学講座の森です。私はもともと小児科医でございまして、小児リウマチ医の観点から最近話題に上ることが多くなった移行期の問題を中心に、提言をさせていただければと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

○貝沼がん・疾病対策課長補佐 山中寿委員です。

○山中委員 東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センターの山中です。私は内科医でございまして、内科医の目線からいろいろな提言をさせていただきたいと思っております。2014年には、宮坂先生を中心としてガイドライン作りをしたわけですが、それをまとめさせていただきました。よろしくお願いいたします。

○貝沼がん・疾病対策課長補佐 山本一彦委員です。

○山本委員 理化学研究所におります山本です。何回かこの対策委員会には出させていただいて、これまでの提言にも関わらせていただきました。基礎の研究者とリウマチの臨床医のいろいろな立場からいろいろなことを議論させていただきたいと思います。今、リウマチ学会の理事長を務めておりますので、そういう立場からも意見を言わせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

○貝沼がん・疾病対策課長補佐 また、田中栄委員からは欠席との御連絡を頂戴しております。

 続きまして事務局を紹介させていただきます。健康局がん・疾病対策課長の佐々木です。同じく課長補佐の魚谷です。私は貝沼でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 次に、資料の確認をお願いいたします。議事次第、座席表、厚生科学審議会疾病対策部会リウマチ等対策委員会委員名簿です。資料1「厚生科学審議会疾病対策部会リウマチ等対策委員会開催要綱」、資料2-1「リウマチ対策の現状について」、資料2-2「内科からみたリウマチの現状」、資料2-3「整形外科からみたリウマチの現状」、資料2-4「小児科からみたリウマチの現状」、資料2-5「患者の立場からみたリウマチの現状」。さらに、参考資料1「リウマチ・アレルギー対策委員会報告書(平成238)」、参考資料2「リウマチ対策の方向性等(平成23831)」です。資料の不足、落丁等がありましたら事務局までお申し出ください。それでは、カメラの撮影はここまでとさせていただきます。

 早速、開会に当たりまして、本委員会の趣旨について御説明させていただきます。まず資料1を御覧ください。リウマチは長期にわたり生活に著しい支障を来すこともあるなど、国民の健康上、重要な問題となっております。そのため、平成17年及び平成23年に、リウマチ対策を総合的・体系的に実施するべく、その方向性等を報告書にまとめ、対策を実施してきたところです。近年の医療水準の向上や社会背景の変化等を踏まえ、より効果的な対策を検討するため、厚生科学審議会疾病対策部会のもとに、リウマチ等対策委員会を設置することといたしました。

 資料1の裏面を御覧ください。本委員会の委員長は、運営細則第3条の規定に基づき、委員会委員の中から疾病対策部会長が指名するとなっております。本委員会の委員長として、福永部会長より宮坂信之委員が指名されており、既に宮坂委員の了承をいただいております。それでは、宮坂委員長より、一言御挨拶をいたただくとともに、以降の議事進行につきましても、宮坂委員長にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

○宮坂委員長 改めまして、宮坂です。先ほど、福田健康局長から、もう既に前のリウマチ対策から7年を経過しているということで、その間に医療水準も変わっていますし、リウマチの標準治療なるものも変わっている、その結果、短期的なあるいは長期的な予後も変わってきている、あるいは、それに付随する諸問題も変わってきているということで、今回は新たにリウマチ対策を作ることを念頭に置いて、今の現状、そして今後の課題、そういったものを、まず第1回の会議で明らかにしていきたいと思っておりますのでよろしくお願いいたします。

 それでは、委員長代理の指名をさせていただきます。資料1の裏面の運営細則第4条第4項の規定に基づきまして、「委員長に事故があるときは、委員会委員のうちからあらかじめ委員長が指名した者がその職務を行う」とされております。日本リウマチ学会の理事長でもあります山本委員に、委員長代理をお願いしたいと思います。山本委員、お願いできますでしょうか。

                                (山本委員了承)

○宮坂委員長 それでは、引き続き、議事を進めさせていただきます。議事2の「リウマチ対策の現状について」に移りたいと思います。まず事務局から資料2-1の説明をお願いいたします。

○貝沼がん・疾病対策課長補佐 よろしくお願いいたします。資料2-1を御参照いただきながら聞いていただければと存じます。リウマチ対策の現状につきまして、厚生労働省におけるこれまでの取組をまず御紹介いたします。この年表のように、平成9年の公衆衛生審議会成人病難病対策部会リウマチ対策専門委員会より、「今後のリウマチ対策について」として調査研究等を開始しております。

 続いて、平成17年、平成23年に、厚生科学審議会疾病対策部会リウマチ・アレルギー対策委員会により取りまとめられた報告書を踏まえて、今後のリウマチ・アレルギー対策を総合的・体系的に実施するため「リウマチ対策の方向性等」を都道府県、関係団体等に通知しています。その中で進められてきた事業が平成18年から開始されたリウマチ・アレルギー特別対策事業で、リウマチ及びアレルギー系疾患の新規患者数の減少を目標として、都道府県におけるリウマチ・アレルギーの啓発等についてこちらの事業で取り組んでまいりました。

 平成22年からはリウマチ・アレルギー相談センター事業を開始し、専門医療機関等の所在、最新の治療指針等の情報提供などを行うこと、また、電話相談やリウマチ・アレルギー相談員養成研修会などを開催し、支援のための相談員を養成してまいりました。平成23年に改めてその方向性等をリバイズし、現在に至っています。

 次ページには、関節リウマチの患者数の経年変化として、厚生労働省が取り組んでおります患者調査の資料を付けさせていただきました。患者調査とは、病院及び診療所を利用する患者について、その属性、入院・来院時の状況及び傷病名等の実態を明らかにし、併せて地域別患者数を推測することによって医療行政の基礎資料としています。この調査は3年に1度行われ、方法としては10月の3日間のうちその医療施設ごとに指定した1日の患者の数を検討しています。

 表ですが、まず一番右の総患者数がこの患者を調査することによって推計された現状の患者の数を示しています。その中で見ていただくと、平成17年、平成23年等の時期を見ていくと約33万人で推移しています。受療率(人口10万人単位)の所を見ていただくと、入院患者、外来患者ともに減少をたどっております。この数字はやはり長期入院を要する方が減少したこと、また、治療の内容によって外来受診の頻度を減らされているといった現状を示しているものではないかと考えています。

 リウマチ・アレルギー対策委員会報告書概要(平成238)の紹介です。この報告書の方向性といたしましては、大きく3つの柱で進めています。医療の提供等、情報提供・相談体制、そして研究開発等の推進という柱に基づき、それぞれの項目を作っています。特に医療の提供等においては、かかりつけ医と専門医療機関の円滑な連携体制の確保、最新の知見に基づいた診療ガイドラインの改訂及び普及、またそれに基づいた基本的診療技術の習得の推進。かかりつけ医、専門医、医師以外の医療従事者の育成を図るため、医療関係団体や関係学会等と連携し、リウマチに係る教育の充実が望まれることなどを示しています。

 情報提供・相談体制については、患者を取り巻く生活環境の改善を図るため、患者や国民の皆様に対する情報提供体制の確保や相談体制の確保のための対策を講じ、患者や国民がリウマチに係る適切な医療情報を得られるような体制の構築を目指しています。地域ごとの相談レベルに格差が生じないよう、全国共通の相談員養成研修プログラムを作成し、「リウマチ・アレルギー相談員養成研修会」の内容に関して充実するといったことが書かれています。

 研究開発等の推進としては、リウマチの病態である関節破壊を阻止するための治療方法の確立に重点を置くこと、また関節破壊に伴う日常生活の活動性の低下を改善させるための治療法を開発することといったことなどが記載されていました。

 次に、平成23年のリウマチ対策見直しにおける主なポイントを少し紹介したいと思います。見直しの背景には、リウマチは、これまで不治の病の代表格に挙げられる疾患でしたが、当時の生物学的製剤の開発・普及に伴い、完全寛解を現実的な目標にできる疾患になった時代でした。

 そうした中での新たな課題の発生としては、リウマチ診療に関わる医療従事者において、日進月歩の治療方法や疾患に対する考え方の変化に追い付いていないという指摘がありました。また、リウマチに対するリウマチ患者の認識は「不治の病」という考え方が根強いものでありましたが、寛解が期待できる疾患になったということでした。この生物学的製剤につきましては、世界的なリウマチ診療の治療の柱として普及してきましたが、販売後の期間がまだ短く、超長期的な副作用についてまだ分かっていないといった時期でした。

 そうした中で、報告書の概要の中でも、医療の提供等では、早期発見・早期治療の方向性や破壊された関節の機能回復を、また、情報提供・相談体制については、コントロールできる疾患になったことをしっかりと普及・啓発すること、さらに、研究開発等の推進においては、より有効で完全な関節破壊阻止を確立するような研究が求められると記載されています。

 次に、この報告書を受けまして、厚生労働省から発出したリウマチ・アレルギー疾患対策の方向性等及び取り組んだ関連する主な施策を紹介いたします。方向性等の中で3本の柱、医療の提供等、情報提供・相談体制、研究開発等の推進のそれぞれを受けて、まず医療の提供等に対してはリウマチ・アレルギー特別対策事業として、都道府県におけるリウマチ・アレルギー対策の推進のために正しい知識の普及や、かかりつけ医を対象とした研修会の実施等を行うための事業を行っています。

 アレルギー情報センター事業として、リウマチ・アレルギー患者に対して研究事業の成果や専門家・専門医療機関の所在、最新の治療指針等の情報提供を行うとともに、自治体の相談員の研修会の資質向上に努めることによって、患者の生活の一層の支援を図っております。この相談員養成研修会は、今年度も10月に東京を中心に全国8か所で開催され、約350名の方に御参加いただきました。参加していただいた方は、行政の方や保健所、保育園などに勤務されている方が中心でした。現在は、相談事業としては日本アレルギー学会にお願いをし、リウマチ・アレルギー相談センターにおいて電話相談の窓口を設けて、全国からの相談を受け付けています。

 次に、研究開発等の推進におきましては、政策/実用化研究事業の中でリウマチに対しても取り組んでまいりましたが、特に厚労科研の中では多くの関節リウマチ診療の標準化のための研究といった研究課題を立て、本研究成果等を基に2014年の診療ガイドラインの作成、また昨年公開された一般医向けのガイドラインの内容に資する研究をしていただいたということです。

 以上が厚生労働省のこれまでの取組の簡単な紹介ですが、最後に今後の検討会の進め方の案を御提示して、私のプレゼンテーションを終わらせていただきます。まず第1回目、今回326日に、リウマチ対策の現状について、この後、内科、整形外科、小児科、そして患者の立場から御説明いただきます。

 今後の取組について、先ほどの3本の柱に沿った議論を進めていただき、第2回は4月下旬を予定していますが、今後のリウマチ対策の方向性について、6月上旬の第3回では、報告書の骨子案について私どもから提示をさせていただき、その議論を基に第4回、7月上旬に報告書を取りまとめさせていただきたいと考えております。大変忙しいスケジュールになりますが、先生方のご意見を基に、報告書を作っていければと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○宮坂委員長 ありがとうございました。質疑は、資料2-5まで説明を伺ってから一括して行いたいと思います。

 それでは資料2-2を使って、内科から見たリウマチの現状の説明を山中委員よりお願いいたします。

○山中委員 「内科からみたリウマチの現状」ということで説明をさせていただきます。分量がたくさんありますので、一部端折ってお話させていただくことをお許しください。既に御認識のことと思いますが、関節リウマチというのは身近な難治性疾患でして、全身の関節炎が著しい関節破壊につながると、右にあるようなそういう変形が進む可能性のある疾患でありまして、社会的負担も非常に大きい。罹患率も人口の0.6%から1%であるように患者数が多いということと、治療期間が非常に長いということ、QOLの低下を招き、介護対象にもなるという意味での社会負担です。

 先ほどお話がありましたような流れに沿ってお話をさせていただきますが、現状といたしましては、リウマチのRA薬物治療が進歩して、かなり一般化したことによって、疾患活動性が制御でき、手術例も減少したということはあります。ところが、そこに書かれているような治療に不応の患者の存在、合併病態により治療できない患者の問題、治療中の合併症の予防と対策、医療費のこと等、問題点はまだまだ残っているように思います。

 その下の図ですが、「RA治療の進歩」と書いておりますのは、東京女子医大附属膠原病リウマチ痛風センターで2000年から約6,000人のリウマチ患者を対象に行っているIORRA調査の結果です。右側の棒グラフの上の赤い所のDAS28 Highというのが疾患活動性が高い患者で、2000年では20%だったのが2017年には1.7%まで減少したということです。一番下のグリーンのRemissionと書いてありますのは寛解の患者です。2000年には8%だったのが50%を超えたということがあり、過去15年の間にこれだけ疾患活動性が改善したということです。それを可能にしたのが左側にある薬剤の使用でして、特に赤字のメトトレキサート、MTXですが、これの使用が非常に増えたということと、一番下にあるグリーンの生物学的製剤が非常に増えたということです。現在では、このIORRAのコホートでは約25%の患者が何らかの生物学的製剤を使われている、このような治療方針の変換によって患者の予後が随分変わってきたことが示されます。

 次ページの上です。手術部位の変遷ということで書いておきましたが、黄色で示されている人工関節置換術が生物学的製剤が導入される前に比べて随分減少しており、後で外科的な所でもあると思いますけれども、手術内容が随分変わってきたということがあります。ただ、その状況においても、下の棒グラフの赤でマルをした、未だに4人に1人は中等度以上の疾患活動性であるということも認識しておかなければならない。特にその下のグリーンの寛解の所ですが、ここ2年間ぐらいほぼ足踏みしていて増加していないので、良くなる可能性のある患者はもう十分良くしているのだけれども、それでも良くならない患者がやはりこれだけいらっしゃると。Unmet needsでして、これは2つの問題があって、合併症のために十分な治療ができない方、治療薬に反応しない人の2つだろうと考えております。

 次ページです。Toward remission to Beyond remission、実は過去15年間このToward remission、レミッションを目指すような治療戦略が随分検討されてまいりました。当委員会におきましてもこういった流れで議論が進んできたものと推察いたしますが、これからはBeyond remission、レミッションになった患者に、その後の長い人生をいかに病気と共に歩んでいただくかということも考えていかなければならないのだろうと考えておりまして、その中にはやはり薬剤経済学とか、患者の視点とかといったことも取り入れるべきであろうと考えています。そのことについて少しお話を申し上げます。

 下の所で「RA患者の患者特性と合併病態」とありますが、これは先ほどのIORRAコホートのことで、右側に患者がどういう合併症を持っているかということが書かれています。数字は後で見ておいていただきたいのですが、次ページの右上の所、有する合併症が重篤な患者ほど治療が不十分になり、疾患活動性が改善できないというところがあるのですけれども、合併症が重篤でない、ほとんど合併症のない患者は薬物治療によって非常に短期間のうちに良くなる。ところが、合併症を持っている患者はなかなか良くならない。なぜかということで調べてみると、やはり合併症があるから生物学的製剤とかメトトレキサートなどが十分に使えないという現状があるわけで、こういった合併症対策が非常に大事になってくるのではないかと考えております。

IORRAコホートではずっと経時的にこういった合併症をモニタリングしています。下の折れ線グラフですが、2002年からずっと見ておりまして、例えばステロイドを使わなくなる、それから非ステロイド系の抗炎症剤も減ったということで、胃潰瘍とかは大分減ってきたように思います。ところが相変わらず肺炎と骨折が合併病態として多い、なかなかこれが減っていないというところで、こういったところに対する対策が必要になると思います。

 次ページです。速くて申し訳ございませんがどんどん行かせていただきますと、医療費の問題が次に出てまいります。国民医療費が増加し続けているのは皆様方もよく御存じのことですが、下の図の赤で囲んだ所が筋骨格系及び結合組織の疾患ということで、関節リウマチが含まれる部分です。そこに掛かる総医療費というのは、その他の例えば呼吸器の病気であるとか、糖尿病を含む内分泌疾患よりもたくさんの国民医療費が使われていることが分かるわけです。これがどういったところから来るかということですが、1つには生物学的製剤を初めとする高価な薬剤の導入ということがあります。

 右上です。関節リウマチ患者の約3割は経済的不安を抱えている。これについては後ほど詳細な報告があると思いますが、患者の多くが経済的な不安とか、生物学的製剤をいつまで使うのかということを気にされているという報告があります。またバイオ医薬品、生物学的製剤を含むバイオ医薬品ですが、下の図で見ると世界市場におけるマーケットシェアでは、この網掛けの部分ですが、ここに書かれているほとんどの生物学的製剤は関節リウマチの薬剤でして、関節リウマチの薬剤がやはりかなりの医療費の伸びにも寄与している可能性が示されております。

 次ページです。この生物学的製剤をいかに適正に使うかということが非常に大事で、1つは適切な症例選択、もう1つは寛解に達した患者の薬剤をどのようにしていくのかという取組でして、過去5年間ぐらい学会ではこういったことが盛んに研究されているところです。

 もう1つはバイオシミラーという後続品をいかに使っていくかという話になるわけですが、そこの下の英語の論文から引いたものですけれども、医療経済学の世界でICERincremental cost-effectiveness ratioという、薬剤を使うとどれだけコストパフォーマンスが上がるかということですが、これは逆にDCERというのを見ています。decremental cost-effectiveness ratioということで、寛解に導入された患者に薬剤を間引いて使うことによって、十分な効果を維持しながら医療費は下げることができるという報告が出てくるようになり、やはりそういった方向で検討が進められるべきであろうと考えております。

 次のページですが、バイオシミラーです。ジェネリック医薬品と同様に生物学的製剤も後発品が出るようになりまして、それをバイオシミラーと言うわけですが、関節リウマチの領域においても既に3製剤が承認されております。市場にはもう2つが出ており、これからもう1つ出るというところですが、日本ではバイオシミラーの使用はまだまだ限定的であることが分かっています。なぜ限定的であるかというのが下に書かれているところで、これは私が書いた総説から取ったものですが、医療従事者の理解がまだまだ不足しているということと、医療費の高額療養費制度というのがありますので、バイオシミラーを使っても患者にとっての自己負担分が減らないという点があり、それが1つの大きな問題になっているのではないか。病院側においても、例えば予算の関係で1製剤のみしか入れられないという病院もありますので、先発品か後発品かどちらかを選ばなければならないという問題もあると伺っていますから、こういったことに関しての議論や理解が進められるべきであろうと考えております。

2番目の「情報提供、相談体制の確保」ですが、治療の標準化ということはガイドライン等によって随分進捗したと思うのですけれども、専門医の地域偏在等の問題がありまして、まだまだこういった事業を通しての情報提供活動が必要であろうと思います。下の日本地図は、日本リウマチ学会の専門医の全国分布を人口当たりで見たものですが、やはりかなりの差があります。九州地方は多くて東北や北海道が少ない、専門医の絶対数ではなくてあくまで人口当たりで見たものですが、このような偏在はあるということです。

 そういった偏在をなくすのと同時に、治療の標準化も非常に大事でして、「関節リウマチ診療ガイドライン2014」、これは厚生労働省の宮坂先生の研究班の仕事として私が取りまとめさせていただいたものですが、このガイドラインの作成においては日本リウマチ友の会の会員の方々にも御協力いただき、本日御出席の小嶋委員や金子委員にも御尽力いただきまして、利害関係者の参加というところでかなり先駆け的な活動をさせていただいてMinds、日本医療評価機構の点数化では非常に高い点数、高い評価を頂いたということです。

 さらにこのガイドラインにおいては、内容は本来ですと専門医向けに作ったものですが、一般の先生方、非専門医の方々にもどのように使っていただいたらいいのかということで更にこの研究を進展させて、「一般医向け診療ガイドライン」と題した所にありますように、専門医に任せていただきたい部分と一般医の方々にもどんどんしていただきたい面というところで分けて、一般の先生方から見ても実現可能かどうかということの意見も含めて検討させていただき、日本リウマチ学会のホームページ上に出させていただきました。これも厚生労働省の研究班の仕事の一環と考えております。

 このようにして、情報提供・相談体制の確保も進めるべきですが、大事なことはやはり今後の「研究開発等の推進」です。先ほどからお話をしてまいりましたように、標的分子の制御によるリウマチの治療手段というのは確立したし、早期治療ということに関しても理解は深まっていると。ところが、今後まだやらなければならないことがあると考えられます。現在までのTNFIL-6だけではなくて、他の標的分子を探すこと、そしてリウマチの治癒につながるような何らかの方向性を見つけていく必要がある。もう1つは、RAの予防的医療とか先制医療ということも考えていかなければならない。ある程度の遺伝的背景のある疾患ですので、リスクのある患者というのは同定されているわけです。そういったリスクのある患者で発症させないためにはどうすればいいかという方法論、まだ少しエビデンスも少なくて議論するには時期尚早かとも思いますが、やはりこういったことを考えていく必要があるだろうと考えております。

 現在では、こういった抗CCP抗体陽性、喫煙、歯周病、このようなリスクのある患者で、発症する人としない人で何がそれを分けているのかという検討。その中で1つ注目されているのは気道病変、こういったところからリウマチが起こるのではないかという話も出ていますので、そういったところにも研究を進めていく必要があるのではないかと考えております。少し長くなって非常に恐縮ですが、内科的な視点をお話させていただきました。

○宮坂委員長 ありがとうございました。大変分かりやすいお話を頂きました。続いて、資料2-3「整形外科からみたリウマチの現状」の説明を、田中委員の資料について、事務局から代読をお願いします。

○貝沼がん・疾病対策課長補佐 よろしくお願いします。資料2-3をお手元にお願いします。田中委員より重要な点を伺っておりますので、その点を抜粋してお話させていただきます。1ページ、図表の下辺りを見てください。先ほど山中委員からもお話がありましたとおり、疾患活動性の改善に伴ってリウマチ関連の手術数も減少しており、2004年に比して2014年の年間手術数は約20%減少している。このうち特に人工関節の手術は減少しており、その一方で、手関節・手指及び足関節・足趾の手術は減少しておらず、大関節の破壊が抑制されたことによって、患者及び医師の関心が小関節に移行している可能性が指摘されております。また、骨粗鬆症関連の手術も減少していないとされていました。

 下から2行目ですが、中でも我が国の高齢化を反映して、RA患者の高齢化、高齢発症RA患者が年々増加している。高齢RA患者は多くの合併症を有し、薬物療法の有害事象の頻度が高いなど、高齢患者特有の問題も有しております。また、たとえ薬物によって疾患活動性が良好にコントロールされていたとしても、加齢に伴う様々な運動器の問題(骨粗鬆症、変形性関節症など)によって、ADLQOLが損なわれてしまいます。そのような意味で、今後、リウマチを「炎症性疾患」としてだけでなく「運動器疾患」として捉える観点が、ますます重要になってくるでしょうということを、総論的におっしゃられておられました。

2ページの下から2行目、「医療の提供等」です。リウマチは関節の炎症病変を中心とするが、様々な合併症を生じることからも明らかなように、全身疾患として捉える必要があります。したがって、その対策には、リウマチ内科医、整形外科医をはじめとした多くの診療科の医師、また看護師や理学療法士、薬剤師といったメディカルスタッフの連携による集学的治療が必要であるということです。他領域と比較すると、未だリウマチを専門とする内科医は十分とはいえず、専門医の地域偏在も存在する。また、リウマチ診療に関心を持つ整形外科医が減少しており、こうした点を問題と捉え、リウマチ診療に必要な基本的知識や技術を有する専門医を継続して育成する体制が必要でしょうということです。また、リウマチ診療を専門とする看護師や理学療法士、薬剤師といったメディカルスタッフの育成も急務ですと、そのようにおっしゃられておられました。

 「情報提供・相談体制」という観点では、生物学的製剤の登場以降、マスメディアではリウマチを取り上げる頻度が増えたこともあり、リウマチの認知度は近年大きく向上し、その結果、患者や家族の早期受診促進につながり、早期診断、早期治療がリウマチの機能予後を改善させることを考えれば、こういった取組は非常に好ましい方向でしょうということでした。

 しかしながら、先ほども述べられていたように、罹病歴が長く、既に関節の破壊や変形を来した患者においては、薬物療法だけでなく、装具使用やリハビリテーション、また症状に合った治療薬の使用が重要であります。場合によっては、手術的治療がADLQOLを著しく改善させる場合が少なくないということです。そうした中で、炎症がコントロールされているにもかかわらず、関節破壊や変形、骨組鬆症などの運動器の問題に起因する疼痛やADL障害のために寛解に至らないという判断となり、いたずらに生物学的製剤などの抗リウマチ薬が継続使用されている例も散見されるとのことでした。

 先ほどの山中先生の話にもありましたように、我が国のみならず、世界的にもリウマチ治療薬に要する医療コストが増大している現状を鑑みますと、こういった点は医療経済的な観点からも改善すべき点でして、このような問題を解決するためには、リウマチ内科医、整形外科医、リハビリテーション医などが連携をして、リウマチ患者の評価や治療に当たることが重要であり、個々の患者において、どのような治療がその患者にとって適切であるのかを情報提供することができるような、そういった体制を整備することが重要であるとおっしゃっていました。

 最後に、「研究開発等の推進」です。関節リウマチは免疫異常を基礎として、滑膜炎、軟骨破壊、骨破壊を生じる疾患であることから、研究開発としては下記のような分野で行われる必要があります。

 基礎研究分野においては、免疫異常の機序、滑膜炎の機序、軟骨破壊の分子機序、骨破壊や骨粗鬆化の分子機序、新たな標的分子の同定、臨床研究としては、早期の薬物介入の臨床成績、合併症の疫学調査、運動器障害の現状、手術療法の変化、新たな手術療法の開発、高齢関節リウマチ患者のリウマチ診療の現状の対策。こういったことに取り組むべきではないでしょうか、ということを御意見として頂戴しております。以上です。

○宮坂委員長 ありがとうございました。続いて、資料2-4を用いて「小児科からみたリウマチの現状」の説明を、森委員よりよろしくお願いします。

○森委員 「小児科からみたリウマチの現状」ということでお話させていただきます。これまで3つの方向性(医療の提供、情報提供、研究開発等の推進)でお話がされておりましたが、小児では全てを包含した研究、仕組みを基礎作りから始めておりますので、3つに課題を分別せずに説明をさせていただきたいと思っております。

 一番のポイントは、ここに記載してありますように、小児期発症の関節炎患者さんが必ず直面する「成人移行期」について対応策を講じることにあります。まずは、成人期の小児発症の慢性疾患の患者さんの現状についてですが、小児医学の進歩で、これまで疾病で命をなくすような方も長く生存できるようになり、しっかり生活を送れるようになりました。その結果、20歳以上の小児期発症の慢性疾患患者数は毎年1,000人ぐらいずつ増加していると言われています。日本小児科学会では、「小児期発症疾患を有する患者の移行期医療に関する提言」を、20132014年に掲げておりますが、思春期・成人期を迎える患者さんが多くなっているにもかかわらず、小児期医療も成人期医療も現状では必ずしも適切な医療を提供できていないことから、提言に至ったと聞いております。

"移行期医療""移行期支援"において、子どもの人格の成熟に伴った自立した主体的な健康管理の支援・推進が大切なのですが、小児科では1.自己決定権の尊重、2.年齢(加齢)により変化する病態や合併症への対応、3.人格の成熟に基づいた対応と年齢相応の医療の3つの骨子が重要となります。そのため、診療におけるコミュニケーションが“保護者による、保護者のための”外来であったとしたら、意識的に外来のスタイルを変えていかなければならないというスタンスでおります。

 これを小児リウマチ性疾患に適用してみますと、本分野では成人以降も医療の継続が必要な症例が多いと言われており、発症10年以内にdrug free remission、先ほどからお話がある寛解に至るのは大体全体の3割程度だと言われています。つまり、残りの7割の方が移行期から成人にかけて治療の継続が必要とされていることになります。

 私は現在小児リウマチ学会の理事長もさせていただいており、学会はまさしく移行期医療に関して、一致団結して研究の推進事業を行っているところでもあります。大きな事業は以下の3つ、1.移行期診療ガイドの作成、2.移行期診療モデルケースの紹介、3.小児期から長期観察可能なデータベースの構築であります。この研究過程で、主な小児リウマチ性疾患のガイダンスを作成するということで、若年性特発性関節炎(JIA)、全身性ループスエリテマトーデス(SLE)、若年性皮膚筋炎(JDM)、シェーグレン症候群(SS)4疾患についてガイダンスを作成することが出来ました。

 まず課題の1つ目は、移行期診療ガイドの作成です。どうしても小児の領域では、ガイドラインを作成するまでのエビデンスがなかなか集まらないため、ガイダンス形式で、クリニカル・クエスチョンに対して、エキスパートオピニオンとして専門家が回答するという方向でまとめております。スライドに示しましたように、➀~➅の項目を軸に実際のガイダンスを作成しております。

2つ目の課題は、移行期の診療体制モデルケースについてです。実はいろいろな診療体制パターンが小児科から成人科への移行で試行されています。その中でモデルケースになった連携体制の成功例を現在検討しており、どういう点がうまくいっているのか又はうまくいかなかったのかを掘り下げて考察しております。

 うまくいった例をお話させていただきますと、同一施設内でリウマチ疾患移行期外来が設置されているということで、今、お隣にいらっしゃいます山中先生の東京女子医科大学は、小児リウマチ医の先生が常駐なさっていることで、移行期外来の設置が工夫されていると聞いています。私がおります東京医科歯科大学や京都大学も現在見習って移行期外来の設置の検討を行っています。(行をツメル)また、連携あるいは近隣施設間での移行ですが、小児の場合はこども病院で診ていた患者が近隣の成人診療科に移るケースがあります。都立小児病院と多摩医療センター、宮城県立こども病院と東北大学がモデルケースになっています。(行をツメル)

 加えて、他施設間でうまく移行が進んでいる例を検討しています。総合病院の小児科から少し距離が離れた成人診療科に連携がとれている例があり、大阪医科大学と大阪南医療センター、岡山大学と倉敷成人病センターがこの範疇に入ると考えています。この検討を行うことによりモデルケースとして全国の多くの施設に発信できないかと考えています。

 課題の3つ目は、小児期から長期観察可能なデータベースの構築です。以前から成人科でNinJaという全国的な登録システムがございますが、これに小児科が何とか関われないかと考えておりました。小児科から成人科まで一人の患者さんを長期にわたって追えれば、しっかりしたデータが掴めると信じて、現在この作業に従事しております。この過程の中で、小児リウマチ診療ネットワークが順調に仕上がってきましたので、ここで紹介させていただきます。

 「小児リウマチ中核施設ネットワークの構築」については、厚労省班研究課題の中で研究させていただきました。簡単に申し上げますと、目的は、小児リウマチ性疾患の中で発症頻度が高いと言われている、赤字で示してあるJIASLEJDMSS4疾患と、他は頻度が今まで不明であった血管炎症候群患者さんを含めて、全国の実数調査をアンケート方式で行いました。

 方法は、本邦の小児リウマチ性疾患をほぼ全数を診ていると考えられている日本小児科学会の専門医研修施設519施設から、16歳未満の患者及び16歳以上の患者の実数をそれぞれご回答いただきました。この集計結果により、全国都道府県別の患者数、全国中核施設の所在と小児リウマチ専門医の分布、各医療圏における「小児リウマチ中核施設」へのアプローチと今後の対策、患者会との連携、今後の対策案を講じながら、現在ネットワーク構築を急ピッチで進めています。

13ページに結果をお示ししますが全国調査結果と回収結果ですが、回収率は全国の小児科医師に大々的にご協力していただき、519施設のうち474施設、91.32%の回収率となりました。高い回収率であったため地域性を考えずに総数を概しても構わないという疫学専門の先生のご助言もあり、赤枠で囲ってありますように本邦のJIA患者さんが約2,700名だという結果を出すことが出来ました。

 次のグラフですが、こちらは16歳未満のJIAの患者の全国分布です。JIA患者が多い県、少ない県があるかと思いますが、実際にはその都道府県の小児人口当たりで考えますと、有病率に大きな差異がないことも分かっています。すなわち、全国にくまなく一定数の患者が存在することが分かりました。

15ページです。一方、リウマチ学会での小児科標榜専門医、私たちは小児リウマチ専門医と名打っているのですが、こちらは20174月現在、83名しかおらず、しかも47都道府県のうち20都道府県しか小児リウマチ専門医がおりません。日本地図に示しますと、赤く塗った所が小児リウマチ専門医が不在の県になりますので、患者さんがいるにもかかわらず、小児リウマチについて専門的な医療が受けられていないという現状が把握できました。

 そこで小児リウマチの中核施設のGoogleマップを作成し、日本小児リウマチ学会および保護者の会(あすなろ会)のホームページにリンクを張って、情報を共有しています。小児リウマチ中核施設というのは我々が規定したものであり、既成の制度により定められたものではありません。定義は、小児科で診療されている全JIAあるいはSLEの患者数10名以上を診察している施設を中核施設として規定しました。そうしますと全国で55施設が該当し、概して全国的に偏在なく配置されておりました。つまり、専門医は駐在しなくても、中核施設のネットワークを使用すれば患者さんの診療に当たれるのではないかと考えています。中核施設55施設からは、病院の情報の提示に許諾いただき、Google Mappingでの開示・情報の共有化を図りました。この結果、中核施設がその地域の中心となって患者さんの診療を担っていただくということでご協力を仰げることとなりました。

 画面の左側に中核施設55施設の一覧を示していますが、そちらをクリックすると、例えば、私の施設であります東京医科歯科大学がどのような診療体制になっているかが明示できるようになっております。

 また、日本リウマチ学会の専門医の所属施設の先生方にもアンケートをご協力いただき、内科医、整形外科医の先生方からもご回答を頂いております。その結果、回答は27都道府県の83施設から得られ、小児科医がいない所では、小児科医以外の先生方が16歳未満の患者さんを診ている現状が分かりました。このように、実際にはしっかり小児科医と成人科医が連携していくことで、より強固なネットワークの構築を図れるのではないかと期待しております。今現在、小児リウマチ中核施設周辺の成人科協力施設の選定及び仲介を行っている最中でして、成人科医としては先ほどもお話させていただきましたNinJa登録施設に協力を仰げればと考えています。

 最後にこれからの展望になりますが、小児期から成人移行期にわたるJIAを小児科、成人科という垣根を超えたシームレスな形で長期間観察し得る仕組みを構築することが、今後の課題だと考えています。そのためには、小児科及び成人科の円滑な連携により、必要不可欠な基礎情報を網羅的に収集し得る移行期医療についての研究の推進が求められています。以上、小児科の取り組みを御紹介させていただきました。

○宮坂委員長 続きまして、資料2-5「患者の立場からみたリウマチの現状」の説明を角田委員よりお願いします。

○角田委員 患者の立場から見たリウマチの現状ということで、ご説明させていただきます。多くリウマチ患者の立場でからのお話をお伺いしました。お手元の資料は、「リウマチ白書」からのもので、リウマチ友の会が5年ごとに実施しているリウマチ患者の実態調査の結果をまとめたものです。友の会会員数11,955人、回答率7,041名、回収率58.9%の実態調査のまとめでリウマチ患者を取り巻く医療・福祉・社会環境等について、患者の現状を反映しているものです。

 次のページです。御存じのとおり、性別に関しては女性が圧倒的に多い疾病です。年齢的にも20代から、先ほどのお話にもありましたように、高齢になってもリウマチになるということです。私の母も83歳でリウマチになりましたので、やはり高齢でもリウマチになるのだなと驚いております。

 次の資料です。リウマチと診断された年齢ですが、20代~60代の3本の柱がぐっと出ています。ここだけでほとんどの患者数なりますがが、先ほど話しましたように80歳以上でもなるという疾病です。

 次の資料ですが、主治医に希望することということで、患者の多くは、内科にかかっていても整形にかかっていても医師同士が連携を取ってもらいたいと希望しています。内科で診ていただいても、関節の疾患ですから、関節に痛みが出たり変形が出たときには整形外科医へ回していただきたいと思っていますし、整形外科で診ていただいても、血液検査の結果が非常に悪くなっていれば内科に回していただきたいというのが患者の本音です。また、病状について、経過について、薬についての説明をしてほしいというのが2番目で、患者は今どういう状態なのか、なぜこの薬を使わなければいけないのかを、きちんと先生に説明してほしいということです。これは2015年の実態調査ですので、この頃からどうもパソコンを見ている先生方が多くて、内科の先生もそうですが、パソコンを見ながら患者の話を耳で聞いているということが多く報告されています。ですので、きちんと患者に向かい合って、しっかり症状を見ていただいて、なぜこの薬が必要なのか、なぜこの薬を使わなければいけないのかというところまで、きちんと説明をしていただきたいと思っております。

 必要な検査をしてほしいということが次に出ています。これも整形外科の先生方は3か月から半年に1回ぐらいの検査ですが、逆に内科の先生は毎月するということで、患者にとっては医療費の問題が掛かってきます、先生は必要でするのでしょうけれども、患者も毎月されると支払いが多くなるということで、どちらを取るということもないのですが、このような不満が両方から出ています。ですので、先ほどお話しましたように、なぜこの検査をしなければいけないのか、今回はこの検査をしなくてもいいのではないかということを、先生が患者に分かりやすく話をしてほしいと思っております。

 装具やリハビリについても、日本リウマチ友の会のリウマチの治療は4本柱とされており、その1つがリハビリテーションになっているので、必要なリハビリを必要な時期にしていただきたいというのも患者の要望です。

 治療目標についてですが、患者はいつまでこの薬を飲まなければいけないのか、いつまでこの治療をしなければいけないのかという、先が見えない不安が非常にあります。ですので、今こういう状態だからもう少しこの薬を使おう、今こういう状態で、寛解的ではないけれども、大分よくなってきているので、薬を少し減らそうとか、そういうことを先生と患者が向き合って、治療目標を考えていただきたいと思っています。リウマチも非常に長く掛かる、それこそ一生付き合わなければならないと言われていた病気です。私も43年になります。私の場合は人工関節が5か所入っているので、寛解という状態ではないのでリウマチと向き合って、一緒に生活していくという状態ですが、若い方たち、まだ病歴の浅い人たちは、リウマチを抑えて社会に出たいという患者も多くいます。一人一人目標が全部違いますので、そういうことも先生と一緒になって治療目標を考えていただきたいと思っております。

 次のページです。1年前と比較した現在の症状ですが、現在の状態はどうですかということで、「良くなった」「変わらない」「悪くなった」とありますが、これを見ても分かるように、20052015年の10年間で寛解したという患者が増えています。「良くなった」も増えています。これも生物学的製剤、バイオ、いろいろな薬のおかげかなと思って感謝しております。これを見ていただければ、薬の有り難さ、先生方の指導がいいのかなと思っております。

 治療に一番期待することですが、やはり関節の痛みや腫れがなくなるということで、まずリウマチにかかると、私もそうでしたが、痛くて24時間眠られないほどで、6時間ごとに座薬を使いながら本当に苦しい思いをしました。これがなくなったらどんなに幸せだろうかと思ったことも、何度もありました。関節破壊の進行が止まれば人工関節にならないということで、今新しい薬ができておりますので、私は42年前ではなく、今リウマチになったらどんなに幸せかなと思っております。患者は日常生活が送りやすくなること、社会生活が健康な人と同じようにできることが、何より治療に期待することです。

 次のページです。身体障害者手帳については、「持っている」「持っていない」とありますが、等級に関してはだんだん少なくなってきています。これを見ると、3級、4級、5級と増えてくる。これも新しい薬が出てきて、治療法が確立してきたおかげかなと思っております。これからの展望ですが、リウマチ友の会としては、身体障害者手帳を持たずに、薬でコントロールしながら、社会に出て生活していくことが一番だと思っております。

 次に医療費の自己負担です。皆さん早くよくなりたいということで、もちろん先生のお勧めもありますし、自分の希望もありますが、薬価が高いということで悩んでいる患者さんたちにとって、薬代が安くなればと思っております。年齢によってですが、後期高齢になって1割負担になると安くなりますが、一番お金の掛かる時期の患者が、一番医療費が高くなると思っております。

 まとめです。先ほどもありましたように、医師に望むことの第1は、内科・整形外科の連携で、ここにソーシャルワーカーや看護師のチーム連携を望みたいと思っております。症状や検査・治療方針等について説明をしっかりしてほしい。パソコンを見ず、患者を見てほしいという思いでおります。症状のコントロールも、以前に比べ改善はしていますが、まだまだ十分な状態とは言えない患者も多くいらっしゃいます。みんな同じリウマチという疾病名は付きますが、それぞれ違いますので、一人一人に向き合った症状のコントロールができていければと思っております。また、先ほどお話しましたように生物学的製剤の使用によって医療費の自己負担が増加しております。いろいろな問題もあろうかと思いますが、日本リウマチ友の会としては少しでも助成をしていただきたいという思いでおります。以上です。

○宮坂委員長 ありがとうございました。ここまで、事務局並びに4名の委員から、それぞれの立場からのリウマチの現状について御説明を頂きました。

 それでは、これまでの説明を踏まえて、従来の報告書の柱となっている「医療の提供等」「情報提供・相談体制」「研究開発等の推進」の3つの観点から、それぞれ現状の課題や対策について御議論を頂きたいと思います。なお、本日は初回ですので、各論点について自由に御議論いただき、論点を出し尽くしていただきたいと考えております。まず、医療の提供等について御質問、御意見等ありましたら御発言をお願いします。医療の提供だけではなく、各委員の御発表になった内容に関する御質問、あるいはコメントでも結構です。

○山本委員 今回の現状についてのプレゼンで、全体として患者の数の推計があって、これはもちろんなかなか難しいことだとは思います。方法論として、3年に1度で、10月の3日間のうちの指定された医療施設ごとに1日の患者の数を数えていると。仕方ないといえば仕方ないと思うし、大変な仕事だということは分かるのですが、これを見るとだんだん患者の数が減ってきている。これが本当だとすると喜ばしいことなのですが、本当なのかどうかというのが重要で、先ほど市川委員も、数は減っているけれども、とおっしゃいました。こういうものを見ると、そうなってしまうわけです。本当に減っているかどうかは、この対策としてはかなり重要で、このデータの信憑性というか、これは推計統計学になると思いますが、小嶋委員がいらっしゃるのでお聞きしたいと思います。これは推計などの平均に合わせているのでしょうけれども、1つはある1日を代表した、我々から見ると患者の受診の間隔は延びているわけで、昔は2週間ごとだったのが1か月ごとになって、今は3か月ごとになっている。それで、この方法論でいいのかということと、当然代表的なものだけサンプリングしたわけだから、必ずばらつきが出てくる。

○小嶋委員 時間がなくて十分詰められていないのですが、患者調査は1日の決められた日の調査で、それに平均的な患者の受診期間を当てはめて推計しているものだったと思います。今現在の関節リウマチの患者の受診のタイミングはものすごく差が出てきていて、隔週、毎月という方もいらっしゃいますが、2か月、3か月、あるいは半年と、すごく延びている患者も増えている状況だと思うのです。なので、急性期の疾患についてはこの患者調査による方法は適切だと思いますが、特に今の関節リウマチに関しては、この患者調査はちょっと厳しいのではないかと思います。

 また、これは十分に分からなかったのですが、推計患者数は減っているのですが、ここにある総患者数は増えています。この総患者数の推計の計算方法を十分理解しないまま来てしまったのですが。

○貝沼がん・疾病対策課長補佐 山本委員の御質問もあるかと思いますが、推計患者数というのは入院と外来を足したもので、そのときに通院された患者の実数になります。この数を用いて算出された有症者数の推計数は一番右の「総患者数」になりますので、患者の数は決して減っていないという表現のほうが、一番右を見ると約33万人前後でずっと続いておりますが、こちらのほうが有症者数と考えていただくといいのではないかと思います。

○宮坂委員長 その数が、先ほどの山中委員のお話ですと60100万人ぐらいのばらつきがあって、70万人前後ではないかと言われていて、その根拠はもちろんはっきりしませんが、ここで出ているものはそれの半分なのです。それで山本委員がばらつきとか信憑性といったことを問題にされたのだと思うのですが、そこについては何かありますか。

○貝沼がん・疾病対策課長補佐 その点につきましては、この方法を変えずにずっと来ているということもありますので、その推計方法が正しい、正しくないという議論は難しいですが、先生方がおっしゃる人口の何%ぐらいだという考え方と、この数字が解離しているということは、私どもも承知をしておりますので、同じ方法で取ったものとしては変わっていないのだということを御認識いただければいいのではないかと思います。

○山本委員 これはそのままにしておきながら、この方法を捨てることはないけれども、別の方法で取ってみたらこうだったという別のデータもあってもいいのではないかと。

○宮坂委員長 問題は別の方法なのです。日本には別の方法なるデータが必ずしもないのです。

○山中委員 最近、医療データベースがいろいろありまして、JMDCなどのビッグデータを使うと結構数が出てきます。私の「内科からみたリウマチの現状」の1枚目の下のほうにYamanakaの「Modern Rheumatol」、2014年の論文がありますが、これはJMDCのデータベースで、抗リウマチ薬を使っているリウマチの患者がどれぐらいいるかということで見たものです。ですから、昔のリウマチというのには、いわゆる変形性関節症で、NSAIDだけ使っているような方々もリウマチに含まれていた可能性があるので、そういう人は省く必要があります。これからナショナルデータベースを解析することによって、こういった本当の患者数はしっかり把握する必要があるのではないかと思っております。

○宮坂委員長 JMDCに出ております。私も知っていますが、65歳以上で加入している方は非常に少ないのです。ですから、もしも高齢者の発症が増えてくると、そこの部分は実は含まれていない、あるいは必ずしも正確ではないということがあるので、そういう意味では、山中委員がおっしゃったように、これからナショナルデータベースのデータがないと、実数はなかなか出てこないかなという気がします。

○山中委員 そのとおりだと思います。全ての医学統計、ナショナルデータベースをこれからやっていく必要があるのではないかと思っております。

○宮坂委員長 ただ、山中委員の抗リウマチ薬を飲んでいるリウマチ患者の数から推測をすると、2番目のスライドにあるように、我が国の患者数は60万から100万人ということで、それはJMDCのデータからの推計値ということですね。

○山中委員 はい。

○宮坂委員 この点はそれぞれ理解をして、それを基に議論をしていただくということになると思います。ほかには何かありますか。

○山本委員 すみません、こだわるのは、そういう意味で増えているのか減っているのかの把握は必要で、山中委員もおっしゃったように、環境因子としての喫煙や歯周病はこれからコントローラブルになってくるので、それがどれぐらいで利いてくるのかも含めて、それが一生懸命コントロールしても全然減らないとまた違うことになってくるし、何でそのようにこだわっているかというと、自己免疫疾患と言われている中でどんどん増えている疾患があるわけです。多発性硬化症や炎症性腸疾患は考えられないぐらい増えている。それに対して、関節リウマチはラッキーなことにそれほど増えていない。本当なのかということと、全身性エリテマトーデスは増えているというデータもあるけれども、我々としてはそんなに増えていないのではないかという実感もあるし、そういう患者の変動はかなり重要になってくるので、できましたらこの対策のところでどのようにしようかという方向も打ち出せたら非常にいいなと考えます。

○宮坂委員長 そうですね。日本のリウマチ患者の実数、リウマチ患者は何人いるのかという基本的な質問に我々はなかなか答えられないので、そういった疫学的な調査も含めて、今後、それをきちんと解明していくことが必要かなと思います。小嶋委員、その点はいかがですか。

○小嶋委員 以前から感じていることなのですが、私は国民生活基礎調査のデータの分析をしておりまして、まだ分析途中で恐縮なのですが、高齢発症のリウマチ患者が増えているのではないかと思います。それについて、今回、田中委員からNinJaのデータベースを基に平均発症年齢がだんだん上がっているということをお示しいただきましたが、今回のリウマチ等対策委員会が前回と大きく違うことは、日本社会の高齢化が進んでいるということです。既に発症しているリウマチ患者が高齢化しているということ、また、はっきりはしていないけれども、高齢発症のリウマチ患者が増えているということに対応しなくてはいけないのではないかと強く思います。田中委員も御指摘くださっていますが、リウマチ患者が高齢になっているということは、合併症・併存症を抱えた患者が増えていることを意味します。そういった合併症・併存症を持った高齢患者にどういった治療をしていくべきか。あと、高齢発症のリウマチ患者は、標準的な早期治療の対象として私たちが想定しているリウマチ患者とは治療の反応性やニーズなどが異なっている可能性があり、高齢発症のリウマチ患者に最適な治療とは何かを考える必要があると思います。

 もう1つは、前回と比べてよりリウマチ治療が確立されているということで、発症した女性の若い患者に対して、より積極的に妊娠、出産、子育て、就労に対する支援を考えていけるのではないかと思いました。

○宮坂委員長 田中委員のデータですと平均発症年齢が増加をしているので、ただ単に患者が長寿化しただけではなくて、実際に高齢発症の患者が増えていることを意味しているのだろうと思います。私も地域医療をやっていますと、私は長野県でリウマチ診療をやっているのですが、明らかに高齢者が増えています。それは私の体感感覚だけしかないのですが、この平均発症年齢が年々上がってきていることと一致するのかなと思っています。

 また、小嶋委員がおっしゃったように、若年女性の問題、妊娠や出産、社会的なサポートといったことも、リウマチの治療がよくなってきただけに見落としてはいけない点だろうと思います。ほかに何かありますか。どの御発表についてでも構わないと思いますが、いかがでしょうか。

○金子委員 私はずっと東京や横浜でやっているのですが、専門医の地域偏在はものすごく問題ではないかと思っています。委員長も東京医科歯科大学でされていたときと今とでは大分違うのではないかと思いますが、私たちは患者さんたちもすごくアクセスがいいし、かなり早期の患者さんもいらっしゃいますが、地方の先生方とお話すると、専門医にたどり着くまでに2年や3年かかっている患者さんもかなりいらっしゃるのです。そこを、地方を含めてどう発信していくかということもすごく大切な問題かなと思います。

○宮坂委員長 それは日本リウマチ学会にとっても非常に大きな問題で、リウマチ診療の均てん化や標準化という点では日本はかなりばらつきがあります。特に先ほど御紹介した長野県などは非常に遅れていて、どうしてここまでひどくなってしまったのか、もっと早く来られなかったのかという患者さんが結構いらっしゃるのです。年々その傾向が小さくなっていく、あるいは改善していくのであればいいのですが、必ずしもそうでもないという印象を持っております。

 私から少しコメントをしたいのですが、先ほど日本リウマチ友の会の角田委員からは、スライドの7枚目の1年前と比較したときの患者の症状で、例えば2015年を見ると、寛解したという方が6.7%なのです。先ほど山中委員がおっしゃったように、あるいは田中委員のデータもそうですが、半数以上が寛解に入るはずなのに、ここでは、ある1地点だけですが、大きな差があります。ただし、疾患活動性を測る物差しも違うことは忘れてはいけません。我々が医学的に寛解という場合にはDAS28を使って2.6以下という形で厳密にやっているのですが、こちらの寛解というのは、多分、患者の体感感覚だと思うのですが、それにしても10分の1ぐらい違うのです。この点について何かコメントはありますか。

○角田委員 今、委員長がおっしゃった患者の体感だろうという話ですが、私個人としては、先生がもう寛解ですよと、薬はこうですよとならないと、患者自身は寛解の部類に入っていかないのではないかと感じるのです。良くはなっています、低疾患性になっていますが、まだお薬を使いましょうと。

○宮坂委員長 でも、寛解か寛解でないかは、薬を使うことと使わないこととは一切関係がありません。寛解というのは治癒と違いますから、薬を使っていて、なおかつ疾患活動性がある一定以下に落ちている状態を寛解というのです。だから、治療の有無に関係ないと思うのです。要するに、薬剤中止寛解とは意味が違うと思うのですが。

○角田委員 それは患者個人の思いだと思いますが、ただ、私たち患者は、治癒ではなく、一度リウマチと診断された場合に、よくよくでなければ治癒の場合に入っていかないと考えているのです。そうすると、血液の状態、検査の結果、自分の関節の状態などを合わせて寛解だろうと思ってはいても、先生方がまだ寛解ではありませんと、もう少し様子を見ましょうという状態だろうと思うのです。その後に続く言葉は、もしここでもう1回再発したときには、もっと厳しい状態になりますから、少しお薬を使っていきましょうかと話をされるのです。ですから、そこの辺りを。

○山本委員 恐らく、パソコンリウマチ医ではないですが、患者と医師とのコミュニケーションが十分でないというところですね。

○角田委員 そうですね。そうだと思います。

○山本委員 まずそこをどうするかということと、そちらにも説明をしっかりしてほしいということ、これは非常にシリアスな問題で、これはリウマチ医が悪いかというと、リウマチ医もあっぷあっぷしているのです。発生源入力というのがあって、全ての情報を全部パソコンに入れろと。間違えてしまうと、後で問題になるということがあって、これは根本的に解決しないと、こうやってパソコンを打ってしまうと間違えるので、間違えるとまた時間が掛かるから、キーボードを見ないといけないのです。それを何とかしないと、基本的によくならないのです。発生源入力はどんどん増えているので、例えばバイオを自分がやるのではなく化学療法室に注文するのに、クリックしなければいけない数を考えただけでも、嫌だということになるのです。昔に比べて紙に書くよりはよくなったでしょうというと、確かによくなったのです。でも、今までと同じでチェックしてくださいと言って、最後に自分がサインするだけでよければいいのですが、全部自分で入れなければいけないので、これは何とかしないと、リウマチだけではないですが、全ての問題が全て発生源入力だと。大学や、病院によっては後ろにアシスタントが付いて、きちんとアシストしてくれるというシステムがあって、それがあればいいのですが。

○宮坂委員長 普通はないですね。

○山本委員 でも、ある所はあるのです。ある所だと、もっと患者に対して密な医療ができる。

○宮坂委員長 女子医大などはありますが、普通はないですね。

○山本委員 そこもあぶり出して、そこの問題ですね。

○宮坂委員長 ただ、発生源入力の問題ももちろんありますが、我々の外来に来ている患者の数はむしろ減っていなくて、日本は希望すればどこの病院にでも行けるわけで、かかりつけ医から上に上がってくるわけではなくて、初診の患者だろうが、初発の患者だろうが、再増悪の患者だろうがどんどん来て、1人に割ける診察時間は限られているので、その中で今言ったような発生源入力をしようとすると、それはなかなか難しい。

○山本委員 幾つかのファクターがあるということですね。

○宮坂委員長 だから、患者の数が多いということもすごく問題ですね。多分、リウマチ医のほとんどは、午前午後診療するときは、お昼も食べずに夜までやって、場合によっては指定難病の書類も書いて、夜中までやるみたいなことをしていて。そういう状態にあるのも事実ですね。

○山本委員 もちろん、患者にきちんと説明することは第一位であることは間違いないのですが、そのバックグラウンドもあぶり出して、少しでもいい方向に持っていかないといけないと思います。

○山中委員 今の寛解率の話に戻りますが、どの集団も日本の代表ではないということだと思います。IORRAの集団も、NinJaの集団も、リウマチ友の会の集団も、日本全体の本当に平均的な集団ではないと思うのです。多分、NinJaIORRAに関しては、それは比較的進んだ治療をされているので、少し寛解率は高くなるだろうと思いますし、日本リウマチ友の会の方々は罹病期間が非常に長い方が多いので、なかなか寛解になりにくいという点が1つあるのではないかと思います。

 もう1つは、「寛解」という言葉をもう少し明確に定義したほうがいいのではないかと。患者の中には「寛解」と「治癒」と間違っている方がいらっしゃる可能性があるのです。例えば、薬を使わなくなるdrug free remissionしか寛解だと思っていないような方もいらっしゃるのではないかと思います。本人は寛解と思っていなくても、医学的に見れば寛解の方々はかなり多いので、そういう方がこのアンケート調査で落ちている可能性があるのではないかと。物差しが少し違うと、ということがあるのではないかと思います。そこのdiscrepancyは、今の2つでかなり説明できるのではないかと思います。

○宮坂委員長 あとは、もちろん医師とのコミュニケーションの問題もありますね。

○中板委員 日本看護協会の中板と申します。今日お話を伺わせていただいて、非常に勉強になりました。ありがとうございます。寛解という話ですが、3点ほど御質問をしたいと思います。「寛解」と、国の資料の中にある「完全寛解」という言葉があります。国の資料でいきますと、「平成23年のリウマチ対策見直しにおける主なポイント」のスライド4の中に、「完全寛解を現実的な目標にできる疾患になった」という所があります。この「完全寛解」と、先ほどの「寛解」と、リウマチ友の会から出された「良くなった」という、この辺の違いは明確になるのかというのが、1つの素朴な疑問です。

○宮坂委員長 それは多分あります。私からできる範囲内で御説明いたしますけれども、もし、ほかの先生からも補足があれば言ってください。我々が普通に言っている「寛解」というのは臨床的寛解です。症状が良くなった、場合によっては検査データも良くなった、治療の有無は関係ないというのが臨床的寛解です。我々は総合疾患的活動性、DAS28というのを見ていて、それがある一定の数値以下になって症状がなくなれば、「寛解」と言っているわけです。「完全寛解」というのは臨床的寛解に加え、構造的寛解あるいは画像的寛解と言って、レントゲンで骨病変の進行がなくなった、止まったということと、機能的に回復する、機能的に良くなったという機能的寛解です。だから臨床的寛解、構造的寛解、機能的寛解の3つがそろえば、「完全寛解」と言おうということです。ですから普通に言っている寛解というのは臨床的寛解ですし、完全寛解というのはもう少し厳しいものになると思います。ほかに何かありますか。

○山中委員 今、宮坂先生がおっしゃったとおりですが、寛解というのはある一時的な、そのタイムポイントにおける状況だけであって、1回寛解に入ったら将来的にずっと寛解かというと、そうではないのです。多くの場合、寛解は薬物治療によって疾患活動性が抑えられて、寛解状態まで持ち込んでいるということであって、それは必ずしもずっとその先、永続的にリウマチの状態が進行しないということは意味しない。それは補足させてもらいます。

○宮坂委員長 先ほど「Treat to target」という言葉も出てきましたけれども、Treat to targetで問題になっているのは、寛解の導入は大分できるようになって来ました。しかし寛解を維持させることがなかなか難しくて、そこにも十分な注意を払うべきであると言われています。だからワンタイムポイントで寛解なだけではなくて、それを継続させることがリウマチの本来の治療であるというコンセプトに、今変わりつつある、変わってきているというように言えると思います。今の点について、ほかに何かありますか。

○金子委員 ちょっと離れてしまうかもしれないのですけれども、臨床的寛解という観点でいくと、私たち医師が「臨床的寛解」と呼ぶ状態というのは、患者さんにはまだまだ症状が残っている状況なので、そこも患者さんとのギャップの1つです。数値だけの問題なので、まだまだ痛みがあっても、腫れていてもというところはあるかなと。

○中板委員 専門家以外にもわかるような説明が、やはり必要なのかなと思いました。ありがとうございます。それともう1点です。先ほど友の会の調査の中に主治医に希望することが出ていました。その「相談や情報提供」の部分が特になのですが、このような希望に対して、日頃はどのような形で解消しているのでしょうか。

○角田委員 友の会の患者さんたちの話を聞きますと、やはり患者同士の交流会を通して、同じ患者同士の集まりの中でいろいろな話をして、「私もそうよ」「私もこうだったわよ」という話の中で解消している部分が多いのかなと思っています。あとは、友の会から発行している『流』などに、問題を解決するための先生方の情報が入っていますので、そういうものを見たり、友の会では電話相談等もありますので、自分の症状について主治医に聞けないことを聞いて、自分の中で解決したりしていくというところもあろうかなと思っています。

 しかし多くの患者さんたちは、やはり患者同士です。なかなか外に出て行かれない、元気な人と一緒には行動できないという中では、地域の中での患者同士の交流会というのも必要な部分ではないかと思っています。先生方とゆっくりとお話する機会がなかなかできませんので、講演会等の中で、先生との相談会の中でということもあろうかなと思っています。

○中板委員 ピアの関係の中で不安を解消したりされているということですね。大変重要なことだと思います。さらに、いわゆるメディカルスタッフや、ソーシャルワーカーなど、ほかの相談体制も、もっと充実すると良いという希望もありますか。

○角田委員 あります。今はリウマチ専門看護師という制度があるのですが、現場に行きますと、看護師さんたちは飛んで歩いているのです。ですから話を聞きたいと思っていても、なかなか聞けない状態が現場にはあろうかなと思っています。きちんと話をしていただける人がつかまればと言ってはいけないのですが、話を聞いてもらう機会があればあるのですけれども、先生方もとても忙しくて、看護師さんたちもとても忙しいという中で、ゆっくり話を聞くという、聞いてもらえるということは、まだまだなかなか難しいのではないかとは感じています。ただ、ないよりはあったほうがいいという感じがします。

○宮坂委員長 本来は、その足りない部分をもう少しSNS(social networking service)などで補うという観点が、もっとあってもいいだろうし、今は正にそういう時代ですから、ネットをうまく使って知識の啓発を図るということは、更に必要だろうと思います。

○角田委員 ただ、ここで1つ。リウマチのホームページ等もあるのですけれども、それを使えない方たちをどうするかです。やはり紙媒体とか、直接会っての話になろうかと思います。若い方たちは、かえってそのほうがいいのかなとは思うのですが、それを使いこなせない、高齢になった患者ということでは、なかなか難しいところもあろうかと思っています。

○宮坂委員長 もちろんSNSだけでは駄目で、二本立てでやっていかなければいけない。私は難病情報センターにも関連しているのですけれども、例えば難病情報センターなどは、月のアクセス数が250万件あるのです。固定型のパソコンから、どんどんスマホやiPadからのアクセスに変わりつつある。だから当然、若い人たちに情報を提供していく場合には、そういうサービスも非常に有用だろうと思います。

○角田委員 そうですね。宮坂先生がおっしゃったように、それこそ二本立てという形になろうかと思います。

○中板委員 ありがとうございます。最後にもう1点、小児科の森先生にお聞きしたいのです。就学とか、もっと言うと就労とか、先ほども出ていた妊娠・出産といったことは、とても重要なことだと思うのです。働けずに止めてしまうといった状況がどのぐらいあったり、あるいは就職できないといった状況がどのぐらいあったりするのか。その実態の現状と、やはり治癒とは言えなくても寛解状態で普通に、当たり前に社会活動などがなされていくためどのようなサポートが必要なのか。今、ながらワークというのがありますけれども、どのような支援体制が必要なのか、医学の立場からお考えをお聞かせ願いたいと思います。

○森委員 今は正しくそれが移行期医療の大きな問題点です。これまで患者さんがどのぐらい治療経過中に治療を放棄せざるを得なかったかということには、余り注目がなされてなかったのですけれども、最近は患者さんを幼少時から追っていって、その後成人になったときにどういう状況で社会に進出・適応していくかに関心が寄せられるようになってきました。そこで最近では、治療から逸脱される方の数が少しずつ分かってきています。この数をしっかり把握・提起することで、恐らくそういう患者さんに対して小児期、移行期、成人の妊娠・出産に至るまで、一貫して診療を行っていかないといけないことが浮き彫りになると考えています。

○宮坂委員長 よろしいでしょうか。まだ余り話されてない議題としては、例えば内科と整形外科の連携体制とか、専門医やリハビリ等の医療従事者の育成の問題とか、先ほどから何度も出てきている生物学的製剤の適正使用といった問題は、まだここには出てきてないと思うのです。どれでも構わないと思いますので、まず論点を出していただくということではいかがでしょうか。

○市川委員 今後の取組みの(3)の「研究開発の推進」に、スライド5がありますね。このポツの2番目です。1番目はある程度理解できるのですが、2番目の「適切な医療が提供できる医療体制の確保に資する研究」を見ますと、来年度の予算で7億円のうち、8割ぐらいをこれが占めているわけです。それで2番目のポツの、医療提供体制の確保に資する研究の推進というのは、具体的にどういうことを考えているのか。また、今年の予算でどういう振り分けなのかを教えていただきたいと思います。

○貝沼がん・疾病対策課長補佐 政策研究・実用化研究の中で、金額の8割強は実用化研究のほうに回っており、政策研究の部門は何千万円といったレベルです。そうした中で、これは平成23年度からの取組になりますので、今しているものだけではないのです。先ほど少し御紹介した、宮坂先生に主任研究をしていただいた関節リウマチ診療標準化のための研究で、2014年に診療ガイドラインを作成していただいたり、2017年には一般向けのガイドラインを策定していただいたりしております。また、来年度以降になりますけれども、先ほど中板委員からも言われたような両立支援に関する取組も、免疫アレルギーの政策研究に取り組んでいく中で、適切な医療を供給できるような体制の確保作りを関連づけていければと考えております。

○宮坂委員長 市川委員の御質問は、スライドのほうは免疫アレルギー疾患等政策/実用化事業ですから、全てを含んでいるのです。ですから、リウマチはそのうちの一部ということになりますね。

○貝沼がん・疾病対策課長補佐 一部です。

○市川委員 基本的には(3)に挙げられているように、1つのテーマとして出ているものですから、この部分で例えば医療供給体制だと、専門医の配置とかセンター的な病院の育成とかで、その辺のところは先生の研究班では今、どのように検討されておりますか。

○宮坂委員長 私の指定研究は、既に一昨年に終わっているのですけれども、そこでの主たるテーマは、リウマチ治療の標準化・均てん化です。できれば拠点病院をつくって、一般医との間をつなげたい。そのツールとして我々が選んだのが関節超音波検査で、それを標準化する中で、リウマチの治療も標準化し、拠点病院なるものの構想を作っていこうということだったのです。ところが、それは実際にはなかなか難しいですね。まだ拠点病院ができたわけではない。ですから積み残しの課題ということになります。

○市川委員 アレルギーでは、拠点病院が2か所でしたっけ。

○宮坂委員長 アレルギーの場合はアレルギー基本法ができたということも、多分大きいと思うのですが、リウマチに関しては残念ながら法制化されていないので、予算的な限度という問題もあるのです。

○市川委員 できればそういう拠点病院があると、よりこの流れがスムーズになります。ありがとうございました。

○宮坂委員長 ほかにいかがでしょうか。先ほど友の会のほうからは、生物学的製剤も含めた適正使用の問題が出てきました。山中委員の御紹介ですと、IORRA25%が使っているということです。確か友の会は40%ぐらいが使っているので、多少の違いはありますけれども、2割強の方がどうしても必要になると。その辺の適正使用について、何かコメントを頂けますか。

○山中委員 1つは、日本リウマチ学会をはじめとして、最初は長期の安全性もまだ確立されてない段階でしたので、大規模な研究、全例調査等を行ってその安全性を確認し、どういう人にリスクが高いのか、どういう人に使わなければならないかというところを明らかにしてきたという経緯があります。その中で、こういった薬剤の安全性が確立してきました。ですから入口の所はもうかなり出てきたのですが、出口の所がまだまだできていない。どういう人で止められて、どういう人で減量できてというところが、まだはっきりしていないというのが現状だろうと思います。そういうところの明らかな道筋を作ることは、この委員会においても大事なことではないかと思っております。それは医療費も含めてです。

○宮坂委員長 今の点について、ほかの委員から何かコメントはありますか。例えば移行期の患者さんというのは、子供のときは小児慢性疾患で認められているので、医療費は出たわけです。今度の4月から、一部の小児リウマチに限っては指定難病になりますけれども、移行期の患者さんの生物学的製剤の問題点は何かありますか。

○森委員 もし幼少時の小児が使った場合、どこまで使えるか、どこまで使わないといけないかというのが、今までは全く分かりませんでした。ですから生物学的製剤導入までの期間もかなり長く、使用を躊躇されることが少なくありませんでした。最近、早い時期に導入すると、将来薬を中止できるという事実が、ようやく世界的にも報告されるようになってきましたので、考え方が変わってきたというのが現状です。ここで本年4月から指定難病にJIAが含まれましたので、JIAの患者さんがどういう経過をたどり、転帰はどうなるかが、初めて明確になるのではないかと期待しています。これからの重要な検討課題だと認識しています。

○宮坂委員長 今の点はよろしいでしょうか。それから、先ほど地域格差の問題もありましたけれども、私は、東京でも診療していましたし、地方でも診療していました。東京で生物学的製剤が必要だという話をして、患者さんに了解を頂くのと、地方の地域でお話をしたときの受入れ方は、やはり違うのです。農家の方が多いとすると、地方の地域の方のほうが収入が少ないこともあって、なかなか躊躇される方が多いのです。東京などでは比較的、そういう問題がないのです。それは多分、単なる診療格差の問題ではなくて、地方と都会との差とか収入差とか、そういったこともありますよね。

○角田委員 ありますね。私は群馬ですが、友の会の群馬の中においても、前橋、高崎、伊勢崎といった中央の辺りは、皆さん比較的に生物学的製剤や高額医療にも、「まあまあ」と思いながら使っているのですけれども、それから外れますと本当に厳しい。やはり毎月支払うお金が5万円、6万円、8万円になりますから。

○宮坂委員長 それは高額療養費の対象になりますよね。

○角田委員 ただ、それが上手になっているらしいのです。私は障害者福祉医療ですが、聞きますと「これが上手になってるのよ」という話です。やはりお金を払わなくてはならないようになっている。最初に話しましたように、やはり女性に多い病気ですので、女の方が毎月3万円、4万円の支払いをするという、お金を出さなければならないというのは、家計的にも非常に厳しい。

○宮坂委員長 それは多分、高額療養費に届いていないからその分は負担しなければいけないということですよね。

○角田委員 そうです。ですから、そういう形の中でリウマチの治療もなかなか思うようにいかないという現状もあろうかなと思っています。私が40何年前になったときも、生物学的製剤ではなくて鎮静剤とか、いろいろなものを使っていました。それでも毎月通院しますと、家計の中から25,000円の医療費を別枠にしておかないと治療が受けられなかった時代だったのです。40何年過ぎて、それでもやはり4万円、5万円というお金を出さなければいけないとなると、大変厳しいと思います。特にお子さんの学校にお金が掛かる時期とか、子育て中の方は特にそうかなと思っています。

○宮坂委員長 ほかに何かありますか。

○山本委員 追加すると、山中先生もプレゼンされたように、合併症対策ですかね。それも国際的には余り重要だと言われていない呼吸器疾患、呼吸器合併症です。特に日本はどういうわけだか、肺線維症が多くて、薬剤性も多くて、pneumocystis、肺炎も多いというところをきちんと認識する。我が国独自なのか、それとも東アジアの問題なのかは分かりませんけれども、そういう問題も含めて。がんはもちろん、骨粗鬆症、高齢化に伴っての骨折も含めて、合併症対策をきちんと別立てでやっていただくことが重要かなと思います。

○宮坂委員長 合併症の十分な疫学的なエビデンスを取ることも必要ですし、その治療対策ですね。それから、なぜ起こるかというメカニズムですね。

○山本委員 そこまで踏み込むと、なかなか難しいけれども、まずは患者さんのためにどうなるかというと、やはり皆さんが認識して、別立てで治療をどうするかということを考えるということです。

○宮坂委員長 分かりました。あと、残り時間が5分ぐらいですけれども、ほかにこれだけは言っておきたいということが何かあればどうぞ。

○山中委員 今のことに関連します。多分、海外に比べて日本は、NinJaにしてもIORRAにしても、コホート研究が比較的あるのではないかと思っております。海外は逆にレジストリーで、生物学的製剤を使っている人だけのコホートという形で、リウマチ患者全体が入っているものが少ないのです。ですから日本では、こういう合併症の問題等が取り上げられるのですが、それはリウマチ治療全体から考えたら正しいことではないかと思いますので、例えばこういうコホートに対して、厚生労働省として何かサポートいただくとか、そういった観点も必要かなと思っています。

○宮坂委員長 ほかによろしいですか。

○小嶋委員 手術についてです。山中先生から御紹介いただいたように、今、日本全体でリウマチ患者の手術件数は減少していますが、一方でとても多様化しているという現状があります。薬物治療が一応確立化されたところで、今後の手術治療、特にどういう患者さんにどういうメニューが考えられ、どういった予後の改善が見られるかというエビデンスが十分でないのではないかと。あるいは、エビデンスはあるけれども、それが特に内科医に分かりやすい形で伝わっていないのではないかと危惧しています。

 私は、疫学調査を基に患者さんのお話を聞いて、フォーカスグループという調査をしばらく続けていますが、その中で特に手術については、内科の先生から提案されることはほとんどないと聞きます。それで患者さん御自身がもう耐えられない状態になって初めてから「手術がしたいです」と相談すると「ああ、紹介してあげるよ」と言われるのだということを、何人かの患者さんから聞きました。おそらくリウマチ専門医のベテランの先生は御存じなのだと思いますが、そうではない内科の先生がリウマチの手術治療について、十分に分かるような情報提供が必要ではないでしょうか。コホート研究のデータを基に、きちんとしたものがあるといいのではないかと思います。

○山中委員 今の点に関係することです。我々の年代の内科医は、関節が非常に変形した患者さんもたくさん診ているのですが、若い内科医は、やはりそういったところを十分に理解していない方々が多いのだろうと思います。ですから、これはやはり医師の中でのエデュケーションの問題だろうと思います。

○宮坂委員長 ありがとうございます。いろいろな話が出まして、改めて感謝申し上げたいと思います。事務局は次回までに、先ほどいただいた意見の整理をお願いいたします。今後の予定について、事務局からの御説明をよろしくお願いします。

○佐々木がん・疾病対策課長 宮坂委員長、委員の先生方、どうもありがとうございました。まず、先ほど委員長から御指示いただいた、本日いただいた御意見の整理についてです。アトランダムに申し上げますと、大体13項目ぐらいあったかと思います。1つ目がデータの関係です。具体的にはNDBの活用という御意見を頂きましたので、特にNDBを基にしてやった場合、どういう組み方が良いのかを整理したいと思います。また、先ほど来の御指摘で言うと患者数の増減で見たときに、例えば資料2-2、山中先生の資料に、罹患率は人口の0.6%から1.0%、我が国の患者数は60万人から100万人と推定されるとありました。これを経年的なデータで見たときに、トレンド的には厚生労働省が実施する患者調査との関係はどうだとか、この辺もいろいろと打合せをさせていただきながら、今までのトレンドの解釈もあるでしょうし、今後のデータの取り方、NDBをどう使うか、コホートの御指摘もいただきましたし、NinJaをどう使うかというのもありましたので、1つ目はデータというのがあるかと思います。

2つ目として、早期受診の話が角田委員からあったと思います。早期受診というのは、例えば患者さんがそもそもかかりつけ医にすら掛からないのか、かかりつけ医に掛かって以降の話なのか。早期受診は、恐らく医療機関間、医師間の連携にも関わることかと思いますので、そういう整理の必要性を感じました。

3つ目が、医師の負担のところが山本委員からあったと思います。例えば2年前の診療報酬改定で、国立大学病院も含めて医師事務作業補助体制加算が付いたけれども、余りうまく活用されてないということがよく分かりました。いずれにせよ、そういう指摘かと思います。

4つ目が、患者さんとのコミュニケーションです。これは恐らくメディカルスタッフも含めてだと思うのです。角田委員の資料の「寛解」というのを、とても良くなったというように解釈すれば、しっくりくるデータだったのでしょうね。「寛解」という言葉があったので医学用語、medical terminologyとの関係で、今ディスカッションがあったと思います。いずれにせよ、患者さんとのコミュニケーションという視点をどう取るのかということです。

5つ目として、偏在の話がありました。当然ながら専門医の地域偏在もありますし、どこまで追い切れるかは分かりませんが、患者さんの医療に対する関わり方など、もしかしたら地域差もあろうかと思います。いずれにせよ偏在というのは今、厚生労働行政全体の中でも、1つの大きなテーマですし、新たな専門医の仕組みが、いよいよ来週から始まる中で、それがどういう影響を与えるかということもありますので、偏在は大きな切り口になろうかと思います。

6つ目で言うと情報発信です。先ほどの角田委員の御指摘なども考えますと、例えば対象の方の年齢もあるでしょうし、もしかしたら住む場所という切り口もあるでしょう。そういった受け手をある程度区分化、segmentationした上で、効果的な情報発信の仕方、これにはホームページの活用の仕方もあるでしょうし、相談員がどういう絡み方をするかということもあろうかと思います。いずれにせよ6つ目としては、受け手に届くような情報発信を、今の時代にどうやってするのかというのがあろうかと思います。

7つ目が市川委員からも御指摘があったとおり、今回も引き続き研究を3本柱にするのはいいけれども、その出口が一体どこなのか、誰に対してどういう出口があっての研究なのかです。これはとても重要な御指摘で、研究を進めるにしても出口、また対象を明らかにするようにという御指摘を頂いたと認識しております。

8つ目は先ほどの偏在にも関わるかもしれませんが、医療提供体制のところです。確かに前回、7年前の平成23年のレポートでも、都道府県での拠点的なものを作れないかというのがあって、それが今回難しかったと。一方で立法化されたほうのアレルギーは、2つの全国の拠点があって、来年度、47都道府県での拠点病院をお願いしているという状況がありますので、改めてリウマチの体制を考えていったときに、全国規模、ブロック規模で見たときはどうなのか、それとも都道府県という切り口が現実的なのかも含めて、医療体制というものを今回、今一度整理したいと思います。

9つ目が、生物学的製剤の適正使用です。これもやはり大きなテーマです。

10番目に御指摘いただいたのが、森委員からの移行期医療についてです。私どもがん・疾病対策課で申し上げますと、がんのほうも今、AYA世代という切り口で大きなテーマとして移行期医療に取り組んでいるところですので、場合によってはそこでの知見なども含めて移行期医療を。大きな話としては、どうしても難病対策法の仕組みなども関係してきますから、それを整理したいと思います。

11番目として、窓口負担の話がありました。宮坂委員長から御指摘いただいたように、高額療養費制度があるけれども、それでもやはり窓口負担が大変だという御指摘があったかと思います。そうなったときに負担の話なのか、それとも治療法の選択肢としての話にまでいくのか。実は、お金の話というのは現実的にはとても大きな話ですので、窓口負担というストレートな受けとめ方かどうかは別として、治療法の選択肢という意味で大きいと受けとめております。

12番目が合併症対策ということで、山本委員から御指摘を頂きました。確かに呼吸器とか骨というのがあります。例えば資料2-3、田中委員の資料の2ページに平均発症年齢が挙がっていますが、恐らく人口構成比率の補正はしてないですよね。つまり今、我が国の人口のボリューム層そのものが高齢化しているということにも、多分引きずられているかと思います。いずれにせよ、そういう患者さんは当然ながら、純粋にほかの病気の合併症もあるでしょうから、そういう意味での合併症対策も、2つの視点ということです。なぜかよく分からないけれども、ほかの病気の場合と、例えば高血圧なども含めて、ポリファーマシー、薬の使い方の問題なども出てくると思いますので、もしかしたらそこも必要かと思います。

 最後に13番目として、手術の御指摘もいただきましたので、そこも含めて整理をしたいと思っております。恐らく委員の先生方も、後で気付く意見もあろうかと思います。できれば今週中、330日の金曜日までに御意見を頂ければ、また来月の会議に向けて、いただいた御意見を整理したいと思っております。意見の整理については以上です。今後の段取りは、貝沼から御説明いたします。

○貝沼がん・疾病対策課長補佐 委員の皆様方、今日は本当にありがとうございました。それ以外について、私のほうからはございません。次回、第2回検討会は4月の下旬を予定しております。場所なども含めて決定次第、御案内申し上げますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○宮坂委員長 次回の日にちはまだ決まってなくて、これから決めるということでよろしいですね。以上で本日の会議を終了いたします。ありがとうございました。

 


(了)

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