このページではJavaScriptを使用しています。JavaScriptを有効にしてください。

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会薬価専門部会)> 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会 第210回議事録(2023年10月4日)

 
 

2023年10月4日 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会 第210回議事録

○日時

令和5年10月4日(水)総会終了後~

○場所

TKP新橋カンファレンスセンター 15F

○出席者

安川文朗部会長 笠木映里部会長代理 小塩隆士委員 本田文子委員
鳥潟美夏子委員 松本真人委員 佐保昌一委員 眞田享委員
長島公之委員 江澤和彦委員 林正純委員 森昌平委員
石牟禮武志専門委員 村井泰介専門委員
<事務局>
伊原保険局長 眞鍋医療課長 木下医療技術評価推進室長
荻原保険医療企画調査室長 安川薬剤管理官 小嶺歯科医療管理官 他

○議題

○高額医薬品(認知症薬)に対する対応について

○議事

○安川部会長
 ただいまより、第210回「中央社会保険医療協議会 薬価専門部会」を開催いたします。
 総会と同様対面を基本としつつ、オンラインも組み合わせての開催としております。また、会議の公開については、ユーチューブによるライブ配信で行うこととしております。
 まず、本日の委員の出欠状況について報告いたします。
 本日は全員御出席です。
 本日の議題では個別の医薬品を取り扱うことになりますが、赤名専門委員につきましては、当該医薬品の製造販売業者に所属されておられますので、利益相反の観点から本日の部会には出席をお控えいただくこととしたいと思います。
 それでは、まず、薬価専門部会に属する委員に異動がございましたので御報告いたします。
 先ほどの総会においても御指名がありましたとおり、本日より鳥潟委員に御就任いただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、早速、議事に入らせていただきます。
 今回は「高額医薬品(認知症薬)に対する対応について」を議題といたします。本議題につきましては、先週の総会において、高額医薬品たる認知症薬の薬価算定方法等について、薬価専門部会及び費用対効果評価専門部会で検討をすることとされたことを受け、議論いただくものでございます。
 事務局より資料が提出されておりますので、事務局より説明をお願いいたします。
○安川薬剤管理官
 薬剤管理官でございます。資料薬-1を御覧ください。
 薬価専門部会において議論いただくため、関係する資料を準備いたしました。
 2ページ、今回は、総会において薬価の観点のみならず、安全性の観点の御指摘、認知症の体制等に関する御指摘をいただきましたので、最初に本剤の臨床試験等に関する情報を御説明した後に、検討課題をお示しすることとしております。
 資料は、先週の総会における資料と重複する内容もありますので、重複するものは省略しながら説明いたします。
 3ページ、本剤の概要でございます。
 本剤は米国で承認されており、米国での価格も示しておりますが、この米国の価格がどのように設定されているか、総会で御指摘をいただきましたので、次の4ページにその考え方をお示ししております。
 こちらは、製造販売業者の公表資料ですが、関連する費用を試算して、本剤の1人当たりの年間価値を3万7600ドルと推定し、そこから下の囲みにあるように、その価格より下回る2万6500ドルの価格を設定したとされております。
 なお、3ページ下の事務局注で記載しているとおり、この価格は米国でWACとして掲載されているものですが、日本の薬価制度では、外国平均価格調整において参照する価格ではありません。
 5ページ、認証の分類等と製造販売業者による推定有病者数の推計値でございます。
 6ページ、本剤と既存の医薬品であるアリセプト等の比較であり、効能・効果や作用機序が異なるものであるということを示しております。
 7ページ、本剤の有効性に関して、国際共同第Ⅲ相試験成績の概要です。
 試験ではプラセボ群との比較を18か月間行い、投与後18か月時点で本剤群は、認知症尺度のスコアの悪化速度が27.1%抑制され、スコアの変化量の差はマイナス0.45であったとされております。
 8ページ、別の視点として投与18か月時点では、本剤群はプラセボ群と比較して約5.3か月のスコアの悪化を抑制したことになります。
 また、本剤群が18か月時点でのプラセボ群のスコアまで悪化するまでの期間で考えると、約7.5か月の症状悪化の遅延効果があると推定されているものでございます。
 次に9ページ、本剤の安全性に関して有害事象の発現状況でございます。ARIAと呼ばれるアミロイド関連画像異常として、浮腫や微小出血等が本剤群では、プラセボ群に比較して多く認められております。
 10ページ、ARIAの発現状況を解析したものですが、死亡例を含む重篤な事象が一定数報告されており、無症候性、つまり自覚症状がないことも多いので、画像検査等によりARIAの発現の有無を定期的に確認し、ARIA発現時には適切な対応が求められることになります。
 11ページ、このような安全性の観点の留意点などがありますので、薬事承認では、市販後一定期間は本剤が投与された全症例を対象とした調査を実施し、ARIAの発現状況や臨床症状のスコア評価、投与期間などの情報を把握することになっております。最長3年間の追跡調査を求めております。
 12ページ、本剤の有効性、安全性等に関しては、患者に分かりやすく情報提供をすることが必要なので、患者向け医薬品ガイドを作成しており、こちらは、承認審査を行っている独立行政法人医薬品医療機器総合機構、PMDAのホームページにおいて既に公表されております。
 このページは本剤の効果の説明であり、次の13ページでは、安全性の説明があります。また、下線の箇所に記載されているように、本剤の効果や注意点について、患者、家族、介護者が十分に理解できるまで説明を受けるよう記載されております。
 14ページ、副作用の対応に関しては、添付文書において、必要な検査や管理が可能な医療施設において、ARIA管理に関する適切な知識を有する医師のもとで、本剤の投与が適切と判断される患者のみに使用することとしており、最適使用推進ガイドラインでは、より具体的な要件が設定されることとなります。
 本剤の使用には、安全性に十分留意する必要があることから、ARIA発現時に迅速な対応が可能な医療施設に限って、本剤を使用することが求められるというものです。
 次に15ページでございます。
 総会では、本剤の薬価に関するものだけではなく、認知症施策の中で本剤をどのように使用していくことになるのかといった御指摘をいただきましたので、現時点で準備できる関連資料をお示しいたしました。
 まず、認知症施策の最近の動向ですが、本年6月に「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」が成立しており、その概要を示しております。
 この中で基本理念として、認知症の人の意向を十分に尊重しつつ、良質かつ適切な保健医療サービス、福祉サービス等が切れ目なく提供されることが示されており、次の16ページ、基本的施策としても、保健医療サービス等の提供体制の整備、相談体制の整備等に関する事項が定められております。
 今後の認知症施策は、この基本法に基づき進められることになります。
 次に17ページ、現在の認知症に係る医療・介護等の提供体制のイメージを示しております。
 認知症の容態の変化に応じて、そのときの容態に最もふさわしい場所で医療・介護等が提供される体制を地域で構築するというものでございます。
 図の右下の認知症疾患医療センターが地域の拠点となり、専門的な診断や相談、地域への医療機関等への支援を行っており、かかりつけ医等の地域の医療従事者が連携して対応しているというものでございます。
 さらに行政では、左側の地域包括支援センターや、認知症に対応するチームが構築されており、患者家族からの相談等に応じて関係する医療機関等へ紹介もしているというものでございます。
 こういったイメージですけれども、本剤が使用可能になった場合には、認知症の治療の中で、このような体制に関わる関係者が、本剤を使用できる患者や医療機関等の情報や、適正使用に必要な情報、考え方を十分理解した上で、対応していくことになると思われます。
 18ページは参考ですけれども、現在の認知症施策に関しては、令和元年に取りまとめられた認知症施策推進大綱に従って施策が進められておりますので、概要と、次の19ページにイメージ図を添付しております。
 20ページ、全般の説明は以上でございまして、こちらから本剤の検討課題を示しております。
 21ページ、まず「1.薬価算定の課題①」、「薬価算定方法」でございます。
 本剤は新規作用機序の抗体医薬品であり、既存のルールによる算定方法であれば、類似性等の検討を行い、類似薬効比較方式か原価計算方式かを選択することになります。
 アリセプトなど、既存の認知症薬は、本剤と作用機序が異なるということと、かつ、化学合成品ですので、本剤のような抗体医薬品とは異なるものでございます。
 別の医薬品としては、総会の資料でも示しましたが、対象疾患は異なるものの、中枢神経系に作用する抗体医薬品は存在します。
 こういった考え方のもとで、類似性を検討していくということになりますが、適当なものがない場合は原価計算方式となります。この辺りの判断は、薬価算定組織で行うことになるものでございます。
 次に「投与対象患者数」です。
 これまで総会でも御説明したとおり、最適使用推進ガイドラインで患者要件、医師・施設要件が定められますので、これに基づき、製造販売業者が推計する薬価収載後10年間の投与対象患者数は限定的になる見込みです。
 一方、薬事承認された効能・効果から推定される有病者数を踏まえると、今後の医療現場における使用状況等によっては、実際に投与される患者数は、収載当初の予測と比較して増加する可能性もあります。この増加の可能性が課題となっております。
 次に22ページ目「算定にあたり用いるデータ」です。
 製造販売業者から提出された薬価基準収載希望書には、承認審査に用いられた資料以外に、介護費用等に基づく評価に関する内容が含まれております。
 このうち、介護費用の内容に関しては、既存の薬価算定ルールでは、補正加算による評価が困難なものになりますので、本剤に限った特例的な取扱いを決めない限り、このような内容を評価することができず、既存のルールに基づき、評価可能な範囲で有用性の評価を行うことになります。
 今回、高額医薬品として、本剤に限った対応を議論していただきますが、薬事承認から90日以内に薬価収載が行われるよう検討を進めるということとしておりましたため、仮に本剤に限った特例的な取扱いを考える場合、具体的に薬価算定に当たっての評価方法を議論するため時間が限られているということに留意が必要となります。
 他方、介護費用の取扱いは、現在、費用対効果評価専門部会において、議論が始まったところでございます。
 以上が薬価算定上の課題となります。
 23ページ以降が関連資料でございますが、総会で示した資料も多いので簡単に触れたいと思います。
 23ページは薬価算定方法の概要。
 24ページ、関連する薬剤の一覧で一日薬価も示しております。
 25ページ、適正使用のため、本来は最適使用推進ガイドラインを策定して、各種要件を規定する予定であることを示しております。
 26ページは、製造販売業者から提示された資料に、介護費用等に基づく評価に関する内容が含まれていることの説明でございます。
 27ページは、薬価の有用性系加算の要件であり、介護費用の観点の評価は含まれないことを示しております。
 28ページは、加算の定量化に関する資料になりますが、画期性加算、有用性加算の項目を詳細に示したもので、参考として添付しております。
 29ページも同様でございます。
 30ページ、薬価算定組織の意見で、新たな評価をする上での留意点を示しております。
 31ページ、薬価収載は、薬事承認から遅くとも90日以内に対応する必要があることという資料をつけておるところでございます。
 次に、32ページ「2.薬価収載後の価格調整の課題①」でございます。
 1つ目と2つ目のポツは、年間販売額が予想販売額を一定程度超えた場合には、市場拡大再算定により、薬価を調整する制度があり、改定時と四半期に行っているという説明でございます。
 3つ目、本剤の効能・効果から推定される有病者数自体は多いものの、先ほどのように最適使用推進ガイドラインで、投与対象患者数は限定的になる見込みでございます。
 4つ目、仮に大幅に市場規模が増大した場合、1000億円を超えると薬価算定方法にかかわらず、再算定の特例が適用されるというものでございます。
 5つ目、このような現行ルールはありますが、本剤の患者数が増加して、市場規模が拡大した場合に、現行ルールで対応できるかどうか考慮していく必要があります。
 なお書きに書いていますが、市場規模は投与患者数のほか、患者ごとの投与期間がどれくらいになるかによっても変化し得るものと考えております。
 次に33ページ「費用対効果評価」です。
 1つ目から4つ目のポツは、現行制度の説明でございます。
 最後の5つ目、介護費用に係る評価に関しては、費用対効果評価の枠組みにおける検討事項となっており、現在、費用対効果評価専門部会において議論が開始したところでございます。
 この点は、先ほど説明した製造販売業者が提出した資料の扱いに関係してくるものでございます。
 以上が薬価収載後の価格調整の課題です。
 34ページ以降が関連資料でございますが、総会で示した資料となります。
 34ページは、市場拡大再算定のルール。
 35ページから37ページは、費用対効果評価専門部会における資料でございます。
 最後38ページ、現状と論点をまとめております。
 現状は、これまで説明した内容の概要です。
 論点は4つあります。
 1つ目、本剤の薬価算定方法についてどのように考えるか。本剤に関して通常の算定ルールとは別の取扱いを検討したほうがよいか。
 2つ目、投与対象患者数について、現時点における投与患者予測は限定的になる見込みであるものの、今後の増加の可能性を踏まえ、収載後の価格調整ルールも含め、本剤に関して別の取扱いを検討したほうがよいか。
 3つ目、薬価収載までの期間(90日)は限られている中で、製造販売業者が提出している資料のうち介護費用に基づく内容の評価に関しては、費用対効果評価の枠組みにおける検討事項とされていることも踏まえると、それについてどのように考えるか。
 4つ目、これらの議論を進めるに当たり、本専門部会と費用対効果評価専門部会における相互の検討状況を踏まえた上で、効率的に議論するため、合同部会として開催して検討することとしてはどうか。
 論点は以上ですが、補足させていただきます。
 以前、高額医薬品として感染症治療薬「ゾコーバ」の議論を行ったときと同様に、今回も薬価収載時の算定方法、収載後の価格調整ルールなどに関して、本剤に限った特例的な対応が必要かどうかについて、御議論をいただきたいと考えており、今回は考えられる課題を中心に資料をまとめ、論点を全般的に記載しているものでございます。
 参考資料として、感染症治療薬のときの特例的な対応に関して、中医協総会で了承いただいた資料を添付しております。
 このとき、特例措置を設けた事項は複数あります。
 まず、薬価算定に当たっての比較薬の選定に関して、比較薬となる類似薬はあるものの、いずれを選定するかによって薬価算定が大きく異なるため、複数の比較薬を基に算定することにしました。
 次に、収載後の対応として、急激に感染者が増大し、投与対象患者が急増するということも想定されるため、迅速に市場規模の把握ができるよう、通常の四半期再算定に用いるNDBとは異なるデータを用いて判断することにしております。
 また、短期間で市場規模が急激に拡大した場合を想定して、年間販売額が3000億円を超えた場合のルールを設けています。
 このようにゾコーバの場合は、感染症の特性を踏まえて想定される課題に対して、ゾコーバに限った特例的な措置をまとめたものでございます。
 この取りまとめ、最初の前文に記載しておりますとおり、薬価制度は、「国民皆保険の持続可能性」と「イノベーションの推進」を両立させることが重要であり、既存のルールを基本としつつ、本剤の特性から特に対応が必要な事項に限って、特例的な対応を行うという前提で取りまとめております。
 今回の品目は認知症薬でございまして、感染症治療薬のような急激な投与患者数の拡大といった状況は想定されにくいものの、推定有病者数が多い中で、収載時にどこまで患者推計が可能かという点など、対象疾患である認知症の状況も踏まえ、本剤に限った措置が必要か御議論をいただきたいと考えております。
 本剤の議論の進め方で前回と異なるのは、薬価に関するルールは、この専門部会で議論することになりますが、総会にお諮りしたとおり、今回は費用対効果評価の観点の議論も必要であることから、費用対効果評価専門部会との合同部会の開催も提案しているものでございます。
 長くなりましたが、事務局からの説明は以上でございます。
○安川部会長
 ありがとうございました。
 ただいまの説明について、御質問等ございましたら、よろしくお願いします。
 では、長島委員、お願いいたします。
○長島委員
 ありがとうございます。
 最初に、資料についてコメントと質問をします。
 まずは、安全性に関してです。9ページ、10ページについて、全有害事象で見ると、プラセボ群とレカネマブ群で大きな差がないようにも感じてしまうかもしれません。
 しかし、発現数自体は少ないと企業は主張されるのかもしれませんが、有害事象としてのアミロイド関連事象は、10ページにあるように、MRI画像で判断する場合で重度のものが、プラセボ群3例に対して、レカネマブ群が9例足す32例の41例。また、重篤な事象の症例がプラセボ群の1例に対して、レカネマブ群が7例足す5例で12例と、明らかにレカネマブ群で発現が多く、注目すべき重大な事象であると考えられます。
 したがって、安全性確保のためには、迅速かつ的確な対策が必須であります。
 加えて、死亡例については、10ページの注釈にあるように、カットオフ日以降に認められた死亡3例があったとの記載があります。
 そこで質問です。この死亡例について、可能でしたら、その概要を教えてください。また、カットオフ日について、死亡症例にとって治験の観察期間満了なのか、治験期間が終了して観察が打ち切りになったものかによって見方が変わってきますので、これを踏まえた回答をお願いいたします。
 そのほか、日本ではアリセプト等の薬物療法が広く普及しています。こうした既存薬を対照群に設定しなかった理由があれば教えてください。
 また、13ページにある定期的なMRI検査の頻度について、目安があれば教えてください。
 その上で、38ページの各論点について申し上げます。
 1つ目の論点です。38ページ上段の現状の1つ目のポツに整理されている、本剤に関する算定方法の考えを読みますと、通常のルールで十分対応可能と考えられます。したがって、別の取扱いを検討する必要はないと考えます。
 2つ目の論点は、現時点の見込みで考えるしかないと思います。限定的な予測患者数ながら、大きく増えてしまう可能性があることや、患者さんへの投与期間がどれぐらいになるかによっても、市場規模が増大する可能性があるという状況は、今までにも経験してきた適用拡大による市場拡大の事例を踏まえ、収載後に対応するルールをつくるべきであると考えます。
 ここで、薬剤における有効性と市場規模の拡大に関して、事務局に質問いたします。
 臨床試験の投与期間は18か月ですが、本剤はどれぐらいの期間投与し続けることになるのか、想定しているものがあるでしょうか。また、どのタイミングで、投与を中止するという目安はあるでしょうか。本剤は軽度が対象ですので、中等度という診断スコアにより判断できるのでしょうか。
 次に、3つ目の論点です。薬価収載までの期間は90日と議論の時間が非常に限られています。そのような前提の中で、これまでの薬価の議論において取り扱ったことのない介護費用の軽減を、収載時の薬価に反映させるかどうかについて、十分な議論もできないまま、介護負担軽減分を医療保険で評価することには限界があると考えられます。
 一方で、介護費用に係るデータの評価の取扱いについては、費用対効果評価の枠組みにおける検討事項とされていることを踏まえますと、引き続き、費用対効果評価専門部会で議論することは適切であると考えられます。
 ただし、費用対効果専門部会における議論でも課題があり、改めて、その部会で指摘したいと思います。
 論点の4つ目は、3つ目の話を議論するためにということで理解できます。
 私からは以上です。
○安川部会長
 ありがとうございます。
 では、質問に対して事務局の方から、まず、御回答をお願いいたします。
○安川薬剤管理官
 薬剤管理官でございます。いただいた質問に関して順に御説明いたします。
 まず、最初に資料の10ページ目に記載している死亡例に関するものでございますが、死亡例の解析は、既に公表している本剤の審査報告書に記載されているものでございます。
 なお、併せて御指摘のあったカットオフ日というのは、薬事の承認申請用の成績をまとめるために、ある時点でのデータを集計した時点のことでありまして、その日以降であっても被験者の観察を打ち切るものではございません。
 データカットオフ日以降に死亡した3例というものは、いずれも二重盲検の期間はプラセボが投与されていた患者、その後の継続投与期間に移行した後、本剤が投与されておりますので、その投与された患者に生じたものでございます。
 3例とも本剤投与中に抗血栓薬が投与されており、脳出血または重度のARIAを発現し、その後の死亡に至ったものというものでございまして、このうち2例は、報告医により、本剤との因果関係がありと判断されているものでございます。
 審査では、これらの症例も踏まえまして、添付文書において死亡例が生じている旨の注意喚起も添付文書で行っているものでございます。
 いずれにしても本剤により、ARIAの発現が起こりやすく、死亡例を含め、重篤な症例も出ているという状況ですので、本剤の適正使用の観点から必要な検査や、その後の迅速な対応が、確実に実施できる施設において使用していただくことが前提になると考えているものでございます。
 次に、臨床試験の設定の中で、既存薬を対照群に設定しなかった理由ということなのですが、既存の認知症薬と本剤では、本日の資料でも資料として入れておりますが、作用機序も異なる、あるいは病態の進行を抑制するのか、症状のみの抑制なのかという治療コンセプトも異なりますし、MCIという軽度認知障害を対象にするかという効能・効果の範囲も異なるというものでございます。
 また、本剤は既存の認知症薬と併用も想定されるというものなので、そういった意味で臨床試験では、プラセボを対照とすることが選択されたというものでございます。
 臨床試験の中では、既存の認知症薬を併用する患者も含めておりまして、期間中は併用薬の投与量を維持するなど、要件を設定して組み入れているものでございます。
 次に、MR検査の目安というものでございますけれども、こちらは、最適使用推進ガイドラインのことを記載している25ページ目の資料にも、関連するところは記載しておりますけれども、臨床試験で本剤の投与開始から14週間以内にARIAの発現が多いという状況でございますので、特に投与開始直後は、検査の頻度を多く規定することにしているものでございます。
 具体的には、添付文書の最適使用推進ガイドラインで、投与開始後2か月まで、3か月まで、6か月までにそれぞれ1回、それ以降は6か月に1回MR検査を実施して、ARIAの有無を確認すると、そういったことを規定する予定でございます。
 次に、臨床試験の投与期間に関するものでございます。
 御指摘のとおり、18か月というところは、臨床試験の中では検証されたのは18か月というものでございますので、最適使用推進ガイドラインの中で、この18か月以上継続する場合は、18か月時点で臨床的進行や、病気に関する診断あるいは投薬の効果、認知症スコア、そういうことを踏まえて、認知症の評価から継続の可否を判断するよう求めるものを規定する予定でございます。
 実際の投与期間がどれくらいになるかなのですけれども、こちらは個々の患者の症状等を踏まえて医師が判断することになるので、現時点でどれくらい使用されるかというものは分かりませんが、実臨床において、どの程度の期間に投与し続けられるかということについては、市販後に実施される全例調査の中で確認していく予定としております。
 どのタイミングで投与を中止するとか、そういった目安とか、中等度の判断とかということでございますが、最適使用推進ガイドラインに規定しようとしているのは、例えば、安全性の観点でも25ページ目にあるように、定期的に有効性、安全性を確認するということを求める中で、その都度、投与継続の可否も判断することになりますし、また、症状の進行という観点であれば、スコア評価に基づき、中等度と考えられるスコアというのも把握可能でございますが、もちろんスコア評価以外に、個々の患者の臨床的症状に応じて、処方医が投与継続の可否を判断することになると考えているところでございます。
 説明は以上でございます。
○安川部会長
 ありがとうございました。
 長島委員、よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 ほかに、森委員、お願いいたします。
○森委員
 ありがとうございます。論点に沿って発言させていただきます。
 ポツの1つ目で、先ほど長島委員からもありましたように、同じページの上にある、現状のポツの1つ目で示されている内容で対応できるものと考えますので、通常の算定ルールで対応することがよいと考えます。
 ポツの2つ目ですが、アルツハイマー病による軽度認知障害と、軽度認知症の患者数を合わせると500万人を超える推計が出ており、医師要件、施設要件を設けるにしても、体制整備が進むことなどで、予想よりも大幅に患者が増加する可能性もあります。
 実際に本剤がどの程度の期間投与されるかなど、現状のデータで市場規模予測や使用実態などを正確に見込むことは難しく、予想以上の患者数の伸びなどが出た際に適切な対応ができるよう、収載後の価格調整ルールを含めて、これまでとは別の取扱いを検討すべきと考えます。
 また、本剤は全例調査により使用実態等が把握可能になるので、その使用実態が明らかになった段階で、改めて検討することもあり得るのではないかと考えます。
 ポツの3つ目ですが、介護費用に基づく評価に関しては、現在、費用対効果評価の中での検討事項とされていること、それから薬価収載までの期間が90日と限られていることなどから、介護費用の取扱いについては、別に費用対効果評価専門部会で検討することが妥当だと考えます。
 最後のポツについては、効率的な議論を行うため、合同部会として開催することに異論はありません。
 私からは以上です。
○安川部会長
 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。
 佐保委員からお手が挙がっています。よろしくお願いいたします。
○佐保委員
 ありがとうございます。
 38ページの論点の3つ目、介護費用に基づく内容の評価に関して、費用対効果評価の枠組みにおける検討事項とされていますが、今後、この分析・検証には相当の期間を要するのではないかと考えます。
 私自身が以前、地域包括支援センターの主任介護支援専門員や介護認定調査の仕事をしていた時期があり、その経験からも、アルツハイマー型認知症の進行には個人差があることや、介護保険サービスの利用開始時期、それから利用内容にも個人差があると考えております。
 私からは以上です。
○安川部会長
 ありがとうございました。
 ほかにはいかがですか。
 では、松本委員、お願いいたします。
○松本委員
 ありがとうございます。
 前回も申し上げましたけれども、保険財政の持続可能性に極めて大きな影響を与えますので、その単価、対象患者数、投与期間について、適切な判断をする必要があると考えております。
 本剤の有効性については、資料の8ページに、投与18か月時点で約5.3か月の進行抑制という試験結果並びに7.5か月遅延させるとの推定が示されておりますけれども、さらに長期的なスパンの効能については、まだ分かっておりません。
 一方で安全性につきましては、重篤な副作用も報告されており、承認条件としてメーカーに全例調査が義務づけられ、3年間の追跡調査が推奨されております。患者ごとに安全性と有効性をポイント、ポイントで判断すべきということでございます。
 それでは、38ページの論点に沿ってコメントをさせていただきます。
 まず、薬価算定の方法でございますけれども、原則どおり類似薬があるのであれば、類似薬効比較方式で算定すべきだと考えますが、例えば、24ページに示されている薬剤のどれを選定するのか、また、ゾコーバのときのように複数の比較薬を組み合わせるのか、さらに類似薬効比較方式になじまないということであれば、原価計算方式というのもあり得ると考えますが、いずれの場合も合理的な説明が不可欠と考えますので、事務局におかれましては、その判断に資する資料を次回以降に、ぜひ示していただきたいと考えます。
 続きまして、2つ目の投与患者数でございますが、安全性と有効性の観点からも、最適使用推進ガイドラインや、留意事項通知で適切に管理すべきと考えます。
 ただ、潜在患者数も含めますと、市場規模はかなり大きく、患者の期待も高いことを踏まえますと、患者数が上振れする可能性も否定はできないのではないかと考えております。
 34ページにございますが、上振れした際の価格調整も必要だと考えます。
 続きまして、介護費用に基づく評価に関しましては、前回の費用対効果評価分科会でも申し上げましたけれども、介護費用の軽減を医療保険の財源を使って評価することが果たして妥当なのかという制度自体の趣旨、目的との関係の問題も含めまして、今の時点では慎重に判断すべきであるという考え方は変わっておりません。
 この重要な問題について、薬価収載の期限である90日間で結論を出すことは、正直非常に難しいのではないかと感じております。
 その一方で、議論に時間をかけることで、この薬を待ち望む患者の期待に添えなくなりますので、最長90日以内に、また薬価収載するという予見性も損なわれてしまいます。
 したがいまして、薬価収載時には既存の評価軸で有用性等を判断した上で、費用対効果評価の中で介護費用について、引き続き研究を続けていただきたいと考えます。
 最後にあります薬価専門部会と費用対効果評価専門部会の合同部会での検討については、異論はございません。
 以上でございます。
○安川部会長
 ありがとうございました。
 ほかに御意見等ございますか。
 では、鳥潟委員、お願いいたします。
○鳥潟委員
 ありがとうございます。
 先週の総会でも安藤のほうから申し上げているかと思いますが、保険者の立場で、医療費という観点でいうと、薬価そのものよりも、その前の検査費用にも着目をさせていただきたいと思っております。
 扱える病院が最初は限定的とは言いながらも、ニーズは非常に高い薬剤だと認識しておりますので、その辺りの将来推計も見たいと思っております。
 あと、収載後の状況というか、出数というのが、今、非常に曖昧なところで動いていると思うのですが、ぜひゾコーバと同様に、収載後のルールというのを最初から明確にして進めていただけると、こちらも先が見通しやすいと思います。
 あと、介護費用の取扱いに関しましては、皆様がおっしゃっているように、全然分からないというのが現実ではないかなと思いますので、会社さんがおっしゃっているような、ああいった計算方法をいきなりあてがうのは、少し難しいかなと思います。
 あと、費用対効果専門部会の合同開催に関してですけれども、介護に関して難しさはありますが、やはり目をそらすわけにはいかないと思いますので、そちらは着実に見ていく必要があると思いますので、専門部会の中できちんと議論していくことを臨みたいと思っております。
 以上です。ありがとうございます。
○安川部会長
 ありがとうございました。
 ほかにはよろしいでしょうか。
 ほかに御意見がございませんようでしたら、本件に係る質疑は、このあたりといたします。
 論点にありましたとおり、今後の検討においては、費用対効果評価専門部会と相互の検討状況を共有しながら議論をするために、次回は合同部会として開催することとしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(異議なしの意思表示あり)
○安川部会長
 ありがとうございます。
 では、次回は合同部会として開催するよう、事務局におかれましては御対応をお願いいたします。
 本日の議題は以上です。
 次回の日程につきましては、追って事務局より連絡いたしますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、本日の薬価専門部会は、これにて閉会といたします。
 どうもありがとうございました。
                  
                                   

<照会先>

厚生労働省保険局医療課企画法令第1係

代表: 03-5253-1111(内線)3288

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会薬価専門部会)> 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会 第210回議事録(2023年10月4日)

ページの先頭へ戻る