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ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会薬価専門部会)> 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会 第207回議事録(2023年8月23日)

 
 

2023年8月23日 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会 第207回議事録

○日時

令和5年8月23日(水)10:00~

○場所

日比谷国際ビル コンファレンススクエア8F

○出席者

安川文朗部会長 笠木映里部会長代理 小塩隆士委員 本田文子委員
安藤伸樹委員 松本真人委員 佐保昌一委員 眞田享委員
長島公之委員 江澤和彦委員 林正純委員 森昌平委員
赤名正臣専門委員 石牟禮武志専門委員 村井泰介専門委員
<事務局>
伊原保険局長 眞鍋医療課長 木下医療技術評価推進室長
荻原保険医療企画調査室長 安川薬剤管理官 小嶺歯科医療管理官 他

○議題

○薬価算定組織からの意見について
○薬剤費等の年次推移について
 

○議事

○安川部会長
 ただいまより、第207回「中央社会保険医療協議会 薬価専門部会」を開催いたします。
 本日も対面を基本としつつ、オンラインも組み合わせての開催としております。また、会議の公開については、ユーチューブによるライブ配信で行うこととしております。
 まず、本日の委員の出欠状況について報告します。
 本日は全員御出席いただいております。
 次に、厚生労働省におきまして異動がございましたので、事務局より御紹介をお願いいたします。
○眞鍋医療課長
 おはようございます。医療課長でございます。御報告申し上げます。
 保険局、竹内医療介護連携政策課長でございます。以上でございます。
○安川部会長
 ありがとうございました。
 それでは、議事に入らせていただきます。
 今回は、令和6年度薬価改定に向け、薬価算定組織の前田委員長より、薬価算定組織からの意見をいただくこととしたいと思います。
 それでは、前田委員長、御説明をよろしくお願いいたします。
○前田委員長
 私は、薬価算定組織の委員長の前田でございます。
 次期薬価制度改革に向けて、薬価算定組織からの意見について御説明をさせていただきます。
 資料薬-1-1を御覧ください。提案している項目は、目次のとおりでございます。大変分量が多くなっておりますので、要点のみ簡潔に説明いたします。
 また、補足資料として資料薬-1-2を用意しておりますので、適宜御参照をお願いいたします。
 まず、1番目の「イノベーションの評価」についてです。資料薬-1-1、1ページから2ページを御覧ください。
 「新薬創出等加算における小児用医薬品の取扱い」についてです。新規収載時に、有用性系加算の対象となった医薬品は、新創加算の対象となり、また、医薬品医療機器等法における希少疾病用医薬品等についても新創加算の対象となります。
 しかしながら、小児用医薬品については、医薬品医療機器等法における明確な位置づけはなく、新創加算の対象となっておりません。
 そこで、小児に係る医薬品開発を評価するため、小児に対する効能・効果または用法・用量の開発に関して、特に評価すべき品目については、新創加算の対象にしてはどうか、という提案でございます。
 続いて「(2)新薬創出等加算における品目要件の合理化」に関する提案でございます。資料の2から3ページを御覧ください。
 新創加算の品目要件においては、新規作用機序医薬品と、その収載から3年・3番手以内の薬理作用類似薬について、新創加算の対象として扱われております。
 昨今、様々な作用機序の医薬品が開発されるようになってきており、今後、薬理作用が異なる品目を比較薬として、類似薬効比較方式により算定するケースが増えてくることが想定されますが、このような場合は、新規作用機序医薬品の薬理作用類似薬には該当しないので、3年・3番手以内の収載であっても新創加算の対象とはなりません。
 そこで新規作用機序医薬品を基に、類似薬効比較方式で算定される品目においては、新規作用機序医薬品の収載から3年以内に収載され、3番手以内のものに限り、薬理作用が異なっていても新創加算の対象として扱ってはどうか、という提案でございます。
 続きまして「(3)改定時加算の取扱い」に関する提案です。3ページを御覧ください。
 薬価収載後に、小児や希少疾病に係る効能・効果等が追加された品目等については、改定時に加算を行うこととされております。
 しかしながら、真の臨床的有用性以外の加算については、併算定ができず、改定時の加算の要件に該当する複数の効能追加がなされた場合であっても、いずれか一つの加算しか適用されておりません。
 一方、改定をまたいで効能追加がなされた場合には、それぞれ加算の対象となり得ます。
 また、新創加算の対象品目に対して改定時加算が適用される場合は、改定時加算を適用した後に新創加算を適用することとされており、新創加算は現行薬価が上限とされていることから、改定時加算の分、新創加算の加算額が減額されることとなり、両加算の恩恵を十分に受けられない形となっております。
 そこで、複数の効能追加がなされた場合には、追加された効能ごとに加算の該当性を判断することとし、併算定を認めることとしてはどうか。また、改定時加算と新創加算の適用方法を見直してはどうか、という提案でございます。
 続きまして「(4)標準的治療法の定義」に関する提案です。3ページから4ページを御覧ください。
 有用性系加算の要件である「対象疾患に対する標準的治療法として位置づけられる」ことについては、原則として国内のガイドラインにおいて、標準的治療法として位置づけられているものを加算対象として取り扱っております。
 しかしながら、薬価収載前には国内に使用実態がなく、国内のガイドラインにおいて標準的治療法として記載されていないということが一般的でございまして、本要件による評価の対象は限られております。
 そこで、薬価算定時点において、国内のガイドラインに記載されていない場合であっても、薬価収載後には、本邦で標準的治療法となることが明らかであると見込まれる場合等においては、評価の対象として取り扱うこととしてはどうか、という提案でございます。
 続きまして、目次の「2.」の「薬価算定の妥当性・透明性の向上」についてでございます。
 まず「(1)原価計算方式における開示度向上」に関する提案です。資料の4ページから5ページを御覧ください。
 原価計算方式による薬価算定については、開示度を向上し薬価の透明性を高める観点から、開示度に応じて補正加算の額を減額するなどの取組を行ってきており、令和4年度改定においては、開示度50%未満の場合の加算係数をゼロに引き下げることとしたところでございます。
 しかしながら、令和4年度改定以降、令和5年5月までに原価計算方式で薬価収載された18成分のうち、約9割の16成分が開示度50%未満であり、引き続き薬価の透明性確保のための取組が必要な状況にあります。
 一方、「令和4年度薬価制度改革の骨子」に基づき、移転価格として日本に導入された品目のメーカーの営業利益率を集計したところ、移転価格品目の割合が80%以上の企業における営業利益率は平均して6.6%、90%以上の企業においては5.9%であり、平均的な営業利益率16.6%の2分の1以下でした。
 このデータは、補足資料の12ページにお示ししております。
 そこで、原価計算方式における透明性を高める観点から、移転価格として日本に導入される品目については、原価計算方式における営業利益率を平均的な営業利益率より限定的な範囲で適用することとしてはどうか。開示度が相当高い品目については、インセンティブとして、何らか評価を検討してはどうか。また、類似薬効比較方式による算定を一層進めるため、比較薬の選定をこれまでより柔軟に行うこととしてはどうか、という提案でございます。
 なお、この取扱いについては、新たなドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロスの原因とならないよう、最大限配慮するとともに、現時点では集積されたデータが限られていることも考慮すべきであると考えております。
 続きまして「(2)比較薬におけるG1品目及びG2品目の取扱い」に関する提案です。資料の5ページから6ページを御覧ください。
 類似薬効比較方式による算定においては、G1品目及びG2品目は、新薬の薬価算定における比較薬として用いることができず、G1/G2品目を配合成分に含む新医療用配合剤の場合や、G1/G2品目と組成も効能・効果も同等で投与経路のみが異なる新薬の場合についても、比較薬とすることはできません。
 そこで、特に必要と認められる場合には、G1/G2品目を比較薬とできるようにしてはどうか、という提案でございます。
 続きまして「(3)類似薬効比較方式(Ⅰ)における薬価の適正化」に関する提案です。資料の6ページを御覧ください。
 類似薬効比較方式(Ⅰ)においては、類似性が最も高い類似薬を比較薬として、一日薬価が同一になるように算定し、比較薬に比べて高い有用性等が認められる場合には、さらに補正加算を行っております。すなわち、一日薬価が高くなる方向でのみ補正を行っております。
 しかしながら、類似薬効比較方式による算定をより進めていこうとすると、比較薬との臨床上の位置づけの差異により、投与対象患者数が大きく異なる場合や、比較薬と比べて有用性が限定的である場合などには、単純に一日薬価合わせを行うということが、同等の評価と考えるのが難しくなってしまいます。
 そこで、一日薬価合わせの後、一定の範囲で減算することも可能とする規定を設けてはどうかという提案でございます。
 続きまして「(4)剤形追加等の取扱い」に関する提案です。
 資料の6ページから7ページを御覧ください。
 既収載品と同等の組成、効能・効果で、剤形や投与経路のみを変更した品目については、当初の品目の収載から間を置かずに収載される事例がある一方で、大きく間を置き、後発品の収載を目前にしてから収載される事例もございます。
 剤形追加等の品目が間を置かずに収載される場合であっても、有用性系加算の対象とならないことで、当初の品目とは異なり、新創加算の対象とならないことも想定されます。
 一方で、大きく間を置いて収載される場合であっても、有用性系加算の対象となれば、収載から15年間または後発品が収載されるまで新創加算の対象となり、特許切れ対策とも考えられる剤形追加の品目に対して、新創加算の趣旨に反して加算が適用されるおそれがございます。
 そこで、このような場合には、新創加算の適否を見直してはどうかという提案でございます。
 続きまして、目次の「3.」の「状況の変化に応じた薬価の適正化」についてでございます。
 「(1)市場拡大再算定の取扱いの見直し」に関する提案です。資料の7ページから9ページを御覧ください。
 市場拡大再算定については、「類似品」、「収載時の薬価算定方式に応じた取扱い」、「補正加算」の提案についてまとめて説明させていただきます。
 まず、類似品についてです。
 類似品の扱いについては、他社の品目の市場規模によって薬価が引き下げられることでの予見性の乏しさが課題であると指摘されているほか、一つの品目が様々な効能・効果を有する事例が増えており、薬理作用類似薬であっても競合性の判断が難しくなっていること、類似薬効比較方式による薬価算定においては、いずれの効能・効果に着目するかによって一日薬価は異なることのほか、意見書に記載しているような様々な課題がございます。
 次に「収載時の薬価算定方式に応じた取扱い」についてです。
 市場拡大再算定は、算定方式の考え方に基づき、異なる該当要件を設定しており、原価計算方式で算定された品目については、市場規模が当初の予測を一定程度上回ったものが再算定の対象となる一方、類似薬効比較方式で算定された品目については、市場規模の拡大に加えて、使用実態の著しい変化のあったものが対象となります。
 先述のように、近年では薬理作用類似薬であっても効能・効果等の面から類似性の程度は様々で、類似薬効比較方式で算定された薬剤同士であっても、臨床的な位置づけは必ずしも一致しない場合もございます。
 また、原価計算方式における開示度の低さが課題として指摘されていますが、移転価格として導入される品目では、移転価格により薬価がほぼ決定し、市場規模による算定薬価への影響は小さいと考えられます。
 このような状況を踏まえると、収載時に原価計算方式で算定された品目と類似薬効比較方式で算定された品目とで、収載後の市場拡大再算定の該当要件を算定方式の考え方により区別する必要性は、従前に比べて低下しつつあると考えられます。
 最後に補正加算についてです。
 市場拡大再算定対象品及び類似品について、資料9ページの上の表の要件に該当する場合は補正加算の対象とし、再算定による薬価の下げ幅を緩和しておりますが、新規収載時においては、臨床的有用性に応じて有用性系加算が適用されるのに対して、効能追加に伴う市場拡大再算定においては、追加した効能の臨床的有用性が評価されていないという意見がございます。
 以上の3つの点に関して、企業の予見性への配慮や、近年の競合性の複雑さを踏まえ、類似品の取扱いを見直してはどうか。一方で、算定方式によって区別して取り扱う必要性がある状況を踏まえ、類似薬効比較方式で算定された品目についても、原価計算方式で算定された品目と同様に取り扱うことで、個別の品目ごとの市場規模の変化にきめ細かく対応できるように見直してはどうか。
 あわせて、臨床上有用な効能追加を評価する観点から、例えば、収載時に有用性系加算に該当すると認められる効能が追加された品目についても、市場拡大再算定における補正加算の対象としてはどうか、という提案でございます。
 最後に「4.その他」についてです。
 まず「(1)新薬が長期間収載されていない領域において開発された新薬の評価」に関する提案です。資料の9から10ページを御覧ください。
 感染症領域など、長年の間、新薬が上市されていない領域で開発された新薬については、比較薬となり得る類似薬があったとしても、収載時と比べて薬価が大幅に下落している場合があり、このため有用性系加算が適用されたとしても、他の領域の新薬と同じ加算率を適用したのでは、その有用性を十分に評価できていない可能性がございます。
 そこで長年の間、新薬が上市されていない領域の新薬に関しては、その領域で新薬を開発したこと自体について評価を行うか、有用性系加算の加算率を引き上げる等の対応を検討してはどうかという提案でございます。
 続きまして「(2)有用性系加算の定量的評価」に関する提案です。資料の10ページを御覧ください。
 有用性系加算の加算率は定量化が図られておりますけれども、薬価専門部会でも資料に示されているような課題があります。
 また、有用性系加算の適否等については、過去の算定との整合性も踏まえて判断しておりますけれども、医薬品開発の潮流や医療の実態が徐々に変化する中で、過去の算定との整合性を図るために判断に制約が生じる事例も出てきております。
 そこで、有用性の評価について新たな評価の観点の追加や、定量的な評価方法の改善など、評価の在り方について見直しを行うべきではないか。また、当面の間は、個別の事例に応じて、薬価算定組織において必要と認めた場合は、柔軟な評価を可能としてはどうか、という提案でございます。
 続きまして「(3)新たな評価を行う上での留意点」に関する提案です。
 資料の10から11ページを御覧ください。
 薬価算定においては、薬事承認の審査過程で評価されている臨床試験成績等を基に判断していますけれども、緊急承認制度のように有効性が検証されていない段階でも早期に承認し、市販後に検証するような対応が進むと、新規収載時に有用性の評価に必要なデータが十分把握できていない場合が生じ得ます。
 また、実際の薬価算定においても薬事承認の審査過程で評価されていないデータ等を根拠に、有用性系加算の適用を主張される場合がございます。
 新たなデータを評価する際には、客観的評価手法が確立され、信頼性の確保されたデータを根拠として評価することが重要であり、薬事承認から原則60日以内、遅くとも90日以内に薬価収載するスケジュールを維持しながら、どのような評価が可能かという課題がございます。
 また、薬価算定は、薬価基準収載希望書に記載された企業の主張を基に行っていることから、企業にとって不利な情報が記載されることはまれでございまして、情報の不均一性が存在するという課題がございます。
 そこで、革新的な新薬のイノベーションを適切に評価することは重要であるが、その評価の在り方及びその体制について慎重に検討する必要があるのではないか。また、収載時に評価が困難なものについては、収載後に評価することも考慮すべきではないか、という提案でございます。
 続きまして「(4)再生医療等製品のイノベーション評価」に関する提案です。資料の11ページを御覧ください。
 再生医療等製品は、令和5年5月までに10品目を医薬品の例により算定し、薬価収載が行われておりますけれども、再生医療等製品は多種多様であり、様々な点において、一般的な医薬品と異なっております。
 再生医療等製品の算定については、有用性の評価や原価計算方式において計上を認める費用の範囲など、個々の製品の特徴に加え、再生医療等製品ならではの特徴を踏まえた対応が必要ですが、算定実績がまだ限られているというのが現状でございます。
 そこで、引き続き事例を集積し、再生医療等製品の特徴を踏まえた薬価算定の在り方について検討することとしてはどうか、という提案でございます。
 続きまして「(5)開発段階からの薬価相談」に関する提案です。11ページから12ページを御覧ください。
 企業からの薬価基準収載希望の際には、薬事承認審査において評価されていないデータ等を根拠として有用性系加算の主張がなされることがあります。このような事例の中には、薬価算定上の評価の根拠となるデータを収集することを意識して臨床試験計画を策定すれば、加算につながったのではないかと考えられるものも存在します。
 臨床試験計画の策定に当たっては、PMDAにおける相談制度が活用できますが、薬事承認に必要な範囲の相談となっており、また、薬価基準収載に向けた企業からの相談は、基本的に臨床試験を終え、薬事承認を目前にした時期から厚労省で対応しております。
 そこで、臨床試験計画等を検討する際に、薬価算定における評価の視点も含めて相談が可能となれば、薬価算定の予見性を高めることにもつながることから、将来的な課題として、開発の段階から薬価算定に関する相談を受けることのできる枠組みを検討してもよいのではないかという提案でございます。
 薬価算定の基準に関する意見は以上です。次期薬価改定に向け、これらの意見を踏まえて議論を進めていただけると幸いです。
 以上でございます。
○安川部会長
 前田委員長、大部の資料を簡潔に御説明いただきまして、ありがとうございました。
 もし、事務局から補足があればお願いします。
○安川薬剤管理官
 特にございません。
○安川部会長
 分かりました。ありがとうございました。
 では、ただいまの御説明等につきまして、御意見、御質問がございましたらお願いいたします。
 では、長島委員、お願いいたします。
○長島委員
 ありがとうございます。
 前田委員長並びに薬価算定組織におかれましては、御検討いただきましてありがとうございます。
 ただいま御説明いただいた組織の意見については、今後、薬価専門部会で検討していくことと思いますが、その際に事務局に対してお願いがあります。今回の御説明では、背景、課題も踏まえて説明いただきましたが、制度を見直す際には、課題や要望を踏まえ、単に場当たり的に変更するべきではありません。その制度が創設された際の趣旨や目的をしっかりと踏まえた上で、制度変更により想定される効果や、マイナス面も含む影響を確認し、その変更の必要性、方法としての適切性、全体としての整合性、さらに許容範囲を判断すべきと考えます。
 例えば、市場拡大再算定における類似品、いわゆる共連れの取扱いにつきましては、今回、企業の予見性への配慮や、近年の競合性の複雑さが課題となっておりますが、市場拡大再算定の制度趣旨の核心は、国民皆保険の持続性を確保するという点にあるはずです。
 また、共連れルールを導入したのも、市場で競合している医薬品については、公平な薬価改定を行うというのがそもそもの趣旨であったはずです。今後、検討を進める際には、そうした趣旨が骨抜きにならないよう、注意深く検討していく必要があります。
 これらの観点から、今後、本部会で具体的な検討を行っていく際には、制度の趣旨、目的の確認と制度変更による効果、影響の想定などを含む十分な判断が可能となる資料の提示をお願いしたいと思います。
 その上で、幾つかの質問と意見を述べさせていただきます。
 まず、1ページ「1.イノベーションの評価」。小児用医薬品の取扱いについてです。
 算定組織の意見として、特に評価すべき品目については、新薬創出等加算の対象としてはどうかとありますが、何をもって特に評価すべきかと判断するのかが重要です。何か想定されているものがありましたら教えてください。
 次に、3ページの「(2)新薬創出等加算における品目要件の合理化」です。
 薬理作用が異なるものでも、1番手の品目と同等とみなし、新創加算の対象として評価してはどうかという御意見ですが、評価対象を拡大することで、市場拡大再算定における類似品、いわゆる共連れの範囲も拡大することも考えられるのではないでしょうか。
 比較薬の範囲については、薬価制度全体で整合性を図るべきではないかとも考えておりますが、こうした点について、算定組織としてのお考えがあればお聞かせください。
 「(3)改定時加算の取扱い」です。
 2つ目の御意見は、薬価よりも安くなっている市場実勢価格を新創加算で回復させた上で、それを基準に加算額を決定してはどうかという御意見だと思いますが、そうすると、市場によって形成されたその医薬品の評価、価値と、改定後の薬価との乖離が大きくなることも懸念されますので、この点について、もう少し詳しく検討する必要があると考えます。
 「(4)標準的治療法の定義」です。
 本邦で標準的治療法となることが明らかであると見込まれる場合等は、評価の対象として取り扱うことが提案されておりますが、どのような場合に明らかであると見込むことが可能になるのでしょうか。何か判断の基準となる得るものがありましたら教えてください。
 次に5ページ「2.薬価算定の妥当性・透明性の向上」。「(1)原価計算方式における開示度向上」についてです。
 営業利益率を、平均的な営業利益率に固定することは、今回の調査結果を見ても、客体数は少ないですが、実態を反映していない可能性があります。したがって、もう少し精緻化することができないか。例えば、ほかにどのようなデータソースがあるかなど、引き続き検討していくべきと考えます。当然、様々なデータソースがあるものと承知しておりますので、よく吟味したいと考えております。
 一方、開示度が相当程度高い品目にインセンティブを与えることは、原価に基づいて薬価を算定するという原価算定方式の本来の目的から逸脱してしまっており、本末転倒と考えます。
 続いて、9ページ「3.状況の変化に応じた薬価の適正化」。「(1)市場拡大再算定の取扱いの見直し」です。
 1つ目の御意見である類似品、いわゆる共連れの取扱いにつきましては、既に現行ルールでも、市場規模、薬価基準への収載時期、適用の範囲等を考慮し、市場拡大再算定対象品と市場における競合性が乏しいと認めるものを除くとされています。
 今回の御意見は、この例外規定とは別に、類似品の考え方を変更しようという御意見でしょうか。類似品の判断は、今申し上げたような様々な要素を総合的に考慮する必要があり、明文化するのは難しいのではないかと考えます。
 したがって、これまでどおり、薬価算定組織で検討された結果を中医協に御提案いただき、市場拡大再算定の趣旨である公的保険制度における薬剤費の適切な配分を踏まえつつ、中医協で判断するのが適当であると考えております。
 また、3つ目の御意見である補正加算の拡大は、市場規模が拡大した上にさらに加算を上乗せするということが、市場拡大再算定の趣旨に合致するのか否かという観点から検討する必要があると考えます。
 「4.その他」。「(1)新薬が長期間収載されていない領域において開発された新薬の評価」について、今後の資料にて、どのような領域が想定されているのか、例示をお願いできればと思います。
 また、ルール化を検討する際には、明確な条件を設定することが必要ですが、これが可能なのか、御検討をお願いしたいと思います。
 「(2)有用性系加算の定量的評価」。これも今後の資料等にて、算定組織において必要と認めた場合というのは、どのような状況が考えられるのか、御説明をお願いできればと思います。
 また、現在の定量的評価は、研究を行った上で決めたと了解しており、不十分ということであるならば、もう一度研究してから対応するのが筋と考えます。
 最後に、12ページ「(5)開発段階からの薬価相談」です。
 臨床試験の計画から薬事承認を得るまでには数年かかり、ものによっては長期に及ぶ可能性があります。
 その間にも、薬価制度は変更される可能性があるという状況下でも、開発段階から薬価算定に関する相談を受けるとするのであれば、将来の薬価制度や、薬価上の評価の視点が中医協における議論とは関係なく、国と企業との相談によって決定されていく可能性もあります。
 したがって、この御提案については、危険性が高く、無理が大きいと受け止めております。
 現在でも、医政局医薬産業振興・医療情報企画課のほうで、企業からの相談対応を受けられておられると承知しておりますが、それと今回御提案のものがどう違うのかが判然といたしませんので、具体的なイメージがありましたら教えていただければ幸いです。
 私からは以上です。
○安川部会長
 ありがとうございます。
 御意見とともに、今、6点ほど御質問もあったかと思いますが、前田委員長のほうで、もし今の時点でお答えいただけるところがございましたら、お答えいただけますでしょうか。
○前田委員長
 幾つか質問をいただいたのですけれども、例えば、最初に小児に関して、現在想定されている具体的な例はということですけれども、こちらは、もし事務局からあればお願いしたいのですけれども、ございますでしょうか。
○安川薬剤管理官
 薬剤管理官でございます。
 幾つか質問をいただいている点がございます。薬価算定組織で、この意見をまとめる際にも議論がありましたけれども、細かいところもありますので、まずは事務局のほうから一通りお話をさせていただければと思っております。
 まず、全体的なことを申し上げますと、いろいろな提案に関して、何か具体的な事例、想定が全てあるものではありません。
 今後の薬価算定においてどう考えるかということで、この意見をまとめていただいていると承知しております。
 ということで、秋以降の議論の際に、様々な課題とともに、今回の算定組織の意見についても提示しながら、先ほど長島委員からも御指摘がありましたけれども、様々な背景も示しながら、あるいは影響度合いも示しながら、提示できるものはできる限りお示ししながら、議論をいただけるように配慮したいと考えてございます。
 そういう意味で、小児に関しましても、今、明確に法令上、薬機法の中での位置づけがないところはあるのですけれども、何か個別に、要は特定の効能・効果が明確になっているとか、あるいは用法・用量がはっきりと示されているといった識別ができるものがあれば、一定程度評価し得るものがあるのではないかと思っておりますが、その辺りも含めて、整理が必要と考えております。
 また、(2)の3年・3番手のところ、比較薬の範囲については、これは全体的なことを考えないといけないのですけれども、原価計算方式では、先ほどの開示度の状況とか、いろいろな課題もありますが、できる限り類似薬効比較方式による算定を進めるという流れの中では、比較薬の範囲が広がってくる可能性はあるかと考えています。
 そうなってくると、今、いろいろなルールを決めている中で、もう少し整合を取ったほうがいいものとか、もしかしたら改正したほうがいいようなものがあれば、今回の改正の議論の中で御審議いただくことを考えております。いずれも個別の提案の一部だけを見ると提案の妥当性が判断しにくいものもあるかもしれませんので、全体的な方向性を示しながら、様々なルールにはねるものもございますので、そういったところも事務局としては意識しながら、資料の提示をしていければと考えております。
 そして、(4)の標準的治療法のところの、実際の判断の仕方については、前田委員長からも、もし補足があればと思うのですけれども、今、何か考えている基準があるわけではないのですが、この辺りは特に新薬の薬価算定の際にもよく課題になっているところでございます。例えば、今、ガイドラインには明記されていない場合であっても、明記する方向で学会で検討が進んでいるというものがあれば、一定の評価をしていいのではないかと思っておりますし、そういったところも含めて考え方の整理が必要かと思っているところでございます。
 また、ポイント制というか、有用性評価の定量的評価ですね。10ページ目のところのお話でございます。
 これは、長島委員から先ほど御指摘いただいたとおり、もともとは研究班の成果を基にポイントのルールを決めたところでございます。こういったところの考え方に関しては、今、厚労研究班で検討が進んでいると承知しておりますので、そういった結果も含めて、秋以降の議論の際にはお示しできればと考えているところでございます。
○前田委員長
 私のほうから追加でよろしいでしょうか。
○安川部会長
 お願いいたします。
○前田委員長
 今、事務局から御説明があったように、ガイドラインの話ですが、これはなかなか難しいのですが、例えば、欧米のガイドラインには記載されているが、日本では使用実態がないので全くガイドライン等に記載されていないという場合、それぞれ薬価算定のときには、その分野の専門家の先生に御意見を伺うことになると思うのですが、その場合に収載されれば、明らかにガイドラインには載るであろうと、特に日本人を対象とした国際共同試験とか、そういうものがされている場合には、明らかであろうというのが、大体予測がつくのですが、確かに薬価算定組織としては、必ずしもその領域の専門家ばかりではありませんので、その辺、複数の専門家の先生の意見を聞いて、明らかにガイドラインに入ってきそうだということを参考にするのではないかと思っておりますが、現在のところ、そのようなルールがございません。最近、そのような例が幾つかあったように感じておりますので、今回のような将来的にガイドラインに載ることが明らかなものについては考慮してもいいのではないかという提案でございました。
 それから、最後の再生医療等製品に関しては、薬価算定組織でも専門家がいないというか、これは本当に医薬品とは大きく異なるものが幾つも出てきているところでありまして、かなり算定組織でも、原価計算方式で一体どこまで妥当なのかというのが分からない、情報が少ない状態での薬価算定になっている。
 海外での薬価等も参考にしていることが多いのではないかなと思っておりますが、この辺も実績を積まないとルール化はできないかもしれないですけれども、様々なソースを利用して、薬価算定のルールをつくっていきたいと、我々もですが、御協力をいただきたいと思っております。
 以上でございます。
○安川部会長
 事務局と前田委員長、御丁寧な御説明をありがとうございました。
 長島委員、追加はございますか。
○長島委員
 ありがとうございました。
 今回は、主に意見を御列挙いただいたという段階かと思いますので、ぜひ先ほど述べましたような観点で、さらに資料を整理していただければと思います。ありがとうございました。
○安川部会長
 ありがとうございます。
 では、森委員、お手が挙がっておりますので、よろしくお願いいたします。
○森委員
 ありがとうございます。
 前田委員長をはじめ、算定組織委員の皆様におかれましては、薬価算定の基準に関する意見をまとめていただき、大変ありがとうございました。
 まず、全般的な方向性としましては、これまでも発言させていただきましたとおり、国民皆保険の持続性とイノベーション評価の両立の観点から、バランスの取れた制度設計が必要と考えております。
 その上で、今後、今回お示しいただいた薬価算定組織の意見等に基づいて、個別具体的な算定ルールの議論を深める上では、まず、過去にどのような背景、経緯に基づき、現行の算定ルールが設けられたのか、現在どのような状況の変化や課題が生じているのかとともに、算定ルールを変更することで財政面を含め、どのような影響が生じるのか、それらを含め、全体としてどのように優先度をつけていくのかなど、データに基づいた議論とともに、公的保険制度における薬剤費の適正な配分メカニズムとしての機能を失わないよう、めり張りのある対応が必要と考えます。
 厚生労働省事務局におかれましては、秋以降の議論のため、必要なデータや資料等の準備をお願いしたいと思っております。
 その上で、幾つかコメントと質問をさせていただきたいと思います。
 まず1ページ目、(1)小児医薬品の取扱いについてですが、医療的ケア児等に用いる薬剤の中には、小児に対しての安全性及び有効性に関する十分なデータがなく、添付文書に用法・用量が明記されていない薬剤であっても、臨床上必要なため、使用せざるを得ない薬剤もあります。
 小児医薬品の開発は、対象患者が少なく、新生児から思春期まで、多様で幅広い患者が対象で、医薬品の剤形、用量等、各年代に応じたきめ細やかな対応が必要なことや、同意取得等に小児特有の配慮を有する問題があり、なかなか開発が進まないと言われています。
 小児の治療を安全・安心に行うため、医薬品の開発を促進するための何かしらの評価や配慮が必要と考えます。
 次に4ページ目、2ポツの「(1)原価計算方式における開示度向上」についてですが、令和4年度改定以降、令和5年5月までの間に、原価計算方式による薬価改定が行われた新規医薬品18成分のうち16成分が、つまり89%が開示度50%未満で、それらが加算係数ゼロとなっています。企業はどうしても開示ができないのか、それともこのルールでは開示する方向に進みにくいのか、このまま開示度が低いものが加算ゼロで大丈夫なのか、どのような対応が望ましいかなど、この辺りについては、専門委員から御意見をお聞かせいただければと思います。
 最後に6ページ目、2ポツの「(4)剤形追加等の取扱い」についてですが、患者への医薬品の使用に責任を持つ薬剤師の立場としては、新剤形の開発、新たな投与経路の開発も製剤技術を駆使したイノベーションと考えます。
 経口剤しかなく、それまで使用できなかった患者に貼付剤が開発され使用できるようになることや、製剤特性から粉砕ができないものが粉砕できるようになること。また、点滴のみの使用で錠剤が開発されたことにより、患者への負担はもちろん、治療場所の広がり、医療者への負担なども軽減されるなど、最新の製剤技術の進歩等により、新たな剤形や投与経路の薬剤が開発され、医療安全の確保、医療の質向上等に資するものと考えます。
 このような場合については、当初の製剤の新薬加算の期間は同様の評価として取り扱ってもよいものと考えます。
 私からは以上です。
○安川部会長
 ありがとうございます。
 もう少し御意見を伺ってから、専門委員の方にも御意見を伺いたいと思います。
 ほかに御意見、御質問等いかがでしょうか。
 松本委員、お願いいたします。
○松本委員
 まずは、幅広い観点から御意見をまとめていただきました、前田委員長はじめ、薬価算定組織の皆様に感謝を申し上げます。
 日頃から新薬の薬価算定につきまして御議論をいただいている専門家の御意見ですので、次期薬価制度改革に向けた非常に貴重な御提案と受け止めております。
 まず、総論として申し上げますけれども、評価の充実だけではなく適正化の方向も示されており、めり張りを効かせていくという考え方で、私自身の認識とは大きく離れたものではないという印象を持ちました。
 ただ、保険者の立場といたしましては、今申し上げましためり張りのバランスというのも極めて重要になります。
 全体としての姿が見えてこないと最終的な判断が難しくなりますけれども、各項目に該当する品目のボリュームあるいは薬剤費への影響について事務局に試算をいただくなど、丁寧にデータを見て、次回以降の具体的な議論につなげていくことが必要だと考えております。
 続いて、各論について発言をいたします。
 まず、イノベーションの評価に関する見直しについて、(1)の小児用製剤を新薬創出等加算の対象とする件については、特に評価すべき品目をどのように判断するかがポイントだろうということで、これは、ほかの委員の方もおっしゃるとおりだと思います。
 (2)の「新薬創出等加算の品目要件の合理化」についてですが、薬理作用類似薬の要件を外しても、3年以内3番手までの枠組みは維持するということですので、補足資料の5ページを拝見しますと、該当品目数は変わらないように見えますけれども、現行であれば1品目しか該当しなかったはずが、薬理作用が異なるものが加わって2品目以上になる可能性もあり、合理化という表現には若干違和感を感じております。具体的にどのようなケースがあり得るのか、丁寧に議論することが必要だと思います。
 「(3)改定時加算の取扱い」、「(4)標準的治療法の定義」については、純粋に加算額が増加ということになりますので、最低限財源確保とセットで検討することが不可欠ですので、なかなか全てを適用するのは難しいのではないかと、個人的には考えております。
 続きまして「2.薬価算定の妥当性・透明性の向上」についてコメントいたします。
 (1)の「原価計算方式の開示度向上」については、私個人としては、もともと他産業と比べて平均的な営業利益率がかなり高いという印象を持っております。
 補足資料の12ページには、原価計算品目を扱う企業の営業利益率が全体平均8.7%で、輸入医薬品が多い企業ほど営業利益率が低いというデータが示されております。
 したがいまして、ドラッグ・ラグ、ドラッグ・ロスにも配慮しつつ、輸入医薬品の営業利益率について、製薬産業全体の平均より低い値で計算するというのは実態に沿った対応であり、賛同いたします。
 一方、開示度が相当高い品目にインセンティブとして何らかの評価を検討するという御提案につきましては、そもそも公的な薬価を決める上で原価を開示することは、ある意味当然だと考えますので、あえて評価する必要性に疑問はありますけれども、これによって開示が進むのであれば、どのような範囲でどのように評価するのか、検討すること自体を否定するものではございません。
 また、類似薬を柔軟に選定するという提案につきましては、原価の開示が進まないから類似薬効比較方式を拡大するという論理ではなく、臨床上の位置づけ、あるいは患者の納得性という視点で議論をぜひ進めていただきたいと考えております。
 「(2)比較薬におけるG1品目及びG2品目の取扱い」、「(3)類似薬効比較方式(Ⅰ)における薬価の適正化」については、具体的に検討を進めることに賛同いたします。
 「(4)剤形追加等の取扱い」については、小児用製剤の開発や投薬に伴う患者負担の軽減につながるなど、医療上の意義が高いものであれば、一定期間に限り、幅広く新薬創出等加算を対象とすることも考えられますけれども、企業側の経営戦略上の剤形追加は、新薬創出等加算の対象としないという考え方だと理解をしております。
 続きまして、「状況の変化に応じた薬価の適正化」ということで、9ページに市場拡大再算定の類似品取扱い見直しについて意見が示されておりますが、いわゆる共連れルールについては、以前に申し上げたとおり、前回の見直しの影響をしっかり検証した上で議論を進めるべきだと考えております。
 類似薬効比較方式の品目については、使用実態の著しい変化がなくても、再算定の対象とするということについては賛同するものであります。
 最後にその他の項目ですけれども、いずれも検討することを否定するものでありませんが、追加の財源が必要になるものもありますので、冒頭にも申し上げました、該当する品目のボリューム、さらには財政影響のデータを見て、これについては慎重に判断をしていきたいと考えております。
 私からは以上になります。
○安川部会長
 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。
 それでは、先ほども意見がいろいろ出ておりましたので、専門委員から、もし御意見等ございましたら、お願いいたします。
○石牟禮専門委員
 専門委員の石牟禮でございます。ありがとうございます。
 まず、森委員より御質問をいただきました原価計算方式における開示度の向上につきまして、専門委員としてのコメントを申し上げたく存じます。
 まず、御理解いただきたいのは、原価計算方式で算定される場合、一般的な企業行動といたしましては、原材料費、製造経費等をできるだけ算定していただけるように、透明性の確保ということを踏まえて、企業は取り組んでいると承知しております。
 一方、欧米諸国におきまして、原価を積み上げて新薬の薬価を算定する国はないと承知しております。
 そういった観点に加えて、現在、特に新たなモダリティーを活用した医薬品の開発やサプライチェーンが複雑化しておりまして、複数国にまたがるそれら全ての費用を提出することが困難であるという状況だと認識しております。
 したがいまして、2年前の業界意見陳述におきましても、EFPIA様より開示度が低い品目の算定薬価については、欧米諸国と比較して低い水準にあるという状況を御説明されておりますし、また、移転価格そのものについても、各国との関係で低いものを選ぶという取扱いがなされていると承知をしております。それでもなお、前回の改定において厳格なルール見直しが行われたという状況でございます。
 今回の資料でお示しいただきましたように、開示度が低い品目が多い現状が残っているということは、まさに開示することがなかなかできない状況を示しているものと理解しているところでございます。
 また、原価計算方式における開示度の向上を踏まえて、類似薬効比較方式における算定をなるべく柔軟に類似薬を選定していくという方向について、業界からもそのような意見を申し上げているところでございますけれども、一方、そういった観点での再算定の考え方について、今回御意見をいただいておりますが、再算定につきましては、まずは今回の主旨としまして、類似薬効比較方式の算定品目についても原価計算方式において算定された品目と同様に取り扱うという提案をされておりますけれども、そもそも再算定につきましては、収載後に収載時の条件変化があった場合に、価格の見直しを行うということが原則と理解しておりまして、その原則からしまして、原価計算方式と類似薬効比較方式では取扱いを変えているという理解でございます。
 今回、もし、この御意見に沿って検討される際には、今、幾人かの委員の御意見にもございましたとおり、再算定の原則についてどのように考えるのかということも踏まえて、慎重に御検討いただきたいと考えております。
 直接の御回答になっているかどうかはわかりませんが、以上、コメントをさせていただきます。
○安川部会長
 石牟禮専門委員、ありがとうございました。
 ほかに御意見等ございますでしょうか。
 最後に森委員。
○森委員 御回答ありがとうございました。
 まずは、製薬企業で開示度の向上に向けた対応というのが重要になるのではないかと思っております。
 その上で、今回の18品目中、開示が50%以上の品目が2目しかなかったということを考えると、複数の国に多くの委託先がある契約上の問題、様々なことがあるのかもしれません。
 そうしたことから、結果として、加算がゼロとなることが多くて、そのことがドラッグ・ラグ/ロスにつながるようであれば、何らか、そのことを考えていくというのは、次の課題かと思っております。
 以上です。
○安川部会長
 ありがとうございます。
 ほかに御意見等ございませんようでしたら、この議題については、このあたりにしたいと思います。
 前田委員長、どうもありがとうございました。
 続きまして「薬剤費等の年次推移について」を議題といたします。
 事務局より資料が提出されておりますので、御説明をお願いいたします。
○安川薬剤管理官
 薬剤管理官でございます。
 資料薬-2を御覧ください。
 薬剤費等の年次推移について、定例的な報告でございます。
 資料の2ページ目より薬剤費等の年次推移を示しておりますが、今回、令和2年度分につきまして推計が整いましたので、3ページ目の赤枠のとおり御報告いたします。
 表の下にある注釈の一番下のポツを御覧ください。薬剤比率を検討する当たり、令和元年度までは、社会医療診療行為別統計を基に薬剤比率を算出しておりましたが、令和2年度は新型コロナウイルス感染症が拡大した初年度でもあり、6月単月審査部のデータを基にすると、その影響を大きく受ける状況であったことから、医療費の動向調査を用い、通年分のデータから算出しているものでございます。
 報告は以上となります。
○安川部会長
 ありがとうございました。
 ただいまの御説明について、御意見、御質問等ございましたらお願いいたします。
 よろしいでしょうか。
 安藤委員、お手が挙がっておりますので、よろしくお願いいたします。
○安藤委員 すみません、ありがとうございます。
 今回の資料の4ページにありますとおり、国民医療費に占める薬剤費の比率及び乖離率は、長期的に大きく変動してはおりません。近年の不安定供給問題であるとか、ドラッグ・ラグ/ロスを踏まえれば、やはり薬価での対応ではなく、後発医薬品業界の産業構造など、根本的な課題にアプローチをしていくことが、医薬品の安定供給には必要不可欠であると考えます。
 また、今回の薬剤費等の年次推移については、直接関係ございませんが、今後、レカネマブに関する議論が予想されるなど、薬剤をめぐる議論がさらに加速していくかと思います。今後十数年の薬剤政策の礎となるような方向性を示すことができるよう、事務局におかれましては、関連する検討会等の議論も踏まえつつ、丁寧なスケジュール設定をぜひよろしくお願いしたいと思います。
 以上です。
○安川部会長
 ありがとうございました。
 ほかに御意見、御質問等ございませんでしょうか。
 ございませんようでしたら、この議題については、このあたりにしたいと思います。
 本日の議題は以上です。
 次回の日程につきましては、追って事務局より連絡をいたしますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、本日の「薬価専門部会」は、これにて閉会といたします。どうもありがとうございました。

                  
                                   

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