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ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会薬価専門部会)> 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会 第199回議事録(2023年2月1日)

 
 

2023年2月1日 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会 第199回議事録

○日時

令和5年2月1日(水)11:00~

○場所

オンライン開催

○出席者

中村洋部会長 秋山美紀委員 小塩隆士委員 関ふ佐子委員
安藤伸樹委員 松本真人委員 佐保昌一委員 眞田享委員
長島公之委員 江澤和彦委員 林正純委員 森昌平委員
赤名正臣専門委員 石牟禮武志専門委員 村井泰介専門委員
<事務局>
伊原保険局長 眞鍋医療課長 中田医療技術評価推進室長
荻原保険医療企画調査室長 安川薬剤管理官 小嶺歯科医療管理官 他

○議題

○高額医薬品(感染症治療薬)に対する対応について

○議事

○中村部会長
ただいまより、第199回「中央社会保険医療協議会薬価専門部会」を開催いたします。
なお、今回も、会議の公開については、前回に引き続き、試行的にユーチューブによるライブ配信で行うこととしております。
まず、本日の委員の出欠状況について御報告します。
本日は、全員が御出席です。
本日の議題は、先週に引き続き、個別の医薬品を取り扱うことから、当該医薬品の製造販売業者に所属しておられます石牟禮専門委員につきましては、利益相反の観点から、本日の部会には出席を控えていただくこととしております。
それでは、議題に入らせていただきます。
本日は、「高額医薬品(感染症治療薬)に対する対応について」を議題といたします。
事務局より、資料が提出されておりますので、説明をよろしくお願いいたします。
安川薬剤管理官、よろしくお願いいたします。
○安川薬剤管理官
薬剤管理官でございます。
資料薬-1を御覧ください。
まず、2ページ目と3ページ目は、前回お示しした薬価収載に向けての論点等の資料でございます。この資料に基づく意見をいただいておりますので、それに沿って今回資料を構成しているものでございます。
4ページ目を御覧ください。まず、総論としてまとめています。本剤が年間1500億円の市場規模を超えることが見込まれる薬剤として対応することは妥当とする意見、本剤に限定的な対応として議論することに異論がないとの意見など、本剤の検討を進めることについて了承いただく意見がありました。これを受けて、下の水色の囲みで書いておりますが、「感染動向の予測が困難な感染症の治療薬であって、急激な感染拡大等によって高額医薬品となり得る本剤に限った特例的な取扱いとして、次ページ以降のとおり対応の方向性を整理」いたしました。
それでは、順に説明いたします。5ページ目を御覧ください。1つ目の論点として、収載時の薬価算定の方法についてです。その下に、前回いただいた意見を基に「主な意見」としてまとめております。総会で御指摘いただいた安全対策に関する御意見も含んでおります。
6ページ目を御覧ください。対応の方向性をまとめています。「本剤の薬価収載にあたっては、以下のとおり対応することとしてはどうか」ということで、方向性を項目ごとに示しております。まず、「算定方法」でございます。「類似薬効比較方式により対応するが、比較薬の選定にあたっては、対象疾患の類似性と投与対象患者の類似性のいずれを優先するかによって算定薬価が大きく変動する特殊性も鑑み、複数の比較薬に基づき薬価を算定するなどの柔軟な運用を可能とする」としております。今回の中医協の議論では、類似薬の候補からどの比較薬を選定するか、あるいは、その選定した比較薬に基づき薬価をどのように算定するかといった薬価算定の具体的な方法まで結論を得ていただくことは想定していませんので、このような記載にしております。現行の薬価算定の基準では、比較薬を1つ選定して薬価を算定しているところでございますけれども、本剤は、こういった課題もございまして、複数の比較薬の薬価を踏まえて基本となる1治療当たりの価格を決めることを可能にするため、比較薬の選定に当たって柔軟な運用を可能とすることを了承いただけた場合には、具体的な比較薬の選定やそれに応じた薬価の算定方法については、まずは薬価算定組織で審議することを考えています。なお、通常どおり、有用性等の加算の必要性についても検討することになりますが、そちらも薬価算定組織で審議することを想定しております。続きまして、「収載に向けた手続」の項目でございます。通常の新薬の薬価収載と同様に、薬価算定組織で具体的な算定方法を審議し、その内容を中医協総会で確認していただくことを考えていますが、総会では、今回の高額医薬品の議論を踏まえて、算定方法のほかに、以下に示す「投与に当たっての留意事項」あるいは次の論点でございます「薬価収載後の価格調整(市場拡大再算定)」の取扱いを併せて示した上で議論を行うこととしてはどうか、としております。最後に、「投与に当たっての留意事項」でございます。薬価収載の際には、保険医療上の取扱いで留意すべき点を、いわゆる留意事項通知として、必要な薬剤ごとに示しております。本剤についても、薬価収載時に留意事項通知で投与対象患者を限定するために必要な事項を示してはどうかとしております。具体的な内容につきましては、前回も説明いたしましたが、本剤を含むコロナ治療薬については、「COVID-19に対する薬物治療の考え方」が学会ガイドラインとしてまとめられており、医療現場ではこのガイドラインを基に薬剤選択や使用方法等を検討することになっております。そこで、ここに書いている内容を明記して、本剤の投与が必要な患者に限って投与されるよう周知していくものでございます。一番下の「※」のところにも書いておりますが、本剤の添付文書でも「最新のガイドラインを参考にすること」、「本剤の使用の必要性を慎重に検討すること」という内容が含まれており、留意事項通知で示す内容と整合性が取れていると考えております。また、同じ項目の2つ目のポツでございます。薬事上の安全性に関する対応でございますが、こういった内容につきましては、通常、保険医療上の取扱いを示す留意事項通知には記載していないものではありますが、今回は中医協で御指摘いただいた内容であり、また、この内容は患者選択に関係するものでもございますので、高額医薬品となり得る本剤においては入念に留意事項として示すこととして、こちらに書いていますように、「併用薬剤や妊娠の有無等の禁忌事項についても確認が行われ、本剤の投与が適切な患者に限って投与される」ことを、上記の内容とともに留意事項として明記したいと考えております。以上が、薬価収載時における対応の方向性でございます。
続きまして、7ページ目を御覧ください。2つ目の論点ですが、投与対象者数、市場規模予測、薬価収載後の価格調整に関するものでございます。前回の主な意見は、下に書いているとおりです。
8ページ目を御覧ください。対応の方向性をまとめております。今後の感染の状況に即して迅速に価格調整を行うことについては、前回、御了承いただいておりますので、再算定の方法として、以下の方針で対応してはどうかということでまとめているものでございます。矢羽根が幾つかありますけれども、まず、1つ目、「市場規模を迅速に把握するため、薬価調査やNDBに代え、COVID-19の感染状況、本剤の投与割合、出荷量等の情報により市場規模(販売額)を推計したデータに基づき、市場拡大再算定、四半期再算定の適用を判断する」ということでございます。推計値を用いるとの方針でございます。矢羽根の2つ目、「推計したデータによる判断は、本剤の市場規模が高額になる場合を踏まえた措置として対応することから、既存の市場拡大再算定のルールのうち、年間販売額が極めて大きい品目の取扱いに関する特例」、具体的には年間市場規模が1000億円超と1500億円超の場合でございますが、その「年間販売額の判断に限り活用する」ことを示しております。再算定の適用範囲につきましては、ルール上、様々にございます。今回、本剤について薬価算定に先立って中医協において議論することとなった背景といたしましては、市場規模が急激に拡大した場合に高額医薬品となる可能性があり、それによって保険医療財政への影響が懸念されるということでございますので、その観点で特に対応が必要になる点に限定して特例を設けるべきと考えているところでございます。先の中医協でも示したとおり、薬価制度は「国民皆保険の持続可能性」と「イノベーションの推進」を両立させることが重要であり、予見可能性等の観点から必要以上に現行ルールと異なる新しいルールを設けないことも重要な視点と考えられますので、このような範囲に限定して適用してはどうかということで、まとめております。また、矢羽根の3つ目でございます。今回の特例的な対応とは別に、「既存の市場拡大再算定のルールは、通常どおりNDBや薬価調査データに基づき判断する」ということも、念のため、記載をしております。
9ページを御覧ください。具体的な先ほどの再算定の内容について、市場拡大再算定のルールの概要を示しております。このうち、赤枠で囲んだ箇所が、市場規模拡大再算定の特例である年間販売額が極めて大きい品目の取扱いでございます。今回、この赤枠の箇所を判断する際に推計値を用いて対応するということを示しているものでございます。
10ページ目を御覧ください。現行制度においてこの特例を適用した場合の薬価の計算方法をまとめております。年間市場規模が、1000億円を超える場合、1500億円を超える場合で、薬価の計算式を分けているものでございます。具体的な計算は青字の計算式を用いることになりますが、引下げ額につきましては、当初の予想販売額と実際の年間販売額の比率によって異なります。どのような引下げになるかというイメージを、下の表に示しております。仮に、予想販売額が100億から500億円として、年間販売額が表のような額まで拡大した場合、計算で得られる引下げ率は「引下げ率」に▲で書いている数値のとおりでございますが、引下げ率の上限値がルールで定められておりますので、実際に適用される引下げ率が下げ止めの上限値になる場合もあります。これが現行制度であり、ここで書いております年間販売額が推計値を用いて計算できるように、今回、措置を設けるものでございます。この計算方法に関して、もう少し細かく運用方法を整理したほうがいい論点がございますので、それは後ほど説明いたします。
8ページ目に戻ってください。真ん中の項目でございます。「再算定を行う際の手続」について、「通常の手続と同様に薬価算定組織を経て中医協総会で了承を得ることとしてはどうか」としております。推計値を用いた場合でも、通常の手続で進めるものでございます。また、この際の経過措置の取扱いですが、「医療機関等における薬価改定への対応に要する期間を勘案し」、「従来と同様に2~3か月程度の猶予期間を設けることとしてはどうか」としております。具体的には薬価改定の告示が示されてから新たな価格が適用されるのは告示が出た翌々々月の1日付になるので、「2~3か月程度」とここでは記載をしております。以上が前回の論点等を踏まえた御意見に基づきまとめたものでございますが、さらに、本剤や対象疾患の特殊性を鑑みて、この再算定の運用方法に関する論点がございますので、最後の項目に追加で幾つかまとめております。まず、「薬価収載時の市場規模予測の設定についてどのように考えるか」でございます。今回、中医協で御議論いただくこととしたのは、投与対象患者が、今後の感染者数の拡大、薬剤の投与割合の上昇等が起こってしまった場合に、「年間1500億円の市場規模を超えると見込まれる品目」に該当すると判断したものでございます。一方で、薬価収載時に設定する市場規模予測は、その時点の状況に即して収載から10年間を予測するものでありまして、先ほどの高額医薬品となる可能性を想定して試算するような数字とは異なるものでございます。本剤については、新型コロナ感染症の感染動向や本剤の投与動向を見込むことは困難な状況という課題もございますが、そういった背景も踏まえながら、本剤の市場規模予測の設定についてどう考えるか、ということを示しております。参考ですけれども、この市場規模予測は再算定の対象となるかどうかを判断する基準額となるものでございまして、現行のルールでは、再算定を適用した場合にはその時点の市場規模が以降の再算定の基準額となります。したがいまして、当初の市場規模予測がどの期間維持されるかというところにも影響するものでございます。次に、推計方法でございます。2つ目のポツですけれども、推計のタイミングは、現行の四半期再算定のルールがございますので、同じタイミングで対応してはどうかと考えており、四半期ごとに再算定の対象となるかどうかを判断する前提で記載しております。また、通常の再算定は特定の月のデータを基に判断していますが、新型コロナ感染症のように短期間で感染者数の増減があるような疾患においては、単純に1か月分のデータから年間市場規模を計算するのではなく、感染動向を踏まえる必要があると考えております。例えば、通常の四半期の再算定では6月診療分のNDBデータを基に年間市場規模を計算しているところでございますが、本剤については、例えば、4月から6月の3か月間の市場規模を代替となるデータを用いて推計して、そこから年間販売額の計算をすることになります。市場規模のトレンドを感染症の特性を踏まえた形で追えるようになるので、この方法が現実的ではないかと考えております。最後のポツですけれども、実際の引下げ率に関して、先ほど説明した特例に基づく既存の算定式を用いて推計してはどうか、ということで示しております。また、現行制度では引下げ率の上限値が設定されていますが、今回は、感染症が急速に拡大することがあり得ることを考えた場合の上限値の設定の要否、また、3か月の推計値から年間販売額を計算するため、その年間販売額から計算される引下げ率で一度に引き下げますが、引下げ率の上限を上げるべきかなど、引下げの方法についてどう考えるかといった論点を示しております。これらの追加の論点を含めまして、本剤に限った再算定の特例的な対応をまとめていきたいと考えております。再算定は、一定のルールや運用方法をこの時点で整理しておくべきでございますので、細かい内容でもございますが、今回、方向性として提示したものでございます。
最後に、11ページ目を御覧ください。「その他」として、意見をまとめております。薬機法上、本剤は1年間の期限を付して緊急承認されたものでございます。期限内に本承認の手続を経ることになることを踏まえて、改めて薬価算定をしてはどうかというものです。対応の方向性として、今回は先ほど示した方針で薬価収載を行うことを提案しておりますけれども、本承認に至った場合は、承認後、速やかに中医協総会に報告し、承認審査における審査結果やその間の使用状況等の情報を踏まえて、「改めて本剤の薬価について検討することとしてはどうか」とするものでございます。また、今回示した方向性に関しては、現時点で想定できる範囲で検討したものであり、今後の感染動向等の中で新たな課題が判明する可能性も否定できません。さらなる対応が必要となった場合には中医協総会で改めて議論するということも、最後に提案しているものでございます。以上が、対応の方向性になります。対応の方向性に関する全体的な補足でございますけれども、本剤は、薬価収載や再算定に関して現行制度を適用しようとすると、これまで示したような課題があるので、医療保険財政に与える影響を最小限にするため、幾つか特例的な対応を設けたほうがいいと考え、方向性を示しております。一方で、特例であればどういったルールでも新たにつくっていいというものではないので、できる限り現行ルールや考え方を基とした運用を行うことを前提にして、それでは対応が困難となる点に限って特例的な対応として運用してはどうかということで、こういった方向性を示しているものでございます。今回の方向性で進めた場合、想定外の課題もあり得るかもしれませんし、今後の感染状況等の変化でさらに課題が生じる可能性もあります。それは、最後にまとめておりますが、薬機法の本承認の際に議論していただくことや必要に応じたタイミングでも議論できるような方針を示したものになります。
12ページ目以降の資料は、参考資料として、前回の資料をつけているものです。
資料の説明は、以上でございます。
○中村部会長
大変詳細な説明をどうもありがとうございました。
それでは、ただいまの説明に関して、御意見、御質問等がありましたら、よろしくお願いいたします
長島委員、よろしくお願いいたします。
○長島委員
ありがとうございます。
資料の対応の方向性に沿って、意見を申し上げます。
まず、6ページの薬価収載時の対応につきましては、先週開催された薬価部会における意見をおおむね踏まえたものであり、賛同いたします。算定方法に、複数の比較薬に基づき薬価を算定するなどの柔軟な運用との記載があります。前回の議論を踏まえて、複数の比較薬とは、まず、新型コロナウイルス感染症の適応を持つ抗ウイルス薬、そして、利用方法や臨床成績、患者像が類似しているインフルエンザ感染症の抗ウイルス薬の2つを指すものと理解いたしますが、薬価算定組織におかれましては、医療現場で実際に患者さんに処方するに当たっての本剤の臨床的意義や市場規模をよく吟味した上で、薬価算定案を御審議の上、総会に提示いただき、議論したいと思います。
次に、8ページの薬価収載後の価格調整(市場拡大再算定)について、コメントいたします。再算定の方法及び再算定を行う際の手続につきましては、提案どおりで異論はありません。最後の具体的な運用方法の論点についてです。1つ目のポツ、薬価収載時の市場規模予測の設定ですが、投与状況については、参考資料の20ページにあるように、現時点の流通条件下で約0.2%の陽性者に投与されていると推定されていることや安全対策の徹底を含む今後の動向等を踏まえた上で設定すべきだと考えます。また、流行型感染症については、急拡大だけでなく、急縮小も想定されると思いますが、薬価算定組織におきましては、薬価収載時の市場規模予測の妥当性をよく吟味していただければと思います。続いて、2つ目のポツ、四半期ごとに直近3か月の市場規模を基本に年間販売額を推定することが提案されておりますが、今回の新型コロナウイルス感染症のように、感染者数が短期間で急増する場合は、迅速な対応が求められます。したがいまして、通常の四半期再算定のように年4回の新薬収載の機会を待っていたのでは、適切なタイミングを逃してしまう可能性があります。出荷量等は毎月集計されていると思いますので、連続した3か月から年間推計を行うことも御検討いただきたいと思います。3つ目のポツでは、後段で、3か月間のデータからの推計であることなどを踏まえ、引下げ率やその上限をどのように考えるかと提案されております。この点については、3か月間のデータからの推計を超えてさらに市場拡大する可能性も否定できないことや、一度市場拡大再算定を受けた品目は再度の再算定を受けるまで一定期間を要することなどを踏まえれば、本品のルール設定においては、特例的な対応として、引下げ率の上限を引き上げて、現行ルールよりもさらに大きな引上げを可能にすることを検討してもよいと思います。
最後に、11ページのその他についても、資料に示された対応の方向性に異論はありません。
私からは、以上です。
○中村部会長
御意見をありがとうございました。
森委員、よろしくお願いいたします。
○森委員
ありがとうございます。日本薬剤師会の森でございます。
まずは、今回の対応についての考え方ですが、今回のゾコーバ錠は、類似薬と比べて対象患者像が異なることや患者数の推計・市場規模予測が困難なことなど、その特性上、これまでにない対応が必要とされますが、現行ルールに従った上で何ができるのかという視点で考えていくべきだと思います。
幾つか、論点に沿って発言させていただきます。
まずは、資料の6ページ目に示されている薬価収載時の対応について、算定方法、収載に向けた手続、投薬に当たっての留意事項について、いずれも示されている対応内容でよいと考えます。
次に、資料の8ページ目の薬価収載後の価格調整について、再算定の方法と再算定を行う際の手続について、異論はございません。具体的な運用方法の論点について、薬価収載時の市場規模予測の設定については、現在、考え方の根拠となり得るものは20ページの投与状況であり、それを基に設定していくものと考えます。収載後の年間販売額の把握については、これまでの感染動向等を踏まえると、1か月ではピーク等を捉えることが難しいことから、直近3か月間の市場規模を基本に年間販売額を推定して判断していく対応は妥当と考えます。また、直近3か月間の動きだけでは動向をしっかりとつかめないこともあると思いますので、年間を通した動向も注視しつつ、対応していく必要があると考えます。
次に、引下げ率の上限についての設定ですが、10ページ目に、再算定の計算式、引下げ率が示されておりますが、薬剤の特性等から、現行のルールの範囲内では対応が追いつかない可能性が懸念され、財政に多大な影響が出る場合の対応は検討しておくべきと考えます。ただし、その際、イノベーションの促進へ配慮する観点は必要だと考えます。
最後に、資料の11ページ目の対応の方向性の1つ目のポツですが、ゾコーバ錠は緊急承認制度を適用した初めての薬剤となります。緊急承認制度は、安全性については確認、有効性については推定の段階で承認を行う緊急の承認であるため、緊急承認後、改めて一定期間内に承認申請を行うこととなっています。そのため、本承認後の審査結果等を踏まえて、改めて本剤の薬価を検討する必要があると考えます。2つ目のポツについて、今後の感染状況はもちろん、市販後、ゾコーバの特性を医療現場がどう捉えるかにより、患者数、市場規模等は変わり、さらなる対応が必要となったときには、中医協総会において速やかに検討すべきと考えます。
私からは、以上です。よろしくお願いいたします。
○中村部会長
どうもありがとうございました。
松本委員、よろしくお願いいたします。
○松本委員
ありがとうございます。
事務局から示されました対応の方向性については、総会を含めた前回の議論を踏まえて、十分に整理されていると思いますので、それに基づきまして、コメント、質問等をしたいと思います。
まず、6ページにございます薬価収載時の対応でございます。1つ目の算定の方法でございますが、比較薬を1つに絞れないとはいえ、候補となる薬剤が存在することを鑑みれば、薬価算定ルールの原則どおり、類似薬効比較方式を優先的に適用する妥当性はあると考えております。記載にもありますが、複数の比較薬を選定し、何らかの調整をして1つの薬価を導き出す場合には、合理的な説明ができるように十分していただきたいと思います。次に、投与に当たっての留意事項ですけれども、前回の部会で申し上げましたとおり、ぜひ学会のガイドラインに基づきまして適切な判断が行われるよう、留意事項通知に明示していただきたいということでございます。また、症状が1日早く改善することをどのように捉えるかということは、個々の患者によって異なります。さらに、前回の総会で間宮委員が強い懸念を示しておりました妊娠の可能性のある患者への投与を確実に防止する観点からも、患者への説明と同意は極めて重要です。ゾコーバにつきましては、患者に有効性や安全性に関する情報を文書で説明し文書で同意を得てから投与することが承認条件として推奨されていますので、ぜひ全ての患者に文書による説明と同意を取ることをルール化していただきたいと考えます。
続きまして、8ページにございます薬価収載後の価格調整についてです。まず、1つ目の再算定の方法でございますが、投与患者が大幅に増えれば保険財政に大きな影響がございますので、市場規模を迅速に把握することは極めて重要です。これは事務局に対しての質問ですが、薬価調査やNDBに代えて、感染状況、投与割合、出荷量などから市場規模を推計する場合、どの程度の期間で再算定が発動できるのか、現時点での想定を教えていただきたいと思います。続きまして、手続ですけれども、投与患者数が急激に増加すれば、医療機関や薬局の在庫は逆に減少するだろうと考えられます。その場合でも告示から適用まで2~3か月の猶予が必要なのかについて、事務局または診療側の委員から御説明をいただければと思います。告示の翌々月の1日に適用を原則とした上で、在庫状況によっては、可能な限り、猶予期間を短縮することも検討できるものと考えております。次に、具体的な運用方法の論点ですけれども、企業規模が1000億や1500億を超えた場合の特例再算定については、保険財政が極めて厳しい状況にあり、迅速かつ適切に薬価を見直す観点から、下げ止めを適用しないことも含めて、引下げ率や下げ止めを特例的に厳しく対応すべきであることを改めて主張させていただきます。
最後になりますが、11ページのその他でございます。本承認の際に改めて薬価算定を行うことは結構ですけれども、その際には、医療現場の評価にも当たります市場実勢価格も参考にして慎重に判断していただきたいと考えております。
私からは、以上になります。
○中村部会長
松本委員、どうもありがとうございました。
先ほど、質問がありましたので、安川薬剤管理官から、よろしくお願いいたします。
○安川薬剤管理官
薬剤管理官でございます。
幾つか質問をいただいていますので、御説明いたします。
まず最初に、再算定の推計値を用いたときにどれくらいの期間で適用されるのかということでございます。今回お示しした方法で進めると仮定いたしますと、実際に再算定を行うためには、まず、市場規模がどれくらい拡大しているかを推計した後に、それを基に再算定による価格の引下げを計算して、薬価算定組織、中医協総会での議論を経て、改定薬価を告示して適用する流れになります。市場規模の推計は、恐らく時間をかけずに速やかに対応できると考えております。四半期ごとの把握であれば、その期間の翌月には総会までの手続を終えることも可能ではないかと考えております。その後、告示のための手続、そして、適用時期に猶予を設けるとすれば、従来どおり2~3か月が必要であり、告示日の翌々々月の1日付の適用となりますが、トータルでは実際に市場が拡大してから4か月ぐらいの期間で価格の引下げが適用できるのではないかと考えており、現行の再算定の手続よりも迅速な対応が可能になると考えております。ただ、この期間自体は、今、イメージで申し上げていますので、多少は変わり得るものであることは御留意いただければと思っております。
併せて、先ほどの再算定の際の猶予期間のところでございます。事務局、私からも説明しますし、もし追加で何かあれば診療側の委員からもぜひお願いしたいと思いますが、価格の引下げ、特に四半期の再算定につきましては、通常の薬価改定の時期とは異なることもありますし、医療現場にとって急な想定外の価格変動になるので、一定の猶予期間を経た上で適用することが必要と考えております。こういった期間を設けても一定の在庫は必要ですので、在庫価値の影響は避けられないという認識をしております。この一定の在庫は医療機関も薬局も必要となります。一方で、どこでも等しく患者が来るというものではありませんし、地域差もありますし、患者のニーズのばらつきもあります。そういった中で、きちんと在庫を確保しなければいけない、調整しなければいけないというところがいろいろとありますので、本剤を提供できる体制を維持しながら価格引下げの影響を最小限にするには、今回の場合であっても、これぐらいの期間、従来と同様の期間は必要になると考えているものでございます。
また、こちらは質問ではなかったのですけれども、文書による説明と同意のところでございます。こちらは薬機法の中の対応でもあるので、ここもまた整理はしたいとは思っているのですが、事実関係から申し上げますと、本剤の緊急承認における承認条件の中で、製造販売業者に対しまして、患者等に有効性・安全性に関する情報を文書をもって説明し、文書による同意を得てから初めて投与することを医師に対して要請するということが承認条件として規定されているものでございます。現在はこの承認条件に基づいて医療現場で文書の説明・同意が行われているものと認識していますし、今回、薬価収載されて一般流通になった場合でも、この承認条件がある以上、この取扱いが行われると考えております。こういった文書による説明や同意の規定でございますが、今回緊急承認された本剤以外にも、コロナの治療薬では、特例承認によるものでも同様の規定があり、本剤もそうですけれども、添付文書でそのことを強調して記載されているものでございます。この取扱いに関しましては、一定の有効性・安全性の評価を経た上で同意取得等を不要となっているものもございます。こういった既存の収載品でも、現在、留意事項通知の中で特に明示しておらず、ほかの品目との並びを考えると、ここは留意事項通知でなく薬機法の中で取り組むべき事項とも考えられるのかなと思いますけれども、その辺りも含めて今後の整理かと思っているところでございます。
事務局からは、以上でございます。
○中村部会長
ありがとうございます。
診療側の委員の先生にも御質問がありましたので、森委員、よろしくお願いいたします。
○森委員
ありがとうございます。日本薬剤師会の森でございます。
まず、猶予期間について、現行、2~3か月の猶予期間とありますが、その期間内でも在庫対応ができているわけではないということを御理解いただきたいと思っております。在庫調整ができることのほうが稀です。現在、拡大再算定等による薬価の引下げは、特に高額な薬剤が対象となっていることもあり、薬局や医療機関に大きな影響を及ぼしています。また、薬剤管理官からもありましたけれども、感染が拡大して使用量が増えても、必ずしも薬局の在庫の回転が早くなくなっているとは限りません。また、地域差もあります。猶予期間を短くするということは、現状以上に薬局や医療機関に大きな影響を及ぼすことになります。そのため、現状と同等の猶予期間についての設定をお願いしたいと思っております。
以上です。
○中村部会長
ありがとうございます。
長島委員、よろしくお願いいたします。
○長島委員
ただいま森委員から御説明がありましたが、医療機関でも全く同様の事情でございます。在庫管理など、医療現場への大きな負担がございますので、ぜひその辺りを御理解いただければと思います。
私からは、以上です。
○中村部会長
松本委員、よろしいでしょうか。
○松本委員
御説明をどうもありがとうございました。
事務局に確認ですけれども、先ほど言われた期間と今お話が出た猶予期間は、ある程度整合が取れているという理解でよろしいのでしょうか。
○安川薬剤管理官
薬剤管理官でございます。
まさに、猶予期間は告示から適用までの期間でございますので、同じことを指していると認識しております。
○松本委員
どうもありがとうございました。
○中村部会長
ありがとうございます。
安藤委員、よろしくお願いいたします。
○安藤委員
ありがとうございます。
私からも、意見を述べさせていただきます。
前回の本部会におきまして、ゾコーバは重症化抑制効果が確認されておらず、対象患者や投与目的が異なる既存のコロナウイルス薬を比較薬とするのは不適切であるという旨を申し上げました。その点で、資料の6ページに書いてあります類似薬効比較方式により対応するが複数の比較薬に基づき薬価を算定するなどの柔軟な運用を可能とすることにつきましては、合理的な方針であると考えております。また、投与に当たっての留意事項につきましては、既に投与後に妊娠が発覚した事例が確認されていることから、留意事項通知の改正をはじめ、医療現場でのリスク管理の一層の徹底を図るようによろしくお願いいたします。ここで、1点、質問させてください。これは総会の委員である間宮委員からの質問でございますが、ゾコーバ錠の処方注意事項には、妊娠の可能性のある女性についての記載がございますが、男性についての記載はございません。男性の精子に対して催奇形性が移行する可能性があるのかどうかにつきまして確認がされているのかどうかということを確認させていただければと思います。
続きまして、市場拡大再算定の適用について、資料の8ページ、薬価調査やNDBに代え、COVID-19の感染状況、本剤の投与割合、出荷量等の情報により、市場規模を推計したデータに基づき、判断するとの方針は、薬価収載後の迅速な価格調整を可能にするものであり、賛成でございます。
最後に、資料の11ページの対応の方向性について、今後、ゾコーバが正式に承認された際や感染状況等を踏まえ、薬価をはじめとした取扱いをきめ細かく見直していくことにつきましては、患者の安心にもつながりますので、ぜひその方針で進めていただきたいと考えております。
以上です。
○中村部会長
ありがとうございます。
御質問がありましたので、薬剤管理官からよろしくお願いいたします。
○安川薬剤管理官
いただいた御質問に関して、実際に薬事承認の審査の際にどういったことを確認したかというところを確認した上で改めて回答したほうがいいかと思っております。事実関係等をきちんと調べたほうがいいと思いますので、薬事部門の担当部局と相談して、また次回以降に御説明できればと思っております。
以上です。
○中村部会長
後日確認ということで、安藤委員、よろしいでしょうか。
○安藤委員
かしこまりました。よろしくお願いいたします。ありがとうございます。
○中村部会長
よろしくお願いいたします。
佐保委員、よろしくお願いいたします。
○佐保委員
ありがとうございます。
前回も、患者の安全性を最優先にすることを前提に、本剤に限った対応とすることに賛成いたしました。今後の感染状況や本剤の位置づけを踏まえて、11ページのその他で挙げられた対応の方向性の2点については、異論はございません。
今回の方針に関しましては、国や医療機関、薬局の皆様には、患者の安全性について今後も細心の注意を払っていただき、対応をお願いしたいと考えております。
以上です。
○中村部会長
佐保委員、どうもありがとうございます。
眞田委員、よろしくお願いいたします。
○眞田委員
ありがとうございます。
私からは、薬価収載時の算定方法に関し、コメントをさせていただきたいと思います。
6ページに、類似薬効比較方式により対応するが、複数の比較薬に基づき薬価を算定するなどの柔軟な対応を可能とするとありますが、本剤の特殊性に鑑みれば、こうした方向性で対応することに大きな異論はございません。ただし、中医協として、単に柔軟な運用を薬価算定組織に委ねるということではなくて、合理性・客観性のある薬価を算定いただくことを、改めてではありますけれども、求めたいと思います。今後、議論を進める際には、こうした問題意識を資料上も明記いただければと思います。
以上でございます。
○中村部会長
御意見をどうもありがとうございました。
ほかに、御意見、御質問等はございますでしょうか。
長島委員、よろしくお願いいたします。
○長島委員
市場規模拡大が想定されるゾコーバについての薬価収載後の対応については、本日の議論を参考に、さらなる検討を進めていただきたいと思いますが、今後、事務局におかれましては、緊急承認された医薬品の本承認における薬価の再算定方法やパンデミックを来す感染症のような患者数推計が困難な疾患に関する薬価算定方法等について、次期改定に向けた検討課題としての御対応をお願いいたします。
私からは、以上です。
○中村部会長
長島委員、どうもありがとうございます。
ほかに、御意見、御質問等はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
ありがとうございました。ほかに御意見等はないようですので、本件に関わる質疑はこれまでとしたいと思います。
前回の部会において、検討の過程で関係業界から意見を聴取することについて御了承いただいております。本日の部会で対応の方向性について一通り御意見をいただきましたので、次回の部会において関係業界から意見を聴取したいと考えておりますが、いかがでしょうか。
(委員首肯)
○中村部会長
ありがとうございます。そのようにいたします。
本日の議題は、以上になります。
次回の日程につきましては、追って、事務局より、連絡いたします。
それでは、本日の薬価専門部会をこれにて閉会といたします。
どうもありがとうございました。

 

(了)

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