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ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会薬価専門部会)> 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会 第198回議事録(2023年1月25日)

 
 

2023年1月25日 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会 第198回議事録

○日時

令和5年1月25日(水)総会終了後~

○場所

オンライン開催

○出席者

中村洋部会長 秋山美紀委員 小塩隆士委員 関ふ佐子委員
安藤伸樹委員 松本真人委員 佐保昌一委員 眞田享委員
長島公之委員 江澤和彦委員 林正純委員 森昌平委員
赤名正臣専門委員 石牟禮武志専門委員 村井泰介専門委員
<事務局>
伊原保険局長 眞鍋医療課長 中田医療技術評価推進室長
荻原保険医療企画調査室長 安川薬剤管理官 小嶺歯科医療管理官 他

○議題

○高額医薬品(感染症治療薬)に対する対応について

○議事

○秋山部会長代理
ただいまより第198回「中央社会保険医療協議会 薬価専門部会」を開催いたします。
なお、今回も会議の公開につきましては、前回に引き続き、試行的にユーチューブによるライブ配信で行うこととしております。
まず、本日の委員の出欠状況について御報告いたします。
本日は、中村部会長が御欠席です。
本日の議題は、先ほど総会で高額医薬品に関する議論を薬価専門部会で検討することについて了承されたことを受けて対応するものであります。
個別の医薬品を取り扱うことになりますが、石牟禮専門委員につきましては当該医薬品の製造販売業者に所属しておられますので、利益相反の観点から、本日の部会には出席を控えていただくこととします。
それでは、議事に入らせていただきます。
本日は「高額医薬品(感染症治療薬)に対する対応について」を議題といたします。事務局より資料が提出されておりますので、御説明をお願いいたします。
○安川薬剤管理官
薬剤管理官でございます。資料薬-1を御覧ください。先ほどの総会の資料と重複する内容もございますので、重複するものは省略しながら説明をいたします。
最初のほうは総会と同様の資料になります。
2ページ目は高額医薬品に対する中医協での対応方針、3ページ目はゾコーバ錠の概要、4ページ目と5ページ目は学会のガイドラインにおける本剤の位置づけについての資料でございます。
6ページ目を御覧ください。薬価収載時の薬価算定における課題を示しております。薬価算定の現在の取扱い、上の囲みでございますが、新規収載時の薬価算定は、類似薬効比較方式を原則として、比較薬が存在しない場合には原価計算方式によることとしております。
また、類似薬効比較方式では、効能・効果、薬理作用などから、最も類似性が高い薬剤を比較薬として、1日の薬価あるいは1治療に必要な薬価を合わせることを基本としております。
下の囲みに課題を示しております。
まず、1つ目でございます。本剤の場合は、類似薬効比較方式による比較薬の候補が複数存在いたします。
1つは、新型コロナウイルス感染症に用いる抗ウイルス薬です。対象疾患や薬理作用から類似性はありますが、重症化リスク因子の有無にかかわらず軽症~中等症の患者が幅広く対象になるため、重症化リスク因子を有する患者に投与する既存薬とは対象患者数が大きく異なり得るという点で異なるものでございます。
次の候補としては、同じ呼吸器感染症であるA型またはB型インフルエンザに投与される抗ウイルス薬も比較薬の候補になり得ます。対象となるウイルスは異なりますけれども、呼吸器感染症に対して重症化リスクにかかわらず広く投与され得るという投与対象患者の類似性、あるいは薬理作用から見てウイルス増殖を抑制する薬剤であるという観点では一定の類似性があるものと考えられます。
このような候補がございますが、これらの薬価について、次の7ページ目に示しております。新型コロナウイルス感染症の抗ウイルス薬であれば、上の表にありますけれども、本剤と同じ経口剤であるラゲブリオであれば、1治療当たりの薬価は右端にありますが9万円を超えております。一方で、インフルエンザの抗ウイルス薬であれば、下の表でございますが、1治療当たり数千円ということで、比較薬をどちらにするかによってかなり大きな価格差が生じてしまいます。
6ページ目に戻りまして、「課題」の2つ目のポツでございます。薬価収載時には市場規模予測が必要となりますが、本剤の対象患者はこれまでの抗ウイルス薬より広がることが想定されますので、患者数の推計が重要となります。一方で、感染動向を予測することの難しさや、感染者の急激な増減が生じるため、感染者数を踏まえた投与患者の推計や市場規模予測が非常に困難となります。急に使用が増大して年間1500億円を超えると見込まれる可能性を有していると今回判断しておりますけれども、使用が増大しない段階での市場規模予測も難しい状況でございます。
以上が薬価収載時の課題となります。
8ページ目は現行の薬価算定方式の全体像を示した資料、9ページ目は国内感染動向、10ページ目は本剤の投与状況、11ページ目は現行の本剤の提供体制でございます。
続きまして、12ページを御覧ください。薬価収載後の価格調整について、現行制度とその課題をまとめております。
まず、現在の取扱いでございますが、1つは市場拡大再算定がございます。年間販売額が予想販売額を一定程度超えた場合には、市場拡大再算定により薬価を調整することとしております。再算定としては、2年に1度の薬価改定時に実施するもののほかに、新薬収載の機会を活用する四半期再算定があります。
また、価格調整の2つ目は、費用対効果評価がございます。項目の3つ目と4つ目のポツにありますけれども、有用性系加算部分を価格調整の対象範囲としており、分析に係る標準的な期間は14~18か月程度を要するものでございます。
13ページ目を御覧ください。このような価格調整の仕組みに関して課題をまとめております。
今回のような新型コロナウイルス感染症では、感染動向の推測自体も難しいですし、仮に感染者数が増加した場合、短期間に急激な増減が生じます。したがって、これまでの市場拡大再算定が適用された品目とは状況が異なり、感染者数を踏まえた投与患者の推計や市場規模予測が非常に困難であり、現行のルールで対応しようとすると以下の(1)~(3)に示した課題が生じ得ると考えております。
まず(1)、薬価収載時に推計する予想販売額の設定が非常に困難となること。
(2)でございますが、四半期再算定の場合、NDBデータを基に判断しておりますので、データの集計や評価検討に時間を要します。
具体的には15ページ目を御覧ください。こちらは四半期再算定のスケジュールのイメージですが、確認する時期が決まっております。表の一番左のように、仮に12月に使用が急増した場合、まず、そのデータが得られるまでに3か月程度を要します。その後、薬価算定組織での検討をして、中医協での薬価の見直しが決定され、経過期間を踏まえて3か月後ぐらいに新たな価格が適用されます。したがいまして、実際に市場規模が拡大してから改定後の薬価が適用されるまでには8か月程度の期間を要するものでございますので、急激な市場規模の拡大への迅速な対応が難しくなりますし、また、その間に感染者数の増減が生じると、その市場規模はその時点で考慮できなくなってしまいます。これが(2)の課題でございます。
13ページ目に戻っていただいて、(3)でございます。薬価改定時の再算点につきましては、こちらも薬価調査から薬価改定までに半年程度の期間を要しますし、薬価調査は特定の月の単月調査なので、投与対象者数が短期間に増減する疾病への迅速な対応には向かないという課題があります。
再算定の課題は以上となりますが、最後に、費用対効果評価に関しましては、今回のような急激な市場規模の拡大に迅速に対応する趣旨のものではないことを示しているものでございます。
以上が薬価収載後の価格調整の課題となります。
14ページ目は現行の再算定制度の概要、15ページ目は先ほど説明しました四半期再算定のスケジュール、16ページ目は参考として令和4年度薬価改定における再算定の対象品目を添付しております。
最後に17ページ目から、本剤の薬価収載に向けた論点等をまとめております。
まず、現状でございます。
「高額医薬品となる可能性」については、総会でも御説明いたしましたが、令和4年度薬価制度改革の骨子で、「年間1500億円の市場規模を超えると見込まれる品目が承認された場合には、通常の薬価算定の手続に先立ち」、「薬価算定方法の議論を行う」こととしており、本剤は、年間市場規模が急激に増大した場合に、1500億円を超える可能性が否定できない状況です。
「薬価収載時の薬価算定」につきましては、新規収載時の薬価算定は類似薬効比較方式を原則としておりますが、本剤は比較薬の候補が存在するものの、新型コロナウイルス感染症という対象疾患の類似性と、重症化リスク因子の有無という投与対象患者の類似性のいずれを優先するかによって比較薬が異なり、それにより算定薬価が大きく変わってしまいます。
「薬価収載後の価格調整」につきましては、新型コロナウイルス感染症のような短期間で急激な変動が生じ得る感染症の場合は、迅速な価格調整が困難になるものでございます。
最後、「投与対象者」につきましては、学会のガイドラインで、本剤の投与対象は軽症~中等症患者であり、「症状を考慮した上で投与を判断すべき」とされております。
以上が現状でございます。
次に、18ページ目に論点をまとめております。
最初のポツは総会で示したものと同様の記載でございますが、今回、高額医薬品として議題に上げておりますが、薬価収載に当たっては新薬のイノベーション評価の視点も重要となりますので、その点も含めて医療保険財政に与える影響を踏まえた上での対応が必要ということを記載しているものでございます。
2つ目のポツは、これまで説明した課題を踏まえて、令和4年度薬価制度改革の骨子の「高額医薬品に対する対応」に基づき議論すべき点として、以下の矢羽根に書いております論点があると示しているものでございます。
まず、1つ目は、収載時の薬価算定の方法についてどのように考えるか。次に2つ目、パンデミックを来す感染症のような患者数推計が困難な疾病における投与対象者数や市場規模予測についてどのように考えるか。薬価収載後に価格調整を行うルールの適用についてどのように考えるか、という点でございます。
これらの薬価収載時の算定方法、市場拡大再算定の適用などについて、薬価専門部会で御議論いただきたいと考えております。
補足でございますが、今回、薬価算定の手続に先立って薬価算定方法の議論を行うのは、市場規模が高額になる場合に備えるものでございますので、そのような場合における対応の考え方について御議論をお願いいたします。
現在の使用状況が継続するのであれば、市場規模が高額になることはないと思われますが、高額になることが分かってから新たな価格調整ルールを検討するのは迅速な対応ができなくなるおそれがございますので、薬価収載の際に今後の価格調整のルールについても併せて検討すべきと考え、御検討いただくものでございます。したがいまして、収載後の価格調整につきましては、今回これから御検討いただく考え方が使用状況によっては適用されない可能性もあり得るというものでございます。
また、「論点」の2つ目に書いていますが、検討の過程では関係業界から意見を聴取することについても論点に盛り込んでおります。
一番最後になお書きでございますが、今回の議論は本剤の対象疾患である感染症の特性や本剤の対象患者の範囲などを踏まえたものでありますので、本剤に限った対応として検討することが適当と考え、そのことも論点として記載しております。
事務局からの説明は以上でございます。
○秋山部会長代理
ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明に関して御質問等がある方はお願いいたします。
長島委員、どうぞ。
○長島委員
ありがとうございます。
18ページの論点について、意見を述べます。
ポツの1つ目はまさにそのとおりであり、市場規模が高額な品目については、医療保険財政に与える影響を踏まえた上で対応する必要があります。
2つ目のポツにあるとおり、関係業界から意見を聴取するという事務局の提案には異論ありません。その上で、2つの矢羽根について述べます。
本剤の承認内容や臨床成績は、3ページに記載されているとおり、対象患者は既存のコロナ治療薬とは異なり、重症化リスクのない軽症~中等症の患者に対して投与できる薬剤という意義があります。
一方、臨床成績は、プラセボ群と比較して5つの症状が回復するまでの期間が24時間程度短縮される程度のものでありますので、その点も踏まえた薬価となるよう留意すべきであると考えます。
その上で、今述べた臨床的な対象患者像や臨床成績からすれば、また、4ページのゾコーバ錠の位置づけについて、学会ガイドラインを踏まえ、既存の抗ウイルス薬とは投与対象患者や投与目的が異なると総括されていることからも、7ページにあります既存のコロナ治療薬であるベクルリー点滴静注用100ミリグラムは1治療当たり薬価が25万3368円です。ラゲブリオカプセルは1治療当たり薬価が9万4312円です。これらを類似薬とするのは適当ではないと考えます。
また、投与対象患者数や市場規模予測が極端に難しい状況であることも理解できます。このような状況では、対象疾患、薬理作用を踏まえ、なおかつ緊急承認品目でもありますので、安定供給への見通しに対する配慮の観点からも、早急な価格算定を行うことが適当と考えます。
また、このように算定された薬価については、薬機法における本承認の際に、承認事項や評価されたデータ、その間の使用状況等も勘案の上で、薬価算定を改めて行うという取扱いにすることでもよいと考えます。
収載後に行う価格調整ルールの適用につきましては、COVID-19の波が短期間で急激に増減することを踏まえれば、感染拡大を迅速に把握した上で、即時に薬価を調整することが求められます。しかし、現行の薬価調査やNDBを活用した手法ではそうした迅速な対応は不可能であり、医療保険財政に多大な影響を与えることが懸念されます。
したがいまして、感染者数や薬剤の使用量が推定できるデータを活用したり、機動的な販売数量の把握のためには、製造販売業者から出荷数量を入手するなどして、投与対象者数や市場規模予測をタイムリーに推計した上で、迅速に価格調整を行うようにすべきと考えます。さらに、当然ながら収載後、費用対効果評価もしっかり行うべきと考えます。
そして、最後のポツにありますように、今述べたような対応は既存の薬価算定ルールにはない新たな対応になりますが、これは本剤の対象疾患の特性、つまりパンデミックを来す感染症であり、患者数推計が困難な疾病であるという特性を踏まえた上での本剤に限った対応とすることに異論ありません。
今後もこのように中医協でしっかりとルールを定めながら対応を講じていくべきだと考えております。
私からは以上です。
○秋山部会長代理
ありがとうございました。
続きまして、森委員、お願いいたします。
○森委員
ありがとうございます。日本薬剤師会の森でございます。
18ページの論点に沿って発言させていただきたいと思います。
まず、1つ目のポツですが、「国民皆保険の持続可能性」と「イノベーションの推進」を両立するという観点は重要で、忘れてはいけないと思います。まずはその観点に沿った対応が必要と考えます。
次に、2つ目のポツですが、3つの論点が示されており、1つ目の収載時の薬価算定の方法ですが、7ページ目に抗ウイルス薬に関する薬剤、薬価が示されております。本剤は抗ウイルス作用の薬剤であることから、既存の薬剤を比較薬とする類似薬効比較方式で算定していくことは一つの考え方かもしれません。ただ、本剤は既存のコロナ感染症治療薬と対象患者が大きく異なる可能性があるため、単にコロナ感染症の既存薬と比べるものではないと考えます。インフルエンザに用いる薬剤も比較対象の一つとして想定できますが、1治療当たりの薬価が大きく異なる懸念があります。薬価算定の方法については、従来のルールにとらわれ過ぎない柔軟な形で検討することが必要と考えます。
2つ目の患者数推計が困難な疾病における投与対象患者数や市場規模予測についてです。9ページ目に新型コロナウイルス感染症の国内動向がありますが、これまでの感染動向では年に2~3回ピークがありますが、それらは事前に推測することは困難だったと思います。感染症の場合、患者数の推計、市場規模予測は非常に困難であると思います。
3つ目の薬価収載後の価格調整を行うルール適用についてですが、パンデミックで急激に患者数が増加してしまうと、医療保険財政に多大な影響を与えることになります。15ページ目、現在のNDBを用いた確認手段では8か月を要しており、パンデミックが発生してから対応するまで時間がかかり過ぎてしまい、市場規模の拡大に迅速に対応できない可能性があります。「国民皆保険の持続可能性」の観点からも、患者数が急増し、市場規模が高額となると想定された場合には、速やかに中医協で判断できるよう、何かしらの推計値を用いるなどスピード感を持った対応が行える仕組みが必要と考えます。
ただし、現場への影響という点では、薬局は在庫を抱えており、薬価を引下げることは薬局の資産価値の減少となり、薬局経営への大きな打撃になります。これは医療機関でも同様です。価格調整を迅速に行うことが必要である一方で、在庫への影響を最小限にするためには、現行ルールと同程度の期間の猶予を設けていただきたいと思います。
また、これは今後の課題になりますが、特に高額医薬品については販売包装単位にも課題がございます。ゾコーバは販売包装単位が4人分で1セットとなっており、使用しない場合など、薬局や医療機関の大きな負担になります。販売包装単位については、現場の負担にならないよう、どこかで検討をお願いしたいと思っておりますので、よろしくお願いします。
また、検討の過程において関係業界からのヒアリングは必要と考えます。
最後に、3つ目のポツですが、今回の方針に関しては、本剤の対象疾患の特性等を踏まえたもので、本剤に限った対応で議論を進めるということで、ここは了承したいと思います。
私からは以上です。よろしくお願いします。
○秋山部会長代理
ありがとうございました。
続きまして、安藤委員、お願いいたします。
○安藤委員
ありがとうございます。私のほうからも意見を述べさせていただきます。
まず、4ページの感染症学会からのガイドラインにありますとおり、ゾコーバ錠は重症化抑制効果が確認されておりません。
また、4ページの3ポツに「抗ウイルス薬等の対象と開始のタイミング」の抜粋が記されておりますが、そこに「エンシトレルビル等、重症化リスク因子のない軽症~中等症の患者に投与」と書かれております。
また、今回事務局からお示しいただいております類似薬効比較方式における比較薬としてはラゲブリオがありますが、この薬はゾコーバと違い中等症Ⅰの患者で重症化リスクを有する患者にも投与できることになっております。6ページの現行の取扱いに書いてありますように、最も類似性が高い薬剤としては、これも当たらないのではと考えております。
そのため、今回の新規収載時の薬価を考える際に、インフルエンザに用いる抗ウイルス薬剤を比較薬とした上で、原価計算方式、市場拡大再算定、そして費用対効果評価の組合せで対応するというのが基本のラインであると考えております。
ただし、そこにもう一点、考慮に入れておく必要があるのが、新薬開発へのイノベーションを起こすことへの意欲を阻害しないようにすることも重要であると考えております。資料の6ページの最後のポツにありますように、投与患者数の推計や市場規模予測が極めて困難であるため、医療保険制度の持続可能性を高めるためには、現行の市場拡大再算定のルールを見直し、薬価収載後の価格調整を現行以上に迅速に行えるような仕組み、環境を整えていく必要があると考えております。
以上です。
○秋山部会長代理
ありがとうございました。
佐保委員、お願いいたします。
○佐保委員
ありがとうございます。
先ほど総会の中でも意見がございましたが、患者の安全性を最優先にすることは当然です。そのことを前提に、論点で書かれております今回の方針に関しては、本剤の対象疾患の特性等を踏まえたものであり、本剤に限った対応として議論することに賛成いたします。その上で2点発言をいたします。
ゾコーバは重症化リスクのない患者に対して投与され、その効果としては発熱など5症状消失までの期間が約1日短縮されます。一方で、妊婦や妊娠可能性がある者については使えないことや、併用薬の制限もあります。
収載時の薬価算定方法については、既存の抗ウイルス薬とは投与対象患者や投与目的が異なるというゾコーバの位置づけや臨床的な効果も踏まえつつ、本剤が患者にとってなくてはならない選択肢となり得るのかといった患者の視点からも、慎重な検討が必要です。
また、薬価収載後の価格調整に関して、四半期再算定における市場拡大の確認手段として、NDBを活用するもデータ集計等に時間を要するとあります。新興感染症の拡大スピード等は読めないところがあり、急激な市場規模の拡大への迅速な対応の必要性は理解いたしますが、仮に迅速なルールを別途設けるとした場合でも、一定程度はしっかりと集計、評価、検討できる手法であることが必要と考えます。
私からは以上です。
○秋山部会長代理
ありがとうございました。
続きまして、松本委員、お願いいたします。
○松本委員
ありがとうございます。
まず、18ページの論点についてコメントいたします。
順番が前後いたしますけれども、一番最後に書いてございます今回の議論の射程についてでございますが、今回はゾコーバに限った対応について議論を進めるべきだと考えます。
次に、1つ目のポツに戻りまして、「国民皆保険の持続可能性」と「イノベーションの推進」の両立につきましては永遠のテーマであり、否定するものではありませんけれども、革新性の評価と医療保険財政への影響についてのバランスは極めて重要です。ゾコーバは新型コロナで初の国産新薬ということは事実ですが、支払側、保険者の立場としましては、今後も続くであろう極めて厳しい財政状況を大前提として、この範囲内でイノベーションを評価せざるを得ないということは強く主張いたします。
次に、2つ目のポツについて、収載時の薬価、対象患者数や市場規模の予測、収載後の価格調整ルールのいずれも個別具体的に特例的な対応について議論を進めていただきたいと思います。先ほど長島委員、森委員からもありましたけれども、13ページにあります薬価収載後の価格調整における課題を拝見しますと、現状では非常に難しいということの理由が羅列されておりますけれども、そうすると皆様方が指摘されているとおり、スピーディーな対応ができないということになります。そういう意味では、こういうものの考え方を少し改めていただく。ただし、安易なハードルの変更はいけませんけれども、そういったこともぜひ具体的に御提案いただきたいと思います。
次に、検討の過程で業界ヒアリングを実施することは必要だとは考えますけれども、あくまで業界としての意見を聴取するものであり、個別企業の意見を聴く場ではないということには十分留意いただきたいと思います。
次に、薬価算定の具体的な考え方についてコメントしたいと思います。
2ページにございます令和4年度薬価制度改革の骨子において、承認内容や臨床成績などに留意しつつ薬価算定方法の議論を行うとされております。ゾコーバの場合、重症化リスクのない軽症から酸素投与が不要な中等症までの患者に投与して症状が1日早く改善するということで、学会からも重症化抑制効果のデータがないことが指摘されており、4ページの最後に記載のとおり、薬価を検討する際には、既存のコロナ薬とは位置づけが異なることは考慮すべきであると思います。患者への使い方としては、インフルエンザの経口薬に近いという印象を持っております。
患者数や市場規模の予測につきましては、新型コロナの波に大きく左右されますが、学会から、症状が強い場合に処方を検討することが推奨されており、そもそも重症化リスクのない軽症患者への薬物治療は慎重に判断することも指摘されておりますので、留意事項通知等で投与患者を制限した上で市場規模を見込むことも考えられると考えております。
私からは以上になります。
○秋山部会長代理
ありがとうございました。
ほかに御意見、御質問等はございますでしょうか。
ほかに御意見等がないようですので、本件に関わる質疑はこの辺りとし、今後、事務局において、本日いただいた御意見を踏まえ御対応いただくよう、お願いいたします。
本日の議題は以上です。
次回の日程につきましては、追って事務局より御連絡いたします。
それでは、本日の薬価専門部会はこれにて閉会といたします。どうもありがとうございました。

 

(了)

<照会先>

厚生労働省保険局医療課企画法令第1係

代表: 03-5253-1111(内線)3288

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