ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会薬価専門部会)> 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会 第190回議事録(2022年11月9日)

 
 

2022年11月9日 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会 第190回議事録

○日時

令和4年11月9日(水)10:00~

 

○場所

オンライン開催

○出席者

中村洋部会長 秋山美紀部会長代理 小塩隆士委員 関ふ佐子委員
安藤伸樹委員 松本真人委員 佐保昌一委員 眞田享委員
長島公之委員 江澤和彦委員 林正純委員 有澤賢二委員
赤名正臣専門委員 石牟禮武志専門委員 村井泰介専門委員
<事務局>
伊原保険局長 眞鍋医療課長 中田医療技術評価推進室長
荻原保険医療企画調査室長 安川薬剤管理官 宮原歯科医療管理官 他

○議題

○令和5年度薬価改定について(有識者検討会における議論の状況について)

○議事

○中村部会長
おはようございます。ただいまより、第190回「中央社会保険医療協議会 薬価専門部会」を開催いたします。
なお、本日も新型コロナウイルス感染症対策の観点から、オンラインによる開催としております。また、今回も会議の公開については、前回に引き続き、試行的にユーチューブによるライブ配信で行うこととしております。
まず、本日の委員の出欠状況について御報告します。
本日は全員が御出席です。
それでは、議事に入らせていただきます。
本日は「令和5年度薬価改定について(有識者検討会における議論の状況について)」を議題といたします。
事務局より資料が提出されておりますので、事務局より説明をお願いいたします。
では、安藤課長、よろしくお願いいたします。
○安藤医薬産業振興・医療情報企画課長
医薬産業振興・医療情報企画課長でございます。
お手元資料の薬-1を御覧いただければと思います。私からこの検討会における議論の状況について御報告させていただきたいと思います。
2ページでございますが、まず検討会の目的でございます。大きく2つの課題をこの検討会では議論することを目的としておりまして、1つ目が革新的な医薬品や医療ニーズの高い医薬品の日本への早期上市という点、2つ目が医薬品の安定的な供給を図るというこの2つの観点から、現状の課題を踏まえまして、流通や薬価制度、産業構造の検証など幅広い議論を行うことを目的としたものでございます。検討会の構成員でございますが、申し上げましたような幅広い議論を行うということで、医療経済、薬価制度、流通実態、産業構造といった幅広い分野の有識者で構成をさせていただいているところでございます。
3ページを御覧ください。これまでの議論の経過でございます。まず8月31日に構成員からの意見陳述を行った後、9月の末から関係団体、業界からのヒアリングを行ってございます。製薬団体、それと流通の業界からのヒアリングを行ってございます。その後10月に入ってから、それまで様々な御意見が出ていましたので、それまで出た意見あるいは今後議論を深めていく論点についての整理をさせていただいたところでございます。その上で、直近でございますけれども、10月27日に政策提言ということでシンクタンク等からヒアリングを行ったというのが現状でございます。今後でございますけれども、一旦整理いたしました論点を踏まえてさらに議論を深めまして、来年の4月頃を目処に取りまとめを行う予定で進めていきたいと考えているところでございます。
4ページを御覧ください。これまで検討会において示されました主な意見について御紹介させていただきます。大きな類型ごとに整理をさせていただいてございます。まず全体的な課題ということで、大きなテーマで幾つか御意見が出されてございます。幾つか紹介しますと、医療費の伸びには医療の高度化や人口構造の変化などの実態的な理由が存在しているので、完全に予算統制下に置くという政策目標は非現実的ではないか。薬価制度は科学技術政策、産業政策、医療政策的視点から考える必要があるのではないか。医薬品市場の将来予測においては、先進10か国中、日本だけがマイナスまたは横ばいの成長となっていることを踏まえまして、薬剤費の総額を伸ばしていくことが必要ではないかといった意見が出されてございます。
続きまして、各論でございますが、まず革新的な医薬品の迅速な導入について、これも幾つかカテゴリーに分けて整理させていただいておりますけれども、企業の予見性を確保することが困難な制度になっているのではないかという趣旨の御意見でございます。諸外国と比べて特許期間中にもかかわらず新薬の薬価が早期に下落していく状況については、市場の魅力度の観点から他国に見劣りし、開発における日本の優先順位にも悪影響を与えているのではないかと。市場拡大再算定でございますけれども、再算定の対象品目の類似薬もいわゆる共連れとなる仕組みがございますが、これは不合理であり、予見性も欠いているのではないか。それと薬価見直しの頻度でございますけれども、不透明かつ複雑な薬価算定ルールや頻回のルール変更が制度を不確実にしていて、経営や投資計画が立てにくくなっているのではないかという御意見が示されてございます。
あと、いわゆる薬価の値づけの問題でございますけれども、欧米に比べて低い薬価が算定される可能性がある制度ということで、場合によって欧米主要国と比較して著しく低い薬価となることが課題ではないかと。薬価算定に当たっては、より多様な価値を評価する算定方式が必要ではないかという御意見が示されてございます。
先発企業のビジネスモデル上の課題も示されてございまして、先発企業は新薬の研究開発に重点化すべきでございますけれども、後発品の使用促進が進んだ現状においても、依然として長期収載品による収益に依存したビジネスモデルから脱却し切れていないのではないかという御意見。それと、欧米で開発される新薬の多くは昨今アカデミアやベンチャー由来のものが多くなってございますけれども、日本では創薬ベンチャー企業が十分に育っておらず、長期的な育成支援が必要ではないかという御意見が示されてございます。
5ページを御覧ください。続きまして、後発品を中心とした医薬品の安定供給についての御意見でございます。まず後発品企業のビジネスモデル上の課題が意見として示されてございます。後発品企業においては、薬価引下げによる収益低下を新製品の導入や既存品の数量増加、製造コストの圧縮などによって吸収をしてございますけれども、不採算の品目は増加を続けていて、安定供給のための設備あるいは人材への投資が困難になっているのではないか。供給品目数が少ない企業も多くなってございますので、安定供給を図る上で十分な体制となっていないような企業でも参入し、存続できるメカニズムになっているのではないか。産業の再編も含めて、今後のジェネリック産業の在り方について考える必要があるのではないかという御意見が示されてございます。
不採算品目への対応に対する課題ということで、安定供給を確保する観点から、現行の最低薬価や不採算品再算定といった赤字品目に対応するための各種制度の見直しが必要ではないかという御意見が示されております。直近の原材料価格の高騰やいわゆる為替変動、円安の影響でございますけれども、医薬品の製造コストに多大な影響を与えていて、医療上の必要性が高い製品の継続的な安定供給を下支えするような取組が必要ではないか。足元の物価高騰につきましては、製造原価率が高い製品について短期的な対応も考えなければいけないのではないかという御意見が示されてございます。
薬価差についても多くの御意見が出されてございます。薬価差の大小は、競合の大小、地域別、購入規模別、医療機関や保険薬局などの取引先の属性など様々な要因によって発生しているのではないかと。これらについて関係者が共通の認識を持つ必要があるという御意見。薬価差が実態として医療機関や薬局の経営原資になっており、全てなくなれば経営に多大な影響があることは認識すべきではないかという御意見。取引条件の差によって販売価格にばらつきが発生する中で、公定価格として薬価が設定されていることによって薬価差が生まれる構造があると。そのような中で、新薬と後発品など取引条件や商品特性が異なる製品を全て同じ薬価改定ルールで扱っていることに無理があるのではないかといった御意見が示されているところでございます。
6ページを御覧ください。こういった御意見を踏まえまして、今後検討会において議論を深めていく論点としてまとめたものが、以下、ページに書かれているものでございます。一部重複するところはございますので、簡潔に御紹介いたしますと、まず全体的な課題でございます。医療保険制度の持続可能性を確保した上で、革新的な医薬品の創薬力の強化や迅速導入あるいは医薬品の安定供給を図るという観点から、今後の薬価制度の在り方についてどう考えるか。また、マクロ的な視点からの総薬剤費の在り方についてどう考えるかという論点を立ててございます。
各論でございますが、革新的な医薬品の迅速な導入についてということで、大きく2つのカテゴリーに分けてございます。産業構造やビジネスモデルを起因とする課題に対しましては、アカデミア・バイオベンチャー企業におけるシーズの開発・導出や、製薬企業とのネットワーク構築を促進するためには、どのような取組が必要か。製品のカテゴリーや製造方法等の実態を踏まえながら、先発企業が長期収載品から収益を得る構造から脱却し、新薬の研究開発への再投資を促進するためには、どのような取組が必要かという論点を立ててございます。
続きまして、薬価制度を起因とする課題でございます。企業における予見性の向上を図る観点から、現在の新薬創出等加算や市場拡大再算定の運用や制度の在り方、あるいは経営や投資計画に影響を与え得る薬価算定ルールの改定頻度についてどう考えるべきかという論点を立ててございます。新規モダリティー等のイノベーションや医薬品としての価値を踏まえた適切な薬価の算定を行うためには、どのような考え方・方法により評価を行うことが望ましいかという論点を立ててございます。
続きまして、7ページ、最後のページでございますが、医薬品の安定供給についてでございます。現に多数の医薬品において供給に支障が生じているという実態を踏まえて議論を行う必要がある、こちらを前提といたしまして、こちらも大きく2つに分けてございますが、産業構造やビジネスモデルを起因とする課題ということで、中小の後発品メーカーを中心に少量多品種の製造が行われている産業構造、あるいは特許切れ直後の品目に偏った現在の収益構造についてどう考えるか。医療上重要な医薬品の供給を確保するため、サプライチェーン等の様々な安定供給上のリスクを評価し、その強靱化を図り、また、実効性を持った供給調整を行っていくために、どういった取組が必要かという論点を立ててございます。
薬価制度を起因とする課題でございますけれども、安定供給を確保するという観点から、現行の薬価改定ルールの在り方についてどのように考えるか。現在の最低薬価、不採算品再算定、基礎的医薬品といった必要な薬価を維持する仕組みについて、運用や制度の在り方についてどう考えるか。製造業者等における設備投資等の取組についてどのような評価を行うべきか。物価高騰による製造コストの上昇などの状況を踏まえ、医療上必要な医薬品の安定供給を確保するために、どのような対応が必要と考えられるか。
最後に、薬価差についてでございますが、薬価差が生ずる構造を踏まえまして、医薬品の取引条件、取引形態の違い、あるいは医薬品流通や医療機関等の経営への影響を考慮しながら、薬価改定の在り方についてどのように考えるかという論点を立てさせていただいているところでございます。
先ほど申し上げましたとおり、これらの論点に即して、今後議論をさらに検討会で深めていただき、来年の4月頃に検討会としての報告をまとめる予定ということで考えているところでございます。
以上、簡単でございますが、これまでの検討会における議論の状況について御報告させていただきました。資料の御説明は以上でございます。
○中村部会長
どうもありがとうございました。
今後の薬価制度の在り方を含め、有識者検討会における議論の状況について幅広く御紹介をいただきました。検討結果が取りまとめられれば、次期薬価制度改革に向けて本部会で議論を行う際の参考となる内容もあるのではないかと思いますが、本日は令和5年度の薬価改定を議題としておりますので、令和5年度の薬価改定に向けて参考となる内容があるか、あるとすればどのように考えるかという点を中心に御議論いただければと思います。何か御意見、御質問等ありましたらよろしくお願いいたします。
長島委員、よろしくお願いいたします。
○長島委員
ありがとうございます。
ただいま、有識者検討会におけるこれまでの議論の状況について御報告をいただきました。この検討会では非常に多岐にわたる議論をされているように拝見しておりますが、中医協以前の話も多々あるように感じており、その全てを薬価で解決することは不可能であると考えております。また、薬価制度に関する御提案についても、令和6年度の薬価改定に向けた検討課題と思われる項目も含まれておりました。したがいまして、本日は特にコメントいたしませんが、今後事務局におかれましては、令和5年度薬価改定に向けて、議論の参考になるような情報についてよく精査した上で、メリハリをつけて今後の本薬価部会に御報告、御提案をいただきたいと思います。
その上で、1点事務局に質問いたします。有識者検討会は、令和5年度薬価改定の議論の参考となる情報について、どのような粒度でまとめられる予定なのか教えてください。いずれの内容もこれまでも指摘されてきた論点となっており、かといって改定内容そのものとなるような御提案は中医協の所掌であるためなされることではないとすると、現時点での取りまとめの様子が想像できません。検討会での御議論の様子と併せて教えてください。
私からは以上です。
○中村部会長
ありがとうございます。
御質問、コメント等につきましては、また後でまとめて御回答をよろしくお願いいたします。
有澤委員、よろしくお願いいたします。
○有澤委員
ありがとうございます。
今回御紹介いただいたような論点について、これから有識者会議で取りまとめが行われるものと承知しています。その取りまとめが計画性を持った具体的な対応策などの整理がなされ、その内容が薬価制度の機能を向上させ、産業の成長を促し、国民などがその恩恵をしっかりと享受できるようになるものとして、引き続き検討をお願いしたいと思います。
その中で、今回御紹介いただいた6ページ以降の論点案の中で、令和5年度薬価改定の観点から幾つか発言をさせていただきます。
まず、6ページの(1)革新的な医薬品の迅速な導入についてですが、新薬の研究開発への再投資を促進することや企業の予見性の向上の必要性などが示されています。これらの方向に鑑みますと、令和5年度薬価改定をもし実施する場合においては、拡大対象となるような新たなルールの取り入れを実施すべきではないと考えます。
次に、7ページの(2)医薬品の安定供給についての2の薬価制度を起因とする課題の1ポツ目にあります必要な薬価を維持する仕組みについてですが、令和5年度改定においても必要な観点であります。改定によって大きく影響を受けてしまうものについては、何かしらの配慮はあってもよいのではないかと考えます。また、3ポツ目にあります物価高騰の影響についてですが、前回の業界ヒアリングで大きく影響を受けていることが分かりました。この影響はしばらく続くことが予想されます。このまま影響が続くと、医薬品の安定供給にさらなる支障を来す懸念もあります。こちらも令和5年度薬価改定をもし実施する場合においては、何かしらの配慮は必要と考えます。
次に、(3)の薬価差についてですが、有識者検討会の中で薬価差の偏在という指摘があり、薬価改定については様々な側面があると思います。薬価差ではなく過剰な薬価差、これを是正していくべきと考えます。現行の薬価改定によるしわ寄せは特に中小規模の薬局が大きく影響を受けており、現場の関係者と話をしていてもそれは非常に感じるところであります。薬価差の偏在については、メーカー、卸、取引形態や仕切り価、納入価、あるいは割戻し、アローワンスの個々の実態を含めた検討も必要ではないでしょうか。その上で議論を深めていかないと、バイイングパワーのない小規模な薬局などはさらなる窮地に追い込まれてしまう可能性があります。
改めて申し上げますが、薬価差が薬局の経営原資、少なくとも中小規模の薬局においては経営原資にはなっておらず、薬剤管理コストあるいは廃棄損耗分、こういったものに吸収されているのが現状であります。また、この有識者検討会に薬局や診療所、病院の経営に詳しい方々の意見が抜けている、こういったところも非常に気になるところであります。
私からは以上です。よろしくお願いいたします。
○中村部会長
ありがとうございます。
松本委員、よろしくお願いいたします。
○松本委員
ありがとうございます。
まずは御説明をどうもありがとうございました。有識者検討会での御意見でございますけれども、完全に賛同しかねる点もございますが、有識者の方々はどんなところに問題意識があるかはおおむね分かりました。制度の根幹に関わることもありますので、大きな制度改革につきましては、中医協において事実関係を正確に把握しながら、少し時間をかけて慎重に議論する必要があると考えております。
薬価専門部会としては、先ほど部会長からもお話がございましたけれども、来年度の薬価改定が当面の焦点になりますので、有識者検討会の御意見や論点案のうち、その改定に関連すると思われる部分に絞って質問とコメントをさせていただきます。
まず、医薬品の安定供給の観点でございますが、5ページに不採算品目への対応として3つの課題のうち2つ目と3つ目で、医療上の必要性の高い製品については継続的な下支えが必要、足元の物価高騰によって製造原価率が高い製品については短期的な対応が必要という御意見があり、7ページの論点案の(2)の2では3つの課題が示されています。事務局に質問でございますけれども、端的に言いますと、医療上の必要性の高い製品については、令和3年度改定で適用した最低薬価と基礎的医薬品の薬価維持に加えて、不採算品再算定も適用することが考えられ、さらに物価高騰への対応として、製造原価率の高い製品については、短期的な対応として、令和5年度改定に限った何らかの措置を講じることがここに書かれている趣旨という理解でよろしいのかまず確認をしたいと思います。特にこの短期的な対応については、薬価のみならず税制あるいは補助金等もありますので、これについてはどこかの場で十分に説明をいただきたいということでございます。そうした趣旨だという上で、前回の業界ヒアリングで宿題となった回答も踏まえて、薬価専門部会で議論する論点を次回以降に示していただきたいということでございます。
その上でのコメントになりますが、診療報酬改定のない年の薬価改定は、大臣合意もありましたとおり、市場実勢価格を適時に薬価に反映して国民負担を抑制するために実施するということをしっかり押さえていく必要がございます。さらに、物価高は生活の様々なところで全ての国民に影響があります。安定供給に支障を来して必要な医療が受けられないことは避けなければなりませんが、薬価において物価高に配慮することになれば、ただでさえ病気になって出費のかさむ患者が、負担軽減の恩恵を受けにくくなることは指摘させていただきます。
以上であります。
○中村部会長
ありがとうございます。
安藤委員、よろしくお願いいたします。
○安藤委員
ありがとうございます。
医薬品の安定供給については、令和5年度においても非常に影響があると思っております。その中で、薬価制度を起因とする課題の7ページのポツの3の「物価高騰による製造コストの上昇などの状況を踏まえ」という部分につきましては、何らかの形で短期的な財政措置等をする必要があると思います。その点を論点に挙げていただきたいと思います。
以上です。
○中村部会長
ありがとうございます。
佐保委員、よろしくお願いいたします。
○佐保委員
ありがとうございます。
適正な薬価という観点では、薬の安全性を重視すべきであり、患者や被保険者に安心をもたらすための薬価改定が求められると考えます。また、医薬品の安定供給も重要なテーマです。本日、議論状況の報告があった有識者検討会の意見なども参考にしつつ、中医協において、国民、患者目線での丁寧な議論を積み重ねることが重要と考えます。
私からは以上です。
○中村部会長
ありがとうございます。
安藤委員、何かございますでしょうか。お願いします。
○安藤委員
4ページに示されている全体的課題の中の御意見で、3ポツ目に「薬剤費の総額を伸ばしていくことが必要」という箇所に下線が引いてありますが、この文言がそのまま表に出て独り歩きしてしまうことに懸念を感じているので、表現方法を検討してほしいと思います。海外からの上市を早くするという観点では必要なことですが、その部分を記載していないことは問題であると考えています。結果的に全体的なマーケットが大きくなるということであればよいのですが、薬剤費の総額を伸ばしていくことが「必要」という表現である必要性はないのかと思いますので、意見として述べさせていただきます。
以上です。
○中村部会長
ありがとうございます。
そのほか、何か御意見、御質問等はございませんでしょうか。
では、先ほど御質問等がありましたので、安藤課長からお願いいたします。
○安藤医薬産業振興・医療情報企画課長
ありがとうございます。
長島委員と松本委員から御質問をいただいておりますので、恐縮でございますが、両方まとめて回答させていただきます。
まず、検討会の中でも、まさに足元の物価高騰ですとか、あるいはその為替の影響を踏まえまして、製造原価が高い品目については短期的な対応が必要ではないかという御意見が、先ほども御紹介させていただきましたように出されているのは事実でございますが、長島委員から御質問がありましたように、来年度の改定に向けて、令和5年度改定に向けて検討会において何らかの取りまとめを行うということについては、特に考えてございません。
その上で、お示しさせていただいた、本日も御紹介させていただいた論点でございますけれども、こちらにつきましては、令和5年度、来年度の改定に向けて短期的な対応として何をすべきかという問題意識でまとめたものではなくて、医薬品の迅速導入ですとか、あるいは安定供給を図るという観点から、薬価制度だけではございませんけれども、産業構造や企業のビジネスモデルも含めた幅広い観点からの言わば構造的な課題として、今後検討会で議論していくことが必要な論点としてまとめたものでございます。これらの論点につきましては、先ほども御説明の中でも申し上げましたように、来年の4月に取りまとめを行うべく、今後検討会の中で議論を深めていくことを考えているものでございます。
以上でございます。
○中村部会長
ただいま御回答をいただきましたが、何かコメントはよろしいでしょうか。
松本委員、お願いいたします。
○松本委員
安藤課長からの御説明をありがとうございました。確認を兼ねて、今の御説明を踏まえますと、割と焦点が令和6年度の改定に向かっているという理解をいたしましたけれども、そうしますと、直近のターゲットは令和5年度の改定になりますが、そこに関してはそんなに踏まえる御意見などは出ていないという認識でよかったかどうかの再確認をしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○中村部会長
では、安藤課長、よろしくお願いいたします。
○安藤医薬産業振興・医療情報企画課長
ありがとうございます。
足元のというものでございますと、先ほどから申し上げておりますように、現下の物価高騰、為替影響を踏まえた短期的な対応が必要ではないかという趣旨の御意見は複数人の委員から検討会でも出されているところでございますけれども、基本的には足元への対応ということではそういった意見があったというのが検討会の状況でございます。
○中村部会長
松本委員、よろしいでしょうか。
○松本委員
ありがとうございました。
今の御意見も踏まえまして、基本的には特別な配慮をあまり念頭に置かない形で今後議論を進めていくと理解をさせていただきたいと思います。
別の観点からの質問なのですけれども、薬価差の話なのですが、5ページにある薬価差が実態として経営原資になっており云々という御意見が出たと認識しておりますけれども、一方で、常にこういった診療報酬改定のない年の改定に関しては市場価格との乖離が問題になっておりますが、その辺の2つのものの議論の整理というのですか、何か御意見があったのか、あれば御紹介いただければと思います。
○中村部会長
では、安藤課長、よろしくお願いいたします。
○安藤医薬産業振興・医療情報企画課長
薬価差につきましては、検討会の中でもかなり多岐にわたる御意見が出てございます。特にそもそもとしてなぜ薬価差が生ずるのかというやや本質的なところの意見から出されておりまして、薬価差の中にも、通常およそ商取引を行う以上、必ず生ずるのではないかという御意見も出されております。もう少し具体的に申し上げますと、検討会の中では薬価差が発生する要因について、大きく2つに分類されるのではないかという御意見が出されておりまして、一つは言わば市場原理下の取引から当然に生ずるというものでございます。競合相手の多寡や取引量の多寡、配送コストの地域差というものがあることによって、ある意味、そういった中で商取引が行われる以上、薬価があると必ず薬価差が生ずるというのが一つ。もう一つは、薬価差を得ることを目的とした、言ってみれば過度な値下げ交渉といった市場流通のゆがみにより生じている薬価差もあるのではないかという御意見が出されてございまして、こういったそもそもとして薬価差が生ずる構造的な要因をきちんと整理した上で、その上で薬価改定の在り方について議論すべきではないかといった議論の流れになっているところでございます。
○松本委員
どうもありがとうございました。今日はこれで結構でございます。
○中村部会長
ありがとうございます。
ほかはいかがでしょうか。
では、専門委員の方々、もし何か御意見等がございましたらよろしくお願いいたします。
赤名専門委員、よろしくお願いいたします。
○赤名専門委員
ありがとうございます。
物価高騰、円安の影響につきまして、今日も御議論がありましたので、改めてコメントを簡単にさせていただきたいと思います。
先日、業界意見陳述の中でも考えを述べさせていただきましたけれども、我々が業界内で行った調査によりますと、原材料費の高騰、これによりまして原価が3割以上上昇している品目もあるということで、幅広い領域の薬剤で影響が出ていることが確認されております。特に後発品企業の多くは半数以上の品目、この原薬を海外から調達していることがございますので、為替影響は物価高騰と相まって原薬調達コストをさらに上昇させている状況でございます。原薬を調達してから製造販売に至るまで一定期間がかかりますので、今後この影響はさらに深刻化していく。例えばまだ古い原薬、価格が上がる前の原薬を使っている場合もありますので、それほど顕在化しておりませんが、今後これが深刻化していくことが想定されているということでございます。一方、為替でございますが、企業は今、グローバルの臨床試験がメインとなっている関係で、要は海外で行っている研究開発費、これが円安の影響で非常に膨らんでいるということでございますので、新薬の開発を進めている会社にとっても大きな負担になっているということでございます。
こういったことを考えますと、先般業界の代表から、来年度の改定に関しては、実施の是非も含め慎重にという意見があったところでございます。特に低薬価品でございますと、製造コストの上昇によりまして著しく生産性が悪化していると理解しております。したがいまして、改定実施の有無にかかわらず、先ほど皆さんに御議論いただきましたけれども、このような品目の価格を引き上げる、こういった措置の実施につきましても御検討が必要ではないかと考えております。
また、仮に来年度令和5年度の薬価改定を実施する場合に関しましても、この物価高騰の影響を踏まえて改定率の緩和もしくはイノベーションの推進、安定供給の確保から新薬創出等加算品目、基礎的医薬品、こういったものを例えば改定の対象から除外するなどの措置を検討すべきではないかと考えております。
また、薬価改定は2年に1回が基本ということでございますので、平成28年度の4大臣合意にて、中間年改定は価格乖離の大きな品目について価格改定を行うということからも、そのような品目の薬価の補正を行うものと考えられます。よって、適用するルールでございますけれども、市場実勢価格に基づき行うもの及び実勢価格改定と連動してその影響を補正するものに限定されるべきではないかと考えておりまして、新薬創出等加算の累積額の控除もしくは長期収載品の特例引下げ、Z2、G1、G2などは実施しないことが極めて妥当と考えております。
最後に、11月7日の財政審で毎年改定の完全実施ということで、米国のことが引き合いに出されております。アメリカで国民負担を軽減するために特例的にメディケアという公的保険ですが、この薬価を引き下げる法案を成立させたことが引き合いに出されておりました。皆さん御承知のとおり、米国は全く違う薬価制度でございまして、自由薬価で日本のようなこういった定期的な引下げがなく、むしろ企業が薬価を引き上げていくことが許容されている仕組みのマーケットでございます。単純に国民負担の軽減という文脈のみ切り取って前提が全く異なる国の事例を引き合いに4大臣で合意されました基本方針を超える改定を行うといった主張は、理解しづらいものがあるのではないかと考えております。
私からは以上でございます。
○中村部会長
ありがとうございます。
村井委員、よろしくお願いいたします。
○村井専門委員
ありがとうございます。
私からは、後発品を中心とした安定供給の問題について一言述べさせていただきたいと思います。
先月行われましたIFPW、医薬品卸の国際大会でIQVIAから報告がなされておりまして、この後発品を中心とした医薬品不足の問題は、実はイギリス、フランス、スイスあるいはブラジルなど世界各地で今、起こっていて、この業界の非常に主要な懸念材料となっているという報告がなされたと聞いております。ぜひ中間年の改定の在り方を御検討いただく場合に、この諸不足問題が世界的な問題でもあるという側面も御理解いただきたいと思います。
私からは以上です。
○中村部会長
ありがとうございます。
ほかはよろしいでしょうか。ありがとうございます。
では、御意見、御質問等も出尽くしたようですので、本議題についてはここまでとさせていただきます。
本日は有識者検討会議での御議論を、この中医協の薬価専門部会で共有いただくことになりましたが、今回の薬価専門部会で出た御意見等もぜひ有識者会議で共有していただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
では、本日の議題は以上になります。
次回の日程につきましては、追って事務局より連絡いたしますので、よろしくお願いいたします。
それでは、本日の薬価専門部会はこれにて閉会といたします。どうもありがとうございました。

(了)
<照会先>

厚生労働省保険局医療課企画法令第1係

代表: 03-5253-1111(内線)3288

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