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2020年12月11日 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会 第173回議事録

○日時

令和2年12月11日(金)9:59~11:22
 

 

○場所

TKPイベントホールシルク新宿

○出席者

中村洋部会長 秋山美紀委員 小塩隆士委員 関ふ佐子委員
吉森俊和委員 幸野庄司委員 佐保昌一委員 眞田享委員
松本吉郎委員 今村聡委員 林正純委員 有澤賢二委員
村井泰介専門委員 赤名正臣専門委員 上出厚志専門委員 
<事務局>
濵谷保険局長 井内医療課長 岡田医療技術評価推進室長
山田保険医療企画調査室長 紀平薬剤管理官 小椋歯科医療管理官 他

○議題

○ 関係業界からの意見聴取について

○議事

 


 ○中村部会長
では、ただいまより、第173回「中央社会保険医療協議会 薬価専門部会」を開催いたします。
なお、今回も会議の公開については、前回に引き続き試行的にユーチューブによるライブ配信で行うこととしております。
まず、本日の委員の出欠状況について御報告します。
本日は、全員が御出席です。
それでは、議事に入ります。
まず冒頭、林経済課長から発言がございます。
では、よろしくお願いいたします。
○林経済課長
経済課長でございます。
本日、意見聴取に先立ちまして、医療用医薬品卸の談合事件について一言申し上げたいと思います。
報道されていますとおり、大手の医療用医薬品卸3社とその従業員がJCHOが発注する医薬品の入札をめぐりまして談合を行ったということで、独占禁止法に規定する不当な取引制限の禁止規定に違反したということで、12月9日に公正取引委員会の告発を受けて、東京地検特捜部より起訴されました。
談合は、言うまでもなく、公正かつ自由な競争を通じた価格形成を阻害するものであり、このような事件が大手卸各社により行われたこと、誠に遺憾と感じております。
言うまでもなく、薬価は取引実勢価を薬価調査により把握し、それに基づき改定を行うものでありまして、公正競争環境の下で市場実勢価格が形成されることが制度の大前提と認識しております。薬価制度、ひいては医療保険制度そのものへの信頼を揺るがしかねない事態であり、二度とこうした事態を起こしてはならないと考えております。
事案の詳細については今後司法の場で明らかになると考えていますが、厚生労働省としても医薬品卸業界に対してコンプライアンスの徹底と再発防止策について、業務に携わる従業員一人一人まで浸透するよう、各社はもとより業界を挙げて全力で取り組むよう厳しく指導してまいります。
昨年12月の中医協総会でも御指摘いただいたとおり、各社及び業界における再発防止策、こちらについて厚労省に報告するように言っておりますので、取りまとめ次第、中医協にも御報告したいと思います。
なお、今回の薬価調査については、6月の中医協でもお示ししたとおり、この事件による結果影響を排除する観点から、この被疑3社を含む大手4社とJCHOとの取引分は除外していることを念のため申し上げます。
なお、本日の意見聴取については、日本医薬品卸売業連合会からこの事態を重く厳粛に受け止め、意見陳述は控えさせていただきたいとの申し入れがあったことを併せて御報告いたします。
私からは以上でございます。
○中村部会長
ありがとうございました。
では、続いて関係業界からの意見聴取を行います。
関係団体として、日本製薬団体連合会、米国研究製薬工業協会、欧州製薬団体連合会より意見を聴取します。
関係団体の皆様より御説明をいただき、その後、質疑とフリーディスカッションを行います。
関係団体の皆様は、最初に自己紹介を行った上で御説明をお願いいたします。
では、日本製薬団体連合会手代木会長より、お願いいたします。
○日本製薬団体連合会(手代木)
日薬連の手代木でございます。
本日も、このように2021年度の薬価改定に関する意見として、意見陳述のお時間をいただきましたこと、改めて御礼を申し上げます。
前回、11月の意見陳述と同様に、米国研究製薬工業協会、PhRMA、欧州製薬団体連合会、EFPIAとも意見が一致しておりますので、まず私から3団体連名の資料に基づきまして意見を述させていただいた後で、PhRMAのフェリシアーノ副委員長、EFPIAのプリンツ会長から追加コメントを述べさせていただきます。
なお、その後に、前回、有澤委員から御質問がございましたジェネリック等で起こっておりますことにつきまして、お許しいただければ追加のコメントを申し上げたいと考えているところでございます。
それでは、次をよろしくお願いいたします。
まず、「はじめに」2ページ目でございますが、現在も第3波と言われるこのCOVID-19の感染拡大が非常に大きくなっております。
国内外で新型コロナウイルス感染症に罹患をされ、お亡くなりになられた方々に対して、心よりお悔やみを申し上げますとともに、現在、感染拡大、重症患者の増加している中、医療現場におきまして甚大な影響を受けておられますにも関わらず、医療提供体制の確保のための取組など、改めてこの感染症に立ち向かうため最前線の現場で日々懸命に努力をされておられます全ての医療関係者の皆様に、業界を代表いたしまして心よりの感謝ならびに尊敬の意を申し上げたいと思います。
次、3ページ目をお願いいたします。
これは前回、11月の意見陳述の際に述べた2021年の薬価改定についての私どもの意見でございますが、改めまして強調させていただきたいと思います。
まずもって、4大臣合意の流れがございます。乖離の大きいものについて調整をしていくという基本的な考えの下、それに加えまして2021年度の薬価改定につきましては、本年7月の骨太の方針にございますとおり、新型コロナウイルス感染症による影響を勘案して、十分に御検討賜りたいと考えているところでございます。
令和2年度薬価調査は、販売サイド調査の3分の2の抽出率、全数調査との市場実勢価格における誤差が必然的に生じると我々は思っております。
また、今回の調査は、前回の本協議会で議論されましたとおり、COVID-19の影響によって医薬品取引が平時とは大きく異なると我々は思っており、その状況で実施されたものと認識をしているところでございます。
医療現場におきましては、先ほど申し上げましたように、COVID-19により甚大な影響を受けておられるとともに、状況はむしろ悪くなっていると思っております。医療提供体制の確保のため、本当に皆様、多大なる取組が行われていることを踏まえますと、薬価改定によります医療機関並びに薬局への負担に、これは本当に大きく配慮すべきだと我々は信じております。
このようにCOVID-19対応下という極めて特殊な状況において薬価調査が実施されたこと、並びに医療機関、薬局様への影響を勘案いたしまして、改めましてこの薬価改定につきましては慎重に御検討いただきたいと再度申し上げたいと思います。
次をお願い申し上げます。
こちらは「2021年度の薬価改定の対象範囲について」の私どもの考えでございます。
薬価制度の抜本改革に向けた基本方針におきまして、2年に1回の薬価改定の間の年に、改めて申し上げますが、価格乖離の大きな品目について薬価改定を行うとされていること。イノベーションの推進、医薬品の安定供給の確保という観点に向け、2021年の改定の対象範囲については、COVID-19により甚大な影響を受けている医療機関や薬局への負担軽減や医薬品取引が平時とは大きく異なる中で実施された薬価調査に基づくことを考えれば、薬価と実勢価格の乖離率が全ての既収載品目の平均乖離率よりも著しく大きい品目に限定すべきでございまして、結果として医療機関様、薬局様への影響を最小限にすべきと思っております。
なお、本日薬価収載されました後発医薬品など、令和2年度薬価調査以降に薬価収載された品目につきましては、実勢価格が存在していないことから対象範囲から除外すべきと我々は思っているところでございます。
また、いわゆる年間数名しか処方されないようなウルトラオーファンの適応等の薬剤につきましては、今回調査対象を更に抽出をして実施をしていることから、需要が本当に読みにくいというということで、実勢価格が把握できなかった品目につきましても対象範囲から除外していただきたいと思っております。
次をお願い申し上げます。
最後でございますが、薬価改定の方法につきまして、私どもの考えを述べさせていただきます。
改定方法につきましては、先ほど申し上げました薬価と実勢価格の乖離率が全ての既収載品目の平均乖離率よりも著しく大きい、これについて薬価の補正を行うという観点から、市場実勢価格に基づきルール及び実勢価改定と連動し、その影響を補正するというルールに従っていただきたいと思っております。
以上、簡単ではございますが、私どもの意見を述べさせていただきました。
何とぞ、御検討賜りますようによろしくお願い申し上げます。
それでは、PhRMA、EFPIAより、それぞれ追加のコメントを述べさせていただきます。
○米国研究製薬工業協会(ジェームズ・フェリシアーノ)
PhRMA副委員長のジェームズ・フェリシアーノです。
本日は、意見を述べる機会をいただき、誠にありがとうございます。
PhRMAの意見は、手代木会長の陳述と完全に一致していることを初めに申し上げます。その上で、日本にある米国製薬企業の社長としての私の考えをお話しさせていただきます。
私は日本の製薬業界で15年間、仕事をしてきました。10年前、日本は深刻なドラッグ・ラグ問題を抱えており、患者さんや医療にとって大きな課題となっていました。
それ以来、イノベーション促進政策によってドラッグ・ラグは大幅に解消され、今では日本は新薬が最初に発売される国の一つになりました。
しかし、この数年の間に薬価制度に多くの変更が行われ、透明性、予見性という点から好ましくない影響をもたらしています。日本市場の魅力に陰りが差しており、以前のイノベーション促進政策から日本は大きく後退するのではないかという懸念を世界の製薬産業が持ち始めています。
そうした中、薬価を毎年引き下げる案が検討されています。仮に、日本が新薬を含む幅広い品目を対象に毎年薬価を引き下げる仕組みに移行したとすると、G7の中でそのような仕組みを持つ唯一の国になります。日本はイノベーションを推進する世界的リーダーの座から底辺に向かって滑り落ちることになりかねません。業界と医療関係者が新型コロナウイルスの撲滅に全力を注いでいる最中に、イノベーションを深刻に損なう可能性のある政策を議論しなければならないのは残念なことです。
私たちは日本の医療制度の持続可能性を確保する必要性を理解しており、この議論のパートナーになりたいと考えています。しかし、イノベーションのサポートとコスト削減のバランスはしっかりと両立させる必要があります。
今年行われる決定は、医薬品投資の最優先国の一つとしての日本の地位、患者さんの新薬への早期アクセス、そしてイノベーションを推進する国としての日本の評価に大きな影響を将来にわたって与えるものと考えます。
慎重な議論をいただきますよう、よろしくお願いします。
御清聴ありがとうございました。
 
○欧州製薬団体連合会(ハイケ・プリンツ)
おはようございます。EFPIAジャパン会長のハイケ・プリンツです。
本日は、このような発言の機会を与えてくださいまして、感謝申し上げます。
最初に、新型コロナウイルス感染の第3波とも言われているこの状況において、通常診療に加えて急増する重症患者さんへの対応に取り組まれている医療機関、薬局の皆様方に感謝と敬意を表したいと思います。
本日の論点である2021年度薬価改定につきましては、ただいま日薬連の手代木会長が発言された内容に関しまして、EFPIAも全く同様の考えを持っていることを表明いたします。
ただ、幾つか付言させてください。
既に前回の業界ヒアリングでも申し上げておりますように、私ども全世界に革新的な医薬品を提供しているグローバルな企業といたしまして、革新的な医薬品を日本の患者さんにいち早く届けるためには、まずは本社に日本を優先的位置づけにしてもらうことを認めさせる必要があります。そのためには、日本においてイノベーションが評価されていること、そして高い事業の予見性というものがあることが必須であります。
中間年改定というのは、通常の薬価改定とは異なる位置づけであります。したがいまして、価格の乖離率が著しく大きい品目について薬価の補正がされるものと認識しております。
その上で、この2021年度改定につきましては、どうしても新型コロナウイルス感染症による影響を勘案しなければならないと考えております。
そして、万が一にも、中間年改定が乖離率の大小にかかわらず実施されるということが起こりますと、当然、私どもの本社の日本に対する認識というものは変わっていき、日本の予見性はどんどん低くなってくる。その結果、日本市場の優先度を下げざるを得ないという状況になってまいります。そうしたことが決して起こってはならないと思います。
だからこそ、日本の患者さんが今のように革新的な治療を速やかに受け取ることができなくなっている。そうした状況を避けるためにも、ぜひとも慎重な検討をお願いしたく存じます。
以上です。
○中村部会長
ありがとうございました。
○日本製薬団体連合会(手代木)
恐れ入ります。部会長、一言だけ、ジェネリック協会様からのコメントを述べさせていただいてもよろしいでしょうか。
○中村部会長
どうぞ。
○日本製薬団体連合会(手代木)
前回の薬価専門部会におきまして、有澤委員より御意見がございました件につきまして、日本ジェネリック製薬協会会長よりコメントを預かっておりますので、申し述べさせていただきたいと思います。
日本ジェネリック製薬協会加盟会社が、イトラコナゾール錠の製造過程で通常の臨床使用量を大きく超える睡眠導入剤の誤って混入するという事態が発生し、当該製品を服用された患者様には重篤な健康被害が発現したという報告もございます。
患者様、医療機関様、保険薬局様、流通関係者様、そして行政当局の皆様方に多大な御迷惑をおかけしていることを深くおわびを申し上げるということでございます。
当該会社は、服用されている全ての患者様の安全確認を最優先に対応しているところでございます。日本ジェネリック製薬協会としては、この事案を協会全体に関わる問題と重く受け止めた上で、加盟各社に対しまして再度コンプライアンス遵守の徹底を行い、患者様をはじめ関係者の皆様方の信頼回復に努めてまいるというコメントでございます。
日薬連といたしましても、これはジェネリック協会にとどまる問題ではなく、医薬品全体に関わる問題だと重く受け止めているところでございます。
私どもといたしましても、国民の皆様方に多大なる御迷惑と御心配をおかけしておりますことを、改めましてお詫び申し上げますとともに、これはジェネリック、あるいは一企業の事案ではなく、業界全体として、製造管理、品質管理を徹底する機会と認識しているところでございます。
医薬品の安定供給に支障を来す事例が、最近、散見していることも含めまして、関係当局の御指導の下、各社にガバナンス、コンプライアンスの徹底を強く求めてまいりたいと思います。
このたびは大変申し訳ございませんでした。
以上でございます。
○中村部会長
ありがとうございました。
では、2021年度薬価改定について、これから質疑及びフリーディスカッションのほうに移りたいと思います。
質問は日本語でお願いできたらと思います。
では、松本委員、よろしくお願いします。
○松本委員
業界からの御意見、ありがとうございました。
抜本改革の基本方針や骨太の方針においては、国民負担の軽減と医療の質の向上を両立させることが求められております。
しかし、このコロナ禍において行う中間年改定で、薬価改定の対象範囲を拡大した場合に、企業としては日本の医療の質にどのような影響が及ぼされるとお考えでしょうか。
もう一度、改めてお聞きしたいと思います。
○中村部会長
では、こちらは手代木会長からよろしくお願いします。
○日本製薬団体連合会(手代木)
ありがとうございます。
追加の発言を改めまして、PhRMA、EFPIAの代表者からもいただきたいと思いますが、私どもといたしましては、確かに国民負担の軽減というのは大きなテーマだと思っておりますが、この両団体も申し上げましたように、私どもといたしましてもイノベーションの推進、安定的なビジネスを行っていくための予見性の向上といったものに非常に大きな影響が出る可能性があると、これらの業界団体全体として固く信じているところでございます。
2年に1回の改定のほうは、私どももこれは組み込まれているということで、これについては一定の理解はできると思っておりますが、この中間年改定がさらにそれを踏み込むということになりますと、私どもとしては医薬品の研究並びに開発を含め、非常に大きな影響が出て、最終的にはイノベーションに対する患者様のアクセス、医療関係者の皆様に最新のものをお届けできる可能性が少し減じられるというマイナスが出てくると固く信じております。
何か追加があれば、どうぞ。
○米国研究製薬工業協会(ジェームズ・フェリシアーノ)
このような機会を与えていただいて誠にありがとうございます。
まず、申し上げたいことがございます。それは、4大臣合意の重要性でございます。
このような4大臣合意がございましたので、それを基にいたしまして私たちは経済的モデルをつくり、そして将来のビジネスを予見してまいりました。
もし、そのような中間年改定が行われることになりますと、これは4大臣合意を全く捨ててしまうことにもなりかねません。
これまで私どもは、日本のビジネスを本社に説明するときには、この4大臣合意に基づいて予見をしているということを申し上げてまいりました。ですので、これが基本的なプランとなっていろいろなビジネスの予測がされてきたわけでございます。
ところが、これが全くなしになってしまうということになりますと、予測をすることができない。つまり、環境的に私たちは非常に難しい状況に置かれてしまいます。透明性もなくなってしまうのではないか。ルールもなくなってしまうのではないかということで、私どもは日本の環境を信頼できなくなってしまうおそれが出てきていると考えます。
○欧州製薬団体連合会(ハイケ・プリンツ)
EFPIAからも一言申し上げます。
一番大事なことは医療費といった面での国民の負担を軽減するだけではなくて、その一方でイノベーションというものを維持していく。そして、そうしたものを維持していくことの適切なバランスを取ることであります。
特に今、コロナ禍にあって国民はいかにイノベーションというものが人々の命を救うに当たって大切であるのかということを身にしみて感じているのだと思います。
1年もたたないうちに市場にワクチンが出てくるような状況というのは、本当に考えられなかったことであります。これは取りも直さず、製薬産業のほうが莫大な投資を続けてこうした研究開発を進めてきたことによるものです。
しかしながら、最近の様々な議論を見るに当たりましても、このバランスが非常に傾いてきているのではないか。すなわち、コストをカットするところに傾いてしまって、そして非常に重要なイノベーションといったところが見失われているのではないかという気がいたします。これは、患者さんにとって決してありがたいことではないと思います。
○中村部会長
よろしいでしょうか。
では、松本委員、お願いします。
○松本委員
ありがとうございました。
業界からの御意見、非常に参考になりました。
2021年度薬価改定の目的は、国民負担の軽減と医療の質の向上を実現する点にはありますけれども、国民負担の軽減に傾き過ぎると医療の質の向上を実現させることは難しいという御意見と受け止めました。
私は、水曜日に開催された薬価専門部会でも申し上げましたけれども、今回の薬剤費の削減総額は、前回の中間年改定と比較しても大きくなると見込まれており、その影響を医療機関、薬局、卸、製薬企業でこれを全て受け止めることになります。
これは現在、新型コロナウイルス感染症への対応や感染拡大防止に必死に最大限取り組んでおります医療界全体にとって、さらなる大きな、本当に大きな痛手となります。
現在、既に重症者の非常に急激な増加によって、通常の医療、つまりコロナウイルス感染症の患者さん以外の患者さんにも影響を来すような状況になっております。
国民の命と健康を守ってまいりました医療提供体制が崩壊しつつあるこの状況において、この2021年度の薬価改定は対象品目を最小限に絞り込むことや、改定による引下げ幅を通常より小さくするなど、医療現場全体への影響が最小限になるような配慮をすべきと考えます。
そして、中医協として医療機関に対する支援を早急に検討していただくよう、重ねて強く要請いたします。
以上です。
○中村部会長
ありがとうございました。
ほかに、御意見、御質問等はよろしいでしょうか。
では、有澤委員、お願いします。
○有澤委員
ありがとうございます。
業界からの意見陳述をありがとうございます。
今回、2021年度の中間改定とその後の中間改定の話も間に挟まっているような気もします。
1つは、2021年度の日薬連さんからの意見陳述に関しては、まさにおおむね賛同できるものでありますし、ぜひこのCOVID-19の影響を十分に考慮して、極めて対象品目を絞った形の改定を実施するのであれば、やっていただきたいと私も思うところでございます。
一方でこの先、医薬品の開発は莫大な投資と年月をかけて開発研究を行っていく。真の、有用性のある、価値のある医薬品をつくる上で、このように毎年薬価改定が行われるということで、最終的にはメーカーさんとして、製薬会社として、どういうふうな構図、あるいは絵を描いているのかをお聞かせいただきたいと思います。
○中村部会長
では、手代木会長からお願いいたします。
○日本製薬団体連合会(手代木)
御質問ありがとうございます。
松本先生からの御質問と、そういう意味では私どもの考え方はほぼ一緒だと思いますが、どういう範囲で、どういうやり方でということは、まだ少なくとも2023年以降のお話についてはテーブルには乗っていないという認識ではございます。先ほど私ども3団体の同じ意見として申し上げましたが、やはり国民負担の軽減と、本当にいい意味での医療、そしてイノベーションの推進、これらの両立をどういう形で維持しながら、この国の、日本における最高の医療体制と言われる国民皆保険を守っていくのかという点の議論を全般的にさせていただくところから、次回以降の隔年改定については議論をさせていただきたいと思っております。
その中でも、今回はこのCOVID-19の非常に大きな医療現場におけます御負担を考えますと、さらに特別な御配慮が必要であり、これは骨太の方針にも書いていただいていますので、そのとおりになるとは思いますけれども、隔年の部分につきましてもどうやってイノベーションと医療現場にさらにいい医療をお届けできるのかということと、国民の軽減負担とのバランスをもう少しファンダメンタルに議論をさせていただくところかなと思っております。
今のような我々の主張によりますと、どちらかというと国民負担の軽減にかなり重きを置いた議論に終始いたしますと、どうしても結論といたしましてはより低いR&Dのコストでありますとか、グローバルに考えたときの日本のDecentralizationというのが起こってしまうと考えているところでございます。
○中村部会長
では、PhRMAのフェリシアーノ副委員長、あるいはEFPIAのプリンツ会長、いかがでしょうか。
○欧州製薬団体連合会(ハイケ・プリンツ)
全く手代木会長のおっしゃったとおりでございまして、医薬品の開発というのは本当に長い年月と膨大な投資を必要とするものであります。
このことはすなわち、安定した、また予見性のある環境が医薬品業界にとって必要だということになります。
前回も申し上げたと思います。実に2016年以来、日本におきましては薬価制度上のルールが50以上も変更されてきているのであります。こうなりますと、製薬産業が必要としているところの予見性というものには決してつながらないわけであります。
日本という国は世界におきましても優れた医薬品、そしてサイエンスの発祥の地として高く評価されているわけであります。しかしながら、これだけコストカットに偏った方針になりますと、このような地位を日本は失ってしまうというリスクがあるのではないかと思います。
世界の様々な国におきましては、日本におけるすばらしいこの医療制度を高く称賛している国々がたくさんあるわけであります。
しかしながら、そうした日本における高い医療の質というものが損なわれていく。そうしたリスクがあるのではないでしょうか。
○中村部会長
では、PhRMAのフェリシアーノ副委員長、いかがでしょうか。
○米国研究製薬工業協会(ジェームズ・フェリシアーノ)
私、この日本市場での経験が15年となります。その間、ドラッグ・ラグも実際に目の当たりにして経験をしてまいりました。
その非常に厳しい中で、本社に対しましては日本にもっと投資をするように呼び掛けてまいりました。
また、その一方で厚生労働省の皆様、そして機構の皆様方、特に近藤先生などが並々ならぬ努力をなさいまして、このようなドラッグ・ラグが解消されてまいりました。
ところが今、どうなっているのかを見ていただきたいと思います。このような状況では、もう私は本国に対して日本は魅力的だからもっと投資をしてくださいと言っても、なかなか本国を積極的に動かすことはできません。このような形では日本に対して投資をしたいという意欲が本国において失われてしまいます。
現時点で、私どもにとってどこが一番大きな競争相手かと言いますと、ほかの製薬会社様ではございません。実は中国のAbbVieなのです。中国のAbbVieでは今、臨床試験を積極的に呼び込んでおりますし、またR&D、投資を非常に優遇するような政策がなされております。中国のAbbVie社長が中国の市場は魅力的だとどんどん訴えておりますので、本国としてはそんなに中国のほうが魅力的なのかとなってしまいます。
よって、現在の私の最大の競争相手は中国のAbbVieであると言わざるを得ません。これが現実なのです。ぜひ、これを皆さんに御理解いただきたいと思います。
なぜこのようになってしまったかと言いますと、これはルールが大きく変わってしまったからなのです。4大臣合意というものがあった。それに基づいて、これまでいろいろとよい方向に動いてきたのに、ところが目の前でそのような合意が単なる紙切れになろうとしている。もちろん、バランスが重要だということは変わりがございません。そして、国民の負担軽減も必要だということは理解しておりますが、ただ、そのバランスのもう片方にございます医療に対しましてのいろいろな投資を呼び込むような環境とか、非常に質の高い医療に資するような環境づくりがなければ、またドラッグ・ラグの再発にもなりかねません。
○中村部会長
ありがとうございます。
では、有澤委員、お願いします。
○有澤委員
ありがとうございます。大変、参考になる意見でした。
私も現場で薬剤師として仕事をしている中で、ここ10年ぐらいを振り返れば、確かに画期的な新薬なり、ドラッグ・ラグというのが解消されているのは実感しています。
一方で、患者さんへの負担軽減であったり、国民皆保険制度の持続性といったことを考える意味では、やはり薬価の実勢価格に基づく改定は仕方がない部分もあると思っています。
ただ、今おっしゃったように、ドラッグ・ラグが再び来る、あるいは日本の市場に画期的な新薬が投入されなくなることを考えれば、大変難しい問題ではありますけれども、この中医協の場でしっかりとそのバランスが取れるようなルールづくりなりしていく必要があると考えます。
ありがとうございました。
○中村部会長
では、今村委員、お願いします。
○今村委員
ありがとうございます。
私からは1つの質問と1つの意見を言わせていただきたいと思います。
本日、残念ながら卸売業連合会がヒアリングに御参加をされないということですけれども、前回の11月の中医協で、卸会社の経営状況がコロナ禍でどのようになっているかというデータが示されたと思います。村井専門委員に伺いたいのは、会社の規模とかではなくて、マクロ的に計算された経営状況だったと理解をしているのですけれども、地方で今、非常に医療提供が困難になっているような、地方で卸をやっておられる中小の事業者さん、今回、こういった中間改定を非常に幅広く多くの品目に行ったときの経済的な影響というのは前回で示されたようですけれども、それについてそういった中小の卸に対する影響というのはどの程度なのか。
もしそういうところが事業を継続できなくなるようなことになれば、本当に地方の医療機関に薬剤を提供することがなくなってしまうのではないかと大変危惧をしておりますけれども、まずその点をお答えいただければと思います。
○中村部会長
では、村井委員、お願いします。
○村井専門委員
ありがとうございます。
前回も御説明いたしましたとおり、医薬品卸各社の売上げの減少の度合いと申しますか、これはコロナ等の影響がありましてほぼ同じような形で減少してきております。
我々のビジネスで、この間、御説明いたしましたように、売上げの減少に伴う利益の減少がありますから、本来であればコストを下げてバランスを取りたいというのが経営している人間としては考えるところなのでございますが、御存じのように我々は労働集約型の産業でございまして、コストの4分の3とか3分の2は人件費。ただ、これを他産業のように、例えば休業してそこを減らすとか、そういう体制は取れません。止めるわけにはいきませんので、在宅の勤務をさせたり、自宅待機させている場合でも人件費は払い続ける。そういう体制を今も取っております。
その中で、またさらに去年の10月の薬価改定、4月の薬価改定、また2021年の4月と連続で薬価改定を行い、さらに売上げも落ちということになりますと、まさしく厳しい状況に陥っていくと思います。
特に、地方は人口も散らばっている、医療機関も散らばっている関係で、どうしても生産性が大都市に比べて低くなっております。低いところほど、実はそういう売上げの減少、あるいはコストが高まることによる利益の大幅な減少を受けやすい状況になっておりますので、我々としては何とかそういう事態が発生しないように、とにかく頑張ると言うしかない状況に今ございます。
○今村委員
ありがとうございました。大変、参考になりました。
それから意見を言わせていただきます。
多くの委員の方から御指摘があるように、今回の改定に当たっては「基本方針2020」で、「新型コロナウイルス感染症による影響も勘案し」という記載があるわけですけれども、具体的にどういう勘案をしているのかというのは全く議論されていませんし、恐らくそんなに遠くないときにこの改定の中身が決まってしまうのだと思いますけれども、その勘案とは一体何なのか。
これは皮肉なことに、昨日が東京都は最も感染者数が多かった。まさに、感染拡大がどのようになるか全く見えない状況。これからどんどん収束の方向ではなくて、拡大の方向になっていく可能性も現にあるわけです。
北海道の旭川では、自衛隊が職員を派遣する。まさしくこれは、感染症というより災害という状況になっている中で、どのように勘案するのかということがないままに改定率が決まったりすることは非常に問題だと思っています。
こういった今までの日本のよい医療の提供体制というものが、今回のコロナで傷んでいる状況の上に、この中間改定を行うことによって大きく毀損するのではないか、その端緒になるのではないかと私は大変、危惧をしております。
そういったことも考えていただいて、改定については極めて限定的に行われるべきだということを改めて申し上げたいと思います。
以上です。
○中村部会長
ありがとうございます。
では、林委員、お願いします。
○林委員
ありがとうございます。
歯科医師会の林でございます。
業界各位におかれましては、詳細な意見陳述ありがとうございました。
歯科におきましても、新型コロナ感染症拡大下におきましては、引き続き対応を最大限努力しておるところでございます。
中間年薬価改定の議論に関しましては、2号側の委員と意見は全く同じでございます。
新型コロナ感染症の対応によりまして、医療機関や薬局と、それから卸との価格交渉の遅延等を含め、平時とは大きく異なる状況で、正確な価格調整とは言えなく、市場実態調査の結果が正確性に欠くとの説明をいただきました。
医療現場のみならず、卸もかなりの打撃を受けているとのことで、現状の医療現場の多大な負担や、医薬品安定供給への対応、努力を鑑みれば、今回の中間年の薬価改定は困難な状況であることは明確でございます。
慎重な対応を引き続きお願いしたく思います。
実施する場合におきましては、薬価調査の結果の精度と乖離率を鑑みまして、極めて限定的な対応をお願いしたく思ってございます。
よろしくお願いいたします。
以上でございます。
○中村部会長
林委員、どうもありがとうございました。
では、ほかはいかがでしょうか。
幸野委員、お願いします。
○幸野委員
ありがとうございます。
前回と同じような質問になろうかと思いますが、前回の12月9日の薬価専門部会で我々が要求した詳細なシミュレーションが出てきましたので、これを基にまた団体の意見を聞きたいと思います。
12月9日に業界団体さんが主張される率で切った場合に、どういう品目が該当するかというのを知りたいのでこれを出していただきました。平均乖離率の1倍、すなわち8%で切った場合、医薬品全体で1万7400品目あるうちの約5割の8,700品目が薬価改定に該当するというデータが出てきました。逆に言えば、半分は乖離があるにもかかわらず、薬価が維持されるというデータが出ているということです。
内訳を見てみますと、8,700品目のうち新薬が2.7%、長期収載品が6.3%、後発医薬品が37.5%と、かなり後発医薬品に偏った改定がなされることがあります。
まず、見解としてお伺いしたいのは、仮に1倍超以上、いわゆる8%以上を乖離率が大きいと見た場合に、半分の医薬品が実勢価格が維持されることになります。
このことについてですが、この薬価改定の大きな目的は国民の負担軽減にあります。資料の4ページの中でも強調して、医療機関や薬局が厳しいので、その負担軽減のためと言われているのですが、厳しいのは医療機関や薬局だけではなくて、今、日本全体の企業がリーマンショックを超える大変厳しい状況にあって、雇用状況も非常に悪くなってきています。
それから、皆保険制度。これから少子高齢化によってますます厳しくなるのですが、このコロナ禍によってそれが前倒しに訪れている状況がある。
そういったことを勘案した中で、今まで国民皆保険の一プレーヤーとして貢献されてきた製薬団体の方が国民負担軽減をこういった状況の中でどう考えておられるのかということを、まずお聞きしたいと思います。
1つは、仮に8%で切ったとしたら半分の薬価が維持されるということが本当に国民の負担軽減になるのか、見解をお聞きしたいということと、あまりにもカテゴリによって差があり過ぎていて、新薬はほとんど薬価が維持されて、後発医薬品に偏っています。これが中間改定の在り方として、本当に製薬団体として適切な改定と思われているのか。その辺についてお聞きしたいと思います。
それから、先ほどの陳述で、毎年薬価改定でイノベーションが阻害されるとおっしゃったのですが、新薬創出加算でイノベーションは評価されているため、このイノベーションの評価と毎年薬価改定がどう関連するのかについては、私は理解しがたいところがあります。新薬創出加算の場合は薬価と実勢価格の乖離率が大きくても維持されるわけで、それはそれでイノベーションは評価されていると思うので、その辺のお考えをお聞きしたいと思います。
3つ目は、新薬創出加算の累積額控除の時期について、我々は改定のたびにやるべきという主張をしています。本改定のときだけ控除して、中間改定のときだけ実施しないということは、後発品が上市されたり薬価収載から15年が経過したりしても、直後で控除されるものと2年間そのまま放置されるものが出てくるわけなので、これはあまりにも公平性に欠けるのではないかと思います。
中間年改定でも累積額を控除するというルールをつくれば、公平性も予見性も担保できるし、国民にとっての負担軽減にもなるので、これはちゃんとルール化すべきだと思うのですが、その辺についてのお考えをお聞きしたいと思います。
それから、PhRMAのジェームズ・フェリシアーノさんから伺った、日本の市場は魅力的ではなくなる。中国のほうにシフトするという意見があったのですが、日本の皆保険制度についてどうお考えなのかということをお聞きしたいと思います。
日本の皆保険制度は世界に類を見ない非常に優れたものであって、これは公的保険で皆さんが医療を受けられるという制度です。それを今、非常に厳しい状態の中で何とか未来にわたって維持していかなければならないということで、みんなが痛みを分かち合おうということでやられているのですが、日本は魅力がなくなって中国にどんどんシフトしていくということについて、少し違うのではないかなと思いますので、皆保険制度についてどうお考えなのかということについても、お伺いしたいと思います。
以上、ちょっと幾つかあります。
○中村部会長
では、手代木会長、よろしくお願いします。
○日本製薬団体連合会(手代木)
ありがとうございます。
私が1番目、2番目、3番目につきましては概略を述べました後で、薬価専門委員のほうから少しデータに基づいた部分につきまして補足があればさせていただこうと考えます。
まず1番目、製薬業界全体として、国民の負担軽減についていかように考えるのかという御質問でございますが、今まで何回かこの場でもお話を申し上げておりますとおりに、私ども2年に1回の薬価改定に加えまして、例えば拡大再算定のルールでありますとか、そういったルールが導入されることで、マクロベースではございますが、過去数年間、社会保険のセービングの中の70%から80%ぐらいは私ども製薬業界、薬価に依存したセービングを御提供申し上げてきていると思っております。
全体の枠の中の7割、8割を薬から拠出するのが不十分なのかどうかというのは、また御意見がおありになられるかとは思いますが、私どもとすると、2年に1回の薬価改定の中で、国民の負担軽減については私どもなりに今までも貢献をさせていただいていると認識をしているところでございます。
今回のCOVID-19で多くの企業様、多くの個人の方々がファイナンシャルにも非常に苦しい状況だというのは十分理解はできるとしても、医療関係者の方々がそういった方々をお救いになられるためにどれだけヒロイックな御努力を続けていただいているかを考えましたときに、全体のマクロ論として今回はCOVID-19をどのように乗り越えるのかということ。したがいまして、私どもも含めて医療関係に対する影響が極めて小さくなるように努力をするというのが、私どもの問題だと思います。
加えまして、これは負担軽減のみではございませんが、何回も申し上げておりますように、先ほど有澤委員から御質問のあった品質上の問題がないわけではございませんし、供給上の問題がないわけではございませんが、大部分の製薬産業はこういった状況下でも生産活動並びに研究開発活動を継続し、そういった意味での国民の医療の質の向上に貢献をさせていただいているという自負もございます。
そういったことを総合的に勘案いたしました場合に、私どもがいたずらに国民の負担軽減を軽視しているというような状況ではないと私どもは思っているところでございます。
2番目、イノベーションと新薬創出等加算との関係でございますが、私どもはいわゆる流通改善におきまして、単品単価の中で医薬品の価値に基づいた価格形成を、私どもメーカーから卸様、卸様から医療関係ということで、議論をした上で価格形成がなされていると考えております。
その中において、例えばおっしゃいましたように平均乖離率で線を引いたときに、そこの中の品目はそういう努力も繰り返した上で、流通改善も繰り返した上で、その数字が出ていることから考えますと、私どもとすると、以前も申し上げましたように、額ということになってしまいますと、そうやって一生懸命努力をして行ってきたこともある意味で御評価いただけないことになって、流通にも非常に大きなマイナスの影響が出るだろうと思っております。
累積の控除につきましては、以前と全く同じことを申し上げて申し訳ございませんが、この中間年の改定は価格乖離が大きな品目について市場実勢価格を適時に薬価に反映するということが目的でございますので、新薬創出等加算の累積額の控除につきましては、市場実勢価格から追加的に引き下げるという実勢価格と連動しない算定ルールでございますので、中間年改定で行う目的とは合致をしていないと私どもは思っているところでございます。
○中村部会長
では、赤名専門委員、お願いします。
○赤名専門委員
補足をデータに基づいてさせていただきます。今、幸野委員から平均乖離率で切った場合に半分は維持されるということでございますけれども、品目数は確かに半分で約5割となっておりますが、ここに書いてあります影響額を見てまいりますと、全品を対象とした場合で4700億円、平均乖離率の1倍を対象とした場合には3600億円ということで、財源ベースで言いますと75%強、4分の3以上の影響があるとデータ上はなっております。 つまり、財源で申しますと、約半分というところの線を引くと、1倍よりもかなり右に寄っていまして、1.5倍ですと45%、1.2倍ですと64%ということでございます。平均乖離率で切ると、確かに品目数は半分でございますが、財源という面では4分の3以上の影響があるとデータでは示されております。
以上です、補足させていただきました。
○中村部会長
では、PhRMAのフェリシアーノ副委員長、お願いします。
○米国研究製薬工業協会(ジェームズ・フェリシアーノ)
御質問ありがとうございます。
まず、最初に申し上げたいことがございます。
私は、日本の市場は本当に世界でも最も優れた市場であると思っております。そして、それを常にいろいろな方に伝えております。
ですので、世界の国々は日本をモデルとして発展すべきである、開発すべきであるとまで言っております。私自身、このすばらしい市場を本当に尊敬しておりますし、私の息子は日本人としてこのすばらしい市場の恩恵を享受しております。
そして、もしこのような毎年の薬価改定が行われ、どんどん薬価が下がるということになってしまいますと、そのような仕組みを持つのはG7の国の中でも唯一日本だけということになってしまいます。つまりアウトライヤーと言われております外れ値となり、全くほかの国とは違う仕組みを持つ国になってしまいます。そういったことを私は非常に恐れております。
また、現在の日本の環境を見ましても、例えば臨床開発をする、R&Dをするということになりますと、初期のところで非常に大きなコストがかかります。臨床試験も、フェース1、フェース2、フェース3と進んでまいりますけれども、特に初期のところで非常に大きなコストがかかる、投資がかかるにもかかわらず、このような努力をしても全ての薬剤の開発が成功するわけではございません。
このように、非常に成功確率が低い中に多大なる投資を初期にしなければならない。そして、このような非常に難しいハードルをくぐり抜けて、最終的に承認に至ったとしても、その後、例えば承認5年後、薬価のルールがどうなるのか全く分からないという状況になってしまいますと、また患者様へのアクセスがどうなるのかということが予見できないということになってしまいますと、先ほども申し上げましたように、もし私が本国にいればそのような予見ができない国というのはプライオリティーを低くせざるを得ないと判断をしてしまうことになってしまいます。
こういった状況になりますと、もしかしたら日本は消えてなくなるのではとさえ思ってしまいます。もちろん、そんなことはないとは思いますけれども、ただ本国の目から見ても、投資その他いろいろな面においての日本のプライオリティーがかなり下がることは間違いないと思います。
○中村部会長
では、EFPIAジャパンのプリンツ会長もいかがですか。
○欧州製薬団体連合会(ハイケ・プリンツ)
一言、手代木会長がおっしゃったことに付言させていただきますけれども、製薬産業界というのは国民の医療費負担を軽減するための貢献というのは、既に大きな貢献をしていると思います。
私どもは医療制度の中において、重要なステークホルダーであるという立場を受け入れているわけでありますけれども、当然それは責任も同じでありまして、この皆保険制度の持続可能性ということに貢献していかなければならないということは認識いたしております。
ここ数年続いてまいりました薬価改定によりまして、そういった意味で国民の医療費に対する貢献をしてきたと私どもは考えております。加えて、このコロナ禍におきまして、よくお分かりいただけているのではないかと思いますけれども、私どもはその投資を続けております。
そして、新薬を開発して、既存薬の適応症をまたさらに開発していくリパーパシングをやって、そしてその上にワクチンの開発をやってくる。これも大きな貢献だと考えております。
○中村部会長
幸野委員、よろしいでしょうか。
では、幸野委員、お願いします。
○幸野委員
貢献されているというのは分かりますが、毎年薬価改定を行っても、ここ数年でやはり8%ぐらいの乖離率は毎年出てきているわけで、2年に1回やっても8%、1年に1回やっても8%出ているわけで、やはり毎年市場実勢価格に合わせて引き下げても、さらにその翌年度には乖離が出ている。おそらく、その中には企業の利益も含まれていると思うので、そういう意味で毎年薬価改定を行っても企業の利益はちゃんと確保されるのではないかということで申し上げたわけです。
それについてはいかがですか。
○中村部会長
では、これは手代木会長。
○日本製薬団体連合会(手代木)
幸野委員のおっしゃることは御意見としては承りますが、私どもの主張につきましては、先ほど来申し上げましたとおり、そういった私どもの研究開発に対する負担も含めてイノベーションと国民負担、それから、医療現場の皆様方の種々のお取組みを維持していただくためのいろいろなシステム上の困難さ、そういったことをトータルで考えたときに、ここはバランスの問題ではないかと申し上げているつもりでございます。
企業がある意味でずっと拠出をしながら、そこはそれで国民負担の軽減努力をしなさいと、御意見としては承りますが、それでは事業自体が成り立たない。患者様にいいものをお届けするということに、長い目で見ると大きな影響が出ることを業界団体全体として申し上げているつもりでございます。
以上でございます。
○中村部会長
PhRMA、またはEFPIAの方、何か追加コメントはございますでしょうか。
では、今村委員、お願いします。
○今村委員
ありがとうございます。
先ほど、幸野委員からこのコロナの影響というのは全ての事業者、日本国民全てにかかっている。そういう中で、国民負担の軽減とおっしゃっているのは、保険料だとか医療費だとか、医療に関わる部分の国民の負担ということをおっしゃっているのだろうと思うのですけれども、そもそもこれだけ経済活動が落ちて多くの国民の収入が減ったり、非常に厳しい環境になっているというのは、まさしくコロナの感染の大流行といったものの不安もありますし、実態的にも企業活動が低下するという、もともとの大本はコロナがあるわけです。
ですから、そのコロナをいかに早くコントロールするか。あるいはコロナ以外のきちんとした医療提供体制も守っていくのかというのが、最も国民にとって必要な負担軽減だと。単に一部のお金を減らすというお話ではなくて、いかに早急にコロナに対して国を挙げて対応していくのかが大事だと私は思っています。
今、国民は、自分がかかる医療の中のお薬代が少し安くなることよりも、やはり安心して医療が受けられるという体制、これはコロナもそうですし、コロナ以外の疾病もそうですけれども、そういうことを望んでおられるのではないかなと私は思っています。
一刻も早くこのコロナを終息していくということが重要ですし、不幸にしてコロナにかかった方、あるいは濃厚接触者になった方たちに対してきちんとした医療が提供されることが重要だと思っています。そのためにも、やはり医療機関をある程度守っていただくことは重要な要素だと思っているわけです。
先ほどプリンツさんからワクチンのお話がありましたけれども、例えば本当に安全で有効性のあるものであれば、これは物すごく大きな国民にとっての福音になりますし、経済活動もよくなるし、国民の収入もまたきちんと確保されるということにつながっていくわけですから、お薬の話であるとか医療提供体制の話というのは、本当に今のこのコロナの厳しい状況の中で、幸野さんがいつも主張されているように、粛々とやっていくというお話では私は全くないのではないかなということを改めて申し上げたいと思います。
○中村部会長
ほかはいかがでしょうか。
では、吉森委員、お願いします。
○吉森委員
ありがとうございます。
業界団体の皆さん、2号側の委員の皆さんからは、今回、骨太方針2020に書かれている「新型コロナウイルス感染症の影響も勘案して」にのっとって今回の改定は慎重にという御意見です。コロナ下の臨床現場の相当な混乱も含めて起きている事象を考えれば、理解できるものとは考えておりますが、一方で、今回の薬価改定において最も重要視すべき客観データである薬価調査の結果を踏まえれば、新型コロナウイルスが最終的に薬価に与えた影響というのはこの外形的なデータを見る限り限定的であると考えられます。
もしそうならば、薬価制度の抜本改革、骨子で示されている対象品目の範囲については、先ほどちょっと触れられていましたが、国民負担の軽減の観点で、これからできる限り広くすることが適当という方針にのっとって具体的な方策を考えていくというのが本来のあるべき姿だと考えております。その上で今回コロナの影響をしっかりと勘案して考えるべきだということでありますが、先ほど来の業界の皆さんの発言の中では、定性的な影響についていろいろ総論的にお話を伺いましたが、具体的な、定量的なエビデンスを使ってどういう影響があったというような御説明がなかったかに思います。
我々保険者としては、平時の中間年改定の在り方については、国民負担の軽減の観点での基本的な考え方の下で、乖離の率のみならず額にも注目した方法がないのか、先ほど前回のものでお示しされていますが、先発、後発の品目のばらつき等々を考えれば、別々の基準を設けるなど、丁寧にきめ細かい対応の方針を医療品の特性に応じてルールを検討することが必要だと申し上げてまいりました。その上で、繰り返しになりますが、今回、中間年改定をコロナ禍の環境をしっかりと踏まえて特別的に対応する、それは理解すると主張してまいりました。
そういう意味では、全体的な話というのはもう誰も否定するわけではなく、今のコロナの状況というのはよく理解できている話なのですが、この薬価改定について具体的かつエビデンスベースでどう考えるかという議論をしないといけないと思っています。
建設的な御意見を含めて、エビデンスベースでのこの御提示、意見陳述がなかなかなく、まとめて率で対象範囲はなるべく狭くという主張をされております。
そういう状況では、我々中医協としても、国民を含めた全ての関係者の皆さんが納得できるようなプランを検討することはなかなか困難であり、一方、残された時間も限りがございます。そういう意味では財政審の建議などで全品改定だなどということも示されております。前回資料では乖離率の1倍以上のシミュレーションが出されており、限りなく全品に近い形でというのが欄外に4,700と出ていましたが、そうではなくて、段階的にもう少しきちんとシミュレーションしていただいて、今できることが何なのか、どこでどうするのかという辺りを議論するというのが正解ではないかなと考えております。
そこで、業界の皆さんに御質問ですが、今申し上げたように、コロナの影響を定量的エビデンスベースでどうお捉えになっているのか。もし、捉えておられるのであれば、お聞かせ願いたいというのが1つ。
従来からおっしゃっています、4ページなどもある「イノベーションの推進及び医薬品の安定供給の確保」、これはそのとおりだと思いますが、そういうことを踏まえて、メーカーさんとして薬価と実勢価がこれだけ乖離するということについてどうお考えなのか。実際、乖離してしまっているわけなので、それについて安定供給、イノベーションについて、ではどういうふうに考えてやるのか。それは、イノベーションについてあまり関係のない品目なのかというのがちょっと分からないので、その辺のお考えがもしあればお聞かせ願えればと思います。
○中村部会長
ありがとうございます。
では、2点御質問がありましたので、こちらは手代木会長からでよろしいでしょうか。
よろしくお願いします。
○日本製薬団体連合会(手代木)
本当に具体的にどのぐらいの影響があったのかということにつきましては、私どもも第三者的なIQVIA様のPharmaceutical Marketがどのぐらいになっているのかということを全体的な数値として参考にさせていただいているわけでございますが、少なくとも、10、11月ぐらいの最新のデータはまだ完全に整理できていないと思っております。第3波が非常に大きくなってからということなのですが、それまででも大体マイナス4%からマイナス7%という状況がずっと続いているというのが私どもの認識でございます。
それは、私ども以上に先生方がもっとお辛い状況でございまして、特に患者様の受診抑制等がある科では非常に大きいということもございますので、全体マクロでどうかという以上に、医療供給体制がどのように維持されているのか、それをどのぐらい努力しておられるのかを考えますと、私ども医薬品の売上のマイナスでは示されないような大きな影響が出ていると私どもは考えているところでございます。
それから、実勢価と薬価の差につきましては、大変恐縮でございますが、それは私どもメーカーが本来コメントすべきものではございません。私どもは、単品単価交渉により医薬品の価値に基づいて、限りなく薬価に近いところで御販売をいただきたい。これをずっとお願いをさせていただいております。その上で、卸様と医療機関様の間で交渉をされて出てきた数字が乖離率ということでございます。
私どもメーカー側としては、理想はゼロでございますので、それを含めて実態について現在コメントをさせていただく立場にはございません。もちろん、流通改善のために私どもメーカーが卸様と一緒にさせていただくことについては、地道に続けさせていただいているつもりではございますが、結果として出るものについてどう考えるのかとおっしゃられますと、私どもなかなか厳しいというところでございます。
○中村部会長
では、PhRMAあるいはEFPIAの方、何か追加でございますか。
○欧州製薬団体連合会(ハイケ・プリンツ)
先ほどお話がありました最新のIQVIAのデータにつきまして一言申し上げます。
もちろんこの第3波が訪れてからの最新のデータはまだ入手できていないのですけれども、5月の緊急事態宣言のときのデータを見る限りにおきましては、私の記憶が正しければ、1か月で12.7%の下落ということが報告されております。
ただ、これは大事な点でありますけれども、手代木会長がおっしゃったようにこれは全体像の中のほんの一部の一部の数字にすぎないわけでありまして、やはりこの機会においてどれだけ患者さんが受診控えをしたのかといったところはもっと大きな影響があります。
○中村部会長
吉森委員、いいですか。
では、松本委員、お願いします。
○松本委員
ありがとうございます。
吉森委員からも平均乖離率が外形的な数字として出てきたということに関しては、いろいろコロナの影響が私ども診療側としてはあったと思いますけれども、具体的な影響がどの程度あったかということは、今回の調査の結果からは確かに不可能かもしれませんけれども、影響はあったと思います。
ただ、結局のところは、どんなような形をしたとしても、最後に関係するのは薬剤費の削減総額だと思います。
そうすると、その総額から考えてみれば、私どもは診療側としてこの総額がいかに先ほどお話ししました医療機関や薬局、卸、製薬業界全体に、医療界全体に与える影響を考えると、今回事務局から提示された案の中では、平均乖離率の2倍以上の品目のところで最小限にとどめるべきだと考えます。
○中村部会長
では、幸野委員、お願いします。
○幸野委員
今日の話を聞いていても、4大臣合意の乖離が大きいという範囲について、それぞれの思惑があって全然異なると思うのですが、我々は平均乖離率8%を基準ということではなくて、あくまでこれは基準であって、本改定のように2%以上、どこで線を切るかということが乖離率の大きさを決めるのではないかと思っています。
ですから、平均乖離率の8%はあくまで目安であって、乖離の大きいものをどうするか。業界団体がおっしゃる率で切るとするとしても、これは8%が基準になるのではなくて、あくまで2%以上のどこで切るかということだと思います。事務局にお願いなのですが、今、残念ながら1倍以上ということしかデータとして出されていないのですが、1倍未満の基準にした場合についても、追加資料として提示していただきたいと思います。
例えば0.5倍、それから0.25倍になったときに、どういった現象になるのか、そういったことも見ながら議論をしていきたいと思いますので、次回、このデータについてもお示しいただきたいと思います。
○中村部会長
では、要望ということで承りました。ありがとうございます。
ほかはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
では、ありがとうございました。
大体、御意見、御質問も出尽くしたようですので、関係業界からの意見陳述はここまでとさせていただきます。
本日の議題は以上になります。
次回の日程につきましては、追って事務局より連絡いたします。
それでは、本日の薬価専門部会はこれにて閉会といたします。
どうもありがとうございました。


 

(了)
<照会先>

厚生労働省保険局医療課企画法令第1係

代表: 03-5253-1111(内線)3288

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