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2020年12月9日 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会 第172回議事録

○日時

令和2年12月9日(水)10:00~10:48
 

 

○場所

日比谷国際ビルコンファレンススクエア

○出席者

中村洋部会長 秋山美紀委員 小塩隆士委員 関ふ佐子委員
吉森俊和委員 幸野庄司委員 佐保昌一委員 眞田享委員
松本吉郎委員 今村聡委員 林正純委員 有澤賢二委員
村井泰介専門委員 赤名正臣専門委員 上出厚志専門委員 
<事務局>
濵谷保険局長 井内医療課長 岡田医療技術評価推進室長
山田保険医療企画調査室長 紀平薬剤管理官 小椋歯科医療管理官 他

○議題

○ 2021年度薬価改定について

○議事

 


 ○中村部会長
ただいまより第172回「中央社会保険医療協議会 薬価専門部会」を開催いたします。
なお、今回も会議の公開については、前回に引き続き、試行的にユーチューブによるライブ配信で行うこととしております。
まず、本日委員の出席状況について御報告します。本日は今村委員が少し遅れて御参加と伺っております。
それでは、議事に入らせていただきます。
本日は「2021年度薬価改定について」を議題といたします。
事務局より資料が提出されておりますので、説明をお願いいたします。
では、紀平薬剤管理官、お願いします。
○紀平薬剤管理官
薬剤管理官でございます。
それでは、資料薬-1につきまして御説明させていただきます。
薬-1「2021年度薬価改定について」ということで、「これまでにいただいたご意見について」と「2021年度薬価改定に係る論点について」ということで資料を御用意しております。
2枚目、「これまでにいただいたご意見について」ということで、3枚目、右下のページ番号でいきますと2コマ目から御覧ください。
中医協における主な御意見としまして、これまで骨太の方針や基本方針などで挙げられておりました考慮すべき事項のくくりごとにこれまでいただいた御意見をまとめさせていただいております。
まず2コマ目、【薬価調査結果について】でございます。
1ポツ目では、外形的には平均乖離率などの各数値において例年並みの水準で、データ上は従来と同様に薬価改定は可能。
2ポツ目は、どの数値を取ってみても例年と遜色ない数値であったという御意見をいただいております。
また、3ポツ目ですけれども、取引や薬価調査において新型コロナウイルス感染症の影響があったということは間違いないという御意見。
その次が、中間年の前例と比較すると平均乖離率が大きくなっている。
それから、交渉らしい交渉もなく、乖離率の数字の一致だけで例年どおりの交渉が行われたというのは非常に誤った結論。
その次が、本来求められる市場実勢価格が調査にしっかりと反映されているかどうかが重要。
また、専門委員からは、交渉のプロセスが従来と全く違っていたという御意見をいただいております。
次に、3コマ目を御覧ください。
こちらは【新型コロナウイルス感染症による影響について】というものでございます。
1ポツ目、医療機関の経営も悪化しており、特に小児科や耳鼻咽喉科は大変厳しい状況。
2ポツ目が、平時とは全く異なる対応を強いられている状況の中で今回の薬価調査が実施された。
その次は、薬価調査結果については例年以上に慎重に検討した上で、薬価改定の是非について改めて検討すべき。
その次が、平時における基本的な中間年改定ルールを策定する方向で課題の抽出や論点の整理を図る。
それから、新型コロナに係る特例的な対応が必要であれば、今回改定に限り個別対応をすべき。
その次が、時間的な余裕がないということであれば、今回の中間年改定に限定してしっかり議論を行う。平時のルールについては2022年度薬価改定に向けた検討の中で議論するという御意見。
それから、医療機関が薬価改定の負担を負うことについては配慮いただきたいという御意見。
その次は再掲です。
そのほか、業界からの御意見としましては、薬価改定については慎重に検討すべきですとか、例年とは全く異なる価格交渉の状況であった。
それから、医薬品卸のほうでは大幅な営業利益の減益となっているという専門委員からの御意見をいただいております。
その次、4コマ目を御覧ください。
こちらは【医薬品卸・医療機関・薬局等の経営への影響について】でございます。
まず、3年連続して薬価の改定が行われ、医薬品の資産価値の目減り等で経営状況がかなり悪化しているという御意見。
それから、国民負担の軽減や国民皆保険制度の持続性といった観点とイノベーションの推進、医療の質の向上や経営への影響を考慮する。これらのバランスを適切に議論する必要があるという御意見。
その次は再掲です。
その次ですけれども、医療機関等の経営への影響については、薬価改定を行った場合の薬剤費の削減総額がそれに当たると考えるという御意見。
最後は再掲でございます。
次の5コマ目にお移りください。
こちらは【薬価改定の対象範囲について】でございます。
1ポツ目は再掲でございます。
2ポツ目ですけれども、新型コロナウイルス感染症の影響も勘案し、丁寧な議論を行うべき。
それから、例年と異なる状況であることから、対象範囲については極めて限定的にすべき。
その次が、対象範囲の基準を乖離「率」とするのか、乖離「額」とするのか、率と額を組み合わせるのか。あと、新薬、長期収載品、後発医薬品に偏りが出ないようという御意見。
それから、乖離率が相対的に小さい先発医薬品、相対的に大きい後発品等の医薬品の特性に応じた基準の設定を検討すべき。
乖離率が大きい品目が医薬品の価値に合致していない品目で、金額とは無関係に判断されるという御意見。
それから、乖離額から対象範囲を選定し、実勢価に連動しないルールも適用するとすると、かなりの新薬、オーファンドラッグが対象になり、イノベーション推進を阻害するという御意見をいただいております。
そのほか、業界からの御意見としまして、中間年の薬価改定というのは通常の薬価改定とは異なる位置づけであるというもの。
乖離率を基準とすべき。
それから、4年連続して特許期間中の品目の薬価を引き下げるということになれば、G7の中で唯一となるという御意見をいただいております。
6コマ目を御覧ください。
こちらは【適用する算定ルールについて】でございます。
1ポツ目は再掲でございます。
2ポツ目ですけれども、市場実勢価格を適時に薬価に反映するという趣旨を踏まえれば、市場実勢価格に連動しない算定ルールは適用すべきでない。
それから、政策改定も実施するべき。新薬創出等加算の累積額の控除については、中間年改定においても適用する合理性・妥当性があるという御意見。
調整幅の在り方についても議論を行っていくべき。
全品改定や調整幅の在り方の見直し、長期収載品の引下げルールのさらなる見直し、新薬創出等加算の累積額の控除については到底考えられるものではないという御意見。
毎年薬価改定であっても、新薬創出等加算が適用された品目は加算を受けており、イノベーションは評価されているという御意見。
それから、中間年改定があると研究開発投資に大きな影響が生じるという業界からの御意見と事業における予見性が大変重要であるという御意見をいただいております。
ここまでがこれまでの中医協のほうでいただいた御意見のまとめでございます。
7コマ目以降が「2021年度薬価改定に係る論点について」ということで、今回これまでの御意見を踏まえて御用意した資料を載せております。
8コマ目を御覧ください。
対象品目の範囲と医療費への影響ということで、平均乖離率の2倍以上、1.5倍以上、1.2倍以上、1倍超とした場合の影響額の試算についてお示ししております。また、その場合、改定の対象となる品目数について、概数、おおよその数ですけれどもお示ししております。
こちらの試算につきましては、その次の9コマ目を御覧ください。
9コマ目に記載しておりますのが、平成29年に中医協で薬価制度の抜本改革についての骨子をおまとめいただいたものからの抜粋でございます。このとき、平成27年の薬価調査結果の実績に基づいて価格乖離についての一定の仮定を置いた上で医療費への影響を試算したものを記載しておりました。この29年のときの試算につきまして、今回の薬価調査結果をもとに試算し直したものが先ほどの8コマ目の影響額となっております。
10コマ目を御覧ください。
先ほども御紹介しましたこれまでにいただいた御意見の中で、新薬、長期収載品、後発品等についてそれぞれ考慮すべきという御意見、また、幸野委員から、前回お示ししました乖離率の分布につきまして、新薬、後発品などの分布について示すことができないかという御意見をいただいておりました。今回、先ほどの8コマ目でお示ししました試算のそれぞれの対象範囲につきまして、新薬、長期収載品、後発品がどれぐらい改定の対象となり得るかというものを、概数ですけれども、品目数という形でお示ししております。それぞれの対象範囲とした場合にこれぐらいの品目数が対象になり得るというものでございます。
次に、11コマ目を御覧ください。
こちら、医薬品卸・医療機関・薬局等の経営への影響についてというものでございます。それぞれの経営への影響については、薬価改定による影響額の総額がこれに当たるという御意見をいただいておりました。また、先ほど8コマ目にお示ししましたそれぞれの対象範囲とした場合の影響額については、結果的には医薬品卸・医療機関・薬局・製薬企業のいずれかにこの影響が帰着するということで、総額としてこのような形でお示ししております。
最後、12コマ目を御覧ください。
こちらは論点についてということでございます。
1つ目の○はこれまで記載してきたとおりでございます。
2つ目の○ですけれども、前回、これらの経緯や薬価調査の結果としていたものにつきまして、追加して医療費への影響や医薬品卸・医療機関・薬局等への影響、これまでの意見等を踏まえ、今回の薬価改定についてどう考えるかということでございます。
それから、最後の○ですけれども、これまでにいただきました視点や、それに関する御意見に加えまして、今後留意すべき事項はないかということで論点をお示ししております。
以上でございます。
○中村部会長
ありがとうございました。
では、ただいまの説明について何か御質問等ありましたら、どうぞよろしくお願いします。
では、有澤委員からお願いします。
○有澤委員
ありがとうございます。
まず、2コマ目の上から4ポツ目、「今年度の取引状況や薬価調査の回収率等は例年並みであるが、中間年の前例と比較すると平均乖離率が大きくなっていることに留意が必要」となっておりますが、前回の薬価調査の結果の速報値を見ますと、2020年は8%であった。通常は2年ごとの定時改定で、今資料を見ていますと、例えば2015年は8.8、2017年9.1、これはおおよそ1年半をかけた中で価格形成がされてきた数値であります。2018年の消費税改定に当たっては7.2という乖離と、今回8.0という形で数値が出ています。前回の中間年改定の7.2からすると、今回の8.0というのは数字的には異常な数値であったと言わざるを得ません。これについて、やはりそれぞれの交渉の期間がなかったり、極めて短い中、あるいは面談の機会も少なかったというところから数値的にはほかにも意見があるように、2コマ目のその下、例年と同様の割引率で妥結する状況にあったと言わざるを得ません。
また、卸売業者さんの利益の減少については、やはり現場間で見ていても、MSさんの感染拡大防止のための出社調整やテレワークによって交渉の機会がなかった。あるいは、納品先への検品作業の長時間滞在を避けるために、配送回数を増やしたり、外で検品を行っていた。そういった手間がかかることも行いつつ、卸さんは実際に医薬品の提供を行ってきた。そういうところから利益の減少も招いているということであります。
その上で、11コマ目を見ていただければと思うのですが、それぞれの影響額が示されていますが、いずれにしてもこれは決して薬局、医療機関だけが影響を受けるということではなくて、医薬品卸、あるいは医療機関、薬局、製薬企業にそれぞれ影響するということであります。まして、薬局に関しては、全体の調剤報酬の中に占める薬剤費が75%から80%ぐらいあるのが実情であります。
そういうところからすると、経営上の影響が大変大きくて、私が今話してきた中からすれば、極めて限定的な改定にとどめるべきということであります。特に3月31日から4月に変わって、薬局の備蓄の在庫の資産価値が一変に下がってしまいます。当然、中には購入価格よりも償還価格が下がるといった多大な影響が経営に起こることを鑑みますと、極めて限定的にしていただきたいということ。
それから、コロナについて、まだまだ事態は終息しておらず、むしろ拡大している状況にあります。こういった中で、来年の4月に向けて先が見えない中、果たして拡大的に薬価の改定を行うのかということも含めれば、影響が少ないような考慮をお願いしたいと考えております。
以上です。
○中村部会長
有澤委員、ありがとうございました。
では、松本委員、お願いします。
○松本委員
ありがとうございます。
新型コロナウイルスの感染拡大によりまして、医療提供体制はまさしく崩壊の危機に直面しております。既に各地で医療機関の機能不全が生じ始めていることは御案内のとおりであります。そうした大変厳しい状況の中でも、医療従事者は使命感を持って現場に立ち続け、国民の命を守るため、地域医療を守るために奮闘し続けております。しかし、新型コロナウイルスの影響が長引いていることにより、医療機関の収支も大変悪化しており、感染対策に係る物品をそろえ、入念な感染防止に努める必要がある中で、給与や賞与のカットが相次いでいる状況にもあります。また、大変しっかりと働いていただいております医療関係者の方々の中にも、大変な疲労感の中で退職が続いているということも報道のとおりでございます。こうした状況下で薬価改定を行うことの意味を考えますと、それは医療機関等が備蓄している医薬品の価値を引き下げることにほかなりませんことから、医療機関等の経営をますます悪化させることになります。
したがいまして、薬価改定を行うのであれば、新型コロナウイルス感染症の影響によって悪化した医療機関等の現在の経営状況や、さらには今後の経営に与える影響をしっかりと把握した上で実施すべきであると考えます。それは骨太の方針2020に明記されている新型コロナウイルス感染症による影響も勘案して十分に検討し徹底するという趣旨にも合致することだと考えております。
そうした意味もあり、前回12月2日のこの場では、ある一定範囲で薬価改定を行った場合の薬剤費の削減総額について幾つかの場合分けを行ってお示しいただくようにお願いしたわけであります。
これを受けて、今回、平均乖離率の1倍、1.2倍、1.5倍、2倍以上を対象と場合の全体の財政影響が事務局から提示されております。8ページであります。この数字を見ますと、例えば1.5倍以上を対象とした場合の影響額は実に2000億円を超えております。9ページにある平成29年の推計値と比べてみますと、1000億円以上も上振れしており、全国の医療機関に相当な影響がある数字と考えます。
事務局から提出されたこれらの経営影響に関する数字を基にすれば、先ほど申し上げたような現場の状況からしますと、2021年度の薬価改定につきましては、医療現場への影響が最小限になる範囲に限定すべきであると考えます。それは先ほど有澤委員もおっしゃいましたけれども、私も前回お話ししましたが、この乖離率につきましては、前年度との比較ではなくて、やはり2年前の中間年改定のときの7.2%と比較すべきであると考えております。
そして、医療提供者側としまして改めて強調いたしますが、現在最も優先されるべきは新型コロナウイルス感染症に直接対峙している医療機関や、そうした医療機関を面で支える地域の医療機関に対する支援であると思います。そういった最優先事項への対応策が議論、検討もされないままで、医療機関にとってはさらなる痛みでしかない薬価改定について議論を続けることに対しては、現在も医療現場で奮闘されている医療従事者の全ての方々に対して大変申し訳ないという気持ちであります。医療提供者側としましては、こうした議論の進め方には抗議いたします。
以上です。
○中村部会長
ありがとうございます。
ほかは御意見、御質問等いかがでしょうか。
では、幸野委員、お願いします。
○幸野委員
意見を言う前にまず事務局に確認したいのですが、本日示された資料は平均乖離率の1倍超が最低限の値になっているのですが、乖離率の大きいものというのは1倍超とお決めになっているのですか。何倍超は乖離率が大きいというのか、全然議論をされていないのですが、1倍超は乖離率が大きいというのはどこで議論されたのか、その辺のお考えをお伺いしたいです。
あと、対象品目が50%にとどまっているのですが、これが基本方針のできる限り広く対象範囲を求めるという基本方針に合致していると思われているのか見解をお聞きしたいです。また、内容を見てみますと、こちらで試算したのですが、約1万7400品目あるうち、対象になっているのは新薬がわずかに2.7%、長期収載品が6.3%、後発品が37.5%、約4割となって、比較的価格の高い新薬が対象とならずに、比較的価格の低い後発医薬品を狙い打ちした改定になっているのですが、こんないびつな改定が本当に妥当なのかという点について事務局の意見をお伺いしたいと思います。
○中村部会長
では、医療課長、よろしくお願いします。
○井内医療課長
今、幸野委員から幾つか御質問をいただきましたので、御説明をさせていただきたいと思います。
まず、今回8ページで示させていただいておりますように、これは前回の宿題をいただいたというものを御説明させていただきましたように、9ページにあります平成29年12月20日の資料をベースに今回当てはめたものを出させていただいたというものでございます。その中の対象品目を言っていただいておりますが、それが機械的にこうだったというものをお示しさせていただいているというものでございます。
その中で、これも宿題でいただいておりましたように、10ページにありますように、それぞれの収載品、新薬であったり長期収載品であったりというものがその中でどれぐらい入っていたかということを示させていただくということも宿題を返させていただいているという趣旨でございます。
これをもちまして、この範囲の中でというよりも、我々といたしましては、広く御議論いただくために今回資料を提供させていただいたという趣旨のものでございます。
○中村部会長
幸野委員、よろしいでしょうか。
○幸野委員
私の質問の答えになっていないのですが、新薬がほとんど対象にならずに後発医薬品が狙い打ちになっているような改定が果たして中間改定のあるべき姿として妥当なのかということをお聞きしているのです。
○中村部会長
では、医療課長、よろしくお願いします。
○井内医療課長
まさにそういった点についてこの中医協の場で御議論いただくものと認識しておりまして、事務局がこういった改定が妥当、こういった改定がいいということを現時点で申し上げるものではないと思っております。今、この中医協の場でいろいろな御意見をいただいております。そういった御議論が収れんされてくるというようなことになると我々は考えておりますが、現在は広くいろいろな御意見をいただいているというものですので、事務局としてここにある中で何かをというようなものではなく、あくまでも前回いただいた宿題に答えているというものでございます。
○中村部会長
幸野委員、どうぞ。
○幸野委員
分かりました。
では、意見を申し上げます。
今回の中間年改定の議論につきましては、前回の薬価専門部会の最後に、医療課長がいわゆる予算編成過程の中で十分に検討し決定するということをおっしゃいましたが、それが全てだと考えています。それはそれで、では、中医協の議論は何なのかという疑問が残ります。今回も12ページで論点を示されていますが、我々がここで意見をしても、それが今回の中間年改定にどう反映されるのか、甚だ疑問に感じています。そういうむなしさはあるのですが、今回の中間年改定だけではないので、令和4年度の改定とか、次回の中間年改定もありますので、その布石としてあえて支払い側としてのおおむねの主張をまとめて申し上げたいと思います。
そもそも中間年改定というのは、薬価制度の抜本改革の基本方針で、市場実勢価格を適時に薬価に反映して国民の負担を抑制するということが出発点となっておりまして、対象範囲については中医協が取りまとめた骨子において、国民負担の軽減の観点から、できる限り広くすることが適当という考え方を合意したはずです。消費税改定は機械的に消費税を薬価に反映させるということを目的としているので全品改定したのですが、今回はこれとは大きく異なると思っています。
したがって、我々支払い側としては、市場実勢価格に合わせた薬価をできる限り広く、かつ速やかに引き下げるというのが中間改定の基本的な方針だと思っています。できる限り広くという観点では、偏りのない、広範囲で新薬、長期収載品、後発医薬品それぞれが対象となるということがポイントになりますが、今回出てきた案では全く偏っているということで、お話にならない改定ではないかと思っています。
通常改定にも共通する課題として、市場実勢価格と薬価の乖離状況、新薬、長期収載品、後発品のカテゴリーごとに検証して、異なる基準を設定するということも一つの案ではないかと思っていまして、また、乖離額に注目するということも重要なのではないかと思います。そして、20年間にわたって一律2%で運用されてきた調整幅の妥当性についても今後は検証していく必要があると思います。
それから、基本方針の2つ目であります速やかにという観点では、これはいつも申し上げていますが、新薬創出等加算の累積額控除がポイントとなると思っています。そもそも新薬創出等加算は市場実勢価格を薬価に反映することを一定程度猶予するものであって、中間年改定であっても加算の要件を満たさなくなるのであれば、直近の改定時に加算額を返上するのが合理的かつ妥当的な考え方だと思っています。その他の政策改定についても可能な限り中間年改定で対応すべき事項であると思います。例を言いますと、累次薬効比較方式1で算定された効能追加がなかった場合、これも2年ごとに改定するとなっていますが、これも中間改定でやるべきと。あとは、G1、G2ルールの引下げも2年ごとになっていますが、これは中間改定でやってもおかしくないことだと思います。
これがおおむね我々支払い側の意見なのですが、今回この資料で示されている案を見ると、到底本来の趣旨とは違うような改定がなされるのではないかという懸念を持っています。
令和3年度改定については、本来議論の在り方として、中間年改定のあるべきルールを定めた上で、今回に限りコロナの影響を踏まえたルールを定めるのが妥当ですが、データの不足、我々が示したデータも出てきていませんし、時間的な制約もあるということから、年末までにこういった議論をすることは難しいと考えていますので、今回は本来あるべきルールを見据えながら、令和3年度に限ったルールを検討するということでやむを得ないのではないかと思います。ただし、今回のルールというのは本当に特別なルールで、我々も納得がいかないルールになりそうだというのは目に見えてきましたので、令和3年度のルールは特別なルールとして、今、私が主張しました、薬価制度の本来あるべき姿については、来年の令和4年度の本改定とか、令和5年度で来る2回目の中間年改定において、改めて中医協の場において検討すべきと考えます。
ということで、今回のルールについては、この資料を見てもあるべき姿からはかけ離れたルールでまとめられようとしているということに非常に遺憾に思っております。
以上です。
○中村部会長
ありがとうございます。
では、吉森委員、お願いします。
○吉森委員
ありがとうございます。
今の幸野委員の意見と同様な意見でございますが、先ほど医療課長から、今回は広く意見を集約して次のステップへということでございましたので、意見を申し述べたいと思います。
今回の薬価調査の結果を見ましても、外形的には、特別に配慮すべき事情があるとは言えないのではないかというのが率直な意見です。以前から申し上げていますように、今回、中間年改定の初年度ですので、まずは既存の薬価改定ルールを踏まえた上で平時における中間年改定のルールの在り方をしっかりと検討して今後の改定の基本形となるように中間年改定を実施するというのが基本的な考え方だと私は思っております。
一方で、業界団体の皆さんや2号側の先生方は、今回の薬価調査の結果は外形的には表れなかったものの、前回の中間年改定からすれば乖離率がやや大きく出ているなど、取引実態、薬価調査の実施等においては新型コロナの影響が各所であるというご意見です。先ほど松本委員からもありましたが、現状の医療現場の在り方というのは誰もが理解するところでありますから、配慮というのは誰も否定するものではないと思います。したがって、今回の改定、骨太2020に則って慎重に対応すべきというのはしっかりとした御意見だと思っております。
以上を勘案して、皆さんの御意見を踏まえると、手順としてはやはり平時における改定のルールの在り方はしっかりと中医協の場で議論をして、それを踏まえ、今回のコロナ禍の環境を鑑みて中間改定における今回限りの特例的対応を決定するという考え方が、我々中医協における役割としては実効性があり妥当性のある考え方ではないかと思っております。
一方、このような状況で、平時として私ども保険者としては、改定の在り方として、国民負担抑制の観点から従来の乖離率に加えて額にも注目して、先発及び後発のそれぞれのカテゴリー別の基準を設けるなどの検討、医薬品ごとの特性に応じたルールの検討などを主張させていただきましたし、全体は先ほど幸野委員が意見表明されていたとおりだと思っています。
しかしながら、本日、事務局から改定対象範囲に係る品目と影響額の資料の提示がございましたが、10ページを見ますと、対象品目の乖離率が大きいほど新薬品目数が少なくなる傾向が明らかに見てとれますし、先ほど幸野委員からもありましたが、先発品と後発品の品目の対象範囲の選定には大きな課題があると考えております。例えば、先ほど申し上げましたとおり、先発医薬品と後発医薬品別々の基準を率だけではなく額にも注目した在り方、マトリックスを取るといった検討が必要ではないかとも思っております。
しかしながら、今回高額医薬品を含めた医薬品の価格帯ごとの乖離率などの平時改定ルールの在り方を議論する上で必要なデータの用意が時間的にも困難であろうとも考えております。当然ながら年末まであとわずかというのは誰もが分かっておりますので、誠に残念で遺憾ではありますが、現実的には平時改定ルールについてエビデンスをしっかりと検証して議論を深めたいということは極めて困難な状況だということも認識しております。
そういう意味では、先ほど医療課長から前回会議での今回の改定方針についてのお話をいただき、また、広く意見を踏まえて検討したいということでございましたが、再度事務局は、しつこいようですが、今後の今回改定の行程、流れについてどのようにお考えなのかお聞かせ願えますでしょうか。
○中村部会長
では、医療課長、よろしくお願いします。
○井内医療課長
吉森委員のほうから御質問をいただきましたので、それにお答えをさせていただきます。
まず、ここに挙げておりますのは、現時点では少なくとも事務局の案ではございません。前回の宿題返しということで、こういったもので分析をしてみたというものでございます。そのベースになったのが、繰り返しで申し訳ありませんが、平成29年12月20日の中医協の資料をベースに出したものと御理解をいただければと思っております。
今、吉森委員のほうから御質問いただきました内容でございますけれども、今後の行程ということでございます。前回私のほうからお話しさせていただきました、この中医協の場で御議論を進めていただくというのがまず一義的に一番。その後、財務当局とも協議をしながら、予算編成過程において十分検討、決定していくというお話をさせていただいております。現時点で具体的にいつまでに何をというところはございません。そこのところはまだ明確ではございませんが、今、中医協の場で議論を深めていただいている、2号側、1号側から広く御意見をいただいているというところでございます。そういった中で我々としても検討するということで、今、吉森委員のほうからは具体的な行程ということでの御質問かと思いますが、現時点では我々のほうとしてもまだ固まっていないというのが正直なところでございます。
○中村部会長
では、吉森委員、いかがでしょうか。
○吉森委員
ありがとうございます。
そういう意味では、広く意見を聞いて、きちんと今回中間年改定としてコロナ禍を踏まえて特別にルールを定めるという議論の余裕とか日数的な余裕はあるとはなかなか考えにくいと思いますので、今後の対応としては、中医協の在り方として、中間年改定の今回の経緯も踏まえて、22年度の本改定、さらには次の23年の次回の中間年改定のルールの在り方に資するような議論をどこまでできるか。もし今回間に合わずに、それが先送りになるならば、やはり22年度に向けて改定ルールの在り方についての課題、論点をしっかりと整理し、さらにはエビデンスをしっかりと用意いただいて次の議論を深めるということをお約束いただきたいと要望します。
以上です。
○中村部会長
ありがとうございます。
では、松本委員、お願いします。
○松本委員
ただいま、吉森委員から医療現場の非常に逼迫した状況につきまして御理解を賜りましたことには感謝申し上げますけれども、やはり中間年改定の目的ということであれば、個々の医薬品の価値に注目した上で市場実勢価格との乖離を是正することが最大の目的であると考えております。この主張は診療側は変わりません。そういった意味で、乖離数が大きい品目に注目して、医薬品の価値に合致していないものに対してのみ改定を行うということだろうと思います。
したがいまして、8ページにも示されたような総額に対しての影響をもう一つ十分に配慮すべきだということを改めて発言したいと思います。
以上です。
○中村部会長
ありがとうございました。
では、佐保委員、よろしくお願いします。
○佐保委員
ありがとうございます。
前々回の部会で、新型コロナ禍で医薬品卸の経営が悪化していることについての具体的な影響をお聞きし、前回の部会で、村井専門委員をはじめ、現場の状況がお分かりの委員からの発言をお聞きして、経営に影響が及んでいることは想像でき、今回の薬価改定については配慮が必要だと思っております。さらに具体的な事例や数字があればより経営への影響を理解できるのではないかと思っております。医薬品卸として開示しにくい部分もあると思いますが、可能な範囲での開示を事務局にお願いします。
以上です。
○中村部会長
ありがとうございました。
では、ほかはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
有澤委員、お願いします。
○有澤委員 今回の議論とは別のことで意見を申し上げさせていただきたいのと、見解をお聞きしたいということで、先週末にイトラコナゾールに睡眠導入剤でありますリルマザホン塩酸塩水和物が大量に混入したという事件がありまして、それについて現在メーカーさんのほうで回収を行っているところであります。この事案については、我が国において医薬品への信頼を根本から揺るがす事態であり、併せて、後発医薬品の使用の推進を図ってきた薬局、医療機関にとっては、今後のさらなる推進の足かせになると考えております。
昨今、毎日のように医薬品の回収事案、PMDAから各医療機関、薬局に届いておりますが、大変数も多くなってきています。こういう事態について、今後、厚生労働省のほうでどのように考えているか、方向性なり対応なり、御意見をいただきたいと思います。
○中村部会長
ありがとうございます。
これは経済課長、よろしくお願いします。
○林経済課長
御質問ありがとうございます。経済課長でございます。
委員の御指摘のとおり、最近企業の不適切な医薬品の製造管理、品質管理が原因で医薬品の回収事例がたびたび発生しており、これについては厚労省としても大変問題であると考えてございます。
一義的には当然企業が製造管理、品質管理を適切に実施するということが重要でございます。また、個別事案については、PMDA等の調査により管理体制の不備が明らかになった企業に対しては、再発防止に向けた個別指導等も行っているところです。
とりわけ今御指摘もありました後発医薬品については、従来より新たに薬価収載する際には安定供給の確保のために少なくとも収載を5年間継続して製造、販売するということを事業者に求めるとともに、過去に供給不安を起こした製造販売事業者には個別に我々のほうから供給体制の確認を行っているところです。
また、近年こういったGMP等の問題も含めまして、医薬品の安定確保ということが課題になってございます。こういったことも踏まえまして、厚労省では、本年、医薬品の安定確保を図るための検討会議を設けて、9月に提言をいただいたところです。こういった提言を踏まえまして、従来からの後発医薬品に対する、先ほど申し上げたような取組、ダブルソース化等も含めた取組の強化、加えて、メーカーによる自主点検の強化ということも取り組んでいただいています。加えまして、提言も踏まえまして、供給不足が発生した場合のメーカーから医療現場に対する情報提供、発信の徹底といったことも含めて、こういった提言の内容も踏まえて対策をしっかりと取っていきたいと思っております。
御指摘のように、この問題は先発、後発問わず生じておりますが、とりわけジェネリックの定着ということにおいて課題になってくる問題だと思っております。このような取組を通じまして、企業の製造管理、品質管理、供給体制に対する意識の向上と品質確保、安定確保に努めてまいりたいと考えてございます。
以上です。
○中村部会長
有澤委員、こちらのほうでよろしいでしょうか。いかがでしょうか。
○有澤委員
ありがとうございます。製薬企業の取組をしっかりと見ていっていただきたいと思いますし、しっかりとした品質のものの安定共有に関与していただきたいと思います。
○中村部会長
そのほかには何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。
ありがとうございました。
では、本日の議題は以上になります。
次回の日程につきましては、追って事務局より連絡いたします。
なお、次回は関係業界からの意見聴取を行う予定としておりますので、よろしくお願いいたします。
それでは、本日の薬価専門部会はこれにて閉会といたします。
どうもありがとうございました

 

(了)
<照会先>

厚生労働省保険局医療課企画法令第1係

代表: 03-5253-1111(内線)3288

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