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2023年10月27日 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会・費用対効果評価専門部会 合同部会 第2回議事録

○日時

令和5年10月27日(水)薬価専門部会終了後~

 

○場所

日比谷国際ビル コンファレンススクエア8F

○出席者

安川文朗部会長 小塩隆士委員 飯塚敏晃委員 笠木映里委員 本田文子委員
鳥潟美夏子委員 松本真人委員 佐保昌一委員 高町晃司委員 眞田亨委員 鈴木順三委員
長島公之委員 江澤和彦委員 池端幸彦委員 島弘志委員 林正純委員 森昌平委員
石牟禮武志専門委員 村井泰介専門委員 守田恭彦専門委員 前田桂専門委員 赤名正臣専門委員
<参考人>
福田敬参考人 池田俊也参考人
<事務局>
伊原保険局長 眞鍋医療課長 木下医療技術評価推進室長
荻原保険医療企画調査室長 安川薬剤管理官 小嶺歯科医療管理官 他

○議題

○高額医薬品(認知症薬)に対する対応について

○議事

 

○安川部会長
 ただいまより、第2回「中央社会保険医療協議会 薬価専門部会・費用対効果評価専門部会 合同部会」を開催いたします。
 薬価専門部会と同様対面を基本としつつ、オンラインも組み合わせての開催としております。また、会議の公開については、ユーチューブによるライブ配信で行うこととしております。
 まず、本日の委員の出欠状況について御報告いたします。
 本日は末松委員が御欠席です。
 今回は参考人として、福田参考人、池田参考人に参加いただいております。
 また、本日は、NDBと介護DBの連結データに関する有識者からの意見聴取といたしまして、加藤先生、森先生、植嶋先生にも御出席をいただいております。
 本日の議題では個別の医薬品を取り扱うことになりますが、赤名専門委員におかれましては、当該医薬品の製造販売業者に所属しておられますので、利益相反の観点から本日の部会には御出席をお控えいただくことといたします。
 それでは、議事に入らせていただきます。
 今回は「高額医薬品(認知症薬)に対する対応について」を議題といたします。
 事務局より資料が提出されておりますので、事務局より御説明をお願いいたします。
○安川薬剤管理官
 薬剤管理官でございます。資料薬費-1を御覧ください。
 2ページ目、今回の内容は前回からの継続議論でございますが、最終的に本剤の対応を取りまとめるに当たり、これまで検討した論点ごとに方向性を示すことといたします。
 まず、薬価から説明いたします。
 3ページ「1.薬価算定(薬価算定方法、算定に用いるデータ)」です。
 前回示した対応の方向性と意見を記載しております。これらを踏まえ、取りまとめの方向としては、囲みに書いている内容を取りまとめることとしてはどうかとしております。
 算定方法は、通常どおりの対応、具体的には薬価算定組織において判断することとしていますが、中医協総会における薬価収載の議論の際には、算定に当たっての考え方を説明することとしております。
 また、製造販売業者から提出された介護費用に基づく内容の評価は、費用対効果評価の枠組みで検討することとしております。
 保険適用上の留意事項としては、本剤の議論の当初に説明しましたが、適切な患者選択や投与判断、ARIAのような重篤な副作用発現の際の迅速な安全対策等のため、最適使用推進ガイドラインを定めることとしており、ガイドラインに基づき、必要な内容を留意事項通知で明示することといたします。
 このような取扱いは、通常の最適使用推進ガイドラインを作成する場合の取扱いと同様ですが、取りまとめでも明記することとしております。
 4ページ目、次に「2.薬価収載後の価格調整等(市場拡大再算定)」です。
 前回示した対応の方向性と意見を記載しています。
 これらを踏まえ、5ページ目に「とりまとめの方向(案)」をまとめております。
 「市場拡大再算定」として矢羽根を2つ示していますが、本剤は通常どおりNDBに基づき、市場拡大再算定や四半期再算定の適否を判断すること。
 2つ目、ただし書きとして、本剤は、ここに記載されている影響が考えられますので、本剤の薬価、価格調整に関する対応が必要になった場合には、速やかに中医協総会に報告の上、その取扱いについて検討することとしております。
 また、前回の議論を踏まえ、「その他」として示しております。本剤のようなアルツハイマー型認知症を対象とする抗体薬については他社でも開発中ですので、「市場拡大再算定」の箇所で記載した検討の必要性にかかわらず、このような薬剤を薬価収載することになる場合には、必要に応じて中医協総会で本剤を含む取扱いを改めて検討することとしております。
 以上が薬価に関する内容でございます。
○木下医療技術評価推進室長
 続きまして、事務局、医療技術評価推進室長でございます。
 私から今回の内容の2番目にございます「費用対効果評価に係る論点」について、引き続き同じ資料を用いて御説明させていただきます。
 また、私からの説明の後に、NDBと介護DB連結データ分析の特徴についてということで、京都大学の加藤源太先生より、御発表をいただくこととしております。
 それでは、まず、7ページを御覧ください。
 10月4日に開催いたしました費用対効果評価専門部会で提示させていただいた論点となります。
 資料の上段に記載のある現状と課題を踏まえ、論点といたしましては、レケンビの取扱いについての全体の議論の中で費用対効果評価における価格調整範囲の見直しや、介護費用の軽減に係るデータの取扱いについて検討することとしてはどうか。
 効率的に議論を進めるため、薬価専門部会との合同部会を開催して議論を進めてはどうかとさせていただいており、本合同部会で議論をいただいているところでございます。
 次のページにお進みください。
 レケンビに係る論点のうち、本日御議論いただきたい点といたしましては、介護費用の取扱いについてでございます。
 9ページから11ページまでは、前回の合同部会で提示させていただいた資料の再掲となっております。
 12ページの下段に、前回の合同部会でいただいた意見をまとめております。
 介護費用の推計についてなど、まだ研究を進めるべき技術的な課題も多くなり、引き続き研究を進めるべきではないか。
 介護データベースを用いることにより、初めて明らかとなる課題もあるのではないか。
 レケンビにおいて、公的費用含めた分析を試行的に行い、改めて課題を把握すべきではないかなどの御意見をいただいております。
 13ページにNDBと他の公的データベースの連結についてお示ししております。
 最上段にございます、介護DBと連結可能なデータの提供は、令和2年10月より開始されております。
 14ページ目には、NDBと介護DB連結とのイメージをお示ししております。
 15ページを御覧ください。
 費用対効果評価制度を導入した際の試行的導入の流れを参考として、お示ししております。
 試行的導入の際には、費用対効果評価分析を進めながら、具体的な方法の検討を進めていたという経緯をお示ししているところでございます。
 それでは、ここでNDBと介護DBの連結データ分析の特徴について、京都大学医学部附属病院、加藤源太先生に御説明をお願いしたいと思っております。
○安川部会長
 それでは、有識者からの意見聴取として、加藤源太先生より御説明をお願いいたします。
○加藤先生
 よろしくお願いいたします。京都大学医学部附属病院の加藤です。
 それでは、薬費-2の資料を用いて御説明いたします。
 ページ番号1を御覧ください。
 私どもは、これまでNDBデータ、介護DBデータの連結に関する研究を行ってまいりました。これまでの研究は、NDBと介護DBを、連結IDを用いて確かに分析できるか否かを評価する目的で行っております。
ですが、研究開始当時は、NDBはほかのデータとの連結を認めないという規定がございまして、両者を突合すると個人が特定されるのではないかという懸念がございました。
 したがいまして、この介護DBデータのIDは別のランダムのIDを付して、あくまでも両データをでたらめではあるが連結して、果たしてNDBの分散処理基盤で操作ができるのかどうかといった、技術的な検討を行うにとどまりました。
 その結果として、集計こそできましたが、何分IDがランダムでありましたため、特にこれといった傾向のない結果しか導き出せておりません。
 現在は、連結が正式に可能となりまして、「臨床疫学に活用可能なNDB等データセットの作成に関する研究」といたしまして、同じく今日入っていただいている森先生が代表で、研究を進めておられます。私も分担として参加しておりますが、まだ現時点では、データを入手して、データ分析の着手を行っている段階にとどまっております。
 ページ番号2を御覧ください。
 こちらが、その分担報告書にて照会した事例になります。左側が約5年前に開催されていた医療・介護データ等の解析基盤に関する有識者会議での、松田晋哉参考人による、ある地域での医療レセプトと介護データを連結、解析した事例の紹介になります。
 このグラフは、上から要支援と要介護度を表しておりまして、どの要支援度、要介護度に、どういった疾患の患者さんが多いかを示すものです。例えば、要介護5のところには、神経系の疾患の患者さんが増えているとともに、筋骨格系疾患の患者さんが少なくなっていることが読み取れるかと思います。
 右側は、それと同じことを全国のNDB、介護DBを使って我々が行ったものです。集計こそできましたが、あいにくIDをランダムな番号で振り直して行ったものですので、何ということのない特徴の結果しか得られておりません。
 ページ番号33を御覧ください。
 NDBデータと介護でDBデータを連携させると、様々な集計ができることが理論上可能になります。例えば、連結IDを用いてNDBと介護データをつなげられると、そこから個人単位の医療費、介護療養費の合計を算出することも可能になります。あるいは、NDB、介護DBとも複数年のデータが保存されていますので、診療内容や医療費、介護度などを経時的に追うことも可能になります。
 ページ番号4を御覧ください。
 とは言いましても、実際に分析を行うとなると、様々な課題が生じると想定しております。ここではその課題を大きく、技術的課題と解釈上の課題とに分けて御説明いたします。
 まず、技術的課題として1つ目に挙げられるのが、連結IDの課題でございます。
 連結用に用いられるIDは、ID4、ID5の2種類がございますが、それぞれのIDに課題があると考えております。
 まず、ID4ですが、これは、カナ氏名、性別、生年月日から作成したIDで、これでひもづけるものでございます。ですが、これは従来から指摘されている複数ひもづけの問題、つまり、複数の人に同一のIDが付与される可能性、それから結婚や離婚など名前が変わることによるIDの変化に注意が必要となります。
 NDBにおけるIDの問題というのは、10年以上の利活用の蓄積がございますので、利用者の中である程度、認識が共有されております。ですが、介護DBですとか連結データに関しては、まだそこまでの蓄積がございません。現在進行中の厚労科研研究班で検証しているところでございます。
 ページ番号5を御覧ください。
 もう一つ、ID5の課題について申し上げます。
 ID5は、最古の医療被保険者番号に基づくIDで、匿名で同一個人の特定が可能だという特徴がございます。これは、ID4の課題を解決しているかと考えます。
 ただ、介護DBの場合、介護の認定審査などのタイミングで、医療の被保険者番号を順次収集するということになりますので、どの程度網羅的に介護DBにID5が付与されているのか、その付与率については、まだ十分に確認できておりません。これも、今後検証が予定されております。
 それから、公費単独医療における分析上の課題も申し上げておきます。
 主に公費単独医療、例えば、生活保護などがその例になるかと思いますが、これらの対象者においては、個人単位被保番に基づくIDが当座付与されていない可能性がございます。その場合、公費単独医療の対象者データとどれぐらい介護DBデータとがひもづくか、等についても検証が必要と考えております。
 ページ番号6を御覧ください。
 その他の技術的課題ですが、ここでは主に要介護認定情報の活用における課題について御紹介いたします。
 介護レセプト情報は、介護のサービスが発生した翌月以降に発行され、基本的にサービスを受けたらその月ごとに集計を得ることが可能になります。
 一方で、要介護認定情報は、新規に認定される場合や、区分の変更、更新など、数か月、場合によっては年単位での期間を置いて、認定を受けたそのタイミングにしか、発生することはありません。
 要介護度の情報だけであれば、介護レセプトに記されたサービス情報から、ある程度類推することができます。ただし、例えば認知機能に関する詳細な情報は、要介護認定情報にしか含まれていない場合も多くございます。そうした要介護認定情報に含まれる認知機能の詳細な評価と、介護レセプト上の介護サービスの提供の実態の関連などを評価しようとすると、この各月のレセプト情報に要介護認定情報をさかのぼって埋め込むといった、相応の技術的負荷が発生すると見込まれます。
 ページ番号7を御覧ください。。
 次は解釈上の課題について申し上げます。
 NDBのデータの場合、認知症について分析する場合は、該当薬剤の使用量などを使用することがあると思いますが、これは、ある程度正確に使用量を算出できます。
 一方で、認知症患者の多くは高齢者で、認知症以外にも併存症がございますので、実施されている検査や処置など、これらが認知症に対して行われたのか、あるいはその他の併存疾患に対して行われたのかを判定するのは、検査や処置の内容にもよるのですが、難しい場合がございます。
 それから、NDBデータには検査結果、それから病状、こういった情報を反映する直接的なデータがございません。このため、治療効果などをNDBデータのみから検証することは、簡単ではございません。
 ページ番号8を御覧ください。
 今度は介護DBデータの解釈上の課題です。
 介護DBデータにつきましても、NDBデータと同様、提供されたサービスと認知症との直接的な因果関係がどこまで検証可能かが不透明です。認知症であるがゆえに必要とされた介護サービスなのか、併存疾患やその他の理由により必要とされた介護サービスなのかの区別が容易ではございません。
 一方で、介護DBには要介護認定情報がございますので、NDBと比較しますと、ある程度は認知症による日常生活自立度の把握が可能でございます。その場合も認定時期や更新時期を考慮した分析が必要になろうかと考えております。
 9ページ目では、これら両データの連結時の課題を述べています。NDBデータと介護DBデータを連結させたデータには、どちらにも、認知症に関する情報が含まれています。このどちらを、どのように活用するかということを、各研究の際に、判断することが必要となります。
 NDBデータに含まれている、認知症であるか否かを評価する情報として、まず考慮すべきは傷病名です。しかし、いわゆるレセプト病名の存在の可能性もございますし、逆に、処方のない認知症の事例の場合には、傷病名が付与されていない可能性も高くなります。
 介護DBデータの場合は、認定を受けている事例であれば、ある程度正確に認知症の有無が評価されていると思われます。
 しかし、認知症があるにもかかわらず、要介護の審査判定を受けていない事例は相当数あると見込まれます。
 したがいまして、連結解析に取り組む際に、どういった事例を認知症事例として評価するのかについては、かなり厳密に方針を立てて臨む必要がございます。
 ページ番号10を御覧ください。
 ここまでは、連結データの分析に関して想定される課題、どちらかというと、厳しいと思われる課題を中心に述べてまいりましたが、ただ、そのような状況でも、今後どういったことが実現可能かということも検討すべきかと考えます。
 そこで、ここからは、連結データを用いた分析の可能性について、ご紹介したいと思っております。
 まず、ID連結の精度がまだ不明なため、連結できたデータのみを使用するという前提でお話しします。介護サービスを受ける者のADL情報は、要介護度のほかに、要介護認定情報に含まれる、日常生活自立度の項目がございます。障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)でございます。これは、概ね身体機能を反映していると思われます。
 もう一つは、認知症高齢者の日常生活自立度も、ADLを反映し得る情報とみなせます。
 この両者を使うことで、認知機能の違いが医療費や介護にどういった差をもたらしているのかを評価することは不可能ではないと思われます。
 例えば、障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)や、年齢といった条件をそろえた上で、認知症高齢者の日常生活自立度のスコアの違いが、介護費用の差にどう表れるか、ということを明らかにするなどといったことが考えられます。
 ただ、これとて、例えば心不全などで在宅酸素が導入されていたりすると、身体機能としてはある程度自立しているが、歩いたりするとすぐ息切れをしたりしてしまうということで、実際のADLはやはりよくないのだという場合があったりします。そうすると、介護費用の差にも表れますので、こういったことも考慮した検討が必要になろうかと思います。
 ページ番号11を御覧ください。
 これは、障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)を区分した表になります。ランクがJ、A、B、Cと分かれており、それぞれのランクの中に1と2の度合いの区分がございます。
 例えば、ランクJとランクCを比べますと、これは大きく違います。ただ、同じランクの中での1と2の違いなどは、認定や更新の時期のコンディションの違いなどで差も出てきます。これをエビデンスとして、そのまま使えるかというと簡単ではなく、利用者が、これをうまく解釈する必要があるかと思います。
 スライドの12枚目を御覧ください。
 同じく、認知症高齢者の日常生活自立度になります。こちらも認知症以外にも、例えば脳神経疾患ですとか、その他の疾患に罹患している場合に、ランクが悪くなってしまう場合がありますので、こういったことも含めて考慮する必要があろうかと思います。
 ページ番号13を御覧ください。
 これは認定調査票でして、認定を行う方が、この7番のところに○印をつけて評価をするということでございます。
 ページ番号14を御覧ください。
 こういった情報は、介護DBのどういった場所に、どういった項目で入っているかを示しているものです。かなり利用者寄りの情報になることをお許しください。
 こちらにお出ししている「要介護認定情報(D_NINTEI)」というレコードのところの項番165、166のところを探せば、この寝たきり度ですとか認知症高齢者自立度の状況を知ることができます。
 次のページ、これも厚労省の定義表にございますが、例えば、寝たきり度でございましたら、自立していればコード値は1、一番悪い状況だと8といった形で情報を得ることができます。これをNDBの、例えば認知症の治療薬の使用状況、あるいはそれに基づく認知症の程度の度合いの推移と絡めて分析することで、介護費用にどういう影響が出たかということをNDBと介護DBの連結データで評価することは、種々調整が必要かと思われますが、可能性としてはあるのではないかと考えております。
 私からは以上となります。どうもありがとうございました。
○安川部会長
 加藤先生、どうもありがとうございました。
 では、引き続き、事務局より御説明の続きをお願いいたします。
○木下医療技術評価推進室長
 事務局、医療技術評価推進室長でございます。
 それでは、資料薬費-1、16ページにお戻りください。
 介護費用の分析の取扱いに係る論点をまとめております。
 まず、現状と課題でございますが、現行のガイドラインでも、公的介護費用へ与える影響が評価対象技術によって重要である場合には、公的介護の費用を含めた分析を行うことができるとされているが、これまで介護費を含めた分析が行われていないこと。
 専門部会における議論において、「介護費用の取扱いについて、介護費用を含めた分析についての研究の状況を見て判断すべきではないか」、「介護費用の軽減を医療保険の財源を使って評価することが妥当かどうか、深い議論が必要である」という意見がございました。
 また、諸外国において、公的介護の制度が異なるため一概に比較は困難であるが、介護の費用への影響を分析に組み込むこととしている国が複数あること。
 我が国においては、公的介護に係る統一的なデータベースとして介護データベースが整備されていること。
 製造販売業者から提出された薬価基準収載希望書では、承認審査に用いられた有効性・安全性に係る試験成績に関する資料以外に、介護費用等に基づく評価に関する内容が含まれていること。
 また、本日、有識者よりNDBと介護DB連結データ分析の特徴について御説明いただいたということをまとめております。
 論点といたしまして、介護費用の分析の取扱いに関しては、NDBと介護DB連結データ分析の特徴も踏まえ、研究を進めることについてどのように考えるか。
 今後の議論の進め方として、費用対効果評価制度の試行的導入時を参考に、研究の内容や成果も踏まえ、最終評価の在り方を検討することについてどう考えるかとしております。
 費用対効果評価に係る説明は以上となります。
○安川薬剤管理官
 薬剤管理官です。
 では、最後にⅢで論点をまとめております。18ページを御覧ください。
 本剤、レケンビについて、高額医薬品としての議論は、以下に従って取りまとめることとしてはどうかということで、まず、矢羽根が2つありますが、薬価については取りまとめの方向(案)で示した事項について示すことでよいか。
 2つ目、費用対効果評価については、制度の見直しの論点でも示していた介護費用の取扱い、価格調整範囲の在り方に関して、これまでの費用対効果評価専門部会や本合同部会の議論を踏まえ、方向性を示すことでよいか、と示しております。
 また、2つ目の○です。今回の議論は、個別企業の品目でありますが、前回、感染症治療薬で対応したときと同様に、関係業界の意見を聞いた上で、本剤の取扱いについて取りまとめていきたいと考えていますので、このような機会を設けることについて提案するものでございます。
 説明は以上となります。
○安川部会長
 ありがとうございました。
 それでは、本日の論点についての議論に入りますが、その前に、まず、先ほどの加藤先生からの御説明についての質疑を行いたいと思います。
 ただいま、縷々御説明いただきました加藤先生からの御説明に関して、御質問、御意見等ございましたら、お願いいたします。
 では、長島委員、お願いいたします。
○長島委員
 加藤先生におかれましては、連結データ分析について御説明をいただき、ありがとうございます。
 様々な課題があるということと同時に、可能性についても理解を深めることができました。
 そこで1つ質問をさせてください。大変難しい質問で、単純なお答えは難しいとは思いますけれども、先生の研究の御経験から、今回のレケンビを用いた際に、介護費用がどの程度低減されるのか、連結データの解析から明らかにできる可能性がどの程度あるのか、感触でも結構ですので、もし可能でしたら教えていただければ幸いです。
○加藤先生
 先生、どうもありがとうございました。
 大変重要な御質問かと思います。今、伺いました中で私が感じましたのは、仮にレケンビを使っても、通所サービスですとか、介護サービスが、そのレケンビの効果により受けていたサービスを受けずに済むようになる、などといった、ドラスティックな変化が、多くの事例にすぐに起こるのかどうかは、ちょっと難しいかもしれないと思っています。
 ですが、要介護度が改善して、通所サービスは受けるけれども、例えば通所サービスの要介護度の変化により、点数といいますか、単位数が変わってきたりすると、これは介護サービスの費用の低下につながるかと思います。
 ですので、この薬剤が定着してきて、実際に要介護度の変化になって現れてくるかどうかが鍵ではないかと思っております。ただ、それはある程度利用が進んでからの話になります。この手のデータで明らかにするのであれば、ある程度利用が進んでからのほうが、リアルなエビデンスになり得るのではないかと考えます。
 お答えになっているかどうか分かりませんが、私の所感を述べさせていただきました。
○長島委員
 先生、難しいところ御回答をいただき、ありがとうございます。また、先生の御研究を、ぜひ進めていただいて、臨床現場にフィードバックをお願いできればと思います。
○加藤先生
 ありがとうございます。
○安川部会長
 ほかにいかがでしょうか。
 では、池端委員、お願いいたします。
○池端委員
 ありがとうございます。
 私も、今の長島委員とほぼ似たような御質問になるかと思いますが、レケンビのことを考えますと、要支援とか割と軽度な方の進行が、3割ぐらい進み方が遅れるという効果があったと思います。
 そうすると、やはり長期に効果を見るべきものだと考えると、研究として考えれば、例えば5年、10年というスパンを考えねばなりません。私は要介護度の中に、いわゆる寝たきり度と認知症の日常生活自立度と両方ともこの認定のときに全部データが出るということなので、1年あるいは2年ごとに3回、4回取って、5年、10年のスパンで、よくなることはなかなかないとは思いますけれども、進行の遅くなる程度が、はっきりと自立度で出る可能性はあるのではないかと思います。その辺まで考えて、5年、10年のスパンで、例えデータの取り方で、多少ダブったものがあっても、全体としての傾向が分かれば、その傾向は評価できるかなと思いますけれども、そんな考え方で、あり得るのかどうか、加藤先生にお聞きしたいと思います。
○加藤先生
 ありがとうございます。
 御指摘のとおり、やはりある程度期間を追わないといけないと思いますので、腰を据えた研究になるかと思います。
 その際には、やはり、IDの話、最初に私ども申し上げましたが、意外とIDの話というのは、やってみた人たちが一番直面して非常に頭を悩ませる問題で、やっていない人からすると、それは、もともと当然つながるものですねみたいな感じで思っておられる場合が多いのです。ですので、このIDをつないでデータの質を高めるという努力を、我々も含めて意識していく必要があるのかなと思っています。そうすると、5年、10年の研究に耐え得るデータが出て、そうすると利用者も増えて、利用者が増えると、このデータをうまく使おうという様々なアイデアが出てくる、といった好循環にもなりますので、そういう動きに期待したいなと思っております。
 ありがとうございます。
○安川部会長
 では、森委員、お願いいたします。
○森委員
 ありがとうございます。
 加藤先生、御説明ありがとうございました。
 連結されたデータの分析に着手した直後であるということ、そうした中で現時点では、介護DBの活用と同様に、NDB、介護DBの連結の技術的な課題や、要介護認定情報の活用の課題、また、結果の解釈の課題等があることがよく分かりました。
 そうした中、先ほどから要介護度の改善・維持が評価の1つになるのではないかというお話がありましたけれども、確かにそのとおりだと思うのですが、一番難しいのは、先生がお話になっていたように、認知症との直接的因果関係をそのことでどう見るかということが一番難しい課題になるような気がしますけれども、そこの辺りについて先生から御説明をいただければと思います。
○加藤先生
 ありがとうございます。
 森先生の御指摘のとおりでございまして、私のスライドにも、例えば、脳神経疾患だとか、その他疾患による認知機能の低下であっても、恐らくスコアリングだと、例えばスコアリングが悪くなるということが十分あり得ると思います。
 それもあるので、例えば何年か継続して追いかけているうちに、IDがつながらなくなって落ちていったとかいうことになると、n数がどんどん下がっていってしまいます。例えばパーキンソン病ならパーキンソン病、あるいは脳血管疾患なら脳血管疾患という、比較的患者数の多いものについて、条件をそろえて、その上で認知症の有無を変数として2群をつくって比較するという場合にも、IDがつながりません。つながっていたと思っていたIDが、精度が悪くて落ちてきましたとなると、研究に耐えられません。ですので、繰り返し申し上げて恐縮なのですが、IDの精度はそれがある程度クリアされるのであれば、非常に疾患数の多い脳血管疾患や、いわゆる神経系の疾患について、条件をそろえて2群比較をするということだと、あり得るのではないかと思います。
 そういったことも含めて、大勢の方にこの領域に興味を持ってもらって、大勢の方がデータを操作してもらって、その知見をディスカッションし合える空気、NDBでも10年たって徐々に育ってきていますが、この連結データあるいは介護のデータでもそういう機運が高まっていくことを、私は大変期待しております。
○安川部会長
 では、江澤委員、お願いいたします。
○江澤委員
 ありがとうございます。
 いろいろ詳細な御説明をありがとうございました。
 質問ですが、まず1点目は、今、介護認定審査のインターバルが大体2年から3年の人が多い、最大48か月ということになっていまして、そういう認定期間が異なるグループごとに解析して、それをまた総合的に解析するのが可能なのかどうかというのが1点。
 もう一点は、御存じのように、介護保険は契約によってサービスが始まりますから、結構、御本人や御家族、ケアマネジャーのケアプランによって、かなり介護費用が影響を受けますので、その点、なかなか難しいところだと思うのですけれども、どのように解釈するかということで、2点お伺いしたいと思います。
○加藤先生
 御質問いただきありがとうございます。
 認定期間に関しましては、全くそのとおりで、我々も分析していたときに、2年分のデータをいただきました。
 ですが、初期のデータで介護レセプトのある方で、この方の要介護度の詳細な評価はどうなっているのだろうと思うと、その前の年、前々の年にあるのすけれども、データ入手できていないのですね。だから、詳細な要介護に関する情報が分からないということがあったりしました。
 これは、やってみて初めて気づいたのですが、今、言いましたように最大48か月になりますと、例えば2020年の介護データで研究しようと思うと、16、17、18、19年の要介護認定情報もいざという時のためにもらっておかなければいけないみたいなことになっていったりします。しかも、それをきちんと、そのときそのときのレセプト情報とリンクするようにしようと思うと、かなり技術的な負荷がかかって、精度と技術に両方に長けた、1人の研究者では無理でしょうからグループでやらないと難しいということを印象として持ちました。ですので、御指摘のとおり、こういうことを分析したり研究する機運ですとか、フィールドとか研究者が、まずは増えることが重要かなと思っております。
 介護保険に関しましては、おっしゃるとおりの、第三者からしたら介護を受けて当然ではないかというぐらいADLの悪い方ですとかでも、御本人、御家族が拒否をされると、なかなか介護が受けられないということもございます。
 その辺りは、恐らく統計分析をするときには、その辺の条件をできるだけそろえて両群比較をするとが、そういうところから始めていくしかないのかなと思っています。
 それを行うためにも最低限IDはつながって、データとして相応のn数が確保できるような環境になってくれていることを望みますし、今、森先生の研究班では、そこを評価していただいていると認識しています。ありがとうございます。
○安川部会長
 どうもありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。
 では、佐保委員からお願いいたします。
○佐保委員
 加藤先生、いろいろ説明をいただきましてありがとうございます。
 こういった研究は、とても重要だなと思っていますが、1点、確認をさせていただければと思います。
 先ほど加藤先生のお話の中でもありましたが、認定調査の中で、障害高齢者の日常生活自立度の部分と、それから、認知症高齢者の日常生活自立度の部分で、ランクCとか、Mといったら、完全に差があるので分かるのですけれども、そうではない、例えば、障害高齢者の日常生活自立度でいけば、J1とJ2の差とか、それから認知症高齢者の生活自立度でいけば、ⅡaとⅡbの差といったところは、なかなか判断が難しいと思っておりまます。
 まず、認定調査員の調査票での、認定調査員での判断の部分と、それから主治医意見書の主治医の先生がおつけになる自立度といったところで、それぞれ認定審査で審査されていくと、私も理解しております。
 そういった中で、やはり個々の調査員とか、個々の主治医の先生の判断で、ここはJ1だ、J2だとか、Ⅱaだ、Ⅱbだという差が出てくるものと思っておりますが、そういう認識で間違いないでしょうかというのが質問でございます。
○加藤先生
 ありがとうございます。
 おっしゃるとおり、十分に差が出ると思います。ですが、私が思うのは、NDBのデータも利用当初から、これは宝の山だという人と、例えば、レセプト病名とかがあるから全く使い物にならないという人に完全に二極化していたことがあるのです。
 今は、その根本的なところは変わっていないのですけれども、できない中でどうしようかというところで、それでもNDBを使おうという人が徐々に増えてきているように思います。
 おっしゃられたように、自立度などでも本当に主観的に解釈の入る項目というのは、とかく、その問題と表裏一体になるので、あとはユーザー側が、おっしゃっておられたように、一番良いカテゴリーと一番悪いカテゴリーで比べるとか、8項目のカテゴリーを研究する側で2区分、3区分に集約化して行うとか、そういうことをすることで、可能性が広がるのかなと思っています。
 それも含めて、利用者が増えて、こういうディスカッションが増えると、それはいいという感じになってくると思うので、そういう意味で可能性もあるし、期待も大きいのだと思っております。
 以上です。
○安川部会長
 もし、差し支えなければ、御参加いただいております、森先生、植嶋先生から、もし何か補足、コメント等ございましたら、簡単にお願いできるとありがたいですが、いかがでしょうか。
○森先生
 ありがとうございます。森でございます。
 おおむね加藤先生が御説明いただいた内容のとおりかなと思っております。現在のIDの連結度合いについては、厚労科研のほうで調査させていただいておりますので、そちらのほうをできるだけ有意義な形で公表できるように進めてまいりたいと思っております。ありがとうございます。
○植嶋先生
 植嶋でございます。
 私も御両名からのコメントのとおりでございますので、特段追加のコメントはございません。このたびは、ありがとうございます。
○安川部会長
 ありがとうございました。
 飯塚委員からお手が挙がっていますので、お願いいたします。
○飯塚委員
 ありがとうございます。
 資料の12ページで、認知症高齢者の日常生活自立度、これは、使えるのではないかという御指摘がありまして、これは非常に興味深いデータだと思うのですけれども、質問ですが、これは必ずしも認知症をそのまま100%指標化したものではないと、単語上は読めるのですけれども、この認知症の程度と、それから自立度というのは、相当高い相関を持っているものであるから、こういった自立度の指標というのが非常に有効ではないかと、そういう理解でよろしいのでしょうか。
○加藤先生
 ありがとうございます。
 非常に鋭い御質問で、皆様方のご意見を本当に有難く思っております。というのは、ここでの紹介例は一例として使え得るのではないかということで出しているにとどまるものでして、必ずしもこれが鋭敏に、本当に認知機能なり何なりを反映しているかどうかは、まだ分かりません。
 ただ、それも含めて、触ってみないと分からないところがある中で、使えるような指標ということで、今回、一例出させていただきました。例えば、これ以外にも、要介護認定の調査票の中には、認知機能を表す質問項目なども入っていたりするので、その辺りは現場で介護の担当されている方とかとコミュニケーションをしながら、どの指標がより鋭敏な可能性があるかということは、研究の中で進めていく必要があるかと思っております。
 これは一例でして、これ以外のデータも、今後、そういった評価に使える可能性があると考えております。
 以上でございます。
○飯塚委員
 ありがとうございました。
○安川部会長
 ありがとうございました。
 では、引き続きまして、論点についての議論に移りたいと思います。
 事務局からの説明あるいは本日の論点について、御質問、御意見等がございましたら、お願いいたします。
 では、長島委員、お願いします。
○長島委員
 今回の論点について異論ございません。
○安川部会長
 ほかにいかがでしょうか。
 松本委員、お願いします。
○松本委員
 ありがとうございました。
 今、御説明をいただきました介護費用の分析につきましては、研究者からの御報告の中でも、言葉の中でも不可能ではないと思われると、なかなか意味深な言葉になっておりますけれども、結構、やはりハードルが高いということは、技術的にも解釈上からもあるということが理解できました。
 研究については、引き続きやっていただきたいと思いますけれども、今後どのような方法があるかを慎重に検討いただきたいと思います。
 それ以外については、示された方向で異論ございません。
○安川部会長
 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。
 よろしいでしょうか。ほかにお手が挙がっていないようです。ほかに御質問等がないようでしたら、本件に係る質疑は、この辺りといたしたいと思います。
 加藤先生、どうもありがとうございました。
 次回につきましては、本日の議論を踏まえた取りまとめの方向に関して、合同部会の形式で、関係業界の御意見を伺うこととしたいと思いますが、それでよろしいでしょうか。
(異議なしの意思表示あり)
○安川部会長
 ありがとうございます。
 それでは、次回も合同部会として開催し、関係業界の御意見を伺うことといたしたいと思います。
 本日の議題は以上です。
 次回の日程につきましては、追って事務局より御連絡いたしますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、本日の合同部会は、これにて閉会といたします。長時間ありがとうございました。

 
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