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2019年2月6日 中央社会保険医療協議会 費用対効果評価専門部会・薬価専門部会・保険医療材料専門部会 合同部会

○日時

平成31年2月6日(水)9:29~11:05

 

○場所

厚生労働省講堂(低層棟2階)

○出席者

荒井耕部会長 田辺国昭委員 野口晴子委員 中村洋委員 関ふ佐子委員
吉森俊和委員 幸野庄司委員 平川則男委員 間宮清委員 宮近清文委員 松浦満晴委員 榊原純夫委員
松本吉郎委員 今村聡委員 城守国斗委員 島弘志委員 猪口雄二委員 遠藤秀樹委員 安部好弘委員
平野秀之専門委員 上出厚志専門委員 堀之内晴美専門委員
林利史専門委員 五嶋規夫専門委員 
<参考人>
福田敬参考人 池田俊也参考人
<事務局>
樽見保険局長 渡辺審議官 山本審議官 森光医療課長 古元医療課企画官
樋口保険医療企画調査室長 田宮薬剤管理官 小椋歯科医療管理官 他

○議題

○関係業界からの意見聴取について

○議事

 

○荒井費用対効果評価専門部会長
ほぼ定刻になりましたので始めたいと思います。
ただいまより第16回「中央社会保険医療協議会・費用対効果評価専門部会・薬価専門部会・保険医療材料専門部会合同部会」を開催いたします。
まず、本日の委員の出欠状況について報告します。本日は、松原委員が御欠席です。
なお、会議冒頭のカメラの頭撮りはここまでとさせていただきます。
(カメラ退室)
○荒井費用対効果評価専門部会長
それでは議事に入ります。
今回は、関係業界からの意見聴取を行いたいと思います。
関係団体として、「日本製薬団体連合会」、「日本製薬工業協会」、「米国研究製薬工業協会」、「欧州製薬団体連合会」、「日本医療機器産業連合会」、「日本医療機器テクノロジー協会」、「米国医療機器・IVD工業会」、「欧州ビジネス協会」より、意見を聴取したいと考えております。
それでは早速、意見陳述に移りたいと思います。
なお、医薬品の団体より45分、医療機器の団体で25分をそれぞれ目安としてプレゼンテーションしていただいた後に、まとめて質疑とフリーディスカッションを行いたいと思います。
それでは、まず、医薬品の団体より、自己紹介を行った上で、プレゼンテーションをよろしくお願いします。
○日本製薬工業協会(中山氏)
日本製薬工業協会の会長を務めております中山でございます。このたびは、意見陳述のお時間をいただき、まことにありがとうございます。
本日は、「日本製薬団体連合会」、「米国研究製薬工業協会」、「欧州製薬団体連合会」、そして、私ども「日本製薬工業協会」の4団体の意見を述べさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
まず初めに、今回、骨子案が取りまとめられましたが、これに至るまで大変熱心に御検討いただきました中医協各側委員の皆様、そして課題が多い中、骨子案として整理をいただきました事務局初め関係者の方々に心より敬意を表したいと思います。ありがとうございました。
今回、示されました骨子案でございますが、費用対効果評価の活用方法など、全体の方向性としては私どもの意見が尊重されているものと認識しておりますが、一方で、個別の基準などは総じて厳しい内容であったものと捉えております。おのおのの課題につきまして意見を述べさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
スライド2をごらんください。
まず、費用対効果評価の活用方法でございますが、保険償還の可否の判断に用いるのではなく、保険収載した上で価格の調整に用いることについては賛同いたします。
その上で、薬価基準制度との整合性を踏まえ、新薬の価値評価のあくまで補足的な手段として限定的に用いられるべきものと考えております。
続きまして、対象品目の選定基準でございます。スライド3をごらんください。
費用対効果評価の対象品目の選定におきまして、医療保険財政への影響度を重視する観点から、革新性が高く、財政影響が大きい医薬品を主な対象とすることにつきましては、特段の異論はございません。
こうした中で、原価計算方式で算定された品目につきましては、有用性系加算が適用されたものに加え、輸入品目が主と考えられる開示度が低いものが対象とされておりますが、新薬の革新性の高さと開示度に特段の関連性はなく、さらに、日本以外の国への輸出価格の状況などについて確認された上で薬価算定されております。これらのことを踏まえますと、原価計算方式においても有用性系加算が適用されたもののみを対象とすべきと考えております。
類似品目につきましては、代表品目を比較対照として算定された医薬品とされておりますが、その選定に当たっては、適応の範囲や臨床上の位置づけの違いなども十分に考慮した上で慎重に判断いただきたいと考えております。
また、品目の選定や選定後の対応方法につきましては、制度化後の運用状況を踏まえつつ、引き続き検討を行うことが必要であると考えております。特にH2に区分される新薬の候補品としての期間につきまして、一定の期限を設けるなどの必要な措置について御検討いただければと思っております。
次に、分析のプロセスでございます。スライド4をごらんください。
費用対効果評価につきましては、関係者が共通の理解に立って分析を進めることが重要であると考えます。骨子案におきましては、ここに例として3点挙げておりますが、試行的導入を踏まえた改善が図られているものと認識しており、プロセス全般の見直し案につきまして賛同いたします。また、企業と公的分析班が相互に照会することで、共通の理解が得られるようになれば、分析もスムーズに進み、分析結果について関係者が納得できるものとなると思います。
分析プロセスの中で、企業が分析結果を提出するまでの標準的な期間として9カ月程度と設定されておりますが、実際の作業工程を踏まえますと、この期間は極めて短く、期間内に終了しない事案が発生する可能性も危惧されます。標準的な期間での分析が困難な場合には、その理由を中医協総会に報告することとされている点は重要であり、対象品目及び企業の状況に応じた丁寧な運用をお願いしたいと考えます。さらに、企業分析の一連の工程に要した期間や課題等を集積して検証を進めるなど、引き続き検討が必要と考えております。
スライド5をごらんください。
データが不足しているなどの理由で分析不能であることが確認された品目につきまして、専門組織での協議を経た上で、中医協総会において分析・評価を中断することができることについては賛同いたします。
一方で、分析に必要なデータの提出や必要なデータが得られない場合の取り扱いにつきましては、一律に適用するのではなく、個別品目の特性を踏まえた対応をお願いいたします。
また、分析ガイドラインにつきましては、今後集積される事例も踏まえながら引き続き検討を行い、適宜、見直しを実施していただきたいと考えております。
スライド6をごらんください。
次に、総合的評価でございますが、提案されている内容は、ICERによる評価に偏った方法であり、配慮を行う要素及び価格への反映方法につきましては、現在の提案では不十分であると言わざるを得ません。
制度化以降、ICERの分析結果のみでは評価が困難と考えられる要素、例えば、公的介護費や生産性損失に加え、その他医薬品ごとの特性に応じた幅広い価値につきましても、企業から提出された結果を費用対効果評価専門組織において継続的に御検討いただきたいと考えております。さらに、その結果を集積した上で、ICER以外の要素の追加及びその評価方法を含めたよりよい費用対効果評価の仕組みについて、引き続き検討が必要であると考えます。
スライド7をごらんください。
価格調整でございますが、有用性系加算の価格調整率の最大90%の引き下げは、新薬の有効性や安全性等の評価に基づいて運用されるという薬価算定ルールとの整合性や、薬価制度を補完する観点を踏まえますと、過度な引き下げであると考えます。前回の意見陳述でも申し上げましたとおり、最大50%の引き下げにとどめるべきであると考えております。
次に、引き下げ調整を行う場合の下げどめルールを設けることにつきましては賛同いたしますが、費用対効果評価は薬価制度を補完するものであり、市場拡大再算定などの既存の薬価基準制度との整合性を踏まえますと、費用対効果評価の結果に基づく過度な引き下げは適切ではないと考えます。引き上げ調整の上限との整合性に加え、安定供給の確保やイノベーションの適切な評価といった観点も踏まえ、下げどめの上限は価格全体の10%にすべきであると考えます。
続きまして、スライド8をごらんください。
費用対効果評価の制度化に際しましては、人材育成を初めとした体制の強化が必要であるとする考え方に賛同いたします。政府におかれましては、必要な措置をぜひお願いいたします。
スライド9をごらんください。私どもの意見の総括でございます。
1点目でございますが、費用対効果評価につきましては、新薬の価値評価のあくまで補足的な手法として限定的に用いられるべきものであり、原価計算方式につきましても有用性系加算が適用されたもののみを対象とすべきであると考えます。
2点目でございます。価格調整につきましては、現在の提案では過度な引き下げであると考えております。有用性系加算の引き下げ率を最大50%とするとともに、調整前の薬価を10%引き下げた価格を下げどめとしていただくよう、お願いいたします。
3点目でございます。ICER以外の要素の追加及びその評価方法を含めた、よりよい費用対効果評価の仕組み等につきまして、今後、集積される事例も踏まえながら、引き続き検討を行っていただくとともに、新薬のイノベーションの適切な評価という観点から医薬品の価値評価の充実が必要と考えます。
私ども4団体共通の意見は以上でございます。
最後に、これは日本製薬工業協会としての意見になりますが、我が国の医療保障制度において、社会保険方式を採用し続ける限り、費用対効果評価の結果を償還の可否に用いるべきではないと考えております。また、費用対効果評価の結果に基づき、薬価基準制度上の有用性系加算を縮小させるという方法の仕組みを制度化させるのであれば、薬価算定時における加算体系のあり方について検討する必要があると考えます。ぜひとも御検討いただけますよう、お願い申し上げます。
以上でございます。御清聴ありがとうございました。
続きまして、PhRMA、EFPIAの代表者より補足意見をお願いします。
○米国研究製薬工業会(パトリック・ジョンソン氏)
おはようございます。私は日本における米国研究製薬工業会(PhRMA)の会長を務めておりますパトリック・ジョンソンです。きょうは、意見陳述をさせていただく機会をいただき、ありがとうございます。本日は、私とケビン・ハニンジャー、ワシントンのオフィスのHTSの専門家とともに意見表明をさせていただきます。12月の意見陳述の際にも、ケビン・ハニンジャーは出席をさせていただきました。彼は、HTAの分野において世界的な経験、情報を持っております。世界のこういった制度は、よいものもあれば悪いものもありますが、彼はそれを全て承知しています。
次のスライドをごらんください。
私ども米国研究製薬工業協会は、ただいま、日本製薬工業協会からの意見陳述の内容がありましたが、その内容に完全に賛同しています。そして、確かに今回まとめられました骨子案は、このプロセスに関して幾つかの機会、新たな機会がメーカーに提供され、例えば、費用対効果評価専門組織に質問をしたり、あるいは協議をする機会が与えられたということについては十分評価をしています。
しかしながら、やはり私どもは、この日本製薬工業協会、また、欧州製薬団体連合会とともに、こういった日本における費用対効果評価の制度の導入において、まだ、懸念点が残っていると感じています。まず、日本は患者のアクセスを阻害せず、また、革新的新薬がこれからも引き続き開発されるようなイノベーションを推進するHTAの制度を創出する機会を十分に捉え切れていないと、私たちは考えています。
HTAの今回の骨子案の中で、私どもが極めて高い懸念を抱いているのは、特に総合評価のプロセスのあり方であり、現在の提案内容というのは、費用対効果評価の結果というものを保険償還の可否の判断には用いないということにはなっているものの、やはり、現在の提案内容のままですと、何十年にもわたってHTAの分野において積み上げられてきた世界のほかの国々のベストプラクティスというものを、十分活用し切れていないと感じております。やはり、ICERだけに焦点を当てたアプローチをとるというものは、医薬品の価値の重要な要因というものを完全に評価に考慮することができないと考えています。
例えば、私が言わんとしているその他の因子というのは、十分にICERでは捉えることができない疾患の重篤度、あるいは、ほかに治療の選択肢が存在しないような疾患というアンメットメディカルニーズの存在、広く社会に対して医薬品がもたらす便益などが挙げられます。これらの要因をほかの国々で評価に考慮している制度もあります。これによって、患者あるいは医療制度全体が、十分に享受している価値というものを反映することができます。
次のスライドをごらんいただきたいと思います。次のスライドからケビン・ハニンジャーにバトンタッチいたしまして、こういった因子というものを評価にどのように反映することができるか、具体例を共有させていただきます。
○米国研究製薬工業協会(ケビン・ハニンジャー氏)
ありがとうございます。私は、ワシントンに本部を構えます米国研究製薬工業協会(PhRMA)のバイスプレジデントを務めておりますケビン・ハニンジャーでございます。きょう、私のほうからも意見陳述をさせていただき、ありがとうございます。
我々製薬産業としては、基本的な原則として医薬品の価格というものは、その医薬品が患者、医療制度、そして広く社会に対して提供する付加価値というものを反映すべきであると認識しています。
今まで各国で制度が導入され、その経験からわかっていることは、この付加価値というのはICERだけでは完全に捉えることができないということです。
したがって、日本政府が、現在提案している内容が、比較的範囲の狭い枠組みに依拠しているということは、私どもにとっての最大の懸念点であり、これは、まさに現在の国際的な規範、あるいはベストプラクティスからは逆行していると考えています。
今までの世界における私の体験を通じて言えることは、日本ほどICERに依拠していないシステムを導入している国の制度でさえ、イノベーションを損ない、患者の新薬に対するアクセスの支障となっている場合があるということです。
こういう理由によって、ますます多くの国々において意思決定の根拠となる情報を評価するために、より幅広い要因を考慮するようになっていると考えています。そして、国の中には、ガイドラインというものをまとめ、このエビデンスをどのように当てはめ活用していくべきかということも明確にしてきています。
国際的な専門家のパネルが、価値の枠組みとして、十分にコストあるいは便益というものを包括的に考慮することができない枠組みというものは、経済的な判断を行う際に、やはり欠点があるという評価をしています。つまり、こういった判断の枠組みを用いることによって、患者その他のステークホルダーに対してマイナスの影響を及ぼす危険性があります。
幾つか疾患あるいは治療法に関して、事例を御紹介したいと思います。余りにもICERに頼りすぎることによって、その製品の価値に関して間違った結論が導き出されてしまうという可能性をここで示唆したいと思います。
まず、認知症ですが、日本では認知症は460万人の患者さんがいると言われています。そして、社会が高齢化する中で、この有病率というのはどんどんと高まっています。
認知症は、多くの製薬企業が投資をし、新しい治療薬を開発しようと努力しているにもかかわらず、有効な治療法がはっきりと確立されていない疾患の一つです。
新しいこういった認知症に対する治療法によって、認知症の症状発症を予防する、あるいはその進行をおくらせる、または、症状を回復させる治療薬というのは、臨床試験の評価項目として完全にQALYではあらわすことができない便益がありますので、ICERだけですとICERの値が大きくなってしまう、あるいは大変不確実な結論しか得られません。
しかしながら、有効な治療法がもし確実に実施されるとすれば、追加的なQALYの延長ということ以上の便益をもたらすことができます。これは、今まで有効な治療法がなかったというアンメットメディカルニーズに対応することができますし、患者さんの苦しみを軽減することができます。また、介護者の負担を緩和すると同時に、その他の医療費あるいは社会保障費を軽減することにつながります。先ほど申し上げたように、こういった便益というのは、十分にQALYだけでは捕捉することができませんし、ICERでそれを十分に反映することはできません。
次に片頭痛を考えてみてください。50歳未満の人々にとって、これは日常生活に支障を来す最大の原因であると言われています。
片頭痛に悩む人々の3分の2は、労働生産性が大幅に落ちると言われています。つまり、日本の企業にとって、非常に大きな間接コストが増大するということを意味しています。
幸いなことに、片頭痛に対する治療薬は新たに開発されました。そして、こういった新しい治療法によって、人々は職場に復帰し、普通どおり仕事をすることができますが、こういった価値というのは、QALYあるいは計算されたICERでは完全に反映できません。
最後の例として、遺伝性視覚障害を例として挙げたいと思います。私たち科学が大幅に進歩した今の時代において、ついにこういった遺伝性疾患に対しての遺伝子療法というものが承認され使えるようになりました。
この治療法によって、非常に大きなこの患者さんたちの健康上のメリットというものが享受されますし、それ以外にもさまざまなプラスの効果が享受できます。これはQALYでは十分に測定することができません。つまり、この病気を持つ子供たちは、より普通の生活を送れるようになりますし、今までは不可能であったような職業あるいは教育を受けることができます。新しい職業の選択の自由が広がっていますし、また、もしも完全に失明してしまえば、社会に参加できなかったような制限というものが今やなくなりましたが、これもICERによって捕捉できるものではありません。
こういった事例をぜひ熟慮していただきたいと思います。このような疾患に対する医薬品というものは、日本政府としてそれに報いていくべきなのか、あるいは罰していくべきなのか、どういう扱いが一番適切なのかを考えていただきたいと思います。
次のスライドをごらんください。
前回の中医協のミーティング以来、私どもは、ICER以外の要因というものをどのように考慮すべきか、引き続きいろいろな検討をしていただいているということを十分理解しています。
ここでぜひ強調したいのは、私どもはこの1年間、国内外のHTAの専門家といろいろと協力をし、エビデンスベースでバランスのとれた、実施が比較的簡単な信頼できる評価の枠組みを策定しようと努力してまいりました。
ここで私どもが目指したのは、日本が透明性をもって実践的な方法でICERを評価すると同時に、幾つかの重要な追加的な要因を考慮できる方法を提供するということです。
追加的要因を評価するということは、エビデンスを提示する責任を持っている企業に対して指針、ガイドラインを提供するということも必要になりますし、また、そのエビデンスに関して結論を導き出す評価を担当する人々に対しても、ガイドというもの、指針というものが必要になります。
評価を行う人々は、提案されている総合評価の枠組みの中で、どれぐらいの影響度というものを3つの追加的な要因、側面から製品が持っているかということを、点数をつけ評価をすることができると信じています。
これは、前回もお話しさせていただきましたけれども、この3つの追加的な要因というのは、まず、疾患の重篤度、そしてアンメットメディカルニーズ、第2に社会に対する影響、第3にその他関連する要因と区分いたしました。
これら3つの区分で要因を評価づけ、それをICERの評価結果と結び合わせることによって、総合評価というものが得られ、この総合評価の結果というものが、医薬品の加算分を調整する必要があるのか、もし、調整する必要があるとすれば、どれぐらいそれを調整する必要があるのか、その意思決定のもとに使うことができます。
この枠組みを確立することによって、日本は透明な制度を整備し、最も製品の価値にとって重要な要素というものを勘案し、現行の薬価制度を補完するということが可能になります。
もちろん、どんなHTAのシステムであっても、それを導入、実施するに当たっては、そのための能力、育成が必要になりますし、追加的な要因をどのように評価したらいいか、具体的な指針というものを明確にする必要があるということは十分認識しています。
こういった理由から、私どもは、具体的な提案をジョンソンのほうからさせていただきたいと思います。
次のスライドをごらんください。
私からは以上です。
○米国研究製薬工業協会(パトリック・ジョンソン氏)
ありがとうございます。私どもが今までお話しさせていただきましたように、今、提案されている骨子で総合評価をさらに強化していくために、具体的な提案を以下のようにさせていただきたいと思います。
まず、第1に、スポンサー企業が、ICER以外の要因に関連したエビデンスを提供することを許していただきたいとお願いしたいと思います。そうすることによって、日本において、いろいろな経験、そして事例を積み上げていくことが可能だと考えています。
第2に、ステークホルダーからの更なる対話をぜひお願いしたいと思います。その対話の中で私どもが現在提案させていただいている業界の意見、あるいは、その他総合評価の枠組みに関する意見を御検討いただきたいと考えています。
第3にお願いしたいことは、この重要なICER以外の要因というものが、できるだけ早急に総合評価のプロセスに組み入れられること。できれば、2020年の薬価改定に組み入れられることをお願いしたいと考えています。もう一つ、今年中に複数のステークホルダーが参加し、透明性のある実施ガイドラインというものをまとめていただきたいと考えています。
ありがとうございました。
○欧州製薬団体連合会(トーステン・ポール氏)
おはようございます。私は、EFPIAのバイスチェアマンでありますトーステンでございます。私ども欧州製薬団体連合会としての視点について、お話しさせていただきます。
まずは、私どもといたしましては、費用対効果の評価が償還可否の判断のためではなくて、価格調整にのみ使われる点につきまして賛同しております。
それから、厚労省におかれましては、私どもの意見を聞いていただいて、そして、さまざまな御検討いただきましたことを感謝しております。
また、この提示されました骨子案につきましては、ある程度の改善案が示されていることについては評価いたしたいと思います。しかしながら、私どもの意見といたしましては、これは不十分であると考えているわけで、業界におけるさまざまな経験と専門性がこの骨子案においては十分に生かされていないと考えております。
EFPIAといたしましては、製薬協、それからPhRMAのほうで既に提示されましたさまざまな意見、懸念事項には賛同しているものでございますが、今後、このような協議をさらに続けていかれるようにお願いいたしたいと思っております。
ここにおきましては、私のほうから現行の骨子案における主要な問題点、また、リスクと感じられる点についてのみ、お話をさせていただきたいと思います。これは、例えば、対象品目の範囲ですとか、価格調整判断につきましての問題点であります。
まず、私どもが特に懸念を抱いている点は、原価計算方式で算定された新薬での選定基準であります。これらの新薬において原価計算方式で算定されたというのは、とりもなおさず、その画期性ゆえに類薬が市場に存在していないことがあります。
この現行の骨子案におきまして、驚くべきことに情報開示度合いに基づいた基準が、その他の基準に加えてさらに追加されてきた事実がございます。対象品目となりますのは、主に海外品でありますので、そういった意味で、私ども、この案では海外のイノベーションを阻む方向だと考えております。そのことは、結果、患者さんの革新的な治療に対するアクセスを制限することにつながるのではないかと懸念されております。
このスライドをもちまして、なぜ、輸入品の開示度合いが低くなるのかといったところを説明させてください。
この骨子案におきましては、原価計算方式で算定された際の費用の要素の中で、情報開示度が低開示度であるとされた場合も対象となってくるわけであります。これはしばしば輸入品であるわけで、このことが有用性系加算を受けたものの上に追加されてきているわけであります。
ですから、いわゆる革新性が高くて、財政影響大のものという話があったにもかかわらず、実際にはこのようにして、情報開示度という新薬の革新性とは何ら関係していない要素が選定基準の中に含まれているわけです。
ですから、輸入品になりますと、そのバリューチェーンが非常に複雑化してくるわけでありまして、これはさまざまな国、多くの業者を巻き込んだものとなってくるわけであります。そうなりますと、本当に全ての費用における根拠となる帳票ベースでの情報開示が実質的には不可能な場合が出てくるわけであります。例えば、労賃ですとか、製造原価でありますとか、その他、さまざまなこの業者にかかわる費用であります。
その一方におきまして、日本国内における開発費用、PMSの費用、基本的な情報提供にかかわる費用、その他国内の製造費用であったり、検査費用、パッケージングにかかわる費用といったもの、これら全て帳票ベースで詳細な情報が提供されているわけでありますが、しかしながら、これは全体の製造原価の中においては余り大きな部分を占めないことになりますので、情報開示度が低いということになってしまいます。
このような状況がありますので、したがって、こうした輸入品における価格の適切性というものが検討されていき、そして、その適切性が薬価算定組織において、当初、算定時において確認されているわけであります。その際のベースとなる情報としましては、例えば、日本以外のほかの国々への輸出価格などがベースになって決まってくるわけです。
加えまして外国価格調整がありますから、それが入ることによりまして日本が突出した薬価をつけることにはならないわけです。
したがいまして、このような原価計算方式により、薬価算定時に妥当な価格設定がなされていくようになっておりますので、ここでの対象となるべくは有用性系加算のついた品目のみであるべきだと考えております。
さらに、私どもが非常に懸念しているのは、このような薬価の切り下げでありますが、これが加算部分のみならず、営業益にまで切り込んでいくという点につきましては、非常に懸念されるところでありまして、これが開発への影響が出てくるだろうと考えております。
全体として申し上げたい点は、まず、対象品目の範囲が余りにも曖昧過ぎるのではないか、すなわち、余りにも多くの部分が厚労省の判断に委ねられているのではないかと考えております。その例といたしましては、ピーク時の売上については、2つの閾値が提示されているということ。それから、本省の判断によっては、費用対効果の結果が複数出る可能性が残されていること。重要な点としましては、類似品目の共連れのところであります。したがって、このことによりまして、この予見性が欠如し、制度の恣意的な運用につながるのではないかと懸念しております。
ここでお願いしたいのは、今後、実施ガイドラインを作成していただくプロセスを持っていただきたいということで、そこに参画するのはさまざまなステークホルダーで、臨床、それから医療経済、そして医療倫理の専門家などを配置して、それによりまして革新的な医薬品のフェアな評価を可能とする、そうしたAppraisal modelをつくっていただきたいと思います。
ぜひ、私どもが提示しておりますところのEFPIA、PhRMAから出したAppraisal modelをいま一度御検討いただいて、特にこれはICERとは独立したところでの革新的な医薬品の価値、ここでのバランスをいかにとろうとしているのかを見ていただきたいと思います。それから、特に原価計算方式での品目における選定基準の見直しをお願いしたい。その中において、私どもはできる限りのお手伝いをしたいと考えております。
私どもとしましては、今後、最適な医療制度がつくられていかなければならないと考えており、その中心に来るのはやはり患者さんの視点だと考えているわけであります。そして、いかにして必要とされる革新的な治療薬が患者さんに適切に届けられるか、そのことを考えていかなければならないわけで、これが単なる薬価の切り下げを狙った制度にならないようにしていかなければなりません。
御清聴ありがとうございました。
○荒井費用対効果評価専門部会長
ありがとうございました。
続いて、医療機器の団体より自己紹介を行った上で、プレゼンテーションをよろしくお願いします。
○日本医療機器産業連合会(笹氏)
日本医療機器産業連合会副会長の笹でございます。このたびは、昨年12月に引き続き、費用対効果評価に関しての意見陳述の機会を頂戴し、まことにありがとうございます。
本日ですが、私のほかに医機連田中、AMDD加藤・伊藤、そして、EBC出井の5名で参加しております。
それでは、1月23日の費用対効果評価専門部会・薬価専門部会・保険医療材料専門部会合同部会において示されました骨子案及び分析ガイドライン第2版(案)につきまして意見を申し上げます。なお、医機連、MTJAPAN、AMDD、EBC合同の資料となってございます。
費薬材-2の資料の2枚目をごらんください。費用対効果評価の活用方法につきましては、基本的な考えとして保険償還の可否に用いるのではなく、価額調整に用いることに賛同いたします。また、骨子及びガイドラインの取りまとめに当たり、医療機器の特性を考慮した制度設計を御検討いただいていることに感謝を申し上げたいと思います。
前回の意見陳述でも申し上げましたが、医療機器は、RCT、ランダム化比較試験が倫理的に困難であることから、有効性データや安全性データが十分に得られない場合が多いことや、また、製品を御使用いただく医療従事者のスキル等が融合することで医療技術となるため、医療機器のみによる効果を定めづらいといった特性がございます。
分析の手法や分析結果に基づく価格の調整方法においては、引き続き対象品目の特性を考慮した、柔軟な対応を御検討いただきますよう、改めてお願い申し上げます。
私からは以上です。ありがとうございました。
続きまして、AMDD伊藤委員長より骨子の項目に従いまして説明をいただき、そのあと、
同じくAMDD加藤会長より意見を述べさせていただきます。
○米国医療機器・IVD工業会(伊藤氏)
米国医療機器・IVD工業会保険委員会の伊藤でございます。
それでは、3ページ目の対象品目の選定基準をごらんください。費用対効果評価の対象とする品目の範囲については、医療保険財政の影響度から、医薬品、医療機器を同一の基準で市場規模が一定程度を超える製品を対象とすることに賛同いたします。
一方、新規収載品のH3区分及び既収載品のH4区分に関しましては、中医協総会において必要と判断された品目となっており、企業側が対象品目を予見することが困難であることから、企業分析期間には配慮をお願いいたします。
また、類似品目のH5区分については、医療機器においては同一機能区分に属する品目と考えますが、費用対効果評価の分析は行わず、代表品目に準じた価格調整を行うこととされています。医療機器では、同一機能区分の製品であっても、例えばペースメーカーの電池寿命の差により再手術の頻度が低くなるなど、費用対効果が異なる場合が想定されることから、同一機能区分内にある他の既収載品目も、平成30年度診療報酬改定で制度化されたチャレンジ申請と同様、企業の希望に応じて評価を行い、異なる費用対効果評価の結果が出た場合は、新たな機能区分が設定されるよう、お願いいたします。
4ページ目をごらんください。対象患者数が少ないために単価が高くなってしまう品目への対応として、指定難病、血友病及びHIV感染症のみに用いられる品目は、費用対効果評価の対象から除外するとされています。同じような観点から、稀少疾病用医療機器、医療ニーズの高い医療機器などの早期導入に関する検討会における選定品目など、4ページに示した品目についても選定対象から除外することが適当と考えます。
5ページ目をごらんください。費用対効果評価専門組織の本委員である臨床の専門家とは別に、当該品目の臨床実態を理解する分野ごとの臨床の専門家が、分析・評価の妥当性を確認することについて賛同いたします。
試行的導入の経験より、分析のプロセスにおいて、分析前及び分析中の協議が、分析を進める上で非常に重要であることが明確になりました。また、試行的導入の再検証において、臨床の専門家のワーキンググループへの参加は非常に有効であったと理解します。特に、医療機器ではRCTが存在しないことが多く、非RCTを採用するか、既存の観察研究やレジストリーデータなどを再解析するかなどの検討が必要となることが想定され、また、RCTが存在しても、習熟効果や製品改良効果により、RCTが臨床実態を反映していない場合があり、どのように臨床実態を反映させるかなどの検討が必要になるなど、分析の枠組みの検討が複雑になることが予想され、臨床的な見地からの意見が不可欠であると考えます。このような観点から制度化においても、企業または国立保健医療科学院のいずれかが必要と判断した場合、両者の分析前協議に分析ごとの臨床の専門家が陪席することを可能としていただき、限られた分析期間でもスムーズに進められるよう、お願いいたします。
6ページ目をごらんください。
分析(企業分析、公的分析)を進める中で必要な事項について、相互に照会することができる仕組みとし、企業が専門組織で直接の意見表明及び必要な質疑応答を行うことについて賛同いたします。
一方、分析にかかる期間についてですが、分析ガイドラインにおいて、品目の指定から分析結果の提出までの間に適応が追加をされる場合は、それらの適応についても原則として分析対象に含めるとされていますが、分析途中で適応が追加され分析対象に含める場合は、分析方法について改めて協議することとしていただき、その上で、場合によっては分析期間の延長や分析対象に含めないなどの考慮をお願いいたします。
同様に標準的な期間を超えることが想定されるケースとして、レジストリーデータなどを再解析する必要が生じる場合、NDBデータの取得などに係る手続に時間を要する場合などがあることを御理解いただきたいと存じます。特に、費用の算出については、分析ガイドラインにおいて、実臨床を反映した国内におけるレセプトデータベースを用いることを推奨するとされていますが、試行的導入の際にも、企業にはNDBの使用経験が蓄積されていないことから、データの抽出要件からデータ提供に長期間を要することも想定されるため、今後、検証が必要と考えます。
7ページ目の分析ガイドラインをごらんください。
分析ガイドラインの改定案において、医療機器の特性を分析に反映できるよう、考慮していただいたことに感謝いたします。
また、分析ガイドラインのあり方として、品目ごとの分析ガイドラインの解釈が、分析前協議などにおいて具体的に協議を行うこととされておりますが、分析ガイドラインの5.7について、1点、コメントさせていただきます。1月23日の中医協で示されたように、データが不足している場合には、期間を設定しデータの集積をすることとされています。分析ガイドラインの5.7においては、本趣旨に合わせてデータに不足がある場合、特にRCTがないことをもって、即、費用最小化分析になるものではないことを確認するため、ガイドラインの解釈において誤解を招くことのないよう、両者が研究の質を向上させるような追加分析があることで合意できた場合は、再度、分析の枠組みを検討できるよう、ガイドラインの表現を変更していただきたいと存じます。
なお、ガイドラインにおいて、レセプトのデータベース使用が推奨されていることから、NDBの無償での共同利用を可能としていただけますよう、お願いいたします。
最後に、制度化以降においても、ガイドラインなどへの反映の可能性や客観的判断基準の検証を含め、継続的に業界との意見交換の機会を設けていただき、適宜、見直しを実施していただきますよう、お願いいたします。
8ページ目をごらんください。
データが不足しているなどの理由で、分析不能であることが確認された品目については、専門組織での協議を経た上で、中医協総会において分析・評価を中断することができることに賛同いたします。
また、分析の途中に、当該品目が販売停止もしくは当初予定していた市場が大幅に縮小した場合などは、専門組織での協議を経た上で、中医協総会において分析・評価を中止することができることにも賛同いたします。
なお、著しく単価は高いが症例が少ない品目などでは、必要なデータが得られないことも想定されるため、追加で取得できるデータや分析方法、分析期間などについて丁寧に協議する機会をいただき、実施可能な範囲で柔軟に判断するよう、お願いいたします。
9ページ目をごらんください。
ICERを1点で決めることが困難な場合は、幅を持った評価を許容するとの考えに賛同いたします。
また、対象患者数が少ないため、単価が高くなってしまう品目や、ICERでは品目の有する価値を十分に評価できない品目については、価格調整において基準値を別に設定することにも賛同いたします。
公的介護費に関しては、ここでは別紙1に医薬品の費用対効果分析として、介護費用を含めた先行研究を一例として示しておりますが、こういった公表されている国内分析事例、また、海外での分析手法などを参照しつつ、具体事例が出てきた場合には総合的評価に含められるよう、検討をお願いいたします。
公表の仕方については、企業にとって、守秘性の高い情報も含まれることから、報告書などに含める情報の範囲について、対象企業へ相談の上、公表するよう、お願いいたします。
10ページの価格調整についてごらんください。
材料価格制度を補完する観点から、有用性系加算部分を価格調整範囲とすることに賛同いたします。
また、ICERの幅が基準値をまたぐ場合の対応として、科学的に確からしい値が属する段を採用することを原則とすることにも賛同いたします。
有用性系加算の価格調整率については、当該品目の有効性・安全性などの評価に基づく材料価格制度との整合性、また、それを補完する観点から最大50%の引き下げにとどめていただき、同様に引き下げ調整の下げどめについても、材料価格制度を補完する観点及び引き上げ調整の上限との整合性を踏まえ、価格全体の10%までとするよう、お願いいたします。
11ページをごらんください。
比較対照技術に対して、費用が削減される品目などへの対応に関し、価格引き上げを行う条件として、ドミナントなどに加え、ICER200万円/QALY未満の場合とすることに賛同いたします。
ただし、別に定める条件として設定されているimpact factor15.0を超える学術誌、日本人を含むアジア人を対象とした集団の条件については、impact factorと臨床試験の妥当性は直接関連するものではないこと、人種差が臨床試験結果に影響しない品目においても新たな試験が必要となること、さらには、医療機器は外科系で用いられる製品も多く、外科系の学術誌ではimpact factorが15.0に満たない領域もあります。このような観点から、別に定める条件については、より適切な条件の設定を検討いただければと希望します。やむを得ずimpact factorを条件に入れるのであれば、表に示したように領域ごとに実情を考慮し、領域別に上位5誌とするなどの条件の見直しをお願いいたします。
12ページをごらんください。
調整後の価格の公表から価格調整までは、在庫への影響などを考慮し、一定期間を設けることとすることに賛同いたします。
費用対効果評価の結果を受けて価格調整を行った品目については、日本の制度環境における効果と費用を反映した評価が行われていることから、次期の再算定については除外することを御検討ください。
費用対効果評価の結果を受けた価格調整のタイミングについては、5カ月を要する実勢価格調査との時期の重複や、頻回な価格変更による診療現場の混乱を回避する観点から考慮をお願いします。
資料の説明は以上となります。ありがとうございました。
○米国医療機器・IVD工業会(加藤氏)
AMDD会長の加藤でございます。本日は、このような意見陳述の場を設けていただきまして、ありがとうございます。
私ども業界及び試行に参画した企業は、平成28年から足かけ4年間、この費用対効果評価の制度導入についていろいろと検討してまいりました。その間、御協力いただきました各方面の皆様、それから何度も意見交換を行わせていただきました厚生労働省の皆様、そういった方々全てにこの場をもってお礼申し上げます。
伊藤のほうから御説明がありましたとおり、医療機器業界のほうからの今回の意見陳述での賛同及び要望につきましては、資料にあるとおりでございます。私のほうからは、若干繰り返しにはなりますけれども、今後、この制度をより成功に導く上で重要なポイントを幾つか抽出してコメントさせていただきたいと思います。
1点目は、スライド11にあるトピックですけれども、私ども医療機器業界としては、以前より、医療機器の価値に基づいて評価するバリューベースドヘルスケアといった考え方を価格調整あるいは算定に導入できないかということで提言してまいりました。その一部は既に制度化ということで感謝しております。そういう中ですけれども、今回、一定の条件を満たすものは費用対効果の観点から価格引き上げに活用するとなったことについて、世界に先駆けて価格を引き上げるシステムが入ったことであり、評価できることと歓迎いたします。
一方、先ほど伊藤からもありましたけれども、一定の条件としてimpact factorが設定されておりますが、領域ベースのimpact factorが閾値に満たないもの、その領域全体でも基準を達成する雑誌がないものもございます。そういった現状を考慮して、条件の再検討をぜひお願いしたいと思います。
次にスライド9にあるトピックについてです。
この中で、公的介護費をICERに含めるか含めないかというところについてなのですけれども、分析に含めることは困難であるという御意見をいただいておりますし、データベースの活用も、ひもづけもいろいろと困難があるということは承知しております。ただし、一部の領域において先行研究等がありますので、医療機器の価値を適切に評価していただく観点から、また、メーカーが費用対効果評価に前向きに取り組む観点からも、公的介護費を考慮することは重要な課題であると考えますし、物によってはそういったことができるのではないかと思います。したがいまして、そういった場合、すなわち、エビデンスレベルの高いデータが介護費用に関して提出された場合には、今後の仕組みの参考とするとともに、ぜひ提出されたデータについて評価していただくよう、お願いしたいと思います。
3点目ですが、これはスライド7のトピックに関してです。
分析前協議の重要性については、試行的導入の経験から企業も非常に多くを学んだところです。現にPMDAの承認のプロセスにおいて、その事前相談は医療技術を理解している専門の先生が議論に入ることで、議論が円滑に進んでいるという経験がございます。こういったことを踏まえて、分析前協議においても、当該新技術と対象技術を熟知している臨床の専門家、こういった方々に参加していただくことを強く希望いたします。
最後のポイントは、スライド5のトピックについてです。
臨床の専門家に参加いただくことで、追加的な有用性を評価する上で、RCTに限らず医療機器の特性を評価するのに適切なデータを探索、協議していくことが可能となると思います。仮に最初の枠組みにおけるデータに不足がある場合でも、即、費用最小化分析への移行とせずに、対象品目にとって最適な分析の枠組みを再度見出すことを主眼に費用対効果評価に取り組んでいきたいと考えております。こういったことも考慮していただければと思います。
以上をもって、医療機器業界からの意見の陳述を終わらせていただきます。ありがとうございます。
○荒井費用対効果評価専門部会長
ありがとうございました。
続いて、事務局より資料が提出されておりますので説明をお願いします。
企画官、お願いします。
○古元医療課企画官
企画官でございます。
費薬材-3の資料をごらんください。こちらは御報告でございます。
これまで費用対効果評価につきましては、本日を含め中医協における関係業界からの意見聴取などを繰り返し行っていただいております。こうした意見聴取の状況などについてまとめたものでございます。
また、2ページ目の別紙につきましては、昨年12月19日に本日と同様のヒアリングを行いました際に、各企業・団体より提出していただきましたパワーポイント資料の中にございました主な御意見に対する現状の対応案をまとめたものでございます。こちらは参考でございます。
続きまして、「費薬材 参考」と書きました別のファイルをお開きいただきたいと思います。現在、御提案申し上げております我が国の対応案につきまして、委員の方からお問い合わせをいただきました。各国との比較をわかりやすくということでございましたので、事務局で整理をいたしまして、本日、御提出をさせていただきました。こちらも参考として取り扱っていただければと思います。
説明は以上でございます。
○荒井費用対効果評価専門部会長
ありがとうございました。
一通りの御説明をいただきましたので、これより質疑及びフリーディスカッションに移りたいと思います。なお、時間が限られておりますので、恐縮ですが、発言の冒頭で御質問なのか、御意見なのかをおっしゃってください。また、業界団体の方からの御発言につきましても、各団体で原則お一人の方にお願いしたいと思います。発言は簡潔に御質問に御回答いただきますよう、お願いします。
松本委員、どうぞ。
○松本委員
総合的評価ということで、主に医薬品業界のスライド6と医療機器のスライド9になりますけれども、各ヒアリングで総合的評価においてICER以外のさまざまな要素を考慮してほしいという御要望について、皆さんに質問をしたいと思います。代表して一人ずつでいいと思います。
医薬品業界の記載には、公的介護、生産性損失、医薬品ごとの特性に応じた幅広い価値、それから医療機器業界の記載には、習熟効果や製品改良効果、公的介護費といったことで書かれています。英国では、この「費薬材 参考」にございますけれども、費用対効果評価の結果を償還の可否判断に用いています。そのために医薬品へのアクセスが社会的に大きな問題となっていることから、ICER以外の多くの要素を考慮するという事情があります。それに対してこの表にあるように、我が国では有効な医薬品や医療機器が、一旦、保険収載するためにアクセスは確保されています。また、難病や小児に対する品目は対象外としていますし、抗がん剤は価格調整で配慮しております。したがって、国民の医薬品等を用いた医療へのアクセス確保には最大限に配慮を行っています。それを御理解いただいた上で、今回のような要望をされているかどうかをお聞きしたいと思います。
○荒井費用対効果評価専門部会長
まず、医薬品団体のほうからお願いします。
○日本製薬工業協会(中山氏)
お答え申し上げます。
費用対効果評価の結果は、やはり不確実性を有しておりまして、分析ガイドラインに基づいて適切に実施された分析であっても、用いた数値が少し異なるだけで全く異なった結果となることから、ICERのみならず、ICERによって結果を反映することが困難な要素についても十分配慮することが必要と思っております。
しかしながら、今回の提案では、ICER以外に配慮される要素としては、先ほど少しお話があったように、難病指定、小児疾患、悪性腫瘍に適応を有する品目に限定されております。それ以外のICERによる結果の反映が困難な要素については価格調整には反映されていないことから、総合的評価の方法としては不十分であると考えております。
以上です。
○松本委員
具体的なエビデンスということでは、まだ、今回もはっきりした内容はなかったように思います。今後、そういったエビデンスが具体的にあるのなら提出していただければと思いますけれども、ぜひよろしくお願いします。
○荒井費用対効果評価専門部会長
医療機器のほうをお願いします。
○米国医療機器・IVD工業会(加藤氏)
御質問、ありがとうございました。
総合的評価について、我が国の制度を踏まえてでも、こういったことが重要かという御質問ですけれども、やはり機器の改良とか習熟効果というのは臨床の成果に非常に大きな違いをもたらすこと、それから、医療機器の場合、1回の処置で根治的になり、その後の患者さんの介護状態に大きな影響を及ぼす場合があること、そういった観点から考慮をお願いしたいという趣旨でございます。
○荒井費用対効果評価専門部会長
よろしいですか。
そうしたらほかの件で。
今村委員、どうぞ。
○今村委員
以前、私も公的介護費を現状でこういった総合的な評価に入れることの困難性ということをちょっと申し上げたと思うのですけれども、まず、事務局に確認が2点ありまして、1点は、製薬工業協会から出た資料14ページの1の部分のICER以外の要素について企業によるエビデンスの提出が認められることとは、私の理解では、例えば公的介護費についても、今後データがあれば企業から提出していただくことは可能な枠組みになっているという理解なのですが、これはできないということを前提に御要望されているように見えるのですけれども、そこはいかがかということと、参考資料のほうで、最後に事務局から御説明いただいた、各国で国ごとに介護費や生産性の損失等を含めた分析効果を参考にしているということなのですけれども、今まで具体的な例を見た記憶がないので、そういうものがあるのであれば、ぜひ中医協の我々にもお示しをいただきたい。
何も全面的に反対しているわけではなくて、私はきちんとしたデータがあって、それをもとに議論することが大事だと思っているので、先ほど加藤会長からもお話しいただいたように、今後、そういうきっちりとしたエビデンスのあるデータを出していただくことがすごく大事だと思っています。
それから、これは感想になりますけれども、先ほどケビン・ハニンジャーさんからの説明の中に、資料の12ページに認知症の例を出されていますけれども、そもそも、でき上がっていない薬をもとに、こういった薬ができたらこんなにすばらしいいろいろな効果が得られるというのは、現状ない薬を例に出されるのもちょっとどうかと思います。世界、日本の製薬会社も認知症の薬の開発を、今、一生懸命やっておられると思うのですけれども、そういったものをしっかりつくった上で、これがいかに効果があるかということをお示しいただければと思います。
○荒井費用対効果評価専門部会長
まず、事務局、確認2点。
企画官、お願いします。
○古元医療課企画官
ありがとうございます。企画官でございます。
まず、1点目につきましては、委員御指摘のとおり、去る1月23日に御提案申し上げました骨子の中では、公的介護費や生産性損失を含めた分析結果については、国内の知見に基づき行われたものに限り、あわせて提出することは可能ということで案を御提出しておりますので、提出していただくことは可能であるという認識のとおりでございます。また、その事例を集積した上で、今後の仕組みの参考にしたい。
2点目でございます。こちらについては、また、諸外国の状況など、適宜情報をお知らせいたしながら、今後の政策に向けて取り組んでいきたいと考えております。
以上でございます。
○荒井費用対効果評価専門部会長
ありがとうございました。
もう一つは御意見ですよね。
全く別のことでほかにありましたらどうぞ。
安部委員、どうぞ。
○安部委員
これは、ケビンさんに質問というか、教えていただければと思うのですが、ICERでははかれない医薬品の価値があることは了解をしておりますし、Appraisalの際にICER以外の要素を主張されることは妥当だと理解しておりますが、日本の薬価制度の場合には、この費用対効果評価制度、そして、その中でのAppraisalが、言ってみれば、薬価制度の中の最下流に位置づけられる制度になるわけであります。
そういった意味では、私は、日本の薬価制度の中では、新薬の薬価算定時に画期性加算、有用性加算、市場性加算、小児加算といったもので、既にICERではかれないものについては評価されているという認識しているのですが、諸外国ではそういう制度になっていないこととの比較から考えて、どの時点でICER以外の要素を評価するのが一番妥当なのか、ケビンさんはどのようにお考えでしょうか。
○荒井費用対効果評価専門部会長
御質問ですね。お願いします。
○米国研究製薬工業会(ケビン・ハニンジャー氏)
御質問ありがとうございます。
私どもが一番心配しておりますのは、こういった加算は、新薬の価格を計算する時点であっても、その後、加算を調整する段階であっても、やはりこういった薬の付加価値を十分反映しないことには意味がないということであって、今、提案されている制度内容ですと、この加算の調整が最大90%も行われてしまうことになるわけですが、これはさまざまなこの価値を反映する要因を全く無視する形で評価を行う方向に向かいつつあることが、一番我々が心配している点です。
この総合評価の枠組みは、最終的にどういうふうに加算調整をすべきであるか、そして加算調整判断後、具体的に調整されるのは数カ月のずれがあるかもしれませんけれども、その際に適切な加算調整判断ができる枠組みとするためには、やはり今十分に考慮されていない要因を考えなければいけないというのが私たちの趣旨です。
○荒井費用対効果評価専門部会長
よろしいですか。
幸野委員、どうぞ。
○幸野委員
EFPIAの方に、イギリスやフランスの状況について教えていただきたいと思います。業界でみなさん主張されているICER偏重主義はよくない、総合的に評価すべきだというのは、私も賛成ですし、他の委員の方も総論としては賛成だと思います。ただし、日本人のナショナリティとして、何かの意思決定をするときはそれなりのルールや判断基準を作る必要がありますし、エビデンスに基づいて議論を行うという特徴がありますので、そういうものをつくらないで拙速にやってしまうと、間違った判断をしてしまうという懸念があります。当面はエビデンスを出していただくところから始めようと骨子案にも示されましたが、実際に今費用対効果評価が行われているイギリスやフランスは、こういった社会的要素、公的介護費を評価した場合に、どういったエビデンスを企業が出して、どういった判断基準に基づいてこれが結論づけられているのか、そして、それは公表されているのかという点についてお伺いしたいのですが、いかがでしょうか。
○荒井費用対効果評価専門部会長
質問ですので、よろしくお願いします。
○米国研究製薬工業会(トーステン・ポール氏)
私自身は、今、おっしゃられたように、各国における医療制度のその点につきまして専門家ということで詳細を持ち合わせているわけではございませんので、必要でありましたならば、そういったデータを情報として、今後、御提供させていただければと考えておりますけれども、この点につきまして何かケビンのほうから追加情報がありましたらお願いします。
○米国研究製薬工業会(ケビン・ハニンジャー氏)
私のほうから少し補足をさせていただきます。追加情報が必要であれば、随時提供させていただきたく思います。
まず、両国の制度自体が大変異なっています。イギリスのようにICERの閾値をベースとして評価する制度は、フランスでは導入していません。
ただ、両国で共通しているのは、こういった薬価に関する決定をする際には、ICER以外の要素を十分に勘案していることです。
両国とも企業がエビデンスを提出することが可能な制度設計になっていて、その提出されたエビデンスは十分に審議され、レポートが公表され、その公表されたレポートの中には何がエビデンスとして提出されたか、また、そのエビデンスをどのように評価したかということが記載されています。
誤解のないように、各国の制度を評価し、理解していかなければいけないと思います。例えば、何か数値的な基準が設定されていない、あるいは、こういった計算式が明確に示されていないからといって、ほかのICER以外の要因を考慮する必要がないと各国が考えていた判断の仕方は間違っていると思います。
私どもは、今まで厚労省に対して具体的な提案をさせていただいたつもりでおります。この提案の内容は、ジョンソンのほうからも冒頭申し上げましたけれども、これは判断をするための枠組みであって、さらに具体的にどういうふうにこういった追加要素を考慮していく必要があるのか、どういう判断をしていく必要があるのか、やはりガイドラインを明確に定めていく必要があると思っています。
○荒井費用対効果評価専門部会長
幸野委員、どうぞ。
○幸野委員
わかりました。では、企業が出されたレポートや、どういうふうに判断されたかというのは、公表されていないということですか。
○荒井費用対効果評価専門部会長
どうぞ。
○米国研究製薬工業会(ケビン・ハニンジャー氏)
いいえ、決してそうではありません。
もちろん、企業にとっての機密情報は別扱いになると思いますけれども、企業が公表できる情報はできるだけ広く公表されています。どのように企業自身が判断をしたか、その判断基準は何であったか、こういったもろもろの意思決定にかかわる内容が公表されており、それがほかの国の制度設計にとっても参考になるように広く公にされているのが実情です。
○荒井費用対効果評価専門部会長
幸野委員、どうぞ。
○幸野委員
わかりました。
私だけかもしれませんが、公的介護費用や生産性損失というものが漠然とし過ぎていてイメージが湧かないので、もし、機会があれば、イギリスやフランスにおいて、どのようなデータが企業から提出され、どこが評価されて価格に反映されたか等をお示ししていただければ、今後の検討に資すると思いますので、よろしくお願いします。
○米国研究製薬工業会(ケビン・ハニンジャー氏)
喜んでそのようにさせていただきます。
○荒井費用対効果評価専門部会長
ほかにはどうでしょうか。
特にないということでよろしいでしょうか。
ありがとうございました。ほかに御意見等もないようですので、関係業界からの意見陳述についてはここまでとさせていただきます。
本日の議題は以上です。
次回の日程につきましては、追って事務局より連絡しますので、よろしくお願いします。それでは、本日の合同部会はこれにて閉会といたします。
どうもありがとうございました。
 

 

(了)
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代表: 03-5253-1111(内線)3288

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