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2018年12月19日 中央社会保険医療協議会 費用対効果評価専門部会・薬価専門部会・保険医療材料専門部会 合同部会

○日時

平成30年12月19日(水)8:59~10:57

 

○場所

厚生労働省講堂(低層棟2階)

○出席者

荒井耕部会長 田辺国昭委員 野口晴子委員 中村洋委員 松原由美委員 関ふ佐子委員
吉森俊和委員 幸野庄司委員 平川則男委員 間宮清委員 宮近清文委員 松浦満晴委員
松本吉郎委員 今村聡委員 城守国斗委員 島弘志委員 猪口雄二委員 遠藤秀樹委員 安部好弘委員
平野秀之専門委員 上出厚志専門委員 村井泰介専門委員
五嶋規夫専門委員 林利史専門委員
<参考人>
福田敬参考人 池田俊也参考人
<事務局>
樽見保険局長 渡辺審議官 山本審議官 森光医療課長 古元医療課企画官
樋口保険医療企画調査室長 田宮薬剤管理官 小椋歯科医療管理官 他

○議題

 ○ 関係業界からの意見聴取について

○議事

 

○荒井費用対効果評価専門部会長
ただいまより第14回「中央社会保険医療協議会 費用対効果評価専門部会・薬価専門部会・保険医療材料専門部会合同部会」を開催いたします。
まず、本日の委員の出欠状況について報告します。本日は、榊原委員が御欠席です。
次に、委員の交代について御報告いたします。日色保専門委員におかれましては、12月19日付で退任され、その後任として、同日付で林利史専門委員が発令されております。今回発令された委員の方からは、みずからが公務員であり、高い倫理観を持って行動する旨の宣誓をいただいております。
それでは、新しく専門委員となられた林専門委員から一言御挨拶をお願いします。よろしくお願いします。
○林専門委員
このたび専門委員を拝命しました林でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○荒井費用対効果評価専門部会長
ありがとうございました。
なお、会議冒頭のカメラの頭撮りはここまでとさせていただきます。
(カメラ退室)
○荒井費用対効果評価専門部会長
それでは、議事に入ります。
今回は、関係業界からの意見聴取を行いたいと思います。関係団体として、日本製薬団体連合会、日本製薬工業協会、米国研究製薬工業協会、欧州製薬団体連合会、日本医療機器産業連合会、日本医療機器テクノロジー協会、米国医療機器・IVD工業会、欧州ビジネス協会より意見を聴取したいと考えております。
それでは、早速意見陳述に移りたいと思います。
なお、医薬品の団体より45分、医療機器の団体で25分をそれぞれ目安としてプレゼンテーションしていただいた後に、まとめて質疑とフリーディスカッションを行いたいと思います。
それでは、まず医薬品の団体より、自己紹介を行った上で、プレゼンテーションをよろしくお願いします。
○日本製薬工業協会(中山氏)
日本製薬工業協会会長を務めております中山でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
このたびは、意見陳述のお時間をいただき、まことにありがとうございます。
本日は、日本製薬団体連合会、米国研究製薬工業協会、欧州製薬団体連合会、そして私ども日本製薬工業協会の4団体としての意見を述べさせていただきます。よろしくお願いいたします。
それでは、前回の合同部会で示されました各検討課題に関する論点に沿いまして意見を述べさせていただきます。
スライドの2ページ目をごらんください。諸外国においては、我が国のような精緻な薬価基準制度が存在しないことから、企業が設定した価格の妥当性や保険償還の可否を判断する手段の一つとして、費用対効果評価が用いられていると認識しております。費用対効果評価の制度化に当たりましては、薬価基準制度との整合性を保持していただくとともに、これは中医協において議論されているとおりでございますが、費用対効果評価の結果を保険償還の可否判断に用いるべきではないと考えます。その上で、薬価基準制度との整合性を踏まえ、新薬の価値評価のあくまで補足的な手段として、限定的に用いられるべきものと考えております。
スライド3、対象品目の選択基準でございます。費用対効果評価の対象となる品目につきましては、新規収載品のうち、類似薬効比較方式にて算定された品目、原価計算方式にて算定された品目ともに、一定率以上の有用性系加算が適用され、かつピーク時売上高が一定額以上になると予測される品目に限定すべきであると考えます。
また、既収載品につきましては、前提条件の変化により薬価を調整する再算定等の既存のさまざまな薬価算定ルールが存在しております。これに加えて、費用対効果評価の結果を用いて薬価を調整する必要性は乏しいため、既収載品は対象にすべきではないと考えております。
スライド4、分析のプロセスでございます。事前協議や分析の過程における協議を充実させること、企業分析の結果についてはレビューを基本とすること、費用対効果評価専門組織を見直すことなど、試行の状況、結果を踏まえてプロセスを改善していく方向性については賛同いたします。
その上で、分析プロセス全般において関係者が共通の利害に立つことが最も重要であり、公平性・透明性の観点から次の点については考慮いただきたいと考えます。
1つ目は、事前協議や費用対効果評価専門組織において、当該領域の診断や治療に精通した臨床専門家が参画すること。次に、企業と公的分析班が、分析に必要な事項について、十分な協議が可能となる仕組みとすること。また、分析に用いるデータとして、ナショナルデータベース(NDB)を使用する場合には、企業がNDBデータの検証をできないなどの課題を解決すること。最後に、費用対効果評価専門組織における、企業による意見表明の機会は必要であり、その際には、十分な質疑を行える時間が確保されること。これらについて十分に御理解いただいた上で、分析プロセスについて御検討いただきたいと存じます。
スライド5をごらんください。分析プロセスについて1点追加させていただきます。企業が分析結果を提出するまでの期間ですが、対象品目として選定された時点で存在するデータ量、各企業が有するスキルや対象疾患によって、モデル分析や解析等の各種作業に要する時間が異なる可能性があります。標準的な期間は、このことを考慮して設定すべきであり、試行的導入における事例等を踏まえますと、企業の分析につきましても当面は6カ月以上が必要であると考えます。この点につきましては、ぜひとも御理解いただきますよう、お願い申し上げます。
スライド6、総合的評価でございます。費用対効果評価専門組織におきましては、企業の分析結果、公的分析の結果、いずれについても必要な検証を行った上で、客観的かつ公平に評価されることが重要であると考えます。
また、総合的評価において考慮する要素といたしましては、治療方法が十分に存在しない希少な疾患や小児に用いられる品目、重篤な疾患に対する治療に加え、試行的導入おいて考慮要素とされた公衆衛生的有用性、公的介護費や生産性損失を含め、医薬品ごとの特性に応じた幅広い価値についても考慮要素としていただきたいと考えます。
スライド7、価格調整でございます。費用対効果評価による価格調整を行う際には、薬価基準制度との整合性を踏まえた方法とすることが大前提であると考えます。
価格調整の対象範囲につきましては、医薬品の安定供給に支障が生じることがないよう、算定方式にかかわらず、有用性系加算の範囲内にとどめるべきであると考えております。
さらに、ICERの値は不確実性が大きく、一定の幅を持った評価を行うことが適切であり、価格調整に当たっては、ICERによる評価結果だけによらないよう、考慮要素が適切に反映された上で、加算率の調整が行われることが適切であると考えます。
スライド8をごらんください。試行的導入におきましては、最大90%の引き下げが行われました。有用性系加算につきましては、薬価算定組織において慎重かつ丁寧に審議され、新薬の有効性や安全性等の評価に基づいて厳格に適用されているものと認識しております。このような薬価算定ルールやプロセスとの整合性などを考えますと、90%もの引き下げは過度な引き下げであったと考えております。
価格調整につきましては、引き上げ、引き下げ双方のバランスがとれるような仕組みにすべきであり、ICERが算出不能な品目において、引き上げ率を加算率の最大50%、かつ価格全体の10%以下とした価格調整方法を踏まえると、引き下げ率においても、加算率の調整率は最大50%に縮小するものとともに、価格全体の10%を下げどめとするルールを導入すべきであると考えております。
スライド9をごらんください。費用対効果評価の制度化に際しましては、人材育成を初めとした体制の強化が必要であるとする考え方に賛同いたします。政府におかれましては、必要な装置をお願いいたします。
私ども4団体の共通意見の陳述は以上となります。
続きまして、各団体からの追加意見を述べさせていただきます。
まず、日本製薬団体連合会と日本製薬工業協会の追加コメントについては、私のほうから説明させていただきます。日薬連、製薬協連名の資料をごらんください。
総合的評価において考慮が必要とされた品目の価格調整方法に関する追加意見でございます。まず、重篤な疾患に対する治療等については、通常よりも高い基準値を用いて評価するという方向性について、異議ありません。
一方、公衆衛生的観点や追加的な費用、代替治療が存在しない疾患など、ICERによる結果への反映が困難な要素を有する品目につきましては、価格調整において考慮することが必要であると考えております。
繰り返しになりますが、総合的評価や価格調整につきましては、ICERによる評価結果のみに偏った仕組みとならないよう、よろしくお願い申し上げます。
以上でございます。
続きまして、PhRMA/EFPIAの代表者より追加意見をお願いいたします。
○米国研究製薬工業協会(ジェームス・フェリシアーノ氏)
本日は、PhRMAとして意見を述べる機会をいただき、ありがとうございます。私は、アッヴィ社長のジェームス・フェリシアーノと申します。PhRMAを代表して意見を申し述べます。
実は全体の費用対効果評価に関する中医協での陳述からおよそ1年がたちました。革新的な医薬品を創出する日本の製薬会社のみならず、我々の海外本社のトップも、今回の決定はグローバルレベルでの意思決定にも影響を与えるものであるため、極めて強い関心を示しています。今後の制度を決める上で、これからお伝えする提案を慎重に検討していただくよう、強く希望します。
日薬連、製薬協に続き、我々からは、患者さんのアクセスを阻害しないためのアプレイザル方法について追加意見を述べます。
我々は、医薬品の価値を評価するには、限定的かつ不完全なICERに大きく依存した評価方法に対して強く懸念をしています。実際に費用対効果評価を導入したいずれの国においても、患者さんのアクセスは阻害されています。費用対効果評価を加算の検証に使用するだけであっても、このような方法で行えば同じような経過を招きかねません。したがって、公平でエビデンスに基づいた、また透明性が確保された形で医薬品の幅広い価値を適切に評価できるアプレイザルと、その実施が極めて重要と考えます。
また、実施に当たっては、双方向で実質的な議論ができるプロセスが重要であることは言うまでもありません。我々は、諸外国における事例、あるいは苦い経験をもとに、日本でのアプレイザルについてこれまで議論をしてきました。我々の提案は、患者さん、医療制度、社会に対する医薬品の付加価値を広く反映したものとなっており、この提案によって試行導入での課題も解決できると信じています。日本の患者さんのために、我々の提案を十分に検討していただくよう、強く希望します。よろしくお願いします。
○米国研究製薬工業協会(ケビン・ハニンジャー氏)
おはようございます。ワシントンのPhRMAで薬価、HTAの国際業務を担当しているバイスプレジデントのケビン・ハニンジャーと申します。PhRMAの会員企業の本社がこの問題に強い関心を抱いているため、本日の会議に出席させていただきました。意見陳述の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
約1年前の中医協の意見陳述において、私どもは当時進行中だった試行的導入と費用対効果評価で日本が向かおうとしている方向性について重大な懸念を表明しました。その際、新たに費用対効果評価の制度を導入した場合、それが確実にイノベーションの促進につながり、新たな治療法に患者が早期にアクセスすることができるようになる一連のベストプラクティスの原則を提案させていただきました。
日本政府の業界からの意見を歓迎するというお言葉を受け、具体的な政策提言に向けて、政府やそのほかのステークホルダーと協議してまいりました。この1年間、私どもはこの作業に真剣に取り組み、アメリカ、ヨーロッパ、日本の製薬企業や国際的に著名なHTAの専門家と広く協力してまいりました。そして、試行的導入で学んだ教訓をベースに、世界のほかの国々の経験を生かし、最新の価値評価の方法を取り込んだ信頼できる総合的評価の枠組みの構築を目指してきました。総合的評価の枠組みは、エビデンスに基づきバランスのとれた実施が比較的容易な仕組みとなるように配慮しました。その上で、総合的評価モデルの候補を複数の治療領域でテスト・検証し、本日の提案内容に至りました。これはPhRMAとEFPIAが支持する内容であり、日本にとって最善の方法であると考えています。
製薬業界が堅持する医薬品の価格に関する基本原則は、価格は、薬が患者、医療制度、社会に提供する付加価値を反映すべきであるということです。私どもは、この付加価値を適切に評価するには、ICERは幾つかの重大な制約があって、不向きであり、ましてや日本の込み入った薬価制度に組み込むのは不適正であると思っています。
例えばICERの基礎となる質調整生存年(QALY)は、患者や介護者にとって非常に重要な症状の変化をしばしば十分な感度で総合的に捉えることができません。また、QALYは、より重篤な症状や有効な治療法がない疾患にとって、病態の改善が持つ相対的な重要性を捉えることができません。疾患によっては、介護者や家族、地域社会の負担が大きくなりますが、ICERはその負担を考慮しません。生産性の向上などイノベーションがもたらすより広範な経済的、またはその他の価値をICERは考慮しません。ICERが臨床試験のデータがベースの場合、新しい投与方法が実臨床の現場にもたらすメリットを考慮することができません。
ICERにはこのような不完全性があるため、ICERによる評価が強く反映された新規治療薬の価値評価を行った国々では多くのマイナスの影響が出ています。このようなマイナスの結果を日本で回避し、現行の薬価制度との整合性を保持するためには、日本が正しい総合的評価の枠組みを整備することが重要であると考えています。
私どもが提案する総合的評価の枠組みでは、ICERを独立して厳格に評価した上で、ICERに含まれていない考慮すべき追加的要素をエビデンスに基づいた基準で別途評価します。これらの評価結果を総合して総合的スコアを算出し、加算分調整が必要か否か、調整額はどれぐらいかの判断材料とします。
仕組みを説明させていただきます。経済モデルでは、ICERは単体の指標としてではなく、考えられる結果の分布として提示されるので、ICERを段階的な幅であらわすことを提案いたします。つまり、ICERが閾値を超えれば超えるほど、ICERに反映されていない追加的な価値が実証されない限り、その医薬品の加算分は引き下げられることになります。ICERに反映されていない追加的な価値の3つの区分を提案させていただきます。
最初の区分は、対象疾患の重篤性、有効な治療方法がない疾患に対する医薬品であり、これには延命効果がある薬、末期症状の治療に用いる薬、ほかの治療の選択肢がほとんどない疾患の治療薬、QALYでは十分に患者にとってのメリットが反映されない疾患の治療薬などが含まれる可能性があります。
第二に、社会的な影響です。これは生産性の向上などのより広範囲にわたる経済的影響のある医薬品、介護者にとっての負担を軽減することができる医薬品、公衆衛生的有用性のある医薬品などが含まれます。
そのほかの考慮すべき要素が第三の区分になります。例えば用法・用量の変更によって臨床現場で実際に薬の価値というものが十分評価される。革新的新薬の開発がおくれている治療領域において医薬品が提供される。昔からの介入方法が依然としてスタンダードケアである疾患に対する治療薬などがこの区分に属する可能性があります。
これらそれぞれの区分に対して、メーカーは追加的な価値が確かにあるというエビデンスを示し、その価値の大きさを全ての関係者が参加できる機会が提供される予見可能な透明性のあるプロセスで評価し、特典をつけることを提案いたします。そうすることにより、ICER、疾患の重篤度、アンメット・メディカル・ニーズ、社会的影響、その他の考慮要素を全て網羅する医薬品の総合的なスコアを、加算調整の必要性の可否または調整額のバランスのとれた判断に用いることができます。
3ページのスライドをごらんください。私どもが提案する総合的評価の枠組みは、現在の検討内容と共通の部分がかなりありますが、その一方で、ぜひ御検討いただきたい重要な改善点を盛り込んでいます。まず、現在の検討内容は、費用対効果評価の決定がICERの閾値に大きく依存した評価となっているので、医薬品が提供する付加価値を系統的に評価できないばかりか、合理的な意思決定のために必要な要素が適切に評価されません。私どもの提案では、エビデンスに基づいた基準をICERとそれ以外の追加的評価をするために用いており、評価結果をもとに議論し、柔軟性と透明性を確保しながら意思決定を行うことができます。
第二に、現在の検討内容では、ICER以外の医薬品が持っている価値が費用対効果評価全体における考慮要素の一部でしかないために、結果として全ての医薬品の有用性系加算を適切に評価した仕組みとはなっていません。
私どもは、全ての医薬品においてICER以外の価値も重視されるべきであると考え、全ての価値が一貫性を持って評価される仕組みを提案します。
次のスライドをごらんください。第三に、現在の検討内容では、ICERでは捉えられない医薬品が持つ幅広い価値が十分に評価されません。私たちが提案する仕組みでは、諸外国のベストプラクティスに倣って、ICERと医薬品の付加価値を決定する幅広い要素を別々に評価します。
第四に、現在の検討内容は、医薬品の価値に対するICER以外の要素の相対的な影響度を考慮に入れていません。私たちの提案では、医薬品がICER以外の要素を有しているか否かという判断だけではなくて、そういった要素または価値がもたらす相対的な影響度を考慮することができます。
まとめると、費用対効果評価の制度導入に当たって、日本はバランスのとれた、エビデンスに基づいた透明性のあるアプローチが必要であり、制度の構築・実施に当たっては、患者、製薬協会、その他の主要なステークホルダーの見解を十分に考慮した透明性のある方法をとるべきであると考えます。
この新たな制度の導入に関する判断は、患者の生命に直接影響を及ぼします。制度設計のあり方が、日本がどれだけ疾患の新たな治療や治癒に対する投資を重要と考えているか、新薬の研究開発の相応の責任を負担する用意があるかという明確なメッセージを世界に対して発信することになります。現在あるイノベーションに対するインセンティブを損ない、新たな治療薬への患者のアクセスを阻むような制度の導入はぜひとも回避していただきますようお願い申し上げます。
本日は、このような意見陳述の機会を頂戴し、改めてお礼を申し上げます。今後ともPhRMAは政府と協力して、日本に真のベストプラクティスの費用対効果評価制度を導入することができるように尽力することをお約束いたします。
○欧州製薬団体連合会(オーレ・ムルスコウ・ベック氏)
おはようございます。私、オーレ・ムルスコウ・ベックでございまして、EFPIA Japanの会長、それからまたノボノルディスクの社長でございます。
本日は、日本における費用対効果評価につきまして、私どもの意見陳述の機会を下さいまして、ありがとうございます。
1枚スライドを進めていただきまして、こちらには業界団体からの意見の内容のまとめということで、私どもの補足的意見をまとめております。まずは、どのような費用対効果評価制度が導入されるようになりましても、現行の薬価算定制度というものと調和のとれたものでなければならないと考えております。
現行の薬価算定制度におきましては、新薬に対する迅速なアクセスが提供されていき、それによって、日本の患者さんにとってよりよい治療というものが届けられていく、そうした基本的な枠組みというものをこの費用対効果のやり方で損なってはなりません。
そもそも対象となる品目、これは革新性、有用性ということで高く評価されている品目が選ばれるわけですから、過度な加算調整がなされることによりまして、それが結果的に医薬品の研究開発意欲をそぐといったことが起こってはなりません。
また、原価計算方式で算定された製品におきましては、結果的に価格調整によって原価割れということが起これば、それが安定供給にも影響が出てきてしまうということがありますので、あくまでも価格調整というのは加算部分のみに限定されるべきだと考えております。それからまた、私どもの考えは、ICERとQALY、そして追加的な要素、これら全てのバランスをとった費用対効果評価でなければならないと考えております。ということで、評価基準を設定するに当たりましても、やはり革新的な薬剤のあらゆる価値を反映したものでなければなりませんし、その運用に当たっては公平性・透明性を持って運用されなければなりません。
私どもでの海外での経験からも、ICERというのは、製品の価値を非常に狭く捉えたものだと考えております。これによりまして十分に定量化することができないようなその他要素、例えば疾患の重篤度ですとか、アンメット・メディカル・ニーズ、社会的な便益、そうした要素が外されていくことになります。ということで、協会といたしまして、現在提案している方法というのは、定量的、定性的なこうした要素の適切なバランスをとろうとするものであります。ということで、質の高い費用対効果評価を導入するためには、やはり十分なシステムの専門性、専門化、そしてまたインフラのキャパシティーを伴ったものでなければなりません。
終わりに当たりまして、どのような制度を制度化するにいたしましても、経済的な学び、経済的な進化というものが必要と考えております。ということで、日本におけます費用対効果評価というものが世界にとってのベストプラクティスになってもらいたいと考えておりますし、制度化後も継続的な制度の改善努力を望みます。
ありがとうございました。
○荒井費用対効果評価専門部会長
ありがとうございました。
続いて、医療機器の団体より、自己紹介を行った上で、プレゼンテーションをよろしくお願いします。
○日本医療機器産業連合会(笹氏)
日本医療機器産業連合会副会長の笹でございます。会長の渡部が不在のため、本日は私から御挨拶をさせていただきたいと思います。
このたびは、費用対効果評価に関して、このような意見陳述の機会を頂戴し、まことにありがとうございます。本日は、私のほかに医機連田中、AMDD加藤、伊藤、そしてEBC藤原の5名で参加しております。
それでは、現在検討が進められております費用対効果評価について、医療機器業界から意見を述べさせていただきます。
なお、本資料は、12月5日の費用対効果評価専門部会・薬価専門部会・保険医療材料専門部会合同部会における費薬材-3「費用対効果評価に関する検討状況について」で示されました課題の順番に沿った構成となってございます。また、医機連、MTJAPAN、AMDD、EBC合同の資料となります。
資料の2枚目をごらんください。まずは、私どもの基本的な考えについてです。我々業界としましては、医療の価値を適切に評価するという観点から、費用対効果評価が重要であるということは十分理解をしておるところでございます。また、これまで中医協の場で大変丁寧に御議論をいただいていることに感謝申し上げます。
費用対効果評価の具体的な活用方法につきましては、材料価格制度を補完するという観点を基本とすること。保険償還の可否判断に用いるのではなく、価格調整に用いること。さらには、デバイス・ラグを生じさせない観点から、一度材料価格を設定し、保険適用した後に価格調整を行うことなど示していただいておりまして、業界としても賛同するところでございます。
医療機器は、RCT(ランダム化比較試験)が倫理的に困難であることから、有効性データや安全性データが少ないという特性がございます。また、医療機器は、御使用いただく医療従事者のスキルと融合することによって医療技術となるため、医療機器のみによる効果を定めづらいことも薬とは大きくことなる点になります。既に十分御理解いただいていることかと存じますが、くれぐれもこれら医療機器の特性等に配慮した制度としていただきますよう、改めてお願いを申し上げます。
なお、主な検討課題につきましては、AMDD伊藤委員長より説明をいたします。その後、AMDD加藤会長、EBC藤原副委員長より意見を述べさせていただきたいと思います。
私からは以上です。
○米国医療機器・IVD工業会(伊藤氏)
米国医療機器・IVD工業会保険委員会の伊藤でございます。
3ページ目の対象品目の選定基準をごらんください。費用対効果評価の対象とする品目の範囲については、医療保険財政への影響度等の観点から、財政影響が大きい、つまり、市場規模が一定程度を超える製品を対象とすること。また、当面は新規収載品を対象とする考えに賛同いたします。
また、財政影響の考え方から、対象品目の選定基準は医薬品と同じとすべきと考えております。
なお、医療機器は、画期性加算、有用性加算、改良加算、市場性加算等を用いて評価されておりますが、改良加算及び市場性加算については、患者のQOLに反映されない評価要素、例えば改良加算では、医療従事者への高い安全性、廃棄処分等が環境に及ぼす影響が小さいといったことが評価され、加算が付与されています。こういったことから、費用対効果評価の対象としては、ICERを求める観点から、画期性加算、有用性加算が認められた品目が適切であると考えます。
4ページをごらんください。次に、既収載品については、効能追加等により市場規模が大きく拡大した品目等を評価の対象とする考えについて、理解はできるものの、新規収載品と同様に、画期性加算、有用性加算が認められた品目を対象とすべきと考えます。
ただし、同一機能区分内に複数品目を有する場合は、個々の品目の費用対効果評価の結果が異なることが想定され、機能区分の考え方になじまないことから、評価の対象から除外すべきと考えます。
あえて機能区分内の1つの製品を対象とする場合、他の品目においても評価を行うことができるような配慮、例えば同一機能区分内の個々の品目についても、希望に応じて評価を行い、異なる費用対効果評価の結果が出た場合は、新たな機能区分が設定されるようにする。並びに費用対効果評価を行っている間に、当該機能区分に異なる製品が収載された場合においても、希望に応じて評価を行えるようにするなどの配慮が必要と考えます。
5ページ目をごらんください。対象患者が少ないため、単価が高くなってしまう品目として、希少疾患、小児のみに用いられる品目を費用対効果評価の対象から除外する考えに賛同します。
なお、上記以外にも特定保険医療材料においては、留意事項において、患者の状態や使用施設が限定され、対象患者数が少なくなり単価が高くなる場合もあることから、除外品目とするかどうか、対象品目選定の段階で検討すべきと考えます。
6ページ目の分析プロセスをごらんください。分析前協議、試行的導入時の事前協議の方法については、企業の分析に先立ち、分析前協議を充実させ、分析対象技術、比較対照、効果指標、効果データ、費用データ等の分析の枠組みを検討することには賛成します。
なお、費用対効果評価を適切に行うために、医療機器の特性及び分析対象技術を十分理解した上で、分析の枠組みを検討する必要があると考えることから、次ページ以降で説明いたします臨床専門家の参画、及びデータが不足する場合の分析のあり方について御配慮いただきたいと希望します。
7ページ目をごらんください。ここで説明する臨床の専門家は、公的分析班とともに、厚生労働省及び国立保健医療科学院に助言する臨床の専門家のことでございますが、この臨床の専門家の関与範囲については、現状専門組織が創設されています。一方、試行的導入の経験から、医療機器で製品改良が行われた製品が対象品目となった場合、改良前の旧世代製品のエビデンスの取り扱いとか、いわゆるラーニングカーブの影響から、製造販売承認時のエビデンスが費用対効果分析値の実臨床と乖離するなど、分析前協議や公的分析の途中においても企業と公的分析班で見解が分かれる場合が想定されます。
以上のことから、専門組織に限らず、分析前協議や公的分析の過程においても、必要に応じて臨床の専門家が協議に参画できる仕組みとしていただくことで、企業との協議・論点整理をタイムリーに、また適切に行うことに寄与できると考えておりますので、分析前協議などへの臨床専門家の参画を御検討いただきたいと希望します。
8ページ目をごらんください。費用対効果評価専門組織の役割・体制等については、中立的な立場から専門的な検討を行うための委員構成とすること。並びに専門組織において、企業が意見を直接表明し、必要な質疑応答を行うことについて賛同いたします。
なお、専門組織における意見聴取の方法としては、協議の透明性の観点から、企業と公的分析班がそれぞれの意見を専門組織の場で表明し、お互いに質疑応答、意見交換を十分に行えるよう希望します。
試行的導入における課題として、企業からの意見表明時間は10分間に限られ、特に海外の担当者を必要とする場合は、分析の枠組みを説明する時間としては十分ではなかったとの意見もあり、また、企業と公的分析班のそれぞれが個別に意見表明を行いましたが、お互いの意見の相違点に関して、十分に協議することができなかったことが挙げられます。
9ページ目をごらんください。分析にかかる標準的な期間については、品目選定から企業分析提出までの期間として9カ月が提案されていますが、試行的導入において事前協議による枠組みに基づく企業分析にそれぞれ6カ月を要していることを踏まえると、9カ月では適切な分析を行うことは極めて困難と考えられるので、当面は標準的な期間を1年間と設定していただきたいと希望します。
また、レジストリーなどの新規取得に係る手続、NDBデータの取得に係る手続などの事由により、当初の想定よりも長期の分析期間を要する場合が想定されることから、個別の分析期間の設定に当たっては柔軟な対応をお願いいたします。
特にNDBデータの使用については、試行的導入においては、事前協議、つまり、分析前協議において企業と協議するプロセスがなかったことから、本格導入後初めて分析の枠組みの協議として経験するプロセスとなります。また、企業側はNDBに直接アクセスすることができず、ふなれなことから、NDBの使用に当たっては丁寧に協議を進めていただきたいと考えております。
 
10ページ目のデータが不足している場合の対応をごらんください。医療機器においては、その特性から、別紙1に示すように比較試験が実施されない場合があり、費用対効果評価に用いる追加的有効性・安全性のデータが不足するケースが生じます。
このようにデータが不足する場合、現在のガイドラインでは費用最小化分析を行うことになっていますが、ICERに反映されない評価要素で加算を受けた品目について、費用最小化分析を行った場合、加算を受けた分が費用増加と評価されることになります。
したがいまして、医療機器の有用性を適切に評価するためには、単群試験、市販後のレジストリーデータ等のリアルワールドデータの活用など、比較試験以外の研究を用いた分析方法などの適用を含めて、分析前協議においてその評価方法を検討させていただきたいと考えております。
なお、以上の対応を行った場合でも、試行的導入及び別紙2に示しますオーストラリアのHTAの経験から、ICERを用いた費用対効果評価の実施が困難な場合も想定され、分析前協議における分析の枠組みの検討の際に、分析の要否についても検討いただきたいと考えております。
11ページの分析ガイドラインのあり方をごらんください。試行的導入で明らかになった技術的課題を踏まえて、分析のガイドラインの改定を行うことに賛同します。
試行的導入で課題となった項目について、分析ガイドラインの見直しが行われていると理解していますが、分析ガイドラインについて、特に試行的導入でガイドラインの解釈が一致しなかった事項について、別途業界等の意見交換の機会を希望します。
12ページ目をごらんください。分析手法、分析結果、議論の経緯、評価結果の詳細については、企業に確認の上、公開することとしてはどうかと考えております。
ただし、分析結果には個別品目の未公開情報を含む可能性があることから、承認審査に係る報告書と同様、マスキングできることとするのが適当と考えます。
公開する範囲、分量については、分析手法などの知見を産学に蓄積する、議論の経緯の透明性を担保するなどの目的を考慮して、公開範囲を検討していただければと考えます。
13ページ目の価格調整をごらんください。材料価格制度を補完するという観点に基づき、価格調整の対象範囲を設定することに賛同します。
価格調整対象は、類似機能区分方式、原価計算方式ともに、画期性の程度などによる加算の対象部分とすべきと考えます。特に原価計算方式においては、総原価を割り込むべきではないと考えます。
また、加算調整率については、材料価格制度における評価との整合性の観点から、それぞれの加算(画期性、有用性)に応じて価格調整後の加算率の下限を設定する。例えば画期性加算(50~100%)においては、価格調整後の加算率の下限が有用性加算の加算率の上限30%を下回らないなど、御検討いただきたいと思います。
なお、価格調整に当たっては、安定供給に支障を来す水準まで引き下げとならないよう、配慮をお願いいたします。
14ページ目のICERに応じた価格調整方法をごらんください。ICERが一定の幅を持って評価された場合にも対応できる価格調整方法を採用するとの考えに賛同します。
一方、ICERの不確実性については、これまで述べられているところでありますが、ICERに幅が生じる理由としては、企業の分析と公的分析班で異なる分析方法を採用したことによるもののほかに、分析に用いる有効性データ、モデル推計、費用のパラメータなどの不確実性に基づくものがあることを御理解いただきたいと思います。
また、一定の幅をもって評価するに当たっては、シナリオ分析や感度分析であらわされたICERの幅を十分に踏まえた評価としていただきたいと考えます。
価格調整方法については、階段方式とし、ICERの幅が閾値をまたぐ場合に、どちらの段で価格調整を行うのが科学的により妥当かについて、中立的な専門組織で検討するとの考えに賛同します。
なお、費用対効果のよい医療機器の開発を促進する観点から、費用対効果がよい場合はドミナントに限らず、加算等を使って一定の評価をしていただければと希望します。
15ページ目をごらんください。総合的評価において配慮が必要とされた品目の価格調整方法についてです。対象患者数が少ないため単価が高くなってしまう品目や、ICERでは品目の有する価値を十分に評価できない品目については、価格調整において基準値を別に設定するとの考えに賛同します。
なお、先駆け審査指定制度における対象品目、医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会における選定品目、革新的医療機器条件付早期承認制度の対象品目に該当する品目、及び条件及び期限付承認を受けた再生医療等製品に該当する品目についても、これらの制度の趣旨に鑑み、同様に配慮を行うことが適当と考えます。
16ページ目をごらんください。比較対照技術について費用が削減される品目等への対応についてです。試行的導入においては、比較対照技術に対して、効果は同等もしくは増加し、費用が削減される品目のうち、以下の2つの条件を満たす品目について価格の引き上げが行われました。これらの条件のうち、条件2「全く異なる作用機序を有する品目」については、費用対効果の観点と異なることから、条件から除外すべきと考えます。
17ページ目をごらんください。価格調整のタイミングについては、在庫への影響などを考慮し、調整後価格の公表から実際の価格調整までに一定の期間を設けていただきたいと考えます。
なお、費用対効果評価の結果を受けて価格調整を行った品目については、次のような理由、日本の制度環境下における効果と費用を反映した評価を踏まえて価格調整が行われたということ、頻回な価格変更による診療現場の混乱を回避するため、こういった理由から次期の再算定及び実勢価格調査による調整の対象から除外していただきたいと希望します。
資料の説明は以上となります。ありがとうございました。
続いて、AMDD加藤よりコメントがございます。
○米国医療機器・IVD工業会(加藤氏)
AMDD会長の加藤でございます。本日は、このような意見陳述の場を設けていただき、まことにありがとうございます。
費用対効果評価の制度化に当たり、業界の意見を資料に沿って述べさせていただきましたけれども、私どもとして重要と考える点についてコメントさせていただきます。
最初に、基本的な考えで述べさせていただきましたが、医療の価値を適切に評価する観点から、費用対効果評価の重要性については承知しております。また、この制度が重要であるがゆえに、費用対効果評価をどのように行うかといった技術的な観点と、現行の材料価格制度を補完する制度として費用対効果評価制度をどのように位置づけるかといった制度的な観点、これからさまざまな課題を解決する必要があると認識しております。
技術的な観点からは、本日述べさせていただいた意見の中でも、これまでも繰り返し述べさせていただいてきたことではありますが、医療機器の特性を十分に踏まえて、医療機器の価値を適切に評価できるプロセスガイドラインとしていただきたいと希望します。
特に、医薬品に比べてRCTが少ないなどのデータ制約から、不確実性が大きい場合にはどう対応するのか。事例が豊富になっていく過程で、ガイドラインを定期的に見直していただくことが肝要です。今回の医療機器における試行では課題が多く抽出されましたけれども、まだまだ出尽くしていないと考えます。
次に、制度的な観点からは、現状薬事承認審査時に求められるデータ以上のデータを新たに費用対効果評価で求められることで、新たなデバイス・ラグを生じさせないように御配慮いただきたいと存じます。
また、現行の材料価格制度との整合性についても重要であると認識しております。価格調整の対象は、加算の対象部分とすることが妥当です。そして、費用対効果評価の結果を受けて価格調整を行った品目については、既に効果と費用に基づく価格調整が行われていること、頻繁な価格変更による診療現場の混乱を回避するためにも、次回改定時には再算定及び実勢価格調査による改定の対象から除外していただきたいと考えております。
私からは最後になりますけれども、今後費用対効果評価の議論が進む中で、さらに詳細な議論がされると理解しております。引き続き業界からの意見を述べさせていただく機会をいただければと希望しております。
続いて、EBCの藤原よりコメントがございます。
○欧州ビジネス協会医療機器・IVD委員会(藤原氏)
EBC医療機器・IVD委員会副会長の藤原でございます。
費用対効果評価の本格的な導入に向けて、試行的導入から現在まで、業界団体としましても意見陳述の機会を頂戴し、この新しい取り組みに参画させていただいておりますことに心より感謝申し上げます。
医機連、AMDDのほうから既にお話がありましたとおり、EBCとしましても、医療機器の特性を踏まえた評価方法及びガイドラインが策定されますことを、業界団体として改めてお願い申し上げます。EBCとしましては、当初より臨床の専門家の参画をお願いしてまいりましたが、専門組織においてその参画が認められましたことに心より感謝しております。さらに、今般はその参画がタイムリーに、また適切な場でも行える仕組みに広がりますように御検討いただけますよう、よろしくお願い申し上げたいと思います。
EBCの加盟企業の本社である欧州ではHTAを早くから取り入れており、患者目線で改革を行ってきた歴史がございます。中医協でも再三欧州諸外国の事例を参考とされてきておりますが、引き続き参照していただき、意図せず患者の不利益にならないよう、すぐれたイノベーション医療機器の参入障壁とならない制度設計が行われますよう、欧州がたどってきた歴史、遍歴を参考にしていただけることをお願い申し上げますとともに、EBCとしましても、それに対して引き続き協力を惜しまない所存でございます。
今後もさらなる議論が進む中で、引き続き丁寧な議論と、そして引き続き業界の意見も御理解いただき、ともにつくり上げていくというような制度となりますよう、よろしくお願い申し上げます。
業界からの意見陳述は以上でございます。
○荒井費用対効果評価専門部会長
ありがとうございました。
一通りの御説明をいただきましたので、これより質疑及びフリーディスカッションに移りたいと思います。なお、時間が限られておりますので、恐縮ですが、発言の冒頭で御質問なのか、御意見なのかをおっしゃってください。また、業界団体の方からの御発言につきましても、各団体で原則お一人の方にお願いしたいと思います。発言は簡潔に御質問に御回答いただけますようお願いいたします。
それでは、もし御意見があれば。松本委員、どうぞ。
○松本委員
では、製薬団体からの御意見について、3ページ目でございます。これは意見です。既収載品を費用対効果評価の対象外とするとの意見でございますけれども、財政影響の大きな品目につきましては、新規収載品、既収載品、いずれであっても費用対効果評価の対象とするのが基本的な考え方だと思います。確かに既収載品は、オプジーボ等に適用された市場拡大再算定によって薬剤費を減らす仕組みがありますけれども、薬価制度の補完という意味で既収載品も必ず費用対効果評価の対象にしておくべきと思います。
続いて、5ページ目です。これは質問でございます。「企業の分析は少なくとも6ヶ月以上としていただきたい」ということについてですが、厚生労働省の提案では、分析前協議で分析の枠組みを決定するまでの期間を6カ月と設定しております。企業側は、当然のことながらこの6カ月の間にある程度の分析を開始していることと思います。もしくは準備を開始していると思います。にもかかわらず、それからさらに一律に6カ月を必要とするというのは、考えづらいことだと思いますけれども、それについてのさらなる詳しい説明を求めたいと思います。
○荒井費用対効果評価専門部会長
今の質問に対して、よろしくお願いします。どうぞ。
○日本製薬工業協会(中山氏)
御質問は2点だと思います。なぜ費用対効果評価を新規収載品のみに限定するのかという点と、もう一つは6カ月の期間という点でございます。既収載品につきましては、既に当初の薬価について緻密な議論がされ、中医協の場でも了解された上で、状況変化に対しては再算定ルールが既に存在いたします。そういった意味からは、費用対効果が現在の薬価基準制度の補足的、限定的な役割として使われるべきということからしまして、新薬の価値評価に限定し、また補足的に用いられることが適切だという考えでございます。
期間6カ月につきましては、既に試行的導入の際にも相当の期間がかかったということと、品目あるいは各社の状況に応じまして、費用対効果評価に対する対応をとる体制、あるいは人材等を考えますと、さまざまな企業によって事情が違うということからして、まずは6カ月が相当ではないかという考え方でございます。
以上、御回答を申し上げました。
○荒井費用対効果評価専門部会長
松本委員。
○松本委員
費用対効果評価と市場拡大再算定による仕組みというのは、物差しが全く違うので、それは片方がしたからといって、片方はもうしないというのは、ちょっとおかしいのではないかなと思います。
続いて、7ページ目です。価格調整の対象範囲につきまして、費用対効果評価の適用は有用性系加算への調整ということで理解しておりますが、原価計算方式と類似薬効比較方式では薬価の算定方式が全く異なるものと思いますので、価格調整の範囲も別々に考える必要があるかと思います。特に原価計算方式で算定された品目のうち、原価の内訳の開示度が低い品目につきましては、価格調整の対象範囲をどうするべきかについて検討が必要と考えます。これは意見です。
もう一つ、8ページ目についても意見でございますが、安定供給の観点から、10%までという下げどめのルールを設けることについては、一定程度の理解はできますけれども、さらに価格調整範囲の調整率まで緩和するというのは、理解が得られないのではないかと思います。
以上です。
○荒井費用対効果評価専門部会長
御意見ありがとうございました。
では、吉森委員、どうぞ。
○吉森委員
ありがとうございます。
今の松本委員と同じなのですが、5ページ、企業分析に6カ月必要だ。今、中山会長から個々の企業の体制と云々という御回答をいただきましたが、そもそも9ページで制度化に向けて体制強化が必要とのことでした。これは国に求めるという御意見だと理解しましたが、製薬連を初め、製薬業界団体では個々の企業のマターだというのはよくわかるのですけれども、団体としてこの体制整備強化について何かお取り組みになっているか、どういうお考えなのか、その辺について御意見をいただければと思っています。
○荒井費用対効果評価専門部会長
今の件、よろしくお願いします。
○日本製薬工業協会(中山氏)
今回の費用対効果につきましては、各社とも状況に応じて、先行している企業もあれば、していない企業もあると考えます。特に海外で既に評価されているものの場合と、日本で世界に先駆けて最初に評価を実施する場合、あるいは各品目の特性によってデータ作成の期間は大きく異なると考えておりまして、各企業の費用対効果に対する機能、組織、ノウハウについて、つぶさにごらんいただければ、ここに大きな違いが現存としてございます。その点を含めまして、私どもとしては、特に試行的導入の際は、品目選定から分析結果が出るまで約1年を要したということも含めて、少なくとも6カ月が相当ではないかというのが業界全体としてまとめた場合の意見でございます。
○荒井費用対効果評価専門部会長
吉森委員、どうぞ。
○吉森委員
そのところは理解しないではないのですが、そういうことを踏まえて海外のいろんなエビデンスを含めた情勢、個々の企業さんの情勢を踏まえて、団体として費用対効果評価制度を定着させていくために、やはり製薬各企業の体制、人材育成というのは非常に重要な論点だと思いますので、その辺について業界として何かお取り組みをなさっているのか、取組していくつもりがあるのかをお聞きしたいというのが私の質問だったのです。
○荒井費用対効果評価専門部会長
よろしくお願いします。
○日本製薬工業協会(中山氏)
失礼しました。
今回の御審議を含めて、各社とも、あるいは団体としても今後トレーニング等を必要に応じて実施していきたいと考えております。ただ、一方で、人材育成というのは大きな課題として我々も認識しておりますし、そういった人材がなかなか短期間で育たないことも残念ながら事実でございますので、その点は重々御理解を賜れればと存じます。
○荒井費用対効果評価専門部会長
吉森委員、どうぞ。
○吉森委員
ありがとうございます。
そういう意味で、個々の企業の能力差といったらおかしいですが、分析能力についてばらつきがあるということであるならば、この分析のプロセスでの枠組みの決定までの分析・協議の6カ月というのは非常に重要であって、今回厚労省の科学研究班によるガイドラインの見直し等々も行っていらっしゃる、ブラッシュアップできるということであるならば、それを使ってこの協議を綿密にやっていく中で、6カ月かけて十分やれば、それぞれお取り組みも、6カ月というのはわからないではないですが、3カ月を含めて9カ月。1年と9カ月がどれだけ違うのかということもあるわけでしょうが、その辺は対応できるのではないかと考えています。その辺についての御意見は、やはり6カ月以上必要だということでございますしょうか。
○荒井費用対効果評価専門部会長
では、お願いします。
○日本製薬工業協会(中山氏)
本件については、業界内でも各社とも知恵を絞って検討を重ねてまいりまして、現時点ではやはり6カ月相当が必要であるというのが私どもの見解でございます。
あと、PhRMAのほうからも少し御回答したいということです。
○米国研究製薬工業協会(ジェームス・フェリシアーノ氏)
一言だけPhRMAから申し上げたいと思います。現在提案しております6カ月という期間は、世界においても最短であると申し上げたいと思います。ヨーロッパの国々では、この期間というのは優に1年を超えております。それから日本市場であるということを考えると、PhRMAの会員企業は、本社とのやりとりに時間を必要といたします。というのは、この評価の結果というのが、日本市場のみならず、世界中の市場に波及効果を及ぼすということで、本社とのやりとりにかなり時間を要することが想定されますので、そういったことをもろもろ勘案して6カ月というのは非常に短い期間であると私たちは認識しています。
○荒井費用対効果評価専門部会長
吉森委員、どうぞ。
○吉森委員
わかりました。それをこの費用対効果評価の中で6カ月、6カ月で1年で、先ほどPhRMA/EFPIAからもありましたが、追加的な価値をどう判断するか、アプレイザルはどうかというと、さらに時間がかかって、1年半から2年かけて評価するのがいいかというのは、今後この会議で詰めていく必要があるのだろうと思います。これは意見です。
あわせて、4ページの分析プロセスの中で、ナショナルデータベースを使用する場合に、検証できないなどの課題があるとお聞きしたのですが、具体的には何が検証できないのか。これは先ほどの人材育成とか個々の企業の体制にもかかわる話なのか、その辺を教えていただければと思います。
○荒井費用対効果評価専門部会長
よろしくお願いします。
○上出専門委員
少し内容が各論に入っておりますので、専門委員のほうからお答えさせていただきたいと思います。まずNDBは、基本的に今、企業はアクセスすることができませんので、公的分析でNDBをどのように分析をしたのかということについては、みずからアクセスできないデータでの分析結果を検証するということについては限界があるということでございます。
○荒井費用対効果評価専門部会長
吉森委員、どうぞ。
○吉森委員
わかりました。では、このナショナルデータの提供ということについては、事務局並びにきょう福田先生もいらっしゃいますが、どのようにお考えなのか。何かお考えがあれば教えていただければと思います。
○荒井費用対効果評価専門部会長
では、福田参考人、どうぞ。
○福田参考人
福田でございます。
NDBの使用に関してですけれども、これの使用のルールに関しましては、費用対効果のためだけではなく、ほかの使用方法を含めて、目的外使用ということになりますので、手続等がありますので、その手続については何も言えない状況でございます。
一方で、分析方法についての協議とかはある程度今後もできるのではないかと考えています。
○荒井費用対効果評価専門部会長
吉森委員、どうぞ。
○吉森委員
そうしますと、いずれにしてもナショナルデータベースを使うときには、企業さんも検証できる、使いやすいというようなことの提示を、これからガイドも含めてやっていくという理解でよろしいわけですか。
○荒井費用対効果評価専門部会長
企画官、どうぞ。
○古元医療課企画官
ありがとうございます。
試行的導入の大きな課題といたしましては、事前協議の中で費用の推計をどのように行うのか、そういったところが十分協議ができていなかったという側面がございます。そういった中の一つとしてNDBの詳細の考え方、分析の仕方ということでございますので、そういったところを含めまして改善をしていきたいということでございます。
○荒井費用対効果評価専門部会長
吉森委員、どうぞ。
○吉森委員
わかりました。
あと2つほど質問させていただきたい。EFPIA/PhRMAさんがICERには限界があり、QALYも含めて追加的な価値の反映、これとのバランスをとって評価、アプレイザルをしていくべきだと。理解はできるところでありますが、ICERとは別にこうしてエビデンスを出して分析をしていくのだとおっしゃっていますが、これは具体的には、今、費用対効果評価で流しているプロセスとは別に、並行してそのプロセスを走らせるという建付けの理解でよろしいのでしょうか。
○荒井費用対効果評価専門部会長
どなたか。よろしくお願いします。
○米国研究製薬工業協会(ケビン・ハニンジャー氏)
御質問ありがとうございます。
まず、企業が要する分析結果提出までに至る期間というのは、ICERの評価を行って、ICERモデルを構築するというのに一番時間がかかります。その一方で、私どもが提案している仕組みの中で、ほかの医薬品の価値に関しての追加的なエビデンスを評価して提出するというのは、ほとんど時間はかからないと考えておりますけれども、確かに別途この医薬品の価値を評価した上で、それを勘案して評価するということですから、時間は余りかかりません。
○荒井費用対効果評価専門部会長
吉森委員。
○吉森委員
わかりました。それは今の分析プロセスの流れの中に組み込むことは可能だというふうに理解すればよろしいですか。
○荒井費用対効果評価専門部会長
一応、確認ということなのですが。
○米国研究製薬工業協会(ケビン・ハニンジャー氏)
はい。
○荒井費用対効果評価専門部会長
どうぞ。
○吉森委員
わかりました。
これは日本の製薬団体連合会さん、製薬工業会さんに質問ですが、EFPIA/PhRMAさんが追加的にお考えになって、追加意見を出されている。製薬連さん、工業会さんは同意見なのでしょうか。
○荒井費用対効果評価専門部会長
よろしくお願いします。
○日本製薬工業協会(中山氏)
私どもも医薬品の価値はもう少し多面的に評価すべきであると考えておりまして、前回の部会の意見陳述でも少しそのことは述べさせていただきました。私どもの捉まえ方は、もっと広い範囲で多元的に見ていく必要がある、特にサイエンスが進めばそういうものはもっとふえてくると考えておりますので、今回PhRMA/EFPIAから出された考え方は、この範囲ではございますけれども、我々の考え方と方向は同じでございます。ただ、私どもとしてはまだ具体的な提案には至らなかったということでございます。
○荒井費用対効果評価専門部会長
吉森委員、どうぞ。
○吉森委員
理解いたしました。
最後になりますが、7ページ、価格調整で、有用性加算の範囲内にしていただきたいということ。これはわからないではないのですが、PhRMA/EFPIAさんの追加意見の5ページには、原価計算方式による製品では、価格が総原価を下回ることのないように、価格調整は加算のみにしていただきたい。これもわからないではないですが、原価計算においては、その大前提としまして、そもそも製品総原価の算出根拠については、公平性の観点で透明性を担保するということで、原価の内訳がある程度開示された上での話であれば理解できるのですが、その辺の開示、透明性に関して、現状はなかなか透明性が担保されていないのではないかと個人的に考えているのですが、お考えはいかがでございましょうか。
○荒井費用対効果評価専門部会長
今の点、いかがでしょうか。
○日本製薬工業協会(中山氏)
日本の医薬品メーカーについてということでございますか。PhRMA/EFPIAさんのほうに。
○吉森委員
特に輸入品についてはそうなのだろうと思っていますし、日本の製薬メーカーさんもその辺はどうお考えなのか。御両者からお聞きできればと思います。
○日本製薬工業協会(中山氏)
原価につきましては、各企業とも最も重要な極秘事項になっておりますので、その提出については極めて慎重になってまいります。私どもとしてもできる範囲では当局との交渉において開示してまいりたいと思いますけれども、本質的には企業の存亡にかかわるデータであると我々は考えておりますので、決してそれを隠すというつもりはありませんが、極めて重要なものでございますので、慎重に対応していきたいと思っております。
○欧州製薬団体連合会(オーレ・ムルスコウ・ベック氏)
一言よろしいでしょうか。
○荒井費用対効果評価専門部会長
どうぞ。
○欧州製薬団体連合会(オーレ・ムルスコウ・ベック氏)
私どももできる限り透明性ということに努めているわけでありますが、原価計算方式で含まれる要素といたしましては、もちろん製造費、開発費、流通経費、そしてまた妥当な利益というものを担保した上で、税金が乗せられて、その上で有用性加算が乗せられてくるわけであります。この構成を考えていきますと、費用対効果の価格調整におきましては、この加算を超えての調整というものがなされるべきではないと考えております。
○荒井費用対効果評価専門部会長
今村委員、どうぞ。
○今村委員
お薬についての質問と、多分意見にもなるのだと思うのですけれども、ICERが非常に不確実なものなのだというのは同意できるところですし、ビジネスに基づいて議論しましょうというのは、これはこれでわかるのです。先ほど吉森委員からも御質問があった総合的な評価に考慮する要素ということで、6ページのところを見ていただきますと、「試行的導入において考慮要素とされた」ということで、あえてその後、赤字で幾つかの項目が書かれているのですが、先ほどPhRMAからも、ICERは分析に非常に時間がかかるけれども、考慮的要素は割と簡単にわかるのですという御意見があったようですが、例えば公的介護費などというのは、試行的導入は多分入っていなかったように思いますし、公的介護費というのは、どのように分析すれば考慮する要素になるのか。まずそのことを教えていただければと思います。
○荒井費用対効果評価専門部会長
どなたに。
○日本製薬工業協会(中山氏)
私どもとしては、医薬品が評価される中で、医薬品自身、患者さんへの影響以外の医療費の削減、あるいは社会保障費の削減に寄与するという点は評価されるべきではないかと考えております。
詳細について、専門委員のほうからも少しお答えさせていただきます。
○荒井費用対効果評価専門部会長
お願いします。
○上出専門委員
実際に公的介護費を計算する方法というのは、この場で明確なお答えを持ち合わせておりませんけれども、臨床試験の結果等も含めて、そういった計算をしていくことになろうかと思いますが、もしPhRMA/EFPIAのほうでお考えがあれば述べていただきたいと思います。
○欧州製薬団体連合会(オーレ・ムルスコウ・ベック氏)
私どもが新薬承認のための臨床試験を行う際に、現時点におきましては、単なる医薬品の安全性・有効性に加えまして、全体の医療制度に対してどれだれのインパクトをもたらすことができるかということもしばしば評価するようになってきております。また、今後もさらに私どもはそのデータ集積の努力をしていかなければならないと思います。そして、製品のフルの価値というものが評価できるようなデータ集積がなされていかなければならないと考えております。確かに今までにおいてはそれが中心的な課題となってこなかったという問題がありますけれども、今後さらなるそうした面での努力が必要だと考えております。
そこのところがなかなかジレンマになってくるところでありまして、結果、そのようなデータ集積のために開発費が暴騰してしまうということもあるわけで、一方におきまして、薬価を下げるため開発費を圧縮するという努力もされている中でのジレンマということになります。
○今村委員
よろしいですか。ここからは意見です。今の御意見を聞いていると、介護の費用に対して、どのような影響があるかというお答えにはなっていないような気がいたします。今、日本では医療のデータと介護のデータを連結しようということが、ようやく議論として始まっているのです。その中で、例えば同じ病気で同じ介護度を認定されたとしても、全く介護費用がそれぞれ違います。それはなぜかというと、経済的な背景とケアプランのつくり方によって、介護の費用が全く違うので、単純に介護費用にお薬がどのように影響するかというのは、今の時点で分析することは非常に困難だと思います。これからそういうデータを分析していって、そういったものがどの程度効果があるかということはわかると思いますけれども、今の時点で軽々にこういうところに考慮要素として介護費というものが加えられるというのは、非常に違和感がある。これは意見であります。
例えばがんの末期の方にあるお薬を使って、その方にとって延命するということは重要なことだと思いますけれども、先ほど介護者の負担が減るというお話がありましたが、延命するということは、介護期間が長くなるということでもありますので、単純なお話ではないと思いますので、これは企業としてもぜひ研究していただければと思いますし、また、先ほどのような簡単に考慮要素が出るのだというお考えはやめていただきたいと思います。
以上です。
○荒井費用対効果評価専門部会長
ほかに御意見はいかがでしょうか。では、城守委員、どうぞ。
○城守委員
今の今村先生の御質問に少し似ているのですけれども、ICER以外の価値が医薬品にあるということは十分理解しておりますが、結局、欧州等先行事例において、ICER以外の医薬品の価値を評価する制度というものがあるのか。あるならどのように機能しているのか。ないのであれば、今回我が国で費用対効果を導入するときにここに入れ込んでほしいという要望なのか。そのあたりをもう一度お聞かせください。
○荒井費用対効果評価専門部会長
よろしくお願いします。
○米国研究製薬工業協会(ケビン・ハニンジャー氏)
御質問ありがとうございます。
直接お答えする前に、まずお断りしておきたいのは、私どもがICER以外の追加的要素を評価すべきであると申し上げたのは、これがもしメーカーによって追加的な要素、または医薬品の価値がエビデンスとして提出することができるのであれば、それを十分勘案した評価をすべきであると申し上げているわけでございまして、加算調整の必要性の可否の判断として、こういった要素というものを全ての製品に対して、ICER以外で評価しなければいけないということを主張しているわけではないということを御理解いただきたいと思います。
御質問に対する直接のお答えといたしましては、今、世界で導入されているHTAというのは、いろいろなタイプがございまして、必ずしも全てのHTAがICERの評価に依拠しているわけではありません。仮にある制度においてICERが使用されていたとしても、ICERが主な評価として使われる、あるいは単一の閾値、単体の指標として使われるということはめったにありません。
例えば英国の事例を挙げさせていただきます。英国の場合には、いろいろなICER以外の基準あるいは方法というものを、例えば希少疾患の治療薬、または臨床試験データがICERに関して適切なデータがないという場合に関しては、ほかの方法であるとか基準というのが通常定期的に用いられていると言えます。ですから、ICERの単一の閾値だけをベースに判断を下すということは行われていません。
○欧州製薬団体連合会(オーレ・ムルスコウ・ベック氏)
御質問は、実際に具体的なそうした施策があるのかというお話だったと思います。一つの例としては糖尿病の事例があるかと思いますが、十分な治療がなされないと、目の関連での合併症とか、透析を必要とするような状況になるということは、よく知られております。ですから、そういった意味で、新規の治療薬によって失明を回避することができたり、透析を回避することができ、その人が労働市場に続けて残ることができるということになれば、これは非常に大きな社会的便益ということになってくるわけで、それが社会的便益としてその薬剤の便益の中に評価されていくということがあります。
○荒井費用対効果評価専門部会長
どうぞ。
○日本製薬工業協会(中山氏)
私のほうからも追加させていただきたいのですけれども、海外との比較において日本が際立って違っているところは、非常に精緻な薬価基準制度が現に存在しているという点でございますし、その運用が中医協を含めてしっかり運用されていくという中で、ICERが補足的な、限定的な位置づけであるという点は極めて大きいと思います。特に我が国では明文化された薬価算定ルールがあるということと、ふぐあいを是正するために2年ごとに見直されている。あるいは算定根拠も含めて公開の場で議論される。このような国はございませんので、そういった意味では各国との使い方は若干違ってきてしかるべきかなと思っております。
○荒井費用対効果評価専門部会長
城守委員、どうぞ。
○城守委員
ありがとうございました。
やはり明確な制度設計がなかなか難しいというのが現状ということも皆様、共通認識できたと思います。そういう意味では、試行的導入で今回アプレイザルにおいても非常に難しい判断をしながら導入に向けてということで我が国でも考えていく中においては、今後個別の事例を積み重ねるしかないかなと思います。その中でも、中山さんがおっしゃったことは、我々もそのとおりだと思っておりますので、これをどう位置づけていくのかというのは今後の課題だということは、共通だと思います。
ありがとうございます。
○荒井費用対効果評価専門部会長
松本委員、どうぞ。
○松本委員
医療機器業界からの意見陳述資料の12ページ目に「分析手法、評価結果の詳細については、企業に確認のうえ公開することとしてはどうか」と。医療機器業界からは提案されていますが、この点に関しまして、医薬品業界はどうお考えになっているか、お聞きしたいと思います。
○荒井費用対効果評価専門部会長
よろしくお願いします。
○日本製薬工業協会(中山氏)
私どもも今後この費用対効果につきましても、この中の議論がしっかりと透明性を持って開示されていくということには賛成でございます。
○松本委員
お考えについては賛成ということでよろしいですね。
○日本製薬工業協会(中山氏)
はい。
○荒井費用対効果評価専門部会長
ほかに御意見は。遠藤委員、どうぞ。
○遠藤委員
製薬団体の方の御発言で、ちょっと御質問したいのですけれども、2番目の方だと思いますが、費用対効果の結果によってアクセス制限というお話をされたと思うのですけれども、今回の中では償還の可否は論じていないわけですが、具体的にどのような要因でどのようなアクセス制限があるか、教えていただければ。
○日本製薬工業協会(中山氏)
現時点で具体的な議論にはなっておりませんし、中医協の議論はそういうことを含めていないと理解をしておりますが、諸外国の一部、税方式をとっている国においては、費用対効果評価をアクセスの制限あるいは償還可否に用いている国もある。しかし、日本では社会保険制度をとっている立場上、それはあり得ないと思いますが、我々としては、それは社会保障制度のシステムから見ておかしいと思っていますので、明快にその方向性を示していただきたいし、もう一度重ねて御要望した次第でございます。
○荒井費用対効果評価専門部会長
遠藤委員、どうぞ。
○遠藤委員
その方向のアクセス制限と、もう一つは製薬メーカーからのアクセス制限という考えもあろうかと思うのですが、そういう考えを製薬メーカーは持っていないということでよろしいですか。
○荒井費用対効果評価専門部会長
お願いします。
○米国研究製薬工業協会(ジェームス・フェリシアーノ氏)
非常に率直な意見を申し上げたいと思います。今の日本の制度、この3年間で起こってきたことを想起していただきたいと思います。それ以前は、世界の製薬メーカーが薬をまず何より日本で上市をするということを優先するような市場になってきたわけですが、この状況がかなり変わってまいりました。そして非常に厳しいHTA、費用対効果評価の制度というものがもし日本に導入されるとすると、市場で三番手に出た薬は対象とならないとか、あるいは3年間のルールであるとか、いろいろな薬価改定の規則によって、いろいろなメーカーにとって、日本に優先的に投資を行うという魅力が非常に薄くなっているわけです。そういう意味では、アクセス制限につながってしまうというリスクがあると申し上げざるを得ません。
○米国研究製薬工業協会(ケビン・ハニンジャー氏)
一言だけ。世界の国々の中でICERを主に評価結果として使って、薬価、アクセスに関する決定を行っているところがあります。英国においては、引き続きICERに関しての非常に厳格なルールというものが存在し、それが適用されています。そしてイギリスというのは、新しい乳がんの治療剤がこの10年間導入されていない国となっています。その結果、ICERが保険適用の判断にも使われる。そしてこのような抗がん剤、乳がんの治療薬の上市をイギリスにおいて妨げていることによって、ヨーロッパにおけるこういったがんの生存率がイギリスの生存率を上回り、イギリスはヨーロッパのほかの諸国よりも非常に低い生存率になってしまいました。これは全てICERをベースに保険適用の可否を決めるといったことによって起こっています。そしてアクセスが制約されてしまっています。
日本の患者が今の状況を考えると、臨床的な転帰も、世界のほかの国々よりもすぐれており、これは患者の治療薬に対するアクセスというものが大変高い水準にあるからです。ですから、今、せっかくこういう状況にあるにもかかわらず、イギリスのような制度をあえて導入してしまうのか、それとも全ての日本の利害関係者のためにベストとなる制度をこれから導入していくのか、これは皆様の御判断ということになります。
○欧州製薬団体連合会(オーレ・ムルスコウ・ベック氏)
アクセスの問題につきまして、製品の開発が日本でなされるようになるかということだけではなくて、タイミングの問題になってくるかと思います。ですから、どのタイミングで日本に新薬が導入されてくるのか。結果、費用対効果評価というものがなされることによって、以前に見られたようなドラッグ・ラグが生ずるのではないか。非常に有効な治療薬といったものが3年、4年、5年かからないと日本に来ないといった時代になるのではないかということを懸念しております。
○荒井費用対効果評価専門部会長
医薬品の団体を中心とした質問になっておりますが、医療機器団体のほうへの質問ももしありましたら積極的に。松本委員、どうぞ。
○松本委員
では、医療機器業界の資料に移らせていただきますが、4ページ目でございます。この中に既収載品について、同一機能区分内に複数品目を有する場合は、評価の対象から除外すべきとの意見がございますけれども、従来から医療材料は機能区分方式を採用しています。同一機能区分に複数品目が存在することは、むしろ当たり前の仕組みと理解しております。業界からの提案どおりとすると、費用対効果評価の対象となる品目は極めて限られてしまうのではないかと思いますが、それについての改めてのお考えをお伺いいたします。質問です。
○荒井費用対効果評価専門部会長
よろしくお願いします。
○米国医療機器・IVD工業会(伊藤氏)
まず、機能区分については、御理解いただいているとおりでございます。複数ある場合、私どもが想定しておりますのは、例えば機能区分というのは、原理が同様のものが入っている。例えば薬剤溶出ステントですと、古いものから新しいものまで複数のものが含まれています。そういったときに、例えばこういったものは臨床試験が多くされているものですけれども、それらの製品のメタアナリシスのデータからは、薬剤溶出ステントの中でもかなり効果の違いがあるということも発表されております。そういった観点からしますと、機能区分内の1つの製品を対象として機能区分の価格調整を行うということについては、なじまないのではないかといった意見がございます。
そういった観点から、基本的に難しさ、この点について検討いただきたいということはございますが、仮にあえて1個やる場合というのは、ほかの製品も一緒に価格が下がってしまうとか、そういったことがないように、ほかの製品についても評価ができるような機会を検討いただきたいということでの提案をさせていただいております。
○荒井費用対効果評価専門部会長
松本委員、どうぞ。
○松本委員
わかりました。1つの製品について評価をすれば、同じような製品であれば、当然それが波及してくるだろうというお考えはそのとおりだと思いますので、そういうお考えでやっていかれたらいいのではないかと思います。
引き続きまして、7ページ目の中に習熟効果ということが書いてありますが、感覚的にはある程度わかりますけれども、どのような医療機器であっても、使用する医師によって習熟度が異なりますので、習熟度を一律に考慮することは非常に難しいのではないかと思います。具体的にどのような品目であれば習熟度を考慮することができるのか。それを実証するエビデンスがあるのかを教えていただければと思います。
○荒井費用対効果評価専門部会長
よろしくお願いします。
○米国医療機器・IVD工業会(伊藤氏)
習熟度については確かに開きがあるというのは、御理解いただいているとおりでございます。例えば初期の臨床試験の際に行ったときに出てくるデータと、その後、臨床試験もしくは販売後に先生方に対するトレーニング等も踏まえて改良されていくようなことになります。そういった中でその機器をどのように扱うかということについて、企業から与える情報というところでも改良がされていくことで、治療効果もしくは手技にかかる時間等も含めて変わってくるということになります。そういったことを踏まえますと、初期の臨床試験のデータがそのまま今の臨床現場のデータを反映しているかどうかということについて、これは丁寧に議論いただきたいというところでございます。
その上で、データの選択というところにつきまして、分析前協議のところで、古いRCTを用いるのか、現状のデータを用いるのか、データの取り扱いというところについてまず検討いただいた上で、分析を決めていくべきだということ、考慮いただきたいということで考えております。
○松本委員
具体案としてはなかなかないということで、その点については理解しました。
意見を2つほど述べさせていただきます。13ページ目、有用性加算や画期性加算と費用対効果評価とは評価の考え方が異なることを踏まえての検討が必要かと思います。結果として当初高い加算が算定され、品目の加算が低くなる可能性もあろうかと思いますので、その点については意見を述べさせていただきます。
もう一点、17ページ目、調整の対象から除外していただきたいという要望についてです。そもそも費用対効果評価による価格調整と、外国価格との比較による再算定や、実勢価格に基づく価格調整とは考え方、物差しが異なった仕組みであって、費用対効果評価を行ったからといって、これは医薬品のほうでもありましたけれども、再算定などを行わないということは、これも理屈に合わないのではないかと思います。意見です。
○荒井費用対効果評価専門部会長
御意見ありがとうございました。
ほかにございますでしょうか。どうぞ。
○欧州ビジネス協会医療機器・IVD委員会(藤原氏)
先ほど習熟度ということがあったのですけれども、作業効率にかけては、医療機器では、具体的な例で言いますと、人工透析の人工腎臓の中に水が入っているものがあるのですが、通常その準備をするときに、中に入っている空気を全て抜かなければいけない。水を入れることでそういうプロセスがなくなって準備が短くなるとか、医療の現場におきまして作業量が減るということで考慮して改善しているものもありますので、習熟度に限らずに、作業の改善ということでもやっているということがありますので、そういうことも。習熟度も、今、こちらですぐにこういったことがという具体例がありませんけれども、またお示しできるようなことがありますので、御考慮いただければと思います。
○荒井費用対効果評価専門部会長
ほかに御意見はどうでしょうか。
ありがとうございました。
ほかに御意見もないようですので、関係業界からの意見陳述については、ここまでとさせていただきます。
本日の議題は以上です。
次回の日程につきましては、追って事務局より連絡いたしますので、よろしくお願いします。
それでは、本日の合同部会はこれにて閉会といたします。どうもありがとうございました。
 
 

 

(了)
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