ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会薬価専門部会)> 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会 第141回議事録(2017年11月29日)

 
 

2017年11月29日 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会 第141回議事録

○日時

平成29年11月29日(水)8:30~11:24

 

○場所

厚生労働省講堂(低層棟2階)

○出席者

中村洋部会長 野口晴子部会長代理 関ふ佐子委員 田辺国昭委員
吉森俊和委員 幸野庄司委員 平川則男委員 宮近清文委員
松本純一委員 今村聡委員 遠藤秀樹委員 安部好弘委員
村井泰介専門委員 平野秀之専門委員 上出厚志専門委員
<日本製薬団体連合会>
多田正世意見陳述人
<日本製薬工業協会>
畑中好彦意見陳述人
<日本ジェネリック製薬協会>
吉田逸郎意見陳述人
<米国研究製薬工業協会> 
エイミー・ジャクソン意見陳述人 パトリック・ジョンソン意見陳述人
ケビン・ハニンジャー意見陳述人
<欧州製薬団体連合会>
トーステン・ポール意見陳述人  フィリップ・フォシェ意見陳述人
<日本医薬品卸売業連合会>
鈴木賢意見陳述人
<事務局>
鈴木保険局長 渡辺審議官 伊原審議官 迫井医療課長 古元医療課企画官
矢田貝保険医療企画調査室長 中山薬剤管理官 小椋歯科医療管理官 他

○議題

○関係業界からの意見聴取について

○議事

 

 

○中村部会長
時間になりましたので、ただいまより、第141回「中央社会保険医療協議会 薬価専門部会」を開催いたします。
まずは本日の委員の出欠状況について報告します。
本日は、全員が御出席です。
なお、会議冒頭のカメラの頭撮りは、ここまでとさせていただきます。
(カメラ退室)
○中村部会長
それでは、議事に入らせていただきます。
今回は、これまでの議論を踏まえて、関係業界からの意見聴取を行いたいと思います。
関係団体として、日本製薬団体連合会、米国研究製薬工業協会、欧州製薬団体連合会及び日本医薬品卸売業連合会より意見を聴取したいと考えております。
それでは早速、意見陳述に移りたいと思います。
まずは関係団体の皆様よりプレゼンテーションしていただき、その後に質疑とフリーディスカッションを行いたいと思います。
関係団体の皆様には、最初に自己紹介を行った上で、プレゼンテーションをお願いいたしたいと思います。
それでは、最初に日本製薬団体連合会よりお願いいたします。
○日本製薬団体連合会(多田)
おはようございます。日本製薬団体連合会の会長をしております多田でございます。
意見陳述の機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。
本日は、日本製薬工業協会の畑中会長、日本ジェネリック製薬協会の吉田会長にも御出席をいただいております。
今回の意見陳述では、過日、本会に提案されました「薬価制度の抜本改革 骨子とりまとめに向けて(案)」に対する私どもの意見を申し述べます。検討すべき多くの課題があると認識しておりますが、陳述内容は重点課題に絞っております。陳述で取り上げていない検討課題につきましては別添資料に整理しております。ぜひ、後ほどごらんいただきたいと思います。
2ページをお願いいたします。こちらは前回の陳述でもお示しいたしました「医薬品のライフステージ全体から見た医療への貢献(イメージ)」でございます。
新薬、長期収載品、後発品、基礎的な医薬品がその時々の立場で医療に貢献しております。「ステージ毎の医療への貢献を踏まえたメリハリのある施策が必要」と考えております。
しかし、今回提案されている内容は一部に新薬収載時の評価拡充が提案されてはいるものの、既収載品につきましては総じて薬価を引き下げる方向の提案に偏っているように見受けられます。薬価制度の抜本改革案というより、薬価の抜本的引き下げ案という印象を持たざるを得ません。特に新薬創出等加算につきましては、特許期間中の新薬の全てを対象にして薬価を維持するべきであるという業界の主張とはかけ離れた考え方でございます。
また、長期収載品につきましても、今までとは大きく異なる新しい考え方が打ち出されました。そのこと自体を否定するものではございませんが、もしそうであるならば、特許期間中の新薬については欧米主要国と同様に薬価を維持する仕組みとして制度化されるべきであると考えます。
以下、重点課題について、意見を申し上げます。
3ページをお願いいたします。新薬創出等加算につきましては、対象を限定し、かつ対象品目ほとんどの薬価が維持されないという見直しは再考願いたいと考えます。
まず、提案された品目要件では、現行の対象品目の50%前後の品目が対象外になると考えられ、このまま受け入れられるものではございません。本提案は、業界主張である、特許期間中の新薬の全てを対象として薬価を維持すべきであるという案とは余りにもかけ離れた考え方でございます。このような提案は、足元の収益を直撃するのみならず、特許のある新薬が評価されないということになりますと、次のイノベーションの投資の原資が確保できなくなり、新薬創生のサイクルが回らなくなり、そして国民や患者さんへの責務が果たせなくなるのでございます。
また、加算対象品の類似薬の2番手、3番手について、1年の期限をつけて加算するというルールも提案されておりますが、これも後に1年以降にすぐれた製品が出てきた場合を考えますと、適切な措置とは考えられません。
したがって、多々ございますけれども、今般の見直しに当たりましては最低限、以下の点について見直しを求めたいと考えます。
まず、加算対象の範囲でございますが、資料の関係上、特に記載しなかったのですけれども、お手元の資料にはございませんが、私どもの考えとしまして、対象品の拡大についてはぜひともお願いしたいと考えます。また、企業要件につきましては、95%以上の企業の全ての対象品目について薬価が維持されないという取り扱いでは、少なくとも区分1に該当する企業の範囲は大幅に拡大すべきであると考えます。
また、薬価収載時に新薬創出等加算対象外となる品目であっても、薬価改定時に市販後の評価等によって新薬創出等加算の対象となり得ることや、公平な市場競争確保の観点を踏まえれば、収載時において比較薬の累積加算相当分を控除するといった措置は不適切であると考えます。
さらに今後、新薬算定時における補正加算の適用に当たっては、臨床上の有用性等を踏まえまして、従来以上に適切な運用を求めたいと思います。
4ページをお願いします。長期収載品に依存した経営モデルからの構造転換が求められていることは理解をいたしております。今回の提案は一つの考え方ではありますが、特許期間中の新薬の薬価が維持される仕組みとセットで検討されるべきと考えます。
長期収載品につきましては、その状況や背景はさまざまであるため、一くくりで取り扱うべきではなく、特例引き下げ(Z2)との整合性、企業の医療の質の向上への取り組み意欲、あるいは安定供給確保等の観点から、一定の品目は除外すべきと考えます。
また、後発品薬価をもとに長期収載品薬価の上限を設定するという、これまでにない方法が示されております。該当する品目及び企業にとって極めて厳しい措置であり、大きな影響を及ぼすことが懸念されることから、十分な激変緩和措置が不可欠であると思います。
5ページをお願いいたします。次に、基礎的医薬品等についてでございます。
長期収載品に係る本提案により、採算性に乏しい医薬品の安定供給の継続が困難になることも想定されます。基礎的医薬品の拡充に向けた検討、不採算品目再算定の確実な適用、最低薬価の新規追加を行うべきと考えます。
6ページからは、製薬協の畑中会長に御紹介いただきます。
○日本製薬工業協会(畑中)
日本製薬工業協会の畑中でございます。私からは、薬価算定方式の正確性・透明性及びイノベーションの評価と費用対効果評価に基づく価格調整について意見を述べさせていただきます。
今回御提案をされています原価計算方式においても、価格全体に加算すること、あるいは一般管理販売費の上限を引き上げることにつきましては賛同いたします。
一方、現行ルールにおきましては、既収載品につきまして、新規収載時であれば有用性加算が適用され得る効能追加を行った場合を評価する仕組みが存在しないために、効能追加に伴う加算評価について検討を行うべきと考えております。
さらに、世界に先駆けて日本で最初に承認される革新的な新薬につきましては、適切な類似薬が存在しないために、原価計算方式により算定されることが想定されますが、現下の積み上げ以外に新薬の革新性をより適切に評価し得る新たな薬価算定方式についても、今後検討を進めるべきと考えております。
スライド7をごらんください。こちらは費用対効果評価に基づく価格調整についての意見でございます。
前回の意見陳述でも述べましたように、我が国の薬価制度におきまして、既に医療技術評価の概念は反映されているものと考えております。医薬品の価値評価が費用対効果評価の導入によって損なわれることがあってはならないというのが私どもの原則的な考え方でございます。
また、薬価制度との整合性やICERの値は絶対的な数値ではないことを踏まえまして、費用対効果評価は新薬の価値評価の補足的な手法として限定的に位置づけられるべきものと考えております。
こうした考え方に基づきまして、費用対効果評価に基づく価格調整の対象範囲につきましては、補正加算や営業利益率補正の部分とすべきであり、今回御提案の試行的導入におけます調整対象部分はその範囲内にあると理解しております。
一方で、試行的導入におけます価格調整の対象部分に対しまして最大90%の引き下げが提案されておりますが、薬価算定におけます有用性等による加算評価を、費用対効果評価の結果のみで大きく引き下げることは妥当ではなく、調整対象部分の引き下げ率を縮小するとともに、価格全体の引き下げ率についても上限を設定すべきと考えております。
また、こちらも前回の意見陳述において申し述べましたけれども、試行対象企業に大きな負荷がかかっていることや、プロセス上の課題等につきましても述べさせていただいております。今般、企業分析と再分析の結果が大きく異なるために、両分析の結果が併記された品目につきましては、平成30年中をめどに検証を行うこととされています。検証の実施におきましては、対象企業の意見を十分に踏まえました上で御検討いただきたいと考えておりますが、試行という位置づけを踏まえつつ、対象企業に過度な負担が生じないよう、対応が必要であると考えております。
次に、後発医薬品につきましては、吉田会長から御紹介いただきます。
○日本ジェネリック製薬協会(吉田)
日本ジェネリック製薬協会の吉田でございます。
8ページをごらんください。
今回の薬価制度の抜本改革案は、先発品企業のみならず後発品企業にも大きな影響を及ぼします。抜本改革の趣旨は理解いたしますが、抜本改革により、これまで積み上げてきた医薬品としての本質的な価値を損なったり、医薬品の安定供給に不安を生じさせたりするようなことがあってはならないと考えます。
そういった観点から、2点申し上げます。
1点目は、特許切れ医薬品の情報収集・分析・提供体制の再構築についてであります。
本抜本改革を実施する上で、特許切れ医薬品の情報収集・分析・提供体制の再構築は必須条件であり、社会の要請でもあります。特に長期収載品が撤退する際には、先発品企業が有している長期収載品の臨床試験データや安全性情報などの知的財産を着実に引き継いでいく必要があります。
その再構築には多くのステークホルダーがかかわってくることから、厚生労働省、関係団体と連携し、日本ジェネリック製薬協会として積極的に貢献していきたいと考えております。
2点目は、価格帯の集約についてであります。
これまでも主張してきておりましたが、価格帯の集約ルールは、低い市場実勢価格のものが高い改定薬価になるなど、さまざまな問題を内包しております。1価格帯への集約は、その問題が非常に大きくなります。本来、薬価は銘柄別の市場実勢価格を適切に反映したものであるべきと思っております。しかしながら、過去からの価格帯集約の経緯や今回の抜本改革の趣旨に鑑みると、価格帯の集約化に一定の理解をせざるを得ません。
ただ、再三申し上げておりますが、1価格帯への集約は非常に大きな問題がありますので、後発医薬品への置きかえ期間終了後、後発医薬品を1価格帯に集約する際には、例えば3価格帯のものは一旦2価格帯にするなど、十分な緩和措置を講じるべきであると考えます。
以上でございます。
○日本製薬団体連合会(多田)
それでは、最後に総括をさせていただきます。9ページをごらんくださいませ。
新薬創出等加算につきましては、対象を限定し、かつ対象品目ほとんどの薬価が維持されないという今回の見直し案はぜひ再考を求めたいと思います。とりわけ対象品目の拡大、そして企業要件の適正化を求めたいと考えます。
長期収載品に依存した経営モデルからの構造転換が求められていることは理解しておりますが、あくまで特許期間中の新薬の薬価が維持される仕組みとセットで検討されるべきものでございます。
薬価制度の抜本改革に際しましては、企業に大きな影響を及ぼすことが懸念されます。十分な激変緩和措置が不可欠であると考えます。
以上、ありがとうございました。
○中村部会長
ありがとうございました。
それでは、次に米国研究製薬工業協会よりお願いいたします。
○米国研究製薬工業協会(エイミー・ジャクソン)
皆様、おはようございます。きょう、意見陳述の機会を頂戴いたしまして、まことにありがとうございます。
私、エイミー・ジャクソンと申します。PhRMAの日本代表を務めています。
きょう、私は米国、EU、日本に本社を置く31社を代表し、米国PhRMAの代表としてお話をさせていただきます。
最初に強調しておきたいのは、PhRMAとその会員企業は日本の薬価制度あるいは医療制度というものが世界でも大変すばらしい状態で推移してきたということを十分認識しています。
私たちは日本において2010年以来、8年前は40カ月あったドラッグラグというものがほとんどなくなったということ。また、新しい画期的な、命を救う医薬品というものが迅速に承認されているということ。また、この数年間、医薬品出願の増大がきちんとコントロールされているということ。また、日本が世界の製薬研究開発コストの適正な負担をするという意思を示していることを十分認識しています。
以前にも再三申し上げましたが、PhRMAとその会員企業は日本の目的、つまり日本の国民皆保険の持続性というものを長期的に維持するということを強力に支持しています。
PhRMAは、日本国政府とともに非常にプロアクティブな政策提案に関して、一緒に作業をさせていただきました。そこでの目的というのは、日本にとっての主要な課題に対応し、それと同時に、日本における強力なイノベーション促進策というものを両立させるということでございました。
PhRMAとその会員企業は、各社の上級経営陣に至るまで、非常に綿密に日本のこの1年間にわたります薬価制度抜本改革のプロセスというものを見守ってきました。正直申しまして、PhRMAの会員企業全ては、先週出た最終的な薬価制度抜本改革案にショックを受け、また落胆をいたしました。イノベーションに対しての支障の度合いというものが余りにも大きいと私どもは感じています。
この改革案を拝見いたしますと、どうしても日本がイノベーション推進政策というものを放棄し、そして今までイノベーションを推進し、また次世代の患者さんの命を救う医薬品のために投資をしてきた国々に対して、ほかの国にその座を譲るという意思ではないかと感じています。
したがって、日本が短期的に、あくまでも薬価を引き下げる戦略を採用しようとしているというマイナスの影響というものが余りにも大きいと思います。
このような改革案、これは世界に対して日本がイノベーションの競争から脱落するというメッセージを発信することになりかねません。日本における新薬の発売のインセンティブというものが余りにも大きく損なわれ、また、新薬に対して早期に患者さんがアクセスをするということも重大な支障を来します。
投資家は、その資金を日本からほかのイノベーションを推進する国々に資金を移すということになります。ひいては、製薬業界が日本経済の成長の牽引役となるはずの役割を負うという、その能力を大きく損なうことになりかねません。
また、ここで指摘させていただきたいのは、この改革案の中で幾つかの要素は日本が今まで公正で非差別的な政策を導入し、また、製薬会社の内外無差別というものをとってきた政策を大きく損なうという疑問が生じます。これに対しても対応する必要があると私どもは考えています。
さらに、大変遺憾ながら、この改革案というものがそのまま採択されることになりますと、日本は主に米国のことを考えておりますけれども、イノベーションを推進してきた重要な国々にただ乗りをしている国々の仲間入りをしてしまう危険性があります。
業界は、このプロセスを通じて幾つかの提案をさせていただいてまいりました。ただ、非常に残念なのは、改革案にほんのわずかしか私ども業界側の提案が反映されていないということでございます。
私どもは、日本の政治家の皆様、あるいは重要な政府の指導者の皆様から、きょう、この意見陳述で述べさせていただく内容が皆様によって真摯に考慮され、そして中医協及び政府の最終的な改革案、この最終案に盛り込まれるということを伺っております。私どもは、本日の陳述内容を十分御考慮いただき、今まで同様に、日本がイノベーションを重視することを願ってやみません。
PhRMAの意見陳述の機会をいただきまして、ありがとうございました。
○米国研究製薬工業協会(パトリック・ジョンソン)
おはようございます。私、日本のPhRMAの在日執行委員会委員長を務めておりますパトリック・ジョンソンでございます。米国のR&Dを中心に開発を行っている製薬会社の団体として意見陳述をさせていただき、主に薬価制度の抜本改革について意見を述べさせていただきます。
PhRMAは、今までも述べさせていただきましたように、日本の国民に対して多大な貢献をすることになる国民皆保険の持続。これを強力に支持しております。それから、さらに私どもはイノベーションを促進する一方で、当然ながら、ジェネリックのもっと迅速な普及、そして長期収載品のさらなる引き下げ。これを行うことによって、米国と同じ水準になり、そこで多くのリソースを節約することができると考えています。
また、私どもは、この薬価のルールというものがやはりバイオファーマシューティカルの進捗に合わせてやっていかなければいけないということは理解しております。そして、この制度に対してさらなるマイナスの影響を防ぐためにも、やはり効能効果によって一定規模以上の市場が拡大した品目の薬価を年4回見直すことの必要性は理解しております。
しかしながら、PhRMAとしては日本の患者さんの革新的新薬に対するアクセスを遅延させることになる薬価制度には断固反対でございます。日本政府は世界でも冠たるバランスのとれた、つまりイノベーションの促進と国民皆保険持続。これを両立させていらっしゃいました。これがまさに非常に重要なことであり、この新薬創出加算制度というものがその成果をもたらした重要な要因になっていると考えています。
IMSのデータによると、日本の過去5年間の平均成長率というものは1.8%であり、薬価制度を改革しなくても、これがこれからは横ばいあるいはマイナスに転じると予想されています。
現在の新薬創出加算制度というものは、非常に大きな成果を上げることができてまいりました。そして、これによってドラッグラグは解消し、日本及び日本の患者さんが世界同時開発の恩恵を受けることができるようになりました。これによって、日本は革新的な新薬がほぼ同時に導入されるようになったわけです。このような状況を維持し、そして状況が後戻りを避けるためには、この新薬創出加算制度を恒久化し、また、特許期間中にある新薬については、その薬価を維持することが重要であると考えます。
私どもが懸念しているのは、現在提案されている改革内容によって、この範囲というものが大幅に縮小され、対象品目の数が限定されることによって、今まで享受することができた新薬創出加算制度のメリットが損なわれるということです。これはひいては、日本の患者さんの革新的新薬に対するアクセスをおくらせることになり、また、日本における研究開発投資に対しての意欲を損なうことになります。従って、私どもはこの提案をぜひとも見直していただき、望ましくない結果に終わることを避けていただきたいと思います。
3ページをごらんください。
以前にも申し上げましたが、新薬創出力のある先進国の中で、特許期間中であっても薬価が定期的に引き下げられるのは日本だけです。
長期収載品から後発品への置きかえについて諸外国並みの水準を目指すのであれば、特許期間中の新薬についても外国と同様に薬価が基本的に維持される仕組みを導入する必要があります。このような薬価の安定性、また予見性というものは長期にわたって非常にリスク性の高い投資を行う我々の業界にとっては絶対的に必要です。
この特許期間中であっても、薬価が定期的に引き下げられるということになれば、日本は諸外国に比べて研究開発投資の回収で著しく不利な市場へと後戻りしてしまいます。また、日本市場への新薬の導入も再びおくれてしまう危険性があり、私たちは断固、こういった状況を回避しなければいけないと考えています。
4ページをごらんください。
基本的にPhRMAは、世界的にも新薬に対して特許を付与することこそ特許というものは新規性、進歩性が認められて初めて付与されるものですから、イノベーションのあかしであると考えています。やはり適切な形でイノベーションの価値を評価するためには、こういった新薬創出加算制度を検討するに当たって、まずイノベーションの定義を余りにも限定的にするということを避けなければいけないと考えています。
現在提案されている革新性・有用性の基準というものは非常に限定的であり、狭くなってしまっています。私たちが懸念しているのは、多くの非常に重要な新薬というものが対象外となってしまうことであり、これによってタイムリーな形で日本市場に重要な新薬を開発し、導入することが今までのようにできなくなってしまうということです。
私どもPhRMAとしては、現況、日本の状況を考えますと、全ての製品を対象とすることは難しいということは十分理解しております。したがって、新規性に乏しい品目、類似薬効比較方式2、あるいは配合剤特例、ラセミ体/先行品特例を除外する方法で品目要件を設定し、革新性・有用性の高い品目を抽出する方法はとるべきではないと考えております。
こうすることによって、世界のR&Dを行う企業に対して非常に重要なメッセージが発信されると考えています。つまり、日本が今後ともイノベーション推進政策をとり続け、また、継続的な日本における医薬品産業の持続性を支持していくというメッセージです。
5ページをごらんください。
イノベーションを狭く定義すると、つまり言いかえると、市場導入順に対象品目になるか、ならないかということを考えると、これを大幅に日本に投資をして研究開発を行うというインセンティブを損なうことになります。当然ながら、多くの製薬企業は同時に新薬を市場に導入するためにしのぎを削っています。しかし、どの商品というものが1番手になるかというのは、開発が10年以上にわたって行われるわけですから、その中で予見できるものではありません。
時には、1番手の候補になっていた新薬の候補というものが開発中止になってしまうこともあります。しかしながら、同時に複数の製薬会社が競争することによって、業界は前進し、患者さんが便益を享受することができる新規作用機序の医薬品というものを導入することが可能となります。
これによって、まさに健全な、革新的なエコシステムというものができ上がるわけです。しかしながら、特許期間中の薬価というものが導入順番によって同一ではないということになりますと、日本において投資を行うという製薬会社の判断が非常に困難になってまいります。
このようなイノベーションの狭い定義というものを採用するとすれば、1年後に収載された加算適用品の類似薬は、加算適用品と同等の有用性を持っているにもかかわらず対象外となってしまいます。米国で行った調査によると、1番手が承認されてから2番手が承認されるまでには大体2年半を要しているということがわかっています。
また、イノベーションの定義が余りにも狭いと、新規作用機序医薬品も新たな治療選択肢を提供することになるにもかかわらず、条件によって品目が限定されてしまいます。
さらには、現在の品目要件ですと、市販後の効能追加等がもたらす有用性が十分に評価されていません。
患者さんは、1番手の治療薬から便益を享受するだけでなく、その後に市場に導入される薬からも多くの便益を享受することができます。やはり段階的にイノベーションというものが新薬開発において進んでいくことが極めて重要なのは、1番手の薬が必ずしも最適な治療薬とはなり得ないということであり、それは逆に言えば、その後のイノベーション、その後に続く2番手以降の品目が必要不可欠であることを意味しています。
特にがんの領域でこういうことが言われるわけで、効能追加によって新たに選択肢が広がるということは重要であります。しかしながら、効能追加によって、それが評価されないということになると、日本に投資をするインセンティブが損なわれ、結局は患者さんが不利益をこうむることになります。また、ほかの医薬品として、例えばTNFα阻害剤、免疫チェックポイント阻害剤、あるいは不耐容例、薬剤耐性等が生じやすい薬などについても十分に考慮が必要になります。
今、申し上げた理由によって、PhRMAとしては、新薬創出加算対象品目の範囲というものを実質、市場への導入順で決定し、その対象品目の範囲を限定するということ。これは非常に問題があると考え、反対いたします。
6ページをごらんください。
また、さらに品目の要件に加えて、企業要件を新薬創出加算制度に追加するということは、私どもの先ほどの提案でおわかりのように、新規性に乏しい医薬品を除外するという要件導入をすれば、必要がないと考えます。
しかしながら、もしも、この企業要件というものを導入することになったとしても、現在提案されているアプローチは到底受け入れることができません。なぜならば、これは非常に不合理に狭い範囲を指していることになるからです。現在の会社要件、企業要件はわずか5%の新薬を開発するために努力をしている企業にしかリワードを提供しないということになり、日本の患者さんに対して一日も早く新薬を提供しようと考えている残りの95%は、その薬価を維持することができなくなってしまいます。
現在提案されているアプローチというのは、新薬を開発するために企業が行っている努力というものを適切に評価するものではなく、また、ドラッグラグを解消するためにはプラスになりません。例えば幾つかの指標が導入されていますけれども、国内臨床試験数であるとか、過去5年間の新薬収載実績。こういうことを問う指標というのは非常に小規模企業にとって不当に差別をするという結果をもたらします。ですから、例えば売上高に対しての研究開発費の割合など、こういった指標を導入すれば企業の規模というものは問われなくなりますので、それを検討していただきたいと考えます。
企業が日本を世界同時開発の国に含めるというコミットメント。これは総合的にぜひ御考慮いただきたいと思います。また、先駆け審査指定制度で指定された品目数は極めて限定的であるということを申し上げておきたいと思います。
7ページをごらんください。
市場拡大再算定については、年4回の薬価見直しの必要性は薬価制度に対してマイナスの影響を発生させることがないように行う必要が場合によってはあると理解いたします。しかしながら、この対象は財政影響の大きな品目に限定すべきと考えます。
薬価算定時の前提条件に著しい変化がない品目に再算定を行うことは妥当ではないと考えます。特例再算定を含めて、市場拡大再算定のあり方について、ぜひ見直しを行っていただきますよう、お願い申し上げます。それによって、R&Dを中心に重要な医薬品を提供する製薬会社が予見性、そして薬価の安定性というものを十分に確保し、自分たちが行った開発が薬価引き下げによって罰せられることがないようにしていただきたいと思います。
例えば「使用実態の著しい変化」というものが要件となっておりますけれども、効能追加の販売額が初発効能の予想販売額を超えた場合、使用実態が著しく変化したとみなすというような要件の明確化が必要であると考えます。
さらに、非常に重要なこととして、市場拡大再算定の薬理作用類似薬全体への適用。これは廃止すべきです。同じクラスに属するからといって、同様の扱いを受けるということは受け入れられません。
また、用法用量変化再算定に関しては、提案されているルールの見直しの必要性は理解いたします。しかしながら、使用実態が臨床現場で異なる類似薬も一律に再算定の対象とすることについては、慎重に検討する必要があると考えます。
8ページをごらんください。
また、厚労省から提案されている内容として、この類似薬効比較方式において、新薬創出加算対象品を比較薬とした場合に、この比較方式で算定する場合には、累積された加算分を控除して算定されることが提案されています。しかしながら、これは人為的に価格を引き下げる結果につながり、公正な市場競争を確保することにはなりません。やはり同様の有用性を有する新薬の薬価算定において、このような比較対照薬の扱いというものは避けるべきです。
また、外国平均価格調整については、引き下げだけでなく引き上げについても調整をするというバランスのとれたルールが必要であると考えます。
最後、まとめさせていただきます。
PhRMAは強力に後発品の使用を一層促進し、長期収載品のさらなる価格引き下げを促す施策を導入することを支持いたします。
将来、この薬価制度に対して支障を来すことがないように、効能追加によって一定規模以上に市場を拡大した場合には年4回の見直しということについては理解をすることができます。しかしながら、革新的な新薬に対する日本の患者さんのアクセスがおくれることによる薬価制度改革は断固反対いたします。
新薬創出加算制度というものは、今までの日本の非常にすぐれた医療体制における重要な構成要素でございました。これによって、日本はドラッグラグを解消し、また、日本の患者さんに対して、場合によっては世界で初めて革新的な新薬を導入することができる環境が整いました。
このような新薬創出加算の重要性というものを維持し、環境が後戻りすることがないように、非常に我々が重要と考えるのは、イノベーションを十分に評価することができる、この堅牢な新薬創出加算制度というものを恒久化することが必要であると考えます。これによって、価格の新薬の特許期間中における安定性というものを確保することができます。
今、表明させていただきました業界側からの懸念というものを十分に考慮し、今のままですと政策提案の内容はマイナスの影響を及ぼす危険性がございますので、それをぜひとも再度見直していただきまして、最終案にはこのような懸念に対応することができるように切に願っております。
ありがとうございました。
○米国研究製薬工業協会(ケビン・ハニンジャー)
改めて、おはようございます。私は、ワシントンD.C.のPhRMAのデピュティ・バイス・プレジデントを務めておりますケビン・ハニンジャーと申します。私は、PhRMAの薬価及びHTA国際分科会の長を務めています。きょう、このような機会を与えていただき、私のほうから費用対効果評価についてお話をさせていただく機会を頂戴し、ありがとうございます。
世界を見ると、このツールというものを間違って使用してしまうと非常にまずい結果が生まれているということがわかっています。例えばイギリス、韓国において、患者さんの命を救うことができる新薬の導入がおくれたり、場合によっては承認がなされない、却下されるということも起こっています。
治療の選択肢というものが限定的になり、医師は患者さんにとって一番の治療法を自由に選ぶことができなくなってしまいます。また、臨床転帰というものが悪化し、新治療法あるいは治療薬に向かって開発が進むという進捗のレベルが大幅に損なわれます。
費用対効果分析における問題というのは、やはりイノベーションを推進するツールとしては非常に大きな制約があるということです。また、患者さんに対して質の高い医療を提供する支障になるということです。このツールというのは非常にフォーカスの範囲が限定的であり、使われるICER、つまり増分費用対効果比。これが患者さんに対して、あるいは医療制度に対して、その国の経済に対してより貢献をすることができる新薬の価値というものを十分に反映することができません。
幸いなことに、ここにいらっしゃる皆様は、やはりICERを超えた総合的な倫理的・社会的考慮要素を十分勘案して製品の価値を評価することが必要であるということは十分御理解いただいていると思います。しかしながら、現在の提案内容は、このような重要な要素が十分に考慮されないままになっています。やはり柔軟性をもっと持たせる必要性がありますし、日本はもっとよりよいアプローチをとるべきであると考えます。
試行導入で選ばれた品目は世界でも最も革新的な新薬が含まれています。例えばC型肝炎の治療薬、あるいはがんにとっての画期的な抗がん剤。こういったものが含まれているわけですけれども、この試行導入を行うことによって、日本がまさにイノベーションを重要視しているというメッセージが発信されると思います。
残念ながら、企業側の試行導入プログラムに参加した経験というのはいろいろな問題をはらんでおります。このプログラムというのは、まず品目を評価するに当たって基準というものが明確に決まっていない。これによって、この基準を採用しても、結果というものにばらつきが出てしまうという大きな不確実性があり、しばしばそれによって企業は十分な理解ができないまま、先に進んでしまう問題があります。また、残念ながら、業界、患者さん、あるいは医療提供者、関係者が全て参加して、十分な協議を行う機会が必ずしも十分に提供されません。
したがいまして、この試行的導入に関して、私どもからお願いが3点ございます。
最初に、この評価にはより広い範囲の要素。これを考慮に入れていただきたい。そして、より柔軟性を高め、革新的な新薬の全体的な価値というものを十分反映し、それを評価することができるようにしていただきたいと考えます。
また、この総合的評価に基づく価格調整に関しましては、これは薬価全体を対象として調整をするのではなく、収載時の加算分に限定すべきであると考えています。そうしなければ、世界のほかの国々と日本がやろうとしていることは完全に不整合になってしまいます。
最後に、引き下げで価格調整を行う場合、この設定されている最大の引き下げ率の緩和をお願いしたいと考えています。やはりHTAを使用する場合には、収載時加算分を対象に、まず、その加算分というものが妥当性を有しているかどうかを十分に確認した上で調整を行うべきであり、ただ、自動的に削除する、引き下げを行うということがあってはならないと思います。現在提案されている最大の引き下げ率90%ということを実施するとすれば、この加算分に対して、まさに世界で最も重要な新薬に対して、その革新性を十分に評価できないということになってしまいます。
ただ、私たちにとってグッドニュースは、試行的導入を行うということによって、本格導入前に何かミスを犯しているのであれば、それを正す機会があるということです。ただ、重要なことは、やはりこういった試行的導入に際して発生した方法論的、あるいは手続上の問題をまず明確に解析をし、見直すということです。
したがって、こういった課題、そのためのソリューションというものを十分に討議し、検討することを全ての関係者が参加して行ってから本格導入をすべきであり、来年予定されている本格導入をおくらせるということをぜひともお願いしたいと思います。
意見陳述の機会をいただきまして、改めてお礼を申し上げます。
○中村部会長
ありがとうございました。
それでは、次に、欧州製薬団体連合会よりお願いいたします。
○欧州製薬団体連合会(トーステン・ポール)
おはようございます。トーステン・ポールでございます。私、EFPIA Japanの副会長で、本日は意見陳述の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。
2枚目のスライドをお願いします。
最初に、幾つかの事実を整理していきたいと思います。
第1点、日本におきましては、薬剤費がもう十分にコントロールされているという点であります。そして、主要国の中におきまして、日本は医薬品市場としては最も成長率の低い市場となってくるわけで、恐らく唯一、マイナス成長となる市場になってしまうわけであります。また、革新的な新薬へのアクセスを担保するためには、そこにイノベーションの評価というものがなければならない。それに対して、日本ではそれが現行の新薬創出加算制度によって得られているわけであります。
しかしながら、悲しいことに、今回出てまいりました提案。これはこうした事実にそぐわない内容となっておりまして、その結果、再びドラッグラグにつながっていくことが懸念されております。
3枚目をお願いします。
こちらの図を見ていただければすぐおわかりいただけるかと思いますが、日本におけます医薬品市場の展望、今後マイナス成長となっているわけであります。毎年-1.5%という予測を出しておりますけれども、これは今回の提案が出る前のことでありまして、今回の提案によりまして、想定をはるかに超える新薬創出加算制度の大幅な縮小が提案されておりますので、これが採択されることによりまして、この低下率はもっと大幅なものになるでありましょう。
今回の提案を支持している先生方にぜひお聞きしたい点でございますが、この日本の市場がこのようにして毎年激しく低下している。こうした中において、では、企業は何をもって日本へ優先的に投資をするのでありましょうか。また、この提案が果たして日本の患者さんにとって最先端の革新的な新薬への迅速なアクセスへつながると、どのように考えておられますのでありましょうか。
4枚目です。
ここでは、なぜイノベーションがそんなに重大なことなのかということをお話ししたいと思います。イノベーションが大切だというのは、日本は研究開発投資というものを必要としている国だからであります。また、当然のことながら、日本というものはテクノロジーの最先端に位置づける、そうした可能性を持っている国だからであります。そして、新薬創出加算制度によりまして、この面で大きな進展が今まで見られてきたわけであります。
イノベーションがとても重要だということは当然、多種多様な疾患が最先端の新薬の治療というものを必要としているからでありますし、そして、まさに日本の患者さんがそうした治療を早く使いたいと願っているからであります。
5枚目です。
今回の制度改革案でありますが、これは今まで、この新薬創出加算制度というものの大幅な見直しが必要になってきたというのは、過去の制度の失敗によるものなのでありましょうか。私はそのように思っておりません。新薬創出加算制度によりまして、このように大きくドラッグラグも40カ月から5カ月へと短縮化してきたわけでありますし、それのみならず、日本への開発投資というものが大きくふえてきた。そういった意味で、これは非常に大きな成功をおさめてきた制度であって、なぜ、これほどまでにこれを縮小させていかなければならないのか、まだ納得ができない点であります。
6枚目です。
日本がこれからやっていくべきことは、現行出てまいりました制度改革案の全く逆の方向性だと思っているわけであります。すなわち、現行の新薬創出加算制度というものを維持し、そして、それを恒久化していかなければなりません。そして、その財源は長期収載品、それから、後発品から得られる節減によって賄うことができるはずであります。現行の改革案というものは、日本のあるべき姿の真逆であるだけではありません。これはまさに2010年に新薬創出加算制度が当初導入されたときの精神にも真っ向から相反するものであります。その当時描かれていたのは、イノベーションを支援したいという思いであったと思います。
7枚目です。
もう少し具体的にお話をしたいと思います。
第1点でありますが、新薬創出加算制度によりまして、薬価の切り下げから守られてきた、そうした新薬は全体のちょうど半分強であったということ。これが売上金額ベースで言うことができる事実でありますし、また、このことはすなわち、本制度によりまして、既に革新的な新薬が対象とされてきたという点であります。
現行の制度改革案によりますと、結果的には、この創出加算制度のベネフィットをフルに享受することができるのは全体の企業の中で5%にとどまるということであります。これは私どもにとりまして、全く受け入れがたい提案だと言わなければなりません。
新薬創出加算制度の価値というものを5%に制限してしまうということ。これは、その他の企業に対して、いってみれば制裁、そして罰を科するようなものであります。
そして、この新薬創出加算制度を1番手の新薬にのみ、その品目に限定していくといった提案。これはまさに、このイノベーションの機能というものを無視したことになるのではないでしょうか。といいますのも、常に1番手の、ファースト・イン・クラスの品目のみが最もすぐれた、そして最も革新的な新薬ということにはないわけで、日本におきましては類似薬効比較方式2というものによってゾロ新を評価する方式があるわけです。
加えて、原価計算方式で修正された品目は革新性がある品目なわけで、いわば比較薬がないわけであります。したがって、こちらも現行の制度の対象となるべきであります。
スライドの8です。
このようにして今回出てまいりました改革案の、部分的にEFPIAとしましても反対している部分があるわけですけれども、その一方におきまして、妥当な変革のための提案というものを私どもが支持しているところであります。例えば米国価格を、よりよい評価の方法をもって参照価格の中に入れ続けるといった点は私どもが支持している考え方であります。
また、毎年改定につきましても、これが長期収載品、それから、後発医薬といったものを対象とするといった前提において、私どもは支持しております。
スライドの9です。
加えまして、新規の効能追加に伴う、薬価の再算定の迅速対応ということにつきましても、私どもは支持いたしております。ただ、これはあくまでも効能追加によります売り上げ増分を対象とすべきであって、この製品全体を対象とすべきではないと考えております。現行の改革案に基づきますと、非常に小さな新効能に対しまして減算されるということになりますと、企業側にとってこうした効能のための開発のインセンティブをそぐことになります。
また、EFPIAとしましても、重要な原則はあくまでも守られなければならないと考えておりますので、類似薬に対しましては薬価も同じレベルであるべきと考えております。そしてまた、新薬創出加算分。これは実際に対照比較薬の中から控除すべきではないと考えております。そうでないと、市場自体の評価がゆがめられてしまうと考えております。
ありがとうございました。
この後、フォシェのほうから話をさせていただきます。
○欧州製薬団体連合会(フィリップ・フォシェ)
この後、スライドの10からお話しさせていただきますけれども、私、フィリップ・フォシェでございます。グラクソ・スミスクラインの会長で、現在、EFPIA Japanの副会長を務めております。
まず、費用対効果の導入に関してでありますが、まず考えていかなければならないのは、日本におきましては、既に薬価基準制度によりまして、医療技術評価の要素というものが十分に組まれているということであります。加えまして、薬剤費というものは既に現行の制度によりまして、日本においては十分にコントロールされている状況で、過去1年半を見ましても、市場はマイナス成長となっておりますし、これからの10年もゼロからマイナス成長という予測になっております。
また、世界の医薬品市場における日本のシェアといいますか、その競争優位性といったところの数字でありますが、2012年の第2四半期と2017年の第2四半期と比較いたしますと、実に-40%という大きな落ち込みを示しております。
この費用対効果評価を導入しております他国というのは、どこを見ましても日本ほどの精緻な薬価基準制度を設けている国はありません。
したがいまして、このメーカー申し出の価格の調整のために費用対効果の結果を活用するという使い方をしているわけでありますので、日本の状況は非常に違っているわけであります。したがって、費用対効果を導入するのでありましたら、これはあくまでも補足的な位置づけにすべきだと考えております。
また、アプレイザルにつきましても、このICERの値というものはあくまでも数多くの前提条件に依存したものであります。したがって、こうした前提条件が変わることによって、結果も大きく変わることになります。したがって、考えていかなければならないのは、このICERの値というものは決して絶対的なものではないということであります。
また、このような導入を行っているほかの国におきましては、ICERの値だけではなくて、倫理的、社会的な影響といったものも考慮に入れております。
この次のスライド11のところを見ていただければ詳細が書かれているわけですけれども、先ほどPhRMAのほうからの主張点と非常に合致している内容であるということがおわかりいただけると思います。
この類似薬効比較方式におきます薬価算定のところでありますけれども、ここでの、こうした品目に対しての価格調整がされる際には、あくまでも加算分に限定した価格調整にすべきであると考えております。
この原価計算方式での算定がされました製品に関しての価格調整に関しての提案でありますが、ここにつきましては、私どもとしても支持することができない点であります。といいますのも、この原価計算方式というのは、この概念から、この案というものは非常に違ったものになっているわけであります。すなわち、この製造原価ですとか、また営業益といったものの積算によって計算されてきた。こうしたレベルを超えたところでの価格の減算というものは、この現行の方法論に照らして適切ではないと考えております。ですから、HTAを何らかの本格導入するのでありましたらば、あくまでも価格調整というものは加算分に限定すべきであると考えております。
また、この価格調整の減算方法でありますけれども、これは最大90%は、加算分の90%までというところが提案されておりますが、これは既に比較薬に比べまして臨床上の有用性というもので承認されている製品にとっては余りにも行き過ぎでないかと考えているわけであります。したがって、この価格調整の上限というものを、これは調整前の価格全体への影響を十分に考慮した上で今後検討されるべきものだと考えております。
また、この効果というものが上がってきた、もしくは同等にとどまるけれども、しかし費用分のほうがどんどん下がってきたという事例でありましたら、EFPIAとしましては、費用対効果の結果として、価格が引き上げになるという制度を支持したいと思います。これによって、このシステム自体がフェアなものになると考えております。
12ページのところで、これが現行、提案されておりますところの倫理的・社会的考慮の検証の方法ということであります。
この提案によりましては、4つの要素が定められておりまして、そしてICERというものがそれぞれの基準ごとに5%割り引かれることになっているわけですけれども、これはICERの調整方法としては不十分であると考えております。ですから、追加的な基準というものがここで必要で、あらゆる医薬品の特性を盛り込んでいくことが重要であると考えております。
加えまして、この調整の規模でありますが、これも要再検討であると考えております。例えば英国のNICEにおきましては、終末期医療に対しましては2万ポンドが、2倍以上になって5万ポンドまで引き上げていく。そうしたICERの閾値の拡張というものも行われております。
最後に、技術的な問題の解決の必要性について申し述べたいと思います。本格導入の前に、試行期間で明らかになってきたさまざまな技術的な問題、例えば会社側の解析結果と、それから、再分析の結果といったものの違い。これにつきましても十分に共有化されて、そして、さまざまな当事者の意見を集めて問題解決をしていかなければなりません。
加えまして、このような医療技術評価ということにつきまして、日本におけるインフラ、すなわち十分なデータベースに対するアクセスがあるのか。また、専門家、そして、十分な人材がそろっているかということになりますと、これは企業側にとりましても、当局側にとりましても、まだインフラ整備が不十分だと言わなければなりません。そういった意味で、慎重な導入が望まれております。
スライド13のところで、これがEFPIAの主張のまとめということになります。
まずもって、現行提案されております薬価制度改革案というものは、このイノベーションの促進を逆行させるものであり、そして、そのことはすなわち日本の患者さんに対して、非常にダメージングなインパクトをもたらし、また、日本の医療制度の質を損なうものであります。
現在の日本の医薬品市場というものは、既に主要国の中でも唯一、減少し続ける市場となっておりますし、また、現行の改革案が通りますと、これはさらに急激な低下ということが予測されております。
その結果として、世界の医薬品メーカーの日本に対する投資というものが縮小することになってくるわけでありまして、そのグローバルな、世界的な事業戦略の中において、中国とかその他の成長しつつある市場への投資というものが優先化されることになりまして、それは日本の内資企業にとっても例外ではありません。
今回提案されております改革案は、企業の医薬品開発戦略というものに影響を与えてくることになり、結果、ドラッグラグを再び創出することになり、また、革新的な新薬に対する患者さんのアクセスが損なわれることになるわけであります。
加えて、製薬産業として今まで生み出してきた雇用、そして税収といったものもこれから消失することになります。
薬価制度改革を行うことによって、この革新性というもののサポートがさらに強化されるべきものであったはずであります。そして、この後発品のさらなる使用促進、それから、長期収載品のさらなる薬価の切り下げによりまして、そこで得られた財源というものを革新的な新薬の評価に向けていき、そして、それは特許保護期間中における価格維持を可能せしめるところであったわけです。
我々の考えとしましては、こうした痛み・負担というものがフェアな形で皆が均等に担っているのではないのではないかと考えているわけであります。全体の医療費の中において、残りの75%を占めるところ。その部分において、同じように負担の担い方が見られないのではないかと考えているわけであります。
例えば申し上げているのは、日本におきまして二重に医者を受診することが可能になっている事実でありますとか、また、平均入院日数というものが非常に長いでありますとか、加えて産業に対しまして、この収載後1年間においては2週間の処方制限があるといった追加的な負担があるといったところを考えていきますと、なかなか均等な負担の担い方は見られていないのではないかと考えております。
この薬価制度の抜本改革によりまして、安定性、それから、予見性というものが取り戻されるべきであったはずなのですが、この安定性は損なわれ、また予見性というものも結果的には損なわれてきていると思います。
そういうことで、私ども、今、この時点に至って、どこまでこうした、この提案というものを是正することができるのか、よくわからない事態になってはいるわけですけれども、やはり我々の究極の目的というのは、このグローバル、そしてローカルなイノベーションに対しての患者さんのアクセスというものをもたらしていこう、保っていこうというところになることを忘れない。そうした精神のもとに私どもの意見を述べさせていただきました。
ありがとうございました。
○中村部会長
ありがとうございました。
それでは、次に、日本医薬品卸売業連合会よりお願いいたします。
○日本医薬品卸売業連合会(鈴木)
おはようございます。日本医薬品卸売業連合会会長の鈴木でございます。
本日は、11月22日に開催された当部会において事務局から御提案がありました、薬価制度抜本改革の骨子取りまとめについて、卸連を代表して意見を述べる機会を賜り、中医協及び厚生労働省の皆様に感謝いたします。
初めに、医薬品卸は、国民の健康の保持・増進が等しく図れるよう医薬品の安全かつ安定的な供給を維持・継続し、医療への支援に努めております。また、災害時やパンデミック時などへの対応を含め、いかなる場合にも医療機関・保険薬局への安定した供給を確保しております。
近年、医薬品卸を取り巻く環境は非常に厳しくなっておりますが、今回の薬価制度の抜本改革は、医薬品流通にも極めて大きな影響を与えるものであり、医薬品卸がこれまで担ってきた安定供給に支障を生じかねないかと憂慮しております。
政府による後発品の使用策促進により、後発品の売り上げ市場が拡大しておりますが、このことに加えて、高額医薬品の特例拡大再算定など、特別ルールの導入等が行われたことによって、医療用医薬品市場は縮小しております。
これに加えまして、今回、新薬創出加算品目の適用範囲が大幅に縮小され、長期収載品について新たに厳しいルールが導入されるなど、薬価制度の抜本改革が行われれば、医薬品供給にかかわる関係者に多大かつ深刻な影響を与えることになります。
このため、薬価制度の抜本改革に当たっては、過度に財政を優先することなく、医療保険制度のもとにおいて国民医療の向上のために一定の役割を果たしている関係者の意見についても十分に尊重して検討していただくようお願いいたします。あわせて、医薬品卸が医薬品の安定供給についても今後とも適切な役割を果たせるよう、ガイドラインの策定などによる流通改善を強力に進めていきますよう、お願いいたします。
2ページをごらんください。
「毎年薬価調査・毎年薬価改定」につきましては「改革の方向性」として、薬価調査の対象範囲は、2年に1度の薬価改定の中間年において、大手業者を含め、全ての医薬品卸から調査対象を抽出し、全品目の薬価調査を実施することとし、その結果に基づいて、薬価を改定することとされております。
このことについては、4ページの「意見・要望」の1.をごらんいただきたいのですが、卸連加盟の卸売業者では取り扱いのない品目もあることから、全品目が対象となるよう全卸売業者を対象とすることは適切であると考えております。
2ページに戻っていただきたいと思います。「改革の方向性」として、薬価改定への対象品目の範囲については、薬価改定の中間年の最初の年に当たる平成33年度(2021年度)に向けて、国の主導のもと、流通改善に取り組むことにより、薬価調査が適切に実施される環境整備を図りつつ、国民負担の軽減の観点から、対象品目をできる限り広くすることが適当であるとされております。
このことについては、3ページの「意見・要望」をごらんください。
昨年12月に取りまとめられた薬価制度の抜本改革に向けた基本方針では「価格乖離の大きな品目について薬価改定を行う」と明記されております。中間年の薬価改定の範囲は真に価格乖離の大きな品目にとどめて、限定的なものとしていただきたい。
また、中間年の調査は、価格乖離の大きな品目について改定するために必要な抽出調査とし、薬価の毎年全面改定につながらないようにしていただきたいと考えております。
安定的な医薬品流通が確保されるよう、国が主導し、単品単価契約を積極的に推進し、流通改善に取り組むことにより、薬価調査が適切に実施される環境整備を図るに当たっては、流通実態を踏まえつつ、関係者から意見を聴取しながら推進していただくようお願いいたします。
4ページをごらんください。
「毎年改定の調査手法」につきましては「改革の方向性」として、中間年の調査は全ての卸業者を対象に調査客体を抽出した調査とし、抽出割合については、ほぼ全ての品目が全数調査による乖離率とおおむね一致するような割合を設定することとされております。
全ての卸業者を対象にすることについては、繰り返しになりますが、卸連加盟の卸業者では取り扱いのない品目もあることから、全品目が対象となるよう全卸業者を対象とすることは適切であると考えております。
一方、抽出割合については、基本方針の「価格乖離の大きな品目について薬価改定を行う」という趣旨を踏まえて、抽出割合をできる限り低くするなど、卸業者の負担の少ない方法で実施していただくよう要望いたします。
5ページをお願いいたします。
「薬価調査結果の公表事項」につきましては「改革の方向性」として、卸業者等の事業への影響を考慮した上で、現行の公表事項を拡大して薬価調査結果を公表することとされております。
このことについては、まず医薬品卸各社は、薬価本調査において、統計的に処理した加重平均値の公表を前提に、会社にとって経営・営業上の秘密情報に属する価格情報を任意に提供していることについて、御留意くださいますよう、お願いいたします。
このため、価格交渉に影響を及ぼすデータの公表については、行わないようにお願いいたします。
6ページをごらんください。
「医療用医薬品の流通改善への対応」につきましては「改革の方向性」として、流通改善の取り組みを加速するため、まず、関係者が取り組むガイドラインを作成し、遵守を求めていくこととし、当該ガイドラインの趣旨・内容を「未妥結減算制度」に取り入れるなど、診療報酬等における対応を検討することとされております。
また、保険制度以外の総合的な取り組みとして、バーコード表示の推進等、流通の効率化をさらに進めていくこととされております。
これらのことについて、当連合会の「意見・要望」を申し上げます。7ページをごらんください。
今回、新薬創出加算品目の適用範囲が縮小され、長期収載品について、新たに厳しいルールが導入されるなどの薬価制度の抜本改革が行われれば、関係者の受ける影響ははかり知れません。このため、医薬品の安定供給が確保されるよう医療用医薬品の流通改善の推進に効果的なガイドラインを作成していただくようお願いいたします。
当該ガイドラインの作成に当たっては、医療の提供や医薬品の安定供給に支障を生ずることのないように、関係者の意見を踏まえて策定していただきたいと考えます。例えば、流改懇の活用などが考えられます。
その上で、国が主導して、関係者が当該ガイドラインを遵守することについて、積極的かつ前向きに取り組めるような効果的な施策を講じていただきたいと考えております。
また、流改懇が取りまとめた新提言が盛り込まれている「将来にわたる流通機能の安定性の確保」「流通経費等の負担の公平性の確保」については、流通改善を図る上で基本的な視点として、当該ガイドラインに盛り込んでいただきたいと考えております。
当連合会としても、流通の効率化に向けて引き続き努めていく所存です。
以上で当連合会の意見陳述を終わります。よろしくお願いいたします。
○中村部会長
ありがとうございました。
一通りの説明をいただきましたので、ここで一度休憩を挟みたいと思います。
どうぞ。
○古元医療課企画官
ありがとうございます。
それでは、10分ほど休憩いただきまして、10時半からの開始とさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 
(休 憩)
 
○中村部会長
それでは、議事を再開いたします。
これより質疑及びフリーディスカッションに移りたいと思います。なお、質問は日本語でお願いいたします。
では、いかがでしょうか。
松本委員、お願いします。
○松本純一委員
いろいろ御意見を賜り、ありがとうございました。
先日示された抜本改革案に関する反論も含めたそれぞれのお考えを述べられたというふうに承知をいたしましたが、それに対しての反応はほかの委員に委ねたいと思います。
ただ、1点だけお教え願いたいと思います。後発医薬品の薬価等の見直しについてでありまして、日本製薬団体連合会の8コマ目のところにあります、後発医薬品の対応の記載がございます。全て読み上げませんが、後半のほうに「厚生労働省、関係団体と連携し、その再構築に積極的に貢献して行きたい」とございます。今回の抜本改革が機能すれば、恐らく今後は長期収載品が撤退していくこともふえると思われます。
先日の中医協でも申し上げましたが、先発メーカーが蓄積された情報や経験をどのように担保されるのか、業界としてのお考えがあれば教えていただきたいと思います。多田会長によろしくお願いいたします。また、吉田会長にもお尋ねをしたいと思います。
現状の枠組みの中で、市場に残された後発品についても先発品が行っていた情報提供と同等の体制を行えると考えておられるのかどうか。その辺のお考えを両者にお聞かせ願いたいと思います。
○中村部会長
では、多田会長からお願いします。
○日本製薬団体連合会(多田)
ジェネリック問題に関しまして、後発品問題に関しまして、特段、後発品の業界の方と十分な議論をしておるわけではございませんが、このようなルールで撤退する可能性といいますか、そういうことができるようになったということ自体は一つの政策としていいのだろう。
そして、その場合に当然、事前にそれをやろうと、引き続き供給していただける後発メーカーの方と先発メーカーが協議をしながら、そういう担保問題と、これはケース・バイ・ケースになる可能性がございますので、十分な協議をしていく。こういうことになるかと思います。
特にジェネリック品のほうの方は、増産の必要等があるかもわかりませんし、そういう意味では設備増強の可能性もあると思いますので、そういう点も踏まえて十分な協議が必要だと思います。
○中村部会長
では、吉田会長、お願いします。
○日本ジェネリック製薬協会(吉田)
ジェネリック医薬品の立場で申し上げますと、医薬品の情報収集・分析・提供については、現在はGVPという、製造販売後の安全管理についての基準というものは医薬品メーカー全て共通しておりまして、それに従って情報収集・分析・提供については先発メーカー、後発メーカー、それぞれが行っておる状況でございます。
ただし、これまでの製品に関する情報の量に関しましては、長期収載品のシェアが高かったということについては、長期収載品についての薬物動態や臨床成績のデータというものは有しておりまして、我々、ジェネリックメーカーは有しておりません。それと、再審査期間中の製造販売後の安全性のデータの蓄積の量というものが違いますので、どちらかといいますと、注意喚起をすべきような事象が起きた場合には、実質的には主として新薬メーカーの対応というものが主なものになっている状況でございます。
したがいまして、今回、今の長期収載品メーカーが後発医薬品の置きかえ期間を過ぎた、Z2を過ぎた後の手挙げ方式で撤退する事態が起こる可能性がございますので、その場合、安全の情報の管理等につきましては、残されたジェネリックメーカーがやることになりますが、その際に安全性の今までの臨床データも含めてのデータの蓄積が失われる可能性があると考えておりますので、そういうことにならないような体制を再構築するべきだと思っております。それがジェネリックメーカーだけではなくて、関係諸団体でそれを再構築した上で我々としても協力していきたい。そういう関係諸団体で再構築した上で、安全性の管理体制というものは考えるべきだと考えております。
以上でございます。
○中村部会長
松本委員、お願いします。
○松本純一委員
ぜひ先発メーカーが蓄積されたデータを、というより、いわゆる価格が下げられたことを理由に撤退することを提案されたことに対して、前回、中医協では私は反対をしたわけですけれども、それを理由にというのはどうなのだろうかということがあったのですが、それもそれとして、もし撤退することとなったときに、今まで蓄積されてきたデータをどのように引き継いでいくかということが非常に大事だと思いますので、その辺はメーカー同士でお話をされることかどうか、そこに役所が入るのかどうかというのを含めて、またお考えいただきたい。
これにつきましては、薬剤管理官のほうからも少しお話をいただきたい。この前、満足した御回答を得られなかったものですから。
○中村部会長
では、薬剤管理官、お願いします。
○中山薬剤管理官
お答えします。
今、先発メーカー、後発メーカーの代表の方からもお答えいただいたとおりだと思います。そこに関しては行政側も関与することによって、先発メーカーが有している安全性などの情報について、しっかり活用できるように、うまく円滑に移行できるようにしていくことは非常に大事なことだと思いますので、そういった観点から取り組んでいきたいと思います。
○中村部会長
今、松本委員から多田会長と吉田会長に、先発品メーカーが撤退した後のこれまでの蓄積された情報についての情報提供について質問が出ましたが、この点、PhRMAとEFPIAの方々、何かコメント等はございますでしょうか。
○米国研究製薬工業協会(パトリック・ジョンソン)
私の知る限りにおいては、日本以外の諸外国において、こういったデータが失われる、あるいはLLP、長期収載品が撤退したことによって、その品目の安定供給が損なわれることがないように、きちんと規制がしかれており、行政が指導しているという理解でおります。
製薬メーカーの中で長期収載品というものを、こういった安定供給の担保をせずに、また安全情報などを失う結果を招くような形で撤退させた事例はないと理解しています。
○中村部会長
では、ほかはいかがでしょうか。
今村委員、お願いします。
○今村委員
各団体の方々の御意見、どうもありがとうございました。製薬メーカーの団体の方々におかれては、今回の全般的な制度改正については否定的な意見が多かったかと理解をしております。
その中で、新薬創出等加算については特に否定的であったというふうに私も受けとめたのですけれども、今回の提案の中では一方、恒久化についても、つまり検討しようという話になっていると思います。
新薬創出等加算については、従来から恒久化を図ってほしいというふうに言っておられたと理解をしているのですけれども、今回のような改革案であったら恒久化しなくても結構ということなのかどうか。今回の提案そのものでなくても、若干の修正がかかったとしても、従来のようなものでなければ恒久化はしていただかなくて結構という御意見なのかどうかを日本製薬団体連合会、そしてPhRMA、EFPIAのほうから御意見を伺えればと思っております。
○中村部会長
では、多田会長からお願いします。
○日本製薬団体連合会(多田)
それでは、多田のほうから申し上げます。
今回の御提案は、先ほども御説明いたしましたように、私どもとしては必ずしも納得のいく、我々の当初考えていた案と比べますと非常にかけ離れておりますので、こういうかけ離れた案のまま、これで恒久化だというふうな形にはなかなかそういう方向が正しいと思いません。
○中村部会長
では、PhRMAの方、お願いします。
○米国研究製薬工業協会(パトリック・ジョンソン)
私どもPhRMAは、この点に関しましては完全に歩調が日薬連あるいは製薬協、EFPIAと一致していると考えております。私どもがこれを恒久化すると望んでいた、その制度というのは、あくまでも大前提として、日本の患者さんが革新的新薬に早期にアクセスすることができる。そして、イノベーションが報われるという大前提に立っております。
今、提案されている内容は非常に限定的な範囲の品目要件、あるいはかなり差別的な会社要件というものが提案されていますので、内容が全く違います。
平均で申しますと、日本において薬剤開発をする際の費用は、ほかの国々の開発費に比べて2倍から6倍割高になると言われています。このままの制度でいってしまうと、これはとにかく日本を最初に新薬の導入国にすることはほとんど不可能になります。
したがって、現在の提案されている内容でそのまま導入すること、実施することは、私どもは支持いたしません。
○中村部会長
では、EFPIAの方はいかがでしょうか。
○欧州製薬団体連合会(トーステン・ポール)
既に私どもは意見が一致しておりますので、繰り返す必要はないかと思います。
○中村部会長
では、吉森委員、お願いします。
○吉森委員
ありがとうございます。
いろいろ各団体の皆さんの御意見を拝聴して、なるほどとうなずくところがあるのですが、3点ほど意見と質問をしたいと思います。
まず、先ほど松本委員からありましたが、長期収載品についての質問なのですけれども、今回、新たに導入提案でG1ルールというような、Z2期間終了後の6月末に長期収載品の撤退の可否を判断して、その5~6年後までの増産可能な時期に撤退できる。こういう提案であると思いますけれども、そもそも、このG1ルールの適用は後発品の置きかえ率が80%以上の品目だということでありますし、今回の抜本改革のコンセプトであります、製薬産業が長期収載品に依存するモデルからより高い創薬力を持つ産業構造に転換していく。こういうことを踏まえれば、後発品が80%以上というシェアを大分占めておれば当然、長期収載品からより革新性・有用性の高い新薬創出にそのビジネスモデルを転換していくことは、必然ではないかと考えております。
ここで先発製薬メーカーさんに質問ですが、今回のこのG1ルールのような提案では、この意図しているような構造転換が進まないとお考えなのかどうか。その辺をまずお聞きしたいと思います。
○中村部会長
では、これは畑中会長からお願いします。
○日本製薬工業協会(畑中)
ありがとうございます。
今回の御提案は、長期収載品の価格を徐々に下げていくというスキームになっています。私ども、既に2010年に新薬創出等加算を導入した際から業態の転換ということで、長期収載品に依存するモデルから新薬に依存するモデルに各メーカーが取り組んでまいっております。
今回、私どもにとりましては、また先発品の価格をジェネリックの価格によって引き下げられるという厳しいコンセプトの改革案ではございますけれども、既に現在、70%程度でございますか。後発品のシェアになっていますし、また、新しい目標は80%というものが出ている中では、今、委員から御指摘あったように、80%以上になる、すなわちほとんどがジェネリック品に切りかわっていく。また、その先には医薬品のバリュー、価値がジェネリックと同じに位置づけられるということを見通しますと、これは企業さんの個別の考えにはなりますけれども、この制度によって撤退を考えていく企業は出てくる。このように考えております。
○中村部会長
では、PhRMAの方はいかがでしょうか。あるいはEFPIAの方、どちらでも。
○米国研究製薬工業協会(パトリック・ジョンソン)
私どもは、今回の提案の内容の趣旨としては、長期収載品の価格を徐々に引き下げていくことになるわけですけれども、これはきちんとしたMIQというものを導入して、新薬メーカーにとっては、ある意味、撤退の判断を行うということが結果として行われる事態を招くのではないかと思います。
私どもとしては、やはりジェネリックの普及率、あるいは長期収載品に置きかえられるジェネリックの割合を高めることによって、最終的に各社の長期収載品に対する依存度を引き下げていくことは望ましいアプローチであると考えます。そうすることによって、革新的な新薬に対して、その価値を十分に反映する新薬創出加算。これをきちんと満足のいく形で実施する資源の余地も生まれてくると思います。
最近のIMS調査でもこれが裏づけられているわけで、長期収載品に対する依存度を減らし、ジェネリックの置きかえ率を上げることによって、ほかの先進国の水準に見合ったPMP、新薬創出加算制度のための資源をそこで十分に確保することが可能であるということがわかっています。
○中村部会長
では、EFPIAの方、いかがでしょうか。
どうぞ。
○欧州製薬団体連合会(トーステン・ポール)
私どもの考え方としましても、このような後発品のさらなる使用促進と、また、長期収載品が後発品により高く置きかえることによりまして、イノベーションの評価のための財源を確保することができると考えております。したがいまして、このような薬価の切り下げというものには合意しているわけで、それによりまして、さらにイノベーションの評価を行うことができるものと考えております。
○欧州製薬団体連合会(フィリップ・フォシェ)
それから、私どもの調査データによりましても、金額的には新薬創出加算で支払ってきている、この加算の金額というもの。それに対しまして、後発品のさらなる浸透。そして、それの結果、この薬剤費が全体として削減されていることによって、この加算の部分は十分に補われて余りあるものがあると考えているわけであります。
また、ほかの国と比較いたしましても、後発品の当初の収載時の価格を見ますと、日本の後発品の薬価というものは相変わらず、まだ高い傾向があるかと思いますので、ほかの国の事例などを参照することによりまして、さらに医療費に対する余裕を見出すことができると考えております。
○中村部会長
では、吉森委員、お願いします。
○吉森委員
ありがとうございました。よくわかりました。
それと、各団体さんの意見としては、長期収載品とセットで新薬創出加算について考えるべきだという御意見だというふうに拝聴しました。
これは先ほど今村委員からもありましたが、今後の恒久化について質問しようと思ったのですが、お答えいただいたので、私の意見ですけれども、今回、この新薬創出加算については、今までの試行的な段階を踏まえて、さらに真に有効な医薬品を、革新性・有効性を適切に見きわめるというコンセプトで対象医薬品、また対象企業の要件を見直し、現行の試行制度と比べて革新的新薬の創出について、より製薬企業さんに寄り添う形の加算にしたいという方向性だというふうに事務局のお考えを理解しているわけです。
一方で、制度化、恒久化という検討もありますし、先ほどの各団体さんの意見・要望も勘案すれば、今回の見直しの効果がどうなるかというのは当然、分析が必要だと思いますし、恒久化という制度化を検討することについては、このままでは明らかに拙速ではないか。何も検証しないのはいかがなものかというのは個人的にはそう考えておりますし、まずは今回、どういう要件設定にするかは置いておきましても、今回の見直しによる財政面、新薬創出などに与える影響等々を十分に検証する期間はやはり設けて対応する必要があるのではないかと考えます。これは意見でございます。
もう一つ、費用対効果。これの本格導入についての件で、先ほどPhRMAさんからも本格導入には十分検討する必要があるのだと。もう少し時間が必要だと。各団体、いろんなステークホルダーからの意見も必要だというふうに理解をしたのですけれども、前回、22日の薬価専門部会での資料には、事務局から、試行的実施において明らかな技術的課題への対応策を整理した上で、平成30年4月から試行的導入について価格を調整して、あわせて本格実施に向けて、その具体的内容について検討する。平成30年度中に結論を得る。こういうふうになっていたかと思うのですけれども、これを素直に解釈しますと、やはり当初、30年度に診療報酬改定時に本格導入を制度化するとした実施スケジュールについて、31年度に延期したというふうに読み取れるのですが、この辺、事務局にちょっと確認をしたいと思います。
一方で、先週土曜日だったか、全国紙の一部で、厚労省は薬の費用対効果を2019年度以降に延長の方針を明らかにしたという記事を目にしたのですけれども、こういうことも踏まえて、各団体さんの要望もありますし、改めて、この本格的実施のスケジュールについて、事務局への確認です。
○中村部会長
これは企画官ですか。
では、お願いします。
○古元医療課企画官
企画官でございます。
費用対効果の実施についての御質問でございます。現在、13品目につきまして、改めて検証作業を行う。こういった予定でございます。あわせて、先ほど御発言いただきましたとおり、制度化に向けた具体的内容等について、平成30年度中に結論を得る。こういった予定でございますので、しかる後に制度化を実現していきたい。こういうふうに考えてございます。
○中村部会長
吉森委員、お願いします。
○吉森委員
では、それは31年度ということで。
○古元医療課企画官
実際の検討スケジュールを考えますと、御指摘のとおり、31年度のできるだけ早いタイミングでといったことを考えてございます。
○吉森委員
それでは、延長、延期という言い方も間違いではないということですね。
○中村部会長
企画官、お願いします。
○古元医療課企画官
当初の予定からいたしますと、おくれぎみで、本格導入に向けて検討を進めていきたい。こういったことでございます。
○吉森委員
わかりました。
○中村部会長
ほかはいかがでしょうか。
では、安部委員、お願いします。
○安部委員
意見陳述をありがとうございました。さまざまな御意見をお聞きしている中で、新薬創出加算については厳しい御意見が多かったなという印象であります。
その中で、PhRMAさんの資料の4ページで「新薬創出等加算の品目要件について」の内容を読むと、ネガティブリスト化することが妥当ではないかという御意見だというふうに私は読めたのですが、日薬連さんやEFPIAでは、このネガティブリスト化するべきだという御意見に対して、どのようにお考えになるか、お聞きしたいと思います。
○中村部会長
では、これは多田会長あるいは畑中会長、どちらか。
お願いします。
○日本製薬団体連合会(多田)
おっしゃるように、私どものほうもネガティブリストをつくって、何を除外するか。こういうものは従来の品目の中から除外していくのだという、それの判断、そういうスタイルのほうがより理解が得られやすいというのが本音でございます。
○中村部会長
畑中会長、よろしいですか。
○日本製薬工業協会(畑中)
私のほうからも、今の多田会長に加えまして、革新性・有用性に今回、品目条件に注目して制度を変えていきますということであれば、現在の薬価の収載時にもルールがございますので、新規性に乏しいもの、例えば算定時に8掛け算定をされるラセミ体でありますとか配合剤、そして、最低価格に薬価を算定される類似薬効比較方式2で算定されるもの。これを対象から除外していただくということであれば、当初、私どもは特許期間中のものは全部入れてくれということは言っておったのでございますけれども、今まで、やはり一部の品目については除外していたということも踏まえますと、この範囲であれば私どもとしても容認できる範囲であると考えております。
○中村部会長
では、EFPIAの方、いかがでしょうか。
○欧州製薬団体連合会(フィリップ・フォシェ)
私どもも、ただいまの御意見を支持するところであります。既にそのようなメカニズムが存在しているところでありまして、やはり既に現行の新薬創出加算制度のもとにおきまして、そのような競争優位性というものを持たないものは除外されているわけですから、そうしたものを除外したもので私どもは今後、制度化というものをすることによって、より透明性を高めることができると考えております。
○中村部会長
ほかはいかがでしょうか。
では、幸野委員、お願いします。
○幸野委員
意見陳述、ありがとうございました。製薬業界からは相当な反発があるということが大変よく理解できました。
その上で私の意見を申し上げますので、反論等がありましたらお聞きしたいと思います。
まず、我が国の医療保険制度が崩壊の危機に瀕しており、国民全体で何とかして、将来に向け持続可能なものとしなければなりません。世界に類を見ない少子高齢化が進む我が国では、今後、医療費はますます増加し、高齢化も進みます。現在は約40兆円の医療費が60兆円まで増加するということが推計されており、社会保険方式とはいえ、公費が5割投入されている医療保険制度は、このままでは間違いなく崩壊の危機を迎えてしまうと思います。
ですから、国民皆保険を守るためには国民一人一人が痛みを負わなければいけないと思います。製薬会社の方々も医療保険制度下の一プレーヤーなので、痛みを負う必要があると思います。我々、被保険者は保険料を負担して痛みを負っておりますし、保険料は毎年上がっており、ここ10年間では一人当たり10万円も上がっておりますので、これからは高齢者の負担割合を増やしていこうという動きも出ています。こういった、国民皆保険制度を維持していくためには国民全体で痛みを分かち合わなければいけないという中で示された一つの提案が、薬価制度の抜本改革であるということをまずは御理解いただきたいと思います。
業界からの御意見をうかがっていると、特に新薬創出等加算の見直しについての反発が最も大きかったと理解しております。新薬創出等加算という仕組みは、企業要件を満たせば事実上ほとんどの医薬品が対象になるもので、余り革新性の高くない医薬品の薬価まで長年にわたって維持される仕組みであったと我々は理解しています。対象品目の要件には平均乖離率以下であることという要件もありましたので、薬価が高止まりして、薬価全体を押し上げる要因になっているのではないかと思います。
我々は、これまでの薬価制度自体におかしいところが多かったのではないかと思うので、今回の抜本改革で、全てクリアにしたと理解しています。今回の見直しによって、新薬創出等加算の企業要件、品目要件がそれぞれ見直されて、国民にとっても非常にわかりやすい制度になったと思っていますし、製薬企業は企業区分1への該当を目指して新薬の開発を促進すると思うので、イノベーションに対する適正な競争につながるものとなったのではないかと思っています。
今回の抜本改革で見直した内容は、製薬企業にとってマイナスなことばかりではありません。私は反対していましたが、原価計算方式においても薬価全体に加算するという見直しや、研究開発費の上限が引き上げられたほか、基礎的医薬品の対象品目が拡大されます。今申し上げたような、企業を救うような見直しも抜本改革には含まれているということも理解していただきたいと思います。
最後に確認したいのですが、PhRMAとEFPIAは、新薬創出等加算制度の見直しが行われると日本への投資は行われなくなり、日本の製薬産業は我が国の基幹産業ではなくなると強く主張されていましたが、日本製薬団体連合会も同じような考えなのかをお聞きしたいと思います。また、私の意見に何か反論等があれば各団体の方からお聞きしたいと思います。
○中村部会長
では、まずこれは多田会長からいきましょうか。
お願いします。
○日本製薬団体連合会(多田)
いつもながら、幸野委員の立論は非常に論理的でわかりやすいお話だと思います。
それで、最初の点につきまして、私どもがまるで痛みを分かち合わないパートナーというか、者であるというふうな御趣旨の御発言がありましたけれども、それは大きな間違いで、今までも毎年、私どもが5,000億以上のいわば原資を、財政的に貢献してきておるというのが実態だと思いますから、そういう意味で従来から、この崩壊の危機を回復すべく、我々なりに、あるいは我々としては無理をしてやってきたというふうに私どもは理解しております。
したがって、今、御提案のありましたような、今の薬価制度を、私どもは今回の薬価制度の抜本改革は、むしろ薬価を引き下げるための抜本改革であるという印象を非常に強く持っておりますので、こういうことが続きますと、私どもの産業自体が政府のおっしゃっておられるような方向にはなかなか進んでいかないのではないかという、逆にそういう危機感を持っておるところでございます。
したがって、幸野委員の御指摘の点、そういう点をより改善するとすれば、国としてもっと、この薬価制度の範囲ではなくて、医療制度あるいは社会保障制度そのもの全体を、本当にこの仕組みでいいのかという視点での御検討をぜひいただきたい。これは従来からも、薬価のマイナス改定だけで財源を捻出する方式は限界に来ているというのが私どもの基本的な強い感想でございます。
そして、委員のおっしゃいました、今回の改定の中で幾つか改善点、我々にとってインセンティブとなるような御提案がございました。これはおっしゃるように、私どもも大いに評価しておるところでございます。
そして、日本への投資がなくなるということについて、日本のメーカーとして本当にそういうふうに考えているのかという質問が最後にございましたのですけれども、これは実態といたしまして、私どもも調査いたしましたのですが、結構大手の中にも今、利益を上げています。これはよく批判の対象になるわけですが、利益を上げているのですけれども、ほとんどが海外の利益で、むしろ国内の事業は今の時点では赤字である。こういう企業が、商社があるわけです。それも大手の中にあるわけです。
これは別に経営のやり方がおかしいからということではないと私は思いますので、実態として海外で事業をして、そこの利益から国内の税金も払い、税金にも貢献して、そして実態は、国内は非常に厳しい状態で、いわば人員整理等が進んでいるわけです。これが幸野委員にもぜひ御理解いただきたい実態でございます。
そういう状況が続きますと、どうしても日本のマーケットに対する、これはあくまで産業としてです。いわゆる我々が社会的責任を持っているという次元の話ではなくて、産業として考えますと、やはりそういう優先順位が下がってくるというのも、これは外資の方ほどではございませんが、もちろん、我々は国内の国民の健康の一翼を担っておりますので、そう単純には割り切るわけではございませんが、そういう疑問が常に経営の中で湧いてくることは御理解いただきたいと思います。
○中村部会長
では、PhRMAあるいはEFPIAの方々、何かコメント等はありますでしょうか。
○米国研究製薬工業協会(パトリック・ジョンソン)
私どもは、日本で急速に世界の国々に先駆けて少子高齢化が進んでいる。したがって、医療制度を何とかしなければいけないというニーズ。これは十分認識しているつもりでおります。
当然ながら、今回の改革案において、私どもが十分に支持する側面ももちろんたくさんあります。先ほど申し上げたように、長期収載品に対する依存度。これを下げていく。そして、より一層、ジェネリックの使用を促進するということは私どもも十分必要であると考えています。
ただ、この制度を今後どうしていくかということを考えるに当たって、非常に総合的な見方をしていくことが非常に重要であると思います。総合的というのは、まず今の薬価水準がほかの国と比較してどうあるかということを考えていくことも必要であり、例えば今の平均薬価は欧州の中央値を下回っていますし、それから、日本の医薬品市場の成長率は、このまま行っても横ばいであるか、あるいは減少していく、成長率が下がっていくことが予想されています。
ただ、今まで、この新薬創出加算制度が導入されたことによって、大変、我々外資系の製薬会社としても成功裏に日本を世界の新薬を導入する国々の第1陣に入れることができています。これによって、日本の患者さんも革新的新薬へのアクセスが促進されてきたわけです。
多くの国々では、実は日本というのは羨望の的になっている。つまり、場合によっては新薬が一番最初に日本で上市される状況が今ありますので、こういった革新的な医薬品にアクセスすることが容易であり、そして薬剤費というものは、そこだけを見るときちんと管理されていることを他国はうらやましく思っています。
例えば社会の高齢化に伴って、この認知症の有病率・罹患率が上がっているのは確かであり、アルツハイマー性認知症にかかる医療費も現在は約14兆円であるものが、2060年には25兆円にまで膨らむという予想があります。
確かに、こういった慢性疾患が蔓延することによって全体の医療費は向上し続けてしまうという結果をもたらすのかもしれませんけれども、私たちが確信しているのは、それでも十分に競争力を維持し、そして日本においてイノベーションを推進し続け、革新的新薬を世界に先駆けて導入することは十分可能であるということです。
現在の医療の進歩、特にバイオメディシンの進歩によって、そう遠くない将来、こういった認知症などに関しても治療法、有効な薬剤というものが出てくることは間違いないと思います。ただ、そのためには世界において競争力を失わず、新薬を開発し続けるためには、今の新薬創出加算制度というものが必要不可欠であり、重要な役割を果たしていると私たちは感じています。
○中村部会長
では、EFPIAの方、お願いします。
○欧州製薬団体連合会(トーステン・ポール)
ありがとうございます。
確かに、私どもも日本における医療制度というものは非常にすぐれた、有効なものがあり、そして、それを私どもとしてもできる限り支持していきたい、サポートしていきたいと考えているわけであります。確かに財源のところが問題になっているということは私どもも十分に認識しているわけですが、この制度を支持することによって、改革をしていかなければならない。しかしながら、それを正しい方法で改革していかなければなりません。
あくまでも、この医薬品というものは、今後10年を見据えますと、明らかに決して伸びていく費用ではないわけです。
確かに、昨年からことしの頭にかけて、この投棄すべき高額な薬剤があったわけでありますけれども、実際におもしろいことに、例えばC型肝炎の治療薬のような形で、結果的にはそれらが非常に費用対効果の高い医薬品であったということが明らかであります。すなわち、後の段階での医療費を実際はセービングしている、節減しているという製品であったわけです。
ですから、このような革新的な新薬に対して、その開発にインセンティブを与えるということはよきことにのみつながっていくと考えているわけで、これは患者さんにとってもサイエンスにとっても、そして最終的には日本の経済にとってもプラスに働くものと確信しております。
もちろん、私どもとしても財源の部分を支えていかなければならないことは十分に理解しているわけで、ですからこそ、後発品の普及によって我々の売り上げが下がっていくといったところ。また、長期収載品の価格が切り下げられるといったところで我々としても痛みを分かち合っているつもりでございます。そして、そうしたところから得られていく財源の節約分によりまして、十分に新薬創出加算制度というものを財源として確保することが可能だと考えております。
ということで、薬剤費自体、これが上がっているのではなくて、むしろこれが下がっている一方であるという環境の中におきまして、やはり薬剤費のところが全体の医療制度を脅かしているものではないといったところを十分に考えていただきたいと思います。
○欧州製薬団体連合会(フィリップ・フォシェ)
日本の産業の競争力といったことについて一言申し上げますと、データとしましては、2012年の第2四半期におきまして、初めて日本の企業が世界の医薬品メーカーのランキングとして13位につきました。ことしの第2四半期になりますと、それが20位になっていくというところでありまして、このように日本の内資の企業でありましても、その事業の半分が国外で行われるようになってきているわけであります。
ですから、このような日本の産業の地位をさらに確保していくこと。また、日本の医薬品企業が新薬を創出する。そうした能力を保っていくといったところも重要になってくるわけです。私どもとしても十分に痛みを分かち合う用意はあるわけですけれども、その痛みのところに効くような、そうした薬も必要なのではないかと思います。
○中村部会長
ほかはよろしいでしょうか。
では、ありがとうございました。大体、御意見、御質問も出尽くしたようですので、関係業界からの意見陳述についてはここまでとさせていただきます。
本日予定された議題は以上になります。
本日の業界意見陳述の内容を踏まえて、次回、事務局より次期薬価制度改革に向けた骨子案を作成していただきたいと思います。
次回の日程につきましては、追って事務局より連絡いたしますので、よろしくお願いいたします。
それでは、本日の薬価専門部会は、これにて閉会といたします。
どうもありがとうございました。

 

 

 

 

 

(了)
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代表: 03-5253-1111(内線)3288

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