ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会費用対効果評価専門部会)> 中央社会保険医療協議会 費用対効果評価専門部会 第66回議事録(2023年11月17日)

 
 

2023年11月17日 中央社会保険医療協議会 費用対効果評価専門部会 第66回議事録

○日時

令和5年11月17日(金)保健医療材料専門部会終了後~

 

○場所

TKP新橋カンファレンスセンター 12F

○出席者

飯塚敏晃部会長 安川文朗部会長代理 小塩隆士委員
鳥潟美夏子委員 松本真人委員 高町晃司委員 眞田享委員 鈴木順三委員
長島公之委員 江澤和彦委員 池端幸彦委員 太田圭洋委員 林正純委員 
森昌平委員
藤原尚也専門委員 石牟禮武志専門委員 守田恭彦専門委員 前田桂専門委員 
<参考人>
福田敬参考人 池田俊也参考人
<事務局>
伊原保険局長 眞鍋医療課長 木下医療技術評価推進室長
荻原保険医療企画調査室長 安川薬剤管理官 小嶺歯科医療管理官 他

○議題

○業界からの意見聴取について

○議事

○飯塚部会長
 ただいまより、第66回「中央社会保険医療協議会 費用対効果評価専門部会」を開催いたします。
 保険医療材料専門部会と同様、対面を基本としつつ、オンラインも組み合わせての開催としております。
 また、会議の公開については、ユーチューブにおけるライブ配信で行うこととしております。
 まず、本日の委員の出欠状況について報告をいたします。
 本日は、末松委員、笠木委員が御欠席です。
 今回は参考人として福田参考人、池田参考人に御参加いただいております。
 それでは議事に入らせていただきます。今回は、関係業界からの意見聴取を行いたいと思います。関係団体として、日本製薬団体連合会、日本製薬工業協会、米国研究製薬工業協会、欧州製薬団体連合会、日本医療機器産業連合会、日本医療機器テクノロジー協会、米国医療機器・IVD工業会、欧州ビジネス協会医療機器・IVD委員会より意見を聴取したいと考えております。
 早速、意見陳述に移りたいと思います。まず、関係団体の皆様よりプレゼンテーションしていただき、その後に質疑とフリーディスカッションを行いたいと思います。
 関係団体の皆様は、最初に自己紹介を行っていただいた上で、時間厳守でプレゼンテーションをお願いいたします。
 恐縮ですが、持ち時間が終わった時点でベルを鳴らしますので、円滑な議事進行に御協力をお願いいたします。
 まず、医薬品に関連する4団体よりまとめてプレゼンテーションをお願いいたします。
○上野日本製薬工業協会会長
 日本製薬工業協会会長の上野でございます。本日は意見陳述の機会をいただき、誠にありがとうございます。
 まず、私から、製薬企業米国研究製薬工業協会(PhRMA)、欧州製薬団体連合会(EFPIA)の3団体を代表して意見を述べさせていただき、その後にPhRMA、EFPIAから追加の意見を述べさせていただきます。
 スライド2を御覧ください。令和6年度費用対効果評価制度の見直しに関する私たちの基本認識をお示ししております。
 本制度は2019年に制度化され、薬価制度との整合性を踏まえ、新薬の価値評価のあくまで補足的な手段として限定的に用いるものと整理されたと認識しております。
 しかしながら、今回の価格調整範囲の見直しについては、薬価制度の在り方にも踏み込んでおり、薬価制度との整合性について十分に議論を尽くすことが重要であると考えております。
 加えて「骨太方針2023」においては「イノベーションの適切な評価などの更なる薬価上の措置」を推進することで「ドラッグラグ・ロスの問題に対応する」ことが示されております。その方向性と相反することのないよう、十分に配慮することが必要であると考えます。
 スライド3を御覧ください。ここから費用対効果評価の制度改革に関する意見を6点述べさせていただきます。
 スライド4を御覧ください。まずは価格調整範囲の在り方についてです。
 これまでの中医協の論点で、価格調整の在り方についてどのように考えるかと示されておりますが、費用対効果評価はあくまで薬価制度を補足する制度であるため、現行の対象範囲を維持すべきであると我々は考えます。すなわち、価格調整範囲が薬価本体に割り込むことは、薬価制度の在り方にも踏み込むことになり、容認できません。
 次ページ以降で詳細を御説明させていただきます。
 スライド5を御覧ください。薬価基準制度と費用対効果評価制度についての比較を示しておりますが、これらの相違点について確認させていただきます。
 薬価基準制度においては、新薬について厳格に管理された臨床試験が実施され、その結果に基づいて薬事承認がなされ、その承認された効能効果を基に新薬の基本的な価値が決定されます。さらに有効性・安全性などが評価されて加算が付与されます。
 一方、費用対効果評価制度では新薬によって代替されると想定されるものを比較対照として、QALYを用いて有用性を評価します。
 このように、両制度は評価方法、比較する薬剤の選定基準、有用性に関わる評価の項目が異なります。
 スライド6を御覧ください。これまでの価格調整範囲に係る制度化に至る経緯に基づいた見解について述べます。
 中段に過去の中医協における検討の視点を示しておりますが、特に赤枠で示された部分を御覧ください。
 費用対効果評価の価格調整の対象範囲を検討するに当たっては、算定された薬価との整合性を図る必要がある。例えば、類似薬効比較方式で算定された薬価について、比較薬よりも低い評価とするなどとした場合、市場での公正な競争が確保できなくなるとされていることから、現行の費用対効果評価制度において、加算分が価格調整範囲とされたと認識しております。
 スライド7を御覧ください。次に、今回の提案の薬価制度の観点における問題点について述べます。
 新薬の薬価は、比較薬の薬価を基に基本的な価値が決定され、有用性に応じた加算、薬事承認上認められた要件に係るインセンティブ系の加算が付与され、新薬の薬価が決定されます。
 価格調整範囲が薬価本体まで割り込むということは、薬価算定時に認められた有用性加算が否定され、インセンティブとしての機能を失い、比較薬に対し評価と価格の関係が逆転するということになります。このことは、これまで長きにわたって構築された精緻な薬価制度の在り方に踏み込むことになります。
 スライド8を御覧ください。次に、イノベーションの評価の観点からの問題点について述べます。
 中医協資料「論点」で示された考え方では、薬価算定時に認められた加算が減算されることになり、これは加算を受けた新薬Aが、加算を認められなかった新薬Bより低い評価を受けることとなります。すなわち、イノベーションがマイナスの評価を受けることを意味することになり、これは「骨太方針2023」で「イノベーションの適切な評価などさらなる薬価上の措置」を推進するとされた方向性と相反することにならないのでしょうか。
 以上、申し述べた理由から、価格調整範囲が薬価本体に割り込むような本提案は受け入れられず、現行の価格調整範囲を維持すべきと考えます。
 スライド9を御覧ください。再指定時等の運用について述べます。
 収載後の品目指定については、既に複数の再算定のルールが運用されており、収載後に新たな品目を指定する必要性は乏しいと考えます。また、再指定時の価格調整範囲についても、先ほど申し述べた理由により、価格調整範囲が薬価本体に割り込むことなく、元の価格調整範囲を維持すべきと考えます。
 スライド10を御覧ください。比較対照技術の設定に係る考え方について述べております。
 「論点」で示されているガイドラインにおける記載の方向性に異論はございませんが、これまで複数の品目の分析で最も安価なことを理由に比較対照技術が選ばれていることが確認されています。そのため「費用対効果の程度」を理由に、比較対照技術が最も安価な品目に偏って選定されないよう、企業が示すデータや臨床の専門家等の意見も十分に考慮いただきたいと考えます。
 スライド11を御覧ください。品目指定時の配慮についてです。
 以前、中医協薬価専門部会で示しましたドラッグロス品目のおよそ半数が希少疾病用医薬品で、中には日本で当該疾患の既存薬がない品目も含まれておりました。そのような医薬品の国内導入を阻害しないためにも、希少疾患を対象とした医薬品は基準値の配慮が行われるべきと考えます。
 また、治療方法が十分に存在しない稀少な疾患のみに用いられている品目として、抗がん剤は基準値の配慮が行われており、希少疾病用医薬品についても同様に基準値の配慮を御検討ください。
 スライド12を御覧ください。価格引上げ条件についてです。
 一部の集団では、費用対効果に優れる結果が得られた場合に価格が引き上げられる制度とはなっていますが、価格を引き上げられることによって費用対効果が過度に悪化することのないよう、複数の条件や計算上の条件が設定されています。
 しかしながら、それらの価格引き上げに係る条件の中には、臨床試験や分析の実情から乖離する過度な条件が含まれており、これらについては撤廃・緩和が必要であると考えます。
 スライド13を御覧ください。介護費用の取扱いについてです。
 介護費用の分析の取扱いに関しては、高齢化が社会問題となっている我が国にとって避けては通れない課題であり、今後、介護の負担を軽減する新薬の開発にもつながるものと考えられることから、引き続き研究を進めていただければと考えます。
 今般の高額医薬品の認知症のような品目については、社会保障費全体へ影響を評価する観点から、介護費用等も含めた分析結果の活用についても検討すべきと考えます。
 スライド14を御覧ください。最後のスライドとなります。業界意見のまとめをさせていただいております。
 今回、大きく6点についての意見を述べさせていただきました。特に価格調整範囲については、費用対効果評価制度が薬価制度との整合性を踏まえ、新薬の価値評価のあくまで補足的な手法として限定的に用いるものであり、薬価本体に割り込む見直し提案を受け入れることはできません。
 その他の意見も含め、御検討いただきますようよろしくお願いいたします。
 私からの発表は以上となりますが、続いてPhRMA、EFPIAからの追加の意見を述べさせていただきます。
○關口米国研究製薬工業協会在日執行委員会副委員長
 米国研究製薬工業協会の關口より追加でコメントをさせていただきます。
 現在のドラッグラグ・ロスが起きている医薬品のうち、約4分の1の主効能ががんであり、過半数が希少疾患の治療薬であることから、アンメットメディカルニーズの高い疾患領域での医薬品が今後日本に届かなくなるリスクを大変懸念しております。
 官民対話のPhRMAの資料にも御提示しておりますが、現在欧米で第III層試験が行われている医薬品の7割が日本では開発未着手という状況になっており、その品目数も444品目に上がります。つまり、現在のドラッグラグ・ロスにとどまらず、将来のドラッグラグ・ロス問題はさらに深刻化していきます。このような状況を踏まえ、今年の骨太の方針では、ドラッグラグ・ロスの解消に向けた複数の取組が提案されたと認識しております。
 費用対効果評価の対象となっている医薬品は、もともと薬価制度において、既存治療と比較して革新性が認められた医薬品でございます。そのような医薬品に対して、費用対効果評価の結果を用いて調整する価格調整範囲を、加算部分を超えて本体価格まで広げることは、日本の医療の進歩の妨げになると認識しております。これはイノベーションの推進とドラッグラグ・ロスの解消に向けた政府の議論に逆行するもので、日本市場の魅力低下につながることを危惧いたします。
 以上より、PhRMAとしては、加算を超える価格調整範囲の拡大はすべきではないと考えます。
 以上、PhRMAからのコメントとさせていただきます。
○レオ欧州製薬団体連合会副会長
 国の政策として、革新性の高い医薬品の創出を重視してくださっていることに大変感謝申し上げます。
 しかし、現実におきましては、特許期間中の新薬の薬価が毎年下がり続けております。そして、今の御提案ですと、革新的な医薬品の薬価というのが、加算を取得した方が薬価が低くなるということも想定されます。そうしますと、この加算を取るということに意味がなくなり、日本に医薬品を上市する魅力がさらに低下する。そして、日本は薬価が下がる国と見られることを懸念しております。
 この費用対効果評価制度は近年導入されました。そして、まだ改善の余地があると考えております。そして、この分析の枠組みは海外とは異なっております。分析の結果は、企業分析と公的分析で異なっていることがあります。ですので、加算を超えて引き下げ幅が広がる場合、薬価の予見性が大幅に下がることになります。
 私どもといたしましては、価格調整範囲が加算の部分にとどまるようにすることを強く求めたいと思います。
○飯塚部会長
 ありがとうございました。
 そうしましたら、続いて、医療機器に関連する4団体よりまとめてプレゼンテーションをお願いいたします。
○小川米国医療機器・IVD工業会会長
 おはようございます。米国医療機器・IVD工業会会長の小川でございます。本日はよろしくお願いします。また、医療機器業界として意見を述べる機会を頂戴し、誠にありがとうございます。
 中医協資料の費-1-2を御覧ください。本日は日本医療機器産業連合会、日本医療機器テクノロジー協会、米国医療機器・IVD工業会、欧州ビジネス協会医療機器・IVD委員会の4団体の意見として述べさせていただきます。
 2ページをお願いします。9月13日の費用対効果評価専門部会において以下の2点、「人員不足等の理由で分析が難しい場合に、企業から企業分析ができないことを申し出る新たなプロセス」並びに「専門組織の意見様式等を見直し、分析の論点にそった議論を促す仕組み」について提案がなされております。これらの提案については、団体として賛同いたします。
 これらの検討は7ページに再掲しておりますが、前回8月2日の専門部会における業界意見陳述で、分析実施に必要な人員が不足する場合についても分析不能として御審議いただきたいと申し上げたこと、並びに、分析中のコミュニケーションの改善についての要望を踏まえてなされたものと理解しております。業界意見を考慮していただいたことに感謝しております。
 本日は8月2日の業界意見陳述の際にございました、医薬品と医療機器の違いに根差した制度設計の細かいところは別々に議論すべきとの御発言を踏まえまして、C2H及び公的分析班との柔軟なコミュニケーションと、医療機器の特性に応じた評価の在り方の2点について御提案をさせていただきます。
 3ページを御覧ください。C2H及び公的分析班とのコミュニケーションにおける課題についてです。
 評価対象品目が増える中、効率的に協議を進める上で、協議内容や協議時間にある程度の制約が必要なことは理解しております。しかしながら、医療機器ではこれらの要因により、技術の個別性が高く、製品の特性を理解するのが困難な場合があります。少し詳しく説明させていただきます。
 1ポツ目のIncremental innovation、漸進的技術革新という学術的な表現で恐縮ですが、医療機器は小さな改良を積み重ねることで大きな技術革新を起こすという特性があります。
部分改良型の世代交代を頻繁に行うため、前後の世代には大きな差はありませんが、数世代を経ると構造や使用目的、適用患者、さらにはアウトカムなどが大きく変わっているということがあります。そのため、どこまで同じ製品で、どこからが別の製品なのかという線引きは実は難しく、実際に臨床でどのように使われているかを理解した上でないと判断を誤ることになりかねません。
 また、医療機器では比較試験が限られていることから、定義の仕方によってはエビデンスがなくなることもあります。つまり、分析対象技術と比較対照技術のいずれを定義する場合にも、個別の医療機器の臨床における使用状況を理解することが非常に重要になってまいります。
 しかし、費用対効果評価の対象品目は新しいものが多く、日本では臨床で未使用であったり、使用施設が限定されているなど、当該診療科でも理解されている方が限られている場合があります。
 4ポツ目についてですが、銘柄別収載の医薬品と異なり、機器の場合は機能別区分のため、同一区分内に異なるサイズや異なる製品が含まれていると、NDBデータなどを適切に分析することができません。エビデンスが限られる中、企業は工夫して分析を行いますが、このような要因があるため、公的分析班の先生方には企業の意図が伝わりにくい場合があります。書面で質問を受けて書面で回答するというやり取りでは、企業の意図を十分に説明できず、やり取りにかえって時間がかかったり、場合によっては誤解されたまま評価が進んだりするリスクがあると考えております。
 4ページ目を御覧ください。これらの課題に対して、個別性の高い医療機器の特性を十分に理解いただいた上で適切な分析ができるよう、分析方法等に関する分析前協議や、企業分析実施中の必要な協議において、C2H及び公的分析班と柔軟なコミュニケーションができるよう、運用面で配慮いただくことを要望いたします。
 具体的には以下のようなことを想定しております。
 ①は分析前協議で、分析の枠組みについて協議する際に、先ほど述べたような医療機器の特性に関する説明が必要な場合には、時間を拡大していただきたい。
 ②は公的分析の検証結果等を御提示いただく前に、企業分析の意図を誤解されていないか確認させていただく。
 ③は公的分析班の先生方にデモ製品を直接触っていただいたり、他国のHTAの経験などから、企業が使用を考えている分析手法やエビデンスについて、日本の制度環境での利用可能性について意見を伺ったりといった直接的なやり取りを可能としていただきたいと考えています。
 このように柔軟なコミュニケーションをとることで、公的分析班やC2Hの先生方がお持ちの科学的知見や評価方針について、企業が理解を深めることができるとともに、対象品目の臨床環境やアウトカムへの影響、エビデンスの状況等について、公的分析班やC2Hの先生方に、より深く理解していただくことができると考えています。
 結果として、より適切な評価につながるのはもちろんですが、双方の余計な作業を減らすことでプロセス全体がスムーズに進む可能性もあると考えております。
 5ページを御覧ください。最後に医療機器の特性に応じた評価の在り方について申し述べます。
 費用対効果評価制度の本格実施から4年が経過したとは言いますが、医療機器については、評価が完了したものがまだ2品目、新たに評価が始まったものが1品目あるのみであり、いまだ事例が限られております。また、評価を完了した2品目においては、医療機器の特性に起因する課題が顕在化したものと受け止めております。
 まずは評価事例の集積が必要と考えておりますが、その後を見据えて、専門組織意見書にありますように、医療機器の特性に応じた評価の在り方について御検討いただくことを要望いたします。そのためには、多様な医療機器の特性を具体的に把握する必要があると考えており、これを担保する観点から検討過程に業界が関与できるようにしていただきたいと思います。
 医療機器の費用対効果評価は世界的にもまだ事例が少ないため、業界にもアカデミアにもノウハウが蓄積されていないと伺っております。日本の制度環境に即した医療機器の分析並びに評価の在り方が確立されることを期待しており、業界としても貢献していきたいと考えております。
 陳述は以上でございます。本日は誠にありがとうございました。
○飯塚部会長
 どうもありがとうございました。
 それでは、一通りの御説明をいただきましたので、これより質疑及びフリーディスカッションに移りたいと思います。御質問等ありましたらお願いいたします。
○事務局
 長島委員、お手が挙がっております。
○飯塚部会長
 長島委員、お願いいたします。
○長島委員
 ありがとうございます。関係業界から御意見をありがとうございました。
 私からは幾つかのコメントと4つの質問をさせていただきます。
 まずは、費-1-1の製薬団体についてです。6ページの価格調整範囲に係る制度化に至る経緯では、制度開始に向けての議論である平成30年当時の中医協の議論が引用されております。しかし、制度開始から4年半が過ぎ、これまで評価実績を積み重ねてきた中で、高額医薬品等の出現もあり、現在の価格調整範囲の見直しの議論が行われております。
 価格調整が限定であるという実態がある中で、価格調整範囲の拡大はこれまで議論してきたとおり、費用対効果評価制度をより積極的に活用する観点からも重要な見直しであると認識しております。
 そこでお聞かせください。これまでの実績を踏まえた今回の見直しの議論について、業界としての受け止めはいかがでしょうか。
 続いて、9ページの再指定時の運用です。再指定については、医療保険の持続可能性に照らして制度上の対応を重層的に行っておくことが、これまでの歴史も踏まえて重要であることは言うまでもありません。
 その上で、現行制度においても外国平均価格調整がなされた品目に関しては、外国価格調整前の価格に対する有用性系加算の加算額の割合を加算部分割合とするとされており、本来の加算額にとどまっていない現状があります。
 そこで教えてください。この現状は容認でき、再指定時の運用は容認できない理由は何でしょうか。
 11ページです。品目ステージの配慮ですが、これまでも申し上げているとおり、疾患特性を踏まえた基準値における品目指定時の配慮について、希少疾病を対象とした医薬品のこれまでの評価では明らかな問題はないと考えますので、配慮の見直しは不要であると考えます。
 次に、13ページです。介護費用の取扱いに関して教えてください。
 介護費用等を含めた費用対効果分析には多くの課題があることが示されている中で、業界としては、介護費用等を含めた分析はどのようなデータを用いて実施することを想定しており、どの程度分析が可能と考えているのでしょうか。
 次に、費-1-2の医療機器団体からの陳述についてコメントいたします。
 3ページです。C2H、公的分析班との柔軟なコミュニケーションについては運用上の課題かとは思いますが、事務局において適宜対応をお願いしたいと思います。
 なお、3つ目のポツで、追加的有用性の有無の評価に当たっては、非臨床を含むデータの活用の可能性のあることとあります。
 そこで教えてください。薬事承認の際、臨床試験の取扱いについて、当該機器の海外での開発や、想定される本邦での使用の形態も踏まえ、PMDAと要不要の相談をしていると思います。その辺りの実態はいかがでしょうか。
 最後に5ページです。医療機器の特性に応じた評価の在り方については、事例集積後に再度議論や制度の見直しを行っていくという提案ですが、今、議論するのは時期尚早ではないかと考えます。
 私からは以上です。
○飯塚部会長
 ありがとうございます。
 4点御質問ありましたので、まず、こちらについて御回答等ございましたらお願いできればと思います。
○上野日本製薬工業協会会長
 日本製薬工業協会の上野でございます。御質問どうもありがとうございました。
 今、長島委員のほうからいただいた3点について、私どもからお答えをさせていただきます。
 まず、最初の問いでございますけれども、これまでの中医協の議論において、価格調整範囲が限定的であるという実態の中、実績を積んできた中で、より積極的な活用が議論されてきたが、業界としての受け止めはいかがかという御質問だったかと思います。
 これまで費用対効果評価専門部会においては、積極的な活用が議論されることについては、医療保険制度の持続性の観点から理解をしております。しかし、一方でイノベーションの適切な評価の重要性も御理解いただきたいと考えております。
 長期間にわたる研究開発の結果、治療薬としての有効性と安全性が認められ、薬事法に基づいて承認された効能効果などの価値が薬価に反映されていると考えます。その価値を尊重いただき、費用対効果評価はあくまで薬価制度を補足する制度であって、価格調整範囲を限定的として運用いただきたいと考えます。
 また、議論を深める際には、薬価制度との整合性について、関係者が十分に議論を尽くすことが重要だと考えます。
 続きましての質問でございます。現状でも外国平均価格調整がなされた品目に関する運用がある中で、再指定時の運用として受け入れられないのはなぜかという御質問だと受け止めます。
 まずは、外国価格調整は国内外の著しい格差を補正するものであると考えております。したがって、これと費用対効果評価において再指定がなされ、その評価結果に基づき、再度価格調整を行うこととは、その目的、趣旨が全く異なるものであり、外国平均価格調整の考えを準用することは、根拠が全くないと考えます。
 また、現行ルールで企業分析期間中に効能追加された場合には、追加の分析結果も含め、当初の価格調整範囲内で価格調整を行うこととされており、その運用との整合性も踏まえる必要があると考えます。
 したがって、再指定時には当初の薬価及び価格調整範囲に立ち戻って価格調整がなされ、薬価の本体部分、比較薬を下回らないことが適切と考えます。
 3点目の介護費用の扱いについて、業界の考え方の御質問に対しての答えです。Appendixの29ページを御覧いただければと思います。そこに私どもが考えます介護費用の取扱いについての一つの例を示させていただいています。
 まず、今ある介護のデータベースの情報と先行研究とを組み合わせることによって、疾病の重症度別の介護費用の推計は可能であると考えております。そして、それを費用対効果分析モデルで活用し、ICERを算出し、その分析結果を専門組織において評価いただくものであると考えます。
 まずもって費用対効果分析に用いる公的介護費の推計は、当該企業側から提示される手法や有識者の見解なども踏まえて、公的分析及び専門組織において検討されるものと考えております。
 3つ目の質問でございますが、希少疾病用医薬品を対象から除外することの提案でございます。
 私どもとしては、希少疾病用医薬品は対象から除外すべきであると考えておりますけれども、対象から外すことが否定されるのであれば、せめて基準値を配慮してほしいとの意見でございます。
○飯塚部会長
 ありがとうございます。
 そうしましたら、4点目の御質問がありましたのは医療機器に関してですが、こちらはお願いできますか。
○小川米国医療機器・IVD工業会会長
 御質問ありがとうございます。臨床試験の取扱いの要不要の在り方という御質問だったと思いますので、お答えしたいと思います。
 PMDAとは薬事申請前から全般相談、開発前相談、臨床試験要否相談を通して、臨床試験の要否及び取扱いについて確認をしております。
 臨床試験を行う場合と行わない場合があります。その要否は医療機器の迅速かつ的確な承認及び開発のための治験ガイダンスに基づき、開発コンセプト、臨床的な位置づけ、既承認の類似医療機器との差分などから総合的に判断されます。
 臨床試験を行う場合は、機器を用いた介入の臨床的有用性や臨床上の有効性及び安全性について評価する場合に行われていきます。全く新たな開発コンセプトの機器である場合や、海外データが日本での医療環境では適用不能な場合については、治験が必要とされることがあります。
 臨床試験を行わずとも評価できる場合があり、具体的には、機器を用いた臨床有用性は確立している場合、あるいは、物理的性能を示すことができれば、臨床的有用性を示すことができる場合などが、臨床試験をしないようなケースになっております。
 以上でございます。
○飯塚部会長
 ありがとうございます。
 長島委員、よろしいでしょうか。
○長島委員
 ありがとうございました。
○飯塚部会長
 ありがとうございます。
 引き続き質疑をお願いいたします。
○事務局
 森委員、お手が挙がっております。
○飯塚部会長
 森委員、お願いいたします。
○森委員
 御説明ありがとうございました。
 製薬団体に2点質問したいと思ったのですが、長島委員から介護費用の取扱いについては質問がありまして、私も現時点でどのような評価指標で評価に臨んでいるかということをお聞きしたかったのですけれども、そこは割愛させていただきます。
 その上で、価格調整の範囲について、その範囲を広げることによってドラッグロスが進んでしまう懸念があるため、御意見にもあったとおり、十分配慮した、慎重な議論が必要だとは考えております。
 一方、費用対効果ということを考えれば、価格引き上げがこれまであまり機能しておりません。価格引き上げの条件について、臨床試験や分析の実情から乖離する過度な条件であるとして撤廃・緩和を要望されていますが、仮にこの引き上げの条件を見直した上で、もう一度シミュレーションを行って影響を見つつ、その影響が過大にならないようなルールを設けて導入していくことも一つの方法かと考えておりますけれども、この対応について、何かあれば御意見いただきたいと思います。
○上野日本製薬工業協会会長
 御質問ありがとうございました。価格引き上げの条件についての御質問だと受け止めました。
 この点について御説明に当たって、Appendixの27ページをまず御覧ください。ここには、価格引き上げ条件を撤廃した場合の価格調整の一例を示しております。この事例では、一部の対象集団で示されたドミナントの結果が反映され、引き下げ率が緩和する結果になっていたと想定されます。
 我々が望んでおりますのは、薬価制度の補足としての加算評価では足りない部分を適切に行うことができるよう、現状の厳しい条件の撤廃をすることであり、大きく価格を引き上げるということを想定しておりません。
 薬価全体を価格調整範囲とすべきという考えから、今回の価格調整範囲の見直しが提案されている以上、引き下げや引き上げにそれぞれの限度を設けることは、提案趣旨と矛盾していると考えます。そのような限度を設けなければならないなら、価格調整範囲の見直しを行うべきではないと考えております。
 以上でございます。
○飯塚部会長
 ありがとうございます。
 引き続き御質問等をお願いいたします。
○事務局
 松本委員、お手が挙がっております。
○飯塚部会長
 松本委員、お願いいたします。
○松本委員
 2つの業界からのプレゼンをどうもありがとうございました。
 まず、医薬品の業界に関してコメントさせていただきたいと思います。
 費用対効果評価制度は、もともと医療保険財政の影響を緩和するために導入されたという経緯もございます。したがいまして、基本的なスタンスとして、本制度を積極的に活用して、加算部分に限らず、より広い範囲で価格調整すべきだと考えております。
 業界の皆様方からは、薬価制度を補完する位置づけだから調整範囲を加算部分にとどめるべきだという御意見が出ておりますけれども、一方で、加算部分をこえた引き上げについては条件の撤廃や緩和が必要ということで、それに関しては御主張に一貫性が欠けるのではないかと考えておりました。
 ただ、先ほど上野会長からは相互にリミットを設けるという御提案もありましたので、それについてもう少し追加意見がございましたら伺いたいということでございます。
 続きまして、業界の資料を拝見しますと、どうも価格引き下げのイメージばかりが示されており、費用対効果が低いことが前提になっているような印象さえ受けます。
 先ほど来出ておりますイノベーションを適切に評価する視点に立てば、費用対効果が高いものこそ、これはもうイノベーションとして我々は評価したいものだと思いますけれども、開発の方向性について業界はどのようにお考えなのか、もしございましたら教えていただきたいと思います。
 あと、介護費用の分析につきましては長島委員、森委員からございましたけれども、一例を示されましたが、今後同様に、こうした介護費用の節減といいますか、低下につながる医薬品の開発が進んでいくと思いますけれども、こうしたものが、同様のケースが出た場合に、メーカーごとではなく業界全体として対応するということで統一的に考えていらっしゃるのかどうかについて確認をしておきたいと思います。
 続きまして、医療機器の方でございます。長島委員からもございましたけれども、評価の在り方について議論するには若干時期尚早ではないかと考えております。
 私からは以上でございます。
○飯塚部会長
 ありがとうございます。3点御質問があったかと思いますが、もし御回答がありましたらお願いいたします。
○上野日本製薬工業協会会長
 御質問どうもありがとうございました。
引き下げがあれば引き上げもあるという中で、それぞれ限度があればそこは良いのではないかについての御質問ですけれども、基本的に先ほど申し述べた以上の答えというのは、現在持ち合わせておりません。
 それと、いわゆるイノベーティブなものがあれば、それが費用対効果で積極的に評価されるべきではないかという御指摘ですけれども、基本的に新薬の値付けにおいては、薬価算定時に臨床試験に基づいて、安全性、有効性、効能・効果に基づいて新薬が算定されていると思い、そういったイノベーションは、まずはその部分で十分に評価されていると考えております。
 したがって、費用対効果評価制度の中で、さらにイノベーションを評価するというところにおいても、それはICERという別の指標で評価することになりまして、あくまでも薬価制度と費用対効果評価制度は違う制度だという点については主張したいと思っております。
 以上です。
○飯塚部会長
 ありがとうございます。
 松本委員、よろしいでしょうか。
○松本委員
 1点目でございますけれども、先ほど来、加算部分に関する取扱いが出ておりますけれども、資料を拝見する限りでは、引き上げに関しては条件の撤廃あるいは緩和が必要だということで、今、言及がございました、それに関してもリミットを設けるというふうには、資料からは受け取れませんけれども、そうしますと、今の上野会長のコメントが正式な見解だということでよろしいのでしょうか。
○上野日本製薬工業協会会長
 失礼いたしました。
 先ほど来、私のプレゼンの中で話したところが我々の正式な見解で、今の私の追加のコメントは統一した意見ではないということでございます。
○飯塚部会長
 ありがとうございます。
 続きまして、御質問等ございますでしょうか。
○事務局
 会場はございません。
○飯塚部会長
 よろしいですか。ほかにはございますか。
 私が1点伺いたいことがあるのですが、12ページの引上げ条件①、「日本人を含むアジア人集団におけるデータ」を必須とすることは妥当ではないというコメントがございます。
 2つ質問なのですが、まず、これは「日本人を含むアジア人集団におけるデータ」ということを、取り立てて見る必要はそもそもないという御意見なのかどうかです。
 関連して、日本人を含むことは難しいということなのか、あるいは、日本人だけではなくアジア人も含むことが難しいということなのか、どういう御趣旨なのか解説をいただけませんでしょうか。
○上野日本製薬工業協会会長
 これはPhRMAのほうからお答えしていただきたいと思います。
 よろしくお願いします。
○關口米国研究製薬工業協会在日執行委員会副委員長
 スライド28をお願いします。一部の集団で費用対効果に優れる結果がえられた品目をお示ししていますが、これらの品目についてはいずれも右側2列にお示しした条件により引き上げが反映されていません。特に条件②の薬理作用などが異なるについては、その該当性に関わらず、費用対効果のよしあしによって価格引き下げ、引き上げの判断がなされるべきだと考えます。
 また、日本人を含むアジア人データの必要性に関しても、8月の陳述で申し上げたとおり、現在、薬事承認においては、国際共同治験における日本人症例の要否について骨太の方針、あるいは有識者検討会においても議論されております。この条件は、現在議論されている方向性とは逆行したルールではないかと考えております。
 日本人を含むアジア集団だけでは、統計解析が可能な症例数を満たさないこともあることを御留意いただければと思います。
 また、疾患領域によってはトップの学術誌のimpact factorが15.0以下の場合もあり、impact factorが15.0以上という要件も再考する必要があると考えます。
 さらに、利便性向上や製剤工夫は、基本的な薬理作用は同じである例が多くあります。利便性で有用性加算を取得した医薬品はQALYで評価されにくい有用性であるにもかかわらず、費用削減、ドミナント、あるいは200万円/QALY未満という良好な結果を示しております。
 企業の製剤工夫による医療現場、患者さんの利便性向上のための努力に報いるためにも、薬理作用が全く異なるという条件の撤廃を求めたいと考えます。
 以上のことから、現行の引き上げ条件が果たして適切なのか、制度として公平なものとなるよう御検討いただければと思います。
○飯塚部会長
 日本人及びアジア人を含むことは難しいと受け止めました。
 ほかには御意見、御質問等ございますか。
○事務局
 石牟禮専門員のお手が挙がっております。
○飯塚部会長
 石牟禮専門員、お願いいたします。
○石牟禮専門委員
 ありがとうございます。専門委員の石牟禮でございます。
 ただいま松本委員と上野会長とのやり取りの中で確認させていただきたいことがございますので、コメントさせていただきます。
 上野会長が申し上げた引き上げの御意見につきましては、現行の価格調整範囲の中でも引き上げが認められており、かつ、その引き上げの条件について非常に厳しいということを述べたもので、既に今のルールの中でも引き上げの上限については規定されております。
 その上で、今回提案されております価格調整範囲において、引き下げの必要性については業界としては否定をしているところでございまして、例えば、引き下げ率に上限を設けるといったことを上野会長から提案したわけではないということを、ここで補足させていただきます。
 以上でございます。
○飯塚部会長
 ありがとうございます。
 ほかにはございますか。
○事務局
 会場はございません。
○飯塚部会長
 ありがとうございました。
 そうしましたら、大体御意見、御質問も出尽くしたようですので、関係業界からの意見陳述についてはここまでとさせていただきます。
 本日の議題は以上です。次回の日程につきましては、追って事務局より連絡いたします。
 それでは、本日の費用対効果評価専門部会はこれにて閉会といたします。どうもありがとうございました。

 
<照会先>

保険局医療課企画法令第1係

代表: 03-5253-1111(内線)3288

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会費用対効果評価専門部会)> 中央社会保険医療協議会 費用対効果評価専門部会 第66回議事録(2023年11月17日)

ページの先頭へ戻る