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2021年10月18日 第15回健康日本21(第二次)推進専門委員会(議事録)
○日時
令和3年10月18日(月)13:00~15:30
○場所
AP東京八重洲13階 A+Bルーム(オンライン開催)
○議題
<審議事項>
(1)各領域の評価について(各担当委員より報告)
別表第三:社会生活を営むために必要な機能の維持・向上に関する目標
(1)こころの健康、(2)次世代の健康、(3)高齢者の健康
別表第四:健康を支え、守るための社会環境の整備に関する目標
別表第五:栄養・食生活、身体活動・運動、休養、飲酒、喫煙及び歯・口腔の
健康に関する生活習慣及び社会環境の改善に関する目標
(1)栄養・食生活、(2)身体活動・運動
(2)その他
○議事
○松村女性の健康推進室長 定刻より少し早いですが、委員の先生方、皆様おそろいになられたということですので、ただいまから、第15回健康日本21(第二次)推進専門委員会を開催させていただきたいと思います。委員の皆様には、御多忙の折、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。御礼申し上げます。
本日は、委員の皆様にはオンラインでの御参加をいただいております。なお、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、一般の方の傍聴は行わず、代わりに会議の模様をYouTubeによるライブ配信にして公開しておりますので、この点、御承知おきください。
まずは開会に当たりまして、健康局長の佐原より御挨拶を申し上げたいと思います。
○佐原健康局長 皆さん、こんにちは。開催に当たりまして、一言御挨拶を申し上げたいと思います。9月付で健康局長に着任いたしました佐原と申します。
皆様方におかれましては、御多忙のところ、本専門委員会に御参集いただきまして、誠にありがとうございます。また、日頃より健康行政に関しまして、格別の御理解、御協力を賜りまして、改めてこの場をお借りしまして、お礼を申し上げたいと思います。いつもありがとうございます。
さて、前回に続きまして、今回も健康日本21の各テーマについて御議論いただく予定であります。本日は、こころの健康、次世代の健康、高齢者の健康、社会環境の整備、栄養・食生活、身体活動・運動について、御審議を賜りたいと考えております。
西委員、山縣委員、吉村委員、近藤委員、村山委員、澤田委員におかれましては、御多忙の中、各分野の御評価を作成いただきまして、大変ありがとうございました。
テーマが多く、限られた時間となりますが、委員の皆様方から、何とぞ忌憚のない御意見を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
簡単ではございますが、私の挨拶とさせていただきます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
○松村女性の健康推進室長 なお、佐原は他の用務のため、途中で退席させていただきます。御承知おきください。
前回の開催以降、事務局側に異動がございましたので、御紹介させていただきます。
健康課長の佐々木です。よろしくお願いいたします。
○佐々木健康課長 佐々木でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○松村女性の健康推進室長 本日は金野委員、鎌田委員から御欠席の連絡を受けております。全22名中20名の委員に御出席いただいておりますので、議事が成立することを御報告いたします。
それでは、配付資料の確認をいたします。議事次第、委員名簿、座席図のほかに、資料1としまして、最終評価の評価方法についての修正案。資料2、別表第三・四・五(1)(2)評価一覧の案。資料3-1として、評価シートの様式1の案。資料3-2として、評価シート様式2の案。資料3-3として、関連資料。その他、参考資料として1から6をお送りしてございます。もしお手元に届いていないということがございましたら、事務局まで御連絡をお願いいたします。
また、議事に入る前に、オンラインで御参加いただいている委員の皆様にお願いがございます。ビデオカメラはオンにしていただき、御発言時以外は、マイクはミュートでお願いいたします。御発言される際には、WEB会議システムの「挙手」のボタンを押していただくか、画面上で見える形で挙手をしていただき、委員長からの指名の後に御発言をお願いいたします。御発言時にマイクをオンにし、名前をおっしゃった上で御発言をお願いいたします。御発言が終わりましたら、「挙手」ボタンを下ろし、マイクを再度ミュートにしていただきますようお願いいたします。
本日、時間の限られていることから、十分に御発言いただけなかった御意見につきましては、別途、事務局へ御提出をいただきたいと考えております。
それでは、カメラの撮影はここまでとさせていただきたいと思います。
以後の進行は、辻委員長にお願いしたいと思います。先生、よろしくお願いいたします。
○辻委員長 それでは早速、審議事項に入りたいと思います。委員の先生方、どうぞよろしくお願いします。
では、各領域の評価につきまして、まず事務局から資料の説明をお願いします。
○寺井健康課長補佐 事務局から資料の説明をさせていただきます。
初めに、資料3-3、関連資料の1枚目をごらんください。健康日本21(第二次)の5つの基本的な方向を示したシェーマをお示ししております。本日は、③で示します別表第三「社会生活を営むために必要な機能の維持・向上に関する目標」のこころの健康、次世代の健康、高齢者の健康の領域、また、④で示します別表第四「健康を支え、守るための社会環境の整備に関する目標」、そして、⑤でお示しします別表第五「栄養・食生活、身体活動・運動、休養、飲酒、喫煙及び歯・口腔の健康に関する生活習慣及び社会環境の改善に関する目標」の初めの2つ、栄養・食生活、身体活動・運動の6領域を御議論いただくこととしております。
2ページ目に、「社会生活を営むために必要な機能の維持・向上に関する目標」としまして、こころの健康、次世代の健康、高齢者の健康の領域の目標項目の一覧をお示ししております。同じく7ページに、社会環境の整備に関する目標をお示ししております。最後9ページ目が栄養・食生活及び身体活動・運動の目標項目になります。本日は、これらの目標項目について御評価いただきたいと考えます。
資料の御説明ですが、資料1は、「健康日本21(第二次)の最終評価の方法について」、補足がございましたので、一部改訂したものをお示ししております。資料2は、本日御評価いただく6領域の評価のまとめでございます。資料3-1が評価シート様式1(案)で、各目標項目のデータ・分析をまとめたシートでございます。資料3-2が評価シート様式2(案)になり、各担当の委員の先生方に御執筆いただいた各領域の評価のまとめになります。後ほど担当の先生方より詳しく御説明いただきます。また、資料3-3としまして、関連資料をつけております。
では、まず、資料1及び資料2につきまして、事務局から簡単に御説明いたします。
資料1ですが、こちらは第13回・第14回の専門委員会でもお示ししました「最終評価の方法について」でございます。一部改訂したものを本日お示ししております。1ページ目の下の方、赤字でお示ししているところが改訂部分になります。「データソースが国民健康・栄養調査である場合は、ベースラインの調査実施人数で年齢調整した値で有意差検定を行う」と書かせていただいております。
参考に、様式1をお示しします。(資料3-1の20ページ目を参考に投影。)こちらは栄養・食生活領域の様式1でございまして、上の方にベースライン、中間評価、最終評価、及び目標値のデータを載せておりますが、ここには、年齢調整を行っていない素データを記載しております。それに対しまして、下の分析欄におきましては、ご覧いただいておりますとおり、年齢調整を行って有意差検定をしたデータが書かれてあります。
様式2もお示ししたいと思います。(資料3-2の74ページ目、図3を参考に投影。)こちらは、栄養・食生活領域の様式2ですが、今お示しておりますとおり、様式2のグラフにおきましては素データの推移と、年齢調整した推移を両方お示ししているという形になっております。
本来、年齢調整を行ってから検討を行うべきか、年齢調整を行わずに評価すべきかについては、目標を立てる初めの段階で決めておくべきであったと考えられますが、健康日本21(第二次)開始時にその点がはっきりと決まっていなかった目標項目もあることから、今回の最終評価に関しましては、年齢調整を行えるもの、つまり国民健康・栄養調査がデータソースとなっている指標に関しては、一律に年齢調整した値で有意差検定を行うこととさせていただいております。
資料1につきましては以上です。続きまして、資料2、評価一覧につきまして簡単に御説明させていただきたいと思います。
資料2は、今回御評価いただきます6領域分の評価、A・B・C・D・Eづけをまとめたものでございます。
1ページ目、こころの健康の領域でございますが、目標項目は4つございます。上から順番に、B、C、B*(Bアスタリスク)、Aという評価になっております。B*は、ベースラインから改善を認めているものの、目標年度までに目標達成が危ぶまれるものという定義になっております。
また、3つ目、「メンタルヘルスに関する措置を受けられる職場の割合の増加」に関してですが、最終評価(最新値)の欄に平成30年と令和2年の数値が併記されているかと思います。健康日本21(第二次)の最終評価におきましては、コロナの影響を受ける前のデータで評価することとさせていただいておりますので、平成30年の59.2%を最終評価の数値としております。ただし、最新値としまして、令和2年のデータが既に公表されておりますので、参考として併記させていただいているということでございます。このように、同じような形で、最終評価に使うデータと最新値を併記させていただいているところが数か所ございます。
2ページ目に移りまして、次世代の健康の領域でございます。こちらは目標項目が2つでございまして、その中にア・イ、ア・イと2つずつ項目がございます。一番上、目標項目①のアに関しましては、研究班で現在、参考となるデータがないか検討していただいているところです。現在データがございませんので、Eの評価困難ということになっておりますが、研究班での検討がまとまり次第、改めて御報告させていただきたいと思います。
そのほかの項目に関しまして、目標項目①のイがB*ということで①をまとめましてB*の評価、目標項目②は、アとイがそれぞれCとDという評価になっておりまして、まとめましてDという評価になっております。
3ページ目でございます。高齢者の健康に関しまして、こちらは6つの目標項目がございます。6番のグレーになっている欄でございますが、「高齢者の社会参加の状況」に関しましては、国民健康・栄養調査の大規模調査、4年に1回の調査で把握しておりました。令和2年の調査がコロナの影響で中止となったということも受けまして、平成28年からデータが更新されていない状況でございます。こちらに関しまして、データがございませんので、Eの評価困難ということになっておりますが、後ほど様式2を御説明いただく中で、参考となるデータをお示しいただきたいと思っております。
そのほか、5つの項目に関しましては、上からB*、A、C、A、B*という評価でございました。
4ページ目に移りまして、社会環境の整備に関する目標でございます。こちらも2つ、データが取れていない指標がございます。2つ目、「健康づくりを目的とした活動に主体的に関わっている国民の割合の増加」に関しましても、先ほどと同様に、国民健康・栄養調査の大規模調査で取っていたデータでございまして、28年以降、更新がないということで、E:評価困難ということになっております。
4つ目、「健康づくりに関して身近で専門的な支援・相談が受けられる民間団体の活動拠点数の増加」に関しましては、もともと把握していた方法で、現在把握できなくなっているということで、グレーになっております。参考として、現在取れるデータにつきまして、様式1及び様式2に記載させていただいております。
5つあるうち、2つがEということになってしまっておりますが、残り①、③、⑤に関しましては、C、B、Bという評価でございました。
5ページ目に移りまして、栄養・食生活領域でございます。こちらは5つの目標項目がございます。栄養・食生活領域に関しましても3つ目の、もともと中間評価のときに研究班で取っていただいていたデータが、現在取れておりませんので、参考となるものがないか、現在研究班で検討していただいているところでございます。研究班での検討がまとまり次第、改めて御報告させていただきたいと思いますが、E:評価困難という結果とさせていただいております。
その他、目標項目①、②、④、⑤の総合評価としては、それぞれ各指標・項目の平均を取りまして、C、C、B*、B*という結果になっております。
最後のページでございます。すいません。(3)の休養が入ってしまっておりますが、本日御評価いただくのは(2)の身体活動・運動の領域まででございます。身体活動・運動は目標項目が3つございまして、こちらは全て評価できており、Cが2つ、B*が1つという結果でございました。
簡単ではございますが、資料2に関しまして、6領域分の評価を御報告させていただきました。事務局から説明は以上です。
○辻委員長 どうもありがとうございました。
それでは、評価方法につきまして、横山先生から補足ございますでしょうか。
○横山委員 科学院の横山です。最終評価の方法についてで、資料1についての補足ですけれども、赤字で書いてありますとおり、データソースが国民健康・栄養調査である場合は、ベースラインの調査実施人数で年齢調整して検定を行うということに今回修正したわけなんですけれども、ただ、様式1のほうは、明記していない限りは普通の調整していない値ということで、本来は策定するときに目標項目、目標値を年齢調整して考えるのか、そうじゃないのかということは、最初に決めておくべき事項かと思います。そこがほとんどの指標で特に決められていなかったので、今回こういう形にはなったわけなんですけれども、これは最初の段階でしっかり決めておくべきことかと思います。
第二次だと、血圧なんかは4ミリ下げるという計算根拠の意味を考えると、これは年齢調整するんだろうなということは分かるわけなんですが、ほとんどはその辺りが分からないので、ぜひ次回の指標・目標を策定するときには、年齢調整して考えるのか、そうではないのかということをよく吟味して、その辺りを明確にしていただくことが望ましいのではないかと考えます。
ちなみに、年齢調整しない場合とした場合で、幸いにして、変化の向きが逆転しているというものがなかったようなので、生の調整しない数字で示し、調整した値で検定しても、向きが逆転ということはないので、その辺はよかったのかなと思いますけれども、場合によってはそういうこともあり得るので、その辺りをしっかりと決めておく必要があるかと思います。
以上です。
○辻委員長 ありがとうございました。
それでは、ここまでについて、委員の皆様から何か御意見ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、各担当委員の先生方から、それぞれの領域の最終評価の御説明をいただいた上で、その都度議論させていただくということにしたいと思います。本日2時間半、用意はしておりますけれども、審議事項が非常に多うございますので、一つ一つについて先生方から説明を10分いただきまして、その後、10分間で御審議いただくという形で進めていきたいと思いますので、どうぞ御協力お願いいたします。
ではまず、「社会生活を営むために必要な機能の維持・向上」のうち、「こころの健康」領域につきまして、西先生から御説明をお願いします。
○西委員 西です。どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございます。
こころの健康ですが、最初に書かせていただきましたように、「No health without mental health」、「こころの健康なくして健康なし」という、これは『ランセット』に2007年に載った論文のタイトルですけれども、以降、いろいろなところでキャッチフレーズのようにして使われておりますが、身体の健康とも相互に深く関わっておりますので、こころの健康それ自体も重要ですし、身体の健康や健康寿命延伸、健康日本21の大目標を達成する上でも、極めて重要なものであると考えております。
こころの健康は先ほど事務局の方がお示しいただきましたように、4つ目標値がございまして、それぞれ一つずつ御説明させていただきたいと思います。もう少し下に行っていただいてもよろしいでしょうか。
1番で評価状況、3番で評価の要因分析ということなんですが、1番のところに図とかが載っておりますので、要因分析も、1番の評価状況というところで併せて述べさせていただければと思います。
まず、1番の自殺者ですけれども、自殺者は2005年をピークに減少を続けておりまして、2016年の時点で既に当初の目標値を上回りましたが、そのため、中間評価時に目標が下方修正されまして、ですので、そのことがあって、最終評価時点において新しい目標値には到達していないという状況になっておりますが、当初の目標は既に達成しております。また、都道府県によって多いところ、少ないところはあるものの、全ての都道府県でこの間の減少というものを認めております。
下に行っていただけますでしょうか。その下です。図2にお示ししますように、性別・年齢階級別の図をお示ししておりますが、御覧いただきますように、年齢階級別では50代が多いと。そして、性別では男性が多いという結果になっております。男性のほうが自殺が多いというのは、ごく一部の例外を除いて世界各国共通した傾向になっております。
それから、20歳以上は全ての年齢階級でこの間、減少しているんですけれども、少し上に戻っていただけますでしょうか。ありがとうございます。15から19歳に関しては、残念ながら上昇しております。また、自殺は依然として我が国における15歳から39歳の死因の第1位となっておりまして、このことからも、公衆衛生上非常に、減少しているものの、まだまだ重要な課題であり続けているということが分かるかと思います。
では、下に行っていただけますでしょうか。ありがとうございます。次が気分障害・不安障害に相当する心理的苦痛を感じている者の割合の減少という目標ですけれども、これは国民生活基礎調査でK6という自記式質問紙で調べているものですが、それで心理的苦痛を感じている者の割合は、計画策定時が10.4%でしたが、その後、10.3%から10.5%の間を動いているのみでして、目標値9.4%を達成しておらず、ほとんど変化が認められていないという結果になっております。
下に行っていただけますでしょうか。図4にお示ししますように、性別でいうと女性のほうが、心理的苦痛を感じている者の割合は多い。そして、年齢階級でいいますと25から29歳をピークにして、65から74歳ぐらいで底になって、また上がっていくという、V字というか、横にしたS字といいますか、そういった図になっております。うつ・不安症圏が男性よりも女性に多いというのは、これも一部の例外を除いて各国共通した傾向になっております。
すいません。要因分析をちょっとだけ、2番をお話させていただきますと、減少していない要因なんですけれども、この間、患者調査とかで、うつ病の患者数とかは非常に増えておりまして、受診できていなかった方が受診できるようになっている、トリートメントギャップが小さくなっているということが、よかった要因として知られているんですけれども、にもかかわらず、全く改善傾向が認められない。トリートメントギャップが小さくなっても、メンタルヘルスのアウトカムはあまり変わらないというのは、これも各国、先進国に共通して見られている傾向でして、そのトリートメントギャップを埋める以外の方策、治療の質のギャップを埋めるとか、予防への注力とか、そういったことがより必要になってくるということが言われております。
3番ですね。メンタルヘルスに関する措置を受けられる職場の割合の増加という3番目の目標ですが、2015年にストレスチェック制度が創設されたことから、その職場の割合を100%とするという目標が設定されておりました。しかし、先ほど事務局の御発表にありましたように、約6割ということで、当初より明らかな増加傾向にはありますけれども、目標値の達成は困難な状況です。これは、50人以上の事業場においては9割を超えているんですけれども、小規模事業場になればなるほど、その割合が下がってしまっているということが要因として考えられます。
次に行っていただけますでしょうか。4番目の目標が、小児科医・児童精神科医の割合の増加ということで、こちらは順調に増加をしておりまして、目標を達成しているという判定になっております。ただ、児童精神科医の先生ともディスカッションさせていただいておりますが、学会調べの児童精神科医数とかは増えているものの、児童精神科医療に中心的に携わる医師がすごく増えているかというと、そういうことではなくて、実際、診療待ちの期間が非常に長くなったりというところに、まだまだそういう専門性を持った医師が不足しているということが反映しているので、引き続き、サブスペシャルティとしての児童精神医学の確立であったり、そういった専門人材の育成というのは、今後も必要と考えられます。
では、11ページに行っていただけますでしょうか。ごめんなさい。私のこれが違うんですね。今後の課題というところですかね。私の手元ので言ったので、ページが。そうですね。ありがとうございます。
要因分析のところは、もう一緒に述べさせていただきましたので、今後の課題というところを少し紹介させていただきますけれども、精神保健福祉領域におきましては、厚労省で精神障害にも対応した地域包括ケアシステムというのが政策理念として掲げられておりまして、精神障害の有無や程度に関わらず、誰もが安心して自分らしく暮らせる社会を目指すために、普及啓発、スティグマの減少、暮らし、医療その他、包括的な確保を目指していくというものですけれども、健康日本21に関係の深いところで言いますと、普及啓発、スティグマの減少というところで、今年度から新たに、2033年までに100万人の心のサポーター養成を目指すという事業が始まっておりまして、そういった事業の推進などは望まれると思います。
2番目ですが、健康日本21でも社会環境の整備、独自で目標が立っておりますけれども、特にこころの健康に深く関わるであろうと考えられる社会環境というのを、そこに列挙させていただいておりまして、これはなかなか一つ一つ達成が難しいものではあるんですけれども、しかしこういった社会環境の整備というのが、国民全体のこころの健康をよくしていく上での基盤となるもので、すごく重要なものであるということは認識しておく必要があるのではないかと思っております。
3番目ですね。この10年、それ以前から言われておりましたけれども、この10年でも、虐待に代表される逆境的小児期体験の心身にわたる広範な影響というのが、エビデンスをもって広く知られるようになってきております。これは、うつ病等、精神疾患はもちろんですけれども、数々の身体慢性疾患にも広範な影響を与えるということが知られておりますので、こういったものを調べていく指標であったり、対策であったりということが必要であると。より必要になってくると考えております。
4番目、先ほどから申し上げておりますように、身体健康と密接に関係しておりますので、こころの健康を専門とするものが、ほかの領域のお役に立てることがありましたら、ぜひと思っております。
それから、依存症、一番多いアルコールに関しては飲酒のところで述べられると思いましたので、あえて記載はしておりませんが、ギャンブル、薬物依存、ゲームに関しても、法律が制定されたり、ICD-11に病名が記載されたりということで、大きな動きがこの間ありまして、こういったところも注視していく必要があると考えております。
最後、ページをめくっていただきまして、コロナのところだけお話しして終わらせていただきたいと思うのですけれども、自殺者数は順調に減少していたものの、残念ながら昨年、恐らくコロナの影響と考えられるのですが、増加に転じております。自殺者数、特に50歳代男性が多いというのに反して、昨年増えたのは、若年者と女性において増えたということが知られておりまして、ここを注視していく必要があると考えられるということと、2番目の心理的苦痛を感じている者の割合に関しても、国民生活基礎調査での比較は現時点ではできないものの、重度の精神的苦痛を抱えている者の割合というのが大幅に増加している可能性が、今、出版されている論文で示唆されております。
それから、このファイルの作成の締切りには間に合わなかったのですが、先週の『ランセット』で、全世界でコロナの影響で5,300万人、うつ病の人が増えているのではないかという推計が出ておりまして、コロナの影響で、大幅にこころの健康に悪い影響が与えられている可能性というのが十分考えられますので、この点に関しても、今後十分な注意が必要であると考えております。
簡単ですが、以上です。
○辻委員長 西先生、どうもありがとうございました。
それでは、「こころの健康」領域につきまして、委員の皆様から御質問、御意見をいただきたいと思います。よろしくお願いします。
羽鳥先生、どうぞ。
○羽鳥委員 日本医師会の羽鳥です。西先生、どうもコロナのことに触れていただきまして、本当にありがとうございます。日本医師会でもいろいろな調査をしていて、コロナに入ってから、若い女性の方の自殺が増えているといういろいろな統計があったので、気にしていたところです。そして、こころの健康についてもコメントいただきまして、もし余力というか、スペースがあるならば、その辺をもう少し強調していただいてもいいという気がいたしました。
もう一つ、カジノを含めた依存症の問題、ギャンブル依存症の問題も大きなことでしょうし、それから、ゲームのことも気になるところですので、また強調できるところがあったらありがたいと思います。
以上です。ありがとうございました。
○辻委員長 では続きまして、松下先生、どうぞお願いします。
○松下委員 久里浜医療センターの松下です。西先生、どうも簡潔におまとめいただいて、どうもありがとうございました。
2点、一つは御質問させていただきたいんですが、小児期逆境体験について、とても大切な御指摘だと思いますが、それを定期的にモニターしていくようなことに触れられていたんですが、具体的にどういうモニタリングなどを考えていらっしゃるのかという点と、もう一つはお願いなんですけれども、不安・抑うつの部分と他領域との関連について、喫煙などは含まれていたのですけれども、多量飲酒と抑うつ・不安の関係はかなり強いものがございますので、ぜひ飲酒のほうも含めていただけるとありがたいと思います。
以上です。
○西委員 大変ありがとうございます。先生、お答えしてよろしいですか。
○辻委員長 大丈夫です。
○西委員 松下先生、ありがとうございます。2点目は本当に申し訳ございません。当たり前過ぎて記載が漏れていたようで、大変失礼いたしました。直接的に極めて関連の深いところですので、ぜひ載せさせていただきたいと思います。
それから、1点目に関してですが、これは様々な、それこそ国民生活基礎調査とかだと総務省とかも同意をいただく必要があるでしょうし、様々なステークホルダーの方々の同意もいただく必要があると思いますので、簡単ではないことは承知しておりますが、アメリカでは国勢調査のようなもので、親にACEを聞くような項目が入っておりまして、それでモニターするということをやっておりますので、私も第三次に向けた指標が何かないかというのを調べたりもしておりましたけれども、なかなかよいものが、まだACEに関しては見つけられていない状況でして、そのようなものがあるとよいかなと個人的には考えておりますということで、書かせていただきました。ありがとうございます。
○松下委員 ありがとうございます。
○辻委員長 では山縣先生、その後、北原先生の順にお願いします。
○山縣委員 西先生、ありがとうございます。子供の自殺についてです。先週あたりから生徒・児童の自殺が、2019年が317だったのが、2020年は415と、警察のデータだと思いますが、それに関しては今、どういう要因分析になっているでしょうか。
○西委員 ありがとうございます。むしろ山縣先生にも御意見を伺いたいところですけれども、様々な要因がもちろんあるとは思いますが、コロナの影響は当然考えなければならないところだと思いますし、コロナだけではなくて、災害のときとかも、もともとdisadvantagedなオペレーションのところで、格差が開く方向に災害というのが機能してしまうということがよく指摘されておりますので、そういったところも、例えばデジタルの教育を受けられない環境にあるとか、様々あるかと思うのですけれども、もともとそういう環境にあったところで格差がもっと開いて、よりつらい状況に追いやられるとか、そういった可能性はあるかと思います。
ただ、エビデンスをもって、何かこれということが言える状況ではないのですが、もし先生、ございましたら教えていただければと思います。
○山縣委員 これ、ちゃんと調べないといけないですよね。学校でメンタルに関しての健康指標が、全く健診の中でないというのが問題かなと思っています。今後ともよろしくお願いします。
○西委員 どうぞよろしくお願いいたします。
○辻委員長 北原先生、お願いします。
○北原委員 三菱重工の北原でございます。職域の件で御意見させていただきたいと思いますけれども、今後の課題のところで13次防に触れていただいていて、ストレスチェックの集団分析云々という言葉がありますけれども、ストレスチェックは一つの評価だけですので、職域のメンタルの不調の背景にある過重労働の対策の話とか、ハラスメントの話なんかも、ほかの項目で盛り込まれる部分ではありますけれども、ここでも過重労働対策に取り組むという言葉を入れていただくと、よりいいかなと思いました。
それから、50人未満の事業場に対して、助成金制度のことに触れていただいていますけれども、助成金制度にたどり着くまで、50人未満の事業場の方は、なかなかあそこまで行く事業場が少ないかもしれませんので、より相談しやすいところとして、地域産業保健センターがありますから、そういったところの記載もあるとよろしいのかなと思いました。
以上、2点でございます。よろしくお願いいたします。
○西委員 ありがとうございます。地産保センター、それから過重労働、ハラスメント、追記させていただければと思います。ありがとうございます。
○辻委員長 あとお一人、お二人、お受けできるかなと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、「こころの健康」領域につきましては、取りあえずここまでということにさせていただきまして、次は「次世代の健康」領域ということで、山縣先生、お願いいたします。
○山縣委員 では、画面共有して始めたいと思います。
これは背景としては、子供の生活習慣に関して、特に運動不足だとか肥満といったものが増加しているということが問題で、全体としては、この右にあるように、成育サイクルが非常に生涯の健康について重要だということが、昨今言われているということが背景でありますし、このDOHaDの概念というのは、生活習慣病予防では非常に重要なものであると。
その中で、先ほどありましたように、目標値の状況に関しましては、目標を達成したものはなく、最終的にはBとD、悪化しているものが一つずつという結果であったということであります。
目標設定の考え方は、成育サイクルというものを少し強調した形で、これまでのを主に組み込んでいったらどうかなと思っているところです。胎児期からの生涯を通じた健康づくりの推進ということです。
まず、これまでありました、朝・昼・夕の三食を必ず食べることに気をつけて食事をしている子供に関しては、中間評価以降のデータの算出がないために、評価困難ということになっております。今後これに関して、どのような指標をつけていくかということが検討材料ということになります。
次に、運動のことです。スポーツを習慣的に行っていない子供の割合を減少させるということで、1週間の総運動量が60分未満の子供の割合で、小学校5年生の男子と女子ということですが、これは両方ともベースラインからは減少しているけれども、中間評価から比べると微増しているということで、目標を達成しているけれども目標達成が危ぶまれるという判定であります。
特に女子の運動量が少ないということで、これが時間の分布を見ているものですが、男子に関しては1週間当たり中央値が60分ぐらいで、WHOが出している基準に何とか乗っかっているのですが、女子に関しては非常に運動量が少ないということで、大きな課題になっています。
2番目の適正体重に関しましては、これは低出生体重児の割合で、8.2で切っていますので、下がっているように見えますが、基本的にはここ数年、横ばいというところでありまして、9.5前後でずっと来ていると。1980年あたりを底に、そこからずっと増加してきていますが、ここのところ横ばいになっているというところであります。
一方、肥満の子供についてです。小学校5年生の肥満傾向に関しましては、目標値の傾斜と逆の方向に行っていて、増加していて、しかもベースラインからの相対的変化率が11.4%ということで、悪化しているという、非常に大きな課題が残ったということになります。
さて、全体としては、この母子領域に関しては、子供の領域に関しては、健やか親子21の第1次、第2次と連携して、協同して進めていくということが基本になっているところでありまして、取組の細かいことについては、評価シートを御覧ください。
その中で、要因分析ですが、まずは朝・昼・夕の三食を必ず食べることに気をつけている子供の割合については、指標の算出がないので、これは考えていかなきゃいけない。これをどのようにしてやっていくかというのは、まだ今、アイデアのないところであります。
それから、運動に関して、これが横ばいもしくは悪化しているのですが、その一つの要因として、昨今のインターネット利用、ゲームに費やす時間の増加というのが、子供の生活全体の時間を圧迫していると。それは睡眠時間、運動時間、勉強の時間、その他の時間を圧迫しているために、起きていることだと分析をしています。エビデンスは日本人の子供でも幾つもあります。
適正体重につきましては、低出生体重。これは、先ほどお話ししたように悪化は抑制できているわけですが、これに対しての要因分析について、幾つか明らかにはなってきているわけですが、一番大きいのは妊娠中の体重増加という問題でありました。それから、妊娠週数が短くなったということが要因だったわけですが、さらに分析を行っていく必要があるだろうと。
児童の肥満については、災害後のことを考えたり、最近の増加を考えると、食事というよりも、運動不足が大きな問題であろうと思っています。例えば山梨県の場合、少子化が結構大きな問題で、小学校の統合によって、これまで歩いて通学できていた子供たちが、スクールバスに乗らなければいけなくなった。そうすると、片道15分、往復30分、1週間で2時間30分の運動時間が奪われるということになって、課題としては非常に大きいだろうと思っています。そういう中で、生活習慣に関して悪化しているものについては、やはり運動、身体活動量という影響が大きいので、それをどのように改善していくかということを考えていかなければいけないと思っております。
今後の課題ですが、まずは、子供が健康でいるためのモチベーションとなるような、夢とか希望が持てる社会の構築。これは、次に子供の貧困の問題を書いていますけれども、子供の貧困の問題というのは、経済格差が健康格差に関連するというだけではなくて、経済格差というのが子供の夢とか希望をむしろ奪ってしまっているといったことも、貧困研究の阿部彩先生たちの研究では分かっているところですので、子供たちが健康でいるためのモチベーションとなる社会の構築というのは、非常に重要だと思います。
それから、DOHaDについては、最近非常に啓発が進んでいて、妊娠中、それから新生児期の環境に関して、様々な取組が行われるようになってきているわけですが、さらに、将来どういうところでの関連が出てくるのかといったことをエコチル調査などで明らかにしていって、科学的根拠に基づいた推進を行っていく必要があると。
それから、先ほどの西先生のところでありましたが、子供のメンタルヘルスに関しては、自殺者が2万人ぐらいまで減ったにもかかわらず、子供の自殺は増えていて、未成年の自殺は数百人ではあるんですが、ここのところ児童・生徒の自殺が、2019年に比べて2020年が、警察報告でも25%増えているというのは、かなり大きな問題かなと。喫緊の課題として考える必要があると思っています。
それから、ネット、ICTとかゲーム障害がICD-11に掲載されたということもあって、これについて、ICTの活用というのは学校の中ではGIGAスクール構想などで非常に推進されている一方で、それに対しての健康課題というのは学校も非常に大きく認識していて、地域の中ではアウトメディアの活動などが行われているということであります。
今お話ししたようなことが今後の取組ということになりますが、子供の場合は、やはり家庭、地域、学校が連携した取組を行うこと、それから、これまで子供に関しては、必ずしも十分なエビデンスがなかったものが、21世紀出生児縦断調査とかエコチル調査によって、かなり詳細なことが分かってきました。特にDOHaD関係については、幾つか論文が出ていますので、そういったものをしっかりと活用しながら、対策を進めていくことが必要だと思います。
新たな課題、メディアの利用と子供の健康に関して、これをどのように対応していくか。こども庁ができると、恐らく学校とか厚労省とか関係なく、子供に関してはそこで全部やっていくのではないかということを聞いておりますので、そうしてくると、学校に上がるまでは地域で、そこからは学校で、みたいな話が、健康については相当一本化されて、こういった取組についてもやりやすくなるのかなとは期待しているところであります。
今後、「早寝早起き朝ごはん」に関しては、続けて行っていくということ。運動についても、体力向上に向けた取組の調査はあるのですが、それに対してきちんとPDCAサイクルを回すようなことはやっていく必要がある。それから、児童・生徒が自発的に取り組めるような環境の整備。休日等の部活動については、地域のスポーツの環境を整備していく必要があるということ。それから、幼児期の運動、これは遊びというのが非常に重要でありますが、そういったものに関しての重要性を啓発していくことが必要だということになります。
このように、これまでも日本スポーツ協会がアクティブ・チャイルド・プログラムをしていて、研修会を今年もされていますが、そういったものを活用して、それを支援する人たちをつくっていきながら推進していくということになろうかと思います。
今後も健やか親子21、それが法的に組み込まれた成育基本法の中で、健康日本21とともに協同して推進していくということが必要になってくると思います。
適正体重に関しては、これまでお話ししたとおりでありまして、DOHaD、それから、子供の肥満が将来の肥満につながるということを踏まえた対策が必要ということになります。
最後に、新型コロナについてですが、ステイホームによる生活習慣の乱れ、ゲーム依存、それから、こういった健康危機を経験した子供の精神発達、社会性の発達の将来の健康への影響といったものを明らかにして、対策を取っていかなければいけないと思っています。
最後に、先生に御質問した子供の自殺の増加というのを、どのように考えるかと。このカウンターベイリング・リスクというのを、グラハムたちが『RISK vs. RISK』の中で言っていて、いわゆる治療に対する副作用と同じように、様々な健康対策というのがカウンターベイリング・リスクとして、その対策の効果だけでなく、リスクとしてあると。こういったものをきちんと踏まえて行っていく。一方で副効果として、いいこともたくさんあるわけですから、そういったものをしっかり分析して、対抗リスクをなるべく少なくするような健康危機管理対策というのが必要かなと思っています。
以上です。
○辻委員長 山縣先生、どうもありがとうございました。
それでは、今の報告につきまして、委員の皆様から御質問、御意見をお願いします。
まず澤田先生、その後、津下先生。
○澤田委員 ありがとうございます。山縣先生、とても詳しく教えていただきまして、勉強になりました。先生の今日のお話の中には、身体活動・運動分野に関する部分がたくさんございましたので、一つは、これは山縣先生に限らず、各分野の先生方みなさまにお願いをさせていただきたいことが1点と、あとは山縣先生の御発表に関してコメントをさせていただければと思います。
1つ目のお願いは、ワーディングといいましょうか、言葉の問題で、難しいところではあるのですけれども、「身体活動」と「運動」の用語の使い分けに関してです。先ほどの山縣先生のお話は、「運動」に関する内容で、定義上はよかったと思います。私たちは「身体活動」と「運動」の使い分けを気にしています。その理由は、日本人の身体活動量が低下している一つの理由が、「運動」の低下だけではないということでございます。
例えば、児童の肥満は運動不足もございますけれども、「運動」というのは意図的に行うもので、「余暇身体活動」と言い換えられます。肥満の場合はエネルギー消費の問題になってくるとなると、大切なのは身体活動全般になりますので、「身体活動不足」という表現が適切だと思っています。この後、改めて運動と身体活動の定義のお話もさせていただきますので、計画を立てていただくときに、これは「運動」なのか、これは運動も含めた「身体活動」なのかということをお考えいただければ、ありがたいと思います。
さらに、「座位行動」という新たな概念が出てきておりますので、座り過ぎの問題も計画の中に入れていただくことを御検討いただければ幸いです。
2つ目はコメントですが、子供の頃の身体活動というのは、将来の健康状態に影響があると考えています。ですから、とても大切な時期で、一つは教育かもしれませんし、先生が今回示されておりますDOHaDが、何か遺伝子発現に関係するのかもしれないと思っています。幼児期か低学年か分かりませんが、その辺の教育、あるいは遺伝子発現が、成人の生活習慣病、高齢者の生活習慣病まで響いてくる可能性があると考えています。現在、アクティブガイドの改定をしておりまして、今のところ日本は幼児期の運動指針しかございませんけれども、子供の身体活動基準を提案していきたいと考えておりますので、その辺も含めて、ぜひお子様の身体活動・運動の奨励にますます取り組んでいただければと思います。よろしくお願いします。
以上です。
○山縣委員 ありがとうございます。今の運動指針の話、先生にも聞こうかと思っていて、あれは名前というか、あれと別個につくるのか、要するに活動指針のようなものがあるといいなと思いましたので、どうぞよろしくお願いいたします。
○澤田委員 よろしくお願いします。
○辻委員長 津下先生、どうぞ。
○津下委員 ありがとうございます。山縣先生、とても分かりやすい御説明をありがとうございます。
低出生体重児、DOHaDの問題、かなり社会的にしっかり認知されて、低出生体重児の減少が改善に向かったというのは、非常にすばらしいことだなと思いました。
一方、胎児期からの生涯を通じた健康とか子供の希望とかを考えた時に、家族、親、学校のかかわりが大事なんですけれども、とくに家庭の問題などもあり、そして今、妊産婦は死因で自殺が一番多いとか、コロナ禍で増えているという状況もあります。次世代の健康の中に妊産婦や育児、そしてシングルの家庭が増えてきたとか、またコロナで虐待が家庭内で増えたとか、様々な子供を取り巻く環境が厳しい状況があります。
自治体のサポートは入っているんですけれども、その辺りについて、健康日本21でももう少し取り上げていく方向はどうなのかなということを思いますがいかがでしょうか。
それから保育の問題で、保育園を増やそうということで増やしたんですけれども、結局、園庭もないビルの中で保育室が増えてきました。子供の環境的には保育園格差なども出ている中で、どう運動や体づくりとかに取り組む支援をしていくのかというのが、新たな問題として起こったような気がしています。子供の健康は子供の努力ではつくれない部分もあるので、育児の環境面などをもう少し取り上げて、課題として挙げてみたらどうかなと思ったんですけれども、いかがでしょうか。
○山縣委員 ありがとうございます。子供に関しては、生活習慣病に直接関わるような問題だけは、今ここに入っているわけですが、先生言われるように背景としては、様々な家庭環境を含めて、あります。
一方で、成育基本法に基づく成育医療等基本方針の目標値を立てていて、今、先生が言われているようなことに関しては、指標の中に一応入れているところなので、それをどう連携していくかと。
あと、先ほどちょっとお話ししましたが、こども庁のようなものができたときに、総合的に包括的に、子供に関しての育児・健康というのを一体化してできるのではないかと期待はしておりますが、今後の課題だと思っています。ありがとうございます。
○津下委員 ありがとうございます。一方、子供だけを切り離して指標化した場合、子供の運動と親の運動、親世代の食事とも絡んでいるので、子供だけの問題じゃないという認識も必要かなと思ったりしました。
以上です。ありがとうございました。
○山縣委員 ありがとうございます。
○辻委員長 それでは、瀧本先生、その後、中村先生、お願いします。
○瀧本委員 ありがとうございます。山縣先生、御発表ありがとうございました。
低出生体重児の割合については、私もずっと課題として考えてきているんですけれども、なかなか目に見えた減少というのが難しいという状況があるかと思います。ただ一方で、出生体重だけを切り口にしてしまうと、早産なのか、それとも、正期産だけれども胎内での発育が十分でないのか、切り分けが難しいかなというのは常々感じております。その辺りは、先生はどのようにお考えでしょうかというのが1点と、あと、この3月に、15年ぶりに妊産婦のための食生活指針がリバイスされて、今後それが広まっていく中で、どのように評価できるかというのも考えていけるといいのではないかと思いました。
以上です。
○山縣委員 どうもありがとうございます。先生おっしゃるとおりで、基本的に細かくいったときに、低出生体重児が胎児の問題なのか、母親の問題なのか、それ以外なのかということにしっかり分けていかないと、その対策はできないと思っておりますので、全体として、これを指標に置きながら、分析のときにそういうものを加えて対応していくことかなと思っております。先生のおっしゃるとおりだと思います。
それから、食事に関してもおっしゃるとおりで、これからそういうものをどう活用していくのか、これまでも活用してきているものですが、さらに活用していくかということについても、健やか親子21のほうで、これまで栄養に関しての指標としておりますので、それも含めて検討していきたいと思います。どうもありがとうございます。
○瀧本委員 ありがとうございました。
○辻委員長 中村先生、お願いします。
○中村委員 山縣先生、どうもありがとうございます。胎児期からの生涯にわたる子供の大人になってからの健康づくりを今後日本でもどんどん推進していくべきだと思います。経済格差、また健康格差が進む中で、低所得の妊婦など、社会的にハイリスクな集団に対して、きちんと対策をやることが、将来のいろいろな子供の健康問題だけじゃなくて、DVとか虐待の予防にもつながっていくので、妊娠中からそういったハイリスクを把握して、必要な対策の実施と出産後まできちんと見守る体制を整備することが重要と考えます。
さらに妊娠中、例えば低栄養の問題とか、喫煙の問題、さらに母乳による授乳とかは、どうしても低所得の人に、問題が集積している可能性が高いので、アメリカで取り組まれているインセンティブ療法を用いて妊婦の行動変容を、妊娠中から、母乳が終わるくらいの時期まで働きかけていくような対策も併せてやっていかないといけないんじゃないかなと感じているんですけれども、いかがでしょうか。
○山縣委員 おっしゃるとおりだと思います。特に妊娠中に関しては、基本的には産科領域でしっかりと見ていただいているということで、実は地域はそんなに疾患に関しては関わっていなくて、ただ逆に、家庭環境だとかそういうものというのは、病院がしっかり関わらないので、そこの部分を早く捕捉して、地域が連携してサポートするという仕組みで、これまでずっと地域では来ているんですが、それがうまくいっているところと、そうでないところがどうしても出てきていて、それは情報の共有がしっかりできていないというのが一つの要因になっていると思いますので、今、先生が言われたようなところを含めて、具体的な対策についても御示唆いただきましたので、今後、成育基本法の中で、またそういう問題が多分、重要に検討されていかなければいけないところだと思います。ありがとうございます。
○中村委員 ありがとうございます。まさに公衆衛生と地域医療のコラボレーションを強化して解決を図るという意味で、一つのモデルとなるテーマじゃないかなと思いますので、よろしくお願いします。
○山縣委員 ありがとうございます。
○辻委員長 それでは、最後、山本先生でお願いします。
○山本委員 山縣先生、大変ありがとうございました。歯科医師会の山本でございます。
食育という観点でいいますと、私たちは子供に対する、まずは食育の教育ということと、高齢者の食支援という2つの側面を考えています。その中で、今回の、子供の頃からの肥満というのが生活習慣病につながるというテーマでございますけれども、特に生活習慣病の中での糖尿病は、歯周疾患とかなり関連性が強いと言われていますが、歯周病に対する対策としての教育といったものが、小中学生でちょっと足りないのではないかなという気がしております。
それともう1点、国民健康・栄養調査でも、左右の奥歯でしっかりとかめないと回答する若い方が多いということで、そういった点の食育教育というものを、小中学生でしっかりしていただけるようにすればいいのではないかと考えていますが、いかがでしょうか。
○山縣委員 ありがとうございます。子供たちの虫歯もどんどん減ってきて、減ってくると同時に、多分、地域格差も小さくなっていくと思うんですが、今おっしゃったような歯周に関しては、成育基本法の指標の中でも、東京医科歯科大の相田先生に御協力いただきながら、歯周病についてどのようにして考えていこうかということを検討しているところでありますし、それから、歯科の先生にいつも教えていただくのが、高齢者の誤嚥性肺炎は、離乳食のときに嚥下の機能をしっかりつけていないからだということをよく言われていて、まさにそういうことが将来の疾患に関係するということも、しっかりと啓発しながら、その辺りのところを検討していくということが必要と思っておりますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
○辻委員長 どうもありがとうございました。
続きまして、「高齢者の健康」領域でありますけれども、吉村先生と近藤先生のお二人に御担当いただいております。
まず、目標項目1から5に関しまして、吉村先生、御説明をお願いします。
○吉村委員 よろしくお願いいたします。吉村です。先ほど辻先生からお話ありましたように、1から5までを私が、そして6番を近藤先生にお願いしております。
まず、1番の介護保険サービス利用者の増加の抑制についてなんですが、31ページの図1を御覧ください。これから見ますと、大体、介護サービスの利用者の抑制というのが目標なんですけれども、目標としては、657万人というのが目標値として掲げられておりまして、現在、最終評価時では567万人ということで、これを伸ばしていきますと、目標値をやや上回るということになりますが、全体として、目標値に達してはいないが改善傾向、最初に伸ばした線よりも少し下側にあるので、改善傾向にあると判断いたしまして、B*とさせていただきました。
ここで、利用者の増加の抑制というものが望ましい抑制なのか、つまり、通いの場などへの参加を尊重した、いい感じの抑制なのか、それとも適切なサービスを受けられない人がいるという望ましくない抑制なのかについての現状把握が必要かと思われます。ここは近藤先生からもお話があるかもしれません。
続きまして、認知症サポーター数の増加なんですが、32ページ、図2を御覧ください。もともと認知症に関しましては、最初の目標が、認知機能低下ハイリスク高齢者の把握率の向上というのが設定されていたんですが、その把握のベースとなります基本チェックリストを、介護予防事業で基本的に実施しないという方向になったために、新たなる指標の策定が急がれておりました。
そこで、認知症サポーター数の増加に中間評価の時点で変更いたしまして、目標値を1,200万人と設定いたしましたところ、この図のように、実績値が1,264万人ということで、目標値に達しております。ですので、Aと判断いたしました。
認知症なんですが、ただし、ハイリスクの高齢者の把握というものは、しなければいけないと考えておりまして、ここに関してはいずれ、どのぐらいハイリスクの人がいるのかというのが分からないと予防対策も立てにくいと思いますので、ここについては今後も課題となってくる問題であるかと考えております。
次、ロコモティブシンドロームに行きます。ロコモティブシンドロームを認知している国民の割合の増加なんですが、これは目標値を80%に設定しておりました。図3を御覧ください。図3を見ますと、調査が開始した当時がもともと低い、17%ぐらいで、その後ぐんぐんと伸びまして、設定時は44%まで行っていたんですが、その後、横ばいに転じまして、最終評価時でも44.8%ということですので、50%の壁がなかなか超えられないということで、Cと判断いたしました。
これにつきましては、高齢者の方々、例えば70代以上女性については70%以上の認知率があるということなんですが、若い世代に関しての関心が薄いという問題があります。そこで、日本整形外科学会などが中心となりまして、若い世代に向けてCMを打ったり、いろいろ努力をしていると聞いたんですが、若い世代中心にPRを打つと、今度は高齢者の認知率が下がるという、どっちつかずといいますか、目標まで達するのはなかなか厳しかったという状況だと伺っております。
次に、低栄養傾向の高齢者の割合の増加の抑制ですが、自然増による割合の増加を見込んで、令和4年度目標値22%に設定しておりました。図4を御覧ください。ずっと下がっておりまして、BMI20以下の高齢者の割合は、目標値を達成しております。22%よりも下がっておりまして、Aと判断いたしました。
これに関しましては、低栄養、低体重というものに対して、日本老年医学会などが中心となりまして、フレイルという概念が導入されまして以来、高齢者の低栄養に関する啓蒙活動でありますとかが進んだということは、一つ大きな要因として考えられます。また、設定自体がやや緩かったというか、最初から17%でしたので、楽々達成してしまったんですけれども、ただ、その時点で少し下めに設定してもよかったのかもしれませんが、いずれにしても、フレイルという概念が出てきたことによる医学会での取組というものが、成果を出しているということは確かではないかと考えております。
最後に、足腰に痛みのある高齢者の割合の減少につきまして、これも国民生活基礎調査の結果から、男性と女性とがそれぞれ別々の目標値を設定しておりますが、まず女性に関しましては、既に目標に達していると判断しております。このラインよりも下に推移しておりまして、女性についてはA。男性についても、下がり傾向にはあるんですが、目標設定よりはやや上にあるために、Bと判断いたしました。そこで、全体としてはBと判断いたしております。
それぞれの取組に関しましては、たくさんあるので、資料3-2を御覧いただければいいんですが、一つ特筆すべき状況といたしまして、ロコモ、それからフレイルが手を結ぶといいますか、学会からの方々がシンポジウムを開催したんですが、そのシンポジストが中心となりまして、フレイル・ロコモの予防ということでワーキンググループを立ち上げて、大きな流れとなりまして、フレイル・ロコモ予防宣言という形で、将来の予防活動に学会挙げて取り組もうという取組が現在進んでおります。これは大きなことだと思います。
あとは、学会主導のパンフレットあるいはガイドライン、ガイド、そのようなものの出版が多く見られております。それから、コロナに関する取組といたしましては、そのときにはフレイルについての学会の取組については、まだお返事いただけていないんですが、日本整形外科学会からは、コロナに対する取組として、そういうプロジェクトを立ち上げて全国的な調査の実施を開始したというお返事をいただいております。
私の1から5までは、説明は以上とさせていただきます。6について、近藤先生、どうぞよろしくお願いいたします。
○近藤委員 それでは、6の社会参加のところにつきましては、35ページに戻っていただいていいでしょうか。この辺りですね。
まず、もともと使う予定だった数値が、国民健康・栄養調査の中の大規模調査年に取っていたデータなんですけれども、それが行われなかったということで、評価が困難ということになります。
代わりに使えそうなものを探しましたところ、今、映していただいている高齢社会白書の中に出ている内閣府の調査の中に、現在行っている社会的な活動で、左の自治会から、生活、子育てなどの活動まで、何種類か聞いていて、右端に、特に活動していないというところがございます。それを見ていただきますと、前期高齢者も後期高齢者も、どこを見ても令和元年度のほうが、参加していないという方が少ないということがありますので、これは10年ではありませんけれども、ここ数年間の間に社会的な活動に参加する高齢者は増えてきたとみなせるのではないかと考えました。
もう一つ、私どもが取り組んでおります日本老年学的評価研究のほうで、これは全国サンプルでも何でもありませんが、2010年と16年の2時点、御参加いただいた自治体の高齢者の社会参加状況を、ちょうど論文にまとめたものがあります。それによりますと、この10年から16年にかけて、まず就労している高齢者が、自治体によってばらつきはありますけれども、4%から9%増えていたり、それ以外のスポーツの会とか、趣味の会とか、そういうところに参加しているよと答えた方も、後期高齢者で5%から11%増えているという数字も得られております。
このような、最初に評価を意図していたものが得られなかったということで、代わるデータを探したところ、いずれも参加は増えているようだとみなしていいのかなと考えております。
あと、1ページか2ページ上に戻っていただいて、折れ線グラフのところをいいでしょうか。吉村先生から、認定率のことが触れられました。これも私どもが60自治体ぐらいを対象にやっているデータで、総合事業というのが始まってから、全国的に認定率の伸びが頭打ちになっているというので、その内訳をいろいろ見たところ、特に低下が著しい自治体をピックアップしてみますと、青い線ですけれども、総合事業が始まってから、とても誤差とは思えないほど劇的に、後期高齢者の認定率が下がってきております。
特に、必要な介護サービスを受けられなくなったという声が、社会問題化はしていないと思いますので、政策が上手に効いて、必要な人たちが収まっているのか、俗に水際と言われるような何かがあるのか、このデータだけでは分からないので、質的な評価は要るのではないかということを申し上げたということです。
あと、社会参加、私が担当したところの関連要因という意味では、この間、高齢者の就労支援が政策的にも進められてきましたし、総合事業など、社会参加しやすい環境づくりというので、全国的に通いの場づくりが考えられて、厚労省老健局のデータを見ますと、毎年数%ですけれども整備が進んで、社会参加する通いの場に通う高齢者が増えてきているというデータが出ております。これらから、社会参加がしやすい環境づくりが進んで、じわじわと高齢者の社会参加が促されているのではないかなと考えます。
あと、コロナの影響については、これは高齢者だけではありませんが、特に高齢者は初期に死亡率が高いということが報じられたこともあって、社会参加を控えた高齢者がかなりの数に上る。私どもの調査では、半数ぐらいの方たちが、19年に比べると、20年の緊急事態宣言下で外出を控えている、参加を控えているということが得られており、そういう人たちで、要介護リスクやフレイルのリスクが増えているということが分かっておりますので、これが長期化すると、大変心配な状況だと考えております。
私からは以上です。
○辻委員長 ありがとうございました。
それでは、委員の皆様から御質問、御意見いただきたいと思います。時間の関係で、3名程度いただければと思いますが、いかがでしょうか。
まず、西村先生。
○西村委員 西村でございます。呼吸器を担当している西村でございます。
吉村先生、近藤先生、ありがとうございました。お二人の先生に関係あるお話と思います。介護者の介護保険サービス利用者数の抑制に関して、望ましい抑制と望ましくない抑制という話がありました。また近藤先生から、要介護の認定率が、むしろ低下してきているというお話がありました。この辺の内容というか、具体的な背景というのは、僕は大変重要だと思うんです。
といいますのも、ちょっと近藤先生も触れられましたように、介護する側の人材の不足という問題が、少なくとも私の見聞きする範囲では、深刻な問題としてありますから、単に介護をする利用者数の推移を追ったり、あるいは認定率を追うというだけでは、なかなかその背景が見えてこないのではないかと思うので、今後に向けて、どういった方向の検討をしていけばよろしいかというあたりの御意見を伺いたいなと思いました。
以上です。
○吉村委員 おっしゃるとおり、私も数だけでどうこうというのは非常に難しいと考えておりますが、私の後で近藤先生から御発表いただいた内容で、外に出る人が増えているとか、どちらかというと望ましい方向で減っているんじゃないかという御意見がいただけましたので、私としては大変納得した次第でございます。
近藤先生、よろしくお願いします。
○近藤委員 先ほど御紹介していなかったデータで、日本老年学会がステートメントを出しておりまして、この間の日本の高齢者のデータ、例えば体力テストの数値とか、いろいろな身体指標等を見てみますと、15年間で5歳ぐらい若返っているというデータが出ており、これはかなり異なったグループからも同じような結果が出ているので、高齢者が若返ってきているといいますか、体力等がついてきているというのは間違いないだろうと考えています。
そうしますと、加齢とともに機能が落ちてきて、要介護状態になると考えますと、10年単位で見ると、高齢者が若返って元気になって、その結果、認定率が下がってくるというのは、あり得ることではないかと思います。実際、先ほどの急激に下がっている自治体の中にも、社会参加することを積極的に推し進めている自治体も含まれていますので、介護予防政策の効果の現れという側面もあると考えています。
ただ、いろいろ聞いても、「うちのところでそういうことをやっている覚えはないんだけど」という保健所も見つかって、だから、全て喜んでいいのかどうかは慎重に判断する必要があるかなと思っています。
以上です。
○辻委員長 今、3名の方から手が挙がっています。澤田先生、福田先生、羽鳥先生。それぞれ手短に1分程度で御発言いただいて、吉村先生と近藤先生に、まとめてそれぞれお答えいただくということでお願いします。
○澤田委員 承知しました。私から吉村先生と近藤先生に、身体活動・運動分野からのコメントをさせていただければと思っております。
現在、厚生労働科学研究でアクティブガイド、身体活動の指針と基準の改定をしておりまして、今まで有酸素運動に比較的特化したガイドラインでしたが、筋力に関する基準の作成に取り組んでおります。そして、高齢者に特化した身体活動の基準もつくれないかという、2つのアプローチをしておりますので、御報告させていただきます。
そして、近藤先生におかれましては、近藤先生の研究室から、スポーツを観戦することで健康に貢献するという論文を出されておりますけれども、今までスポーツ、身体活動・運動の分野では、実践するということに視点があったんですけれども、見る、あるいは応援するということが、例えば高齢者の方の孤独ですとか、閉じ籠もりですとか、社会的なつながりとかにつながる可能性があると思っておりますので、身体活動・運動分野、するだけではなくて、見る、応援するといったところにも取り組んでいきたいと考えておりますので、ぜひ御指導いただければと思います。
以上です。
○辻委員長 では、福田先生、お願いします。
○福田委員 ありがとうございます。私からは、ロコモティブシンドロームを認知している人の割合について、質問させていただきます。
前半と後半の部分で、大きく認知率が変わっています。先ほど吉村委員からは、啓発活動の対象者が変わっているからかなというような御発言があったかと思いますが、調査方法そのものが大きく違うのではないかとも思っておりますので、その辺のところの考察もしていただければと思いました。
以上です。
○辻委員長 羽鳥先生、お願いします。
○羽鳥委員 吉村先生にお伺いしたいんですけれども、ロコモの認知度については、僕も同じことを疑問に感じました。
もう一つ、コロナ後ということで、コロナ感染症下で、日本医師会で津下先生、澤田先生も入っていただいているんですけれども、健康スポーツ医部会というところで、いろいろな調査をしてきました。それから整形医会の調査でも、コロナでロコモ・フレイルの状態が続いているということも出ており、論文になっているかと思いますので、参考にしていただければありがたいなと思いました。
それから、近藤先生に、コロナ以前においては介護度がよくなっている、また、15年ぐらい若返っているのは何となく納得できるんですけれども、今回の評価がコロナ以前ということですから、それでいいのかもしれませんけれども、コロナを経て、コロナの下では非常にひきこもりが増えて、そして介護度が落ちていますよね。認知症も非常に進行していますよね。その辺の評価をどこかできちんと述べていただかないと、うまく現状を表せないんじゃないかなと感じました。
以上です。
○辻委員長 それでは吉村先生、近藤先生、それぞれお願いします。まず、吉村先生からどうぞ。
○吉村委員 ロコモの調査の仕方が変わっているんじゃないかというお話なんですが、これは、33ページ図3の出典のところで、平成24年から26年は日本整形外科学会によるインターネット調査、そしてその後が、「運動器の10年・日本協会」によるインターネット調査と書かれておりまして、確かに同じインターネット調査ではありますが、全く同じかと言われると、異なっております。
ですが、もともとの日本整形外科学会の調査のやり方を引き継いで運動器の10年が行われておりますので、主題が変わっているんですが、それほど大きな違いはないかと思っているので、結局、今までほとんど知られていなかったのが、ぐんと伸びたんですけれども、45%ぐらいでずっと足踏み状態になっているというのが現実のところかと考えております。
○辻委員長 では近藤先生、お願いします。
○近藤委員 まず、スポーツを見るだけでも効果があるかもしれないというのを、横断分析で報告させていただいた段階です。今後、縦断でもそのような関係は確認できるかどうか、分析してまいりたいと思っています。もし本当に有効だとしたら、今後はスポーツをやっている人の割合だけではなくて、観戦している人の割合というのも、ひょっとしたらモニタリングする意味があるのかもしれないと感じております。
それから、2番目の羽鳥先生の御指摘はごもっともで、私もこの間、いろいろな自治体の担当者と話すときに、認定率は上がってきていませんかと聞くんですけれども、今のところ、認定率が目に見えて上がってきていますという保健所は、ほとんどまだないというのが、私の今までヒアリングしたところでは、そんな実態があります。これが認定に行くこと自体、控えているということだとすれば、緊急事態宣言とかが明けた後、いよいよ申請に来るようになって、急増するということが今後起きてくる可能性もあり得ると考えております。
以上です。
○辻委員長 ありがとうございます。
それでは、次に移らせていただきます。「健康を支え、守るための社会環境の整備」ということで、近藤先生、御説明をお願いします。
○近藤委員 それでは、まず数値につきましては、51ページになるでしょうか。目標に達した項目はゼロ項目、現時点で達していないが改善しているが2項目、変わらないが1項目、評価困難が2項目という状況でした。
実態ですけれども、まず図の1を見ていただきますと、お互いに助け合っていると思う国民の割合は、中間評価までは順調に上がっていたんですけれども、中間評価以降、下がり始めていまして、最初の数字に近づいてしまっているというのが今の状況でございます。
②は、健康づくりを目的とした活動に主体的に関わっている国民の割合というものです。これが、残念ながら、あまり期待した形でいっていない面がございます。
次の③の企業の数ですけれども、これはこの間、大変な勢いで伸びてきております。健康会議等でモニタリングした数値を見ても、数値目標を超過達成しているというのがあります。ただ一方で、企業というのが日本で、たしか10万社ぐらいあるんですよね。そのことから考えると、この目標で十分なのかと。ごめんなさい。日本全体の企業数は359万社ですね。そこから見ると、果たしてこの数値で十分かという論議はあり得るかと思います。
④の民間団体の活動拠点の数ということにつきましては、主に専門職団体、例えば日本栄養士会とか、薬剤師会とか、そういうところが栄養ケア・ステーションだとか、健康サポート薬局だとか、そういう相談に応じる窓口をつくりますということで頑張っておられて、これらが着実に増えてきているということで、大きく目標を超えて達成しつつあると言っていいかと思います。
⑤が健康格差対策に取り組む自治体の増加ということで、都道府県の数が目標に掲げられております。19年の時点で47都道府県中41ということで、順調に伸びている、何とか目標にたどり着くかなという状況になっております。
これらに関連する取組ということにつきましては、厚労省でこの間、ソーシャルキャピタルという言葉を厚生労働白書の中で紹介したり、地域保健事業等で、厚労科研費で報告書を出したり、専門職に向けては、かなり周知徹底がされたと思います。
国民向けには、スマート・ライフ・プロジェクトだとか、日本健康会議だとか、いろいろな民間主導の取組で、こういうことに取り組む専門団体あるいは企業を後押しした。国民にはキャンペーンを張って周知した。それに専門職団体が応えた。そのようなことが相まって、いずれも前進する方向に寄与したのではないかなと感じております。
あとは、健康格差に取り組む都道府県の数については、厚労省が毎年のようにモニタリングすることがあって、そんなことで、徐々にそれに対応する都道府県の数も増えてきたのかなと考えます。
こういう前進の要因分析及び評価ということにつきましては、総じていい方向に向かっていると言ってもいいように思うんですが、そもそもこれらの指標が改善すると、本当に国民の健康状態が改善するのかという妥当性については、実はこの①から⑤までいずれも、これらがよくなればアウトカムがよくなるというところは検証されていない指標です。まずは、こういうことは重要なんだからということで設定された指標群でありまして、今後は、例えばこれらが改善した都道府県ほど健康寿命が延びているのかとか、この指標自体の妥当性というのは、論議あるいは検証が必要なのではないかなと考えております。
ということで、4番の今後の課題のところには、今までやっていたことは望ましいことで、それ自体は引き続き続けつつ、指標については、エビデンスという意味では検証が必要ではないかということを書かせていただきました。
一例として、図の7を添えさせていただきましたが、私たちはこういうソーシャルキャピタル関連、あるいは社会参加関連のいろいろな指標を集めて、それが左の表側にありますいろいろな介護予防の健康指標と、どのような関係があるのかということを分析して、論文として発表しております。
上3分の1ぐらいの個人レベルで見ると、社会参加している個人が健康だというのは、ほぼ一貫して現れるんですが、実は地域診断指標のようなものとして見てみますと、どのようなところであっても、参加している人が多い地域ほど健康指標がよいという関係が得られるかといいますと、そういう関係が見られたのは緑色の指標間の組合せでして、実はそういう関係が見られない社会参加指標もありました。もし関連がないものを指標として掲げて、それを一生懸命進めても、残念ながら国民の健康状態が改善につながらない可能性はあるということです。
次の棒グラフは、健康寿命を目的変数に、どのような指標が関連があったのか。次のページの棒グラフを映していただけないでしょうか。これは健康寿命と関連があった指標群を探ったものですけれども、ここに書いてあるものは統計学的に有意に、これらがよいところほど健康寿命が長いという関係が検証されましたので、このような指標を第三次等では評価指標、モニタリング指標として採用してみるべきではなかろうかと考えております。
あと、新型コロナの影響につきましても、感染流行を抑えるために社会参加を自粛しようとなって、とにかく参加しようと言えなくなってしまったという影響が、今後どのように出てくるかということを危惧しております。一つ、その打開策として、この間分析して、思いのほか関連が強かったので御紹介したいのが、インターネットの活用についてです。デジタルデバイドがあるということも確認できましたが、一方で、インターネット利用者は健康状態がよいということも、縦断研究で確認ができました。
さらに、教育年数が短い方たちにはうつが多いんですが、教育年数が短くても、ネットを使っている人たちでは、うつが4割緩和されているということも出てまいりまして、ネットも上手に使うといいますか、多くの人が使えるようになると、健康格差の縮小にも寄与するらしいと。そんな可能性も見えてきていますので、今後、ソサエティー5.0なんていうことも言われていますので、ネットを健康づくりのために、あるいは健康格差の縮小のために使うなんていう戦略も、社会のオンラインでのつながりづくりという、デジタル環境という意味での社会環境というのも、健康づくりの視点から検討する必要が、あるいは価値がありそうだということを書かせていただきました。
私からは以上です。
○辻委員長 どうもありがとうございました。
それでは、委員の皆様から御質問、御意見をお願いいたします。
長津先生、どうぞ。その後、津下先生。
○長津委員 日本薬剤師会の長津でございます。健康サポート薬局の現状を評価に反映していただいたこと、大変感謝しております。
御記載いただいた内容につきましては、本会としてもそのとおりだと考えてございます。これからも我々としましては、健康サポート薬局を推進していくつもりでございまして、ただ、今後さらに健康サポート薬局が、一層その地域とつながっていって、自治体の施策ですとか他職種の活動と連携していき、それが数の整備のみならず、地域住民にとって、いかに活用してもらうかというところが大変重要なところなのだと考えてございます。
これはまさしく、今、近藤先生がおっしゃった指標の妥当性というところにも絡んでくるところだと思いますので、今後、次の評価としましては、健康サポート薬局を含め、この項目について、どのような指標で測っていくかというところも、御議論いただくというか、お知恵をいただきたいと考えております。
近藤先生には、今回の御評価をいただいて大変感謝しております。ありがとうございました。
○辻委員長 近藤先生、何かございますか。
○近藤委員 健康サポート薬局等、実は薬局は結構、資源をお持ちなんですよね。薬剤中心に健康のことを勉強していらっしゃる薬剤師さんもいらっしゃいますし、いろいろな健康情報も、店内のチラシはじめ、いろいろな情報があります。
あとは、医者には聞きにくいんだけれどもというので、薬局に着いてから、ぽろっといろいろなことを言ったりするというのも聞いたりしておりますので、そういうものが上手に機能してくれると、結構、潜在力はあるんじゃないかなと個人的には考えております。そんなのを今後、実際にどうやって捉えたらいいのかというのは、まだいいアイデアはないんですけれども、何らかの形で評価にチャレンジしてみたいなとは思っております。どうもありがとうございました。
○長津委員 ありがとうございました。
○辻委員長 今、5名の先生から手が挙がっていますので、これで5名の先生方からいただいて終わりにしたいと思いますけれども、津下先生、どうぞ。
○津下委員 ありがとうございます。近藤先生、ありがとうございます。
この指標ができたときには、ベースラインのときにはデータがない中で捻出された指標だったかと思いますけれども、この間に、例えば健康を守る社会環境の点でいうと、企業でいうと健康経営とか、また保険者の保険サービス、健保組合が様々な環境を整えたりとか、それからスポーツ庁も、健康スポーツの概念で厚生労働省と連携して行ったり、各省庁も健康なまちづくりの視点で動きがあると思いますが、特に地域コミュニティーの環境という視点も大事なんですけれども、保険者や企業、健康経営、そういう視点というのを、こういう動きがあったということを記載していただくというのはどうなのかなと思いますが、いかがでしょうか。
○近藤委員 それは記載してあったと思います。
○津下委員 データとか、記載。
○近藤委員 ちょっと今、ぱっとページが出せない。
○辻委員長 それは後で確認していただくということで。
○津下委員 そうですね。確認、お願いいたします。
○辻委員長 進めていきたいと思います。
次の方、どなたでしたっけ。すいません。委員の先生方で、次に手を挙げられた方、御発言お願いします。ちょっと今、見えないので。この画面共有を外してくれませんか。
それでは、山本先生、どうぞ。
○山本委員 歯科医師会、山本でございます。近藤先生、どうもありがとうございました。
先ほどの図8の健康寿命と高齢者の生活要因ということで、やはり歯科の医療機関への通院が増加すると健康寿命が延びるという、我々としては大変心強いデータだと思って歓迎しております。
56ページ、⑤の健康格差の対策に取り組む自治体の増加というところですが、ここの中で、市町村の健康に関する指標というところの中に、歯科のところが全く載っていないので、もしできれば、高血圧者の割合の後に、例えば歯周疾患検診の受診率とかいったものを載せていただけると、我々としては大変ありがたいなと思う次第でございます。
以上でございます。
○辻委員長 よろしいですか。
では、中村先生、どうぞ。
○中村委員 中村です。近藤先生、ありがとうございます。私からは、社会的な参加というか、社会的な活動のことでの質問です。
高齢者の健康のところで、35ページの図6に、社会的な活動をしていない人の割合というのは、確かに改善はしているんですけれども、今なお過半数以上の人が活動していない現状にあります。社会的な活動を増やして、この割合を減らしていくにあたり、現行の取組では限界があるような気がします。そこで新たな方向として、地域のいろいろな主体が参画して、社会的活動を盛り上げていくような取組が必要だと考えておりますけれども、先生がいろいろ調査研究されている中で、そういった好事例などがあれば、次期健康日本21計画に向けて、そういったものも共有していただくといいのかなと。
たとえば、通いの場などを活用したフレイル予防の取組の場合、好事例でも地域全体で評価すると、1割ぐらいの高齢者しか参加できていないんですね。そういうことで今、バス事業者などと連携して、お出かけや買い物支援なども兼ねてフレイル予防を行う試みをやっているのですけれども、そういった新たな主体の参加を促すというか、主体を増やしていくようなことについても、これまでの好事例も踏まえて、何か御提言いただけるといいんじゃないかなと思いました。
以上です。
○近藤委員 ありがとうございました。結局、どういう活動をやっていますかというリストが、5項目なのか50項目なのかで、丸をつける人の割合が違うという側面がありまして、今回の高齢社会白書には、それがあったということになります。私たちが13ぐらいの社会活動を使って調べたものでは、どこにも社会参加していない人がざっと2割ぐらいというデータがありますので、どの指標を使うか、どのデータを使うかという制約があるかなと思いました。
それから、新たな仕組みという意味では、まだモデル事業から、ごく初期段階ですけれども、ソーシャルインパクトボンド等を使って、企業に社会参加の選択肢を増やしてもらうという試みが、今、幾つかの自治体で始まっていますので、そういうのがうまくいけば、すごく選択肢が豊かな社会参加促進の取組になる可能性はあると感じております。
以上です。
○辻委員長 ありがとうございます。
では、澤田先生。
○澤田委員 早稲田大学の澤田です。コメントになります。
社会環境へのアプローチというのは難しいけれども、ポピュレーションアプローチとしましては、とても重要だと考えています。社会環境にはソフト面とハード面があるかと思うのですけれども、身体活動・運動分野に関しましては、社会環境と身体活動量に非常に関係があるということは、たくさんの研究が報告されておりますので、身体活動・運動分野では、住民が運動しやすいまちづくり・環境整備に取り組む自治体数の増加を目標に掲げておりますし、これからもそういったアプローチは必要だと考えておりますので、引き続き御指導いただきたいと思います。
以上です。
○近藤委員 ありがとうございます。ソフト面もありますし、ハード面でいうと、国土交通省なんかも歩きやすいまちづくりだったり、あと、スポーツ庁もスタジアムとかアリーナを整備する、その健康への効果なんかも関心を持たれているということで、私たちも調査をお手伝いさせていただいて、驚いたのは、高齢者の約1割が、スタジアム等に行って現地で観戦していると答えておられて、そんなに高齢者たちは行っているんだという発見もございましたので、ハード面とソフト面、両面書くようにしたいと思います。ありがとうございました。
○澤田委員 追加でコメントさせていただきますと、私たちはランダム化比較試験で、高齢者のスタジアムに観戦する群と、そうでない群を比較して、認知機能や抑うつに効果を確認しており、先生がおっしゃられたことはとても大切なことだと思っております。引き続きよろしくお願いいたします。
○辻委員長 では、北原先生、お願いします。
○北原委員 ありがとうございます。近藤先生、ありがとうございました。
津下先生がおっしゃった健康経営のところを、私ももう少し入れ込んだほうがいいかなと思いました。企業側からすると、健康経営度調査は非常にドライブがかかる仕掛けがたくさんあって、取り組みやすい感じがいたしております。ですので、今後の課題のところも、スマート・ライフ・プロジェクトだけではなくて、何か今後は一緒にやるとか、相入れないところはあるかもしれませんけれども、そういったところも検討いただければいいかなと思いました。
以上です。ありがとうございました。
○近藤委員 分かりました。じゃあ、補うようにしたいと思います。54ページには、健康経営のこととか健康スコアリングレポートのこととか、それなりには書いていたつもりなんですが、今後のほうは弱かったかなと思いました。そちらに加えたいと思います。
○北原委員 ありがとうございます。
○辻委員長 ありがとうございました。
それでは、次に移りたいと思います。「栄養・食生活」の領域につきまして、村山先生、お願いいたします。
○村山委員 よろしくお願いいたします。画面の共有をお願いします。
まず、栄養・食生活の図1を御覧ください。こちらが目標項目の構成になっております。右下の食環境の指標が2つ、そして左側の食物摂取、栄養状態ということで構成されておりますが、結果的に、最終的には、食環境の項目につきましては改善の方向性が出ておりましたが、食物摂取、栄養状態については変化なしということになっております。
各項目につきまして、評価の要因分析と取組との関連を併せて、図を見ながら説明させていただきます。次のページ、74ページの図3をお願いいたします。適正体重を維持している者の増加についてです。この指標は3つの指標から成りまして、全体の評価はCでございました。
まず、20から60歳代男性の肥満者の割合ですが、D、「悪化している」です。こちらは、第一次では有意に増加し、第二次に入りまして一時的に有意に減少しましたけれども、その後、また増加に転じたということでございます。この一時的に減少した背景と取組との関連で申し上げますと、メタボリックシンドロームの概念の導入、あるいは特定健診・保健指導の制度導入ということが寄与した可能性があります。
次に、60歳代女性の肥満者の割合についてです。こちらは、第一次では有意に減少しましたが、第二次では変化が見られませんでした。この間、国におきましても、食事摂取基準の改定ですとか、食生活指針等の改定等も行ってきているんですが、その結果がまだ、そのような取組では効果が見られなかったと考えられます。
次でございます。20歳代女性の痩せの割合はC、「変わらない」でした。第一次、第二次ともに、ほぼ改善していない、変化が見られていないということでございます。取組との関連で申し上げますと、国では基準の改定、先ほどの食生活指針などでも項目として盛り込んではいるんですが、若年女性の行動変容に至るまでの取組ではなかったということが考えられます。
次に、適切な量と質の食事を取る者の増加についてです。この目標は3つの指標から成り、全体の評価はCでした。
まず、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事についてです。こちらは評価がD、「悪化している」でした。この下の年代別のグラフを見せていただきたいんですけれども、特に若い年代でこの割合が低く、男女とも全ての年代で低下しているということが原因としてあります。取組との関連では、若い年代が利用することも考慮して、食環境整備による給食や外食、中食でのヘルシーメニューの提供ということが取り組まれたものの、それが十分に浸透していない、あるいは選択されていない可能性があります。
次に、食塩摂取量の平均値についてです。こちらの結果は、Bの評価になっております。第一次、第二次ともに有意に減少したという結果になっております。
その下に都道府県別のデータがございますけれども、都道府県別にも改善度が見られ、特にもともと高かった都道府県で取組が強化されたのか、低下したということで、格差が縮小したと考えられます。
取組との関連では、国や自治体あるいは事業者、あるいは関連の学会が一連の取組を実施したことが、減少につながった可能性があります。また、都道府県間の格差が縮まったということに関しては、国が都道府県別の食塩摂取量のデータを示し、都道府県での取組が進んだと考えられます。
次に、野菜と果物の摂取量の増加については、2つの指標から成っておりまして、合わせてD、悪化しているという評価でございます。
まず、野菜摂取量の平均値につきましては、C、「変わらない」でした。こちらは第一次、第二次とも有意な変化が見られておりません。年代別のデータを見ましても、全ての年代で目標に達していなく、変化もしていないということが背景にあります。取組との関連で申し上げますと、国、自治体、事業者等で食環境整備、あるいは行動変容のための様々な取組が実施されたものの、実際の行動変容や摂取量の増加には影響しなかったと考えられます。
次に、果物の摂取量100グラム未満の者の割合ですが、こちらはD評価です。こちらも年代別のデータを見ていただきましても、70歳代以外、全ての年代で悪化しているということがございます。果物に関して特化した取組がほとんど行われていない、少ないということで、効果が見られていないと考えられます。
次に、共食の増加につきましてはEで、評価が困難ということでございますので、飛ばします。
④食品中の食塩や脂肪の低減に取り組む食品企業及び飲食店の登録数の増加です。こちらは2つの指標から成り、全体の評価はB*という評価でした。
食品企業数につきましては、スマート・ライフ・プロジェクトに登録のあった企業数ですが、こちらは目標に達しております。この要因といたしましては、企業が食品中の食塩の低減を推進することを、国や学会などが後押ししたことが効果的だったと考えられます。学会に関しましては、日本高血圧学会あるいは国立循環器病センターなどの取組、そして国のスマート・ライフ・プロジェクトなどの推進が考えられます。
そして、飲食店の登録数についてです。こちらは自治体から報告された店舗数を掲載しております。現時点で目標に達していませんが、改善傾向にはあります。ただし、近年登録数が減少しているということで、目標年度までに目標達成が危ぶまれる状況です。改善傾向にあった要因としては、国や自治体、学会などが後押ししたということが考えられますが、その後の低下につきましては、今後の分析が必要だと思いますけれども、新たな制度への転換ということが、一つ背景としては考えられます。
次です。給食施設の指標・目標になります。こちらは利用者に応じた栄養管理をしている特定給食施設の割合の増加です。参考指標としては、管理栄養士・栄養士を配置している施設の割合になっておりまして、評価はB*になっております。
改善傾向にある要因としまして、その下を見せていただきたいんですが、施設別に見ていただきますと、児童福祉施設、学校で配置が促進されたということが分かります。ということで、一方で、目標達成が危ぶまれる要因としては、事業所の配置が進んでいないということがございます。
取組との関連で申し上げますと、国は都道府県・保健所設置市に、給食施設の栄養管理の推進をするということで支援をしておりますし、都道府県はモニタリング支援をしております。そういった中で、特に児童福祉施設では、保育所等での食育の位置づけや栄養管理加算の拡充ということで、制度的に強化されたということ。それから学校では、食育の推進や栄養教諭制度の確立。やはりこちらも制度の裏づけがあり、配置促進が進んだと考えられます。一方で事業所につきましては、小規模の事業所での配置が進んでいないことが考えられます。
以上ですけれども、全体としては、うまく進んだのが、93ページに飛んでいただきたいんですが、食環境の目標である食塩や脂肪の低減に取り組む食品企業や飲食店の増加が、特に食塩の低減につながったのではないかということ。あと、自治体や学会等でもそういった取組を後押ししたという相互の関連が、全体として食塩にはいい方向に行ったのではないかと思いますが、その他の項目には影響はなかったということです。
94ページ、今後の課題でございます。領域全体としての課題についてです。
まず、実態把握と分析の課題として、どのような集団に課題が大きいのかの把握を行うということ。
2点目、取組と効果のモニタリングの仕組みが必要であるということ。特に食環境整備の効果の把握が課題です。
3点目は、各主体の取組がつながるような仕組みが必要と。今回の食塩に関しては、大分つながったようには見えますが、その他の項目でも必要と考えられます。
4点目、誰もが自然に健康になれる社会環境と、国民の行動変容につながる取組が課題です。
最後、5点目です。栄養・運動・休養複合型の取組が促進される必要があると考えます。
最後、97ページに飛んでください。新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた今後の課題です。こちらは厚生労働科学特別研究事業において、親子と、それから成人について研究が行われた結果です。これを総じて、世帯所得、世帯収入が少ない集団や、自身の食生活の状況が悪くなったと評価している集団などで、課題が大きくなっていると。要するに、格差が広がっているということが分かってまいりました。これにつきましては、都道府県等の健康増進部局とともに、福祉部局につきましても情報提供して、今後の対策に生かしていただくということになっております。
以上です。
○辻委員長 村山先生、どうもありがとうございました。
それでは、委員の先生方から御意見、御質問をいただきたいと思います。
まず、吉村先生から。
○吉村委員 村山先生、どうもありがとうございました。
76ページ、図8、20代の女性の痩せの割合について、私が少し理解を間違えているかもしれないのでお教えいただきたいんですが、この図を見ると、痩せの割合は目標値より低いんじゃないかと思うんですが、目標値に達していないというのは、これよりも上ということなんでしょうか。むしろ、ずっと低いので、いいのかなと理解してしまったんですが、どこか私が間違えているでしょうか。すいません、先生。
○村山委員 いえいえ。図の8でございますけれども、目標値が20%ということに対しまして、まだ現状、2019年の段階で20.7ということで、目標値に達していないということでございます。
○吉村委員 分かりました。でも、もともと20、このラインのずっと下にあるので、今は達していないかもしれないんだけれども、ずっとラインの下にある。Aでいいんじゃないかと私は思っちゃったんですけれども、有意じゃないからという感じでしょうか。
○村山委員 目標値にまだ達していないということと、これはたまたま22年がすごく高い値だったということもあって、変化しているようには見えるんですけれども、全体としては有意な変化がなかったということでございます。
○吉村委員 分かりました。
あと、私のほうで低栄養の人の割合というのはBMI20で切っているんですけれども、ここの痩せはBMI18.5で切っていて、基準としては18.5で痩せというのは、正しいというか、よく使われていると思うんですが、同じ一つの低減で、これは先生に言っているんじゃないんですけれども、18.5と20というふうに、同じようなことを言っているのに基準が違うというのも、次からそういうところも統一があったほうがいいんじゃないかなと思った次第です。これはコメントですので、先生、どうもありがとうございました。
○村山委員 ありがとうございます。
○辻委員長 よろしいですか。じゃ、中村先生、お願いします。
○中村委員 村山先生、どうもありがとうございます。
食事のときには、栄養バランスというか、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事の摂取状況が少し改善しているのかなと期待していたんですけれども、残念ながら悪化しているし、野菜については厚労省が以前から取組をしていますけれども、それにもかかわらず、D評価になったのは、非常に残念に思いました。
ただ、減塩のほうは、徐々にではありますけれども改善傾向が見られて、その説明として、各主体の取組、産官学の取組が一定程度、定着してきたということが改善の力になっているのかなと思います。このモデルを今後、ナトリウムだけじゃなくて、カリウムにも応用して、野菜・果物の摂取の改善を図るというのが、一つ考えられます。最後に書いていただいているように、野菜・果物は値段が日本は高いので、自分で作っている人は別なんですけれども、大多数の人は作っていないので、そこに対して、所得の低い人のことも含めて、価格政策を併せてやっていかないと、なかなか大きな改善が見られないかなと思います。その点について先生のお考え方を聞かせていただけたらと思います。
○村山委員 ありがとうございます。全くそのとおりで、食塩については、逆にお金がかからないという。若干ですけれども、お金がかからない減塩をするのはいいんですけれども、野菜・果物に関しては、それがたくさん入った食事を取ろうとすると金額が上がってしまう。ここが大きな違いかなと考えております。
ですので、同じように取組をやっても、恐らくそんなに劇的に変わらなく、価格のところ、あるいは収入が厳しくても買えるような取組ということができれば本当は一番いいんだと思いますが、なかなか厚労省だけでは難しいと思いますので、その辺を、どう健康づくりの観点から社会に言っていけるかというか、改善を促すようにしていけるかということも、一つの役割であり、課題であるかなと思っています。ありがとうございます。
○辻委員長 ありがとうございました。今のお話、大変重要なポイントだと思います。厚労省だけではなくて、政府のほかの部分、あるいは民間とか、いろいろなところを巻き込んで、新しい関係をつくっていったり、運動を促していくというのは、これから大事かなと。どうぞよろしくお願いします。
では、津下先生、お願いします。
○津下委員 ありがとうございます。村山先生、緻密な分析をありがとうございます。
肥満については、中間評価まで下がってきたようで、またそこから上がってしまったというのが、この要因についてしっかり考察していく必要があるのかなと思っています。運動論として、後半の対策はどうだったのかなということは振り返ることは必要と思います。もう一つ、以前、所得と肥満度の関係でいうと、低所得の場合、肥満と痩せと両方増えるというか、生活保護受給者の健康状態の調査でもそうだったんですけれども、両方が増えて、適正体重者が減るということもあったので、そういう観点でも、肥満者が全体として増えているんだけれども、特にどういうところで影響があるのかというのを見ていただいたり、また、国際的には肥満者の割合は増えているので、日本のとどまっているというグラフはかなり驚かれる。増えていないんだという視点で、見ていけないか。身体活動量も減って、食料事情もあって、全体として肥満が著しくアジア地区でも増えている現状、中国・韓国も含めて多い中で、何とか抑制できているという見方も、一方ではできないかなと思ったりします。
それから、食塩については、逆に下がってきて、いいように見えますけれども、まだ10グラムを超えているというところで、よかった、よかったと言うと、その後が悪くなるんじゃないかという心配もありまして、まだ10グラム超えであるということについては、警鐘を鳴らしていくことも重要かなと思いました。
飲食店の登録数で、脂肪とか健康な食事については、自治体が以前は認証していたんだけれども、現在はスマートミールとか、様々な外部で安定的に認証する制度、学会が協同して認証する制度などができて、自治体が把握している数が、もしかしたら減っているかもしれない。認証自体、登録自体は自治体がしなくても、把握しているとか、そういう動きもある中での状況について、減っているということでいいのかなと。この辺りが気になったところなんですけれども、いかがでしょうか。
○村山委員 ありがとうございます、津下先生。お気づきの点は全て、そのとおりだと思います。特に最後のところは今後の大きな課題だと思っていまして、学会等でのスマートミール認証制度や、いろいろなところでの認証というのと自治体の取組の関係を、いかに整合性を取っていくか、うまく整理しながら、お互いにいい方向になるような進め方が必要だと強く認識しています。ありがとうございます。
○辻委員長 ありがとうございました。
では、最後になります。「身体活動・運動」領域について、澤田先生、お願いします。
○澤田委員 よろしくお願いいたします。これまでいろいろ発言してしまって、自分の時間をなくしてしまいました。少し早口で御紹介をさせていただければと思います。
まず、身体活動・運動分野の背景ですけれども、世の中が便利になって、国民の身体活動が減少しやすい方向に社会環境が変化し続けております。
日常生活における身体活動は「生活活動」、体力の維持・向上を目的とした身体活動は「運動」と定義しております。全体をまとめて「身体活動」ということで、資料の図1で、その定義を示させていただいております。別の表現をすると、余暇の場面での身体活動が「運動」になります。そして、それ以外の場面での身体活動が「生活活動」で、両方をひっくるめて「身体活動」という定義をしております。
「運動」というのはとても一般的な言葉ですけれど、定義上はこういった使い分けをしたいと思っておりますので、「運動」は「余暇場面で計画的に意図を持ってやっているもの」という御理解をいただければと思っております。
そして、「生活活動」に関しましては、実測で歩数を国民健康・栄養調査で測っております。また、運動習慣については質問票を使って、「運動頻度」について調査をしております。環境の整備が両方重要ですので、身体活動しやすいまちづくり・環境整備に関する目標を設定して、合計で3つの目標を立てております。
表1の最後の「住民が運動しやすいまちづくり」、これは「住民が身体活動しやすいまちづくり」ということになります。そして、目標項目の評価状況に記載しているように、こちらの評価が「B」で、歩数、つまり生活活動を含めた身体活動、さらには運動習慣の両方が「C」、「変わらない」となっております。
健康日本21の第一次では、運動習慣と歩数の目標が設置されましたが、歩数は1,000歩減少しており、悪化しているという評価になりました。そして、運動習慣に関しては変わらないという評価になっておりました。このため今回、歩数に関して変わらないというのは、前回に比べると一歩前進という状況になっております。
表1に示したそれぞれの目標と考えを御紹介させていただきますと、前回の評価を受けて、歩数の1,500歩増加を目標として、もう一つは運動実施者の10%増加を目標にして、健康寿命の延伸につなげることを考えました。そして、それを動きやすい環境をつくる、あるいは運動しやすい環境をつくることによって支えていくという構造になっております。
図2以降に示している「歩数」に関しては、「変わらない」という結果ですが、過去からのトレンドを俯瞰的にみると、少し下がっているようにも見えるという状況です。女性に関しては、統計的に有意な低下が、図7に示した運動習慣、あるいは図2における歩数で見られております。
図4および図5は高齢の方の歩数で、ほぼ横ばいか少し下がってきているかもしれないという状況です。
運動習慣については図6以降に示しています。少しばらついたデータですが、「変わらない」という評価をしております。図6が男性で、図7が女性です。全体で見ると「変わらない」という評価ですけれども、図7に示した20~64歳の女性については、下がっているという結果です。
そして、住民が身体活動しやすいまちづくり・環境整備に取り組む自治体の数につきましては、図10に示したような状況で、目標を達成しておりませんけれども、目標に近づいているという評価にしております。
全体の取組に関しましては、本文を御覧いただければと思っております。それぞれについて、歩数、つまり生活活動、そして運動習慣、両方についての取組をしております。住民が運動しやすいまちづくり、身体活動しやすいまちづくりについては、ヒアリングを行ったり、それぞれの省庁との連携をしているという状況になります。
歩数や運動習慣が変わらなかった要因ですけれども、まず歩数に関しては、世の中が便利になって歩く機会がなくなってきているということがあると思われます。「運動」と表現してしまうと、一般の方は余暇時間に実施するものをイメージしてしまうので、歩数を増やすためには、運動から離れる、少し考え方を変えていただく、その啓発が必要だと思って取り組んでおります。具体的には、労働場面ですとか、家庭の場面とか、あるいは、大きなのは移動の場面における歩数の総数で、前回は1,000歩減少しているので、今回は下がらなかったところは、一つの効果であるかと考えていますけれども、これを増やしていく必要があって、図11のようなアクティブガイド、身体活動基準・指針を、歩数を増やすためのツールとして発表しています。これらのツールでは身体活動に焦点を移して、「プラス・テン」という、1日10分プラスしていただくと1,000歩の増加に相当するんですが、こういったことをPRしていますが、まだ十分ではなくて、図13に示したように都道府県における政策立案時における利用率は30%と、あまり浸透していない状況です。あるいは、国民においては15%の人しか知らないということが分かりましたので、この辺が今後の大きな課題と思っています。
繰り返しますけれども、「運動」だけではなくて、「生活活動」、生活の中で歩いていただくことをPRしていくということを考えております。
また、ロコモに関して、高齢になると大幅に歩数は減少することが分かっておりますので、歩数、歩くことだけではなくて、高齢の方にはプラス運動、筋力のこともありますので、運動の奨励も考えていきたいと思っております。
図15は各都道府県で、公共交通機関が発達しているところの歩数が多いことを示しています。つまり、移動における歩数というのは、非常に大きな割合を占めていると考えております。
運動習慣者の割合の増加に関しましては、環境がなければ、余暇での身体活動はできませんし、あるいは、余暇の時間が必要ということもあると思います。図16に示していますように、余暇の時間が増えてくる定年を迎えたら、それぞれ運動習慣者の割合がぐっと増加するということが見えておりますので、環境、そして時間、時間というのはなかなか難しいんですけれども、この辺もアプローチをしていくところだと考えています。
そして、住民が身体活動しやすいまちづくり・環境整備の自治体に関しましては、増えてはいますので、さらに具体例を提示したり、すごくハードルが高いと思われている自治体もあると思いますので、そうではないといった啓発をしていきたいと考えております。
領域全体としての評価についてのご説明は割愛させていただきます。今後の課題としましては、啓発のツールであるアクティブガイドが知られていないということがありますので、運動だけではなくて、身体活動全般の推進を奨励するアクティブガイドを広く伝えていくことが課題だと考えています。さらに、座位行動といった新たな考え方が出ております。昨年WHOから発表されましたガイドラインは、「WHO guidelines on physical activity and sedentary behaviour」というタイトルで、sedentary behaviourが座位行動、そして、これは座り過ぎと健康の関係になりますので、新たな概念として、座位行動と健康、sedentary behaviourと健康についても、広く国民に伝えていく必要があると思っております。ちなみに、図20に示しましたように、日本人の座位時間は非常に長いという研究発表がございます。
それぞれに向けての取組を書かせていただきまして、最後にコロナに関しまして、幾つか論文も出ておりますので、そちらを御紹介させていただければと思います。4つの研究が検索されまして、コロナが大きく身体活動を減らしているということがあるようです。取り組むべき課題としましては、これからも幾つか出てくると思いますので、その研究をレビューして、どういったことに取り組んでいくかということを考えていくと同時に、新しい生活様式に対応した情報発信に取り組んでいきたいと思っております。
すいません。とても駆け足になりました。以上になります。御指導をよろしくお願いいたします。
○辻委員長 ありがとうございました。
それでは、委員の皆様から御質問、御意見をいただきたいと思います。
若尾先生、どうぞ。
○若尾委員 ありがとうございます。どうも澤田先生、丁寧な説明をありがとうございます。非常によく分かりました。
お伺いしたいのは、最後の指標の地域における身体活動・運動の促進の取組で、問い1・問い2と分かれていますね。問い1で運動しやすいまちづくりで、問い2で様々な身体活動を促進するような環境をつくっている。評価とすれば、問い1と問い2を合わせた形での評価となっているんですか。その辺、分かれたデータ等ありましたら、教えてください。
○澤田委員 すいません。私は今すぐ先生の御質問にお答えができませんので、これは改めて私からか、事務局から御返事をさせていただければと思います。
○辻委員長 ということで、よろしくお願いします。
近藤先生、どうぞ。
○近藤委員 千葉大学の近藤です。住民が身体活動しやすいまちづくり・環境整備に関わるかと思いますが、ウオーキングポイント制度だとか、健康マイレージだとか、呼び名は自治体によって様々ですけれども、結構アプリをつくって県民に配っている都道府県とかも、よく見かけるんですが、果たしてあれは効果があるのかという検証が恐ろしいほどやられていなくて、効果がないのにやっているとしたら、それはそれで問題だし、やられているのに効果検証をやられていないのも問題だと思うんですけれども、私たちがある自治体でやらせていただいたら、実は結構な、一人一人には小さいんですけれども、市民全体の歩行量の増大という意味では結構効果があるという結果が出て、これはもうちょっとやる価値があるんじゃないかなと感じています。
拝見した中に、ウオーキングポイント制度とか健康マイレージという表記が、私が見落としたのでなければ全然なくて、その辺のことは、そういう取組が広がっている話とか、一方、課題として、その効果評価がやられていないとか、効果があるんだったら、そういうのを広げることで、歩行量を増やすのに寄与し得るんじゃないかなと思いました。
以上です。
○澤田委員 ありがとうございます。委員の岡村先生と御一緒に、横浜のポイント制度を委員として参加させていただいて、先生にも解析をしていただいたということがあるかと思います。幾つかは評価に向かって取り組んでいるところがありますので、そういったところをエビデンスとして確認しながら進んでいくと同時に、先生に御指摘いただきましたように、資料の中にポイント制度について、エビデンスを確認した上で、載せられるところは載せていきたいと思います。ありがとうございます。
○辻委員長 岡村先生、関連ですか。
○岡村委員 関連です。
○辻委員長 じゃ、まず岡村先生からお願いします。
○岡村委員 今のと関連して、ポピュレーションとしても、もちろん評価していたり、効果が出ているのはあるんですが、例えば協会けんぽで個人指導に当たった人に、ただ乗りで県とかがやっているアプリに登録して、勝手に動けというのを実にやっていると、一銭もかからずに、登録させたほうが非常に効果が出ます。
特により好みしなくても、各県とかでそれぞれつくっているので、その県のものに、例えば特定保健指導がかかった人は、これの登録を勧めますよと言うと、かなりの人が登録してくれたりするので、そういうハイリスクとのコンビネーションというのも有用ではあろうと。宣伝の仕方なんだと思います。あまり行政は宣伝がなかなか難しいところがあるので、どこから呼びかけるかというのが非常に重要であろうと考えております。
以上です。
○辻委員長 ありがとうございます。
今、3名の先生方から手が挙がっていますので、先ほどと同様に、1分程度で手短に御発言いただいて、澤田先生からまとめてお答えいただくということで、まず羽鳥先生、お願いします。
○羽鳥委員 これ、事務局に聞いたほうがいいのか、図の15で、熊本県だけ評価がないんですけれども、これは何か理由があるのかが1点。
それから、同じく図の15で、青森、山形とか、幾つかの県で男女差が目立つんですけれども、これは何か理由があるのか。それは澤田先生にお伺いしたいと思います。
以上です。
○辻委員長 では、津下先生、どうぞ。
○津下委員 ありがとうございます。特定健診の高齢者の質問票でも、運動習慣を聞いています。そういう健診の機会に把握された方を、しっかり運動の場につないでいく、質問票をスルーしないというのが非常に重要かなと思いますので、その辺りが今後の方向性として入っていくといいのかなと思いました。
あと、ウェアラブルが普及しております。アプリもあります。その辺りの変化も捉えたらと。
それから、身体活動の中で運動・生活活動があるんですけれども、生活活動はますます減っているのが現状です。オンラインになってインターネットでの生活の中で、生活活動を増やすのは本当に難しいんじゃないかと。生活活動を増やせと言われても、必要がないので動かないんですよね。だったら、生活活動が少ないあなたは、運動をしっかり取り組むべきじゃないかというような、また、運動に着目したキャンペーンというのを、しっかり行ってはどうでしょうか。運動はできないから生活活動じゃなくて、生活活動はもう減っている。だからこそ運動とか、運動は単に体力とか、いろいろな面でメリットがあるので、運動をもう少しクローズアップしたほうがいいんじゃないかなと私自身は思うんですけれども、いかがでしょうか。
○辻委員長 吉村先生、お願いします。
○吉村委員 私は座位行動についてなんですけれども、糖尿とかをアウトカムにしてみると、確かに座位が長いのはよくないとは思うんですが、例えば変形性関節症などでは、座位はむしろプリベンティブという報告もありますので、座位が一方的に悪いという形での進め方は、少し注意が必要かなと思いました。
以上です。
○辻委員長 ありがとうございます。
羽鳥先生、図の15で熊本が抜けている話ですけれども、これは恐らく熊本地震がその年にあって、その期はほとんど調査できなかったということによるのかなと。
○羽鳥委員 分かりました。
○辻委員長 では、澤田先生、残りについて、まとめてお願いします。
○澤田委員 ありがとうございます。
まず、羽鳥先生、貴重な御指摘をいただきましてありがとうございます。図15における男女の違いについて御指摘いただきました。公共交通機関を利用して車を使わないで通勤をしている人が、大きな歩数を示していると思われます。そして、これは推測ですが、男性と女性の勤務割合が歩数に影響しているのではないかと考えております。ただ、具体的にエビデンスとして、しっかり調べたものではありませんので、その点もこれから調べていきたいと思っております。
そして、津下先生からいただきました、ウェアラブルやアプリについてですが、近藤先生からいただいた御意見とも近いと思いますけれども、そちらをしっかり見ていきたいと思います。
そして、生活活動と運動に関する御提案も、本当にごもっともだと思います。領域全体としての課題の最初に記載させていただいたように、今後の動きとしては、多面的に進めていきたいと考えております。先生のおっしゃるとおりだと思いますので、意識的に生活活動するということも必要だと思いますし、まさに生活活動は、本当に便利な世の中になって、少なくなってきているし、それを止めることは非常に難しい課題だと思いますので、それに代わるものとして、意識的に動く、運動の環境とか、運動の機会とか、運動に関する啓発も進めていきたいと思っております。貴重な御意見、ありがとうございます。
また、吉村先生から御指摘いただいたことは、気がついておりませんでしたので、先生にいただいたアドバイスもしっかり考慮しながら進めていきたいと思います。ありがとうございます。
○辻委員長 よろしいでしょうか。
では、澤田先生、どうもありがとうございました。
先ほど近藤先生から御発言ありました、そして岡村先生からも補足いただきましたけれども、歩行のウオーキングポイントなどのインセンティブの有効性という話ですが、これは我々も地域住民を対象に、ランダム化比較試験で実際に調べてみたんですが、インセンティブを上げると、早速きっちり歩数は上がります。ただ、そのインセンティブ期間が終わっちゃうと元に戻っちゃうということも観察されましたので、それの進め方について、またこれから考えなきゃいけないのかなと考えておりました。
以上です。
ということで、全体に戻りますと、これでちょうど時間に皆さん合わせていただきましたので、どうもありがとうございました。本日の議論はここまでということにいたします。本日、御意見いただきました事項につきましては、事務局と御担当の先生とで調整をお願いしたいと思います。
最後に、今後のスケジュール等につきまして、事務局から御説明をお願いします。
○松村女性の健康推進室長 ありがとうございます。事務局でございます。
次回第16回健康日本21(第二次)推進専門委員会は、令和3年12月20日の月曜日、13時からオンラインでの開催を予定しております。開催通知等は改めて御連絡をさせていただきます。
次回、御評価いただく領域を御担当いただく先生方におかれましては、先日、作業の依頼をさせていただいたところでございます。締切りを11月初旬としておりますので、御執筆をどうぞよろしくお願いいたします。
以上でございます。
○辻委員長 それでは、本日はこれにて閉会といたします。どうもありがとうございました。
―― 了 ――
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