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2021年9月3日 第14回健康日本21(第二次)推進専門委員会(議事録)

○日時

令和3年9月3日(水) 16:00~18:30

 

○場所

AP東京八重洲11階 K+Lルーム(オンライン開催)
 

○議題

 <報告事項>
(1)健康日本21(第二次)の計画期間を改正する告示について
(2)都道府県・市区町村・関連団体に対する取組状況調査について
(3)健康日本21(第二次)に関連する計画等について
(4)その他

<審議事項>
(1)各領域の評価について(各担当委員より報告)
       別表第二:主要な生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底に関する目標
(1)がん、(2)循環器疾患、(3)糖尿病、(4)COPD

 

○議事

○松村女性の健康推進室長 それでは定刻になりましたので、ただいまから、第14回健康日本21(第二次)推進専門委員会を開催いたします。
 委員の皆様には、御多忙の折、お集まりいただき、御礼を申し上げます。
 本日は委員の皆様にオンラインで御参加いただいております。なお、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、一般の方の傍聴は行わず、代わりに会議の模様をユーチューブによるライブ配信にて公開しておりますので、御承知おきください。
 まずは開会に当たり、健康課長の鷲見より御挨拶を申し上げます。
○鷲見健康課長 健康課長の鷲見でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
 開催に当たりまして、一言、御挨拶申し上げます。皆様方におかれましては、御多忙のところ、当専門委員会に御参集いただきまして、誠にありがとうございます。また、日頃より健康行政に対しまして格別の御理解と御協力を賜り、改めてこの場を借りて御礼申し上げます。
 前回は、最終評価のキックオフに当たる会合でございましたが、本日からは全3回に分けて、健康日本21(第二次)の各テーマについて御議論いただく予定としております。今回はその初回となります。本日は、主要な生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底に関する目標として、がん、循環器疾患、糖尿病、COPDについて御審議を賜りたいと考えております。若尾委員、岡村委員、津下委員、西村委員におかれましては、御多忙の中、各分野の評価シートを作成いただき、御礼申し上げます。
 委員の皆様方から忌憚のない御意見を賜りますよう、よろしく申し上げ、私の御挨拶とさせていただきます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
○松村女性の健康推進室長 なお、鷲見は他の用務のため、ここで退席させていただきます。
 本日は金野委員から御欠席の連絡を受けております。全22名中21名の委員に御出席いただいておりますので、議事が成立することを御報告いたします。
 それでは、配付資料の確認をさせていただきます。議事次第、委員名簿、座席図のほか、資料1として「最終評価の評価方法について(修正案)」、資料2「別表第二:評価一覧(案)」、資料3-1「評価シート様式1(案)」、資料3-2「評価シート様式2(案)」、参考資料1として「健康日本21(第二次)の計画期間を改正する告示について」、参考資料2-1と2-2としまして、「取組状況の調査」、都道府県や団体向けのもの、参考資料3「健康日本21(第二次)に関連する計画等の概要」、参考資料4「新型コロナウイルス感染症流行下における生活習慣の変化について」、参考資料5「最終評価のスケジュール」、参考資料6「健康日本21(第二次)目標項目データ一覧」、その他、参考資料7から9としてお送りしております。資料の確認は以上でございますが、もしお手元に届いていないもの、または落丁等ございましたら、事務局まで御連絡いただければと思います。
 また、議事に入る前に、オンラインで御参加いただいている委員の皆様にお願いでございます。ビデオカメラはオンにしていただき、発言時以外はマイクはミュートでお願いいたします。また、御発言される際には、ウェブ会議システムの「挙手」のボタンを押していただくか、画面上、見える形で挙手を頂き、委員長からの指名後に発言をお願いいたします。御発言の際にはマイクをオンにし、名前をおっしゃった上で御発言をお願いいたします。御発言が終わりましたら、「挙手」ボタンを下ろしていただいた上で、マイクを再度ミュートにしていただくようにお願いいたします。
 本日、時間の限られていることから、十分に御発言いただけなかったということがございましたら、事務局にメール等で別途、御意見を頂ければ幸いでございます。
 それでは、会場でのカメラ撮影はここまでとさせていただきます。
 以後の進行は辻委員長にお願いしたいと思います。委員長、どうぞよろしくお願いいたします。
○辻委員長 それでは、委員の皆様、どうぞよろしくお願いいたします。
 本日の議題は、まず報告事項といたしまして、事務局から3点報告がございます。その後、続きまして審議事項といたしまして、「各領域の評価について」ということでお願いしたいと思います。
 まず最初に、事務局から報告事項の御説明をお願いします。
○寺井健康課長補佐 1つ目、「健康日本21(第二次)の計画期間を改正する告示について」、参考資料1を御覧ください。今年1月の地域保健健康増進栄養部会で御了承いただきましたとおり、医療計画や医療費適正化計画など、他の関連する計画と計画期間を合わせるために、当初、令和4年度末までとしておりました健康日本21(第二次)の計画期間を令和5年度末までの11年間に延長するということで準備を進めておりました。今回、8月4日に期間延長の告示が出ましたので、御報告として参考資料1をお送りしております。また、参考資料1の後半部分には、告示後に自治体に向けて発出しました局長通知をつけております。通知の中では、国のスケジュールを示すとともに、次期プラン作成に向けて準備を進めていただくようお願いしております。具体的には、別紙のとおりですが、令和3年6月から約1年かけまして最終評価を行い、その後令和4年度中に国の次期プランを作成する予定ですので、その翌年の令和5年度に都道府県等の健康増進計画を作成いただくようお願いしているところです。
 2つ目は、「都道府県・市区町村・関連団体に対する取組状況調査について」でございます。参考資料2-1及び2-2を御覧ください。第13回で御議論いただきました、自治体・団体宛ての取組状況調査票でございますが、修正後は委員長一任とさせていただいておりました。都道府県票・市区町村票に関しましては、参考資料2-1としてお示ししておりますとおりに修正しまして、辻委員長に御了承いただいた上で確定させ、8月18日に都道府県・市区町村に送付しております。10月1日締切りで回収しまして、その後集計作業を行い、12月の初旬に単純集計の結果がでるというスケジュールにしております。
 参考資料2-2が団体票ですが、こちらも、御協力いただきます健康日本21推進全国連絡協議会で御議論いただき、委員長御了承の上、現在の形とさせていただいておりまして、来週にも発出予定としております。
 続きまして、3つ目、「健康日本21(第二次)に関連する計画等について」でございますが、参考資料3を御覧ください。こちらは、医療計画や医療費適正化計画、また本日の審議事項となっている領域に関するものとしましては、がん対策推進計画や循環器対策推進基本計画、特定健診・特定保健指導の制度など、健康日本21(第二次)に関連する計画等の概要を、関係各局から集めた資料でございます。個別の説明は割愛させていただきますが、各領域を御評価いただく際に、また12月の第16回の委員会以降に、健康日本21(第二次)の全体を御評価頂く際や、次期に向けての課題を御議論いただく際のご参考として御覧いただきたく、参考資料として送付しております。
 最後に「その他」でございます。参考資料4を御覧ください。「新型コロナウイルス感染症流行下における生活習慣の変化について」ということで参考資料をお送りしております。新型コロナウイルス感染症の流行に伴って、外出制限による運動量の低下や、食事等生活習慣の変化、また感染を懸念した健診受診控えなどが生じており、健康に影響を与えている可能性が懸念されているところです。最終評価の中では、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた今後の課題についても触れていただくこととしておりますが、新型コロナウイルスの影響に関する研究や調査は、厚生労働省だけではなく各所で様々行われていることと思います。先生方におかれましては、適宜、それらの研究や調査の結果を引用していただきながら御評価いただければと思っておりますが、健康課の特別研究でも調査研究を行っており、結果が幾つか出ておりますので、参考資料としてお示しします。
 1枚おめくりいただきまして、1つ目は国立がん研究センターの山本先生を研究代表者として、令和2年度の特別研究で行っていただきましたインターネット調査の結果で、1枚目に体重やBMI、また睡眠、アルコールなどの生活習慣の変化をまとめております。2枚目に、健診受診者の割合の変化や未受診の理由などについてまとめております。
 1枚おめくりいただきまして、2つ目が、お茶の水女子大学の赤松先生を研究代表者として、こちらも令和2年度の特別研究で行っていただいた研究です。食行動の変化に関するインターネット調査の結果ですが、感染拡大前と比べて、「現在の食生活がより健康的になった」者の割合が20.3%、「(現在の食生活がより)不健康になった」者の割合が8.2%、「変化なし」が71.6%という結果でした。
 最後のページが、国立成育医療研究センターの森崎先生を研究代表者とする研究で行っていただいた、親子の栄養・食生活の変化に関する研究です。こちらは、子どもがいる世帯を対象として行った調査で、世帯所得が低い群で、緊急事態宣言後に、食事を作る時間や心の余裕が少なくなり、食材や食事を選んで買う経済的な余裕が少なくなったと回答した者の割合が多いという結果でした。以上、ご評価いただく際の御参考として御覧いただきたくお送りしております。
 報告事項につきまして、事務局からは以上です。
○辻委員長 ありがとうございました。では、ただいま御報告いただきました事項について、委員の皆様から御質問、御意見を頂きたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
 どなたかございますか。
 特によろしいでしょうか。特に御質問、御意見はございませんか。
 分かりました。どうもありがとうございました。
 それでは、審議事項に移らせていただきたいと思います。各領域の評価につきまして、まず最初に、事務局から資料の御説明をお願いします。
○寺井健康課長補佐 本日は、最終評価における各領域の評価の1回目ということになります。参考資料5として、第13回でもお示ししましたスケジュールをお送りしておりますが、本日から3回かけまして、第14回・第15回・第16回の3回で各領域の評価について御議論頂く予定にしており、本日は、「別表第二:主要な生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底に関する目標」として、(1)がん、(2)循環器疾患、(3)糖尿病、(4)COPDの4つの領域を御議論いただきます。
 資料3-3として、健康日本21(第二次)の概念図や、各領域の目標設定の考え方などをまとめた図をつけておりますが、1ページ目が、健康日本21(第二次)の概念図でございます。こちらの2層目にございます、②でお示ししております「生活習慣病の発症予防・重症化予防」が、本日御議論いただく領域になります。
 2ページ目に、生活習慣病と生活習慣の関連を示した図をおつけしております。禁煙、食事、身体活動、飲酒など、各領域の詳しい御評価につきましては、第15回・第16回の生活習慣の各領域で詳細に御評価いただく予定ですが、本日は生活習慣病という切り口で、がん、循環器疾患、糖尿病、COPDの御評価を、一次予防にも言及しながら御評価いただければと思っております。
 次のページに、この4領域の目標項目の一覧をお示ししております。本日は、これらの項目について御議論いただく予定です。
 次のページ以降は、健康日本21(第二次)策定時に作成された各領域の目標設定の考え方の図のまとめとなりますので、説明は割愛させていただきます。
 次に、本日の資料に関しまして、審議事項に関する資料としましては、資料1、資料2、資料3をおつけしております。資料1が評価方法の修正案でございます。資料2が本日の4領域の評価のまとめになります。そして資料3が、各領域の御担当の先生方に御作成いただいた評価シートでございますが、資料3-1が、様式1として目標項目毎のデータや分析結果などをまとめたデータ集でございます。資料3-2が、様式2としてご担当の先生方にご執筆いただいた領域毎の評価のまとめになります。
 初めに資料1から御説明させていただきます。こちらは、第13回の専門委員会のときにもお示ししました、最終評価の方法についての資料でございますが、その後、一部修正が生じておりますので、本日事務局の修正案として提示させていただきたいと思います。赤字の箇所が前回からの修正点になります。
 初めに4ページ目を御覧ください。目標項目全体の評価のつけ方に関しまして、指標や項目が幾つかある目標項目に関しましては、それぞれの項目やそれぞれの指標を5段階で評価していただいた上で、平均点を取る形で目標項目全体としての評価をつけるということになっておりました。その際の平均点の取り方としまして、Aを5点、Bを4点、Cを3点、Dを2点として計算していただくのですが、前回提示した案では、小数点以下は四捨五入して計算するとしておりました。その後、精査させていただいた結果、四捨五入しますと、幾つか違和感のある評価になる目標項目が出てきましたので、五捨六入に変更してはどうかと御提案させていただいております。違和感のある目標項目の例としまして、例えば指標が2つあり、1つがA、1つがBという評価になっている場合です。Aは「目標値に達した」という評価、Bは「目標値に達していないが、改善傾向にある」という評価でございます。つまり、目標値に達しているものが1つ、達していないものが1つという結果ですが、このような場合に、四捨五入しますと全体として目標値に達しているという結果になってしまい、やや違和感があるかと思いますので、このような修正案を提示させていただいております。
 修正点の2つ目でございます。資料3ページ目の下のほうを御覧ください。評価のBに関する補足でございます。現在、最終評価は、多くが令和元年のデータで御評価いただいている状況ですので、当初、目標年度として設定しておりました令和4年度や、令和4年度以外の目標年度もございますが、まだその目標年度に達していない状況での評価になっております。そこで、Bの「目標値に達していないが、改善傾向にある」に関しましては、「B」:現時点では目標値に達していないが、設定した目標年度までに目標に達しそうなものと、「B*」:目標年度までに目標達成が危ぶまれるもの、を分けて御評価いただくということで、前回、御了承いただいておりました。指標の評価方法に関しましては、9ページをご覧ください。前回、横山先生に御説明いただきました資料を、本日別添として資料1の最後につけておりますが、このようにグラフを描いていただきまして、直近値がベースライン値と目標値を結んだ青の点線の上にあるか下にあるかで、将来目標を達成しそうか目標達成があやぶまれるかを判定しようということになっておりました。指標に関しましては、この評価方法で特に問題ないかと思いますが、では目標項目全体としての評価をつけるときに、平均点を取った後、総合評価として「B」と「B*は分けるのかという議論が残っておりまして、今回追加で評価方法案を記載させていただいております。
 4ページ目に戻っていただきまして、目標項目全体の総合評価に関しましても、指標の評価方法と同じように、設定した目標年度までに目標に達しそうなものを「B」とする、つまり、目標年度に「A」となりそうな目標項目に関しては現在「B」と評価する。一方、目標達成が危ぶまれるもの、つまり目標年度に「B」となりそうなものは、現状として「B*」として評価する、としてはどうかというように事務局案を提示させていただいております。
 少しややこしくなりますが、例を2つ提示させていただいております。1つ目は、指標が2つあるような目標項目で、現在、指標の評価がA+B、つまり1つはA、1つがBとなっているような場合でございます。Aはもう既に目標値に達しておりますので、目標年度になってもAのままで変わらないですが、Bは目標年度までに目標を達成しそうなものという評価でございますので、目標年度にはAとなり、この2つの指標の評価は、目標年度にはA+Aの評価になろうかと思います。全体として平均を取って評価しますと、目標年度には全体としてAになる見込みでございます。このような場合、1つ上のポツに書かせていただいていますとおり、目標年度に全体の評価が「A」になりそうな目標項目は現状「B」として評価するということになりますので、本目標項目としての総合評価は「B」という評価になります。
 2つ目の例でございますが、現状AとB*の評価になっているものの平均点の取り方でございます。B*は、目標年度までに目標達成が危ぶまれるものという評価でございますので、目標年度にはこの2つの指標はA+Bになっていることが想定されます。AとB、平均を取って五捨六入しますと、目標年度には全体としてBになる見込みでございます。同じく1つ上の説明のとおり、将来的に「B」になりそうなものは、現状「B*」として評価するということになりますので、この場合の目標項目としての評価は「B*」という評価になります。修正点の2つ目につきましては以上でございます。
1つ戻りまして、3ページ目、3つ目の修正点でございます。前回、A、B、C、D、Eと書かせていただいたときに、Eは、「中間評価時に新たに設定した指標又は把握方法が異なるため評価が困難」と説明させていただいておりましたが、この説明以外にも、現在データが取れない等の理由で評価が困難となっている指標がございまして、それらもEと分類するのが適切かと思われますので、Eの説明から「中間評価時に新たに設定した指標又は把握方法が異なるため」という記載を省きまして、Eは「評価困難」に変更させていただきたいと思っております。
 事務局案として変更点は以上でございますが、この変更点に従って、資料2についても続けて説明させていただきたいと思います。
 資料2は、本日の4領域分の評価をまとめた資料でございます。先ほどの評価方法の変更点とともに概略について説明させていただきたいと思います。
 1ページ目、がん領域の目標項目は2つありまして、「(75歳未満のがんの)年齢調整死亡率の減少」はA、「がん検診受診率の向上」はBという評価でございました。この2つ目の目標項目のB評価のところに先ほどの変更点が関わってきますが、指標としましては、お示ししておりますとおりBやB*、Aという評価になっております。これらを先ほどの変更方法に合わせて判定しますと、総合評価はBという評価になります。
 2ページ目に行きまして、循環器疾患の領域でございます。循環器疾患は5つの目標項目がございますが、4番目、5番目の、「メタボリックシンドロームの該当者及び予備群の減少」、また「特定健康診査・特定保健指導の実施率の向上」に関しましては、糖尿病領域にも同じ目標項目がございますので割愛し、循環器領域では上の3項目について御評価いただいております。
 1つ目、「脳血管疾患・虚血性心疾患の年齢調整死亡率の減少」でございますが、こちらはAという評価。「高血圧の改善」に関しましては、男性・女性で指標がそれぞれありまして、B*とBとなっており、先ほどの変更点にかかってきますが、先ほどのルールを当てはめますと、B*という総合評価になります。3つ目、「脂質異常症の減少」でございますが、こちらはCという評価でございました。すみません。1つ戻りまして、補足でございますが、「高血圧の改善」に関しまして、「最終評価(直近値)」の欄に、平成30年と令和元年のデータが列記されているかと思います。高血圧に関しましては、国民健康・栄養調査をデータソースとしてデータを取っておりますが、国民健康・栄養調査におきまして、平成30年と令和元年の間で血圧計の変更がありました。既に令和元年の血圧のデータが出てはいるのですが、連続性を考え、今回はそちらを使わずに、ベースラインから同じ血圧計を使っていた平成30年のデータで評価することとしております。
 1枚おめくりいただきまして、糖尿病領域でございます。糖尿病領域は6つの目標項目がございます。先ほどの「メタボリックシンドロームの該当者(及び予備軍の減少)」及び「特定健康診査・特定保健指導の実施率(の向上)」も含めて6つでございます。1つ目、「合併症(の減少)」は、糖尿病腎症による年間新規透析導入患者数を見ておりますが、こちらは変わらないという評価でC、2つ目、「治療継続者の割合の増加」に関しましても、有意な変化なく評価はC、3つ目、「血糖コントロール指標におけるコントロール不良者の割合の減少」に関しましてはAの評価でございました。4つ目の「糖尿病有病者の増加の抑制」に関してですが、「最終評価(最新値)」の欄に現在、「検討中」と書かせていただいております。※マークをつけておりまして、下に「現在研究班で推計方法を検討中」と書かせていただいているのですが、糖尿病の有病者数につきましては、国民健康・栄養調査の大規模調査のときに計算しておりました。国民健康・栄養調査の大規模調査は、一番新しいものが平成28年でして、その後、令和2年に行う予定でありました大規模調査につきましてはコロナの影響で中止となっておりますので、現在、平成28年の有病者数を最後にデータがないという状況になっております。こちら、※マークで書かせていただいたとおり、新しい推計方法について現在検討中でございますが、現状として数値がありませんので、E、評価困難という結果にしております。5つ目、「メタボリックシンドロームの該当者及び予備群の減少」でございますが、こちらはD、悪化しているという評価でございました。最後、「特定健康診査・特定保健指導の実施率の向上」に関しましては、B*という結果でございます。
 最後、COPD領域でございますが、目標項目は1つでございまして、「COPDの認知度の向上」でございます。こちらは機械的に判定しますと、ベースラインから最終評価の値までで5%以上の相対変化がございますので、Bという評価にはなりますが、目標値の80%から見ますと20%台で推移しており微々たる変化ということになりますので、御担当の西村先生ともご相談させていただき、C「変わらない」という評価にしております。
 結果の概要及び「最終評価の評価方法について」の変更点についての事務局案に関しまして、事務局からは以上でございます。
○辻委員長 ありがとうございました。それでは、評価方法の変更につきまして、横山先生から何か補足いただけますでしょうか。
○横山委員 科学院の横山です。御説明ありがとうございました。
 今、御説明がありましたとおり、変更点としては、従来、前回は四捨五入と考えていたのを五捨六入と。例示として、AとBの場合は四捨五入だとAだけれども、五捨六入ならBということで、そちらのほうが考え方がすっきりするのではないかということ。あとは、例示としてCとDの場合も同じように考えると、四捨五入だとCとDだとCになってしまうのですが、五捨六入だとDということで、より、そのほうがいいのではないかという考え方だと思います。
 それから、幾つかの領域の、実際に評価してみた場合に、それが各領域の先生方のお考えとずれていないかということも気になったので、幾つかの領域ではお聞きしていただいたのですけれども、各領域の先生方の考えとも、このルールであまりずれることがないということで、いいのではないかということです。
 それから、あとは総合BとB*、これはちょっとややこしく聞こえたかもしれませんけど、考え方としては個別指標と一緒で、評価年度に目標を総合で達成しそうかどうか。総合で達成しそうかどうかというのは、五捨六入のルールで計算した場合に達成しそうかどうかで、そのルールで考えて、個別指標の組合せで、個別指標Bは評価年度にAになることが予想されて、B*はBになることが予想されるということで、それらの組合せで考えていけば、先ほど、がん検診のところ、たくさん個別指標がありましたけれど、そのルールでいくと、すっきりと判定できるということで、この方式がいいのではないかということでございます。
 私から補足は以上です。
○辻委員長 ありがとうございました。それでは、最初に評価方法の変更ということにつきましては、委員の皆様から何か御質問、御意見はございますでしょうか。西村先生、その後、吉村先生。
○西村委員 北海道呼吸器疾患研究所の西村でございます。
 表記の問題で、実は昨日、個別の御相談を受けたときも申し上げたのですけれども、先ほど説明がありましたように、目標年度までに目標に達しそうなものと、危ぶまれるものに関して、2つにクラス分けしたということ自体は、僕は大変結構だと思うのですけれども、その際に、例えばBとB*に分けていますけれども、Bというのは結局、Aになりそうなものですから、よりよいもの。そうすると、例えばBのほうを「B」みたいにして、結局、改善はしていてもBにとどまるものは、そのまま「B」にしておいたほうが、第三者が見たときに、より分かりやすい表記になるのではないかということで、考え方自体はそのままで結構だと思うんです。あくまでも表記の問題として、よりよいもの、Aに近づくものに対して、「B」というような形で表記したほうが分かりやすいのではないかということを、昨日申し上げたのですけれども、皆様の御意見も伺いたいと思います。以上でございます。
○辻委員長 では、まず吉村先生のお話を伺ってから、全体で議論しましょうか。
○吉村委員 すみません。私も今、西村先生と同じことを御提案しようと思っておりました。
 それと、あと、五捨六入という考えは正しいというか、反映しているのはいいと思うのですが、やや、事務局の方の御説明だと、AとBがあって、足すとAになってしまうから違和感があるという言い方を、御説明していたのですが、それは逆に見たら、AとBを足して、五捨六入だと、ではBにならないということであれば、それはまた、Bから見たら違和感があるという言い方になってしまうのではないかと。そういう捉え方をする、何というのか、五捨六入にしましたという理由にしては、少し弱いような気がしました。ですので、判定するからには、四捨五入程度で1ランク上げられてしまうと困るから、厳しめに判断するために五捨六入にしたというふうな説明をつけたほうが、要するに、半々であるというものを上に上げるという考えは、私たちは取らないのだと。完全にそっち寄りでなければやらないという意味で五捨六入にしましたという理由づけがあれば、何にしても理由があれば別にそれでいいと思うので、五捨六入でいいかと思うのですが、そこの根拠というか、なぜこれを使わなかったのかという根拠を少し明快にしたほうがいいかと思います。これはコメントでございます。よろしくお願いします。
○辻委員長 では、津下先生。
○津下副委員長 ありがとうございます。今のルールについてお伺いします。生活習慣病の部分については、このほうが違和感がないということですけれども、健康日本21の全部の指標をみたときに、このルールでこの分野はやったけれど、ほかの分野になったらやっぱり違和感が出てきてしまったということになると、後でまたルール変更が必要になってきたりするという危険性もあります。全体を見られての御判断だったかということのご確認です。それから今、吉村先生の話と同じように、「違和感」という言葉をより具体的にして、こういう方針なので、このルールにしましたという御説明を頂ければと思います。この2点でございます。以上です。
○辻委員長 ほかにございませんか。よろしいですか。
 では、まずこの時点で事務局あるいは横山先生からコメントを頂きたいと思います。いかがでしょうか。横山先生、お願いします。
○横山委員 横山です。御意見ありがとうございます。
 幾つかありましたけど、まずBの記号、アスタリスク。プラスのほうが分かりやすいといえば確かに分かりやすいかなで、あとは、これまで中間評価では、アスタリスクで危ぶまれるものにしていたとか、データヘルス計画でも実はアスタリスクが危ぶまれるものにしていたかと思うので、その辺を変えると混乱するかもしれない。ただ、分かりやすさという点では確かに「B」というのもありかなとは思います。
 それから、あと吉村委員からコメントのありました考え方で、厳しめに取っているのだと。私もそういう認識。「違和感」と言ったけれど、これはやはり厳しめに取ったほうがいいのではないかという意味合いで、五捨六入というほうがいいのかなと私は考えておりましたので、説明するときに、厳しめに取るのだという説明にしてもいいのかなと思います。
 それから、全体を見てこのルールにしたかということですが、一応ほかの指標についての、これは事務局にお話しいただいたほうがいいかもしれないですが、いかがでしょうか。今日出てこないような指標については。
○辻委員長 事務局、お願いします。
○寺井健康課長補佐 事務局でございます。この件につきましては、現在データが揃っている目標項目のみになってしまいますが、全領域分一通り精査させていただきまして、例えば身体活動・運動等の領域にもこの問題に関わってくる目標項目がございますので、その領域のご担当の先生にはヒアリングさせていただきまして、現在の事務局案としております。
○横山委員 ということなので、ほかの領域でも、この後、そんなに違和感が出てくることはないのではないかということかと思います。
○辻委員長 いかがでしょうか。津下先生、今、お話があったように、基本的に全ての領域でも共通する話だということ。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
○津下副委員長 了解しました。
○辻委員長 あと、厳しめに取っているということでお話がありましたけれども、これもオーケーかなと思います。そのような形で、これからもきちんと声明を出していっていただきたいということですね。
 あと、「B*」と「B」なのですけれども、一次のときも「B*」だったということもありますので、あまり変えないほうがいいのではないのかなというのが御意見でもありましたけれども、それにつきましてはいかがでしょうか。
 よろしいでしょうか。現状としては、事務局提案のとおり、「B*」のままで進めていきたいなと思うんですけど、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 ありがとうございます。それでは、評価方法の変更につきましては、この程度でよろしゅうございますか。ほかに追加はございますか。よろしいですか。
 それでは、各領域のお話に移りたいと思います。各担当の先生から、それぞれの領域の最終評価の説明をお願いして、その後、全体で議論いただくということにしたいと思います。まず、主要な生活習慣病の発症予防と重症化予防のうち、がん領域につきまして、若尾先生、お願いいたします。
○若尾委員 ありがとうございます。それでは、私から報告させていただきます。
 資料3-2の、めくっていただきまして1ページからです。がんについては、今、日本人の死因の第1位となっているということで、がん対策基本法、がん対策推進基本計画などの施策、がん対策が進められているというところです。
 2ページの上を出してください。指標としましては大きく2つで、1つは75歳未満の年齢調整死亡率の減少ということと、2番でがん検診。これが、5がん検診で男女別ということで細かい指標になっております。
 その少し下を見せてください。図1です。まず、75歳未満の年齢調整死亡率。これは、このように明確に減少傾向になるということで、これはA評価とさせていただいています。
 次の3ページをお願いいたします。こちらにつきましては、1つ、そうですね、図4の、男性の肺がんだけは、もう既に目標を達成しているのですが、これはAですが、そのほかはBとなっています。特に図3であったり、あるいは、赤い点が実際の値なんですけど、図7、さらには図8、この3つについては目標達成が難しいということで、B*という評価にしております。
 その次からずっと、どんどん進めていただいて、こちらからは各がん種ごとの都道府県別の受診率を示しております。こちらでお示ししたいのは、このように都道府県格差があるということと、少し戻っていただいて、そこの細かい15以降につきましては、事前確認のときに、低いところはずっと低いのかというようなことが分かるようなデータはありませんかという御指摘を頂きまして、これは少し細かくなるのですが、各がんの受診率について、都道府県別のものを出しています。1つ、目立っているのは、熊本が震災の影響で2016年のデータがないということでゼロになっていますが、そのほか、おおむね、平行のような形で動いている。細かい上下はありますが、基本的にはやっぱり、低いところは低く、高いところは高いというような傾向があります。
 少し進めてください。大体、増加傾向があるのですが、20のあたり、子宮頸がんが結構、非常に上昇も緩やかというような状況です。
 さらに図23につきましては、これもやはり事前の確認の際に、今度、県内の市町村別の受診率というのはありますかというような御指摘を頂いて、これは、単にこれでどう解析するというものではなくて、このようなものがありますというサンプルとしてお示ししているものなのですが、それと、先ほどの都道府県別は国民生活基礎調査なので、住民の方に対するアンケートで、職域も地域も含んでいるという形ですが、こちらの23につきましては住民検診で、特に対象となるのは、国民健康保険の被保険者を対象とした調査で、このように格差があるということを示しているものです。特に市部のほうが影響が大きいんですけど、市部が高ければ、全体、都道府県としても高くなる。市部が低いと、それに引っ張られて県全体も低くなるというようなところです。ただ、これを見ることで、低い市町村について積極的に介入することで全体を上げることができると考えます。
 スライド24に進めてください。こちらは今回は、年齢階級別に見たものです。特に低い子宮頸がんについて年齢階級別に見ますと、検診対象は二十歳以上なのですが、やはり二十歳代が極端に低い。さらに、25から30も低いというところ。さらに、スライド25に進めてください。施策として初回の検診にクーポン券を配っているのですが、乳がんが40で配るクーポン券に比べまして子宮頸がんのクーポン券の利用率が低いということで、この辺が今後の対策の要検討する部分ではないかと思います。
 それから、次のページです。こちらは、がん検診の指針が平成28年から変わりまして、今まで胃がんはレントゲンで毎年40歳以上だったものが、平成28年から内視鏡も可ということで、内視鏡は50歳以上、2年に1回ということで、ちょうど左から2本目のバーがありますが、胃がんについては今、2年に1回と、毎年のものと、2つの指標があるということで、今後これは検討が必要なものとして挙げさせていただいております。
 13ページを示してください。13ページには、まず1つ目の指標で、「年齢調整死亡率の減少」。これについては、次にありますけど、「一次予防」及び、ずっと進めていただきまして②、二次予防として「がん検診の受診率の向上」。さらに進めていただいて、次のページの「関連する取組」ということで。「関連する取組」という記載にしたのですが、実は、医療の進歩あるいは医療の均てん化の部分も、全体の年齢調整死亡率を下げるのに大きな影響がありますので、この辺は若干変えたいと思っております。
 それから16ページ、「今後の課題」としまして、少しグラフでも示しましたけど、実際に低いところはずっと低いですので、そこをドリルダウンして、特に低い市町について、検診の精度管理の徹底、あるいは受診勧奨、コールリコールなどをしっかりと進めていくというようなことで、その中には1つ、例として挙げさせていただきましたけれど、ナッジを利用したような受診勧奨も今後考えていくというところがあると思います。
 それから、17ページに進めてください。先ほども少し触れたのですが、今の受診率というのは、国民生活基礎調査という、ざっくりとしたアンケートで、回答者によっては、それが本当に検診かどうか、普通の受診、診療で受けたものも検診と勘違いしている方もいる中で、非常に曖昧なデータです。しっかり受診率を把握するには、職域のデータと、あと住民検診のデータをしっかりと取るというようなことが、今後やっぱり、それの精度を上げることで、より正確な推測ができるものと考えます。
 それから最後、新型コロナなのですが、20年度の状況なんですけど、最初、20年度の初頭、4月、5月、6月は、本当に3割ぐらいまで落ち込んでいたのですが、その後、後半、夏以降、盛り返して、最終的には9割ぐらいの受診率まで回復したという状況です。
 以上となります。
○辻委員長 若尾先生、どうもありがとうございました。それでは、がん領域の説明について、委員の皆様から御質問、御意見を頂きたいと思います。全体として10分程度、用意していますので、どうぞ忌憚のない御意見を頂きたいと思います。
○羽鳥委員 羽鳥ですけど、よろしいでしょうか。
○辻委員長 どうぞ、羽鳥先生、お願いします。
○羽鳥委員 肺がんの男性が下がった理由を、何か推定できるものがあったら教えていただきたいことが1つと、あと子宮頸がんは、ワクチンがやっと勧奨にかじを切ることになったんですけど、今後やっぱり10年間ぐらいは子宮頸がんが増えると推定されます。が、何かもう少し良い指標というのがあるようだったら御示唆いただけますでしょうか。若尾先生、いかがでしょうか。
○若尾委員 御質問ありがとうございます。すみません。1つ目の、肺がんの男性が下がったというのは、死亡率が下がったということですか。受診率のことですか。
○羽鳥委員 受診率、Aという評価ですよね。男性の肺がん。
○若尾委員 Aは目標を達成しているということで。
○羽鳥委員 そうですね。肺がんの受診率は上がったというか。
○若尾委員 そうです。
○羽鳥委員 これは何か理由があるでしょうか。
○若尾委員 そこの理由ですね。これは、やはりレントゲン写真とか。これは本当に推測でしかないのですが、一般的になじみのある検査で、職域などでもやっているのですが、だから、がん検診ではないものも、レントゲンを受けて、肺がん検診等を受けているという誤解も含めて、多くの方が受けていると思われているのではないかというところがございます。
○羽鳥委員 分かりました。そうしたら、そのコメントも書き込んでいただいたほうがよろしいかと思います。
○若尾委員 そうですね。ありがとうございます。
 それから子宮頸がんです。子宮頸がんが上がらないということなんですけど、やはり若い年齢層へのアプローチをしっかりと積極的に進めるということと、先生が御指摘のように、実は今日の資料には触れていないのですが、一部ありますが、大体、ほかのがんの死亡率が下がっている中、頸がんと乳がんは死亡率が横ばいなんです。やっぱりほかが下がっている中、減っていないというところは積極的に対策を進めないといけない中で、やっぱりHPVワクチンをしっかりと進めることで、頸がんの死亡率を減らすということにつながるのではないかと考えております。
○羽鳥委員 ありがとうございました。
○辻委員長 ほかにどなたかいらっしゃいますか。西村先生、どうぞ。
○西村委員 北海道呼吸器疾患研究所の西村でございます。肺がんについて、もう一つ御質問させていただきたいのですけれども、若尾先生はもちろん御存じだと思いますけれども、肺がん検診の関係、普通のレントゲン写真というのが必ずしも有効ではないというデータが、欧米ではもう常識になっていますよね。一方で、ハイリスクグループに対してはCT検診というのが、その有効性を確かめられたということがあって、日本では、東京をはじめとして一部の地域では、CT検診が非常に行われているのですけれども、この辺について、きちんとしたコメント、メッセージを発しておいたほうがいいのではないかと思うんですけど、いかがでしょうか。
○若尾委員 ありがとうございます。そうですね。検診のアセスメントというところで、今は厚労省の指針に基づいた検診ということで、死亡率減少のエビデンスがあるものが指針で推奨されている中、CT検診など、アメリカのスタディーなどで有効性を認めるものも出てきていますが、残念ながらまだ日本では、そこのところのコンセンサスが得られていないという状況だと考えています。また、どうしても検診の評価は時間がかかるので、若干遅れているというところはないんですけど、今あるのは、レントゲンによる死亡率減少効果があるということで、今は、国では、肺がん検診を指針として勧めているという段階です。ただ、先生がおっしゃるように、コメントとして、今後の課題ですね、今後、検診の在り方を考えるに当たっては、記載するほうが好ましいのではないかと思います。また事務局と相談して検討したいと思います。どうも御指摘をありがとうございます。
○辻委員長 ほかにどなたか、御質問、御意見はございますか。吉村先生、どうぞ。
○吉村委員 先生、どうもありがとうございました。ちょっと無知で申し訳ないのですが、お教えいただければと思うのですが、胃がんに関しまして、血清で調べる検診、ヘリコバクターと、萎縮性胃炎で判定する方法、一時期はやったかと思うのですが、今でも幾つかの検診項目では実施されているところがあるかと思うのですが、それについてはどういうふうに取り扱うのかという点と、それから、ちょっと無知で申し訳ないですが、内視鏡検診が入ったのはとてもいいことだと思うのですが、何で2年に1回になっているのか。いずれ1年に1回になって、レントゲンに取って代わっていく可能性があるのかというようなことについて、御指導いただければと思います。
○若尾委員 御質問ありがとうございます。まず最初、リスク分類の、いわゆるABC検診だと思うのですが、これは確かに一部の自治体では実施されております。ただし、これはやっぱり、実行可能性、実効性ということを考えると非常に複雑なところで、リスク分類して、その対象ごとに違った勧奨あるいは違ったフォローアップをしないといけないということもあって、では全ての市区町村で実効性があるかというところが1つネックになっているのではないかと、私は又聞きになってしまうのですが、そういう話を聞いたことがあります。ただ、有効性はあるのですが、では本当にそれを全国でしっかりと実施できるかという、今度、マネジメントの部分ですね。そこがうまく確立されて、もっと実施できるということであれば、取り入れていくものだと思われますが、現時点では、まだ国では全国で進めていないという段階になっております。
 それから、2点目の内視鏡検診なのですが、これも内視鏡検診によって、レントゲンよりも、より早期のものが見つかるということで、毎年フォローしなくても、2年に1回でしっかりと、死亡を減らすものを見つけて、死亡を減らすことが期待できると。これもスタディーによって、2年に1回で問題がないということが確認されたために、指針にはそのように設定されたという状況です。
○吉村委員 先生、それでは、例えばこの年は胃カメラで、胃カメラを受けない年はレントゲンというような受け方をする方も出てくる可能性はあるのでしょうか。
○若尾委員 ただ、この指針自体が今、実は内視鏡で50歳以上・2年に1回が標準となっていて、ただし、当面の間、レントゲンについては、40歳以上・毎年も受診できるというような書きっぷりなんです。だから、どちらかというと、レントゲンが残っているのは暫定措置のような形で、だから、ずっと今後レントゲンが残るというよりは、だんだん内視鏡の体制が整備されてきて、これも、だから全国で内視鏡による胃がん検診が提供できるような体制が整備されたら、内視鏡に逆に移っていくものではないかと思われます。
○辻委員長 では、近藤先生、お願いします。
○近藤委員 資料のページ数で言いますと、16ページ・17ページ辺りについてです。「今後の課題」ということで、「がん検診の受診率」及び、次のページの「指標設定やデータに係る課題」になるかと思うのですが、厚労科研費の辻班で前回、結構、話題になったのが、例えば、がんということなのですけれども、こういう項目、疾患別のところには、基本的方向に示されている健康格差の縮小という視点に関わるものがあまり入っていないのだけれども、例えばアメリカのCDCなどのデータを見ると、がん検診の受診率が低所得層や低学歴層で低いとか、そういうことがもう分かっていて、日本ではそういうことがあまり分析されてないから話題になっていないのかどうか。それがデータの制約等にあるのだとすれば、今後そういうことを整備すべきだということが、指標設定やデータに係る課題でしょうし、もう既に分析されていて、日本ではそういうことがないということなのかどうか、その辺を教えていただけないでしょうか。
○若尾委員 御指摘ありがとうございます。すみません。私はその辺りのデータを存じ上げていませんので、国民生活基礎調査で、そこは取れていると思うのですが、検診受診率との相関について出せているかどうか、すみません、確認ができておりませんので、それも含めて確認して、今後の課題として必要があれば、これもまた事務局と相談の上、追記したいと思います。どうもありがとうございます。
○近藤委員 御参考までに、がん検診だけくくり出した集計分析は私はやったことがないのですけれども、検診一般でひっくるめたものにおいては、教育歴であったり所得であったりで、やはり、そのような格差が日本の高齢者においてはあるということは確認したことがございます。
○若尾委員 ありがとうございます。
○辻委員長 岡村先生、手が挙がっていますが。
○岡村委員 すみません。がん検診については、とにかく分母がはっきりしない中でいろいろ頑張っておられて大変だなというのが、いつも思っているところで、結局、企業とかでやっているものがもう野良状態になっていて、何をやっているかさっぱり分かりませんよね。だから、結局、労安法の項目ではないから、がん検診をやめましたというところも幾つか私は知っていますし、はっきり言うと、やる義務はないわけです。なので、そこの位置づけによって、かなり変わってきて、揺らぎがあり、レントゲンは面倒だから、みんなABCに変えましたというところも知っているしという感じで、多分、全体として、そこの絵が見えていないですよね。胸のレントゲンだけは労安法の項目で、これは、がん検診としてではなく入っていたものが、まんま残っているので、胸のレントゲンだけは全部取っていますみたいな形になっていて、それは法律に書いているから絶対やるみたいなことで、これは、後の多分、特定健診の受診率もかぶってくるんですけど、労安法で強制力があるやつはやっぱり強くて、去年の本当に皆が自粛していた緊急事態宣言のときを見ても、結局、本人部分は割と、特定健診で見ても後でリカバーしていて、扶養家族が結構、壊滅的に下がっていたりというような状態になっているので、どうも強制性があるかどうかみたいなところと、何の法律に書き込んであるかみたいなところがかなり効いていそうで、これは、がんのところはすごく大変なんだなと思っておりまして、要するに、企業で何をやっているかを収集するすべがないというので多分苦労されているので、生活基礎調査で取っているということで、これは先ほどの近藤先生の質問とも関連するんですけど、あれは、分母が分からない受診率しか出しようがないというのは、永遠の課題でずっと来ていると思いますので、多分、保険者や企業に働きかける方法もやっていかないと上がらないですし、保険者は全くがん検診に興味ないところがあります。だって、うちの仕事じゃないもんと言われたことがありますので、いろいろそういうところがあるというのも、事実としては恐らくあるだろうと思っています。非常に問題点は大きいなと思います。
 すみません。コメントみたいになりました。
○若尾委員 ありがとうございます。御指摘のとおりなのですが、まだ職域について、昔は本当に野放しだったのが、ようやくガイドラインもできて、職域も地域住民検診と同じ項目をしてくださいというところまではお示しはできているんですけど、先生が御指摘のとおり、全く強制力があるわけではないので、企業によっては受ける・受けないというところが分からないところで、その中で、協会けんぽなどのデータを活用して、本当に推測、予測でしかありませんが、全体像として、今の国民生活基礎調査よりは、より精度の高いものが取れるのではないかと思っています。
 それと、あと途中でお示しした市区町村別のデータも、これは昔は全人口を対象として、年齢で対象としていたんですけど、そこにはもちろん企業にお勤めで、企業で受けているような方も入っている中、これも厚労省の検討会の中で、国民健康保険の被保険者を対象とするということで、少し絞り込みがされたということで、いろんな工夫はされつつあるのですが、いずれにせよ、やっぱり本当にしっかりとした受診率、分母が取れないというのは御指摘のとおりですので、その辺の記載が非常に、さっぱりとして書いてしまったのが、もっとしっかり追記したいと思います。どうも御指摘ありがとうございます。
○辻委員長 ありがとうございます。これについては私も一言申し上げたいと思うのですが、健康日本21(第二次)の、1つの大きなテーマとして、あるいは次期もそうだと思うのですけれども、健康格差の縮小というのがあるわけですけれども、日本国内であまたある健康格差の中で、がん検診受診ほど大きな格差もないとぐらい思ってしまうんです。ほかの先生がおっしゃったみたいに。つまり、地域の人たちと職域の人たちで全く対応が違っている。地域は対策型検診で検診方法などに関して一定の基準が示されているのですけれども、職域は全くそういうことはない。任意型ということで、完全に野放しになっていて、さらに企業で行っているところも結構ありますが、その配偶者の人たちは対象になっていないところもあって、非常に大きな格差が制度的に野放しにされているというところがありますので、これは今後、次期の健康日本21の課題としてご検討いただく、あるいは、がん対策推進基本計画の第4期の議論が始まると思うのですけれども、そういったところで真剣に議論していただきたいと私は思っております。
 あと、中村先生が手が挙がっていますので、がんについては、中村先生から頂いて、一応閉じたいと思いますけれども、中村先生、いかがでしょうか。
○中村委員 先ほどの近藤先生の御質問に関連してなんですけど、所得とがん検診の受診率の関係については日本では研究論文が発表されています無料クーポンによって、経済格差による受診率の格差が改善することが論文として報告されていることをお伝えしておきたいと思います。ファーストオーサーは、大阪国際がんセンターの田淵先生で、英文の論文です。
 次に、がんに限らないのですけれども、「関連する取組」においてさまざまな取組がされたことを書いていただいているんですけど、この10年間、これらの取組の中で、政策として、また事業として、効果評価されたものがあれば、そういったことも記載しておくと、第三次のほうにつながるのかなと思いました。本来であれば、目標達成に必要な政策について、政策の実施状況をモニタリングし、効果を調べておくことが、連動されるべきだと思います。第三次に向けて、そのようなことができると望ましいと思います。第二次の最終評価においては、今申し上げたように、評価できているものだけでいいと思うのですけれども、書き込んではどうかなと思いました。
 以上です。
○若尾委員 どうも、御指摘ありがとうございました。検討させていただきます。
○辻委員長 どうもありがとうございました。これは、がんに限らず全ての領域に関わる御提案だと思いますので、後でまた事務局と相談しながら、先生の御意見を反映できるようにしたいと思います。どうもありがとうございました。
 それでは、がんの領域につきましては以上とさせていただきます。どうもありがとうございます。
 続きまして、循環器疾患領域について、岡村先生、お願いいたします。
○岡村委員 そうしたら、循環器のほうの御説明をしたいと思います。
 今、資料をアップさせていただきましたけれども、「背景」としてはありますけれども、「循環器」と書いていますけれども、これは脳血管疾患と心臓病を合わせるということになりますので、両方合わせますと、がんに迫るぐらいの死亡者がいるということがあるのと、それから介護が必要となった主要な原因の一つであるというところが、1つ特徴的なことだろうと思います。
 それで、循環器疾患の予防は、もう国際的に、ある程度、フォーマットが決まっていまして、危険因子の管理により減りますと。はっきりしているのは、血圧と、脂質異常のうちの高LDL、それから喫煙と糖尿病の対策をやる。まあ、糖尿病はまた若干、幾つか議論点があるのですけれども、基本的にはこの4つが主要なリスクファクターで、これの改善をどうするかということと、これの管理をすると循環器疾患は予防できるということが分かっていて、あと、心房細動とか特殊なものももちろんあるのですけれども、基本的にはこれがメジャーなものだというのが国際的な標準になっているだろうと思います。
 それで、目標設定の項目等で、そこに示しましたように、一番の指標は、年齢調整死亡率、脳血管疾患と虚血性心疾患ということで、心臓病はまた、いろんなものが中に入っていて、これも語り出すといろんな話が出てくるので、目標としたのは、心筋梗塞とその他の虚血性心疾患を合わせたものを虚血性心疾患と定義して、年齢調整死亡率をやっておりますけれども、こちらは全て改善している。あと、血圧については、国民全体にちょっとずつ血圧を下げてもらおうという、これはポピュレーションアプローチなので、収縮期血圧の平均値の低下という目標設定になっているということと、それから脂質異常症については、全員コレステロールを下げるというような目標、血圧のような設定ではなく、高値の人の割合を減らすという、若干、ハイリスクアプローチ的な展開になっていて、これもちょっとそれぞれまた理由があるのですけれどもということになります。それで、数値として総コレとLDLを両方使っているということになります。あと、4・5のメタボと特定健診のところにつきましては、糖尿病領域との関連が強いので、これは後で津下先生から御報告があるかと思います。
 それで、循環器領域の目標設定は、ここにありますように、1層目に生活習慣。降圧剤の服用をどこに置くかというのは、また議論があるのですが、1層目に生活習慣があり、2層目に、先ほど言っていた主要な危険因子が4つあり、最後のところに、それぞれの年齢調整死亡率があるという層構造になっています。それで、これは実際に目標をつくるときに、本当は改善してから、上が改善するまでの時間的な経過やトレンドをどうするかとか、やり出すと複雑なことがいっぱい出てくるのですけれども、それで組んでしまうと、仮定を何十か置かないとできないので、もう何をやっているか分からなくなるので、シンプルに、こういう集団があり、それぞれの数値が変わった別の母集団があったらどういう状態になりますという、単純なモデルでつくりますということを、前回、策定のときに申し上げさせていただいたかと思います。
 それで実際の、一番これはメインのところになりますけれども、年齢調整死亡率の推移ということになりますが、これは、ここに見てのとおりなのですけれども、目標値がここにありますけれども、最終評価時のところがありますが、もう既に低下傾向がはっきり明らかでございまして、基本的に年齢調整死亡率はどんどん下がっているということがあり

ますし、これは年齢区分は全くしていない、もう悉皆調査になりますので、統計検定なども要らず、下がっていますというような話の結論になっているかと思います。

 それで、これについて、では何でこうなったのかというのが、先ほどの層構造だと必ず気になってくるところではあるのですが、そこはなかなか難しいところがあります。1つは、まず血圧の低下ということになりますが、血圧は、先ほどありましたけれども、水銀血圧計が使えなくなったということがありまして、19年度から電子圧力柱計に変わっているので、それをそのまま使っていいかどうかというのを別途検証中ということになりますので、その前の年度までの推移になっています。それで、収縮期血圧のトレンドということで、一応、血圧については40から89歳、これは血圧と循環器の死亡の関連を見たコホート研究の年齢設定というのはこういうふうになっていて、90以上でどうなっているかというのは多分誰も分からないということになるので、一応ここまでのモデルを組んでいるということになりますが、40から89のところで見ると、一応、血圧については減少のトレンドは見られるだろうというような形になっています。それから年齢別に見たときに、70以上のところで若干、最近、上がっているかなぐらいのところはあるのですけれども、これは女性でも、ちょっとオレンジのところがありますけれども、これは70歳以上の区分でも多分高齢化するので、なかなかそこをどう考えるかというのがありますけれども、基本的に、どの年齢で見ても減少基調ではあるだろうというのが、血圧の平均については言えるだろうということを考えております。

 それから脂質異常症は、なぜ総コレステロールとLDLコレステロールの2つが設定されているのかということになりますが、これは基本的に、国際的にはスクリーニングの手法は一般的に、もう総コレステロールです。LDLは、こちらで引っかかった人が病院に行って、空腹時採血して計算式でやるというのが国際的な標準で、日本みたいに直接LDLを測るというのはガラパゴス検査で、日本でしかないものになります。それで、ちょうどこの最初の計画をつくったとき、案等があるのですけれども、いろいろ問題点は幾つかありまして、LDLの直接測定法について、これは怪しいという、国際的に外国から疑義が出されて、すごくもめていたときがありまして、LDLをそのまま使って大丈夫かというのが1つある。それから、国民健康・栄養調査の場合、空腹時採血ではないので、もともとフリードワルド式は使えませんというところがありますから、それで総コレステロールが残った形で動いている。それで、一定の精度について解決みたいなものが2017年からということになりますので、実は、だから16年までのLDLコレステロールだけの直接測定の値を見るときは、若干注意が必要だということを申し添えておきますが、現時点は特に問題はもうなくなっているということになるかと思います。

 それで、目標値が、高LDL血症、高コレステロール血症の割合ということで、一般的に、140とか、LDL受診勧奨値で使われていますが、学会のガイドラインでは、よく見るとこれはスクリーニング基準値でございまして、要治療域ではございません。ですから、これは、目標がLDL160になっているのは、低リスク者の管理目標値というのは160で設定されていますので、LDL160、これに相当する総コレステロールは240ということになりますから、それを目標値にしているということになります。

 評価としては、御存じのとおり、特定保健指導で脂質異常症というのは、メタボのほうの脂質異常症をやっているので、要するに内臓脂肪の関連がある脂質というのは、中性脂肪、トリグリセライドとHDLコレステロールになります。だから、そちらのほうに行って、もともとLDLの残余リスクとしてメタボリックシンドロームがありますので、LDLは下げるのは大前提としてということが、国際的にも学会的にも分かっているわけですが、多分LDLについての特別な対策というのはあまりされていないのだろうと思います。それで、されていないのだろうということで、動くはずがないだろうと思ったら、これは若干変動があったり、物によって動きはあるのですけれども、基本的には、ほぼ変化がない状態、増えている層もあるかもぐらいの状態になっていますけれども、基本的には変化がないという状態で推移しております。特別な対策をしていなければ動かないだろうなというのが、これはもともと予測されている状態だろうと思います。

 関連する取組というのは幾つかありまして、がんだけではなくて、循環器の領域も緩和ケア等の取組も始まっていますとありますが、一番関連するのは、2018年に、いわゆる脳卒中・循環器病対策基本法というのが制定されまして、今、対策推進の基本計画というのが策定されています。今、各都道府県は、策定したところと策定中のところがあるかと思いますが、今後はこちらとの整合性を見ながら進めていくことに恐らくなるのだろうと思います。

 あとは、肥満対策とともに、大規模実証事業というのを厚生労働省と経産省でやられておりまして、尿中のナトリウム・カリウムということに着目したものというのが、高血圧学会の委託事業として、今、動いていますので、この辺のところが、関係するものとしてはあるかなと思います。

 それから、先ほどの法律ができたとか、できるということが大きかったのですが、脳卒中学会と循環器学会は今、一緒に5カ年計画というのをつくっていまして、今、第一期が終わり、第二次が動き出すということで、特にこれは発症すると、診ているお医者さんは違うのですが、予防だったら、ほぼ共通しているんです。ということになるので、予防対策は、一次予防は1つのものとして考えていくという、健康日本21はそうなっているわけですけれども、そういう実態でやるということと、あと、それから基本法のほうで、疾患登録も整備しなければとうたわれていますので、循環器病センター等で、そういう情報を集めていくような動きというのが、今、本当にまだ動きが始まったぐらいのところですけれども、そういうのが今動いていっている状態になるかと思います。

 それから、あと循環器・脳卒中のそれぞれの学会が先ほどやっていますが、今、危険因子のところですね、高血圧学会とか動脈硬化学会のところにつきましても、ガイドライン等をアップデートして進めているかと思います。

 あと、当然、喫煙とか栄養とか、非常に大事なもので、これは後で多分、生活習慣の領域でまたお話が出てくるかと思いますので、あと運動もそうですけれども、ここでは飛ばして。あと飲酒、肥満ですね。それからいろんなものが関係して、歯科ももちろん関係してくるかと思いますが、これはまた生活習慣のところで詰めていけばいいかと思います。

 全体の評価は今ほとんど私がお話ししてしまいましたけれども、基本的には、脳卒中と虚血性心疾患についての死亡率は減少している。高血圧は減少傾向、血圧は減少傾向で、脂質異常・LDLについては横ばいでほぼ変化なしというのが、全体の結論になります。

 今後の課題も同じなのですけれども、幾つか論点がありまして、1つは、何というか、3層の構造が論理的には結びついているのですけれども、実際のトレンドとして結びついていないわけです。もちろん幾つかの理由があるのですが、1つはやっぱり死亡率で見ていて、本来は一次予防の評価というのは発症率でしないといけないのですが、循環器の発症率など、見る方法も出す方法も全くないので、死亡率で見ているということがあります。実際、死亡の減少に、治療の進歩と生活習慣の変化とどちらが寄与するかみたいなことも、別のモデルで研究して集計したりしたことがあるんですけど、意外と治療のほうの影響が大きくて、虚血性心疾患の死亡者で見ると、56%が治療の進歩で、35%が生活習慣の改善というような感じの推計とかもしたりしていますので、これは今後ちょっと、評価指標をどうするかは考えないといけません。

 それから、先ほど、がんの場合は75歳未満の年齢調整死亡率でされていたのですが、循環器は全部の年齢でやっています。これは理由がありまして、循環器の場合は75歳以上の死亡者が、2倍から3倍ぐらい、それ以下の年齢よりいるので、75歳未満だけ減らしてもということがあるので、全部やっているのですが、ところが基準人口が、1985年モデルで使っているので、年齢調整が効き過ぎて、85歳以上がほぼ消滅するので、10年ぐらいたつと、物すごくよくなっているのではないかと。これは2015年のモデル人口に、もう変えることが決まっていますから、新しい年齢調整死亡率が出たら、一回そちらでも検証する必要があるだろうと考えているところでございます。

 ということで、幾つか問題点ということもありますけれども、関係したところから進めて、幾つか、いろんなことが進んでおりまして、昔と違って学会間がちゃんと連携して、あと行政や医師会等とも一緒にいろんなことが話せるようになっているということで、この辺については、あと保険者もそうですね。特定健診の絡みがありますから。というところで、総合的にいろんなものを見ていくという時代なので、多分、ばらばらの危険因子の評価というよりは、全体的にどのぐらいの発症リスクとか死亡リスクかというのを見ていくほうに、恐らくシフトしていかなければいけないかなと思います。

 最後にコロナウイルスとの関連ですけれども、脳血管疾患と心臓病を合わせると、毎日2,000人ぐらいの方が亡くなっていることになります。ですから、毎日2,000人亡くなる疾患ということで、やっぱり学会も、私も思いますけど、これは医療崩壊がやっぱり怖くて、コロナももちろんあれなんですけど、コロナが増えて、こちらのほうの診療ができなくなるというのが非常にゆゆしき問題です。特に救急搬送などのものが。だから、こういうものをどういうふうに守っていくかということを多分考えないといけないなということを。感染による、要するに検診受診控えについては、これも、がんとも共通なのですけれども、そこをちゃんと対策していかないといけないのだろうなと考えています。以上のとおりです。

 参考文献、1つ目は、先ほどのLDLの精度がやっとまともになりましたという論文です。それで、こちらの3番目の論文は、要するに死亡の変化の寄与に、治療と生活習慣がどれだけ寄与しているかというのを、ディープインパクトモデルというもので推計した論文資料になります。そういうものになりますので、興味がある先生は御覧いただければと思います。

 以上です。

○辻委員長 岡村先生、どうもありがとうございました。それでは、委員の皆様から御質問、御意見を頂きたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

○羽鳥委員 羽鳥ですけど。

○辻委員長 羽鳥先生、どうぞ。

○羽鳥委員 よろしくお願いします。岡村先生、きれいにまとめていただいてありがとうございます。

 1つ気になるのが、循環器学会でもやっていますけど、十年、二十年後に、いわゆる心不全パンデミックを起こす。そういう意味では医療崩壊も考えていかなくてはいけない。コロナがなくても大変なことになるだろうと推定するようなモデルがどこかにあるのかということが1つです。

 がん登録の場合は、一例一例、登録されているのが特徴だと思うのですけれども、循環器は非常に疾患数が多いから、それからどこをイベントとして捉えるかが難しいからということで、捉えるのが難しいのは分かるのですが、少なくとも急性心筋梗塞とか脳梗塞とか脳出血とか、大きなイベントを発症したところでは全例登録すべきだと思うのですが、今回の循環器対策基本法でも、それは述べられていないのと、それから循環器に関しては、がん登録法と違って、循環器登録法というのがないので、それがなかなか、ある意味では有志のお力でやっているのですけれども、特に4つの県は一生懸命やっているのですが、ほかの40県ぐらいは、あまり動いていないということがあります。特に私たちの神奈川県では、がん対策あるいは循環器対策の担当の方に幾ら申しても、登録をしていらっしゃる先生のところにお金を差し上げるような補助はしませんよというのを最初から言われてしまうので、非常に困っているのですけれども。先ほどもデータの登録というのは、やはり相当大きなインパクトがあると思うんですけど、先生、その辺、何かコメントできないでしょうかというのが要望です。

○岡村委員 すみません。羽鳥先生、ありがとうございます。

 取りあえず現状で今、私が分かっていることと、進めようとしていることと、こうしたらいいなということをちょっとお話なのですが、今の心不全の件は非常に、先生がおっしゃるとおりで、実際、虚血性心疾患のところなどやりますと、今のやつだと、心臓病のところを多分半分ぐらいしか、あれだと拾えていないんです。それで、残り多分25%ぐらいが心不全という病名で入ってくることになるのですが、死因の心不全で見ると何を見ているか分からなくなるところが若干あり、そこをどうするかという問題が1つあります。これは、実は辻先生の研究班で、健康日本21の評価をどうするかというのをやっていて、心不全を入れられないかどうか、実は検討してみたんですけど、モデルが複雑過ぎて、何というのか、先ほどのような3層の構造をうまく組めるかどうかというと、多分その前に虚血性心疾患が先に入っていたり、高血性の心不全があったり弁膜症が入ったりして、いろんな要因が恐らく起こってくるので、一次予防のモデルにうまく当てはまるのかどうか。多分、スクリーニングをするというのを別途、これは健診制度のほうをいじっていかないといけないのかもしれませんが、一次予防だと多分、結局、高血圧をどう見ていくかということみたいな形でないと落とし込めないので、考えてはいるんですけど、非常に難しいなというのが、心不全については思っているところでございます。

 それから、循環器の登録のほうは、恐らくがんも、基本法ができて登録法ができるまでに多分タイムラグが、それなりにあったはずなので、恐らく、登録しましょう、国循がやりましょうと、まず基本に書かれていることが非常に重要で、国循でどういうことをしていますかという、委員会等あって、私も入らせていただいて議論していたのですけれども、それはかなり広く取ろうという話に恐らくなっています。多分モデルで、最初は本人同意か何かで、半分、モデル事業的に動かして、ある程度、実績を積んだら、次どう考えるかという話になるのだろうと思います。ただ、再発とか、心不全だと何回も入院されたりしますよね。それと、どこのところで登録して、いつが初回なのかというのが、実はよく分からなくて、がんの場合は最初、病理診断をどこで受けたかのところからスタートして、再発がんは再発がんで別のもので、再発がんは多分、新規としては取らないはずなんですけど、どういうふうにして取るかというのは若干、病気の作法というか自然病態が違うので、何か証拠を残しながら、たくさん証拠を残していく泥棒と、巧妙に、ぱっと行って、ぱっと逃げる泥棒みたいな違いがあり、なかなかその捕まえ方が、これは私が言ったのではなくて、昔、私の恩師が言っていたことなのですが、なかなかそこは難しくて、それは逆にまた、いろいろ先生方の教えを受けながら、こちらも御意見を言えるような状況になれば発信はしていきたいと思っております。

 すみません。答えられたかどうか分かりませんが。

○辻委員長 ありがとうございます。では西先生、どうぞ。

○西委員 西です。岡村先生、いつも分かりやすいお話をありがとうございます。

 質問させていただきたいのですが、メンタルヘルスの観点から見ますと、例えば古くから心筋梗塞患者さんは心筋梗塞後の鬱病の発症率が高くて、その鬱病の発症が予後を予測するですとか、心不全の患者さんも鬱病が予後を予測するですとか、割と出ているかと思っておりまして、最近では、虐待などの小児期逆境体験が、喫煙とか肥満とか、そういった非適応的な健康行動を増やして、それによってストロークとか心疾患とかも増やすなどというようなことが、アメリカのCDCとかも大々的に出していたりして、私などからしますと、いつか、こういった循環器とか、ほかの慢性身体疾患もそうなのですけれども、それに寄与する要因の、たくさんあるうちの一つとして、心の健康も取り上げられたりするととてもいいなと思っているのですけれども、先ほどの脳卒中・循環器の5カ年計画とかも拝見したのですが、心の健康に関する記述はなかったと思うのですけれども、循環器の先生方からすると、やはりほかのロバストなエビデンスがあるものに比べると、まだまだ心の健康に関するエビデンスが不足しているということで、なかなかそこにたどり着かないということなのか、それとも、どちらかというと三次予防的なところが強いので、一次予防を主たる目標とする健康日本21にあまりそぐわないというような感じでお考えになっているのか、その辺りのことをちょっと伺えたらありがたいなと思いまして、御質問させていただきました。

○岡村委員 ありがとうございます。これは、それこそ、また羽鳥先生の御意見を頂いたらいいかもしれないのですが、恐らく個別の患者さんを診るときは、そこのところは皆さん考えて診療はされているのだろうと思います。ただ、計画的にやるときは、どうもこの領域はやっぱり、最後、ランダム化比較試験で治療のエビデンスはあるかみたいなところまで詰められてしまうので、まず、そこのところを詰めないといけないというところから恐らく入ってくるということで、個々の臨床の場面でその重要性を否定する先生は恐らく誰もいらっしゃらないだろうと僕は思います。

 それで、やっぱりこれは二次予防というか三次予防というか、これまた領域によって違うんですけど、発症後のケアということになると、より臨床的な色彩が強いので、健康増進計画で、どこまでいくかと。ただ、逆に言うと、暗い世相というか、全体が非常にストレスフルな状態だったら、絶対に循環器によくないのは分かるので、一次予防上も多分、大事だということです。だから、観察研究的なもので取り入れていくというのがあるんですけど、インターベンションがなかなか難しいところがあるので、どこまで書き込んでいくかみたいなところがありというところなのだと思います。すみません。

○西委員 ありがとうございます。糖尿病とかもそうですけれども、そちらから心の健康の重要性に気づいていただける方もいらっしゃるように思いまして、今回すぐには無理なのかもしれませんけれども、何かそのようなことがあればと思いまして発言させていただきました。ありがとうございます。

○辻委員長 それでは、長津先生、お願いします。

○長津委員 大変勉強させていただきました。ありがとうございました。日本薬剤師会の長津と申します。

 ちょっと素人目線になってしまうのかなという気もするのですが、少し印象というか感想なのですが、非常に、脳卒中・虚血性心疾患等の年齢調整死亡率の改善というのは、すごい、著しいものがあると思うのですが、ここを、先生がおっしゃっていたように、治療の進歩が貢献したところは相当大きいのかもしれないと考えると、行動変容や環境の変化と、治療の進歩を少し、本当は分けて数字が出ればいいのでしょうが、これは多分できないのは承知しておりますが、何となくその傾向が取れると、また今後の目指すところが見えるのかなという気がするのと、あと、こういう疾患ですと、私どもの目線からすると、初発で亡くなられた方と、2回目以降の再発で亡くなられた方との、先生が泥棒の話をされていましたけれども、難しいとは承知ですが、ここで、もしかすると分けてデータが出ると、何かしら少しトレンドが取れるのかなという気もしますが、これはやはり相当難しい区分になるのでしょうか。そこをちょっと教えていただきたいのですが。

○岡村委員 これは先ほどの発症登録と絡むのですが、心不全、脳卒中、虚血性心疾患、それぞれもし登録がちゃんとできると、これは同じ病気になるとは限らないんです。脳卒中の後に心筋梗塞になったり、心筋梗塞の後に心不全とか、もう釈迦に説法なので詳しい話はしませんが、そうなってくると多分、とにかく最初にどっちが出るかというパターンによって恐らく違ってくるのだろうなと思うんですけど、これは、死亡だとその時点で、死亡診断書が上がった時点で1個しか、2回亡くなったりしないので、そこが難しいんです。これは、だから評価法とも恐らくセットになってくるのだろうと思います。言われていることは本当にごもっともなことで、どういうふうに取り入れていけるかというのは本当に今後の課題だと思います。

 それからもう一つは、これは健康増進計画ですから、どこまでの守備範囲かと。変な話ですけど、今日、厚労省は今、健康局の会をやっていますけれど、医政局との管轄がどっちでしょうみたいなところに若干入ってきたりするのかもしれませんけれども、そこは守備範囲が、どこまで突っ込むかというところがよく分からないところがあり、ただ、本日の分野というのは割と疾患領域との関連が強過ぎるところなので、当然、臨床のガイドラインとか動向とか、治療のところを見ながらやらないといけない分野だろうと思っておりますけれども。ということで御承知おきください。すみません。

○長津委員 ありがとうございました。理解しました。助かりました。失礼します。

○辻委員長 では中村先生、どうぞ。

○中村委員 中村です。岡村先生、非常に詳細にまとめていただきまして、ありがとうございます。3点あるんですけど、簡単に。

 LDLコレステロール対策が必要だと書いていただいているのですけれども、もう少し具体的に書き込んでいただいたらありがたいなと思いました。それが1点。

 それから、先ほど羽鳥先生から心不全パンデミックの話がありましたけど、先生の記述の中で、予防ということで、1次から3次の予防、いずれもシームレスに対策をやっていくということを書いていただいているんですけど、その例として、スマート・ライフ・プロジェクトの例が書いてあるんですけど、そこにもう少し三次予防的なことも含めていただくといいのかなと思いました。

 あと、最後のもう一点は、先ほど指摘したことと関連するというか、今日の議論になる4疾患全体に関係したことについてです。まとめ方の問題だけなのですけれども、岡村先生に最初に御説明いただいた3層構造の中で、取り上げていない喫煙とか糖尿病とか、あと高血圧に関連する生活習慣など、中に書き込むのはとても無理ですけど、評価のところの目標項目の下ぐらいに、関連する目標項目として、そういった項目の評価の結果も併せて書いていただいたほうが、全体として捉えやすいかなと。それぞれのところを見なさいと言われても、まとめて見られるようになっていないと頭の中で全体をながめるのは難しいので。実際に取組としては、これらの項目に関連した取組や、課題を書いていただいているので、岡村先生にお願いするというよりは、全体の編集の中でご検討いただければと考えます。よろしくお願いします。

○岡村委員 ありがとうございます。実は今、生活習慣領域のところで暫定的にあるものをちょっと見させていただいて書いているのですが、ほかのところが、ある程度確定しないと、書き切れないところは若干あるので、ほかのところが出たらリライトしますということは、厚労省に実は私から言っております。

○中村委員 ありがとうございます。取組の内容もそうなんですけど、目標の達成状況を、2つの、高血圧と脂質異常症に限らず、最初のところに掲載しておいたらどうかなという意見です。すみません。

○辻委員長 岡村先生、何か。

○岡村委員 了解しましたというか、あと全体の方針は、厚労省の方針に従って。ただ、関連するところは、更新されたら書き直しますということは言っておりますので、多分そういう対応ができるだろうとは思います。

○辻委員長 分かりました。これにつきましては、私のほうからも、また事務局と調整したいと思います。

 大体時間になりましたので、循環器疾患につきましては、これくらいにさせていただきまして、続きまして糖尿病領域について、津下先生、お願いいたします。

○津下副委員長 津下です。どうぞよろしくお願いいたします。

 では、この資料に基づいてお話をさせていただきます。糖尿病分野では、先ほど中村先生が言われましたように、食生活や運動不足などの生活習慣との関連が非常に強い分野でありますけれども、健康日本21(第二次)では、合併症、それから糖尿病の適切なコントロール、それから発症予防として、特定健診・保健指導の各目標を挙げています。生活習慣の目標はこの中には含まれておりませんが、非常に関連は深いと思っております。

 目標項目の評価については資料の通りの状況になっておりまして、全体としては、血糖コントロール不良者の割合は減少し、目標を達成したけれども、ほかについては変わらない、または一部悪くなっているというような結果でございました。

 目標の考え方をおさらいしますと、三次予防としては、合併症による臓器障害の予防・生命予後の改善ということで、糖尿病腎症による年間新規透析導入患者数の減少を挙げています。二次予防としては、治療継続者の割合の増加、中断者を減らすということと、血糖コントロール不良者を減少させるということ。また、一次予防としては、有病者の増加抑制という目標と、循環器領域でありました特定健診・保健指導とメタボリックシンドロームが指標の中にあります。

 まず合併症について、腎症による透析導入患者数ですけれども、これは日本透析学会のデータを用いておりますけれども、ベースラインが1万6,247人で、目標値を1万5,000人ということで立てておりました。循環器とかがんについては、75歳未満の年齢調整死亡率なのですけれども、これは年齢区分を設けていないということで、かなり高齢の方のデータも含まれているということになります。最終評価値が1万6,019人ですので、変わらない、Cという判定になります。

 ただし、日本透析医学会のデータをよくよく見ますと、糖尿病腎症による透析の導入年齢は、2000年のときには63.4歳だったのが、2019年には68.16歳と、5年、高年齢に移っております。また、右側を見ていただきますと、40から64歳、65から74歳の導入患者数、これは人口100万人当たりでありますけれども、これも有意に減少しているということが分かります。そういうことから、今回の指標としてはCということなのですけれども、透析に至る年齢がどんどん高齢化している、つまり、透析を導入しない期間が延びてきたということと言え、良い傾向ではないかと思います。

 また、透析導入については地域格差についての指標がありまして、都道府県で新規透析導入患者数が人口100万人当たりどうなのか、を見てみます。先ほど、高齢化の影響があるということを述べましたので、高齢化率を右軸に取って、縦軸に新規導入患者数を取った相関のグラフでwすが、同じような高齢化率の都道府県でも透析導入率についてはかなり大きな格差があることが分かります。これはもともとの糖尿病患者数等にもよりますし、医療機関の状況などの影響もあるので、考察は難しいのですけれども、都道府県格差に注目したいと思います。

 次に、2番目の「治療継続者の割合の増加」ということで、これは国民健康・栄養調査のデータから出しているものになります。これを見ますと、目標値には到達していないということで、経年的な推移の分析でも有意な増減はなかったということになっております。国民健康・栄養調査で見ますと、糖尿病のある方が、そもそも若い世代で人数が少なく、その中での治療状況の把握・推移であること、自己申告であるということや、糖尿病の治療といっても、通院による定期的な検査や生活習慣の改善指導を含むものを治療としていますということが、どれだけ認識されて回答されたかということについては、若干不安は持ちますけれども、このデータから見ると有意な改善は見られなかったということで、Cとなっております。

 次に、「血糖コントロール指標におけるコントロール不良者の割合の減少」についてですけれども、これはNDBのオープンデータから、HbAc、現在のNGSP値でいくと8.4%ということですけど、それ以上の方の割合を見たものになります。ベースラインでは1.2%だったのが、直近値で0.94%ということで、目標値に対して明らかに下がっているということで、Aということになっております。

 このデータですけれども、少し途切れているのは、厚生労働省の公表している特定健診関係のデータが、一時、オープンデータが出てくる前と、若干の途切れている期間があるという理由によります。このHbA1c8.4%以上の割合を平成29年のデータで見ますと、全体では0.94%になっておりますけれども、男性では1.33%。特に50代、60代前半、の男性においてこの割合が高いという傾向にあります。これは当初から変わらない傾向になっております。

 あと、都道府県間の格差をNDBのオープンデータから見たところ、現在も1%を超えている都道府県がありますということと、あと沖縄県ではベースラインから高いんですけど、さらに増加しているということがありまして、まだ増えている県もあるということになります。

 ただし、特定健診NDBから、8.4%以上の人たちの割合を出していますので、例えば特定健診受診率が高まり、患者さんの掘り起こしといいますか、今まで健診を受けていなかった人が新たに入ってくる影響というのは考慮していかなければいけないだろうとは思います。

 それから、4「糖尿病有病者の増加の抑制」ということで、これは国民健康・栄養調査のときの大規模調査から算出するということになっております。通常は大規模年に推計が行われますけれども、平成28年以降、データの更新がないため、現状、評価が困難ということで、Eとなっております。ただ、年齢調整の有病率については維持しているということで、年齢調整有病率は変化がないのですけれども、患者数がどうなったかという推計値がまだ出せていないということになります。国民健康・栄養調査で糖尿病が強く疑われる者の割合は、大規模調査の年でないとばらつきが大きいということもありまして、この結果を待ちたいと思っています。

 別の調査で見ますと、国民生活基礎調査などでは、糖尿病通院者率は年々増えている状況でした。先ほどの健康日本21の目標値については、ベースライン890万人が、目標値1,000万人なのですけれども、高齢化が進む影響で最終評価年では1,400万人になる見込みなのを、1,000万人に抑制するという目標でありますので、この増加の程度が予想した範囲内かどうかということを、今後、検証していかなければいけないと考えています。

 それから、メタボリックシンドローム該当者及び予備群でございます。これは、特定健診のデータベースから用いているものでございます。平成20年度から中間評価までは予備群、メタボ該当も一時的には減っていたのですけれども、中間評価以降令和元年に向けて増加傾向にあるということで、ベースラインから比べても、残念ながらDという判定をつけざるを得ないということになりました。特に中間評価からの増加が大きかったのかなということです。ほかの分野になりますけれども、肥満者についても増加傾向があったり、また身体活動が減っているなど、基本的な生活習慣の課題というのもありますので、国民全体としてはメタボが増加したと判断せざるを得ないということになっております。

 また、保険者別にメタボ該当率の変化を見ますと、平成27年と令和元年、中間評価と現状値でございますけれども、健保組合、共済、協会けんぽ、市町村国保で、見ていただきたいのは、どこの保険者においても若干増加傾向。ただし、ベースラインとか絶対値については保険者間で差があるというような状況になっております。

 最後に、特定健診・保健指導の実施率でございますが、特定健診の実施率は、ベースラインから目標値70%以上を目標としておりましたけれども、現状このように推移しております。特定保健指導は45%を目標としておりましたけれども、まだ28.2%、27.8%ということで、目標には到達していないけれども増加はしているということでの判定となっております。B*ということになります。

 特定健診の受診率につきましては、性・年代別に見ますと、どこの年代も増加しています。ただ、年代や男女で差があるということ、また都道府県間の差ということでいうと、どこの自治体でも受診率は増加しています。

 それから、これは保健指導ですけど、保健指導の実施率についても、21年と令和元年度で増加しているのは明らかで、どこの自治体でも増加しているということで、積極的支援、動機づけ支援とも増加しているということが分かります。令和元年からの伸び幅については、都道府県で差が見られる状況があったということになります。

 このように、糖尿病分野では、ランクとしてはCなのですけれども、糖尿病性腎症の新規透析導入については、年齢を考えると、75歳未満の透析患者さんは1,000人減っているんです。それで、75歳以上が1,000人増えているということで、75歳未満であればAがついた状況です。血糖コントロールも改善してきたといういい面がある一方、メタボリックシンドロームの増加など、発症予防の点においては、まだ問題を残したのではないかと考えております。これは生活習慣分野との関連が大きいと思います。

 それから、保険者において重症化予防の取組が始まりまして、未受診者対策をどこの自治体も頑張っているところだと思います。ということで、Acの悪い人たちが減ってきたのは、1つ、成果ではなかったかなと思います。

 学会の取組としては、対糖尿病戦略5カ年計画が令和2年から始まっておりますけれども、糖尿病患者と非糖尿病患者の寿命の差を縮小させるとか、QOLの向上、またスティグマ、糖尿病と言い出しにくい雰囲気やレッテル貼り、こういうことを減らすための対策が注目されているところだと思います。メタボについては、策定時より25%減らすというどころか、増えている。これを考えますと、当初5年間はかなり抑えたかもしれないのですけれども、今また増加に転じているところに対して、さらなる対策が必要だろうと考えています。

 合併症については、ほかの分野に倣って、75歳までで評価するべきなのか、高齢化が進んでいる我が国ですので、上限年齢をどうするのかということは課題ではないかなと思っています。

 治療継続者については、どう実態を把握するかということが1つ課題になるのかなと思います。これは肥満者のデータですけど、やはり肥満についても、21年から25年ぐらい、五、六年までは下がってきたところが、その後、男性では特に増加傾向があると。こういうことや身体活動の減少などが影響を与えており、これらの他の指標とともに検討していかなければいけないと思っているところです。そのようなことが、つらつら書いてあります。

 最後にコロナですけれども、やはり外出自粛とか、肥満傾向が出てきたとか、様々なことがありますので、例えばワクチン接種のときに、ワクチンだけでは重症化リスクが非常に高いので、生活習慣病対策をちゃんとすることということも併せて伝えていく必要があると考えています。以上です。

○辻委員長 津下先生、どうもありがとうございました。確かに先生がおっしゃるとおりで、全体としてはあまり変わらない、あるいは少し悪くなっているのだけれども、でも年齢別に考えると、この年齢層では改善している、ここではいまいちという、その辺のところが見えてくると対策が考えやすくなりますね。御説明を聞いてよく分かったのですけれども、そういったところも報告書の中で、めり張りを出していただければと思いました。ほかの先生方から何か。

○羽鳥委員 羽鳥です。

○辻委員長 羽鳥先生。その後、瀧本先生、お願いします。

○羽鳥委員 津下先生、いつもありがとうございます。

 1つお伺いしたいんですけど、中間報告で、非常によくなったと。糖尿病の予備群も減って、これはすごいことだなと思ったんですけど、悪化した原因は何が想定されますか。又、75歳未満・75歳以上で、区切って考えていくのが大事と思います。又、特に透析の方が、75歳未満で減ったというのは、やっぱり大きな成果なのだろうなと思います。

 それから、熊本宣言などで、高齢者については少し、Acの基準を緩めようということがあったのですが、これが逆に75歳以上の透析導入の方を増やしてしまったのかとか、何か、そういう推定ができるものなのか。一番最初の悪化した原因が何なのか、それが一番知りたいところなんですけど、よろしくお願いします。

○津下副委員長 悪化した原因は、推測にはなるのですけれども、中間評価のときに、肥満が減ってきたとか、メタボが改善傾向だったということで、もしかしたらメタボは解決済みの課題のように思われた部分もあったかもしれない。もちろん非肥満とか、いろんな対策が必要なのですけれども、少しメタボを軽く考えていいんじゃない? とか思った人も少なくないかなということ、メタボが制度に入ってきたときというのは、ポピュレーションアプローチ的にもすごく効いたと思うのですけれども、やはりポピュレーションアプローチとしてのインパクトが今では少し弱いし、保健指導実施率も、対象者の中の20%、ごく一部にしかできていないということもあります。もう一度、生活習慣や体重管理に立ち返って、メッセージの出し分けですよね。フレイルとか体重減少、低栄養とかそちらが気になる人と、メタボが気になる人のメッセージをきちんと出し分けて、肥満対策が必要な人に、薄まったメッセージになってはいなかったかを、反省すべき点かなと感じるところです。セグメント別にしっかりとメッセージを出していくということが必要かなとは思いました。

○羽鳥委員 ありがとうございます。

○辻委員長 それでは瀧本先生、その後、吉村先生、お願いします。

○瀧本委員 ありがとうございます。ちょっと糖尿病のところの補足をさせていただきたいと思います。国民健康・栄養調査で、糖尿病の質問票の変遷があったというのも少しありまして、平成22年からですから、20101112までは、生活習慣調査票といいまして、自記式の質問票に糖尿病の治療に関する質問があったのですけれども、平成25年から、つまり2013年からは、身体状況調査票、つまり採血等するときに記載していただく質問票のほうに移っております。なので、2013年以降は、直接問診で確認しているというところに違いが出てきております。

 そういう整理ができたのはよかったのですけれども、若干、質問の仕方とかが変遷してきてしまったのが、私としては、計画期間中に聞き方が変わり好ましくなかったのではないかと思っております。次期計画にも関連することだと思うのですけれども、やはり治療とは何か、診断とは何かというのを、もっと具体を詰めて、統一的に、計画期間中は把握できるほうがいいと思います。よろしくお願いします。

○辻委員長 では吉村先生、その後、村山先生ですね。

○吉村委員 津下先生、いつもありがとうございます。今日は勉強になりました。ありがとうございました。

 私のほうから、HbAcカットオフ値についてちょっと気になるのですが、これはもうこれで決まっているので、これについて今さらとは思うんですけど、例えば8.0、それから6.5というふうな数値がありますけれども、例えば保険者によって、健康指導をしているところでは、例えば極端なところで、今の基準で5.8ぐらいから、もう指導しているというようなところもありますし、一次予防としては、そのぐらいでもいいのかもしれませんが、あまりにも正常値寄りのところからやると、指導されているほうがもう、ちょっと、うんざりしてしまうというような点があるのではないかと思うのが1つです。ですので、保険者によって、そのような指導について統一されているのかどうかというのが御質問の一つと、それからもう一つ、先ほどの羽鳥先生の御指摘にも関連するのですが、日本老年医学会が、HbAcの高齢者の基準を少し緩めに設定しておりまして、それがたしか8.5までだったような気がするのですけれども、どちらかというと低血糖のほうがよくないんだというふうな考え方だったとお伺いしております。ですので、今回コメントのところに、高齢者の低血糖についても少し触れていただいたほうが、何となく、いいのではないのかなと思いましたので、これは私のコメントでございます。よろしくお願いします。

○津下副委員長 ありがとうございます。1点、重症化、特定健診の保健指導は、保健指導判定値、Ac5.6%から対象になる。これは全国的な基準になっています。

 重症化予防で、どの辺りから関わるかというのは、保険者によって、自治体によって、かなり低めからやっているところもあるのですけれども、ハイリスクアプローチとしての重症化予防の本来の趣旨からいくと、研究班等でもさらに検討を深めていく必要があると思います。毎年、脅しのような話になる重症化予防の事業ではいけないと思いますので、それを検討したいと思います。

 あと、HbAcなのですけれども、学会が出したのは治療の基準で、低血糖を起こすような薬剤を飲んでいる人の上限値という話と、下限値が入ったという話であって、治療していない人も含めた全体の基準ということではないという認識になっております。今回のAc8.4%というのが、もともとJDS、日本の基準で8.0%が、現在のNGSP値での8.4%と同じなので、基準を動かさずに見ています。次期の計画ではもう少し下げたというか、NGSP値で8.0%を基準とするなど、学会ガイドラインと整合を取った数字にしていくべきだと私も考えています。ありがとうございました。

○辻委員長 それでは村山先生、その後、福田先生、松下先生になりますが、あと10分程度でと思っておりましたので、このお三方で、これは終わらざるを得ないかなと思いますので、どうぞよろしくお願いします。では、まず村山先生。

○村山委員 ありがとうございます。津下先生、ありがとうございました。

 図17で、保険者別のメタボの割合の変化、すごく興味を持って、関心を持って拝見させていただきました。この中で、市町村国保が高めで、あとは、それはちょっと年齢の問題があるのかなと思ったんですけど、協会けんぽが若干高め。この背景ということと、それに対しての、また考えられる対策ということをお伺いしたいというのと、それから、今後の課題として、この辺りは格差の問題とつながっていって、次の計画につながる重要な部分だと思いましたので、強調していただいて、多分ほかの分野でも出てくる話だと思いますので、統一感を出していければなと思いました。ありがとうございます。

○津下副委員長 ありがとうございます。43ページにその図が載っているわけですけれども、メタボなので、肥満だけではなくて、ほかの、血糖、血圧、脂質が高いということも含めての判定になりますから、市町村国保のほうが若干年齢が高く、高血圧などのリスク保有者が高いという理由で、該当率も高いのだろうと思っています。健保、共済、協会けんぽは被用者保険ですから、若干、協会けんぽのほうが年齢が高い可能性はあるのですけれども受診状況や生活習慣の影響もあるかもしれません。一定の年齢区分についてNDBで保険者間の比較をすることができますので、同じ年齢区分ででどうかという分析が可能だと思います。

 やはり健保で単一のほうが、健診とか受診率も高く、これまでの保健事業をやってきたということもあります。一方で、協会けんぽは中小企業が多くて、生活習慣病対策がまだまだ不十分なところもありますので、その影響もあると思います。今後、例えば地域・職域連携推進事業等で、もう少し中小企業の健康対策を進めていく必要性などに触れていってもいいのかなと思いました。ありがとうございました。

○村山委員 ありがとうございました。

○辻委員長 津下先生、この件に関して私から1つお願いなんですけど、やはり図17などを見ていましても、年齢構成が違うわけですよね。ですから、先生も先ほどおっしゃったみたいに、これからスコアリングレポートなども保険者間で比較されていまして、これも1つの健康格差の縮小という点で重要なことなのですけれども、健康格差を考えるときは、ぜひとも年齢調整などしていただきたいと思います。

○津下副委員長 これは、増えたかどうか、保険者で違う傾向が出ているのかなということを見たいというのが主眼で作ったグラフでしたので、その点、加えたいと思います。ありがとうございます。

○辻委員長 よろしくお願いします。では福田先生、お願いします。

○福田委員 福田でございます。津下先生、御発表ありがとうございました。

 私からは、歯科領域からの期待を込めたコメントをと思っております。私どもの領域である歯周病は、糖尿病の合併症と言われております。幾つかの保険者あるいは幾つかの自治体では、糖尿病対策と重ねたような形での歯周病検診等々もやられているところもあります。今回の報告書にも、糖尿病と歯周病の関係性についても引き続き周知するというようなことも書いていただきました。なかなか歯科領域からのみの発信というのはインパクトが小さいものですから、このようにほかの領域からコメントを頂くというのは本当にありがたいことだと思っております。健康日本21第三次計画作成の際にも、歯科保健分野の事項も含めて御検討いただけることを期待して、コメントさせていただきました。ありがとうございました。

○津下副委員長 ありがとうございました。特定健診に、かむときの状況を聞く質問がありまして、それと糖尿病とか肥満とかの関連を分析した報告も出ているようですので、そういう特定健診の口腔の質問票などの活用というのも重要かなと思います。その辺りも意識して記載していきたいと思います。ありがとうございました。

○辻委員長 では松下先生、お願いします。

○松下委員 津下先生、どうもありがとうございます。久里浜医療センターの松下といいます。生活習慣のアルコールのほうの担当なのですけれども、ブリーフインターベンションについて46ページに記載していただいておりますし、生活習慣としての飲酒がリスクになることは書いていただいているのですが、もし、これはお願いでもあるのですが、多量飲酒が糖尿病のコントロールなり、あるいは発症のリスクになるということを、もう少し、多少書き加えていただくというか、多少、啓発的な目的になりますけれども、そのようなことも少し御検討いただけるとありがたいなと思いました。以上です。どうもありがとうございました。

○津下副委員長 どうもありがとうございました。反映していきたいと思います。

○辻委員長 予定の時間よりまだ5分ほど残っていますので、どなたか、お一人、お二人、また御質問あるいは御意見がございましたら、お受けしたいと思いますが、いかがでしょうか。西村先生、どうぞ。それから西先生。以上ということでお願いします。

○西村委員 それでは、西村でございます。時間があるということなので、もう一つ、質問させていただきます。

 やっぱり、この報告書の中で、メタボがDランクがつくというのは、非常にマスコミ的にも衝撃的かなと思うのですけれども、御存じのように、メタボというのは、腹囲が一定以上であることを前提として、糖尿病、脂質異常症、高血圧で成り立っているわけですよね。その3つの指標についてDランクがないのに、メタボになるとDランクになるということは、先ほどの先生の説明ですと、肥満が唯一関与してDランクになったという理解になるのでしょうか。それとも、その辺の理解は、個々の項目でDランクがないのに、CあるいはBであるにもかかわらず、メタボという1つの定義をつくってしまうとDランクになるというところが、ちょっと分かりにくいのではないかなと思って聞いていたんです。いかがでしょうか。

○津下副委員長 ありがとうございます。まずは、これは目標値の設定から考えると、メタボリックシンドロームにつきましては、平成20年度と比べると、25%以上の減少を目指すという、かなりハードルの高い目標設定であったということで、これは、その目標には全く達していない。それから、ほかの指標と違いまして、これはランダムサンプリングではないです。特定健診のデータそのものを分析しております。

 ですから、1つ申し上げたいのは、これは健診受診率が上がってきていることにより、メタボ、今までは健診を受けなかった方々が受けるようになった影響なども含まれています。無作為で調査したものではないという、調査法のことがあります。ただ、実態の生の数が増えているということは間違いのない事実ですので、Dと判定していくしかないのかなと思っております。検定とか、そういうことではなくて、実数が増えているということで、Dになっています。

○辻委員長 よろしいですか。では西先生、お願いします。

○西委員 西です。スティグマについて記載していただいて、すごく重要なことだと思っております。ありがとうございます。

 辻班の研究班のほうで、近藤尚己先生から御提案いただいた指標の中にも、糖尿病と心、糖尿病患者で心理的ケアを受けている割合が、日本は17か国中最低であるとか、糖尿病患者の鬱合併が2倍で、鬱合併による死亡率・医療費増大が報告されているとお示しいただいておりまして、また全体のバランス等もあるかと思いますが、御検討いただければと思いました。ありがとうございます。

○津下副委員長 ありがとうございます。糖尿病の患者さんで、特に治療につながっていない方々、これは厚生労働省が治療と仕事の両立支援マニュアルというのを出したときに、ほかの支援マニュアルだと、病気を抱える人がどう仕事を続けるかという観点なのですけれども、糖尿病の場合は、なかなか職場で糖尿病であることを言い出しにくいとか、治療・受診が十分にできないとか、例えばインスリンを使っている場合に、人の前で打てないとか、何というか、治療にまつわる心理的な問題が多く指摘されておりました。そういうことで、生活習慣がよくないから糖尿病になったんだみたいなことではなく、体質とか、いろいろな状況の下に糖尿病になっていることを周知する必要があると思います。生活習慣が大事だという健康日本21の趣旨はあるのですけれども、一方では、生活習慣が悪いから、あなたは病気になったよねというような目線で見られるというのは非常につらいし、誤っている場合もありますので、その辺はニュートラルに、疾病としてきちんと情報を伝えていくというような指導、医療者のマインド、この辺りも非常に重要だろうと思いますし、社会での糖尿病等の見方についてもそうかなと思います。

 先ほど、メタボについても、メタボという言葉が出てきた当初はスティグマはなかったのですけれども、だんだん定着するにつれて、嫌な言葉に分類されるようになってきた。最初はちょっと、語呂がよくてかわいいじゃないという話だったのだけれど、だんだん嫌な言葉として定着しつつある。この辺りのニュアンスを、生活習慣病対策ではあるけれども本人を責めないようにすること、どういうふうにアプローチしたらいいのかというのは、しっかり考えていかないといけないかなと思いますので、その辺りも少し記載できたらと思います。ありがとうございました。

○辻委員長 よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。

 それでは、最後になりますけれども、COPD領域につきまして、西村先生、御説明をお願いします。

○西村委員 それでは、COPDについて説明させていただきます。

 COPDについては、健康日本21の第二次で実は初めて取り上げられて、そしてCOPD認知度の向上ということが目標とされたと私は聞いております。私は第二次から入っています。それを知っていただく上で、背景をきちんと説明しておいたほうがいいと思いますので、様式2の「背景」を、まず説明させていただきます。

 この病気は、御存じのように、たばこが専ら大きな原因でありまして、せき、たん、息切れを訴える、慢性の、特に高齢者に発症する疾患ですけれども、2004年に発表されたNICE study、これは日本で初めて行われた疫学調査だったのですけれども、ここで、無作為に抽出された一般住民調査による大規模な調査で、40歳以上の日本人のCOPD有病率が8.6%、40歳以上で約530万、70歳以上で210万と推定されたんです。この数字が大変大きい意味を持ちます。一方、厚生労働省の患者調査によれば、COPD患者数は、健康日本21が始まる2012年当時、二十数万人程度、これは治療している患者ということです。この患者推計の格差から、多くの診断されていないCOPD患者の存在が推定されたということが背景にあります。この当時、年間のCOPD死亡数は約1万6,000でありまして、死亡原因として全体の9位、男性では8位でありました。高齢者人口がどんどん増加していくということが当然予測されていますから、高齢者の疾患であるCOPDの死亡数も年々増加していくものと予測します。この予測も厚労省から出されておりまして、後ほどフィギュア、図でお見せしたいと思います。このような背景から、健康日本21(第二次)において、喫煙者の生活習慣病の一つとしてCOPDが取り上げられた。そして、診断されていない、あるいは治療されていない疾患が非常に多くあるだろう、患者が多くいるだろうということから、一般市民の認知率を高めることを通して、早期発見、早期治療介入に結びつける。その結果として、健康寿命の延伸、COPD死亡数の減少に寄与するということを期待した、そういう背景で始まります。

 結論から言うと、ここに目標項目、Cと書いてありますように、次の図1を御覧になると分かりますように、認知率というのは、大変残念なことに、80%には遠く及ばないという状況であります。2012年当時の25%と比べると、最終的には27.8%ですから、幾らか上昇したということは言えますけれども、目標値との格差を考えると、これは横ばいと考えざるを得ないだろうと私どもは判定したということであります。

 COPD認知度の推移というのを、図2にさらに詳しく描いてありまして、2012年当時から第二次が始まっているのですけども、それ以前から、実はマスコミを通じた、かなり大きなキャンペーンが行われています。そのために、2009年から2010年、11年あたりに、17%ぐらいだった認知率が一時30%まで上がったというのは、これはマスコミの影響が非常に大きかったのだろうと思います。その後、マスコミへの暴露が若干減ったということもありまして、2012年当時の25%に戻って、最後の、この一、二年、また少し頑張って、新聞等あるいはユーチューブ等を使ったキャンペーンも一部行われて、少し持ち直したというのが現状でありまして、2012年と比べれば、今申し上げましたように、これはC判定にせざるを得ないと考えます。

 ただし、図2にありますように、この疾患を「よく知っている」。要するに、認知率というのは、COPDを聞いたことがあるという程度で認知率を調べているのですけれども、この病気がどんな病気か、ある程度知っているということを前提に調査したのが、2009年の5%から、最終年度、201910.8%の図であります。これを御覧になると、第二次調査の間も、一件一件、少しずつ少しずつ上昇しているということが分かります。つまり、いわゆる行動変容に移行するためには、単に聞いたことがあるということではなく、この病気のことを知っているという人が増えるということが大変重要でありまして、私どもは、これが20%ぐらいまで増えれば、5人に1人に増えれば、周りに当然、影響力も与えますから、この病気の認知率の向上にさらにつながるだろうということで、今後、もし第三次ということがあるとして、COPDが取り上げられるのであれば、認知率の向上を同じ取り上げるにしても、この病気のことを聞いたことがあるではなくて、この病気のことを知っているということを前提に認知率を調査したほうがいいのではないかと、私自身はこの10年間を通じて、感想として持ちました。

 次に、フィギュア3を見ていただきたいのですが、これは年齢別に見たものでありまして、やはりCOPDの認知率は、年齢が若いほど認知率は高いんです。これも恐らく、COPDという横文字の病名であるということが多分大きいのだろうと思います。

 肝腎の、我々はむしろ、50歳代、60歳代、70歳代の人にこの病気を知ってもらいたいのですけれども、残念ながらそこでは大変、一番低いということでありまして、この点も、COPDという横文字の病名がいかに、特に知ってもらいたい高齢者に浸透していないかということを反映しているのだと思います。

 図4が、COPD死亡者数の、先ほど申し上げた推計でありまして、これは厚生労働省の人口動態統計で、実際に2010年当時に発表されたものです。日本の高齢化を加味して考えると、大体このように増えていくだろうと推計されたということです。これはちょっと見づらいのですけれども、青いのと紫を合わせたのが実は80歳以上でありまして、日本のCOPDの死亡は、もはや70%以上が80歳以上で亡くなっている。もちろんこれは診断がついているCOPDということに限定されますけれども、そういう現状があるということ。これは欧米諸国と比べると、5歳から10歳、実は年齢が高いんです。欧米の専門家が見ると大変驚く結果でありまして、日本のCOPDは比較的長生きしているというふうな通説が、今や常識になっているということであります。

 そして、次に図5を御覧ください。これが、実際のCOPDの絶対数です。亡くなった数であります。そうすると、2011年、12年頃をピークに、実はだんだん減ってきている。先ほどの予測とは反して、亡くなっている数は減ってきている。それで、2017年度は、ICDTに準拠した死因統計分類の適用になったために、ちょっとジャンプアップして増えます。しかしながら、2017年、18年と横ばいで、19年にまた減り始めておりまして、死因統計の取り方がちょっと変わったということで一旦ジャンプアップしていますけれども、やはり減少傾向が続いておりまして、最終年度2019年度の時点で1万6,000人というデータでありますから、やはり、増加ということは、先ほど心配されたほどの増加は起こっていないというのが現状だろうと思います。

 そういったことをベースに、各項目に関わる分析及び領域全体としての評価のところをちょっと出していただきたいと思います。我々、取組に関しては、学会あるいはマスコミ、それから民間団体等々を通して、かなりCOPDのキャンペーンというのは行われています。その結果もあって、先ほど言いましたように、COPDという言葉自体は通じていないのですけれども、少しばかりいいニュースとしては、COPDの病型・病態ともに、「肺気腫」、「慢性気管支炎」という病名についても、実はその認知度を、あるときから調べました。そうしますと、先ほど言いましたように、「COPD」という横文字病名は、20%、なかなか30%も超えないというままで、この10年、経過したのですけれども、「肺気腫」という言葉に関しては69%、「慢性気管支炎」という言葉に関しては63%の認知率があるということが分かりまして、COPDの実態はこの2つの混合したものですから、こういったものが分かっているということで、COPDの病気自体は、たばこによって、こういうことが起こるということは、ある程度国民に浸透しているのだということで、我々は少しほっとしたというのが実情であります。

 今後の課題についてお話をしたいと思います。今後の課題ですけれども、COPDの認知度は横ばいで推移しており、現状のままでは目標達成はやはり困難な状況と言わざるを得ません。しかしながら、先ほど言いましたように、COPDがどんな病気が知っているという認知率が、実態の行動変容という意味では大変重要でありまして、こういったことを、さらに高める努力をしていく必要があるのではないかと考えております。

 また、目標達成に向けて、喫煙が最大の発症要因であり、禁煙により発症予防が可能であるということや、早期発見が重要であるということを、普及啓発・認知度の向上に向けて取組を推進していきたいと考えるわけであります。

 それからちょっと飛びますけれども、COPDというのは、実は肺炎・肺がんの危険因子として極めて重要です。しかも、これは軽症であっても、高齢者の肺の健康という観点から明らかにリスクがあるということが分かっておりまして、同じ肺炎、コロナももちろんそうなのですけれども、コロナ肺炎においても最もリスクを高くする、死亡率を高める疾患の背景疾患として重大です。そういったことから、実は日本では肺炎と、それから誤嚥性肺炎の2つを合わせると、死因の3位に相当して、COPDよりも10倍以上、実は亡くなっているのですけれども、その疾患の中に、COPDとして診断されていない軽い軽症COPD、あるいは中等症であっても診断されていないCOPDがあるだろうというのが、呼吸器専門医のほとんどの一致した見方ということがありまして、こういった統計の限界がこの辺にも出ているだろうと思います。

 それから、COPDというのは、言うまでもなく、肺の健康という観点から、今、申し上げましたように、COPDの認知率を上げるということが大きな目標になるというよりも、COPDの早期診断、そして早期治療に結びつけるという観点から、その内容を知ってもらった上で、それが、いわゆる健康寿命につながっていくのだということの、そういったキャンペーンを今後もっと高めていくべきだろうと思います。また、COPDの診断というのは、スパイロメトリーがどうしても必要です。レントゲン、先ほどの肺など、レントゲン診断の限界ということを私は申し上げたのですけれども、COPDの診断においても、レントゲン診断というのはもう明らかに限界があって、スパイロメトリーをやらないと、特に軽症・中等症の診断はできないということになっておりますので、こういったものをぜひ、リスクファクターの高い人、喫煙者等に、もっと積極的に検診で取り入れていくというような運動が必要だろうと思います。

 最後にコロナとの関係ですけれども、先ほど申し上げましたように、新型コロナ感染症の手引の中にも、COPDが新型コロナ感染症の重症化因子であるということが世界的にも認知されておりまして、『イングランド・ジャーナル』の論文の中では最も高い3倍、いわゆるコントロールと比べて死亡リスクが3倍高いというデータが『イングランド・ジャーナル』に発表されていて、多くのリスクファクターの中でも最も高いものの一つとして知られています。そういったことも含めて、キャンペーンを進めていきたいと考えております。

 以上でございます。

○辻委員長 ありがとうございました。それでは、御質問、御意見を頂きたいと思いますが、若干、時間が迫っておりますので、お一人、お二人、よろしくお願いします。中村先生、お願いします。あと吉村先生、いいですか。

○中村委員 西村先生、どうもありがとうございます。

 COPDの病名ということなのですけれども、認知率がなかなか向上しないということで、今回、フレイルとの関係も書いていただいていますけれども、むしろ今、フレイルがかなり浸透してきているし、高齢者に特に知っていただくということであれば、たとえば肺のフレイルといったように、フレイルという言葉と関連づけてCOPDを知っていただくということも重要かな。オーラルフレイルとも関連付けて、誤嚥性の肺炎の予防を啓発する際にも用語として通しているように思いました。

 あともう一点、第三次に向けて、認知率の向上だけでは寂しい感じがします。呼吸機能検査を用いた一般の健常人のスクリーニングについてはこれまで国の検討会やアメリカのUSプリベンティブ・サービス・タスクフォースでも推奨しないということなのですけれども、例えば医療の場で、特に喫煙している人について呼吸機能の検査をして、重症度に応じて、フレイル予防のための食事の改善とか、呼吸筋のトレーニングを含めた筋トレなどにつなげていくというような、医療の中での、取組はできるのではないかなと思います。そういったことを呼吸器学会として考えていただいて、第三次に向けた目標として、医療の場での活動に関するような目標を立てていただくのがいいのかなと思いました。

 以上です。

○西村委員 大変重要な御指摘をありがとうございます。フレイルについては、全く先生の御指摘どおりで、やはりフレイルに至る疾患の一つとして大変重要な疾患ですから、それを含めたキャンペーンなどというのは全く大賛成であります。また、第三次に向けて、私自身も、やはり認知率というだけが目標ではあまりに寂しいと思いますので、今回お示しした死亡率もそうですし、それからハイリスクグループにおける、先生がおっしゃったような検診、あるいはバイオメトリーの導入といったものも含めた目標というのを定めるべきだということについても、私は賛成であります。ありがとうございました。

○辻委員長 吉村先生、手短にお願いします。

○吉村委員 先生、どうもありがとうございました。

 先生の奥ゆかしさというか、厳しい目でCとおっしゃっていますけれども、ベースから見ると、約17.7から28ぐらいで、ジャンプアップで、6割あるいは7割ぐらいの増加ですので、全体で見れば、もちろん8割という高い評価から見ると、Cというのは賛成なのですけれども、この評価のところに、前から見たら7割ぐらいは増えたんだけどみたいなことを書いておくのがいいのではないかと思いまして、コメントさせていただきました。以上です。

○西村委員 ありがとうございます。実は、第二次が始まったのが2012年なんです。そうすると、25.2%が元の値ということになるものですから、その前から実はキャンペーンが始まっていたので、あえてそれを見せて、実際にキャンペーンが意味がなかったわけではないということをお示したいので出したのですけれども、第二次が始まった2012年、25.2%をベースにすると、たかだか2.何%ということで、なかなかBとは書きにくかったというのが実態でございます。どうもありがとうございます。

○辻委員長 それでは山本先生、最後に手短にお願いします。

○山本委員 すみません。ちょっと認識不足で、少し教えていただきたいのですが、COPDが、禁煙が非常に重要であるということは分かっているのですけれども、加熱式たばこが最近増えていますが、その辺との関連というのはどういうふうになっているのか、お分かりだったらちょっと教えていただきたいのですが。

○西村委員 これは大変重要な質問でありまして、加熱式もやはり肺に障害を起こすという論文が次々と出ております。日本からも最近出ております。ただ、どうしても、従来のたばこと比べればということになってしまって、安心感を与えたり、売る側のそういう宣伝があるものですから、安心して吸っている人がいるのですけれども、肺の障害に対する問題は全く無視できないということになって、アメリカではそういったキャンペーンが同じようにされています。その点、確かに、この中でも触れておいたほうがいいのかもしれません。大変重要な御指摘をありがとうございました。

○辻委員長 ありがとうございました。

 委員の皆様から大変活発なディスカッションを頂きましたので、大変有意義だったと思いますけれども、予定された時間になってしまいましたので、本日の議論はここまでとさせていただきたいと思います。

 まだ言い足りない方がいらっしゃると思います。また、今日御発言いただけなかった先生も3名ほどいらっしゃいますけれども、その方々におかれましては、何か御意見、御質問がございましたら、事務局にメールその他でお送りいただければと思います。また、本日御意見いただきました事項につきましては、事務局と御担当の先生、そしてまた私も含めて調整していきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 では、最後に今後のスケジュールなどにつきまして、事務局から御説明をお願いします。

○松村女性の健康推進室長 事務局でございます。次回第15回の健康日本21推進専門委員会は、令和3年1018日の月曜日13時から、オンラインでの開催を予定しております。開催通知等に関しましては、後日改めて御連絡を差し上げたいと思います。

 次回、御評価いただく領域を御担当いただく委員の先生方に関しましては、先日作業のお願いをさせていただいたところでございます。締切りを9月10日という形にさせていただいておりますので、御執筆のほどどうぞよろしくお願いいたします。

 以上でございます。

○辻委員長 ありがとうございます。それでは、本日はこれにて閉会と致します。どうもありがとうございました。

 

―― 了 ――

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