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2018年3月12日 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食中毒部会 議事録

○日時

平成30年3月12日(月) 10:00~


○場所

労働委員会会館 7階 講堂


○議事

○岡崎食中毒被害情報管理室長補佐  それでは、定刻になりましたので「薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食中毒部会」を開会いたします。

 本日、進行を務めさせていただきます、食品監視安全課食中毒被害情報管理室の岡崎です。よろしくお願いいたします。

 開会に当たりまして、宇都宮生活衛生・食品安全審議官から御挨拶を申し上げます。

○宇都宮生活衛生・食品安全審議官  皆さん、おはようございます。生活衛生・食品安全審議官の宇都宮と申します。よろしくお願いいたします。

 本日は年度末の大変お忙しいところお集りいただきまして、まことにありがとうございます。また、日ごろから生活衛生関係、食中毒関係に御理解、御協力をいただいておりますこと、この場をお借りしまして厚く御礼申し上げます。

 さて、昨年夏に厚生労働省で組織改編がございまして、それまでの生活衛生・食品安全部が私の審議官という位になりましたが、その部分以外の組織は全く変わってございませんので、引き続きよろしくお願いいたします。

 食中毒対策でございますけれども、皆さん御存じのように公衆衛生分野では非常に古典的というか、歴史のある分野でございますけれども、後で説明もあると思いますが、一定のところまで食中毒の発生等は減ってきたということでありますが、ここ数年は毎年1,000件、2万人ぐらいの患者数がなかなか減らない、いわゆる下げ止まりの傾向にあるということでございます。そういった中で本日も御議論いただきますが、昨年夏、群馬県、埼玉県を中心としまして、非常に広域のO157感染症が発生しまして、死亡者も出てしまったというような状況がございます。まだまだ食中毒の分野は油断ができないというか、これからもっと対応しなければならないという面があるということだと思います。

 一方、食品衛生法につきましては、前回改正されてからちょうどことしで15年目になります。この15年間、法改正がなかったということで課題がその間、山積しておる状況でございます。こういった食中毒もその1つでございますけれども、それ以外、オリンピック・パラリンピックを2年後に見据えまして国際整合性ということで考えますと、HACCPの導入、制度化あるいは食品用の容器包装のポジティブリスト化等々、そういうものも含めましてさまざまな課題があるということで、この通常国会に15年ぶりに食品衛生法改正法案を提出させていただこうと準備を進めているところでございます。

 そういったお話も本日の議題にあると思います。こういったさまざまな取り組みを通じて、さらに食中毒の発生あるいは患者数を減らしていくことを我々も考えているところでございますが、本日はぜひ先生方、忌憚のない御意見をいただきまして、一層、対策が進むように御議論を進めていただければと思います。

 本当にお忙しいところありがとうございます。ぜひ実のある議論になりますことを祈念いたしまして、御挨拶とさせていただきます。よろしくお願いいたします。

○岡崎食中毒被害情報管理室長補佐  ありがとうございました。

 報道機関の方は、頭撮りはここまでとさせていただきますので、御退室のほうよろしくお願いいたします。

(報道関係者退室)

○岡崎食中毒被害情報管理室長補佐  次に、委員の異動がありましたので事務局から御紹介させていただきます。

 栃木県生活衛生課長の清嶋委員にかわりまして、横須賀市保健所生活衛生課長の石川委員が就任されております。

 また、寺嶋委員におかれましては、国立医薬品食品衛生研究所から岩手大学農学部共同獣医学科へ御異動されております。

 次に、事務局の異動がございましたので、御説明させていただきます。

 先ほど御挨拶申し上げましたが、生活衛生・食品安全審議官に宇都宮が着任しております。

 また、大臣官房審議官(健康、生活衛生担当)に吉永が着任しております。

 また、今回は参考人として、山形県食品安全衛生課の小林課長補佐に御出席いただいております。

 本日の部会は16名の委員のうち、西渕委員が少し遅れているようですけれども、松本委員より欠席と連絡を受けておりますが、15名の御出席ということで、薬事・食品衛生審議会の規定に基づき成立していることを御報告いたします。

 また、宇都宮審議官に当たりましては、公務の関係で御退席させていただきます。

(宇都宮生活衛生・食品安全審議官退室)

○岡崎食中毒被害情報管理室長補佐  では、議事進行は部会長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○五十君部会長  それでは、早速、議事に入りたいと思いますが、初めに事務局から配付資料の確認をお願いします。

○岡崎食中毒被害情報管理室長補佐  まず薬事・食品安全審議会食品衛生分科会食中毒部会の議事次第がございまして、その下に座席表がございます。

 資料1から資料5までありまして、資料1「平成29年食中毒発生状況(概要版)及び主な食中毒事案」。

 資料2「平成29年食中毒発生状況」。

 資料3「食品衛生法等の一部を改正する法律案の概要」。

 資料4「広域的な食中毒事案への対応」。

 資料5「山形県庄内地域におけるサルモネラ症事例(中間報告)」となっております。

 不足等ございましたら事務局にお申しつけください。

○五十君部会長 特にございませんでしょうか。

 それでは、早速本日の議事に入りたいと思います。

 本日は報告事項が4件ございます。

 初めに、平成29年食中毒発生状況等につきまして資料1、資料2に基づき報告があります。

 それでは、平成29年食中毒発生状況等について事務局から御報告をお願いいたします。

○岡崎食中毒被害情報管理室長補佐  資料1に基づいて御説明させていただきます。

 4ページ、食中毒事件数・患者数の推移でございます。平成29年につきましては、事件数が1,014件、患者数が1万6,464名、死亡者数が3名という状況になってございます。

 5ページ、患者数が500名以上の事例でございますが、2件ございまして、和歌山県で1月に発生しております学校給食の施設での発生になるのですけれども、原因食品として磯和えを原因としたノロウイルスによる食中毒、患者数763名の事例でございます。

 2例目としまして、東京都で2月に発生しました、同じように学校給食の施設ですけれども、きざみのりを原因としたノロウイルスで、患者数は1,084名発生しております。いずれもこの2例については、同一製造者が加工したきざみのりを使用していることがわかっております。

 次に下のほうなのですけれども、死者が発生した食中毒事例でございます。3例ありまして、まず東京都足立区で発生しました蜂蜜を原因食品としたボツリヌス症で1名亡くなっております。2例目としては、北海道でイヌサフランを喫食したことによりまして1名の死亡者が発生しております。3例目としましては、昨年8月に前橋市で発生しました腸管出血性大腸菌による食中毒で1名が亡くなっております。

 6ページ、年齢階級別食中毒患者の数になっております。これは例年どおりですけれども、20代が最も多い状況になっております。

 7ページは月別の発生状況になっております。事件数を見ると9月が一番多い状況になっておりまして、患者数で見ると2月が一番多いという状況になってございます。

 8ページは病因物質別月別事件数のスライドで、9ページは患者数の数になっております。いずれも夏場は細菌による食中毒が事件数、患者数とも多い状況でございます。一方、ウイルスによる食中毒は事件数、患者数とも冬場が多い状況になってございます。

10ページは原因施設別の事件数と、11ページは患者数になっております。いずれも飲食店での発生が事件数、患者数とも大部分を占めている状況でございます。

12ページは原因食品別の事件数、13ページは患者数になっております。いずれもその他が大部分を占めておりまして、その他というのは例えば何月何日の食事とか、ある程度の食事の特定まではできているのですが、そこから先の原因の食材までは特定ができていなかったということで、何月何日の食事というものがここに入ってくるものになってございます。

14ページは病因物質別事件数の推移でございます。ノロウイルスとカンピロバクターが多い状況になってございます。

15ページは患者数の推移となっておりまして、ノロウイルスによる患者数が最も多いという状況でございます。

16ページは病因物質別事件数の発生状況ですが、平成29年の総件数としまして1,014件ございまして、そのうちカンピロバクターが約31%、続いてアニサキスが約22%、ノロウイルスが約21%という状況になってございます。

 次は患者数の発生状況でございます。

29年度の総患者数は1万6,464人ですけれども、ノロウイルスがそのうち51%ほどを占めております。次いでカンピロバクターが約14%という状況になってございます。

 カンピロバクターの食中毒への対応ということで、取り組みについて御報告させていただきます。

 カンピロバクターの食中毒の発生状況につきましては、19ページでございますが、29年につきましては事件数が320件、患者数が2,315名という状況になってございます。

20ページ、カンピロバクター食中毒対策の推進についてということで、カンピロバクターの食中毒事件については、飲食店などで提供される生や加熱不十分な鶏肉を原因としているという報告が多数を占めておりまして、昨年の食中毒部会でも飲食店営業者に対して、加熱処理が必要である旨の情報伝達が重要というような御議論をいただきまして、その内容を踏まえて29年3月31日付で監視安全課長名で通知を出しております。

 その内容としては1、2とあるのですけれども、1つ目としては食鳥処理業者、卸売業者、飲食店業者については、加熱が必要である旨の情報を確実に伝達するように措置をすること。2点目としては、飲食店において発生したカンピロバクターの食中毒が生や加熱不十分な鶏肉が原因もしくは推定される場合においては、調査をする際に加熱表示があったのかどうかきちんと確認することということで、加熱表示がないといった場合においては、食鳥処理業者もしくは卸売業者に対して、このような加熱の表示などを徹底するよう指導するということでございます。加熱用の表示があったという場合においては、飲食店事業者に対して加熱用の鶏肉の生もしくは加熱不十分な状態での提供の中止を直ちに指導するということでございます。それにあわせて定期的に事業者に対して重点的な監視を行うなどの厳正な対応をすることということで通知を出しております。

21ページは、この通知を出した以降、食中毒が発生した施設に対して加熱表示の有無ですとか、加熱用である旨の情報伝達の方法とか、そういったことについて報告を各自治体からいただいておりまして、その内容を取りまとめたものが22ページでございます。結果から申し上げますと、平成29年に発生したカンピロバクター食中毒事例について、約半数の事例については加熱表示があるにもかかわらず、生や加熱不十分な鶏肉を提供していたというような結果になってございます。

 左のグラフなのですけれども、カンピロバクターの食中毒事例における鶏肉の提供状況ということで、生や加熱が不十分な鶏肉もしくは鶏の内臓を提供していたというのがブルーのところになっておりまして、約9割の事例が生または加熱不十分な鶏肉の関与が疑われているという状況でございます。

 右のグラフなのですけれども、生で提供していたものについて加熱表示の有無があったのかを集計したものになってございまして、ブルーのところが加熱表示ありというところでございます。事件数で言いますと47%、患者数で言いますと52%という状況になっておりまして、繰り返しになりますが、約半数の事例については加熱表示があるにもかかわらず、生または加熱不十分な鶏肉を提供していたという報告がなされております。

23ページ、今後の対応といたしまして、過去の食中毒事例なども踏まえて事案の悪質性ですとか、そういったものを総合的に勘案して、カンピロバクターの食中毒に対する告発の対応について、自治体に通知してはどうかということで考えております。告発が考えられる例としましては、加熱用の食鳥肉であることを認識しつつも、生食用で提供してカンピロバクターの食中毒を繰り返し発生させている場合ですとか、あとは広域的に事業を展開している店舗において、一括仕入れする食肉が加熱用であることを認識しつつも、チェーン全店で生食用の料理を提供してカンピロバクター食中毒を広域的に発生させた場合とか、そういった例を想定しております。

 次に、大量調理施設衛生管理マニュアルの改正について御報告させていただきます。

25ページですが、背景としましてはノロウイルスと腸管出血性大腸菌がありまして、ノロウイルスについては昨年の食中毒部会でも御報告していますが、患者数が約6割、今年のデータですと5割になるのですが、多数を占めている状況でございます。発生の原因についても約8割が調理従事者からの汚染と言われておりますので、調理従事者の健康確認を徹底して、体調不良者については食品の調理業務に従事しないなどの対応が必要だということでございます。

 腸管出血性大腸菌については、千葉県と東京都の老人ホームの給食で提供されたきゅうりのゆかり和えというのがありまして、それを原因とする腸管出血性大腸菌0157の食中毒が発生しておりまして、10名の方が亡くなったという事例がありまして、これは昨年、御報告させていただきました。

 その内容を踏まえて26ページですが、原料の受け入れと下処理の段階における管理というところで、新たに加熱せずに喫食する食品で乾物ですとか摂取量が少ない食品も含めて、製造加工業者の衛生管理の体制について保健所の監視票ですとか、食品事業者の自主管理記録票などによって確認をするということと、製造加工業者が従業者の健康確認など、ノロウイルス対策を適切に行っているかを確認することを盛り込んでございます。

 次に、腸管出血性大腸菌による食中毒を踏まえて、野菜、果物を加熱せずに提供する場合には、流水で十分洗浄して、必要に応じて次亜塩酸ナトリウムで殺菌した後、流水で十分すすぎ洗いを行うこととしているところでございますが、先ほど御紹介した事案を踏まえて、特に高齢者ですとか若齢者、抵抗力の弱い者を対象とした食事を提供する施設においては、加熱せずに提供する場合は殺菌を行うことと改正をして盛り込んでございます。

27ページですが、調理従事者の衛生管理というところで、新たに調理従事者につきましては毎日、作業開始前に健康状態を衛生管理者にきちんと報告するということと、衛生管理者については、その結果をきちんと記録することを新たに盛り込んでございます。

 あと、検便の関係で基本的に月1回の検便を受けるということでこれまでは記載しておりまして、特にノロウイルスについては、10月から3月の間には検便の検査に含めることということでしておりました。この内容について10月から3月までの間には月1回以上、または、必要に応じてノロウイルスの検便検査に努めることと改正をしております。

 以上でございます。

○五十君部会長  御報告ありがとうございました。

 昨年の食中毒の概略、例年と大きく変わったところはないかと思いますけれども、大型事例ではノロウイルス、死亡事例ではボツリヌスが1例ありました。蜂蜜を原因食とする事例がという久しぶりに出たことが報告されたと思います。

 ただいまの御報告につきまして御質問等はございますか。倉根委員、どうぞ。

○倉根委員  細かいところですが、例えば10ページの0%というのは、なしという意味ですか。それともここで言うと全部1桁以上で出しているので0.4%以下なので、四捨五入するとゼロになるという意味ですか。

○岡崎食中毒被害情報管理室長補佐  はい、そのとおりでございます。四捨五入するとゼロになります。

○倉根委員  ゼロだから0.4%以下ということになるわけですね。

○岡崎食中毒被害情報管理室長補佐  そうです。

○倉根委員  それから、9ページのその他というのは、これ以外にどのようなものが現実的にはあり得るのでしょうか。具体的にあったかどうかはわかりませんが、これ以外だと動物性自然毒、化学物質、ウイルス、細菌、寄生虫とあって、例えばどういうものがあるのでしょうか。これ以外がその他なのでしょうけれども、具体的に言うとどのようなものが考えられるのかなと思ったのです。

○岡崎食中毒被害情報管理室長補佐  複数の病因物質が考えられて、どちらか特定できないとか、そういったものをここのその他に入れております。

○倉根委員  そうですよね。それほどあるとは思わないのですが、どんなものなのかということ。わかりました。

○五十君部会長  追加ですが、資料の13ページに原因食品別について、その他が、かなりの割合で出てきているのですが、同じと考えてよろしいのでしょうか。

○岡崎食中毒被害情報管理室長補佐  ここのその他につきましては、原因食品の分類になっておりますので、これについては注釈で書いてあるように、何月何日の食事とか、具体的に魚介類とか肉類とか穀類とか、そこまでの断定ができなかったものについてこちらに入れております。

○五十君部会長  例年に比べるとこの割合が多目かなという印象を受けたものですから確認させていただきました。どうもありがとうございます。

 ほかに質問ございますか。

○今村委員  2点ほどあるのですけれども、1つは件数の数え方のことで、今、件数がふえてきているということで、ふえてきていることの中にアニサキスがすごくふえてきていると思うのです。アニサキスというのは普通の食中毒とは少し違うものなので、これがふえてきたからといって普通の食中毒対策とは大分違うものだと思うのです。実際に今300例ほど上がってきていますけれども、実際にはもっともっとたくさんあって、医療機関にアニサキスを報告しなければいけないということが周知されればされるほどふえてくるものだと思うのです。ですからこれを今後もどんどんアニサキスを足していくと、恐らく件数としては人数はふえないのにどんどん件数がふえていくという事態が起こってくると思うので、アニサキスは別掲で書くか、何か工夫をしていかないと数字として見誤ることになるのではないかと思います。ですのでこれを調べることはいいことだと思うのですけれども、一例報告だと外れていきますから、そういう意味で外れていくのですけれども、特に今までの一例報告と今回のアニサキスは大分意味が違うと思うので、一例報告について外すこと以外に、アニサキスの対応を考えていかなければいけないかなと思いました。

 もう一つ、カンピロバクターの増加については、生レバーやユッケを禁止した後、どうしても鶏わさとか生食で鶏にどんどん逃げていっているという現状があって、保健所からもそういうことを提供するなということを指導はしてもらっているのですけれども、なかなか浸透しないのです。我々教育に携わる立場から、学生に徹底してこれは食べるなということを言っているのですが、現実にはどの居酒屋にも鶏わさを初めとして生食の鶏が売られているという現状の中で、幾ら啓発してもなかなかとめることができないという状況があると思うのです。

 これはできるだけ啓発をという形で今、話をしているのですけれども、もう少し踏み込んでやっていかないと、幾ら一般の啓発をしていても、どんどん広がる一方だと思うので、啓発で抑えられる範囲を超えてきたかなと考えております。

 2点、意見として申し上げたいと思います。

○五十君部会長  今村委員、ありがとうございました。そのあたりは検討していただければと思います。

 道野課長、どうぞ。

○道野食品監視安全課長  御意見ありがとうございます。

 まずアニサキスについては、確かにおっしゃっているとおり疾病統計として見たときにどうかという問題はあるのですが、食中毒統計そのものが、そもそも保健所に連絡のあったものが計上されているということで、疾病統計とは少し違っています。厚生労働科学研究でむしろそういう患者数の推定というのは別途やることの使い分けというのは1つ必要なのかなと思っています。

 ただ、それにしても統計の中でアニサキスの件数をほかの食中毒の数と並べて見るというのは確かに難しいところがあるので、計上の仕方についてはまた検討させていただきたいと思います。アニサキスにつきましては実際に発生をしていて、例えば漁獲から流通にどれぐらいかかったとか、実際に食中毒事例においてどのような取り扱いがされたのか、どういう時間経過だったのかということについては別途調査をしております。今回は本部会に間に合わなかったということもありましたので、継続して私どものほうで分析していきたいと考えています。

 カンピロバクター対策、特に鶏の生食対策なのですけれども、先ほど説明にもあったように、悪質事例については告発ということも今後、視野に入れて対応していきたいということが1つ。それから、食肉の生食に関しては、従前より牛肉、牛レバー、豚ということで乳肉水産部会でも議論されていまして、ある程度リスクに応じた対策の検討ということで、検討については継続されていると承知しております。

 以上です。

○五十君部会長  ありがとうございました。

 今村委員、よろしいでしょうか。

 それでは、そのほか御質問、調委員どうぞ。

○調委員  私もカンピロバクターの対策について御質問をさせていただきたいのですけれども、悪質な事例についてはかなり厳しく取り扱いをしていくということでかなり前進して、こういう事例が出てくると皆さん気をつけられて、だんだんと方向が変わっていっていくのではないかということを期待しておりますけれども、一方で患者が出たときに表示について徹底をするというような対策になっていると思うのですが、加熱という表示をしなくていい鶏肉というのが存在するのかとか、患者が出なければ表示について徹底されることはないという、そういう取り扱いが先ほど審議官言われましたけれども、国際的整合性の上においてどういう位置づけにあるのか教えていただきたいと思います。

○五十君部会長  道野課長、お願いします。

○道野食品監視安全課長  まず患者が出た際にだけ表示をチェックするということではなくて、この通知を出す前に関係業界にもお願いをして、従来からかなり表示は実際にはされていたところもあるのですけれども、されていないものについても加熱加工用のものについてはしっかりと加熱をしてほしいということで、関係業界とも調整をした上で通知を出しております。また、現場でも表示のないものについては表示してくれということについては、表示に限らず商品の企画書とかそういったものも含めて、何らかの形で情報伝達してほしいということについては、指導がされております。

 それから、加熱しなくてもいいものというのがあるのかということなのですけれども、特に南九州ではそういったものがございます。ただ、処理の仕方が違っているようでございまして、それと表面の加熱もされていると聞いています。処理の仕方が違うというのは、基本的に大規模処理場で通常の中抜き方式で処理されているものは、まず加熱加工用しか使いようがないと我々考えております。南九州でやられているのは外はぎであって、なおかつ汚染を最小限にということで自治体のほうも関与して、そういった処理手法について指導していると承知しております。

 以上です。

○五十君部会長  よろしいでしょうか。

○調委員  そういう処理の仕方は昨年の食中毒部会でも伺ったと思うのですけれども、そこが国際的に認められるものかどうかというところが少し気になっています。

○道野食品監視安全課長  コーデックスのそういったmeat hygieneのテキストなんかを見ても、基本的には先ほど申し上げた中抜き方式というのが前提になっていますし、恐らく鶏肉の生食習慣そのものが多分、外国では珍しいということではないかと思われますので、国際的な整合性という観点から言うと、むしろ日本独自のものではないかと考えております。

○五十君部会長  よろしいですか。

○調委員  ありがとうございました。

 ノロウイルスの対策についてお伺いしたいのですけれども、検便のところなのですが、105/gが基準になっているのですけれども、その基準の根拠といいますか、これはやはり迅速のキットで検出され得るところで区切りをしているのでしょうか。

○岡崎食中毒被害情報管理室長補佐  このマニュアルを作成するに当たっていろいろな先生方に御相談させてもらったのですが、現状あるキットで一番精度が高いのが105 と聞いておりまして、この値を使用しています。ただ、検便検査についてはこれでもって全てを管理するというわけではなくて、通常の日々の健康チェックを補完するものということで考えております。

○五十君部会長  この件につきましては、昨年の食中毒部会で検査をもって全てというわけではなくて、いろいろな面から総合的に対応するという中の1つとしてのオプションだったと思います。検査のレベルにつきましては現状でできる範囲ということになると思います。

 ほかに御質問等ございますか。よろしいですか。益子委員、どうぞ。

○益子委員  先ほどのカンピロなのですけれども、生食できるという個体はどのくらい出回っているのでしょうか。全国的に出回っているものなのでしょうか。何%ぐらいを占めるのでしょうか。

○道野食品監視安全課長  数字は把握しておりませんが、いずれもいわゆる認定小規模食鳥処理施設と聞いていますので、そういった意味から言うと全国流通するほどの数とはとても思えませんし、実際に出回っているものの多くはそういった大規模処理場で大量に処理されたものですので、都市部で起きているカンピロバクターの食中毒というのは、ほぼ加熱加工用のもので起きていると認識しております。

○五十君部会長  よろしいでしょうか。

 それでは、いろいろ御質問等出たかと思いますので、続きまして報告事項2といたしまして、食品衛生法の一部を改正する法律案の概要につきまして、資料3に基づきまして御報告をさせていただきます。

 それでは、食品衛生法の一部を改正する法律案の概要につきまして、事務局から説明をお願いしたいと思います。

○道野食品監視安全課長  資料3に基づいて、今回の法律案の概要につきまして御説明申し上げます。

 2ページを見ていただきますと、改正の趣旨というものが上段にありますが、先ほどの宇都宮審議官の挨拶にもございましたように、食品衛生法15年ぶりの改正ということであります。そういった中で食を取り巻く環境の変化、国際化と書いてございますけれども、高齢化であるとか、食中毒の下げ止まりであるとか、食の外部化の進展であるとか、そういった背景事情に対応しながら、さらにHACCPだとか器具・容器包装の材質のポジティブリスト化に対応していこうというような改正でございます。

 改正の概要の中に1から7まで項目が書いてございますけれども、特に食中毒の関連で申しますと、1番目の広域的な食中毒事案への対策強化、2番目のHACCPに沿った衛生管理の制度化、5番目の営業許可制度の見直し、営業届出制度の創設、6番目の食品リコール情報の報告制度の創設等が関連が深いかと思います。

 まず、最初の広域的な食中毒事案への対策強化ということであります。御承知のとおり、現在、地方分権が進んでいまして中核市が非常にふえてきております。現行で自治体数は144で、4月には150になると聞いております。先ほど申し上げたとおり、食品自体は製造や販売のシステムの集約化ということも進んでいて、むしろ広域化している。一方で行政のほうは細分化されているというような状況がございまして、広域食中毒発生時の国、自治体間での連携ということが、昨年夏の0157の広域発生においても課題とされてまいりました。

 そういったことも踏まえまして、ここにございますように広域的な食中毒の発生や拡大防止のため、相互に連携や協力を行う広域連携協議会を設置するとなってございます。

 次のページを見ていただくと資料がございますけれども、ちょうど真ん中にございますように、国と関係自治体の食中毒事案対応などの連携や協力の場として、地域ブロックごとに広域連携協議会を設置というふうに書いてございます。基本的にはブロック単位で、厚生局の単位で協議会を設置するというようなことで、通常時に関しては連絡体制の確認とか検査体制の確認とか、協力の内容についても確認をしていく、発生時にはできるだけ早い段階で調査方針であるとか、調査情報の共有であるとか、対外的な情報発信の内容の調整とか、そういった場にしていきたいと考えております。

 ちなみに必ずしも広域食中毒はブロックごとに発生するわけではございませんので、境界線であった場合には必要な自治体が出席できるというようなことで運営をしていくというふうに考えております。

 関係しています食中毒で昨年のO157の広域発生について、次の議題のところで内容については詳しく御説明したいと思います。

 2番目のHACCPに沿った衛生管理の制度化でございます。2ページに戻っていただきますと、原則として全ての食品と事業者に一般衛生管理に加え、HACCPに沿った衛生管理の実施を求めるということでございます。ただし、規模や業種等を考慮した一定の営業者については、取り扱う食品の特性等に応じた衛生管理とするというような考え方でございまして、資料については4ページをごらんください。

 4ページにHACCPに沿った衛生管理の制度化ということで、詳しい資料になっております。制度のたてつけとしては、一番上にありますように全ての食品等事業者、製造・加工、調理、販売等を行う方々が衛生管理計画をつくるというようなことにしております。もちろんその一般衛生管理についてまず計画に記載してもらうとともに、工程管理としてHACCPに基づく工程管理の内容についても書いていただくことになるわけです。実際に小規模事業者とか飲食店とか、取り扱う食品の性質上、コーデックスのHACCP 7原則が適用しにくい、もしくは難しいというケースもございますので、HACCPに関連した衛生管理については2つの管理に分けております。

 左側が「HACCPに基づく衛生管理」ということで、基本的にはこれを原則としております。右側の「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」というものが対象事業者の方に関して言うと、小規模事業者であるとか、そのほか菓子の製造販売、食肉販売、魚介類の販売、飲食、給食、惣菜等々、さらには包装食品の販売等についてもHACCPの考え方を取り入れた衛生管理ということで、弾力的な運用の対象となっています。

 内容的には現在、業界団体にそれぞれ手引書を作成していただいています。具体的に言いますと例えば危害要因分析であるとか、そういったある程度専門的な知識が必要なものについては、むしろこういった業界団体の手引書の中で整理をしていくことにして、実際の衛生管理計画はこの手引書に沿ってつくっていただくとか、もしくは手引書に書かれている例を活用していただくとか、そういったことで対応が可能なようにして進めていこうということにしております。

 従前、左側を基準A、右側を基準Bと申し上げていたのですが、差別化につながるのではないかとか、いろいろな御指摘もございまして、中身を書くことにしようということになってHACCPに基づく衛生管理と、考え方を取り入れた衛生管理、これは1年4カ月ぐらい前の検討会の報告書の表現に戻ったということでございます。

 続きまして2ページに戻っていただくと、3が特別の注意を必要とする成分等を含む食品による健康被害情報の収集ということで、例えば健康食品である程度生理活性のある成分を使用されているものが最近出てきておりまして、それに伴う健康被害が発生しております。そういった特別の注意を必要とする成分を指定して、健康被害情報を事業者の方から報告をいただくということで、それを検討の起点としまして例えば食品衛生法に基づいて販売の禁止をするだとか、規格をつくるだとか、そういった行政措置につなげていこうという仕組みでございます。

 4番目が国際整合的な食品用器具・容器包装の衛生規制の整備ということでございまして、特にプラスチック製の材質につきまして、現在ネガティブリストということで個別に規格基準を設けて規制しておるところですけれども、ここに書いていますとおり安全性を評価した物質のみ使用可能とするというようなことで、ポジティブリスト化を進めていこうということであります。

 5番目が営業許可制度の見直し、営業届出制度の創設ということであります。先ほどHACCPのところで申し上げたとおり、原則、全ての食品等事業者の方が衛生管理計画を作成することが必要になるわけでありまして、その対象者の方を特定するという意味で届け出という制度を新たに設けることといたしました。営業許可制度につきましては、昭和47年以降、見直していないということもありまして、現行の食品産業の実態と少し乖離している部分もあるということで、あわせてこれは政令事項ですけれども、見直していこうというような考え方であります。

 6番目が食品リコール情報の報告制度の創設ということでございまして、これは安全性を理由にして食品等の事業者の方が自主回収を行う際に、現在、一部自治体では報告することが条例で定められているわけでございますけれども、結局、全国でどのような食品がリコールされているかということの情報の把握、提供というのができていないという事情がございます。そういったことで営業者の方が自主回収を行う場合には、自治体を通じて最終的には厚生労働省で取りまとめて、一般の方々にも情報をきちんと提供できる仕組みをつくろうということでございます。

 7番目につきましては、輸入関係で例えばHACCPを国内で義務づけた場合、特にHACCPに基づく衛生管理で規制されている食品については、輸入の場合にもHACCPを要件にしようということでございまして、現在、食肉、食鳥肉を想定して考えております。そのほかに輸出関係の事務につきまして今、国、自治体ともに運用でやっているところがございますので、法的根拠を整備するということであります。

 施行の期日につきましては、原則2年ということでありますけれども、例えば広域食中毒事案への対策強化は行政内部の話でございますので1年。また、許可制度、届出制度、リコールに関しては電子的な手続も整備するということで、準備期間を3年置いております。HACCPにつきましては2年後施行なのですけれども、さらに1年間については従前の例によることができることにいたしまして、実質2年プラス1年というようなスケジュールにしております。

 以上です。

○五十君部会長  ありがとうございました。

15年ぶりということで大変多くの項目、それから、国際整合性等に重点が置かれていると思います。

 ただいまの御説明に関しまして御質問等ございますか。寺嶋委員、どうぞ。

○寺嶋委員  1番目の広域的な食中毒事案への対策強化に関して質問させてください。

 広域連携協議会を設置するタイミングですがども、いわゆる広域的な食中毒事例というのは散発事例でぽつぽつ起こって、発生して広域になったというふうにわかるかと思います。そういう散発事例が実は広域だったという閾値といいますか、どこのタイミングでこれは広域なので、では広域連携協議会にしましょうかというふうになるのか、それともこの協議会自体が恒常的に設置されていて、別機関というか単独機関みたいな形で、いつもサーベイランスを行っているものなのかということについて教えていただきたいと思います。

○道野食品監視安全課長  広域連携協議会については、基本的には常設と考えています。ただ、いずれにしても実際の会議をどういうタイミングで開くのかというのは、今、御指摘のように、どの段階で散発事例がふえていると判断するかということなのでありますけれども、それに必要なものとしては、例えば共通の遺伝子型を持ったものがふえているかどうかずっとサーベイランスしておかなければいけないということがあります。次の議題のところでも御説明しますけれども、そういった意味で遺伝子型別の情報を早く入手して、疫学的な情報をしっかりと捉えることが非常に重要になってまいりますので、そういった体制整備をあわせてやっていかないと、協議会をつくっただけで問題が解決するというものではないと私どもも認識しております。

○寺嶋委員  わかりました。ありがとうございました。

○五十君部会長  次の資料4で扱うと思いますので、よろしいでしょうか。

 ほかには御質問等ございますか。今村委員、どうぞ。

○今村委員  1つ、HACCPの導入のことについて状況を教えていただきたいと思うのですけれども、今回のほうで言うと考え方を取り入れた衛生管理が3年後に施行ということで、これから準備ができそうなものかというのが、今の段階で御見解があれば教えていただきたいと思います。なかなか現場はHACCPの考え方を取り入れることさえも難しいという状況があって、まだこのHACCPというのをどう読んでいいかわからないという段階のところがたくさんあって、これがどれぐらい3年後に現実的に、自主基準ということですけれども、それを守れるベルに上がるのかということの見込みのようなものがあれば、お教えいただきたいと思います。

○道野食品監視安全課長  特に「考え方を取り入れた」ほうに関しては、個別業界での手引書の作成というものと密接な関係があると認識しておりまして、昨年3月に手引書作成のためのガイドラインを出しまして、それ以降、現在までに10団体が手引書の作成を終わっています。さらに40団体が現在、取り組んでいただいている状況でありまして、これにつきましては農林水産省から団体に対する補助制度も準備をしていただきまして、今年度からスタートしているわけであります。そういったことで我々としてはできるだけ早期に、できれば30年度中に大方のところがそろえば、周知期間も含めて現場での対応についてもかなり進むのではないかと思っております。

 ただ、手引書も業界でつくったらいいですよということだけではなくて、厚生労働省のほうで検討会を開催して、内容についてはチェックをする。業界のインサイダーだけではなくてアウトサイダーの方にも指導する、利用していただくことを含めて対応しているころであります。

○五十君部会長  ほかに御質問はございますか。倉根委員、どうぞ。

○倉根委員  4ページの今お答えいただいたところなのですけれども、HACCPの考えを取り入れた衛生管理に属するというか、そういうことで今後対応していくというのは、将来的にはHACCPに基づくほうに移るための移行期間なのでしょうか。それとも本質的に二本立てといいますか、2つの取り組みによって進んでいくということでしょうか。これが完成されないところにこの質問をしていいかどうかあれですが。

○道野食品監視安全課長 HACCPに沿った衛生管理の制度化につきましては、食品衛生管理の国際標準化に関する検討会でも議論していただきました。その際にはステップアップしていくことを十分視野に入れて進めていくべきという議論がございました。

 ただ、一方で実際の問題として各事業者の方、こういう仕組みになっていますのでもちろん基づく衛生管理を目指す方もおられると思いますけれども、とにかく「取り入れた衛生管理」をまずやりましょうという人たちもいるわけでございまして、そこはそれぞれの事業者によって対応はさまざまだと思います。「取り入れた衛生管理」の方が「基づく衛生管理」にステップアップすることもできるような仕組みにしております。

 ちなみに今コーデックスのガイドラインでも、小規模事業者に対する弾力的な対応というのは実際に規定されておりますし、我々としてもコーデックスのテキストの範囲内で両方の仕組みがワークしていくことを念頭に、こういった仕組みを提案させていただいたということであります。

○五十君部会長  よろしいですか。食品衛生管理の根本にかかわるような大きな変革という面もありますので、ほかの委員会等でも検討が進んでおります。その状況を観察しながら見ていっていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

 それでは、次に広域的な食中毒事案への対応につきまして、今度は資料4に基づきまして御報告をお願いしたいと思います。広域的な食中毒事例への対応につきまして、事務局からまず説明をお願いしたいと思います。

○道野食品監視安全課長  資料4に基づいて御説明いたします。

 2ページ、昨年8月にO157VT2の発症例が関東を中心に多発したということでございました。調査の結果は、7月17日から9月1日までに発症した141件のうち116件の菌株情報が判明し、91件が同一遺伝子型であったということであります。

 下のグラフにございますように、7月下旬から患者の発生報告があったわけでございますけれども、実際に食中毒事案として捉えられたものは後半、8月10日以降の発生例でございまして、埼玉、前橋等、4件の食中毒事例が右側の山の中に含まれていたということでございます。食中毒として確定されたものは2ページの右下にございますように全体91名ですが、そのうちの21名ということでございました。

 こうした事案を踏まえて、昨年、薬事・食品安全審議会食品衛生分科会に私どもから提出した資料が3ページ以降でございます。調査結果の評価ということでございますけれども、1点目が患者発生の山というのは7月下旬に認められたが、今、申し上げたような集団事例がなく、調査開始ができなかったということが1点。それから、そうした広域発生事例の早期探知がおくれた要因として、関係自治体間の情報共有であるとか、国による情報の取りまとめ、それから、当該取りまとめの情報を関係自治体間で共有する。さらには遺伝子型別の検査手法の違いによる結果の集約、こういったことにかなり時間を要したということが挙げられるというのが評価でございます。

 こうしたことを踏まえまして、国、都道府県等の関係者間での連携や発生状況の情報共有等の体制は、実質的に整備していく必要があるということで1から7までの対策、課題を整理いたしました。

 4ページ、こうした7つの課題につきまして具体的な対応の方向性、右側の 1~7に分けて課題を整理しております。特に赤で囲んでいる部分につきましては、先ほど御説明をいたしました食品衛生法改正法案に盛り込むというような内容になっております。1つが広域食中毒対策による広域連携協議会の設置。1つがHACCPに沿った衛生管理の制度化ということでございます。

 5ページ1は先ほど御説明を申し上げた食品衛生法の改正案の概要の内容と同様に、協議会の設置をする。さらに食中毒処理要領の改正も引き続きやってまいって、広域的な食中毒が発生した場合に備えた協力体制の構築。情報共有に関すること等について追記することを検討することにしております。

 2でありますけれども、具体的な課題としては感染症法に基づく届け出、食中毒の患者データ、遺伝子解析の結果の情報等が実はばらばらに管理されています。個人情報等の管理の問題もございまして、困難があったわけでございますけれども、少なくとも個人情報に影響しない情報については、共通IDにより管理をしていくというようなことで、本年度内には具体的な方法を示していく予定にしております。これには遺伝子解析の結果もあわせて情報を管理していきたいと考えています。

 6ページ、 3は自治体における食品衛生部門と感染症部門、両部門の共通の調査票と調査協力マニュアルを策定するということで、いずれも6月までに策定をするということで現在、作業中でございます。これに関しましては厚労科研も活用したしまして、感染症研究所の専門家の方々の御協力もいただいて検討を進めているところであります。

4は遺伝子検査手法の統一化ということでありまして、実は昨年の段階で申しますと、PFGEMLVAとどちらかを多くの衛生研究所はやっておられるわけでありますが、統一した方法による検査というのがまだ対応できていなかったというような事情がございました。

 そういったことで2番目にございますように、腸管出血性大腸菌の患者報告の多い地方衛生研究所に対して解析ソフトの整備の支援ということで、ソフトの貸与を今年度やってございます。また、今月、地方衛生研究所職員を対象とした遺伝子型の検査法の研修会を予定しております。そういったことを通じてMLVA、反復配列多型解析法に遺伝子検査の方法を統一化していくことで、取り組みを進めているところであります。

 5ですけれども、広域的な食中毒事例に限らず、食中毒におけるさかのぼり調査はなかなか難しい部分がございます。今回のさかのぼり調査で困難であった実際の問題点、課題というものについて現在、関係自治体から個別に聴取している状況であります。

 6は連携協議会との関連の内容でありますが、広報資料につきましてそれぞれの自治体が言ってみれば全体像の説明とか情報発信というのはせずに、個別の検査結果なり調査結果だけを情報発信していくというのは、受けとめる側から言うと全体像の見えない、評価のしにくいものが発信されているという結果にもなっておるわけでございまして、そういったことでこの協議会の機能として、広報資料等の調整も進めていくということであります。

 7は先ほど申し上げたHACCPに沿った衛生管理の制度化ということでございます。

 以上です。

○五十君部会長  ありがとうございました。

 ただいまの御説明に対しまして御質問、御意見をいただきたいと思います。尾島委員、どうぞ。

○尾島委員  患者発生が二峰性になっていたというのは非常に興味深く拝聴いたしました。

 1回目の山については、感染症法に基づく届け出で把握しているものでしょうかというのと、それの発生地域は2回目の山と大体同じなのか、ちょっと違うのかというのと、二峰性で1回収束したのは、どんな機序によるものだとお考えかというのを教えていただけますでしょうか。

○道野食品監視安全課長  必要に応じて御存じの方から補足していただければと思います。最初の発生時点も含めて、全体としては当然のことながら感染症法の届け出の対象でございますので、この数字もそれに従ったものであります。

 ただ、遺伝子型の共通性につきましては、要は先ほど申し上げたような試験法の違い等もあって、言ってみればそれが1つのひょっとしたらクラスターではないのかということに関しての気がつく時期というのは、かなり遅くて8月半ば過ぎぐらいに至ったというような状況であります。この辺が非常に言ってみれば反省点でありまして、遺伝子型別の情報というのは早く、先ほど寺嶋先生からも御指摘がありましたけれども、その辺のデータを早く解析して、分析をすることは今回重要だったことも改めて我々としては課題として認識した次第であります。

○尾島委員  発生地域などはいかがでしょうか。

○道野食品監視安全課長  発生地域につきましては、基本的にはここの部分も関東が中心というか、ほぼ関東の中と認識しております。

○尾島委員  ありがとうございます。

 砂川委員、何か追加はありますでしょうか。

○砂川委員  昨年の夏の事例は非常に難しい事例でありまして、感染症法で集まってくる事例の情報を私どももつぶさに見ておりましたけれども、これが共通性あるということで、そういったあたりの情報が基本的に最初の山の時点では把握できなかったということがあります。散発事例として報告されていて、基本、関連性がない。また、夏のこの時期というのはEHECは基本的に非常に増加傾向にありますので、通常の傾向の認識との中で埋もれてしまったところがありまして、私どももこれが広域事例ではないかと気がついたのは8月の中旬という状況がありました。

 関東地方が中心の事例であることは、先ほど課長がおっしゃっていたとおりでありますので、そういったあたりの少し広目に見た集積とかの把握というあたり、あと、検査結果の活用というか、そういったあたりについても多々改善するべき点があると考えております。

○五十君部会長  ありがとうございました。

 賀来委員、どうぞ。

○賀来委員  昨年の事例は非常に多くの一般市民の方も不安な思いの中で、どのようにして移ったのか、あるいはどのようなものが原因だったのかというのがメディア中心に非常に大きな反響があったのですけれども、今回このような形で食品衛生法の中に広域の協議会を設けていただくというのは非常によいことといいますか、非常に前進で、先ほどの広域についての事例に対応するという意味では、非常に大きいことだと思います。

 1点、先ほど寺嶋委員の御質問と少し重なるのですけれども、どの段階でといいますか、これはもちろんこれから走り出すわけなので、2020年の東京オリンピック・パラリンピックでマスギャザリングの感染症についてもEHECをかなり取り上げられていますので、どの段階で、誰が判断して協議会を設けていくのかというのは、非常に重要なポイントだと思います。また、これから夏になって起こってきたときに、ぜひいろいろな意味でトライといいますか、いろいろな意味で起こってきたときに、まず広域協議会を立ち上げて事例を検案していくこともぜひお願いしたいと思っておりまして、ぜひそのような形で進めていただければと思います。

○五十君部会長  事務局からコメントはございますか。

○道野食品監視安全課長  昨年の例をとりますと、8月半ばぐらいに集団発生に気がついたということがあるわけなのです。事案の公表等が8月20日過ぎです。実際に関係自治体の会議を計2回やっているのですが、9月1日に1回目やっています。その時点では相当各自治体とも調査をやってしまっている後で、それぞれの方針で突き進んでいるところもありまして、ほとんど調整が難しい段階だったということがあります。そういったことも踏まえると、もちろん遺伝子型別の情報だとか、疫学情報が早期にそろっていくことが前提になるのですけれども、せめてもう2週間ぐらい早く会議をやらないと、とても相談するのは難しいのかなというのを実感しております。

○五十君部会長  では、調委員からどうぞ。

○調委員  今度から恐らくMLVA法をやっていくことになる地方衛生研究所の代表として少しコメントさせていただきたいと思うのですけれども、これまで腸管出血性大腸菌につきましては、全例を感染研に送付して、感染研で解析を行うという体制で、実際には毎年2,500株ぐらい、全患者数の半数ぐらいの株が集められて、基本的に2年前ぐらいまではpulsed-field gel electrophoresisPFGEで検査が行われていました。

PFGEの欠点は、迅速性に若干問題があるということと、時間がかかるということです。それから、施設間のデータの比較が難しい。精度管理が非常に難しいという問題点がありまして、最近開発されたMLVA法を採用し始めた。

 遺伝子型の共有ができていなかったというお話がありましたけれども、この遺伝子型の解析というのが、明確に広域的な食中毒を迅速に探知するという目的として行われていなかったと思います。今回恐らく初めてです。遺伝子型の検出を早期に行って、その比較を見出して、広域的な散発事例を早い段階で見つけていく体制をとろうというアクションが持たれたと私は理解していまして、その迅速性を確保するためには地方衛生研究所で検査を行う必要があるということだと思います。

MLVA法は大腸菌ゲノム17locusのリピート数をそれぞれ数えまして、その比較を行うということなのですけれども、一見、単純に見えますが、実は技術的には課題はあると思っておりまして、やはり精度管理というのは重要になってくると思いますし、もちろん今よりは恐らく速くなるだろうと思いますが、迅速性、正確性を確保していくために、これから人材育成とか、あるいはそのデータをどうやって共有していって、誰がどうそのデータの共通性を管理していくのかといったような問題もあると思っています。

 恐らく体制がしっかりすると初動は早くなると思いますけれども、共通性がわかっても原因食材に果たして行き着くのかというところは若干懸念されるところがあって、もちろん大もとは牛なのです。牛肉汚染とか、あるいは牛の糞便で汚染された野菜だとか、そういったものを通じて食中毒になることも考えられるのですけれども、その食材に行き着くための方法論は、これから考えていく必要があると思います。

 そのためには家畜についての調査というのは必要なのではないかと思います。あとサルモネラについては山形の例ですね。これは原因食材として卵が疑われる。もちろんサルモネラ・エンテリティディスなので、当然卵というふうになると思うのですけれども、鶏舎からのサルモネラと比較して、全塩基配列が一致しているかということから、因果関係がかなりはっきりした。食材に行き着くためにはヒトが由来した大腸菌だけではなくて、もう少し幅広い調査も必要になってくると考えていますので、そのあたりも検討していただきたいと思います。

○五十君部会長  砂川委員もありますか。

○砂川委員  今回の事例を振り返ってみますと、最初の山がここに出ておりますが、これは同一遺伝子型に関連するものとしては後からわかったというのが事実であります。そういった意味で先ほども申し上げましたが、粗い情報であっても早く気づくという点で食中毒の前の段階、なので感染症部局との連携というのが非常に重要であって、それは自治体でもそうですし、国レベルでもそうであるということ。あとは場合によっては医療機関のお医者さんのネットワークの中でも、これは何かおかしいぞというあたりについて早く気づくとか、こういったあたりの連携も重要だろうと思います。そういった意味で非常に総合力が求められるものだと思います。

 対策の部分、さかのぼり調査に関係するところにも入ってきますが、先ほど調委員がおっしゃったように農水部局、流通とか中間業者とか、こういったあたりとの連携も必要になってくる。そういった意味で非常に大きなチャレンジであると思います。

○五十君部会長  この件に関してはまだご意見はあるかと思います。腸管出血性大腸菌は感染症の面でも重要で、食中毒としての、食品の対応でどの程度有効であるかにつきましては、先ほど調委員からもコメントがあったと思います。食中毒対応の観点で対応したときに、また難しい問題として出てくる可能性があると思います。今後更なる検討を進めていっていただきたいと思います。

 そろそろ次の話題に行ってよろしいでしょうか。雨宮委員、どうぞ。

○雨宮委員  先ほどからHACCPのことで言っていらして、今回の食中毒事案に関して、引き続き実行可能な方向で着実に取り組みを進めていくとあるのですけれども、現在どういったところまで進められているのかとかの説明をもししていただけたら、お願いします。

○道野食品監視安全課長  先ほどの食品衛生法等の一部を改正する法律案の概要の資料3のところで御説明したとおり、HACCPに関しましては主に2つの基準で、全ての事業者の方に取り組んでいただくことを基本にしています。「基づく衛生管理」のほうだと、実施率というのは上げるのが難しい状況でありますので、むしろそういった「考え方を取り入れた衛生管理」で進めていくというのが現実的だと考えています。

 現在の状況ということで申しますと、従来、例えば先ほど説明で出てきました大量調理施設の衛生管理マニュアル。これはもともとHACCPの考え方を取り入れたということで進めてきているわけです。これ自体は例えば大規模な給食施設や総菜屋さんとか、そういったところでは導入に実際に取り組まれているわけであります。こういった内容についてもちろん対応可能な形でということでありますが、小規模な調理施設とか、そういったところにもHACCPの考え方を取り入れた衛生管理の一環として導入していく。そういったことが食中毒の減少につながっていくのではないかと考えています。

 と申しますのも、食中毒の原因施設の7割が飲食店、小規模施設となっていますので、HACCPという看板はともかくとしても、小規模事業者、飲食店への衛生管理の考え方の導入というのが重要だと認識しています。

○五十君部会長  雨宮委員、よろしいでしょうか。

 それでは、次に進ませていただきます。議題4になりますが、山形県庄内地域におけるサルモネラ症事例の中間報告ということで、資料5になります。山形県食品安全衛生課の小林課長補佐からの御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○小林参考人  山形県の小林と申します。よろしくお願いします。

 昨年秋に発生しました、山形県庄内地域におけるサルモネラ症事例について報告させていただきたいと思います。

 資料の2枚目、探知と初動調査になります。平成29年9月21日、鶴岡市内の病院から管内の庄内保健所に9月6日から18日にかけて、サルモネラO9群が検出された患者が15名発生し、1名が亡くなられたとの連絡がありました。庄内保健所では食中毒と感染症の両面から調査を開始しました。

 また、9月25日には、国立感染症研究所のFETPに調査への協力を依頼させていただきまして、27日から合同の調査を開始しております。

 4ページ、症例の定義でございます。今回の症例の定義につきましては、平成29年9月6日から1018日までに胃腸炎症状を発症し、庄内地区の医療機関においてサルモネラO9群が検出された者として調査を行っております。

 5ページ、調査結果になります。このスライドはサルモネラO9群患者さんの発症日になります。後ろ向きの症例探索と前向きの症例探索による結果になります。9月6日から1018日まで40名の患者さんが発生しております。9月27日からは庄内保健所管内の積極的症例検索を行っております。後ろ向きの症例探索として8月13日以降のサルモネラ症に関する報告を地域の基幹病院に依頼しておりまして、前向きの症例探索としまして地域の医師会やほかの病院に、サルモネラ症が新規に発生した際の保健所への報告依頼を行っております。

 6ページが患者の性別と年齢です。患者の年齢分布は20歳未満の若齢者と70歳以上の高齢者など、リスクの高いグループの割合が約8割と高い傾向が認められました。

 8ページ、患者さんの居住地等になります。患者さんの居住地は庄内地域でも鶴岡市内に33名と多く認められましたが、地域的な偏在はありませんでした。患者40名は32世帯に分かれまして、同居家族の中でも一部の発生にとどまりまして、ほとんどは単独の発生でした。また、職業、勤務先、学校等の属性に共通性はなく、生活行動も異なりました。

 9ページ、患者の喫食状況になります。最も喫食割合が高かったのが鶏卵で、発症から1週間以内についての聞き取り調査の結果になりますが、喫食ありが30名、喫食なしが1名、覚えていない方が9名でした。その他の喫食歴は表のとおりになっております。

10ページ、患者の行動、食品の調査結果のまとめになります。患者に飲食店等の共通の利用施設はありませんでした。また、家庭内での喫食状況ですが、潜伏期間やサルモネラの検査に要する期間、医療機関からの情報提供にかかる期間などによりまして暴露日から探知まで1~2週間程度を要するため、ほとんどの患者の方は記憶が曖昧でありました。また、既に食材は消費されており、家庭での残品はなく、検査は行えませんでした。

11ページ、患者の喫食割合が高かった鶏卵の流通の大まかな流れになります。庄内地域のスーパーなどの小売店で販売されている鶏卵は、地域外からの流通も多くありましたが、庄内地域の養鶏場は鶏卵の選別・包装施設、いわゆるGPセンターを併設しているところが多く、そこから小売店ですとか給食施設などに流通しまして、最終的に消費者の方が喫食することになります。行政的な所管としましては、養鶏場は農林部局である家畜保健衛生所の所管となりますが、GPセンターにおいては処理を行う段階から消費者に至るまで、流通されるものについては衛生部局である保健所が所管となります。

12ページ、庄内地域での鶏卵の流通状況ですが、GPセンターにより自社の養鶏場の鶏卵のみ選別・包装している場合や、他社の養鶏場から鶏卵を仕入れて選別・包装している場合があります。加えて小売店などからの受注数に応じて出荷するため、自社で不足した場合は他社から仕入れて選別・包装しており、養鶏場までさかのぼれない例もありました。また、ほとんどの患者家族は鶏卵の購入先の記憶が定かではなく、回答にありましたいつも利用している複数の店舗においても、それぞれ複数のGPセンターから納品された鶏卵を扱っておりまして、養鶏場の特定は困難でした。

13ページ、同時期に実施しておりました家畜保健衛生所による農林水産省の消費安全対策事業であるサルモネラ汚染実態調査の結果、2カ所の養鶏場のほこりなどの環境検体から S . Enteritidis(以下SE)が検出されまして、農水省の鶏卵のサルモネラ総合対策指針に基づきまして、清浄化対策を行っている旨の情報提供をいただきました。

14ページ、この情報提供を受けまして、保健所では1012日にSEが検出された2養鶏場に付設するGPセンターについて、それぞれ環境の検体、鶏卵の検査を実施しました。その結果、GPセンターの環境検体、鶏卵からはSEは検出されず、施設は衛生的な問題点は特にありませんでした。

15ページ、患者がいつも利用しております店舗につきまして、1010日に惣菜、菓子などの買い上げ検査ですとか、鶏卵を大量に使用する菓子製造業、スーパーあるいは鶏卵販売を行っているスーパーや食肉販売店などの立ち入り調査を実施しております。こちらの検査及び調査の結果でもSEは検出されず、各店舗の衛生管理は適切に行われておりました。

 今までお話させていただいたものの流通のところをまとめたものが16ページになります。患者から鶏卵の流通をさかのぼった図になります。左側に患者さんがおりまして、見づらいのですけれども、鶏卵を食べていらっしゃらない患者さん、あるいは先ほどお話させていただいたSEが検出された2養鶏場の卵を喫食されていない患者さん、また、それぞれの患者が複数の小売店から購入した可能性があるという状況がありまして、右のほうに小売店、GPセンター、養鶏場とさかのぼるような図になっておりますけれども、線が見にくい部分もございますが、複雑な流通となっておりますけれども、赤がA養鶏場関連の流通、濃い青がB養鶏場関連の流通、紫がA、B両方の養鶏場関連の流通、水色はSEの検出情報があった2養鶏場以外にも利用された可能性のある養鶏場関連の流通ですが、これはルートが複数ありまして、管内、管外、県外からさまざまな流通状況が確認されておりまして、2養鶏場以外のリスクも除外できないという結果となっておりました。

17ページ、患者由来検体の検査の状況になります。40名の患者のうち、菌株が確保できました32検体の遺伝子型の検査、PFGE、ゲノム解析を実施しております。32検体は血清型はSEと判定され、PFGEでパターンが一致し、ゲノム解析の結果、遺伝子の型が同一と考えられました。また、SEが検出された2養鶏場由来の検体もゲノム解析の結果、患者菌株と遺伝的に同一の菌株と考えられましたが、1名の患者さんは鶏卵を喫食しておらず、また、1名の患者さんは当該2養鶏場の鶏卵を確実に喫食していないという状況でした。

18ページ、こちらが以上の調査と並行しまして行っておりました県民への情報提供や注意喚起になります。

19ページが考察になります。サルモネラ症は感染症法での届出義務がないため、通常、感染症発生状況調査で把握することは困難です。しかし、今回は基幹病院においてサルモネラO9群患者の通常と異なる増加を察知し、保健所への情報提供があり、アウトブレイクを探知することができました。加えて地域の医師会や病院と連携しまして、積極的症例探索を実施し、感染源の探索に努めました。また、農林部局との連携によりまして農林部局の有益な情報提供を受け、調査に活用しております。通常の疫学調査結果に加えて、国立感染症研究所に御協力いただきまして、これまで実施したことのなかったゲノム解析の結果を活用し、検討を行いました。

20ページが今回の本事例の全体像になります。真ん中の右のほうに患者の図があるわけですけれども、患者さんの一部と左の養鶏場の環境から同一菌株の検出がありましたが、真ん中のほうになりますが、患者さんの購入、喫食に係る記憶も含めまして、GPセンターから小売店を経由した患者さんまでの疫学情報、流通状況が不確実であり、食中毒との判断には至っておりません。

21ページ、これらの結果によりまして、4つの課題が浮かび上がってきたのかなと考えております。

 1つ目は、鶏卵のさかのぼりについてであります。食品表示法によりまして、鶏卵の表示責任者は現在、選別・包装者または採卵者を記載することとなっております。鶏卵は表示や納品書などによりましてGPセンターまで確実にさかのぼれますが、包装ごとに養鶏場の区別を確実に行うことは困難な場合が多いのが現状です。生食用の鶏卵については、GPセンターに加え採卵者の表示を義務づけすることにより、養鶏場までの確実なさかのぼりが可能になります。

 2つ目としましては、生食用鶏卵の成分規格についてです。現在の法令では、仮に鶏卵からSEが検出されただけでは、アウトブレイクのおそれがあっても喫食情報との疫学的な関連性がなければ、食品衛生法の第6条違反は問えません。また、生食用鶏卵に成分規格がないため、検査結果に対する措置が行政指導にとどまらざるを得ないのが現状になっております。患者発生防止対策の1つとしまして、食品の成分規格について生食用鶏卵にSEを新たに設定する検討も必要と考えられるのかなと思っております。

22ページ、3つ目になります。他の地域において今回のような事例の把握はできておりませんが、この事例は基幹病院が鶴岡地区に1カ所のみであることから、アウトブレイクの把握が容易であったものと考えられます。しかし、都市部のように複数の医療機関からの情報提供を受ける場合は、アウトブレイクを早期探知することは困難と思われます。アウトブレイクの発生時や食品、養鶏場からのSEの検出時等、積極的な疫学調査を行っていくための仕組みづくりが必要と考えられます。

 最後の4つ目ですが、今回の事例のように疫学調査によりまして十分な情報が得られずに、食品衛生法の第6条違反が問えない場合であっても早急な患者発生の防止策を講じる必要がありますが、法令による根拠がなく、行政指導にとどまらざるを得ない状況があります。患者が探知された場合、患者、食品及び環境の検査結果や食品の流通等を評価しまして、評価結果によってはアウトブレイク防止対策を講じることができるような仕組みの構築が必要と考えられます。

 今回の事例は、法令による行政的な根拠が定められていない中での対応を求められたものが多数ありました。先ほど挙げさせていただきました課題を御検討いただきまして、今後の健康被害の発生防止対策の一助としていただきたいと考えております。

 最後になりますが、今回の調査に御協力いただきました国立感染症研究所のFETPの皆様、ゲノム解析に御協力いただきました国立感染症研究所細菌第一部第二室の皆様に深謝いたします。ありがとうございました。

 以上です。

○五十君部会長  小林様、どうも御説明ありがとうございました。

 本件は国立感染症研究所の感染症疫学センターも協力して調査を実施しております。砂川委員、ただいまの御説明に関して何か補足事項等はございますか。

○砂川委員  私自身は直接の調査の当事者ではありませんが、今のお話を聞いて、全般的な印象的なお話で恐縮ですが、恐らく卵がかなり怪しいけれども、残品もないということで食中毒事例としては結論づけられないところであっただろうと思います。その中で農林部局の養鶏場に関する環境検査のデータというものの有用性が非常に際立っていた。この連携というのは非常にすばらしいと思います。

 サルモネラの鶏卵の汚染というのは非常に改善されていて、今では1万分の1以下だという話がありますが、そうであってもこのような事例が発生したときに、非常に少ないけれども、リスクということを考えて鶏卵の汚染とかそういったところに対する調査などを構築していく。そのために食品衛生法ではなかなか難しい部分があるという御指摘もありましたので、実現可能性のある対応について議論を深めていくことが必要だということが、全体的に提起された事例であったと思います。

○五十君部会長  どうもありがとうございました。

 それでは、ただいまの御説明に関しまして、御質問とか御意見等ございましたらよろしくお願いしたいと思います。

 尾島委員、どうぞ。

○尾島委員  非常に詳細な調査報告をいただきまして、興味深く拝聴いたしました。

 本日のこれまでに出ました議論なども非常に関連するなと思いながら伺っていたのですが、2点お伺いしたいと思うのですけれども、1つが今回、症例定義として保健所管内、庄内地域でということで定義されていますが、仮に広域発生がかなりあるのではないかと思ったときに、どのように調査したらいいかというのは非常に難しそうな気がしまして、何かやれそうなことはあるでしょうかというのが1点目です。

 2点目が、基本的に鶏卵はサルモネラに汚染されているものだと思って食べたほうがいいのだろうと思っているのですが、おっしゃられたように最近は1万分の1というふうに非常に減ってきたので、生食もふえてきているという状況があるかなと思います。そうしますと生食用と加熱用とはっきり分けることも必要なのかなと思います。養鶏場の中でサルモネラが集団発生するとしたらどのように集団発生するものなのかとか、それが起きないように養鶏場で今どのぐらいの対策が行われているのかということが、どなたかおわかりでしたら教えていただければと思います。

○五十君部会長  前半につきましてはどうしましょうか。事務局、何かありますでしょうか。

○道野食品監視安全課長  こちらで答えるべきことかどうかありますけれども、広域発生の場合ということで言うと、先ほどのO157と関連づけて申し上げますと、こちらは山形県さんからも説明があったとおり、感染症法の全数報告にはなっていないということがあります。結局、散発も含めて食中毒事例として報告されたもののつなぎ合わせということになってきますから、かなりサーベイランスの感度としては低くなってしまうということはあると思います。

 ただ、サルモネラの場合、特にエンテリティディスとなれば、通常、原因は食品だろうということですので、そこは食中毒を前提にやっていくということだと思います。食中毒の担当部局が食中毒前提に調査していくということなので、調査の進みぐあいは感染症よりも現状、スムーズにいくのかなと思っています。O157のほうも今後はもう少し連携してやっていくということで、問題点は対応していこうと考えていますけれども、サルモネラについては基本的には食中毒部局での対応が中心になるので、そういった連携の問題というのはないと考えています。

○五十君部会長  私も今回の事例、代表的なサルモネラのエンテリティディスという血清型が患者さんから出ているという状況で、先ほど食中毒とできないという御発言があったかと思うのですが、本来だったら原因不明の食中毒として対応されるべき事例だと私は思うのですが、いかがですか。

○小林参考人  今いただいたお話なのですけれども、鶏卵の喫食状況などにつきましても9名がわからないということでもお話をさせていただきましたが、喫食状況のところがなかなか明確になっていなかった部分などもありまして、今回の部分は原因不明でありまして、食中毒とは断定していないという状況になっております。

○五十君部会長  私の認識が間違っているといけないのですけれども、6条の場合で患者さんから食中毒起因菌が検出され、食材からの分離菌と一致して食中毒という判断は、原因菌によってはほとんどされていないのではないかと思います。食中毒は緊急対応が重要なところがございますので、代表的な食中毒起因菌の場合、食中毒事例として対応し、原因は不明という対応もあると思います。

 調委員、何かこれに関してありますでしょうか。

○調委員  実は私、平成25年から27年まで食品の安全確保対策という分野で厚生労働科学研究の代表をさせていただいておりまして、食品と患者由来の食中毒菌株のゲノム解析ということがテーマで3年間、研究をさせていただきました。

 サルモネラに関して200300株ぐらいNGSで全ゲノム解析をして、要するに1塩基の配列の違いを抽出して系統樹を書いたり、そういった研究を行ったのですけれども、その中で塩基配列の完全一致があったのは1例だけです。それは同じ自治体で2週間ぐらいのずれで、鶏肉と下痢症を起こした小児から分離されたサルモネラの菌株のゲノム配列が完全に一致していた。それ以外は全て幾つかの塩基配列も違いを認めています。

 サルモネラに関しては、大体2週間に1塩基ぐらい変化していくと言われているので、450万塩基ぐらいあるのだと思うのですけれども、この事例の同一の菌株はどの程度の一致であったのかということをまず教えていただきたいと思うのですが、もし全く同一であれば、同一の食材からのアウトブレイクである可能性が極めて高くなるということと、鶏舎の環境中から検出された配列と完全に一致していれば、その因果関係もかなり明確になるのではないかと思うのですけれども、よろしくお願いします。

○五十君部会長  コメントありますでしょうか。

○小林参考人  遺伝子の一致度なのですけれども、患者さんの遺伝子のパターンの中で最大離れまして9つということで離れたものもありましたし、全く一致している部分もありましたが、それが何グループかに分かれて、さらに枝分かれしているような幅の中で0~9という幅でした。今お話した幅の中に養鶏場から検出された株もあるという状況でした。

○調委員  ゲノム解析というのはこれからどんどん採用されていくと思うのですけれども、完璧なデータをどのように利用していくのかということは、非常に重要な課題になっていくと思っています。今回の事例を見ていると、アウトブレイクであっただろうということになると思います。

○五十君部会長  今村委員、どうぞ。

○今村委員  今の議論の中で食中毒として扱わなかったというところが私も気になる部分でありまして、もう一度確認したいのですが、医師からの食中毒の疑いの届け出があった時点で、疑いとしては初動がかかっていると思うのです。その後、食中毒でないということを確定しない限りは、疑いとしてずっと動き続けると思うのですけれども、その中で疑いという形で動いていれば、事実上、食中毒として動いているのと変わらないという状態があったはずなのですが、そこのところは食中毒でないとしてしまっているのでしょうか。それともあくまで疑いのままだけれども、最終的に食中毒と特定していないという整理なのでしょうか。

○小林参考人  現状のところは、先ほどまでお話させていただいた話の中で、食中毒とは断定できなかったということで結論にしております。

○今村委員  そうすると、食中毒疑いで件数とか患者数は報告をしているということですか。それはしていないということですか。

○小林参考人  食中毒として報告は上げていないところです。

○五十君部会長  このあたりは行政側の整理が必要なような気がいたしますが、事務局どうでしょうか。

○道野食品監視安全課長  今回こちらで説明していただいた趣旨もそういうところにありまして、どういった課題があるのかということも先生方からいろいろ出していただきました。こういった内容について全国の自治体にも周知をして、今後のこういった食中毒対応、疑いも含めて生かしていければと考えております。

○五十君部会長  よろしいでしょうか。

○今村委員  先ほどからその他の不明というのが結構出ていたと思うのですが、その他の不明というのがほとんど確定できないのは、疑いのまま報告している事例だと思うのです。ですからこれだけ果てしなく食中毒に近い証拠があって、件数としても数えられていないというのが、整理が必要なところだと思います。

○五十君部会長  ありがとうございます。

 それから、尾島委員から先ほどあった後半の件につきましては、ただいま養鶏場は非常に規模が大きくなっておりますので、そのような場合には環境モニタリング等が重要となっています。特にサルモネラ・エンテリティディスに関しましてはモニタリングと、産卵鶏へのワクチン接種など行っているのが現状だと思います。追加させていただきました。

 ほかに、野田委員、どうぞ。

○野田委員  先ほどの広域事例のお話とも絡みますが、O157などの腸管出血性大腸菌に関しては検査情報と患者情報がひもづけできますが、サルモネラなどの他の微生物についてはそのようなことはできないため、今回の広域連携協議会では少しそこが足りないかなという印象があります。

 そういった意味で、何が必要かということですけれども、現状では食品衛生監視員の方の情報は確定情報しか国のほうに上がってこないので、広域事例の疑いがある時点での疫学情報を共有できるシステムが、協議会レベルでもあったほうが探知につながりやすいだろうと私は個人的には思うのです。

 例えばNESFDを使って協議会のフォルダをつくって、関係の中では疑わしい情報を共有できるシステムのようなものです。現状では自治体の情報、特に食品関係の情報とか事業者の情報というのは、なかなか国レベルのところまで上がってこないので、不確定な情報もある程度の担当者間で共有できるシステムがあれば、今回の山形の事例にしても県外で同様のことがあるかもしれない。そこはわかりませんが、そういった形のシステムがあればより広く探知もつながるのではないかと思います。

○五十君部会長  多分、地方自治体の皆さん、これを食中毒とするかどうかと判断の迷うような有症事例を抱えておると思います。大体の目安というか、そういった整理を行政側でしていただけると、今回の症例への対応もやりやすかったという気もいたします。

○道野食品監視安全課長  まず野田委員の御指摘につきましては、実はNESFDの情報の中でも、一旦探知してしまえば調査状況の進捗というのは割ときめ細かく共有できるようになってはきています。ただ、そこまで来る手前のところというのはなかなか難しいのが現実にあるかなという気はしています。

 サルモネラにつきましては、基本的に届け出なりがあれば、現場にしてみれば食中毒として調査していると思いますので、だからそういったことも踏まえて今回の事例についてきょうの御議論を整理した上で、全国の自治体にも共有して、特にそういった食中毒があるかどうかということの判断、食中毒を前提にして調査してくださいということが第一だと思いますけれども、そういったことについて周知徹底していきたいと思います。

○五十君部会長  尾島委員、どうぞ。

○尾島委員  9名の方が同一メーカーの菓子を喫食されていたということで、先ほどHACCPのお話もございましたが、またそういう菓子メーカーのマニュアルなども出てくるかなと思うのですけれども、そういう生菓子などをつくるときに基本的に鶏卵というのはサルモネラに汚染されているものだという前提でやっていただいたほうがいいか、汚染されていないという前提でやっていただいたほうがいいかというのは、現状としてはどちらのほうが標準的な考え方なのでしょうか。

○小林参考人  今回の事例につきましては、この菓子は殺菌液卵を使っておりまして、ほかのお菓子のアイテムですと殻つきの卵もあったのですけれども、それは全く別の工程で交差汚染がないような体制でやっておりましたので、今回のところの原因という部分では考えづらいと思います。

○五十君部会長  そろそろ時間も無くなってまいりましたが、ありますか。手短にお願いします。

○調委員  このサルモネラのゲノム解析なのですけれども、日本では結構新規な取り組みのように思えるかもしれませんが、例えばアメリカでは2010年から食品由来の食中毒原因微生物10万株のゲノム決めるという解析がスタートしていて、非常に詳細な遺伝子技術をヨーロッパでも中国でも取り入れてやり始めていると聞いています。

 そういう意味でこういうデータをきちんと今後とっていって、それを食中毒対策に生かしていく必要があると思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

○五十君部会長  その点も御検討いただきたいと思います。

 それでは、小林様、どうもありがとうございました。

 これで一応、きょうの予定が終わりましたが、その他、事務局から何かございますか。

○岡崎食中毒被害情報管理室長補佐  特にございません。

○五十君部会長  それでは、時間が超過してしまいましたが、本日の食中毒部会はこれにて終了させていただきたいと思います。長時間にわたる熱心な御議論どうもありがとうございました。


(了)

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