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2017年10月11日 中央社会保険医療協議会 費用対効果評価専門部会・薬価専門部会・保険医療材料専門部会 合同部会

○日時

平成29年10月11日(水)8:59~10:54


○場所

全国都市会館(2階 大ホール)


○出席者

荒井耕部会長 田辺国昭委員 野口晴子委員 松原由美委員 関ふ佐子委員
中村洋委員
吉森俊和委員 幸野庄司委員 平川則男委員 間宮清委員 宮近清文委員 松浦満晴委員
松本純一委員 今村聡委員 松本吉郎委員 万代恭嗣委員 猪口雄二委員 遠藤秀樹委員 安部好弘委員
五嶋規夫専門委員 日色保専門委員 昌子久仁子専門委員 上出厚志専門委員
加茂谷佳明専門委員 吉村恭彰専門委員
<事務局>
鈴木保険局長 渡辺審議官 伊原審議官 迫井医療課長 古元医療課企画官
矢田貝保険医療企画調査室長 中山薬剤管理官 小椋歯科医療管理官 他

○議題

○関係業界からの意見聴取について

○議事

○荒井費用対効果評価専門部会長

 ただいまより、第2回「中央社会保険医療協議会 費用対効果評価専門部会・薬価専門部会・保険医療材料専門部会 合同部会」を開催いたします。

 まず、本日の委員の出欠状況について報告します。

 本日は、榊原委員が御欠席です。

 なお、会議冒頭のカメラの頭撮りはここまでとさせていただきます。

(カメラ退室)

○荒井費用対効果評価専門部会長

 まず、事務局より資料の確認をお願いしたいと思います。

 企画官、お願いします。

○古元医療課企画官

 ありがとうございます。資料の確認をさせていただきます。

 本日、関係業界からの意見聴取ということでございまして、まず、日本製薬団体連合会及び日本製薬工業協会連名の意見書を初め、4種類の意見書が配付されてございます。

 また、事務局より参考資料といたしまして「中医協 費薬材参考」という1枚紙、こちらは費用対効果評価の一連の流れ並びに現状についてお示ししたものでございます。議論の中で適宜御参照いただければと存じます。

 資料不足等ございましたら、事務局までお申しつけください。

 説明は以上になります。

○荒井費用対効果評価専門部会長

 それでは議事に入ります。

 今回は、関係業界からの意見聴取を行いたいと思います。

 関係団体として、日本製薬団体連合会、米国研究製薬工業協会、欧州製薬団体連合会、日本医療機器産業連合会、日本医療機器テクノロジー協会、米国医療機器・IVD工業会、欧州ビジネス協会より、意見を聴取したいと考えております。

 早速、意見陳述に移りたいと思います。なお、医薬品の団体より25分、医療機器の団体で25分をそれぞれ目安としてプレゼンテーションしていただいた後に、まとめて質疑とフリーディスカッションを行いたいと思います。

 まず、医薬品の団体より自己紹介を行った上で、プレゼンテーションをよろしくお願いします。

 どうぞ。

○日本製薬団体連合会(多田)

 おはようございます。

 日本製薬団体連合会会長の多田と申します。本日は貴重な機会を賜り、まことにありがとうございます。

 本日は、当合同部会にて検討が進められております費用対効果評価につきまして、意見を述べさせていただきます。

 2ページをお開きください。御存じのとおり、昨年4月に7品目の医薬品が費用対効果評価の試行導入における対象品目に選定され、データの提出及び評価の手続が進められております。対象品目を有する企業は、再分析や総合的評価の方法、薬価の調整方法等が明らかになっていない中、各社とも人的リソースや費用をかけ、社内外からの協力のもとに、分析結果を提出いたしました。大変な思いをしながら照会事項への回答、費用対効果評価専門組織への説明などを鋭意やってまいりました。

 このように、対象品目を有する各企業には、大きな負荷がかかっていることをぜひ皆様にも御理解いただきたく、そして、費用対効果評価に係る検討においても、このような点を十分に考慮いただいた上で、我が国の薬価基準制度との整合性を踏まえた慎重かつ丁寧な議論が必要と考えております。

 3ページをお願いいたします。平成2712月の意見陳述でも申し上げましたとおり、費用対効果評価に対する原則的な考え方としては、薬価基準制度における医薬品の価値評価が本評価の導入によって損なわれることがないことが重要と考えております。また、薬価基準制度の抜本改革に関する議論が行われている最中ではございますが、医薬品の価値評価は極めて重要であり、費用対効果評価の導入に当たっては、赤色で四角囲いといたしました3つの点、すなわち保険償還制度、薬価基準制度などが維持され、イノベーションや患者のアクセス等が確保されるということが基本として極めて重要と考えております。

 4ページをお願いいたします。現行の薬価基準制度におきまして、既に医療技術評価の概念は一部反映されており、類似薬効比較方式における補正加算等で価値評価がなされていると認識しております。こうした中、費用対効果評価は薬価基準制度における新薬の価値評価のあくまで補足的な手段として、限定的に位置づけられるべきと考えます。

 具体的には、薬価算定において、一定率以上の加算が適用され、かつ、ピーク時売上高が一定額以上になると予測される品目を対象とし、薬価収載から一定期間後に、加算率の引き上げもしくは引き下げ双方の調整に限定して用いるべきと考えます。

 5ページをお願いいたします。「総合評価(アプレイザル)におけるICER(増分費用効果比)の評価基準の設定」について意見を述べさせていただきます。

 分析結果で示されるICERの値は、QOL値や総医療費等の多くの前提条件を設定した上で、シミュレーションによって導き出される結果であることから、絶対的な数値ではないことに留意した取り扱いが必要であると考えます。また、ICERの評価基準の設定につきましては、支払い意思額の調査をもとに設定している国はほかに存在しない点を十分に認識しておく必要もあると考えます。その上で、試行的導入におきましては、過去の文献や諸外国の状況等をもとに設定されることとなった点を踏まえ、慎重な検討が必要と考えます。さらに、制度化に係る検討におきましては、試行的導入における評価基準や、今後予定されている新たな調査結果を踏まえつつ、疾患特性や重症度を考慮した画一的ではない柔軟な対応が引き続き必要と考えます。

 6ページをお願いします。総合的評価(アプレイザル)におきましては、ICERによる評価に加え、倫理的・社会的影響等の観点からの評価についても十分に反映されるべきであり、その際に考慮すべき要素につきましては、該当性を判断する基準を設けた上で、客観的な評価を行う必要があると考えます。その上で考慮すべき要素につきましては、試行的導入における検証を踏まえつつ、ICERには反映されない要素という観点から、イノベーションを含め、対象品目の特性に応じた検討が引き続き必要と考えます。

 7ページをお願いします。薬価の調整範囲につきましては、先ほども述べましたとおり、費用対効果評価の分析結果は多くの前提条件に基づいた結果で、絶対的なものではないことや、我が国の薬価基準制度との整合性を踏まえて、薬価算定における加算率の補整に限定すべきであり、加算前の価格を下回るような調整がなされることは断じて容認できません。

 今般の試行的導入の対象品目につきましては、対象企業に大きな負荷がかかっている点や、加算が適用されたものとその薬理作用類似薬が選定対象とされた点を踏まえ、加算率の範囲内で補整するという考え方をもとに、価格調整は極めて限定的にすべきと考えます。

 8ページをお願いします。試行的導入の対象品目を有する企業からの意見につきましては、最後の10枚目に参考として添付しておりますが、各企業からの意見をもとに、試行におけるプロセス上の課題に対する提案として幾つか申し上げたいと存じます。

 まず、企業が分析を開始するに当たり、事前に当局等と十分に相談を行い、分析の方向性を明確にすることが必要と考えます。

 次に、企業によるデータ作成期間につきましては、対象品目によって大きく異なることから、標準的な処理期間を設定する際には、慎重かつ丁寧な検討をお願いしたいと考えます。

 3つ目には、再分析の結果等につきまして、対象企業との十分な議論ができる機会を確保するとともに、費用対効果評価専門組織における審議におきましては、企業側の十分な陳述時間が必要と考えます。

 最後に、総合的評価の実施におきましては、標準的な指針の策定が必要と考えます。

 9ページをお願いいたします。本日申し上げた内容を総括いたしますと、費用対効果評価に係る検討に当たりまして、試行対象企業に大きな負荷がかかっていることを十分に考慮しつつ、我が国の薬価基準制度との整合性を踏まえた慎重かつ丁寧な議論をお願いしたいと思います。そして、費用対効果評価は薬価基準制度における新薬の価値評価のあくまで補足的な手法として限定的に位置づけられるべきものと考えます。また、総合的評価につきましては、他国に同様の例がない方法によるICERに関する評価基準設定は慎重に検討を行うとともに、倫理的・社会的影響等に関する観点からの評価についても十分に反映すべきと考えます。

 最後に、薬価の調整範囲は、薬価算定における加算率の補整に限定すべきであり、加算前の価格を下回る調整がなされることは断じて容認できません。今般の試行的導入の対象品目につきましては、加算率の範囲内で補整するという考え方をもとに、価格調整は極めて限定的なものとすべきと考えます。

 以上、費用対効果評価に対する意見を述べさせていただきました。

 引き続き、ジョンソン委員長、プリンツ理事からそれぞれ医薬品に関する意見を述べさせていただきます。

 ジョンソンさん、どうぞ。

○米国研究製薬工業協会(パトリック・ジョンソン)

 皆様、おはようございます。

 米国研究製薬工業協会在日執行委員会委員長のパトリック・ジョンソンでございます。

 本日は米国の革新的バイオ、医薬品業界の見解を共有させていただく機会を頂戴し、感謝申し上げます。

 製薬協の考えにPhRMAも同意します。費用対効果評価が患者さんによる革新的医薬品へのアクセスを妨げることのないようにするための私どもの考え方についても述べさせていただきます。

 2枚目に移ります。日本の医療制度は世界の中でも最もすぐれた医療制度の一つであります。それゆえ、諸外国の失敗から学ぶことは大変重要だと考えます。費用対効果評価を導入した国々では、イノベーションが阻害され、患者さんにおいては必要な医薬品へのアクセス遅延が生じています。例を挙げますと、英国では、費用対効果評価の誤用により、患者さんたちが苦境に立たされました。これが激しい抗議に発展し、最終的に政府は特別な抗がん剤基金を設置せざるを得なくなりました。

 一部では、日本が費用対効果評価を薬価再算定にのみ適用すると言われています。しかし、そのような適用であっても、薬価の予見性が損なわれ、他国で見られているような悪影響や不利益が生じるおそれがございます。先ほどの製薬協のプレゼンテーションにもございましたとおり、どのような形の導入であっても、費用対効果分析には慎重かつ限定的なアプローチが必要であると考えます。現行の薬価制度との整合性を損なう形での本格導入には強く反対いたします。

 3枚目に移ります。これまで医薬品の価値を評価するためにICERを用いることが中心に議論されてきました。しかし、残念ながらICERだけでは医薬品が患者さん、医療制度、より広義には経済に対してもたらす全ての価値を十分に反映することはできません。また、支払い意思額調査案については、医療アクセスにおける患者さんの実際の思考が反映されないものと考えており、医療に関する意思決定の根拠としての妥当性には疑問がございます。これらの懸念を踏まえ、費用対効果評価を本格導入する場合は、次に申し上げる点を踏まえた上で、制度設計を行っていただきたくお願い申し上げます。

ICERの評価は大きな判断過程の中のあくまでも一つの要素として捉え、革新的医薬品がもたらす価値が十分に反映されるよう、その他の多様な要素を取り入れて総合的評価を行っていただきたく存じます。これらの要素は、現在提案されている要素に限定するべきではないと考えます。また、画期性は上市時の加算を判断するために用いられている要素でありますが、当然のことなら、これは加算を検証するために考慮される要素として維持するべきものと考えます。同様に、価格調整については、価格全体ではなく、有用性系加算の範囲に限定するべきと考えます。

 試行的導入で対象となった品目は、残念ながら不確定な要素が多い中で費用対効果が評価されており、これによって本格導入に対する深刻な懸念が生じています。評価結果による薬価調整は有用性系加算の範囲に限定するべきであるという点を強調させていただきたいと思います。

 大きくまとめますと、日本には、現在検討中の医療技術評価のアプローチよりも、より熟考を重ねた配慮に富むアプローチを導入する機会があると思います。この課題を解決するには、あらゆる利害関係者との緊密な連携と、患者さんのために機能する医療技術評価に対するコミットメントが必要だと考えております。

 お時間をいただき、ありがとうございました。

○欧州製薬団体連合会(ハイケ・プリンツ)

 皆さん、おはようございます。

 私、EFPIA Japanの理事でありますハイケ・プリンツでございます。

 欧州の製薬産業を代表した形で意見を述べることができ、非常に光栄に思っております。

EFPIAといたしましては、ただいま発表されました日薬連、それからPhRMAから発表されたような意見と非常に一致しているところでございます。ただ、欧州製薬産業の観点から数点付言させていただきたいと思います。

 他国と日本が一つ違う点としましては、日本におきましては既に薬価基準制度というものが設けられており、それによって十分な薬剤費のコントロールがされているという状況であります。また、そのことはIMSの調査でも明らかになっておりますが、過去にわたっても、それから今後の展望といたしましても、薬価基準制度よって薬剤費のコントロールが示されているわけです。実際に費用対効果を取り入れている国におきましても、日本ほど精緻な薬価基準制度を設けている国はないわけです。だからこそ、メーカー側からの申し出薬価に対しまして、その適切性を判断するといった位置づけでの費用対効果の評価がなされてきたのだと考えております。

 日本におきましてもこうした費用対効果の評価を行うのであれば、これはあくまでも現行の薬価基準制度にのっとった形での補足的な位置づけであるべきだと考えております。対象となる品目とか、費用対効果の評価の結果をどのように反映するか。そのやり方につきましてはあくまでも限定的な方法にしていかなければならないと考えております。

 3ページをお願いいたします。まずは、ICERの値というのは非常に多くの前提にのっとったものでありますので、値が非常に変動しやすいわけであります。費用対効果の評価というものがICERの値だけに依拠してはならないわけで、これは医薬品の全ての価値を反映するものではないと考えております。

 諸外国におきましては、ICERに加えまして倫理的、また社会的な側面を十分に考慮しているということも申し上げておかなければなりません。したがいまして、こうした倫理的、また社会的な考慮要因を十分に酌んでいかなければならないわけです。そして、これは価格調整係数といった形で行われていく総合的な評価に十分に反映されていかなければなりません。

 スライド4をお願いします。海外におきましても、こうした費用対効果評価がなされておりますけれども、最初から全て確立された制度として行われた国はありません。むしろ、他国におきましては、制度の改善の必要性に応じて、そしてまた医療環境の変遷に伴って状況に柔軟に対応してきたという成果であります。

 日本におきましても、本制度の導入に当たりまして、試行期間で明らかになったさまざまな問題を十分に検討していき、さまざまな関係当事者の意見を組み入れた形での審議がなされるべきだと考えております。

 御清聴、ありがとうございました。

○荒井費用対効果評価専門部会長

 よろしいですか。

 どうぞ。

○米国医療機器・IVD工業会(加藤)

 それでは、医療機器業界のほうから御説明を始めさせていただきたいと思います。

 私、AMDD会長の加藤でございます。よろしくお願いいたします。

 医療機器の費用対効果評価について、医療機器産業連合会、AMDDMTJAPAN及びEBCを代表して業界意見を述べさせていただきます。

 私のほうから今、試行がかなり進んでいる材料について、そして医療機器産業連合会の渡部会長のほうから大型機器についての意見を述べさせていただきたいと思います。

 お手元の資料の下、2ページ目「1.試行にあたっての基本的な考え方」です。費用対効果評価の重要性については、業界として十分理解をしております。その上で、費用対効果評価の制度化に当たっては、医療機器の特性を踏まえた配慮をぜひお願いしたいと思います。4つポイントがございます。

 1つ目は、医療機器によって患者にもたらされるバリューは、医療のみならず介護等への影響を広く含めた評価が重要と考えます。医療機器では、人工関節、血糖値モニター等、患者さんのQOL向上に寄与するものが多くあります。また、心不全患者のQOLを顕著に改善するペースメーカー等の不整脈デバイス、痛みにより動くことの難しい整形領域の患者さんの自立を可能にする人工関節等は、特に介護費用の削減につながる可能性が高いと思います。今回の試行は、公的保険の立場からの分析が基本となっておりますが、倫理的・社会的要素の考慮を十分にお願いいたします。

 2番目です。医療機器は使用したその場で結果が得られることが多く、見てわかるので、比較臨床試験が極端に少ないという状況にあります。また、製品サイクルが短いため、過去にとった臨床データが使えなくなるケースがあること、医療従事者が技術を習熟する時間がかかることから、やはり過去に得られた臨床データが現実をあらわさないことなど、多くの製品において現在、アカデミアで主流である無作為抽出化試験、いわゆるRCTを基本とした分析方法のみでは、信頼に足るQALYの推計が困難な場合が多く見られます。そのため、それを前提とした制度設計が必要と考えます。

 3番目です。今回の試行では加算を得た製品が対象です。それゆえ、評価結果の償還価格への反映に当たっては、加算部分の調整のみにすべきと考えます。

 4番目です。従来の医療材料価格制度との関係は、この費用対効果評価は加算部分を定量的に調整するものと位置づけられると考えます。その趣旨から、価格調整に当たっては、価格引き上げも行うべきだと思います。

 こちらの3番目と4番目は医薬品業界の主張と基本的に同様の内容でございます。

 次のページに行きます前に、今、御説明申し上げたページの2番のところの用語を少し御説明させてください。まず、医療機器は比較臨床試験が少ないというところです。これは医療機器の場合、改善されると効果が上がることが手術の場面など、その場で目に見えるので、比較臨床試験が必ずしも必要でない場合、あるいは倫理的に困難なケースがあることを言っています。例えば、従来外科手術を行っていた治療が内視鏡的あるいは経皮的な低侵襲治療になり得るという機器開発があった場合、まず、本当に経皮的にできるのかというのを動物手術で試み、ある程度の実証過程を経て比較臨床試験が行われます。

 ただ、この時点では経皮的に当該治療ができるという概念実証の意味合いが濃く、それが実証されると、製品は時を置かずして改良されるのがよくある流れです。そういった時点で既にもとの低侵襲医療機器と改良された医療機器があり、改良された医療機器は手技時間の短さや、機器が小さくなったり細くなったりして、より安全に患部に到達できるというようなものがあるわけですが、患者様を2つの群に分けて、リスクのより大きい改良前の機器を一方の群に使うということは、医師としても患者としても拒否するのが常であります。例えば、人工関節インプラントにおいて、より摩耗が少なく、長期にわたって再置換が不要で、手術時間も短くなるというような技術改良が行われた場合、患者さんはほぼ確実に改良品を望み、倫理的に比較臨床試験が困難になります。古いほうに振り分けられた場合、患者さんとしては多分、エンロールメントを拒否されると思います。

 今の例は、もとの機器との比較対照試験の例ですけれども、改良品と大もとの外科的治療との2群試験でも同じことが言えます。このように、医療機器の場合、最初の臨床試験の後は、よりよいものが出てきて、2群試験になじまないために、レベルの高いエビデンスとされている比較臨床試験が少ないということがあります。改良を積み重ねた最新の機器であればあるほどそういう傾向です。

 次に同じく2ページにありますキーワードの「製品サイクルの短さ」について若干説明させていただきます。一般的に新しい技術分野だと、臨床現場からの声がフィードバックされ、2~3年ごとに改良品が出ます。短期的な合併症を減らし、将来の再治療が行われることや、予後の死亡率と関連する因子を減らす改良は長期成績が出なくても可能です。このため、臨床試験をして1年成績あるいは2年成績が出るころには、既にその製品は新しいものに置きかわっているということが起きます。

 その次の文言である「医療従事者の習熟に時間がかかる」という点ですが、先ほどの外科手術と低侵襲の経皮的機器を例にとりますと、患部付近の外科的切開にかわりまして、患部への進入経路を見つけて、そこから患部へ機器を到達させるという技術を医師は習熟しなければなりません。イメージング技術、読影技術、操作術、これらを体格や解剖生理の異なる一人一人の患者さんに対し、ある程度のレベルで実施できるようになるには、実際の治療件数を積み上げる必要があるということが習熟に時間を要するということでございます。この習熟曲線、いわゆるラーニングカーブについては、新しい機器がかかわらない外科手術についても広く知られていますし、各病院様が症例数をふやそうとするのもこの点にございます。

 以上、ちょっと長くなりましたけれども、2ポツの用語が意味するところの説明をさせていただきました。

 それでは、これまでの当専門部会での議論も踏まえ、幾つかの点について具体的意見を述べさせていただきます。

 まず3ページ目「2.費用対効果評価における不確実性について」です。御承知のように、費用対効果評価は結果に不確実性は避けられません。こちらの表にありますように、大きく分けると「a)モデルの不確実性」「b)パラメーターの不確実性」がありますが、この不確実性に対応するために感度分析が行われ、これまで中医協で示された海外の具体例でもQALY当たりのコストは大きな幅として示されました。表には以前も本部会で示された資料からの抜粋がありますが、両心室ペースメーカーでは1.2万オーストラリアドル~2.1万オーストラリアドルという開き、英国の薬の例では、3万ポンド~4万ポンドという開きがあります。絶対にこれだと言い切れる数値がないことを踏まえた議論が必要です。特に、医療機器では市場にある製品の十分な臨床データがないことが多く、データ選択も含め、どのように扱うかは大きな問題だと考えます。

 4ページ目をごらんください。不確実性についてより網羅的な具体例をここでお示ししております。前のページでも掲載した両心室ペースメーカーが豪州MSACで分析された際、多くの感度分析が行われ、問題の複雑さが明らかになっております。その結果は、約9,000ドルという最低値と約11万ドルという最高値があり、その間に何と10倍以上の開きがあるというものでした。この例では、上側の表にありますように、公立病院か民間病院かで最大3倍の差があります。さらに分析期間を変動させると、下の表にありますように、最大で10倍近くの差が出ました。これが医療機器の費用対効果評価の現在の状況でございます。

 5ページ目「3.分析結果に大きな不確実性が含まれる場合の取扱いについて」をごらんください。医療機器では、QALYの算出ベースとなる比較臨床試験が行われているケースが少ないことは既にその理由も含めて御説明申し上げました。囲みの中は、米国のデータのグラフですが、それによると医療機器の臨床試験においてランダム化や盲検化、さらに比較対照のある試験の割合は、上の棒の医薬品と比べて、下の棒の医療機器が顕著に少ないことが見てとれます。いわゆるRCTと呼ばれるエビデンスレベルの高い試験は医薬品に比べ4分の1未満です。また、仮にそのようなランダム化試験があっても、ラーニングカーブが反映される以前の試験であったり、世代が古い製品の試験の場合が多いと聞いております。これは医療機器における盲検試験、Blind Studyの難しさや、症例を集める困難さ、倫理的問題等による部分もあります。

 医薬で行う二重盲検試験は、機器の場合、少なくとも医師だけはどちらの処置をするかを知らないとそもそも治療ができないので、ほとんど不可能です。

 単盲検、患者さんだけが知らないという試験は、患者さんへの侵襲とか切開とか麻酔とか手技時間とか、そういったものが比較技術同士である程度同程度であれば理論上は可能ですけれども、そういったことができるのは限られた機器であり、限られた技術です。

 一方で、シングルアームすなわち単群の登録試験等でも医療機器の有用性は承認を得る上では十分示せる状況です。多くの機器は、設計したとおりに機能すれば、その治療性能等を発揮できるという医療機器の特性があるからです。例えば、心停止や人工心肺を使った体外循環を伴わない心臓が動いている拍動下での手術や、それに関する機器の使用があったとします。その場合、手術のその場でそれができているかどうかがわかります。できれば成功、困難になった場合は旧来からある心停止体外循環手術に切りかえて実施することになり、誰の目にも明らかな失敗ケースとなるからです。

 ここで医療機器のQALYの評価の困難さを示すデータを御説明いたします。6ページには別紙1のオーストラリアのHTA機関であるMSACにおける医療技術評価の実施状況の表がありますが、そのポイントをまとめたものです。このデータベースに載っている治療系医療機器133件中、結果が公表されているものが101件です。このうち、費用対効果評価を行ったものは55件、54%です。QALYを用いた費用対効果評価が実施されたのは22件、わずか21%のみでした。このように、QALY評価の困難さというのは他国の例から見てもある程度御理解いただけるものと思います。

 困難とされた理由としては、6ページに書いてありますように、「有効性データが存在しない」「オーストラリアにおける費用データが存在しない」「有効性データがあっても、エビデンスレベルが低くバイアスが大きい」といったようなことでした。また、QALYによる分析が困難だった理由としては「十分なQOLデータが存在しなかった」「QOLの改善効果が示唆されているが、収集したデータからQOL値への換算が困難」といったことが挙げられています。

 このように、医療機器の費用対効果評価においては、評価が困難とされるケースが多く報告されています。本邦においても、医療機器の費用対効果評価の実施に当たっては、同様に評価が難しいケースが出てくると想定されます。キーとなるデータ不足のため、評価結果に大きな不確実性が含まれると見られる場合には「分析困難」とし、償還価格への反映は行わないことが妥当と考えます。

 続いて7ページに進みたいと思います。「4.分析ガイドライン等における課題等」についてです。現行のガイドラインは、基本的に医薬品の評価方法で書かれており、医療機器の特性や臨床での実情が反映されていない側面があります。反映されていないポイントとしては、まず、冒頭で御説明した製品サイクルの短さが挙げられます。試行的導入で4つの機能区分が選定されていますが、そのうち2つの機能区分では既に改良された次世代品が販売されています。改良品については、追加的試験等を実施しても、先ほど御説明した理由により、開発当初と同様の比較試験などが行われない場合がほとんどでございます。

 もう一つ反映されないポイントとしては、やはり先ほど申し上げた初期の臨床研究における医療者の技術の習熟度があります。したがいまして、医療機器を用いた手技の習熟度が上がることで、臨床アウトカムが向上するということを前提としたデータの選択が必要です。

 2つ目のポイントは、企業の分析と異なるソースを用いることで、全く違う結果が導き出されてしまうということです。例えば、NCDのデータベースは、企業がアクセスすることはできず、企業側が検証することができません。

 3つ目、この点は学会の関与です。現行の保険医療材料等専門組織では、学会からの見解が求められ、関係する先生が出席して議論に参加しています。医療機器の特性、その状況を理解するには、こういった取り組みは必須です。このページでお伝えしたことの幾つかについて、ここで別紙2をごらんください。

 1つ目ですけれども、ガイドラインに「医療機器についてはランダム化比較試験に限らず、最近の改良製品、技術に基づいた臨床成績を確認できる条件を用いてシステマティックレビューを実施する」旨追記いただきたいと思っています。

 また、ガイドラインの「間接比較を可能にする前提条件」として現在明記されている「疾患、重症度、患者背景等」に加え「手技、医療従事者の習熟度等」の追記が必要だと思っています。

 3つ目のポイントは、臨床専門家の参加についてです。ラーニングカーブや機器の改良が臨床結果に及ぼす影響について、知見のある当該治療分野の専門医の参加が必要と考えます。

 元に戻りまして、8ページからの御説明を続けさせていただきます。ここまでが試行的導入に関する意見でございます。8ページから、表題にありますように「5.今後の本格制度化に向けての提案」でございます。

 従前から申し上げていますとおり、医療機器によって患者様にもたらされるバリューを医療のみならず、介護などで幅広い観点から評価することについて、業界として賛同いたします。そこで、医療機器の有用性の評価をする指標としての費用対効果評価の位置づけを整えるべく、「経済性評価」を新たな補正加算制度として導入することを提案いたします。

 現在、新たな機能を有する特定保険医療材料については、C1C2の申請のプロセスを経て新機能区分が設定されますが、企業が希望する場合、従来の補正加算の希望に加え、経済性による評価を新たに規定し、費用対効果評価に基づく補正加算を希望できる制度を提案します。その際に、費用対効果評価に相応の時間が必要と想定されることから、既に当専門部会でも協議されましたように、従来の補正加算の希望について一旦償還価格の設定と保険収載を行った後、費用対効果評価については総合的評価がなされた時点で価格調整を行うことに賛同いたします。

 なお、費用対効果評価は、償還価格の調整方法として運用次第ではより客観的で、業界としても納得性があるものになり得ると捉えており、材料価格の再算定については本制度と外国価格再算定制度はすみ分けが可能であると考えております。

 9ページ目です。医療機器に対する費用対効果評価の望ましい導入方法、すなわち選定基準、分析ガイドライン、企業側もアクセスできるデータベースの整備などについては、引き続き十分な検討をお願いいたします。医療機器は比較的企業規模が小さく、人員配置や臨床研究等への資源配分について相対的な負担が大きいことにも配慮をお願いいたします。医療財源への影響を踏まえて御検討をいただければと思います。下にお示ししております2つの円グラフは、医薬品と医療機器の市場規模、参入企業規模の違いをお示ししております。医療財源への影響において、医療機器は医薬品の9分の1です。さらに規模の小さい企業が多いこともお示ししております。

 以上が、材料についての費用対効果評価の試験導入について、そして本格的制度化に向けての意見でございます。繰り返しになりますが、試行的導入においてはアセスメントとアプレイザル、そして制度化に際しては医療機器の特性に十分配慮した運用と制度設計をお願いいたします。費用対効果評価が納得感の高い客観的な評価制度となることで、医療機器の提供するバリューが適切に評価されるよう、業界として協力していきたいと存じます。

AMDDの加藤からは以上でございます。

○日本医療機器産業連合会(渡部)

 引き続きまして、医療機器産業連合会会長の渡部でございます。

 「6.高額な医療機器を用いる医療技術について」御説明をさせていただきます。10ページをごらんください。高額な医療機器を用いる医療技術の議論におきましては、具体例の検討を含めて、業界としても御協力をしているところでございます。今後、本議論におきましては、今回の意見陳述が試行的導入に係るものであることを踏まえ、業界の意見陳述の機会を別途設けていただきたいと考えております。

 以上、材料、高額医療機器を合わせて、医療機器の費用対効果評価に対する業界の意見を述べさせていただきました。費用対効果評価は業界としても大変重要であると理解しております。本日、意見陳述をさせていただいた医療機器特有の点も踏まえ、議論をお願いしたいと思います。

 以上でございます。

○荒井費用対効果評価専門部会長

 ありがとうございました。

 一通りの御説明をいただきましたので、これより質疑及びフリーディスカッションに移りたいと思います。なお、時間が限られておりますので、恐縮ですが、発言の冒頭で御質問なのか御意見なのかをおっしゃってください。また、業界団体の方からの御発言につきましても、各団体で原則お一人の方にお願いしたいと思っています。発言は簡潔に、御質問に御回答いただきますよう、お願いします。

 松本委員。

○松本純一委員

 製薬メーカー及び医療機器メーカーそれぞれからの意見陳述を拝聴させていただきました。おのおの主張があるということは理解したところでございます。皆様方への質問は後でさせていただくこととして、まず事務局に質問をお願いしたいと思います。

 本日は事務局より参考資料を提示していただきました。これに関しては感謝いたします。

この資料の裏側の3番目なのですけれども、気になるのが、がついています。これの意味についてまずお聞かせ願いたいと思います。

○荒井費用対効果評価専門部会長

 企画官、お願いします。

○古元医療課企画官

 まず、表をごらんいただければわかる内容でございますけれども、が原価計算方式という意味合いでございます。また、につきましては、下の抽出要件の2のイに該当するということを明確にしているということでございます。説明が不十分で申しわけございませんでした。2のイに該当するものが○でございます。

 以上でございます。

○荒井費用対効果評価専門部会長

 松本委員、どうぞ。

○松本純一委員

 ちょっとよくわかりません。ソバルディ、あるいは機械でいくとカワスミの胸部ステントグラフトシステムとアクティバRCというものが2の抽出要件に該当ということなのでしょうか。

○荒井費用対効果評価専門部会長

 企画官、どうぞ。

○古元医療課企画官

 丸のついていない品目につきましては、点々で囲んだ一番下の※にございます、これによって選定された品目の薬理作用類似薬、もしくは同一機能区分に該当する医療機器も対象というものでございます。それが丸のついていないものということでごらんいただければと思います。

○荒井費用対効果評価専門部会長

 松本委員、どうぞ。

○松本純一委員

 だから、○は抽出条件の2に該当し、は原価計算方式という意味のであるという今の説明なのでしょうか。

○荒井費用対効果評価専門部会長

 企画官、どうぞ。

○古元医療課企画官

でございますが、説明が不十分で失礼いたしました。抽出要件の2のロに該当するものということでございます。そこで、原価計算方式で抽出要件に該当したものとごらんいただければと思います。

○荒井費用対効果評価専門部会長

 ほかにはどうでしょう。

 今村委員、どうぞ。

○今村委員

 それぞれの団体におかれては、意見陳述をどうもありがとうございました。

 私のほうから、製薬メーカーを中心として伺わせていただきたいことが3点ございますので、まとめてお答えいただければと思います。

 まず、非常に新しい取り組みをするということで、企業に大きな負担がかかるということについては一定程度の理解ができます。ただ、非常に大きな負荷という表現があるので、これは個別の企業のお話なので、団体で負担の中身というのは実は詳細にはわからないのかもしれませんけれども、こういう負担があるのでそれを配慮してほしいということをおっしゃるのであれば、一体どのぐらいの負担がかかっているかということをわかる範囲でお示しいただければと思います。例えば、製品の売り上げに対して何パーセントぐらいの金額がかかるというような、そういうものがわかっておられるのかどうかということを教えていただければと思います。

 2点目は、日本製薬団体連合会のほうで4ページ、これは加算率に限定すべきだというのが全ての団体の御主張ですけれども、特に加算率の補正の中で引き上げという用語を書かれているのは製薬団体連合会だけだと思います。これは対象として一定率以上の加算という限定をかけていると。つまり、それはもともと非常に価値が高いと認定されたものに限って対象にしろという主張であるにもかかわらず、引き上げと。つまり、そもそもの加算率が低くても、本来であれば費用対効果をやったら価値が上がるのだから上げるべきだという主張なら理解できるのですけれども、そもそも高いところに限定して、なおかつまた引き上げということが入ってくるというのは、何となく整合性がとれていないイメージがあるのです。その辺の御見解をいただければと思います。

 3点目は、加算前の価格を維持すべきだという表現がございますけれども、前回の中医協でも幸野委員から御指摘があった、加算部分というのは改定によってある程度全体に溶け込むのではないかという話がありました。例えば今、もともと100円の価格のものに20%の加算がついて120円になっている。それが改定をして110になっているときに、割合として同じ割合を維持するということを言っているのか、絶対的な価格そのものを維持するのか。価格を維持するという表現は、もともとの価格をそのまま続けろというふうに読み取れるのですけれども、それはそういう理解でよいのかどうか、この3点を教えてください。

○荒井費用対効果評価専門部会長

 日本製薬団体連合会。

○日本製薬団体連合会(多田)

 日本製薬団体連合会、多田からお答えを申し上げます。

 まず、企業負担の問題でございます。私どもは必ずしも今回の対象となった製品を有する企業から細かい実態情報を得てこの場に臨んでいるわけではございません。御指摘のあった、あるいは御期待されたようなお答えはできませんけれども、私どもが聞いている範囲におきましては、まず、こういう作業が進むためには当然人材を確保する必要ございますし、それから人材を含めて外部の方々の協力を得なければならない。そうすると、そういうことを含めた実行体制みたいなものの整備が要る。さらには、最も大事なところで、また議論も多いところでございますけれども、計算モデルを構築するためには相当な方々の御意見あるいは検討というものが必要になりまして、恐らく金額的に言えば数千万の金は最低かかるだろうと聞いております。それが1点目のお答えでございます。

 2点目の加算率の問題でございます。おっしゃるように4ページで、我々の主張は、一定率以上の加算が適用されたものだけを対象にしていただきたい。あるいは、ピーク時の売り上げが一定額以上と申しています。この場合、加算率を対象となったものの薬価を今回のHTAでさらに上げたりすることが適切なのかという御質問だと思います。我々の考え方は、今の加算率は例えば70120%という幅の中で加算されています。その全てが120%になっているわけではございません。これはもちろんしかるべき評価をいただいた上で、70120%の範囲で決められているわけでございますけれども、HTA評価の結果、それが70%ではなくて80%でもいいではないかという話になることはあるだろう、そういう意味でございます。

 それから、3番目の加算前云々というお話でございますが、これは御指摘されましたように、ここで申し上げたいのは、実勢価で初期の収載価格が下がった場合、それは収載時点におきました加算額に対する収載時の薬価に対する比率、この分で下がった分の実勢価に対してその比率を掛けた分が加算対応額であると。それから下がっては困るという主張であります。

○今村委員

 わかりました。ありがとうございました。

 2点目のことだけもう一度確認をさせていただきたいのですけれども、70120の中で、ある一定率以上ということをおっしゃっているということは、一番下の70のものは検討しないと言っているということですね。つまり、70120の中で加算率が100%あるいは90%という数字を超えているものを対象にするという表現という理解でよろしいですね。

○日本製薬団体連合会(多田)

 一定率以上の加算が適用されているということですから、たまたま今、例として70以上というふうに申し上げた。1回上がったものだけを対象にやっているのに、なおかつまた引き上げというのはおかしいではないかという御質問だと理解したのですが。

○今村委員

 そうではなくて、加算率に幅がある。その幅の中でどこか線を切って、そこ以上のものを対象にするという意味で書かれているのですかということをまず聞いているのです。

○日本製薬団体連合会(多田)

 そうですね。それは専門委員のほうから答えさせてもらいます。よろしいですか。

○荒井費用対効果評価専門部会長

 では、専門委員、お願いします。

○加茂谷専門委員

 最初の御質問に対しまして、引き上げの幅をどう考えるのかという点については、会長から御指摘いただきましたように、例えば画期性加算が70120%と幅がある中で、100%の加算が適用された医薬品の費用対効果評価の結果、もし加算分以上の効果があるのであれば110%あるいは120%と一定程度引き上げも可能ではないかというのが、一つの考え方である。

 また、加算が適用された品目を全て費用対効果評価の対象とするかどうかという議論は、この場でご議論いただければと思いますけれども、我々としては、一定程度高い加算評価を受けたものに限定すべきではないかという主張をここに込めているつもりでございます。

○今村委員

 それぞれの今の2段階に分けての御説明は一応理解はしているのです。つまり、引き上げがあるということは、費用対効果をしたら本来的な加算よりも価値があるから上げるべきだという主張なわけです。そうだとすると、もともと幅があるものの中で線を切って、それ以上を対象にするということはおかしいのではないですかということを申し上げているだけなのです。つまり、70%~120%の加算があるものを、90以上を対象としましょうというのではなくて、その下のものだってもっと価値があれば上がるということは理屈上あり得るわけだから、対象をそもそも限定して引き上げということをおっしゃるのはちょっと整合性がとれていないのではないかということを申し上げただけです。

○日本製薬団体連合会(多田)

 非常に論理的に説明いただきよくわかりました。

 だから、おっしゃっている意味は、「一定率以上の加算」の「一定率以上」がおかしいのではないかと。加算があるという表現にとどめておけと、こういうことですか。

○今村委員

 いや、どうしようと、御主張、御意見なので別にいいのですけれども、そこを確認したかったということです。

○荒井費用対効果評価専門部会長

 ありがとうございました。

 ほかにどうでしょう。

 万代委員、どうぞ。

○万代委員

 各団体におかれましては、御説明ありがとうございました。

 まず、医薬品に関してでございます。今村先生の質問と重なるかもしれませんが、特に3ページのところの「医薬品の価値評価が、費用対効果評価の導入によって損なわれないこと」ということと、その次のページの補正加算等で価値評価をするということで、価値評価がいろいろな形で使われておりますし、医薬品の価値評価がどういった定義になるかというのはまだ定まったものはないと。総論的な意味で価値評価というふうに認識させていただきますが、まず、価値評価ということでいろいろな意味が含まれるという中で費用対効果を考えるのであれば、補正加算だけに限ったというのは納得しにくいかなと。費用対効果が既に薬価を定めることにおいて盛り込まれているという御主張であれば、そこも含めた上で、全体として費用対効果を考えていくというのが方向性としてはいいかなとは思っておりますが、御主張は御主張でございますので、そこでなぜ費用対効果をここに限定したいかということを詳しく教えていただければと思います。

○荒井費用対効果評価専門部会長

 どうでしょう。日本製薬団体連合会。

○日本製薬団体連合会(多田)

 多田からお答えいたします。

 費用対効果評価と、現在の薬価基準制度がケースによって非常に矛盾する、整合性がとれなくなるということがあり得るということが一番の我々の懸念点でございます。薬価基準制度そのものについて、今、抜本改革という中で、各種項目にわたって制度を決めようとしているわけです。この制度に対して、例えば今の薬価を決めるときに有用性加算等の加算がつくというふうな、これもある意味で費用対効果と似た部分があるのですけれども、薬価制度の基本的なところが今回の費用対効果で変えられるということになりますと、今まで長く安定した形で評価され、我々もある程度予見性をもって対応できるものが、根本から崩れることになるという懸念でございます。

 薬価というのは公定でございますから、一回決まった薬価に対して、またそれを違う角度から後で大きく変わるかもわからないという状態が大変困るわけでございます。だから、薬価の基本制度を維持していただきたいという思いと、新しいHTAを導入することによって、大きく変わるかもしれないということの懸念です。

○荒井費用対効果評価専門部会長

 万代委員、どうぞ。

○万代委員

 御主張は御主張として認識いたしました。

 あと、総論的な意見として一つ申し上げると、「はじめに」の「試行対象企業に大きな負荷がかかっている」ということにつきましては、総論的には認識いたしますし、そのように考えております。

 それで、今度は医療機器のほうでございますが、本格導入に関する御意見もいただいたので、本日はそうではないというふうに認識しつつも、御提案いただきましたので、質問させていただきたいと思います。

 資料8ページのところの本格制度化に向けての提案ということで、経済性による評価を希望と書いてございますが、経済性とは具体的にどういうことかということを教えていただければと思います。

○荒井費用対効果評価専門部会長

 米国医療機器・IVD工業会、加藤様。

○米国医療機器・IVD工業会(加藤)

 加藤でございます。御質問ありがとうございます。

 経済性評価とここで申し上げておりますのは、今、ある加算項目に加えまして、具体的に保健・医療、場合によっては介護、国民の生産性、そういったものも含めた広い医療機器がもたらす価値、冒頭に書いてありますけれども、いきなり全部は難しいとは思うのですけれども、そういったことを一つの評価の加算の軸として立てていただいて、御説明申し上げましたように、医療機器というのは使い始めないとなかなか効果が出てきませんから、そういったものでの調整というようなスキームを考えております。

○荒井費用対効果評価専門部会長

 万代委員、どうぞ。

○万代委員 

持って回った質問で申しわけなかったかもしれませんが、今、おっしゃるように、生産性のことが出てきましたので。費用対効果の考え方からすれば、一言でくくれないかもしれませんけれども、生産性損失についても考慮してほしいとか、そのような解釈でもよろしいのでしょうか。

○米国医療機器・IVD工業会(加藤)

 それで結構でございます。ありがとうございます。

○荒井費用対効果評価専門部会長

 続きですか。どうぞ。

○万代委員

 参考人の先生はそれでもよろしいかどうか、ちょっと御意見をいただければと思います。

○荒井費用対効果評価専門部会長

 では、福田参考人、どうぞ。

○福田参考人

 参考人でございます。

 試行的導入に取り組んでいる現下の分析ガイドラインでも、生産性損失等の影響がある場合には分析の範囲に含めても構わないと。基本は公的医療の立場ということで医療費ですけれども、そういう分析を加えることは可能というふうにしておりますので、これを踏襲するのであれば、そういう議論はあり得ると思います。

○荒井費用対効果評価専門部会長

 では松本吉郎委員、お願いします。

○松本吉郎委員

 日本製薬団体連合会と日本製薬工業協会の5枚目のスライドでございますけれども、御質問いたします。

の2つ目の「試行的導入におけるICERの評価基準については、支払い意思額(仮称)の調査を基に設定している国はない」と書いてございますけれども、これは確かに私も前回の中医協で英国の支払い意思額の設定が2万ポンド、3万ポンドというものの根拠が少し薄いのではないか、はっきりしないのではないかと指摘しましたが、ここに「設定している国はない」と限定して書いてあるのですけれども、これはどういう解釈なのでしょうか。ちょっとお聞きしたいと思います。

○荒井費用対効果評価専門部会長

 多田様、どうぞ。

○日本製薬団体連合会(多田)

 まことに申しわけないのですが、そのようだというふうに我々の調査の範囲では聞いております。もし、委員が違うのだと、実はどこどこにあるのだと言われましたら、この表現は取り消させていただきます。

○松本吉郎委員

 これは事務局のほうに確認なのですけれども、英国では支払い意思額をもとにした制度をやっているということですね。

○荒井費用対効果評価専門部会長

 企画官、どうぞ。

○古元医療課企画官

 英国におきます評価基準につきましては、これが支払い意思額調査に基づいたものということは確認されてございません。また、去る9月13日の費用対効果評価専門部会の資料でお示しいたしましたとおり、現時点では支払い意思額調査をもとに評価基準を設定したことが確認されている国はないという状況でございます。

 以上でございます。

○松本吉郎委員

 わかりました。ありがとうございます。

○荒井費用対効果評価専門部会長

 安部委員、どうぞ。

○安部委員

 医療機器のほうで、先ほど万代委員から御指摘があった8ページのところで、御説明は一定理解いたしましたけれども、この表を見て、私は新機能区分をして後々使用してからの経済性でプラスの部分を加味してというふうに受け取ったわけですが、この資料では償還価格の調整は「経済性により+/-」という記載をしてあります。先ほどの御説明だと、マイナスの要因というのはないのではないか。つまり、後々使ってみて経済性がいいということから評価するということで、経済性が悪いからマイナスの評価をするということが起き得るのかどうかというところを教えていただければと思います。

○荒井費用対効果評価専門部会長

 加藤様、どうぞ。

○米国医療機器・IVD工業会(加藤)

 御質問ありがとうございます。

 これは非常に重要なポイントでして、一旦新機能区分で価格が決定した後で、実際に使ってみたら経済性がよかったらこれを出しますというと後出しじゃんけんになってしまいます。したがって、今、工業会で提案として考えているスキームは、おおよそ事前にこういった経済性もありますと、出しますと。その分も若干見て最初の価格決定をしていただきたい。出せなかったら、もちろんそれはお召し上げですね。出せて結果によって上げることもあるし、下げることもあると。

 行政側にも一定程度の事前のそういったことをやるという準備をお願いするわけですので、企業も最初に言って、言ったからにはちゃんとした評価を出すのだというスキームを考えておりますので、プラスマイナスがあるということで承知しております。

○荒井費用対効果評価専門部会長

 安部委員、どうぞ。

○安部委員

 今後の本格的制度化に向けての御提案なので、一定の理解をいたします。議論をすれば良いと思います。

○荒井費用対効果評価専門部会長

 松本純一委員、どうぞ。

○松本純一委員

 質問です。我々はよく言われるように公的保険のプレーヤーの一員であるわけです。営利企業の皆様方も、同じ土俵の上でプレーをしているわけでございます。

 ただ、それぞれの意見陳述の中で、費用対効果評価の重要性について十分理解しているというところもあれば、最終評価の及ぶ範囲によっては断じて容認できないとか、あるいはイノベーションの阻害やアクセスの遅延が生じるおそれがあると言い切っておられるところもあります。

 そこで、皆様方それぞれへの質問をさせていただきます。例えば価格が予想より低くなった場合、製品は余るほどあるが、市場への供給をやめてしまうことはあるのか。それぞれの立場でお答えをお願いしたいと思います。

○荒井費用対効果評価専門部会長

 そうしたら、多田様から順番でよろしいでしょうか。

○日本製薬団体連合会(多田)

 それは、常識的に言ってあり得ないと思います。ここで申し上げているのは、薬価を収載する段階で大変な低い値段がついたら、結果としてそれを市場に出さないということがあるということを申し上げたいのです。一旦市場に出て、それが途中で薬価が変わって、低くなったからというので供給をとめるなんてことはあり得ないです。それは今でも我々は責任、使命を負っているわけでございます。ここの書き方が、ある評価方式によって最初の薬価がとんでもなく低いような値段がついた場合は、それを上市しないということはあり得べしということでございます。他国においてはそういうことはあるわけでございます。

○荒井費用対効果評価専門部会長

 順番にどうぞ。

○米国研究製薬工業協会(パトリック・ジョンソン)

 私どももそれに同意します。既に上市されている製品に関しましては、販売をとめるということはございません。今後の医薬品に関しての予見性について我々は懸念しておりますので、それについては注意が必要だと考えております。

2010年以降、このように制度が変わってきましたけれども、世界でも同時開発なども進み、日本初での革新的な新薬が創出されたという事例も実際にございますので、そのような革新的医薬品の予見性を損なわないようにするということが大事だと考えます。薬価の予見性が損なわれることによって、同時開発にも影響が及ぼされ、最終的には日本の患者さんが革新的な医薬品へアクセスできることに遅延が生じたり、不利益をこうむるということが考えられます。

○欧州製薬団体連合会(ハイケ・プリンツ)

 私のほうから一言付言させていただきます。冒頭に先生がおっしゃいましたように、私どもは同じ土俵で戦っているのだということであります。そのとおりでございまして、日本の患者さんのために尽くしているという立場でございます。だからこそ、私ども医薬品業界としましては、そうした義務を担っているわけであります。今、ジョンソン氏のほうからも言及がありましたように、できるだけ早く、日本の患者さんに新しい、そして革新的な新薬をもたらすということが我々使命であります。

 先ほど英国での事例にも言及がありましたけれども、私どもが懸念しておりますのは、こうした費用対効果の評価を入れることによりまして、これがうまく運用されない場合には、結果的に過去に日本にありましたようないわゆるドラッグラグというものも生じてきて、そして最先端の治療が日本の患者さんに届けられなくなってしまうのではないかということを懸念しております。

○荒井費用対効果評価専門部会長

 加藤様、どうぞ。

○米国医療機器・IVD工業会(加藤)

 御質問ありがとうございます。

 まずは、業界としては財政状況が厳しい中で、トータルの社会保障コスト、医療費、これのバランスをとっていくということが大事だと思っています。ですから、我々も費用対効果評価は非常に重要であると認識しております。では、個々の企業でどうなるかと言いますと、2つコメントさせていただきます。

 1つは、今、既にPMDAでも始まっていますけれども、保険までの予見性を高めるいろいろな仕組みを動かそうとしている。それがまだ十分にできているとは思えませんけれども、申請してから、あるいはもっと前の薬事相談のときから、一体これは幾らくらいの価格がついて幾らくらいの事業性があるのかということの予見性が高まれば、評価が悪いからといってそこで撤退ということにはならないと思います。

 一方で、お示しした資料の9ページにもございますように、右側の円を見ていただきますと、医療機器は個々の会社の事業規模は非常に小さいです。50億円の売り上げ以下の会社が過半数を占めています。そういった企業が革新的なものを出して日本に入ってきて、でも唯一の収益の柱であるものが納得のいかない値段がついたら撤退するかしないか。それはちょっと、業界全体という立場では申し上げられません。ありがとうございます。

○日本医療機器産業連合会(渡部)

 上市後の製品については、患者様にお届けをするという責任を持っているということで、それを優先的に考えるというのが私どもの意見でございます。製薬と同じ考え方であります。

 ただ、企業としては継続していくためのいろいろな努力ということを考えていかないといけない。あるいは、皆様に御相談することもあると考えてございます。そういった意味で、資料の5項で御説明したような、本格制度化に向けたスキームの御提案というのは、ある意味、そういったところの予見性だとか継続性を担保しやすいような形のスキームも一つの側面としてあると考えてございます。

○荒井費用対効果評価専門部会長

 では、松本委員、どうぞ。

○松本純一委員

 少し安心、やはり不安という感じがいたします。

 多田会長にばかり質問して申しわけないのですけれども、日薬連資料の9番目の「総括」のところにもありますが、先ほども言われたように、制度設計の議論をしているとおっしゃいました。ということは、加算率の補正に限定するべきだと。それ以上に例えば減額をできるようなシステムが導入された場合は、土俵からおりるということもあり得るのでしょうか。

○荒井費用対効果評価専門部会長

 多田様、どうぞ。

○日本製薬団体連合会(多田)

 土俵からおりるというのはどういう意味でしょうか。

○松本純一委員

 はっきり言えば製品を上市しないといいますか、市中に回さない。先ほどは、出ている製品は回収もしないし、そのまま回すと理解いたしました。今、ここで論じているのは制度設計をどうするかということだとおっしゃった。そこで、減額すべき部分、あるいは対象にすべき部分は加算率の補正部分に限定すべきであるということもよくわかりました。御主張は御主張としてよくわかったのですけれども、そこからさらに踏み込んだ中で、そういった意味では御主張の中では加算前の価格という形になるのでしょうか。そこも下回る調整という制度設計になった場合は、やはり当然不満でしょうし、製品を出さないということもあり得るのかと。制度として決まってしまったからしようがないとして諦めるのか、それとも抵抗の上で製品は出さないということになるのか。非常に下世話な質問で申しわけないのですけれどもね。

○日本製薬団体連合会(多田)

 基本的には製品ごとの判断は企業がすべきであって、ある製品がそういう目に遭ったときにそれをどうするかは企業の判断です。

 制度設計論ということで申しますと、これは今、薬価制度全体、薬価基準制度というものを一方で議論しながら、それとは別にHTAの議論がなされている。では、既存の制度、しかも今、進行中の制度とどう整合性をとって設計していただけるのですかということを私は申し上げているのであって、もし、気に入らない制度になったら医薬品業界としてそれを無視するのかとか、あるいは供給しないようになるのかというのは、私の申し上げていた御説明から飛躍し過ぎているのではないかと思います。

○荒井費用対効果評価専門部会長

 よろしいですか。

 吉森委員、どうぞ。

○吉森委員

 ありがとうございます。

 本日は製薬各団体の皆さんの意見陳述を拝聴していますと、費用対効果制度については、9ページにもありますけれども、薬価基準制度における新薬の評価価値のあくまで補足的な位置づけだというふうに捉えていらっしゃる。それと、価格調整の範囲については、先ほどから議論されていますけれども、加算率の補正に限定して、加算前の価格を下回るべきではないという御意見だと思います。

 これについては、もちろんお立場としての主張は理解するところではありますけれども、私が申し上げたいのは、そもそも費用対効果評価制度の検討については平成24年5月から中医協で部会が設置され、以降議論を続けてまいりましたが、2711月には今、議論になっています費薬材参考の3ページの13品目を対象に検討ということでやってきた。参考資料の4ページには、2812月には薬価制度の抜本改革だということでの基本方針が出され、そこに費用対効果評価制度を本格導入するのは30年4月からだと、こういう経緯になっているわけです。

 ここの基本方針に書かれているように、革新的新薬創出を促進することによって、新薬創出なり適用外薬解消なりの促進加算制度をゼロベースで抜本的に見直すのだと。それとあわせて費用対効果を本格的に導入しようということであったと思うのです。だから、真に有効な医薬品を適切に見きわめて、イノベーションを評価し、研究開発投資の促進を図るという点は我々も十分理解するところであります。

 私が申し上げたいのは、今、我々は費用対効果評価制度の試行的導入の議論の段階ではございますけれども、薬価制度の抜本的改革に向けての補足的な位置づけだということで議論しているわけではないということ、ここを申し上げたいところであります。事務局におかれては、それでよろしいですね。

○荒井費用対効果評価専門部会長

 事務局への確認ということでしょうか。

 では、薬剤管理官。

○中山薬剤管理官

 事務局としましては、基本的にはこれまでの薬価基準制度というものがあって、それをもとに薬価を設定するという長い歴史を経てできてきている制度というものがあるわけです。それをベースとして今回、薬価制度の抜本改革ということで全面的な見直しを行うということがございます。したがって、そういった薬価基準制度の見直しとあわせて、それをベースとして、費用対効果評価制度と薬価基準制度との整合性という観点で、両方をあわせて考えていくということになるのだと考えています。

○荒井費用対効果評価専門部会長

 吉森委員。

○吉森委員

 あくまで補足的ではなく、きちんと現行の薬価制度にきちんとなじむような形で、なおかつ、増大する医療費の適正化につながるような制度を導入していこう、時代に合わなくなった薬価の古い基準制度を見直していこうということだと理解しております。

 そこで、今回、この試行的導入にかかわる対応を決めるということでここまで議論してまいったわけですが、各団体の御意見にもありますけれども、試行的段階については時間的にも、検討の材料の範囲的にも限られるという中でやるわけですから、価格調整の部分についても、これは前回も申し上げましたけれども、論理的に理屈立てて決定できるというところはある意味非常に難しくて、決めというか、そういう要素が排除できないのだろうと思っております。重ねて事務局への前回に続いてのお願いですけれども、価格調整の範囲、方法の決定については、本体にするかとか加算調整部分にするのかということも含めて、具体的なメリット、デメリットをあわせた、仮想品目でも構いませんので、シミュレーションを示していただいて議論したいというのが重ねての要望でございます。

 また、先の議論で本格導入については少し先走り過ぎかもしれませんけれども、業界の皆さんの意見も聞いていますと、試行的導入の実施による価格調整の結果を踏まえてきちんと価格調整のあり方を再度議論するだけの時間的余裕がとれるようなスケジュールをお組みいただければありがたいと思います。

 以上、意見です。

○荒井費用対効果評価専門部会長

 ありがとうございました。

 幸野委員、どうぞ。

○幸野委員

 業界によるプレゼンテーションの中で私の考え方と異なっている部分は、価格調整の調整範囲です。業界の御意見は、価格調整の範囲は加算部分としていただきたいということでしたが、そもそも薬価は、収載時は類似薬効比較方式と原価計算方式の2つの異なる方法で算定されますが、累次の改定を経て実勢価格によって改定されるので、加算部分がいくらあるかといった概念は、薬価の中にはなくなっていると私は思います。これについてどのような見解なのかをお教えいただきたいと思います。仮に業界の考えが私の考えと同じであっても、収載時における加算部分を考慮して一定の比率を掛け合わせて算出してほしいという要望なのかについてもお教えいただきたいと思います。

 また、先ほどからの議論を聞いていますと、費用対効果評価は収載時の加算が正しかったのかどうかを見るものだという御意見があったと思いますが、私はそうではないと思っています。収載時の加算が十分であったかどうかではなく、収載時に非常に高く評価された医薬品や、保険財政に影響を及ぼすほどの売上げのある医薬品に対して、費用対効果評価という薬価算定以外の視点から見て、真に価値を有しているのかを見きわめて、真に価値を有しているという結果が出れば、算定された薬価は正しかったということで薬価が維持される一方で、価値がさほど高くないという結果が出たものについては、収載時の薬価算定が正しくなかったということで引き下げられるといった趣旨で、費用対効果評価という仕組みが導入されたと思っています。費用対効果評価の結果によって、加算でもっと評価すべきであった医薬品の価格を引き上げるという概念はないと思っていますが、これについての考えをお聞かせいただきたいと思います。

○荒井費用対効果評価専門部会長

 これは一通りですか。あるいは多田様。

○幸野委員

 代表として一名にご回答いただくのでも結構です。

○荒井費用対効果評価専門部会長

 では、代表ということで、多田様、いきますか。

○日本製薬団体連合会(多田)

 2つ目の御質問からまずお答えしますけれども、もう一度2つ目の質問をお願いします。

○荒井費用対効果評価専門部会長

 では、もう一度お願いします。

○幸野委員

 費用対効果評価は、薬価が正しいのかどうかを別の視点で見ようとするものであって、収載時の評価としてつけた加算が十分であったかどうかを見るものではないと私は理解しているので、収載時の加算が十分ではなかったので価格を引き上げるという概念は、ないという私の考えは間違っているのかを御指摘いただきたいという内容が2点目の質問です。

○日本製薬団体連合会(多田)

 わかりました。2つ目のほうは、当然違った角度から薬の価値を評価するというのだから、高くなることも低くなることもあってしかるべきですね。違う角度で評価するわけですから。それが一方的に下げるしかないのだという議論は、理論的におかしいというのが私の答えです。

 1つ目の質問は業界としても非常に難しくて、薬の価値というものは何なのだ、実勢価なるものが本当に薬の価値なのか。この辺も日本におけるいわゆる実勢価と言われているもののあり方をよく考えますと、世界に通じるマーケット価格かというと、そうではないわけです。これは政策的に、公定で薬価がまず決まって、そこから下がるしかないものが実勢価になっているわけです。だから、日本では制度上、下がってきているけれども、それが薬価として正しいのか、薬の価値として正しいのか、そこに我々は疑問を持っている部分がございます。今の薬価制度そのものの基本になるところがこれでいいのだろうかと、そこに疑問があるからお答えできないのです。

 2つ目のほうは明らかに、今、申し上げたように、新しい角度で薬の価値を見直すのなら、それは今、決まっている価格より高くなっても低くなってもいいだろうということでございます。

○荒井費用対効果評価専門部会長

 幸野委員、どうぞ。

○幸野委員

 1点目の質問に対してご回答いただいた、そもそも実勢価格に合わせて薬価改定を行うという仕組みがおかしいという御意見であれば、薬価の抜本改革の中で議論しなければいけない内容になるのではないかと思います。

○日本製薬団体連合会(多田)

 私はその問題を持ち出しているつもりはないのです。そうおっしゃったから、実勢価そのものが、皆様が本当に世の中で言う、経済学上で言うマーケティングプライスになっているのかというと、そうでないのです。値段が下がるしかない国というのは日本しかないわけですから、非常に特殊なマーケットだとまず御理解いただいて、それに西洋流の、あるいは論理的な整合性をきっちり詰め込んだHTAを持ち込むということ自体に無理があると思うのです。

 そこで妥協なり調整なりという、どの範囲で調整するか、修正するかという議論になってくると思うのです。気持ちとしては、そういう中でどういうルールの範囲でやるのが今の状況から双方にとって最も平和的か。それが今、我々の提案しているところなのです。

○荒井費用対効果評価専門部会長

 幸野委員、どうぞ。

○幸野委員

 やはり私は、算定された薬価が正しかったのかを見るために、算定方式とは違う視点の費用対効果評価という仕組みを導入していこうということだと理解しています。

○日本製薬団体連合会(多田)

 それについて反対しているわけではないのです。

○幸野委員

 私の考えと業界の考え方が違うので、議論してもきりがないと思いますが、私は費用対効果評価によって、収載時に決定された価格が妥当であったという結果であれば薬価は維持され、妥当ではなかったという結果であれば、薬価は引き下げるという2つだと理解しています。費用対効果評価によって、薬価算定では評価されなかった部分が見つかったから薬価を引き上げるという概念はないと考えています。

○日本製薬団体連合会(多田)

 そうですね。

 時間もないのに申しわけないのですが、先ほど吉森委員がイノベーションのことはよくわかっているとおっしゃいましたのですけれども、こういう評価をするときに、イノベーションというものが余り話題になっていないということ自体、私は非常に不自然だと思うのです。イノベーションを推進して、この産業を国の基幹産業の一つに育てるのだという政府の大きな方針も出ているわけです。

 確かに、この場は薬剤費あるいは医療費をどうやって調整していくか、下げていくかという話がどうしても中心になるのですけれども、イノベーションの評価が今の薬価制度の中で十分評価され切っているのか。そうではない部分もあるのではないか。そういう意味で、HTA的な物の考え方はそういうものをもう一回見直せる一つの機会かなと。そういう意味で、委員とは意見の違う考え方が出てきているわけです。御理解いただきたいと思います。

○荒井費用対効果評価専門部会長

 幸野委員、どうぞ。

○幸野委員

 時間が押しているので、最後の意見にします。医機連の資料の8ページにある、今後の本格制度化に向けての御提案は、例えば医療機器を使うことで、保健・医療財政に影響を与える場合や、介護の防止になる場合、生産性を大きく引き上げる場合などに対して、経済性評価という新たな補正加算要件を設けてはどうかという主旨ですが、これは現行の保険収載の制度を見直してほしいという御提案だと思うので、費用対効果評価とは別の議論が必要ではないかと思います。これについてはどのようにお考えでしょうか。

 もし、費用対効果評価の中で経済性評価という視点での評価が必要という御提案であれば、倫理的・社会的考慮要素の項目の2番目にある、「公的医療の立場からの分析には含まれない追加的な費用」の要件が類似しているので、介護費用や生産性損失をアプレイザルで考慮し、価格調整を行うということで十分ではないかと思います。

○米国医療機器・IVD工業会(加藤)

 ありがとうございます。

 2つ論点があると思います。まず、8ページにお示しした流れの御提案ですけれども、倫理的、社会的要素以前にも、もちろん公的保険の中での経済性というのがメーンにあると思っています。なぜこういうふうに書いたかというと、冒頭で御説明申し上げましたとおり、医療機器というのはラーニングカーブがございまして、特に今の日本はデバイスラグがなくなってきていて、比較的新しいものが欧米の経験値を経ずに日本に入ってきます。そうすると、本当に患者さんにどういうアウトカムがもたらされるのか、医療費にどういう影響があるのか、それが保険の収載のときにはわからない部分があるわけなのです。ですから、そこの部分も含めて、先ほど申し上げたいろいろな経済性も見て、後で調整していただけないかと。そうしないと、企業体力のない医療機器の会社というのは、こういった非常に高価なお金と時間のかかる費用対効果評価に対応力がつかない。業界全体としても、この制度が育たないと思っているからです。

 もう一つおっしゃられた介護等についてなのですけれども、確かに今のたてつけではアセスメントではなくアプレイザルのときに倫理的、社会的要素として入れていただいていると承知しておりますが、こういったことがもし定量化できるという技術が備わってくるのであれば、保険制度内での費用と同じような形でアセスメントのときに議論していただければありがたいという趣旨でございます。

○荒井費用対効果評価専門部会長

 よろしいですか。

 松本吉郎委員、どうぞ。

○松本吉郎委員

 先ほどの薬価の話もそうですけれども、機器のところも、先ほど幸野委員もおっしゃったとおり、正直言って上げる要素はないと私も思っております。費用対効果が、費用に対してしっかり効果があるということであれば、市場による恩恵というものが十分にあると思っておりますので、それによって期待できると思いますので、上げる要素はないと私も思っております。

○荒井費用対効果評価専門部会長

 では、遠藤委員。

○遠藤委員

 先ほどからの議論で、多田さんにお聞きしたいのです。

 イノベーションの評価ということで、当然論理的には上げることもあれば下げることもある。ただ、保険の制度の中で言うと、保険料及び税の投入の中で、財政的に大変厳しくなっている状況なので、下げるかという議論が主体になるのだと思います。先ほどからのイノベーションの評価が適切かどうかといったときに、イノベーションの評価をしていったときに、保険制度を突き抜けてしまうということは論理的にあることだと思うのですけれども、それに関して医療保険制度、皆保険の維持とイノベーションの関係はどのようにお考えでしょうか。

○荒井費用対効果評価専門部会長

 多田様、どうぞ。

○日本製薬団体連合会(多田)

 これは今、もう一つの会議のほうで非常に重要なテーマとして、イノベーションの評価をどうするかとか、長期収載品や新薬創出等加算をどうするかという議論が行われているわけでございます。そういう中で、イノベーションが頻繁に起こったら、大変なことになると思いますが、イノベーションのイノベーションたる部分は、それがめったに起こらないからイノベーションなのです。そんなに起こらないのです。

 一方で、一定期間を過ぎますと、日本におきましては一定期間薬価が維持されて、その後はどっと落ちていくわけですから、トータルの薬剤費というのは、この数年間、ほとんど上がっておりません。おととしはたまたま、イノベーションが出たものだから、対前年度でふえましたけれども、16年になりますと全体の市場がまた下がっているわけです。それは今、政府が進めておられる長期収載品からジェネリック品への置きかえ政策が厳しく実行されている成果として出ている。それはそれでいいと私は思うのです。

 今、我々メーカーとしては、イノベーションを目指して新しい薬をつくって患者さんの役に立つ。既に特許が切れてジェネリック品が出てきたものには市場を明け渡す。こういう基本理念でやっておりますので、もし御心配されるほど、どんどんイノベーションで新しいものが出てきたら、今度はそういうものを、例えば日本の企業であれば海外へ輸出して、収入がふえて、納める税金がふえてという、財政的にはプラスサイドのこともふえてくるとお考えいただいたらいいと思います。まず頻繁に起こらないと思います。お答えになりましたでしょうか。

○荒井費用対効果評価専門部会長

 遠藤委員、どうでしょう。

○遠藤委員

 お考えとしてはある程度理解はできます。そうすると、製薬業界としては薬剤費というのは一定のレベルであって、その中でイノベーションの部分と下がる部分でバランスが将来的にもとれるというふうに。

○日本製薬団体連合会(多田)

 そのように見ております。

○荒井費用対効果評価専門部会長

 ほかにはどうですか。

 では、中村委員、どうぞ。

○中村薬価専門部会長

 まず、AMDDの加藤さんに、主張の中身についてお伺いしたい点があります。

 一つは、8ページでは、経済性評価を希望のときには新機能区分をつくるという御主張と読めるのです。機能というのは科学的に決まるのですが、科学的な機能が同じ製品の中で、もし経済性がよい、あるいは悪ければ、また別途、新しい機能の枠をつくるという御提案でしょうか。それとも、機能は機能として同じでも、その中に経済性の良いもの悪いものを区別してほしいという意見なのかをお伺いしたい。

 次に、多田さんにお伺いします。加算前の価格を下回る調整については断じて容認できないことは、全ての団体で同じ御意見だと思いますが、その主張の根拠がよくわからなかったので確認させてください。

 根拠としては、費用対効果評価の分析結果が絶対的な数値ではないこと、それから薬価基準制度との整合性がないので、加算前の価格を下回る調整は断じて容認できないという御主張かと思います。しかし、分析結果は感度分析によっても大きく結果が違ってくることもありますが、感度分析によって最低の価格でも費用対効果が悪いという判断が出た場合はどうなのか。あるいは「薬価基準制度との整合性を踏まえ」とありますが、現在の薬価制度も減算、あるいは価格を下げる仕組みがあります。どういった意味で整合性とか、あるいは絶対的な数字ではないということをおっしゃっているのかを確認したいと思います。

○荒井費用対効果評価専門部会長

 では、まず1点目は加藤様。

○米国医療機器・IVD工業会(加藤)

 中村先生、ありがとうございます。

 今の御質問は、8ページのスキームにおいて、区分に複数の製品が入っていたらどうするのですかという御質問として理解しております。現在、機能区分特例制度とか、いろいろと制度的にも配慮いただいて、新しい医療機器については一定程度の間、1つの区分に1製品が存在する状況になっています。そんな中でのここでの追い打ち的な価格、費用対効果の分析、それによるアプレイザル、そういったことを考えていますので、仮にそこの区分に2つ、3つの製品が入って、ある意味市場原理が働きだすということになったら、こういったことはいつまでもやるということではないと思います。そこら辺の整理は、また細かいところを含めてやっていきたいと思っております。

○荒井費用対効果評価専門部会長

 2点目、多田様。

○日本製薬団体連合会(多田)

 同じような御質問でございますけれども、我々の認識はHTAで新たな視点で見たときに、加算する前の値段というのは、これは今の制度上、類薬をベースとしてとってきているわけです。そうすると、もともとの加算する前の値段が間違っていたのだという話になるわけです。そこまでHTAで変えていくのかというふうな、制度の基本にかかわるようなところに影響しますので、先程から申し上げているように、加算部分にとどめるべきではないかというのが私どもの主張でございます。

○荒井費用対効果評価専門部会長

 よろしいでしょうか。

 ほかには御意見はありませんでしょうか。

 ありがとうございました。ほかに御意見等もないようですので、関係業界からの意見陳述についてはここまでとさせていただきます。

 本日の議題は以上です。次回の日程につきましては、追って事務局より連絡いたしますので、よろしくお願いします。

 それでは、本日の合同部会はこれにて閉会といたします。

 どうもありがとうございました。

 


(了)
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