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2021年11月5日 第36回社会保障審議会児童部会社会的養育専門委員会 議事録

子ども家庭局家庭福祉課

○日時

令和3年11月5日(金)10:00~13:00

 

○場所

オンライン


○出席者

委員
 

相澤委員   安部委員   五十嵐委員  井上委員
奥山委員   河尻委員   北川委員   熊川委員
倉石委員   桑原委員   小島委員   菅田委員
高田委員   坪井委員   中村委員   橋本委員
畑山委員   浜田委員   平井委員   藤林委員
松本委員   宮島委員   森井委員    薬師寺委員
山縣委員長  横川委員   横田委員 

事務局

橋本子ども家庭局長
川又審議官
岸本審議官
小澤総務課長
山口少子化総合対策室長
中野家庭福祉課長
羽野虐待防止対策推進室長
野村企画官
林保育課長
鈴木子育て支援課長
山本母子保健課長
 

○議題

(1)具体的な対応について④(一時保護時の司法審査等、子ども家庭福祉分野の資格・資質向上)
(2)その他

○配布資料

資料1 一時保護時の司法審査等について(案)
資料2 子ども家庭福祉分野の資格・資質向上について(案)
資料3 委員等提出資料
 
参考資料1 委員名簿
参考資料2 これまでに頂いた課題・問題意識
参考資料3 今後の基本的な議論の方向性
参考資料4 児童相談所における一時保護の手続等の在り方に関する検討会 とりまとめ
参考資料5 子ども家庭福祉に関し専門的な知識・技術を必要とする支援を行う者の資格の在り方その他資質の向上策に関するワーキンググループ とりまとめ
 

○議事

○野村企画官 定刻となりましたので、ただいまから第36回「社会保障審議会児童部会社会的養育専門委員会」を開催いたします。
皆様、音声は聞こえますでしょうか。
(首肯する委員あり)

○野村企画官 委員の皆様には、お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。本日はウェブ会議にて開催させていただきます。
本日の出席状況でございます。榎本委員、林委員は御欠席とお伺いしております。
なお、宮島委員は途中参加と伺ってございます。
安部委員、畑山委員は途中退室と伺ってございます。
頭撮りはここまでとさせていただきます。
今回の委員会は、傍聴希望者向けにYouTubeでライブ配信しております。なお、本委員会では、これ以降の録音・録画は禁止させていただきますので、傍聴されている方はくれぐれも御注意ください。
これより先の議事は、山縣委員長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○山縣委員長 皆さん、おはようございます。委員長の山縣です。今日はいつもと同じように、それぞれの御意見を闘わせていただけたらと思います。
早速ですけれども、事務局から資料の確認をお願いしたいと思います。

○野村企画官 資料の確認をさせていただきます。
配付資料は右上に番号を付してございます。
資料1、一時保護時の司法審査等について(案)。
資料2、子ども家庭福祉分野の資格・資質向上について(案)。
資料3、委員等提出資料として、安部委員、井上委員、倉石委員、橋本委員、浜田委員、藤林委員、宮島委員、横田委員のほか、全国知事会、日本社会福祉士会・日本精神保健福祉士協会・日本医療ソーシャルワーカー協会・日本ソーシャルワーク教育学校連盟、福祉系大学経営者協議会からの提出資料を配付してございます。
ほか、参考資料を配付してございます。
加えまして「児童相談所における一時保護の手続等の在り方に関する検討会とりまとめ」「子ども家庭福祉に関し専門的な知識・技術を必要とする支援を行う者の資格の在り方その他資質の向上施策に関するワーキンググループとりまとめ」です。従前、厚生労働省で御検討させていただきました検討会ワーキンググループの取りまとめについても、参考資料としてお付けしてございますので、よろしくお願いいたします。
以上でございます。

○山縣委員長 ありがとうございました。非常にたくさんの資料がございますけれども、議事の進行過程で必要なものを参照しながら御発言等いただけたらありがたいと思います。
早速ですけれども、議事に入ってまいりたいと思います。本日は前回に引き続き、参考資料としてお配りしております、今後の議論の方向性に基づき議論を行ってまいりたいと思います。
これまで議論していなかった部分で、一時保護時の司法審査等から子ども家庭福祉分野の資格・資質向上の2つがまだ議論ができていませんので、この2つの論点について、本日は議論をしたいと思います。2項目ですので、それぞれ半分ぐらいの時間ということですから、休憩を挟みますので、11時15分から30分ぐらいの間で前半、休憩を挟みまして開始後1時ぐらいまでで後半と考えます。
最初に一時保護時の司法審査等について、事務局から説明をお願いしたいと思います。

○羽野虐待防止対策推進室長 虐待防止対策推進室長の羽野でございます。よろしくお願いいたします。
資料1を御覧いただければと思います。2ページから御説明をさせていただきたいと思います。
これまで先般の児童福祉法改正法附則の規定を踏まえまして、有識者検討会にて御検討いただきました。その中で、一時保護の司法審査を導入すべき等の取りまとめをいただきました。その後、法務省、最高裁判所と厚生労働省から成るワーキングを開催いたしまして、実務的な検討を行ってきたところでございます。
大きな方向性としてまとめておりますのが、3つ目の○の下に矢印で4つ書いてございますが、こちらにまとめさせていただいております。そちらを御覧いただきながら御説明させていただきたいと思います。
まず、1つ目の矢印でございますが、一時保護時の司法審査について、裁判官が発行する一時保護状(仮称)による方法としてはどうかと書かせていただいております。イメージとしては、令状のようなものを想定してございます。
ただし、マル1、虐待など緊急性が高い事案について児童相談所が躊躇なく保護する必要があることや、マル2として、裁判官の判断には一定の疎明資料を要し、その収集・整理には保護開始から一定の時間を要することから、児童相談所は、事前または一時保護開始から○日以内に裁判官に対して請求する形としてはどうかと考えています。つまり、事後の請求を許容する必要があるのではないかという趣旨で書かせていただいております。
なお、※にございますけれども、ワーキングの中では3日以内とすべきという意見と、7日以内とすべきという意見がございました。厚生労働省といたしましては、現場の実務を考慮しますと7日は必要ではないかと提案させていただいたところでございますが、緊急に一時保護をするという必要性から、事後の請求を許容するという考え方からすると、3日という短期間とすべきではないかという意見もあったところでございます。
2つ目の矢印を御覧いただければと思います。裁判官が審査の対象とする時点としては、一時保護開始時点の一時保護の判断の適正性について審査するとさせていただいた上で、一時保護を行ってから請求までの間に収集した資料についても斟酌して審査するとしてはどうかと考えております。審査の結果によって、妥当であれば一時保護状を得て引き続き一時保護を実施するということになりますし、妥当でない場合は一時保護を解除するということになるのではないかと考えております。
なお、その下の※にございますけれども、ワーキングの中では現行の児童福祉法上で「必要がある認めるとき」とされている一時保護の開始要件について、裁判官が適切な審査を行うという観点から、その要件を法令上明確に規定すべきではないかという意見があるところでございます。ただし、法令上規定する場合であっても、現行の一時保護の要件を自主的に狭めるようなことは適切ではないと考えておりますので、そのような前提の下、法令上規定するということも検討してはどうかと考えてございます。
3つ目の矢印を御覧いただければと思います。司法審査の対象となる一時保護について、親権者等が保護に同意した場合、また、請求までに一時保護を解除した場合については除外してはどうかと考えてございます。
4つ目の矢印でございますけれども、既存の不服申立て手段については、引き続き、提起可能としてはどうかと考えてございます。
(注)でございますけれども、一時保護状の発付の審査に関しまして、少なくとも児童相談所からの不服申立て手続を設けるべきとの意見がワーキングの中でもあったところでございます。
3ページを御覧いただければと思います。司法審査以外というか、司法審査に関わるといいますか、それらの論点についてまとめているものでございます。
1つ目の○ですけれども、児童相談所の調査権限について、現在、児童福祉法上明確な規定がないところでございますけれども、今回規定してはどうかと考えております。
2つ目の○は一時保護所についてでございますが、施設・人員配置基準については、現在、独自の基準がないため、新たに厚生労働省において策定したらどうかと考えております。
また、入所者が定員超過している自治体について解消のための計画策定を求めるとともに、計画に基づいて取り組む場合の重点的な支援を実施することとしてはどうかと考えております。さらに、一時保護所に対する第三者評価を義務化してはどうかと考えてございます。
また、子どもの権利擁護の観点からは、これまでもこの審議会でも御意見をいただいておりますけれども、子どもの意見を聴取することも重要であろうと考えておりますので、児童相談所等が一時保護を行う場合等については、子どもの最善の利益を考慮しつつ、子どもの年齢等に応じて、あらかじめ子どもの意見を聴取すること等によりその意向を把握し、それを勘案しなければならないということとしてはどうかと考えてございます。
最後に、児童相談所の体制についてでございます。今般、この司法審査の導入について御提案をさせていただいておりますが、その場合であれば、法務に従事する人材も含めまして、体制強化が必要ではないかと考えてございます。また、準備期間についても施行までに十分な期間が必要なのではないかと考えてございます。
以上でございます。

○山縣委員長 ありがとうございました。
事務局からの説明を踏まえまして、ここからは皆様方の御意見を伺いたいと思います。本日の提出資料を見ますと、恐らくかなりの方々が意見を出したいとお考えだと思いますので、お一方お一方の発言時間は制約的にお願いできたらと思っています。
御自由に発言をお願いしたいと思います。
安部委員、お願いします。

○安部委員 ありがとうございます。構成員意見書を出しているので、それを見ながらお聞きいただければと思います。
一時保護の司法審査については、基本的に賛成です。
事前審査なのですけれども、家庭訪問等で保護者と十分な話ができる立入調査を行うような事案だろうと思いました。これに関しては、様々な情報を事前に集めることが可能なので、ある程度の判断材料を裁判所に提出することは可能と思いました。
ただ、事後審査については、例えば性虐待が疑われるとか、医療ネグレクトで生命の危機が想定されるなど、子供の安全確保を優先する事態になるので、場合によっては保護者の接触が事後になる。子供の意見聴取も事後になる可能性があるかと思いました。 その意味で、一時保護状の請求資料というのは事前資料に比べるとかなり少なくなる可能性は高いと思いました。ただ、児童相談所が立入調査をする、職権保護をするということはある程度の情報に基づいて判断しますので、その情報で可能かと思っています。
請求期間ですけれども、特に事後に関しては、1番目は様々な情報を収集する。2番目は子供本人から聞き取る。3番目は保護者から聞き取る。4番目は、場合によっては弁護士に相談する。5番目は児童相談所の援助方針会議で決定する。6番目は一時保護状の作成という一連の作業が必要になってきますので、かなり慌ただしい作業になるだろうと思います。平日は可能かもしれませんが、週末、休日が間に入ると、3日での対応はかなり厳しいと思いました。そのため「原則3日、最大5日以内」が妥当ではないかと思ったところです。
以上です。

○山縣委員長 ありがとうございました。
奥山委員、お願いします。

○奥山委員 ありがとうございます。
第一に、この2つの問題です。一時保護の司法関与問題と資格化の問題に関しては、結論がワーキングで必ずしも出ていない問題ですね。権利擁護のところはワーキングで結論が出た問題です。一時保護の問題と資格化の問題の2つを1回でやるということ自体が、私は無理だと思っています。それで、先ほど、山縣座長が一人一人の意見を制限するようなことをおっしゃるのはおかしいと思います。これは十分な議論をしなければならない2つの問題です。前回の委員会の予定をキャンセルにして、ここで2つ一度に議論しろというのは全くおかしな話だと思います。
もう一つ、この2つは法律上1年後をめどにと書かれていたのです。それがもう2年たっています。つまり、この間、一体何をやっていたのだという話なのです。それに関して、しっかりとした説明を事務局からしてほしいと思いますし、今回の一回でこの2つの議論を終わらせるということは絶対にあってはならないと思いますので、そこをきちんと明確にしてほしいとまず考えます。
内容に関して言うと、例えば、家庭内暴力のお子さんが、親は一時保護に同意しているけれども、子どもは一時保護されたくないといったときに、本当に一時保護が必要なら、司法の方で、きちんとあなたは一時保護にいるべきだということを言ってあげるべきだと思いますので、そこが抜けているということを考えていただきたいと思います。
取りあえず前半のところできちんとした御回答をいただきたいと思います。

○山縣委員長 ありがとうございます。
今日一回で終わらせるということは言っておりませんので、皆さん方の意見を聞きながら、必要があれば次回以降で時間を取るということにはなると思います。私自身の発言の中に若干不適切な部分があったことについてはおわびしますけれども、いろいろな方々の意見を聞きたいという趣旨だけでございますので、御了解をいただきたいと思います。

○奥山委員 委員長、撤回ということでよろしいですか。

○山縣委員長 いろいろな人の意見を聞きたいということだけを残していただいたら結構です。

○奥山委員 それでも、1人の意見が長くなれば、当然全員終わらない可能性もありますね。それに関しては、次回ということでよろしいですか。

○山縣委員長 はい。そういうことです。

○羽野虐待防止対策推進室長 虐待防止対策推進室長でございます。
この2つの論点につきまして、御報告が遅れておりますことをおわびいたします。その上で、おっしゃるとおり重要な論点でございますし、委員の先生方の御意見を十分に伺いたいと思っております。
これまでの検討会で御意見をいただいて、取りまとめをさせていただいたというところと、その上で、例えば司法審査につきましては、3省庁で実務的な調整も行ってまいりました。
何分、これは日本については例のない話でございますので、実務面の対応も含めてなかなか難しい論点もございましたので、精力的に詰めてまいったつもりではございますが、結果としてこの段階になってしまったことについてはおわびしたいと思います。
ただ、この回と、必要であれば次回以降、十分に委員の皆様方に御意見をいただきたいと思っております。

○山縣委員長 ありがとうございました。
続けて、薬師寺委員、お願いします。

○薬師寺委員 ありがとうございます。
一時保護時の司法審査につきましては、児童相談所現場において、一時保護の適正化につながるのか否かという重要なテーマですので、一時保護を必要とする子どもの現状や保護者の状況の今を知る者として意見を述べさせていただきます。
1点目です。一時保護開始前の事前審査ということなのですが、現行では児童相談所が子どもの命や安全を守るために必要と認める場合には、一時保護を行っています。その一時保護が、客観的に見て適法なのかを審査して、第三者が子どもの意見や保護者の意見を聴取する機会を持つ、司法審査を導入することは必要であると考えております。
現行では子どもや保護者の意見聴取は、行政不服審査請求と2か月を超える一時保護の司法審査に限られています。大阪府の現状では、児童相談所における一時保護件数は過去3年間平均で年間2,362件、そのうち虐待相談による一時保護は1,597件です。職権保護は約8割で、緊急保護や調査保護が必要な対応困難なケースが多くなっている状況です。
最近の傾向として、夜間・休日の一時保護が増加しておりまして、一時保護所の入所の約6割が夜間・休日となっています。このような状況から、一時保護開始前に裁判所の許可状、一時保護状(仮称)の請求ができる事案は基本ありません。
今回お示しの案は、事前審査を原則としています。一時保護について裁判所に事前の許可を取るのは実務上不可能な状況です。なぜなら、子どもの安全が脅かされているときに、戸籍謄本を取って親権者等を人定し、関係機関調査をして、一時保護の必要性を疎明する文書を作成して、許可状請求をする時間はないからです。通告受理から一時保護までのプロセスは、警察の逮捕状請求までのプロセスとは全く違うものです。警察は事件発生後に一つの事件をチームで捜査しながら、並行して証拠書類を作成するという、過去の事実を明らかにしようとする手続であり、かつ、逮捕状請求までに時間があります。
一方、児童相談所は、子どもの安全が脅かされている事態を把握したら、それ以上危険な状況を避けるために、直ちに子どもの保護の動きをとる、将来の子どもの安全を確保するための手続であります。通告受理の時点で、子どもの安全が脅かされている状況にあって、親権者が誰で、その状況がなぜ起こっているのかはまだよく分からないけれども、一時保護を開始する必要があります。
事前に裁判所に許可を取る方式は、児童相談所が親権者は誰であるかを調査して、危険性がどの程度あるのか、証拠を集めてからでないと一時保護できないという考えになり、児童相談所が一時保護に躊躇するようになる危険性があります。原則は事後審査としなければ、児童相談所の一時保護の実情に合いませんし、さらなるリスクを防ぐ意味での子どもの安全は守れません。
また、事後審査においても、夜間・休日の一時保護が増えている現状では、3日以内は対応できません。住民票を確認するにも市町村は閉庁していますし、戸籍謄本請求、児童記録表や疎明資料の作成、決裁等には日数を要します。先日、8自治体の児童相談所長の意見交換の機会がありましたが、広域自治体の場合、裁判所への提出も時間がかかるため、10日から14日は必要であるという意見が大半でした。書類の持ち込みではなく、ファクスやメール、オンライン等での提出ができないかという意見もありました。また、全国共通の裁判所への提出用書式が必要という意見もありました。
2点目です。子どもの意見、保護者の意見の聴取についてです。現行では、一時保護に対する子どもの意見や保護者の意見は、2か月を超える引き続きの一時保護の司法審査の時点でしか裁判所に確認されません。案の事前許可方式であれば、保護者の意見、子供の意見は、2か月を超える一時保護の司法審査まで取り扱われません。そのため、行政不服審査請求が残されるとのことですが、保護者や子供の視点で考えますと、何のための司法審査導入なのかという疑問が出されるのではないかと危惧しています。
また、司法審査の対象となる一時保護を、親権者等が一時保護に同意した場合を除いた場合、児童相談所は一時保護直後に親権者等に意向を確認することになります。一時保護開始前に親権者以外の保護者に養育され、親権者の所在が不明な場合は意向確認ができないこともあります。また、多くの場合、職権による一時保護開始直後、児童相談所が親権者に初めて会うことが多く、虐待等の事実や養育状況を確認して、児童相談所の役割や一時保護の必要性を説明しても、初回面接では納得されないことも多く、ほとんどが司法手続に入ることになると考えます。
3点目です。裁判所における審査内容についてですが、まず、裁判官が何を審査するのかです。一時保護の適正性を判断するための一時保護の開始要件の明確化が必要です。
ワーキングで出た意見のとおり、現行の児童相談所長等が必要であると認めるときという一時保護の開始要件について、裁判官が一時保護の適否について、適切かつ迅速に合理的な審査を行うために、要件をより明確に規定すべきであると考えます。
現在2か月を超える、引き続きの一時保護、児童福祉法28条、親権停止、親権喪失等の親権制限の司法審査は全て家庭裁判所で行われ、子どもの発達や家庭状況に理解のある専門職である調査官が調査の上、裁判官が判断されています。その家庭裁判所に、一時保護時の司法審査を上乗せすることが果たして可能なのか。可能でなければ、家庭裁判所以外の裁判所を含めた司法審査になるのか。その場合、裁判官は一時保護開始の要件に照らし合わせて審査するしかありませんが、現在、その法規定はありません。
平成28年改正法において、児童の安全を迅速に確保し、適切な保護を図るための一時保護である緊急保護に加えて、児童の心身の状況、置かれている環境その他の状況を把握するためである調査やアセスメントを目的とした一時保護が明記されましたが、司法審査のためにはより具体的な要件規定が必要になると考えます。
児童相談所における一時保護の実態や一時保護の必要要件について十分調査し、法律の専門家の意見も十分に聞いた上で定める必要があると考えます。
裁判所に一時保護を却下されるのではないかと危惧される事例についてです。このような場合、裁判所に一時保護が認められるのかを危惧しています。例えば、家庭内で子どもが親に支配されている場合、一時保護前に子どもと会って事実を聞いても、子どもは虐待事実を言わないことがあります。さらに、親も否認している場合でも、現在は調査のために一時保護をしています。一時保護後、子どもは自身の安全を実感して、支配構造から離れることで初めて虐待事実を話すことも少なくありません。
また、以前に虐待を受けていたが、現状では明確な虐待事実はないという高年齢児童の場合、虐待によるダメージが大きく、親子関係が不調となっており、家庭に居場所がないと子どもが訴え、親子分離してから親子間調整が必要と判断していますが、保護者が反対する場合もあります。自立援助ホーム等に自ら助けを求めるような事例が考えられます。また、実際に児童相談所が必要であると判断した一時保護を却下されたとき、児童相談所が一時保護を解除して、子どもの安全が守られなかった場合はどうなるのか、非常に不安に思っています。不服申立てできる制度が必要です。実際、児童福祉法28条や親権制限申立て事例でも、家庭裁判所で承認されず、即時抗告して高裁で承認されることがありました。
5点目です。児童相談所や裁判所の体制整備等、準備期間を確保した改正法施行日の設定です。児童福祉法に一時保護時の司法審査が明記された場合、どのような方式の司法審査であれ、児童相談所の体制整備や関係機関調整などの十分な準備期間が必要です。
令和4年に改正法が成立した場合、厚生労働省においては一時保護の開始要件等について、実務上の法務省、最高裁との調整をされることと思いますが、一時保護開始についての司法審査を迅速かつ合理的に進めるためには、全国の児童相談所の実務の状況を十分に把握いただいた上で、適正な事務手続を具体的に示していただく必要があります。児童相談所では、国の実務的なガイドラインを受けてから、司法手続を適切に行うための体制整備やマニュアル作成等で1年以上など、複数年の準備期間が必要であると考えております。また、できる限り、年度当初の異動後の混乱が収まった時期の施行日をお願いしたいと思います。
最後です。児童相談所の体制強化の必要性です。体制整備の途上にある児童相談所が多い現状において、大きな課題として、児童福祉司や児童心理司が多くのケースを抱えているため、一時保護時の司法審査の導入による書類作成時間が増加しますと、子どもとともに過ごす時間や保護者と対話する時間が減少します。子どもの気持ちを聞いてこれからどうしたいか話し合う、保護者と養育について振り返る時間を優先したいというのが、体制整備が途上にある児童相談所現場の今の厳しい状況です。こういった状況を御理解いただきたいと思います。
私からは以上です。長くなって申し訳ありませんでした。

○山縣委員長 ありがとうございました。
続いて浜田委員、お願いいたします。

○浜田委員 浜田です。本日の論点に関しましては、委員等提出資料として提出させていただいておりますので、それに基づいてお話をさせていただきます。
今からかいつまんで御説明を申し上げますが、ここで述べていないことも意見書のとおりということで御認識をいただければと思います。
中にも書いてございますとおり、これは日弁連の福祉小委員会というところに所属する弁護士有志の意見を取りまとめたものです。もちろん、私の責任において発表するものですけれども、記名の弁護士以外にも複数の常勤弁護士、非常勤弁護士、契約弁護士からの意見を踏まえて、この意見書を作成したことを最初に申し上げておきます。
私の意見の骨子としては、これは書いてございませんけれども、一言で言えば、制度の内容がまだ全く成熟させられておらず、このざっくりとした提案を基礎にこのまま専門委員会の意見として取りまとめをすることは相当ではないということであります。
まず、総論に書きましたとおり、3点申し上げたいと思います。今回の提案には、子供がこの審理手続にどう関わるのかということが全く含まれておりません。これは一時保護検討会の取りまとめにおいても、一時保護が子供の権利を制限することに着目していたはずであるのに、そのことは一体どこに行ってしまったのかということです。入れないなら入れないで、そのことの説明が必要であろうと思います。
2つ目です。御承知のとおり、最近の改正で33条5項の承認審判が入ったわけですけれども、それの運用状況というのは果たして十分に検証されたのでしょうか。一時保護の検討会においてヒアリング調査等がなされたということは認識をしておりますけれども、それで十分と言えるのでしょうか。この先、まだまだ検証しなければならないことは大量にあると考えております。
3つ目です。司法審査を導入するということは、一定程度却下事例が出るということです。却下事例が一つも出ないような司法審査なら、そんなものは必要がないわけです。そうだとするならば、現状行われている一時保護の幾ばくかが一時保護ができなくなるということです。これを是とするのか、本当にそれで間違いないのかというところについては、幅広い意見の聴取、意見交換が必要であろうと考えています。
総論的には以上です。
めくっていただきまして、裁判所は何を審査するのかですけれども、先ほどの薬師寺所長のお話にもありましたとおり、結局のところ、そこを明確にしないと、何のためにわざわざ手間暇をかけて司法審査を導入して、しかも現場に負担をかけるのかということも分からなくなってしまいます。一番問題になるのは、恐らく調査保護と言われるものです。調査保護のときに、必要性がよく分からないからということで却下されるようなことになって、その結果、必要な保護ができないということになると、それはもう目も当てられないです。
では一体どう対応するのかです。要件の明確化ということがもちろん一つの対応として考えられますが、現在広範に認められている調査保護を果たして法文にうまく盛り込めるのかというと、これはなかなか技術的にも難しいものがあろうと考えます。
運用面の課題のところですけれども、特に性的虐待の場合などです。協同面接実施の関係で、児童相談所も保護開始直後にさほどの事情聴取もしないまま、捜査機関との連携を図っていくということが求められています。
そうすると、それは勢い調査保護という形を取らざるを得ませんが、裁判所に請求をする時点では子供からまだ状況も聞いていないという状況で、この司法審査の請求をしていかなければならないということになります。果たしてそれが可能なのであろうかということを危惧するところであります。
一時保護状請求の時期についてです。今回の提案では「事前または一時保護開始から○日後」となっており、必ずしも事前を原則とまでは私は読みませんでしたけれども、事前を原則にするべきではないと考えます。仮にその事後を含めるとしても、先ほど薬師寺所長のお話ともかぶりますけれども、逮捕状というものとはおよそ目的も方向性も相当違うのだということをここで強調しておきたいと思います。これは、令状「のような」形で請求をされるものに過ぎないと理解されるべきではないかと考えます。
一時保護への同意についてですけれども、親権者等が一時保護に同意した場合を審査対象から除くとなりますと、児童相談所現場では、果たして今回の一時保護では司法審査が要るのだろうか、要らないのだろうかといったところで、判断に迷いが生じることがあります。ここは、もし本当にこういう制度をつくるのであれば、そこの事務運用のところをとてもきっちり決めていっていただく必要があろうかと思います。
また、親権者は一時保護に同意するのだけれども、子供は保護にすごく反対しているといった場合にはどうなるのかです。ここについては大きな問題であろうと考えます。
今のところ以降も、不服申立てについて、子供の意見聴取について、その他といった項目のところでそれぞれ意見を述べておりますが、ここはもう意見書の記載のとおりということで、その記載に譲りたいと思います。
私からは以上です。

○山縣委員長 ありがとうございました。
続きまして、坪井委員、お願いいたします。

○坪井委員 ありがとうございます。私は3つのポイントについて申し上げたいと思います。
まず、1つ目です。司法が審査を行うことについて、基本的には賛同します。司法審査を実施するその形が大事なわけではなくて、第三者が介在するということで、児童相談所側の意見、親の意見、子どもの意見が対等に扱われることがポイントなのだと思います。奥山委員も浜田委員も強調されていましたけれども、子どもの不服申立てについては、一時保護のタイミングだけではなくて、現在既に行われている2か月を超える親権者等の意に反する一時保護に家庭裁判所の承認が必要だというルールも、ここの部分についても、親権者だけではなく、子どもの同意についても明確に盛り込むことが必要だと考えます。
2点目です。資料3ページの一番上の児童相談所の関係機関への調査権限の明確化です。これは賛同しかねる部分があります。
もともとの「児童相談所における一時保護の手続等の在り方に関する検討会」の取りまとめの中にも、児童相談所の調査権限の明確化については記載されているわけなのですけれども、現在の日本の司法の構造的な弱さを行政にカバーさせるという方式は、少なくとも児童相談所では既に破綻しかけているように見えます。
児童相談所の職員を増員する一方で、疲弊した職員が脱落していく姿をこれ以上あまり見たくはありません。出血を止めないで輸血しているような状況に見えます。
この権限については、例えば検察に持たせるというところが目指す姿なのではないかと思います。今回も、日本の司法の状況を考えて、もし、やむを得ず行政に責任を持っていくということを判断されるのであれば、そのリスクについてしっかり見ていただければと思います。
3番目は、一時保護の入所者が100%を超える自治体の解消への計画策定と国の支援について触れられている部分についてです。このテーマについては、第三者評価を義務化するとか、とてもよいところもあるので、そういう部分はぜひ具体化していただきたいのですけれども、そもそも必要な手続が整備されることとか、解消のための計画策定などについて触れられているのですけれども、意味がよく分かりません。
これはもともとの「児童相談所における一時保護の手続等の在り方に関する検討会」の提案も、そもそも同じような表現になっているのですけれども、一方で、厚生労働省として何がしたいのか、どういう制度をつくりたいのかということが、この資料にもっと明確に出ているといいと思いました。例えば、定員を増やすのだということを目指すのであれば、それが明確に表現されているといいと思いました。
脱線しましたけれども、それはさておいて、一時保護所の部分について2つ申し上げたいと思います。
1つ目は、時間軸の部分です。すなわち、一時保護の期間です。一時保護の対象人数が3年間で3割増えているという状況についても記載がありましたけれども、一方で、この3年間でそれぞれの一時保護されている期間がどれだけだったかという時間軸の部分については、3年間で変わっていない。この期間をどう短くしていくのかという努力が必要だと思います。
一時保護のうち、6割以上は2か月以内に家庭復帰しています。児童相談所のたくさんのワーカーさんの努力のたまものだと思います。
また、一口に一時保護と言っても、虐待のケースばかりではなくて、例えば、子供から親への暴力もあるでしょうし、触法のケースもあると思いますから、議論は単純ではないと思うのですけれども、一時保護の在り方として、子どもの権利擁護の観点から必要な手続が整備されることみたいな抽象的な表現ではなくて、一時保護の期間がしっかり、無駄に長くならないようにすることについては、明確に目指していただければと思います。
2点目なのですけれども、里親の活用です。「児童相談所における一時保護の手続等の在り方に関する検討会」の取りまとめについても、基本的な考え方として、一時保護を行う場は家庭における養育環境と同様、あるいはできる限り良好な家庭的環境であるべきだと書かれていて、真っ先に里親の委託が記載されています。それと、子供の通学が続けられるという大事な点についても触れられているのですけれども、一方で、残念ながら今回の資料に里親について明確に記載されていないのはとても残念ですというか、おかしいのではないかと思います。
この検討会の資料は半年以上かけて丁寧に作られている部分があると思うのですけれども、そういう中で里親についてもしっかりそういう方向性を出されているので、この結論を尊重して、よりよい一時保護を実現するために、里親の活用ということもしっかり実現していただきたいと思います。
以上です。

○山縣委員長 ありがとうございました。
畑山委員、お願いします。

○畑山委員 ありがとうございます。IFCAの畑山です。私からは2点ございます。
1点目は一時保護状の請求期間についてです。もちろん、子供の自由や行動の制限、権利の制約等の観点から、なるべく早く請求できるようにすべきですが、皆さんもおっしゃっていたように、子供の声を聞くという点では、請求期間は慎重に議論をすべきではないかと思います。
これまで子供の意見表明というところの議論の中でも出ていましたが、1回子どもに話を聞いただけ、1回の子供の発言だけでは、そこは子どもの本心ではない場合も考えられますので、そんなつもりはなかったのだけれどもといった子供の声があるように、形だけの聞き取りになってしまうと意味がないと思います。何のために一時保護をするのか、どれくらいの期間一時保護されるのか、一時保護された後の生活はどのようなものなのか、子供自身や家族との関係はどうなっていくのかなど、子供が理解できるように説明して、子供自身が考えられる時間を持って、子供が安心して話をできる環境を整えて、子供アドボケイト等の整備をした上で、子供の声の聞き取りを複数回行うべきだろうと思いますので、子供が納得して一時保護されるように、丁寧な聞き取りを行えるような仕組みや期間を検討していただきたいと思います。
もう一点が、一時保護所についてです。事前説明を受けた際に、一時保護所に対する第三者評価が現在義務化されていないということを知り、私はすごく驚いたのですけれども、全国の退所者調査の自由記述の中にも、一時保護所での生活について、子供たちの多くの意見が書かれています。私は悪いことをしていないのに、なぜ数か月以上もつらい思いをしなければならなかったのでしょうか。厳密な規則があり、刑務所のようだった。何の目的があってあれほど厳しくしているのか、すごく疑問に思います。家庭から逃れてきた子供たちが、なぜ保護されてまで息の詰まる思い、恐怖を感じなければいけないのか理解できない。一日も早く退所したかったという声があります。また、お願いしても、規則だからと言って復習用のテキストしか与えられず、学習を進められなかった。また、友達との連絡もとれなくなった。そういう声があります。
一時保護中に子供たちが適切な教育を受けられるような、学校へ通学できるような体制の確保であったり、子供の意見が聞かれる仕組み、また、子供たちが暮らしている場所、環境の整備、多様なケースに対応するための専門職の配置など、子供たちが安心、安全に一時保護所での生活が送れるように、また、一時保護所によって子供たちが受けられるケアの質の差が生まれないようにするためにも、一時保護所の第三者評価の義務化を早急にすべきではないかと思いました。
以上です。ありがとうございます。

○山縣委員長 ありがとうございました。
横田委員、お願いいたします。

○横田委員 ありがとうございます。
私からは提出資料を用意したのですが、資料に書いていないもの1点についてのみ申し上げます。
先ほど来御意見が出ていますけれども、事前審査に対する疑問を述べたいと思います。
逮捕状とは違うのだという御意見が出ましたけれども、そのことに加えて、逮捕状の場合と同じように考えたとしてもという話をしたいと思います。
逮捕状の場合は、憲法33条で令状審査が原則で、例外的に現行犯逮捕とか緊急逮捕なので、例外の場合が限られていて、例外の場合にはどうして例外なのかという説明が強く求められるわけです。
それに対して、一時保護の場合に、もし事前審査が原則なら同じように考えられるのですが、先ほど来、事前審査原則は厳しいのではないかということを言われています。もし事前審査が原則と言えないのだとすると、事後審査が原則と言わないまでも、事前審査の場合もあれば事後審査の場合もあるという話だとして、実際に事前審査を選ばなかった場合に、どうして事前審査を選ばなかったかが問題となったとしても、それは児童相談所の判断を尊重しましょうという話になります。そうすると、児童相談所の裁量です。
事前か事後かどっちの手続を取るかということが行政の判断に委ねられているとなると、これはそもそも手続保障としての機能を果たさないと考えられます。もし意味を持たせようと思うならば、こういう場合は事前審査でなければいけないのだということが厳密に特定されないといけないはずです。しかし、そういうことは可能でしょうかということを申し上げたいと思います。そうすると、手続保障の観点から見た場合に、事前審査にこだわることにあまり意味がない。
そうすると、残る意味は、これは私の提出資料の最初に司法審査の意味を2つ整理しており、読んでいただければと思うのですけれども、そこで手続保障の意義のほかに、裁判所のお墨つきがあれば躊躇なくというお話があります。
しかし、これについては本来の司法審査の趣旨ではないだろうということをそこで述べております。そういう目的のために書類を書く時間があるのならば、一刻も早く子どもを一時保護すべきではないだろうかと思います。
それに加えて、もしお墨つきをもらったといっても、一時保護に対して疑問がある親が損害賠償を請求した場合に、損害賠償責任を負うのは裁判所、つまり国ではなく、児童相談所を設置している地方公共団体が責任を負うことには変わりがありません。
逮捕状の場合も、逮捕状を出した裁判官ではなく、逮捕状を請求した警察の責任が国家賠償で問われています。これはなぜそうなのかというと、裁判所の国家賠償責任というのはなかなか認められないという前提があるからです。なので、お墨つきをもらっても、賠償責任を負うのは行政の側です。
さらに、ここは浜田委員の提出された資料とは意見が違うのですけれども、行政不服審査及び取消訴訟について、この司法審査の手続が入ったとしても取消訴訟は排除されません。これを排除すると憲法違反だからです。これは実際に裁判例があり、28条審判を経た措置に対する取消訴訟なのですが、平成20年7月11日の東京地裁判決です。裁判所ホームページに載っており、それによると、28条の審判を経た措置に対しても取消訴訟ができることが前提とされています。
私はこの判決は当然だと思っているのですけれども、その28条審判よりも簡易な手続を今、導入しようとしているわけです。より簡易な手続において、なぜ取消訴訟が排除されるのか、これは全然理屈が立たないと思います。なので、結局お墨つきをもらうといっても、その後、紛争が起きたときに行政の負担は基本的に変わりません。結論として、今、述べた2つの点、手続保障としての司法審査の意味、もう一つ、お墨つきをもらうという司法審査の意味、どちらの観点から見ても事前審査には意味がないし、機能しないと考えています。
以上です。

○山縣委員長 丁寧な論点で、改めて法的な整理をありがとうございました。
井上委員、お願いします。

○井上委員 ありがとうございます。
最初に、山縣委員長と事務局が、今回だけで終わらないということを言ってくださったことに関して感謝いたします。
私としましては、いずれのワーキングの委員会にも所属していないのですが、現場と英語圏のシステムを学んだ者としての意見を述べさせていただきたいと思います。
ただ、それを言うときに、WHOとかユニセフから何々とか言われるからというような考え方は全部排除して、我が国の現状を考えながら諸外国のシステムを参考にしてという考え方で今日は整理させていただきたいと思います。
私の資料としましては、現場に近いものからと考えていきたいので、この資料の13ページ、14ページにあります「児童相談所における一時保護の手続等の在り方に関する検討会」の第2回のところでありました資料を基にしてお話ししたいと思います。
今日、ずっと皆さんが言われているお話の中で一番大事なのは、虐待とかそういったものを疑った段階で子供の状況を考えるときに、事前に審査とかいろいろな形で必要なのですけれども、それをしていますと実際に子供たちを守れないというようなこと自体が起こるのが現状だと思います。これは薬師寺さんが言われたとおりだと思います。
14ページのところにあります、当事者が保護を求めているとか、既に重大な結果があるとか、上の2つのところまでは自分の資料には書いていないですけれども、出した資料には赤で囲い枠をしていたのですが、この2つのような事態が起こった場合は児童相談所の判断で、子供の安心、安全を守るために必要な事項として一番に挙げて、この段階でいろいろ言われることなく子供を保護するということに関しては何も問題もないと思います。
これに関して、最初の3日間保護して、ただ、大事なのは、今後は子供の権利擁護の部会に連絡を同時にとって、こういう子供さんが保護されていますということを伝えて、子供さんの権利擁護のところをお願いしますということと、司法に、取りあえずこういう子供さんがいて、そういう形で保護しますという第一報を入れるというのが外国では普通に行われています。ですので、この2つのところを、この3日以内のところで第一報として行う。
その後、次は7日間でいいと思うのですが、この間に基本的な情報の整理と提出を行って、先ほどどなたかが言われていましたが、自治体とかいろいろなところに詳しい資料を提出していただこうと思うと10~14日間かかるのです。これも事実なのです。
ですから、大きく3つの段階ぐらいに分けて、最初の3日、7日、10~14日という3つの段階ぐらいに分けていろいろな手続を整えていくというイメージを共有していないと、最初からするかしないかだけの話だけだと絶対まとまらないと思います。ですから、そういった段階を意識していただけたらと思います。
そういった形から入っていきまして、司法も私たちはとても大事なことだと思うのは、外国の方ではずっとやってきて、特にイギリスでやってきた彼らと話して確認をしますと、最初からそのようなものは整っていなくて、まず、司法の中に虐待の子供のケアをする専門の部会をつくって、虐待のときにどういうことをしなくてはいけないのか、それから、子供を最優先で守るということを考えたときにどういった順番で物事を考えていかなくてはいけないのか、そういったことを明確に司法の中でルールをつくって、それをきちんと整理して、全国の司法に共通の認識をしてもらうというやり方をしないと、裁判所でばらばらの考え方でやられても全然うまくいかないということがはっきり言われています。
今の日本の状況を検討していくと、幾つかまだ整っていないところがありますので、今、全部を整えてしまおうとするのは難しいのですが、そろってから始めるという考え方でしていたら何も始まらないということがイギリスでもはっきり言われて、コールドウェルのクリーブランドの事件とか、そういう何例かの代表的な事件が起こった後に動き始めて、後で整えていくという作業が進んでいったのだということを、改めて強調しておきたいと思っています。
日本の方に少し話を戻しまして、先ほどケースがぽんと上がってきて、そのケースに関しての子供の権利擁護云々のところの話に関しましては、今日提出しました15ページで栄留さんがまとめてくださっていますが、児童福祉審議会モデルの改善案とかイギリスの状況の図がありますので、こういったものを見ていただいて、次の中村さんとか、この辺の会にも全部入って意見を全部言ってくださっていると思いますので、そういったニュアンスを意識していただけたらと思っています。
以上です。

○山縣委員長 ありがとうございました。
続いて、中村委員、お願いいたします。

○中村委員 よろしくお願いします。3点あります。
1つ目は、第三者評価の義務化については賛成です。権利擁護ワーキングでも評価にて記載されている部分もあるかと思うのですが、評価の質は考慮する必要があると思っています。評価したけれども改善されないという評価であってはあまり意味がないのだろうと思っています。その辺も第三者評価の義務化と同時に話し合う必要があるかと思っています。
2つ目は、今回は「親の同意がない場合の」というところがあると思うのですが、実際に起こっている問題としては、親の同意がある一時保護がずるずると2か月、3か月、4か月と延びているということが大きな問題ではないかと思っています。その辺の改善も必要だと思っています。
先ほどの話にもありました、子供たちの権利に制限がかかっており、学校に行けないとか、友達に会えないとか、子供たちの中には誘拐されたような気持ちになったとか、一時保護について事前に教えてほしかったという声が聞かれています。「児童相談所における一時保護の手続等の在り方に関する検討会」においては子供たちの意見聴取はされていないのですけれども、権利擁護のワーキングのほうで子供の意見聴取をさせていただいている資料の中から、子供たちの声として簡単に紹介をしましたが、そちらのほうも参考にしていただけるといいかと思います。こういう子供たちの声を考えたときに、長期化というのは、本当に大きな影響を子供たちに与えることになり、大きな課題だと思っています。
最後の点です。この一時保護が、一時保護をされる子供たちや保護者にとって何の意味があるのかということを当事者の視点で考えないといけないのだろうと思っています。というのも、虐待事案が発生して、特に死亡事例だと、その後、一時保護されるお子さんが増えることがあります。子供の命を守るために一時保護をしていると思いますが、子供たちからすると、一時保護所にいるのだったら家のほうがましという子供たちも中にはいます。
子供の声を踏まえて、この一時保護は何のためにあるのか等、先ほど委員の先生もおっしゃっていただいていましたが、司法関与というのは親子にとってどのような意味があるのかという丁寧な説明は必要かと思っています。これまで、一時保護に関しては、命を守るためにとにかく保護するということが前提になっていて、前後の丁寧な説明がされていなかったと思います。今回、司法関与が入ることでそこが充実していくのであれば、とてもいいと思っています。
3点の意見でした。ありがとうございます。

○山縣委員長 ありがとうございました。
横川委員、お願いします。

○横川委員 全乳協の横川です。よろしくお願いします。
今回のテーマでは、乳児院に一時保護されている子どもさんが非常に多くなっています。平成25年度以降、措置児童よりも一時保護で受け入れる子どもさんのほうが多くなっているという状況で、平成28年度には2,644件、平成29年度には2,945件、平成30年度には3,215件、令和元年度には3,277件という形で、どんどん多くなっている状況です。
一時保護でお受けするときは本当に待ったなしで、夜中であろうと早朝であろうと、という形で入ってきているので、今回の司法審査のこの文章の中に乳幼児の一時保護の場合の想定はどうなっているのかということを感じます。
こうした取組をすることによって、待ったなしの保護を躊躇するということは絶対にあってはいけないと思っているので、乳幼児の一時保護の想定が必要との意見を言っておきたいです。また、今後、虐待対応ではなくて、虐待予防という意味で、早期発見、早期対応の産前支援のところもこれから必要になってきます。
そういった場合に、これは一時保護のお話とずれるのかもしれませんけれども、そういった母子保健と児童福祉の連携についてはどのように考えていくか、もう少し明確にしていかないといけないと感じました。
以上です。

○山縣委員長 ありがとうございました。
続いて、森井委員、お願いいたします。

○森井委員 よろしくお願いいたします。
私は全国知事会を代表して、今回の司法審査の関係について、地方公共団体の立場から意見を述べたいと思います。
資料につきましては62ページと63ページに、今回の案に対して、各都道府県に緊急的に意見を募った結果を紹介したいと思っております。
まず、基本的な立場として、一時保護の実施に当たって、司法審査の対象を拡大させることは意義があると考えておりますが、あり方検討会の取りまとめ報告にありますように、対象の拡大に当たりましては、児童相談所の実務において躊躇なく一時保護をするということと、一時保護の適正性の担保と手続の透明性を図ることが両立し得るようにその内容を決定すべきであり、かつ、児童相談所の体制整備、調査権限の強化、併せて経費負担についても対応が不可欠と考えているところでございます。
具体的には、3点の意見を申し上げます。
1点目は、司法審査拡大の対象範囲の関係ですが、私どもとしては案にありますように、親権者等の同意がある場合や、一時保護状の請求までに解除した場合については除くことが妥当と考えております。
2点目は、一時保護状の請求までの期間については、求められる疎明資料の内容によりますけれども、案にある3日ないし7日というのは現実のところ可能かどうか懸念されます。期限の設定に当たっては、先ほどの両立性が実現できるような日数を確保してほしいと思っております。
3点目、最後になりますけれども、これらを導入するに当たっての児童相談所の体制強化の関係です。資料の63ページに記載しているのですけれども、児童相談所の業務の拡大という部分でございます。国が検討会のとりまとめ資料から、親権者の同意なしで2か月を超える場合の一時保護件数が507件、親権者の同意なしの一時保護件数については8,577件、全国の一時保護件数全体で言いますと39,000件ほどという実態で、仮に親権者の同意がない場合に限定した場合でも、約17倍の業務量が増加するということになります。
一時保護の決定前後に大幅に増加する法律的な事務を、どのように実施するかについても大きな課題となります。今、申し上げたように、一時保護の同意がないとした場合でも17倍と推計されます。不定期に発生、短期間に処理を要し、業務量が20倍近くとなるような事務をどのような体制で実行するのか、また、その予算を確保するのか、全く予測のつかない状況でございます。増大する児童相談所の法律事務や経費負担等の体制整備についても、十分な協議と配慮をお願いしたいと思っております。
以上でございます。

○山縣委員長 ありがとうございました。
続いて、藤林委員、お願いいたします。

○藤林委員 私からは2点意見を申し上げたいと思います。
既に複数の委員が言われておりますように、一つは、子供が一時保護に反対している場合にも司法審査が必要ではないかということを申し上げたいと思いますし、同時に、その場合、不服申立ての仕組みが必ず必要ではないかと思いますし、その場合には、子供に適切な意見表明支援員が必要ではないかということです。
兵庫県は10月から弁護士会が意見表明支援として弁護士がつくようになっていますけれども、その制度を全国に広げていく必要があると思うのですが、多分、兵庫県の場合には、これは公費ではなくて弁護士会、弁護士さんの会費で賄われていると思うのですけれども、ここは国費、公費で行うべきではないかと思っておりますので、ぜひ、この点も十分検討するべきではないかなと思っております。
2点目ですけれども、この資料の3ページに一時保護所のことがずっと書いてあるわけなのですが、坪井委員が言われましたように、一時保護所の改革だけではなくて一時保護そのもののバリエーションとか、以前から言われている地域分散化の一時保護システムをつくっていく必要があるのではないかと思っています。
その中で一時保護所の環境整備、小規模化も重要ですけれども、専用施設であるとか、坪井委員が言われましたように里親を活用していくということも必要ではないかと思っておりますし、大分県が行われている緊急一時保護専門の里親制度というのは、私が聞いている範囲では多く活用されていると聞いておりますので、そういった制度も含めて、今後、このような司法手続を経て一時保護したけれども、とても閉鎖的で、そこに何か月もいるという環境ではなくて、一時保護そのものの環境が十分確保されていくということも、同時に進めていく必要があるのではないかと思います。
以上です。

○山縣委員長 ありがとうございました。
北川委員、お願いいたします。

○北川委員 今回の司法の介入によって、より子供の権利が守られるということが一番大事かと思って聞いていました。
あと、私のところでは障害サービスのショートステイとか、ファミリーホームで一時保護の子供を常時5、6名受け入れておりますけれども、ほとんど障害のある子のため、どうしても次の行き先がなかなか見つからないということで、長期化することが多くなっております。
具体的に言えば、今いる子はもう次の4月までいるということが決まっている子もいます。本当に子供たちの大切な命を守って、また、大切な子だよという、そのための一時保護なので、今、藤林委員がおっしゃったように、やむを得ず長期化する場合なども、そこでの暮らしがいいものになっていく必要があると思います。
子供と家族関係によっては難しいかもしれませんけれども、うちだと、ショートステイから児相の許可を得た子は学校に連れていったりします。加えて、それは許されていることではないのですけれども、障害のある子の場合は障害福祉サービスを使っている子がほとんどですので、障害福祉サービスでボランティアで受け入れているところもありますので、そういうことも学校教育だけではなくて、必要によっては障害福祉サービスも一時保護の間使えるということも考えていただければと思います。
以上です。

○山縣委員長 ありがとうございました。
相澤委員、お願いいたします。

○相澤委員 ありがとうございます。
一時保護する場合のことはいろいろ議論をされてきたと思いますが、一時保護を解除する場合です。子供が一時保護を解除されたくないと嫌がっているようなときに司法審査ができないわけで、そうすると児福審の活用をするということになるかと思います。今、大分でもモデル事業をやっていますが、子供たちが児福審を活用するのは非常に難しい状況かなと思いますので、アクセスしやすくする方法とか、そういった解除のときの在り方についてもきちんと議論をしていくことが必要ではないかと思っています。
以上です。

○山縣委員長 今の相澤委員の解除の話というのは、司法も関わったほうがいいという意味合いですか。

○相澤委員 司法が関わればいいのでしょうけれども、それはなかなか難しいでしょうから、恐らく今の制度ですと、解除を嫌がっている子供が活用できるとすると、児童福祉審議会に解除されたくないということを申し立てる、意見を言うことになろうと思います。子供自身が実際に使うとなると使いづらい、アクセスしにくいといった状況があるので、そういう意味で、きちんとアクセスがしやすいようなことについて検討して、子供の意向をきちんと尊重するようなシステムを考えてくださいということです。

○山縣委員長 ありがとうございました。
ほかに御意見はございませんでしょうか。
井上委員、お願いいたします。

○井上委員 今、相澤委員が言ってくださったので、少し付け加えたいと思います。
大分県でもアドボケイトとして、そういう状況になっている子供さんたちに、何ゆえ解除されたくないのか、子供が解除されたくないと言っているのだけれども、その後ろにある本当の意味、どういったことを子供が主張しているのかということをアドボケイトがしっかり聞いて、それを大人のルールの中の言葉で伝えていく。その言葉を伝えて、もう一度、伝えられた人が子供のほうに、こういう話になっているから、それで間違っていないかという確認をして、子供がそういうことですと言ったら初めて連携を取る。そういう流れを考えて実際にやっているのですけれども、そういったものをきちんと出していくことが大事なのではないかと思いました。

○山縣委員長 ありがとうございました。
よろしいでしょうか。
最初に奥山委員から指摘されましたけれども、私の発言がセーブさせてしまったかもしれません。その考え方はもう既に捨てておりますので、御自由にいただけたらと思います。
今日の案について、司法審査に関するところについてのみ言うと、皆さん方の御意見で、案の修正あるいは補足が若干必要かという部分は、一つは、少なくとも事前審査を原則にするというニュアンスは絶対避けないといけないということ。しかし、実質は事後審査が多くなるだろうということが分かった上で、両方があるというニュアンスをしっかり出してほしいということではないかと思いました。
2つ目は期間ですけれども、ワーキングでは3日から7日、最大1週間ぐらいのイメージの議論がされていたわけですが、今日の皆さん方の御意見では、特に現場の方々、あるいは、そこに携わっておられる法律家等の方々から、7日でも難しいのではないかという意見が結構出ていたということです。出ている数字としては、最大値は14ぐらい、あるいは14でも足りないとありましたけれども、期間について、今は○になっていますが、参考資料としてワーキングの数字が書いてあります。ここについては慎重に考えないといけないということだと思います。
ここにほとんど書かれていなかったところで、複数の委員から御指摘がありましたのが、子供をこのプロセスの中にどう関与させるかという話です。状況について聞くという話で、意見を聞くというだけではなくて、その後の状況とか現在の状況を説明するという視点からも子供をきっちり位置づけていくことが必要なのだということも、複数の委員から出ていたと思います。
この司法審査につきまして一通り皆さん方の御意見を聞きまして、幾つかの修正点が今のように感じられたということで、次回の取りまとめに向けて、また事務局で整理をいただきたいと思います。
大体、当初予定していた11時15分ぐらいになりました。
奥山委員、ごめんなさい。気がついていませんでした。

○奥山委員 座長のご発言は、子どもをどう絡めるかということの一部と考えられているのだと思うのですけれども、もともと親が反対したときという前提なのです。そこが問題であると言っているのであって、子どもをこのプロセスにどう関与させるかということも重要なのですが、それ以前に、親が反対したときだけに対象を絞っていいのかという問題です。観点が違うと思いましたので付け加えさせていただきます。

○山縣委員長 子供が求める場合ということですか。

○奥山委員 違います。子どもが一時保護されたくない場合には、親が一時保護に同意してしまっていれば司法関与にならないわけです。それが問題であると言っている話です。

○山縣委員長 横田委員、そこに関連して何か先にありますか。

○横田委員 はい。

○山縣委員長 その後、事務局で答えていただきます。

○横田委員 今、虐待の話を念頭に置いていますが、非行の場合の一時保護もあって、非行の場合は親は反対しないけれども、むしろ子ども自身が反対していることのほうが多いと思うのです。そういう場合のことも含めて制度設計をしないといけない。親は別に反対していないけれども子どもが反対しているということは、実はメインの話であるということを付け加えたいと思います。

○山縣委員長 井上委員も、もし、今のことで関連することであれば先にお願いします。

○井上委員 これは国際の方で見ていくと、子供たちの立場の考え方のところで、家族と離れて住むことを余儀なくされる子供という単元があって、この考え方というのは、子供側から考えたときに大事な言葉だと思います。ですので、そういうくくりで考えて、それをどう考えていくのかという形で整理していただけると、意味がさらに深まると思います。よろしくお願いします。
以上です。

○山縣委員長 ありがとうございました。
事務局から、現在の考え方についてお願いします。

○羽野虐待防止対策推進室長 ありがとうございました。
子供の意見をこの手続の中でどのように考えていくのかということで、多くの御意見をいただきました。ありがとうございました。
全ての論点についてお答えするのはなかなか難しいのですけれども、まず、基本的な考え方といたしまして、事務局から提案させていただいているものとしては、資料上はきちんと書き切れておりませんけれども、イメージしておりますのは、児童相談所から裁判所、裁判官にもろもろ資料を出していただくことになるわけですが、その中には、親がどのような考えを持っているのか、どのような状況にあるのかということに加えて、子供がどのように考えているか、どのような意向を持っているかということは、もちろん時間の限りがありますから限界はあるのかもしれませんけれども、できる限り情報を集めていただいて、それを裁判所に出していただくということを想定しております。
ただ、それとは恐らく別の論点だということを奥山委員もおっしゃったのだと思いますけれども、対象外としてはどうかと御提案させていただいている、親権者等が同意している場合というところの中で、親権者等が同意しているけれども、子供は同意していない場合にどう考えるのかということについては、現時点でそこを明確に決め切れておりませんで、そこは引き続き考えさせていただきたいと思っています。
以上でございます。

○山縣委員長 ありがとうございました。
どうぞ。

○松本委員長代理 時間がないので発言は控えようと思ったのですが、1点、どなたかから発言がありましたけれども、裁判所がどう捉えているかということです。司法の側の準備もとても大事だと思うのですけれども、司法の側がどう考えていて、どういう準備をして体制を整えようとしているかということについて、何か情報提供でもあると議論がしやすいのかと思うのです。福祉の側でこうしたい、ああしたいだけではなくて、司法の側がどういう体制でどうしていこうとしているのかということがもう一方でとても大事な点かと思うのです。そこでもし何かあれば、情報として共有できればと思います。

○山縣委員長 現段階でもし開示可能なものがありましたら、事務局からお願いいたします。

○羽野虐待防止対策推進室長 虐待防止対策推進室長でございます。ありがとうございます。
今日御説明させていただきましたとおり、最高裁判所、法務省とも調整をしながらワーキングで議論をしてまいりまして、このような形で資料を対応案として御提案させていただいている状況でございます。
この資料の内容につきましては最高裁判所、法務省とも調整の上で御提案させていただいているものでございますので、もちろん制度施行の段階で体制の整備などが裁判所さん側でも検討されるということになりますけれども、この内容については対応いただく前提で御検討いただくのかと思っております。
ただ、まだ制度の詳細が決まっているわけではありませんし、施行準備につきましては、当然我々もそうですけれども、児相の皆さんとも一緒に詰めていかなければいけないこともありますし、裁判所側のほうでも現場にどのような体制整備等をしていくのかということは、これから詰めていくということになりますので、済みませんが、現段階ではここまで、こういう体制で、こういうふうにやってきますというのは申し上げられる状況にはないということは、御容赦いただければと思います。

○山縣委員長 ありがとうございました。
今回の資料については裁判所、法務省も確認をした状況にあるということです。細かい設計については、当然、今後になるということでございます。ありがとうございました。
ここで一旦休憩をとりたいと思います。ただ今、私の時計では11時20分ですけれども、10分間の休憩で11時30分に再開します。皆様方の集まり具合を見ながら再開の声を掛けたいと思いますので、もし着席いただきましたらビデオをオンにしていただくとありがたいと思います。よろしくお願いします。
 
(休 憩)
 
○山縣委員長 今、私のところで顔が確認できない方が数人いらっしゃいますけれども、ほぼ全員おそろいになりましたので、後半の議論、もう一つの柱です。「子ども家庭福祉分野の資格・資質向上」について議論を進めてまいりたいと思います。
先ほどと同様、最初に事務局から説明をしていただきたいと思います。

○羽野虐待防止対策推進室長 虐待防止対策推進室長でございます。
資料2、「子ども家庭福祉分野の資格・資質向上について(案)」という資料でございます。子ども家庭福祉分野の資格の在り方につきましては、これまで審議会でも複数回御議論をいただいてきたところでございます。
2ページにつきましては、4月23日の審議会にてお示しをしたものでございます。時間の関係で、本日の説明は省略させていただきます。
3ページを御覧いただければと思います。今回、事務局案として、資格の制度の骨格案をまとめさせていただいてございます。
1つ目の○を御覧いただければと思います。新たな資格の制度設計につきましては、ソーシャルワークの共通基盤を担保した上で子ども家庭福祉分野の専門性を身につけた人材を養成する観点から、原則として、精神保健福祉士が子ども家庭福祉分野に関する上乗せの教育課程を修めた場合に認定される仕組みとしてはどうかと考えてございます。
もう少し具体的に申し上げますと、児童福祉分野の現場では、精神疾患を親が抱えるケースとか生活困窮のケースといった複雑な事案の対応が求められるところでございます。このため、児童福祉に加え、精神保健や社会福祉の専門性も必要ではないかと考えておりまして、そのような仕組みとしてはどうかということで提案をさせていただいております。なお、名称としては、子ども家庭福祉ソーシャルワーカー(仮称)とさせていただいてございます。
その下の「ただし」というところでございますけれども、児童福祉司のうち、それら2つの資格を持っている方は4割程度であるということを考慮しまして、当分の間は、4年以上の実務経験がある場合には社会福祉士・精神保健福祉士の資格を取得していなくても新たな資格を取得できることとしてはどうかと考えてございます。
2つ目の○を御覧いただければと思います。認定の仕組みにつきましては、カリキュラムの質を担保する観点から、厚生労働大臣が定める基準を満たす民間の認定機構が教育課程等を認定する仕組みとしてはどうかと考えてございます。
厚生労働大臣が定める基準の主なものをお示ししたものがその下に書いてあるところでございますけれども、この教育課程等を修了した場合には、認定機構から子ども家庭福祉ソーシャルワーカーとして認定されるという形でどうかと考えてございます。
3つ目の○でございます。子ども家庭福祉ソーシャルワーカーについては、児童福祉司の任用要件を満たすものとして、児童福祉法上位置づけるとともに、その教育課程等については、児童福祉法に基づくものとして厚生労働大臣が定めるということとしてはどうかと考えてございます。
4つ目の○を御覧いただければと思います。新資格の現場への任用が進むように、児童相談所のスーパーバイザーになりやすいという仕組みとすることでありますとか、施設等に配置するインセンティブについても検討してはどうかと考えてございます。
最後の○でございます。職能団体におきまして、新たな資格の上級資格を認定することも検討していると伺ってございます。仮にそれらの上級資格ができた場合には、児童相談所のスーパーバイザーに任用するということが望ましいという考え方を示すことも考えられるのではないかと思います。
4ページは、子ども家庭福祉ソーシャルワーカーの養成課程のルートのイメージをお示ししたものでございます。
下に5つのルートを書いてございますが、真ん中のマル3、福祉系大学等のルートを御覧いただければと思います。社会福祉士・精神保健福祉士の科目履修に加えまして、子ども家庭福祉専門科目を500時間程度履修していただいた上で、社会福祉士・精神保健福祉士の国家試験を合格した場合には、新しい資格として認定されるとしてはどうかと考えてございます。
これに加えまして、左側のマル2の現任者のルートにございますけれども、子ども家庭福祉分野の相談援助の実務経験が4年ある方でありますとか、さらに左のマル1、既存の有資格者が子供を含めた相談援助の実務経験を2年程度有している場合には、100時間の研修を受けた上で子ども家庭福祉ソーシャルワーカーとして認定されるということにしてはどうかと考えてございます。
5ページを御覧ください。本審議会での議論の参考にしていただきたく、子ども家庭福祉専門科目の構成を、大まかにカリキュラムのイメージをお示ししたものでございます。カリキュラムの詳細につきましては、施行までの間に別途有識者検討会等を立ち上げて検討するというのが基本でございますので、あくまで議論の参考ということで御覧いただければと思います。
6ページを御覧いただければと思います。これまで御議論いただいている中で、いわゆる上乗せ型と独立型の2つの考え方を御議論いただいてきたところでございます。今回は事務局案として、いわゆる左側の上乗せ型をベースとして御提案させていただいているわけでございますけれども、専門科目の時間数である300時間につきましては、右側の独立型の資格とした上で、仮に精神保健福祉士と同等の資格課程とした場合と同程度の時間数を確保したという考え方で、300時間を仮に置かせていただいているということをお示ししているものでございます。
7ページは、現任者ルート等で受けていただく研修のイメージをお示ししたものでございます。100時間程度受けていただくということをイメージしておりますけれども、下に表というか図がございますが、100時間程度というところの左に、70時間程度、30時間程度とございます。30時間程度のところを御覧いただければと思いますが、児童福祉司については30時間程度、任用後研修と重複があって、置き換え可能と整理することができるのではないかと考えています。
そのように整理しますと、100から30を引いて、70時間程度の受講ということになるのではないかと考えてございます。ただし、たとえ70時間程度やったとしても、既に現場で多忙な中、研修を受けていただくということになりますので、業務との両立の面でも負担が大きいと考えられますので、上の箱の中の3つ目の○に書いてございますけれども、オンライン授業でありますとか、eラーニング、レポート審査など、そういった工夫も必要ではないかと考えてございます。
8ページを御覧いただければと思います。資格以外の人材養成とかキャリアアップに関する取組についてまとめたものでございます。
(研修の充実等)の下の〇でございますが、研修・人材養成の充実が必要でございます。ここに書かせていただいておりますとおり、虹情報研修センター、西日本子ども研修センターあかし、自治体、各施設等における研修を適切に実施していくとともに、スーパーバイザーの研修についても令和4年度から任用前研修となりますので、着実にそれらの研修を実施していく必要があるのではないかと考えてございます。
その次の○でございます。自治体によってノウハウの蓄積度合いが異なりますので、2つ書いてございますが、ブロック単位での事例検討を中心とした研修会ですとか、他の自治体の児相に職員を派遣して行う取組についても進めていく必要があるのではないかと考えてございます。
その下の○につきましては、基礎自治体である市区町村の職員の専門性についても向上を図っていく必要があるのではないかと考えてございます。
その下の(キャリアパス等)と書いてあるところでございます。その下の○でございますが、児童相談所や市区町村の職員というのは地方公務員ではございますけれども、福祉専門職の採用を定着させ、専門性を生かしていく人事システムを構築していくことが重要と考えてございます。国のほうで自治体の実態について把握させていただいて、好事例の横展開をできればと考えてございます。
その下の○でございます。民間の施設等との人事交流や実地研修なども重要と考えてございます。この点についても、好事例の横展開を検討したいと考えてございます。
最後の○でございます。人材養成に加えまして、当然、児相等の体制強化についても必要だと考えてございます。今、児童虐待防止対策総合強化プランに基づいて体制強化を図っておりますけれども、引き続き国の支援が必要なのではないかと考えてございます。
以上でございます。

○山縣委員長 ありがとうございました。
前段と同じように、自由に手を挙げる機能を使っていただいて御発言をよろしくお願いしたいと思います。
奥山委員、よろしくお願いします。

○奥山委員 ありがとうございます。
まず、取りまとめの中に、4ページから8ページにデメリット、メリットというのを、2つの案について書いてあるのですけれども、それに関して、今回事務局に出してこられた案が、子どものために必ずこちらがいいのだという理由が全然分からないのです。見えてこないのです。大人の議論は要らないのです。ここで必要なのは、子どもの側の理論です。子どものために本当にどれがいいのかという視点で、どうしてこれが選ばれたのかということを明確にお答えいただきたいというのがまず1点です。
私から見ると、既得権のある既成の資格を優先しているとしか、見えてこないです。それ自体が、本当に子どもを中心に考えられているのかというところで、私は非常に疑問を持っています。
その中でもう一つ大きいのは、機構ということは、国家資格ではなくて民間資格にするということなのですね。国家資格ではないものが、あるいは、公的資格ではないものが、いずれ、法律の中にきちんと任用条件として位置づけられるのかというところが問題です。まずは、任用要件として位置づけるというのはどうかと事務局案では言っておりますけれども、本当に法律に書いてある事例があるのかです。ここは事務局ではなく法制局にお答えいただきたいと思います。内閣法制局にダイレクトにお答えいただきたいです。そこが崩れたら砂上の楼閣ですから。そういう意味で、しっかりとそこが担保できるのだということを私たちに法制局からダイレクトに明確に示していただきたいと思います。
そして、任用要件の中でも、この資格ができたらトップに入るべき資格なわけですね。ですから、当然、省令で何とかというわけにはいかないのです。法律の中にトップの資格としてきちんと入れることができるのかどうか、任用要件の資格として入れるのかどうか、最終的にはこの資格が条件として、法律上明記できるのか、そこがとても重要だと思うので、そこはきちんとしていただきたいと思います。
例えば、機構がやるということは、私はおかしいと思っているのです。本来は国家資格のほうがいいと思っています。国家資格だったら国家が、万が一機構が出す資格でも任用要件又は条件として法律に載せられるのだということだったとしても、機構が試験をしないということ自体はおかしいです。寝ていても通るような、そして、大学によって試験には差がありますから、この大学の試験を通った人と、こちらの大学の試験を通った人と、どちらがいいのという話になるのはおかしな話です。統一した試験が必要だと思います。
その統一した試験をきちんとした上で、個人の能力がある程度担保されることが必要であって、そのことなしには任用要件にはならないと思います。
次の論点ですけれども、精神保健よりは子ども家庭福祉の方がずっと広いのです。広いもののベースの上に狭いものが乗るなら分かります。しかし、狭いものの上に広いものを乗せてどうなるのでしょうか。
例えば、ある先生がおっしゃいましたけれども、精神科をとっていなくては小児科できないと言っているようなものなのです。そんなことあり得ないのです。
子ども家庭福祉の広さを考えれば、講義も実習も精神保健福祉士よりはずっと多いものでなくてはおかしいのです。ですから、ベースのものがあった上で、精神保健福祉士より少ない時間でなれるなどあり得ない話です。今の社会福祉士の資格というのも、どちらかというと高齢者福祉にかなり偏っていると私は見ています。高齢者福祉というのではなくて、基礎全部をきちんとできるような資格があって、その上の乗るなら分かるのですけれども、高齢者福祉に偏ったものを勉強してからではないと子ども家庭の福祉が勉強できないというのは、それもまたおかしな話だろうと思います。
逆はありだと思います。子ども家庭福祉を学んだ人が精神保健福祉を学ぶとか、高齢者福祉を学ぶとかというのはあってもいいかもしれませんけれども、とにかく専門性としては、まずはベースの全部のジェネラルがあって、その上に精神、子ども家庭、高齢と乗るなら分かります。しかし、そうではないこの考え方自体は、本当に既成の資格に配慮しているとしか思えません。
もう1つ大きな違いは、今の社会福祉士の資格を見せていただくと、かなり制度論が中心になっています。子ども家庭福祉に重要なのは臨床ソーシャルワークです。臨床ソーシャルワークをきちんとやれるような形にしていくということは、実習も必要なわけです。ここで先ほど500時間担保しましたと言っていますけれども、△と※を抜くと180時間です。180時間で本当にいいのですか。子ども家庭福祉を学ぶことができる時間ではありません。非常におかしな話で、690時間の精神保健福祉士に比べて、180時間でとれるのですかという話です。
そういうまやかし的なものはやめてほしいと思いますし、除外などということはあり得ないと思います。その一つとして、題名が同じだとしても、家庭のことを制度論で学ぶのと、臨床ソーシャルワークで学ぶのはかなり違いがあると思います。本当に臨床ソーシャルワークに役立つ勉強をしていただかなければならないわけです。このカリキュラムを作っていただいたら、仮だとおっしゃるのでしょうけれども、本当に必要なものが非常に抜けているのです。ですから、そういうものだけで賄うということはできないと思います。
最後ですけれども、これも既存の資格にすごく配慮し過ぎだと思うのですけれども、例えば、社会福祉士・精神保健福祉士というスペシャリティーのある方は、上に百何十時間でできます。逆に、子どものことはすごく勉強していますけれども、ソーシャルワークを勉強すれば子ども家庭福祉の仕事ができますという人たちもいます。例えば保育士とか、母子保健を担当している方とか、そういう方々が、社会福祉士や精神保健福祉士を取ると回り道をしなくても、その資格を取れるルートもずっと常設の形でとれるような形にしなければいけないと思います。事務局案では最初の数年だけということになっているので、問題だと思います。
最初に申しましたように、国家資格化というのが本来は必要だと思っていますので、今の形自体が私は受け入れられないものだと思います。

○山縣委員長 ありがとうございました。
最初の部分に大きなポイントが2つございましたけれども、事務局のほうで、現段階でいただければと思います。

○羽野虐待防止対策推進室長 虐待防止対策推進室長でございます。最初に御質問いただきました2点についてお答えしたいと思います。
1つ目が、子供のために、どういう理由で、今回、事務局案としてこのような形になっているのかというところでございます。冒頭に申し上げたつもりではございましたが、この資料の3ページの冒頭にも書いてございますけれども、ソーシャルワークの共通基盤を担保した上で、子ども家庭福祉分野の専門性を身につけた人材を養成するという観点から、このような形で御提案させていただいております。

○奥山委員 それであれば、共通項目をやった上で、精神保健福祉士と同じように乗っかれば同じことではないですか。なぜ、よりスペシフィックな精神というものを下に置いて、その上に子ども家庭を乗せるのか。先ほど親に精神的な問題があるっておっしゃいましたけれども、精神保健福祉の分野というのは精神科医療に関わっています。ですので、ほとんどが統合失調症であるとか鬱というものに対してのリハビリであるとか、そういうところにかなり専門的に関わっておられるわけです。しかし、子ども家庭福祉をやっている皆さんは御存じだと思いますけれども、そんな明確な、統合失調症だとか鬱とかはっきりしたものではなくて、人格障害とか、精神科医療ではなかなか扱い切れないものを扱わなければならないのです。精神保健福祉士だから全部分かりますというものではありません。ましてや、精神保健福祉士をやるということは、メディカルモデルから入っていくわけです。子ども家庭福祉がメディカルモデルの上に成り立つということはあり得ない話だと思います。

○羽野虐待防止対策推進室長 2点目をお答えさせていただきます。
民間資格を任用要件に法律上位置づけるということは果たして可能なのか、法制局との関係はという御質問をいただいております。
まず、前提として申し上げさせていただきたいのは、内閣法制局との関係につきましては、通常、この審議会に限らず政府が審議会の御意見をいただいて法律案を固めていくときの一般的な手続でございますけれども、この審議会で大きな方向性について取りまとめていただきまして、その内容を踏まえまして政府で法律案を作成しまして、その作成過程で内閣法制局の審査というかアドバイスというか、そういったものをいただきながら法律案としてつくっていくということでございます。

○奥山委員 それでは、ここで、民間資格で任用要件として法律に書き込めるとみんなが考えて、結論を出して、それが先へ行って、できませんという話になるのでは問題です。そこには、そういうふうに考えたらどうかと事務局が書かれているではないですか。しかし、それが先に行ってできないということになったら、この構造はもうがたがたに崩れるわけです。
まず、できるのかできないのかを、法制局からきちんとダイレクトにお答えがほしいです。そうでなければ議論ができないと思います。

○羽野虐待防止対策推進室長 内閣法制局との調整につきましては、政府部内での調整ですので、ある程度事務局にお任せいただきたいと思っていますけれども、当然、内閣法制局とは、我々事務局のほうで、この審議会での御議論と並行して法制化の準備の作業を進めておりますので、その相談過程で随時条文化作業の意見もいただきながら進めているということです。その条文化作業の進捗を踏まえまして、このような形で書かせていただいているところでございますので、そのようなことで御理解いただければと思います。

○奥山委員 私は事前説明の時に、できるなら、前例を出してくださいと言ったはずなのですけれども、あるのであれば条文を見せてください。

○羽野虐待防止対策推進室長 条文といいますか、今、当然、児童福祉法改正に向けた検討を進めているわけでございますので、その条文化の作業は進めているということです。

○奥山委員 違います。それを言っているのではありません。これまでに、民間の資格が法律の中できちんと任用要件として取り扱われている前例があるというのであれば、出してください。それがないということは、できないということがあり得るのです。
心理の資格をつくるときに大変だったのです。法律の中に組み込めないのだというのがあって、国家資格、国家資格と言っていたわけです。国家資格ではない民間資格が法律の中にきちんと任用要件として位置づけられている例があるのだったら、それを出してくださいと言っているのです。今、これからやるものを出してくださいと言っているのではありません。

○羽野虐待防止対策推進室長 任用要件を民間資格について、法律上裸で何か書いているという例があることを我々が承知しているわけではございません。しかしながら、法律上きちんと根拠を設けて、それで何らかの形で法令上規定することは考えられるのではないかということで、我々は検討作業を進めております。

○奥山委員 何らかの形というのは、どういう形ですか。先ほど言ったように、任用要件の中でこれが一番重要な要件になるわけです。それに関して、本当に法律にダイレクトに、きちんと明確に位置づけられるのかどうかを明確にしてください。

○羽野虐待防止対策推進室長 そこにつきましては、繰り返しで恐縮ですけれども、審議会での御意見をまとめていただいた後でというか、若干並行しますけれども、内閣法制局との調整を経て、法技術的な書き方については検討していくことになりますので、ある程度、そこは事務局にお任せいただくということを御容赦いただければと思います。

○奥山委員 任せたら、できなかったら終わりではないですか。それでは任せられません。

○羽野虐待防止対策推進室長 ですので、事務局として責任を持って、ここに今、書かせていただいておりますけれども、任用要件として法令上児童福祉法で位置づけるということでどうかと事務局は考えておりますし、その方向で内閣法制局と調整しておりますということでございます。

○奥山委員 法律上絶対できると考えていいのですね。

○羽野虐待防止対策推進室長 そこは内閣法制局と調整しているというところだけ、お答えさせてください。

○奥山委員 調整中ではまずいでしょう。絶対できるという担保がほしいです。

○羽野虐待防止対策推進室長 そこにつきましては、繰り返しで恐縮ですけれども、内閣法制局とは調整中でございます。

○奥山委員 それでこの議論をしろというほうがおかしいです。

○羽野虐待防止対策推進室長 ですので、繰り返しになりますけれども、審議会で御議論いただいて、その後、政府部内で法律改正の作業を進めます。基本的にはその順番で進めさせていただくのが通常でございますので、その範囲で、ある程度政府部内の検討はお任せいただきたいということでございます。

○奥山委員 それを考えるとすごく曖昧ですので、国家資格でなければいけないと私は思います。

○山縣委員長 ありがとうございました。奥山委員の御意見は、国家資格ということで、最後の部分は引き続き事務局のほうで、法整備において入れる方向で調整いただくということでよろしくお願いしたいと思います。
続きまして、安部委員、お願いいたします。

○安部委員 ありがとうございます。構成員意見を出しているので、それを見ていただければと思います。
私も以前は国家資格だろうと思ったのですけれども、原案を見て、これでもいいのかと思いました。その理由は3つあります。
1つ目は、研修内容が国家資格と同程度担保されているということです。
2つ目は、実務者ではなくて新規の場合に、社会福祉士、精神保健福祉士というソーシャルワークの国家試験を合格することで資格を得られる。その上の専門資格です。
3つ目は、実務経験へもソーシャルワークに関する研修を課しているということです。これによって、ソーシャルワークができて、子ども家庭福祉に関する専門知識の技術を持つ人材の養成ということの制度をつくった目的については、クリアできるのではないかと思いました。
2つ目ですが、たたき台と言われましたけれども、ここは奥山先生と同じで、思いつくままに書きましたけれども、専門科目についてはもっとこのような科目も必要なのではないかと思ったところです。
3つ目は、実務経験の話です。実務者の100時間の中の30時間は児童福祉司任用後研修で代替できるというのがいいかと思いました。残り70時間についても、児童福祉司任用2年目、3年目のステップアップ研修という位置づけで可能にしてはどうかということです。現状では任用研修からスーパーバイザー事前研修までの間に何もないのです。しかし、実務的には多くの自治体で独自の研修をやっていますので、それを70時間全部するかどうかは別ですけれども、そこに組み込むということが容易だと思います。
これらの研修を、任用後研修も含めて、市町村の職員だとか施設職員に開放するということを通して、子ども家庭福祉分野の職員の資質の向上に資すると思いました。
人材養成、キャリアパスのところで、都道府県等の責務としてはどうかと思いました。都道府県、政令市の児童相談所だけではなくて、子ども家庭福祉分野の体制整備、人材育成ということを、都道府県全体のシステムづくりだとか人材養成というのを、都道府県の責任で行うと明記してはどうかと思ったところです。
以上です。

○山縣委員長 ありがとうございました。
続いて、倉石委員、お願いいたします。

○倉石委員 ありがとうございます。御発言の機会をいただきまして感謝いたします。会議には毎回出席できず、大変申し訳ございません。
私は「地域における保育所・保育士等の在り方に関する検討会」の立場でこちらに参加させていただいております身分でございますが、今回の資格化のことにつきましては、社会福祉士、精神保健福祉士の養成校の立場から、4点発言をさせていただきたいと考えております。
まず、国家資格の考え方です。これについては議論されていることかと思いますので、改めてですが、福祉系の国家資格化に関する問題です。これは人々の権利を擁護し、生活を支援するというソーシャルワークの理念からも、大学4年間の養成課程からも望ましくないと考えています。
ソーシャルワークの隣接領域では、看護資格を基礎とする保健師が一本化されて、地域保健、母子保健、精神保健、介護分野と、ライフサイクルに応じた専門性を持ち、幅広く活躍しています。社会福祉士、精神保健福祉士以外の分野別の国家資格を新設するのではなく、現在の国家資格の専門性を高めていくべきであると考えております。
2点目です。仮称ですが、子ども家庭福祉ソーシャルワーカーの専門科目についてです。これにつきましても今、安部委員がおっしゃいましたけれども、現在の養成課程に関してカリキュラム改定を目指すということが最も重要なのではないかと考えております。仮に上乗せ科目をつけていくということになりますと、必要な科目は家族力動と家族アセスメントで、家族に関するしっかりとした臨床知識を学べる、もしくは技能を学べる科目が必須と考えています。
これにつきましては、奥山委員も先ほどから繰り返しおっしゃっておられますように、家族全体を取り巻く、家族ダイナミクスということを臨床的にしっかりと行える技能を身につけるということでも必要であると考えております。
3点目です。上乗せ型というのを事務局で提案をされましたが、こちらのほうは現実的に賛成いたすわけですが、その理由です。
養成校の立場から申し上げますと、社会福祉士の専門性を高めるには、仮称ですけれども、子ども家庭福祉ソーシャルワーカーを認定資格とし、今の議論で多くの課題があるということは十分認識させていただきましたが、将来的には社会福祉士養成課程のカリキュラム改定に結びつけるべきと考えております。
3つの国家資格対応のカリキュラムを配置しましても、学生の動向は、社会福祉士プラス精神保健福祉士、あるいは社会福祉士から今回新設されました子ども家庭福祉士の2資格取得が多くなると予測されます。
特に現場に出たときのことを考えますと、前者の社会福祉士、精神保健福祉士の2資格の資格希望者に偏重することが予測されます。その理由ですが、社会福祉士、精神保健福祉士は就職先として障害、高齢を含むことになりますが、児童分野は就職先が限定されるおそれがあります。資格取得を目指す学生の国家試験合格に力を注ぐ各養成校は、大学認証評価の対象となるCAP制の問題もあり、現状の2資格の養成で手いっぱいの状態です。
学生のキャリア支援の観点からです。よい人材を輩出することが養成校の使命でございますが、子ども家庭福祉士を取得しても、就職先のメリットが2資格に比べて低いと感じております。
その理由ですが、行政機関ではオールマイティーのソーシャルワーカー機能が期待されており、高齢障害分野の基礎資格を有する社会福祉士、精神保健福祉士は活躍できるメリットが高いと考えています。子ども家庭福祉士として行政機関に採用された場合、これはもう議論されていることですが、児童分野で適用できない場合にほかの分野での活用が難しくなるということがございます。これは今回、全国都道府県知事会の意見書にも明示されていることです。
また、資格化を厳重にすることによって公務員採用の間口を狭め、人材の取り合いが生じるのです。これは自治体で現在もう生じております。かえって望ましい人材を採用できなくなるというデメリットが生じることが予測されます。
最後です。長くなって恐縮です。
社会福祉の国家資格の理念から申し上げますと、社会福祉士を基礎資格とし、高齢分野は介護福祉士、障害精神分野は精神保健福祉士、児童分野は児童家庭福祉士とすべきですが、これが健全な資格体系であると考えております。
しかしながら、社会福祉系の国家資格の在り方については別の場で協議すべきことであり、その方向性は不透明なままです。したがって、今回の児童福祉専門職の資格化については、任用資格のほうで、現実的な観点から上乗せ型が望ましいのではないかということで意見を述べさせていただきました。
長くなりましたが、以上でございます。

○山縣委員長 ありがとうございました。
平井委員、お願いいたします。

○平井委員 ありがとうございます。
私は現場サイドからの意見として、1つだけ申し上げます。
4ページのマル1の有資格者のルートと、マル2の現任者のルートの部分なのです。「子ども家庭福祉分野の相談援助の実務経験」と記載されてあるのですが、相談援助となると、ある意味、こちらの現場サイドからすると、児相とか児家センといったソーシャルワークの経験と捉えてしまうのです。
現場で一線でやっているベテランの職員さんも、期間的職員とか、FSWとかも、ある意味ソーシャルワークもやっているわけなのです。そういった意味では、相談援助の実務経験となると幅がすごい狭くなってしまって、現場の本当に一線でやっている方々で、こういう資格ができるのであれば取りたいということで考えてみる方もいらっしゃると思うのですね。そこで、ここの相談援助というところを、現場の方を少し見ていただいて、経験年数の辺りも考えていただければいいのかと私は思います。
以上です。

○山縣委員長 ありがとうございました。
畑山委員、お願いします。

○畑山委員 ありがとうございます。私から2点あります。
子ども家庭福祉ソーシャルワーカーの制度の骨格がどういう形になっても、養成課程の体制をつくっていくには、そして、資格を取得して認定されるには、すごく時間を要していくのかと思います。
子供たちは現在も専門性を持った職員からのケアを必要としているので、早急に子供たちに還元されるようなものだったらいいと私は思っています。この点については、現在も思いを持って子供たちに関わってくださる方が、子どもの家庭福祉ソーシャルワーカーの資格の取得し、すぐに現場で活用していける現任者ルートがあることはすごくいいと思います。
1点目と関連していますが、児相のケースワーカーの異動の多さという点においては、1年ごとに子供たちの担当が替わってしまったり、公務員ということもあって、全く違う畑から異動があったり、違う畑への異動があったり、そういった現状があるかと思います。この子ども家庭福祉士ソーシャルワーカーの資格を持った人が児童福祉の分野現場で働き続けられるような、子供たちに対して現場のほうで思いを持った職員にとっても、現在のような人事異動を止められるようなものになってくれたらいいと思います。
質の担保という点において、資格だけではなく、この資格を取得した者が働き続けられるような仕組みを一緒に検討していただきたいです。
以上です。ありがとうございました。

○山縣委員長 ありがとうございました。
坪井委員、お願いいたします。

○坪井委員 坪井です。ありがとうございます。
今回、新しく提案のあった子ども家庭福祉ソーシャルワーカーについてですけれども、全体的によく考えられた制度だと感じました。4月の時点で提案いただいていた、全く新しい国家資格をつくるという案は、それも子どものことを一生懸命考えた提案だと感じていました。
一方で、その提案を伺ったときに、気になることが2つありました。
一つは、時間がかかる部分です。これは今、畑山委員も触れられましたけれども、その間に救わなければいけない子どもがたくさんいるのです。そこが1つ目の気がかりな点でした。
もう一つの点は、有資格者をどのように増やしていくのかです。そうでなくても、人手が足りなくなっていくというのが私たちの未来だと思うので、その中で福祉を目指す人だけがぐぐっと増えていくのだったらいいのかもしれませんけれども、なかなかそのような想定もできないと思いますので、どうやって関わってもらう人を増やしていくのかという点が気になりました。
この社会福祉士の制度が1980年の後半ぐらいに制定されて、その当時、福祉の対象者といえば高齢者という時代からずっと続いてきているわけですけれども、一方で、この10年、ようやく社会福祉の対象として子どもにスポットライトが当たるようになったと思います。もちろん、まだまだ高齢者の福祉に関わる方が多い現実があるのですけれども、この4月に新しい提案をされたときにこういう記載があったと思います。
即ち、子ども家庭福祉は、自ら意見表明をすることが難しい子どもへの支援、家庭全体を捉えた虐待予防、親子分離を伴うような保護者などへの介入的なソーシャルワーク、そういった専門性が必要とされる分野なのだが、既存のソーシャルワークの資格の養成課程ではそうした分野の学びが十分ではないのだということを指摘されていたと思います。その部分は引っかかりました。というのは、時代がめぐって、高齢者だけではなくて障害者、子供というふうに福祉の対象が広がってきたのに対して、もし既存の制度に足りていない部分があるのだとしたら、それは制度そのものの問題というよりも、制度を育てる側の問題なのではないかと感じたのです。言い換えたら、私も含めた、ここに集まっている面々の仕事が、すなわちこの制度をつくったり、評価したり、そういうことをする立場の人間の仕事が足りていないのではないかと感じたわけです。
社会福祉士の養成カリキュラムそのものも時代とともに変化しているわけですけれども、それで不十分なのだとしたら、一層のステップアップをやることが必要なのだという状況なのではないかと思いました。
逆に言ったら、どのような制度も、つくってあげたらそれでいいということではなくて、時代の変遷に応じて変化させなければいけないと感じています。
今回提案されている制度も、つくればよい、あるいは、つくれば問題が解決されるのだというのではなく、つくった後のフォローをしっかりするということこそが、この制度に命を吹き込む決め手になるのではないかと感じました。
今回提案いただいている制度について、さらにこうしていただきたいということについて述べたいと思います。
4ページに資格取得のプロセスの図がありますけれども、実務経験者のコースについて、子どもの家庭福祉分野の経験が4年間に限定されている状況があります。先ほど平井委員もおっしゃいましたけれども、ここがあまり限定的にならないようにしてほしいし、あるいは、大学を経て資格を取っていくところについても同じようなことを言えるのですけれども、特に経験者がここでどのように活用されるか、活躍できるようにするかということについては、先ほどの平井委員の意見に加えて、従来、高齢者あるいは障害者の分野の経験を積んできた方も、もっとここに入ってこられるような制度に検討してもらえたらいいのではないかと思います。
そういう意味では、奥山委員もおっしゃっていましたけれども、パーマネントな制度にするというところも含めて、制度設計がとても大事なのではないか、どうやって子供の福祉に資する資格を持っている人を増やしていくのかということについて、ぜひ検討してもらえたらいいのではないかと思います。
高齢者の福祉というと、地域包括支援センターという制度が今、高齢者を支える基本になっていると思うのですけれども、これが日本全国辻々にあって、皆さんがアクセスしやすいようになっているすばらしい制度だと思います。
それと同じように、子どもや子育てをする親を辻々で支援する、辻々で支援が受けられるというシステムを、子どもあるいは子育てをするところに供給できるような制度をつくっていくのを日本も目指したらいいのではないかと思います。誰もが子育てをして幸せを感じられる、そのようなまちづくりを目指してほしいと思います。
以上です。

○山縣委員長 ありがとうございました。
引き続き、中村委員、お願いいたします。

○中村委員 よろしくお願いします。
3点あります。1点目は、上乗せ案の部分で、私は社会福祉士ですけれども、社会福祉士の専門科目と精神保健福祉士の専門科目は土台が一緒ですけれども、カリキュラムの中身が結構違うのに、単純に上乗せしてしまうというのは乱暴なのではないかと思っています。上乗せ案をするなら、この資格の部分とカリキュラムの内容に沿ってということなので、中身が違うのにこの参考時間数が同じなのはびっくりしました。そこはこれからの議論になるかもしれないですが、引き続きカリキュラムの内容の部分は検討が必要だと思います。
2点目は、先ほどの畑山委員と同じ意見になりますが、公務員だと転勤があったり、現状だと全然親子とか子供に関わったことがない方が児童相談所に来られる自治体もあると思います。その中で、質の担保が必要なのではないかという議論はこれまでもされてきたかと思っています。資格化ももちろんなのですけれど、もう少し広い枠組みも考えていただきたいと思っています。
資格を持って公務員として働きたいのか、それとも、子ども福祉に関わりたいのか、学生さんの思いも重要かと思っています。特に親子が相談するときに、全く子育てとか家庭福祉とかを知らない人に相談するよりは、専門的に学ばれた人に相談したいと思いますので、相談を聴く人の専門性の担保は重要かと思っています。
3点目は、この上乗せ案も国家資格案もすごく難しい議論だと思っています。今すぐに改善したいというときには、この上乗せ案の方が実現が早いだろうということで、提案されているのかと思いますが、児童虐待は社会問題ですので、子ども家庭福祉士というものがこの国に必要なのではないかとか、将来的なビジョンを見据えて、段階を踏んで、何年後かには専門的な資格をつくっていくという議論がされないといけないのではと思います。取りあえず今、提案している内容が出たからこれで終わりということではないのではと思っています。
私は、子ども家庭福祉を学びたくて福祉の養成校に入ったのですが、そんなに子供のことを学べなかったという経験もあるので、もっと子供のことを学べるようになればいいなと個人的には思っています。
以上です。ありがとうございます。

○山縣委員長 ありがとうございました。
続いて、浜田委員、お願いいたします。

○浜田委員 資格・資質向上の話については、以前の専門委員会の頃から、例えば、何らかの取得をした人にインセンティブがあるような制度でなければならないのではという意見を申し上げてきました。それは、結局のところ、今やっている人、また、これから先やろうと思う人に、ここに魅力を感じてもらわなければ、そもそものスタートラインに立たないと思うからです。
そういった意味で考えたときに、先ほど倉石先生が養成校のお立場から、このようなパターンになるのではないかとおっしゃいましたけれども、そういったところは非常に大事な視点なのかと思います。
要するに、それが上乗せであろうが国家資格であろうが、選んでもらえないと意味がない。これだけ若者が減ってきているという中で、選んでもらえる制度という、何か本末転倒なのかもしれません。資質向上という点からは、高い理想を掲げて、おまえら、ここまで上がってこいというのが本来的な姿なのかもしれませんが、その結果、誰も資格を取りませんでしたではもう目も当てられないのです。
そうなると、裾野を広げるというところとうまくバランスを考えなければならないという気がいたしております。そういった意味でいくと、人に選んでもらいやすい制度はどちらだろうかという観点がここでは必要なのではないかということを一つ思っております。
ただ、私は社会福祉士も精神保健福祉士も養成課程について詳しく知っているわけではないので、先ほど中村委員からありましたとおり、結構違うという話になると、上に乗っていていいのかとなると、俄然どきどきしてくるわけですけれども、いずれにせよ今、申し上げたようなところで、ほかの業種ではなくて、この分野に関心を持って、それですっと入っていけるという制度、その入りやすさの観点もこの議論の中では検討がなされるべきではないのかと、感想程度で申し訳ありませんが、意見を述べさせていただきます。
以上です。

○山縣委員長 ありがとうございました。
藤林委員、お願いします。

○藤林委員 少し長くなりますけれども、そもそもこの議論をどのように進めていくのかというところから入っていきたいと思います。
皆さん、お手元に参考資料3をお持ちと思うのですけれども「今後の基本的な議論の方向性」と書かれていて、8ページの基盤のところです。「(1)人材」の2番目の○です。「その子ども家庭福祉分野の専門的な支援を行う者の資格のあり方も含めた資質向上策について」、要するに、取りまとめにのっとって検討を進めるべきだと書いてありますので、ここでの議論は、令和3年2月2日の取りまとめをベースに話していかないといけないのではないかと思っています。
そこのところが、今日お配りいただいた資料2の2ページの「基本的な考え方」が、必ずしもこの取りまとめにのっとっていないというところが気になるところです。どこがのっとっていないのかというところを説明いたしますと、参考資料5が配られていると思いますので、それを御覧いただきたいと思うのです。
3ページの上から5行目で「研修を修了するだけでは専門的な知識・技術や専門家としての態度を養成するには不十分であり、また有している専門性が客観的に明らかにならず、専門職としてのキャリアパスも構築しにくいといった限界がある。このため、中長期的な資質向上を見据え、専門性を客観的に評価し担保できる仕組みとして資格の創設を検討すべきである」という文言があります。
同様の文言は4ページにもあるわけですけれども、私の構成員提出資料の37ページを御覧いただきたいと思います。意見をるる述べているわけなのですけれども、1点目に、ここでどのような方向で議論していくべきなのかというところで、抜けている視点として、太字で書いておりますように「専門性を客観的に評価し担保できる仕組み」が重要であって、本当に我々がここで議論して目指そうと思っている子ども家庭福祉分野のソーシャルワーカーの資格が、客観的に評価されるようなものなのかが重要な議論かと思います。ここを押さえておきたいと思いました。
37ページの下ですけれども、「本委員会は、『とりまとめ』に則って検討を進めるべきである」と書いてあるわけですから、ずっとワーキンググループのときから議論になっていた、認定資格にするのか、国家資格とするのかというところを、本当は今日の場で、子供の視点に立ったときにどちらがあるべき姿なのかということを議論するべきなのですけれども、残念ながら厚労省の事務局から出たたたき台が、認定資格をたたき台にして議論してくださいというのはちょっとフェアではないと思うのと、本来は双方のメリット、デメリットといったものが十分議論されるようなたたき台であってほしいと思っています。
一方で、各委員の意見を聞いていますと、例えば畑山委員、坪井委員、中村委員が言いましたように、早急にこういった専門資格ができてほしいという意見にも耳を傾けるべきとは思うのですけれども、あまりにも急いでインスタントなものになってしまうと、それは全く今までの議論が無になってしまうということも考えざるを得ないかと思います。ここは本格的なものを目指していくということが必要かと思います。
中村委員が言われたように、段階的に作っていくというのもあり得る選択肢かもしれませんけれども、1段階進んで、そのまま20年塩漬けということも有り得るのではと考えると、ここは私としては本格的な資格をまず進めていくべきではないかと思います。
ただ、認定資格と国家資格でどこが違うのかということを考えますと、38ページの上から4行目に書いていますように「認定資格は、『とりまとめ』における客観的に評価し担保できる仕組みに該当しない」と考えているところです。
あまり長く話すとほかの方が意見を言える時間がなくなってしまいますので、次に行きます。39ページです。ここは奥山委員が言われていましたように、一見、500時間程度と書いてあって、すごいと一瞬思ったのですけれども、よく見ていくと足らないわけなのです。これは資料2の5ページを見てもらうと、子ども家庭に関する科目の児童というところを数えてもらうと180時間です。精神保健福祉科目の専門科目は、これを足していきますと300時間です。実習、演習も明らかに違います。
児童の、子ども家庭福祉の専門性を持った資格を考えていこうというときに、精神よりも半分ぐらいで足りるはずがないのです。私は精神科の医師ではありますけれども、精神保健福祉の分野にも児童福祉の分野にも両方関わっていた立場からすると、少なくとも子ども家庭福祉分野の専門性というのは、精神保健福祉分野と同等、あるいは、それ以上の講義数、演習と実習が必要ではないかなと思っておりますので、この時間数では全然足りないと思います。
40ページを開いていただきたいのですけれども、そう考えますと、本来あるべき姿というのは、資料2の6ページの右の図にあるように、精神保健福祉士と同様、またはそれ以上の専門科目690時間、あるいはそれ以上とすべきであると思います。
もう一つ言いたいのは、左の図にあるような社会福祉士、精神保健福祉士資格の取得を必須として上乗せ資格を考えているわけなのですけれども、それは様々な分野の方々がこの資格を目指すと考えていくと、先ほど浜田委員も言われましたように、社会福祉士、精神保健福祉資格を必須とせずに国家試験を受験可能なものとして考えていくべきではないかなと思います。
ただし、社会福祉士の共通科目、社会福祉士専門科目を、全部かその一部かは置くとしても、学ぶ必要はあるかもしれません。ジェネラルソーシャルワーカーとして全部習うということもあるかもしれませんけれども、だからといって社会福祉士資格を取った上でないと子ども家庭福祉士に進めないというのは、かえって人材が狭くなってしまうのではないかなと思います。
4ページには、相談援助の実務経験が4年あれば資格を取らなくてもなれると書いていますけれども、これは経過措置ですから、何年かするとこのルートはなくなってしまうので、そうすると、2つの資格を持った人しかこの資格になれないということは、最終的には狭くなってしまうのではないかと思っています。
資料2の2ページのマル4に「学生や既に現場で働いている社会人等、多様な人材が取得できる資格とすること」と書いてあるのであれば、それは両資格を前提としたものであってはおかしいのではないかと私は思っていまして、そのことを40ページに書いています。
例えば、保育士養成課程を学ぶ学生であるとか、他の学部卒とか、ほかの職種、保育士、保健師、心理士、弁護士さんなども取っていいと思うのですけれども、幅広い人材の多くが子ども家庭福祉士資格取得を目指すということにつながるようなものであるべきではないかと思います。
特に私は、保育士が実際に児童養護施設においても、乳児院においても、各保育所においても、市町村や児相にも多くの保育士さんが働いているわけなので、こういった方々がこの資格を取得できるようなルートが必要ではないかと思います。その人々が、社会福祉士を取ってからなってくださいというのでは、あまりにも門戸を狭くするのではないかと思います。
43ページに図を書いてみたのですけれども、私が提出したものと少し違うような印刷になってしまったので、ここがなぜか印刷されていないのですけれども、よく見ていただくと、ここの下に保育士養成の「教科目の教授内容」というのがありまして、ここにアンダーラインが引いてあるわけなのですけれども、この部分は子ども家庭福祉士を目指していく場合の共通科目になるのではないかと思っていまして、そこの部分は免除するという可能性もあるのではないかと思っています。そこは抜けているので、抜けていないものを厚労省に送っていますので、それをホームページにアップロードしてほしいと思っています。
41ページと42ページには、認定機構における認定資格を児童福祉法上に位置づけるとか、スーパーバイザーは3年でいいとか、その辺は今までの、2016年、児童福祉法改正以降の、児童福祉司の専門性を高くしていこうという話と全く逆行するもので、3年でいいなどというのは、やっとの思いで5年以上というラインをつくっているのに、認定資格で3年というのはあまりにもスーパーの安売りではないかと私は思っています。
長くなりましたので、この辺で終わりたいと思います。以上です。

○山縣委員長 ありがとうございました。
続いて、橋本委員、お願いいたします。

○橋本委員 今日は本当に皆様のお話を聞いて、大変勉強させていただきました。ありがとうございました。
畑山委員とか中村委員が、児相のワーカーがころころ替わらないようにしてほしい、畑違いの門外漢の人が入ってきてしっちゃかめっちゃかにされると困るという話、しっちゃかめっちゃかとまでは言いませんでしたけれども、特に今、児相のワーカーがどっと増えていく中で、現場ではそういう問題が起こっていると正直私も危惧しています。
また坪井委員がおっしゃったように、人材をいかに確保していくかという視点も大事だと思います。本当に現場は逼迫しているので、スタッフをどう確保するかという視点も今回の議論には不可欠ですね。皆さんのお話を聞いていて、改めてそう感じました。
私自身は、実は今日の専門資格の在り方の議論は、そもそもは児相の児童福祉司や市町村の子ども家庭相談担当者の資質の向上をいかに図るかというところが論点というか起点だったと理解していますが、しかし、地方自治体職員としての彼らの資質向上には、資格の在り方と同様に、実はそれ以上に人事施策の在り方が重要なのではないかなと思っています。
私の友人には、「今、自治体では、非専門家と非正規化が同時に進行している」ということを言う仲間もいます。私の提出した資料の26ページ、地方自治総合研究所の上林先生や、立教大学の原田先生の自治体人事施策に関する知見が示されている箇所を御覧いただきたいのですけれども、要は、今後の児童福祉法改正によって、より一層重要な役割を担うことになる市町村の子供の相談体制は、2年ほどで異動する経験年数の浅い、しかも、ほかの業務を掛け持ちしている正規職員と、経験年数が長いけれども雇用が不安定で賃金もワーキングプア水準であって、何の政策立案権限もなく仕事をさせられている非正規職員によって成り立っているという現実に、くさびを打ち込まないと改革は進まないのではないかということです。
そこで、それでは児家センなどに市町村のソーシャルワーク業務を一部委託してはどうかという議論になるのですけれども、ここでも実際には契約や評価、監査手続など、いわゆるペーパーワークに要する労力や費用が官民双方で膨大になっていて、間接業務、厳しい言い方をしますけれども、無駄な仕事が増えて、とても効率の悪い状態を招いているという現実があるかと思います。
また、こういうソーシャルワークの民間委託、外部化が極度に進んでいくと、行政の内部にノウハウが蓄積されないばかりか、やがてはサービス自体を適切に管理したりチェックしたりできなくなってしまうという懸念もあると思っています。今後、制度改革の実施段階に入る際には、実際に実務を担っている福祉労働者らも交えて、ここら辺りをじっくり検証していくべきだと思います。
また今日のお話の中で具体的には、直前に藤林先生がおっしゃいましたけれども、藤林先生が40ページに書いている、自治体にたくさんいらっしゃる保健師とか保育士など、多様な幅広い人材の多くが、新たな子ども家庭福祉資格の取得を目指そうというふうになるような資格の建付けであったり、8ページには、下から2つ目に民間との人事交流の促進が書かれていますけれども、こういうのもアセスメント力の向上とかアセスメントを標準化・共通化するために必要不可欠と思います。
このようなところをより具体的に、実際に制度を動かしながら進めていけるといいかと思います。
私からは以上です。ありがとうございました。

○山縣委員長 ありがとうございました。
井上委員、お願いいたします。

○井上委員 ありがとうございます。本当に大事なところが随分出てきたのですけれども、特に藤林委員が総括的な話をしてくださいましたので、それを基準に考えていきたいと思います。
私の考え方としては、まず、この資料を見させていただいて、子供について最も大事なことを決めていく社会的養育専門委員会の中において、子ども家庭福祉分野の資格・資質向上についての議論の中がこういう内容なのか、要するに、子供は本当にもう要らないのかと感じてしまうような悲しい気持ちになりました。
倉石委員とか浜田委員も言われていたのですけれども、本当に申し訳ないのですが、お話を聞いて驚いてしまって、子供のことを考えていこうと思ったときに、社会福祉士、精神保健福祉士を取った人たちの上に少し子供のことを足して、子供の専門家という話をされるのであれば、ずっと子供のため、子供の権利のことも全部含めてしっかりやってきた私たちが議論する状況ではなくなってきているのではないかと思うぐらいの気持ちになりました。
大事なのは、子供のことは五十嵐先生もおられるのでずっと思われていると思うのですが、子供については大人を小さくしたモデルではないのです。そして、子供のことを考えていくと、大きく分けて乳幼児期の5歳以下、児童期中期の5~10歳、思春期の10~17歳、若年成人、ヤングアダルトを入れると大きく4つに分かれて、かつ、その中に障害、医療、福祉、保健、全部分かれているのです。
それを細かく見ていくという考え方でやっていったときに、今、議論されている子ども家庭福祉のソーシャルワーカーというのは子供の問題全てを扱う、そのことを分かっている方たちが専門家になるわけですから、これは社会とか精神保健を取った人たち、それだけの上に乗っけてというような形は暫定的にはあったとしても、根本的にはあってはいけないと私は思いました。
藤林委員が言われたように、しばらくの時間、全くそれがそろうまでうまくいかないのではなくて、そういう専門の制度をつくって並列で行きながら、その方たちが臨床の仕事が本当にできるようになってくるまでの5年から7年ぐらいの間、資格を持った人たちに少し足していただいて、その方たちで子供をやりたいという人ができるようになってくれればいいと思いました。
最後に、私は今まで子供のところで、作業療法士とかいろいろな訓練科のほうで授業をずっとやっていたのです。その中でよく耳にした話です。1年生のときに子供のことをやりたいと思って一生懸命考えて高校から大学に入ってきました。それで、2年目、3年目と過ごしていく間に、すごく一生懸命子供のことを考えていた学生たちが、子供はあまりすることないのですかね、実習する場所もないし、授業での時間数も少ないし、内容も何か表面的な話だけをして、それで子供のことをやったと言っている。それでは、子供の働く場所がないから卒業しても選ぶことをやめますという意見を出す学生たちがたくさんいました。そのようなことになったら、本当に日本の子供たちの将来は駄目になるということをもう一回委員会で言っておきたいと思いましたので、言わせていただきました。
以上です。

○山縣委員長 ありがとうございました。
松本委員、お願いします。

○松本委員長代理 なるべく手短にします。
確認なのですけれども、4ページのルート図がありますね。これの右側の養成校のルートというか、福祉士の養成課程にいる学生さんたちがとるルートのところで、通常の科目に子ども家庭福祉の科目を500時間程度上乗せして試験を受けるということですけれども、社会福祉士、精神保健福祉士の国家試験ですので、試験内容に上乗せの500は入らないわけですね。そうすると、逆にこれは福祉士の試験を受けてから、例えば、卒業後に別の仕事をしながら、あるいは関連の仕事をしながら500時間程度を受けて資格を得るということはあり得ると理解していいかどうか、これは確認をしたいことです。
要するに、国家試験のピンクのところはひっくり返るということはありと考えるのですか。それとも、在学中に全部とってくださいということなのかです。
御提案の趣旨をお願いします。

○山縣委員長 提案者の趣旨を伺いたいと思います。

○羽野虐待防止対策推進室長 虐待防止対策推進室長でございます。
松本委員がおっしゃったとおり、社会福祉士、精神保健福祉士の国家試験と、子ども家庭福祉専門科目の履修と、そこの前後関係はこの資料だと誤解させてしまうのかもしれません。そこは申し訳ありませんが、ここの前後関係は問わないというイメージで御提案させていただいております。
以上です。

○松本委員長代理 前後関係は問わないのですね。
つまり、社会福祉士、精神保健福祉士を持っている人が科目を履修しておいてということなので、その科目は出身校に限らず、いろいろなところで認定されるということはあり得るという理解で進めます。
資格を議論するときの観点として、幾つか大事なことは述べられていますけれども、私が付け加えたいのは、自治体の人事施策、あるいは、自治体の中での専門職種集団の育成に資するものでなければいけない。自治体にそういうのがないので、あまり資格をつくっても空振りではないですかというのは、逆転していると思います。
逆に、各自治体できちんと専門職種集団をつくって、それが育っていくためにこの資格が役に立つというものをまずつくろうではないかというのが一つの観点としてあると思います。
それと同時に、関連する民間の施設、あるいは児家センなども含めて、そこと共通の基盤を持った人たちが自治体と地域の両方にいる、児相だけではなくて市区町村の拠点、あるいは児家セン等も含めて共通のものをつくっていくということに資する。全体として、地域の専門職の力を上げていくということに資するものかどうかというのは一つの大事な観点かと思います。
そういう観点でも議論すべきだということを今、子供、あるいは子どもと家族というところの専門性と理解の内容についての観点はいろいろな御意見があったと思いますけれども、そこはそのとおりだと思いつつ、別の観点からするとそうだと思います。
そういうふうに考えますと、一つは、冒頭で奥山委員がおっしゃいましたけれども、国家資格ではなくて認定資格にするというときに自治体に対する縛り、法文上どう書くかとか、そういう資格を持っている人をきちんと採用しなければいけない、あるいは動かなければいけないということができるという前提でないと、これは資格の意味がないと思います。
こういう勉強をしなければいけないからみんな頑張ってくださいではなくて、自治体なり、雇用する側がそういう人を育てなければいけないし、そのために例えば職務の中できちんと研修を受けに行ってもらう。この資格を取ってきてくださいと言えるようなものであるべきだろうと思っています。それが御提案の認定資格のところで可能と考えていいのかどうかということは、案を出していくときの前提になるような気がいたします。
もう一つは、4ページで言うと現任者のルートが大事で、経過措置というよりは、ここをきちんと太くしていく。つまり、資格を持っている人を採用するというのは、自治体の職員になった人できちんと育てていけるというふうに、例えば、保健師さんとか保育士さんとか、あるいは全然関係ない学部の人で気持ちと力のある人がきちんと乗っていけるルートを恒常的に確保していくことがとても大事だろうと思います。これはずっと申し上げてきたとおりですけれども、経過措置というよりはここをきちんと明確に位置づけていく。福祉を取っている人が別途取ってももちろん取れると思うのです。
そうなってくると、右側の500時間と、左側の実務経験とか100時間程度の研修の関係が問題になってくると思うのです。そこの質をどう担保するかということがないと、一つの方法が試験だと思いますけれども、試験によらないならどうするのかということは議論を詰めないとまずいと思いました。議論するときには、そういう観点も必要だろうということです。
特に自治体のいろいろな人事政策にきちんとかんでいける、あるいは、自治体のほうがキャリアパスを考えていくときにきちっとこれを組み込んでいける。あるいは、その研修もこういうところに位置づいていくということが認定資格で可能かどうかということは、事務局のほうがそういう形で調整いただくということですので、そういうことを前提にして議論するということでよろしいですねということです。
以上です。

○山縣委員長 ありがとうございます。
1点確認させてください。私も理解できていない部分があります。
仮に子ども家庭福祉ソーシャルワーカー、独立した国家資格をつくったとしても現任者ルートというのは別枠で必要で、試験制度という意味合いでよろしいのでしょうか。

○松本委員長代理 試験制度というのは、試験あるいは質の担保ということで、絶対試験でなければいけないとは思っていませんけれども、仮に独立型でも、現任者ルートというのは今の現場をきちんと強化していくということではとても大事だと思っています。

○山縣委員長 薬師寺委員、お待たせしました。

○薬師寺委員 ありがとうございます。
福祉専門職を採用する自治体の立場から意見を申し上げます。
大阪府では60年前から福祉専門職を採用しておりまして、相談支援や施設ケアの業務は全て福祉専門職が担ってきております。
福祉専門職の配置職場は、児童相談所だけではなく、児童自立支援施設、障害者施設、障害者更生相談所、婦人相談所、保健所、福祉部等の本庁になります。児童分野に限らず、高齢、障害、生活困窮者、女性分野など、幅広くアセスメントや支援に必要な知識や技術を持った人材を求めています。児童分野に特化した資格取得者よりも、基本的なソーシャルワークの考え方や知識、技術を持った人材を幅広く採用して、採用後に育てるということが有効だと考えています。
各分野の職員の専門性は、採用後の福祉専門職研修や各分野の職場研修、OJT、今回の新たな資格のためのそういった時間で蓄積していきたいと思います。そのため、御提案の子ども家庭福祉ソーシャルワーカーのように、子ども家庭福祉の教育課程を上乗せするという養成課程が望ましいと考えています。
児童福祉の現状からいきますと、子ども家庭福祉ソーシャルワーカーを児童福祉士任用資格の一つにするということで、児童相談所の体制整備を進めている現状では、中核市の児童相談所設置ですとか、市区町村の子ども家庭総合支援拠点ですとか、児童養護施設等の体制強化など、子ども家庭福祉分野の求人は多いのですけれども、人材確保は非常に厳しい状況にあります。そのため、子ども家庭福祉ソーシャルワーカーは児童福祉士の任用資格の一つとして整理していただく必要があります。
児童相談所の体制整備、体制強化には福祉専門職を幅広く採用して、自治体において育成してキャリア形成を図ることが必要不可欠だと思います。
以上です。ありがとうございます。

○山縣委員長 ありがとうございました。
手が挙がっておりますのは、相澤委員、北川委員、宮島委員、浜田委員の4人でございます。既に50分でして、時間がオーバーするということを御了解いただけたらと思います。
冒頭で言いましたように、今回一回で終わらせることができない可能性があるという前提で進めておりますので、必要なところはまたどこかで設定したところでお願いできたらと思います。
相澤委員、お願いいたします。

○相澤委員 ありがとうございます。
私は以前、この資格化の問題を議論するときに、日本社会福祉会や日本ソーシャルワーク教育学校連盟にヒアリングしたときに、私だけではなくて、井上委員も言ったと思うのですが、児童福祉士任用後の到達目標を達成するためのきちんとしたカリキュラムを提案していただけませんかとお願いしたと思うのです。そのきちんとしたカリキュラムが分からないと、本当に500時間なのか690時間なのか、私などは到達目標を達成するためにはもっと時間数が必要なのではないかと思います。
例えば、大学だけで取れないのだったら、さらに現場で取るようなものを考えなければいけませんし、そういった意味で、本当に子供にとって必要なソーシャルワークを養成するために必要なカリキュラムは何かをきちんと議論した上で、どのような上乗せなどにするのかといったことを検討すべきです。それがない中で検討すると、もしかすると、本当の資質向上のための資格化に結びついていかないのではないかと思います。
そういう意味では、カリキュラムをきちんと考えてほしいということをお願いしたのですけれども、それについて、ぜひ次回は専門家集団の方々に出してもらって議論をさせていただけたらありがたいと思います。それが1点です。その上で検討したいと思います。
もう一点は、2年、3年でころころ替わってしまうというのは、人事政策もそうですけれども、任用資格が何種類かあるわけですが、任用資格そのものも資質の向上をする上では高めていく必要があるのではないか。つまり、社会福祉士だけではなかなか難しいという結果が調査研究の中でも出ているわけでありまして、さらに資質向上を実際にするために児童福祉士の任用資格そのものを高めていくことについての検討をしたらどうかと、私は考えております。
あとは、藤林委員が言ったように、保育士とか心理士とか保健師とか、そういった資格を持った方のルートをきちんと確保していくということが非常に重要だと思っています。
以上です。ありがとうございました。

○山縣委員長 ありがとうございました。
北川委員、お願いします。

○北川委員 ありがとうございます。
私もこの資格というか、子供に関わる人材の問題は、日本の子供施策をどのようにしていくかということを根本的に考えていくことなのではないかと思います。
子供と家庭をしっかりみんなで支えていく社会をつくるためには、人材がもっと必要だと思うのです。特に子供分野の専門職はそんなにいないし、先ほど井上先生もおっしゃっていましたけれども、私のところの医療型の児童発達支援センターにOTさん、PTさん、STさんに来てほしいのですけれども、なかなか子供専門にやるという大学がないので、よほど意思のある人しか来られないという現状もあるかと思います。
本当に子供分野の専門職が必要というのは、前に藤林先生もおっしゃっていたかもしれないのですけれども、保育園とかポピュレーションのところにもっとソーシャルワーカーとか心理職とか、子供と家庭が分かる方々を日本でもっと増やさないといけない。就職口がないという意見がありましたけれども、もっと増やさないといけないと思います。
実際、保育園とか児童発達支援センターで3~5年仕事をしていると、家族の問題に取り組んで一生懸命やっている保育士さんが出てきます。その保育士さんたちがこの資格を取りたいと言ったときに、今は現任で取れるようになっていますけれども、できれば保育士さんたちが社会福祉士を取ったり、精神保健福祉士を取ったりして、子ども家庭福祉の資格を取ると言ったら、現場の人に聞いてみたら、子供のソーシャルワーカーだったら頑張る気になるけれども、ハードルが高いと言っていました。
そういう意味では、子供たちを守っていきたい、最善の利益を守っていきたいという志のある人がしっかりとこの資格を、うちなども仕事をしながら大学院に行っている人もいますけれども、この資格がないと子供の資格が取れないというか、意志のある人が取れるようなシステムにしていただければと思いました。
以上です。

○山縣委員長 ありがとうございました。
宮島委員、お願いいたします。

○宮島委員 ありがとうございます。今日は参加が遅れてしまいましたし、ネットが落ちてしまいまして申し訳ありませんでした。中村委員と浜田委員の意見のところで落ちてしまいました。
私も今日、資料を作って提出いたしました。46ページから54ページまでの9ページに渡った資料を作成いたしました。
もう時間がないので、それを追って見ていただくことはできないと思いますけれども、子供と家族の幸せに貢献できるものとしていかなければならない。子供と家庭が今どういう状況に置かれているのかということを考えつつ進めていくということで、回りくどいですが、そういうことを書きました。
そのため、現場の状況を改善できなければ何もならないと考えましたので、現場の状況がどういう状況にあるかということを記しました。この辺りは倉石委員、薬師寺委員が言ってくださったことと、認識としては一致しています。
私の資料は、自治体ということで十把一絡げではなく、大きいところ、小さいところ、全国全てのところで実際に変化が起きなければいけないので、広さとか大きさとか、児童相談所を設置しているか、していないかとか、そういうことも踏まえた上で、現場はこういう状況ではないかと、そこでの人事はこういう形で進められている、こういう苦しみに直面しているのではないかということをつづりました。
この辺りは全国知事会が今回資料を出してくださったので、これをきちんと見て、そこを踏まえたものとして検討していかなければいけないと思います。
また、養成課程の現実をきちんと見なければ、絵に描いた餅でいいはずはないので、養成校の養成課程が今どういう状況にあるのかといったことも踏まえた上で考えなければいけないと思っております。
その上で、基本的には、私は事務局の出してくださったものは、今、申し上げたような観点から、大事なことが踏まえられた案であると思っております。意欲と基礎的な力を持った人が現場に就いて、そこで実践力を高め続けられるといったものとして考えられていると認識しています。
学生も既卒者も参加できるものと考えられています。どのような崇高なものを作ったとしても、参加できないと話にならない。そこを取り組んでもらわなければ意味がないと考えております。
3つ目として、案を支持するのは、社会を前提としたものとして考えられているからです。ソーシャルワークの共通基盤を前提とするということです。ソーシャルは社会ということですので、社会がどういう状況にあるのか、個人の問題と社会の問題、または、その両者の関係の中で起こっている問題だと捉えなければいけない。奥山委員が、医療モデルでは駄目です、生活モデルですと言ってくださったことについては、本当にそのとおりだと賛同します。
そういった観点から、私は、これは考えられた案だと。また、子ども家庭ソーシャルワーカーという名称が、何々福祉士という名前とは変わりますけれども、それこそソーシャルワークという言葉が明記されるということは画期的なことであり、いろいろな現場を改善するという方向に動くのではないかと期待します。
全てが賛成というわけではありません。藤林委員が言ってくださったように、私もスーパーバイザーの任用要件を5年から3年に短くするというのはいかがかと思います。全く駄目だとは思いません。例えば、ずっとソーシャルワークの現場で頑張ってきた人がこの分野に来て、子ども家庭福祉について実践力を上げた場合には、一部認められる例もあるかと思いますけれども、基本的には5年という要件を下げるべきではないと考えております。
その上で4点要望をさせていただきたいと思います。任用要件とすることはとても重要だと思いますが、何らかの形で任用を義務付ける規定を設けるべきではないかということです。地方自治の関係で、あまり厳しい任用の義務を入れるわけにはいかないと思いますけれども、可能な範囲で新しくできた資格を持つということを義務付けるということになっていれば、無視されてしまうとか、易きに流れるということを防ぐことができるのではないかと思います。
2つ目ですけれども、カリキュラムは座学中心ではないものとすべきだと思います。実践的なものにしなければならない。この点も奥山委員が、臨床の知が大事なのだとおっしゃいました。まさにそうだと思います。
この点は一致していないと思いますけれども、ペーパーテストでどこまで測れるのかということにおいてはむしろ疑問です。きちんと実践力を測れる、担保できるという面において、実践的なもの、むしろ座学中心的なものではないものとすべきだと思います。
あと2点、長くなり申し訳ありませんが、専門職団体、あるいは国もソーシャルワークの国家資格は一本化を目指すということがとても大事だと思います。2本できてしまったものを1本にするというのは難しいことですけれども、今、取り組みが始まっているのは事実だと思いますし、それを後押しするということがとても大事だと思います。専門職団体も今回意見を出してくださっていますが、ぜひとも一本化という方向に持っていく。ベースを担保するものとして発展させる必要があると思います。
最後ですけれども、資格をつくることは大事ですが、体制整備をさらにきちんとやらなければだめだと思います。5,000人に増えたということは本当に評価しますけれども、その人たちが育っていってくれれば変化が起こると思いますが、到底これでは足りない。体制整備が続けて必要なのだということです。資料に1行書いてくださっていますけれども、この点はぜひとも続けて取り組んでいただきたいと思います。
以上でございます。

○山縣委員長 ありがとうございました。
最後になります。浜田委員、お願いいたします。

○浜田委員 時間がない中、申し訳ありません。1点確認でございます。
先ほどの井上先生の御発言の中で、倉石先生と私の意見について、これは私の取り違えだったら大変申し訳ありませんけれども、子供のことをみんなで考える、最高機関とはおっしゃいませんでしたけれども、倉石先生と私の意見が社会的養育専門委員会の場にふさわしくないようなレベルの発言であるという御趣旨でおっしゃったのかと思いまして、これは誤解があってはいけませんので、井上先生に確認をとらせていただければと存じます。
お願いできますでしょうか。

○山縣委員長 井上委員、よろしくお願いします。

○井上委員 失礼があったら申し訳ありませんでした。
自分の考えとしては、社会福祉士、精神保健福祉士以外、分野別の国家資格の新設は必要がないという倉石先生の意見のほうが頭の中に強くありましたもので、それで浜田委員のほうが言われていたのは、倉石先生の意見がどうという話があったからです。一緒にしてしまったような感じがして申し訳ありませんでした。
失礼しました。

○浜田委員 ありがとうございます。
もちろん、井上先生がそのような御趣旨でおっしゃったことではないと思いましたけれども、私の耳に残りましたもので申し上げさせていただきました。
この委員会も当然、意見の相違は多々あります。今日もいろいろございますけれども、そういった中で、それぞれがそれぞれの意見を述べて丁々発止ができる委員会でありたいと思っております。大変失礼を申し上げました。

○山縣委員長 ありがとうございました。
予定の時間を既にオーバーしておりますので、今日につきましてはこの段階で一旦終了させていただきたいと思います。
本日は2つのテーマで行いましたけれども、一時保護に関する司法関与につきましてはある程度意見が聞けたのではないかと思いますので、その意見を踏まえて、次回以降、事務局のほうで整理いただきたいと思います。
後段の資格については、若干まだ議論すべき点が残っているとなっておりますので、どういうスケジュールでやるかにつきましては事務局と相談をしながらになります。あとは、現在分かっていることがあれば御提案いただきたいと思います。
本日御意見をいただいた方々は、事務局案をベースに御意見をいただいた方につきまして多少整理をさせていただきますと、全面賛成というよりも修正が必要だと、あるいは、第1段階としては、とりあえずこれでスタートするしかないのではないかという方々を含めて、私の判断ですけれども、8人の方が原案をベースに修正が必要であるという御意向だったと思います。
3人の方につきましては、課程認定型では駄目なのだという形で、明確に反対ということを言われました。
5人の方については、まだ検討が必要だということで、どちらかというのは明確な意見はあまり言われずに、悪い意味ではなくて、検討が必要という形で言われたのではないかと思っています。
現状としてはこのような感じで、今日発言をいただかなかった方々がたくさんいらっしゃいますので、それを含めるとまたどうなるか分かりませんが、今日の段階ではこのような状況だったということで整理をさせていただきたいと思います。
今後のことにつきまして、事務局のほうで何かございますでしょうか。

○野村企画官 企画官の野村でございます。本日は御議論をありがとうございました。
まず、事務局のほうからですけれども、議論につきましてはしっかりと尽くしていく必要があると考えております。まさに先ほど浜田委員がおっしゃっていただいたように、丁々発止様々な御意見が出る場ということで我々も考えてございます。
そういったこともありますので、法案提出を見据えて、年内をめどとした取りまとめ案を目指していくというところがございますけれども、資格について引き続き議論していくこととしたいと考えております。
こうした中で、資格を除いたほかの事項については、制度見直しの内容を確認していく段にあると考えておりますので、骨子とかの形で確認をしていきたいと思っています。
そうなりますと、資格についてというところですけれども、骨子の議論スケジュールにあまりこだわらず、引き続き議論を続け、取りまとめを目指して議論を行っていきたいと考えておりますので、引き続き御意見等々をいただければと思っております。
そういった中で、次回の日程につきまして、11月16日の10時から13時ということで予定しておりますので、よろしくお願いいたします。

○山縣委員長 ありがとうございました。
次回は11月16日の今日と同じ時間帯ということになります。また自由にいろいろな御意見をいただけたらと思いますが、取りあえずは骨子の案を事務局で整理をしていただくということになります。
奥山委員、お願いします。

○奥山委員 今、資格化の問題を12月いっぱいまでとおっしゃったのですけれども、11月16日は資格化の話をするのですか。それとも、骨子案の話をするのですか。

○野村企画官 事務局でございます。そこについては座長と御相談をさせていただきまして、早いうちに御連絡をさせていただければと思います。

○奥山委員 もしここで資格化の話をしないとなると、もう11月の終わり、12月のぎりぎりになってしまうのです。どこかでもう一回ぐらいしっかりと議論しないと、とてもではないけれども12月いっぱいにまとまらないと思います。

○野村企画官 御指摘ありがとうございます。
まさに骨子の議論のスケジュールにあまりこだわらずと申し上げたのは、そういったところもございますけれども、しっかりと取りまとめを目指して議論を続けていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

○山縣委員長 次回、またよろしくお願いいたします。
長い時間、延長して申し訳ありませんでした。お疲れさまでした。
 

(了)

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