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2018年2月23日 第5回人生の最終段階における医療の普及・啓発の在り方に関する検討会

医政局

○日時

平成30年2月23日(金)10:00~12:00


○場所

厚生労働省 講堂


○議事

○山口在宅看護専門官 定刻になりましたので、ただいまから、第5回「人生の最終段階における医療の普及・啓発の在り方に関する検討会」を開催いたします。

 本日は、大変お忙しい中御参集いただき、誠にありがとうございます。

 本日は、岩田構成員、齊藤克子構成員、鈴木構成員、瀬戸構成員、横田構成員から欠席の御連絡をいただいております。

 また、事務局につきましては、所用により出入りがありますことを御了承ください。

 本日は、上智大学生命倫理研究所の町野朔氏を参考人としてお呼びしております。

 議事に入ります前に、お手元の資料の確認をさせていただきます。

 議事次第、座席表、資料1から3までと、参考資料1から3をお配りしております。

 また、基本的に座長了承のもと配付することになっておりますが、机上のみの配付資料がございます。

 乱丁、落丁等がございましたら、事務局までお知らせください。

 それでは、議事に入ります。

 カメラ撮りはここまででお願いいたします。

(カメラ退室)

○山口在宅看護専門官 それでは、以後の議事運営を樋口座長によろしくお願い申し上げます。

○樋口座長 おはようございます。

 きょうは第5回の「人生の最終段階における医療の普及・啓発の在り方に関する検討会」ということであります。

 議事次第を見ていただきますと、1がプロセスガイドラインの改訂で、2が国民に対する普及・啓発ということでありますが、この議題の順番を変更して、まず国民に対する普及・啓発という部分からきょうは始めたいと思います。

 すぐに忘れてしまうので一番初めに申し上げますけれども、前回以来、一定の時間が過ぎているわけですが、その間も皆様を初め、事務局もそうですけれども、このガイドラインの改訂の部分もそうですし、調査に関する結果のまとめなどにいろいろ御尽力をいただいてきょうに至っている。深く感謝しておりますが、さらにこれは重々御存じのことだと思いますけれども、きょうと次回の2回でこの検討会を閉じるということでありますので、御協力をお願いしたいと思います。

 それでは、まず資料2を見ていただいて、事務局と木澤さんにも御説明いただくことになっているようで、よろしくお願いいたしたいと思います。

○堤在宅医療推進室長補佐 事務局でございます。

 最初に、資料2-1「平成29年度人生の最終段階における医療に関する意識調査結果」について、今回、意識調査の結果がまとまりましたので、その結果を御報告申し上げます。

 前回の速報値から全て集計し終えた数値となっております。

 3~6ページが、最終的な調査の回収率や、回答者の属性になってございます。

11ページは、人生の最終段階における医療について、これまで考えたことがある国民でございますけれども、これは約6割となっております。その中で「詳しく話し合っている」「一応話し合っている」という方の割合は、前回と同程度でございました。

13ページでございますが、話し合う相手につきましては、「家族・親族」が多数を占めてございますけれども、「友人・知人」や「医療介護関係者」も一定程度存在してございます。

14ページになりますけれども、一方、話し合ったことがない理由としましては、そのきっかけのなさや必要性のなさを挙げられている方が多くございました。

15ページございますが、人生の最終段階における医療を話し合うきっかけ自体は、「自分の病気」や「家族等の病気や死」が多く、メディアの情報や医療介護関係者からの説明等も一定数は存在しております。

17ページは、人生の最終段階における医療についての情報源ですけれども、こちらは「医療機関・介護施設」から受けることが最も多く、次いで「研修会や講演会」、また「インターネット」を初めとするメディアも幅広く存在してございます。

18ページでございますけれども、考えるために必要な情報に関しましては、医療の内容から、過ごせる施設に関するもの、自分の意思の伝え方まで非常にさまざまなものが挙げられております。

19ページですが、事前指示書をあらかじめ作成することに賛成する割合は、前回調査と同等程度でございました。

21ページでございますが、一方で、実際に事前指示書を作成していない方は約9割と、これも前回調査と大きな変化はございませんでした。

23ページでございますが、自分が意思決定ができなくなった場合に備えて、信頼できる方を決めておくことにつきまして、その選定については約6割の方が賛成されております。賛成していて、実際に選ばれている方の割合は約2割でございました。

26ページですが、「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」について、国民の約7割強は御存じでないという結果でございましたが、ACPについて賛否を問うたところ、賛成される方が約7割を占めておりました。

27ページでございますけれども、人生の最終段階について、どこで最期を迎えたいかを考える際に重要だと思われることは、このように非常にさまざまなことが取り上げられております。

2940ページが、末期がん、重度の心臓病あるいは認知症の進行など、さまざまな人生の最終段階の状況における医療・療養を受け過ごす場所に関する希望を問うたものでございます。

41ページに前回調査を掲載しておりますけれども、医療・療養を受ける場所の希望につきましては、全体として前回調査と類似した結果となってございます。

 状況はさまざまでございますけれども、療養の場、最期を迎えたい場を「医療機関」や「施設」と答えられた方は、その理由として、介護に対する家族への負担や病状の急な変化に対する自身・家族の不安を挙げられる方が多くございました。

 また、最期を迎えたい場所を「自宅」と答えられた方は、その理由として、「住み慣れた場所で最期を迎えたい」「最期まで自分らしく好きなように過ごしたい」「家族等との時間を多くしたい」「家族等に看取られて最期を迎えたい」といった意見が多く見られておりました。

42ページからは、医師・看護師・介護職員調査になってございます。

 人生の最終段階の医療にかかわっていない医療従事者を除くと、約8割以上で、何らかの話し合いの実施が行われているという結果でございました。

45ページは、患者さんあるいは入所者さんとの話し合いの実態でございます。

 話し合いを行っている場合については、病状や治療の内容や意向については約8割が実施されており、施設サービス等に関する情報や本人の気がかり、価値観などを含めますと、4~5割の実施があります。

 話し合いの時期については、治療困難との判断時、方針の転換時、死が近づいてきたとき、患者・家族からの相談が約6割でありました。また、日々の診察の中でも、約2割があってございます。

46ページでございますけれども、話し合った内容については、8割強の中で記録に残され、共有をされておりました。

47ページですが、一方で、人生の最終段階の医療・療養の方針について、医師や看護・介護職員等の中で意見の相違があった場合につきまして、2~3割の従事者の中で意見の相違の経験がございます。倫理委員会に相談の経験がある場合も1~2割ありますけれども、相談体制がないという返答が5~7割を占めておりました。

48ページでございますけれども、事前指示書を勧められているかは、約5割は「特に書面は用いていない」という返答でございました。

50ページでございますが、アドバンス・ケア・プランニングを実施しているかどうかという状況につきまして、「実施している」というところは3割弱でございました。

51ページは、人生の最終段階における患者の医療・療養についての情報を連携先に引き継ぐことにつきましてでございますけれども、「治療方針などの医療情報」については7割前後、「患者や家族等が希望するケアや療養場所・最期を迎える場所」などは6割ほど、本人の価値観などについては3割前後となってございます。

53ページは、人生の最終段階におけるガイドラインの利用状況でございまして、厚生労働省のガイドラインの利用率は約3割になっております。前回調査では、こちらは約2割でございました。

55ページは、人生の最終段階の定義や、延命治療の不開始、中止を行う判定基準についての問いでございます。こちらの基準を詳細に示すべきとお答えになられた方は1割にとどまり、大まかな基準で半数、次いで一律な基準は不要で、チームと本人・家族等とで方針を話し合って方針を決定すればよいという順番は、前回調査と大きな変わりはありませんでした。

57ページでございますが、人生の最終段階の医療・療養の充実については、医療・介護従事者、本人・家族等、疾患の有無にかかわらず、いずれも充実のための教育・研修等が必要であるとの声が多数でございました。

59ページからは施設調査となってございます。

 人生の最終段階の患者・利用者との、本人と家族等との話し合いは、病院、施設では何らかの話し合いが8割以上で行われております。一方、診療所につきましては、「人生の最終段階の患者がいないので、機会がない」という回答が約4割挙げられておりました。

61ページでございますが、話し合いの時期の実態につきましては、先ほどの医師・看護師・介護職員調査と同様でした。施設では、介護老人福祉施設においては、自施設での利用が始まるときが約6割という結果でございました。

63ページでございますけれども、病院におきましては、約3割の倫理委員会の設置があります。一方、施設では9割から倫理委員会の設置がないという返答でございました。

65ページでございますけれども、事前指示書につきましては、施設において4割ほど、方針として用いられているということでございました。

67ページですが、施設票としてアドバンス・ケア・プランニングの実施状況と今後の意向につきましては、こちらも医師・看護師・介護職員票と同様でございました。

69ページは、人生の最終段階における医療・療養の方針や療養場所等について、どのように情報共有がなされているかということでございまして、こちらも病院、施設の7~8割が記録に残し、共有されております。また、日々ミーティング等で共有されている例も3~4割ありました。

71ページですが、情報共有につきまして、そのようなツールがあれば利用したいとお答えになられている施設が5割強ございました。

72ページは、施設別の厚生労働省等のガイドライン利用率をお示ししたものになってございます。厚生労働省のガイドライン利用率は、病院で5割、介護老人福祉施設で4割となってございます。

75ページは、施設における、人生の最終段階における医療・療養につきまして、説明をするための資料の準備の問いになってございまして、書類等の準備がないという回答が半数近くを占めておりました。

76ページですが、施設における、患者等が望む場所での医療・療養を実現するための支援につきましては、病院、介護施設におかれましては、8割強は何らかの支援が実施されているという結果でございました。

77ページは、施設の職員を、人生の最終段階の決定支援に係る研修へ参加させているかどうかということでございまして、参加させていらっしゃるのは病院で3割、診療所で1割、介護施設等で4割前後という結果でございました。

 事務局からは以上です。

○樋口座長 この議題2の国民への普及・啓発については、今、資料2-1で説明をいただきましたが、資料2-2と2-3のあと2つの資料があります。これについてまず説明を伺うことにしたいと思いますので、資料2-2について、木澤さん、お願いいたします。

○木澤構成員 ありがとうございます。木澤でございます。

 前回の検討会でもお伝えしたように、市民公開講座を机上配付のパンフレットの資料及びプログラムをもとに、1月21日に開催しております。また、今年度の「人生の最終段階における医療体制整備事業」の内容について、簡単に御説明しようと思いますので、資料2-2をごらんください。

 まず、1つ目は「医療従事者向け研修会」なのですが、決められたとおり、今年度も12回開催しておりまして、計978名の医療福祉従事者が参加し、全国8ブロック12カ所で開催しております。研修会には、行政関係者等も参加していただきまして、その後の展開が期待されるところであります。

 市民公開講座は、今、申し上げたとおり1月21日に開催しておりまして、パンフレットとそれに連動した映像資料をもとに、市民の皆さんに御自分の人生の最終段階について考えていただくという構成で開催しております。参加者は110名で、平均年齢が54歳。やや女性が多く、定期的に医療機関を受診している方が半分という構成で市民公開講座を開催しました。

 4ページを見ていただきまして、内容は開始前、開始後に、アドバンス・ケア・プランニングであるとか、人生の最終段階に関する話し合いについての質問票を前後でとり、内容については、患者の意向に沿った医療を受けるには、御自分の意向に沿った医療を受けるにはという内容で構成されています。真ん中あたりで1時間ちょっと、先ほどのパンフレットを使って自分で考えてみようという試みをしています。

 実際に前後でアンケートをとっていることと、もう一つは、実際にパンフレットを配っているわけですけれども、パンフレットの現物を意見が書き込めるようにして配りまして、内容についての意見を集約しています。

 アンケートの結果を見ますと、参加動機は「人生の最終段階の医療に興味があった」からが約4割を占めていました。

 内容については、約9割の方が役立ったと回答し、エフェクトサイズは見ていないのですけれども、講座の前後で自信や心構えのレディネスのスコアが増加することがわかりました。これは先行研究と一緒です。

 パンフレットについてなのですけれども、具体的な人の体験談の例を出していただくビデオを見ていただいたのが非常に好評で、わかりやすかった、考えやすかったであるとか、ちょっとどうかなという意見としては、具体的な治療やケアについて、特に病気にかかっていらっしゃらない方はイメージができないので、考えるのが難しいという意見もありました。

 6ページは、パンフレット全体に関する意見なのですけれども、字が多いという意見が非常に多く、フォントが小さくて見にくいという意見もありまして、体裁を考えたほうがいいだろう。DVDや映像の併用はいいのだけれども、デジタル・デバイドの問題があって、高齢者がアクセスしにくいことに留意したほうがいいだろう。御本人主導というよりは、御家族をきっかけにして御本人に勧めることを考えて、家族用のパンフレットがあったほうがいいのではないかという御意見がありました。

 また、記載日が記入できるといいとか、医学用語がわかりにくい。ここも表現をどうするかなのですけれども、代理人とか本人にかわるものの表現及び誰を指すのかということをきちんと明示して勧めるようにしたらいいのではないかという意見が出ました。

 以上でございます。

○樋口座長 ありがとうございます。

 もう一つだけ資料がありますので、それを伺ってから少し議論をしたいと思います。

 資料2-3についてお願いいたします。

○堤在宅医療推進室長補佐 事務局でございます。

 資料2-3は、国民への普及・啓発に関する論点を挙げさせていただいたものになってございます。

 これまでの議論を踏まえ、国民への普及・啓発について、次のような内容を報告書に含めてはどうかと考えております。

 1)普及・啓発の目的と必要性は、次のとおりとしてはどうか。

・ 人生の最終段階において、本人の意向に沿った医療・ケアが行われるようにするた 

  めには、人生の最終段階における医療・ケアについて繰り返し話し合う取組が、医

  療・介護現場だけではなく、国民一人一人の生活の中に浸透することが必要。

・ 現在、医療・介護現場における意思決定支援の実践や地方自治体における取組は、

  十分に広まっておらず、救急搬送時に本人の意向が確認できずに治療方法の選択が

  困難となるといった課題が依然として存在。高齢化や近年の高齢者の救急搬送の増

  加などの状況を踏まえると、「生を全うする医療・ケアの質」を高めていくことが

  必要。

・ このため、国民全体が、人生の最終段階における医療・ケアについて、本人が家族

  等や医療・ケアチームと事前に繰り返し話し合うプロセス(ACP)の必要性などに

  ついて、一層の普及・啓発を図っていくことが必要。

と考えております。

 2ページは「2)普及・啓発の方向性」についてになっております。

 まず1つ目として、「(1)普及・啓発の対象について、次のように分けて整理してはどうか」と考えております。

マル1 人生の最終段階における医療・ケアの在り方を自分ごととして考える時期にある方

マル2 1の方を身近で支える立場にある家族等

マル3 本人や家族等を支える医療・介護従事者

マル4 国民全体

について普及・啓発をするものと考えております。

 3ページの「(2)普及・啓発の内容」について、先ほど申し上げた対象の特性に応じ、次のような内容があるのではないかと考えております。

マル1 人生の最終段階における医療・ケアの在り方を、自分ごととして考える時期にある方

・ 心身の状態に応じた医療・ケアの内容(呼吸確保、栄養、水分補給、疼痛緩和の方法等)、療養場所(医療機関、介護施設、在宅等における療養上の特徴等)に関する事項

・ 本人の意思の共有にあたり、留意すべき事項(人生観、価値観等も含めた十分なコミュニケーションが重要 等)

・ 家族等の信頼できる者の決定にあたり、留意すべき事項

・ 本人の意思を文書にまとめるにあたり、留意すべき事項(文書の内容、保管場所等)

・ 医療・介護を受けていない方については、専門職(かかりつけ医等)の役割や、その相談の方法

等を考えております。

マル2 マル1の方を身近で支える立場にある家族等

・ マル1に掲げる事項

・ 身近な方の人生の最終段階における医療・ケアの方針決定に関わるにあたり、留意すべき事項(コミュニケーションの方法等)

・ 本人の意思の推定にあたり、留意すべき事項

などを挙げております。

 4ページは、先ほどの「(2)普及・啓発の内容」の続きでございまして、

マル3 本人や家族等を支える医療・介護従事者

・ 意思決定支援に必要な知識・技術に関する事項(改訂されるガイドラインの内容等)

・ マル1・マル2に掲げる事項を本人や家族等に伝達するにあたり、留意すべき事項(本人意思を汲み取ることがまず重要であること、本人の意思や気持ちは常に揺れ動くことを理解すること、医療・ケアチームと本人との関係が、上下関係のようにならないようにすること等)

などを挙げております。

 最後に、

マル4 国民全体

・ 本人や身近な人のもしものときに備えて、日頃から考え、家族等の信頼できる者を決め、繰り返し話し合うことが重要であること

・ 話し合った内容は、共有しておくことが重要であること

・ 本人の希望は、いつでも変更して良いことを理解しておくこと

・ 具体的な代表的ケースに即して話し合いを行うことで、理解や考えが深まること

などを挙げております。

 5ページですが、「(3)普及・啓発の方法」についてはどのように考えるかと申しますと、「対象者の特性に応じ、例えば次のような方法があるのではないか」と考えました。

 自分ごとである方及び自分ごとである方を身近で支える立場にある家族の方は、「医療機関・介護施設」においては、

・ かかりつけ医、看護師、介護支援専門員、介護福祉士等の医療・ケアチームによる、医療・介護サービスの提供の機会を通じた情報提供

また、「地方自治体、民間団体等」の、

・ リーフレットの配布(手渡し説明)

・ 市民向けのセミナーの開催

等を普及啓発の方法として考えております。

 一方、「マル3 本人や家族等を支える医療・介護従事者」につきましては、

(国・地方自治体、医療・介護関係団体)

・ 改訂したガイドラインの普及、研修会の開催

「マル4 国民全体」については、

(国)

・ 記念日の制定やこの日に合わせたイベントの開催

・ 関連情報に関するポータルサイトやeラーニング等の学習サイトの開設

・ ACPについて国民に馴染みやすい名称の検討

・ メディアを意識した広報

(地方自治体、民間団体等)

・ リーフレットの配布

・ 市民向けのセミナーの開催

・ 在宅医療・介護に関する相談、特定健康診査・保健指導の機械等を通じた情報提供

(企業)

・ 結婚・出産、介護保険加入、介護休業、退職等のライフイベントに関連する手続の機会を通じた情報提供

・ 退職セミナー等の企業研修の機会を通じた情報提供

・ 遺言や財産管理に関連したセミナー、不動産購入や生命保険加入時の機会を通じた情報提供

(教育機関)

・ 学校・大学における生命や医療に関する授業の機会を通じた情報提供

があるのではないかと考えております。

 「(4)普及・啓発における留意事項」は、以下のようなものがあるのではないかと考えております。

・ 国民一人一人が、希望する人生の最終段階を迎えることができるようにするために行うものであり、決して医療費削減、営利目的等のために行うべきものではないこと

・ 誰もが日常的に話し合える環境づくりを進めることが重要であること

・ 人生の最終段階の医療・ケアに関する考えを共有するに当たっては、人生観や価値観を含めた十分なコミュニケーションが必要であること

・ あくまで個人の主体的な取組によって、人生の最終段階の医療・ケアの在り方について考え、決定されるものであり、知りたくない、考えたくない、文書にまとめたくないという方への十分な配慮が必要であること

・ 本人の意思は時間の経過、病状の変化、医学的評価の変更等に応じて変化しうる可能性があることから、繰り返し見直し、変更することが可能であることを理解することが重要であること

・ 本人の意思を文書にまとめておく場合であっても、その文書に書かれた内容が人生の最終段階の状況に当てはまらない場合があることを理解することが重要であること

これらを留意事項の例として挙げさせていただきました。

 以上でございます。

○樋口座長 ありがとうございました。

 この3つの資料を即座に理解するのはなかなか大変だと思いますけれども、まず資料2-1では、いわゆる意識調査の結果が最終的にまとまったというので、駆け足で説明をいただきました。まさに駆け足なので、すぐに全てをというわけにはいかないかもしれません。

 資料2-2のところで、アドバンス・ケア・プランニング等について、普及・啓発の実践事業をされている木澤さんから、まとめというか経験の話があり、これは後で出てくる資料3と連携していて、この検討会で報告書をまとめるわけで、しかも国民の普及・啓発のあり方に関する検討会の報告書をまとめる際に、こういう論点を含めてはどうかという形で資料2-3ができているわけです。

 それら全体として御質問、コメントをいただきたいと思いますけれども、どの部分であっても構いませんので、どうぞお願いしたいと思います。権丈さん、どうぞ。

○権丈構成員 資料2-1の26枚目の「よく知っている」「聞いたことはあるがよく知らない」「知らない」「無回答」というところで、ACPの認知度を尋ねて、その賛否というものがあるのですけれども、賛否は知っている人が答えているのですか。

○堤在宅医療推進室長補佐 事務局でございます。

 こちらは、まずアンケート調査のほうにつきまして、先生が御指摘いただきました上段は、「あなたはアドバンス・ケア・プランニングについて知っていますか」。そして、今、御質問いただいたところにつきましては、「人生の最終段階の医療・療養について、あなたの意思に沿った医療・療養を受けるためには、御家族等や医療介護関係者等とあらかじめ話し合い、また繰り返し話し合うこと(アドバンス・ケア・プランニング)が重要と言われています。このような話し合いを進めることについて、あなたはどう思いますか」となってございますので、皆様がお答えになっていただいている回答になってございます。

○権丈構成員 一応、そこはACPについて説明をした後、どのように答えるかということですね。

○堤在宅医療推進室長補佐 そのとおりでございます。

○権丈構成員 ここでわからないのが、なぜ「わからない」という人がこんなにいっぱいいるのかということと、医師の中にも1%、「反対である」と答えられているところもよくわからないのです。だから、これから先、新しい調査をするのは難しいと思いますけれども、日本医師会は来年度から、かかりつけ医の研修の中にACPのプログラムを組んでくださるということで既に動いているようですので、こういう研修をした後に同じような質問をして、なおかつ「わからない」という人が医師の中でも2割いる、そして、反対者がいる理由をこれから先、考えていただきたい。説明の仕方が悪いのではないかと思うわけです。

 私はこの前も言いましたように、いろいろなものがACPに収れんしていこうとして、人生最終段階における医療の在り方はここに落ちつくというのが大方のところではないのか。そして、そういう資料をつくってくださいと言っておりましたので、恐らく次回に準備してくださると思うのですけれども、そういうことを考えていくときに、ACPについて説明をした後に、3割の人が「わからない」という状態で、「反対である」という人もいる。医師も21.6%が「わからない」、看護師も21.0%は「わからない」というのは、何か説明の仕方が悪いのか、それともACPに問題があるのか。私は前者ではないかと思いますし、そのあたりのところはもう少し突き詰めた形で状況を観察できればと思っておりますので、日本医師会のほうで御協力いただけましたらよろしくお願いいたします。

○樋口座長 ありがとうございます。

 ほかにいかがですか。熊谷さん、どうぞ。

○熊谷構成員 ありがとうございます。

 今、先生がおっしゃったこととまさしく同じところを御質問しようと思っていたのですが、看護職についてもACPについて「わからない」という方と「反対である」という意見が出ています。幾つかのスライドを見ていったときに、例えばこの26ページもそうですし、46ページでも、ACPに関するノウハウがないということとか、57ページのスライドの中で、教育・研修が必要なのだという答えも出ているので、先ほど、医師会のほうでかかりつけ医研修の中にACPについて入れるというお話がありましたが、現場の看護職についてもやっていかなければいけないのだなとすごく感じたのです。

 ただ、こういう調査結果の状況なので、言っていることがわからないということにならないように、ある程度、研修についてのモデルみたいなものを統一しておかないと、質のばらばらさが出てしまうことを懸念しました。

○樋口座長 ありがとうございます。

 木村さん、どうぞ。

○木村構成員 全日病の木村ですが、全日本病院協会と、日本病院会と、日本精神科病院協会と、日本医療法人協会の4つの病院団体が集まる「四病院団体協議会」というものがありまして、そこでも「人生の最終段階」云々というのは長いので、短く息が切れないように「人生最終医療に関する検討委員会」という名前にしたのです。

 2月15日に第1回目を開きまして、事務局の堤さんにも来ていただいて、このガイドラインの説明などをしていただいた後、いろいろと意見を出し合ったのですけれども、医療代理人と成年後見人の区別がはっきりしないとか、法的な担保が全くないので、このガイドラインどおりにやって本当に大丈夫なのかどうかということが現場では非常に危惧されるところだということでいろいろな意見が出ました。

 普及・啓発についても、今後、さらに四病協団体でも、ここに関するガイドラインの普及とか、ACPに関する、木澤先生がおやりになったようなセミナーをやって、もっと普及・啓発を図っていったほうがいいのではないかという意見も出たのですけれども、今後、どんどんそういう面で病院団体として話を進めていきたいと思っています。

 ですから、その中で医療代理人と成年後見人の違いを、家族等ということではなくて、もう少し具体的に出していったほうがいい気がするのです。「家族等」ではなくて、今回の改訂版でそこをもっとはっきりと言ってもらえるようになっているのでしょうか。

○樋口座長 まず、事務局、どうぞ。

○堤在宅医療推進室長補佐 事務局でございます。

 まず、先ほどの熊谷構成員の御意見につきまして、厚生労働省としましては、26年、27年度に「相談員研修」と言います、患者さんや家族に相談をできる体制を整えようというモデル事業を行っておりまして、その後、28年、29年度と、先ほど、木澤構成員からの資料の1番目にもありましたけれども、全国8ブロック12カ所で、今年度は約900名以上の相談員研修というものを行ってございます。

 その中では、これは厚生労働省のガイドラインをしっかりと理解していただくものというのが一番大きな柱ではありますけれども、コミュニケーションスキルの一つとして、アドバンス・ケア・プランニングがどのようなものであるのかを、ワークスタイルを通じて学んでいただく場を設けているところでございます。

 今後、どのようにこのような研修を広めていくかについては、我々のほうで質と数ともにどのように行ったらより担保できるかは引き続き検討してまいりたいと考えてございます。

○樋口座長 ほかにはいかがですか。どうぞ。

○権丈構成員 資料2-3の7ページにある「国民一人一人が、希望する人生の最終段階を迎えることができるようにするために行うものであり、決して医療費削減、営利目的等のために行うべきものではない」はそのとおりだと思います。この方面に関する新聞記者のインタビューなどを聞いていると、医療の投入量がふえるほど、医療の質が高くなるという想定のもとに質問します。

 だから、このあたりのところは、例えば、QODなどを言い始めてくるのは、日本老年学会とか老年医学会などといった医療関係者であること。つまり、QODは医療費とか医療投入量の増加関数ではない、死に向かう医療の質は医療投入量の単調増加ではない。そのあたりのところは、医療関係者が言って初めて意味があるところがありますので、根拠は老年医学会とか老年学会が言っていると言う記述が欲しいと思います。

 つまり、QODという死に向かう医療の質などを極大化する医療と、現実が乖離しているのだというような医学的根拠があるというか、医療関係者が言っているのだというところを言わないといけない。終末期医療の在り方の話は、いつもすぐに医療費削減、医療費抑制、医療を少し抑えるということになるのですが、臓器別に教育されて、死を敗北だと考えている医療関係者が、心の限り医療を尽くすとQODという死に向かう医療の質が極大化しなくなるのだというところが、老年学会とか老年医学会の根っこの部分にあるわけですけれども、そのあたりがしっかりと伝わるようなところもここに少しあったほうがいい気がいたします。

○樋口座長 きょうも時間が限られているので、資料2-1、2-2、2-3について全般的にまず御意見を伺ってとは思っているのですけれども、ある意味では取りとめもなくなるというか、なかなか難しくなる。

 もちろん、今までの御意見はそれぞれについてポイントを突いたものだと思うのですけれども、順番立てて、できるだけ短い時間でとは思っているのです。

 まず資料2-1で、資料3を見ていただくと、今回は意識調査ありきでこういう検討会をやっているわけですから、これは非常に重要なものであることは間違いない。

 その結果についてなのですけれども、例えば、資料3は別冊で「意識調査報告書」という形でまとめられることになっていますけれども、今、権丈さんが言われたのは、当然、数字がずっと並びますが、結局のところ、どうしてなのかまではわからないわけですよね。そこまで聞いているわけでもないですし、なかなか簡単に答えられない問題も実はある。だから、どこかでチェックすればいいというわけにもいかない。

 何が言いたいかというと、これは事務局にお願いなのですけれども、これで一つ一つについて、こういう問題について聞いてみましたら、こういうことになりました。それに対して、一つ一つの結果について、何々が3割に上りますとか、そういう説明がついているものもあるのですけれども、まず全体としての私の印象は、5年か6年前の調査結果に比べて、超高齢社会になっていることが我々一人一人にも身近になってきていることが調査結果にあらわれている気がするのです。その程度に抽象的な話でいいかどうかはともかく、前回に比べてこういうところがポイントです。それは解釈を含むことになりかねないので、なかなかやりにくいから数字だけ出すというお話になると思うのですけれども、少なくとも事実は摘示できるはずなので、前の調査に比べてこういう質問が新たに加わって、こういう回答が出てきましたとか、少しポイントを幾つかまとめていただくことができないだろうか。

 あるいは、逆に意識調査の報告書と、後で出てくる報告書の骨子案がありますよね。資料2-3は、実は骨子案の中身を言っているわけで、こういう調査結果がありますから、こういうところの普及・啓発が大事ですという連携か、あるいは両方は難しいとしたら、別冊の意識調査報告書に、解釈を押しつけることはできないかもしれないけれども、何かこういうところに注目してくださいというぐらいのものを、余りたくさんあるとどうしようもないと思うので5点挙げるとか、そのようにしていただくと理解が早いというか、それに対してまた異論が出るかもしれないのですけれども、それはそれでいいことなのです。

 だから、この意識調査結果の生かし方で、報告書のところとどこかで連携させるためには、参考資料の中でもいいし、本文の中で出てきたらいいと思っているのです。

 2つ目は、より内容に即して、2-3を1ページずつもう一回見ていただきたいのですけれども、これは事務局がつくった、報告書のたたき台になるようなことなのです。

 一番重要なのが、最後のところにあると思いますけれども、まず1ページ目から見て、普及・啓発の目的と必要性を、このままの文章にはならないと思いますけれども、こういうものを骨子として書いていいかどうか。それについて、こういうことも加えるとか、ここはどうかということがあれば、御意見を伺いたい。

 普及・啓発の方向性については、対象を4つに分けて一応、区分をして、こういう点がそれぞれ大事ではないかということであとは続いていますね。ちょっとだけ申し上げておきたいのは、6ページ目で4つの対象に分けた「マル4 国民全体」の中で、「国」のところでは、この会議でも出てきた、何かの記念日の制定とか、イベント的なものをつくるのも一つの案である。eラーニングもそうでしたね。

 「ACPについて国民に馴染みやすい名称の検討」というのが、実は私もない知恵をひねって一言だけ言うと、例えば、最近は「おくりびと」とかいろいろな言葉があるから「かわりびと」。これは身がわり役なのです。ACPではなくて医療代理人のほうですけれども、アドバンス・ケア・プランニングのほうも、カタカナだけではなくてとかいろいろ申し上げたのですが、国民になじみやすい名称の検討を、少し先送りかもしれないけれども、もう少し広い範囲で聞いてみるとか、それ自体が普及・啓発の手段になるかもしれないという発想の転換をしていただく。そういうことを含んでいるわけですが、ともかく普及・啓発を4つの対象に応じて、こういうことを考えてみましたというのがあります。

 最後の(4)と(1)が大もとなので、1ページ目のところの「普及・啓発の目的と必要性」が基本でいいかどうかと、最後の7ページ目に留意事項がありますね。基本原則はここでまとめている形でいいでしょうかというのと、これは最後に事務局への質問で、最後の留意事項というのは、資料3の報告書でいうとどこに入れるのでしょうか。一番初めの「2.現状と課題」というところですか。あるいは何かまとめをつくって、こういうことに注意しながらやっていくということで、ここは4で終わってしまっているのですけれども、4の最後に5を入れるというお考えなのか。あるいは報告書には入れないで、我々の留意点だと考えるのか。7ページの意義について一言伺った上で、皆さんに1ページ目と最後の7ページ目について、再度見ていただいて、こういう基本でいいかどうかを伺いたいと思います。事務局、どうですか。

○山口在宅看護専門官 留意事項の取り扱いについてですけれども、資料2-3の冒頭にありますとおり、普及・啓発に当たっての留意事項として記載していきたいと考えております。並べて見ていただいております資料3の3の(4)という形で、普及・啓発全体としての留意点として記載していきたい考えでございます。

○樋口座長 ここに入れるのですね。わかりました。

 1ページ目が、3の「1)普及・啓発の目的と必要性」のところに入る。

○山口在宅看護専門官 おっしゃるとおりです。

○樋口座長 わかりました。私の見落としで申しわけない。

 それでは、皆さんに資料2-3の1ページと7ページ目について、御意見があれば伺いたいと思っているのですが、いかがでしょうか。町野さん、どうぞ。

○町野参考人 先ほどの調査の結果が、報告書のほうに生きてくることが必要ではないかと思います。

 今回行われた調査で注目すべきことは、ACPについての質問が初めて今回行われたのです。その前には、リビングウィルについての調査が延々と行われてきて、大体みんな趣旨には賛成である。しかし、法制化することについてはそれほど積極的でないということで、安定している状態です。ACP、私も話題になるまでほとんど何も知らなかったのですが、これを知らないのは恐らく普通の人がそうだったと思いますが、ACPの説明を聞いた上でこれだけの賛成があらわれているのは、むしろかなり注目すべきことではないかと思います。

 そういうことからすると、留意事項といいますか、報告書の中の冒頭にある、一体何を進めるかということについては、単純に今までのような、リビングウィルによって自己の意思を表明することだけではなくて、その人の意思に沿ったケアと医療を最終段階で実現するための方策が必要ではないか。そのためにACPに注目すべきであるという観点でつながってくるのではないかと思います。

○樋口座長 ありがとうございました。

 やはりこの意識調査の報告が出てきているわけで、しかも質問も工夫をしたり変化もしたりしている。対象も広げてはいるのですけれども、そのような中からこういうことがうかがわれる。

 つまり、この検討会は、最後のまとめとしての報告書は多分、2つの要因・要素から出てくると思うのです。

 一つは、ここにおられる方がまさにこういう問題に関しての経験者・有識者であって、それぞれの経験、背景をもとにして、いろいろなことを言っていただける。もちろんそれが報告書として中に入ってくるわけです。

 それ以外に、世論調査という形で意識調査が出てきているので、それを両方取り込んで報告書ということになるのが普通だと思いますから、それをどういう形で工夫するかということをもう一歩考えてみようということでよろしいですね。

○山口在宅看護専門官 具体的にどう入れるかはまた御相談させていただくことになろうかと思いますけれども、特に普及・啓発に関係するような調査結果は報告書に入れられる形で考えてみたいと思っております。

○樋口座長 お願いいたします。

 ほかにどうですか。報告書の筋に当たる「3.国民への普及・啓発」の検討会なので、資料3でいうと3のところが重要になる。後でガイドラインの話は別にあります。

 権丈さん、お願いします。

○権丈構成員 私は比較的、この問題には何十年も前からではなくて、ACPが出始めている段階からかかわってくるわけですけれども、「ACP」という言葉であるがゆえに非常に受け入れやすかったというのがあります。それまでは、物すごく議論が錯綜している危ないテーマなのだというところに、「ACP」という言葉があって、すっとみんなが入ってくる状況になれる。そして、医療を取り巻く状況というのは、複雑性と不確実性といろいろな状況がある。そうした特性に対応していくために、「ACP」という繰り返しやっていくシステム以外に何か考えられるのかというのがあるわけです。

 「ACP」という言葉は、私は意味がわからなくてもいいけれども、いずれこの言葉が一般的になるから、10回唱えて覚えておいてと言っているわけですが、この言葉であるがゆえに、そういう話もできるのかなと思います。

 そして、どの年齢層を対象としてやっていくかというところで、退職等のライフイベントとか退職セミナーというのは、ACPを普及させようとする今の退職者たちである第一世代にこれをやると結構抵抗があるのではないか。この前も言いましたけれども、ACPを普及・啓発しますと言ったときに、第一世代は全員今から始まっていくことになります。数十年後に退職を迎える第二世代は若いときからACPを知っているので、退職等のライフイベントでも教えてもらうというのは、若いときに学んだ知識を復習するという受け取り方になるのでしょうけれど、それは、いきなり第一世代の退職等のライフイベントで初めて知ることになるのとは話が違うかもしれないので、ここは気をつけたほうがいい。というぐらいに、デリケートにこの問題を考えている私から見て、「ACP」は割と普及しやすい言葉として入ってきた気がしております。

○樋口座長 ほかの先生方はいかがですか。木村さん、お願いします。

○木村構成員 資料2-3の7ページなのですけれども、先ほどもちょっと出ましたが、「決して医療費削減、営利目的等のために行うべきものではないこと」と言っていますけれども、これを言ってしまうと、余りにも生臭いというか、もう少しソフトに言ったほうがいいのではないか。本当にこのような形で出してしまうと、全然そんなことは考えていませんよ、それは本当かと言われてしまう可能性もあるので、特に営利目的になることはまずないと思うのです。ただ、医療費削減は本当にないのですかと言われると、よく考えるとそれも絶対ないとは言えない。しかし、希望する人生の最終段階を迎えることができるようにというのが本来の目的ですので、ここのところは「経済的理由」などと言ったほうがいいのではないか。「営利目的」はやめたほうがいいかなと思います。「医療費削減」を余り言ってしまうと、よろいの下から衣が見えている感じがするので、「経済的理由から」などと言ったほうがいい気がしているのです。

○樋口座長 ありがとうございます。

 川平さん、どうぞ。

○川平構成員 川平です。

 資料2-3の6ページの、「マル4 国民全体」を対象にした普及・啓発のところですけれども、どうしても死に向かう医療みたいな感じでの啓発となると、とても暗いものにはなると思うのです。そうではなくて、今、「地域包括ケアシステム」というものが広がりつつあるのですけれども、“病気とか障害を持っていても、住みなれた地域で自分らしく生活していこう”というのがこの考え方なのです。それで、最終的に自分らしく生活することの最後が死(どのように死ぬか)ということになると思いますので、今、ちょうど推し進めている地域包括ケアシステムの一つの流れとして、このACPというものを取り上げてみてはどうかと思います。

 もう一つはちょっと違うかもしれないのですけれども、自分の死についてついて考えるのを嫌がる方もいらっしゃいますが、同様なものとして自殺対策の進め方があります。自殺対策も、以前は寝た子を起こすなというものがありましたけれども、これも国が中心になって今は取り組んでいまして、先進国に比べて非常に自殺が多い日本だったのですけれども、今は少しずつ減少しています。今回の案では、記念日の制定というものがありますが、自殺対策では、9月には自殺予防週間とか、3月には自殺対策強化月間を設けるなどして、広く国民に普及しています。また、ゲートキーパーという役割の人を設けていますが、そのようなものをACPにもつくって、そのような形で広く普及してはいかがかなと思います。

 以上です。

○樋口座長 ありがとうございました。

 斉藤さん、どうぞ。

○斉藤(幸)構成員 日本難病疾病団体協議会の斉藤でございます。

 非常に大事なところが、最後のページの留意事項だろうと考えております。

 先ほど、木村先生からもお話がありました、医療費の削減の件なのですが、私どもは患者団体を抱えておりますと、真っ先にここが実は出てまいります。今回の検討会も、医療費削減あるいは何回か出てきておりましたが、特定の医療、例えば、胃ろうとか人工呼吸器などに関して、可否を論じているのではないかとか、やるべきではないなどということを論じているのではないかというのは、タイトルを見ただけでぱっと反応してくる患者さんは多いです。そういうところを、そうではないのだという一文は、誤解を受けない文章がどうなのかというのは非常に難しいのですが、入れていただきたいと思っています。

 細かい方法については、また後ほど、違う場面でお話しさせていただきたいと思います。

○樋口座長 ありがとうございます。

 内田さん、どうぞ。

○内田構成員 内田です。

 今の斉藤さんの御意見に賛成です。

 木村先生の御懸念もわかるのですけれども、少なくともこの文書は、医療費削減のために「行うものではない」ではなく「行うべきものではない」という表現になっていますし、今、斉藤さんが御指摘されたような御懸念に対して、明確に医療費削減目的ではないと報告書ではうたうべきだと私は思います。

 もう一点は、2ページの啓発・普及の対象の表現なのですけれども、「身近で支える立場にある家族等」と「等」はついているのですが、個人的には、例えばここは「家族・友人等」にしていただけたらと思っています。その趣旨は、家族、特に嫁・しゅうとめが介助者になるというのは前世紀のことですので、「等」がついていても、家族だけが強調されると何となくそういうプレッシャーを感じるのと、そもそも単身者が大変増えていますので、友人でなくてもいいのですけれども、家族に加えて何か並列的に書いていただいたほうがいいと思います。

 ちなみに、ガイドラインのほうも「家族等」という表現は多いのですけれども、ガイドラインについては解説編のたしか注12に「家族等」の解説の注釈がありますので、それに平仄も合わせる形で、報告書も頭から読んでいったときに何かあったほうが望ましいということです。

○樋口座長 ありがとうございます。

 ガイドラインのほうも一定の時間をとらないといけないと思っているのですが、ともかく紅谷さん、松原さん、お願いします。

○紅谷構成員 紅谷です。よろしくお願いします。

 資料2-3の目的と必要性については、非常にまとまっていてよいと思うのですが、一つは川平さんと同じような意見になるかもしれませんけれども、できればもう少し明るく前向きな表現が含まれるとよいと思います。どうしてもネガティブなことを頑張って、我慢して話さなければならないみたいな雰囲気になると、一般の方にどう広がるかが少し懸念といいますか、本人の意向に沿った医療やケアをみずから選択し続けることは、人生を最期まで楽しく過ごすためになるという含みがあるといいと感じました。

 また、啓発の方向性で、マル1からマル4の4つに分けて考えるというのは非常に大事だと思うのですが、こう分けると、実は逆に「マル4 国民全体」に普及することが一番難しいものになると思うのですけれども、マル1、マル2、マル3のほうは比較的やりやすく、対策も考えやすいので、分けたためにマル1、マル2、マル3ばかりに集中してしまうと、結果的に、国民からするとACPは病院に行ったらやるものだという意識がどんどん広がってしまう面もあって、やりにくいマル4にどう力を入れていくかという議論は非常に重要ではないかと思います。木澤先生の市民公開講座に今の段階で来られる方は、一般市民とはなかなか言いがたいというか、意識の高い方々だと思いますので、そういう方々、さらにはアンケートでも出ているような、関心どころか気づいてもいらっしゃらない方にどう届けるかが一番難しいのですけれども、そこの議論をちゃんと別軸でやるために、この4つに分けることはすごく大事だと感じました。

 そして、5年後ぐらいにまたとるかもしれないアンケートのときに、国民がどれぐらい知っていて、どれぐらいかかわっているのを目標にするかも少し議論してもいいのかなと考えました。

 以上です。

○樋口座長 松原さん、どうぞ。

○松原構成員 日本医師会の松原でございます。

 先ほど、権丈先生がおっしゃった、医療の投入をすればするほど質がよくなるということはないという視点は物すごく大事なことだと思います。むしろ、患者さんの希望に添って対応してこそ、人生の最終段階においての医療並びにケアの質は高まると思います。そこのところをしっかり明記すべきではないかと思います。

 もう一点は、そのときにおっしゃったように、私ども日本医師会はかかりつけ医の講習にACPを入れると同時に、別の広報手段を持っています。大体ACPを医者が知らないということ自体が適切に対応しなければならないことだと思いますから、いろいろな広報手段をもって対応してまいります。

 先ほど、難病の患者さんの代表から言われたのはもっともなことだと思います。病気と闘っている難病の方々を除くことも明記すべきだと思います。そうしないと、人工呼吸器を外すのか適切なのではないかという意見が出たら、これは闘っている患者さんにとってはつらいことでありますので、明記が必要だと思います。

 最後に、家族というのは確立した概念です。あとは誰がやるのかというところで議論が残るわけですけれども、「等」だけつけるとわからないので、「家族・信頼できる者等」とそこで少し広げて、あとは解説のところで広げてはどうでしょうか。もう一つの議論であるところの医療代理人をどうするかということも、明記していただいたほうが、法的な根拠がなくても、医療者としては対応しやすいのではないかと思います。

 以上です。

○樋口座長 ありがとうございました。

 では、金子さん、どうぞ。

○金子構成員 金子でございます。

6ページの「(3)普及・啓発の方法」のところで、「マル4 国民全体」の「企業」のところは私もとても賛成なのですが、もちろん出産、結婚、退職などのライフイベントや、介護休業などに関連づけるだけではなくて、今、働き方改革で「人生100年時代」というキーワードで、特に4050代ぐらいの世代の方々が次のことを考える機会の提供が多分、今後ますます増えてくるのではないかと思うのですけれども、ここで人生の終焉を見据えた上で、ACPの重要性や必要性を学べる機会提供も加えられるのではないかと思います。そして、いわゆる「終活」のフェアやセミナーが全国各地で行われていますが、ここでACPを取り上げていただくのも非常に入りやすいのではないでしょうか。興味があって来る方あるいは何だろうと来る方もいるので、考え方を広く伝えやすいと思いますが、反面、今は「終活」がビジネス主導になっている側面もありまして、営業活動の一環に使われてしまうおそれも考えられるので、7ページ目の「営利目的」にも関係しますが、これは営利目的ではないことをきちんと伝える必要があるのではないかと思っています。

  以上です。

○樋口座長 そうですね。いろいろなセミナーがありますから。

 もう一つのきょうの議題である、プロセスに関するガイドラインの改訂のところへ移りたいと思いますけれども、先ほど川平さんあるいはほかの委員の方もおっしゃってくださったように、「普及・啓発の目的と必要性」のところで、これは人生の最終段階のところの検討会なのだから、どうしてもそういう話にはなるのだけれども、死ぬという話だけではなくて、これからのガイドラインとも関係があると思いますけれども、例えば「人生の最終段階において、本人の意向に沿った医療・ケア」は、「最終段階」にも相当の幅が本当は出てきているわけですよね。どんどん延びているという話ですから、そうすると、「医療・ケアと自分らしい生き方」あるいは「命の大切さ」ということが、自殺の問題までどこまで含まれるのかが本当は難しいですけれども、高齢者に自殺があることも事実ですし、プラスの話で考えていくことをもう少し強く出せるようなら、出してみたらいいのではないかと感じました。

 それでは、また後で御意見を伺うチャンスはあると思いますので、もう一つ、いわゆるガイドラインの改訂についても、いろいろな先生からいろいろなことを言っていただいて、とりあえずこういうものでどうでしょうかという形で、きょう事務局で用意しております。

 これについて議論を始めたいと思いますけれども、まず事務局から説明をいただきたいと思います。

○堤在宅医療推進室長補佐 事務局でございます。

 それでは、資料1-1から1-4までをお手元に御準備ください。

 資料1-3が、ガイドラインの改訂の本編、1-4がその解説編になってございます。

 1-3、1-4のそれぞれを読むことは、時間的にも効率的にも非常に厳しいので、資料1-1が「『人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン』の前回からの主な修正点」をまとめたものになっておりますので、適宜、1-3と1-4は御参照いただきながら御説明させていただきたいと思っております。

 まず、資料1-1の「1)表題について」は、

・ガイドラインの内容が、「医療・ケア」で記載されているため、表題も「医療・ケア」とすべきではないか。

・策定時から10年たち、いまは「医療」に「ケア」も含まれており、このままでよいのではないか。

等の御意見がございました。

 今回、改定案としましては、表題を「医療・ケアの決定プロセス」に修文しているところでございます。

 続いて「2)ガイドラインの目的の追記」でございます。

・目的が、「死に向かう医療の質を高めるため」であること等も追記すべきではないか。

などの御意見を頂戴しました。

 今回、1-4の解説編の2ページ【ガイドライン改訂の経緯】に、「よりよい最期を迎えるために」といった内容を追記してございます。

 続いて、「3)ガイドライン策定時の趣旨が変わる点」についてでございます。

・策定当初の趣旨である、インフォームドコンセントとチームでの決定についての内容が薄れているのではないか。

との御意見がございました。

 今回、事務局としましては、ガイドライン本編2の「(1)本人の意思の確認ができる場合」の記載の一部を、

本人と医療・ケアチームとの十分な話し合いを踏まえて、本人が「合意した上で行う」意思決定を「基本とし、多専門職種から構成される医療・ケアチームとして行う。

という内容で修文しております。

 「4)アドバンス・ケア・プランニングについての言及」でございます。

・アドバンス・ケア・プランニングの普及等のためにも、名称を記載した方がいいのではないか。

等の御意見を頂戴しました。

 今回、解説編の2ページ【ガイドライン改訂の経緯】に内容を記載してございます。

 「5)家族『等』における、範囲について」でございます。

・これから家族がいない人が増えるので、「家族・代理人」とするべきか。

・医療現場で普及するためにも、代理人の役割について記載すべきではないか。また、「代理人」に変わる名称をつけ、普及すべきではないか。

・策定時から家族は法的な意味での家族に限らず、信頼を寄せる人として記載しており、「患者が信頼できる者」として注釈に記載してはどうか。

・患者本人と同じような強い権限を法律で定めているような誤解を与えないよう「代理人」といった法律で用いられるような文言は避けた方が良いのではないか。

等がございます。

 こちらは、ガイドライン本編1のマル1につきまして、「本人が家族等の信頼できる者も含めて」に修文しております。また、ガイドライン解説編の「*注12」に「(親しい友人等)」との文言を追記させていただきました。

 「6)その他」の項目でございます。

・家族等の信頼出来る人は複数名存在してもいいのではないか。

という御意見がありまして、解説編の「*注12」に「複数人存在することも考えられます」と追記を行っております。

・意思決定支援をする際に、どのような情報が必要か盛り込んだほうが良いのではないか。

という御意見もございまして、解説編の「*注1」に「本人の心身の状態や社会的背景に鑑み、受ける医療・ケア、今後の心身の状態の変化の見通し、生活上の留意点等」の追記を行いました。

・患者といった表現を在宅や介護に合った表現にしても良いのではないか。

という御意見を受けまして、ガイドライン本編、解説編ともに「患者」という表現を全て「本人」に、「病状」という表現を全て「心身の状態」という形で修文を行っております。

 続いて、資料1-2でございまして、こちらは前回の検討会の後、改訂に係る意見公募を行ったものでございます。以下のとおりに、e-Govにおいて改訂のポイントを公表し、意見を募集いたしました。

47件の御意見をいただきまして、主な御意見を以下のとおりにまとめております。

マル1 介護現場においても活用できる標題にするべきではないか。

マル2 介護の現場でも利用できるガイドラインとしてはどうか。

マル3 「ACP」という文言を追加し、ACPの普及に努めてはどうか。

マル4 日本人は、人生観を考える機会は少ないので、学校教育の段階から人生観のみならず、将来の資産設計まで含めた、いわゆる「トータルライフプラン」の教育が必要なのではないか。

等の意見がございました。

 続きまして、資料1-3でございますが、先ほど、1-1でお示ししたものが、こちらのガイドライン改訂の本編にございます。「医療・ケア」といった表記でございますとか、「患者」の部分を「本人」に変える等の文言の修正を行っております。

 また、2の(1)のマル1につきましては、

マル1 方針の決定は、本人の状態に応じた専門的な医学的検討を経て、医師等の医療従事者から適切な情報の提供と説明がなされることが必要である。

 その上で、本人と医療・ケアチームとの十分な話し合いを踏まえて、本人が合意した上で行う意思決定を基本とし、多専門職種から構成される医療・ケアチームとして行う。

と修正を行っております。

 続いて、資料1-4でございまして、ガイドラインの解説編でございます。

 2ページ目の真ん中やや中段下に、アドバンス・ケア・プランニングに関する注釈を加えさせていただいております。また、最後のところには、「より良い最期を迎えるために」といった目的の追記を行っております。

 その他、これから末尾に向かいましては、先ほどの資料1-1の修正を反映させているところでございます。

 事務局からは以上です。

○樋口座長 ということなのですが、いかがでしょうか。

 まず、資料1-1で、主要な修正点について、これでいいかどうかの御意見を伺うことと、その際に、これはパブリックコメントもとっていますので、パブリックコメントでこのような点が出てきましたということも勘案しながら、御意見を伺いたいと思います。

 あと、1-3と1-4で、そもそも文章自体がありますね。結局、これを一つ一つやる時間は多分きょうはないです。しかし、こちらを見ながらということですけれども、資料1-1の論点が6点あるわけで、これをまず一つ一つ御意見を伺って、こういうことでいいかどうかを決めた上で、もし時間があれば、これは新しいガイドラインについてのたたき台なので、細かな文章について御意見を伺いたいということです。

 まず、資料1-1の表のページの、表題、目的の追記、こういう表現で「(1)本人の意思が確認できる場合」の記載の一部の修文についてはいかがですか。金子さん、どうぞ。

○金子構成員 金子でございます。

 資料1-1の「2」ガイドラインの目的の追記」の「より良い最期を迎えるために」の追記の部分は、もちろん賛成なのですが、このガイドラインの解説編のところの文言を読んでいくと、「家族等の意見を繰り返し聞きながら、本人の尊厳を追求し、より良い最期を迎えるために」と来るのですけれども、誰のためのものなのかをここでもう一回強調したほうがいいのではないかと思いまして、「本人にとって」とか、「本人」という言葉を入れたほうがいいのではないかと思います。というのも、話し合いで意思が確認できないと、声が大きい人の話が通り、その人にとって「より良い」というのが一体誰にとってのものなのかが曖昧になる現実もあると思うからです。ここはもう一歩丁寧に表現ししたほうがいいのではないかと思いました。

○樋口座長 清水さん、お願いします。

○清水構成員 樋口先生のおっしゃることに従って申します。

 まず「1)表題について」の「医療・ケア」になさったということについてはもちろん賛成なのですが、それに関連してなので今、言ってしまいたいのですけれども、本文の中で「医療・ケア」とケアまで含めたことが反映されていない部分があるので、そこも一貫して「医療・ケア」という考え方で貫いていただきたいというのが提案の一つです。

 具体的には、本文で言いましたら、2の決定手続の「(3)複数の専門家からなる話し合いの場の設置」の中で、「妥当で適切な医療内容についての合意が得られない場合」が2回繰り返されていますけれども、ここを「適切な医療・ケアの内容」か「治療・ケアの方針」かにするということです。そのように、ただ「医療内容」ではなくて、医療とケアの両方にまたがる内容に変えて、一貫させていただくことが必要かと思いました。

 いろいろありますけれども、差し当たっては以上です。

○樋口座長 権丈さん、どうぞ。

○権丈構成員 金子構成員の話をサポートする話になるのですけれども、この会議の第3回に松原委員のほうから提出していただいた「超高齢社会と終末期医療」という生命倫理懇談会の答申がございます。それの19ページに「死すべき運命にある人間の尊厳ある死を視野に入れた QODQuality of Death)の実現、すなわち、死に向かう患者への医療の質を高めることにより、患者の満足を実現する仕組みづくりが重要である」という言葉があります。ここでは「患者」という言葉を使っていますけれども、ここは「死に向かう本人への医療の質を高めることにより、本人の満足を実現する仕組みづくり」という、誰のためのものなのかはある程度見える形で表現してあります。そのようにまとめられたほうがいいのかなと私も思います。

○樋口座長 ありがとうございます。

 ほかにいかがですか。

 それでは、別に急ぐことではないのですが、後ろのページに参りましょう。

 これは「アドバンス・ケア・プランニング」という言葉自体は入れようという話です。このガイドラインにおける定義みたいなものも今度は入れているわけです。

 それから「家族等」をもう少しはっきりさせて、家族でなくてもということですか。「代理人」とはなかなか言いがたいというのもあってということで、「信頼できる者」という言い方にしているところですか。

 「6)その他」ですが、家族等の信頼できる人は複数名いていいと思います。

 あとは「医療・ケア」ですから、今、清水さんがおっしゃった、今までは「医療」だったから「患者」としていたものを、もう少し広げたものだから「本人」の話にしてということなのですが、それ以外にも医療だけみたいな文章が残っているところがあるから注意してくださいという話がありました。

 この後ろの4、5、6の部分でほかにどうですか。木村さん、どうぞ。

○木村構成員 アドバンス・ケア・プランニング(ACP)については、別に無理に日本語に直す必要は全くなくて、このまますっと入ってきてしまっているので、非常に我々の間でも使われておりますから、このままでいいのではないかと思います。無理に訳すと、何かすっと来ないというか、このままのほうがいい。

 もう一つは、パブリックコメントの6番目のところに「『家族等』に成年後見人や福祉関係者が含まれていることを明確に記述してはどうか」と、ここでも既に「成年後見人」という言葉が入ってきてしまっているのですけれども、成年後見人と医療代理人は全く違い、ここでも誤解を招いているところがある。「成年後見人」という言葉もできてしまって、実際に動いているわけですね。そうすると、このガイドラインにおいて、「信頼できる者」とか、余りはっきりしない言葉にするよりは、「医療代理人」という言葉にはっきり決めたほうがいいと思います。そうしないと、何だかよくわからないのです。

 ですから、「医療代理人」という言葉があって、その医療代理人とはこういうものですという説明をきちんとしておいて、この「医療代理人」という言葉を使っていることにしたほうがわかりやすいのではないか。そうでないと、「親しい者」とか「信頼できる者」では、そうすると成年後見人かという話になってしまって、どうも話が変な方向に行ってしまうのではないかと思いますので、「家族・医療代理人」に決めたほうがいいと思います。

○樋口座長 まず、斉藤さん、どうぞ。

○斉藤(幸)構成員 日本難病疾病団体協議会の斉藤です。

 こういう報告書のつくり方とかガイドラインのつくり方は承知しているわけではないので、発言が奇異になるかもしれませんが、例えば、ページが少ないほうのガイドラインのところに、解説編の3ページにある【基本的な考え方】の「1)」ぐらいが入るといいのかなと、私どもはぱっと見たときに思います。ただ、これは医療関係者とか介護の方々が見る専門的なものなので、こういうものが一般的だというのでしたらそれはそれで結構です。

 もう一点は、解説編の5ページに「マル4 生命を短縮させる意図をもつ積極的安楽死は、本ガイドラインでは対象としない」と書いてあるのですが、これは在宅ケアのあり方という1の表題ですよね。4ページの1を受けて、マル1、マル2、マル3、マル4となっているので、これはここではなくて、むしろ【基本的な考え方】とか、このガイドラインの中では対象としないということで、別のところに行くと一般的にはすっきりするのかなと思っていたのですが、いかがなのでしょうか。

○樋口座長 これはコメントと質問の形にもなっているのですが、今の斉藤さんの御指摘はいかがですか。

 これは私の誤解でなければ、私は最初のガイドラインを策定するときにもかかわっているので、ガイドラインは本来、短いほうなのですけれども、これだけでは足りないので、解説をつけましょうという話になった。解説は「です・ます」調になっているのですけれども、本当はガイドラインがあって、すぐその後に【基本的な考え方】が1から5まであって、その下に注がちゃんとついている形で一番初めはできている。もちろん、第1点は、ガイドライン本文を取り出すと、こうやって解説編とこのように分けられますという趣旨だと思うのです。ただ、見方としてはうまくくっつけてという話は今までもやってきたし、十分できる。

 2つ目も、私が答えるよりは事務局のほうで答えてくれたほうが適切な答えができるかもしれませんけれども、「積極的安楽死は、本ガイドラインでは対象としない」というのは、そのガイドラインをつくったときのいきさつがあるのです。繰り返しになりますけれども、射水市民病院事件その他、とにかく刑事事件化するようなものがあって、「安楽死」という言葉もなかなか難しいですけれども、管を外してどうのこうのという事件があったときに、一番大事なのは終末期医療の質のあり方で、その中で1人のお医者さんが1人で判断して管を外すのではなくて、医療・ケアチームでやらないといけないとか、そういうことをまず基本的に並べた上で、その中でこういう積極的安楽死は、日本では一応、犯罪となっていますから、そういう話ではありませんということは、いきさつ上、ぜひとも書いておきたいあるいは書いておかざるを得なかった。その場所が今となってここがいいかどうかは、検討の余地があるかもしれません。

○斉藤(幸)構成員 据わりの問題だけでお話しさせていただいております。場所に違和感があっただけです。

○樋口座長 わかりました。

 では、事務局からお願いします。

○松岡在宅医療推進室長 ガイドラインの薄いほうとおっしゃっていただきましたのは、省略版ではなくてこれが本体でございますけれども、このガイドラインを見ていただきますと、「1 人生の最終段階における医療・ケアの在り方」となっておりまして、このガイドラインを貫く基本的な考え方を第1章で述べておりまして、その中に4番目として「積極的安楽死は、本ガイドラインでは対象としない」としているわけです。

 解説編のほうは、まず、最初の2~3ページは、本でいいますと前書きのようなものでございまして、どうやってつくったかという経緯のお話と、このガイドラインを貫く考え方をまずは書いてみました。

 その次のページ以降は、ガイドラインの一つ一つの条文を解説するという形になっているので、ここにマル4の「積極的安楽死は、本ガイドラインでは対象としない」という、第1節の4番目に書いてあるものを持ってきたということでございます。基本的にはあり方の中で読んでいただくという、あくまでもガイドラインの技術的なつくり方でございまして、このガイドラインを貫く考え方としては、積極的安楽死は対象としませんと言っているということでございます。蛇足でしたら申しわけございません。

○樋口座長 ありがとうございました。

 清水さん、どうぞ。

○清水構成員 まず、今、話題になっているページのアドバンス・ケア・プランニングに関してなのですが、机上配付資料に私の意見をまとめて書かせていただいていまして、それの1番がこれにかかわるところになるのですが、アドバンス・ケア・プランニングはこのまま「ACP」で当面はよろしいのではないか。特にガイドラインは、医療やケアの専門家の方たちに向けてのものですし、その方たちがそもそも「ACP」という言葉で通ってしまっていますので、よろしいのではないかと思います。

 私がそれにつけ加えて修正をお願いしたいのは、アドバンス・ケア・プランニングというのは、例えば、木澤先生のアドバンス・ケア・プランニングを実践なさった中身をごらんになってもおわかりのように、本来、本人の意思確認ができなくなる場合に備えて、あらかじめ考えておくということで、それは現在、アメリカでもイギリスでも、アメリカだったら国立のNIHという研究所、イギリスだったらNHS、いわゆる保健サービスの元締めで書いているアドバンス・ケア・プランニングの定義がそうなのです。

 もちろん、木澤先生がなさっているこの内容もそのようになっていますので、本人の意思確認ができなくなる場合に備えたものなのだということを書いていただいて、「アドバンス・ケア・プランニング」という言葉が日本の中で余りにも膨れ上がってしまって、いろいろなことを何でもかんでもアドバンス・ケア・プランニングと言うのはいかがなものかとおもっています。

 ただし、そうしますと、アドバンス・ケア・プランニングだけでいいのかという話になりますので、アドバンス・ケア・プランニングにそういう限定をつけ加えるならば、その後に「アドバンス・ケア・プランニングを初めとする意思決定支援の概念を盛り込み」、まさに「アドバンス・ケア・プランニング等」というように中身を考えていただければと思います。

 私は、資料1-1の表のページの、一番下の「本人が『合意した上で行う』」という文を加えたと修正点として加えたとおっしゃっていることに関して異論があります。

 「合意」というのは、「本人が合意する」という言い方は変なのです。つまり、誰かと誰かが合意するわけです。この場合は、話し合いに参加している本人を中心として、医療・ケアチームの方あるいは家族等の方が参加していたら、そこでの合意が形成されるということがあって、丸投げされて単独で意思決定するというよりは、その合意が形成されることと、本人がその合意をそのまま背景にしてというか、合意に支えられて、そういう意思決定支援における合意を踏まえて、私はこのようにしたいと意思決定するという意味合いでとったほうがいいのです。

 私は、その机上配付資料では3ページの6というところで、このあたり全体の修正案を出しています。その修正案の中には、原案では「医療等の医療従事者が」何とかと書いてあるところが、そもそも医療・ケアチームの中の医師のような専門の方がお話をするということなのです。そちらのほうに医療・ケアチームが最初に出たので文章がずれているところと、今のその合意について、本人が合意するのではなくて、医療・ケアチームとの十分な話し合いを行って、本人にとっての最善について合意が形成されたことを踏まえて、本人が意思決定を行う。そこで切りまして、その意思決定の内容に応じて、医療・ケアチームは適切な方針決定または方針決定の準備を行う。

 何でこんなことを書いたかというと、アドバンス・ケア・プランニングを念頭に置いているからです。アドバンス・ケア・プランニングも、医療方針について決定する手続の一つですが、アドバンス・ケア・プランニングの場合は結局、最後は本人がこのようにしてほしい、あのようにしてほしいと意思表明して終わるわけです。しかし、それに携わった医療・ケアチームは、この方は現時点ではこういうお気持ちなのだなというので、いざとなったときのために心の準備あるいは記録を残す準備を行いますし、ACPではなくて、実際に今、どういう医療・ケアをするかというときには、本人が合意に基づいてこのようにしたいとおっしゃっていることを受けて、医師ならば投薬のオーダーをするとか、手術の準備などをすることになるわけです。そういう意味で、そのアドバンス・ケア・プランニングも含めた医療・ケアの方針の決定手続のための文章にしていただくことが趣旨でございます。

 合意については、幾つかのところで「合意」という言葉を入れるという提案をしておりますけれども、主たるのはこの6番ですので、以上を申し上げました。

 以上です。

○樋口座長 まず、1つずつということにしましょう。

 後ろのページのアドバンス・ケア・プランニングの普及等のためにも、名称は入れてあるわけですよね。そこへ括弧して、一体それは何なのかということの説明を入れているわけです。解説編の2ページの【平成30年版ガイドライン改訂の経緯】のところへ、「ACP(アドバンス・ケア・プランニング:人生の最終段階の医療・ケアについて、本人が家族等や医療・ケアチームと事前に繰り返し話し合うプロセス)」というごく短い定義を入れているということなのですけれども、清水さんの補足資料で、これにはっきり本人が意思決定をできない場合に備えてというものを入れておいたほうが、もっとはっきりするのではないかということなのですが、これはいかがですか。木澤さん、どうぞ。

○木澤構成員 木澤です。

 ここは大変大切なところなので、しっかり議論をしていただきたいと私は思っていますから、最近の欧米の状況をお伝えしようと思います。

 清水先生がおっしゃったように、NIHでもNHSでも、清水先生がお示しになったものが今のところの暫定的な定義になっているのですが、昨年、重要な論文が2本出ていまして、両方とも国際的な専門家が、合議でデルファイ法という方法をとって定義をつくっている論文です。

 アメリカとイギリス、一つはEAPCといって、欧州の緩和ケア関連の学会がつくって、ホワイトペーパーとして出しているものなのですが、両方とも実は範囲を広げています。私は古典的なもので今まで資料をつくってきているのですけれども、「Shared Decision Making」とアドバンス・ケア・プランニングはどこが違うのかみたいなことが、専門家の中で一番議論の対象になり、一番合意が得られなかった部分なのです。今は専門家及び政策決定者も加わった専門家会議なのですけれども、範囲を広げる方向で欧州・米国ともに検討されていると認識しています。

 今もオーストラリアから専門家が来ているのですけれども、パーソナルコミュニケーションでもどちらにするのだというふうにいくと、広い定義と狭い定義を併記するか、広い方向でいくかということがかなり議論されていると言われています。

 なぜかといいますと、一番の問題は「自分の意思決定能力がなくなったとき」とすると、関係ないと考えて議論しなくなる人たちがかなりの割合でいる。それよりも、自分が人生の最終段階を迎えたときにどうするのか、どう生活するのかのほうがイメージしやすい。

 つまり、自分の意思決定能力がなくなったときのことを想像して、さまざまなことを決めるのがバリアになり得ることから、広げたほうがいいのではないかという議論が近ごろはメーンになってきていると聞いております。

 私は正直、どちらかには決められないし、どちらでもいけるとは思うのですけれども、国民への啓発・普及、そして医療従事者への啓発・普及のどちらで進めるかを決めないと、全然方向性が違うと認識しているのです。

 先ほど、暗い話はやめて明るい話のところに言ったのですけれども、死とかキャパシティーがなくなることに目を背けることはそもそも間違っていると思っているので、そのことと真正面に向き合って、キャパシティーがないときのことを議論するのか、本当に人生の最終段階の過ごし方を議論するのかのどちらかをしっかり決めたほうがいいし、それをしないと骨抜きになると思います。

○樋口座長 清水さん、どうぞ。

○清水構成員 今、木澤先生が言ったことは私も理解しています。私もその論文を読んでいますけれども、この説明の中では、概念を広げるという動きもあると書いてあるのですが、一つはこれに乗っかって、今、木澤先生がおっしゃったように、2つ併記することは確かにあり得るのです。でも、例えばイギリスだったら、より広い概念は、「A」を取ってしまって、ケア・プランニングという広い概念の中でのACPという捉え方がありますので、ここで率先して広げてしまうのはどうかなという感じがしております。

 今まさにおっしゃったように、キャパシティーがなくなったときのことだけを考えるのではなくて、ACPをやっていれば、確かにこれから最期までどのように過ごすかという人生の最終段階の過ごし方について、一般的に考えることがありますので、それはもちろんこの会議の中でも、人生の最終段階で相談員などがやっていくことに含まれると思うのです。

 だから、私はやることをもっと広げることは大事なのだけれども、名前としては差し当たっては限定した名前でいくのが良いのではないかと思っています。

○樋口座長 松原さん、どうぞ。

○松原構成員 これは連続しているのですよね。つまり、だんだん弱ってきて、状況が悪くなってきて、最後に恐らく本人の意思が明確でない時期がやってくるのです。ですから、私は広くとっておくと同時に、最後の段階に本人が意思の表示ができなくなったときの準備もきっちりとやっておかないといけないと思うのです。

 前にも言いましたけれども、サ高住で最後に救急車を呼ばれて、三次救急に行って、誰が意思決定をするのかがわからない状態で、救急担当医はとにかくできることをやります。結局、超高齢者7の人ばかりが来ていて、4050代の人が交通事故で来たときの手当てが十分にできない。そのようなことに絶対にならないようにすることがまず喫緊の課題です。議論をしながら、最後の詰めのところは誰が判断するのかをはっきりさせる。

 そういう意味では、先ほどの医療代理人という概念に基づいて、きっちりと決めておかないと、なあなあの状態だったら何をやっているかがわからなくなります。そこのところだけは、最後はどうなるのだということまで議論した上で表記をしていただきたいと思います。

 以上です。

○樋口座長 なかなか難しい話ですけれども、例えば、一番初めのときは「終末期医療に関するプロセスガイドライン」だったので、経緯としては「終末期」を「人生の最終段階」という言葉に言いかえたという歴史があります。

 ただ「終末期」のときにも、わざわざ「終末期」の定義はしなかったのです。それはお医者さんによると、いろいろな亡くなり方があるわけですよね。がんの場合とか、慢性病とか、最近は「フレイル」という言葉が出てきて、そういういろいろなものがあるので、「終末期」と言ってもいろいろな幅のとり方もあるし、それをガイドラインで何カ月とか決めてもしようがない。それをさらに「人生の最終段階」という形で広げていて、きょうのアドバンス・ケア・プランニングに至っては、今、木澤さんが専門的な話で説明してくださったのですけれども、いろいろ考え方があって、もっと若いうちから死とか生について考えることだって必要だというのも事実なのです。

 だから、このガイドラインは、ここの狭いところだけをとりますとか、こちらのほうですという選択はできないのではないか。結局、結論としてはやや曖昧だけれども、広がって両方が関係している。

 例えば、清水先生がおっしゃったようなことも実はよくわかりますけれども、実際にアドバンス・ケア・プランニングが一番働くのは、本人の意思確認ができなくなる場合で、まさにそれに備えていたアドバンス・ケア・プランニングで繰り返しやっていたから、「大丈夫」という言葉がいいかどうかは別として、大丈夫という話ではないかもしれないけれども、慌てることはなくて、本人はこういう生き方、亡くなり方を望んでいたということがみんなに共有されている状況をつくったほうがいいという話ですよね。

 そもそも、ガイドラインで、本人の意思決定というか、本人の意思が確認できる場合とできない場合で2つに分けてあるわけですから、そういう場合に備えて、アドバンス・ケア・プランニングは考え方だけではなくて実践が大事だと思いますが、今までの「プロセス」という言葉で集約されていたところを、アドバンス・ケア・プランニングという形でもう少し実質化しようという話だと思うのです。

 そうすると、実は本人の意思確認ができなくなる場合に備えてというのは、この構造の中に入っているわけです。だから、それを入れることで、先ほどの狭いアドバンス・ケア・プランニングのような印象をむしろ与えないことも一つの選択肢としてはあると思ったりするのですけれども、これは個人的な意見です。

 清水さん、どうぞ。

○清水構成員 私も今、厚労省が出すガイドラインで選んでしまうのはまずいと思いましたので、今のお話のとおり、入れないで、ただ全体の構造で、ACPは結局こうなのだとも言えるし、広いとも言えるようにしておいて、あとは時代の趨勢で、今のデルファイで出てきたものが勝つか、それとも限定されたものが勝つかで成り行きを見ましょうというのが私の意見です。

○樋口座長 ありがとうございます。

 もう一点、清水さんの指摘で、今度は本文の1ページ目の方針手続で、「(1)本人の意思の確認ができる場合」のところで、文章が変更されているわけですよね。ガイドラインの本文のほうで、

マル1 方針の決定は、本人の状態に応じた専門的な医学的検討を経て、医師等の医療従事者から適切な情報の提供と説明がなされることが必要である。

これは当然ですね。

 「その上で」という話で「本人と医療・ケアチームとの十分な話し合いを踏まえて、本人が合意した上で行う意思決定を基本とし」の部分で、「本人が合意した上で」というのが言葉としてどうなのだろうということですが、どうですか。

○松原構成員 「合意」というのはみんなで合意して決めることで、「同意」というのは、本来は本人が同意するかどうかという単語だと思いますから、何か皆さんが合意したことに対して本人が認めるかどうかは、私は「同意」だと思います。

○樋口座長 「合意」を「同意」にすればいいということですか。

○松原構成員 本人がやるのは「同意」だということです。

○樋口座長 そうですね。早坂さん、お願いします。

○早坂構成員 私もここを「合意」というような言葉に変えてほしいと言ったのですが、できれば「合意形成」という、双方からつくり上げるというニュアンスの言葉にしていただけるほうが、ここでアドバンス・ケア・プランニングには大事な感覚かなと思います。

 その形成するプロセスが実際にはすごく大事で、結果がどちらに行ってもきちんとお互いが、特に患者さんの思いを両者がきちんと聞いた、酌んだというプロセスをあらわせるような言葉のほうがありがたいと思います。

○樋口座長 ありがとうございます。

 ほかにいかがですか。

 これもとっさの判断なのですが、本当のことを言うと、その前に医療・ケアチームと十分な話し合いを踏まえてというところに、本当は合意形成という要素はもう入ってはいると思うのですけれども、それを踏まえて本人が同意した。「同意」までははっきり書かなくて「合意」という言葉を入れたいというお考えが強いのなら、それはそれでと思います。

○佐伯構成員 「合意」という言葉を同意の意味で使うこともあるかと思いますけれども、一般用語として違和感があるということであれば、樋口先生がおっしゃりかけたことかもしれませんが、「合意した上で行う」という言葉を取ってしまって、「本人の意思決定を基本とし」としてしまうのも一案かと思います。

 清水先生の御提案は、6の2のところだけではなくて、【基本的な考え方】のところでも、合意形成を強調なさっていらっしゃいまして、合意形成に向けて行われるということはそのとおりだと思うのですが、あまりに「合意形成」を書いてしまうと、今度は合意形成へのプレッシャーが心配になってきますので、「話し合いが重要で、それに基づいた本人の意思決定を基本とし」というぐらいが、確信はないのですけれども、両方を考えると一番穏当なのかなという気がいたします。

○樋口座長 このアドバンス・ケア・プランニングの考え方は、合意形成は結果として大事なので、まさにプロセスというか、これを繰り返し行うというところを今回はやれるかどうか、とにかくやってみようという感じですよね。そうすると、余り合意形成を強調しないほうがいいということは一案としてはありますよね。

○清水構成員 今まで困ったのは、十分な話し合いというのは現行のガイドラインにも書いてあるのです。しかし、それで本人が意思決定を行うと書いてあると、その話し合いに合意形成が含まれることが見えないわけです。

 3になって、話し合いの場と今回言われているそちらのほうに、あるいはこれまでは病院の臨床倫理委員会が乗り出して、助言を行うみたいなところに至って初めて、合意が成り立たない場合はとなるわけです。そこで合意が成り立たない場合はそこに行くと言っているのなら、標準なのは、この前のほうで合意が成り立って、本人ももちろんその合意に加わっていて、それでこうしたいとおっしゃり、みんながそれをサポートして、それに基づいて医療・ケアチームが働く。その場合には、医療・ケアチームだって合意に参加して、それがいいと思ってやるわけですから、非常に理想的な形になるのだと思います。

 そういう意味で、しつこく言わなくてもいいですけれども、例えば、6とか7のところで「合意」という言葉を入れていただかないと、次の(3)の合意されない場合はどうなるかというところが浮いてしまうと私は思われるのです。

○樋口座長 そうですね。難しいところですね。

○清水構成員 例えば、「十分な話し合いと合意形成を踏まえて」と、話し合いアンド合意形成でもよろしければ、それで私は納得します。

○樋口座長 今、清水さんがおっしゃってくださったのは、2ページの最後の「その上で、本人と医療・ケアチームとの十分な話し合いを踏まえ」、「話し合い及び」かもしれないけれども、「合意形成を踏まえて、本人の意思決定を基本とし」ということですよね。お願いいたします。

○久米課長補佐 まさに事務局がここで書かせていただいている趣旨は、先ほど、佐伯先生がおっしゃっていただいたように、「合意形成」という言葉を使うことによる、合意形成しなければいけないというプレッシャーに対してどう考えるかということで、今回の案を用意させていただきました。

 今、清水先生がおっしゃっていただいた案にするのであれば、「話し合い及びその合意形成のプロセス」といった言葉を入れないと、プレッシャーの語感が強くなると思います。

○樋口座長 「プロセス」というよりは「合意形成の努力」ぐらいでもいいのですか。「プロセス」でなくても構いませんけれども、いろいろな状況で変なプレッシャーを与えるようなものにしたくないというお気持ちはわかります。合意の圧力は実はありますから。

 斉藤さん、どうぞ。

○斉藤(幸)構成員 おっしゃるとおりだと思います。患者本人の意思を尊重することが大前提でこのプロセスができてきているはずなのに、ここで合意が余りにも強調されていきますと、合意しているのだから、本人一人が合意していないのではないかという受けとめ方もしてしまうのかなと思うので、少しファジーにしておいたほうがいいと思います。

 以上です。

○樋口座長 どうぞ。

○早坂構成員 現場にいると、ガイドラインを使って要は何をするのかといったときに、一言で答えようとすると、患者さんと医療者の合意を形成して医療を進めていくことが大事だと言えると思います。「患者さんの意思を尊重して」といっても、どの意思をどう酌むかというのは、もちろんみんな酌むべきですけれども、難しい事です。そこでこれからどうやっていくかを一緒に決めることと言えば分りやすく伝えられるため、、私はこのガイドラインには「合意形成」という言葉が必要かと思います。

○樋口座長 ほかの方はいかがですか。熊谷さん、お願いします。

○熊谷構成員 私はどちらかに決められないのですが、伺っていると両方あると思うのです。患者さんにとっては意思決定だと思うし、医療従事者側からすれば合意形成が重要になるかと思います。だから、どちら側から言ったときなのかと考えると両方あると思いました。

 もう多分、時間なので、「3 その他」のところで発言しようと思っていたのですが、そういったことも踏まえて、支援する側の私たち医療従事者やケアワーカーたちは、このことをわからない人もたくさんいる。教育を受けたいということもデータに出ていますし、支援する側の人たちの質を上げてほしいというパブコメもありますので、ガイドラインの中には、どこかにそういった研修を受けておく必要があるという記述が必要だと思いました。

 そして解説書の中に、例えば、木澤先生から、この4年間の事業の中でコアになるものの一つは、コミュニケーションスキルというお話が先ほどありました。そういったものも含めて、例えば、今回、医師会が行うような研修プログラムを参照にしながら行い、また5年後なりに検証していく。一番のアウトカムは、患者さんや家族が満足をされたACPになったかだと思いますので、そのことを踏まえて記載していただきたいと思いました。

○樋口座長 気がつかないうちに12時になっているのです。私がタイムキーパーのはずなのに申しわけなかったですが、どうぞ。

○松原構成員 患者さんの意思決定が一番大事なので、チームが幾ら合意しても、患者さんが同意できなかったら何の意味もない。ある意味では意思決定を促すための仕組みであって、何かとんでもないものが合意されてつくってしまうものという印象はなるべく与えないほうがいいと思います。一番大事なのは患者さんの意思決定です。

○樋口座長 町野さん、お願いします。

○町野参考人 このプロセスガイドラインは、基本的にはACPではないのだと思います。合意形成を目指すことはACPでは必要だと思いますけれども、もし終末期の段階でこれを目指したら、関係者に対してものすごいプレッシャーだと思います。私は両者の混同があるのではないかと思います。

 ここに書かれているように、ACPの考え方は意思というものは固定したものではなくて変動していくものであり、みんなで考えなければいけないという点はまさに終末期についてもそうあるべきなので、これは、ガイドラインの最初の部分で言ってきたことだと思います。

 終末期あるいは人生の最終段階における意思決定は、病院に入院したり、医療・ケアを受けたりする前から考えておきましょうということです。このように、ACPの考え方を基礎としながら、それを承ける形でガイドラインができ上がっている。しかし、ガイドラインはACPそのものではないということは確認しておかないと思います。

○樋口座長 ありがとうございます。

 時間が来てしまってはいるのですが、もうちょっとだけ時間をいただいて、もう一点、それこそ本人の意思の確認ができなくなった場合に備えてという状況も当然考えているわけで、そのときに今回、はっきりそれにかわる人として、この本文のほうでは3ページ目のところの「医療代理人」という言葉がかえって重過ぎるのではないかということで、「本人に代わる者として」あるいは「信頼できる者」などの表現で弱めて書いてあるのですが、その点についてこれでいいかどうか。ごく普通の言葉として入れているということなのですけれども、それでよろしいですか。木村さん、どうですか。

○木村構成員 現場としましては、先ほども申し上げたように、はっきりと「医療代理人」と決めておいていただいたほうが、非常にわかりやすいと思います。誰だかわからないけれども、とにかく信頼を置ける人では、この人は信頼を置けるからといって、私は信頼を置けると言われて来た者ですと言われてもよくわからない。成年後見人制度ができたということもあって、どうもそれと勘違いする人もいるし、成年後見人があるのだったら医療代理人があってもいいと思います。

 そのほうがはっきりしているので、こちらが何か相談するとか、例えば、本人の意思が確認できず、家族もいないとなったときに誰に来てもらうかといったときに、私は医療代理人としてこのように代理を受けて、ACPにも参加してきて、こういう文書を持っていますということで出てきていただければ、こちらは安心してそのとおりにやることができる。本人の意思を確認できて、医療・ケアができることになるのですけれども、それがはっきりしないと、本当なのかということでちゃんとできなくなってしまいます。

ACPがここで採用されて、成年後見人というものができているとするならば、ここで「医療代理人」という言葉は既に医療界では少しずつ普及していきつつありますので、この際、このガイドラインにしっかり入れて、もっと普及を図ったほうがいいのではないかと思います。

○樋口座長 佐伯さん、どうぞ。

○佐伯構成員 内容の問題と名前の問題の2つがあると思うのですけれども、内容の問題につきましては、たとえ「医療代理人」という言葉を使ったとしても、その内容は多分、この解説で書かれている以上に書けないと思いますので、結局、曖昧なままだと思います。「曖昧」と言ったら語弊がありますけれども、「医療代理人」という言葉を使ったからその内容が今以上に明確になるということはないと思います。

 内容を離れて、名前の問題として考えると、「医療代理人」という言葉のほうが短くて使いやすいと現場でお考えになるならば、「医療代理人」という言葉を使って、しかしそれは法的な意味での代理人とは違うことを解説で書くことは可能だと思いますけれども、先ほど申し上げましたように、そうすることによって内容が明確になるわけでもないし、かえって誤解を与えるおそれもあるので、前回も申し上げましたが、ガイドラインとしてはこういう書き方のほうが望ましいと思います。その上で、現場で「医療代理人」という言葉を慣用としてお使いになるのであれば、それはそれで結構だと思います。

○樋口座長 ありがとうございます。

 医療代理人は、英米などでは「Health-care Proxy」と言うのですが、それをそのまま医療代理人と訳してずっと通用していると思いますけれども、一つの考えとしては、言葉として、修文も題名も「医療・ケア」としましたから、「医療・ケア代理人」という言葉にしたほうが本当はいいのかもしれないのです。それだと法律用語とは違う感じがもっとはっきりするような気がします。

 ただ、結局、呼び方ではなくて、その人たちがアドバンス・ケア・プランニングに参加してもらって、支えてくれる人が私にもいるとはっきりしていることが大事なので、そういう趣旨であることがうまく生きるといいということです。

 これ以上延ばすのはいけませんので、いろいろな御意見を完全にはまとめ切っていないことを自覚しつつ、あと1回で報告書もまとめ、このガイドラインの改訂版もまとめというのはなかなかの難事ではあります。こういうときの決まり文句ですが、座長である私に少し委ねてくださらないでしょうか。そんなに変なことはしませんからと主観的には申しますので、お任せいただいて、また次回の最終回でどうしてもということであれば、もちろん検討していただくことにしようと思います。

 事務局のほうから補足などをお願いします。

○堤在宅医療推進室長補佐 最後に、資料3につきまして、簡単に御説明させていただきます。

 こちらは報告書の骨子案でございまして、まさに目次のような形での御紹介になってございますけれども、この「人生の最終段階における医療・ケア」について冒頭文がありまして、その後「2.現状と課題」、それから、先ほど御議論いただきました論点にありました「3.国民への普及・啓発」の内容、ガイドラインの改訂についてを本筋としてまとめさせていただき、別紙としてこの審議の経過や開催要綱などを附帯させていただけたらと思っております。

 以上です。

○樋口座長 権丈さん、どうぞ。

○権丈構成員 普及・啓発の資料2-3について1点、お願い事がございます。

 いろいろな医療・ケアの専門職の方々が研修を組んでくださるというのは、とてもすばらしいと私は思っておりまして、これはやっていかなければならないところだと思います。

 加えまして、慶應は健保組合をやっておりまして、きのう組合会があり私は出席していたのですけど、そこで社会保険ガイドのウエブ版の閲覧率を上げなければいけないなどの議論をしているわけです。社会保険ガイドというのは健保連でひな形をつくって、各健保組合でオリジナリティーを持たせていくわけですけれども、あのような社会保険ガイドはいろいろなところにあると思います。その中に、「ACPを御存じですか?」というような、若い人も含めてみんなが見ていく欄、そういう欄をつくっていただくと、すぐに人生最終段階の医療の話が関係するわけではないようないろいろな人たちがみんな知っていくことになるかなと思います。皆保険ですので、恐らくそれをやっていけばみんな見るだろうというのもありますから、そういうことも少し考えていただければと思っております。

○樋口座長 ありがとうございました。

 それでは、時間を超過してしまいたが、きょうの検討会はここまでといたします。

 どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

医政局地域医療計画課 在宅医療推進室
TEL:03-5253-1111(内線2662)

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