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2020年3月23日 第21回厚生科学審議会生活環境水道部会 議事録

医薬・生活衛生局水道課

○日時

令和2年3月23日(月)15:30~17:30

 

○場所

厚生労働省共用第8会議室
 

○出席者

秋葉委員 伊藤委員 遠藤委員
大瀧委員 河村委員 髙田委員
滝沢委員 二階堂委員 西村委員
林委員 藤井委員 藤野委員
古米部会長 堀口委員 吉田委員


○議題

(1)水質基準等の見直しについて
(2)水道行政の最近の動向等について
(3)建築物衛生行政の最近の動向等について
(4)その他

○議事

○草川水道課課長補佐 それでは定刻となりましたので、ただいまから第21回厚生科学審議会生活環境水道部会を開催します。委員の皆様におかれましては、年度末の御多忙の中、お集まりいただきまして誠にありがとうございます。議事に先立ちまして、水道計画指導室の日置より御挨拶を申し上げます。

○日置水道計画指導室長 水道計画指導室の日置でございます。本来であれば審議官の浅沼若しくは課長の熊谷が御挨拶申し上げるところではありますが、新型コロナウイルス感染症への対応等々の関係で、今回出席できず、大変失礼いたしますことをお許しください。委員の皆様方におかれましては、御多用のところお集まりいただきまして、大変ありがとうございます。また日頃から、水道行政と建築物衛生行政の推進にお力添えを賜っておりますことを、この場をお借りして御礼申し上げます。
 昨年3月の本部会では、本部会の下に設置された「水道事業の維持向上に関する専門委員会」において、改正水道法に基づく「水道の基盤を強化するための基本的な方針案」の検討を進めていることを御説明しましたが、この基本方針が昨年9月に告示されたところです。皆様に御報告いたしますとともに、厚く御礼を申し上げる次第です。
 厚生労働省としては、改正水道法及び基本方針に基づき、適切な資産管理や広域連携の推進などの施策により、水道の基盤強化に努めてまいります。
 本日の部会ですが、水道の水質基準の見直しなどについて御審議いただく予定です。その他、水道行政や建築物衛生行政の最近の動向について、御報告させていただきます。委員の皆様におかれましては、忌憚のない御意見を頂戴したいと存じますので、本日はどうぞよろしくお願いいたします。

○草川水道課課長補佐 それでは前回の部会以降、新たに本部会に御就任いただいている委員がいらっしゃいますので、御紹介します。まず、公益社団法人全国ビルメンテナンス協会の伊藤委員です。一般社団法人東京ビルヂング協会の河村委員です。また、本日は御欠席ですが、国立感染症研究所の脇田委員に新たに委員に御就任いただいています。
 本日の委員の出席状況ですが、清古委員、西尾委員、細井委員、脇田委員が御欠席です。委員19名中、15名の委員に御出席いただいておりますので、本部会は成立しておりますことを御報告します。
 次に事務局の紹介をさせていただきます。水道計画指導室長の日置です。水道水質管理官の林です。水道課課長補佐総括の松村です。生活衛生課課長補佐の北村です。私は、水道課課長補佐の草川です。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日は、審議会のペーパーレス化の取組として、資料はタブレットを操作して御覧いただくことになりますので、操作で御不明な点等がありましたら随時事務局までお申し付けいただけますようお願いいたします。タブレット以外でお手元に配布している資料を確認させていただきます。お手元には、議事次第、座席表、委員名簿、資料1、「水道水の水質管理目標設定項目の改正案に関する意見募集の結果について(案)」。そして、タブレット操作説明書を配布していますので、不足等がありましたらお知らせ願います。
 マスコミの皆様にお願いですが、カメラ撮影はここまでとさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、議事に入らせていただきますが、本日の議題は3つです。議題(1)として、水質基準等の見直しについて御審議いただき、議題(2)と議題(3)で水道行政、建築物衛生行政の最近の動向等について、御報告させていただきます。これ以降の議事進行は、古米部会長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○古米部会長 了解いたしました。早速ですが、最初の議題に入らせていただきます。議題(1)、水質基準等の見直しについて、事務局より資料1を用いて御説明をお願いしたいと思います。

○林水道水質管理官 お手元の資料1又はタブレットに電子媒体がありますので、いずれかで御確認を頂ければと思います。
 1ページからです。水質基準については、平成15年の厚生科学審議会答申において、逐次改正により見直しを行うこととされています。厚生労働省では、水質基準逐次改正検討会を毎年開催をして検討を進めているところです。下のほうの三角の図を御覧ください。一番上の水質基準ですが、こちらは水道事業者等に遵守義務・検査義務があるものです。51項目あります。その下の黄色い所ですが、水質管理目標設定項目で26項目ありますが、これは水道事業者等が水質基準に準じた検査等の実施に努め水質管理に活用するという位置付けの項目です。このうちの1項目は「農薬類」であり、「総農薬方式」による評価を行うこととされています。各農薬の検出値を各農薬の目標値で割った値を全部足し合わせて、1未満になるということを確認するという方式です。農薬については、現在、「対象農薬リスト」で114物質が指定されています。三角形の一番下にある「要検討項目」は、毒性評価が定まらない等、情報・知見を収集すべき項目であり、47項目が設定されています。
 本日は、まず水質基準については六価クロム化合物、水質管理目標設定項目については農薬類、要検討項目についてはPFOSとPFOAという物質がありますが、その暫定目標値を設定することと、水質管理目標設定項目に位置付けを変更するということについて御説明をさせていただきます。
 2ページを御覧ください。2-1.六価クロム化合物に関する見直しです。平成30年の内閣府食品安全委員会の食品健康影響評価の結果に基づきまして、水道水の現行の評価値を0.05mg/Lから0.02mg/Lに強化することについて、昨年3月のこの部会で御了承いただいたところです。
 その後、食品安全基本法に基づく手続を経まして、六価クロムの水質基準の改正案に加えて、併せて改正することが必要な薬品等基準、資機材等材質基準、給水装置の浸出性能基準、それから検査方法の改正案についてパブリックコメントを行いました。
 (2)パブリックコメントの実施です。下のほうに省令、告示と書いてありますが、合計6本の省令と告示の改正案について御意見を頂いたところです。省令については4件、告示については5件の意見が寄せられました。
 水質基準値自体への御意見はなかったところですが、給水装置の浸出性能基準のうち、「水栓その他末端給水用具」については次の2点を見直した上で施行することとしたいと考えています。その内容が3ページの上の四角の中に書かれています。①、②とあります。
 これを御覧いただく前に、下のほうに表の1がありますので、そちらを御覧いただきたいと思いますが、こちらはパブリックコメントの結果を踏まえた後の改正案です。この内容で施行したいというものです。一番上が水質基準で、これは0.02mg/Lに強化をするということです。その下に薬品等基準があります。さらに資機材等材質基準、その下に給水装置の浸出性能基準があります。使われている薬品、資機材、給水装置から六価クロムが溶け出してきたり、含まれているものの影響によって、水道水中の六価クロムの濃度が高くならないようにするため、水質基準値の10分の1、あるいは同じ値になるような基準値が設けられているところです。右側の検査法の所に※1があります。水質基準、薬品等基準、資機材等基準について、下のほうに※1の説明があります。「フレームー原子吸光光度法」については定量下限値が0.005mg/Lであり、改正後の基準値の濃度を測ることができないため、検査方法から削除する案としていたところです。
 水質基準については0.02mg/Lですが、これはこの方法で測れるように見えるのですが、水質基準については基準値の10分の1まで測れる検査法を用いることとされていますので、削除するという案になっています。
 その下に給水装置の浸出性能基準、水栓その他末端給水用具の所に※2があります。これも当初、※1と同じように「フレームー原子吸光光度法」を削除する案にしていたところですが、一定の要件を満たす場合はこの方法の定量範囲の中での測定値であっても、引き続き使えるということがパブリックコメントでの御意見で分かりましたので、それについては引き続き使えるようにしたいということです。その内容です。※2の所ですが、分析値を補正した後の値というものがあります。少し分かりにくいのですが、この給水装置の浸出性能基準の値というものは、コンディショニングと言って、水栓、つまり蛇口の部分を模擬水道水に浸して、そこに溶け出してくる六価クロム化合物の濃度を測り、その結果がこの基準値を満たすかどうかということを確認するという方法となります。コンディショニングは何時間、十何時間という形で、結構長い時間浸したり、その液をまた捨てたり、また新しい液につけ直したりということを繰り返しやる作業になります。そのようにして、浸出液中に溶出してくる六価クロム化合物を安定化させて、その安定した浸出液中の六価クロム化合物の濃度を測るということを行います。
 浸出液中の濃度を基準値と比べるわけですが、水栓その他末端給水用具については、蛇口の中で水に接している面積が非常に少ないということで、実際、そこに滞留している水を消費者の方が大量に飲むということにはならない。つまり、蛇口を開けた瞬間に水が流れてくる状態のもの、そのごく一瞬流れる間に溶出してくるものを摂取するということになりますので、実際にはそこまで溶け出してきたものを飲むことにはなりませんので、実態に合わせた形で補正をするということを行います。その補正をしますと、大体、1桁、2桁ぐらい小さい値になるということが一般的ですので、フレームー原子吸光光度法の定量範囲の中で測った値であっても、補正後の値を基準値と比較して、これを満たすことが確認できる場合があることが分かりました。上の四角の中の①にそのようなことが書いてありまして、一定の要件を満たす場合に限り、この検査法を引き続き用いることができることとするという変更をしたというのが1点です。
 施行日の所に※3と書いてありますが、表の下の※3の「また」の文章の所ですが、適用日については今年の4月1日を予定していましたが、これを1年延ばしまして、来年の4月1日適用としたいと考えています。理由としては、この浸出性能基準を満たすかどうかということについては、水栓、蛇口のメーカーが、今販売している商品が新しい基準値を満たすものかどうかを確認する作業や、満たすかどうかが分からない場合は、自分で検査をしたり、あるいは第三者機関へ認証を委託するという手続がありますので、そのような諸手続を考慮しまして1年間延ばしてほしいという意見がありました。
 パブリックコメントの意見が4ページにあります。今、申し上げた2点については、2番と3番の御意見ということになります。
 続きまして5ページです。2-2.の農薬類の見直しです。昨年12月末までに内閣府食品安全委員会による食品健康影響評価の結果が示され、これまで未検討のものがあります。表2です。新しい健康影響評価の結果に基づきまして、表の一番下に※1、※2がありますが、※2新評価値についてという所です。食品安全委員会が出しましたADIを用いて、1日2L摂取、体重50kg、割当率10%として、新しい評価値を算出したところです。この表の網掛けの部分が7つありますが、これらについて評価値が変わるということになります。一番上のカルタップでは、現行評価値が0.3mg/Lのところ、新評価値として0.08mg/Lに強化されるということです。そのほか緩和されるものもありますし、新規設定されるものもあります。合計7つの農薬の評価値が変わるということです。
 続きまして、6ページの2-3.PFOS、PFOAに関する検討です。この項も少し長くなっていますが、説明させていただきます。まず、経緯です。有機フッ素化合物の1つであるペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)、ピーフォスと読みますが、これについては残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)において、平成21年5月に使用制限の対象物質として新規登録されました。国内では化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律、化審法において、平成22年4月以降は製造・輸入等が禁止されているところです。また、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)、ピーフォアについても、国際条約で廃絶することが決定され、化審法に基づく所要の措置について検討が行われているところです。
 水道水質に関しては、平成21年4月にこれらを要検討項目に位置付けまして、水道水における検出状況の把握、それから科学的知見の収集に努めているところです。
 現時点で世界保健機関においては、これらの物質の飲料水のガイドライン値が設定されていないこともありまして、我が国では水道水の目標値を設定していませんが、近年、海外においてこれらの物質に関して飲料水の目標値が設定されるなどの動きもあり、新たな知見が蓄積しつつあります。国内でも原水、浄水から検出されている状況が続いており、浄水場における水質管理を適切に行う観点から、これらの物質について暫定目標値を設定する方針が、昨年7月の第1回水質基準逐次改正検討会で確認されたところです。その後、今年2月の第2回検討会において、暫定目標値案について審議が行われました。
 (2)各国における目標値の設定状況です。現在、海外において法的拘束力のある飲料水の基準は設定されていないと承知していますが、幾つかの国では目標値を定めています。7ページの表3を御覧ください。上から新しいものを順に並べています。例えばカナダでは、PFOSは600ng/L。ng(ナノグラム)は10億分の1gを表す単位ですが、こういった数値があります。PFOAについては200ng/Lということです。その下がオーストラリアで、70ng/Lや560ng/Lという数字があります。PFOSについては、ペルフルオロヘキサンスルホン酸というほかの物質との合計値ということになっています。ほかの物質と合算している国としては、その下にスウェーデンがありますが、PFOS、PFOAを含む11物質の合計ということで90ng/Lが定められています。
 (3)からは近年の各国における状況です。まず、カナダについてです。2段落目からですが、毒性評価については、動物実験からPFOSの耐容一日摂取量(TDI)を60ng/kg/日、PFOAのTDIを21ng/kg/日としています。TDIは、体重1kg当たり、1日当たり、ここまでの摂取量であれば、健康への影響がないだろうと推定される量を示しているものです。体重1kg当たりで示される値です。これを用いて、体重70kg、飲料水の割当率20%、1日当たりの摂取量1.5L、これを用いますと計算値が600ng/Lや200ng/Lとなるということです。
 後ほど、日本の暫定目標値案の計算で出てきますので、割当率というものについて説明させていただきますが、このTDI全体のうち飲料水以外のばく露経路からの摂取、これも排除できないという中で、TDIのうち水道水の持ち分と言いますか、水道水でどの程度摂取されると考えておくのかという数字が割当率です。カナダは20%を取っているということです。このほかオーストラリアも、TDIや体重など各国でいろいろ所定のものがありますので、各国で微妙に違ったものを使っているわけですが、こういった計算値になっているということになります。
 8ページの米国です。米国については、2016年に環境保護庁が70ng/L、これはPFOSとPFOAの合算値ですが、これを設定しています。毒性評価等については、ここに記載のとおりです。参照用量という言葉が出てきます。RfD、Reference Doseというものですが、今回この資料においては、TDIとほぼ同じ意味で使われているというふうに御理解いただきたいと思います。
 1行空きまして、「2018年には」という所ですが、アメリカでは環境保護庁以外の機関として毒物・疾病登録局(ATSDR)があります。こちらが最小リスクレベルを定めています。数字としては、少し単位が違って比較しにくいのですが、中ほどに2×10-6、その下に3×10-6がありますが、上記の環境保護庁の参照用量に比べますと、大体、10分の1くらいの値だと御理解ください。ただ、このATSDRの最小リスクレベルについては、EPAの健康勧告値とは異なる状況において使用される異なるツールであることも示されています。つまり、スクリーニングとして使われているということです。パブリックヘルスの専門家が、ある特定の化学物質のばく露により、健康影響のリスクにさらされる潜在的なエリアや人口を決定することをサポートする意図で用いられるということで、EPAが設定している目標値とは少し性格が違うということで、後ほどの日本での暫定目標値案の検討からも、これは使っていないということです。
 次に欧州です。デンマークなどで、目標値が定められています。1行空きまして、「また」の所ですが、2018年に欧州食品安全機関(EFSA)においても、リスク評価を行っています。結論としては、8ページの下から4行目です。PFOSで13ng/kg/週、これは単位が1週間当たりという数字であり、7日で割ると1日当たりの値、つまりTDIになるというものです。PFOAでは6ng/kg/週ということです。上記の米国の環境保護庁が使っているものと比べて、1桁若しくは2桁、さらに低いTDIということになります。
 このTWIについては9ページですが、オランダが導出する分析方法に疑問を呈している他、ドイツが更なる調査研究が必要であるということなどを示しています。
 10ページの別紙1ですが、アメリカの環境保護庁の目標値についての説明ということです。説明は省略させていただきます。
 12ページ、別紙2です。こちらは、EFSAがTWIを公表したときの情報です。特徴的なのが、下から7、8行目ぐらいの所ですが、ほかの国では動物実験の結果を用いているところですが、EFSAではヒトの血清中のコレステロール値の上昇をエンドポイントとしており、ヒトの疫学試験に基づいているものであるという点が少し違うところです。
 13ページの別紙3です。先ほどのEFSAの評価値に対して、オランダが疑問を呈しているというものの詳細な情報です。これも説明は割愛させていただきます。
 14ページの別紙4です。ドイツがEFSAの評価値に対して、さらなる調査研究が必要だと言っているものです。
 15ページ以降です。我が国の水道水からの検出状況です。16ページに表がありまして、上中下段の形で、上段がPFOSの値、中段がPFOA、一番下がPFOSとPFOAを合算したもののデータで、年度別に書いています。一番左側から測定地点数、中ほどが定量下限値以上で検出された地点数とその割合、一番右が最大値です。
 少し図で御説明したほうが分かりやすいと思いますので、17ページを御覧ください。PFOSのデータの度数分布図です。上のグラフが原水、下のグラフが浄水に関するものです。それぞれ濃度別に、地点数が何地点あったのかということを書いています。一番左のN.D.は、定量下限値以下のものです。定量下限値を超えて出てきているというものも、ぱらぱらとこれぐらいあるということです。
 18ページがPFOAに関するものです。これも同様の傾向です。19ページが、PFOSとPFOAを合算したものの傾向です。これも同様の傾向です。
 続いて、20ページは(5)暫定目標値案の考え方です。まず、①になぜ暫定なのかについて説明を記載しています。これまで水道水の水質基準値や目標値を決める際には、主としてWHOの飲料水水質ガイドラインを参考に検討を行ってきたところですが、ガイドライン値が定められていないということです。ただ、近年、幾つかの国や国際機関で毒性評価や目標値の設定が行われており、一定の知見も蓄積されてきたところですが、例えば、耐容一日摂取量の値を見ても、近年の評価を見ても2桁程度の範囲に及んでおり、まだ、ばらつきがあるということです。
 他方、我が国においては、水道水の原水や浄水から検出される状況が続いており、浄水場における水質管理を適切に行う観点から水道事業者等に対して管理の目安となる値を示すことは意義があるのではないかということです。WHOでは、現在、PFOSとPFOAをリスク評価の対象物質と位置付けて検討が進められていることをはじめとして、国際的にもこれらの物質の評価が今は大きく動いている時期でもあり、毒性学的に明確な目標値の設定が困難であるという趣旨で暫定とするということです。
 ②は暫定目標値案の設定の基本的考え方です。ここ数年で行われたリスク評価の中から妥当と考えられる耐容一日摂取量を用い、我が国の水道水の水質基準等の設定で用いられてきた体重、水道水の割当率、一日当たり摂取量のデフォルト値を適用して目標値案を算定いたしました。近年のリスク評価として、カナダ、EFSA、オーストラリア、米国のものを確認し、その中で妥当と考えられるものの中から安全側の観点より最も低いものを採用いたしました。
 この結果、TDIとしては、PFOSについては20ng/kg/dayでオーストラリアや米国の値と同じものです。PFOAについても数値は20ng/kg/dayで米国の値と同じものです。23ページの別紙5を御覧ください。3ページにわたっており、結論が25ページに書かれております。25ページの「以上の」というところですが、これらの4つの国、機関における有害性評価値を比較しますと、EFSAの評価値が一番低いということでしたが、コレステロールの増加等のエンドポイントについては、評価値導出の根拠として採用することについて、国際的な合意が得られているとは言い難いということです。先ほど、オランダやドイツが疑問を呈しているという話をいたしましたが、そのようなこともあり、これは除外し、残りの3か国のうち一番低いものの中から、結論としては最後の0.00002mg/kg/dayで、ngにしますと20ng/kg/dayという値を採用したということです。
 本文の20ページに戻り、下に「参考」として、国内におけるPFOAの有害性評価についてと書かれています。今回、この4つの国、機関の中からアメリカ等のTDIと同じ値を採用したという考え方については、類似の考え方が国内のほかの審議会であり、それを参考にさせていただいたということです。令和元年9月20日の厚生労働省、経済産業省、環境省の審議会の中で、PFOAの環境モニタリング等のデータを用いて、人健康に関する有害性評価の結果が示されております。これによると、直近の数年の間に国際的な評価機関で設定された評価値で妥当なものの中から、最も低い米国の値を採用したということで、この考え方を参考にしました。
 21ページの暫定目標値案です。PFOSについては、TDIとして20ng/kg/day、体重50kg、水道水の割当率10%、一日当たりの摂取量2Lという数字を我が国では使っておりますので、これを適用しますと暫定目標値案は50ng/Lという値になります。PFOAについても同じ計算式になりますので、やはり50ng/Lという値になります。
 USEPAでは、これら2つの物質を合わせて勧告値を70ng/Lとしているところですが、その理由を調べ、これも妥当ではないかということで、我が国でもPFOSとPFOAを合算して50ng/Lとする案としてはどうかということです。米国で合算している理由としては、両物質は類似の発達影響に基づいており、毒性も似ており、数値も同一で、飲料水中でも同時に見られるため、保守的で健康保護的なアプローチとして合計値にしているということです。
 次は、その下の(6)PFOS及びPFOAの位置付けの変更です。現在、要検討項目に位置付けられており、他方で化審法での規制もされている、又は今後されるという予定ではありますが、水道水の原水から一定程度検出される状態が継続しており、当面、水質管理に注意を払っていくことが適当ではないかということです。このため、PFOS、PFOAを、国から水道事業者等に対して、水質基準に準じた検査等に努め、水質管理に活用することを要請する水質管理目標設定項目へと位置付けを変更することにしてはどうかということです。
 26ページに飛びまして、2-4.はパブリックコメントです。水質管理目標設定項目については、2年前の本部会で科学的な知見等に基づく見直し案が提案されれば、速やかに改善することが望ましい旨を御了解いただいたということで、パブリックコメントも既に行っております。これまで御説明しました農薬等、PFOS、PFOAの見直し案について、一番下の(3)にあるように、令和2年2月23日から3月8日までパブリックコメントを行い、5,229件の意見が寄せられたところです。
 この結果、見直し案を変更することは考えておりませんが、意見募集の結果を配布しています。「水道水の水質管理目標設定項目の改正案」に関する意見募集の結果について(案)というものをお手元に配布しておりますので、御覧いただければと思います。これは厚生労働省の考え方を整理したものです。
 まず、2ページが農薬類に関するものです。幾つかポイントになるものだけ御説明したいと思います。まず、1番は目標値です。目標値を緩和する案になっているものについては、緩和しないで欲しいという御意見です。これに対する考え方としては、内閣府食品安全委員会の最新の食品健康影響評価等に基づいて水道水からの摂取量を考慮したということで、水道水の安全管理の目標値としては妥当であると考えております。
 次に、2番はカルタップについてです。カルタップはネライストキシンというものを代謝物としますが、同じ代謝物を持つチオシクラム及びベンスルタップと合わせて評価すべきではないかという御意見です。考え方としては、カルタップの濃度については、このネライストキシンをまず測定し、カルタップの濃度に換算して算出しているところです。つまり、このネライストキシンは、どの農薬由来の代謝物かは分からないということになりますので、チオシクラムとベンスルタップも併せて、実際には評価していることになっているということです。
 続いて、PFOS、PFOAの関係ですが、3ページを御覧ください。まず、5番の目標値については、50ng/Lでは緩いのでもっと厳しくすべき、米国の州ではこれよりも低い目標値を独自に設定している州があるという御意見でした。考え方については、1つ目の段落に諸外国・機関が行ったリスク評価で妥当と考えられるものの中から、安全側の観点で最も低いTDIを採用しております。結果的に、最後の行ですが、この暫定目標値は諸外国で設定されている目標値と比較して最も厳しい水準になっております。
 また、米国の州の中には、50ng/Lよりも低い目標値を独自に設定、あるいは提案しているものが幾つかあります。ただ、これらについては、基としているTDIを見ますと、欧州食品安全機関(EFSA)並みのTDIを使っており、これはほかの国では見られない状況です。先ほど申し上げたように、EFSAの評価についてはオランダ、ドイツが疑問を呈しているということです。米国の州で用いられているものに疑問があると申し上げているわけではありませんが、そのような状況だということです。
 また、米国の目標値の中には、位値付けが少し異なっているものがあります。全部というわけではありませんが、例えば、更なるモニタリングを行うための値としていたり、あるいは、行政当局へ報告をしてもらう値として使っているということで、USEPAが設定している健康影響の保護の観点からのものとは異なっているものも含まれております。こういった状況を総合的に考え、現段階ではUSEPAなど国や国際機関が用いているものの中から妥当と考えられるものを採用したという考え方です。先ほど申し上げたように、今、WHOでも検討が進められているということで、PFOS、PFOAについては、評価が今大きく動いている時期でもありますので、国内外のリスク評価機関がまとめた情報は引き続き注視してまいりたいと考えております。
 6番の御意見は、PFOS、PFOA以外の有機フッ素化合物についても目標値を設定すべきというものです。PFOSとPFOA以外のものについては、個々に又は複数の物質で目標値を設定している例が非常に少ない状況です。オーストラリアとスウェーデンの2か国だけということもあり、目標値を設定するための科学的知見が蓄積しているという状況ではないと考えております。
 続いて、1つ飛ばして4ページの8番の御意見です。今回、アメリカの参照用量である20ng/kg/dayという数字を用いましたが、これ以外でも、もっと低い数値もあるという御紹介をいただきました。それから、ほかにも疫学論文で関連するものがあるということです。こういったいろいろな知見があることも御指摘いただきました。
 考え方ですが、これまで水道水の水質基準等の検討に当たり、主として、多くの専門家により議論された上で決定されているWHOの飲料水水質ガイドラインなどを参考にしてきたところですが、今回はWHOがガイドラインで定めていないこともあり、実際に諸外国で設定されている飲料水の目標値の算定に用いられているTDI、あるいは主要な国際機関で行われたリスク評価の結果を参考に検討を進めたところです。繰り返しになりますが、今、評価が大きく動いている時期だということです。こういった新しい知見というものは、各国のリスク評価機関でもレビューされてTDIが決められているものだと思いますし、若しくは、新しい知見ということであれば、今後レビューされて新たなTDIなどが定められることになると思いますので、国内外のリスク評価機関がまとめた情報などを引き続き注視してまいりたいと考えております。
 1行空けて、その下の御意見ですが、参照用量を他国のリスク評価から引用した場合、対象集団に基づいて一日当たり摂取量が決められるべきであり、米国のRfDはLactating women、つまり授乳されている方ですので、これをデフォルト値として採用する根拠はないということです。つまり、日本の暫定目標値の計算の際の一日当たり摂取量は2Lということになりますが、授乳されている方は、もっと水を摂取するのではないかという御意見かと思います。これについては、今回、米国のRfDと同じ値を採用しましたが、TDIとしては、人が一生涯にわたって毎日摂取し続けても健康への悪影響はないと推定される一日当たりの摂取量ということですので、授乳されている方だけでなく、全ての方に適用できるものだと考えております。したがって、今回の目標値の算定には、体重50kg、一日2L、割当率10%を適用してきたところですので、今回もこれを用いたというものです。
 この摂取量については、一日2Lがどの辺の位置にあるのかをその下に書いております。摂取量が多ければ多いほど、濃度の目標値としては低くなるという関係にありますが、日本における女性の摂取量の調査データによりますと、一日2Lまでの摂取量の女性の数は全体の約9割ということで、かなり多くの部分を占めているということです。つまり、実際の平均的な量はもう少し低い所にあるということです。これに加えて、今回の目標値案では、USEPAが用いている水道水の割当率は20%という数字を使っておりますが、これよりも日本は10%ということで低い値を使用しており、割当率だけを考えると目標値は半分になるということになります。こういった形でEPAの目標値よりも低い目標値になっているという説明です。
 次に、5ページの11番と12番です。体重と割当率に関してです。こちらは逆の方の御意見といいますか、今の計算で用いている体重や割当率は、安全側に取っているはずなので、それについて説明すべきではないかという御意見です。体重については、現行では50kgを計算に使っておりますが、実際には国民平均で55kgぐらいだということです。平成26年に一度これについて検討した経緯があるのですが、安全側の評価になっているということなどの理由から、引き続き50kgを使ってきた経緯があります。
 割当率については、12番の御意見で先ほどアメリカが20%使っているということでしたが、WHOでも20%を使っております。これだけで比べると日本の目標値は半分になっているということです。先月の水質基準逐次改正検討会でも、食品からの摂取量は、それほど多くないのだろうということで、WHOが使用している20%という下限に合わせてもいいのではないかという意見もあったところですが、安全側の評価となる10%を採用することにしたところです。
 次に、6ページの13番の検査法です。現在、PFOSとPFOAについては、厚労省でお示ししている検査法がありませんので、4月1日に間に合うよう、今、検討を進めているところです。それから、14番の御意見は、目標値は随時見直してほしいということです。PFOSに限らず、最新の科学的知見に従い、逐次改正方式で見直しを行うこととされていることが書かれております。頂いた御意見への考え方は以上です。
 長丁場で恐縮ですが、本文に戻っていただき、27ページは3.の水質検査結果に基づく水質基準及び水質管理目標設定項目の分類見直しです。平成22年にこの部会で了承していただいた表6の分類の考え方に従って、分類の変更について検討したところです。例えば、水質基準のものは水質管理目標設定項目に変更する必要はないか、あるいは、水質管理目標設定項目であるものは水質基準にする必要はないかについて、検出状況から見て判断するということです。
 表6の一番左側の列に、「見直し時点で水質基準項目」というのがあります。右側に分類要件1、下に分類要件の内容が書いてあり、要件1ですと最近3か年継続で評価値の10%超過地点が1地点以上存在と、これがYESかNOによってどこに分類されるかということで、結論は、分類要件1がNOのところです。右側に「水質管理目標設定項目」とあります。一番右上の箱の中に「陰イオン界面活性剤」が該当することになりました。それから、その下の行で、見直し時点で水質管理目標設定項目の中で分類要件1がYESで、更に分類要件2もYESになったものがあり、それが「ニッケル及びその化合物」です。検出状況から見て、水質基準項目への変更を検討すべきではないかというものに該当したということです。
 (2)集計及び検討結果の1行空いたところに、水質基準項目である「陰イオン界面活性剤」とあります。これは、昨年の検討でも分類変更を検討すべき項目に該当したところですが、①~③にあるような状況を考慮し、据え置くことになりました。以上の経緯に加え、平成29年度の直近のデータを見ますと、基準値に対して10%値超過地点が新たに2地点存在することが分かりました。それから「陰イオン界面活性剤」の販売量も横ばいで安定しているということで、引き続き水質基準に据え置いて状況を注視していきたいと考えております。
 次のページの図5に販売量のグラフがあります。「陰イオン界面活性剤」のグラフは上から2本目の赤い菱形のグラフですが、最近少し上昇してきて、また横ばいになっているという状況です。
次に、現在、水質管理目標設定項目である「ニッケル及びその化合物」です。これも昨年度の検討でも同じように候補になったところですが、下に書いてあるような理由で引き続き据え置くことにしたところです。この四角の中の、例えば、①の目標値の50%値超過となった地点は水源が廃止されていたり、②は同じ地点で測り直したら低濃度であり、その材質にニッケルが含まれるので、それが少し混入した可能性があるのではないかということです。こういった理由で据え置くことにしたところです。
 29ページ、直近の平成29年度は50%値超過地点が1地点ありましたが、水道事業者に確認したところ、この水源は既に廃止されていることを確認いたしました。以上により、引き続き、水質管理目標設定項目として状況を注視していきたいと考えており、(3)の今回の分類見直しの方針ですが、見直しは行わないということです。残りの資料は参考ですので、資料1の説明は以上といたします。よろしくお願いいたします。

○古米部会長 どうも御説明ありがとうございました。全体としてはまず趣旨が書かれていて、次に科学的な知見に基づき見直すものとして、六価クロム、農薬類、PFOS、PFOAがある。そして、最後に水質検査の結果に基づく検出状況にしたがって、見直すべきものということで、大きく三つ書かれています。この関連で御質問、御意見があればお受けしたいと思いますが、いかがでしょうか。

○二階堂委員 全水道の二階堂と申します。私のほうからはPFOS、PFOAに関する暫定目標値について、質問、意見を申し上げたいと思います。昨年の国会審議、あるいは新聞報道でも明らかなとおり、PFOS、PFOAについては、沖縄を中心に住民の関心や不安、あるいはそこで働く水道労働者も含めて苦闘が続いています。特に、沖縄の北谷浄水場の水源である比謝川・長田川では、かなり高い数値が出ており、嘉手納の井戸群でも数値が上がっていると確認をしています。
 一方で沖縄の米軍基地周辺ということで、現場調査に入れない、特定できないという意味でも現場の苦闘が続いているわけです。その上で、1つ目としては、管理官から御説明を頂きましたとおり、値については暫定値でやむを得ないとしても、住民の不安、あるいは関心という観点から言えば、目標値でいいのか、という疑念と不安があるということを申し上げた上で、最後に、管理官からも御説明いただきましたように、今後、評価に対する動向、この点について、今、資料の中でも御説明を頂きましたが、各国での法的拘束力に向けた様々な検討などが、もし行われている所があれば教えていただきたいというのが1つ。
 2つ目は、改正水道法が昨年10月1日に施行されましたが、その後、基本方針が示されました。参考資料1の3ページ、4ページの第2の項の所で、安全な水道の確保ということが基本方針の中で示されています。この中で、水源から給水栓に至る各段階で危害評価と危害管理を行う。そういうことが安全な水道水の供給を確保するために重要だということが、基本方針の中で示されているわけです。暫定目標値の位置付けを変更することで、今、申し上げたような、基本方針に揚げたような、PFOS・PFOAをめぐる危害の評価や管理の実効性が高まるのかということ、そして水質基準ということで、より高次に位置付けることによって、このような実効性が高められるのではないかと考えるわけですが、その点に対する見解をお聞かせいただきたい。これが2つ目です。
 3つ目は、管理官から御説明を頂きましたが、22ページの上段に、「このためPFOS及びPFOAを、国から水道事業者等に対して水質基準に準じた検査等に努め水質管理に活用することを要請する水質管理目標設定項目」という文言がございます。先ほど2つ目の見解の所でも申し上げましたが、この要請するという後段の所で、今の基本方針に示されている安全な水道水の確保に関わる文章、分かりやすく言えば、水源から給水栓に至る水質管理の重要性といったことがここに記載されるべきではないかと考えておりますが、それぞれ意見として申し上げながら、見解をお聞かせいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○林水道水質管理官 まず、1点目の法的拘束力のある基準について検討している事例があればということですが、まずEPAについては、MCLというものが、いわゆる基準値に相当するものと理解しており、その検討をEPAは進めていると承知しておりますが、最終的にどうなるのか、まだ途上ということでして、注視はしているというところです。
 あと米国の州の中でもMCLについて、提案などされているところがあるように承知していますが、詳細は存じ上げておりません。
 2点目ですが、基本方針に揚げられている水安全計画の関係ですが、実効性が高まるのかということですが、今回、水質管理目標設定項目に位置づけを変更するということになりますから、水道事業者に水質基準に準じた水質検査をしていただくとか、その結果を水質管理に活用してもらうという位置付けに変わりますので、かなり性格としてこれまでとは異なるということもありますので、水安全計画の中でも、水道事業者のほうで少しウエイトを大きくしてといいますか、重要度も上げて、これは水源によってそういった化学物質が使われているというところがもし気になる水道事業体があれば、それは水安全計画の中に盛り込んでいくという、そういうマインドも水道事業者にとってはより強く働くのではないかと考えております。
 最後ですが、基本方針の中で、水質管理の重要性というものを、基本方針を改正して位置付けるということでしょうか。

○二階堂委員 基本方針で示されたことが、文章として表現されるべきではないでしょうかという趣旨です。

○林水道水質管理官 その点については、最終的に水質管理目標設定項目を水道事業者の皆様にお知らせする通知の中で、何か書けることがあるかというのは考えていきたいと思います。

○古米部会長 ほかに御質問、御意見はございますでしょうか。

○滝沢委員 PFOS、PFOAですが、これは非常に長い間、10年以上前から環境中で検出されていて問題になっていた物質ですが、こういう形で暫定とは言え、目標値を定めていくというのは、より好ましい方向に進みつつあるのかなとは思うのですが、一方で、処理技術等々がまだまだ確立された状況にはないと思います。そういった中で、検出されて浄水でも検出されている地点があるということで、これは事業体だけがこの対策を今後考えるということではなくて、国としても技術的にも財政的にも何らかの支援を含めて御検討いただく必要があるかと思うのですが、いかがでしょうか。

○林水道水質管理官 ありがとうございます。基本的には活性炭処理というものが1つの手段というように承知しておりますが、技術的な支援については、どういったことが情報として提供できるのかというのは、考えていく余地があるかもしれません。財政面の支援については、これまで水質基準を幾たびか設定をしてきたり、基準値を強化してきたり、いろいろな目標値を定めてきたりしてきましたが、基本的には水道事業者の水道事業の中で、独立採算性の中でやってきた経緯がありますので、ちょっと難しいのかなというようには思いますが、それについてはまず水道事業者のほうで何とか御努力をいただきたいと思っております。

○古米部会長 よろしいでしょうか。ほかに御質問、御意見。

○西村委員 今、滝沢委員がおっしゃったことの追加ですが、PFOSが規制されてからも、低い濃度であっても検出されているという状況もありますので、財政的な支援はまた別問題として、水道事業体がある程度、期間を継続して測るというようなことができる体制を是非、厚生労働省からも強くプッシュというか、位置付けをはっきりして、ある程度継続して測定をするようなシステムをサジェスチョンしていただければと思います。コメントは以上です。

○古米部会長 よろしいでしょうか、どうぞ。

○吉田委員 日本水道協会の吉田です。今、滝沢委員からお話があった事柄の関連なのですが、水質基準になりますと、将来的にわたり水道事業者には当然それを守って安全な水を供給するという義務が発生します。これまでも例えば原水水質の悪化に伴って、高度浄水施設の導入に関して国で知見を集め情報提供する、更に事業体が導入する際には、補助制度等を確立していただいているという事例もございますので、今後、PFOS、PFOAが水質基準項目になるのかどうか等の調査研究・情報発信を続けていただくとともに、その動向によっては、必要な補助制度等の検討をお願いしたいので、発言させていただきました。

○古米部会長 よろしいでしょうか。

○秋葉委員 PFOS、PFOAについては、要検討項目から位置付けて監視を行ってきたわけであり、原水、浄水からの検出状況、国外での動向を踏まえて、今回、水質管理目標設定項目に格上げして、目標値を設定したということで、我国の水質基準等の見直しの手順に従って行われたわけです。目標値については、WHOの飲料水水質ガイドラインがまだ定まっていない、国外のいくつかの国々で目標値を設定していますが、全体的に毒性評価等もまだ定まっていない状況にあります。このような中で、目標値は、TDIについても国や国際機関のもので小さい値を採用していますし、体重や割当率も今までどおりということでして、目標値案は妥当なのではないかと思っています。しかしながら、現在、WHOでは逐次改正に関する作業プログラムにおいて、リスク評価の検討の対象の物質となっておりますので、我が国においてもその動向も踏まえながら、水質基準に格上げするということであれば、処理性の他、分析技術についても知見を集め、慎重に検討を引き続き行っていただければと思います。

○古米部会長 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

○大瀧委員 見直し内容については異論はありませんが、パブリックコメントの際の情報の出し方についてお伺いしたいと思います。意見募集の結果を拝見していますと、水道や水質に非常に詳しい方の御意見はもっともだと思うものばかりです。一方、水道や水質に余り詳しくない方の御意見をみると、「フッ素を加えないでください」など、今回の見直し内容が誤解されて伝わっているように思います。水道の水処理や水質のことに精通していない方へのコミュニケーションの方法を考えないと、評価が定まっていないものについて値を設定するということに対して恐怖が生まれてしまい、逆に水道が怖いというような意識を生んでしまうのではないかというように感じます。パブリックコメントで意見を求める際には、情報の出し方にもう少し工夫が必要だと感じるのですが、何か工夫はされているのでしょうか。

○古米部会長 いかがでしょうか。

○林水道水質管理官 毎年この時期、同じような形でパブリックコメントを行っておりまして、今回も同じ形式で行った結果、こういった御意見をいただくことになりました。もう少しパブリックコメントの際の資料をいろいろな人が読んで分かりやすいように作るとか、そういった余地はあるのかなと思いますので、今後の課題とさせていただきたいと思います。

○古米部会長 それではよろしくお願いします。ほかに御意見、御質問はございますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは幾つか御意見が出ましたので、今後、検討いただければと思います。
 それでは今回の水質基準の見直しについては御説明した内容で手続きを進めさせていただくということにさせていただきます。それでは次の議題(2)に入ります。水道行政の最近の動向についてということで、御説明をお願いいたします。

○草川水道課課長補佐 お手元のタブレットを御覧いただければと思います。資料2、2ページから水道法の改正についてです。3ページ、改正水道法の施行までの動きについてです。平成30年12月に改正水道法が成立し、昨年2月から4月にかけて、この部会の下に設置されている「水道事業の維持・向上に関する専門委員会」において、「水道の基盤を強化するための基本的な方針」について御審議いただきました。その後、パブリックコメントの実施や法施行に向けた準備を進め、昨年10月1日に改正水道法が施行されたところです。
 4ページは既に御承知の内容ですけれども、水道法の改正の背景を簡単におさらいさせていただきます。我が国の水道は、これまで水道の拡張整備を前提とした時代でしたが、既存の水道の基盤を確固たるものにしていく時代に入りました。しかし、水道管路等の水道施設の老朽化の進行、耐震化の遅れ、小規模で経営基盤が脆弱な多くの水道事業者、計画的な更新のための備えの不足といった課題を抱えております。
 5ページです。このような背景を踏まえ、水道法が改正されたわけですけれども、改正の内容としては、まず関係者の責務の明確化です。特に都道府県が広域的な連携を推進する責務を負うということ。そして広域連携の推進、適切な資産管理の推進、官民連携の推進、指定給水装置工事事業者制度の改善です。法の施行日は、昨年10月1日としております。
 6ページが、先ほど御説明した基本方針についてです。位置付けとしては厚生労働大臣が今後の水道の基盤の強化に向け、一定の方向性を定めるものです。本基本方針についてはパブリックコメントを実施した上で、昨年9月30日に厚生労働大臣が告示をしております。パブリックコメントの結果については厚生労働省水道課のホームページに、基本方針の全文については参考資料1として、配布させていただいております。
 7ページが、改正水道法に基づく広域連携の推進についてです。一番上に厚生労働省、「基本方針」とあり、これは既に策定済みですので、今後はその下、都道府県がこの基本方針に基づき、水道基盤強化計画を策定することとなります。水道基盤強化計画は、広域連携の推進役としての都道府県の機能を強化するために、その広域連携をはじめとする水道の基盤強化に向けた具体的な実施計画を都道府県が主体的に作成するものです。また、その左に「水道広域化推進プラン」とあります。これは昨年1月、改正水道法の施行に先立って都道府県に策定を求めたもので、具体的な内容としては広域化のシミュレーションや、その具体的な効果の比較を行っていくものです。そして、その結果を水道基盤強化計画につなげていただくということを考えております。こちらは令和4年度末までの策定を求めています。
 8ページは、近年における広域連携の実施例を紹介したものです。広域連携については、これまでも各地域で積極的に検討がなされており、実現しているものが幾つもありますけれども、一方で多くのケースで検討開始から統合実現まで10年間前後要しており、なかなか一朝一夕では進まないものだとも考えております。
 9ページが資産管理の関係で、アセットマネジメントの実施状況等についてです。厚生労働省では平成21年にアセットマネジメントの手引きを策定し、水道事業者における実施率は上がってきているところですけれども、今回の改正水道法でも、水道事業者に収支の見直しを作成するという努力義務が課せられたということもありますので、実施率、公表率の更なる向上などにつなげていきたいと考えているところです。
 10ページが、官民連携の推進についてです。基本方針において官民連携は水道基盤の強化を図る上での有効な選択肢の一つとした上で、水道事業者は「官民連携の活用の目的を明確化した上で、地域の実情に応じ、適切な形態の官民連携を実施することが重要」としたところです。
 11ページがコンセッション方式についてです。あくまでも選択肢の1つと捉えておりますが、現状では宮城県、大阪市で取組が進められております。宮城県においては上工下水一体で、水道については浄水場の運転管理等を業務の内容とし、大阪市については管路の更新を業務の内容とし、検討がされており、どちらも令和4年4月の事業開始を目指して取組が進められているところです。
 12ページからが、自然災害の発生状況と対策についてです。13ページが「台風15号」と呼ばれていたものですが、令和元年房総半島台風の水道の被災復旧状況です。この災害は、浄水場等の停電を主な原因として断水被害が発生したことが特徴で、非常用発電設備の活用とか、電力会社による電源車等の配備により、一部復旧がなされたことがありましたけれども、改めて非常用発電設備の設置などの備えや、配水系統のネットワーク化等が重要であるということが明らかになったものです。
 14ページが、「台風19号」と呼ばれていた令和元年東日本台風です。浄水場等の冠水などにより、施設の運転停止などが生じ、約16万8,000戸の断水被害が発生したことが特徴です。昨今は水害が続いておりますので、水害への備えについても重要であると考えております。なお、平成30年9月に発生した北海道胆振東部地震では、大規模な停電等により最大で約6万8,000戸の断水被害を受けましたが、この震災による被害や課題、今後の対策について報告書を取りまとめ、先般1月からホームページ上で公表しておりますので、このような成果も今後活用していきたいと考えております。
 15ページからが令和2年度の予算案等についてです。16ページが水道施設整備費の年度別推移です。一番右の棒グラフに青字で「820億円」とありますが、これが令和2年度の予算案と令和元年度の補正予算を合わせたものです。
 17ページが、水道施設の緊急点検を踏まえた災害対策です。こちらは昨今多発する災害を踏まえ、政府全体で重要度の高い水道施設に対し、停電・土砂災害・浸水災害等への対応状況について点検し、これにより大規模な断水被害が生じるおそれのある施設を、3か年掛けて集中的に対策に取り組んでいるものです。
 18ページが、令和2年度からの新規事業でして、改正水道法を踏まえ、都道府県が水道事業者等の人材育成を行うための事業とか、給水人口の減少等を踏まえた事業規模の見直し、いわゆるダウンサイジングに伴う水道施設の整備・統合等を行う事業に対して財政措置を行うこととしています。また、3か年緊急対策についても今般の自然災害を踏まえ、対象となる施設の拡大を行い、内容を充実させることで更なる災害対策を推進することとしております。

○日置水道計画指導室長 続いて「4.水道分野の国際展開について」を説明いたします。水道分野の国際展開についてはODAによるJICAの技術協力の専門家派遣とか、研修員の受入れといったものもありますが、ここでは水インフラの海外展開という観点から、日本の水道産業の国際展開について紹介させていただきたいと考えております。
 20ページが世界の水道の状況で、基本的な給水サービスを利用できない人々の割合を表したものです。2015年のデータですが、いまだになお8.4億人が、基本的な給水サービスを利用できない状況です。
 21ページが国連の開発目標であるSDGsについて示したものです。2015年9月、17のゴールと169のターゲットからなる持続可能な開発目標、SDGsが国連サミットで採択され、2030年を目指した国際社会の開発目標が定められました。この中で水衛生分野に特化したゴール6というのが、「すべての人々に水と衛生施設へのアクセスと持続可能な管理を確保する」と定められ、このターゲットにはMDGsから引き継がれた安全な水へのアクセスや衛生へのアクセスに加え、水質の改善、水利用の効率化と持続的な取水、統合水資源管理、水に関連する生態系の保全が含まれ、MDGsよりも幅広い内容となっています。特に安全な飲料水に係るターゲットに関しては、「ターゲット6.1」として「2030年までに、すべての人々の安全で安価な飲料水の普遍的かつ公平なアクセスを達成する」とされているところです。
 22ページは、新水道ビジョンにおける国際展開の内容を示したもので、先ほどのSDGs、国際社会の開発目標の達成に向けて、日本が取り組む必要があるなか、日本の水道分野でも、平成25年3月に公布された新水道ビジョンで、国際展開の方向性が示されております。JICAの実施するODAをはじめとした国際貢献と水ビジネス連動、連結を目指すということで、ODAと連動、連結して日本の水道産業の国際展開を図ろうということです。その実現方策については水ビジネスの観点から2つ目の■に、「海外への展開と水ビジネスの連動推進」と示しておりますように、相手国政府や地元水道事業者とのパートナーシップをベースに、日本の水道技術、企業のPRの推進、官と民の連携による案件発掘の推進や、3つ目の■にある「日本の技術・ノウハウの国際的活用」を挙げて、これまで取り組んできたところです。
 23ページが我が国のインフラ輸出の方針ということで、現在、インフラ輸出が政府全体の中で、どのような位置付けになるかというのを整理したものです。ここでのインフラというのは水道分野のみでなく、広くインフラ全般という意味ですが、我が国のインフラ輸出は、このスライドの冒頭に掲げているとおり、海外の成長市場を取り込みたいということで、産業競争力の強化に関する実行計画とか、成長戦略フォローアップ、インフラシステム輸出戦略において方針が示されています。具体的にはその下に書いてありますように、2020年に約30兆円のインフラシステムの受注の実現、IoT等のSociety5.0時代の高度技術をいかした海外展開、「インフラシステム輸出戦略」の重点施策を、官民一体で推進することなどになるわけですが、その表の備考の一番下に示している経協インフラ戦略会議といったものも設置されており、現在、積極的な取組が進められています。
 次の「海外展開戦略(水)」という24ページのスライドは、23ページに示した我が国のインフラ輸出の方針の中にあるインフラシステム輸出戦略に基づいて、水インフラに特化した海外展開戦略を、内閣官房が関係省庁と連携して策定したものです。この「海外展開戦略(水)」では、水分野における国内・海外の市場動向とか、我が国の強み、競合国の動向等を踏まえ、我が国として注力すべき重点領域を整理し、今後の海外展開の取組の方向性を提示するということになっており、我が国の企業の海外展開に向けた横断的な対応策として、8項目を列記しております。「我が国の技術・ノウハウのパッケージ提案」、「独法等の知見の活用」、「国内での知見の蓄積」、「各国のニーズに応じた上流からの提案」、「ソフトインフラの支援強化」、「幅広い海外パートナーとの連携」、「質が高く安全な技術の国際スタンダード化」、」公的支援の拡充」について示されています。
 25ページが「海外展開戦略(水道分野)2018」となっておりますが、これは内閣官房が策定した「海外展開戦略(水)」を受けて、厚生労働省が水道分野に特化した対応方針を取りまとめたものです。内閣官房が策定した「海外展開戦略(水)」は水インフラ全体にわたるもので、当該戦略を推進するに当たり、厚生労働省として水道分野においてどのように対応するかということをまとめたものです。この海外展開戦略(水道分野)2018の全文については、参考資料2としてお配りしています。ここではその中の第3章の「水道分野の海外展開の対応方針」について紹介させていただきたいと考えております。
 26~29ページが、その内容を説明するスライドです。26ページの表の左側が、内閣官房からの対応策です。1番が「我が国の技術・ノウハウのパッケージの提案」です。この対応としては、右側の厚生労働省の対応方針にあるように、特定目的ファンドの形成とか、専門企業によるチームを組織し、国や地方公共団体の協力の下、海外展開を図るということが考えられますが、これを将来の在り方の一つとして、水道分野のインフラ輸出に係る関係者間の情報共有とか、経験の蓄積といった取組を進めていきたいと考えています。
 2番目の「独法等の知見の活用」については、水道分野に関係する独法は存在しておりませんので、地方公共団体の協力を得ながら、日本企業の海外展開を支援していきたいと考えています。
 27ページの3番目「国内の知見の蓄積」については、日本の企業が国内の官民連携の推進などによって蓄積される知見が、国際展開にも効果をもたらすことが期待されています。4番目の「各国のニーズに応じた上流からの提案」については、マスタープラン策定の推進などを通じて、公衆衛生の観点から安全な水を供給するための水道という概念とか、有収率の向上という日本の水道システムを支える考え方を対象国に移転することで、日本企業が進出しやすい環境の形成に努めていきたいと考えています。また、地方公共団体の皆様方に対しては、海外の水道案件に携わる経験というのは、高い人材育成の効果をもたらすということを紹介しながら、インフラ輸出への協力の理解を求めていきたいと考えています。さらに過去の日本の支援で整備された水道施設の更新事業が案件化できないか、施設が整備された後も、日本企業による質の高い維持管理が期待できる事業権付無償資金協力といった制度についもて、相手国に分かりやすく紹介して活用してもらえないかと考えているところです。
 28ページは、5の「ソフトインフラの支援強化」です。ここも人材育成のほか、水道に関わる法制度整備に係る支援を進めたいと考えています。また、国内外の展示会を活用した情報発信とか、日本のコンサルタント、現地JICA専門家からの情報発信に対しても支援をしていきたいと考えております。さらに、過去に日本で研修を受けた海外水道人材の活用などにも取り組んでいきたいと考えています。6の「幅広い海外パートナーとの連携」については、水道セミナー等を通じた現地企業との連携が図れるのではないかと考えております。
 29ページの7番、「質が高く安全な技術の国際スタンダード化」については、ライフサイクルコストの評価やアセットマネジメント、水安全計画等の視点について、情報提供や理念の共有を図っていきたいと考えています。8番の「公的支援の拡充」については、水道分野のインフラ輸出の関係者間での情報共有、連携・調整を図りつつ、対象国のニーズも踏まえ、その支援策の見直し、拡充を図っていきたいと考えています。
 30ページが、厚生労働省が実施している国際展開事業を紹介するものです。この事業は平成20年若しくは平成23年から継続して実施しているもので、基本的には東南アジア地域の開発途上国を対象に、案件発掘の段階から官民が連携して相手国と友好な関係構築を図りながら、日本の水道産業の国際展開、すなわち水道分野のインフラ輸出を支援しようというものです。内容は2つあり、水道セミナー・現地調査と案件発掘調査です。水道セミナー・現地調査については、民間企業と水道事業者が共同して、対象国の政府や水道関係者に対する技術セミナーや調査を実施し、現地の課題と日本の技術のマッチングを図るというものです。案件発掘調査は日本の民間企業と水道事業者等が共同し、対象国の計画・案件を調査し、事業実施に向け、日本の技術を導入する方策を検討するというものです。下の枠囲いは、水道セミナー・現地調査に参加した企業が、JICAの無償資金協力事業を受注した実績を紹介しているものです。
 31、32ページが、これらの事業のこれまでの実績を紹介するもので、水道セミナー・現地調査は平成20年度から令和元年度までに8か国でセミナーを25回、現地調査を28回実施しております。案件発掘調査については、平成23年度から7か国において14回実施しています。
 33ページが最後のスライドで、今年度実施した事業の紹介です。今年度はカンボジア、ラオス、ミャンマー、インドネシアを対象に水道セミナーを実施し、ミャンマーで案件発掘の調査を実施しました。具体的に、カンボジアではJICAの技術協力プロジェクトを実施している北九州市と水道セミナーを共催し、カンボジアの水道の課題や日本に求める支援、日本からの協力の状況について情報交換をしました。また、プノンペン市の一部及びその近隣地域で日本企業と現地企業が共同出資する会社が経営する水道事業を視察したほか、円借款事業で実施されるカンボジアのシェムリアップ上水道拡張事業の予定地の視察をいたしました。また、ラオスでもJICAの技術協力プロジェクトであるMaWaSU2プロジェクトを実施する、さいたま市、川崎市、横浜市、埼玉県の共催でカンファレンスを実施しました。
 また、ラオス国内の水道公社に対して、日本企業からの技術紹介も実施しました。
 ミャンマーにおいても福岡市や東京都の協力を得て、ワークショップを実施するとともに、地方給水の現状や国レベルでの水道行政の所管の在り方について、意見交換を行いました。また、ヤンゴン近郊では案件発掘の調査も実施いたしました。
 インドネシアでは先方の要望に応じた形で、耐震基準策定支援ワークショップを開催したほか、インドネシア商工会議所、西ジャワ州政府を訪問し、PPP案件等に係る情報交換や日本企業の技術紹介をしました。
 厚生労働省は昨年度、海外展開戦略(水道分野)2018をとりまとめ、今後ともこの戦略に沿った形で水道セミナー・現地調査、案件発掘調査の実施に努めていきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。「水道行政の最近の動向等について」の説明は以上です。
○古米部会長 それでは、御質問がありましたらお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
○吉田委員 ただいま、資料の15~18ページで御説明いただいたように、近年は災害が多いということで、その災害から得られた教訓を基に、防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策事業を立ち上げていただいたという点については、水道事業体としても非常に心強いと思います。ただ平成30年、令和元年、令和2年までの3か年ということで、当面、優先順位的に急ぐものをこの3か年という考え方は理解するところですが、水道施設は装置産業なので、全体的な国土強靱化で減災・防災を図るためには、やはり中長期的な視点が不可欠と考えています。令和3年度の話になりますが、令和3年度以降についても是非、国土強靱化のために水道施設の減災・防災に資する施策を検討いただきたいということをお願いいたします。

○古米部会長 ほかに御質問はありますか。

○遠藤委員 今の御説明とは関係なく、新型コロナ関係のことでもよろしいですか。公衆衛生の立場から言うと、本当にきれいな水というのは非常に大事です。手洗いをしましょうというのは、日本では本当にきちんとした水道が整備されているからいいのですけれども、私が心配しているのは、ほかの企業ではサプライチェーンのいろいろな問題が出ていることです。水道でも恐らく素人的には浄化とか、消毒のためのいろいろな資材と言いますか、薬品といったものが必要となっているはずですが、それは日本国内だけで十分供給できるものなのか。あるいは中国などから輸入していて、もしそれが途絶えてしまった場合、水道が止まってしまうということがないのだろうかと心配になったので、その辺の事情についてお聞かせ願えればと思います。

○古米部会長 事務局、何かありますか。

○草川水道課課長補佐 新型コロナウイルス感染症への対応についてですけれども、先般の担当者会議や厚労省から出した通知において、各水道事業者に対し、作業従事者の感染予防の徹底、感染者が発生したときの代替要員の事前確保、多くの職員が感染し、水道局の職員が少なくなった時の業務の優先順位付け、いわゆるBCPというもの、先生御指摘の必要な物資の事前確保といったことを要請させていただいているところです。物資については個別に水道事業者に対し、現在の不足状況についてヒアリングを行っておりまして、今のところ、不足している物資はないという回答を得ているところですけれども、これからも引き続き状況を確認して、必要な対策を打っていきたいと考えております。

○二階堂委員 全水道の二階堂です。今、遠藤先生からもお話がありましたけれども、感染症の危機管理対策ということで、1月に厚労省として各事業体に発文されていたと思うのです。現状、私たち働く側の立場から申し上げますと、今のお話にありましたとおり、例えば浄水場の運転管理については、人事異動等はありますけれども、浄水場の運転管理経験者を、感染症が発生したときのストックとして準備をしている事業体が結構あるそうです。したがって、技術力の差や機材の差はありますけれども、今回の感染症対策を契機として各事業体に、感染症や危機管理対策ということで、人材と技術の確保など機材も含めて、基本方針を踏まえた水道事業の強靱化という観点で厚労省としても踏み込んだ方針を示していただければと思います。よろしくお願いいたします。

○古米部会長 ほかに何か御質問はありますか。よろしいでしょうか。では私から。先ほど2件の台風について御報告を頂きました。胆振地震に関しては、報告書を取りまとめて公表されていますので、昨年9月にあった台風2件についても、同じような形で皆さんに周知されるという計画と理解してよろしいでしょうか。

○草川水道課課長補佐 報告書自体は現在作業中ですけれども、完成し次第、公表させていただきたいと考えております。

○古米部会長 もしほかになければ、次の議題に移りたいと思います。議題(3)建築物衛生行政の最近の動向等についてということで、事務局より御説明をお願いしたいと思います。

○北村生活衛生課課長補佐 それでは資料3について御説明いたします。建築物衛生行政の最近の動向等ということで、1枚目に建築物衛生法の体系図を示しております。これは昨年度も資料として使わせていただきましたので、簡単に説明いたします。左の下のほうに青い「特定建築物」という図があります。興行場や百貨店、集会場といった多数の人が利用・使用する、延床面積が3,000m2以上の建築物、小学校、中学校の場合は8,000m2以上ですが、こういった建築物を特定建築物と規定しております。この特定建築物の所有者や特定建築物維持管理権限者に対しては、法で定める建築物環境衛生管理基準に従って、空気環境、飲料水、雑用水、排水、清掃、ねずみ・昆虫等の防除について、適切に管理をする必要があります。昨年度末のデータでは、特定建築物は全国で4万6,210か所となっております。内訳を見ますと4割ぐらいが事務所、続いて店舗、旅館、学校といった割合となっております。現在、建築物衛生法においては、赤枠で囲っている部分について検討を進めております。
 1つ目は「現在までの特定建築物の適用範囲の拡大について」という資料です。ここで言う適用範囲というのは、先ほど御説明した「延床面積」のことを言っております。昭和45年の法制定時には、法の対象となる建築物の延床面積は8,000㎡以上ということで、かなり大規模な建物だけを対象としていたのですが、だんだん年を経ていくごとに5,000m2になり、3,000m2になりという形で改正になっています。
 また、昭和50年までは除外規定という考え方がありました。先ほど申し上げた興業場や百貨店に当たる部分と、それには当たらない共同住宅や診療所といった部分の割合を見て、一定以上特定用途に当たらない部分がある建築物については、その全体を特定建築物と見なさないという考え方が以前はあったのですが、平成14年からはそういった除外規定がなくなり、特定用途に当たる部分が3,000m2以上あれば、特定建築物に該当するといった運用を現在はしております。
 現在検討をしているのが、3,000m2以上の特定建築物については、法で定める空気環境の基準や水質の基準が義務として掛かってくるのですけれども、それより下の部分、例えば2,000m2から3,000m2未満の中規模の建築物については、環境衛生上きちんと維持できているのか、もしかしたら好ましくない状況があるのではないかという懸念もあり、今、中規模建築物における衛生管理の実態に関する研究を進めております。現在、中規模の建築物のヒアリングや実態調査等を行いながら、例えば特定建築物の適用を3,000m2から、更に拡大する必要があるのではないかというところも含めて研究を進めております。本年度がちょうど終了する年度で、結果については来年度のこの部会で御報告をさせていただきたいと思っております。
 続いて「建築物環境衛生管理基準について」です。こちらについては法で定めているとおりですが、空気環境の調整や給水・排水の管理といった、環境衛生上良好な状態を維持するのに必要な措置について定めているものです。その下の表ですが、空気環境の調整に関する基準ということで、例えば浮遊粉じん量や二酸化炭素、一酸化炭素の各基準値を定めており、特定建築物の所有者等はこれに従って特定建築物の維持管理をする義務があります。
 ただ、下のグラフを御覧いただければお分かりになりますが、この基準値の中で相対湿度、温度、二酸化炭素については非常に不適合率、要はその水準を満たしていない特定建築物が多数報告されているという状況があります。そこで現在建築物環境衛生管理基準の検証に関する研究を進めております。この研究においては浮遊粉じんの量や一酸化炭素、二酸化炭素の含有率というのが、そもそも国際基準と照らしてどうなのかということも含めて、文献調査等を行いながら最新の知見を収集し、再評価しております。併せて自治体から不適合の結果が多数寄せられておりますので、その要因について分析をしていただいているところです。こちらについても本年度が研究の終了となっており、来年度のこの部会で報告させていただきたいと考えております。資料3については以上です。

○古米部会長 それでは、御質問がありましたらお願いしたいと思います。では、私から1つ、ちょうどコロナウイルス関連で言うと、密閉した空間の中の換気が非常に重要になっておりますが、この資料で言うと調整に関する基準の気流が、それに関係する話なのでしょうか。

○北村生活衛生課課長補佐 二酸化炭素のところが基準値となります。二酸化炭素の発生原因は人間の呼気が一番の要因になるので、二酸化炭素の量をきちんと測っていれば、その部屋の中の換気がきちんと行われているかの評価になるということです。今ここで言っている1,000ppm以下というのは、一般的な公衆衛生上好ましい水準になっていて、換気はよくできているというように考えてはいるのですけれども、それが今回の新型コロナウイルス感染症対策として有効かどうかというのは、まだいろいろな知見が必要かと考えております。

○古米部会長 ほかに御質問はありますか。よろしいでしょうか。それでは御説明、どうもありがとうございました。来年度、また追加の研究成果を御報告いただけるということです。それでは議題(4)、その他です。事務局から何かありますか。

○草川水道課課長補佐 特にありません。

○古米部会長 それでは、本日予定していた議事は全て終了いたしましたので、事務局にお返しいたします。

○草川水道課課長補佐 本日は貴重な御意見を頂きまして、どうもありがとうございました。本日の部会の議事録については後日、委員の皆様に御確認を頂いた後、ホームページで公開いたしますので、御協力のほど、よろしくお願いいたします。それでは、これをもちまして閉会といたします。本日は誠にありがとうございました。
 

 

 

 

 

(了)

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