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2018年3月9日 第4回社会保障審議会年金部会年金財政における経済前提に関する専門委員会 議事録

年金局

○日時

平成30年3月9日(金)13時30分~15時30分

 

○場所

全国都市会館 第2会議室(3階)

○出席者

植田 和男(委員長)
小黒 一正(委員)
小野 正昭(委員)
権丈 善一(委員)
小枝 淳子(委員)
駒村 康平(委員)
武田 洋子(委員)
玉木 伸介(委員)
野呂 順一(委員)
山田 篤裕(委員)
吉川  洋(委員)
米澤 康博(委員)
森審議役(年金積立金管理運用(独):GPIF)
鎌田企画部長(年金積立金管理運用(独):GPIF)

○議題

(1)年金積立金管理運用独立行政法人からのヒアリング
(2)2014(平成26)年財政検証における運用利回りの設定等について
(3)諸外国の公的年金の財政見通しに用いる経済前提について

○議事

 

 

○植田委員長
 それでは時間になりましたので、まだお見えでない方もいらっしゃいますが、第4回の年金財政における経済前提に関する専門委    員会を開催したいと思います。本日は御多忙の中、お集まりいただきありがとうございます。
 それでは、議事に入らせていただきます。カメラの方はここで御退席をお願いいたします。まず、事務局から資料の確認をお願いいたします。
 
○武藤数理課長
 数理課長の武藤です。私から資料の確認をいたします。資料1は、GPIFの運用実績と基本ポートフォリオについて、GPIFの御提出資料です。資料2から資料5までは事務局からの資料で、資料2が経済前提が年金財政へ与える影響について、資料3が2014(平成26)年財政検証における運用利回りの設定について、資料4が利潤率と実質長期金利の相関、資料5が諸外国の公的年金の財政見通しにおける経済前提についてとなっております。皆様、お手元にありますでしょうか。
 
○植田委員長
 それでは、議題に移りたいと思います。最初に、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)からのヒアリングということで、本日は、年金積立金の運用実績及び基本ポートフォリオの設定について、GPIFの鎌田企画部長に説明をお願いしています。それでは鎌田部長、御説明をよろしくお願いいたします。
 
○鎌田企画部長(年金積立金管理運用(独):GPIF)
 ただいま御紹介に預かりました、GPIFの企画部長をしております鎌田と申します。本日、事務局から15分程度で説明してくれということですので、先ほどありましたが、タイトルにもありますが、運用実績の概要と現行基本ポートフォリオの概要について、簡単に概略を説明いたします。
 3ページ目ですが、上が累積の収益額、下が運用の資産額で、私どもは2001年度から市場運用を開始しておりますので、2001年からというものを掲載しております。見ていただきますと、平成22年、平成23年当たりから右肩上がり、多少デコボコはありますが、そういった形で着実に累積収益を上げているという状況です。下を見ていただきますと、運用資産額ですが、2016年度末で145兆程度ということになっております。
 4ページ目は収益額です。右方に業務概況書より抜粋とありますのは、私どもが毎年出しております業務概況書があり、そこからの抜粋になります。これを見ていただきますと、一番上が資産全体の収益額となっており、それは市場運用分と財投債分を足したものとなっております。スクリーンですと字が小さくて見えづらいかと思いますので、お手元の資料で見ていただければと思います。先ほどのページはグラフでしたが、それを数字にしたもので、市場運用開始後の2001年から2016年と、一番上の表の右端ですが、53兆3,603億となっております。中ほどの市場運用分ですが、上から総合収益、国内債券、国内株式、外国債券、外国株式、短期資産とあります。2015年度(平成27)の総合収益の所を見ますと、マイナス5兆円ということで批判も浴びたところではありますが、直近の2016年度(平成28)ですと、8兆弱のプラスを上げている状況です。
 5ページ目、運用パフォーマンスです。今度は額ではなく率になりますが、これを見ていただきますと収益率、一番上の表ですが、右端の市場運用開始後で見ますと、年率で2.89%、そこから左に3つずれていただきますと、直近5年間では6.48%、直近10年間では2.89%となっております。後ほどの話にも関係しますので、資産別に見ていただきますと、時間加重収益率という所の下に国内債券がありますが、比較的安定した数字でして、ぶれ幅が少なくなっております。一方、国内株式、外国株式を見ていただきますと、年によってはプラス50%もあればマイナス43%もあるということで、ぶれ幅が大きくなっております。直近5年間という所、右から4列目ですが、国内債券は2%ちょっと。国内株式、外国株式は14.27%、16.51%ということになっております。市場運用開始後、全てのもの、一番右端ですが、国内債券は1.73%、国内株式2.68%、外国株式5.32%となっております。ですから、国内債券はぶれ幅が小さいですが、国内株式、外国株式といった当たりではぶれ幅が大きいという感じになっております。
 6ページ目ですが、右上に当委員会用に試算とあります。これは、事務局から国内債券を上回る収益率というものを算出してプレゼンしてくれということで作成したものです。上の表にある時間加重収益率、国内債券は先ほどのページにあったものと同一で、それを単純に引き算したものが、下側の表になっております。一番右端、市場運用開始後を見ていただきますと、国内債券を上回る利回りというのは1.48%となっており、それが下のグラフで言いますと、吹き出しで国内債券を上回る収益率は約1.5%と記載しているところです。ですからデコボコはありますが、ならして見ると国内債券を1.5%程度上回っているというのがGPIFの実績ということになっております。
 7ページですが、これは業務概況書より抜粋したもので、名目運用利回り、名目賃金上昇率、実質的な運用利回りを掲載しているものです。表が2つありますが、上は私どもの運用実績でして、下は財政計算上の前提となっているものです。上の表の一番右端の16年間の年率で見ますと、実績では名目運用利回りが2.53%、名目賃金上昇率はマイナス0.26%ということですので、実質的な運用利回りは2.80%となっております。下の財政計算上の前提です。ケースが分けてあるので少し見づらいかもしれませんが、上段が経済再生ケースでして、16年間の所を見ていただきますと、名目運用利回りが2.12%、名目賃金上昇率が1.96%ということですので、その差が0.16%ぐらいということになっており、実績と前提と、少し違うかなというところが見て取れるかと思います。
 8ページは、委員会用に試算とあります。これも、普段我々は出していないのですが、出してないといっても、そんなに計算は難しいわけではないのですが、対物価での実質運用利回りを出したものです。一番右端の運用実績、16年間の対物価では2.47%となっておりますが、財政計算上の前提では物価の変動率が高いというふうな前提を置いていますので、対物価の実質運用利回りは0.70%といった値になっているということです。
 9ページ、10ページは各資産の超過収益率です。時間の関係もありますので割愛いたします。
 11ページ目は、運用資産額・資産構成割合を掲載しております。1点だけ、後ほど触れるので言いますが、2016年度末、一番右下の所にありますが、それの更に右下に短期資産が5%ということになっており、近年になく割合が高いなということです。この理由については、後ほど説明いたします。
 12ページ目からが、現行基本ポートフォリオの概要で、本日頂いているお題のもう1つです。
 13ページ目が概要です。最初のポツですが、私どもでは平成27年度からの第3期中期計画、5年をタームとして中期計画を作成しており、平成27年度からが第3期計画ということでした。平成26年6月に、こちらの委員会で財政検証をなさったので、それを受けて平成27年度の4月からということで開始したところです。4月から開始しましたが、そのときに大きな運用環境の変化の節目にあるということで、4月を待たず、平成26年10月に基本ポートフォリオを変更しております。
 14ページが、現行基本ポートフォリオの概要です。変更前が上段、変更後が下となっており、短期資産の所がなくなっている、国内債券の割合が60から35になっているというところ、その分国内株式、外国株式が増えているといったところが見て取れるかと思います。
 15ページが、基本ポートフォリオの前提条件です。先ほどのような35、25、15、25といったようなポートフォリオを策定したわけですが、その前提条件として、どういったものを勘案したのかということです。15ページは財政検証とありますが、これは、こちらの委員会で前回のシリーズで作成されたものですので、説明は省略いたします。そのまま使っているということです。
 もう1つ、前提条件として大事なものがあり、それは中期目標です。こちらの委員会では中期目標については議論はしないと聞いていますが、ポートフォリオの策定について必要なところだけ述べたいと思います。中期目標といいますのは、厚生労働大臣から我々に示される中期目標というもので、その中に丸の1とありますが、いわゆる財政検証を踏まえ、流動性を確保しつつ実質的な運用利回り(運用利回りから名目賃金上昇率を差し引いたもの)1.7%を最低限のリスクで確保することとあります。もう1つ大事な点があります。丸の3ですが、名目賃金上昇率からの下振れリスクが、全額国内債券運用の場合を超えないということも記載されております。
これらを踏まえ、我々で、我々と言いますか当時は運用委員会ということで、こちらの委員の方のうちの何人かにも御協力、御尽力を頂いていたのですが、そこでどのように考えたかということです。まず1点目は、積立金の想定運用期間ということで、年金財政は100年先を見据えてやるということです。我々としましては、25年後までを運用期間、基本ポートフォリオを策定するための期間としては25年というものを見ました。なぜかと言いますと、その25年から先は積立金を取り崩す一方ということで、局面が大分変わるということで、まずは25年というタームを作って基本ポートフォリオを策定しようといたしました。
 もう1点が、流動性の確保です。そこに書いてありますが、小さいポツの2つ目です。図上を見ても分かるとおり、25年と言いましても最初の10年はキャッシュアウトが想定されておりました。どこがというと、こちらの財政検証の形でキャッシュアウト、我々からお金が出ていくという局面を想定していましたが、実際は下にありますが、足下では代行返上によりキャッシュアウトは減少ということで、厚生年金基金が解散、代行返上が平成26年以降からあります。そうしますと結局、年金特別会計にお金が戻ってくることになります。そうすると、GPIFからお金をバックしなくてもいいと言いますか、逆にキャッシュインのような状態になり、それが短期資産というところにたまっているということでして、それが、先ほどの短期資産が5%になったという状況の理由になっております。
 18ページ目が、必要な積立金の確保と下振れリスクの最小化です。どうやって、今の基本ポートフォリオを35、25、15、25というように選定をしたかということですが、必要な積立金を確保しつつ、下振れリスクを最小化するということで考えました。丸の1ですが、4資産のリターン、リスクに基づいて、名目賃金上昇率を下回る確率が下方確率ということで、これは先ほどの中期目標でありましたが、その確率及び名目賃金上昇率を下回るときの平均不足率などを推計としております。中期目標で示された所の下振れリスクというのは、ここで言う下方確率というものに当たると考えており、これだけでもいいのではないかという考えもあるかもしれませんが、それだけでやりますとポートフォリオの選択の指標としては少し不十分ではないかということで、そこにあります条件付平均不足率というものを新たに考え、選定の指標としております。どういう意味かと言いますと、下方確率というのは、名目賃金上昇率を運用利回りが下回ってしまう確率なのですが、それをなるべく避けたいということであれば、リターンの良いものを選べばいいということになります。そうしますと、リターンが良いものを選んでおけばいいのかと言いますと、それはそれに呼応したリスクというのがありますので、市場に負けたときに、負け幅が少し大きくなるということがあります。ですので、負け幅が大きくなるようなポートフォリオが年金財政の安定のために資するかというと、そういうことはないだろうということで、まずは下方確率、名目賃金上昇率を下回る確率が国内債券でやった場合、……と比べて低いものにするのですが、低くければ良いということではなく、条件付平均不足率がなるべく大きくならないといったものを選んで策定したものが、今の基本ポートフォリオになります。
 下の表を見ていただきますと、一番下に参考とあります。全額国内債券でやりますと、例えば経済中位ケースでは、下方確率は51.7%と半分以上は下回ってしまいますが、我々の策定した、我々と言いますか運用委員会で決めていただいた基本ポートフォリオでやりますと44.4%となっております。
 条件付平均不足率というのは、全額国内債券でやりますと3.86%。要は負けたときは平均的に3.86%負けるのですが、我々のポートフォリオですと9.45%ですので、少し大きいことは大きいのですが、ほかの選択肢から見ると一番小さいものを選んだことになります。
 19ページですが、ほかにどういう検証をしたのかということです。長期間運用した場合に、最終的に積立金を確保できないリスクがどの程度あるのかを検証しました。どうやったかというと、10万回シュミレーションをしました。それによりますと、想定運用期間の最終年度、平成51年、25年後ですが、そこにおいて積立金を確保できないリスクというのは経済中位ケースで40%、市場基準ケースで25%となっております。
 最後の20ページを見ていただくと、上が経済中位ケース、下が市場基準ケースです。我々のGPIFの基本ポートフォリオですと、上の青い分、これが下が25%タイル、上が75%タイルですが、太線が財政計画上の予定積立金額ですので、おおむね賄える。賄える確率というのは40%となっておりますが、全額国内債券でやると、ちょっと届かない。オレンジの線が下にあるというのは、届かないということを意味しております。市場基準ケースですと、大分下がって25%になってしまいますが、それであっても全額国内債券でやるよりはいいという結果になっております。大分時間を超過してしまいましたが、説明は以上です。
 
○植田委員長
 それでは、今の御説明について、御自由に御質問、御意見をお願いいたします。
 
○駒村委員
 先ほど御説明があった11ページの短期資産の所ですが、現在7兆円持っているということです。これは、運用を4、5%でできれば0.3兆円ぐらい稼げたと思うのですが、短期資産では利回りはすごく低いと思います。先ほど、急に増えているのは厚生年金基金の解散からの繰込金が発生しているということです。そもそも、キャッシュアウトのために、どのぐらいのお金を持っていればいいのか。基金からの繰り入れは、このうちどのぐらいであったのか。それから、基金からお金が入ってくるというのは、ほとんどの基金が恐らく解散すると思うのですが、計画的に入ってこないのか、ある日、ある年、ドンと入ってきて、いきなりこんなに6兆円も増えてしまうものなのか。その辺りが、どのような構造になっているかを教えていただけますか。
 
○鎌田企画部長
 私どもで答えられるところは答えますが、その他は事務局からフォローしていただければと思っております。短期資産を何パーセントと思っているかですが、この基本ポートフォリオを策定した当時は、大体2%程度ではないかということです。それから、これを預けておいたらもう少し稼げたのと違いますかという話ですが、先ほど中期目標にもありましたので、我々は最低限のリスクで、余り言うと投資行動に関わってしまうので言えないのですが、そういったリスクなども考えてやっていることになろうかと思います。
 それから、基金がどれぐらい解散してというのは、ちょっと私どもでは分かりかねますので、事務局でフォローしていただければうれしいかと思います。あと、現物のことを言いますと、平成15年度に1回あったきりで、その前もその後も現物での納付はありません。
 
○武藤数理課長
 若干フォローさせていただきます。厚生年金基金の解散によって、厚生年金保険特別会計の中に解散厚生年金基金等徴収金という収入項目があります。平成25年度に厚生年金基金の改正がなされ、平成26年度以降その額が増えてきています。参考までに、額を報告いたします。平成25年度、改正前の時点ですが、1,449億円だったものが、平成26、27、28年度と額が多くなっておりまして、3か年の順に、2兆1,103億円、4兆6,647億円、4兆3,844億円ということで、この辺りの額が多くなっていることをもって現金が増えているのかと思っております。
 
○宮崎資金運用課長
 少しだけ付け加えます。厚生年金基金の解散が事前に想定できるのかというと、どうしても厚生年金基金側の事情で、例えば市況が好況のときには、解散を予定していても、早めに解散に踏み切るというような事情がありますので、事前にきちんと想定することが難しいのです。マーケットの状況などを見て、かなりぶれが出てくるものだと推測しております。
ただ、厚生年金基金全体の数がありますので、その中でこれまでの推移を見ますと、大体大きな峠は越えて、これからは大きなぶれみたいなものは出てこないのかなということで、私どもは推測をしているところです。
 
○植田委員長
 ほかにいかがでしょうか。
 
○野呂委員
 初歩的な御質問ですが、7ページの運用利回りの比較が、なかなか素人には理解しにくいです。取り分け、名目賃金上昇率を引くことによって出てきた実質的な運用利回りの前提と運用実績の差で、運用の評価していくということで、恐らくこれは、保険料収入と給付と積立金のトータルのバランスを相似形にもっていくために、運用利回りと名目賃金上昇率をリンクしているのではないかと思いますが、なかなか一般的、国民的に理解しにくいのが1点です。
 もう1つは、GPIFで実際運用をされている中で、賃金上昇率をかませたような目標利回りが、実際に運用をされている側でどのような感じなのかをお聞きしたいと思います。民間企業では、賃金上昇率をかませて運用利回りのターゲットとするという経験がありませんので、その辺りの扱いやすさ、扱いにくさを教えてほしいと思います。
 
○鎌田企画部長
 正直言っていいのかどうかはあれですが、民間の発想と、我々の発想は、多分似ていることになろうかと思います。それから、海外の公的年金で同じように賃金の上昇率をメルクマールとしてやっているのかというのを、我々の委託研究でちょっとやったのですが、そういう所は見つかりませんでした。ですので、ユニークな手法であるということは言えるかと思います。
 
○野呂委員
 例えば、賃金上昇率は長期的には、金利やGDPに関係あるようにも思うのですが、短期的には人手不足などによっても振れるので、なかなか運用利回りのターゲットとしては扱いにくいのではないかと思います。実際、運用されている中で、どのような感じかをお聞きしたかったのですが。
 
○鎌田企画部長
 おっしゃるとおりではないかとは思います。ただ、我々は厚生労働省からこれでやるようにというか、中期目標として与えられておりますので、それを粛々とやるという。すみません、ストレートな答えになっていないとは思いますが、そういうことです。
 
○森審議役(年金積立金管理運用(独):GPIF)
 付け加えますと、私どもはパッシブ運用とアクティブ運用をやっています。パッシブ運用は市場のベンチマークがありますので、それを見ながら、ベンチマークをより上回るよう努力もしております。
 
○小黒委員
 御説明を伺っていて、最後のほうで質問をさせてください。最後の20ページのところです。上の段が、経済中位ケースですので、内閣府の試算と、例の年金の財政検証とケースEで、下がケースGです。これが、2039年までになっているのですが、もう少し先まで延長して、あと2、30年ぐらい延ばすことは内部で試算されていらっしゃるのでしょうか。それから、延長した場合に、どういった形状になっているのかがもしあったら知りたいのが、1つです。
 もう1つは、全体の株式市場が各時点でどれぐらいのボリュームになっているかは分からないのですが、どれぐらいのパーセンテージをGPIFさんが持たれているような感じになっているのでしょうか。何でお伺いしているかというと、長期的には保有する株式を取り崩していくと思いますので、取り崩すときのインパクトがどれぐらいのものか、把握したいからです。株式市場の全体の時価総額に対して、どれぐらい保有されているかが、指標として結構重要になると思うのですが。そういうことをやっていらっしゃるのかという、この2点を教えていただけないでしょうか。
 
○鎌田企画部長
 まず、1点目の20ページの表で、この先もやっているのかについては、25年をターゲットとしてやっておりますので、そういったものはありません。25年間、ずっとこの先も変えないというわけではなくて、5年に1回ずつの見直しも行いますので、その時期が来ればまたということで、次が25年でやるかどうかも分かりませんが、5年に1回は見直すという中で考えることになろうかとは思っております。
また、世界の株の中での割合は、今すぐ手元にはないのですが。
 
○小黒委員
 世界ではなくて、日本だけでいいのですが。
 
○鎌田企画部長
 日本だけですか。
 
○小黒委員
 はい、世界の株は別に。例えば、アメリカの株を保有していても、それを売ろうが売るまいが、日本の株式市場に直接的な影響はないと思いますから。日本の株式市場と、内国債の辺りが、どうなっているか、把握をしたいということです。
 
○鎌田企画部長
 大体、1割程度です。
 
○小黒委員
 1割というのは、ピーク時ででしょうか。全体の株式市場に対する話です。例えば2039年での割合や、それ以降はどうでしょうか。
 
○鎌田企画部長
 その先の話ですか。
 
○小黒委員
 先の話もです。
 
○鎌田企画部長
 先は。
 
○小黒委員
 分からないですか。
 
○鎌田企画部長
 それは、ちょっと我々のターゲットの先なので、分かりません。
 
○宮崎資金運用課長
 私から少し補足いたします。まず、後段の株式市場に占める割合で言いますと、今、GPIFで持っている国内株が40兆円ほどぐらいですので、東証一部上場の時価総額で600兆円とかいうことで考えますと、6から7%ぐらいを保有しているというところが、ざっくりとした相場感だと思います。
 取り崩しとの関係との御指摘がありましたが、前回基本ポートフォリオを作成したときに、先々その点をどうするかということが出てきますので、取り崩し局面までの25年間でポートフォリオを作ったというのが、まず前提です。さらに、25年を過ぎて先まで考えると、その辺りのオペレーションが難しく、いろいろと違う要素を考えなければいけなくなるので、想定運用期間を25年に置いたということです。
 
○小黒委員
 すみません、今お伺いしているのは、その前提の上で、例えば2039年にどれぐらいのポーションを保有しているのかを教えていただけないかなという質問だったのですが。
 
○宮崎資金運用課長
 そこは、株式市場の想定はしていないので、持っておりません。もう一点付け加えますと、先ほどの別の方の御質問にもありましたが、キャッシュアウトとの関係で言いますと、キャッシュアウトは正に現金化する部分をつくらないといけないわけです。足下は国内債券の一部分をキャッシュアウト対応ファンドという形で20兆円を作り、毎年定期的に現金化、償還されてくるという仕組みを入れて、何か無理に現物を売るということがないような工夫などをしています。ですので、ポートフォリオ管理上の工夫をして、何か売らされてしまうことがないようなことを事前に想定しながら準備するのが通例だと思います。
 
○小野委員
 2つ質問させていただきます。1つは、パフォーマンス評価の所です。パッシブ運用とアクティブ運用のベンチマークが、若干違っていますが、これは、アクティブ運用はそれぞれの運用スタイルなりのベンチマークを使っているという理解でよろしいのでしょうか。
それから、最近こういった伝統資産と言われる資産以外の資産に、GPIFは力を入れていることだったと思ったのですが、その辺りは、どのような形で、この表の中で整理されているかを教えていただければと思います。
 それから、初回に発言させていただいた関係で申しますと、厚生労働大臣からの運用の目標の中で、賃金上昇率プラス1.7%という目標があったわけです。GPIFとしては、現に金融資産を保有しておりますし、足下の経済状況も考慮しなければいけないような中で、1.7%というのは、あくまでもこの委員会で作った長期の前提ということでした。その意味では、金利と賃金との相対関係が長期と足下では、大分違ってきていて、結果的には、債券運用を上回るリターンに対して、結構負荷が掛かってしまったのではないのかなという気がしています。さはさりながら、賃金上昇率プラス1.7%ということになっておりまして、これは、足元を含めると、恐らく債券プラス1.7%ぐらいになるのではないかと思うのです。その辺りは、GPIFさんとしてはどのようなお受け止めをしたかをお伺いいたします。
 
○森審議役
 まず1点目の御質問ですが、ベンチマークには、講学的な話ですが、ポートフォリオを作るときの政策ベンチマーク、あとは資産ごとに管理します管理ベンチマークと、マネージャーに与えるベンチマークがあります。マネージャーベンチマークは、我々マネージャーのスタイルごとに決めており、それぞれのベンチマークを与えて評価しています。ただ、資産ごとについては、国内債券は国内債券、国内株式は国内株式という形で、これは単一のベンチマーク、例えば、国内株式はTOPIXという形で、評価をしております。
 それから、オルタナティブなのですが、これはそもそも、リスク・リターン特性の設定がなかなか難しい資産です。我々が評価するときにはIRR、要するに、内部収益率で評価するわけです。併せて、パブリックなベンチマークがありますので、そういうものを組み合わせて個別に評価していくという手法を取っています。
 2番目のお話は、先ほども鎌田から申しましたように、我々はポートフォリオを前提とし、それからパッシブ運用とアクティブ運用を組み合わせて、あとは乖離許容幅を利用しての機動的な運用、特に運用環境は変わっていますので、そこでどのように運用していくかという課題を与えられています。乖離許容幅を使いながら、できるだけ安全でかつ効率的な運用をするということで、日々努めております。その中で、どのような形で運用環境を見ていくかというと、債券なり株式市況なり、手元にあるような指標を見ながら運用しているというオペレーションです。
 
○鎌田企画部長
 若干補足いたします。オルタナの規模で言いますと、今は資産総額の0.1%程度となっております。ポートフォリオ策定上どうしたかと言いますと、上限を5%と決めており、その中でやるとしております。
 
○植田委員長
 1つ、私から質問です。後半のほうでリスク評価の話をされていました。例えば、賃金上昇率はいろいろ出て、そのとき、債券運用のリターンがこれぐらい、株の運用のリターンがこれぐらいと、いろいろなケースを見て、確率は何%とか、債券運用の場合はどれぐらい下回るという計算をされているわけです。現実には、賃金上昇率はある出方をした場合に、勝手に株や債券の収益率が出るわけではなくて、それに引きづられて、またある所に出ていくという相関があるわけです。それを全て考えた上でやるというのは、いろいろなケースを考えることは望ましいわけですが、非常に難しいと思いますので、どういう簡便法を使われたかを教えていただければと思います。
 
○森審議役
 お答えになっているかどうかは分かりませんが、私ども一番大事なものとして与えられているのは、予定された年金積立金額をきちんと取ることですので、御指摘いただいたような点は、25年でやっていますが基本ポートフォリオでどのぐらいの確率で取れるかということで、やっています。日々というわけではなく、これは1年に1回、検証という形で、今の経済状態ならば、どのぐらいの確率できちんと積立金額を取れるかどうかという検証を毎年やっておりますので、ここでは、1年に1回このような形でリスク評価をやらせていただいていることについてだけ御紹介させていただければと思います。
 
○米澤委員
 今の御質問には、例えば債券と株式を比べたら、賃金が上がったときには、株式のほうがヘッジ力があるのではないだろうかという場合には、これを考慮してポートフォリオを決めているかという御質問ですよね。
 
○植田委員長
 リスクシナリオのいろいろなケースのそれぞれで、相関が考慮されているかどうかです。
 
○米澤委員
 もちろん、過去のデータで相関を調べていましたが、我々が考えていた以上に相関がなかったので、少なくともポートフォリオを作るときには、広い意味でのライアビリティのところは、明示的に考慮していなかったと理解しております。最初に、例えば全部リターンから賃金上昇率のリターンを引いたものとして、全部ポートフォリオを作り直したのですが、余り引く前と違わなかったことをチェックしてやっていたと記憶しています。ですから、考慮していないのが正しいかと思います。ただし将来シミュレーションを行った時には相関を考慮して行い、将来積立金を評価しました。
 
○植田委員長
 それでは、大分時間も押してしまいましたので、まだ御質問等はあるかもしれませんが、少し先に進みます。続いて議題2、2014年財政検証における運用利回りの設定等についてと、議題3、諸外国の公的年金の財政見通しに用いる経済前提について、事務局から説明をお願いいたします。
 
○佐藤数理調整管理官
 年金局数理課の数理調整管理官の佐藤です。私のほうから資料2から4について御説明いたします。資料2、経済前提が年金財政に与える影響について御説明いたします。この資料は第2回の当委員会において権丈委員より、経済前提が年金財政にどのような影響を与えて、最終的に所得代替率にどのように影響するのか整理していただきたいという旨の御発言がありました。そこで、事務局において経済前提が年金財政に与える影響を整理したものです。経済前提が年金財政に影響を与える結果として、マクロ経済スライドの給付水準調整期間が変動するということになりまして、それを通して将来の所得代替率にも影響を与えることになります。
 1ページです。これは御案内のとおりかと思いますが、公的年金は現役世代の保険料を、そのときの高齢者の年金給付に充てるという賦課方式を基本とした財政方式となっております。したがいまして、現役世代の保険料が財源の中心ということになるわけですが、一定の積立金も保有して、それを運用するなどして活用することとしており、それによって将来においても一定の給付水準を確保するという仕組みになっています。
 2ページです。公的年金の財源の中で、積立金の財源がどの程度の割合を占めているかを、平成26年財政検証の経済前提ケースEの結果によりお示ししたものです。2110年までの約100年間の年金給付に充てられる財源構成を見ると、年度によってその構成割合は右側の図にあるように変化していきますが、これを現在の一時金に勘算して平均すると、左側の図にありますように、積立金の運用収入とその元本を充てるということにより、約9%と書いてありますが、約1割ほどの財源が賄われているということになっております。保険料が約7割で国庫負担が残りの約2割となっておりますので、積立金は補助的な役割となっております。
 3ページは経済要素がどのようなメカニズムで年金財政に影響を与えるかというものを整理したものです。賦課方式を基本とした公的年金ですので、当然人口構成の変化による影響を受けますが、ここでは人口要素を除いて考えております。人口要素を除いて考えると、右側の支出と左側の収入ともに基本的に賃金水準の変化に応じて、収入、支出が変化していくという仕組みになっています。
 収支の各要素について見ていきますと、右側の支出の年金給付につきましては、新規裁定時は賃金、裁定後は物価スライドによって変動していくという仕組みになっています。この仕組みの下では、長期的にはおおむね賃金上昇に応じて年金給付が増加していくということになります。
 一方、左側の収入の大半を占める保険料を見てみますと、賃金の一定割合で保険料が賦課されますので、賃金に保険料収入も連動するということになります。また、収入のうち国庫負担については、給付の一定割合として定まっておりますので、給付のほうが賃金に連動しますと、同様に国庫負担も賃金に連動するようになっております。
 このように、収支ともに賃金に連動するという性質により、公的年金においては、急激なインフレとか、激しい経済変動があったときも、現役の賃金水準に応じた財源を確保するということが可能となっておりますので、その結果として、賃金水準として一定の価値のある年金水準を確保することができるという仕組みになっています。
したがいまして、逆に考えますと、収入支出の中で賃金に連動しない部分が、年金財政にとって大きな影響を与えるということになります。これは具体的に記しているのが上の四角囲いの下の部分に書いてありますが、2つほど要素があります。1つは、運用収入は必ずしも賃金に連動するものではありませんので、運用収入のうち賃金上昇との差に当たる部分、つまりスプレッドと言われる実質的な運用利回りが年金財政に影響を与える、重要な要素となるということです。
 もう1つ重要な要素となるのが、支出の年金給付についてですが、裁定後は物価スライドということになりますので、この部分が賃金と連動していない部分となります。すなわち、賃金と物価上昇の差に相当する実質賃金上昇率が、もう1つの重要な要素となってきます。
 以上、まとめますと、繰り返しになりますが、経済前提において重要な要素というものは、賃金を上回る実質的な運用利回り、つまりスプレッドと、あと実質賃金上昇率との2つということになります。
4ページは、年金給付が長期的には賃金上昇に応じて増加するということを示す資料を付けておりますが、説明は省略させていただきます。
 続きまして、資料3、2014年財政検証における運用利回りの設定について御説明いたします。この資料につきましては、釈迦に説法になるかもしれませんが、前回の2014年財政検証時の専門委員会におきまして、運用利回りをどのように設定したかを改めて整理したものです。また、先ほどのGPIFの説明とも重なるところがありますが、運用実績が財政検証の前提と比較してどうなっているかということについても整理しております。
 まず、運用利回りの設定ですが、2023年度までの足下の設定と、2024年度以降の長期の設定によって、それぞれの方法が異なっています。1ページは、2023年度まで足下の設定方法についてまとめたものです。足下の設定は、基本的には内閣府が推計している中長期試算に準拠して設定しています。前回の財政検証におきましては、2014年1月に内閣府が出しました中長期試算に準拠しており、それぞれ2つのシナリオがありまして、経済再生ケースと参考ケースと、それぞれに準拠をしているところです。2014年の財政検証におきましては、ケースAからHまでの8ケースの経済前提を設定したわけですが、成長率の高いほうのケースAからEまでの5ケースについては経済再生ケースに準拠しまして、低いほうのFからHの3ケースについては参考ケースに準拠しています。
 具体的な設定方法は、四角囲いの式にあるとおりですが、内閣府試算の名目長期金利に、長期金利の上昇による国内債券価格の影響を折り込みまして、それに内外の株式の分散投資によるリターンの上乗せ効果、分散投資効果と呼んでいますが、これを加えて名目運用利回りをまず設定するということになります。この際の分散投資効果につきましては、全額国内債券並みのリスクを前提に0.4%前後と見込んでこれを加えたところです。
 実質運用利回りにつきましては、上の式にありますが、このように設定した名目運用利回りから、内閣府試算における消費者物価上昇率を控除して設定したところです。
 2ページが2024年度以降の長期の設定について整理したものです。長期の設定に当たりましては、初めに実質長期金利を設定いたしまして、それに分散投資によるリターンの上乗せ効果を加えるということによって実質運用利回りを設定しています。この分散投資効果につきましては、足下の設定と同じように、全額国内債券並みのリスクを前提として、0.4%前後と見込んでいます。
 続きまして、名目運用利回りにつきましては、このようにして設定した実質運用利回りにケースに応じて外生的に設定した消費者物価上昇率、一番高いケースで2.0%、一番低いケースで0.6%ですが、これを加えて名目としているということです。
 次に、実質長期金利の設定が下半分に書いておりますが、これはケースAからFと上から6つのケースと、ケースG、H、下2つのケースで設定方法が異なっています。このように、ケースによって異なる設定方法とした考え方について、8ページに前回の専門委員会の報告書の抜粋を載せていますが、こちらを参照していただければと思います。
 8ページに前回の報告書の抜粋がありますが、ここで書かれていることは、利潤率と実質長期金利については経済学的に関係が深く、実際に過去の相関を見ましても、バブル崩壊前後を含む長期間を取った場合は相関関係が高くなっています。しかし、近年の低成長経済の下では、相関関係が低くなっているということが指摘されています。そこで前回の専門委員会におきましては、TFP上昇率が1より低くなるような低成長ケースに相当するもの、ケースG、Hということになるわけですが、この2つのケースにつきましては、利潤率との相関関係で設定する方法を取らないということになりまして、実際の金融市場における予測、具体的には長期債のイールドカーブによるフォワードレートを用いて設定することとされました。ここで、利潤率と実質長期金利の相関について述べておりますが、これにつきましては、次の資料4において、事務局で再検証しておりますので、後ほどこれは説明したいと思います。
 2ページに戻りまして、ケースAからケースFについて用いている利潤率と関連付けた相関についてです。これはコブ・ダグラス型生産関数を用いまして、将来の利潤率を推計した上で、過去20年から30年間の実質長期金利の平均に、利潤率の過去からの変化率を乗じて、将来の実質金利を設定するという方法を取っているということです。ケースG、Hにつきましては、先ほど説明いたしましたように、長期債のイールドカーブのフォワードレートを用いて設定しています。
 以上が設定方法をまとめたものになりますが、次の3ページから6ページまでは、運用実績を示す資料になります。3ページについては、GPIFが自主運用を開始した平成13年から平成29年、第3四半期までの運用状況を示したものです。収益率は年率3.39%、累積運用収益は69兆円となっているところです。
 次の4ページが、先ほどGPIFからの発表でもありましたが、年金財政上、最も重要となる賃金上昇率を上回る実質的な運用利回り、いわゆるスプレッドの実績と、財政検証の前提を比較したものということになります。青い線が実績ということになりますが、実績のほうは変動が大きく、前提を上回っている年もあれば、下回っている年もあるということですが、自主運用開始の2001年から直近の2016年度までの16年間の平均で見ますと2.8%になりまして、財政検証の足下の前提を上回っているということであります。長期的に見ても財政検証、ケースEだと、将来的には1.7%まで上回っていくということになっていますから、その前提と比較しても上回っているところです。
 5ページは、物価を上回る実質運用利回りで、対物価で見た場合の運用利回りの実績と財政検証の前提の比較ということになります。年金財政上は、先ほどの賃金を上回る実質的な運用利回りが重要な指標ということになるわけですが、専門委員会で用いておりますコブ・ダグラス型の生産関数は、対物価の実質で計算されておりますし、運用利回りの設定においては、対物価の実質運用利回りと利潤率の相関関係を見ておりますので、対物価の実質運用利回りについても、実績との比較を試みたものになります。
 また、近年、賃金上昇率が非常に低い水準にとどまっているということから、対賃金の実質運用利回りの実績が大きくなっているといった指摘もされておりますので、そういった意味もありまして、対物価で見たところでございます。
 これで見ますと、自主運用開始の2001年から直近までの16年間の平均で見ますと、実質運用利回りは平均で2.5%になっているということです。これは経済再生ケースでTFPが1.0まで上がっていくケースEの前提の、長期的な前提の3.0%というのは下回りますが、足下の前提については上回っているところであります。
6ページは、GPIFの発表でもありましたが、国内債券を上回る収益率の実績になります。専門委員会の設定では、内外の株式等による分散投資効果により国内債券を上回る超過収益率を0.4%前後と見込んで設定していたわけですが、実際に実績がどうなっているかというものを見たものとなります。GPIFの市場運用の全体の収益率を青で示しております。変動は激しいのですが、これを16年間の平均で見ますと3.2%となっております。
 一方、国内債券だけに限りますと、緑の点数になりますが、16年間の平均で1.7%になっておりまして、差分、1.5%国内債券を上回っております。
 7ページ以降は、前回検証時の委員会の資料を参考として付けております。説明については割愛させていただきたいと思います。
続きまして、資料4の利潤率と実質長期金利の相関について説明させていただきます。
 この資料につきましては副題にありますように、2014年財政検証時の相関分析につきまして、データの取扱方法などを見直しまして、再度検証したものです。
 1ページを御覧いただきますと、これが長期金利とCPIの推移を示したものです。前回検証時につきましては、2012年度までのデータを用いまして、緑の線に当たる利潤率、これは2005年基準のSNAのものになりますが、この利潤率と、長期金利からその年のCPIを控除して作りました、黒の実線になりますが、実質長期金利を比較しました。相関を調べてみますと、右上の表になりますが、過去30年、25年は一定の相関が見られますが、過去20年とか15年のものを見ますと、相関が低いという結果が出ていました。ここで注目していただきたいのが、○で囲った年度です。黄色の○で囲った年度は消費税を引き上げた年度に当たります。消費税を引き上げた年度というのは、CPIが急激に上昇するということになりまして、そうすると、その年のCPIを控除して作った実質長期金利が影響しまして、その年の実質長期金利が急落するということが見て取れます。青で囲った2008年度と2009年度になりますが、2008年度はエネルギー価格が高騰したためにCPIが急激に上昇いたしまして、その翌年はその反動で大きく下落したという年になるわけでして、そのときもCPIの変動を受けて、実質長期金利が大きく変動しているということです。
 このように、実質長期金利を算出する際に、その年のCPIを控除して算出していくために、CPIの短期的な変動を受けて、実質長期金利が大きく変動しているということが見て取れます。それが相関に影響しているのではないかと考えまして、分析したところです。
2ページを見ていただきますと、5年前の相関分析を散布図で見たところですが、先ほどの○を付けた年度か、やはり相関から外れた位置にあるということが分かります。本来、実質長期金利を算出する際は、名目長期金利から期待インフレ率を控除するべきと思いますが、ただ期待インフレ率は観測が難しいということもありますので、前回検証時はそうしたこともありまして、その年のCPIを控除していたということであると思いますが、ただ、こういった短期的な変動を受けて相関が見られなくなったのではないかと考えています。
 3ページを見ていただきたいのですが、3ページでやったことは、CPIの短期的な変動の影響を控除するという観点から、実質長期金利の算出の際、CPIをその年のものを引くのではなくて、過去5年の移動平均を取りまして、その移動平均を控除して、実質長期金利を作り直し、CPIの短期的な変動の影響を除去したというものです。こうして見ていただきますと、過去15年の青い点と、過去20年は青い点に赤い点を加えたものですが、こういった過去15年、20年で見ても、強い相関を示すという結果が得られたということです。
一方、青い点に当たる、過去15年を見ますと、相関の関係式の傾きが小さくなっているということも確認できたということです。この期間はどういった期間かと言いますと、ゼロ金利政策が初めに導入されたのが1999年の2月ということになりまして、おおむねそれ以降の期間に相当するものとなります。途中、ゼロ金利政策が解除されていた期間もありますが、名目の金利はゼロに近い、特に短期金利はゼロに近い、低い数字に抑えられていたということかと思います。このゼロ金利政策が導入されて以降の期間におおむね相当するところで、利潤率と実質長期金利の弾性力が小さくなっているということが見て取れます。
 次に4ページ、CPIの移動平均を先ほど5年平均を取りましたが、3年から6年までについてそれぞれ相関を取ったものです。過去5年平均を取った場合が一番相関が強くなったという結果が得られております。
 5ページを見ていただきますと、ここまで前回検証時に用いた2005年基準のSNAで計算した2012年度までの実績を用いて検証したということですが、それ以降の新しいデータを付け加えて相関を見たものです。2011年基準のSNAを用いておりまして、2016年度までのデータを見ております。それから、実質長期金利の算出に当たりましては、3ページと同様に過去5年平均を取っております。
2011年基準のSNAは、1994年度より前のデータについて遡及推計がありませんので、それ以降のデータで見おりいます。新しくデータが付け加わった2013年度以降を見ていただきたいのですが、黄色の点になります。これらについては、日銀で黒田総裁が就任いたしまして、異次元と言われる金融緩和が導入された2013年4月となりますので、それ以降の期間ということになります。この期間を見ますと、特に2014年、15年、16年の3か年については、実質長期金利がマイナスということになっておりまして、2012年度までの相関から大きく外れるという結果になっています。先日、吉野先生からも御指摘あったように、異次元金融緩和以降というのは、大きく様相が異なっているのではないかというところです。
 続きまして6、7ページについてですが、現在のGPIFのポートフォリオを見てみますと、株式が約半分ということになっております。そこで株式の収益率の基礎となっている企業の収益率と利潤率の相関を参考として見たものになります。
 6ページが総資産収益率いわゆるROAと利潤率の相関を見たもので、7ページは自己資本収益率ROEと利潤率の相関を見たものです。いずれにいたしましても、ROA、ROEと利潤率の間に一定の相関が確認できたということです。また、1998年から2012年の15年間の青の点の期間については、先ほどの実質長期金利と利潤率の関係で見ますと、弾性力が小さくなっているというところであったわけですが、ROA、ROEと利潤率の相関を見ますと、逆に弾性力が大きくなっているということも確認できるということです。即ち近年の状況は、国全体の利潤率が上昇とか低下した場合、債券利率については、それに対する感度が鈍くなっているというところでありますが、企業の収益率のほうは、感度が高くなっており、結果、株の収益に対する感度も大きくなっているのではないかと想定されるところであります。
 
○武藤数理課長
 それでは続きまして資料5、諸外国の公的年金の財政見通しにおける経済前提についてです。これは、前回の財政検証時の専門委員会でも同様な調査報告があったわけですが、諸外国の財政検証で経済前提をどのような手法で設定しているかを調査して、今後の本専門委員会の議論に資するためのものです。少し資料の分量が多くなっておりますので、以下、かいつまんで御説明を申し上げます。
 まず、1ページですが、本日の報告のポイントをまとめたものです。2つ目の点にありますように、国によって状況が様々に異なっておりますので、その状況に応じた経済前提が設定されております。今回、3か国と欧州委員会の経済前提設定手法を調査しているということですが、概して申し上げますと、3点目に書いてありますが、運用利回り等の経済前提は、基本的には過去の実績の傾向を基に設定されているという認識でございます。そういった点などから、前回の財政検証時の専門委員会の最終報告書においても、日本の財政検証で用いられてきたモデルは、諸外国と比べてもかなり工夫されたものとなっていると評価されていたところです。
 続きまして2ページです。経済前提の各項目を総括した表です。ポイントとしては、2行目に財政見通しの期間がございます。日本は一番右の列にありますけれども、御案内のとおりですが「概ね100年間」と記載されております。見てみますと、75年という国が多くて3か国ございますが、1番短いドイツになりますと15年ということで、かなり幅が広くなっております。また、下から2番目の行に積立水準が記載されております。大別して積立水準が低い国、高い国ございますけれども、真ん中辺りに固まっている国、イギリス、フランス、ドイツが低い国でして、逆に高い国が日本以外では、アメリカ、カナダ、スウェーデンとなっております。運用利回りの前提などを調査するためには一定程度の積立金を保有している国である必要がありますので、以後、今回の各国調査では、この高い3か国の状況を報告させていただきます。
 それではまず、アメリカです。4ページ、年金制度の概要です。真ん中辺りの太枠で囲まれた部分に記載されておりますが、アメリカは社会保険方式によりまして、被用者及び自営業者を対象とした1階建ての所得比例年金となっております。また、ベンドポイント方式による所得再分配効果があるために、上のイメージ図はそのような図になっています。
 続きまして5ページですが、過去5年間の実績の財政状況です。見ていただくポイントとして下から3行目に収支差という欄がありまして、いずれの年もプラスになっておりますので、その結果、1行下に積立金の欄がございますが、増加しているということです。ただ、収支差の3行ほど上に運用収入という欄があります、この運用収入と収支差を比べてみますと運用収入のほうが大きくなっているので、仮に運用収入がなければ収支差マイナス、つまり保険料より年金給付費のほうが上回っているのがアメリカの財政状況です。
 6ページ以降が将来見通しです。まず、将来見通しの特徴ということですけれども、アメリカの将来見通しは、10年間の短期見通しと75年間の長期見通しが作成されております。かつ複数ケース、中位、低コスト、高コストの3つの前提に基づく見通しが作成されています。
 7ページが10年見通し、短いほうの見通しの結果です。ここでは1年間の年間支出に対する積立金の割合である積立比率が、1以上あるかどうかということが確認されておりますが、複数の3ケースのどの前提においても、今後10年間は1以上になることが右のグラフでも分かるように確認されております。
 8ページ以降が、75年間見通しの話です。1つ目の点にありますように、いろんな指標を見ているわけですが、収入率や費用率、また、その他の指標が確認されるということになっております。ここで収入率というのは、運用収入を除く保険料収入等の総所得に対する割合になります。一方、費用率は年金給付費等の費用が総所得に対する割合、つまり賦課保険料率に相当するものということになりますけれども、これらの見通し数値が確認されております。
具体的に9ページが、収入率及び費用率の見通しです。右にグラフがございます。大体13%前後で、横ばいになっている線が1つあるわけですが、色が変わっておりまして、つまり左側が緑色の細い実線でスタートして、右側の赤い太線に接続する線、これが収入率ということになります。一方、左下の赤い太線からスタートして2030年代の半ばまでグーッと上昇していて、その後、右の青い点線に接続している線が費用率です。アメリカは第2次世界大戦後、20年ぐらい出生率が高い時期が続く、いわゆるベビーブーム世代があります。2030年代の半ばまでにその方たちが年金受給者となっていくことになっておりますので、ここで見てのとおり費用率が急増していきます。赤い太線が2030年代半ばでカクンと折れて収入率に接続しているのは、2030年代半ばに積立金がなくなる見通しとなっているためでして、その後、現行保険料率で支払い可能な給付、法定給付に対する水準は、ここでいう右下の箱の中に書かれているとおりで、70%台になるということです。
 次の10ページが、積立比率の75年見通しになります。3つの前提による結果がございますが、低コストのケースでは将来にわたって積立比率1が確保されておりますけれども、中位では先ほど申し上げましたように2030年代半ば、あるいは高コストのケースではそれより早く積立金がなくなる見通しになっております。
 11ページ以降が、財政検証の前提ということになります。11ページが中位の前提、12ページが低コスト、高コストの前提です。11ページの表で見ていきますと、1番上の数字が出生率の前提ですが、アメリカは2.0%と高い水準です。また、直近の経済前提の水準、一番右の欄の下から4番目がCPIになりますけれども、CPI上昇率は2.6%、その下の実質賃金上昇率は1.2%、一番下の実質運用利回りは2.7%になっております。
 13ページが、将来推計人口の概要です。アメリカの人口は今後も増加していく見通しになっているところです。
 14ページが、経済前提のうちの賃金上昇率設定の考え方になります。ここで名目の賃金上昇率が5つの要素に分解されておりまして、それぞれの要素の過去40年程度の実績が確認されて、将来の最終値が設定されています。つまり、上のほうの等式を確認してみますと、名目賃金上昇率の前提を設定するときに、まず、等号の右隣の実質の労働生産性上昇率から出発して、それに加えることの要素が、まず、平均労働時間の上昇率、次に、労働分配される報酬の上昇率、さらに、労働分配された報酬に占める所得の上昇率、最後に、名目化するためにGDPデフレーター上昇率が加えられて、名目賃金上昇率として設定されております。
 下に表がありますけれども、表の下の行が過去41年間の実績で、その数値を確認しつつ、上の行の中位の最終値が設定されている状況です。概して申し上げますと、GDPデフレーターはデフレーターということですが、値が乖離しているわけでして、それ以外は過去の実績と近い値となっていることが確認されます。なお、注2に書いておりますけれども、消費者物価上昇率は2.6%と設定されておりまして、GDPデフレーター上昇率2.2%と比べると高くなっております。これは、日本の過去20年程度の実績平均の分析、第2回の当専門委員会でも行いましたが、それと同じような方向となっているということです。ただ、この点につきましては、後ほど説明するカナダの実績では、これと逆の方向の動きになっておりますので、この辺、国によって状況は様々なのかと認識しているところです。アメリカの最後、15ページの後半に運用利回りの前提を確認しております。下のポツですが、アメリカの積立金は非市場性の国債で運用されておりますので、その前提が実質で2.7%と設定されておりまして、(2)に書いてありますように過去の実績を確認して、(3)にありますような前提が設定されているというところです。以上がアメリカです。
 続きましてカナダに移ります。17ページ上方にカナダの年金制度体系図がございます。2階建ての年金制度となっておりまして、1階は全居住者を対象とした税方式のOAS、2階は社会保険方式により被用者及び自営業者を対象としたCPPカナダペンションプランとなっておりまして、以後はそのCPPの財政検証の経済前提を調査しているということです。
 18ページで過去5年間のCPPの財政状況を確認しております。下から3行目が先ほどアメリカでも確認しました収支差、その3行上に運用収入の欄があります。運用収入より収支差が大きくなっておりますので、仮に運用収入がゼロでも収支差プラス、つまり保険料で年金給付が賄えているという状況です。以後はCPPの長期見通しになりますが、もう時間の関係で21ページまで飛んでいただきまして、21ページは直近の将来見通しの積立比率の推移になります。ざっくり申し上げますと、下のグラフにもありますように、将来の年次によって若干、波打つことはありますけれども、法定の現在の保険料率で足下の積立比率が維持されるというような見通しになっております。
 22ページが財政検証の前提です。左のほうが新しい直近の前提でして、出生率が1.65と日本よりは高いけれどもアメリカよりは低い。物価上昇率は下から5行目で2.0%、その下の実質賃金上昇率が1.1%、その下の実質運用利回りが3.9%となっております。
 24ページが、経済前提のうち実質の賃金上昇率の設定方法を記載しております。アメリカ同様、賃金上昇率を5つの要素に分解して、労働生産性の上昇率等々ということで各要素の過去の実績を確認して、一番右の列にあるように将来の最終的な前提値が設定されています。なお、先ほども少し申し上げましたが、カナダにおいてもGDPデフレーターとCPI上昇率というのは区分されているということですけれども、GDPデフレーターのほうがCPIよりも実績では高くなっておりまして、アメリカとは逆の方向になっているというところです。
 26ページが、運用利回りの前提の設定方法です。カナダはCPPIBにおいて積立金運用が行われておりますので、資産種別別の利回りの前提と構成割合の前提をおいて、結果として右の表のような前提となっております。その資産構成割合の前提が27ページに表が2つございますけれども、上の表です。この表は過去3回の25次から27次まで財政検証の運用利回りの前提を設定するに当たっての、その最終的な資産構成割合の前提値がそれぞれの報告書の下の行、参考値としての実績値が上の行です。ぴったり一致しているというわけではないのですけれども、実績も前提の最終値も徐々に確定債券が減って、株式若しくは実物資産が増えているという共通点があります。これは参照ポートフォリオの見直しなどに伴うものと認識しているところです。
 続きまして、スウェーデンでして、29ページが年金制度の概要です。被用者及び自営業者を対象とする所得比例年金があり、また、居住者を対象とする税財源による保証年金があるという構成です。所得比例年金は、薄い積立方式部分と大宗を占める賦課方式部分とがありますけれども、以後の報告では賦課方式部分を対象とします。
 30ページはスウェーデンのバランス、自動均衡装置について説明したものですけれども、時間の関係で飛ばしまして、32ページが財政検証の前提です。スウェーデンも複数前提で設定されておりまして、基本の前提で見ますと一番右、出生率は1.88%、実質賃金上昇率は1.8%、実質運用利回りは3.25%と設定されております。ちなみにスウェーデンの報告書には、経済前提の設定手法の詳細解説というのはございません。ただ、過去の実績と将来の前提を並べたグラフがあるので、やはり過去の実績を確認して、それを基に前提値を設定しているものと想像しているところです。
 最後、35ページから欧州委員会の推計になります。概念図を見ていただきますと、この推計は3年ごとに行われておりまして、EU加盟国の高齢化により財政への影響が推計されているというところですが、この推計モデルの概念図の中を見てみますと、年金の費用推計以外にも医療介護等の費用推計も行われておりまして、その推計のために必要な共通の経済前提設定が行われているということで、左側にLabour Productivityなどの文字が見当たるというところです。
 37ページ以降が経済前提の設定手法になります。年金の推計の中では賃金上昇が必要になるわけですけれども、平均賃金は労働生産性の上昇率に応じて設定するということになっておりまして、その労働生産性の上昇率を推計するためにコブ・ダグラス型生産関数の枠組が用いられています。
 38ページが推計方法です。全ての国における最終的なTFP上昇率が1.0%に収束するものと考えられております。現実には足下の経済を見てみますと各国ともバラバラ、値はバラバラになっているわけですけれども、推計期間の最後の2070年までに、それが徐々に収束していくものと考えられています。その結果、労働生産性の上昇率も、長期的には全ての国が1.5%に達する仮定となっています。具体的な数値が39ページにあります。左側の年次が足下の年次で、国ごとの状況にいろいろ違いがあるわけですが、右に行くに従って、最終的には全ての国が1.5%に達するという推計結果になっています。それを踏まえて、40ページがGDP成長率の見通しになります。マクロのGDP成長率は、労働生産性上昇率と労働投入量の上昇率を加えたものということになっておりますので、国によって人口の高齢化の状況が異なるため、生産年齢人口の減少が労働投入量の減少を通じて成長率を引き下げる要因になっていることなどが分かります。
 最後、41ページ、長期金利の前提です。これはモデルから推計しているということではなくて、加盟国の過去の実績、下に表がありますが、3%程度となっていることを確認して、全ての国においての実質金利の前提が3%に収束するように設定されているというところです。私からの説明は以上です。
 
○植田委員長
 ありがとうございました。それでは御質問、御意見等どうぞ。
 
○権丈委員
 どうもありがとうございました。資料2についてです。これは私が第2回目にお願いした資料です。年金を論ずるときに数十年先の将来の名目給付額を論じても、それが将来、どの程度の、購買力、生活水準を表すのかよく分からないので、所得代替率で議論することになります。この経済前提を終えた後、私たちは年金の給付水準を表す指標として所得代替率で議論していくわけですけれども、所得代替率に対して、我々が今、この会議で議論しているそれぞれの要因がどのような影響を与えるのかということを、少しまとめてもらえないだろうかとお願いをしておりました。
 今日は、GPIFの方がご報告されたという実にタイミングいいときに資料2を提出していただきました。この資料2、全部で4ページある中で、まず押さえて頂きたいことは、年金の積立金は規模がものすごく大きく、それゆえに、なかなか誤解されるところがあるのですけれども、年金の給付もものすごく大きいので、スライド2のように、向こう約100年を視野に入れたトータルの財源構成を見ていくと、積立金から得られる年金に対する寄与は1割程度でしかないということは、まず押さえていただきたい。加えて、日本の公的年金における結構な規模の積立金は、いわゆる経済変動、人口変動を均す機能を担うバッファーとしての役割が期待されていることも重要かと思います。
 それとともに、資料2のスライド3の中でも括弧の中が大事で、日本の公的年金はバッファーとしての積立金をもっていますが、基本は賦課方式で運用されています。賦課方式で運営されている公的年金というのは、賃金水準が上がると給付水準も連動して上がっていく。そうした中で、どういう指標が公的年金の将来の所得代替率に重要な意味を持ってくるかというと、括弧の中の「したがって、収入、支出の中で賃金上昇に連動しない部分が年金財政に大きな影響を与える」ということになります。これは、公的年金を論じていく上では基本的、かつ極めて重要な要因で、この資料が10年前に作られていたならば、公的年金は余り遠回りしないで議論できたのではないかと思うわけです。この部分の無理解が、どれほど大きな混乱をもたらしてきたかを思い返すと、本当にそう思います。
 賃金上昇に連動しない部分として、運用収入のうち運用利回りと賃金上昇率の差、実質的な運用利回りというものが年金の給付水準に影響を与えていく。これがGPIFによる本日の資料1の中のスライド7「対名目賃金での運用利回り」に対応する話です。だから、日頃、資金運用に携わる人たちには関心もなく作らないかもしれない資料「対名目賃金での運用利回り」を、公的年金の運用に携わっているGPIFでは必要になってくることになります。そして次に、既裁定年金が物価スライドであるために、賃金上昇率と物価上昇率の差である実質賃金上昇率も必要になり、これが、この会議用にGPIFが作られた資料1のスライド8の「対物価での運用利回り」です。
 ですから、GPIFが何のために存在し、何を目標として運用しているかを理解していく上では、資料2スライド3の括弧の中の2つ「実質的な運用利回り(スプレッド)」と「賃金上昇率と物価上昇率の差(実質賃金上昇率)」への理解が極めて重要になるわけです。したがって、資料1スライド16にある厚生労働大臣からGPIFに示された中期目標も「対賃金」で要求が出てくるということは、何回もこれから先みんなで意識していくことが大切になると思っております。
 それと同時に、恐らく運用している立場から見ると、先ほどの話にでましたように、なぜ対賃金のスプレッドようなものが重要になるのだということもあるかもしれませんし、通常の資金運用に馴染んだ方々の頭の切替えは非常に難しいのではないかと思いますので、その切替えに苦労された玉木委員にも、後ほどスプレッド、実質賃金上昇率がどれほど重要であり、民間で資金を運用する際とGPIFで公的年金における積立金を運用する際の間での思考の切替えが重要になってくるというような説明を、後ほどしていただければと思います。この資料2スライド3の括弧の中「収入、支出の中で賃金上昇に連動しない部分が年金財政に大きな影響を与える」ために、スプレッドと実質賃金上昇率の2つが重要になるということは、年金財政における経済前提をしっかりと議論していく上で押さえておいていただくべきことかと思っております。
 
○米澤委員
 今、正に的確に要約していただいたのですけれども、それと絡めて1点だけ事務局にもお願いしたいのです。今日は、実質の運用利回りないしはそのベースになっています実質金利の話は、かなり精緻に分析していただいたし、賃金上昇率の話も出てきたのですけれども、例えば賃金上昇率と実質金利との両者の関係に対して、多分そろそろ政府の数値も出てくるかと思うのですが、そこのところを1回整理しておいていただきたいと思うのです。今までは一番下に賃金上昇率があって、その上に実質金利があって、その上に運用利回りがあったわけです。対実質金利では0.4%、対賃金上昇率では1.7%ということで、この順番にあったわけなのですけれども、言い換えますと実質金利というのは、いつも賃金上昇率よりも上になっているのかどうかということです。この点は確認していただきたいと思うのです。
 もう1つはGPIFのほうのレビューに出てきている金利のところの評価ですけれども、収益率で評価されておりましたよね。収益率でもって0.4%稼げているかどうかという数字が出てきたわけですが、これは何を言いたいかというと、金利全体の低下の局面と、今後一応、想定されています上昇の局面とで、全く金利の水準と収益率が異なってくるわけです。今までは金利自体は、かなり長期で下がってきたので、運用の債券の収益率はかなり高かったわけなので、そのときでもほどほど稼げていたというのは、かなり運用の努力があったかと思いますし、皆様方も株式の収益率と債券の収益率と、こんな差しかないのかなというのは、金利がどんどん低下してきたので、簡単に言うと債券を持っていれば結構有利だったということの証左なのです。
 それが今度は、もう大分前からなのですが、金利が上昇すると言われてきますと、全く局面が変わってきてしまいます。前回のポートフォリオの組成のところも、そういう局面を捉えたので、金利は上昇してきます、そうしますと債券の収益率で見ると全然稼げないのです。何しろマイナスになるだけです。ですからそこに少し乗せたぐらいだと、賃金上昇率の例えば1.7%などというのは、すごく難しいわけです。ですので結局、債券が金利の上昇だと使えない、ポートフォリオとして使えないということで、結果として株式のウエイトが高くなってきたということなのです。ですので、いわゆる金利の下降局面、上昇局面と、それから賃金上昇率との関係を少し整理していただいて、今後また、多分、最終的に次の委員会やGPIFなどでは、金利の上昇の局面を扱わなくてはいけないので、これまでの何十年間とは全くペースが違ってくるので、そこのところを簡単に整理しておいていただけると嬉しいかなと思っております。
同時に、今の権丈先生のところで、その点もプラス考慮しておかないと、運用のところで結構負担が掛かってくる可能性があるということを指摘したいと思います。
 
○植田委員長
 金利の上昇局面というのは、日本ではほとんどないですよね。大分前に遡らないと。
 
○米澤委員
 いつも来る来ると言うだけでして、いつも下がっているのです。
 
○玉木委員
 今日のお話を伺っておりまして、積立金に関しまして、国民に説明していくことの難しさを改めて感じたところです。例えば、今の米澤先生から御指摘のありましたような、今後、中期的に金利が上がっていくような状況の下では、やはり債券を持っていると、なかなか賃金プラス利子を取りにくいということになりますが、そして株のウエイトを増やしていくと、これは例えば四半期ごとにGPIFがパフォーマンスを公表されますけれども、その場合のボラティリティが上がってしまうわけです。
 したがって株を増やして、その結果として対賃金スプレッドを確保しやすくなった、長期的な効果があったかもしれないけれども、四半期ごとに出てくる新聞記事はびっくりするような内容が増えてくるようになりますので、この点につきましては、GPIF及び厚生労働省あるいは我々で、国民に対して何が大事なのかということを繰り返し御説明申し上げていく必要があるかと思うところです。
 もう1つは、先ほど権丈先生からも御指摘のありました資料2の3ページのところですけれども、これは日本の場合、マクロ経済スライドが柔軟に適応されていけばいくほど、これは名目の運用利回りが余り意味を持たなくなっていって、何が大事かというと対賃金スプレッドとなっていくところだと思いますが、どうしても国民の受け止め方としては、目の前にある名目の市場金利が比較の対象になってしまうというところがあります。
 これは最近の法改正等もあって、マクロ経済スライドの、より柔軟な運用といったことが実現しつつありますので、この点は今後、国民に対して、この委員会での検討の成果をお示ししていくに当たっても、何が大事かというと、これは実質的な利回り、運用スプレッドなのであるということ、その比較の対象はすぐ目の前の証券会社の店頭に行ってもありませんということを、やはりなるべく分かりやすく説明していくといったことが、どうしても必要になります。
 また、それがうまく国民に伝わりませんと、賦課方式ではあるけれども大きな積立金を持っていて、この100年間の給付の9%ですか、無視できないけれども支配的でもないという、非常に微妙なウエイトのコントリビューションなわけです。これをもう少し積立金について過不足なく国民の理解を賜っていく上では、そこがコミュニケーション上の課題ではないかというのが、私の感想です。以上です。
 
○小野委員
 権丈先生、玉木先生の意見に全く賛成ですけれども、それを踏まえた上で、少し申し上げたいことがあります。今日の論点の1つとして、積立金の運用利回りをどのように設定するかということが背景にあるのではないかなと思っております。御指摘のとおり、積立金からの収入は9%ということですが、この中には、多分、取り崩しもありますので、収益ということを考えると、もっと少ないと思います。そんな中でどのように運用利回りを設定していったらいいかということで、今までのような債券プラス0.4%という分散投資効果を設定するのがいいのか、あるいは諸外国で行われているような過去の実績だとか、あるいはポートフォリオごとの期待収益率というものを設定するのがいいのかというところは、非常に悩ましいと思います。
 私も業務の中でやっていた企業年金などでいうと、予定利率を幾らに設定するかというときに、予定利率は積立金のポートフォリオの期待収益率をベースに設定しましょうという話になるわけです。一方で、ポートフォリオというのはどうやって設定するかといったら、予定利率を与件として設定すると。どちらがどちらか分からないような状況になってしまうという面もあります。
 ですから、高めの設定をしていくと、リスクの高い資産への配分比率が高まるということを正当化しやすい傾向があります。モンテカルロ・シュミレーションをやった場合、特に期間を長くすれば長くするほど、下方リスクをどのように取るかということもありますが、そういったものも含めて、リスクを取りやすい傾向が出てきてしまうという面があると思います。そういったものを踏まえながら、いろいろ意見をお持ちの方もいらっしゃると思いますので、慎重に決めていったらいいのではないかと思います。以上です。
 
○小枝委員
 私からは実質長期金利の設定について、コメントを1つできればと思います。今は利潤率と関連させて設定しているということなのですが、事務局の資料4の2ページや3ページの実証分析を見ると、これはサンプル期間とかも違うので一概に結論はできないところもあるのですが、アールスクエアも最近では下がっているし、利潤率で実質長期金利を決めるという枠組みでいいのかなと、ふと疑問に思いました。
 マクロの一般均衡モデルでは、実質長期金利あるいは均衡実質金利というのは、潜在成長率、トレンドグロースに依存して変動すると考えられていると思います。そのように考えると、では潜在成長率というのは利潤率だけではなくて、例えば労働生産性だとか、そういう内訳で決まっていくという、今までとちょっと枠組みが違うことを言ってしまっているのですけれども、均衡実質金利の設定について、もう少し今後、議論もあってもいいのかなと思いました。以上です。
 
○駒村委員
 今の御意見と重なるわけですけれども、1回目か2回目で、これまでの目標金利の設定が、コブ・ダグラス関数を使って利潤率を使って、そこから相関関係があるということで長期金利が出てきているという話だったところを、前回は少しそれが弱いという話を残したまま終わっていますので、今回は前回の検証に加えて、こういう細かい分析も出していただいたので、従来のやり方で本当にこれがいいのかどうかを議論していきたいと思います。
 それから、少しマイナーなコメントになるかもしれませんけれども、資料5のほうで各国財政検証に触れながら経済前提を御紹介いただいて、これはこれで非常に参考になるのですけれど、ちょっと気になったのは、日本の財政検証が人口推計に連動して5年に1度、その目標は代替率のチェックと100年後の積立金1年分を持てるかどうかというのを、その目標にして、足りなければ何かの政策を行うということと、それからポートフォリオの参考になるための目標利回りを設定するということが、この性格なのですけれども、各国、2ページに追加してもらえるかどうかなのですが、読めばはっきり分かる部分もあるのですけれども、ほかの国は何年間隔なのかと、そして何のために検証を行っているのかというのを整理していただくと、より前提の意義が分かってくるのかと思います。一番、性格が近いのはカナダという理解でよろしいですか、日本と一番近い検証の性格を持っているのは。その辺、コメントというか事務局の意見も聞きたいと思います。以上です。
 
○植田委員長
 事務局、何かありますか。
 
○武藤数理課長
 諸外国は財政検証を行うに伴って、大体、数理レポートを出しておりますので、財政検証がどれぐらいの間隔で行われているかというのは事実関係ですので、拾えると思います。どういう目的でやっているかというところまでの情報については、どこまで調べ切れるかというところもありますので、可能な範囲で調べさせていただきたいと思います。
 
○小黒委員
 小野先生の話に少し関係して御質問させていただきたいのですけれども、GPIFの資料の14ページのところに基本ポートフォリオがあります。当然、少し柔軟な形で運用していると思いますが、先ほどの運用利回りのほうの投資分散効果のところの0.4%前後というのがありますので、理論的に横軸にリスクを取って、縦軸に平均の期待収益率を取るとすると、何かポートフォリオが幾つかの点が書けると思います。つまり、有効フロンティアの議論ですが、現状の設定しているところというのは、有効フロンティアの横軸でみて、どの辺のラインぐらいにあると理解すればいいのですか。
 要するに現行の基本ポートフォリオの変更後でいうと、当然、株式とかのポーションを下げていくと、かなり債券に近付くので、フリーリスクレートのほうに近付いていくと思うのですけれども、そちら側のほうなのか、かなり奥に入っているようなエリアのところを取られているのか、イメージだけでも。もし何か資料があれば見せていただくと、具体的なイメージが分かると思うのですが。
 
○植田委員長
 それは横軸のリスクを計算するときに、単純なリスクなのか、賃金上昇率からのスプレッドの部分についてのリスクなのかで全然違うものになりますよね。現在のここでの概念的には賃金上昇率控除後のリターンリスクということで見るのだと思いますが、取りあえず、事務局何かありますか。
 ついでに、先ほどGPIFの資料の最後のほうに出ましたように、全額債券で運用した場合よりもリスクが少ないという結果に一応なっていますので、横軸で債券で取ったときよりも左側のリスクが少ないところで有効フロンティアの点を選んでいるというように解釈するのだと思いますが、違いますか。
 
○米澤委員
 GPIFの18ページのところを見ていただきますと、少しテクニカルな話になるのですが、全額債券の場合と、基本ポートフォリオの場合の条件付平均不足率、右2つを見ますと、これは全額債券よりも圧倒的に今のポートフォリオのほうがリスクが大きいです。では、何か話が違うのではないだろうかと言われるかもしれませんけれども、全額債券のほうでいくと、リスクは少ないのですが、必ず1.7に負けるのです。
 GPIFの今のポートフォリオですと、負けたり勝ったりするわけですけれども、平均すると勝っているということなので、リスクは債券ポートフォリオよりも大きいということで、その数字は正に3倍弱大きくなっています。ですから、全敗していてもいいですと、全部負けてもいいです、目標の利回りが負けてもいいですとなれば、この少ないリスクで行えますけれども、これは何しろ目標のリターンを達成できないわけです。
 
○植田委員長
 それは横軸に賃金上昇率控除後ではなくて、普通の実質利回りのリスクを取った場合ではないですか。
 
○米澤委員
 いや、この条件付平均の確率です。ですから、一番平たく言ってポートフォリオの単なる標準偏差と縦軸リターンで言いますと、最初の質問ですとフロンティアの中で債券だけだというと、フロンティア―の内部点なのです。フロンティア上にないわけです。これまでは、リスクを債券の標準偏差で維持し、縦軸のほうに上がっていって、そのフロンティア―上のポートフォリオが選ばれました。では、今回GPIFが取ったポートフォリオはフロンティア上でもっと右上に行っています。そうしないと、賃金上昇率プラス1.7は平均的にクリアできないということなのです。
 
○小黒委員
 議論を混乱させるつもりはなく、事務局に過重な負担がかからない限りで、後で別に教えていただいても大丈夫ですから。
  
○植田委員長
 ここは確かGPIFに図があったような気がしないでもないので、もしよろしければ次回に簡単な図で説明していただいてもいいように思います。
 
○鎌田企画部長
 運用委員会というところで御検討いただいていまして、細かな資料は公表まで7年という期間が取られておりますので、お示しできるかどうかというのは、少し検討させていただきたいと思っております。そこの議論も議事概要は既に公表しておりますけれども、機微にわたるところは7年後ですので、今から3年後などの公表まではちょっと。出せるところはまた検討しますが、全てさらけ出せと言われると、少し厳しいという点は御了解いただければと、市場に与える影響等、諸々ありますので、勘弁いただきたいところは勘弁願おうかというところです。
 
○森審議役
 1点だけ議論の関係で整理したいと思います。国内債券並みのリスクといった場合には、国内債券並みのリターンのぶれ幅という観点でして、リターンのぶれ幅概念なのですが、私どもは先ほどの図で米澤委員からも御説明いただきましたけれども、下ぶれリスクとか申しましたとき、与えられている一番大事な話は予定された積立金を確実に取れるかという観点で、下ぶれ率なり下方確率なり、若しくはモンテカルロ・シミュレーションなりで、選定していますので、リスク概念で異なるリスクでやっているものを、いわゆるリターンのぶれ幅みたいなところでどのポジションかというのは、少し悩ましいところです。
 
○植田委員長
 ただ普通の図で書くと、米澤委員が先ほどおっしゃったとおりではないですかね。こういうフロンティアは、この債券だけだと、もっといい点があるのですが、そこよりも更にリスクを若干取って、目標利回りのプラス1.7を出そうとしているということですよね。
 
○米澤委員
 債券がそのまま上に行ったところでは1.7を取れないということになりますので、フロンティアのもう少し右上のほうに行ってしまう、ざっくり言うとそんなことになろうかと思います。
 
○鎌田企画部長
 せっかくですので、18ページの表に出ていますけれども、債券だけだと聞きまして、一番左方の実質的なリターンですが、これは経済中位でも市場基準でもマイナスになっています。要するにそれは取れないと、平均的に取れないということなわけです。以上です。
 
○武田委員
 私は実質長期金利について、若干の意見です。利潤率と実質長期金利との関係については、前回も議論になったわけで、潜在成長 率との関係なども1つ参考にすべきかもしれません。
 前回もう1つ議論になりましたのが、市場はどのように先行きの金利を見ているかということも織り込む話になりました。資料3の2ページのケースG、ケースHに載っておりますけれども、市場のイールドカーブを用いて、10年国債のフォワードレートにより設定しました。そうした点も工夫してきたことは、1点付け加えさせていただきます。
 その上で、今回もこうした幾つかの工夫をしていくのか、幅をどのように取るのか、考え方としてどういった考え方を入れていくのか、前回もかなり議論になったわけですけれども、今回も考慮が必要と考えております。この辺り、皆さまと議論させていただければと思います。以上です。
 
 
○吉川委員
 先ほどの小枝先生のコメントと、今の武田さんのお話を伺って、事務局では利潤率ということでやっていますけれども、コブ・ダグラスを使って、成長率もというお話だったと思うのですよね。成長率がいわばオルタナティブとしての成長率というのは、感じで受け取ったのですが、御承知のとおりスタンダードなフレームワークだと、ステディステートだと、結局は成長率と均衡の資本労働比率というのは対応して、そこで生産関数の接線の勾配としての利潤率というものが出てくるわけですから、利潤率と成長率というのは1対1対応をしているわけですよね。
 ですから、ここでの計測がすごくうまくいっているかどうかは別として、考え方としては利潤率でやるのではなくて、成長率というのでは必ずしもなくて、どうせ1対1対応をしているわけですから、こういうことなのではないかと、結局は思います。
 
○植田委員長
 それでは、これからそれぞれのところについては詳しく議論していくわけですが、今日はこれまでぐらいにしたいと思います。ありがとうございました。次回について、事務局より何か御連絡はありますでしょうか。
 
○武藤数理課長
 次回以降の日程につきましては、また改めて御連絡申し上げたいと思います。
 
○植田委員長
 それでは、今日はこれまでにしたいと思います。どうもありがとうございました。

 

 

(了)

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