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2018年1月31日 第1回複数の事業所で雇用される者に対する雇用保険の適用に関する検討会議事録

○日時

平成30年1月31日(水)16:30~17:30


○場所

厚生労働省 省議室(9階)


○議題

雇用保険制度・マルチジョブホルダーについて

○議事

 

○  田中雇用保険課長補佐

 それでは定刻となりましたので、ただいまから第1回複数の事業所で雇用される者に対する雇用保険の適用に関する検討会を開催いたします。皆様お忙しいところご参集いただきまして誠にありがとうございます。

本検討会の進行について座長が選出されるまでの間、事務局にて議事進行を務めさせていただきます。職業安定局雇用保険課課長補佐の田中でございます。宜しくお願いいたします。

まず、検討会の開催にあたり、職業安定局長の小川からご挨拶を申し上げます。

 

○  小川職業安定局長

 複数の事業所で雇用される者に対する雇用保険の適用に関する検討会の開催にあたって一言ご挨拶申し上げます。皆様には本検討会の構成員にご就任いただきましてありがとうございます。また、本日はお忙しい中ご出席いただきまして心から御礼申し上げます。

 複数の事業所で雇用される者に対する雇用保険の適用につきましては、平成28年12月の雇用保険部会報告や昨年度の雇用保険法等の一部を改正する法律の国会審議における附帯決議において、専門家による検討が必要であるとされておりまして、特に最近は、兼業・副業については幅広く認めた方がいいのではないかという議論がございますので、いわゆるマルチジョブホルダー、複数の事業所で雇用されている者に対して雇用保険をどのように適用するかということについて検討する必要性が多く指摘されております。こうした状況を踏まえ、複数の事業所で雇用される者に対する雇用保険の適用の在り方につきまして、特に技術的観点から専門的検討を行うためにこの検討会を開催させていただきました。皆様におかれましては、幅広い観点からお知恵を頂きまして、是非忌憚のないご意見、ご議論を賜りますよう宜しくお願します。また、この検討会が実りあるものとなる事をお願い申し上げましてご挨拶とさせていただきます。本日は宜しくお願いします。

 

○  田中雇用保険課課長補佐

 続きまして、ご出席いただいております構成員の皆様方をご紹介いたします。

 東京大学大学院法学政治学研究科教授、岩村正彦様

 法政大学経済学部教授、酒井正様

 名古屋大学大学院法学研究科教授、中野妙子様

 筑波大学ビジネスサイエンス系准教授、渡邊絹子様

 続きまして、事務局を紹介させていただきます。

 職業安定局長の小川でございます。

 大臣官房審議官職業安定担当の小林でございます。

 総務課長の田中でございます。

 雇用保険課長の松本でございます。

 雇用保険課課長補佐業務担当の村田でございます。

 そして私、雇用保険課課長補佐企画担当の田中でございます。

 次に、お配り致しました資料にございます本検討会の開催要項についてご説明させていただきます。資料1をご覧ください。

 1、開催の趣旨でございます。複数の事業所で雇用される者に対する雇用保険の適用につきましては、先ほど局長の小川から話がありましたとおり、平成28年12月13日の雇用保険部会にて、仮にマルチジョブホルダーについて適用を行う場合には、技術的な論点、雇用保険制度そのものの在り方との関係など専門的に検討する課題があることから専門家による検討会を設置し検討を進めることが必要、とされております。また、平成29年の雇用保険法等の一部を改正する法律の国会審議におきましても、いわゆるマルチジョブホルダーについては雇用保険の適用に向けて、早期に専門家による検討を行い、必要な措置を講ずることとの附帯決議がされているところでございます。このように、昨今、マルチジョブホルダーに対する雇用保険の適用の検討の必要性が多く指摘されているため、マルチジョブホルダーについての雇用保険の適用の在り方について、技術的観点から専門的検討を行うものでございます。

 2、検討事項でございます。1点目、複数の事業所で働く者の実態。労働時間の把握の手法。2点目、失業についての考え方。そういったものを含めまして3点目、考えられる適用の方策や論点、課題の整理等を行うことを予定しているところでございます。

 3、検討会の構成員については、別紙のとおりでございます。検討会の座長につきましては、構成員の互選により選出することとしております。

 4、検討会の庶務でございますけれども、厚生労働省職業安定局長が有識者の参集を求めて開催し、その庶務は雇用保険課にて行わせていただきます。検討会は原則として公開とさせていただきます。ただし、特段の事情がある場合には座長の判断により非公開とすることができるということでございます。以上でございます。

 続きまして、本検討会の座長について、お諮りさせていただきます。ただいまご説明させていただきました開催要項にございますように、検討会の座長は参集者の互選により選出することとしております。これに従い座長の選出を行いたいと考えております。座長の選出につきましては、事前に事務局より各構成員の皆様にご相談をさせていただいたとおり、岩村構成員にお願いしたいと考えておりますが宜しいでしょうか。

 ありがとうございます。それでは、これ以降の進行につきましては岩村座長にお願い致します。カメラ撮りにつきましてはここまでとさせていただきます。

 

○  岩村座長

 ただいま座長を仰せつかりました岩村でございます。皆様のご協力を得ながらこの検討会を運営して参りたいと思いますのでどうぞ宜しくお願い致します。

 それでは、早速議事に入りたいと存じます。お手元の次第にありますとおり、本日の議題は雇用保険制度・マルチジョブホルダーについてということになっております。事務局の方で資料のご用意を頂いておりますので、まずそのご説明を頂きたいと思います。どうぞ宜しくお願いをいたします。

 

○  田中雇用保険課課長補佐

 それでは、お手元の資料2、雇用保険制度・マルチジョブホルダーについてという資料で、簡単に雇用保険制度の概要及びマルチジョブホルダーの現状についてご説明させていただきます。

 まず、2ページ目でございます。先ほど、平成28年12月の部会報告書等についてご報告を申し上げたところでございますが、マルチジョブホルダーにつきましては、過去、雇用保険部会の報告書等々で、その検討について触れられているところでございます。中ほど真ん中の四角、4つ目のところでございますが、先ほど申し上げたとおり、平成28年12月の直近の雇用保険部会の報告書におきまして、専門家による検討会を設置し検討を進めていくとされているところでございます。さらにその下が、先ほどもご説明申し上げた附帯決議でございますけれども、マルチジョブホルダーについて適用に向けて早期に専門家による検討を行い必要な措置を講ずるとされております。さらに、平成29年3月の働き方改革実行計画でございますけれども、副業・兼業の推進の文脈でございますが、一番下に記載しておりますとおり、複数の事業所で働く方等の観点や副業・兼業を普及促進させる観点から、雇用保険及び社会保険の公平な制度の在り方、労働時間管理及び健康管理の在り方、労災保険給付の在り方について検討を進めるとされているところでございます。

 制度概要に移らせていただきます。4ページ目をお開き頂けますでしょうか。雇用保険制度の趣旨について記載させていただいております。資料上マル1マル2と別れておりまして、マル1が失業等給付、本体の趣旨。マル2が二事業について触れられているものでございます。マル1を簡単にご説明させていただきます。労働者が失業して所得の源泉を喪失した場合、労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合、さらに労働者が自ら職業に関する教育訓練を受けた場合。これらの場合に生活及び雇用の安定、就職の促進のために失業等給付を支給するというように法律上規定されているところでございます。

 続きまして5ページ目でございます。労働保険特別会計の仕組みについて記載しております。まず、ご承知のとおり雇用保険の制度につきましては雇用保険二事業、それから失業等給付と大きく二つ勘定が分かれておりまして、右側、失業等給付につきましては、平成28年度では料率8/1000で保険料の徴収をしておりまして、収入で約1.4兆。失業等給付につきましては、総額1.5兆程度の財政規模になっているところでございます。失業等給付、だいたい6000億強が、一般求職者給付で占められているところでございます。

 6ページ目、雇用保険の適用事業それから被保険者についての規定でございます。まず一つ目の○、適用事業の部分でございますが、一部の事業を除き基本的には労働者が雇用される事業を強制適用事業としているところでございます。その強制適用事業に雇用される労働者を雇用保険上、被保険者として扱っておりますが、その下の適用除外のところでございますけれども、1週間の所定労働時間が20時間未満である者、それから同一の事業主に継続して31日以上雇用されることが見込まれない者につきましては適用除外としているところでございます。

 さらに1ページ進んでいただきまして7ページでございますが、被保険者の種類でございます。大きく4つに分かれておりまして、まず、基本的な一般被保険者。それから65歳以上の方である場合には高年齢被保険者。いわゆる季節的雇用される方につきましては短期雇用特例被保険者。日雇いの方々につきましては日雇労働被保険者というかたちで分類をしているところでございます。続きまして8ページ目でございます。ご参考でございますが、短時間労働者への適用範囲の変遷について記載させていただいております。現行の週所定労働時間20時間以上というのは平成6年の頃から既に固まっておりまして、当時は雇用期間の見込みが1年以上でございました。その雇用期間見込みの部分を、平成21年、平成22年と改正をして現在31日以上というところまで適用拡大してきているところでございます。

 続きまして、雇用保険制度の給付の面の説明に入らせていただきたいと思います。9ページ目でございます。まず、失業等給付の部分についてご説明をさせていただきますが、給付体系としては大きく4つの区分に分かれております。ローマ数字1番のところが求職者給付、2番が就職促進給付、3番が教育訓練給付、4番が雇用継続給付というふうになってございます。この求職者給付が雇用保険、失業された方の生活の安定のために、求職活動をされている方に給付を行うという性格のものになっておりまして、こちらが(a)から(d)まで示しておりますとおり、一般求職者給付、高年齢求職者給付、短期雇用特例求職者給付、日雇求職者給付という4つの区分に分かれているところでございます。こちらがそれぞれ先ほど申し上げた被保険者の4つの類型に対応する給付として構成されているところでございます。

 個別の給付について簡単にご説明を申し上げたいと思います。10ページ目、基本手当でございます。まず、受給資格要件でございますけれども、一般の被保険者の方が失業した際に、過去2年間のうち、被保険者期間が12か月以上あるという場合に支給されることになっております。離職理由が倒産、解雇等である場合につきましては、離職日から1年間に被保険者期間が6か月以上あると給付をされることとなっております。具体的な給付の額は11ページ目でございます。まず、基本手当の日額を離職前の賃金の日額に50%~80%の給付率を掛けるかたちで基本手当日額を算出いたします。これを、失業認定を行いまして、それぞれのこの基本手当日額で支給を行うとことになっております。所定給付日数でございますが、12ページに記載しております。(イ)のところに記載されておりますとおり、倒産、解雇等による離職の場合は90日~330日、(ロ)のところに記載しておりますとおり、それ以外の一般の離職者、自己都合での離職者等々につきましては、90日~150日の範囲で所定給付日数を設定しております。続きまして、一般求職者給付の次、高年齢求職者給付でございます。先ほど申し上げた65歳以上の被保険者、高年齢被保険者につきましては、その方が離職された場合には一般求職者給付のように失業認定を行いながら、日で支給するのではなくて、一時金で給付をするということになっております。給付金の概要でございますけれども、離職の日前1年間に被保険者期間が6か月以上ある場合に失業認定を行った上で一時金としての支給を行うということになっておりまして、被保険者だった期間の長さに応じて基本手当日額の30日分~50日分までを支給するというような制度になってございます。

 続きまして、短期特例求職者給付でございます。こちらも高年齢の求職者給付と同じように一時金で支給することとなっております。真ん中の表でございますが、短期雇用特例被保険者につきましては、法律の本則では30日となっておりますが、暫定的に基本手当の40日分ということで給付設計されているところでございます。続きまして15ページ目、日雇労働求職者給付、日雇労働被保険者に対応する給付でございますけれども、こちらはそれぞれ納めていただいた印紙保険料の額に応じて給付金日額第1級から3級まで用意しておりまして、この額での給付を行っているところでございます。以上が、先ほど体系で申し上げましたローマ数字1番の求職者給付に該当する給付でございます。続きましては、就業促進給付の関連でございます。16ページでございます。就業促進給付につきましては、非常に多様な給付が用意されておりますので、代表的なロの再就職手当について申し上げます。こちら基本手当の受給資格者が安定した職業に就いた場合で、基本手当の所定給付日数を3分の1以上残し、早期に再就職されたという場合には、その支給残日数の60%に基本手当日額を乗じた額を一時金として支給させていただくことになっております。さらに早期に就職されて所定給付日数の3分の2以上が残っているという場合につきましては70%の額で支給するというような構成になっているところでございます。続きまして、先ほどの給付体系で言いますとローマ数字の3、教育訓練給付についてでございます。17ページでございます。大きく分けて2つございまして、1つ目が一般教育訓練に係る教育訓練給付、こちらは教育訓練に要した費用の20%相当額を給付するということでございます。2つ目が専門実践教育訓練に係る教育訓練給付ということで、中長期的にキャリア形成に資するような訓練につきましては、専門実践訓練と指定をした上で給付率を訓練に要した費用の50%、さらにそのあと資格取得、就職に結びついた場合には残る20%を追加給付するという内容で、最大70%の給付がされるところでございます。最後に、給付体系で言うところのローマ数字4、雇用継続給付でございます。細かくなりますので、全てはご説明申し上げませんが、大きく高年齢雇用継続給付、育児休業給付、介護休業給付と分かれているところでございます。一つ目の高年齢雇用継続給付につきましては、高年齢の65歳以上の方について支払われる賃金が、原則として60歳時点の賃金額の75%未満となった状態で雇用を継続される場合につきまして、その賃金の低下分の一部につきまして給付を行うというような制度設計になってございます。続きまして、育児休業給付と介護休業給付。19ページ20ページでございますが、これはそれぞれ育児休業法、介護休業法に規定されております育児休業、介護休業を取得された場合につきまして賃金の67%相当額等々を支給するという制度になっているところでございます。以上が雇用保険制度の適用それから給付に関する大まかな体系でございます。

 続きまして21ページ以降のところでございますけれども、本題でございますマルチジョブホルダーについてのご説明でございます。22ページご覧いただけますでしょうか。先ほど申し上げましたとおり、雇用保険の適用事業に雇用される労働者については被保険者として扱っているところでございますが、1週間の所定労働時間が20時間未満それから同一の事業主に継続して31日以上雇用されることが見込まれない方については、被保険者とはならないということになっているところでございます。雇用保険は自らの労働により賃金を得て生計を立てている労働者が失業した場合に生活の安定を図る制度でございますので、その趣旨に鑑みて保護の対象とする労働者を今ほど申し上げたように一定の人に限っているところでございます。23ページご覧いただけますでしょうか。このような前提をおいた上で同時に2以上の雇用関係にある労働者についてですが、現行の制度では、2以上の雇用関係のうちその労働者が生計を維持する必要が主たる賃金を受けている1の雇用関係についてのみ被保険者とするというような設計にしているところでございます。このような制度設計となってございますので、真ん中の四角囲みの部分でございますが、【適用とならない2以上の雇用関係にある労働者の例】事業主2つに雇用されているとしまして、一つが15時間、もう一つが10時間であるようなケース。このようなケースにつきましては、それぞれ個別の事業所ごとに見ますと20時間には届いておりませんので、雇用保険の被保険者とはされないということでございます。こういった複数の事業所に就業しておられる方の実態についての資料が25ページでございます。マルチジョブホルダーの現状ですが、本業、副業も雇用者である労働者の数、これは24年の就業構造基本調査から取っております。1987年以降増えてきておりまして、2007年、2012年で100万人を超えているというような状況になっております。雇用者全体に占める割合は1.8%ということになっております。26ページをご覧ください。全雇用者のうち副業している者の数を本業の所得階層別に見たものでございます。本業の年間所得が299万以下の階層で全体の7割を占めているといういような状況になっております。27ページでございます。本業の所得階層別に見た雇用者の総数に対する副業している者の割合についてでございます。こちら割れておりまして、本業の年間所得が199万以下の階層と1、000万以上の階層で副業している者の割合が比較的高いというような状況になっております。最後、28ページ総数のところでございますけれども、雇用保険が適用されていないマルチジョブホルダーの数についてでございますが、正確な数については把握する統計はございませんが、足元、先ほど申し上げた本業も副業も雇用者である者が概ね100万人超のところでございますけれども、これは本業の収入が100万円以上の方を推計しますと大体76万人、残りの100万円未満の方29万人程度いるというふうに推計されておりまして、こちら足元で本業の方も雇用保険が適用されていないというふうに推計をいたしますと、大体この層がマルチジョブホルダーの数として想定されるのではないかということをお示ししたものでございます。29ページ以降、諸外国との制度比較になってございますのでご参照頂ければと思います。長くなりましたが、雇用保険制度の全体像以上でございます。

 

○  岩村座長

 ありがとうございました。それでは、ただいまご説明を事務局の方から頂いたところでございますけれども、これにつきましてご質問あるいはご意見がありましたらお出し頂ければと思います。では、酒井構成員どうぞ。

 

○  酒井構成員

 マルチジョブホルダーの現状を把握するにあたり、現状がある程度わかりまして非常に有用な資料だったと思います。特にそのマルチジョブホルダーと言われる人たちが、決して同質ではないのではないかということが窺えるかなと思います。その上で私からの意見になりますけれども、本来であれば、マルチジョブホルダーの現状を把握するにあたって、今回、雇用形態別若しくは男女別ということでお示しいただきましたけれども、更にいうと世帯の状況、たとえば、夫がどういうような配偶者がどういうような雇用形態にあるのか、もしくはどういうような所得階層にあるのか。更に言うと、ひとり親家庭なのかといったようなことまで分かると、マルチジョブホルダーのおかれている現状がより深くわかるのではないかなというふうに感じました。ただ、これについては、おそらく統計を再集計するというような作業が必要になってくるかと思いますので必須ではありませんけれども、深く知るにはそういう資料があれば望ましいかというふうには感じました。もう1点は、景気循環について、景気が悪いとこういうようなマルチジョブホルダーが増えるのか若しくは減るのか、変わらないのかといったことについても確認しておくような必要性を感じました。ただ、25ページの資料で示されているように経年的に雇用者に占めるマルチジョブホルダーの割合というのは傾向的に若干程度増加しているようには見えますが、何かはっきりしたような傾向が私は見えないんじゃないかなというふうに感じました。ただ、掘り下げて検討する必要はあるかと思います。もう1点私の方からちょっと申し上げておきたいのは、マルチジョブホルダーを合算集計することは、広い意味での適用拡大だというふうに考えられると思うんですけれども、これは適用拡大全般について言えることだと思うのですが、適用拡大をすることによって給付のパターン自体も変わってくる可能性についても併せて考慮しないといけないのではないか。具体的に言うとマルチジョブホルダーの人たちが、いわゆる今現在被保険者となっているような人たちよりも離職が、要は、給付を必要とするような状況が多いのか、若しくは決して従前の被保険者と全く変わりがないのかというところについてはですね、単純に予測することはやはり難しいのではないかと思いますけれども、やはりそういうことを考慮に入れて給付と一体的に考える必要があるのではないかと感じました。以上です。

 

○  岩村座長

 はい、ありがとうございます。統計のデータのご指摘もあったんですが、その辺のところ、もし今分かる範囲で事務局の方で何かコメントがあればと思いますけれどもいかがでしょうか。就業構造基本調査で酒井構成員が仰ったようなところまでデータを更に取ることが可能なのかどうかですね。とくに29年度のところはこれから出てくると思うので、その時に何か集計するということは可能性があると思いますが。じゃあお願いします。

 

○  田中雇用保険課課長補佐

 お答えいたします。今ほど構成員からご指摘があった、まず世帯の状況のところでございますが、まさに座長もご指摘のとおり就業構造基本調査自体が5年に一度の調査でございます。そのデータはこれから出てくるところではありますが、おそらく中のデータを取ったとしても、その方の世帯の状況までを分析するようなデータまではおそらく紐付いていないのではないかと推察はされますが、そこは統計の中身も詳細に分析をした上で、ご指摘の趣旨は理解しているつもりでございますので、どこまでの分析が可能かというところにつきましては、今後の検討課題というふうにさせていただきたいというふうに考えてございます。もう1点、景気循環の影響というご指摘もございました。これにつきましては、就業構造基本調査で取る限りにおいてはどうしても5年に一度のデータになってございますので、何と申しますか鋭敏に景気に対してどういうふうに連動してやるかというのを取るのは若干難しいのではないかと推察はされます。ただ、ざっくりとしたところで申し上げれば25ページのデータをお示ししているところでございますけれども、たとえば1997年から2002年にはマルチジョブホルダー本業も副業も雇用者である方の数、若干落ちております。この頃かなり平成の10年頃は景気が悪化してですね、全体として失業給付が増えていた時期でもございますので、やはり多少の景気に対する影響はこういった形で見てとることは可能なんですけれども、それがこう全体の一般被保険者との傾向に比べてどうだという詳細な分析をするにはですね、ちょっとデータが粗すぎてなかなか難しいところがあるのではないかと考えますが、その点も含めまして、今後のデータの中でどこまで分析することが可能かご指摘の視点も踏まえて検討していきたいというふうに考えております。

 

○  岩村座長

 酒井委員よろしいでしょうか。

 

○  酒井構成員

 まさに97年頃から2002年頃までは、労働市場の状態としては悪化している状況ですけれども、そこのところで必ずしもマルチジョブホルダーが増えていないというところは一応注目しておく必要があるかなというふうに感じた次第です。

 

○  岩村座長

 ありがとうございました。他にはいかがでしょうか。

 それでは、私から、同じ25ページの資料で、下の表は2012年ということで直近の平成24年の調査の結果ですが、それ以前の上の欄で挙げていただいている年についても、こういう本業の就業上の地位、雇用形態に応じた統計数字というのはあるんでしょうか。各年ごとに同じような形で存在しているんでしょうか。分かる範囲で結構です。

 

○  田中雇用保険課課長補佐

 今ご指摘いただいたようなデータは、現在持ち合わせておりませんが、これはそれぞれの就業構造基本調査の内訳の分析として可能ではないかと推察はいたします。ただ、ちょっとそれぞれデータの取り方が変わっていれば、同じような分析が出来ないということにはなると思いますので、検討させていただきたいというふうに思っています。

 

○  岩村座長

 なぜそれをお尋ねしたかというと、上の表で見ますとやはり女性が非常に急速に伸びているということがあって、おそらくこの間の労働市場の変化というのを考えるとパートの増加というのが大きく影響しているのではないかという仮説はすぐに出てくるので、その点をちょっと確かめられればなと思ったということです。それが、おそらく今後マルチジョブホルダーがどういうような感じで推移するのかということともある程度その予測とも結びつくかもしれないというふうに考えたからであります。ありがとうございます。

 他にはいかがでしょうか。それでは、渡邊構成員。

 

○  渡邊構成員

 データの関係で言いますと年齢が分かればなおよろしいかと思います。どの年齢層にマルチジョブホルダーが多いのか。たとえば、高年齢者の雇用の状況がずいぶん変わってきているかと思いますので、その副業というマルチジョブホルダーの中で高齢者の割合が多くなるとちょっとまた状況が変わってくるのではないのかと思いましてその点、データはお持ちでしょうか。

 

○  岩村座長

 事務局これはいかがでしょうか。分かる範囲で結構ですけれども。

 

○  田中雇用保険課課長補佐

 ご指摘いただいた点、年齢は一定の階層で区分できるのではないかと思います。ただ、個別のデータを、これは総務省の調査になっておりますので拾えるかどうかというところもありますので、どういった形でデータをお示しすることができるかについても、次回の課題とさせていただきたいと思います。

 

○  岩村座長

 宜しくお願いします。他にはいかがでしょうか。

 それでは、私から、マルチジョブホルダーの適用の在り方というのを考える時におそらく確認しておいた方がいいと思うのは、現在の制度の下である労働者が被保険者に該当するかどうか、被保険者に該当するあるいはしないということを雇用保険の側で確認しなければいけないわけですけれども、それをどういうかたちで発見、確認するのか。この被保険者かどうかということの紐付けというのかそれをどういうふうにしてこうやっていくのか。とりわけシステム上どういうふうな仕組みになっているのかというのがもしわかると有難いなというふうに思います。それは、仮にマルチジョブホルダーの人が働いていたとしてもその人が2か所の事業所で働いているということを雇用保険の側でうまく捕まえられなければ、結局制度を導入しても動かないということになってしまうので、そのへんの現行制度で仕組みの下でどういうふうに今なっているのかということを簡単にご説明いただけると有難いと思います。

 

○  村田雇用保険課長補佐(業務担当)

 雇用保険の被保険者であることの確認については、事業所が雇用する労働者について被保険者資格を取得した旨の届出を事業主が提出することとしており、仮にある労働者の方が二つの事業所で働いていてどちらでも適用要件を満たしていたという場合であると、それぞれから被保険者資格を取得した旨の届出が出てくる可能性があるというのが現状の仕組みです。その場合にはハローワークが当該労働者がどちらの事業所で、生計を立てる主たる賃金を得ているのかを確認した上でどちらか一方で適用をさせていただくというシステムになっております。

 

○  岩村座長

 事業所が異なっている、そういうかたちで出てきたというときに、同一企業だったらまだいいですが、企業が異なっている場合の時に同じ人について2カ所から出てきたときに現在のシステムだと職安の方でこれが同一人物だということは把握できるようになっているんですか。

 

○  村田雇用保険課長補佐(業務担当)

 ハローワークでは、被保険者をカナ氏名・生年月日・性別という3情報でシステム上管理しておりまして、同じカナ氏名・生年月日・性別の方がシステム上存在した場合、二重に被保険者資格を取得しているのではないかというエラーメッセージが発せられますので、それを元に確認をする流れとなっております。

 

○  岩村座長

 ありがとうございます。おそらく大丈夫だろうと思いますが、仮にハローワークが、届け出たハローワークが違っていてもそこは2重の届出があるということはチェックできるというかたちになっているのでしょうか。

 

○  村田雇用保険課長補佐(業務担当)

 はい。ハローワークシステムというシステムで全国のハローワークが繋がっておりますので、どのハローワークに届出があっても他の安定所でそれを確認することは可能となっております。

 

○  岩村座長

 ありがとうございました。では、中野構成員どうぞ。

 

○  中野構成員

 今の点に関連して3点伺います。1つは先ほど被保険者の情報が重複しているか確認する際に氏名と生年月日、性別、この3つで確認しているということだったんですけれども、マイナンバーはその際に利用しないのか、また今後利用する方向性はないのかということ。それから2つ目は、事業主から被保険者資格を取得したものについての届出があってハローワークが把握するということは、この雇用保険の適用条件を満たすかどうか、その所定労働時間であるとか雇用の見込みの長さであるといった事を事業主レベルで、各事業主が判断をするということになっているのかということ。それから3点目は週所定労働時間の適用除外なんですけれども、雇用保険法第6条第1号、本日の説明の資料の6ページの中にも書いていただいておりますが、第6条第1号は1週間の所定労働時間が20時間未満であるものという定め方であって、次の2号と比較をすると、そこにはたとえば同一の事業所でとか、同一の事業所での所定労働時間だという書き方にはなっていないということですね。これが確かに逆に言えば週の所定労働時間の合計が20時間という書き方ではないわけではありますが、この条文の書き方から本日の資料の23ページでご説明をいただいたように、1つの事業所での所定労働時間は20時間以上でなくちゃいけないということが一義的な解釈として出てくるのかということをひとつ教えていただければと思います。

 

○  岩村座長

 事務局の方いかがでしょうか。

 

○  村田雇用保険課長補佐(業務担当)

 まず1点目ですけれども、現状、カナ氏名・生年月日・性別という3情報で、同一の者があればエラーメッセージが出て、それを元に同一の人物ではないか確認を行うとご説明を差し上げたところですけれども、併せてマイナンバーも平成28年1月からハローワークで取得を始めておりますので、3情報でエラーメッセージが出たけれどもマイナンバーを見ると一致しないという確認もできるようになっております。2点目ですけれども、雇用見込み等の判断については、雇用保険の被保険者の届出につきましては事業主に届出義務がありますので、雇用見込みも含め適用要件を満たしているかは、まずは、事業主が届け出ていただき、それをもとにハローワークが判断する仕組みになっております。

 

○  田中雇用保険課課長補佐

 3点目。条文上の解釈についてご質問がありましたのでお答えをいたします。雇用保険の制度上、まず適用事業というのが規定された上で、その適用事業に雇用される労働者につきまして被保険者とする、というような構成。つまり、適用される事業を事業所ごとに見るというような構成で、そもそも条文が規定されております。それで、雇用した場合につきましては、保険関係が成立するということで労働保険料徴収法に基づきまして保険料が徴収されるというような構成になっております。なので、事業所ごとに捉えた上で所定労働時間を判断するという解釈、運用がされているところでございます。したがいまして、これを複数の適用される事業の事業所にまたがる形でも保険関係を判断することになれば、合算して20時間を超えるものを被保険者とする旨明示的に規定しないと、マルチジョブホルダーを条文上取り込むのは難しいというふうな解釈になるというふうに考えております。

○  岩村座長

 中野構成員よろしいですか。

 

○  中野構成員

 はい、ありがとうございます。

 

○  岩村座長

 他にはいかがでございましょうか。今の最後の点はこれからこの存在を考えていく上で実務上のことを考えると非常に重要な論点で、結局現在は個々の事業主、今仰っていただいたように事業所ごとに把握しているので事業所で20時間を超えているか超えていないかというところで事業主が判断して資格取得の届出をするということになるんですが、もし事業所をまたいで通算という話になると個々の事業主が判断できないということになってしまいます。要するに当該労働者が被保険者になるかどうかというのは個々の事業主では把握できないということになって、20時間超えている人はいいですが20時間割っている人についてはですね、かなりそこのとこは根本的なところを考えなくてはいけないということになるのかなという気がいたします。

 他にはいかがでしょうか。今日は初回でキックオフということもあり、このマルチジョブホルダーの問題を考えるにあたって必要な雇用保険制度の基本的な内容について構成員の皆様にご理解を頂くということだと思うんですが、よろしいでしょうか。特にないということでしたら、今日のところはここまでということにしたいと思いますけれどもよろしいでしょうか。

 

○  酒井構成員

 もしかしてこの検討会の趣旨から外れてしまうかもしれないですが、今回の検討会でマルチジョブホルダーへの適用ということを検討するということですが、合算して適用されたとしても給付が受けられない、受給資格要件によって給付が受けられないとか、もしくは給付額自体が少ないというようなことが生じてしまうと、合算にはどういう意味があるんだろうということにもなりかねないと感じています。そうすると本来ですと給付をどうするかと給付額をどうするかということも含めて検討する必要がある。とくに給付額というのは、いわゆる基本手当の部分だけではなくて求職者給付以外の教育訓練給付とかそういうものも含めて一体的に検討する必要があるのではないかと感じるところですけれども、この検討会では今後そういうことも含めてなんらかの議論を行っていくということでよろしいでしょうか。

 

○  岩村座長

 では、雇用保険課長お願いします。

 

○  松本雇用保険課長

 ご検討いただく内容としては、適用の部分だけではなくて、まさに酒井構成員がご指摘のとおり、給付も含めてご検討いただきたいと思っております。

 

○  酒井構成員

 わかりました。ありがとうございます。

 

○  岩村座長

 本格的に検討しだすとすると、これは結構難しい問題をいろいろ孕んでまして、マルチジョブホルダーの場合失業ってなんだという、保険事故をどう捉えるかという問題もあり、当然そこに話が及べば給付のところはどうなるんだというその話になりますので、かなり広範な範囲について結構深い検討をしなければいけないだろうと予想しているところであります。ありがとうございます。宜しくお願いしたいと思います。

 それでは、今日はここまでということにさせていただきたいと思います。今日いくつかご質問で宿題も出ましたので、なかなかデータをどこまで取れるかというのは難しい話だというのは直観的には思っていますけれども、ご検討をいただいて次回にもまたご報告いただければというように思います。それでは、事務局の方から連絡事項があればお願いをしたいと思います。

 

○  田中雇用保険課課長補佐

 次回の検討会の日程につきましては、決まり次第ご連絡させていただきますのでどうぞ宜しくお願いいたします。以上でございます。

 

○  岩村座長

 ありがとうございました。それでは、これで第1回の複数の事業所で雇用される者に対する雇用保険の適用に関する検討会を終了したいと思います。本日はお忙しい中ご参集いただきまして誠にありがとうございました。


(了)

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