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2018年11月21日 薬事・食品衛生審議会 再生医療等製品・生物由来技術部会 議事録

○日時

平成30年11月21日(水)17:00~

 

○場所

厚生労働省共用第6会議室(3階)

○出席者

出席委員(11名)五十音順

荒 川 義 弘、◎奥 田 晴 宏、 小野寺 雅 史、○神 田 忠 仁、
佐 藤 陽 治、  中 岡 竜 介、 長 島 公 之、 野 口 貴公美、
森 尾 友 宏、  森 川 裕 子、 横 田 恭 子
(注)◎部会長 ○部会長代理
 

欠席委員(6名)五十音順

大 隅 典 子、  小 倉 弘 明、 楠 岡 英 雄、 斎 藤    泉、
杉 山    肇、  俣 野 哲 朗
 

行政機関出席者

宮 本 真 司(医薬・生活衛生局長)
中 井 清 人(医療機器審査管理課長)
矢 守 隆 夫(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)
森 口    裕(独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)
鈴 木 章 記(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)

○議事

 

○医療機器審査管理課長 ただいまより、薬事・食品衛生審議会再生医療等製品・生物由来技術部会を開催いたします。先生方におかれましては、御多忙中、御出席いただきまして、ありがとうございます。現時点で部会委員17名のうち11名が御出席いただいておりますので、定足数に達していることを御報告申し上げます。
議事に先立ち、事務局より所属委員の薬事分科会規程第11条への適合状況の確認の結果について報告させていただきます。第11条においては、「委員、臨時委員又は専門委員は、在任中、薬事に関する企業の役員、職員又は当概企業から定期的に報酬を得る顧問等に就任した場合には、辞任しなければならない」と規定しております。今回、全ての委員の先生方より、第11条に適合している旨を申告いただいておりますので、報告させていただきます。委員の皆様方には、会議の開催の都度、このように書面の提出を頂いており、御負担をお掛けしておりますが、何とぞよろしくお願いいたします。
○事務局 続いて、本日の議題の公開・非公開の取扱いについて説明します。平成13年1月23日付けの薬事・食品衛生審議会決議に基づき、本日、予定している全ての議題は再生医療等製品の承認審査等に関する議題であり、企業情報に関する内容が含まれるため非公開といたします。それでは、頭撮りはここまでとさせていただきますので、マスコミの皆様は御退室いただきますようお願いいたします。
それでは、以降の進行については、奥田部会長、よろしくお願いいたします。
○奥田部会長 それでは、最初に事務局から、配布資料の確認、審議事項に関与された委員、利益相反に関する申出状況について報告をお願いします。
○事務局 まず、配布資料の確認を行います。お手元の右側に資料を置いております。上から議事次第、座席表、座席表の裏面は委員名簿、その下が配布資料一覧です。その下に分厚い資料があり、資料1、資料2~5、資料5は1枚紙です。一番下に参考資料として、薬事分科会審議参加規程があります。また、お手元の左側に関して、最初に1枚の紙を伏せて置いてあるものは当日配布資料として追加した専門協議委員リストの修正版、また、その後にホチキス留めの資料として当日配布資料があります。資料に不足がありましたら、事務局までお知らせください。
次に、本日の審議事項に関する競合品目・競合企業について、当日配布資料に沿って報告します。当日配布資料の冊子を御用意ください。1ページです。「ジェイス」です。本日、御審議いただくのは効能・効果又は性能として、栄養障害型表皮水疱症及び接合部型表皮水疱症への適応の追加となっております。同様の効能・効果等を有する製品はないことから、競合品目は「該当なし」としております。3ページです。「ステミラック注」です。脊髄損傷に伴う神経症候や機能障害の改善を予定効能・効果又は性能としており、同様の効能・効果等を有する製品として資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
5ページです。「SB-ADSC-01」です。脊髄小脳失調症の臨床症状の進行抑制を予定効能・効果又は性能としており、同様の効能・効果等を有する製品として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
7ページです。「ハートシート」です。NYHA心機能分類がIII又はIV度、安静時における左室駆出率が35%以下という二つの基準を満たす薬物治療や、侵襲的治療を含む標準治療で効果が不十分な虚血性心疾患による重症心不全の治療を効能・効果又は性能としており、同様の効能・効果等を有する製品はないことから競合品目は「該当なし」としております。以上です。
○奥田部会長 ただいまの事務局の説明について、特段の御意見、コメントなどありますか。特にないようでしたら、本部会の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては、委員の皆様の御了承を得たものといたします。それでは、委員からの申出状況について説明をお願いします。
○事務局 各委員からの申出状況については、次のとおりです。委員の皆様から寄付金・契約金等の受取状況を伺ったところ、議題1~4のいずれの議題についても、薬事分科会審議参加規程第12条及び13条の審議不参加の基準に基づく、審議及び議決に参加できない委員はいらっしゃいませんでした。ただし、薬事分科会審議参加規程第6条の「利用資料作成関与者の取扱い」に基づき、荒川委員には議題4に係る審議及び議決の間、別室にて待機していただきたいと思います。以上、報告いたします。
○奥田部会長 ただいまの事務局の説明について、特段の御意見、コメント等はありますか。よろしいでしょうか。それでは、皆様に御確認いただいたものといたします。本日は、議題1~4が審議事項、議題5が報告事項となっております。
それでは、議題1に移ります。まず、議題1、「再生医療等製品「ジェイス」の製造販売承認事項一部変更承認の可否及び再審査期間の指定の要否について」の審議に入ります。機構から説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題1、資料1、「ジェイス」の効能・効果又は性能の追加を目的とした製造販売承認事項一部変更承認の可否等について、医薬品医療機器総合機構より説明いたします。当日配布資料の冊子の11ページです。本品目に関わる専門協議委員リストがあります。こちらに示しているとおり、本品の専門協議には5名の専門委員に御参加いただきました。
資料1です。まず、品目の概要について説明します。資料1の審査報告書のタブの審査報告の5ページの上段の1.1、「申請品目の概要」です。「ジェイス」(以下、本品)は、患者自身の皮膚組織から採取した切手大の皮膚片に由来する表皮細胞をマウス胚由来の3T3-J2細胞をフィーダーとして共培養・増殖させ、シート状に形成したGreen型と呼ばれるヒト(自己)表皮由来細胞シートです。参考までに製品サンプルを回覧いたします。
本品は、平成19年10月に重症熱傷を適応対象として製造販売承認を取得し、平成28年9月に先天性巨大色素性母斑に対する適応が追加され、今般、栄養障害型表皮水疱症及び接合部型表皮水疱症に対する適応追加を目的として承認申請されました。なお、本品は、平成23年3月に、表皮水疱症患者に発生する難治性のびらん・潰瘍を適応対象として、希少疾病用医療機器に指定されております。
中段、1.2の「開発の経緯等」です。表皮水疱症は、表皮基底膜を構成するタンパク質をコードする遺伝子の変異が原因で発生する遺伝性疾患であり、先天的に皮膚が脆弱で生後早期から、全身に僅かな外力で水疱、びらん又は潰瘍を形成する疾患です。原因タンパク質の種類により裂隙の形成部位が異なり、その違いにより単純型、接合部型、栄養障害型の3つの型に大別されます。
表皮水疱症に対する根本的な治療法はなく、水疱では内容液の除去、びらん・潰瘍部への外用薬の適用、創傷被覆材による保護等が実施されておりますが、長期の継続的な治療が避けられず、栄養状態の悪化、疼痛の継続、感染症、指趾の癒着、潰瘍部の有棘細胞癌の併発等が臨床的問題となっております。本品を含むGreen型の自家培養表皮について、現時点で表皮水疱症に対する適応を有する国又は地域はありません。
本申請に関する審査の概要について説明します。審査報告の6ページの下段の7.「臨床試験等の試験成績に関する資料及び機構における審査の概略」です。本品の有効性及び安全性に関する評価資料として、国内第II相試験(以下、J-TEC-EB試験)及び、医師主導国内第III相試験(以下、J-TEC-01-01試験)の2試験の成績が提出されました。また、J-TEC-01-01試験で本品の移植を受けた症例に対する長期フォローアップ臨床研究(以下、臨床研究)の中間成績が参考資料として提出されました。
まず、J-TEC-EB試験の成績について説明します。審査報告の7ページの上段の7.1.1.1項です。J-TEC-EB試験では、10cm2以上の面積で4週間以上持続するおそれのある潰瘍を有する栄養障害型表皮水疱症患者を対象に、本品を移植した際の有効性及び安全性が探索的に検討されました。下から6行目です。主要評価項目は、移植対象とした潰瘍別の最終移植後4週目における表皮形成率とされました。主要評価項目の結果は、審査報告8ページの上段の表2のとおりであり、潰瘍ごとの初回移植後12週目までの表皮形成率の推移は表3のとおりです。なお、いずれの患者にも本品の移植は一度のみ施行され、再移植は実施されておりません。
各被験者における安全性の結果は、8ページの中段から9ページの上段に示しております。治験手技との因果関係が否定されなかった有害事象としては、症例A-1の採皮部に生じた皮膚疼痛及び皮膚潰瘍、並びに、移植後の長期間被覆により生じた細菌感染、及び症例B-1には、皮脂欠乏性湿疹が認められました。その他の有害事象は、移植手技及び本品との因果関係が否定されました。
続いて、J-TEC-01-01試験の成績について説明します。審査報告の9ページの上段の7.1.1.2項です。J-TEC-01-01試験では、重症の劣性栄養障害型又は接合部型表皮水疱症患者を対象に、本品の有効性及び安全性が評価されました。登録された3例の表皮水疱症患者はいずれも栄養障害型であり、接合部型の登録には至りませんでした。
審査報告の10ページの上段です。主要評価項目は、被験者別の最終移植後4週目における表皮形成率とされました。被験者別の結果は、複数の評価対象がある場合は平均値になりますが、症例H-01では57.01%、症例H-02では100.00%、症例H-03では87.70%でした。また、潰瘍ごとの最終移植後4週目における表皮形成率は中段の表5、潰瘍ごとの初回移植後24週目までの表皮形成率の推移は、審査報告の11ページの上段の表6のとおりです。なお、症例H-01に対しては、表6の*で示された時点で再移植が実施されました。
各被験者における安全性の結果は、審査報告の11ページの上段から下段にかけて示しております。治験手技との因果関係が否定されなかった有害事象としては、症例H-02で、観察期に採皮部の創離開が認められました。その他の有害事象は移植手技及び本品との因果関係は否定されました。
続いて、審査報告の11ページの下段の7.2.1の国内臨床研究です。J-TEC-01-01試験で、本品を移植された患者を追跡した移植対象潰瘍ごとの表皮形成率は、審査報告の12ページの上段の表7のとおりです。また、安全性について認められた有害事象はいずれも治験手技及び本品との因果関係は否定されております。
以上を踏まえた総合機構の判断を説明します。審査報告の13ページの上段です。有効性について、J-TEC-EB試験及びJ-TEC-01-01試験において本品が移植された被験者は合計6例のみであり、評価に限界はあるものの、栄養障害型表皮水疱症患者の難治性又は再発性の潰瘍に対して本品を移植することにより一定の表皮形成率が認められていること、表皮形成の維持が確認されたことを踏まえると、栄養障害型表皮水疱症に対する本品の一定の有効性は示されたと判断いたしました。ただし、現時点で得られている本品の有効性に関する情報は極めて限られていることから、製造販売後も本品の有効性について情報を収集する必要があると考えております。
続いて、審査報告の13ページの中段の7.R.2の「安全性について」です。J-TEC-EB試験及びJ-TEC-01-01試験における本品の安全性プロファイルについて、EBと既承認効能との間に大きな差異はなく、表皮水疱症で新たに注意喚起すべき臨床上の問題となる有害事象の発現は認められていないと判断いたしました。ただし、J-TEC-EB試験では1例の採皮部に皮膚潰瘍が認められており、表皮水疱症の病態を踏まえると、既承認効能と比べて採皮部に潰瘍が生じやすく、遷延化する可能性が考えられるため、採皮後の経過に注意する必要があると判断いたしました。
次に、効能・効果又は性能について説明します。審査報告の14ページの上段です。申請時の適応範囲には、接合部型表皮水疱症も含まれておりますが、接合部表皮水疱症患者に対する本品の臨床試験成績は得られておらず、各病型の責任遺伝子の違いが本品の有効性に与える影響は明確ではありません。
しかしながら、本品移植後に栄養障害型表皮水疱症患者で一定の表皮形成が確認されたこと、及び接合部型表皮水疱症患者に本品に類似したGreen型自家培養表皮を移植した結果、上皮化が認められ治癒に至ったとの文献報告があることを踏まえると、正常様皮膚と判断された自己由来の皮膚組織から製造される本品は、接合部型表皮水疱症患者に対しても有効である可能性はあると考えます。接合部型表皮水疱症は、表皮水疱症の中でも極めて希少な疾患であるため、実施可能性の観点から臨床試験の実施が困難であることが理解できることから、製造販売後に接合部型表皮水疱症患者に本品を移植した際の安全及び有効性に関する情報を収集し、確認していくことが必要と判断いたしました。以上より、本品の効能・効果又は性能は、栄養障害型表皮水疱症及び接合部表皮水疱症とすることが適切であると判断いたしました。
最後に、製造販売後の使用成績調査計画について説明します。審査報告の22ページです。表8に、製造販売後の使用成績調査計画の骨子(案)を示しております。治験対象数が極めて限られていることから、製造販売後には再審査期間中の全症例を対象とし、本品の安全性情報等の収集を目的とする使用成績調査を実施することとしております。
審査報告書のタグの最初に戻っていただき、審査報告の1ページです。以上の審査の結果、総合機構は、4ページに示す「承認条件」を付した上で、本品を承認して差し支えないと判断し、本再生医療等製品・生物由来技術部会で御審議いただくことが適切と判断いたしました。また、本申請は希少疾病用再生医療等製品としての申請であることから、本申請に係る効能・効果又は性能についての再審査期間は10年間とすることが適切と判断いたしました。総合機構からの説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○奥田部会長 ありがとうございました。委員の先生方から、御質問、御意見をお願いします。
○小野寺委員 11ページに関してです。H-01の症例だとかなり再移植されていますが、H-03の症例だと比較的皮膚片は維持されています。この場合、4週目で再移植した場合はそれを有効と考えているでしょうか。つまり、生着期間をどの程度だと有効と考えているかをお聞かせください。また、この疾患は遺伝性疾患ですから、基本的に自家移植しても圧力によって剥れてしまうわけで、圧のかかり具合により上皮化しやすい場所としにくい場所があると思います。その辺はどのように考えられているのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 まず、J-TEC-EB試験及びJ-TEC-01-01試験においては、いずれも本品の初回移植後4週目及び8週目において、表皮形成率が50%以下、未満であった場合に再移植の実施を行うというプロトコルになっておりました。*が付いているものは、治験責任医師又は治験分担医師の判定と写真判定による結果が一部乖離している部分があり、写真判定による結果が50%を超えた場合でも移植されたケースがあります。
やはり、小野寺委員がおっしゃられますように、H-01においては潰瘍部位が首辺り、又は左上及び右上の背部で、生活を行う中で外部の刺激を受けやすいことがありますので、申請者に確認したところ、治験実施医療機関の医師の考察としても、そのような部位が本品の有効性に影響した可能性はあるのではないかと説明されています。したがって、本品での治療を行うに当たっては、患者のフォローにおいて、特に外力の物理的刺激を受けやすい所に関しては、できるだけ刺激を避けるような指導を含めて本品の使用を行っていくことが重要であると考えております。
○小野寺委員 と言うことは移植回数の上限は決めていないで宜しいですか。つまり、商品化された際に50%以下であれば何回も移植可能と考えても宜しいですか。
○医薬品医療機器総合機構 明確な移植の回数の制限については設けておりません。一方で、本品の適応となる「びらん・潰瘍」は、難治性又は再発性の潰瘍で、具体的には4週間程度持続している、あるいは、上皮化と再潰瘍化を繰り返す再発性の潰瘍に、まずは適応するということが前提となっております。また、資材における情報提供として、本品の移植後4週間程度において、おおよそ50%を下回る表皮形成率であった場合に再移植を検討するという形で使用される予定です。
本品の適正使用の観点から、実際に移植を行った後に治療反応性を見ながら再移植の実施を慎重に行う必要があると考えており、そのような注意喚起を添付文書の中にも審査において記載することといたしましたので、実際にどの程度使われるのかに関しては、使用成績調査の中でも観察を続けていきたいと考えております。
○奥田部会長 ほかによろしいでしょうか。その件に関連して、私から一つお伺いいたします。報告書の4ページの最後の8ポツに1回当たりの最大移植枚数があり、50枚と決まっています。この申請の前までは、複数回行う場合の合計の移植枚数が200枚で、ある意味で頭が決まっていました。今度のこの効能追加申請では、上限をなくしたわけですが、そこについては、熱傷であっても上限はないのですかという質問です。もう一つは、そのような判断に至った理由を、もう少し説明していただきたいと思います。
○医薬品医療機器総合機構 まず、重症熱傷に対する200枚制限、ほかの既承認の効能に対して200枚を撤廃するのかに関しては、今回の審査の結果、既に承認された効能についても制限なく、これについては削除可能と、機構としては判断いたしました。
200枚を超えることが可能かという総合機構の判断については、審査報告の20ページの下段から21ページにかけて記載しております。表皮水疱症においては、一定の再移植が必要になるということが想定されます。再移植を年余にわたって繰り返した場合には200枚を超える使用が想定されます。
本品の使用経験、既に重症熱傷では再審査が終わっており、数百人に使われているという実績があります。
先天性巨大色素性母斑に対する使用を含めた今日に至るまでの本品の使用経験及び初回承認の際に評価されている製造工程由来不純物の安全性の観点から評価を行ったところ、本品の移植局所及び全身に対する安全性としては、合計枚数が200枚を超えたとしても蓄積性による安全性上の懸念は想定されないという判断を、この審査の中で行いました。今回、表皮水疱症の効能追加に当たり、複数回移植の合計枚数については200枚の上限を削除可能と、機構は判断いたしました。
○奥田部会長 ありがとうございました。安全性上は問題ないという御判断からということです。委員の先生方から、ほかに御質問、御意見はございますか。
○小野寺委員 確かに治療法がない病気なので、是非、このような治療法を開発してほしいのですが、そうなると費用の問題が絡んでくると思います。その辺は機構側はどのように考えているのでしょうか。4週間で剥れるものをまた貼っていくとかなりの高額医療になると思いますが。
○医薬品医療機器総合機構 機構では、安全性の評価をしておりますので、そのことについては余り検討していないという形になります。
○事務局 費用に関しては、今、説明があったとおり、機構ではお答えしづらいかと思いますし、我々も、有効性・安全性の観点から検討していくところが中心になりますので、お答えすることはなかなか難しいところです。
まず、先ほど機構より御説明がありましたとおり、再移植をするとしても非常に安易に行われることなく限定的に行うべきであるということは、この製品の使用の基本的な考え方として持っているところであり、添付文書等にその旨記載し、その周知徹底を図ってまいりたいと考えております。また、資材等も用いながら丁寧に説明していく事項かと思っております。
さらに、理論上は200枚を超えて使用されることも想定されるかと思いますが、こうした注意喚起のもとで適正に使用されることで、実際の使用量は限定されるのではないかと考えているところです。この点については、市販後に全例調査の中で、フォローしながら適切に対応していきたいと考えております。基本的には、使用する患者に対してしっかりと必要最低限の使用を推奨していきたいと考えております。
○奥田部会長 なかなか難しいです。
○神田部会長代理 直接関係あるか分からないのですが、培養皮膚は3T3-J2というマウスの細胞をフィーダーに使いますが、この細胞にはマウスの内在性ウイルスがいます。そして刺激によってはウイルスが出てきます。それで、移植の際にいくつかの条件をつけたのですが、今までの十数年の実績で、3T3由来のマウスのレトロウイルスで何か問題が起きた実例はあるのでしょうか。全くないですか。そういう観点から安全性を評価する努力はされているのでしょうか。
○奥田部会長 今、機構から回答できますか。
○医薬品医療機器総合機構 「ジェイス」に関しては、重症熱傷で再審査の期間が終わり、再審査の審査をしたところです。感染症に関してはそういう観点で情報が出るというよりも、そもそも重症熱傷できちんと覆えなかった人は、感染症により死亡されておりますが、その因果関係としてマウスのフィーダー由来による感染かどうかということは、こちらでは確認できませんでした。しかしながら、感染症の原因に関して、マウスのレトロウイルスに起因するという報告は今のところ上がってきておりません。
○神田部会長代理 実は、30年はとても長いので、実績が積み上がってくれば、もう少し緩められると思いながら作ったルールです。亡くなった方とか、剥げ落ちた移植片にマウスのレトロウイルスがいるかいないかを調べるなどできれば、絶好の検体ではないかと思います。そうした指導をされれば、安全だということが更に確認され今の厳しい保管等の規制を緩める時期がくるのではないかと思うので、考えてみてください。
○奥田部会長 よろしいでしょうか。ありがとうございました。幾つか貴重なコメントを頂いたかと思います。ほかに御意見等はございますか。出尽くしたようであれば、議決を行いたいと思います。再生医療等製品「ジェイス」については、本部会として製造販売承認事項一部変更承認を与えて差し支えないものとし、再審査期間の指定を「要」とすることとしてよろしいでしょうか。また、再審査期間を10年として指定することとしてよろしいでしょうか。
御異論がないようですので、そのように議決します。本件は、分科会にて報告を行うこととなっております。議題1を終了いたします。引き続き、議題2、再生医療等製品「ステミラック注」の製造販売承認の可否、条件及び期限の要否、並びに再審査期間の指定の要否についての審議を開始します。まず、機構より説明をお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 議題2「ステミラック注」の製造販売承認の可否、条件及び期限の要否等について、医薬品医療機器総合機構より説明申し上げます。まず、当日配布資料の冊子の17ページを御覧ください。本品目に関わる専門協議委員リストがあります。本リストに一部誤りがあり、当日の配布資料としてお示ししているとおり、本品の専門協議には6名の専門委員に御参加いただきました。おわびして訂正いたします。
当日配布資料21ページの正誤表にあるとおり、添付文書(案)及び審査報告に一部修正がありましたので、御確認ください。添付文書(案)への修正に関しては、当日配布資料の23ページに当該修正を反映した添付文書(案)があります。以上の修正はありましたが、審査の結論には影響するものではありません。慎んでおわび申し上げます。
本論に移ります。分厚い資料、資料2にお戻りください。まず、品目の概要について説明いたします。審査報告書3ページの1.1の「申請品目の概要」を御覧ください。本品は、主構成体と副構成体から構成されるヒト体性幹細胞加工製品であり、主構成体は患者自身から採取した骨髄液中の間葉系幹細胞(以下、MSC)を体外で培養・増殖させ、保存液に懸濁して凍結保存した細胞です。副構成体は、患者末梢血採取及び製造所への運搬時に用いる採血キット及び骨髄液採取及び製造所への運搬時に用いる骨髄採取キットから構成されます。参考までに、製品サンプルを回覧いたしますので、そちらも御覧ください。
本品は、効能・効果又は性能を「脊髄損傷に伴う神経症候や機能障害」として製造販売承認申請されました。なお、本品は平成28年2月10日に先駆け審査指定制度の対象品目に指定されております。本品の作用機序については、本品の構成細胞が遊走能、神経栄養因子等の分泌能、免疫調節能及び分化能を示すことが確認されており、投与後は損傷部位へ集積し、神経栄養因子等を介した神経保護作用を発揮し、免疫調節、神経系細胞への分化、その他、複数の機序により脊髄損傷に伴う神経症候を改善すると考えられております。本品は、患者自身の血清及び骨髄液を用いて製造され、点滴で静脈内に投与されます。
1.2の「開発の経緯等」の項です。審査報告4ページを御覧ください。本品については、札幌医科大学において脊髄損傷患者を対象とした本品の第II相医師主導治験(以下、STR01-03試験)が実施され、本試験において本品の有効性が示唆され、安全性は忍容可能と考えられたことから、申請者であるニプロ株式会社は、札幌医科大学から本品に関する技術導入を行った上で、STR01-03試験の成績をもって、製造販売承認申請に至りました。
本申請に関する審査の概要について説明いたします。審査報告14ページ下段を御覧ください。本品の有効性及び安全性に関する評価資料として、ASIA機能障害尺度(以下、AIS)がA~Cと診断された頚髄損傷患者を対象とし、本品の有効性及び安全性を検討する目的の非盲検非対照試験、STR01-03試験の1試験の成績が提出されました。
初めに、有効性について説明します。審査報告16ページ上段を御覧ください。有効性の主要評価項目は、脊髄損傷受傷後220(±14)日目における投与日(受傷後40±14日)直前からAISが1段階以上改善した症例の割合とされました。被験者ごとの有効性データは、中段の表14のとおりであり、主要評価項目の結果は審査報告17ページ上段の表15に示しております。脊髄損傷受傷後220日目における投与直前からAISが1段階以上改善した症例の割合は、投与直前のAISがAの症例で5/6例、Bの症例で2/2例、Cの症例で5/5例、合計12/13例でした。
審査報告20ページ下段を御覧ください。STR01-03試験は単施設での探索的な位置付けでの試験として計画され、対照群は設定されておらず対象症例数が少数である等、得られた成績は限定的であると考えますが、本試験においてAISの1段階以上の改善が13例中12例で認められたこと、特に自然経過では改善が期待できないAISのAの被験者において、6例中2例では2段階の改善が認められたことから、本品の有効性を示唆する結果が得られたと考えます。また、多くの症例で日常生活動作の改善を認められたことを踏まえると、本試験の結果から脊髄損傷に伴う神経症候及び機能障害に対する本品の一定の有効性は期待できると判断しました。ただし、現時点で得られた有効性に関する情報は限られていることから、今後も引き続き本品の有効性について評価する必要があると判断しました。
安全性について説明いたします。審査報告22ページ下段を御覧ください。STR01-03試験において、末梢血若しくは骨髄液の採取、又は本品投与との因果関係が認められた有害事象は、末梢血採取に起因する貧血(Grade2:2例2件)及び骨髄液採取に起因する穿刺部位疼痛(Grade1:1例1件)であり、いずれも非重篤であったこと、死亡や重篤な有害事象は認められていないことから、脊髄損傷患者に対する本品の安全性は認容可能と判断いたしました。ただし、現時点までに得られている本品の安全性に関する情報は限られているため、製造販売後に本品の安全性に関する情報を引き続き収集し、得られた情報を適切に医療現場に提供する必要はあると考えます。また、特に本品を静脈内投与する際の肺塞栓、血栓形成等のリスク、末梢血採取に伴う貧血リスクについては、添付文書を用いて注意喚起するとともに、緊急時に十分対応できる施設において、バイタルサインの確認、臨床検査によるモニタリングや管理等が適切になされる体制下で使用される必要があると判断いたしました。加えて、貧血リスクについては、末梢血の総採取量の目安及び標準的な採取スケジュールを添付文書等により医療現場に適切に情報提供し、患者の年齢、体重、全身状態等を考慮した適切な採血計画が立案されることが必要と判断いたしました。
効能・効果又は性能について説明いたします。審査報告25ページ下段から26ページを御覧ください。小児への適用については、STR01-03試験において、小児に対する本品の投与経験はないものの、文献調査において骨髄由来MSCの投与時に小児に特有の懸念すべき事項は認められていないこと等から、小児に対する本品の適用は可能と判断いたしました。ただし、成人に比べて循環血液量が少ない小児においては、末梢血及び骨髄液採取に伴うリスクが高いことから、小児への適用に際しては患者の年齢、体重、全身状態等を考慮した上で慎重に本品の適用の可否を検討する必要があると判断いたしました。また、AIS Dの患者及び非外傷性脊髄損傷患者については、いずれも本品の投与経験はなく、これらの患者に本品を投与した場合の臨床的有用性は不明であることから、効能・効果又は性能には含めないことが妥当と判断いたしました。
一方、頚髄損傷以外の脊髄損傷については、本品で想定されている作用機序は脊髄の損傷部位に依存したものではないこと、頚髄損傷以外の脊髄損傷に対して本品を適用した場合、安全性について追加で特段懸念される事項はないと想定されることから、本品の適用対象を頚髄損傷に限定する必要はないと判断いたしました。
以上より、本品の効能・効果又は性能は、「脊髄損傷に伴う神経症候及び機能障害の改善。ただし、外傷性脊髄損傷でASIA機能障害尺度がA、B又はCの患者に限る。」とすることが適切と判断いたしました。
次に、用法及び用量又は使用方法について説明いたします。審査報告28ページの中段を御覧ください。本品の用法及び用量又は使用方法については、投与速度の目安を規定することのほかは、申請時の設定どおり0.5×10^8~2.0×10^8個/body(最大投与量3.34×10^6個/kg)の単回静脈内投与とすることは可能と判断いたしました。
投与時期については、本品は脊髄損傷受傷後一定期間内に投与される必要があるものの、自己由来の製品であり、製品製造に一定の期間を要することを踏まえ、治験での本品の投与時期及び製造実績を考慮し、投与時期と密接に関係する骨髄液採取時期として受傷後31日以内を目安とし、製造され次第、可能な限り速やかに投与するとの規定は受入れ可能と判断いたしました。
製造販売後の評価計画について説明いたします。審査報告37ページから39ページを御覧ください。表26に本品の製造販売後承認条件評価計画の骨子(案)をお示ししております。本評価においては、本品を使用した群と、本品の適用に該当するが本品を使用しなかった症例について、前向きに情報収集する対照群との比較により、有効性及び安全性の評価を行う予定です。本来であれば、本品使用の有無による無作為化比較による評価を実施することが望ましいのですが、本品が承認を得て医療現場での使用が可能となった後では、その実施が困難であることが想定されます。以上を考慮し、群間の比較可能性を高め、評価及び判定が客観的に行われる評価計画とすることを前提として、申請者の提案する調査計画により、本品の有効性及び安全性を評価することをやむを得ないと判断いたしました。
有効性評価については、脊髄損傷後6週から8週時点のAISがAの患者と、同時点のAISがB又はCの患者の2つのコホートを設定し、評価の客観性を高めるため、ビデオ映像に基づき中央判定委員会がAISの改善を評価する計画とされております。主要評価項目には、AIS Aの患者コホートでは、AISが2段階以上改善した症例の割合、AIS B又はCの患者コホートでは、AISが1段階以上改善した症例の割合を設定し、運動機能の改善を比較評価する計画としています。安全性評価について、本調査に組み入れられた全例に対して情報収集することとされております。
以上の計画に基づき、今後、本品の有効性及び安全性の評価を適切に実施することを前提とするのであれば、現段階での評価結果に基づいて本品を承認することは可能と判断いたしました。
以上の審査の結果、総合機構は改めて本品の有効性及び安全性の評価を適切に行うことを条件に、条件及び期限を付した上で承認して差し支えないと判断し、本再生医療等製品・生物由来技術部会で御審議いただくことが適切と判断いたしました。また、本品は患者自身の骨髄液を原料とする製品であること等から、指定再生医療等製品への指定は不要と判断いたしました。なお、薬事分科会には報告を予定しております。総合機構からの説明は以上です。
○奥田部会長 長島先生、お願いします。
○長島委員 私は整形外科が専門ですので、脊髄損傷の患者も多く診て、このような薬ができるというのは大変喜ばしいことと思っております。経験上から、幾つかお伺いしたいことがありますが、一つずつお伺いします。骨髄液を穿刺するところで、受傷31日を目安にしていますが、本来は恐らく静注するときのものから培養にかかる日数を逆算して、この日にちを出したと思うのですが、実際に使用する、静注する目安としては、何日ぐらいを想定していますか。
○医薬品医療機器総合機構 総合機構からお答えいたします。まず、STR01-03試験、今回実施された治験においては、1次症例登録を14日以内、2次症例登録として本品を投与する時期が54日以内と規定されておりました。したがって、臨床での投与時期としては、治験での実績を考慮し、54日以内に投与することが本来目安とするべき日数だと考えております。
○長島委員 その日数は、ここの用法・用量の所には書かれないですか。といいますのは、例えば培養の技術が発達するなど、そうしたことで培養の期間が短くなれば、もっと遅く骨髄穿刺してもいいということもあり得るのです。あるいは、培養にとても長く時間がかかってしまって望ましい期間に投与できないこともあるので、静注する場合の目安を、ここに含めなくてもよろしいのでしょうか。
○奥田部会長 いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 お答えいたします。まず、用法・用量又は使用方法については、今の御質問の中にも含まれていると理解しておりますが、治験での製造実績として、細胞の培養に要した日数の中央値が〇〇日であったこと、及び製品の品質試験に要する標準的な日数が〇日間であることを考慮すると、有効性が確認された本品の投与実績である54日を投与とすることをできるような見込みとして、受傷後31日以内を目安といたしました。本品の適用決定、標準的には2回の末梢血採取を経て骨髄液の採取を行う必要があり、骨髄液の採取時期を非常に狭い範囲で設定してしまった場合に、患者の状態によっては、多くの症例で本品を投与できないことも可能性としては考えられました。治験での実績を大きく逸脱しない範囲で、亜急性期に投与されることで、まず、本品の用法・用量又は使用方法を規定し、今回は投与時期については含めない形といたしました。もちろん、製造技術の発展に伴い、末梢血採取時期を遅らせることができるようになった場合には、そういった情報の蓄積を考慮して、用法及び用量又は使用方法についても見直しを行う等の検討を行うことはあると考えております。
○長島委員 例えば最適使用推進ガイドライン等で実際に静注する際の目安を入れていただけると、いいかなと思います。次ですが、ここの投与量をどのようにして決定したかという根拠について単純に考えると、集積率がこのぐらいだから、そこで機能するためにはこのぐらいの量が必要。集積率でそれを割ると、このぐらいを静注する必要があると考えたのだと、ごく単純に考えるとそう思うのですが、この投与量だという根拠は何でしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 総合機構よりお答えいたします。まず、本品の投与量の設定根拠については、脊髄損傷のモデル動物を用いた試験、非臨床安全性試験の結果に基づいて、まず投与量の範囲を決定しました。本品は凍結製品ですので、凍結の融解後に一定の生存率が確保されることを加味して、その範囲として0.5×10^8~2.0×10^8個/bodyとして、用法・用量の根拠とされ、その範囲において臨床試験を実施した場合に、用量に依存することなく一定の効果が認められたことから、臨床試験の成績に基づき0.5×10^8~2.0×10^8個/bodyとする形といたしました。実際に本品の作用機序として、脊髄損傷部位に静脈内投与された本品が移植された後に、文献的には5.5%の細胞が損傷部位に集積するという結果は得られておりますが、集積率との厳密な関係で投与量が設定されたわけではないと考えております。
○長島委員 実験あるいは臨床試験等では、これだけの量を投与しておけば十分な効果が出たというのが最終的な根拠ということでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 はい、そのとおりです。
○長島委員 次に、損傷部位が、臨床試験だと頚髄だけだけれども、機序から考えれば当然ほかの部位でもということは分かるのですが、例えば動物実験等では頚髄以外でも同等の効果があるという結果は出ていますか。
○医薬品医療機器総合機構 機構からお答えします。動物モデルを用いた試験は実施されてはいますが、損傷モデルの損傷部位がどこだというところを今すぐお答えできない状態ですので、また御報告させていただければと思います。
○長島委員 そんな決定的なものではなく、機序から考えて問題はないとして、そうしたものがあれば是非教えていただきたいというのと、実際に利用されたそのところ、特に頚髄以外のところの効果がどうかというのは、きちんと後追いをしていただきたいと思います。
根本的な投与方法に関してなのですが、従来ですと、脊髄損傷に対してこのような細胞を使う場合は、損傷部位そのものに、言わば脊髄移植、あるいはシート状にしておくという発想が多かったのですが、これは静脈内投与ということで、その点は非常に素晴らしいとは思いますが、効果の点においては、例えば直接損傷部位に置いた場合と静脈内投与とで、効果を比べたという実験はありますか。
○医薬品医療機器総合機構 総合機構からお答えいたします。その点については、機構から申請者に確認をしており、残念ながら骨髄由来の間葉系幹細胞に関しては、局所への投与と静脈内投与とで直接比較をした実験を行ったことはないという報告を受けております。一方で、間葉系幹細胞ではなく限定的な情報ですが、骨髄由来の単核細胞といったものを使った場合に、局所での投与と静脈内投与を行った場合の再髄鞘化に関しては差がないといった報告はあります。申請者としては、静脈内投与での受傷後の複数時点で本品を投与した場合に、有効性が確認できたという非臨床効力試験の結果をもって、臨床現場での利便性等も考慮して、静脈内投与という投与経路を選択し、今般の臨床試験の実績に基づき、投与経路を最終決定したということと理解しております。
○長島委員 患者の負担というところでは、もちろん静脈内投与の方がはるかに軽いとは思うのですが、例えば15ページの表13の症例を見ると、多くのところは実際に手術をされているのです。後方除圧や後方固定で手術をされているので、損傷部位の、少なくともごく近くまでは手術で開けているということであると、その際に投与できれば大きな負担を追加することにはならないし、もし局所に投与する方に効果が大きく勝るということであれば、その辺をきちんと検討する価値があるのではないかと思ったのですが、いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。もちろん、本品は特に多数の適用にも開発されておりますし、脊髄損傷においても様々な投与経路は今後も検討する可能性は十分にあると思います。
○長島委員 そうですか。
○医薬品医療機器総合機構 本日のコメントについては、申請者に伝達させていただきたいと思います。
○長島委員 選択肢が増えるのは非常に良いし、手術しない場合も沢山あるので、静脈内投与という方法自体は大変素晴らしいと思っております。それから、投与の時期なのですが、やはり理想的には、例えば早ければ早いほど成績が良いなど、そうした結果は出ていますか。
○医薬品医療機器総合機構 総合機構からお答えいたします。治験に限って言えば、症例数が限られていることから投与時期と本品の有効性の関係は明確にはなっておりませんが、非臨床試験の結果では、やはりできるだけ間葉系幹細胞を受傷後は早期に投与した方が、損傷部位に集積する細胞数も増え、脊髄損傷後の運動機能回復の程度も高いということは示されておりますので、本品が二次的損傷に対して効果を発揮するということを念頭に置いて開発されていることを考えると、できるだけ早期に投与した方が有効である可能性は十分にあるとは考えております。
○長島委員 色々質問しましたが、脊髄損傷の患者にとっては大変大きな喜びかと思いますので、大変期待しております。以上です。
○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。
○奥田部会長 荒川先生、お願いします。
○荒川委員 臨床効果が得られたことは、非常に大きな意義だと思います。ただ、申請資料を見ていて非常に疑問に思ったのは、効力を裏付ける非臨床のデータが書き上げてあり、これは本当に、この効能に結び付くものを挙げているのか、例えば、神経栄養因子のことやケモカインのこと、vitroでの発現レベルが上がるなど、そうしたことが本当に、この効果にきちんと結び付いているのかに関しての考察がほとんどなくて、多くのデータを挙げているだけなのです。
ですので、それが本当に意味のある、例えば、ケモカインや神経栄養因子の発現が上がったことやvitroで出たということが、この効能にどのように結び付いているかが全く見えないのです。神経栄養因子に関して言いますと、90年代に臨床試験も含めて沢山やられて、ほとんど失敗している状況です。これは単独の効果ではないかもしれないので、複合効果として出てきた可能性はもちろん否定はしません。
ただ、本当に意味のある上昇なのか、例えば、薬理学的効果を考えれば、いわゆるシグモイドカーブの中に、一番左端、要するに低用量の所で、少しぐらい上がってもほとんど効果には影響しないレベルの上昇なのか、それとも、もともと生体内に多くあり、それを2倍3倍上げたところで、ほとんどそれ自身は、もう既に飽和ぐらいの濃度にあって効かないなど、そういったことも含めて、本当に臨床的に意味のある上昇なのか。
そもそも、沢山の栄養因子やケモカインなどを調べていますが、それが効能・効果に結び付いているのかということをほとんど議論されなくて非常にアバウトな考察になってしまっています。例えば、脊髄損傷の申請の場合に、逆にこういったことをやらなくてはいけないのかという問題にもなってくるので、その辺のデータの扱いが、少し雑かなと思った次第です。
○奥田部会長 いかがでしょうか。その点は私も思うところでもあるし、申請者から出されている添付文書(案)の「原理・メカニズム」という所に記載があります。今の荒川先生の御指摘は重要だと思います。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。間葉系幹細胞の、こういった再生医療のメカニズムというところは議論になり、やはり作用点に関しては、一点ではなく多様なメカニズムで、総じて良い方向に向いているという考察がされているのが現状です。今回、薬理試験に関しては、この開発も長く、随分前の参考文献として提出されたものから、基礎データとして積み上げてきたところがあり、効能に関する評価資料としては参考的な位置付けで評価できる所を評価したという背景です。
興味のあるところとしては、細胞の特性が、何か有効性、若しくは安全性と関与する重要な品質の特性が解明できれば、それが最も品質としての管理上でも適切ですし、薬理の説明としてもかなり力強い説得ができるものと考えております。審査報告書の品質と薬理の部分に関して、今後も情報収集していただき、新しい知見が得られましたら、そういったものを品質管理にも取り込むような形で改良していくといいますか、品質管理でこれがいいのではないかという所に関してはここが終わりではなく、市販後にも情報収集していただきたいということで、機構としては判断しております。そ今後も引き続き議論できるようにはしておきたいと考えております。
○荒川委員 考察として、色々な切り口として議論することは構わないと思うのですが、資料の中に入ってきてしまっているので、そこが気になっていて、それは今後、悪い前例にならないのか、逆に、これに縛られてしまうと、これを全てやらなくてはいけないという話にもなってしまうので、少しそこを気にしています。
○長島委員 16、17ページに、改善しましたとあるのですが、これが1段階、2段階改善すると、実際上、例えば、日常生活動作や介護度にどのぐらい貢献できるのかというデータもきちんと出してあげると、この意義がもう少し分かりやすいかと思います。
それから、この単なる分類だけですと、あまりにも大雑把なので、第4頸髄レベルであれば、この辺りの筋力が落ちる、知覚が落ちるのははっきりしているわけですから、もう少し細かく、それぞれの筋肉の筋力や、それぞれの知覚のエリアで、それが投与前と投与後でどのように改善したのかというのは当然、臨床で必ず調べているはずですので、余り大雑把なものだけでなく、回復の効果がもう少しはっきり分かる細かい所見の比較もきちんと出していただいた方がいいと思います。
もう一つは、客観的な例としては神経学的な電気検査です。大脳誘発電位や神経伝達の速度なり、波形なり、これらは客観的に測れますので、客観的な電気生理学的な検査をしていれば、そうしたものもきちんと出していただいた方がいいと思います。
○奥田部会長 機構から、お答えがありますか。
○医薬品医療機器総合機構 大変貴重な御意見をありがとうございます。運動・知覚に関してはISCSCI-92、例えばASIAのMotor scoreやSensory score、こういった細かい改善の程度、損傷高位の変化も評価していきますし、今いただきました神経の電気生理等の実施の検討に関しても、今後は引き続き、申請者と協議を続けていきたいと考えております。再度の申請までに、できるだけ客観的で感度の高い方法も含めて、データを取得する形で検討を続けたいと思います。ありがとうございます。
○佐藤委員 三つほどあります。一つは非臨床、二つは市販後調査についての質問です。まず一つは、一般毒性試験としてイヌを用いた試験が行われていますが、安全係数が掛けられておらず、なおかつ異種への移植であるのに免疫抑制剤も投与されていません。結論として、「特段の懸念はない」となっています。確かに、試験結果の中に特段の懸念は認められなかったというのは間違いではないのですが、このモデルにどれだけヒトへの外挿性があるのかというのは、かなり疑問に思います。これが前例になってしまい、イヌで必ず一般毒性試験をやらなければいけないというような形になってしまうのは非常に問題がある気がいたします。この実験系の意義というのは、どのようにお考えですか。
○医薬品医療機器総合機構 骨髄由来の間葉系幹細胞に関しては、ヒトへの投与経験もあり、リスク上、細胞製品の中では低いものという認識で、総合機構でもそのような判断をしております。実際は一般毒性試験を異種、ヒトの細胞を動物実験でというところの意義から考えますと、特に骨髄由来の間葉系幹細胞に関しては、実施しなくとも、ほかの増殖特性等で問題がなければ特段の懸念はないという判断もできるのではないかというところも考えているところです。今回はイヌを用いた評価結果が提出されており、そこを審査したところですがそのような背景もあり、非臨床安全性としては、総じて特段の問題はないと判断したという背景です。
○佐藤委員 実施についてはケースバイケースで考えていただくということでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 はい。
○佐藤委員 分かりました。あと二つあります。一つは御説明いただいたように、治験ではコントロールがありませんでしたが、もし本品が承認された場合に、承認後、本品を使ってみようという医療機関、要するに市販後調査に協力しようという医療機関の中で、本品を投与しない患者が出てくる見込みがあるのかということ。見込みがあるのにしても、投与しなかった患者と投与した患者のバックグラウンドがかなり違ってしまうのではないかが懸念されます。もし患者背景に差がでると想定されるのならばどのようなものがあるのか。そういった場合は、どう解析していけばいいのか、申請者は何かお考えになられていますか。
○医薬品医療機器総合機構 対照群データの集積可能性に関して、本品が自己由来の製品であること、また製造所の製造能力の観点から、本品の対象となる患者全てに本品を供給することが困難な場合があると想定されており、対照群を設定してデータを集積することは実施可能だという判断の下、申請者も対照群データ取得のために、今、体制構築を念頭に置いて、計画を立てているところです。
基本的には患者に対して実施する感染症の検査の結果や投与可能時期等も考慮し、本品を投与できる患者であれば本品群に組み入れられるのですが、実際に実施医療機関、若しくは、全国の標準的なリハビリテーションを行っている施設において、本品の適応にはなるが、本品を投与しない患者は一定数生じ、もちろん同意を取った上で調査を行っていくわけですが、恣意的な組み入れにならない形で評価計画を検討しています。
比較可能性については限界があると思いますが、一方で中間解析で、今回の調査においては本品群と対照群の比較可能性の検討を行う計画としております。
具体的には独立データモニタリング委員会において、群間の患者背景等の偏りの有無を評価するとともに、AISの改善に影響し得る因子の有無について評価を行った上で、その交絡因子と考えられる分布が偏っていた場合には、最終解析時に、それらが因子を考慮した解析を行うという検討をすることで、両群の比較可能性を確保する計画としております。
○佐藤委員 ありがとうございます。もう一つは、今の御回答にもあったのですが、市販後調査の中で、解析項目としてリハビリテーションの有無や内容は非常に大事だと思うのですが、37ページにはそういったことが書かれていないのです。実際の調査の中では、そういったものは確認されるのですか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。リハビリテーションは、この製品の標準治療に対する上乗せ効果を見る上では非常に重要な項目になると考えます。申請者にも確認を取ったところ、1日当たり4単位以上のリハビリテーションを依頼し、患者の状態によっては完全に一致することは難しいけれども、リハビリテーションの内容に関しては、製造販売後承認条件評価の中の調査項目として、しっかり記録に残し、その影響についても、有効性に与える影響がないかどうかについては評価を行う形としております。
○佐藤委員 分かりました。ありがとうございます。
○森尾委員 佐藤委員の質問に少し関連したことです。やはり、かなり多い対照群を設定されているように思います。そうした意味で対照群のデータ収集はとても大事だと思いますが、機構から引き継いだ再生医療等製品患者登録システムというのは、日本再生医療学会との連携の中で構築されたデータベースなので、対照群のデータがかなり集めやすいのではないかと思います。
200人ぐらいのレベルで書いていたので、そういう意味で、こちらのシステムを利用するのか、利用しないのかといった議論があったのかどうかも含めて、伺えればと思っております。このシステム自体は、医薬安全対策課長から利用依頼ということで、恐らく去年、発出されているので、これを推進することによって、これから引き続く同じような製品についても御利用いただけるのではないかと思います。
○医薬品医療機器総合機構 コメントをありがとうございます。データベースの利用に関しては、申請時点、これは先駆けの品目ですので申請前から、どういったデータベースを使うのかというところに関して申請者と協議は続けてきたところです。対照群のデータの質を高める方策を色々検討した中で、収集したデータの品質を確保するのも重要ですのでデータベースに何を使うか、どう収集していくかということに関しては議論をしてきました。
現時点では企業が構築したデータベースを使うというお話を伺っておりますが、実際のこちらの判断基準としては、そのデータベースにしっかりとデータが集積でき、管理できているのかという観点で、これから議論をしていく予定ではあります。データベースに関しては継続して検討していただきたいと考えております。
○長島委員 今の点にも関係してくると思うのですが、この製品を投与した場合に、その投与以外の部分で、通常の治療と何か変える所はありますか。
○医薬品医療機器総合機構 基本的にはないと考えます。
○長島委員 基本的には全く、この投与以外は変わらないと思うのです。リハビリ等も全く同じに行うと思います。とすると要するに、それ以外は全部コントロールになり得ると、ほかの治療が全く一緒であればと思います。同じ施設で、例えば時期的な問題で、時期が少し過ぎてしまった方で、ほぼ同じ時期、少しずれた時期であれば全く同じような治療プロトコルをされていると思うので、そういう所は十分コントロールになり得るのではないかと思います。
○医薬品医療機器総合機構 御意見をありがとうございます。
○奥田部会長 ほかにいかがでしょうか。私から一つだけ、今の御説明の中で最初は供給が限られると言われたかと思います。これは、もし承認になった場合の供給体制はどのようになるのですか。やはり1か所に工場があって、全てそこに日本中から細胞が集まって、またそこで培養して臨床現場に戻すということなのか、それとも、新たな工場を作っていくのか、今の段階で、そういったことで何か打ち合わせていることはあるのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 まず、本品の現状の使い方としては、患者から採取した骨髄液や末梢血を札幌にある工場に運んで製品が製造され次第、それを患者に戻すという形で輸送を行います。こちらに関しては、輸送時の安定性に関する評価も続けており、全国で使用できる体制を構築すると、申請者から聞いております。
その一方で、製造所の新設に関して、申請者から聞いている情報としては、札幌以外にも工場を建設するような計画はあると聞いております。やはり全国の患者、そしてキャパシティを上げていくという観点からも、この製品を多くの患者に使っていただけるような体制の構築に関して申請者も計画を持っていると、機構としては聞いております。
○奥田部会長 ありがとうございます。それでは、これで議論が出尽くしているということであれば、議決を行いたいと思います。再生医療等製品「ステミラック注」については、本部会として承認の期限を7年として製造販売承認を与えて差支えないものとして、よろしいでしょうか。
御異議がないようですので、そのように議決します。本件は、分科会にて報告を行うこととなっております。
それでは、議題2の審議は、ここで終了いたします。
○事務局 それでは、議題の途中ですが、最適使用推進ガイドラインについて御紹介いたします。当日配付資料の冊子の27~40ページまでが、現在、作成途中のステミラックの最適使用推進ガイドライン(案)となっております。
最適使用推進ガイドラインは、医薬品で行われております取組にならい、試行的に行うもので、新規作用機序の再生医療等製品について最適化使用を進めていくために、当該再生医療等製品を真に必要とする患者や使用する医師や医療機関の要件等について、お示しするものです。ガイドライン(案)については、現在、日本整形外科学会、日本脳神経外科学会、日本造血細胞移植学会、日本小児血液癌学会、及び日本輸血細胞治療学会の御協力を頂いて検討しているところですが、委員からも御意見、御指摘がありましたら、それも含めて検討を進めさせていただきたく、案をお示しする次第です。
ガイドラインの全体の構成から御説明いたします。29ページに「はじめに」ということで、このガイドラインがどういったものであるのか、どういった内容が含まれているのかを御紹介しております。30ページは、この製品の特徴、作用機序など、基本的な情報となっております。31ページから臨床成績の御紹介をしております。それらの成績等を踏まえ、35ページから最適使用のための施設や医師等の要件等をお示ししております。37ページは、投与対象となる患者として、有効性や安全性の観点から、これまでに得られているエビデンスの下に、どういった患者に投与するのが最適になるのかをお示ししております。最後に39ページは、投与に際して留意すべき事項です。これまでにお示ししているような施設、患者が実際に使う場合に、どういった点に気を付けるべきかを示しております。
35ページにお戻りください。具体的な要件として、まず施設については、本製品の投与に際しては脊髄損傷患者の標準的な治療及びリハビリテーションが行われることを前提としていることから、そうした治療等を行える施設であることに加え、本製品の使用に必要な骨髄液及び末梢血の採取が適切に行えること。本製品の使用により腫瘍を増悪させる可能性が否定できないことから、慎重に本製品の使用の適否を判断できるようにするために悪性腫瘍の検査が適切に行えること、新規作用機序の製品であり、安全性についての対応が重要であることから、安全性情報の管理や副作用の報告等、院内の情報管理が調っていること、副作用発生時に適切な対応が行われる体制が整備されていることが必要であると考えます。また、本品は条件及び期限付承認を予定しており、全例調査を求めていることから、そうした調査が実施可能であることも当初の要件として求めております。
医師の要件としても、脊髄損傷の専門的知識や診療経験を重視し、更に製造販売業者が実施する本品の使用に関する講習を終了することを求めます。また、脊髄損傷の治療を行う主治医が必ずしも骨髄穿刺や大量の血液採取に関する知識や経験を有しているとは限らないことから、そうした専門的知識や経験を有する血液内科医、輸血責任医師との連携を求めています。投与対象の患者については、治験で有効性が推定されたAISがA、B又はCの外傷性脊髄損傷患者としております。
AISがDの患者や外傷性でない患者については、治験では投与されておらず、臨床的医療性が不明であるため投与対象とはしておりません。小児への投与については、小児投与例はなく、また小児にとっては骨髄採取や末梢血採取のリスクが高いことから、慎重な検討を要することを示しております。
禁忌等については記載のとおり、本品の性質等に基づき、お示ししております。投与に際して留意する事項についても、本品の性質や製造の手技等に伴い生じ得る事項について、特に明示すべき内容についてお示ししております。最適使用推進ガイドライン(案)の今後としては、医薬品と同様に、保険適応上の留意事項としての活用を検討していただくこととしております。説明は以上です。
○奥田部会長 ありがとうございました。委員の先生方から、このガイドラインについて御質問、御意見をお願いします。荒川先生、お願いします。
○荒川委員 すみません。先ほどのことと関連していることですが、30ページの「本品の特徴、作用機序」の2段落目の所です。色々な分子に関しての記述で、この機能障害を改善すると考えられているというのは少し言い過ぎで、示唆されているぐらいなら、まだ承服できますが、これらが本当に関与していることを証明したデータはどれもないのです。神経細胞に例え分化したとしても、それが機能しているとは全く何も書いていないですし、そういったことが、先ほども言いましたように、データの扱いが雑だと言っているのは、その問題です。
ですので、ここは「考えられている」という2段目は取ってしまうか、書くにしても「示唆される」ぐらいのレベルで書いておかないと、今後色々なことが出てきた場合に、このようなことはあり得ないと、むしろバカにされてしまうので、そこは機構としても、審査レベルをしっかり上げていただかないといけないと思います。科学的評価をさらにしっかりとするという態度が必要だと思います。
○事務局 御指摘ありがとうございます。修正いたします。
○長島委員 35ページの一番下の所で、血液内科医が必要なのは分かりますが、リハビリテーション病院などには血液内科医の先生がいないことが多いのです。この連携というのは、自施設にいなくてもしっかり連携が取れていればいいということでしょうか。
○事務局 はい、そのとおりです。
○奥田部会長 ほかに何か、この件について追加で御発言ありますか。これは、まだこれで確定ではなく、引き続き、先生方から頂いた意見も含めて、ガイドラインを検討していくと理解してよろしいですね。
○事務局 はい、そのとおりです。
○奥田部会長 それでは、このガイドラインの説明はこれで終わりまして、次の議題に移りたいと思います。議題3の「SB-ADSC-01を希少疾病用再生医療等製品として指定することの可否について」の審議を開始します。まずは事務局から説明をお願いします。
○事務局 議題3の資料番号3のSB-ADSC-01を希少疾病用再生医療等製品として指定することの可否について事務局より御説明します。
資料3の1ページ、諮問書をめくっていただきますと、事前評価報告書のタグがあります。最初のページを御覧ください。希少疾病用再生医療等製品該当性事前評価報告書です。まず、1ページの中段を御覧ください。本品の名称は、SB-ADSC-01です。予定される効能・効果又は性能は、脊髄小脳失調症の臨床症状の進行抑制で、申請者は、株式会社リプロセルとなります。
脊髄小脳失調症は、指定難病である脊髄小脳変性症に含まれる疾患で、脊髄小脳変性症のうち常染色体の優性遺伝性のものが原則的に脊髄小脳失調症と呼ばれています。小脳及び脳幹から脊髄にわたって変性を来すことにより発症する、運動失調又は痙性対麻痺を主症状とする重篤な神経変性疾患の総称です。
本品は、健康成人の脂肪組織から得たヒト(同種)脂肪由来の間葉系幹細胞を培養した再生医療等製品であり、作用機序としては神経細胞やグリア細胞等への分化を介した全身制御、血管新生因子、神経原性因子、神経保護因子、シナプス形成因子及び瘢痕制御因子の放出を介したパラクリン神経支持作用、並びに免疫調節作用により有効性を発揮すると想定されています。
希少疾病用再生医療等製品の指定要件の該当性について、順に説明をいたします。まず、対象者数ですけれども、指定難病の脊髄小脳変性症の受給者証所持者数は、脊髄小脳変性症のうち常染色体優性遺伝性の患者の割合の文献報告から、脊髄小脳失調症の患者数は7,281人以下と推定されていますので、指定基準の5万人以下ということの条件を満たしています。
2ページ、2.「医療上の必要性について」御説明をいたします。現在、「脊髄小脳変性症における運動失調の改善」を効能・効果とする医薬品として、タルチレリン水和物とプロチレリン酒石酸塩水和物が製造販売後承認されていますけれども、効果は限定的です。脊髄小脳失調症における、臨床症状の進行抑制に対する新たな治療の開発が望まれていることから本品に関する医療上の必要性は高いと考えています。
最後に、3.「開発の可能性について」御説明いたします。本品は、海外において、脊髄小脳失調症の3型又は多系統萎縮症の患者を対象に、第I/II相試験が実施されています。本品投与前の小脳性運動の機能改善が6例中1例、そして機能維持が6例中3例と認められています。また、国内で第II相試験の実施が予定されています。以上から、本品の開発の可能性は高いと考えています。したがいまして、希少疾病用再生医療等製品の指定の3要件を満たしていると判断します。
本品の希少疾病用再生医療等製品の指定の可否について、御審議のほどよろしくお願いいたします。
○奥田部会長 ありがとうございます。委員の先生から、御質問、御意見をお願いします。
○小野寺委員 構側として今回の非臨床のデータや台湾での臨床データをどの辺まで把握されているのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 機構からお答えいたします。非臨床試験の成績ですが、モデル動物というところがなかなか難しいところではあります。臨床で、台湾で行われているヒトに投与している経験等々からですが、まだ結果については、色々な解釈があるとは思いますけれども、実際の開発としましては、こういった疾患では有効な治療方法がなかなかないという段階でしたので、こういった試験結果から開発の可能性はあるだろうという判断をさせていただいたところです。
○小野寺委員 例えば、論文番号の20や30でin vivoやin vitro試験を行われているようですが、内容的には社内資料で終わっています。恐らく、特許の問題で出しにくいところがあるのでしょうけれども、ただ、このような状況で判断してもよいのかと思った次第です。
○奥田部会長 制度そのものの問題なのかもしれませんが。
○医療機器審査管理課長 御指摘は、オープン文献でなくては駄目というわけではないと思います。この中身によるものだと理解しています。
○小野寺委員 基本的には、今回、申請された申請書の根拠となる非臨床データを機構側がどこまで理解しているのかという質問です。
○医療機器審査管理課長 いずれにしても、そのデータについて出してもらった上で、今後、それを評価するということになると思います。
○医薬品医療機器総合機構 機構からお答えします。やはり、ヒトで臨床投与経験があるというところが非常に重要だと考えていますので、当然、承認申請でどのようなデータが出てくるかというところを、きちっと確認したいと考えています。
○奥田部会長 今の御発言は最終的に承認申請のプロセスになったところで、もう1回きちんとレビューをしたいということですね。
○医薬品医療機器総合機構 はい。
○奥田部会長 ほかに先生方、よろしいでしょうか。もし特段の御意見がないようでしたら議決を行いたいと思います。
それでは、このSB-ADSC-01について、本部会として希少疾病用再生医療等製品に指定することとしてよろしいでしょうか。御異議がないようですので、そのように決めさせていただきます。この審議結果については、次の薬事分科会において報告することとします。これで議題3を終了します。
○佐藤委員 資料3ページの3.2の所で、台湾にて実施された第I/II相試験の右上の46)という文献が何かありそうなのですけれども、この申請書類には出ていないですよね。
○医薬品医療機器総合機構 機構から回答させていただきます。この希少疾病用薬品の添付資料については、資料の省略化というところもあり、実際の論文として、部会資料中には添付されておりません。
○佐藤委員 ちなみに、46)というのは論文として公表されているものですか。
○医薬品医療機器総合機構 この番号は31)誤植で、社内資料です。
○佐藤委員 分かりました。ありがとうございます。
○事務局 事務局です。一般的には、この希少疾病用医薬品の申請を頂いた際に、ここに記載されている添付資料について、一緒に添付していただいて、我々の方でレビューさせていただくという形を取っています。参考文献を全て付けるとなるとかなり大部になりますので、本日の資料としては省略させていただいているということになります。
○佐藤委員 はい、ありがとうございます。
○小野寺委員 確認ですが、全ての資料は、きちんと機構が確認しているという判断でよろしいですか。それであればそれで結構ですが。
○医薬品医療機器総合機構 そのとおりです。
○奥田部会長 よろしいでしょうか。小野寺先生の御懸念は、恐らく、どこまでこの部会に資料を出すかというところで、全てあればいいけれどそうすると机上に膨大な資料が積み上がってしまうし。その辺は今後、適当な量というのは、またどこかの段階で、委員の先生と機構との間で、何らかの形でコミュニケーションを取り、どこまでが必要なのかについて少し詰めていただければと思います。基本的には今の御回答で一応、全てのものは提示されているという前提ということです。
それでは、次の議題に移りたいと思います。議題4の再生医療等製品「ハートシート」の承認期限延長の可否についての審議を開始します。事務局より説明をお願いします。
                                -荒川委員退室-
○事務局 議題4、再生医療等製品「ハートシート」の承認期限延長の可否について、資料4に基づきまして御説明をさせていただきます。ページをめくっていただきまして、品目概要というタグをめくっていただきますと、御審議いただきたい内容をまとめた紙があります。本品目の一般的名称は、ヒト(自己)骨格筋由来細胞シートです。販売名は、ハートシート、製造販売業者は、テルモ株式会社となります。
品目の概要です。薬物療法などの標準治療で効果不十分な虚血性心疾患による重症心疾患の治療に用いるものです。一番下の「参考」に書いてありますが、条件及び期限付き承認を与えた製品については、特に必要があると認める場合は、薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて、3年を越えない範囲内において期限を延長することができるという法律上規定されています。この規定の適用の可否について、本日、御審議いただきたいというものになります。
「期限の延長の考え方」という所に、本製品の状況を記載しています。本製品については、平成27年9月2日の本部会において審議を頂き、承認期限を5年とするということで、条件及び期限付き承認をされています。この条件及び期限付き承認は、2015年の9月18日となっています。その後、本製品については、投与症例全例を対象とした製造販売後承認条件評価の調査が実施されているところです。しかしながら、本製品について医療機関との契約等に時間を要したということで現時点で十分な症例が集まっていないのが実情です。
本製品の使用成績調査について、簡単に御説明させていただきます。主要評価項目は、生命予後となっています。調査自体は、2年間のフォローアップで評価をしていくこととしています。評価については本製品を用いた例数として〇〇例の評価症例をもって評価をするということになっているところですが、昨日時点で確認したところ、本製品を投与された症例が13例になっているということです。2015年9月に承認をして、5年間の期限となりますと2020年9月となります。2年間のフォローアップを考えますと、2018年9月時点で、評価症例数が十分に確保できていないと5年後の評価の際に十分な評価はできないという形になるのですけれども、先ほど申し上げたとおり、現時点では十分な評価症例数が集まっていないということになっています。このため、本日、期限の延長について御審議をお願いしているところです。
延長する期限については、要望書の5ページに、表があります。簡単に申し上げますと、2020年度の第2Qで、9月になりますけれども、ここまでで57例の集積を見込んでいるという形になります。脱落等を見込んで60例を組入れたいということで計画しているところですが、現在の承認期限の2年後の2022年9月までに60例を評価するということになると、この2020年度の第2Qで60例ないといけないという形になりますけれども、それでも間に合わないという状況になります。、そうしたことを踏まえ現在の設定している期限を3年間延長して、2023年9月までに申請資料を取りそろえて申請するとの説明になっております。なお、もし仮に、症例集積がうまく進み、早く評価できる場合には、この期限の終了を待つことなく速やかに承認申請を行うとの説明を申請者から受けておりますので、念のために申し添えさせていただきます。説明は以上になります。よろしくお願いいたします。
○奥田部会長 ありがとうございます。委員の先生方からの、御質問、御意見をお願いします。
私から、これは3年以内で延長することができると。これは1回だけできるのですか。まだ、万が一ということはありますか。
○事務局 事務局より、お答えさせていただきます。まず、法律の規定上は、1回に限りと書いてはおりません。ただし、再度延長するということを前提にして動くわけにはいかないと思っていますので、我々としては、しっかり申請者と情報共有を密にしながら、集積状況等をフォローして適切に対応していきたいと考えているところです。
○奥田部会長 はい。何とか完遂してほしいと思っています。ありがとうございました。
ほかに、先生から御意見がなければ、議決を行いたいと思いますが、よろしいでしょうか。それでは議決に移ります。再生医療等製品ハートシートについては、本部会として承認期限を3年間延長することとしてよろしいでしょうか。
御異議がないようですので、そのように議決させていただきます。この審議決定については、次の薬事分科会において報告することといたします。これで議題4を終了いたします。
                                -荒川委員入室-
○奥田部会長 それでは、議題5「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律第13条に基づく遺伝子組換え生物等の第二種使用等の拡散防止措置の確認を行った品目について」に入ります。事務局より説明をお願いいたします。
○事務局 議題5、資料番号5について事務局から御報告します。1枚紙になっています。医薬品の遺伝子治療製品を製造するために遺伝子組換え生物等を用いる場合には、カルタヘナ法に基づいて拡散防止措置が適切かどうかを、厚生労働省において確認することとなっています。
裏面を御覧ください。前回の部会での報告以降、平成30年8月から10月に第二種使用等の拡散防止措置の確認を行った品目は、この表に示している4品目となっています。使用区分は、カテゴリー1として1品目、GILSPとして3品目となっています。こちらについて機構での評価は、学識経験者からの御意見を踏まえ、いずれの遺伝子組換え生物等についても、取られる拡散防止措置は適切であると判断したものです。事務局からは以上です。
○奥田部会長 ありがとうございます。委員の先生から、この件についての御質問、御意見をお願いします。よろしいでしょうか。もしなければ、御報告を頂いたということで、議題5を終了します。
本日の議題は以上ですが、事務局から何か連絡事項はありますか。
○医療機器審査管理課長 次回の部会について、御連絡していますとおり、平成31年2月20日水曜日です。また遅くて恐縮ですが、18時から20時ということで開催いたします。場所については、追って御連絡を申し上げたいと思います。連絡事項は以上です。
○奥田部会長 ありがとうございます。それでは、これをもちまして本日の再生医療等製品・生物由来技術部会を閉会します。どうもありがとうございました。
( 了 )
 

備考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

連絡先:医療機器審査管理課 再生医療等製品審査管理室 再生医療等製品審査管理室長 田中(内線4226)

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