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2017年12月18日 第7回「仕事と育児の両立支援に係る総合的研究会」

雇用環境・均等局職業生活両立課

○日時

平成29年12月18日(月)13:00~15:00


○場所

厚生労働省専用第12会議室


○出席者

委員

武石委員、池添委員、駒崎委員、佐藤委員

ヒアリング対象者

A、B、C

厚生労働省

宮川雇用環境・均等局長、成田審議官、源河職業生活両立課長、岡雇用環境・均等局総務課企画官、土岐職業生活両立課課長補佐

○議題

労働者等からのヒアリング

○議事

【Aからのヒアリング内容】
・自身、働きながら育児と介護を行っている。
・出産後、子どもを得ることによって、やりがいのある仕事、高い報酬、同僚からの敬意、出世・昇進・成長、自由に使えるお金と時間を失ったと感じた。
・独身若しくは子どものいない男女は、基本的に時間やお金が自由で、出世・昇格・成長、やりがいのある仕事、高い報酬、同僚からの敬意もあるのが現状。
・働く女性が出産すると、子どもと過ごす時間を得る代わりにそれらをすべて失うが、子どもと過ごす時間やケア労働は、好きな時間やタイミングを自由に選択できるものではない。
・さらに、非正規で独身の女性となると、これらすべてについて、得ることが難しい。経験としてあるものはハラスメント経験だけ、という状況も多い。
・これら働く女性を取り巻く問題を考えると、若者が出産前から両立に不安を感じている現状も理解できる。
・働く女性は周囲からの期待に応えるようにして子どもを持つと、保育園入所の難しさによって「復職の扉」を。マミートラックにはまることによって「キャリアの扉」を。育児による時間制約により生じる昇進の意欲の低下によって「チャレンジの扉」を。と、3段階で未来への扉が閉ざされてしまっている現状。
・さらに、高齢で出産した場合には、育児に加えて介護も担うという「ダブルケア」の問題が生じてくる。
・女性の活躍には、成長機会を与える男性・上司の意識や企業風土、働く女性自身の意欲、制約のある社員を支える制度の3領域が必要である。
・しかし、現実には、働く女性は男性同様に働いていたとしても、出産を機に成長機会が激減し、本人のやる気が下がってマミートラックにはまる。また、法に定める両立支援制度が充実しても、企業において通常時の収入が残業代込みで設計されていれば育児休業を取得することで収入が激減する等の問題がある。制度の中にも抜け道があるように思える。
・大企業では支援制度は整っているが、職場の風土によっては利用ができない場合もある。
・一番重要なのは成長させる機会を提供する上司側・企業側に課題が山積していること。
・働きながら子育てをするためには、制度の充実よりも、制度を利用できるような企業文化に変えていくことが必要である。
・働きながら子育てをする上で苦労している点は、食事作り、家族が病気になったときの対応、見えない家事が挙げられる。
・両立支援制度の情報を得ているツールについては、行政サービスは市報、民間サービスはインターネット、企業内制度は人づてで収集している。
・行政が提供する情報は既に充実しており、民間企業が行政のHPへリンクを貼れば足りるのではないか。情報の中身の刷新よりも情報弱者にリーチするための方法が重要である。
・配偶者の会社における両立支援制度や企業風土も、女性が育児と仕事を両立する上では重要な要素である。
・自身の夫も、職場に育児休業を取る雰囲気がないことや、育児休業取得により出世を諦めたとみなされること、育児休業取得のメリットがないこと等により、育児休業の取得を諦めた。
・制度面においては、時間制約社員のマジョリティ化が必要である。そのためには、正規社員と非正規社員の同一労働同一賃金の実現や、時間外労働の制限のほか、男性の育児休業取得を義務化することが特に有効である。
・男性の育児休業取得の義務化に際しては、女性が育児休業を13か月以上に延長することで昇進等に多大な影響を与え、結果として人的資本量が減るといったデータの周知や、男性の育児休業取得のハードルとなっている、「無意識の壁」、「職場の雰囲気の壁」、「収入の壁」を取り払うことが重要である。また、両親が順番に育児休業を取得する場合に、2人目の取得者に賃金の100%が支給される韓国の仕組みも参考となる。
・意識面では、両立のしやすさの観点から大卒女性の一般職希望が増える等、女性が抱える両立不安が課題となっている。
・これに対しては、就職活動をする大学生期、両立不安から転職を検討する若手期、子どものためにという周囲からのプレッシャーにより、キャリアにブレーキをかけがちな結婚・出産期、子育て負荷が増大する昇進期におけるキャリア教育の実施が有効である。
・機会面では、経営層やマネジメント層等のマジョリティと、マイノリティ側との直接対話により意識を改革していくことや、メディアの活用等による社会全体の意識の醸成が必要である。
・女性の社会進出とともに、男性の家庭内進出を進めることが重要である。


【質疑応答】
・男性の育児休業取得自体が目的なのではなく、夫婦で子育てすることが重要である。男性の育児休業取得を義務化することにより、カップルによる子育てを促進する効果は期待できるか。
→・自身は一人目の子どもを出産した際に、夫に育児休業を取得させなかったことを後悔している。育児休業中は夫婦の片方が家庭、片方が仕事という役割分担になる。男女が交替で育児休業を取得し、男性に「ワンオペ育児」を経験してもらうことは意識改革につながる。
  ・例えば、食事に関して、男性は自分だけなら「コンビニ食」でよいという発想になりがちだが、実際に育児を経験すると、毎日「コンビニ食」でいいのか→自ら食事を作る→家事進出という発想につながる。


・日本で夫婦世帯の約4割を占める専業主婦世帯では、男性が育児休業を取得しても妻が家にいることになるが、それでも男性育児休業取得の義務化には意味があるか。
→企業側に男性社員の育児休業取得を義務づけることは、職場の雰囲気を変える点で意味がある。また、男性が育児休業中にワンオペ育児を体験することで意識が変わる効果がある。加えて専業主婦である妻がパートに出るなど、自由な時間を獲得できる。


・現状、男性の育児休業取得期間は1週間ほどがほとんどだが、長期間の取得が必要か。
→1週間程度ではほとんど意味がなく、少なくとも1か月を想定している。


・上司の意識改革のための「直接対話」については、誰にどのようなアプローチをとることを想定しているのか。
→従来、会社側と仕事だけでなく、家庭内の悩みについて話をするという雰囲気や、会社の上層部が聞こうとする意思が感じられなかった。マイノリティが訴えるだけでは対話は生まれにくいが、上層部に経営課題として仕事と育児の問題を捉えてもらうためには、マジョリティ側とマイノリティ側の双方の意見をぶつけあう場が必要である。


・労働組合組織率が低下しつつある現在、社内で労使交渉がうまく機能していない場合にはどうするか。あくまでも労働条件についての交渉の一つとして取り上げるべきか、子育ての問題単体として取り上げるべきか。
→経営にかかわる問題として取り上げてもらうことが必要である。いかに女性に継続就業してもらうかが経営上、重大な課題となっている。


・単に育児休業の話というよりも、経営戦略的な視点が必要ということか。
→そうだと思う。加えて、女性が働きやすい職場は男性にとっても働きやすい。


・1人目のお子さんのときに、夫に育児休業を取らせなかったことを後悔しているそうだが、なぜ取らせることができなかったのか。
→夫が勤める会社ではそれまで男性で育児休業を取得した例がなかったことが原因。


・ご自身は夫に対して、自身のキャリアの観点から育児休業の取得してほしいという希望を伝えていたのか。
→私自身が専業主婦家庭で育ったこともあり、10年前はそのような空気が無かったため、夫に育児休業を取らせるという発想がなかったというのが事実である。


・女性側にも、夫に育児休業を取得させることができるということを伝えていくことが必要だと感じる。
→女性の間では未だに一般職志向が強い傾向が見られるが、男性を支えたいという気持ちの表れだと感じる。女性自身が自分の人生のハンドルを握っているという価値観を伝える必要がある。


・育児休業を取得しても、早く復帰しようと思わない女性がいることも事実だが、それについてはどう思うか。
→私自身もキャリアのためというよりは、会社でのハラスメントに屈したくないという意識で復帰したようなものである。育児休業取得期間の長さが必ずしも本人のやる気を反映しているわけではない。


【Bからのヒアリング】
・自身、総合職で働く妻と共に、3人の子どものいる家庭を持ち、部下を持って働いている。
・自身は夕方から家事・育児をするためにフレックスタイム制を利用して、周囲より早く出社し、早く退社している。早く退社することに対して、自身の仕事を時間内に全うできるかという不安もさることながら、周囲の視線や上司からの圧力を感じることも少なくない。
・仕事と育児を両立しながら成果を出すための工夫として、各タスクにかける時間の記録や仕事の優先順位づけによる効率化を図ってきた。また、毎朝の朝会で業務予定や退社予定時刻について部署内共有を行い、チームで補い合える体制を作ってきた。
・しかし、職場では残業をしない働き方への上司の無理解が根強かった。
・退社時刻以降にあえて会議をセットされたこともある。上司は、昇進したときのための訓練、「教育的配慮」との思いからセットしたとのことだが、家事・育児と仕事の両立をしようとする私にとっては苦痛であった。

・子の出産時の休暇は、基本的には年次有給休暇や勤続10周年休暇等で対応していた。男性の育児休業取得件数としてカウントしたい会社側からの要請があり、1日だけ育児休業を取得した。妻からはなぜ有給休暇が使えるのに、わざわざ給料が目減りする育児休業を取得するのかといわれた。
・育児休業・休暇を取得するにあたっては、8か月前までに上司に相談し、2か月前から同僚と共有して準備をし、了解を得ていた。しかし、休業中に起きたトラブルの情報が休業中も復帰後も自身に共有されず、復職後にギクシャクした状況になる等、長期休業者を想定していない組織ならではの課題にも苦労した。
・個人として休業取得者は周到に準備をしていた。上司も部下の昇進後を慮っての行動だった。会社も上司にもハラスメント研修を受けさせる等、最善の努力をしていた。それでも、パタハラ(パタニティ・ハラスメント)は発生した。土台にある「男は仕事」という風土や社会が変わる必要がある。
・毎日早く帰る私の背中をみていた後輩の男性から、最近、「育児休業を取りました」というメールをもらった。わずか1日ではあったが、育児休業の事例が0から1になった意味を、数年経った今、感じている。
・父親の家事・育児と仕事の両立には、「制度」と「風土」という2つの「ど」が必要だが、両方そろっている企業は感覚値で2割程度である。6割の企業では制度が法定以上に整備されていても、それを利用できる風土が根付いていない。
・風土の醸成に向けて、社内への育児体験談等の情報発信、部署や会社への働き方の提案を行っている。
・風土の醸成につながる制度としては、「男の産休」を提案したい。「希望するみんなが保育園に入れる社会をめざす会」が、SNSで実施したアンケートで、父親の家事・育児参画取得促進策の希望を募ったところ、「男の産休」を挙げる声が多かった。自身の経験からも、フランスの、雇用主が3日間、国が11日間分の給与を保障する「男の産休」は風土を変える起点として参考になる制度であると思う。
・韓国にも育児休業給付率引き上げ制度があり、男性の育児休業取得率自体は伸びたものの、出生率向上にはつながっていない。育児休業を一時期だけ取得しても、平日の夜に男性が家にいなければ意味がない。労働時間の制限とセットで行われるべきだと思う。


【質疑応答】
・職場風土を変える上で有効なことは何であると考えるか。
→・トップのコミットメントのもとでの対話や情報発信が有効。
  ・真ん中のマネジメント層も下から声を上げれば、その取組を止めない雰囲気がある。草の根でこつこつと取組を進めていくほかない。


・男性の産休は現実的にうまくいっているのかが気になる。
・フランスでは女性の経済的自立意識が非常に強く、男性もそのような女性に理解があるからこそ男性産休制度がうまくいっている。日本でこの制度がうまく機能するためには、女性の意識、女性の自立に対する男性側の意識を変える必要がある。
→・高崎順子氏の『フランスはどう少子化を克服したか』という書籍が参考になるが、その著者によると、フランスでは育児のために2週間仕事を休むことはバカンスと同様で当たり前だという。また、子育てが大変なものであるという意識もフランスでは根強いのに対し、日本では、子育ては楽しいものだというメッセージが主流で子育ての大変さを語りづらい雰囲気がある。それも合わせて変えていかなければならない。


・休業期間を2週間とすることが適切であるか否かについては、忌引き等との並びを考えても検討の余地がある。
・大手企業をどう変えていくかが課題。人手不足が風土変革の大きなドライブとなることはそうだが、ワークライフバランス志向と大手志向は打ち消しあいになりがちだと感じる。そのあたりはどうか。
→・人事担当部署では、このままでは学生に選ばれなくなるという危機感を持っており、経営層に対しても座学研修等は行っており、頭では分かっているはずだが、改革には結びついていないのが現状である。
 ・育児を経験した者が上層部にいかなければならない。


【Cからのヒアリング】
・調査によると、多くの男性が仕事と育児の両立や育児休業取得に肯定的な一方、実際には仕事が優先となり、育児休業を取得できていない。
・課題として、代替要員の不足や長時間労働、両立しづらい雰囲気、休業に伴う経済的負担、キャリアへの悪影響が挙げられる。特に男性では、育児休業取得を想定した人員配置や情報提供が行われづらく、育児休業を取得すると、「体調面からの必要もないのに休んでいる」とみなされてしまう等の課題がある。
・職場環境の改善に向けて、長時間労働の是正、年次有給休暇の取得促進、男女間賃金格差の是正、両立支援制度を利用してもキャリア形成ができる環境の整備、キャリア教育が必要である。
・企業の両立支援制度については、代替要員の確保に向けた支援、育児休業中の経済的支援も含めた制度の周知、パパ・ママ育休プラスの拡充、有期契約労働者の取得要件撤廃が望まれる。また、今ある制度をどう活用するかという視点も必要である。
・高度経済成長時代は男性が中心で、女性が補助的な働き方をしていたが、現在の職場には育児・介護中の人、病気を治療中の人、セクシャル・マイノリティなどさまざまな人がいる。誰もが働きやすい社会や職場をつくるためには男性を中心とした働き方の見直しが不可欠である。


【質疑応答】
・必要な取組として挙げている「代替要員の確保に向けた支援」のところに、短期間でも休みやすく、とあるが、代替要員とは普通長期間の休業を前提としたものではないか。
・また、育児休業を取得した分スキルが低下する等で、同期と比べてキャリアが違ってくることは十分にあり得るが、両立支援制度を利用してもできるキャリア形成とはどのようなことを意味しているのか。
→・必ずしも派遣労働者を一時的に雇うという意味での代替要員の確保の話だけではなく、大企業では短期の休業でも、社内人材でのカバーが可能であるが、中小企業ではそれが難しいという課題意識である。
   ・自分が休むことで周囲にしわ寄せがいくというネガティブな受け止め方が根強いことへの問題意識がある。
  ・育児休業を取得した労働者を、そうでない労働者と安易に比べることはできないが、育児休業取得により取り返しのきかない差が生まれることのないよう、休業からの復帰後にキャリアが正しく評価される制度が必要。


・法制度を変えることは重要だが、それと同時に実務的な改善も必要であり、両者は車の両輪である。
・調査や、それにより把握した課題をどう現場にフィードバックし、変革につなげているのか。
→・把握した課題については、関係部署への要請を行っている。現場に対しては勉強会を開催したり、好事例の集約と拡散を行っている。
  ・現場では、バスの運行を必ず男女2名のペアで行うという事例があった。当初は女性がよく休むために男性のほうにしわ寄せが行くのではという懸念があったが、実際に運用してみると、男性もよく休みをとり、お互い様の雰囲気が生まれている。
  ・他にも、ものづくりの現場で、両立支援制度利用者だけのラインを作り、そこに1~2名遊びの人員を配置することでうまく現場を回している例がある。


・エピソードレベルでよいので、好事例の周知を環境整備のための一策として進めてほしい。


・短時間勤務制度を利用する男性は少ないが、それについて何かアイディアはあるか。
→・やはり、そのような例は少ない。男性で育児休業を取得しても、その後短時間勤務利用には至っていない。


・制度としての使いづらさはあるか。
→・男性非正規社員と女性総合職の夫婦では、社内でも役所の窓口でも手続の際に引っかかってしまうと聞く。
   ・そもそも男性が非正規であると制度利用ができず、必然的に女性がマミートラックに陥ってしまう。


・「時短男子」は夫婦間の家事バランスも取れるため推奨したいが、現実的には「妻が利用するための制度」になってしまっており、見えざる男女格差と言える。もっと啓発が必要である。


・短時間勤務は毎日行える制度である必要は無く、男女が曜日によって分担して利用できれば望ましい。これは、労使の話し合いによって運用すれば良い。

 


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