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2023年8月25日 第39回ILO懇談会議事概要

大臣官房国際課

○日時

令和5年8月25日(金)15:30~17:30

 

○場所

ビジョンセンター有楽町
 

○議題

1.第111回ILO総会の報告
2.2023年年次報告について
  第87号条約(結社の自由及び団結権の保護)
  第88号条約(職業安定組織の構成)
  第100号条約(同一価値の労働についての男女労働者に対する同一報酬)
  第122号条約(雇用政策)
  第142号条約(人的資源の開発における職業指導及び職業訓練)
  第159号条約(障害者の職業リハビリテーション及び雇用)
  第181号条約(民間職業仲介事業所)
 

○議事

1 第111回ILO総会の報告
 政府側から資料に基づき説明を行い、その後意見交換が行われた。
 
(労働者側)
 ベラルーシに対してはILO憲章第33条が発動されたが、結社の自由違反での発動は初めてであり、非常に評価している。他方でプログラムと予算案については、LGBTQに係る記載という、本質から離れたところで議論が紛糾したことは遺憾である。それ以外の議題については、おおむね満足のいく結果を得られたと評価している。
 
(使用者側)
 ILOが三者構成を重視しているということを想定して参加したが、残念ながらそうではない場面もあった。例えば公正な移行に関する委員会では、企業が積極的な役割を果たしていくという文言を入れることについて、労使側が合意し、政府側にもある程度支持いただいたが、突然EUに覆されるということがあった。企業が果たそうとしている役割について適切に評価していただかなければ、議論が進まないと感じた。また、政労使で十分に議論がされていない国もあるように感じたが、日本には政労使で議論する場があるということは評価すべき点であると思う。
 
2 2023年年次報告について
政府側から資料に基づき説明を行い、その後意見交換が行われた。
 
(労働者側)
 第87号条約について意見を述べる。
まず、消防職員委員会制度に関する取組についてILOが評価していることや、公務員の制度改善に向けて多岐にわたる課題があることについてILOは理解していることについての説明があったが、ILOがそれをもって日本政府は何もする必要がないと述べている訳ではないことを指摘したい。
第8回目の消防職員に関する労働側との協議について、政府報告には「労働側からは団結権についての協議は今回でそれぞれの主張を一定程度整理できたという声があり」という記載があるが、連合が労働側の関係者に確認したところ、政府側と労働側がそれぞれの主張を提出したに過ぎず、互いの主張を一定程度整理したということではないとの認識であった。この「一定程度整理できた」という箇所について、政府報告の英文では「organized」という単語を使っているが、労働側の認識を踏まえれば、「only presented」又は「recognized」の方が適切ではないか。記載が実態と乖離しているため、修正を求めたい。
 また、政府報告に、「消防職員委員会制度の運営に関する留意事項を全国の消防本部に通知した。これに対し、労働側からは十分な内容に満足しているとの声があった。」という記載があるが、連合から労働側の関係者に確認したところ、勤務条件や職場環境の改善を図ることと、消防職員に団結権を求めることは別次元の問題であるため、政府報告にある「十分な内容に満足」という表現は、委員会制度が万全に運用されていることに対する見解に過ぎないとの認識であり、こちらも修正を求めたい。「消防職員の団結権」という項であるにもかかわらず、政府報告の記載は消防職員委員会制度の運営に関することに終始している。このような内容にも関わらず、項末に「十分な内容に満足」というあたかも消防職員の団結権付与について進展があるかのような誤解を招きかねない記載をすることは不適切である。
 加えて、政府報告に、「議長集約における要請への対応については日本労働組合総連合会(連合)とも意見交換を行っているところである。」との記載があるが、連合としては意見交換を行っている事実はないと認識しているため、削除いただきたい。ILO懇談会の場では、年次報告に対する政府側意見を聞きながら労働側意見を出しているに過ぎず、本件に特化して議論したことはない。2021年の懇談会の議事要旨を確認したところ、連合は同様の発言をしており、内閣人事局から「これまで自律的労使関係制度を含めた様々なテーマについて職員団体と意見交換を行っており、引き続きそのような機会やこのILO懇談会などの機会を捉えて職員団体との意思疎通に努めていくことが重要。」と述べられたという記録になっていた。そもそも職員団体は連合とは別組織である。またILO懇談会でも基準適用委員会(CAS)から求められている内容について意見交換を行っておらず、ILO懇談会以外の場においても、内閣人事局とこの課題について意見交換を行ったことや申し出を受けたことはない。
最後に、政府報告には「誠意をもって情報提供していきたい」とあるので、政労使全員が誠実と認めるような内容の報告をお願いしたい。
 
(労働者側)
消防職員の団結権について、ILOの結社の自由委員会(CFA)の決議集に、消防職員が特別な役割を持っていることは組織化されない理由にはならない旨が明記されている。条約勧告適用専門家委員会(CEACR)からも、消防職員の利益を保護するために組合を結成する権限について、進展に資する議論をしてほしい、という期待が示されている。政府報告に「今までの協議内容を踏まえ、「消防職員が警察と同視される」に係る今までの議論の整理等について」とあるが、消防職員は警察と同視されず、他の労働者と同じく組織されるというのが現在の国際的な常識である。このような状況にも関わらず、日本政府の認識を変更しない理由を教えていただきたい。
また、日本は地震・風水害等が多発する世界有数の災害大国であるために、消防職員に結社の自由を与えることはできないという政府意見については、むしろ災害大国であるからこそ、組合を作ることで労使関係が円滑化し、災害にもより効果的に対応できると考える。組合があると消防活動への阻害要因となる理由を教えていただきたい。
最後に、消防職員は消防職員委員会制度ではなく、あくまでも団結権を希望しているので、その点について真摯に対応をお願いしたい。
 
(政府側)
 第8回定期協議において、「消防職員が警察と同視される」に係る今までの議論の整理を行った際に、総務省からは、日本が世界有数の災害大国であり、関係機関と一体的な活動をする必要があるという説明を行い、労働側からは、政府の主張やILO条約について、労働側の考えの主張があった結果、労働側から、それぞれの主張を一定程度整理できたという声があったので、その旨記載させていただいた。
 「労働側からは十分な内容に満足しているとの声があった」という記載については、第7回目の定期協議において、労働側から2018年の消防職員委員会に関する運用方針の改正に係る実施状況について把握すべきとご意見いただいたことを受け、労働側との調整の上、総務省で実態調査を実施し、その調査結果を踏まえ、消防職員委員会制度の運用に関する留意事項を全国の消防本部に通知した。この通知をしたということに対し、労働側から十分な内容に満足したという声をいただいたので、その旨記載した。
 「消防職員が警察と同視される」という点について、消防職員については、地方公務員法において、警察職員と共に団結権が制約されている。これは、我が国の消防が、公共の安寧秩序の保持という使命、目的を有しており、実際の消防活動においても、厳格な指揮命令系統のもとに活動することが必要など、警察との類似性があるからである。歴史的に見ても、明治以降、昭和23年の消防組織法の施行により分離されるまで、警察と消防は同じ組織であり、また、大規模な災害が頻発する日本においては、大規模災害時に警察、自衛隊と極めて密接に連携して人命救助活動を行っている。このほか、実際の消防活動において、明確な指揮命令系統の下、厳正な規律と統制のとれた部隊活動が要求されることなどから、警察と同様に階級制度が存在している。以上より、我が国の消防は、我が国の歴史的経緯、自然社会環境などを背景として、警察と同視するものと整理している。
 
(政府側)
 連合とも意見交換を行っているという点について、政府としては、職員団体の皆様との意見交換やILO懇談会の場において、自律的労使関係制度を含めた、様々なテーマについて意見交換を行ってきていると認識しており、引き続き、そのような機会をとらえて、意思疎通に努めていくことが重要と考えている。ILO懇談会の場でも、連合からの件を伺う一方で、政府としての考え方も示すなど、意見交換をしていると認識している。いずれにせよ、自律的労使関係制度については多岐にわたる課題や議論があることから、慎重な検討が必要。
 
(労働者側)
 労働側の発言について、文脈に即さない形で政府報告に載せるのはミスリーディングである。
 また「消防職員が警察と同視される」という点について、歴史的経緯を話されたが、世界情勢を考慮すれば、日本は今こそ一歩踏み出すべきではないかとILOから言われているのである。
 連合との協議については、課題解決に向けた実のある協議が行われた事実はない。もし記載するのであれば、議長集約への対応について、時間をかけて協議する場を提案してほしい。
 
(労働者側)
 消防職員の団結権について、公共の安全や災害に対応するからこそ、組合が必要なのである。なぜ組合があれば消火活動や災害支援をしなくなると政府が思っているのか理解できない。組合があればこそ消防職員の士気が高まって災害対応を強化できるのであり、政府の発想を変えていただきたい。
 
(使用者側)
  これまでの日本政府報告を支持する。日本のこれまでの消防職員の位置づけや経緯といった事情を考慮することなく、消防職員に団結権を付与すべきというCEACRの指摘には問題があり、この点については政府と同じ見解である。また、労働者側から、消防委員会の中での議論内容を記述することについては誤解を招きかねないという指摘があったが、政府が自主的な協議を行い、消防職員から一定の理解が得られ、そういった意見交換を今後も継続するという姿勢を示している記述だと理解している。
 公務員については、いまだ国民の理解が得られておらず、職員団体と意見交換を重ねており慎重に検討する必要があるという日本政府の姿勢を支持する。
 
(労働者側)
 ILOから意見が出ているのは、消防職員への団結権付与に向けた取り組みであり、消防職員委員会制度の運用改善だけしていればよいわけではないことを改めて強調したい。
 
 
以上
 

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