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2023年5月22日 第38回ILO懇談会議事概要

大臣官房国際課

○日時

令和5年5月22日(月)15:30~17:30

 

○場所

ビジョンセンター有楽町
 

○議題

1.第347回ILO理事会の報告
2.未批准条約について
  第111号条約(差別待遇(雇用及び職業))
  第155号条約(職業上の安全及び健康)
3.その他

○議事

1 第344回ILO理事会の報告
 政府側から資料に基づき説明を行った。労使から発言はなかった。
 
2 未批准条約について
(1)第111号条約(差別待遇(雇用及び職業))
 政府側から資料に基づき説明を行い、その後意見交換が行われた。
 
(労働者側)
 これまでもお伝えしてきたことだが、ILO加盟国のほとんどが第111号条約を批准している中で、日本が未批准であることは人権尊重に後ろ向きとの評価を受けかねない。日EU・EPAやビジネスと人権の行動計画等でも基本条約の批准に向けて努力するという項目が盛り込まれており、ますます国際的な意識が高まっている。日本が差別や人権の軽視を許さない国であることを示す意味でも、批准に向けた具体的な取組をぜひ加速させるべき。批准に向けて検討すべき課題があることは理解しているが、まずは厚生労働省が所管する範囲で一歩でも二歩でも進められないのか。もちろん他の省庁に係る部分も同様であるが、まず厚生労働省から具体的な取組をお願いしたい。
 日EU・EPAに基づく市民社会との共同対話でも連合としてこの話題を出しているが、日本政府は引き続き慎重な検討が必要という話を繰り返されている。中核的労働基準そのものが労働における人権であり、「人権を保護する国家の義務」がビジネスと人権の指導原則に掲げられていることを踏まえれば、今のままでは国民に対する説明責任が果たせているとは言えないのではないか。
 国内法制に性に基づく区別を設ける規定が存在することについて、現行の法令でも基準を満たしているという考え方で整理できそうと言いつつ検討中という説明が続いているが、最終的に条約との整合性が問題ないという判断はどのようにされるのか、この先の具体的な段取りを伺いたい。
就労に関わる差別禁止について、現在、性的指向・性自認を理由とした差別の禁止ということが言われている。第111号条約が採択された1958年の時点では射程に入っていなかったと思うが、この点を含めた包括的な差別禁止法が必要である。
 
(政府側)
 政府として基本条約の批准は重要と考えており、検討に取り組んでいきたい。日EU・EPAでも政府の取組を問われており、こういった懇談会の場をもつ、各国と情報共有する等の取組を説明し、EU側に一定の理解はしていただいているが、引き続き取り組んでいきたい。
 厚生労働省の所管で言えば、例えば深夜の交代労働に係る男女の年齢規制の違いや助産師を女性に限定している点について母性保護では説明できないところがある。後者については調査が行われ、第111号条約締約国について判明した事項もある。そうした情報収集も含めて検討していきたい。第4回日・ILO年次戦略協議においても、ILO国際労働基準局と第111号条約及び第155号条約について意見交換しており、各国の取組について情報共有を依頼したところである。
 
(使用者側)
 中核的労働基準はできる限り早く批准されることが望ましいことは論を待たない。他方で、批准に向けて精査が必要になるところもあると承知している。ILOの担当者とも意見交換され、批准に向けて何が必要か少しずつ見えてきているとご説明いただいた。引き続きしっかり議論し、批准に向けて関係者と協議を進めていただきたい。
 
(労働者側)
 第111号条約は94%の国が批准済みという中で先進国である日本政府が批准していないのは、色々な努力は承知しているが遅すぎる。批准に向けた課題がなかなか消化されていないのが現実だと思うが、もっと前向きに、積極的に対応していただきたい。
 公務員の政治的行為の制限が大きな課題だと思うが、今後の進捗の予定について具体的に伺いたい。ILO創設100周年の際には衆参両院で中核的労働基準の批准を求める決議も行われており、早期批准を重ねてお願いしたい。
 
(政府側)
 御指摘のとおり、中核的労働基準として本条約の批准が非常に重要であることは認識している。一方で、国内法制と条約との整合性について慎重な検討が必要というところで、今回のような意見交換の場や、あるいは関係省庁との間で連携をとって引き続き検討していく。さらに他国の事例も調べながら対応していきたい。
 
(使用者側)
 公務員の政治的行為の議論の中で、実際に組合等から私たちに自由を与えてほしいという意見は出てきているのか。消防職員や刑務官の団結権の問題はILOの結社の自由委員会や条約勧告適用専門家委員会において長く続く事案となっているが、労働者側から具体的な進捗を問う質問が出たことがあるのかについても伺いたい。
 
(政府側)
 国家公務員が組織する職員団体との間で勤務条件等について意見交換を行っているところ、記憶の限りでの回答ではあるが、意見交換の場でこの件が特に議論されていたということは承知していない。
 
(2)第155号条約(職業上の安全及び健康)
 政府側から資料に基づき説明を行い、その後意見交換が行われた。
 
(労働者側)
 現在厚生労働省で行われている個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会において、二以上の企業が同一作業場で活動する場合における協力について議論されているところと承知している。念のため確認だが、検討会の議論は今後の条約批准を視野に入れた内容になっているのか。
 
(政府側)
 検討会の様々な論点の中に、業種ごとの混在作業の規制に個人事業者を含めるかという点や、業種をまたぐような混在作業で発生する労働災害をどのようにカバーするのかという点があり、批准も念頭に進めていることは間違いない。個人事業者の検討と併せて進めていきたい。
 
(労働者側)
 これまでの法改正を通じて批准に向けた比較的大きな障害はなくなってきているかと思うが、第155号条約は労働者の安全と健康を守る非常に重要な条約であり、早期の批准に向けて更なる対応をお願いしたい。
 
(使用者側)
 基本的に労働者側と同じようなスタンスである。第155号条約は中核的労働基準に新たに加わったので、できるだけ早い批准をお願いしたい。一方、本条約はまだ76か国(※当時)しか批准しておらず、G7諸国は批准していない。批准が進んでいないのは条約に非常に細かい内容が含まれているからと理解している。日本は、批准にあたって条約と国内法制の整合性をしっかりと確認している。引き続きILO事務局のサポートも得ながら、早期の批准に向けて取組んでいただきたい。
 
(政府側)
 御指摘のとおりG7諸国は批准しておらず、条約の内容を担保した上で批准するという日本の基本的な考え方と立場が近いと考えられる。必要に応じて各国とも意見交換しながら整理を進めていきたい。
 
(使用者側)
 この場は未批准条約をどうしたら批准できるのかという議論が主であり、それは理解するが、より重要なことは、中核的労働基準とは、批准していなくてもその考え方そのものを遵守しなければならないということ。厚生労働省として、日本政府として、本条約を批准するまでの間、どのようにこの原則を実行していくのか。またその際の原則をどのようにとらえているのか伺いたい。
 
(政府側)
 御指摘のとおり、まさにそれが1998年のILO宣言の趣旨だと理解している。条約の批准という点では精緻な議論が必要だが、第111号条約で言えば雇用における差別をしないということ、第155号条約で言えば安全衛生が確保されていること、その基本的な原則は、条約を批准できていない状態だが、国内施策を講じる上で労働政策の非常に重要な原則だと考えている。例えば第155号条約の関係では、日本は労働安全衛生に関する計画を策定してそれに基づいて各種施策を行っている。
 こういった基本原則は日EU・EPAを始め様々な経済連携協定の議論にも含まれている。G7でも労働安全衛生の議論は行われており、各国との意見交換を通じて国際的にも普及させていこうというところ。ILOの技術協力でも安全衛生は日本の強みであり、今後も念頭において各種施策を講じていく。
 
(使用者側)
 第155号条約第11条(a)から(f)は非常に細かい規定だが、批准している国はこの全てを実行できているのか。
 
(政府側)
 基本的に条約の解釈は各国が行うものなので、解釈の余地のある部分は他国の状況を調査する必要がある。批准済みの諸国でどのように担保されているのかという点は興味深いところで、国によって条約の批准に関するスタンスが異なり、日本のように精緻に事前に担保して批准する国もあれば、必ずしもそうではない国もある。既批准条約についてはILOに報告を提出し、条約遵守の状況について確認を受ける仕組みがあり、そういった他国の議論も見ながら確認していくものと思う。
 
(使用者側)
 先ほどの質問の意図として、G7がいずれも未批准ということで、労働安全衛生に比較的先進的な国々が批准できていない中で、できている国があることを不思議に思ったもの。
 
(政府側)
 それがまさに批准に対する各国のスタンスの違いで、興味深いところ。
 
(労働者側:冨高総合政策推進局長)
 各国の状況を確認しながら進めるというのは重要だが、確か昨年も同様な話を伺った。「安全衛生は日本の強み」であり、他国が未批准のなかでも積極的に検討、批准していただくことが必要ではないか。ぜひ前向きに検討いただきたい。
 
(使用者側)
 確かに昨年も同じ議論があり、各国の状況を調査したいというようなご回答があった。それ以降、G7議長国としての対応や昨年開催されたアジア太平洋地域会議などがあり、皆さん大変お忙しかったのはよく承知している。一方で、ヨーロッパ諸国では比較的検討が進んでいるという話も聞いており、日本としてリーダーシップを発揮していただきたい。
 
(政府側)
 前回から思ったように進んでいないのは申し訳ないところ。まず調査の対象を検討している状況で、担保の検討にあたり情報を補足したい点を中心に調べていきたい。
 
(使用者側)
 国内の議論を促進するために質問したい。労働安全衛生法の適用対象外労働者について、鉱山労働者は経済産業省、船員が国交省、一般職国家公務員は人事院が所管という理解で良いか。自衛隊が防衛省というのはわかるが、裁判所職員はどこが所管になるか。国内で議論するにあたって、何をどこが所管しているのかという点をまずは明らかにしてほしい。そして次のアクションに進めていくためには関係省庁との情報共有が必要だが、そうした点での取り組み状況について伺いたい。
 
(政府側)
 まず鉱山労働者、船員については御理解のとおり。国家公務員は職種により分かれており、裁判所職員は裁判所、国会職員は国会、自衛隊は防衛省の所管。確認は必要だが裁判所職員は基本的に国家公務員の並びと理解している。国会職員にも基本的には国会職員法と安衛法の規定が準用されるので、同様に整理できる可能性がある。自衛隊は特殊な部分があり、防衛省に担保状況を確認しているところ。他国でどのように扱われているかという点も含め検討が必要。御指摘のとおり様々な省庁にまたがっているが、きちんと対応していきたい。
 
3 その他
 政府側からG7倉敷労働雇用大臣会合及び第4回日・ILO年次戦略協議について、資料に基づき説明を行った。労使から発言はなかった。

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