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2022年9月6日 第37回ILO懇談会議事概要

大臣官房国際課

○日時

令和4年9月6日(火)15:30~17:30

 

○場所

ビジョンセンター日比谷
 

○議題

1.第110回ILO総会の報告
2.2022年年次報告について
  第29号条約(強制労働)
  第138号条約(最低年齢)
  第182号条約(最悪の形態の児童労働)
● その他
 

○議事

1 第110回ILO総会の報告
 政府側から資料に基づき説明を行い、その後意見交換が行われた。
 
(使用者側)
 今回の総会では、政労使の真摯な議論がなされ、最終的に第155号条約が中核的労働基準となった。働き手が安全で安心して働ける環境を整えるということは、もとより事業主の責務ではあるが、我が国ではこれまで労使が協力して労働災害防止に取り組んできた。また、海外の現地法人においても同様に労働災害防止の取組を展開するなど、我が国が世界に範を示すことが期待される分野だと考えている。以前より第155号条約の批准に向けた課題の整理をお願いしているが、これを機に具体的な検討のスピードを上げていただきたい。
 
(政府側)
 まさにご指摘のとおり、安全衛生は日本が誇れる分野。第155号条約が中核労働基準となったことを我々としても重く受け止めている。第187号条約は既に批准しているが、第155号条約は未批准であり、批准にあたっては国内制度・法令との整合性の検討が必要である。安衛法と異なる法律が適用される労働者も含め、条約に対応できているか確認する必要があり、前向きに検討を進めていきたい。
 
(労働者側)
 労働側も、ぜひ今回を契機に積極的に批准に向けて検討を進めていただくことをお願いしたい。今政府で様々な課題を整理いただいていることは承知しており、個人事業主の安全衛生対策についても対応いただいているが、請負等の曖昧な雇用の方たちを含め安全衛生についてしっかりご対応いただきたい。
 
(政府側)
 条約に必要な対応は整理していきたい。また、後段については、以前から安全衛生部において検討を行っているものと承知。
 
(使用者側)
 第155号条約の批准にあたって課題になり得るものとして試験制度の導入があるということで、前回のILO懇談会の場で対応の可能性について質問したところ、例えば鉱山法ではそういった試験制度がなく、労働安全衛生法との適用の関係性について調整が必要とのことだった。調整とは具体的に何を想定しているのか。
 
(政府側)
 鉱山労働者や船員、公務員は特別な法体系になっている。前回議論になった労働安全衛生法における試験制度は、化学物質を製造・輸入する事業者を中心に想定したような規定になっている。他方で、化学物質を扱うという点では船員や他の労働者も別途規定があり、前回船員についてお答えしていなかったので、その部分を回答させていただく。
 船員法に試験制度自体はないが、国際海事機関で危険物質の基準を作っており、そういった基準に沿って船内の化学物質の扱いを決める、船舶のなかで安全担当者を置くなど、何らかの形で化学物質に対するリスク管理は行われている。今後詳細を確認する必要はあるが、試験制度については、条文として漸進的な措置をとるという文言になっていることを含めて個々の整理を行うことになる。
 
(使用者側)
 第155号条約を批准している国は中核的労働基準化するにはあまりにも多くない。政府におかれては、国内法との整合性だけでなく、他国がどのような取組をしているか、どのように批准しているのか、G7諸国がいずれも批准していないのはなぜか等も調べ、適切な対応をお願いしたい。
 今回の安全衛生2条約の中核的労働基準化は、国内だけではなく、ビジネスと人権のデュー・デリジェンスにも密接に関係しており、間接的な影響も非常に大きい。そのことは経団連会員企業の中でも十分に知られていない状況にある。政府も、今、経産省が中心になってビジネスと人権に関するガイドライン案も作成しているが、そういった取組への理解を十分に進めていただく必要がある。特に海外展開した際に大きな問題となることを日本の企業が理解しなければ対応が進まない。それらも踏まえ、日本国内における批准に向けた努力がスピードダウンしないようにお願いしたい。
 
(政府側)
 判断の材料として、諸外国がどこまで担保して批准しているかは重要だと思うので、整理した上で検討・判断したい。2点目もご指摘のとおりで、我々としてもILO中核的労働基準化したことを折に触れ周知していきたい。
 
(労働者側)
 皆さんの意見と重なるが、新しく中核的労働基準となった第155号条約の批准に向け改めて努力いただきたい。人権を尊重することが当たり前の時代で、中核条約への関心度が10年前、20年前と今日時点では全然違う。G7諸国が批准していないこともあって、昔は横並びという観点もあったかもしれないが、特に労働安全衛生ということがあるので、アジアの中で日本がどうするのかは常に見られている。日本の批准が問われる環境にあることを改めて共有したい。
 
(政府側)
 第155号条約が中核的労働基準になったことで、G7諸国を含めた他国でも批准に向けた動きが出る可能性がある。既に批准した国も参考にしつつ検討していきたい。
 
2 2022年年次報告について
 政府側から資料に基づき説明を行い、その後意見交換が行われた。
 
(使用者側)
 第29号条約の技能実習制度について、外国人技能実習機構(以下「機構」という。)の職員増員や専用の相談窓口設置など対策強化をしていただいているが、こうした措置の実効性がしっかり担保され、技能実習生の人権が守られることが最も重要。政府には引き続き、技能実習制度の趣旨に沿った適切な対応及び技能実習生の法定労働条件の履行確保に向けた取組の強化をしていただきたい。
 
(政府側)
 これまでも機構の体制強化で、令和元年の職員増員、組織内の見直し等を実施してきたが、依然として様々な事案が起きている。問題が深刻化しない段階での介入と、事案が発生した場合の指導と技能実習生の保護が重要。機構職員の研修等を含め、今後ともしっかり取り組んでいきたい。
 
(労働者側)
 政府の取組には感謝しているが、当初想定していたよりも大幅に監理団体が増加している中で、労働基準関係法の違反件数は高止まりの状況だと認識。また技能実習生の行方不明事案が約2割あり、その背景は様々だと思うが、劣悪な労働環境も影響しているのではないかと考えると、実習実施者や監理団体への実地検査の頻度を上げ、厳正に対応いただきたい。劣悪な労働環境は速やかに是正していかなければならない。連合でも労働相談を受けており、実習実施者が関係法令を理解していないのではないか、監理団体の問題が大きいのではないかと感じる事例も聞いている。本来の技能実習の趣旨を保ち、安易な解雇への厳正な対応も図っていただきたい。
 政府側の説明で、積極的な支援、相談対応等についても話があった。HP上には情報があるが、外国人労働者への分かりやすさの点ではさらに工夫ができるのではないか。
 機構の職員について増員を図っていただいているが、質の担保という点で研修の実施強化・育成をお願いしたい。
 
(政府側)
 実習実施者の労働基準法関係違反は毎年7割前後となっている。機構から労働基準監督署へ労働基準関係法令違反の疑いがあると通報した事例や、実習生が所属する事業場における実習生以外の労働者への法令違反も含めた数字ではあるが、国内全体の労働基準関係法令違反の割合よりも少し高い。受入れ企業の法令への理解不足は問題で、賃金不払いや長時間労働の事案等しっかり調査・指導を行い、悪質・重大な違反については厳正に対処することが重要。
 行方不明・失踪事案は、様々な背景がある中で、ご指摘のとおり受入れ企業における労務管理、中にはいじめ・暴行等の問題も含めた背景があって発生することがある。昨年会計検査院からも指摘があったところであり、速やかな状況把握を行った上で実地検査を行うなど、引き続きしっかり対応していきたい。
 企業や監理団体の労働関係法令への理解が不足しているというご指摘については、受入れ企業に法令をしっかり把握して対応いただきたいのは当然だが、まず監理団体にきちんと対応いただきたい。監理団体は違反があれば通報することになっているが、それが不十分なところもあり、監理団体への指導も含めて対応していきたい。
 実習生や企業への周知について、コロナ禍で感染防止や水際対策の観点からルールの変更が相当あった。機構とも連携し、機構から実習生本人に対する周知だけでなく監理団体・企業から実習生に対する周知も重要と考え、HPへの掲載の他メーリングリスト等も用いて速やかに周知してきた。分かりやすく周知する取組を引き続き進めていきたい。
 機構について職員増員や研修強化のご指摘があった。令和元年に増員を行ったが、厳しい予算状況下で毎年増員というのは難しく、機構本部の運用として、指導担当・援助担当と職員が分かれていたところ、指導援助部という形で統合することにより、援助で得た情報を指導に繋げる、あるいは指導で実習生保護に問題があると把握した場合に援助に繋げることを実施してきたところであり、引き続き取り組んでいきたい。研修については、関係法令の理解が不足した機構職員が、企業や実習生に適切でない指導・相談対応をしたという事案が発生した。様々な労働関係法令があり、研修は一回実施すれば良いというものではないため、着任の都度、また定期的に研修を実施していきたい。
 
(労働者側)
 日本の技能実習生の問題は、社会的にも世界的にも問題視されており、目に見える形で改善がされないと、先進国の日本がある意味で強制労働の違反をしているような受け止められ方をされてしまう。政府の努力は理解しており、機構の職員が346名から587名体制に増員されたことは歓迎するべきことだが、通常の労働者より実習生の方が様々な問題を抱えている中、そもそもこの人数で大丈夫なのか。また今後どの程度の体制にするつもりなのか。
 
(政府側)
 機構の体制について、現在技能実習制度・特定技能実習制度の見直しのタイミングで様々な検討をしているところだが、実習生は現在30万人、多い時は40万人で、主務省庁が対応するのは当然だが、この人数を行政組織だけで対応するのは限界があると考えている。監理団体は単に企業の支援だけでなく、監理、すなわち違反があれば指導・通報する役割も担っており、いかにその役割を果たすかが重要。制度の改革について様々な議論があるが、それを実効的に行うためには、監理団体がきちんと機能すること、つまり最初の計画の認定から、実習時の企業への指導、問題の是正、是正されない場合の通報という本来の役割を果たしていただくということが大前提。いずれにしても制度全体の中でどのようなルールにするのか、その実効性確保のため監理団体がどのような機能を果たすのか、その上で機構が果たす役割について検討していきたい。
 さらに587名の機構職員以外にも、母国語相談という形で様々な言語で外部の方々を含めて対応している。この方々は単に通訳するだけでなく、経験を踏まえた実習生へのアドバイスもしていただいている。そういった支援体制も含めて検討していきたい。
 
(使用者側)
 技能実習の問題について、受入れ企業の方々が制度を十分理解できていないこともあるため、監理団体がきちんと対応することは重要だが、その前提として、制度が本来的に機能するような努力を引き続きお願いしたい。加えて、特にこのコロナ禍で、実習生が犯罪に手を染める事例もあったと思うが、国民の理解が追いついていない部分もあるのではないか。マスメディア含め世間一般が、監理団体や機構の体制拡充が必要だと思えるよう、この制度自体への理解を深めるため更なる努力をお願いしたい。
 
(政府側)
 企業や世間一般にも制度の実態を理解してもらうことが重要であり、引き続き取り組んでいきたい。受入れ企業に制度を理解してもらうことは大前提だが、理解が浅い企業に理解してもらうのは難しい面もある。技能実習制度は非常に複雑な制度で、技能実習制度運用要領を公開しているが、300ページを超える分量がある。少なくとも監理団体は全て理解するべきで、企業にも全部理解してもらいたいところだが、実態としてなかなか難しい。企業が制度への理解を深めることは重要であり、企業向けリーフレット等を作成しているが、引き続き工夫していきたい。
 
● その他
 前回の懇談会での質問に関連し、政府側から、男女共同参画基本計画のパブリックコメントでILO第183号条約を批准してほしいという意見があったことを説明。

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