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2017年8月7日 第29回ILO懇談会議事概要

大臣官房国際課

○日時

平成29年8月7日(月)13:00


○場所

三田共用会議所大会議室


○議題

1 ILO懇談会開催要綱の変更について(報告)
2 第106回ILO総会の報告
3 2017年年次報告について

○議事

 ILO懇談会開催要綱の変更について(報告)

  事務局より、 ILO 懇談会開催要項の変更について、報告が行われ、労使か

ら了承された。

第106回ILO総会の報告

政府側から、資料に基づき説明が行われた。

2017年年次報告について

3  2017 年年次報告について

政府より年次報告の内容について説明が行われた。その後、労働者側、使用者側から、政府が提出する年次報告に関する意見を総括的に述べた後に、意見交換が行われた。

 

【労働者側からの総括意見】

○ 第 19 号条約について

労働者災害補償制度については、 2012 年に指摘したが、外国人労働者に関して問題がある。

外国人労働者の労働災害は増えているので、防止対策と確実に補償を行うこと、及び外国人技能実習制度については、外国人技能実習法が本年 11 月から施行されるので、制度の適正化が必要である。

 

○ 第 27 号条約について

以前から提出してきた意見と基本的に変わりはないが、海上輸送分野では、荷崩れ等の事故が発生しており、その1つの要因として、重量測定・重量表示に問題があるのではないか。

海上コンテナに関する安全輸送ガイドラインが策定されているが、依然として事故が多く発生している状況を踏まえ、本条約に基づき、海上コンテナ安全輸送に関する法制化を行い、海上コンテナに対する貨物重量記載や重量情報の伝達を義務づけることなどが必要ではないか。

 

○  81 号条約の労働監督に関する条約について

2016 年のオブザベーションで指摘されている、福島第一原子力発電所の廃炉作業の労働災害について、廃炉作業は長い時間がかかるので、その労働安全対策をしっかりやっていただきたい。作業に携わる本人はもちろん、その家族を含めたメンタルヘルスについても、対策が必要である。

また、廃炉作業に関する監督結果については、違反率は少し減少しているような記載があるが、違反件数自体は増加しており、一層の指導監督の強化が必要である。従前から申し上げてきたことだが、労働基準監督官の人員の確保、及び、労働基準監督機関の体制整備をしっかりしていただきたい。

 

○ 第 87 号条約と第 98 号条約について

公務員制度全般について、これまで結社の自由委員会及び条約勧告適用専門家委員会が日本政府に対して繰り返し指摘してきた課題は、全て未解決であることを強く危惧している。また、指摘された課題について、政府が解決に向けた真摯な検討を行ったことはなく、これは国際社会、そしてILOへの日本政府の責任と義務という観点から、極めて重大な課題であると考えている。

独立行政法人制度は、行政改革の一環として中央省庁から現業・サービス部門を切り離す目的で創設されたものであり、結果として民間労働者に適用される労働組合法の適用または近似した労使関係制度へ移行したに過ぎず、政府報告が指摘するような労使関係制度の改善を目的とするための措置ではない。

消防職員に対する団結権の付与については、消防職員の団結権を否定するための論拠として繰り返されてきた、1 指揮命令系統や部隊内の信頼関係への影響、2 消防任務への支障と地域住民との信頼関係への影響、3 消防団との連携や信頼関係への影響、4 第 87 号条約第 9 条の限定的な方法により定められるべき唯一可能な例外である警察との関係等、5 緊急消防援助隊の活動、6 燃焼危険性化学物質や有害物質及び細菌類等に対応する体制整備、7 大規模災害の際の人命救助における警察・自衛隊等の協力等は、全て職務上の問題であり、結社の自由とは全く無関係である。

刑事施設職員に対する団結権の付与については、前回の条約勧告適用専門家委員会が、政府に対し、「消防職員と刑務官に団結権を保障することを視野に入れて講じられた、または構想されている措置を示すよう要請する」との指摘をしているにもかかわらず、その指摘以降も政府において、刑事施設職員の団結権問題に係る具体的な検討は何ら行われていないことを喚起する。

公務員の争議権については、 44 年前の最高裁判所判決( 1973 年4月)において(判示された)公務員の争議権禁止を合憲とする論証の一つである代償措置論に固執しているのは、極めて問題がある。特に同判決は、公務員の集団的な行動権に関して十分な代償がなされているという無理な前提に立っていることを改めて指摘する。

公務員制度改革については、 2014 年の「国家公務員法等改正案」の審議・成立時及び 2016 年の「一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案」の審議・成立時に、衆参両院の内閣委員会の付帯決議において「職員団体との意見交換を行い、合意形成に努めること」を政府に課しているが、国家公務員制度改革基本法第 12 条の自律的労使関係制度の確立に関する協議は、政府側の不作為と形式的な対応により、何ら進展に至っていない。

適切な代償措置に関しては、1 代償機関である人事院は、独立・中立性を前提とした組織基盤でなければならないものの、使用者たる政府側の意向に沿うことを余儀なくされるという現実的な限界があること、2 人事院勧告の具体的実施について、労使関係の一方の当事者であり、使用者でもある政府の裁量に委ねられること、3 給与・勤務条件の法定主義により、その変更等について法律改正を要することから、国会における多数派である与党そして議院内閣制の下、与党により構成される政府に実質的な人事院勧告の可否の判断が帰属しているなど過度な立法裁量があること等、の問題を改めて指摘する。

職員団体登録制度は、組合の自主的活動の保障と自主決定原則を否定し、事前の許可なしに団体を結成するという権利を否認するものであり、何らの措置がはかられることなく、また改善に向けた検討も一切行われることもないまま、課題が放置されている。

在籍専従制度は、団結権の重要な内容をなす役員選任の自由を侵害してきたものであり、廃止または改善が講じられることなく放置されていることは問題である。

管理職員の範囲については、使用者側の一方的承認申請に対し、職員団体の意見や同意を求めることなく、第三者機関が決定するという現行制度は問題がある。

臨時・非常勤の地方公務員に関する制度改正については、政府は 2017 年3月 7 日、第 193 通常国会に「地方公務員及び地方自治法の一部を改正する法律案」を提出し、当該法案同年5月 11 日に可決・成立した。この法律改正は、喫緊の課題である常勤職員との処遇格差の是正を優先化したものと思慮するところ、改めて、全ての公務員の労働基本権回復が一刻の猶予もない課題であることを指摘する。

98 号条約第6条の解釈について、政府は一方的解釈に基づき、単に「公務員」として労働基本権制約の一律的制限を正当化しており、このことに対する批判は、過去の政府報告に対する意見において指摘してきたところであるが、繰り返し条約勧告適用専門家委員会における留意を求める。

働き方改革実行計画と公務員の団体交渉権について、公務員の団体交渉権を否定したままでの長時間労働の是正は、罰則の適用が予定される民間労働者との間で時間外労働の規制に関する著しい制度的格差が生じるとともに、公務における効果が得られないばかりか、現実的にそれに影響する民間労働者等への波及など、社会的な意義をも喪失しかねないと考えている。

林野部門の国家公務員の団体交渉権について、「国有林野の有する公益的機能の維持増進を図るための国有林野の管理経営に関する法律等の一部を改正する等の法律案」は成立した一方で、「国家公務員制度改革関連4法案」が廃案となったため、国有林野事業職員の労働協約締結権の適用が除外されるという、重大かつ看過できない権利の後退と侵害を余儀なくされたものであると認識している。

派遣労働者の派遣先会社との団体交渉については、派遣労働者が団結し、派遣労働者の労働条件の実質的な支配力・影響力を有する派遣先事業主と団体交渉を行うことが必要不可欠であるという認識である。

公務員制度についての 87 号・ 98 号についての意見は、これまでと基本的に同じである。政府は毎回同じような報告だが、消防職員については 1973 年から条約勧告適用専門家委員会、 2002 年から結社の自由委員会で指摘を受け続けていることも踏まえた前向きな検討をお願いしたい。海外では公務員に労働基本権を与えている国の事例がかなりあることも踏まえるべき。消防職員について、政府は、「団結権の付与は、結果として指揮命令系統や職場のチームワークにゆがみをもたらしかねない」と報告しているが、日本の労使慣行からいって民間ではまず生じない。職務の特殊性という観点もあるかもしれないが、むしろ団結権を付与することによって職場のチームワークなどが円滑になるという考え方もある。

 

○第 102 号条約について

雇用保険の国庫負担金が引き下げられたままであることについて懸念を有している。

また、資料3-6の5ページの短時間労働者に対する厚生年金の適用拡大に関して、限定的であった 2012 年改正による適用者が 2016 年改正でどれだけ増えたか、今回の報告では明らかではない。連合は、すべての雇用労働者への社会保険の完全適用に向けて、社会保険の適用要件を引き下げることが必要と考えている。

 

○第 115 号条約について

緊急作業に従事していなくても一定量以上の放射線に被曝した労働者は、長期的な健康管理の対象とすることも必要ではないか、また、廃炉作業に従事するすべての労働者は離職後も含めた被曝線量管理の対象としていただきたい。

 

○第 121 号について

資料3-8の5ページの第 26 条の労働災害について、報告では死亡者数の実数を記載しているが、必ずしも休業4日以上の死傷災害の数ということではないと思う。 ILO から求められている報告内容として、どちらを報告するのが適切なのか。

また、外国人労働者の問題については先ほど申し上げたが、派遣労働者の労働災害死傷者数が増えているので、その部分は報告に記載すべきではないか。

 

○第 159 号について

2015 年の専門家委員会のオブザベーションに対する回答に関して、企業における障害者雇用数は増えており、実雇用率も向上しているが、法定雇用率が未達成である企業が依然として多く、障害者を1人も雇用していない企業が6割近くある。また、来年度から法定雇用率を引き上げるということで、政府としての障害者雇用の取り組み強化が必要である。

また、障害者福祉については障害者差別解消法が施行されているが、合理的配慮は努力義務であり、紛争解決機能が未整備であるため、取組を進める必要がある。

 

【使用者側の総括意見】

○今回提出された 81 87 98 号の3点についてコメントする。

まず第 81 号条約、労働基準監督署について、過重労働の防止に向けた監督指導の強化や労使からの相談への対応をしているということで、私どもとしても敬意を表したい。今後、労働時間制度や同一労働同一賃金を踏まえた労働条件に関する法改正が見込まれており、労働基準監督署には、適切かつ統一的な監督指導を通じた労働関係法令の遵守の促進を期待する。監督官ごとに違うというバラバラな対応は止めていただきたい。また、ICT等の活用により、労働基準監督業務の効率化、コスト削減を積極的に進めることも大切である。

 

○第 87 号条約の 2014 年条約勧告適用専門家委員会からの意見に関して、自律的労使関係制度については、いまだ国民の理解を得られておらず、引き続き職員団体等の意見を伺いながら慎重に検討するという日本政府の考え方を使用者側としても支持する。

 

○消防隊員、刑事施設職員の団結権については、慎重に検討していく必要があるという日本政府の考え方を支持する。刑務官は警察職員と同様に ILO 87 号条約 9 条にいう「警察」に含まれるとする日本政府の見解を支持する。ストライキ権を制限されている者のための代替措置として、人事院は労働基本権制約の代償措置として十分に機能しているという日本政府の考え方を支持する。民間航空会社の整理解雇案件については、日本では労働委員会制度や訴訟制度によって民間の紛争事案は適切な処理が図られていると考えている。

 

○第 98 号条約については、第 87 号条約と同様であるため、コメントは差し控えさせていただく。

 

 

【意見交換】

○(使用者側)時間が無いのであまり意見をいいませんが、まず連合にご理解いただきたいのは、結社の自由委員会でのレコメンデーションも、条約勧告適用専門家委員会のオブザベーションも、ノンバインディングであるという事実は良く理解していただきたい。

 

○(労働者側)条約勧告適用専門家委員会の意見や結社の自由委員会の勧告が法的には非拘束な性質であることは理解しているが、原点に返ってなぜ ILO があるのかということを考えていただきたい。法的に拘束されないから ILO の指摘には従わなくていいのだということではなく、それを指標として取組を進めていくことが求められているのではないか。消防職員については、連合で調査を実施した際、団結権を認めることに賛成の意見が過半数であり、反対はごく少数だった。このようなデータに基づき合理的に取組を進めていく。

 

○(政府側)では以上をもちまして、第 29 ILO 懇談会を終了いたします。

 


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