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2022年1月28日 難聴児の早期発見・早期療育推進のための基本方針作成に関する検討会議事録

社会・援護局障害保健福祉部

○日時

令和4年1月28日(金)14:00~16:00

○場所

ビジョンセンター永田町
(東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル8階)

○出席者

中川尚志座長、新井敏彦構成員、河本大輔構成員、神田幸彦構成員、酒井邦嘉構成員、城間将江構成員、鈴木康之構成員、関沢明彦構成員、武居渡構成員、問田直美構成員、福島朗博構成員、福島邦博構成員、細井裕司構成員、渡辺弘司構成員

○議事

○矢田貝障害保健福祉部企画課長 それでは、ただいまから第5回「難聴児の早期発見・早期療育推進のための基本方針作成に関する検討会」を開催いたします。
皆様方には、お忙しいところ御参加いただき、ありがとうございます。
初めに、議事の進め方及び資料の確認、本日の御出席状況についての報告を事務局からさせていただきます。
また、前回検討会より事務局に異動がございましたので、後ほど改めて御紹介させていただきます。
本日の検討会も、オンラインでの開催としています。座長から御発言を希望される方を募りますので、希望の方は挙手、またはZoomの「手を挙げる」機能を御活用ください。
御発言の際は、まずミュートを解除し、お名前を名のっていただいてから御発言をお願いします。発言後は、必ずマイクのスイッチをオフにしてくださいますようお願いいたします。議事途中に何かトラブルがありましたら事務局までお問い合わせください。
続いて、資料の確認です。
本日の資料は、議事次第、資料1~資料4、参考資料となっております。資料はホームページにも掲載してございますので、お手元に資料がない場合にはそちらを御覧ください。
続きまして、本日の検討会の出席状況ですが、本日は検討会の小枝構成員より御欠席の御連絡をいただいております。また、福島邦博構成員につきましては、20~30分程度遅れて御参加いただく予定でございます。
続きまして、事務局を御紹介いたします。厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長、田原克志でございます。
○田原障害保健福祉部長 田原です。よろしくお願いいたします。
○矢田貝障害保健福祉部企画課長 司会進行を務めます、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課長、矢田貝でございます。
課長補佐の矢野好輝、平田菜摘でございます。
厚生労働省子ども家庭局母子保健課課長補佐、内山知佳でございます。
○内山母子保健課課長補佐 よろしくお願いいたします。
○矢田貝障害保健福祉部企画課長 文部科学省初等中等教育局特別支援教育課長、山田泰造でございます。
○山田特別支援教育課長(文部科学省) 山田です。よろしくお願いします。
○矢田貝障害保健福祉部企画課長 事務局からは以上でございます。
それでは、以降の進行は、座長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○中川座長 座長を務めております、九州大学耳鼻科の中川です。よろしくお願いします。
それでは、議事に入りたいと思います。
まず、議題1「難聴児の早期発見・早期療育推進のための基本方針(案)について」、事務局から説明をお願いします。事務局からの説明の後、基本方針案について議論いたします。よろしくお願いします。
○平田障害保健福祉部企画課課長補佐 厚生労働省障害保健福祉部企画課の平田です。どうぞよろしくお願いいたします。
では、まず、資料の構成を御説明させていただきます。今回は、資料1~4を御用意しておりまして、資料1は、基本方針案の概要となっております。こちらの御説明は割愛させていただきます。
資料2は、基本方針案の本文でございます。こちらの本文は、前回の検討会でお示しししました基本方針の素案を加筆・修正したものでございまして、前回検討会構成員の皆様にいただいた御意見、関係団体の皆様からいただいた御指摘と、令和3年12月10日から令和4年1月9日までの1か月間パブリックコメントも実施いたしました。こちらでお寄せいただいた御意見も踏まえ、修正を加えてございます。
資料3は、昨年12月から1か月間実施したパブリックコメントでいただいた御意見の概数をまとめたものでございます。この1か月の間に326件の御意見をいただきまして、うち20件は手話による意見提出をいただきました。幾つか内容を御紹介しておりますので資料3を御覧いただければと思いますが、早期発見に関する御意見は18件、保健・医療・福祉・教育の連携に関する御意見が97件、家族等支援に関する御意見が135件、関係機関における取組、人材育成、切れ目ない支援に関する御意見145件と、その他難聴児支援全般に関する御意見を300件超いただいております。1件の意見の中に複数の意見をいただいておりますので、分類の性質上、集計は計326件と異なるものとなっておりますが、このような分類とさせていただきました。
意見の中で多いものから幾つか例示として御紹介しておりますので簡単に御説明いたしますと、早期発見に関しては、検討会でも御意見がございました検査費用を公費で負担すべきといった御意見。連携に関しましては、当事者が連携体制に必ず参画するようにしてほしいということと、基本方針案で挙げている連携体制の参画者以外の方にも様々な主体の方に参画いただきたいという御意見。家族等支援に関しましては、こちらも検討会構成員の皆様からいただいた御意見と重複する部分がございますが、多様なロールモデルの存在、様々な療育方法について中立・公平に情報提供していただきたいといった御意見がございました。また、難聴児支援に携わる支援者の方々に、難聴に対する知識を身につけて手話の習得をしていただきたいであるとか、これも切れ目ない支援の一つでございますけれども、新スクでリファーにならなかった児の難聴の可能性について気づくことができるよう、関わる者については難聴児の行動特性について知る機会を持ってほしいといった御意見。全般に関する御意見としましては、療育方法に関する御意見もいただいておりますし、連携体制でもありました当事者参画についても御意見をいただいております。また、繰り返し御意見をいただいておりますが、軽中等度難聴児に関する経済的負担の部分も支援が必要ではないかという御意見と、難聴児支援に関しては、療育含め今後も調査研究が必要ではないかという御意見をいただいております。
なお、これまで全4回の検討会でいただきました御意見なども含めて、項目ごとに整理しておりますのが資料4となっております。
では、本日御議論いただきたい資料2の御説明に入らせていただきます。
1ページの「(1)目的、支援の必要性」において、難聴児の早期発見・早期療育が自立した生活を送るために言語獲得が重要であるという御意見を城間構成員からもいただいておりますので、追記させていただいております。
また、新生児聴覚検査でパスになった場合でも、検査以降に発現する進行性難聴に留意する必要があると神田構成員からも御意見をいただいており、パブリックコメントでも同趣旨の意見がございました。こちらも追記させていただいております。
また、難聴児の早期発見・早期療育の目的も後段に明記させていただいております。
次に、2ページの「保健、医療、福祉及び教育の連携」についてですが、先ほど御紹介しましたとおり、パブリックコメントで当事者団体の参画を重視すべきという御意見を大変多くいただきましたので、こちらももちろん最初から含まれている趣旨ではございますけれども、強調する趣旨で明記させていただいております。
次に「学校や障害児通所支援事業所等関係機関における取組の重要性」でございます。こちらは福島構成員やパブリックコメントにおいて、難聴児向け児童発達支援センター等の役割についても記載が必要ではないかと御意見をいただきました。それを踏まえまして、項目名に事業所のことを明記するとともに、専門性の向上について書かせていただいております。
また、酒井構成員からも難聴児支援における専門性の意味するところの定義を明記する必要があるのではないかと御指摘いただきましたので、脚注に、ここで指す専門性について追記させていただきました。
次に、3ページ「多様性と寛容性」ですけれども、難聴児の早期支援においては子どもの認知のみならず言語獲得という観点が重要であると御意見をいただきましたので、それを受けまして、言語は思考の礎にもなる旨追記させていただき、2の具体的な方策ですけれども、「(1)基本的な取組」で、前回検討会で新井構成員より、難聴児向け児童発達支援センターがない地域での乳幼児教育相談事業の重要性を鑑み、手厚い記載をという御意見をいただきましたので、そちらに対応しまして追記してございます。
4ページの「(2)地域の実情に応じた取組」について、リファーとなった子の追跡についてですけれども、都道府県の担当者の皆様に御意見をお伺いしましたところ、新生児聴覚検査結果自体は市区町村や関係機関で保有しているという状況でございますので、取組に向けて都道府県として実施できるのかやや戸惑いのお声もございましたことを受けて、市区町村や関係機関との連携が必要である旨を明記させていただきました。
また、関沢構成員から日ごろ受検率の向上に関して御指摘をいただいておりますので、「受検率の向上」の欄につきまして、「全ての新生児が新生児聴覚検査を受検できる体制の整備を目指し」と書かせていただいております。
次に、5ページ「マル2 地域における支援」については、小枝構成員、武居構成員より重複障害への対応について明記をとの御意見をいただきましたので、多様な関係者で連携して対応できる体制を整えていただくよう追記してございます。
「マル3 家族等に対する支援」のうち、交流機会の確保についてでございます。パブリックコメントにおきまして、聞こえるきょうだい児についても配慮してほしいとの御意見がございました。これを受けまして、家族同士の交流について「きょうだいを含めた」と追記させていただいております。
また、新井構成員より難聴児の周囲の方々の障害への理解を促す取組が必要との御意見をいただいておりますので、周囲の理解促進に関する取組を追記させていただいております。
また、この点については、インクルーシブ教育施策と併せて進める必要があるとの御意見がパブリックコメントでも寄せられましたので、こちらも追記してございます。
方策の最後「マル5 切れ目ない支援に向けた取組」でございますが、冒頭にもございました進行性難聴や後天性の難聴に関しまして、検査でパスになってもその後も難聴が疑われる子どもがいる場合に支援に結びつくように、各種検診等における取組を記載してございます。
また、渡辺構成員より、子育て世代包括支援センター等との連携が考えられるのではないかと御意見をいただきましたので、難聴児の家族等が相談先に迷うことがないよう、地域資源を踏まえた連携についても書かせていただきました。
「3.計画の作成に関する事項」ですが、「(3)障害者等の参加」について、当事者の意見を反映させるべきということを改めて明記させていただいたところでございます。
こうした追記・修正の詳細につきましては、資料3及び資料4を基にしておりますので、本日はこの資料も御参照いただきつつ、基本方針案について御意見いただきたく存じます。
なお、本日御欠席の小枝構成員より、今回お示ししております基本方針案について御意見をいただいておりますので、代読させていただきます。「1.総則」(2)の「早期発見の重要性」に、事故防止にもつながるため、安全な子育てにとって早期発見が重要であるといった趣旨の文言があるとよいのではないか。早く聴覚障害に気づくことで、思わぬ事故を予防できることも大きなメリットであると考えますとの御意見をいただいております。
内容の御説明は以上でございます。引き続き進行を座長にお願いいたします。
○中川座長 ありがとうございます。ただいま説明がありました基本方針案について、皆様から御質問・御意見がありましたらお願いします。御意見は可能な限り趣旨を明確に、具体的にいただきますと進行に助かりますので、よろしくお願いします。
なお、御発言の際は「手を挙げる」ボタンをクリックしてください。また、今回は検討会の最終回でもございますので、これまでの議論を踏まえて所感なども併せて発言いただいても構いません。
この検討会の目的を改めて申しますと、皆様御存じのように、この取組についてはかなりの地域差があって、地域資源も全く異なっています。まずは、この文書そのものが既にほぼ実行されている県から、全く手つかずの県までということです。そのために、この文書の立ち位置としては、それらの地方自治体に対して指針を示すこと。それに関して、基本理念を可能な限り入れておくことが2つの目的になります。そのために、方策その他については様々議論がありますでしょうけれども、その2点に焦点を合わせた議論になればと望んでおります。それでは、よろしくお願いします。
早速、進行として、いろいろ課題を挙げていただいていますので、全体からというとなかなか始まらないと思いますから、資料4の「(1)早期発見に係る課題等」について御発言がある構成員の先生方、よろしくお願いします。
関沢先生どうぞ。
○関沢構成員 私は唯一の産婦人科医ですので、受検率の向上について発言させていただきます。「全ての新生児が新生児聴覚検査を受検できる体制の整備を目指し」と御記載いただいてありがたく思っています。ただ、全体を見渡すとこのスクリーニングが全てのスタートであるにもかかわらず、この3行しかないのはいかがなものかなと思っています。
実際、公費負担している市区町村が全体で半分しかなくて、公費負担がない地域では受検率が10%以上低いという現実もありますので、親の経済状況にかかわらず検査を受検できるようになることが重要であると考えており、もう少し文言を足していただきたいと考えます。よろしくお願いいたします。
○中川座長 ありがとうございます。非常に重要なポイントだと思います。私のいる福岡県は、福岡市と北九州市がしているので、見かけ上6割をカバーしているのですけれども、現実は4分の1の市町村しかしていません。そういうところにおいては、先生のような発言が意味を持ってくると思います。
ほかにございませんでしょうか。渡辺先生どうぞ。
○渡辺構成員 取組の重要性に人工内耳のことが書いてあると思うのですが、私は小児科なので、例えば、難聴の子どもさんが言語の獲得に困難性があるという印象を持っておりまして、早期に人工内耳を行うことによって言語の発達に関して非常にメリットがあるというようなデータがあれば、つまり、早期に行うことによるメリットが分かるような記述は書けないのかなと思ったのですが、中川先生、いかがですか。
○中川座長 これに関しては、私の中で実は整理がほぼついていまして、まず大切なのは入り口だと思います。障害者権利条約あとは2000年にWHOで出ました共生社会の概念を示す国際生活機能分類、日本も障害者権利条約を2014年に批准しておりますので、これに沿っていかないといけない。障害者権利条約の第2条の言語に、音声、手話そのほか筆談の言語は同等であると書いてあるので、その中で、まずきちんと情報が提供され、養育者の権利、情報を知る権利、あとは選択の自由が保障された上で音声言語を選択した場合は、逆に今、先生がおっしゃられたように、人工内耳のメリットを生かした早期埋め込みとか両耳装用とか、そのあたりは積み重ねていかないといけないと思いますけれども、そういうことにつながっていけばと思います。
ただ、先ほど述べましたように、これは、まず自治体に対してこういうことを最低限してくれという文書と大きな理念になりますので、そういうことについてまでは深入りをしなかったというところで、学会レベルでは、まだ完全に決まっていませんけれども、8㎏以上になったらという文章などが新しく加わって、近日中に新しい小児人工内耳の基準が出てきますので、専門家の間での検討によってその部分は進んでいければと個人的には考えております。お答えになっていますでしょうか。
○渡辺構成員 ありがとうございます。どういうメリットがあるかが具体的に分かると、自治体も具体的に早期に行おうというインセンティブになるかなと思ってお聞きした次第です。ありがとうございました。
○中川座長 手話言語においても同様で、手話言語についても人工内耳についても両方とも早期発見は間違いなくメリットにつながります。そこを具体的に書くかどうかに関してはまた検討させてください。
ほかにございませんか。一言で言いますと、入り口さえちゃんとしていれば、それから先は高めていっていいというのが私個人の持論です。
では、次に資料4の「(2)保健・医療・福祉・教育の連携に係る課題等」について御意見のある構成員の先生方、よろしくお願いします。
今、いわゆるこども庁で話し合っているようなものとか、ここは結構大きなものを含んでいる部分ですけれども、いかがでしょうか。特に自治体の方々、ネウボラとか議論になっていると思います。あとは、協議会の在り方。
福島先生、お願いします。
○福島(邦)構成員 すみません、途中から参加させていただきました福島です。
全体を見渡しましてもになるのですけれども、抽象的な言い回しが多くなってきているかなと思いまして、例えば、こういう支援体制について整えるということは非常に重要だと思うのですが、具体的にどんな構成で、どういうふうに支援体制をつくって、協力体制をつくっていくかということになりますと、多分それぞれの自治体で自分のところでつくろうと思うと、本当にどこから手をつけていいのか分からないとなってしまうのではないかと危惧しております。そのためにも、例えば具体的な事例を調べるとか、こういうふうにやったらこんな組み方ができますという形の情報を、この会が終わった後も継続的に提供していただく体制を担保していただく必要があるのではないかと思いました。
そのためにも、例えば、厚生労働省がされておりますような調査研究やこういう内容を取り上げていただきまして、実際に実行しやすいような具体例をたくさん出していただきたいなと思いました。
以上です。
○中川座長 ありがとうございます。これは常に課題になるポイントだと思います。資料によると、これは母子保健課の資料で今日は提示していませんけれども、協議会をつくっている県はたしか3県くらいしかないんです。全てのところで協議会はできているのですけれども、一体何を目的にして、どうやっているのかがあまり具体的に見えてこないというのが実情です。それに関しては、個人的な経験からも温度差がありますので、そういう調査研究をやって全国をならしていく作業は非常に大切かと思います。
武居先生、よろしくお願いします。
○武居構成員 今の福島先生のお話とも関係しますし、先ほどの中川先生の御説明にも関係するのですが、どこの誰が新生児聴覚スクリーニングを受けるところはいいのですが、リファーになって、どこの誰に最終的に確定診断が出て、どこの誰が療育機関につながったのかをどこかで把握する、つまりデータの一元化をしないと、支援の体制や実際に保健師さんが行くなり、関係者が行くなり、聴覚障害の当事者がそこでいろいろな話をするなりができないのではないかと思います。そういう意味では、入り口部分のデータの一元化は必要ではないかと思いますし、それができて初めて支援体制はスタートできると思うので、その記述をどこかに入れられないかなと思って発言しました。
以上です。
○中川座長 ありがとうございます。データの一元化、福岡県でも取り組んでいますけれども、まだ始まったばかりでなかなかというのが現状です。
先進的な取り組みをしているということで、岡山県と長崎県の事例について聞きたいのですけれども、まず、神田先生よろしいですか。長崎県で一元化はどのように取り組んでおられますか。
○神田構成員 新スクは、2003年から公費補助を得てスタートして、今90~100%ぐらいなのですけれども、県が全部一元化、資料・データをまとめていまして、協議会が年に1回ありますが、その協議会の中に県の医師会長や産婦人科の教授や医会長、小児科の教授、耳鼻科の教授、いろいろな療育関係の方々、言語聴覚士の協会の人、現場の人たちと行政の人たちが実際に会って会議して、1年間のデータをみんなで洗い直しして、改善点はないかを毎年毎年ディスカッションする場をつくっています。産婦人科から県にデータが集まっていくという形になっています。
以上です。
○中川座長 ありがとうございます。うちの県でも問題になったのですけれども、データの一元化をやるための行政の中に事務担当の方がおられるということですか。結構いい作業になると思いますが。
○神田構成員 データを管理する子ども家庭課の方々も、中心に言語聴覚士の方がいるんです。要するに、聴覚や言語に詳しい人がデータ管理の中心にいるので、すごく進みやすくなってきたかなというのはあります。当然、そのお子さんがどうなったというのは個人情報もあるので、なかなか県だけでは把握しにくい。4つの精密医療機関の単位で把握してデータを集めていることになります。
○中川座長 ありがとうございます。
それでは、福島先生、岡山県での一元化はいかがでしょう。
○福島(邦)構成員 岡山県でも、新生児聴覚スクリーニングに関してのみいえば、新生児聴覚スクリーニングの同意書を取った時点で、そこからデータの一元化というのはスタートしていまして、岡山県で全て処理するようになっているかと思います。
この場合に問題になりますのが、例えば、急いで処理しないといけないデータ、実際にスクリーニング後に病院に行っていないお子さんを把握して受診干渉するというのは、少なくとも数か月のうちには動かないといけない話になってくるのですけれども、そういうデータと、最終的にスクリーニング結果がどうなって、その子がどういう療育につながっているかを評価するのは、1年、2年単位の追跡がどうしても必要になってくるので、データ処理の時間差がありまして、例えば、自動的にリファーの結果が出たら岡山県にデータが行くのだけれども、それと同時にリファーの結果は保健所にも回るという2系統のデータの回り方をするようにもしていますので、処理の使い方によっていろいろな系統の情報の流し方をしないといけないかなと思います。話が別のところに飛んでしまいましたけれども、一応岡山県ではそのようにやっています。
○中川座長 県の職員の方がやっておられるということですね。
○福島(邦)構成員 そうです、県職員がされています。
○中川座長 ありがとうございます。
新井先生、このことについて秋田県の状況は御存じですか。
○新井構成員 新スクの協議会は、新スクの事業が始まってから所管している健康福祉部の保健・疾病対策課(母子保健班)が所管してデータを集めていて、協議会の中で資料などを得ておりますので、そういった形で県の行政で秋田県の場合はデータを集約していると認識しております。
逆に1点確認させていただきたいのですけれども、今、協議会の話題をしておりますけれども、基本方針の中で「協議会」という言葉が2回くらい出てきているように思いまして、今話をしているのは、基本方針の中に出ている新生児聴覚検査に係る協議会のことを話しているということと、資料4にある協議会というのは、基本方針でいけば5ページの地域における協議会のことを指しているのかなと思いまして、「協議会」という言葉は、この方針で2種類示しているという理解でよろしいかどうか確認させていただきたいと思います。
○中川座長 事務局からどうぞ。
○平田障害保健福祉部企画課課長補佐 こちらの協議会は、厳密には厚生労働省から2種類予算事業の形で支援させていただいておりますが、必ずしも2種類に分けなければいけないと指定をしているわけではなく、現場では柔軟な運用がなされていると思います。構成員の皆様として想定されるところは、職種としてもかぶる部分は多少ございますので、地域資源に応じた協議会も設置していただいている状況かと認識しております。
以上です。
○中川座長 ありがとうございます。まさに新井構成員の御指摘は福岡でも起こっていまして、先々週に新スクの協議会をやって、再来週に中核事業の協議会をやって、ただ、メンバーは半分くらい重なっているのですけれども、私個人としては一緒にやってくれないかなと思っているのですが、所轄が違うと言われてしまって、なかなか実現しないところではあります。だけれども、大切な点なので意識を常に持って、できれば同じ広域のそういうものができれば一番いいのではないかと私個人も考えております。ありがとうございます。
それでは、静岡県はいかがでしょうか。一元化の話と協議会の話です。
○河本構成員 データの一元化につきましては、静岡県では受診率等の数値データにつきましては、市町から1年に1回データを収集している状況です。ですので、個人のリファーといったデータについては県では収集しておりません。ただ、支援センターとしては受診干渉等をするためにも、個々のデータを集約したいという思いがあって検討しているところですけれども、個人情報の関係からなかなか難航しているという状況です。
以上です。
○中川座長 ありがとうございました。個人情報の壁が一つあるということですね。それは常につきまとうものかと思います。
一元化というのは、私も実際に関わって思うのですけれども、なかなか手間がかかるもので、今、長崎、岡山は行政の方がやられていると言われましたけれども、多分物すごく優秀な方がおられるか、その中でやっていける何か仕組みをつくっておられるのか。私は福岡県の方と話していても到底無理だという感じで、私の場合は、その分を医師会に外部委託している形で乗り切っているようなところです。
武居先生も関わっておられますね。いかがでしょうか。
○武居構成員 渡辺先生が手を挙げていらっしゃいますので、渡辺先生を先に。
○中川座長 分かりました。では、渡辺先生、先にお願いします。
○渡辺構成員 私は一元化の話ではないので、武居先生を先に済ませされてからのほうがいいかと思います。
○中川座長 分かりました。では、武居先生、お願いします。
○武居構成員 すみません。石川県は人数が少ないので、一元化が比較的しやすい、秋田にも同じような状況があるかと思うのですけれども、それによって誰がどこまで進んでいるのかというのがよく分かりますし、先ほどの受診干渉という話もできるので、私はこの機会に必要かなと思います。ただし、県の規模によっては、例えば、東京や大阪のような大都市の場合には、いわゆる都道府県レベルでそれを把握するのが非常に難しいかもしれませんので、一元化のありさまはいろいろあってもいいのかなと思いますが、データを一元化することで支援体制をより充実していくことを目指しましょうというのは、どこかに入れてもいいのかなと思いました。
以上です。
○中川座長 ありがとうございます。
では、渡辺先生、よろしくお願いします。
○渡辺構成員 私は、一元化の話ではなくて福島先生が一番最初にお話しになられたことに関係するのですが、一番最初に座長が、今回の基本方針を全国に提示するというのは、全国の自治体の温度差を少なくしたいという目的があるとおっしゃったと思います。その温度差の中の低い温度の自治体にしてみると、この文書がぽっと来ただけでどういうことをしていいかという具体的なものが分かりにくいのではないかという印象があります。
私の関係しているところで言うと、例えば、今コロナウイルスがはやって文科省が学校における感染対策マニュアルを出すのですけれども、学校の先生方はそれを読んだだけでは何をしていいか分からないということで、今、事例集をつくっているわけです。
今回の場合は基本方針が出るわけですが、もし可能であれば、後ろのほうにリファレンスか参考という形で、今日御参加されている先生方、県で言えば岡山や長崎や福島や秋田、ここに参加すると皆さんが先にやっておられることはよく分かるのですけれども、ほかの自治体の方々は、どこにどういう情報があるかさえ分からないのではないかと思うので、できればどういうところが先進的にやっていて、どこにアクセスすればどういう情報が入るかを基本方針の後ろに参考としてでもつけていただければ、今から取りかかろうというところが少しでも手を出しやすくなるのではないかと思うのですけれども、これは基本方針だから書きにくいことなのかなともちょっと思ったのですが、座長いかがでしょうか。
○中川座長 文書的にいかがでしょうか。
○平田障害保健福祉部企画課課長補佐 皆様、御意見をいただきまして大変ありがとうございます。
基本方針を出したところで事例がないと参考にならないというのは御指摘のとおりでございまして、福島先生などにも御協力いただいて、厚生労働省でも昨年度、各地域でどのような難聴児支援が行われているかを5~6件でまだ数は少ないのですけれども、実態としてヒアリングなどさせていただいた調査研究がございます。こちらの基本方針を都道府県に通知する際には、そういった事例を併せて御紹介したいと思いますし、これから基本方針を反映した自治体の取組が進んでいった場合には、そちらの状況も適宜フォローアップしながら情報共有することで、皆様の自治体の取組を促進していくような形をとっていきたいと考えてございます。
また、情報の一元化についですけれども、この検討会においても御指摘をたびたびいただいておりまして、確かにおっしゃるとおり県の希望に応じてなかなか難しいところもあろうかと思いますし、そもそも難聴児支援をこれから始めようという地域もあるかもしれません。そういった状況の中で、一元化という高めのハードルを設定する前に協議会を設置していただいて、基本方針の5ページ目「協議会の設置」にも記載してございますが、関係機関で顔の見える関係を構築していただいて、日常的な連携、情報交換を行い、連携による支援の必要性について、個々の難聴児についても、その難聴児の課題を認識・共有し、関係を円滑にしていく最初のプロセスをまず踏んでいただきたいということで基本方針には書かせていただいております。ゆくゆくの目標として、中長期的には一元化なども検討させていただきたいと思いますが、どういった形でお示しできるかは今後、御相談させていただきたいと思います。
以上です。
○中川座長 ありがとうございます。今回示しませんでしたけれども、埼玉県は始めたばかりで、いろいろぶつかっているところではないかと思います。うちの福岡と同じような状況ではないかと思います。そういうところの苦労話や、私の場合は医師会が非常に協力的でしたので、そこで乗り切ってきましたけれども、個人情報の扱いなどなかなか難しいところがあって、徐々に各県の事情に合わせて、熱心な先生が実は産科側だったり、小児科だったり、耳鼻科が遅れていたり様々な差もありますから、そこを渡辺先生が言われたように、何らかの事例という形で示すことができたらと思います。ただ、この文書は基本的な文書ですので、今後の調査研究や様々な機会を利用して、様々といっても遠くの話ではなくて近々という意味ですけれども、見せていけたらいいのではないかと個人的には考えております。ありがとうございます。
ほかに、この保健・医療・福祉・教育の連携に係る課題についてございませんか。よろしいですか。
それでは、時間もありますので、次に「(3)家族等支援に係る課題等」。これは結構金銭的なことなどが絡んでくるので難しいところですけれども、この点に関しての議論を深めたいと思いますが、何かございませんか。
酒井先生。
○酒井構成員 全般的に所感から申し上げると、本検討会で私は繰り返し手話に関する明記の必要性を訴えて来たにもかかわらず、それがほとんど反映されていません。この基本方針案を検索してみると明らかなように、「手話」が明記されているのは括弧内と注記だけの2か所で、しかも音声と併記される形で載っているという極めて後退した内容になっておりまして、このまま公にするには大きな問題があると思います。実際、パブリックコメントを見ていただいても、手話に関して相当数の御意見をいただいています。特に家族等支援に関して申し上げると、「手話に関する情報提供をするようにしてほしい」、「地域の連携体制・情報共有には…手話の専門家…を加えて欲しい」といった意見が寄せられているように、手話の習得に関するサポートは本当に必須です。ですから、音声に対する同列の支援ではなく、手話に特化した支援学校の教員の拡充なども含めて明記しないと、先進国に比べて全く劣った内容と言わざるを得ないわけです。
それから、座長が最初に障害者権利条約に言及して、それが出発点になるとおっしゃったのは、そのとおりだと思います。例えば、障害者権利条約の第24条の「教育」という項目を、簡単にネット上で検索できますので御覧ください。それによりますと、第3項目の(b)に「手話の習得及び聾社会の言語的な同一性の促進を容易にすること」と明記されておりまして、これは音声と並列されているものではないのです。ですから、聴覚の障害なのだから音声のケアをすればよいということではありません。聴覚障害はあまりにも個人差が大きいですから、患者自身に比較すべき十全な言語を持たない状況では、自分で「言語理解ができるかどうか」を音声のみで判断することは危険なのです。ですから、聴覚の能力に関係なく身につけられる手話言語を基準にして、自分がどの程度の言語理解なのかを客観的に理解できるような支援体制が必要です。それが国際的に規定されている聴覚障害者・難聴児に対する権利なのです。それは音声によって代替される言語能力とは質的に異なるものです。ですから、そこは厚生労働省の方々にもぜひ御理解いただいて、はっきりした項目をつけ加えることをご検討ください。私が今のこの場でこのように申し上げて、もし何ら項目が追加されないのであれば、黙殺されたものと解して今後の活動を行ってまいります。
基本方針にどうして音声との切り分けをはっきり打ち出すことができないのかが問題です。例えば、資料4の4ページ、下から4行目にあるように、「手話は言語であることを明記し、全ての難聴児に第一言語として獲得し、家族や関係者等が手話を習得できるような環境を整備すべき」とのコメントがあります。この方針を打ち出すことが、早期療育・推進を全国的に展開していく上でまず最初の礎になるはずなのですが、その点が、この最終段階の検討会でも何ら強調されていないことに対して、私は非常に残念に思います。
以上です。
○中川座長 ありがとうございます。教育的な面、まさにおっしゃるとおりです。社会資源が足りていないというところですけれども、突然振って申し訳ないですが、武居先生、これに関してコメントいただけますか。
○武居構成員 音声環境を整えたり、人工内耳やそれに関するハビリテーションというのは誰がどこで支援するかというのがイメージしやすいですし、そういうところは明記しなくてもある程度分かるのですけれども、手話に関しては各自治体のどの機関がどんな形で支援できるのかというのが見えないです。なので、手話に関する記述が少ないというのは全体を通してありますので、それは何とかしてほしいということはありますけれども、一方で、先ほどいろいろな事例を後ろにつけたらいいのではないかというお話がありましたが、手話獲得を支援するための様々な取組もいろいろなところで始まりつつありますので、そういう事例を後ろに載せるなり、情報提供するなりが必要ではないかと思いました。
あまり答えになっていませんが、以上です。
○中川座長 ありがとうございます。答えになっていると思います。例えば、福岡でしたら久留米地区でいろいろな取組が行われていて、まだまだ始まったばかりというのが私の印象ではあります。
この中にも出ていますけれども、私が診ている子どもたちにおいても、成人の当事者に会う機会がなかなか得られていない。どこに行ったらいいのか。今はコロナ禍というのもあるのですけれども、ある程度大きくなったら聴覚障害者協会、ろうあ連盟の支部のようなところに出入りしたりいろいろしているのですけれども、早期においてきちんとしたものができているかどうかは疑問だと私も思います。一番最初に私が言いましたように、並列してきちんと示すことが物すごく大切なことだと思いますので、並列して示したら、手話を積極的に考えて、さあどうするのというときに、今は教育機関に投げられているのが実情です。そのあたり大きな制度的な問題・課題もあるだろうとは個人的にも感じています。理想と現実がなかなか合ってこないなと感じている次第です。
今、自治体が取り組むことで、どこまで書き込めるかに関しては制約はあるのですけれども、今後そういうところについても取り組んでいかないといけないですし、何らかのきっかけになるような文書があってもいいのかなとは思いますけれども、その点に関しては全面的に酒井先生の御期待に応えているとは思えないですが、方向性として私もそうだと考えています。ありがとうございます。
ほかにございませんか。福島先生、どうぞ。
○福島(朗)構成員 島根県の福島と申します。
家族支援のことで、この会でも何度か協議に挙がっていましたけれども、先ほどの話題とも絡むかもしれませんが、並列な公平的な情報提供の在り方について、私も、聾学校の乳幼児教育相談の立場で情報提供等してきましたけれども、県によっては難聴児通園施設がなくて聾学校しかない場合に、親御さんもいろいろ迷われたりするところもございます。ここでも最初の基本方針案で、難聴児の子育てに関する様々な情報提供のための教材を作成・配付することと出ていますが、例えば一例として、これから先の話になるのですけれども、今、公益財団法人聴覚障害者教育福祉協会という組織が東京にありますが、国立特別支援教育総合研究所など関係者でテキストや教材等を作成して、先ほどの聴覚障害者教育福祉協会で元締めとしてデータ管理をし、その下部組織的なものが各都道府県に担当者を割り振るなどして提供できるといいのかなと、この会に出ていて思ってきたことを所感として申し上げます。
以上です。
○中川座長 ありがとうございます。組織的な話ですよね。
文部科学省の初等中等教育局から御参加されていると思いますけれども、今のことについて何か御発言をお願いできますか。
○山田特別支援教育課長(文部科学省) 特別支援教育課長の山田と申します。
今もお話がありましたけれども、聴覚障害の特別支援学校において、今かなり積極的に地域からも頼られて、様々な早期相談、乳幼児相談を展開しております。学校に入ってからも、手話もそうですし、様々なコミュニケーション手段を使いながら、授業であいうえおや1+1から実施されているという状況で、先生方の力量と努力に頼っている部分があるというのは正直なところでございますので、我々もこれからどういった形でそれを支援していけるかという大きな宿題をいただいていると認識しております。
以上です。
○中川座長 ありがとうございました。
それでは、福島邦博先生、お願いします。
○福島(邦)構成員 また話題を変えて申し訳ないのですけれども、家族支援に関して意見を言わせていただきます。
今の話の流れからすると、どうしても早期発見後の家族支援が話題の中心になってくるのですけれども、次に出てくる切れ目ない支援の家族のニーズというのも、お子さんがどんどん成長してくると変わってくる側面があります。そのためには、伴走支援というか変化してくるニーズに合わせて、どういう支援が適切かという提案をしてくれる人あるいは施設あるいは組織が必要になってくるのではないでしょうかということを提案させていただきたいと思います。
以上です。
○中川座長 ありがとうございました。いわゆるネウボラのような考え方で伴走するということだろうと思います。これは話としてはかなり大きな問題になってきて、私はこども庁の議連にも参加しておりますけれども、そういう伴走支援というのは各自治体によってかなり差があって、しかも、すごく労力がかかる。ただ、全員にせず、注目した人のみにすれば何とかなるんだという会津の町の話が出ていましたけれども、そのとおりです。この文書にまで書き込めるかどうかですけれども、それは大切な視点だと私も考えます。ありがとうございます。
ほかにございませんか。家族支援に関わることになると思います。ここは割と深い部分ではありますが。
城間先生、言語聴覚士の立場から見て、家族支援は、いわゆる教育界から見たものと、言語聴覚士サイドから見たものとは若干違うと思うのですけれども、いかがでしょうか。
○城間構成員 切れ目ない支援という次の(4)で申し上げようかなとも思ったのですけれども、先ほどから話題になっているデータの一元化ですが、全体において早期支援をどうするか、特に新スクですけれども、伴走支援にも関わってくるのですが、データの一元化を入り口のところでしました、でも、その後のフォローがどうなっているか、どこでどんなフォローをしているかが見えない。では、例えば、手話を導入しました、あるいは人工内耳で早期支援を始めました、どちらにしてもその後がどうなっているかの検証はないので、検証システムを何らかの方法で構築しないと、切れ目ない支援にもつながらないし、伴走支援をどうしていくのかが見えにくいかなと思っています。
先ほど、中川先生から調査研究の話がありましたけれども、どの時点でするか分からないのですが、就学では就学支援として言語コミュニケーション、社会性、全体的な発達の評価をしていると思いますけれども、支援も含めた形で折々検証して、今必要な支援は何か、どう変わってきたかということでニーズも変わってきますので、それを検証するシステムがあったほうがいいのかなと、すぐにはできないかもしれませんが、どこかで文言を加えていただければいいかなと思っています。
言語聴覚士として難聴児には長い期間関わるわけです。病院に来るので、特に補聴器、人工内耳を装用している軽度・中等度難聴の子どもたちは、言語聴覚士としては成人になった以降も関わる場合が多くて、それぞれの時期でかなりニーズが違います。お母さんたちからいろいろな相談を受けるのが、子どもの発達に応じた内容でまた違うわけなので、教育施設とは違う支援の在り方がST(言語聴覚士)には求められているなと考えています。ですから、言語コミュニケーションだけではなくて、先ほどの専門性のところもありましたけれども、心理的な発達や社会性の発達なども含めて支援しているつもりですが、それが体制化されていないというのが問題ではないかと思っています。ちょっとずれているかもしれませんが、言語聴覚士としてはそのように思っております。
以上です。
○中川座長 ありがとうございます。
施設の立場からと現場にしっかり入っておられる問田先生、このあたり御意見いただけますか。
○問田構成員 どこに最初につながるかがすごく大きく関係していると思っていて、どなたに相談すればいいのかが明確になっていないといけないのではないかといつも思っています。
幸い岡山県は一元化もある程度できていると言われているし、療育につながった後でも聾学校の乳幼児教室で、岡山かなりや学園で連携して、その先も見ていくシステムをこれからもっともっと強化していこうと言っていただいているのですけれども、全国盲ろう難聴児施設協議会でも地域差が物すごくあると言われているので、この方針を出されたときに、どういう流れで保護者の方々がどこにつながっていくのかを明確にしてもらうことが行政に伝わればいいなと思いました。
以上です。
○中川座長 貴重な御意見ありがとうございました。
では、教育の立場からということで新井先生、よろしいですか。
○新井構成員 家族支援、切れ目ない支援に関しては、秋田の場合は以前報告させていただいたとおり、私が勤務している聴覚支援学校の乳幼児教育相談と発達支援センターオリブ園を保護者が選んで、どちらに入っても双方の場所を選びながら、そして就学の段階もオリブ園のフォローもあれば本校の支援もあるということで、切れ目なく就学後もずっと追っていければいいなと思っています。
ただ、全ての難聴のお子さんを追えているかというと、そうでもないと担当からは聞いています。例えば、一側性のお子さんなどは本校を頼ってくることはなかなかないということもありますし、年齢が上がって高校生などになってくると、本校とのつながりが薄くなるということも聞いておりますので、この後も生涯にわたってつながっていけるように本校も携わっていけるようにしていきたいと、本校の課題としても考えているところです。
以上です。
○中川座長 ありがとうございます。
ちょっと話はずれますけれども、例えば、軽中等度などは先生のところはどうされておられますか。
○新井構成員 うちの場合ですと、その辺は耳鼻科の先生からの紹介次第という形で、耳鼻科の先生が聴覚支援学校の相談を受けなさいと紹介されたケースは来ますけれども、そうでないケースは、なかなかつながらないで地域の学校にいるのではないかと思っております。
○中川座長 なるほど。では、新スクで引っかかった軽中等度の方々は、最初は一応、先生のところに行かれるのですか。
○新井構成員 それも耳鼻科の先生からの紹介で、本校もしくはオリブ園のどちらかに紹介されてくるということですので、その側面については耳鼻科の先生の判断にお願いしているという状況です。
○中川座長 分かりました。課題だと思います。ありがとうございます。
城間先生、軽中等度の子どもたちをどうすればいいかというところで御意見があったらお願いします。
○城間構成員 軽中等度難聴のお子さんたちに関しては、学校によってあるいは地域によって、特別支援学校を訪ねることもあるかと思いますけれども、現実にはそうでない場合が多いのではないかと思います。そうすると医療にかかってくることが多いので、言語聴覚士の役割が大きいかと思いますけれども、そこで先ほどからお話があります、情報をどのように提供するかが大きいかなと思います。
軽中等度難聴のお子さんは、周りもよく難聴のことが理解できていないし、当事者もどの程度よく聞こえないのかがよく分からない、何に困っているかもよく分からないなどもあって高度難聴とはまた別の問題があるかなと思いますので、その辺はもしかしたら医療が中心になるかもしれませんけれども、社会に対する啓蒙もまた必要ではないかと思います。
○中川座長 ありがとうございます。
軽中等度難聴なので振ってしまいましたけれども、またネウボラというか、ずっと追いかけていくという支援で、今日は小枝先生がおられませんので、渡辺先生、小児科の立場から、障害を持つお子さんは当然いろいろなお子さんがおられると思うのですけれども、今議論しているような難聴は若干特殊なところがあるなと、うちの大賀教授と話していても感じるのですけれども、小児科医として、医師会としてでもいいのですが、こういうシステムをどのようにしたらいいか。小児科のほうが先進的だと思いますので、何か教えていただけるものがあればお願いしたいのですが。
○渡辺構成員 自治体の規模、レベルによって対応が全然変わってくるのではないかと思います。つまり、ネウボラという名前をつけて自治体で動いているところはありますけれども、子育て世代包括支援センターがほとんどカバーしているのが一般的だと思います。内容がばらばらと言っては失礼ですけれども、先ほど難聴児の対応に温度差があるとおっしゃったと思いますが、子育て世代包括支援センターの活動内容も結構自治体ごとに差が大きいです。大きな自治体であれば専門医も大体おられると思うし、マンパワーもありますので、恐らく障害を持たれた方、つまり難聴の方々の支援もフォローアップも十分できるだろうと思います。ただ、そうではない自治体もありまして、それが横の連携が十分取れている段階ではないので、画一的にこれができるぞというのが自治体でもなかなか言えないのではないかという印象があります。
小児科の医者としては、見つけたときに早く何とかしたいというのが本音でございまして、それが先ほどいろいろ議論がございました人工内耳がいいのか手話がいいのかは別にして、子どもが早く社会的に対応できる能力を身につけてほしいというのが小児科の考えでございまして、そういう支援を早くしたい、それも効率よくやりたいという考えはありますが、先ほど申し上げたようなことから、やりたくてもできないところもある。県が地域の都市や市町を支援するところもあれば、県自体にまだそこまで余裕がないところもありますので、理想と現実に若干格差があるというのが私の印象です。
少なくとも医師会の立場で申し上げますと、ネウボラという表現がいいのか、子育て世代包括支援センターと言うのがいいのか分かりませんが、そのレベルを均等にすることがまず私どもが考えていることであって、できるだけ差異がないように、どこでも同じような支援を受けられるようなシステムをつくり、そこにできるだけ多くの機能を持たせていただきたいと考えております。
以上です。
○中川座長 ありがとうございます。非常に参考になると思います。ネウボラそのもの含めて子ども庁の設立、そういうところの政治的な絡みにも係ってくるところで、それに関しては難聴も含まれてくるのではないかと私個人は考えています。省庁を越えて、しかも世代を超えて、様々追いかけていかないといけないところに関しては全く同じ課題を抱えていて、県レベルでは無理だというところもあって、今は区市町村にその取組が任されてしまっている。そうすると、小さな自治体はどうするんだとか、この問題を掘り下げていくと、実はかなり重たい問題ではないかと私個人は認識しているところです。ありがとうございます。
先ほども既に話が入っていましたけれども、関係機関における取組、人材育成、切れ目ない支援に関する課題で御意見のある先生、よろしくお願いします。結構ボリュームがありますけれども。それともある程度ディスカッションしてしまいましたか。
問田先生からお願いします。
○問田構成員 専門性のところなのですけれども、確かに専門性はすごく分かりやすくまとめて書かれてあるなと思うのですが、特にその上も含めて特別支援学校の先生の転勤はなるべく配慮してほしいとか、こういうところは手話をちゃんと学んだ方に入ってほしいということはすごく大事なことだと思うのですけれども、先ほどから話に出ているような軽中等度のお子さんは地域の通常学級に入られることが多くて、そういうところに入った先生方全てに専門性を求めるのはすごく大変なことだし、行政としても引いてしまうところがあるのではないかと思うので、どこに場所に入れればいいのか私も判断がつかないのですけれども、もうちょっと理解してもらえるようなシステムづくりという内容がどこに入ればいいなと感じました。
以上です。
○中川座長 ありがとうございます。連携のところにいろいろ入ってはいるのですけれども、私も実は感じることがあって、軽中等度の子がいたときに通常は通常学級に在籍させるのですけれども、通級で支援するのか、教育相談で支援するのか、支援したところで結局はお客さんになっている現実があったり、なかなか難しいところがあると思います。ほかの四肢障害などのお子さんたちは逆に目につくので、先生たちはケアしてくれるのですけれども、難聴児さんは黙って引っ込み思案なので、ちゃんとやっているねと思われて支援を受けられないケースもしばしばあるんですよね。特別支援学校だったらそういうことはないのだけれども、ただ、音声を主体に使っているお子さんたちを、支援学校も4年生ぐらいからは高速手話になってきますので、そこにその子たちを入れるのも違うなというところもあるけれども、いわゆる同障者としての集まりには参加させるようにはしています。ほかのものよりも物すごく地域差があると思いますので、その辺は一応文章としては書き込んでいるつもりですが、御意見ありがとうございました。その辺がなかなか明確でないということだと思います。
渡辺先生、お願いします。
○渡辺構成員 本文6ページのインクルーシブ教育のシステムの下に、「特別支援教育の理解の促進」という文言を加えていただきましたことに対して、まず感謝したいと思います。というのは、(4)に関係することで言うと、人材育成に入るのか、切れ目ない支援に入るのか分からないですが、本文にも書かれてありますように、合理的配慮を含めて対応が必要になってくることになりますと、特別支援学校や特定の専門機関にかかってフォローされている子どもさんだけではなくて、今、通級という言葉も出ましたが、通級ではなくて一般のクラスに入る子どもも当然出てくるし、それが学校でなくて幼稚園や保育所のレベルから入ってくる可能性は十分あるわけです。人材育成は、本文にはこれだけで差し当たりいいとは思いますけれども、いろいろな障害を持ってこられる方が通常の幼稚園・保育所に入ってこられるということを全ての保育士や管理者、教職員の先生方に理解しておいていただきたいという希望がございます。本文で差し当たり十分だと思うのですけれども、関係者の方々はそれを十分理解していただいて、そのような広報もしくは啓発に努めていただきたいと思います。
以上です。
○中川座長 ありがとうございました。学校の取組ということで、また振って申し訳ないのですけれども、文科省の特別支援からこの件に関して御発言いただけますか。
○山田特別支援教育課長(文部科学省) ありがとうございます。特別支援教育課長でございます。
聴覚障害の特別支援教育を受けるお子さん、必ずしもほかの障害者と比べても多いわけではないのですけれども、だからこそというのもありまして、先ほどもお話も出ましたが、見た目でなかなか分かりにくい部分もあるので、渡辺先生からもお話をいただきましたけれども、幅広く特別支援学校や難聴の通級の担任は当然ですが、それ以外の先生も含めて、こういった周知の取組は非常に難しいけれども大事なことだと理解してございます。
○中川座長 今後の施策として、何か省として考えられていることはございますか。
○山田特別支援教育課長(文部科学省) 今、教員免許制度があるのですけれども、特別支援学校は独立の免許があるのですが、通常の小中学校、高校の免許の中にも新たに1単位障害について学びましょうというのを、今までなかったのですが足しました。その中で、様々な障害種の様々な支援が必要な事項について、各大学で盛り込んでいただけるといいなということで、今、取組を進めているところでございます。
○中川座長 現場としてはいかがでしょうか。大学教育だけで全てが済まない面があるので、先ほど言いましたように、専門性の維持という意味において、先生の異動は現場では結構大きい問題になっているのですが、そのあたりは何かお考えありますか。特別支援学校は人がいるから何とかなっていると思うのですが。
○山田特別支援教育課長(文部科学省) おっしゃるとおりで、特別支援学校も学校ですけれども、県に1つや2つしかなくて、教員の流動性をある程度確保していくこともまた重要な課題なので、人事に苦労していると聞いております。その中でも、先ほどおっしゃったような難聴の特別支援学級や通級の指導などの人事と併せながら、各県今、工夫をしながらやっていらっしゃるのが実情でございまして、ほかの障害種でも同じなのですけれども、こういう人事をやったら全てが解決するというボタンはなかなかないので、ほかの障害種も含めて特別支援学校や特別支援学級、通級の人事と併せながら、悩みながら回していらっしゃるのが実情だと思っております。
○中川座長 ありがとうございます。
神田先生が手を挙げておられますけれども教育問題なので、まず新井先生、この件についてお願いします。
○新井構成員 聾学校、聴覚支援学校に来た子はしっかり支援を受けられますけれども、通常の小学校・中学校で学んでいる軽中等度の難聴のお子さんに本当に必要な支援が届いているのかは正直心配なところがあります。今は、聴覚支援学校におりますので、その立場からできることは、聴覚支援学校では必要があればいつでも通常の学校で学んでいる聞こえにくいお子さんに支援しますよ、聞こえにくい方がどんな聞こえ方しているのか、学校生活でどんな困り事があるのかをいつでも支援しますよという形で、聴覚支援学校から発信を続ける、それがしっかり地域の子どもたち、地域の先生たちに届けばいいなと、県全体の聞こえにくいお子さんたちに何とかつながりたい、発信をこれからも続けていきたいなと考えているところです。
○中川座長 ありがとうございます。
武居先生、いかがでしょうか。
○武居構成員 先生方の専門性をどう担保していくかは非常に難しくて、異動の問題も非常に大きいのですが、それを難しくしている一つの原因として、聾学校の多くは県立なのですけれども難聴学級は市町村立が多いので、県立と市町村立間の異動が比較的円滑に行われている県もあるのですが、多くは県立は県で回し、市立は市で回すという人事を行っているために、聾学校の先生が難聴学級に出て、難聴学級の先生が聾学校にまた来てというような人事がなかなかしにくいことが難しさの原因かと思います。でも、その部分さえ何とかなれば、1県1校の聾学校であっても、難聴学級と聾学校の人事異動が可能であれば専門性の維持はある程度担保できますし、難聴学級の専門性の維持も一定程度担保できるかと思いますので、そのやりようを考えられたらいいかなと思いました。
○中川座長 ありがとうございます。
松江の福島先生、よろしくお願いします。
○福島(朗)構成員 島根県ですけれども、本校は通級指導が通級による加配でありますので、町聾学校であれば県内東部の難聴のお子さんについては聾学校で通級指導を行っていますし、教室相談も行っていますので、先ほどの新井先生のように年度当初に難聴学級や通級指導のお子さんの教育相談の依頼、文書を出して合同学習を聾学校で行うとか、難聴学級に巡回に行くとか、いろいろニーズを保護者さんと学校の管理職にも確認の上で送ってもらうようにしています。あと、本校で公開研修会等情報提供も行って、できるだけ難聴の疑似体験も春休みで行うなど、いろいろできるだけ情報の共有ができるように心がけているところです。武居先生がおっしゃっていたように、難聴学級の先生方というのは市町で1年ごとに代わられることが多くて、島根県の場合ですけれども、専門性や子どもたちの難聴の特性に応じた自立活動など、その辺の積み上げが非常に難しいということでは苦労しております。
また別の話題になるのですが、基本方針の7ページに「聴覚特別支援学校等の乳幼児教育相談の支援を都道府県内のどの地域でも受けられるよう、人的・物理的環境を整備し」とか、資料4の(4)人材育成の最初にも「十分な教員を配置してほしい」といった文言も出ております。このことについてですが、実際の現場の立場として、ちょっと矛盾を感じるところもあります。聾学校で日本語の力をつけて、インクルーシブの流れで地域の小中学校に出ていくところもかなり多いと思います。特に、小規模の聾学校においては、乳幼児教育相談についてはそういう加配がございません。0歳から2歳の厚労省の管轄になるところの課題があるかと思いますが、恐らく大部分の聾学校は、教員の定数内による運用が大多数ではないかと思います。そうすると、小さな聾学校ですと学級がどんどん減少すると、どうしても教員定数も削られるという課題があって、センター的機能の能力が落ちます。ですから、都道府県内のどの地域でも、あるいは県を越えて、乳幼児教育相談としてのニーズに応えられない状況が出てくるかなと思っております。そこが聾学校としての危惧というか、専門性をいかに築き上げていくかというところで、なかなか大きな課題ですが、乳幼児教育相談についてもセンター的機能による加配が可能になっていくと、もっと専門性もやりやすくなっていくのかなと思っているところです。
以上です。
○中川座長 ありがとうございます。
文科省の山田課長さん、いかがでしょう。
○山田特別支援教育課長(文部科学省) ありがとうございました。私も拝見していますけれども、聴覚の特別支援学校の先生方の努力はすごいと頭が下がるところでございます。
一方で、教員定数は他の障害種あるいは通常の小中学校も含めまして、どの学校も厳しい中やっている中で、どうやって聴覚を特別に取り扱って措置を講じていくのかは大変難しい課題であり、また先ほどから何度もお話が出ている、乳幼児の相談業務は特別支援学校のセンター的機能の一環として、今、先生方が一生懸命努力して実施してくださっているところですけれども、学校としてどこまで福祉的なところに正面から取り組むのかは、厚労省の担当部局とも相談しないといけない大きな課題だなと認識しております。教員定数が聴覚特別支援学校において必要性があることは、我々も十分認識しているところでございます。
○中川座長 ありがとうございます。ここに大きな課題があることを今回こういうふうに話ができたことに、一つ意義があるのではないかと思います。今後の取組に関して、ここは一つ越えていかないといけない。そうしないと、せっかく早期発見・早期療育につながっても、その先が続かない。さっきのネウボラも伴走支援も関係しますけれども、そういうところにつながっていく大きな問題かと思います。
お待たせしました神田先生、まだ時間はありますので、よろしくお願いします。
○神田構成員 福島先生もいらっしゃるので、ちょっと短めにやります。
早期発見・早期支援が、もう20年近くできている長崎の事例でいくと、軽度・中等度・高度、90デシベルぐらいの補聴器のお子さんたちが圧倒的に多いんです。それが8割、9割なんです。こういった場所では、人工内耳なのか手話なのかという議論になりやすいのですけれども、実はそれは90~100デシベル以上の方たちのお話であって、新スクに関して言えば8割、9割は補聴器の方たちなんです。
どういった学校に行っているかとか、通常学校にどれくらい行ったかというデータも出していますけれども、軽中等度・高度までの補聴器の方々はほとんど通常学校に行っています。人工内耳の方々の今は9割近くが通常学校に行っています。これまで150校以上の通常学校に学校訪問に行ってきました。そこで担任の先生や校長、難聴学級の先生方とたくさんディスカッションして難聴学級の話が出たのでちょっとお話ししますけれども、軽度・中等度難聴のお子さんでも、難聴学級は親の希望があればつくってほしいなというところがあります。それは発達がどうなるのか成長の過程で、後で発達障害が来る場合もあるし、支援の先生がいらっしゃるおかげで、その学校に1人しかいない難聴のお子さんがすごく守られている感じがするんです。難聴があるために行き違いがあるとか、離れたところにいたらあのことが伝わらなかったとか、あるいは女子の場合に多いのですけれども、成長の過程で高学年になって疎外感があったり、いじめがあったりすることが過去にありました。ただ、難聴学級の先生がちゃんと守るというか、その子に対する配慮を生徒たちに話してくれる時代になってきたら、いじめみたいなものは減ってきています。要は、親の希望があれば、通常学校に難聴学級の先生をぜひ配慮してほしい。もちろん、この子には先生は要りませんよと、難聴学級はあるけれども通常のクラスで全部受けますという人たちもたくさんいます。それはそれでいいと思います。
この検討会で何回か言っているのですけれども、ロジャー、ワイヤレス補聴援助システムが充実したところで、担任と難聴学級の先生、生徒が3つもって発言して、聴覚に関わる支援が大分県の学校で行われています。そういう話をずっとしていくと、最近、九州でもいろいろな県で2個目のロジャーを準備したり、すぐに難聴学級ができたり、難聴学級で何か欲しいものはないですかと言われましたということで、ロジャーをもう1台持って、難聴学級の先生が後ろでほかの生徒に分からないように、その子に支援してあげる。要するに音声情報での支援、聴覚を伸ばすためにそういう支援があると、どんどん聴覚も音声も伸びていく、言語力も最初は遅れているお子さんがいたとしても、よく伸びていくお子さんたちが多いです。
実際、学校を訪問することが非常に大事で、そこでどういう課題があって、どうしたらよくなるかを多くの人が議論して、インクルーシブ教育、学校に行ったときにどう支援するか。中には、こういうことを言っていいのか分からないですけれども、その県の聾学校・特別支援学校の先生の方針が間違っていたりするんです。それだったら、聾学校で育てたほうがいいぐらいの支援のやり方を難聴学級でしようとしていた場合も過去に、150校以上行くといろいろな学校があったので、そういうものも見ました。でも、最近は聴覚を活用して、補聴器と人工内耳もすごく進んできているので、よく聞こえるようになってきているので、困らないお子さんたちが増えてきている状況です。
ですから、支援さえ間違えなければ、難聴のお子さんたちはこれからもどんどん伸びていくのではないかと思っています。
以上です。
○中川座長 ありがとうございます。全く同感です。同じ地域というのもあるのかもしれませんけれども。
福島邦博先生、どうぞ。
○福島(邦)構成員 軽中等度難聴、私の趣旨としては、児童発達支援事業所、放課後等デイサービス事業所のことも、資料2の7ページにあるような切れ目ない支援や専門性の向上では取り上げてくださいねと言いたいわけですが、文言として書くとこういう形になるのかなとも思っております。
神田先生、中川先生が言われていることと一緒ですけれども、文科省から出ているデータですと、平均60デシベル以上の難聴のお子さんの約半数が特別支援教育を受けていて、残り半分のうちの約半分は通級指導などを受けていますと。25%程度が地元の学校に行っていますというデータになっていますけれども、同時に廣田先生が全国の聾学校に行われた調査などを見ていきますと、手帳を持っていないような軽度・中等度難聴のお子さんはほとんど聾学校にいませんよという結果になっています。軽度・中等度難聴のお子さんはどこに行っているかを病院・事業所側で調査すると、物すごい数のお子さんが病院・事業所に行っているという事実があります。一方で、病院・事業所で見ている軽度・中等度難聴のお子さんは、せいぜい小学校低学年までで、3年生以上になってそういうところに行っているお子さんはほとんどいない。
では、何が問題になるかというと、小学校の学年が上がってきた段階で身につけるべきいろいろな言語的な技術あるいはセルフアドボカシーみたいな、もうちょっと高度なレベルで問題になってくることの受け皿が、特に軽中等度難聴のお子さんに対しては非常に乏しい状況になっているのではないかというのが、その辺のデータを組み合わせると見えてくるところではあります。
結局、地域の社会資源を上手に使っていただいて、もちろん聾学校でいろいろな支援を通級指導などで受ける形もいいと思いますけれども、特にこの段階になると、大前提としてオーディオロジストが非常に重要だというのはあるのですが、同時に、難聴のお子さんに対してのアプローチが必要なお年ごろというのもありますので、そういう専門人材も上手に使っていただくことを考えていただきたいと思いました。
以上です。
○中川座長 ありがとうございます。
かなり話が広がってきましたけれども、酒井先生どうぞ。
○酒井構成員 この議論で9割だからという議論は極めて危険で、数で多いから合わせろというのは暴力でしかないわけです。ですから、決してそういう議論をしないでいただきたい。1割だっているんです。聴覚障害、高度難聴もいらっしゃいますし、多い人に合わせれば済むという問題ではない。それは本当に社会としての暴力につながります。
もう一つ大事なポイントは、聴覚障害に関するバラエティーも含めたときに、例えばAPDのように聴覚情報処理自身の障害も視野に入れるべきで、音声というのは極めて聞き取りにくい、話者によって相当音自身が変化する、まして方言や言い回し、スピード、個性を表す音声表現であるがゆえに、少しでも補聴器の対象になったとしても聞き取りにくい、言語情報としてうまくキャッチできないというお子さんは潜在的には相当数いるわけです。それが自分で聞こえが悪いのが、言語的に理解できないのか、これは大人も周りの教師も鑑別がつきません。ですから、セーフティーネットとして手話の問題を挙げているのは、もしほかに代替手段があれば、自分がどの程度言語理解ができるのかという指標を基に、自分はやはりちゃんと聞こえていないのだということが分かる、その観点は非常に大切です。ですから、少ないからということではなく、聴覚障害に対する非常に重要なオプションとして、手話の活用や、全く違う言語だからそんなのはかえって重荷になるだけだという視点はやめること、それから、例えばよくある議論ですが、人工内耳の獲得の妨げになるので視覚的な言語はやめましょうとか、そういう差別を決してしないこと。その辺から啓蒙活動しないと、日本における偏見は決してなくならない、これは非常に根の深い問題だと思います。
以上です。
○中川座長 ありがとうございます。非常に大切な視点だと思います。そういうところをどう文章に生かすかを昨日結構考えまして、資料2の3ページ「切れ目ない支援の必要性」で2行目に「聞こえの程度にかかわらず」と、これはデシベルではなくて、先ほど先生がおっしゃられたAPDとか軽中等度も含むといった広い視野を入れて、例えば、手話の手段をここからだと線を引くのではなくて、APDではないか、Auditory Neuropathyではないかと思うお子さんは、いわゆる聴力レベルにかかわらず早めに手話言語を入れていくといった広い視点を持って、区切るのではなくて様々な手段があることをお示しすること。この文書としては、全体に係るような形でそのように表していると思うのですけれども、パンチが足りないところは行政文書としての限界点があって、おっしゃるとおりです。文書までになるとなかなかということで、今回このような感じの含み方をしていただいています。ただ、ぱっと見たときに行政の方が分かるかというと、そこは感度の高い人、そうではないところ、今後何らかの個別の説明は加えていくということで話を続けております。ありがとうございます。
ほかにございませんか。実は最後に残っているのは支援全般に係る課題等で、これは大きくなります。今までのところも含んでいますので、それも含めてあと15分ほどありますので、これについて御発言いただければと思います。よろしくお願いします。
1つ個人的な意見として、例えば、資料4の一番最後のページに、当事者が入るべきだということが書いてあって、私は県の協議会に当事者、当事者といっても2種類あって、1つは、新スクを受けて子どもが難聴だったというショックを受けた親御さん、もう一人は、ろうあ連盟の福岡支部から入ってもらっているのですけれども、彼らから具体的な発言はあまりないのですが、開かれていることが聾の方々にとって安心感につながる。それと、あまり手話を使う方々を見たことがないほかの科の先生方が、そこで音声一辺倒にならないような議論につながっていくところは非常に大切だなと考えています。
鈴木構成員、お願いします。
○鈴木構成員 今の当事者の話とはちょっと違うというか、いよいよこの基本方針が今後国から各都道府県に示されて、それを基に各都道府県で計画を策定して、実際に運用していくことになると思います。埼玉県でも、先ほど議論になっていたような情報の一元化や課題があると思っています。そういった中で、先進的な事例もお示しいただいてフォローしていただけるというお話があって、大変心強いなと思っている次第でございます。
加えて、こういった体制を組んで実際に取り組んでいくに当たっては、どうしても財政的な部分が重要になってきまして、その部分の支援もぜひ国にはお願いしたいと考えているところでございます。
以上でございます。
○中川座長 ありがとうございます。ほかにございませんか。
河本構成員どうぞ。
○河本構成員 私も、自治体の立場で一つお願いになりますけれども、音声言語獲得に向けた療育について、今回の基本方針では手法プログラムについてあまり触れられていないように思いますので、今後、国としてエビデンスに基づく効果的な療育プログラムの確立に取り組んでいただき、療育体制を確立していただくようにお願いしたいと思います。
1点パブリックコメントの関係で確認させていただきたいのですけれども、静岡県の難聴児支援を牽引しておられます静岡県立総合病院の高木先生がパブリックコメントで意見を出されておりまして、その意見についてどのように整理をされているのか確認するように求められていますので、お願いしたいと思います。高木先生の意見は、令和元年に出された難聴児早期支援に向けた保健・医療・福祉・教育の連携プロジェクト報告では、より有効に音声言語の発達を促すことが可能となっていることから、難聴児に対する早期支援の取組の促進が極めて重要としており、その考えを踏襲すべきである。また、障害者基本法に基づき、障害を治療することをまず考えるべきであり、基本方針の中でも音声言語獲得のための療育体制の確立を明確に打ち出してもらいたいという趣旨で意見を出されておりますが、この意見に対してどのように整理されたのか、教えていただければと思います。お願いします。
○平田障害保健福祉部企画課課長補佐 厚生労働省でございます。皆様これまで種々御意見をいただきまして、ありがとうございます。
難聴児に関しましては、皆さん御承知のとおり多様な療育の方法がございまして、また、それぞれの難聴児の御家族の皆様が置かれた状況も様々であろうかと思いますので、基本方針案に記載のとおりではございますが、厚生労働省といたしましては、その選択肢が限定されることなく、本人と難聴児の御家族等が希望する療育の選択肢が保障・尊重されることが重要であると考えておりますので、そのような体制が今後各地域で整備されるように、この基本方針も発出していきたいと考えてございます。
手話に関する情報提供に関しても、先ほど御紹介いたしましたが、令和2年度に5~6の地域について難聴児支援にどのような療育を行っているか、どのような連携体制が敷かれているかという調査研究も実施しておりまして、その中では手話に力を入れているような療育体制の箇所も御紹介しております。この基本方針の発出に当たっては、そういった御紹介もしていきたいと考えておりますし、今回様々御意見をいただきましたが、人工内耳の検証システムや公平な情報提供の在り方、ロジャーの問題、聴覚情報処理障害など、難聴に関してはまだ様々な課題がある状況ではございますけれども、国としても調査研究を引き続き続けていきたいと思いますし、それに加えて各都道府県の皆様の御尽力も必要だと考えております。
今回、この基本方針自体は都道府県に実施いただきたい取組を書かせていただいておりますので、幾つかの御意見や御要望に関しては、むしろ政府にいただいている課題かなとも考えております。こちらについても中長期的に受け止めてさせていただいておりますので、こちらについても引き続き取り組んでまいりたいと考えてございます。
以上です。
○中川座長 ありがとうございます。今日も専門的な話がかなりあって、そこにかなり課題がまた残っているのだということが、本来だったらこの文書のまとめをする回になるはずなのですけれども、実際にはこの文書を基にして課題があぶり出されているような印象を私自身が持っています。こうなるだろうなと思ってやっているのですけれども、その後については、まず地域差をできるだけ平坦にしていく努力をすることや、選択した後のシステム、例えば、酒井先生が言われるような手話について、具体的に成人の手話話者と会う機会があまりなかったり、個人的にもちょっと足りていないなと思うところもあります。人工内耳もいろいろとエビデンスが重なってきて、それなりに海外に取り残されないように、海外に取り残されるのは日本国民にとっての不利益になりますので、そこも取り組んでいかないといけない。その前提となる入り口においては、きちんとした情報提供がなされて自主的な選択肢があること、まずそこに立ち返ること。その上で各論に入っていくというイメージを、今の現実社会を見て私自身は抱いています。本当は様々な方を生まれてすぐに、初めて難聴だと言われた子どもを持ったお母さんが目にするような社会があって、それで様々なことを考えられるのが理想の社会だと思います。先ほどありましたような伴走支援も非常に大切ですし、問題をいろいろ考え始めると結構広いなというのが今回の検討会の全般を通しての感想です。
少なくとも私個人は、こういった文書が国レベルの行政文書として出たことに一番重きを置いていまして、内容はまだまだ御不満なところは、私自身もあるのですが、この文書をまず出すことが今回の検討会の一つの成果だと考えています。ただ、今話しましたように、様々な課題がこの先にいろいろ待ち構えているので、それについては福島先生が提案されたような調査研究や、検討会をどこかの時点で立ち上げるといった継続した議論がなされることを、聞こえない、聞こえにくい、聞こえる子どもたちに向けて社会としてできていければということのまず第一歩になればと考えています。
割と大きな話としてまとまっているので、各論に関してはどうしても御不満なところがあると思いますけれども、まずこれを出すこと、それからこれに基づいた様々な問題を洗い出して、また調査研究、その他、なかなか役所の立場上、予算化とは言えないと思いますけれども、そういうところにつながって国民全般がいろいろ考える場を持つ機会を与えることが非常に大切なことではないかと、この検討会については思います。
ちょうど時間になってきましたので、今が締めの言葉のようになってしまいましたけれども、様々な御意見をいただき、私自身も自分の頭の中をかなり整理できました。ただ逆に、課題、何をしなければいけないかも浮き彫りになってきたと思います。この検討会はこれで文書を出して一応終わりになりますけれども、引き続きこのテーマに関しては、ぜひとも検討を続けていければと考えています。
最後にどうしてもという一言があれば。ありがとうございます。
それでは、ちょうど時間になりましたので、本日はこのあたりで終了したいと思います。本日構成員の先生方から出た意見については、私座長と事務局で精査し、案に反映させてまとめることとしたいと思います。反映については私に御一任いただけますでしょうか。
(首肯する委員あり)
○中川座長 ありがとうございます。特段御異議がないようでしたら、そのようにさせていただきます。成案となりましたら、構成員の皆様にも御報告いたします。
最後に、事務局からお願いいたします。
○矢田貝障害保健福祉部企画課長 本日まで5回にわたり御多忙の中、御議論いただきありがとうございました。
最後に、障害保健福祉部長の田原から一言御挨拶を申し上げたいと思います。
○田原障害保健福祉部長 障害保健福祉部長の田原でございます。
本日は、大変お疲れさまでございました。忌憚のない御意見をいただき、ありがとうございました。全5回の御議論で、難聴児の早期発見・早期療育推進のための基本方針がほぼまとまりました。座長の中川先生には、各構成員の皆様から課題や解決策を引き出していただきまして、改めて御礼申し上げます。どうもありがとうございました。
今、中川先生からお話がありましたように、基本方針本文への御指摘につきましては、中川先生と御相談いたしまして、この基本方針を決定して公表したいと思います。その上で、都道府県に対して通知しまして、各地域におけます難聴児の早期支援に向けた体制確保をお願いする予定でございます。難聴児の支援に関しましては、福祉・教育分野の連携、家族等の支援等が課題となっております。本日も多くの課題をいただきました。手話による言語理解、情報の一元化、分かりやすい事例集、フォローと検証、そして軽中等度難聴児への対応、こうした課題をしっかりと受け止めまして、今回の基本方針の作成を契機といたしまして、厚生労働省、文部科学省でしっかりと連携いたしまして、難聴のお子さんを早期に発見して適切な支援を行うための取組が各地域で一層推進されますように努力いたしますし、また、全国どの地域でもこの基本方針で示された支援策がしっかりと行われるように取り組んでまいりたいと考えております。先生方には引き続き、お力添えを何とぞよろしくお願い申し上げます。
長期間にわたりまして、本当にありがとうございました。
○中川座長 それでは、本日はこれで閉会といたします。
皆様、昨年3月の検討会立ち上げ以降、貴重な御意見をいただき感謝申し上げます。ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
 

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