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2021年6月24日 難聴児の早期発見・早期療育推進のための基本方針作成に関する検討会議事録

社会・援護局障害保健福祉部

○日時

令和3年6月24日(木)13:00~15:00

○場所

ビジョンセンター永田町
(東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル6階)

○出席者

中川尚志座長、新井敏彦構成員、河本大輔構成員、神田幸彦構成員、小枝達也構成員、酒井邦嘉構成員、城間将江構成員、鈴木康之構成員、関沢明彦構成員、武居渡構成員、問田直美構成員、福島朗博構成員、福島邦博構成員、細井裕司構成員、渡辺弘司構成員
 

○議事

○源河障害保健福祉部企画課長 ただいまから第3回「難聴児の早期発見・早期療育推進のための基本方針作成に関する検討会」を開催いたします。
皆様方には、お忙しいところ御参加いただき、ありがとうございます。
初めに、議事の進め方及び資料の確認、本日の出席状況についての報告を、事務局からさせていただきます。
本日の検討会も、オンラインでの開催です。座長から御発言を希望される方を募りますので、希望の方は挙手、またはZoomの「手を挙げる」機能を御活用ください。
御発言の際は、まずミュートを解除し、お名前を名のっていただいてから御発言をお願いします。発言後は、必ずマイクのスイッチをオフにしてくださいますようお願いいたします。議事途中に何かトラブルがありましたら事務局までお問い合わせください。
続いて、資料の確認です。
本日の資料は、議事次第、資料1、資料2-1から2-3、資料3、参考資料1から参考資料5となっております。資料はホームページにも掲載してございますので、お手元に資料がない場合にはそちらを御覧ください。
続きまして、本日の検討会の出席状況ですが、本日は検討会の皆様全員に出席いただいています。
また、事務局として、厚生労働省障害保健福祉部企画課、子ども家庭局母子保健課、文部科学省初等中等教育局特別支援教育課が出席しています。
事務局からは以上です。
それでは、以降の進行は、座長にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
○中川座長 皆さん、こんにちは。九州大学の中川です。
それでは、議事に入ります。
議題(1)「難聴児の言語発達に資する療育に関する調査研究について」、事務局から説明をお願いします。質問については、議事(2)の3名からのヒアリングの後にまとめて時間を設けたいと思います。では、よろしくお願いします。
○平田障害保健福祉部企画課課長補佐 厚生労働省障害保健福祉部企画課の平田です。
厚生労働省で令和2年度障害者総合福祉推進事業として実施いたしました、難聴児の言語発達に資する療育に関する調査研究について御報告させていただきます。
資料1を1枚おめくりいただきまして、概要欄を御覧ください。
本事業は、難聴児に対する支援実態を把握し、難聴児の言語発達のための療育の質の向上に資するため、行政機関、医療機関、福祉事業所、教育機関による多機関連携に関する好事例を収集し、取りまとめることを目的として実施いたしました。
本調査研究では、本検討会の構成員でもあられる城間先生、武居先生、問田先生、福島先生、検討会でヒアリングに御出席いただきました大沼先生にも御尽力いただきましたことを御礼申し上げます。特に福島先生におかれましては座長として検討会の進行から報告書の取りまとめまで御尽力いただきました。ありがとうございました。
本調査研究では、大きく2つの調査を実施いたしました。
一つは、難聴児支援に携わる病院・事業所・自治体へのアンケート調査。
もう一つは、5つの地域をピックアップいたしまして、その地域における難聴児支援の概況を詳しく聞き取るということを行いました。
アンケート調査のほうでは、新生児聴覚検査結果の把握状況、各機関が難聴児に対して実施している支援、機関間の連携状況といったことを調査いたしまして、219の医療機関と134の事業所、127の自治体から回答結果を得ております。
ヒアリング調査につきましては、北から札幌、長野、大阪、岡山、広島についてヒアリング調査を実施いたしまして、それぞれの地域の特色などを事例集としてまとめております。これらの地域につきましては地域の実情に合った支援を展開しており、他の地域の参考にしていただける可能性がある地域として、検討会委員の先生方より御推薦いただいた地域でございます。
調査結果の概況を御報告いたします。
まず、アンケート調査のほうですが、判明したこととして1点目、自治体において多機関連携を把握・援助する際に中心となるような部署が定まっていないということでございます。これは既に初回の検討会において福島先生からも御指摘いただいた点でございますが、調査した自治体のうち約半数が中心となる部署がない、と回答しております。
また、2点目ですけれども、事業所と医療機関の双方において、行政機関との連携がやや弱いということが分かりました。一方、行政機関がつながりを持っている機関としては学校を挙げているケースが比較的多く見られております。また、個別の難聴児のケースについての情報共有であるとか各機関の勉強会の開催など、そういった交流について、頻度はまちまちではございますが、関係機関間でどの地域も実施されているという状況が見受けられました。詳細につきましては、報告書が大部にわたっており恐縮ですが、59ページ以降を御参照いただければと思います。
次に、ヒアリング調査いたしました5地域に関しまして御報告いたします。
5地域に共通する特徴といたしましては、多職種・多機関が集まって情報交換をしたり学び合うことで専門職連携を深め、顔の見える関係を構築し、難聴児支援の基盤を形成しているという点でございます。特に札幌市や長野県では、多職種・多機関連携で得た知見が実際の支援現場で生かされていますといった支援者のお声も聞かれまして、専門職連携が多職種連携につながっているということがうかがえました。
連携の広がりのきっかけといたしましては、耳鼻科医、聾学校教員、行政などそれぞれの地域においてキーパーソンとなる方が勉強会や協議会を立ち上げるといったケースが散見されております。こちらも詳細につきましては161ページ以降の好事例集を御参照ください。
最後に、今後、難聴児・ろう児支援において行政が注力すべきこととして、本検討会でも何度も御指摘いただいておりますけれども、多職種・多機関連携を一層推進すること、そして、保護者支援の充実というものが挙げられております。機関の連携につきましては、地域の社会資源を活用して効果の高い支援につなげるために、専門職連携教育からさらに多職種連携に進めていくことが望ましいと。保護者支援については、行政の要望として、子供を適切な支援につなげるための情報提供、保護者向けの相談窓口の設置、適切な支援を提案するコーディネーターの配置、保護者や当事者を含めた情報交換・交流の場の設置などが想定されているところです。
簡単な御紹介ですが、以上になります。
○中川座長 ありがとうございます。
それでは、続きまして、本日は3名の方からヒアリングを行いたいと思います。
最初は長崎大学医学部耳鼻咽喉科臨床教授の神田構成員で、2番目が島根県立松江ろう学校長の福島構成員、3人目が座長の私から、関係機関の連携や学校における取組、地域の取組に関して発表することにいたします。発表の時間は各10分といたします。10分たちましたら合図にベルを鳴らしますので、お話をまとめていただきますようよろしくお願いいたします。質問の時間は、3名の発表後、15分程度設けさせていただきます。
それでは、まず、神田先生からどうぞよろしくお願いいたします。
○神田構成員 厚労省からサイトメガロウイルスについても述べてくれと言われまして、すみませんが1~2分延びるかもしれません。御了承ください。
私は、長崎県における難聴児療育システムの構築と成果について報告します。
初めに、昨年の日本耳鼻咽喉科学会シンポジウムで講演をしましたが、新生児聴覚スクリーニングを生かし、先天性サイトメガロウイルス感染症、以下CMVと略します。
2003年10月以来、長崎県では全県の全部の新生児聴覚スクリーニングが導入されています。
発足時のメンバーとしては、長崎大学耳鼻咽喉科の当時教授の高橋先生、当時助教授の重野先生を中心に、産婦人科の増崎先生、森崎先生、今村先生、小児科教授でウイルス学が専門の森内先生、そして、当時県議会議員で現国会衆議院議員、難聴対策議員連盟会長代理の冨岡勉先生と医療チームを組んで開始されました。長崎県の新スクは公費補助を受けて、例年高いスクリーニング実施率を示しています。昨年度は100%でした。加えて、スクリーニング後のフォローアップにおける医療と教育のバックアップ体制があります。
これまでの経過ですが、2002年より産婦人科医会が中心となり検査機器の共同購入、新スク協議会の設置、県が検査費用を助成し2003年スタート。その後様々な経過を経て、2011年には全市町の単独事業で1,500円から3,000円の助成も引き続き行われ、18年間続いています。2018年の時点での事業実施率100%は全国で12県でした。
実施体制や実績を資料右側に示します。
難聴児支援や相談体制ですが、聾学校に設けている乳幼児教育相談につなげており、0歳から5歳の乳幼児教育相談、聴能相談、教育相談が行われており、早期に教育相談するメリットに、右側のこのようなものがあると思います。
長崎県立ろう学校では、聴覚活用の力を最大限に伸ばしてコミュニケーションを高めるような教育がされています。専任の言語聴覚士により補聴器の特性の確認や、補聴器、人工内耳のチェックが毎日行われています。過去に38年間聴覚を管理し、補聴器の適合や聴覚活用教育を推進する海外のオーディオロジストに匹敵する田中英雄先生が常勤されており、長年聴覚活用教育が可能になっていた背景があります。その先生が退官後は常勤の言語聴覚士が勤務し、その伝統やノウハウは継承されています。
さて、長崎県独自のCMV感染対策について紹介します。
先天性難聴の三大原因として、約10から20%の割合でCMV児が存在します。
長崎県の新スク、CMV検査の流れですが、新スクはAABRとOAEの二段階スクリーニングで行われ、最終的にリファー時は二次検査機関や精密検査機関に紹介、聴覚障害があれば右下のこのような療育機関で療育がスタートします。
CMV検査については、産婦人科でリファーだったら生後1週で耳鼻科に紹介、生後1~2週で精密検査や二次検査機関受診、精密検査で両側リファーの場合は、3週以内に長崎大学小児科紹介、CMV陽性の場合は大学小児科で抗ウイルス薬のガンシクロビルやバルガンシクロビルの治療を開始して、できるだけ早期に1か月未満で治療を開始するシステムです。また、妊娠中に産婦人科において妊娠前期と後期に血液中のCMV抗体価を測定し、前期にマイナスで後期にプラスであれば出生後すぐにCMV検査をして治療につなげるという、産科、小児科、耳鼻咽喉科一体となったCMV対策体制を取っています。
小児科のCMVデータでは、2008年から2010年のスタディーで10名のCMV児のうち2名が難聴でした。2012年から2015年も新生児期にCMV感染があり、ガンシクロビル、バルガンシクロビルの治療が行われましたが、難聴がない児での治療群で難聴の発生の進行はありませんでした。現在、CMV感染症に対するバルガンシクロビルの医師主導治験が開始しています。
これは、長崎県版の新スクリーフレットの最新版、令和2年発行のもので、全ての産院に配布され御両親に伝えられていますが、このようにCMV検査についても記載があり、新スクに関する助成や検査機関、新スクについて、CMVや胎内感染に関する詳しい記載や検査マニュアルが載っております。難聴が診断されてASSRの結果が出た生後2か月以内に、当施設では両親へのカウンセリングを行います。聾教育経験45年の先生により、2時間ぐらいかけてこのような障害受容のための心のケアを丁寧に行います。詳細は、長崎県版の新スクの手引書にも掲載しています。
これからアウトカムといいますか、新スクによる成果なのですけれども、新スクで診断・介入・補聴器開始はどうなったかなのですが、新スクのない時期の青色と、開始後の赤色の時期ですが、診断・介入・補聴器開始時期は、いずれも新スクによって優位に早くなっています。
長崎県新スク開始後からの18年間の当施設のデータベースから、長崎県の新スク対象児のみのデータですが、369名中、両側あるいは一側難聴は117名、もちろん検査の間正常だった人です。両側あるいは一側難聴は117名で、人工内耳は22名、補聴器が49名の42%で、我々は4つの精密検査機関の一つなのですけれども、それほど多いわけではない。全国で手厚い庇護があってもいいのかなと思います。
新スクで発見された難聴児の多くは、補聴器装用の軽度から中等度・高度難聴であることは医療で働いている我々にとっては常識です。人工内耳あるいは手話の児は難聴児の1割から2割程度が対象となります。
補聴器はうまく適合されていくとハーフゲインどおりになりやすいので、50デシベルであればよく補聴器を適合すると約25デシベルになります。同様に60デシベルは30デシベル、70デシベルは35デシベル、80デシベルは40デシベルに概算ではなります。これは我々の3,300名のデータでも同じですが、このように1メートルで静かな会話が可能と、矢印に書いてある先のほうですね、静かな会話が可能となりますので、機器の進歩によって補聴器で十分音声言語が高められる時代になっていると言えます。
では、90から100デシベル以上の人工内耳では何デシベルでしょうか。これは、両側人工内耳の海外の論文に報告した当施設のデータですが、25から30デシベルであり、これも海外のデータも同様の結果であり、たとえ重度難聴でも人工内耳で十分音声言語が高められる時代になっていると言えます。
当施設の人工内耳装用児の通常学校就学率に報告した内容から、新スクとの関係ですが、このように新スクを受けた児の通常学校進学率は84%であり、オッズ比で約3倍、新スクを受けたほうが通常学校に進学しやすい結果になりました。
これは、小児がスタートしてからの人工内耳手術の年の全部の就学状況の変遷を示すものです。パーセントは通常学校への進学率です。上段に医学的体制の進歩を加えました。新スクが開始されて6年後の2009年から2014年までの6年間で通常学校へのインテグレーション率は80から90%でありました。2015年には既に4名が通常の幼稚園や保育園に通っていますが、それを入れても、現在、普通学校の通常学校に行っていますので81%になっています。
難聴児の療育方法にはこのようなものが挙げられますが、私は基本的に両親が納得される方法を選択する権利があると考えています。この中で海外で主流の難聴児療育方法としてはオーディトリーバーバル、AVT療育法があります。2001年より、音声言語で育てたい要望があれば、我々はAVT療育法を行っています。
これまでに難聴児のために学校訪問をいろいろなところで150校以上訪問してきましたが、その考察です。医療と教育の連携のために通常学校や聾学校に訪問しましたが、重要であるのはこのようなものであると思います。
2018年には長崎県が主体となり、日本中の医療と教育の研究協力者と連携して厚労省研究を行い、人工内耳装用難聴児に対する多職種による介入方法の実態調査を行いました。
アンケートはこのような調査対象で行われ、ちょっとだけ話しますが、患者が2,358名ですが、新スクを受けた小児は60%未満であり、新スクを受けやすい体制が全国的に整備されると難聴児の早期発見につながり、地域格差の解消につながると。新スクを受けることで早期に難聴児を発見することが可能となり、聴覚活用療育を受ける小児が増加していることが示唆されました。
長崎県では医療・教育・福祉のネットワークが47年前から、この大村市耳と言葉の相談という月に1度の医療、聾教育の連携からスタートし、その後、新スクや補聴器、人工内耳の進歩と相まって様々なよき人々との連携が形成され、ネットワークが広がっています。また、言語聴覚士がいろいろなところに、先天性難聴の聾学校の先生、聾学校の中にも、あるいは県のこども家庭課でも常勤され、だんだんこういうネットワークが保育園とか幼稚園、通常学校の難聴学級にもこのような言語聴覚士の輪が広がるといいのかなと思っています。
新スクが95から100%を18年間継続してからの考察を述べています。システム構築というよりも、やはりよき人々たちとの連携が重要になるかと思います。海外の状況を謙虚に学びよい人々の専門家集団をつくる。難聴者そのものユーザーの声を反映する。ゼロ歳だったお子さんも18年間過ぎて成人になります。長い間変わらないそしてその先もずっと変わらない、そういう方針が大切だと思います。医療、補聴器、人工内耳をどんどん進化してこれからも進歩し続けますので、情報の渉猟とか、あるいは理解、医療と教育の連携が重要であると思っております。
以上です。あとは御参考にされてください。
○中川座長 ありがとうございます。
長崎の非常に伝統的ないい取組を紹介していただきました。
それでは、続きまして、島根県立松江ろう学校長の福島構成員、よろしくお願いいたします。
○福島(朗)構成員 島根県立松江ろう学校の福島と申します。本日はこのような発表の機会をいただきありがとうございます。
これまで発表のありました日本手話とか聴覚口話主導など、保護者がコミュニケーション方法を選択できる学校とは違って、県に1つ、2つしかない公立の聾学校や聴覚支援学校の立場で、また、県としてまだ体制の課題が残っている状況もお伝えしたいと思います。
なお、私自身が聴覚障害があり、発音が不明瞭で聞きづらいところは御了承ください。
では、始めます。
報告内容です。時間の都合上、後半部分は資料参照ではしょりますことを御了承ください。
本校が重点的に取り組んでいるセンター的機能の取組です。高校も含めた通級指導や教育相談のほか、関係機関を対象とした様々な研修会等を企画して行っています。
乳幼児教育相談の取組です。3つの機能があると考えています。1つ目に「子どもと親子の支援」、2つ目に「保護者支援・家族支援」、3つ目に「関係機関との連携・協働」です。
特に重要なのは「保護者支援・家族支援」です。親子の間のコミュニケーションの促進と関係機関との良好な連携・協働といった相乗効果により、保護者と家族により安心と育児の自立が促されるものと思います。関係機関のところで出雲地区きこえに関する出前相談がありますが、これは本校からこれまで1時間ほどかかる出雲地区の親子支援として、出雲保健所の協力で部屋を借りて相談を行っているものです。
公立聾学校としての早期支援の使命と課題をまとめました。聴覚口話も手話ものスタンスで、参考資料のほうに「松江ろう学校の取組」項目3のところ、6ページのところに詳しく載せておりますが、補聴器や人工内耳を最大限に活用し、見て分かる身振りや手話を駆使して、親子で意味のある伝わり合い、例えば、手話で「したい」とか「終わり」とか「我慢」とか、こういった概念の理解と表出が早期にできるよう、聴覚口話と手話の併用は有効と捉えて行っております。自覚的聴力検査と生活場面等の行動観察による聴覚評価が可能であり、先輩保護者や当事者のロールモデルが存在する教育環境にあること、一方で、乳幼児教育相談の校内における位置づけや体制、担当数は教員定数内での運用に任されます。特に児童発達支援センターのない県では保護者の唯一の支援よりどころとなる重責と併せ、聾教育の専門性かつ校内でも特異な専門業務、担当者の力量は大となります。また、教員異動による専門性の育成・継承が課題となっており、県によっては指導教諭、エキスパート教員などを配置する工夫も行われています。本県も来年度から異動ルールを超えた専任教員を配置する予定で決めております。それから、耳鼻科医キーパーソンや言語聴覚士の連携協働が不可欠です。
医療機関の耳鼻科との連携協働についてです。本校では、松江赤十字病院と鳥取大学病院の耳鼻科医にキーパーソンとしてお世話になっており、その協働内容を挙げております。下のほうの言語聴覚士ですけれども、鳥取大学病院での人工内耳の子供が多く、担当言語士には自立活動の非常勤講師として指導内容の共有と専門性の確保で協働しております。
松江圏域新生児聴覚検査支援連絡会です。松江市・島根県共同設置松江保健所が実施主体となり、構成員はここに挙げたとおりです。
目的はここに書いてあるとおりで、10年経過した平成29年からは、聴覚障害児への支援全般にニーズを広げています。
本連絡会と島根県のこれまでの関連した経過をまとめています。島根県では、体制不十分な中、平成12年頃より、個人の産科医を中心にOAEが導入され、本校では受付が遅れるとともに深刻な保護者支援を要するケースが相次ぎました。支援体制の構築を働きかけましたが、県の動きは鈍く、松江赤十字病院の耳鼻科医師と協働して、まず、松江市で手引作成に取りかかる目的で、平成18年に本校が事務局となり本連絡会を立ち上げました。その後、県より作成の検討がなされ、それに協力して平成20年に、この右上の写真にあります手引ができました。その後、新スクによりゼロ歳児の一側性難聴の相談件数が増加して、本校での対応を緩和できるように協議がなされました。
次をお願いします。
県のほうで一側性難聴の支援のチラシをホームページでダウンロードできるようにし、市、町の保健師が家庭訪問等で持参支援できるようにしてもらいました。自治体との協働によるありがたい支援でした。
ちょっと戻っていただけますでしょうか。
平成23年には、事務局を本校から松江保健所に移管していただいたことで、全ての個人産科医の出席が実現しました。リファー時の退院後の経過や支援の課題の報告によるフィードバックは、産科医の認識を高めたと思います。ここ近年は、手帳外の乳幼児のニーズが高いイヤモールドの更新についても助成されるよう、本連絡会で協議会を行って要望を出し、今年度から開始されるなど、県と連動している効果は大きいです。
一方で、手引が作成された後の県主催による体制検討会は、平成20年から平成22年までの2年どまりであったことが、後で述べます県全体の支援体制構築の課題につながったと感じております。
次をお願いします。
本連絡会の会合の内容と成果を上げております。顔が見える連絡会による成果が見られます。
例えばですけれども、これは地域の「小耳症児の親の会」の案内のリーフレットです。本校で支援しているこの親の会の活動を連絡会で紹介したところ、産科医師から出産で関わった保護者への具体的な情報提供の支援が可能になったと喜ばれ、関係機関がつながることによる支援の広がりを感じさせました。
ここで、島根県全体の課題をお話しします。島根県は、東西に長い県で、圏域をまたいだ県外の精密検査機関との連携も重要になっています。手引は平成20年に作成されたものの、支援体制の構築は松江圏域以外では確立されておりません。そのために、整備では聾学校につながらない、また、市、町の保健師も手引の存在すら知らないことが起こりました。そこで、市、町で行われる保健師研修会の中に新スクと難聴の早期支援に関わる情報提供を入れてもらいました。このことで、手引は作成されていても各圏域において難聴児の支援を理解し導くことのできるキーパーソンとなる耳鼻科医の存在、連絡会の設置と協議が継続的に行われることの支援体制の確立が重要であると言えます。
先ほどの厚労省の動き、先ほどの経過のところでも最後のほうにありますけれども、このたびの厚労省の動きで令和元年から県でも再び体制推進検討会が発足されましたので、松江圏域以外の支援体制構築についてこれから期待したいと思います。
次をお願いします。
先ほどの保健機関との連携協働のことで、市、町の保健師研修会と本校会場で行う早期教育公開研修会は、保護者の支援の上で即効性があり有効でした。
ここからは、担当者の専門性向上に関わってキーパーソン、耳鼻科医師、言語聴覚士と聾学校同士のチームによる連携協働の取組です。鳥取大学病院と山陰4校聾学校担当者で年3回の合同研究会を行っています。
全国の聾学校では、各地区で聾教育の専門性の維持、継承のために、教育オーディオロジー研究協議会といった組織があります。中国地区でも5県9校の聾学校の担当者で研修を企画運営しており、岡山の福島邦博先生にも大変お世話になっておりますが、耳鼻科医や言語聴覚士の協力をいただいて、会員の研さんの場とおります。
ここからは、保護者支援の在り方、特に受付以降の初期相談や就学に関わる情報提供についてスライドを並べました。これは受付を決めた初期相談の取組です。
初期相談の取組内容と基本的な事柄の情報提供プログラムの内容を示しました。
また、聾学校の教育環境にあるロールモデルの存在と活躍は、保護者と子供に適切な障害の受け止めを促進させます。
最後に、保護者に就学等の将来的な見通しを持たせるための情報提供の支援です。本校では、特に義務教育については聾学校だけではなく地域の難聴学級や知的等の特別支援学校などの学校見学を設定して、就学の選択肢に挙がる全ての学校について具体的なイメージが持てるように情報提供の支援を行っています。
最後です。まとめになります。読み上げますが、聞こえない子供の愛着関係の形成のために、保護者の安定と育児自立が促される早期支援が鍵です。聾学校はロールモデル教育環境を強みに、特に障害の受け止めを大事にした保護者支援を行います。「新生児聴覚検査から早期支援・早期療育までの円滑な実施」のためには「手引書」だけでは不十分で、それを活かして、県または各圏域の実情に応じた支援体制の構築と課題検討を継続して行う連絡協議会の機能(キーパーソン・自治体が核)が重要です。全国聾学校における乳幼児教育相談の明確な位置づけ(センター的機能の加配による充実)。学校における聴覚障害教育の専門性の確保と維持(県教委のバックアップ)及び関係機関との連携協働による専門性の向上が円滑な早期支援と充実につながると思います。
以上です。ありがとうございました。
○中川座長 ありがとうございます。
現場の聾学校の立場からということで、詳細に様々な問題点も含めて述べていただきました。
それでは、続きまして、私から福岡県の取組についての発表をいたします。
スライドをお願いします。福岡県の取組について紹介します。
次をお願いします。
福岡県は人口が約500万人の県で、歴史的に福岡地方、北九州地方、久留米を中心とした筑後地方、旧産炭地の筑豊地方から成ります。年間出生数は4万6000人で、毎年50名程度の聞こえにくい子供さんが生まれています。
次をお願いします。
福岡県は療育者の了解の下、言語発達や子供の日常の情報を共有し、医療機関と療育機関が協力して聞こえにくい子供たちを支援する連携システムをつくっています。年4回、定期的に県内の聴覚特別支援学校、5校ありますけれども、そこと医療機関が集まっての懇話会を行っています。別に年2回、九州全域の教育関係者が集まる勉強会も行っています。
次をお願いします。
これは福岡県での小児人工内耳の流れです。福岡県の連携というものの特徴を表していると考えています。ほかの県の先生たちによく驚かれますけれども、人工内耳装用の相談は療育・教育機関より紹介されてきます。人工内耳装用児、補聴器で頑張る子供さん、手話を選択する子供さんも医療機関の受診を勧められます。これはふだんから連携を取っているために築かれた信頼関係に基づいた結果と考えています。このような関係を築くにはコミュニケーション手段で対立するのではなくて、選択の多様性、選択後の寛容性を担保することが重要と考えております。
次をお願いします。
しかしながら、今回の中心話題であります新生児聴覚スクリーニングへの取組は一筋縄ではいきませんでした。2000年に県の医師会へ新スク対策委員会の設立を要望し、耳鼻科の専門医会で2年後にマニュアルを作成したのですけれども、他科の先生の理解が得られず、行政の働きかけまでには至りませんでした。その5年後に実態調査を行って働きかけたところ、県の医師会の協力は取り付けましたけれども、産科医会と行政の協力が得られませんでした。結局、個人情報管理と運営資金の課題というものは解決できず、2回頓挫しています。
次をお願いします。
しかし、医療・教育機関は来てくれないと対応ができません。このために行政の介入が不可欠です。
次をお願いします。
近年、厚労省から複数回、県に新スク推進の通達を出していただきましたけれども、アリバイづくりのような協議会を年に1回開いただけでした。今回、2つの事業を立ち上げてくださり、複数の箇所からの働きかけをして、福岡県もようやく事業に本腰を入れました。
次をお願いします。
今までの2回の失敗を踏まえて、関係機関、行政との連携を強固にするために、医師会を中心に対応しました。母子保健行政に強い小児科専門医会を加え、行政に事務と具体的な立案をお願いし、実務は医師会が行い、各組織の負担を軽減しました。県医師会の中にある関係業務を請け負う部門であるメディカルセンターに具体的な業務の委託及び職員の労務管理を依頼しました。教育関係は今までのつながりと県の行政レベルで人選を行いました。
次をお願いします。
まず、協議会を立ち上げました。県医師会に主導してもらいましたので、県医師会の理事、産婦人科、小児科、耳鼻科の専門医会の代表、助産師会、聴覚特別支援学校、あと、各自治体で業務を担当する課、保健所の代表、これに新スクを体験した当事者である聴覚特別支援学校のPTA、あと、聾者の団体である聴覚障害者協会に委員になってもらいました。
右にありますが、今年1月にマニュアルの暫定版を作り上げました。実際のマニュアルは補足資料1として配付しておりますので、時間があるときに御覧になってください。
次をお願いします。
実務をする場所として、県の医師会館の中に福岡県乳幼児聴覚支援センターを開設しました。事務スタッフのほかに、聾教育の免許を持つ教諭、小児難聴を専門とする言語聴覚士を嘱託雇用して、週3回勤務してくれています。真ん中に示したようなパンフレットを県内の関連医療機関・療育・教育機関に配布、県のホームページに掲載しました。
次をお願いします。
乳幼児聴覚支援センターの主な役割は3つです。新スクの精度管理を行うモニタリング、要精査になった子供たちを追跡するトラッキング、それと電話相談です。
次をお願いします。
新スクの制度を各病院レベル、地域で把握するとともに、新スク後から精密医療機関へのつなぎを調査します。検査精度を上げることで療育者の不安につながる高いリファー率を低くします。
次をお願いします。
このため、精度管理委員会をつくりました。県医師会がつくっている委員会という立てつけにしまして、県医師会の理事、福岡県の各地区の産科医会の代表、耳鼻科医会、言語聴覚士の県士会、聴覚特別支援学校、行政で母子保健を担当している健康増進課から委員を出してもらいました。事業内容としては、産科医療機関への調査と検査精度向上のための研修会の開催です。
次をお願いします。
2つ目の仕事としてトラッキングを行っています。
次をお願いします。
左側に新スク後の流れを示しています。精密医療機関への紹介、受診診断されたとき、療育開始されたときに乳幼児支援センターに情報を上げてもらい、その情報を市町村と共有します。
次をお願いします。
養育者はショックを受けておられることがほとんどですので、自分の自治体にリファーの子供さんがいると分かったときに行政の保健師さんが心のケアのために訪問、難聴の早期発見から早期療育につながる支援をいたします。
次をお願いします。
また、相談も受け付けております。
次をお願いします。
センター設置の広報は開所後にしか行いませんでした。まだ4か月半しか経過しておりませんけれども、週1件のペースで相談が寄せられています。詳細な内容は補足資料の2を御覧ください。新スクに関わること以外にも様々な相談が寄せられています。あと、行政から相談が来るとは予想していませんでした。
次をお願いします。
この相談内容により、福岡県の制度の不備を見つけ、検討会議にフィードバックし改善、よりよいシステムをつくっていきたいと考えています。そのような意味を込めて、先ほどお見せしたマニュアルは暫定版ということにしております。
次をお願いします。
次に、人口が少ない県の例として、出生数が福岡県の6分の1である石川県の取組を紹介します。
次をお願いします。
石川県では新スクの結果告知を1か月後に行っています。精密医療機関で難聴と診断された場合は療育機関に行く前に必ず、いしかわ赤ちゃん聞こえの相談支援センター、通称みみずくクラブを受診してもらっています。
次をお願いします。
みみずくクラブでは、難聴の確定診断が出た乳児とその保護者に対し、聞こえや難聴に関わる知識を提供して、その後の療育機関の選択を支援しています。療育機関に行く前に両親講座を受け、より確かな知識を得て療育機関の選択に役立てています。
次をお願いします。
偏らない知識を入れることで、保護者自身が療育方法を自分たちで選ぶ機会というものを尊重しています。
次をお願いします。
ボランティアで運営されていますけれども、石川県の人口規模ですと対象は年間15名程度ですので、問題なく回っているそうです。早い時期に多様な選択肢を提示、どの時期においても中立的に相談する場所を確保することで多様性と寛容性が担保されています。
次をお願いします。
これからは私の意見なのですけれども、聞こえにくい子供たちの最終目標は自立です。国際生活機能分類から聴覚障害を考えてみました。
次をお願いします。
「障害があるから不便(差別される)」なのではなく、「障害とともに生きることを拒否する社会であるから不便」と考えるのが社会モデルです。
次をお願いします。
2001年にWHOで国際生活機能分類が採択されました。これは、社会モデルに基づき生きることの全体像を示しています。
次をお願いします。
このモデルから考えると、聞こえにくいこと、その結果生じる言語力の低下やコミュニケーション障害、就学や就労などの社会活動の制限が生まれます。それは環境因子や個人因子によっても影響を受けます。ここに挙げたような様々な支援を強化して、聞こえにくい子供たちが聞こえる子供たちと同じように自立する社会をつくらないといけないと。この検討会もそれの入り口のところを検討しているということになります。
次をお願いします。最後のスライドです。
先週のニュースでした。ちょっとショックを受けました。聴覚障害児が事故で亡くなったときの損害賠償金額が、難聴がない場合に比較して4割という判決が出ています。聞こえにくい子供さんの8割強は難聴以外の障害を持ちません。このような現実をなくすように、聞こえにくい子供さんの価値が聞こえる子供さんの価値と同じように評価される社会をつくることというのが最終的な目標と考えます。
以上です。御清聴ありがとうございました。
それでは、私の発表まで終わりました。最初の報告を含め3つの発表に関しまして、皆様から御質問、御意見がありましたらお願いします。御発言の際は、「手を挙げる」のボタンをクリックしてください。
福島邦博先生、お願いします。
○福島(邦)構成員 島根県の福島先生にお伺いしたいのですけれども、先生から御提示がありました聾学校聾教員の専門性の確保というのは非常に重要な問題ではないかと思います。福島先生とは古い付き合いなのですけれども、福島先生御自身が島根県においてその専門性を確保するためにいろいろなことをしてもらったというか、いろいろなことで育ててもらった先生だと思うのですけれども、その一方で、今、先生は校長先生になられて、島根県では、例えば聾教員の専門性の確保あるいは一般論として専門性の担保のためにはどういうことが必要か、どういうことを手配していけばいいかとお考えでしょうか。
○福島(朗)構成員 ありがとうございます。
やはり学校経営の立場でも聾教育の専門性は非常に大きな課題になっています。本県では初任者は4年まで、それから、その後の同一校のルールが8年までとなっていまして、非常に重要な課題だと考えております。校内でも研究部と支援部という分掌が中心になって聾教育の専門性、先ほど紹介させていただきました中国教育オーディオロジーもそうですが、こういった会には島根とか米子であったときには校内全員が行ってもらう、参加してもらうとかいろいろ工夫をしながら、聾教育に少しでも関心を持って、ずっとこの後もまた戻ってこられるような、8年で出たとしてもまた帰ってきたいと思えるような、そういった取組をこつこつとやる感じでしょうか。
先ほども申しましたけれども、島根県ではようやくですけれども、運用ルールにとらわれない、盲学校と聾学校の専門性の高い学校に専任教員というものを県教委のほうで来年度から配置していただく予定になっています。その人たちが中心になって校内の専門性を維持してやっていくといったところでしょうか。あまり答えになっていないようで申し訳ないです。
○福島(邦)構成員 ありがとうございます。
○中川座長 特に聾学校が少ない県においては非常に課題になるところではないかと私も常々痛感しております。
それでは、渡辺構成員からよろしくお願いいたします。
○渡辺構成員 日本医師会の渡辺でございます。
神田先生に何点かお聞きしたいのです。神田先生は長崎県で全県を網羅してモデル事業というか新生児聴覚検査をなさっておられるようなのですけれども、長崎県は広島県なんかとよくに似ていて、離島とか僻地が結構多いと思うのですが、全県で網羅できるようなシステムなどをつくろうとか、その課題というものがもしおありになったら教えていただきたい。それをクリアしたという何とかという方策をですね。
それからもう一つは、僕の勉強不足なのですけれども、県が2分の1、それから市、町が2分の1を補助して税額で運用されているということなのですけれども、県が2分の1を出しているところというのは全国でどのぐらいの割合があるのかということです。もし先生が御存じなければ事務局で教えていただければというのが2点目でございます。
3点目は、中川先生のお話とも関連するのですけれども、基本、取っ掛かりというのはやはり先生方、神田先生や中川先生のようにキーパーソンがおられないとなかなか動かないと思うのですが、拡張性、継続性とかを考えた場合に、やはり県、自治体というのは本当はうまく活用するのがいいのではないかと僕は思うのですが、中川先生も県の医師会の取り付けは簡単だったけれどもその後が進まなかったというお話をされていたのですけれども、神田先生は県、自治体との関連もうまくできたのか、それとも、やはりなかなかハードルがあったのかというその3点を教えていただければと思うのです。よろしくお願いいたします。
○中川座長 神田先生、今のことは分かりましたでしょうか。最初はまず、離島がたくさんある長崎県においてどう運営しているかということですけれども。
○神田構成員 離島の件なのですけれども、私自身も離島に中学校まで住んでいまして、五島列島の小さな島なのですが、離島の状況をよく分かっていまして、上五島病院という離島の医療圏に行ったときに、離島の患者さんのために補聴器外来を立ち上げたのです。そして、五島列島の一番下の下五島のほうにも常勤のドクターがいて補聴器屋さんがいます。そういうネットワークを大学にいたときにつくる段階で、対馬いづはら病院、上五島病院、下五島の福江というところにある病院の3か所に補聴器の専門家、認定補聴器技能者が、これが上手な人が行けるようなシステムを構築したのです。その人が月に1度我々の施設にも来てくれていまして、長崎県の新スクで見つかった難聴のお子さんのまず補聴器適合がしっかりできて、島でもフォローアップ、メンテナンスが受けられるような体制づくりをしています。それが一番大きかったかと思います。
そして、今年、長崎大学の吉田准教授にお願いして、資料の最後のほうにもありますが、長崎県の難聴児の支援のモデル事業に参加させていただきまして、その研究の中で遠隔医療のシステム、そして、遠隔で人工内耳のマッピング、フィッティングができるような2つのメーカー、メドエルとコクレアの2つとも遠隔でマッピングできるようなシステムをつくりました。先日も離れたところのお子さんの患者さんの遠隔マッピングを地元のSTと連携してやったりしましたので、このコロナの時期になってこういう遠隔医療が広がってきていると思うのですが、これに乗っかってといいますか、今やっているZoomもそうなのですけれども、オンラインでできるメリットというのは少なからず離島医療圏の離島で困っている地域では成果が上げられるチャンスになるのではないかと、さらに今後よくなっていくのではないかと思っています。
それから、費用の件なのですが、今は補助は市町村側に財源が回っていると思います。最初の頃は費用が県からも半分ぐらい出ていたと思うのですが、子育て支援制度といいますか、国のほうから地域で子育て支援のためのお金が下りているはずですので、市町村はそれを使うべきだということで、市町村で費用が賄われています。
以上です。
○中川座長 あと、神田先生への3番目ですね。県の医師会との関係をどのようにしているかという質問です。
○神田構成員 県の医師会の担当理事に橋本先生という、もう長年医師会の理事をしておられる先生がいらっしゃって、この人が長崎県の補聴器の、私はキーパーソンなのですけれども、この先生が補聴器相談員講習会とかいろいろ福祉のことも手伝っていただいています。ですので、この先生と相談しながら広報といいますか耳の日だとかいろいろなところの広報で新スクのことだとか難聴児の教育とか人工内耳や補聴器の療育のこととか、講演会、市民講座とか、耳の日の講演会もありますけれども、いろいろなところでの啓蒙とかにはすごく力を注いでいただいていますので、県の医師会とも十分タイアップはできています。
それから、小児科の先生もすごくいい先生がいっぱいいらっしゃって、近藤先生という症候群性難聴とか遺伝子の非常に有名な先生がいらっしゃったり、森内先生は、今、コロナウイルスのワクチンでテレビによく出られていますけれども、そういうワクチンの分野でたくさん、これまでもサイトメガロウイルス、風疹についてもベトナムまで行って援助をしているような先生ですので、すごくいい先生方に、産婦人科の先生方にもすごく恵まれていて、今、県の医師会長とこれまでの長崎大学の病院長が産婦人科の先生でしたので大学で取りまとめたり、あるいは医師会との取りまとめも非常にスムーズに連携ができたのはその辺のおかげかと思っています。いい人に恵まれたというのが答えになっていないかもしれないのですけれども、そういうところです。
○中川座長 ありがとうございました。
それでは、時間がありますので次に進みたいと思います。
続いて、議事(3)「難聴児の早期発見・早期療育推進のための基本方針案について」、事務局から説明をお願いします。
○平田障害保健福祉部企画課課長補佐 障害保健福祉部企画課の平田です。資料3について御説明をさせていただきます。
本検討会では、都道府県で難聴児支援に関する計画を策定いただく際の指針となる基本方針の作成を最終目的としておりますので、今回、その第一段階ということで基本方針の位置づけと構成案について皆様に御議論いただきたく存じます。
まず、位置づけについてです。都道府県における施策の推進というものは、関連施策が都道府県の計画に盛り込まれることで推進されるということが一般的にもございますが、これまで難聴児支援については自治体が策定することとなっている障害児福祉計画の中では、「保育、保健医療、教育等の関係機関との連携は極めて重要であり、都道府県においては児童発達支援センターや特別支援学校等を活用した、難聴児支援のための中核的機能を有する体制の確保を進めるとともに、新生児聴覚検査から療育につなげる体制整備のための協議会の設置や、新生児聴覚検査から療育までを遅滞なく円滑に実施するための手引書の作成を進め、難聴児及びその家族への切れ目ない支援の充実を図ることが必要である」と。また、「難聴児が適切な支援を受けられるように、令和5年度末までに各都道府県において、児童発達支援センター、特別支援学校等の連携強化を図る等、難聴児支援のための中核的機能を有する体制確保をすることを基本とする」とされております。
そのほかに、教育振興基本計画においても「聴覚支援学校のサテライト教室の実施」などが都道府県計画に盛り込まれている事例もございまして、各都道府県で工夫をして計画の中に盛り込んでいただいているという状況にございます。
資料3の2ページ目から4ページ目にかけまして、本検討会の構成員として参画していただいています秋田県、埼玉県、静岡県各県の計画において、どのように難聴児支援関連施策が都道府県計画に盛り込まれているかというのを事例として御紹介しておりますので御覧ください。
1ページ目にお戻りいただきまして、2ポツの計画の方向性でございます。地域の実情というのは自治体によって異なっておりまして、福島校長からも御紹介がありましたが、県内といっても広域である場合もございますし、地域で難聴児支援に中心的に携わる機関が異なっているということも想定されます。そういった事情も考慮した上で基本方針を作成する必要がございますので、今回作成するに当たっては、自治体において最低限、あるいはまず第一段階に取り組むべき内容を中心に盛り込んではどうかと考えております。もちろん今回の検討会で既に御紹介いただいたような自治体さんにおかれましては、既に地域の難聴児支援の中核機能が整備されていたり、関係機関の連携も進んでいるケースもあろうかと思いますので、そういった自治体に関してはより一層取組を推進いただけるような指針を基本方針としてもお示しできればと考えております。
また、令和2年度の調査研究の報告書の際にも申し上げましたが、自治体における難聴児支援に関する取組というのが進まない背景として担当部局が明確でないということが指摘されております。難聴児支援といっても母子保健、医療、福祉、教育という幅広い分野にわたって支援が必要とされていることが背景としてございますので、計画策定部局のみならず関連する複数の部局が積極的に連携を図っていただきまして、主体的に難聴児支援に取り組んでいただけるような基本方針の作成を目指していく必要があると考えております。
また、資料1枚目の3ポツを御覧ください。基本方針が作成されました暁には都道府県計画に反映いただくということになりますが、その反映先として冒頭に御紹介いたしました障害児福祉計画や教育基本計画のみならず、既存の関連計画への反映ということもあり得ること、あるいは難聴児支援計画を新たに都道府県で1つ作成いただくということも考えられます。位置づけについては以上でございます。
次に、構成案でございます。資料の5ページ目以降を御覧ください。
まず、これまで第1回から3回にわたって多くの方々にヒアリングに御協力いただきましたことを感謝申し上げます。第1回、第2回のヒアリングの内容のみで恐れ入りますが、これまでいただいた御意見について内容ごとに分類分けをさせていただきまして記載させていただいております。
分類は大きく7つに分けさせていただきました。順に、関係機関などの連携に関すること、新生児聴覚検査体制の整備に関すること、保護者に対する支援について、学校における取組に関すること、難聴支援に携わる人材の育成に関すること、主にコミュニケーションに関することですけれども選択に関する情報などについてのほか、経済支援などに関する事項ということにしております。
本日のヒアリングでいただいた意見についてももちろん今後基本方針案には盛り込ませていただく予定でございます。
一部意見を御紹介させていただきます。
【連携に関すること】としましては、支援に関わる様々な職種の方が目標をすり合わせて互いの役割を認識し、情報共有などを円滑に行うことが必要であるとの御指摘をいただいております。新生児聴覚検査体制の整備については、受検率の向上や検査後の対応のマニュアル化などが必要であると。
次のページの【保護者に対する支援】につきましては、難聴児の保護者に寄り添った支援として、多様な相談ができる環境や多様な情報に触れ選択できる環境の整備が重要といった御指摘をいただいております。
【学校における取組】に関しましては、特別支援学校に言語聴覚士を配置するといった御意見。
次のページの【人材育成】についてです。難聴の特性をよく理解した指導者を育成するための研修の実施や、地域の資源についての情報を集約して伝える人材の必要性が指摘されております。
【選択に関する情報等】については、全ての人に音の聞こえが保障されてよいという御意見や、全ての人に手話が保障されるべきという御意見。
次ページ、補聴に関する助成や難聴児支援に当たっての考え方です。支援機関のバックアップが必要といった御指摘もいただいております。
お時間の関係で全ての御意見を御紹介できずに申し訳ございませんが、これら頂戴した御意見で都道府県の計画として推進していくものを基本方針に盛り込むべく、最終ページに構成案をお示ししております。
1つ目の総則としては基本方針の作成目的、難聴児支援の必要性と難聴児支援全体に通ずる考え方を説明する章を冒頭に設けております。
2つ目に現状と課題認識ということで、ヒアリングで御指摘があったような内容を端的に説明する章。
3つ目に具体的な難聴児支援の方策を記載する章を設けております。この中に設ける項目といたしましては現状5つ挙げておりまして、1つ目に「新生児聴覚検査体制の整備」に関すること、2つ目に「地域における支援のあり方」という題をつけておりますが、イメージとしては地域に存在する支援機関の連携の必要性について記載するイメージでございます。3つ目は保護者に寄り添った支援ということで、偏りのない情報提供であるとか、ライフステージに応じた切れ目のない支援を行うための施策を盛り込むことを想定しております。4つ目は「自治体の役割」ということで、特に自治体がどういった役割を果たすか、1から3と重複する部分もあろうかと思いますが、こちらの項目を参照いただければ自治体の皆様がどのような計画をつくればいいのかということがイメージできるような項目になるように作成できればと考えております。最後に、地域の実情に応じて実施いただく難聴児支援の方策を「その他」として盛り込める項目も設けております。
雑駁ですが、説明は以上でございます。
○中川座長 ありがとうございます。
第4回以降はこれを具体的に詰めていくということになろうかと思います。
まず、大枠の点で御意見がある先生がおられたらお受けしたいのですけれども、よろしいですか。
この検討会には様々な分野の代表の先生が参加されています。まだ御発言の機会を設けていない先生方がおられますので、座長から御指名させていただきます。5分程度で御意見をいただければと思います。
それでは、突然で申し訳ないのですけれども、教育関係の専門家として武居先生、よろしくお願いします。
○武居構成員 御指名ありがとうございます。金沢大学の武居と申します。よろしくお願いいたします。
私からは、一応3点、時間があれば4点お話ししたいと思います。
1点目ですけれども、先ほどのお話にもありましたように、全ての聞こえない子供たちに通用するというか適用できる指導法というのはないというのがまず最初に理解すべきことなのかなと思います。人工内耳もAVTも手話もそれぞれが合った子供たちもいればそうではない子供たちもいるのだということを前提にする。そうなったときに様々な指導法について、あるいは様々なアプローチについて平等に保護者に提供する機関というか機会がまず必要だということになります。その役割を療育機関が担うとなると、療育機関は既に特定の指導法を使いながら指導しているわけですから、どうしても自分のところで使っている指導法について詳しく説明するということになり平等性が担保できないということになりがちなわけです。その場合には、複数の療育機関がある場合には、そのどの療育機関にも属していない立場の人が平等な情報提供を行う必要があり、それが専門職になるのではないかと私は考えています。
先ほど中川先生から御紹介いただいたみみずくクラブというのはまさにそういうようなバックグラウンドがあって、聾学校でもないしもう一つの療育機関でもない人間が担当することによって2つの療育機関の平等な情報提供ができるということが必要かと思います。これが1点目になります。
2点目ですけれども、今までの話にはあまり出てこなかったかもしれませんが、これまでの聾教育というのは、保護者に指導者の役割というのを期待してつくられていた。特に聴覚口話法とか、AVTもそういうようなところがありますけれども、そういうところが強いと思うのです。
その場合に、例えば、独り親家庭であるとか共働きでないと生活ができないという世帯収入が高くない御家庭の場合には、本当はそういう指導法で指導したいのだけれども経済的な理由で諦めざるを得ないということが起きてくるわけです。
また、仮にその収入面では問題なかったとしても、多くの場合、家庭の誰が指導者の役割を担うかといったらお母さん、女性に多くの場合なるわけです。ところが、今は女性でも多くの方が働いていますし、女性のキャリアということからしても、我が子が聞こえないために仕事を辞めて子供の教育をしなければいけないということについて、やはり問題があるのではないかという気がします。もちろんそれを望んでいる方についてはそれができるように保障することが必要ですけれども、そうでない場合には、保護者ではなくて社会がその教育の役割を担う、そういう必要性があるのではないかと思います。
具体的には、聾学校でいえば幼稚部は3歳からですけれども、ゼロ歳、1歳、2歳の子供たちはどうしても家庭でということになります。その間、幼稚部の下延長をして、ゼロ歳、1歳、2歳の子供たちも幼稚部の子たちと同じように、週1日ではなくて複数回指導できるような機会をつくるであるとか、発達支援センター、多くの場合は毎日通うのではなくて週に1回とか2週に1回ですけれども、例えば、発達支援センターとその保育園というのを両方持っているようなところをつくって、保育園に行きながら週に1回はそのお隣にある発達支援センターで専門の指導を受けるとかそういうような、今のは単なる例示にすぎませんけれども、保護者に指導者になってもらう以外の選択肢というのをつくっていく必要があるのではないか。また、独り親家庭とか世帯収入が低い方でAVTとか聴覚口話法とかで指導したいという場合には、収入を保障するような制度なんかも必要なのではないかと考えました。これが2つ目です。
3点目は、これもあまり今日の中で話が出てきませんでしたけれども、中軽度難聴のことについてです。手帳が取れないためにいろいろな福祉的なサービスとか教育的な恩恵を受けにくい子供たちになるわけです。一方で、適切な時期にちゃんと教育をすればかなり伸びるということも期待できる、そういう子供たちとも言えるわけです。聾学校で考えると、ゼロ歳から2歳までは教育相談の中で中軽度難聴の子供たちは指導できるし、小学校以降であれば通級という形で特別な指導を受けることはできるのですが、問題は、言語獲得に最も重要だと考えられる3歳から5歳までの時期が、どうしても聾学校だと幼稚部に入学すれば適切な指導を受けられるのですけれども、軽中度難聴で入学というのはなかなかあまりないですから、そうなると、学期に1回とか年に何回という形で、この言語獲得に一番大切な時期に適切な指導が受けられず結構大変な状況になって、就学後にいろいろなところに行くということになりがちなので、この部分も、せっかくこういう機会があるのですから、どんなふうに支援したらいいかというのを考えられたらいいかと思います。
すみません、長々と話をしましたが、私からは以上3点の問題点をお話しさせていただきました。
○中川座長 ありがとうございます。
それでは、引き続きまして、言語聴覚士の代表ということで、まずは城間先生、それと現場に出られているということで、その次に問田先生に発言をお願いしたいと思います。それでは、最初に城間先生、よろしくお願いします。
○城間構成員 国際医療福祉大学の城間と申します。どうぞよろしくお願いいたします。言語聴覚士の立場から話させていただきます。
先ほど、武居先生のお話にもございましたけれども、この基本方針の中に、軽中等度難聴がその他の枠になっていたかと思いますので、これはぜひ別項目としてきちんと取り上げていただければありがたいと思います。重度のお子さんたちはサービスを受ける機会もありますし多いのですけれども、数的にも圧倒的に多いのが軽中等度難聴児だと思います。その難聴があることによって学習の遅れとか交友関係が構築しにくいとか、心理社会面への影響というのがあって、これがいかに大きいかみたいなことは、それによって本来はきちんと聴覚保障がされて指導を受けていれば本来の本人が持っている能力を発揮することができるはずなのですけれども、そこら辺が十分にフォローされていないのではなかろうかというのが私の疑問点でございます。ぜひこの機会に、早期発見・早期指導といいますけれども、どうしても就学前が対象になりやすいかなと思いますので、中学、高校までを含めた、ライフステージに応じたという話が先ほどございましたけれども、ライフステージに応じて切れ目のない支援というのを、高校ぐらいまでのことを視野に入れて支援ができれば、難聴児の本当の意味での支援になるのではなかろうかと思いましたので、軽中等度難聴に対する支援をよろしくお願いいたします。
現在、小学校では通級とかがあるとは思いますけれども、本当に子供たちがそこにきちんと行けているだろうかということも問題ではなかろうかと思います。補聴機器の保障というのももちろん大事ですけれども、それに対して言語聴覚士として、教員とは別の立場で、今、通級は教員が行っていると思いますけれども、言語、コミュニケーションの専門家として言語聴覚士を療育・教育システムの中に位置づけるということが大事だと考えております。
先ほど、島根とか鳥取とか長崎とか福岡とかそれぞれが連携がうまくいっているという施設では言語聴覚士を雇用して、そのチームとして機能しているということがよく分かって本当にありがたいのですけれども、全国的に見ますとまだまだ雇用が少ないということと、それから、非常勤という立場なので、それから、実習助手としての雇用ということなどが現実かと思います。そうすると問題なのが、何かアドバイスとかということはできても、実際に子供に対して評価をしたり指導をしたりという直接介入ができないというものが課題かと思っております。ですから、可能であれば、今の枠組みでは特別支援学校教員認定試験というものがありますし、そのようなものをもう少し活用して言語聴覚士を正規雇用にするということとか、実際の支援ですね、言語コミュニケーションの評価、指導に実際に関われるということにしていければ、子供のためによいかと思います。
そして、肝心の言語聴覚士なのですけれども、残念なことに、学部時代に言語聴覚領域で実習をしていないというSTも極めて多いです。それはどうしてかといいますと、言語聴覚領域での雇用が少ないということもありまして、言語聴覚士を専門とするSTというのが少ない現実がございます。特に小児領域に関しては限定されるということになりますので、聴覚を専門とする言語聴覚士の育成というのも、現在、大きな課題でございます。そのためにはではどうしたらいいかと。
これは非常に突飛な、私の極めて個人的な考えなのですけれども、3つございます。
一つは、現在、言語聴覚士協会で認定講習会というのを行っておりまして、聴覚領域もあるのですけれども、受講者が本当に年に10名もいないという状況なのです。ですから、そういう受講した人たちにちょっとプレミアムを与えるということも一つの提案かと思います。
それから、本当にこれは突飛な提案なのですけれども、現在、言語聴覚士養成校が80くらいあるのですけれども、そういう養成校の中で医療施設を併設している、そして小児難聴診療を標榜している、あるいは難聴児の療育施設とか児童発達支援施設とか放課後デイサービスというのが近隣にある養成校を指定して、モデル的に半年から1年かけて実践的な卒後研修ができると、聴覚に特化した実践的な卒後研修ができるという場と機会を与えていただきたいと思います。そのためには受講者に対する経済的な支援も必要ですし、それを受け入れる養成校とか療育・教育施設という、特別支援学校も含めて児童発達支援施設も含めて、やはり現実に支援をするというのは子供を見なければ分からないし、講習会をちょっと受けたから技能が身につくかというとそうではありませんので、少なくとも半年という研修が必要ではないかと考えます。
ちょっと長くなりますけれども、もう一つだけ。専門性を高めるためには大学院教育もとても大事で、これは難聴議連の「Japan Hearing Vision」にもありましたけれども、大学院教育というのがございました。しかし、聴覚に特化した大学院課程というのは日本ではほとんどありません。国際医療福祉大学が私が勤めている大学なのですけれども、そこの修士課程に言語聴覚分野というのがあります。けれども、これは失語高次脳機能の精神言語領域を専門としている人がほとんどで、聴覚もそれに統合されたカリキュラムになっておりますので、聴覚が独立しているわけではないのです。博士課程では聴覚領域として独立したプログラムになっておりますけれども、年に2~3名しか入学していませんし、ほかの大学で、養成校で聴覚に特化した博士課程を持っているというのはあまり耳にしませんので、なかなか専門性が伸びないというところで、教員としては非常に危機的な状況だと思っております。
いろいろ突飛な意見を申し上げましたけれども、今、日本の聴覚領域、特に小児聴覚領域を取り巻く現状というのは憂慮すべきものがあるかと思いまして、意見をさせていただきました。失礼いたしました。
○中川座長 ありがとうございます。
養成校のモデル校というのは私も思いつきませんでした。そういった斬新な取組もこういう指針に組み入れていければと考えております。
それでは、現場で言語聴覚士として働きかつ重複障害のほうの代表として参加しておられる問田先生、よろしくお願いします。
○問田構成員 全国盲ろう難聴児施設協議会の副会長をしております問田といいます。よろしくお願いします。
当協議会で常に話題に上がる課題としてみんな考えているところが、やはり保護者支援在り方というのと、人材確保、人材育成についてです。
まず、保護者支援なのですけれども、今回の検討会でもいろいろと御意見が出ていたと思うのですが、実際に現場で私たちが感じていることというのは、まず、独り親または共働き家庭が物すごく今、増えているということです。私たちが入職したときに比べて、保護者への支援の在り方というのがそれに伴って大分変わってきています。やはりお母さん方は収入のために働かないといけないということはもちろん分かるのですけれども、本当に収入のためだけなのか、難聴である我が子に向き合うことがやはりすごく苦しくて、そのために仕事を理由にして子供を預けているのではないか、そのように感じられるようなケースというのがたくさんあります。保護者支援でついついやはり家庭での関わりが大事ということを強く私たちも言いがちなのですけれども、そういうなかなかお子さんに向き合えない保護者の方々に支援をどう届けていくかということも、この構成の中に入れていただきたいということを思っています。
それから、人材確保、人材育成なのですけれども、なかなかやはり言語聴覚士の分野の中で、今までもずっと言われているように難聴とか、特に小児難聴に関わる人がすごく少なくて、すごく狭いところで働く、就職する場所も少ないというので、言語聴覚士を目指す学生さんの中でも、こういう仕事に就きたいと考える方は少なくないのかもしれないのですけれども、現実的にそこに入りたいというふうに動かれる方は少ないと聞いています。なので、実際就職を希望される方が少ない上に、やはり実際に飛び込んでみると、保護者の方々への関わりだったり、現場がすごく激務だったりということもあって、長く続けるということが難しく、今、私たち協議会に所属している児童発達支援センターも職員が二分化しているという問題がよく上がっています。ベテランは長く勤めている職員もいるのだけれども、若い人たちがどんどん入っては辞め入っては辞めということで続かないということがあります。ですので、やはりそれは先ほど城間先生もおっしゃったように、育成の段階というところでのアプローチというのもとても大事ですし、また、育成が今、個々の施設に任されていることがすごく多いので、やはり一括して行政が何らかの形での研修とかそういうこともしていただければありがたいと思います。
以上です。
○中川座長 ありがとうございました。
盲聾に関しては全然違う次元の問題も含んでいると思うのですけれども、その点に関しては先生、いかがでしょうか。
○問田構成員 盲聾は入所施設が多いので、入所というところでの課題になっています。専門性というのがやはりすごく求められるお仕事でもあり、また、入所ということで生活全般の支援ということになります。特に生活をしていく上でいろいろな経験をしていかないといけない。けれども、その経験を支援するための職員の技術とか知識ということをどう育てていくかということが、今おられる職員の方々のすごい悩みということはあります。また、今ということになると、やはりコロナの感染を防ぎながら、盲ということになると距離感だったりどのように触れていくかとかというところがあるので、日々恐怖を感じながらいろいろな支援をしているということは物すごく今の課題となっているという報告があります。
○中川座長 ありがとうございます。
それでは、今度は全体の発達、子供さんの発達を見ているという立場から、小児科の小枝先生、よろしいでしょうか。
○小枝構成員 成育医療研究センターにおります小枝と申します。
乳幼児健診の身体診察のマニュアルなんかの編集を担当させていただいた立場から、小児科の先生方に聴覚障害を健診で見逃すなよという研修をさせていただいておる者です。やはり新生児の段階で聴覚のスクリーニングをしていただくのが一番だと考えておりますので、ぜひともこれは100%を目指していただけるとよいかと思っております。
それから、聴力障害のお子さんのお話で、いわゆる聴力がどうかということが非常に大事な焦点になるわけですが、子供はやはり聴力だけではなくて全体の発達の問題もございます。発達の早い子もいればややゆっくりめの子もいたり偏りがあったりということもございますので、特に社会的なコミュニケーションがちょっと苦手という子がやはり聴力障害のお子さんの中におられますので、療育に行く前、あるいは療育に行ってからでも全体的な発達を診る、そういう小児神経科医が関わるとよいのかなということを思いました。
武居先生が療育に行く前にやはり子供を多面的に評価するというのが大事とおっしゃいました。私も全くそのとおりだと思います。また、ある方法で療育していても合わなくなってきたとか、思ったようにはちょっと変容が見られないといった場合には、やはり発達全体で見直しをしていくということはとても大事なのかなと思いました。
中川先生のお話にありましたけれども、聴覚支援センターという構想は非常に魅力的だと思いました。そういった中にそういった発達全体が診られる小児科医、それから、子供はやはり御家族の中で、家庭の中で育つ必要がございますので、保護者のいろいろな心理的な面をサポートする心理士なんかも欠かせないのではないかと思いました。
それから、STの先生から御指摘がございましたけれども、聴能に強い言語聴覚の先生がさほど多いわけではないので、これの養成も非常に大事で、STの養成校が社会教育の一環として、現場に出た言語聴覚士なんかの再教育の場なんかを構築して、聴覚支援センターとリンクしてそういった研修を続けるなんていうのもあってよいのではないかと思いました。
以上でございます。
○中川座長 いろいろ新しい切り込みからの御意見、非常に参考になりました。ありがとうございます。
それでは、産科医会の代表として、関沢先生、お願いします。手元に資料を配付していると思います。よろしくお願いします。
○関沢構成員 産婦人科医会の関沢です。
産婦人科医が関わりますのは新生児聴覚検査ということで、その現状について簡単にお話ししたいと思います。
資料を御覧いただきたいと思いますが、新生児聴覚検査ですけれども、2000年からモデル事業としてスタートして、2007年に一般財源化されたというところであります。その後、厚労省などから公費助成を求めるような通知が何度も出されておりますけれども、実際、実態としてはなかなか進んでいないというのが現状かと思います。
2枚目のスライドを見ていただくと、産婦人科医会で調査しました、分娩取扱施設の中でどれくらいの施設が聴覚検査ができるかという状況を見ておりますけれども、2020年の段階で98%の分娩施設で聴覚検査が可能ですという状況にどんどん高まってきているという状況にあります。
次のスライドを見ていただきますと、実際、対赤ちゃんでどれくらい検査が行われているかという割合を見ておりますけれども、都道府県によってかなり差が出てきているというのが実態であります。全体でこの調査では87%の赤ちゃんが受けているというデータが出ております。
次のスライドは、令和元年に厚労省が調査した結果を示しておりますけれども、都道府県によってしっかり公費助成しているところもあれば、全くその辺が進んでない自治体も多いということで、その辺の格差が非常に大きいということがお分かりいただけるかと思います。
今日、一番見ていただきたかったスライドが次のスライドになります。公的補助がある地域とない地域でこの検査を受けるかどうかと、受検率がどう違うかということで見ておりますけれども、公費補助がある地域では96.6%検査を受けているのに対して、公費補助がないと84.9%ということで、10%くらいの差があるということになります。公費補助がある地域でも100%にならない状況というのは、公費助成の金額が全額ではないことによるということになります。
次のスライドですけれども、公費助成を行う自治体の数はすごくよくなってきていると思います。ただ、現状におきましても3分の1の自治体はまだ公費助成が行われていないというのが我が国の現実であるし、自己負担がなくて全額補助しているのが2割くらいの自治体にすぎないという状況もあります。そういったことから、やはりこの検査を親の経済状況に依存しないで全ての新生児がちゃんと受けられるようにする必要があるというのが産婦人科医会が考えていることでして、無料でこういった検査ができるような体制をやはり考えていただきたいなということで、今、様々お願いしているところということになります。現状、そういった状況にあるということを、まず皆さんに知っていただきたいということで発言させていただきました。
以上です。
○中川座長 ありがとうございます。
福岡市でも起きましたけれども、OAEと自動ABRの金額の補助を、差をつければみんなOAEに流れてしまうという事象も起きます。だから、やはり全額補助を目指していくべきではないかと私個人も考えております。
それでは、医師会の立場から、渡辺先生、よろしくお願いします。
○渡辺構成員 日本医師会の渡辺でございます。
私は医師会の立場でもあり小児科医の開業医なので、実際に子供の健診をしたときの印象とその2点から意見を述べたいと思います。
一点は、構成案のところに医療と書いてあるのですけれども、実際には医療というのはやはり専門医の先生、例えば、耳鼻科の先生とか産婦人科の先生とか小児科とかという医師と、それから、医師会という組織という2つの意味があるように思っております。当然、産科医の先生が関わらなければ動かない、特に大学の先生とかも関係すると思うのですが、行政との交渉というときは、多くの場合にはどうしても医師会というほうが各医会とかアカデミアよりも交渉権があるといいますか話すルートがあるように思います。
やはり実態、特に先ほど関沢先生がお示しになられた補助金というか公費の額ということに関しましては、やはり行政から行政、つまりトップダウンに厚労省からなかなか下り得ないのであれば、医師会のほうから働きかけるというルートもあるように思いましたので、このような形のデータをもう少しこちらのほう、つまり医師会のほうから都道府県の医師会のほうに提示して、そちらからも働きかけてこの格差をなくしていきたいと思っております。その医療というところをもし構成として書かれるときは幾つかに分けて、医療というふうにまとめておかずに、さっき申し上げたような形で医師会という組織と、それから、専門医の先生方というところの活用の仕方をうまく分けて書いたらどうかと思うし、その辺りが誤解のないようにしていただければと思います。
それから、自治体の支援というところなのですけれども、やはり市、町と県という立てつけをうまく分けて示していただいたほうがいいと思います。私も県のほうの医師会のときには障害者の委員会が入っていたのですけれども、県内の市、町の格差というのも非常に多くて、それがまた全国にいくと今度は都道府県の格差ということに広がっていく感じなので、やはり県内からも市、町の格差をなくそうと思った場合は、やはり県がそれを指導していって市、町のほうに格差をなくしていくようなシステムがないとなかなかうまくいかない。
それから、県が全部お金を出してくれるわけではないので、市、町の財源のあるなしで、一般財源が入ったといってもいろいろなところで使われることが多いですので、その辺りの仕組みを、自治体という立てつけを明確にされたほうがいいように思います。
それから、実際に小児科として開業医として健診をやったりする場合に思いますのは、やはり保護者の認識というのが、声が聞こえないのではないですかという話をしたときも否定的な印象を持って医師に近づかなくなってしまうとか、やはり子供に関しての異常を言われたときの母親の動揺というのは結構あるものですから、ある程度、やはり妊娠をされた時点で子供さんに対してのいろいろな検査があるのだということを事前にある程度啓発していただくということは必要なのではないかと思います。
それから、すぐに検査に結びつかずに心理的な支援ということも必要だと思います。だから、事後措置に検査のスクリーニングということも大事だと思うのですけれども、保護者への心理的な支援ということも含めて支援体制ということを考えていただければいいかと思います。
以上です。
○中川座長 ありがとうございます。
行政、医師会を含めた広い範囲での御意見、非常に参考になりました。ありがとうございます。
それでは、今、実際に関わっておられる方々から御意見をいただきました。酒井先生、先生はちょっと立場が違うので、先生から見た今回の議論について御意見いただければと思います。よろしくお願いします。
○酒井構成員 酒井です。簡潔にお話しいたします。
まず第一に、既に議論が出ていますが、ろう教育の専門性ということをきちんとうたわないと、問題の正しい解決にはならないと思います。ですから、「特別支援教育」という形で様々な障害が今一緒になっておりますが、なぜろう教育に特殊性があるのか、専門性があるのかということをまずはっきり理由づけをして、それを出発点に置かなくてはいけないと思います。私の専門は言語脳科学ですが、その理由は言語獲得にあると考えます。教育的な立場からすると、言語も含めて教育なのだという考え方が非常に根強いのですが、実際、母語の獲得から明らかなように、母語というのは、基本的に訓練をしなくとも身に着く生得的な能力であるわけです。ですから、少しでも聴覚障害があれば、残存聴力の個人差にかかわらず、言語能力が自然な形で獲得できるような介入が必要です。もし音声が入ればいいですが、そうでない場合には手話言語を母語として獲得させるということです。ですから、訓練をさせることが前提で音声言語の学習をさせるという発想に立ちますと、今までの負の遺産をもう一回繰り返すことになりかねません。自然言語というのは等しく音声もしくは手話によって獲得されるものなので、ぜひ学習や訓練という視点を捨てて、その前にそれぞれのお子さんが自然に習得できる言語は一体何なのであるかということに立ち返っていただきたい。そのために必要な手話環境のサポートを提供するということをきちんと盛り込んでいただければ、一つ一つの問題はおのずから解決していくと考えております。
以上です。
○中川座長 ありがとうございます。
手話ということの御意見をいただいたと思います。非常に大切なことだと思います。
ほかに御意見がある構成員の方はおられますでしょうか。
河本さん、よろしくお願いします。
○河本構成員 静岡県こども家庭課長の河本でございます。
当事者団体の代表の方、委員の先生方から、県として事業を進めていく上での貴重な御意見をいただきまして本当にありがとうございます。計画を今後策定していくということで、事業を進めていく自治体の立場で2点確認とお願いをさせていただきたいと思います。
まず1点目は、構成案の関係にもなるのですけれども、静岡県としては早期療育を進めていくに当たりまして、エビデンスに基づく効果的な療育プログラムの確立、専門人材の確保が必要であり、課題として考えています。この点は県独自の対応はなかなか困難な状況ですので、国の積極的な対応支援をお願いしたいと考えております。療育プログラム、コンテンツについて基本方針の中ではどのように扱われるのか教えていただきたいというのが一点です。
もう一点は、データベース化につきまして、資料の5ページに課題やポイントとして、【新生児聴覚検査体制の整備】の2つ目に「新生児聴覚検査の結果の共有と、プライバシーの保護の関係を踏まえた市町村における情報の取り扱いの整理が必要」ということで、これにつきまして、成育基本法15条第1項で、「国及び地方公共団体は」、少し飛ばしますが、「個人情報の特性に配慮しつつ、成育過程にある者に対する予防接種、乳幼児に対する健康診査及び学校における健康診断に関する記録の収集及び管理並びにその情報の活用等に関する体制の整備、当該情報に係るデータベースの整備その他必要な施策を講ずるものとする」と規定されております。このデータベース化につきまして、その個人情報の保護の観点から、その情報の入手、活用に課題がどうしてもあるかと思うのですけれども、それと、この成育基本法とデータベース化につきましての考え方についてまた整理して教えていただきたいと思います。よろしくお願いします。
○中川座長 ありがとうございます。
最後の部分はもう福岡では既に個人情報を集めていまして、当たり前ですけれども、これに関してはインフォームドコンセントがあってきちんとした管理になっていますし同意書を取っています。それに関しては、もう常にそれを破棄してくれという権利を持っているということを明記しておりますので、そういう形でプライバシー保護のデータの管理というのは取り扱っております。答えになっていますでしょうか。ちょっと違いますか。
○河本構成員 支援センターのほうでそのデータを活用していくということを希望しているのですけれども、そういうところまで踏み込んだ対応ができるのかどうか、法律上そこまで求めているのか、あくまで個人的に個人が個人の情報を蓄積、閲覧していくというところまでのものなのか、その辺の整理が成育基本法ではどこまでを求めているのかをちょっと。整理できているのか、そこまで求められているのかどうか、それをまた教えていただければと思っております。
○中川座長 分かりました。法的な問題になりますので宿題というふうにさせていただきます。
ほかに特になければ、大体時間になりましたけれども、いかがでしょうか。ありがとうございます。
それでは、本日、委員から出てきました御意見につきましては事務局で整理していただき、次回以降の検討に適宜反映していただくようお願いいたします。
最後に、議題(4)「その他」について、事務局からお願いします。
○源河障害保健福祉部企画課長 本日は、御多忙の中、御議論いただきましてありがとうございました。
第4回検討会は7月28日水曜日の開催を予定しております。詳細は別途御連絡させていただきます。
以上です。
○中川座長 円滑な進行、先生方の活発な御意見、本当にありがとうございました。充実した会になったと思います。
それでは、本日はこれで閉会といたします。皆様、ありがとうございました。
 

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