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2021年5月28日 難聴児の早期発見・早期療育推進のための基本方針作成に関する検討会議事録

社会・援護局障害保健福祉部

○日時

令和3年5月28日(金)10:00~12:00

○場所

ビジョンセンター永田町
(東京都千代田区永田町1-11-28 合人社東京永田町ビル8階)

○出席者

中川尚志座長、新井敏彦構成員、河本大輔構成員、神田幸彦構成員、小枝達也構成員、酒井邦嘉構成員、城間将江構成員、鈴木康之構成員、関沢明彦構成員、武居渡構成員、問田直美構成員、福島朗博構成員、福島邦博構成員、細井裕司構成員、渡辺弘司構成員

○議事

○源河障害保健福祉部企画課長 ただいまから第2回「難聴児の早期発見・早期療育推進のための基本方針策定に関する検討会」を開催いたします。
皆様方には、お忙しいところ御参加いただき、ありがとうございます。
初めに、議事の進め方や御出席者の御紹介など、事務局にて説明させていただきます。よろしくお願いいたします。
まず、本日の議事の進め方です。
本日の検討会は、オンラインでの開催です。座長から御発言を希望される方を募りますので、希望の方は挙手を、オンライン出席の方は「手を挙げる」機能もございますので御活用ください。
座長から御発言される方を指名させていただきますので、指名された後、発言を開始してください。
御発言の際は、まずミュートを解除し、お名前を名のっていただいてから御発言をお願いします。発言後は、マイクのスイッチをオフにしてくださいますようお願いします。
なお、操作方法や設定について、事前にお送りしている「会議の開催、参加方法について」を御参照ください。
議事途中に何かトラブルがありましたら、事務局までお問い合わせください。
続いて、資料の確認です。
本日の資料は、議事次第、資料1から資料7-2まで、参考資料となっております。
資料はホームページにも掲載してございますので、お手元にない場合はそちらを御覧ください。
続きまして、本検討会の構成員に交代等がありましたので、御紹介させていただきます。参考資料の開催要綱別紙、裏面を御覧ください。
静岡県健康福祉部こども未来局こども家庭課長は、御異動により、髙橋真一朗様から河本大輔様に、同じく埼玉県福祉部障害者福祉推進課長は、御異動により、村瀬泰彦様から鈴木康之様に交代となりました。
なお、秋田県教育庁特別支援教育課長でいらした新井構成員につきましては、4月より秋田県立聴覚支援学校長になられましたが、引き続き検討会構成員をお務めいただきます。
本日は、関沢構成員が遅れて御出席の予定です。
本日、事務局は、障害保健福祉部、子ども家庭局母子保健課、文部科学省初等中等教育局特別支援教育課が出席しております。
事務局からは以上です。
それでは、以降の進行は、座長にお願いしたいと思います。
○中川座長 それでは、議事に入ります。
本日は、基本方針に盛り込む内容として、7名の皆様からヒアリングを行いたいと思います。
前半は、全日本ろうあ連盟の石橋副理事長、全国難聴児を持つ親の会の小森谷副会長、人工内耳友の会ACITAの村田様、声援隊のシュタイガー知茶子代表の計4名から、保護者の必要とする支援情報に関してお伺いします。
後半は、関係機関の連携に関して、ライシャワ・クレーマ学園の佐々木園長と日本聾話学校の瀬底教頭、奈良県立医科大学の細井学長、独立行政法人国立病院機構東京医療センターの南先生から御紹介いただきます。
発表の時間は、各10分とさせていただきます。短時間で恐縮ですが、10分たちましたら合図のベルを鳴らしますので、お話をまとめていただきますよう御協力のほどよろしくお願いします。
質問の時間は、前後半それぞれまとめて各20~25分程度設けさせていただきます。
では、まず、全日本ろうあ連盟の石橋様から発表をお願いいたします。よろしくお願いします。
○石橋氏 皆様、おはようございます。
私は、一般財団法人全日本ろうあ連盟副理事長の石橋でございます。今回は、非常に貴重な機会をいただきまして、感謝申し上げます。
さて、当連盟におきましては「難聴児の早期発見・早期支援に関する提言」という形で述べさせていただきます。
では、パワーポイントをお願いいたします。全日本ろうあ連盟は、全国47都道府県に各協会を擁する全国的な唯一の聾者の当事者団体でございます。
次をお願いします。全日本ろうあ連盟は、現在、2015年から2017年にかけて人工内耳に対する見解のプロジェクトチームを立ち上げまして、検討を進めておりました。耳鼻咽喉科の医師、当事者などが共同で人工内耳に対する提言を発表いたしました。
2019年、当事者、耳鼻咽喉科の医師、STなど関係者の人たちや、聞こえない子供を持つ親に対するメンバーも集めまして、聾乳幼児に対する支援対策プロジェクトチームを立ち上げました。パワーポイントに載っているように、聞こえない子供を持つパパ、ママのためのパンフレットも近日発表する予定です。
当事者から見た難聴児を持つ保護者に対する必要な情報・支援の在り方とは何かについて述べたいと思います。
親御さんとしては、全ての情報は全く触れたことのない新しい、未知の世界でもあります。ですから、医師などの医療機関の方の言葉に非常に大きな影響を受けることになります。
また、難聴の子供を育てる場合、本当に情報が限られて、周囲の同じような境遇を持った方々と巡り会うこともなかなか少ないということもあります。ですから、親御さんは非常な不安感の中で、限られた情報の中で選択せざるを得ない中での子育てになるということになります。これは、子供本人にとって、本当に適切な判断になった支援なのかということ。
次のパワーポイントをお願いいたします。当事者から見た難聴児を持つ親御さんに対する必要な支援は何かといいますと、保護者の方々が相談相手、つまり、多様な相談機関の選択ができる環境が必要だということ。これは重要なポイントです。
実際に聞こえない子供の現状、実態は本当に様々です。特定の情報だけに偏ると、これも適切な支援になりません。ですので、多様な情報を選択し、決定できる環境整備が重要です。
例えば、最初に出会った支援者がどのような立場の方であれ、等しく情報が共有できる、また、情報提供ができる環境、また、手話コミュニケーションについても情報格差がない支援の在り方が重要です。支援者が聞こえない子供の現状あるいはコミュニケーションの仕方を正しく把握し、発信することが求められます。
次をお願いします。そして、難聴児の早期発見・早期療育のために、行政に対するアプローチも必要になります。小さいときから、親御さんが聞こえなくなったロールモデルに早期に出会う経験が非常に重要になります。親御さんたちの自分の子育てに対する育ちの見通しができる土台づくり、その環境整備は、子供本人が自ら考え、自己選択、自己決定できるライフステージの土台をつくるという重要な部分にもつながります。
子供本人が、聞こえないことが特別という意味ではなく、自分が聞こえないということ、その中で聾のコミュニティーがあることを知ることも重要です。自分たちの仲間がいる、つまり、受容できる環境が求められます。
そのために、現在、全国各地に難聴児支援関係のネットワークが立ち上がっていると思います。そこに障害福祉関係部門の方、子育て支援関係部門の方が関わっていく、あるいは難聴児支援ネットワークの中に当事者が参画していく。専門家だけで進めるのではなく、当事者自らが参画できる環境を整備していく。その中での建設的な議論が求められます。
次をお願いします。手話言語と人工内耳に関することですが、手話言語は、まさに全ての聞こえない、聞こえづらい子供たちにとって、生きていく上で本当に心のよりどころとなります。セーフティーネットでもあります。
人工内耳などは、実際に医学的な技術はかなり進歩しておりますが、実際は個々に大きな差が出てきます。個人差があるわけです。ですから、音声日本語のみならず、手話言語もきちんとアクセスすることが非常に重要となります。
また、子供たち本人が、自分が聞こえる人とちょっと違うという問題に直面する時期が来ます。そういう出会いがあったとき、この時期をどのように支援するかが重要です。ですから、全国各地でどのように情報共有ができるか、適切な支援ができるか、本人、親御さんに対して情報提供ができるかという環境が重要になる。
次をお願いします。人工内耳あるいは補聴器の聴覚活用で聴力の回復はある程度可能になります。
ただ、リハビリに集中する側面のみならず、聞こえない、聞こえづらい人たちの心の問題、文化、アイデンティティーに十分に配慮した情報提供の在り方が求められる、また、多様な選択肢の支援の仕組みをつくることが重要です。音声日本語か、あるいは手話言語かといった二者択一という考え方ではなく、子供たち本人の聞こえの程度も違います。子供たち本人、また、親御さんもそうですが、子育てをする人たちの気持ちを考え、配慮した形で音声日本語も、手話言語も両方アクセスできる環境、そして、将来的に子供たちが成長し、自分のコミュニケーション方法を自ら選択し、決定するという環境、自分で決定するプロセスが重要であると言えます。
次をお願いします。日本各地、どこにいても、聞こえない、聞こえにくい子供たち、また、子育ての問題について、平等に、情報の偏りがなく情報にアクセスできる、また、全国どこに行っても、地域格差なく、等しく情報が入ってくる、情報共有できるような子育ての環境が必要である。これを望んでいます。
2つ目に、補聴器あるいは人工内耳にしても、手話言語のアクセスが非常にできる環境の整備をぜひ求めたい。
3つ目に、成人聾者、または人工内耳・補聴器装用の大人、つまりロールモデルとの交流ができる環境も提供することが重要な視点ではないか。
4つ目に、聞こえる親または医療関係者の方々の理解を得る、そして、安心して支援ができる社会づくりを目指す。
重要なことは、聞こえる人も、聞こえない人も共に生きる共生社会づくりが非常に重要である。それから、音声言語も、手話言語も共に共存できる社会。どちらのよしあしを問うのではなく、情報が偏ることなく、等しく共に共生社会づくりという考え方を求めたい。そういう社会の実現を目指したいと思っています。
一つ、大切なこと。聞こえにくい、聞こえづらい子供たちは、将来、未来を担う人材です。重要な存在でもあります。聞こえる子供たちも同じです。未来を担う人材。
ですから、聞こえるか、聞こえないかではなく、同じように将来を担う、将来の道を切り開く環境を子供たちに与えることが重要です。私たちはそのための支援を考えていくべきではないかと考えています。
以上、当連盟としての発表を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。
○中川座長 石橋さん、ありがとうございました。
多様な選択ができる機会、ロールモデルと出会う、当事者の参画、成長していくに伴って聞こえにくいという問題に直面した時期の対応など、いろいろと重要な文言が入っていたと思います。
それでは、続きまして、全国難聴児を持つ親の会の小森谷副会長、お願いいたします。
○小森谷氏 よろしくお願いします。
全国難聴児を持つ親の会の小森谷と申します。会長の古橋に代わって意見を述べさせていただきます。
今回のお話をいただき、アンケートを行いました。その結果を基に、全国難聴児を持つ親の会の要望を話させていただきます。
初めに「難聴児の早期発見」について話します。
新生児難聴スクリーニング検査は、厚労省からの新生児難聴検査の実施についての通知により、検査の受検率が高まりましたが、各産院において対応が異なっていました。
埼玉県では、難聴児支援の取組として、今年度から全ての市町村で検査費用が公費で助成されるようになりました。
3枚目をお願いします。自治体によっては、無料で検査を受けることができますが、いずれも強制ではなく、任意の検査であるため、検査を希望しない保護者もいます。金銭等の家庭の事情で検査を受けないことで、難聴児の発見が遅れる場合があります。
そこで、新生児聴覚スクリーニング検査の実施に際しては、全国統一にしてほしいと思います。全ての産院において必須項目にすること、検査時の丁寧な説明を行うこと、全国で検査費用を助成し地域格差をなくすこと、OAEと自動ABRの両方の検査の実施の4点について要望します。
次をお願いします。次に「難聴児の早期療育」についてです。
新生児聴覚スクリーニング検査の受検率が上がると、早期療育が必要となる難聴新生児が増えることが見込まれます。
しかし、教育施設や言語聴覚士が足りず、新生児で難聴が見つかっても、しっかりとした療育がすぐに行えないのが現状です。難聴児には、丁寧な療育が必要不可欠になります。
次をお願いします。「丁寧な早期療育を行うための要望」は6つです。
次をお願いします。1つ目は「難聴児の保護者が必要とする情報の提供と支援」についてです。難聴かもしれないと言われたときの支援や療育の紹介がなく、大変不安だったという回答がありました。産後5日でリファーという結果を突きつけられ、初めての育児がショックの中で始まったという報告もあります。結果を知らせる時期や方法の検討が必要かと思います。
次をお願いします。難聴かもしれないと言われたパパとママは、分からないことがたくさんあります。乳幼児期には親子で療育を受ける必要があり、保護者のケアに力を入れていただき、前向きに難聴の我が子に向き合える環境をつくっていただきたいと思います。それには病院、療育施設、保育園、家庭の連携が重要だと思います。
次をお願いします。産院や医療から言語療育機関へのスムーズな移行を行うために、4点挙げました。
難聴の知識がない保護者に情報を提供して、保護者が選択できる力をつけてほしいと思います。現在は、パソコンや携帯で様々な情報を得ることができます。その情報を保護者自身が正しく選択できるような支援をお願いします。
それぞれの家庭にはいろいろな事情があります。シングルマザーやパートなどで働く方への時間的・経済的支援もお願いします。
共に話し合える仲間の存在は大きいと思います。私も親の会で仲間にたくさん支えられてきました。
次をお願いします。「療育施設の増設、言語聴覚士の増員」です。
現状は、資料に記載されているように、療育施設の不足と難聴新生児のことを理解している言語聴覚士の不足から、十分な療育が受けられない難聴児もいます。保護者は、家族と寄り添える優れた言語聴覚士から、丁寧な療育を受け、健全な心と聴覚を活用できる能力を育てたいと願っています。
次をお願いします。難聴児の療育と保護者の精神的サポートを行うためには、週2回の療育が必要です。それを実現するためには、療育施設の増設や言語聴覚士の増員が必要です。
石川県と埼玉県の現状です。
次をお願いします。埼玉県では、県内4つの療育施設と聴覚特別支援学校の乳幼児教育相談で療育を行っています。0歳から週2回の療育を行うには、対応し切れないという現状です。新たな施設の増設が難しい場合には、聴覚特別支援学校に言語聴覚士を配置し、言語聴覚士の下での療育に変更するべきだという意見が出ています。
次をお願いします。聴覚特別支援学校やことばの教室に言語聴覚士を配置してほしいという意見が出ました。聴覚特別支援学校の幼稚部において、聴覚活用より手話がやや偏重されている傾向にあること、聴覚活用に詳しい専門家が不足しているという声があります。
低年齢の療育の充実を図るには、難聴の特性をよく理解した指導者を育成する必要があります。そのために、人材育成のシステムの確立をしていただきたいと思います。
次をお願いします。秋田県のような取組を全国の聴覚特別支援学校に広げ、教師と言語聴覚士という、より専門的な立場で難聴児の指導や保護者の支援を行ってほしいと思います。
次をお願いします。聴覚特別支援学校に音声言語クラスの設置についての要望もありました。低年齢の療育を充実させ、就学までに5~6歳相当の言語の力をつけるため、乳幼児教育相談や幼稚部において、音声言語クラスの設置を希望します。中等度難聴や人工内耳を装用した子には、聴覚特別支援学校において、聴覚活用や口話をより一層伸ばすための方策を取っていただきたいと思います。
私は、3月まで特別支援学級の担任をしていました。本来なら、一つの教室でお互いを認め合える指導が行われなくてはならないと思いますが、保護者から音声言語クラスを設置してほしいと要望された背景を理解していただきたいと思います。
次に「人材の育成」についてです。
早期に発見された難聴児や保護者によりよい支援を行うためには、医師、看護師、保健師、保育士、幼稚園教諭、そして言語聴覚士などの関係者の研修を行い、人材の育成に努めてほしいと思います。幼児期の難聴のことをよく理解し、適切な対応ができる方の育成を強く望みます。
次をお願いします。「地域格差の是正」です。
全国のアンケートを取った結果、人工内耳の助成内容について回答がありました。都道府県だけではなく、区市町村で助成される金額や助成される対象項目、耐用年数が大きく異なっています。人工内耳の補修費の補助金は支給されるようになりましたが、人工内耳の買換えや電池の購入も全国一律の助成金・助成項目を決めてほしいと思います。
次をお願いします。人工内耳のイヤモールド作成には、助成金が支払われませんが、耳が小さくて柔らかい乳幼児には、イヤモールドが必要です。ぜひ補聴器のイヤモールドと同様に1割負担にしていただきたいと思います。
次をお願いします。産院などの機器の入替えにかかる助成についても、小さい病院でも適正な検査ができるように助成をお願いいたします。
次をお願いします。静岡県の説明資料の一部です。御覧ください。
都道府県や区市町村など、子供を出産した環境や地域によって検査の精度に差が出て、難聴児の発見が遅れることがあってはならないと思います。
次をお願いします。「日常生活用具費支給対象の見直し」をお願いします。
IT化が進みました。現在の福祉対象機器は古く、時代に合っていません。タブレットを日常生活用具費支給対象にしていただくことを要望します。
次をお願いします。デジタル無線式補聴援助システムについても同様です。音が明瞭なロジャーの購入助成をしていただき、厚生省が公示する障害者総合支援法に基づく補装具の助成対象にデジタル電波の機器も含むという文言の追記をお願いします。
次をお願いします。「切れ目のない支援体制」についてです。
早期発見・早期療育を受け、言語獲得の基盤ができても、大学までのきめ細やかな配慮がなければ、社会に出て自立することはできません。
次をお願いします。全国難聴児を持つ親の会で取り上げられている問題と要望を最後に記載させていただきました。御覧ください。
次をお願いします。最後に、石川県の回答を紹介します。
新スクについては、石川県はかなり進んでいます。他県に誇れる部分だと思いますという回答が全ての都道府県の保護者から得られるようになることを願っています。
以上で終わりにします。ありがとうございました。
○中川座長 ありがとうございます。
新スクが任意である旨、助成が必要ということとか、情報が得やすい環境が大切、保護者支援、ST、人工内耳、日常生活用具、切れ目のない支援など、幾つか大切なことが含まれていたと感じました。
それでは、続きまして、人工内耳友の会ACITAより村田様、よろしくお願いいたします。
○村田氏 よろしくお願いいたします。
人工内耳友の会ACITAのメンバーで、人工内耳装用者の村田陸でございます。よろしくお願いいたします。
まず、自己紹介についてですが、取りあえず先天性難聴というところで、現在、人工内耳を装用しております。この辺りは、資料を御覧いただければと思います。
では、スライドを進めていただいて、お願いいたします。
もう一枚お願いいたします。ありがとうございます。では「自治体に対し要望したいこと」として、当事者としてお話しさせていただければと思います。
まず、教育・療育の選択肢の保障、それから、その選択における負担の軽減というところで大きく2点お話しいたします。
次のスライドをお願いします。まず、教育・療育の選択肢についてですが、自分の話としましては、日本聾話学校で幼年期を過ごして、普通校に通って過ごしてきましたが、これでよかったと思っています。人工内耳の恩恵を受けられています。ですが、例えばほかの同期の友人でも聾学校に通った友人もいますし、聴覚障害については個人差が強いという点があります。
次のスライドをお願いいたします。自分の話ですが、自分も神奈川と東京で県をまたいで何回か転居を重ねて学校などを選んできましたので、そういう点で、今自分がいる地域だけではなく、居住地域外との連携による支援がやはり必要だと思います。
そして、この辺りのネットワークについて支援する側、保護者の双方に周知が必要だと思います。例えば口話とか手話、人工内耳、補聴器といろいろとありますが、こういうものの大筋の道が一つに定まってしまっていると、別の手法に踏み出すには勇気や努力が要りますので、どの選択肢も保障してほしいと願います。
次のスライドをお願いいたします。その選択を実際に保護者や難聴児がするときに、やはり負担があると思いますので、その負担を軽減する支援を願います。
例えば病院や教育機関、公的施設などの支援の施設は、一つの県・地域で集約されて限られてきますので、特に共働き化の進んだ現在、例えば両親が共働きでは、そういう集約された施設からほかの地域へ移りたいとなったときにも負担が大きくなるかと思います。そういうところの選択をするに当たって、それでもやはりこっちの選択がいいというときの負担を軽減してほしいです。
次のスライドをお願いいたします。例えば支援施設や病院に通うための移動の支援、転居の支援、それから、直接障害に関わらないことでも、日常生活における家事の支援で、その分療育・教育に関するリソースを割けるようになるかと思います。
そして、これらの支援について、地域差が生じないような枠組みが必要です。例えば今、この辺はオンラインなどで本当に全国的にICTが発達しています。特にコロナ禍で本当にそういうのが進んだと思いますが、これがオンラインでつながれることをこれからもより構築してほしいです。本当に都道府県を超えた連携をお願いいたします。
次のスライドをお願いいたします。最後に、人工内耳装用者本人としてお願いしたいこととして、人工内耳・補聴器は、進歩が本当に目覚ましいもので、例えば最新の人工内耳・補聴器にはiPhone/Appleとの連携によって、Bluetooth機能を利用して、iPhoneの音を直接人工内耳に取り込めるようになりました。自分も今、iPhoneで使用しているのですが、本当にヘッドホンとかそういうものを使わずとも、コードレスで、かつ、音の質も本当に良く、とてもありがたいと思っています。こういうのも新型のプロセッサになりますので、そういうものを療育の過程で常に新しくしていくために、更新の費用あるいは消耗品・摩耗品の健康保険の適用によって負担を減らしてほしいです。
以上で発表を終了させていただければと思います。御清聴ありがとうございました。
○中川座長 村田さん、ありがとうございました。
当事者としての話ということで、重たいと思います。様々な選択肢がある状況で、その選択に伴う負担を軽減することを具体的に話していただきました。
もう一つ、大切なこととして、居住地外との連携、つまり都道府県を超えた地域差を生じさせないことは、非常に大切なメッセージだと思います。プロセッサの更新、電池代の助成など、当事者ならではの要望が出されたと思います。
それでは、引き続きまして、声援隊のシュタイガー知茶子様、よろしくお願いします。
○シュタイガー氏 よろしくお願いいたします。
声援隊のシュタイガーと申します。本日は、非常に貴重な機会をいただきまして、ありがとうございます。
2枚目をお願いいたします。まず、声援隊を御存じでない方もいらっしゃると思いますので、ざっと紹介させてください。
私たちは難聴児の親の会なのですけれども、活動の理念としては、言葉はコミュニケーションツールという狭い概念に落とし込めない、人間の生き方に関わる問題であると考え、音声言語を積極的に選び取る親御さんを対象としています。そのためには、皆さんも自分の赤ちゃんを抱いたときには、きっとああよしよし、いい子ねと日本語で、つまり自分の母語で声をかけるのが自然ですし、そうしていらしたと思います。そして、難聴児であっても、それをしていいのだというごく当たり前のことをまず皆さんに知ってもらうところから始めます。そして、音声言語を選ぶ以上、今日の補聴技術を正しく使うことができるのであれば、方法として最も適しているオーディトリーバーバル(AVT)を推進していく。これが私たちの活動です。
次のスライドをお願いいたします。今回のお題をいただきまして、声援隊に参加してくださった全国の親御さんたちに私たちも聞いてみました。
難聴が分かったとき、どんな情報があったらよかったと思いますか。回答をいただいた30名は、統計的な有意性はないかもしれませんが、非常に貴重な示唆が含まれていると思いますので、簡単に共有いたします。
次をお願いします。まず、お子さんの難聴が分かったとき、あるいは新スクでリファーになったときに、どうやって初期の情報収集をしましたかという問いに複数回答でお答えいただきました。
ネットや本などで自分で調べたという方が多く、続いて医療機関、聾学校の乳幼児相談などと続きます。自治体の窓口でと答えた方は半数以下でした。これが意味するところは一体何でしょうか。
まず、ネットや本で調べるということは、多くの情報に接することができますが、その真偽や信頼性を判断するのは、親には難しいということ。
2番目の医療機関や聾学校での情報は、恐らくその機関が行っている療育に関してが主であり、療育の方針に複数の選択肢があることがなかなか伝わりにくいということです。
そして、本来であれば、公平・中立・網羅的な情報を発信できるはずの自治体の窓口の活用に、まだ余力があるということが分かります。
次をお願いいたします。そうやって得た初期の情報にどのように満足されましたか。
真ん中の2つに御注目いただきたいのですけれども、まず、青い棒グラフが突出している部分で「情報は部分的で、何かが足りないと感じた」。その設問に対して「とてもそう思う」と答えた人が半分いました。
さらに「情報にバイアスがあり、特定の方向に誘導されているように感じた」という人も「とてもそう思う」と「まあそう思う」を合わせると、半数に上りました。
次をお願いいたします。そして、皆様のお手元に届けさせていただいております、皆様の声援隊に寄せられた声です。そこからキーワードを拾ってみますとこのようになります。チームアプローチ、ロードマップが欲しい、カウンセリングをしてほしい、家庭中心の療育といったキーワードは、こちらの検討会でも既に頻出していると思いますので、詳細は省きます。ぜひお手元の資料を御参照いただければと思います。
次に行きます。さて、我が家の話を少しさせていただきます。
私は、国際結婚をいたしまして、難聴の長女を出産したのは、ドイツ語圏のスイスでした。主人の仕事の関係で、幼稚園時代はアメリカ東海岸、小学校はフランスで過ごさせました。
難聴が分かって、頭の中が真っ白だったとき、1つの電話番号を手渡されました。住んでいたチューリッヒ市で、自治体が独自に雇った難聴児の親の早期支援相談員から全てが始まったと言っても過言ではありません。私たち親の心のケアをしてくれましたし、療育の方法を複数提示し、自分の目で確かめてくるようアドバイスされました。つまり、一つ前のスライドでピックアップした、あったらよいなと皆さんが感じる支援の形を海外では当たり前に受けることができていました。
日本に帰ってきたときに、どうして日本にはそれがないのだろうという疑問から、では、ないならつくってしまおうということで立ち上げたのが声援隊です。
次をお願いいたします。ちょっとごちゃごちゃしていますので、細かいところは御覧いただかなくていいのですけれども、全体として、活動が循環になっていることがお分かりいただけるでしょうか。
右上の早期発見を大事にすることから始まり、右下で、先輩パパ・ママとして、ほかの親御さんの相談を受けたり、共に学ぶ機会を設けたりしております。左下に行きまして、親御さんの思いを受け止めてくださる療育者にできるだけつなげていきます。左上で、最終的にはその親御さん自身が子供の療育のオーナーシップを自覚し、新しい仲間の支援にも当たるようになっていく。これが理想の形と思って活動しております。
次です。メインとなっているのが、ほぼ年に1回開催してきた「きっともっとずっと聴こう!」という勉強会です。先日、オンラインで第10回を開催することができました。
次です。こちらに御登壇いただきました先生方をテーマごと、開催回ごとに書かせていただきました。初回の御登壇のときのみなのですけれども、御覧いただけますように、多くの医学の先生方、そして補聴のスペシャリスト、言語のスペシャリスト、教育の分野からも多くの先生方にお話を伺いまして、勉強を重ねてきました。
次も同じです。
次をお願いします。こういった中で、赤ちゃんがどう学ぶかということを私たちが学んできたわけです。そうしますと、大人も、子供も学ぼうとするときには、楽しくないとおなかに落ちないといいますか、脳にすとんと落ちていかないということを学びました。そして実感してきました。ですから、声援隊の勉強会は、いつも親子で楽しめるイベントを目指しております。
次のスライドをお願いします。では、なぜAVTにこだわるのかということです。
AVTで育ててもらってきた私たちは、揺るぎない確信があります。それは、世界中のAVTファミリーの確信でもあります。
ここにたくさん書きましたけれども、一言でまとめるとこういうことです。AVTは、聞こえを担保することで、聴く脳をつくり、そして、子供が結局は自分で聞いて学ぶことを学ぶのを目指します。ですので、支援としては、幼児期の数年間に、集中的に親を支援していただくことがAVTのスタンスです。そうすると、あとは、言ってみれば、普通に自分の力で学んでいける子に育ちます。
次をお願いします。ちょっと細かくて見にくいのですけれども、AVTの効果という点について、ここではケーススタディーをざっと簡単に御紹介させてください。
横軸に年齢、縦軸に年齢相応の言語発達を取りまして、真ん中辺りのピンクの線のカーブの上がっていくところを見ていただきたいのですが、ここに取り上げた難聴児が、いかに言語力を急発進させて、そして同年齢の子供たちに追いつき、さらにブルーの線の第二言語、グリーンの線の第三言語をもマスターしていったかを図表化したものです。そのキーとなったのが、2歳時に受けた人工内耳の手術であり、1歳のときから受け続けたAVT療育でした。
聞こえの土台さえつくっておけば、あとは健聴児の学ぶ全てのことを同じように聞いて学べるという例としてお見せいたしました。
次のスライドをお願いいたします。さて、日本でのAVTの課題ですが、これを推進するに当たり、課題が山積しております。ここでは2つを特に強調したいと思います。
まず、AVTの理念、理論、方法論を正しく理解していただかなくては、本当に難聴児のためにはならないということです。認定AVT資格者の養成が急務です。手話を使わなければ良し、という問題ではないのです。手話を選ぶ人には、手話言語の獲得のための支援があるように、音声言語を学ぶ家族にとっては、AVTの支援が必要です。
最後のまとめに入ります。最後のスライド。
ここで皆さんに呼びかけたいのです。いろいろな考え方、いろいろな信条の団体がありますが、一緒に親御さんに渡せるようなパンフレットを作りませんか。そして、そこに自治体の具体的な機関名やサービスを載せれば、親御さんは貴重な時間を失わず、情報の中で溺れることもなく、安心して子育てを始められると思います。
この訴えをもって、私の話を終えたいと思います。御清聴ありがとうございました。
○中川座長 シュタイガーさん、どうもありがとうございました。
今回、最初の情報収集について、自治体窓口が整っていないということ、このため、情報が部分的、誘導されやすいということ。これは多様な選択ができる環境と、ほかの演者の方々も言われていることと共通することと思います。それと、チューリッヒで受けた早期支援指導員の話は、一つのヒントだろうと考えています。
では、前半のお話を全部聞かせていただきました。今の4つの発表に関しまして、皆様からの御質問、御意見がありましたら、お願いします。御発言の際は、Zoomサービス内の「手を挙げる」ボタンをクリックしてください。よろしくお願いします。
渡辺さん。
○渡辺構成員 日本医師会の渡辺です。
皆さんのお話が共通しているので、どなたにお伺いしていいか分からないのですが、一応、全日本ろうあ連盟の石橋様と、難聴児を持つ親の会の小森谷様に関係して御質問させていただきたいと思います。
ほかの演者の方もおっしゃったように、地域格差をなくすというのは非常に大事なことだと思うのですけれども、私どもの立場でいくと、まず、自分のところの自治体がちゃんとやっているかと思って聞くと、ちゃんと整備できていると言うのですが、一番問題なのは、受け手側の意識というか、ちゃんと整備できているかどうかというところの情報が逆に入ってこない。
例えば日本医師会が全国の都道府県の医師会に関係して、自治体にこういう支援とか療育の整備ができているかと聞くと、できていると言うかもしれませんけれども、先ほど小森谷様がおっしゃったように、ニーズに合っていなければ、実際は十分ではないことになります。
お聞きしたいことは、例えば全日本ろうあ連盟とか、小森谷様が一部アンケートをお取りになられたということだったのですけれども、受け手の側の全国の情報というか、受け手の体制とかいろいろな支援体制に対しての情報を得ることができるかということで、1点希望があります。全国の格差をなくすといっても、受け手側のデータをなかなか見たことがありませんので、ぜひそういうものがあれば、こういう会でもそうですし、私どもの医師会という組織を使ってでも、うまくいっていない自治体に対して介入することができます。
先ほど申し上げましたように、行政とか医師会から各自治体にアンケートを取ると、ちゃんとできていますと言われることが多いのです。でも、受け手側がそれをどう理解して、それが本当にちゃんとできて、ニーズに合っているかというところをぜひ御検討いただければというのが1点でございます。
2点目は、さっき最後のシュタイガーさんもおっしゃったのですけれども、当事者は、どういうツールで情報を得るのが一番御希望なのか。パンフレットが本当にいいのか、それから、ネットみたいなものがいいのか。
確かに、SNS等であれば、信頼性の有無というところに問題がありますので、どこにどういうものをつくったらいいかというところ、ニーズとしてどういうツールがいいかというところで、このお二人の御意見をいただければと思います。
3つ目、これが最後ですけれども、タブレットはAVTに有用なのかどうか。当事者が自分の耳で聞く、人工内耳とかいろいろと差はあるのでしょうけれども、そういうものに対して、今、タブレットを使ってソフトで文字化して見るというツールが結構できていると思うのですけれども、あれは子供にとって有用なのかどうかという3点をお教えいただければと思います。すみませんが、よろしくお願いいたします。
○中川座長 ちょっと難しい質問が幾つか入っていましたけれども、それでは、先に小森谷さん、よろしいですか。
1つ目は、受け手のニーズに合っているか。2つ目は、どんなツールで情報を得るのがよいと考えておられるのか。3番目は、タブレットの話でした。よろしくお願いします。
○小森谷氏 まず、私もこの機会があったので、親の会の会員にアンケートを取りました。アンケートを取ったら、いろいろなことが出てきて、膨大な要望になってしまったということです。
親の会では、毎年総会を行っています。今年と去年は、コロナの関係で開催できないのですが、その総会の際に、全国から集まった方の意見を集約して、そこに厚労省や文科省の担当の方に来ていただいて、私たちの思いを伝えているという状況です。
ですが、このようなアンケートを取るのは、やはりとても重要ではないかと思いますので、今後、会のほうで考えていきたいと思っています。
それから、2番目は、もう一回お願いします。どんなツール。
○中川座長 どんなツールで情報を得るのが得やすいと思うかということです。
○小森谷氏 分かりました。
先ほどのシュタイガーさんからも出ていたように、インターネットなどの情報がすごく膨大になって、親は分からなくなってしまうのです。私たちの親の会でも、ネット情報が多くてどれを選んだらいいか分からない、でも、最終的には、人と人が会って話をすることが一番大事ではないかと、話しています。
人と人が会って話をすると、実際のお子さんの表情も分かるし、親御さんの状況も分かります。そうしたら、その子に合った、そのお宅に合った支援ができるのではないかなと思っています。ネットではなくて、そういう身近で支援できる方を養成してほしいなと思います。ですから、先ほどの私の発表でありました言語聴覚士や保育園、それから自治体の方の人材育成はとても重要になってくるのではないかと思います。
それから、タブレットは必要なのかということです。音声言語で学習をしている難聴児は、完全には聞き取れていません。ですから、タブレットで情報を正しく得ることはやはりとても大事だと思っています。
これは私が今までの教員生活で感じたことですが、難聴でなくても、ほかの子たちも同様に、音を聞くのではなくて、タブレットで文字化したものを頭の中に入れて理解することはとても重要だと思っています。
これでよろしいでしょうか。
○中川座長 ありがとうございました。
では、ろうあ連盟の石橋さん、よろしいですか。
最初が、受け手の側はどういう情報が与えられるとニーズに合っているかということ。2番目は、どんなツールで情報を得ることができるのか。タブレットにつきましては、もし御意見があったら、よろしくお願いします。
○石橋氏 石橋でございます。御質問いただきまして、ありがとうございます。
全日本ろうあ連盟は、全国組織で47協会を包括しておりますが、実際に地域格差が大きいことは否めません。
といいますのは、それぞれの各地域協会の中で、例えば行政との関係、パイプがあるかないか、また、協会によって温度差があります。例えばパイプのない、情報が入ってこない協会もあるわけです。なおかつ、聾学校とのパイプがあるところもあれば、全く関係性が取れていないところもあります。
先ほど石川の話が出ましたけれども、全国各都道府県の一部の協会は、医師会、耳鼻咽喉科との一年に1回の意見交換も行っている地域もあります。本当に限られた情報の中でどのように支援したらいいのかということで戸惑っているという事実もあります。
ですから、そうではなくて、当連盟もそうですけれども、関係者の方々の支援のネットワークに我々当事者が参画して強い関係性を持つ、意見提言をすることが重要だと考えています。今、ネットワークに参加できないという乖離した状況にあります。ですから、当事者参画が必要であるということ。
2つ目ですが、確かに様々なツール、手法があると思います。実際に、耳が聞こえない、また、聞こえる保護者にも情報が重要になります。情報をどのようにして得るのか、アクセスするのか。
例えばあそこにある情報は、点在していても、当事者としては非常に苦労を伴うものでアクセスし切れない。ですから、一つの情報のパッケージというようなもので、そこに多様な選択肢があるということがあれば、そういうツールが欲しい。タブレット方式でもあり、インターネット方式でもあり、また、SNSでもあり、様々な文字媒体、様々な手法が多様な選択肢として提供できる。大切なのは、情報のパッケージで様々な情報をそこから選択できるというものが非常に必要ではないか。そうすると、情報アクセスもアクセシビリティーが可能になると思っています。
以上です。よろしいでしょうか。
○中川座長 ありがとうございます。
それでは、タブレットのことについては、当事者である村田さん、御意見をいただけませんでしょうか。タブレットの活用です。
○村田氏 タブレットの活用ですが、私はスマートフォン、タブレットなどを使用しておりますが、例えば現在、私は社会人で、会社に勤めているのですが、その際に例えば部署で会議を行う際に字幕の補助をしていただいています。
ただ、これはタブレットだけではなくて、直接パソコンの画面で音声認識ソフトを使用して、それで変換するという形で、結構精度もいいのですが、実際は私のほかにも難聴の同僚がいますので、そういう点で字幕などのツールの支援としても有意義だと思います。
あと、新生児という点でいくと、言葉とかそういうものにより触れる機会、楽しく勉強する機会があると、本当にいいと思いますし、楽しく勉強という点において、実際に難聴に限らず、教育現場あるいは通信教育などでタブレットは既に使われているかと思いますので、そういう面で見ても、時代に最新の機器を駆使するのはいいことだと感じます。
○中川座長 ありがとうございます。
それでは、もう一人ぐらい質問を受ける時間がありますけれども、いかがでしょうか。
神田先生、よろしくお願いします。
○神田構成員 よろしいでしょうか。中川先生、お疲れさまです。
今のタブレットの件なのですけれども、実は私も難聴があって、補聴器と人工内耳を装用していますが、難聴児の診療もオンラインでしたりしておりますので、先ほど村田さんが言われたように、有利な、便利なところは吸収されていいと思います。
ただ、子供にとって、スマホを長時間見るとか、iPadを長時間見るといったところの弊害は小児科のほうでも言われていますので、これは渡辺先生や私の個人的な意見なのですけれども、やはり親御さんの温かい音声で、肉声でAVTをすることが一番基本的で大事なことではないかとは感じています。
ACITAの会の村田陸さんにちょっと質問したいのですけれども、当時は20年前というと、情報もインターネットもそんなに進んでいない時代で、神奈川県から日本聾話学校という聴覚をしっかりと管理して、補聴器や人工内耳もしっかりと管理できて、音声言語の教育をしっかりとできる学校をどうして親御さんは見つけられたのか。それが自治体の情報として有用ではないか。本人は小さいので知らないのかもしれないのですけれども、もし分かっていたらお知らせいただければと思います。
それから、シュタイガーさんには、難聴児を非常に苦労されて、多言語、マルチランゲージにできるように育てられていますが、ドイツ語、フランス語、英語、日本語までできるようにされていると思うのですけれども、その一番のキーポイントは何だったのかを教えていただければと思います。
質問は以上です。
○中川座長 それでは、まず、村田さんからですが、神田先生の聞かれたことを御存じでしょうか。
○村田氏 まず、母というか、今聞いたのですが、20年前当時でも、情報はネットで得たということです。そして、一応そういう教育方針の学校があるということをネットで情報を得て、私は神奈川県でしたので、最初は地域の聾学校に母が通わせて、そこからほかのいろいろな教育方針、意図を探して、そしてここを知った。例えば教育方針として、一応同じ聴覚口話法だったのですけれども、地域の地元の学校と日本聾話学校を見学しにいってみたが、本当に雰囲気が全く違って、それでここがいいと思って、転校したという形です。
○中川座長 ありがとうございます。
それでは、シュタイガーさん、多言語獲得についてお願いします。
○シュタイガー氏 お答えいたします。
私たちは、結果として多言語教育をしてしまいましたが、これを目指していたわけではないのです。
最初に難聴が分かったときに、私たち夫婦の強い思いは、自分たちの言葉のコミュニティーにこの子を迎え入れてあげたい、母語で育てたいということでした。ですので、音声言語への思いが非常に強く、そこでAVTの先生に出会うことができたのです。
実は、私はそこでまず日本語を諦めました。まさかできるようになるとは思わないので、1言語でもいいからとにかく話したいということで、ドイツ語一本に絞りまして、AVTの療育を受けて、子育てをしていく中で、言語の発達も非常に良好であった。そして、その後、転勤が重なりまして、結局3言語、4言語と増えていってしまったのですけれども、最初にAVTを受けた国で2年半ぐらいきっちり聞こえを育てていただいたので、その聞こえをもって新しい環境に入ったらば、子供が勝手に英語を覚えてくれたというのが現実です。ですので、聞こえの土台をつくることに、最初の数年間、全力を集中することができたことがキーになっていると思います。
ですから、私たちの母語で育てたいという思いが一つ。そして、聞こえの土台をつくるということが2つ目です。
これでお答えになっていますでしょうか。
○神田構成員 ありがとうございます。
○中川座長 ありがとうございます。
質問し切れなかったことがあるかもしれませんけれども、後日、事務局にお寄せいただきましたら、構成員の皆様に共有できるように工夫させていただきたいと思います。
それでは、進行していきます。
次に、関係機関の連携に関して、ライシャワ・クレーマ学園の佐々木園長と、日本聾話学校の瀬底教頭から、次に、補聴器関係機器については、奈良県立医科大学の細井構成員から、その後、家族支援については、独立行政法人国立病院機構東京医療センターの南先生から発表していただきます。
それでは、最初のライシャワ・クレーマ学園の佐々木園長と日本聾話学校の瀬底教頭先生、よろしくお願いいたします。
○瀬底氏 こんにちは。日本聾話学校の教頭の瀬底と申します。今日はこのような機会をいただきまして、感謝いたします。
スライドをお願いいたします。その次です。
日本聾話学校について、簡単に説明いたします。
村田陸君が卒業生なのですけれども、今、紹介しようとしてくれましたが、本校は、ライシャワー夫妻、ライシャワー駐日大使の御両親が創立した学校で、昨年100周年を迎えました。創立当初から聴覚活用の可能性を追求してきた学校で、今でも手話を使わずに、聴覚を最大限に活用する教育を行っております。また、オーディオロジー部による補聴器の調整や聴覚のための環境を徹底している学校でもあります。それから、児童発達支援センターを併設して、15年の一貫教育を行っています。
スライドをお願いいたします。この学校だけではなく、聴覚の可能性を開く教育を行うために必要なことです。
まず、最早期からの教育。これは新スクで発見されるようになりました。これがスムーズに療育・教育につながることがとても大切です。親がそのことで安心できることもとても大切です。
それから、最適に調整された補聴器や人工内耳を常に使うこと。これは、言葉が言葉として聞き取れるまでに調整された補聴機器をきちんと使うこと、それから、音環境がよいところで過ごすことがとても大事だと思っております。
3点目に、子供の可能性を信じて、心を通わせるやり取りを訓練ではなく、愛情豊かにすることで、心と言葉を共に育てていくことが大切です。子供にとって、聞き、話すことが喜びとなり、必然となるような日常の関わりをすること。これをするのに中心となるのは家庭であり、保護者です。これを全力でサポートするのが学校、療育機関だと思っています。これらの願いがきちんとそろっていることがとても大切だと思います。
スライドをお願いいたします。私たちは、この教育を聴覚主導の人間教育と呼んでいまして、Natural Auditory Oral Approach(NAOA)と呼んでいます。聴覚に障害を持つ子供たちが、最大限によく聞いて、話して、歌う生活をするということです。
スライドをお願いします。その可能性が開かれていると私たちは思っています。
しかし、保護者がその選択肢をなかなか示されないことが多く、また、選択したくてもできないことが多い。これはこれまでの話合いの中でも多く指摘されたことと同じ問題です。
それでは、佐々木に代わります。
○佐々木氏 私は、児童発達支援センターライシャワ・クレーマ学園の園長の佐々木と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
私たちの学校が願うことは、聴覚に障害を持つ子供たちとその家族の幸せです。それで国や自治体に対してお願いしたいことがいっぱいあります。
例えば新生児聴覚スクリーニングで難聴が早期に発見されて、早期に診断を受けた聴覚障害児とその保護者が安心して子育てができる環境を整備して、提供してあげることだと思います。親が願う教育とか療育を受けられるのかが大事かなと考えています。
さっき瀬底先生からもお話がありましたけれども、特に今は聴覚を使う可能性がとても広がっている時期になりました。そのことも一つの選択肢として親に提供できたらなと思います。
また、全ての聴覚障害児が、十分な専門性を有する療育とか教育の場とつながることができることだと思います。特に専門性は、今のありようでは、先ほどもどなたかがお話ししました専門性は、なかなか難しい時代になってきているのかなと思います。
次のスライドをお願いします。連携のための体制づくりとして、具体的にどんなことをお願いしていいかというところなのですけれども、まず、保護者に聴覚障害児の療育・教育方法の選択ができる情報の提供と、それを正しく伝えるための研修・人材育成が必要と考えています。これは、国や自治体にお願いしたいことです。
伝えてほしい内容としては、聴覚障害とはどういう障害なのか、早期の療育や教育の必要性、療育や教育には様々な方法があるということ、さらに、その親子が住んでいる地域にはどのような資源があるのかという情報を集約して、正しく伝えていく必要があると思いますし、また、その情報の理解や意味をちゃんと研修しながら学んでいって、そういう人たちを育てていってほしいと思います。
さらに次のスライドをお願いします。そのためには、協議会的なものを設置する必要があるのではないかと思います。聴覚障害児の療育・教育を担う施設や学校との日常的な連携を進めていき、定期的な仕組みをつくり、情報交換とか相互関係を円滑にしていく必要があると思います。定期的な情報交換とか施設見学・訪問等を行うことによって、互いに顔が見える関係の中で、子供や家庭について具体的に話合いができる環境をつくることが、保護者が安心して子育てができる環境づくりにつながると思います。
次のスライドをお願いします。その協議会の中心的な中身ですけれども、今回のように福祉と教育の垣根を取り払った連携がとても大事になってくるのかなと思います。
例えば親御さんたちが役所に行くと、どこに相談に行ったらいいのか、福祉なのか、教育なのか、医療なのか、保健なのか、それで親御さんたちが迷ってしまったりとかするわけです。だから、そういう意味では、行政としても、ここも縦割りではなくて、ちゃんとスムーズに流れていくような支援体制をつくる必要があるのかなと思いますし、それが行政だけはなくて、医療・療育・教育の円滑な連携につながっていくのではないかと思います。そのための人材育成、コーディネートできる人が必要であるし、そういう場所の提供が必要になってくるのかなと思います。
私からは以上です。
次をお願いします。
○瀬底氏 提言の2つ目として、それらを可能にするための前提となるような、ベースとなる環境づくりをぜひお願いしたいと思っています。
聴覚障害児を育てるためには、早い時期から保護者との温かい関わりが必要だということは共通認識になっております。そのことをここに書いてあるように、児童発達支援センターや公立聾学校の乳幼児教育相談、難聴外来のある病院でリハビリを行う、それから、声援隊のようなグループが行うなど、いろいろなところで一生懸命に取組をしています。
スライドをお願いいたします。しかし、共働きの家庭とか経済的な裏づけがない家庭は、教育・療育をなかなか選択することができないという現状があります。聴覚にかかわらず、障害を持つ子供を育てるには、多くの手間や時間をかける必要があります。本当はそれが愛情豊かに行われる必要があるのですけれども、そうなると、自分のキャリアを諦めなければならない母親が出てきたり、その反対に、どうしても働かなければいけないために、子供のために十分な時間を割くことを諦めて、保育園に預けっ放しになってしまうような子供がいたり、なかなか難しい選択になってしまいます。
現在認められている産育休の期間は、障害児を育てるためには全く不十分だと私たちは考えています。自分のキャリアを諦めるという思いになってしまう母親も、経済的な理由で本当に必要な教育・療育を諦めるという家庭も出てほしくないと願っています。
スライドをお願いいたします。そのために、1つ目は、障害、特に聴覚に障害を持つ子供を育てるための育児休暇、障害児のための育児休暇という制度をきちんと整えていただきたいと願っています。
もう一つは、その育児休暇の期間、経済的な支援をきちんとしていただきたい。その下支えがあってこそ、安心して子育てに専念できると思っております。
特にこれに関しては、今、障害の程度によっていろいろな支援の金額に違いがあったりします。しかし、子供に関わらなければいけない時間は、障害の軽重、程度にかかわらず、同じだと思います。そういう意味では、障害の程度で聴覚が2級とか6級、場合によっては中度、軽度で手帳がもらえない、認定されない親にも本当に必要で、きちんと把握して、そういった経済的支援をしていただきたいと思います。
スライドをお願いいたします。もう一つ、これもなかなか難しい問題ではあると思うのですけれども、提言させていただきます。難聴の3歳未満児を学校教育の対象にしていただきたいということです。
全国の聾学校では、乳幼児教育相談の取組を一生懸命に行っています。文科省もその必要を認めて一生懸命にやっておりますけれども、法律的な裏づけがない中での取組となっており、十分ではありません。ぜひこのことを考えていただきたい。
スライドをお願いいたします。3点目です。児童発達支援センターが今、無償化の対象になっていません。もちろん、1割負担ですけれども、そこを考えていただきたい。聾学校の乳幼児教育相談は無償なので、そちらに子供が行くと、今、子供が集まらないと補助金がもらえないという形になっています。これで全国の施設が非常に苦しい思いをしています。専門性の維持が難しくなっています。経営が難しくなっています。これらを下支えしていただきたいと強く願っております。
以上です。ありがとうございました。
○中川座長 ありがとうございました。
連携のための体制づくり、もちろん、最初のスタートは選択肢の提示という皆さんの共通するワードから始まっていますけれども、協議会の設置による福祉と教育の連携、あとは安心して子育てできる環境づくりと幾つか大切なことが入っていると思います。
それでは、引き続きまして、補聴関係機器について、細井構成員からよろしくお願いいたします。
○細井構成員 奈良医大の細井です。「人工内耳・補聴器の現状と進歩」という題をつけさせていただきました。実際、ここで発表する主題は「供給体制づくりと自治体等の支援」です。
最初のスライドに上げていますのは、わざわざ「外国製」「日本製」と書いていますが、人工内耳は、外国製しかありません。ワクチンと同じです。ワクチンはまだやっていますが、日本製は、その動きはほとんどありません。
これは世界で多分最小、そして最新の補聴器ですが、こういう耳の穴のない子供にもつけられる。これは日本製です。
まず、人工内耳ですが、これはここの先生方には釈迦に説法的なところがあると思いますけれども、この表の左に「伝音難聴」「感音難聴」「混合性難聴」と難聴の種類を書いています。右に薬物投与、手術、補聴器と治療方法を書いているのですが、御存じのように、先天性難聴、感音難聴は、普通、突発性難聴以外は薬物があまりないので、高度になってくると補聴器か人工内耳ということになります。
人工内耳は、御存じのように、インプラントとサウンドプロセッサという2つの部分から成り立っています。
インプラントのAのところは、補聴器の外のような恰好をしていますが、サウンドプロセッサ、Bが送信コイル、Cがインプラント本体です。そこに音波ではなくて電気的な信号を内耳に送って、そして脳に信号を送るという装置です。当然ながら、補聴器を使えない方が対象になります。
人工内耳とか補聴器の装用までの道のりですが、1で新スクをやりましたら、場合によっては2の二次聴力検査機関に行きますが、最終的には3の精密聴力検査機関に行き、ここで難聴の治療方針が決定されます。今は聴覚だけの話ですが、多くは、その上に書いていますように、補聴器か人工内耳を使用した療育・教育ということになりますし、下のそういう施設での連携が大切です。
これはいつ人工内耳の手術をすればよいかという外国のデータですが、お分かりのように、向かって左は、横軸が人工内耳の手術年齢、縦軸が言葉の語彙検査です。できる限りですが、早ければ早いほどよい成績が得られていますし、向かって右も同様に、音素、単語、文章全てにわたって、できるだけ早く手術を受けたほうがよい成績になっています。
大事なのは、手術だけではなくて、リハビリテーション、ハビリテーションです。
主な課題は、リハビリに携わる聴覚障害の言語聴覚士施設数の地域差です。
2番目は、サウンドプロセッサ故障時買換えの費用補助の自治体差。先ほども話がありました。
3番目が、サウンドプロセッサ用の電池費用の補助の自治体差が挙げられます。
この地域差ですが、地区ごとに分類しますと、100万人当たり人工内耳リハビリ施設数、ハビリ施設と言ってもいいですが、赤が少ないのです。ですから、関東、甲信越、中部は少ないです。緑は多くて、北陸とか東北地方は、100万人当たり人工内耳リハビリ施設数は、関東などに比べて比較的多いと言うことができます。
電池代助成状況は、先ほども講演いただきました人工内耳友の会ACITAの資料からなのですが、これはずっと膨大な資料があるのですけれども、例えば北海道の函館市は、2,300円/月の補助がある。充電器については2万5200円となっています。この辺が多いようですが、ずっと見ていきますと、ばらつきも相当あります。
これは体外機の助成状況なのですが、先ほど言いましたが、人工内耳は体外機の助成状況も、先ほどと同じ函館市を見ますと、20万円、耐用年数5年、日用生活用具に追加という条件が書かれています。これも非常に細かい市・村単位ですから、地区によって異なります。
続きまして「補聴器日本製・外国製」と書いたスライドをお願いします。
この地図は、ネット上で調べたわけですが、青が助成制度について、サイトに取りまとめがある県です。黄色は、助成制度について県単位での取りまとめがない県です。
スライドをお願いします。これは細かくて中が見えないかもしれませんが、例えば北海道は取りまとめがないので、道のサイト内で取りまとめ情報を確認できませんでしたが、今、条件1、条件2に書いてある30~70dBHL、18歳未満は、札幌市の例を掲載しています。実施の確認ができた市町村は、札幌市、伊達市、苫小牧市、旭川市、函館市等があります。
青で書いてある青森、岩手は、県単位の取りまとめがありますので、サイト上で見ることができます。
宮城もありません。
新潟、富山はありませんので、県単位では見られませんが、市町村単位で細かく見ていくことができる場合もあります。
申し遅れましたが、軽度・中等度難聴児へ補聴器購入費助成を実施している自治体とその表なのですが、このように、軽度・中等度難聴児へ補聴器購入費助成を実施している自治体について、大体30~70dBHL、条件も18歳未満が多いのですが、鳥取県のように40~70dBHL、小学生以下というのもあります。このようにサイトを眺めてみますと、大体は近い値ですが、若干のばらつきがあります。
スライドをお願いします。中等度難聴児発達支援事業、東京都の例を挙げますと、これは東京都内に居住している18歳未満の児童で、両耳の聴力レベルがおおむね30dB以上でありという条件があって、市町村によって違います。
メーカーもそれぞれいろいろな支援をしております。例えば日本の場合は、多くのリオネット補聴器を障害者総合支援法の補装具購入基準額のみの差額負担なしで購入可能にしていますし、軟骨伝導補聴器は子供価格を設定しています。
これが軟骨伝導補聴器なのですが、世界で初の新しい補聴器なので、これをどのように補助していただけるのかという問題がごく最近生じました。
スライドをお願いします。軟骨伝導補聴器の耳が5つ並んでいますが、このように外耳道閉鎖症の子供でも使える新しいタイプの補聴器です。
これは、このように事務連絡で厚生労働省から都道府県宛てに、従来の気導・骨導補聴器ではない、新しい軟骨伝導方法を使った軟骨伝導補聴器を支給決定する場合に当たりまして、右の下のほうを見てもらいますと、特例補装具として支給決定して差し支えないというのを迅速に決定していただいている例です。
スライドをお願いします。それでも、この緑と青は「公的助成なし」で、青は子供価格、リオンの助成制度によるものです。
以上です。どうもありがとうございました。
○中川座長 細井先生、ありがとうございました。
人工内耳については、その働きについて、あと助成制度が各地で違うということ。補聴器につきましては、軽・中等度難聴の補聴器助成制度が全国でばらばらであるということに触れていただきました。
また、私も子供さんたちに処方というか、勧めていますけれども、国産の軟骨伝導補聴器についての説明をいただきました。ありがとうございます。
それでは、引き続きまして、独立行政法人国立病院機構東京医療センターの南先生からです。
南先生は、今までの発表とはちょっと趣を変えまして、どのように取り組んでいくか、また、それに関わることについてお話をいただきます。よろしくお願いします。
○南氏 よろしくお願いします。東京医療センター耳鼻咽喉科の南です。
では、スライドをお願いします。私はふだん、新生児聴覚スクリーニングリファー後の難聴の診断、また、その療育につなげるといったことを仕事で行っています。
今回は、FCEI(Family-Centered Early Intervention)、聴覚障害児のための家族を中心とする早期介入について御紹介させていただきたいと思います。
次のスライドをお願いします。まず、FCEIの作成過程ですが、2012年、オーストリアのバードイシュルという場所に、10か国から難聴児の保護者、聾者の専門家、早期介入プログラムの指導者、早期介入専門家、研究者が集まりました。
これまでの議論のとおり、この領域にはいろいろな意見があります。そこで、まず、全員異議なしと認めた10項目の基本原則を確認して、それから原則の明文化、関連プログラムの内容、介入者の責務、介入方法の有効性を取りまとめてつくられています。
こちらは、今回参加されている方には、ぜひ一度目を通していただきたいと思っています。このQRコードをこちらに示していますし、そこからFCEIのページに飛ぶと、こういったいろいろな言語に翻訳されており、Japaneseもありますし、American Sign Languageにも翻訳されております。
次のスライドをお願いします。その10原則ですが、今回、このような場でお話しさせていただく機会をいただきましたので、こういったものが実際に日本の教育現場、療育現場で共有してもらえるかどうかというところを確認したくて、幾つかの施設に連絡を取って、事前に見ていただきました。第1回のこの検討会でお話しされていました明晴学園の玉田先生や、今回御参加されています日本聾話学校の先生方、また、声援隊のシュタイガー様には翻訳の手伝いもしていただきました。
皆さんにこの内容を共有できますかということと、共有が難しいと思われるところはどこですかというところで確認させていただきました。おおむねのところで共感をいただいたと思っていますが、一部の細かい内容については、問合せもいただいていますので、解釈の違いとかそういったところもあるかと思いまして、実際につくられた発起人のオーストリアのホルジンガー先生にその問合せの内容を確認しているところになります。
では、原則をお伝えいたします。
原則1「早期に、タイミングよく、公平に、支援につなげる」。これは、早期に、誰にも開かれたサービスであることが記載されています。これは必ずしも新生児聴覚スクリーニングだけをしっかりとやればいいということではなく、新スクから漏れる子もいますので、そういった子も取りこぼしなく、早期に、公平に支援につなげるような仕組みをつくっていくことが大事だと思います。
原則2「家族と支援チームのバランスのとれた連携」。
原則3「十分な情報提供とそれに基づく家族の選択、意思決定」。
原則4「家族への社会的および精神的サポート」。
原則5「家庭内での親と乳幼児の対話」。
原則6「補聴機器や支援機器手法等を用いる」。
原則2~6に関しては、FCEIの何をどう行っていくかということに焦点を当てて書かれています。
原則7「専門性の高い療育者」。
原則8「多職種連携チーム支援」。これは、提供する我々専門家のチームワークの重要性について書かれています。
原則9「進捗状況のモニタリング」。
原則10「プログラムのモニタリング」。個々の発達のモニタリングを常に行っていこうということと、そういう管理のプログラムも見直していく必要があるということが書かれています。
今回は時間の関係もありますので、原則3と原則4の一部のみを御紹介します。
次のスライドをお願いします。原則3「十分な情報提供とそれに基づく家族の選択、意思決定」の項目に関して「担当介入者に求められるもの」という内容で記載されている項目が12点あります。こちらを幾つかピックアップいたします。
1、最終的な意思決定権は家族にあることを認識し、家族が決定権を行使できるようサポートする。
3、情報に基づいた意思決定をできるように、分かりやすく、有意義で、関連性があり、偏りのないあらゆる情報源からの情報と経験を共有する。
4、インフォームドチョイスとは、中立的または機能的に記述された情報とは同義ではないことを念頭に置く。むしろ、評価を伴う情報のほうが特定の選択肢に関する各種リスク、便益、不確定要素に目を向けるという意味で重要となる。ただ単にパンフレットを渡せばいいわけではないということが書かれています。
7番、家族が自身の能力や実力に気づき、自信を持って活用できるように支援する。
11番、インフォームドチョイスとは、一度きりの決断ではなく、継続的なプロセスだと認識する。
次のスライドをお願いします。原則4に関しては「家族への社会的および精神的サポート」に関して、介入担当者に求められているものということで、9個の項目が書かれています。これも幾つかピックアップして読みます。
1、公的な支援の枠組みと、民間の、あるいはプライベートな支援の枠組みとを共に活用する。今思うのは、公的なものは市役所とかで結構情報が出てきますけれども、民間の中でも頑張っている施設や団体がありますので、そういったものも活用していくことが大事だということが書かれています。
4番、各家庭特有のニーズに合うサポートを選択的に受けられるよう、可能な選択肢を多くしておく。
7番、聾児・聴覚障害児を持つ家庭同士の支援の輪に入れるように支援する。
8番、ロールモデルとなる成人の聾者・聴覚障害者と家族との交流を促す。
次のスライドをお願いします。いろいろなことが書かれていますので、ぜひ目を通していただきたいと思いますが、FCEIが特に大切としているポイントは4つあります。
親子のやり取りをリラックスして行い、子育てを総合的に楽しむこと。
家族全員の幸福(子供が楽しんでいること、家族関係が安定していること、精神的な余裕があること、子供の将来について明るい見通しを持っていること)。
積極的な関与(療育への積極的な参加、情報に基づく選択、意思決定、子供の権利の擁護)。
そして、最後に自己効力感です。子育て・子供の発育の促進に対する自信と能力を持つということを大切にしてつくられています。
最後のスライドをお願いします。どうして耳鼻科医がFCEIに関して、こういったところで御紹介しているかということもたまに聞かれますけれども、先ほどから出ているように、いろいろな考え方があります。人間は、違う考え方とか違う文化に対して理解することを諦めると、そこには分断が生まれると思うのです。逆に理解したと思って理解したつもりになると、そこは偏見とか差別につながるのではないかと思っています。
ですから、理解し続けること、理解しようと努力していくことが大事かなと思っていますので、FCEIのホルジンガー先生にインタビューもさせてもらって、FCEIは、そういった理解し続ける姿勢をもってつくられたものかなと感じましたので、ぜひ日本の中にも共有していきたいと思っています。
恐らく、新生児聴覚スクリーニング、難聴診断の後、こういったFCEIのコンセプトを共有して、乳幼児期は感覚器の入力と言語をつなげる時期になると思いますので、そこで親が視覚を使った、例えば日本手話で子供を育てたいという選択をしたら、日本中どこであっても、日本手話を用いて十分な教育が行われる環境をつくる。または親が聴覚主導教育を選択し、音声言語の獲得を選択した場合は、先ほど声援隊の中でもありましたオーディトリーバーバルセラピーと言われるものがエビデンス的には最もいいとされているものですので、こちらも日本中どこであっても、こういったものが受けられる環境をそれぞれつくっていくことがまた大事かなと思っています。そして、皆さんを見ていると、その後、社会に出たら、様々なコミュニケーションを使って生活されていると感じています。
私からの発表は以上になります。ありがとうございます。
○中川座長 ありがとうございました。
南先生からは、家族を中心とする早期介入については、非常に大切な原則だと私も思っています。モダリティー論は、いわゆる手話、人工内耳、音声、視覚的にかかわらず共有できるものだと思います。
もう一つ、大切なメッセージを述べられておられましたけれども、理解し続けることで共生の社会を築く。共生の社会については、最初にろうあ連盟の石橋さんも述べられていましたけれども、どちらが優れているという考えではなく、お互いに理解し続けることが大切だというメッセージだと思います。重く受け止めたいと考えております。
それでは、ここまでの3題で、皆様から御質問、御意見がありましたら、お願いします。先ほどと同じように、御発言の際にはZoomサービス内の「手を挙げる」ボタンをクリックしてください。

渡辺先生、よろしくお願いします。
○渡辺構成員 日本医師会の渡辺でございます。
日本聾話学校の佐々木様と瀬底様に御質問させていただきたいのですけれども、お話の中で協議会の重要性とおっしゃっておられたと思うのですが、自治体で、もしくは日本という大きさのものでもないかもしれませんが、先生が御提案されておられる協議体という形態が実際にどの程度運営されておられるかということと、協議会の運営主体は、どこがするべきか。例えば行政の中に置いてほしいのか、それとも関係者が集まるような形がいいのかということが1点でございます。
もう一点は、たしか瀬底様がおっしゃったと思うのですけれども、難聴の3歳未満児を学校教育の対象にという御提案があったと思うのですが、御存じのように、6歳未満は、内閣府と厚労省、文科省が6歳未満の保育園、幼稚園等を運営しているわけですけれども、これは特別支援学校の中において、その学校教育の対象とした3歳未満児のシステムをつくっていただきたいというニュアンスでおっしゃっておられるのか、それとも何か幼稚園とはまた別の意味を御提案されているかが理解しにくかったものですから、そこら辺をもう少し教えていただければと思うのですが、その2点をお願いいたします。
○中川座長 ありがとうございます。
それでは、瀬底先生、佐々木園長、どちらがよろしいでしょうか。
○瀬底氏 では、私、瀬底が答えさせていただきます。
1つ目の協議会に関してなのですけれども、今の段階では、例えばそれぞれの聾学校が地域の教育委員会とつながりながらとか、それぞれ小さな単位でのつながりはあるようです。
一つ私たちが参考にしたいと考えているのは、神田先生が中心となって、長崎でそういったネットワークをつくっておられるということをお聞きしておりまして、長崎では、聾学校、役所、大きな病院、地域のクリニックと様々な形の業種の方たちがつながって、地域の聴覚障害の子供たちを一緒に見守っていくという形ができていると聞いております。そういった形がそれぞれの地域にできていくといいなと、さらにそれがつながっていくといいなと思っております。
本校としましても、今、町田市にありますので、町田市にまずそういったネットワークをつくっていきたいという願いを持っているところです。
そんな感じでよろしいでしょうか。
それから、もう一つ、主体なのですけれども、行政のところで一つそういった意識を強く持っていただけると助かると思います。というのは、福祉とか教育、医療といったところの窓口をいろいろと持っているのが行政なのです。
先ほど佐々木の発表でもありましたけれども、いろいろと縦割りになっていて、そこでの意思疎通もなかなか難しいということなので、そういった中で、まず、一つ役所の中でコーディネートするような立場の人をつくる。その人が地域の様々な資源とつながるようなコーディネートをするということです。もちろん、必要であれば、施設等がそこに積極的に協力していくということも考えられるようにはしていきたい思うところです。
それから、3歳未満児を教育の対象にというのは、法律的に今、全然違う仕組みになっているということは重々承知しております。
ただ、今、厚労省の管轄である保育園とか文科省の管轄である幼稚園の違いを超えて、認定こども園の仕組みができているところとか、難聴幼児通園施設と呼ばれていた児童発達支援センターは厚労省管轄で、聾学校の乳幼児教育相談は文科省の管轄で、そこが非常に宙ぶらりんになってしまって十分ではない。
特に、教育・療育のための大きな教育資源として聾学校があると思うのです。それを十分に活用するためには、聾学校の乳幼児教育相談のところに加配という形で、人を1人とか2人つけるということではなくて、これは教育の対象だということで、人も、施設も、それからプログラムもきちんと十分に提供できるような形で教育・療育の内容をしっかりと形づくっていただきたいことが大きな願いとしてあります。これが全国的な問題として難しさを感じていると聞いております。
○中川座長 ありがとうございます。
それでは、福島邦博先生、お願いします。
○福島(邦)構成員 申し訳ありません。
渡辺先生の質問に対しての横レスなのですけれども、一応、情報までにですが、令和2年度の厚生労働省の調査研究を通して、各地域でのいろいろな難聴児に関する連携協議会のようなものの形がどのようになっているかということを調査して、報告されています。
その中で、一つの問題点として指摘されておりますのは、地方行政の中でどこが担当課としてそういうものを構成するかということがきちんと決まっておりませんで、そのためにできていないところが多いかなと思います。
また、その調査研究の中で好事例としてピックアップされている地域が幾つかあります。広島県、札幌市などがピックアップされているのですけれども、いずれも先ほど回答でありましたように、現場の先生方が自然発生的に協議会、勉強会のようなものを重ねていって、その顔の見える関係の中からきちんとした支援体制をつくり上げていく形で進んでいるところもあります。
ですので、行政がそこで旗振り役となって進めていただくことはやはり非常に大切だと思いますし、そのためのプラットフォームをつくっていただきたいとは確かに思うのですけれども、その過程としては、顔の見える関係の中で教育や医療、福祉の専門家がお互いにタッグを組むという形が必要になってくるのではないかと思います。
あと、ついでにもう一つだけ付け加えておきますと、3歳以降のことで、先ほど認定こども園の話も出ました。日本聾話学校、ライシャワからもお話がありましたように、厚生労働省側の制度としている児童発達支援センター、聴覚障害児のためのセンターが経営的に非常に苦しい立場に置かれているというのは、日本中どこでもそうだと思います。そういうところも含めて、低学年のところからの教育支援が必要なのだということを認識していただいて、ちょうどこども園と同じように、どちらの選択をしても、どちら側でもきちんとした、安心した支援が受けられる体制をつくっていただきたいと思います。
以上です。
○中川座長 ありがとうございました。
手前みそですけれども、福岡県は、行政に旗振りをしていただいて、医師会が結構乗り込んでくれています。そこに教育、当事者であるろうあ連盟、親御さんが入ったりといった構成になっています。それで新スクの始まりのところから、教育に至るまでみんなで話合いをするという形をつくっています。ありがとうございます。
もう一題ぐらいよろしいですか。何かありますか。
なければ、結構時間も押していますので、これで終わりたいと思います。
ありがとうございます。
それでは、時間も参りましたので、本日はこの辺りで終了としたいと思います。
なお、先ほども述べましたけれども、本日質問し切れなかったこと、後から質問が出てきたことに関しましては、後日、事務局に質問をお寄せいただきましたら、構成員の皆様に共有できるように工夫させていただきたいと思います。
また、今日はそれなりに議論の時間が取れてよかったと思っていますけれども、いろいろな課題があって、なかなか進まないというのが現状かと思います。当初、全4回の予定で進めさせていただいておりましたけれども、8月または9月頃に第5回の検討会を開催することも視野に入れて、基本方針の策定を進めたいと考えておりますが、いかがでしょうか。
御意見がございましたら、後日でも差し支えありませんので、お寄せください。
最後に、事務局から連絡事項をお願いします。
○源河障害保健福祉部企画課長 本日は、御多忙の中、御議論いただきまして、ありがとうございました。
第3回の検討会は、6月24日木曜日の開催を予定しております。詳細は、別途御連絡させていただきます。
事務局からは以上です。
○中川座長 それでは、本日はこれで閉会といたします。
皆様、どうもありがとうございました。

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