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2021年4月22日 第6回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産流通部会
季節性インフルエンザワクチンの製造株について検討する小委員会議事録

健康局健康課予防接種室

○日時

令和3年4月22日(木)16:00~

 

○場所

厚生労働省 専用第21会議室

○議事

元村予防接種室室長補佐 定刻になりましたので、ただいまより第6回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会季節性インフルエンザワクチンの製造株について検討する小委員会を開催いたします。本日は御多忙のところ御出席いただき、誠にありがとうございます。本日の議事は公開になります。議事の様子はユーチューブで配信いたしますので、あらかじめ御了承ください。事務局で用意しているユーチューブ撮影用以外のカメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきますので、関係者の方々におかれましては御理解と御協力をお願いいたします。また傍聴の方は、傍聴に関しての留意事項の遵守をお願いいたします。会議冒頭の頭撮りを除き、写真撮影、ビデオ撮影、録音をすることはできませんので御留意ください。
本日は新型コロナウイルス感染症における状況を勘案し、一部Web会議で開催することといたします。Web会議を開催するに当たり、会議の進め方について説明をいたします。御発言される場合は、まずお名前をおっしゃっていただき、委員長から御指名をされてから御発言をお願いいたします。Web会議ですのでタイムラグが生じますが、その旨、御了承願います。会議の途中で長時間音声が聞こえないなどのトラブルが生じた場合は、あらかじめお知らせしている連絡先まで御連絡をお願いいたします。
本小委員会の委員に改選がありましたので、御報告をいたします。山口委員が委員会を御勇退され、1名の委員が新たに就任されましたので、先に御紹介いたします。北海道大学病院臨床研究開発センター教授の荒戸委員です。よろしくお願いいたします。
○荒戸委員 よろしくお願いいたします。
○元村予防接種室室長補佐 続いて委員の出欠状況について御報告いたします。現在、委員9名の全ての委員に御出席いただいておりますので、厚生科学審議会の規程により、本日の会議は成立したことを御報告いたします。また本日は参考人としまして、6名の方に御参加いただいております。国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター長の長谷川参考人です。国立感染症研究所の渡辺参考人です。日本ワクチン産業協会インフルエンザ専門委員から、中川参考人、保澤参考人、松浦参考人、渡辺参考人に御出席を頂いております。それでは、冒頭のカメラ撮りについてはここまでとさせていただきますので、御協力をお願いいたします。これ以降の写真撮影、ビデオ撮影、録音をすることはできませんので、御留意ください。
議事に先立ち、資料の確認をいたします。本日の資料は、あらかじめ送付いたしました電子ファイルで閲覧する方式を実施しております。番号01の議事次第及び委員名簿から、番号06の利益相反関係書類を御用意しております。資料の不足、御不明な点などがありましたら、事務局にお申し出ください。
それでは、ここからの進行は坂元委員長にお願いいたします。
○坂元委員長 川崎市の坂元です。皆様方、コロナウイルス対策でお忙しいところ、当委員会に御出席いただき、ありがとうございます。本日はよろしくお願いいたします。まず事務局から、審議参加に関する遵守事項等について、御報告をお願いいたします。
○元村予防接種室室長補佐 審議参加の取扱いについて、御報告いたします。本日御出席いただきました委員及び参考人から、予防接種ワクチン分科会審議参加規程に基づき、ワクチンの製造販売業者からの寄付金等の受取り状況、申請資料への関与について、申告を頂きました。各委員、参考人からの申告内容については、資料06の利益相反関係書類を御確認いただければと思います。
本日の調査審議を行う品目は、季節性インフルエンザワクチンとなります。本日の出席委員及び参考人の寄付金等の受取り状況から、参加規程第5条により、中野委員、日本ワクチン産業協会の中川参考人及び渡辺参考人が、調査審議を行う品目の申請書類に関与されておりますので、審議時に退室に該当いたします。また参加規程第6条により、日本ワクチン産業協会の中川参考人、保澤参考人、松浦参考人及び渡辺参考人が、調査審議されるワクチンを製造販売する企業との間で特別の利害関係を有すると考えられますので、審議時に退室に該当いたします。また、岡田委員が、参加規程第8条により、審議時に「退室」に該当し、中野委員が、第9条により、審議の際、「議決に参加しない」に該当いたしますので、これらの取扱いについてお諮りいたします。なお、この他、退室や審議又は議決に参加しないに該当される委員は、いらっしゃいません。以上です。
○坂元委員長 ただいま事務局から、本日の審議参加について報告がありました。参加規程第5条により、中野委員、ワクチン産業協会の中川参考人及び渡辺参考人が、それから参加規程第6条により、日本ワクチン産業協会の中川参考人、保澤参考人、松浦参考人及び渡辺参考人が、審議時に退室に該当いたします。また岡田委員が、参加規程第8条により、審議時に退室に該当し、中野委員が第9条により、審議の際に議決に参加しないに該当いたします。しかしながら参加規程によりますと、審議会場から退室するとの取扱いについては、当該委員等の発言が特に必要であると当委員会が認めた場合には、出席し、意見を述べることができるとなっております。今般の会議では委員長としては、岡田委員、中野委員、中川参考人、保澤参考人、松浦参考人及び渡辺参考人には、専門家としての意見を述べていただきたいということ、また意見を述べることがありましたら公平な立場でお願いしたいということを前提に参加するということで、委員の皆様方、いかがでしょうか。お諮りしたいと思います。御異議がある方は、いらっしゃいますか。また本委員会での意見の取りまとめは議決には当たりませんが、先ほど報告がありました岡田委員におかれましては、参加規程第9条に準ずる形で、中野委員と同様に意見取りまとめの際には参加いただかないということにしたいと思いますが、いかがでしょうか。以上2点について、御異議はありますか。
特に御異議はないということですので、委員の皆様方の御了解が得られましたので、早速審議に入ります。
議題として、委員の皆様方は、議事次第を御覧ください。議題は、2021/2022シーズン向けインフルエンザワクチンの製造株についてです。事務局より、御説明をお願いいたします。なお質疑については、全ての資料について、事務局から御説明を頂いた後にお時間を設けたいと思います。では、よろしくお願いいたします。

○稲角予防接種室室長補佐 資料1を御覧ください。ファイル番号としては02が付いているものです。資料1の2枚目、季節性インフルエンザワクチンの製造株の選定に当たっての基本的考え方等という形で記載させていただいております。左側に、インフルエンザワクチンの製造の流れを簡単に記載しております。有精卵の確保に6か月以上、接種から原液製造まで約6か月。また一番下にありますが、原液を製品化して供給開始まで1か月以上ということですので、この秋の供給が始まる時期から考えますと、昨年から準備を始められている状況です。その中でどの株を使うかということですけれども、右側の基本的考え方の所にありますけれども、世界保健機関が推奨する株の中から、期待される有効性とワクチンの供給可能量の2つを考慮して株の決定を行うという形で、これまで進められております。
資料の3枚目を御覧ください。上に基本的な流れということで、ワクチンの製造までや販売開始までの大まかな流れを記載しております。まず、WHOで推奨株が決まります。吹き出しにありますが、今年は2月26日にその結果が公表されております。その右側は、メーカーのほうでそれぞれの株の増殖性などを検討いただいて、製造効率を含めて感染研で、どの株を推奨されるかを御検討いただいています。さらにその右は、今日の会議ですけれども、インフル株の小委員会で製造株を検討いただくということで、決まりましたらメーカーに製造いただいて、秋から販売が始まるというような流れです。
同じく3ページの下の表ですが、こちらに今年のWHOの推奨株の概要と、感染研で御検討いただいた推奨の株と順位を記載をしております。内容としては、まずB型の2株については昨シーズンから推奨内容に変更がないという状況で、感染研の推奨に関しても昨シーズンから変更がありません。一方、A型の2株については、昨シーズンから変更があります。まずA型のH1N1については、感染研の推奨内容についてビクトリア株になっていること。またA型のH3N2については、こちらは2つ推奨を頂いております。1つ目がカンボジア株、2つ目がタスマニア株という形になっております。
続いて4枚目です。こちらは、インフルエンザワクチンの製造の特徴ということで、1本のワクチンに4種類の株の蛋白質が入っているということで、バランスよくそれぞれの蛋白質を作っていくことが重要というイメージを記載しているものです。
5枚目のスライドを御覧ください。ワクチン製造のイメージということで、大まかなスケジュールを上のほうに記載しております。先ほど感染研のほうからの推奨株で、H3N2株のみ2つ推奨を頂いておりますけれども、こちらについては4月下旬までに決めていただかないと、正直なところ製造の時間が取れないという状況になっているということです。
6枚目は、それぞれのワクチン製造候補株の製造効率についてです。ワクチン製造本数の推計のイメージですけれども、製造本数は各製造株の製造効率と、卵の数に依存をしているというものです。水色の製造効率については、下に表があります。3列ありまして、左が昨シーズンの株での製造効率、真ん中の列が今年の候補株のうちH3N2が複数ありますので、優先順位が高いカンボジア株での製造効率、右側が、H3N2株のうちタスマニア株を使ったときの製造効率になっております。昨年と推奨株が変わらないB型のほうは数字が同じですけれども、A型のH1N1については昨シーズンから比べると大体7割程度、H3N2株についてはカンボジア株ですと昨年と同等程度で、タスマニア株ですと昨年より9割弱というような数字が出ているという状況です。大まかなものとしては、このような形で資料を準備させていただきました。資料1については以上です。
○坂元委員長 続いてインフルエンザワクチンについて、国立感染研究所の御意見を伺います。長谷川先生、よろしくお願いいたします。
○長谷川参考人 国立感染症研究所インフルエンザ呼吸器系ウイルス研究センターと、4月1日から組織が変わりましたけれども、そちらの長谷川と申します。本日は、2021/22年シーズン向けの季節性インフルエンザワクチン製造候補株の感染研での検討委員会での検討結果について、説明させていただきます。資料は、資料2-1になります。まず、新型コロナウイルスの流行に対する対策の影響により、2020/21年シーズンの国内のインフルエンザウイルスの流行は、例年に比べて非常に小さいものでした。国内でのインフルエンザウイルスの分離数は、今シーズンは4株であり、A(H1N1)pdmが2株とA(H3N2)が2株です。
世界的には新型コロナウイルスの流行に対する対応で、検査数が減少することが懸念されましたけれども、実際にはそのようなことはなく、検査数自身はほとんど変化がありませんでした。その中で、陽性数は非常に少なかったのですが、地域的には陽性も出ており、世界的にいいますとB型のほうがA型よりもやや多かったという結果です。B型に関してはほとんどがビクトリア系統で、A型ではA(H3)が優位でした。感染研では、WHOワクチン推奨株選定会議で議論された流行株の解析成績、あとは昨年度のワクチンを接種したヒトの血清の抗体と流行株との反応性、又はワクチンの製造候補株の製造効率などを総合的に評価して、令和3年度の2021/22シーズンのインフルエンザワクチン候補株として、推奨株を以下のとおり決定いたしました。
まず、A/H1N1亜型です。A/H1N1亜型については、2020年1月以降に世界で検出されたウイルスが、主に6B.1A5Aのクレードに属するものです。このグループに属するウイルスには、187Aの変異を持つグループと156Kの変異を持つグループに分かれております。2019年9月から昨年1月の間では、187Aの変異株が大きかったのですけれども、2020年2月~8月はもう一方の156K変異株のほうが増えてきて、ほぼ同等となりました。そのような経緯から、2021年の南半球のワクチンの株は、H1N1の株に関しては、156Kの変異を持つ株が推奨されました。2020年9月以降の成績では、ウイルスが非常に少ない中で,
187Aの変異株のほうが156Kよりも多く見付かっております。
フェレットの感染血清を用いた抗原解析においては、187Aの変異は156K変異に対する血清との反応が悪く、逆に156K変異株は187A変異株に対する血清と反応が悪かったという結果です。187A変異を持つA/広東-茂南/SWL1536/2019(CNIC-1909)(昨年の製造株)を含む今シーズンのワクチンをヒトに接種した血清は、187A変異を持つウイルスに対して反応性はよかったのですけれども、156K変異を持つウイルスに対しては反応性が大きく低下しておりました。
そのような成績から、WHOにおいては21/22シーズンの北半球用のA(H1N1)pdmワクチンの推奨株を、187A変異株から156K変異を持つA/ビクトリア/2570/2019類似株に変更しました。その推奨されたA/ビクトリア/2570/2019類似株のワクチン候補株として、高増殖のリアソータント株A/ビクトリア/2570/2019のIVR-215、又はA/ビクトリア/1/2020のIVR-217、又はA/インディアナ/2/2020のNYMCX-349及びA/ビクトリア/3/2020のIVR-216があります。国内のワクチン製造所によって増殖性や製造効率、生産性が評価されました。感染価は株間での違いはありましたが、製造上は問題ないと思われましたけれども、CCA価においてIVR-215において測定できず、こちらは製造株としては不適正であると判断されました。蛋白質収量では、IVR-215、IVR-217は、令和2年度のワクチン製造株であるA/広東-茂南/SWL1536/2019(CNIC-1909)と同程度かそれ以上でしたが、それ以外のものは44~68%程度であって、製造株としては適してないと考えられました。製造適性があり増殖性のよいIVR-217を生産性評価したところ、A/広東-茂/SWL1536/2019(CNIC-1909)と比較して4社平均で78%であって、製造可能と判断されました。以上の結果から、A/ビクトリア/1/2020(IVR-217)を推奨といたしました。
続いて、A/H3N2亜型です。こちらは、2020年1月以降に世界で検出されたウイルスは、クレードで主に3C.2aに属するものが主流であり、ほとんどは3C.2a1bに属していました。この3C.2a1bは、さらに131K変異を持つグループと135K変異を持つグループに分かれて、さらに135K変異グループは1aと1bという2つのグループに分かれ、131K変異グループは2a、2bというグループに細分化されております。南アジア及び東南アジアにおいて、昨夏から冬場にかけて、H3の小規模流行が見られました。それらのウイルスは、2a1bの2aに属するものです。その中で、更に186Sと198Pの変異を持つグループと、159Nと186Dの変異を持つグループの2つのグループに分かれました。
フェレット血清を用いた抗原性解析においては、2a1bの2aのウイルスは今シーズンの推奨株であるA/香港/2671/2019類似株に対する血清と反応性はよくなく、中でも159N+186D変異はより低いという結果です。一方で、この2a1bの2aのグループの186S+198Pの変異である参照株A/カンボジア/e0826360/2020株あるいはA/タスマニア/503/2020株に対する血清は、186Sと198Pを持つ変異株に対してはよく反応しましたけれども、もう一方の変異株に対する反応性は余りよくなかった結果です。またその逆で、159N+186Dを持つ変異株に対する血清は、同じグループに対してはよく反応しましたが、186S+198Pの変異のほうには余りよくありませんでした。
A/香港/2671/2019類似株を含む今シーズンのワクチン接種をしたヒトの血清は、2a1b2aのグループに属する株との反応性はよくなかった結果です。また186S+198Pの変異グループからの高増殖のリアソータントは開発されておりますけれども、もう一方のグループの159N+186Dの変異グループは、開発途上であるという結果です。
以上の結果から、WHOは来シーズンの北半球用のA(H3N2)のワクチン接種株としては、A/香港/2671/2019類似株から2a1b2aグループの186S+198P変異を持つA/カンボジア/e0826360/2020類似株に変更いたしました。こちらの類似株のワクチン製造候補としては、高増殖のリアソータント株で、A/タスマニア/503/2020のIVR-221及び、A/カンボジア/e0826360/2020のIVR-224の2つが開発されております。国内のワクチン製造所により、両リアソータント株の増殖性、製造効率及び生産性が評価されました。ウイルス蛋白質収量と生産性については、両株の間で大差はなく、生産上問題ないのですが、増殖性がIVR-224のほうが高めであるため、製造適性としてはIVR-224のほうが高いと考えられました。以上より、IVR-224が第一の推奨の候補となるのですけれども、IVR-224を製造に使用するに当たり、懸案事項があります。それは、名古屋議定書です。名古屋議定書は、「遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分」を目的としており、商業利用による利益に対する配分の要求がある可能性があります。この検討委員会での決定が行われた4月16日現在で、配分要求に関してカンボジアの当局から、(配分を要求しない)という回答が得られておりませんでした。そこで検討委員会としては、IVR-224とIVR-221の順序を付けて推奨し、本小委員会の開催のときまで、この回答を待って決定していただくことにいたしました。実際には、現在までのところ、カンボジア当局から配分要求をしないという回答は得られておりません。
続いてB/ビクトリア系統については、WHOの推奨に関しては、昨年と変更はありません。フェレット血清を用いた抗原解析において、今シーズンの変更はありません。B/ワシントン/02/2019の類似株の製造候補としては、昨年の製造候補株であるB/ビクトリア/705/2018のBVR-11と、その他のものがあるのですけれども、いずれもBVR-11よりも蛋白収量において低かったということで、検討委員会としては昨年と同一株であるB/ビクトリア/705/2018のBVR-11を推奨いたしました。山形系統においても、WHOにおいては昨年とほとんど流行がなかったということもありますけれども、推奨株に変更はありませんでしたので、国内においても昨年と同一の株であるB/プーケット/3073/2013を推奨いたしました。以上です。
○坂元委員長 続きまして、参考人の日本ワクチン産業協会から御説明をお願いします。よろしくお願いいたします。
○中川参考人 日本ワクチン産業協会インフルエンザ専門委員の中川です。日本ワクチン産業協会から、2021/2022年シーズンのインフルエンザHAワクチン製造候補株の検討成績を報告いたします。資料を共有いたしますので少しお待ちください。
資料の2ページ、製造候補株の製造適性評価の方法を簡単に説明させていただきます。製造候補株の製造適性評価は、小スケールの実験系でワクチン製造と同じように発育鶏卵にウイルス株を接種して培養します。発育鶏卵からウイルス液を採取し、濃縮、しょ糖クッション遠心を行います。得られた精製ウイルス液についてウイルス蛋白質の収量を評価します。これを中間評価と呼びます。2017/2018年シーズンまでは収量の評価はここまででしたが、2017/2018年シーズンの埼玉株におけるエーテルスプリット工程での収率低下を受け、2018/2019年シーズンからは小スケール実験系でスプリット工程、ろ過工程を行い、模擬ワクチン原液まで作製してウイルス蛋白質の収量を評価するように変更いたしました。これを最終評価と呼んでおります。
3ページ、A/H1N1製造候補株の中間評価の結果です。感染研から5株の製造候補株が分与されましたので、これらの株について検討を行いました。この結果、製造工程管理可能な株の中で、蛋白質収量が高いビクトリアIVR-217株は、昨年度製造株であるCNIC-1909株に対して103%という結果になりました。
4ページ、ビクトリアIVR-217株のウイルス粒子形状を電子顕微鏡で観察した画像となります。ほとんどが球状のウイルス粒子が確認されておりますので、ウイルス粒子形状による製造への影響はないものと考えております。
5ページ、ビクトリアIVR-217株の最終評価の結果です。最終評価の模擬ワクチン原液段階では、昨年度製造株であるCNIC-1909株に対して、IVR-217株は78%の収量という結果でした。表には示しておりませんが、最終評価を行う際に精製ウイルス液での収量も確認しております。この結果は昨年度製造株に対して97%となり、中間評価結果である103%と同程度の結果となりました。また、スプリット工程でも顕著な収量低下は見られず、電子顕微鏡観察におけるウイルス粒子の形状からも製造への影響はないものと考えられます。このことから、日本ワクチン産業協会としては、ビクトリアIVR-217株の製造適性は十分にあると結論付けました。
6ページ、A/ H3N2製造候補株の中間評価の結果です。感染研から2株の製造候補株が分与されましたので、これらの株について検討を行いました。この結果、タスマニアIVR-221株及びカンボジアIVR-224株の蛋白質収量は、昨年度製造株である香港NIB-121株に対して、108%、96%という結果となりました。なお、タスマニアIVR-221株は発育鶏卵で継代を重ねることにより、増殖性が改善されることが検討の中で分かってきましたので、このシードを用いて評価した結果となっております。
7ページ、タスマニアIVR-221株のウイルス粒子形状を電子顕微鏡で観察した画像となります。ほとんどが球状のウイルス粒子が確認されましたので、ウイルス粒子形状による製造への影響はないものと考えております。
8ページ、カンボジアIVR-224株のウイルス粒子形状を電子顕微鏡で観察した画像となります。タスマニアIVR-221株と同様にほとんどが球状のウイルス粒子が観察されました。
9ページ、A/H3N2製造候補株の最終評価の結果です。最終評価の模擬ワクチン原液段階では、昨年度製造株であるNIB-121株に対してタスマニアIVR-221株は85%、カンボジアIVR-224株は97%の収量という結果でした。中間評価の際に申し上げたとおり、タスマニアIVR-221株は発育鶏卵で継代を重ねることにより、増殖性が改善されることが分かっておりますので、このシードを用いて評価したメーカー3社分の平均値を求めると、昨年度製造株比で92%となりました。スプリット工程でも顕著な収量低下は見られず、電子顕微鏡観察におけるウイルス粒子の形状からも製造への影響はないものと考えられます。
このことから日本ワクチン産業協会としては、タスマニアIVR-221株及びカンボジアIVR-224株の製造適性は十分にあると結論付けました。日本ワクチン産業協会では、カンボジアIVR-224株のほうがより製造適性があると考えておりますが、名古屋議定書の問題が解決されないのであれば、同程度の製造適性を有しているタスマニアIVR-221株を製造株として使用したいと考えております。日本ワクチン産業協会からの報告は以上です。
○坂元委員長 ありがとうございました。続きまして、事務局から何か補足説明等ありましたらお願いします。
○稲角予防接種室室長補佐 残りの資料2-2ですが、こちらは今年のWHOによる推奨株のリストを抜粋して記載しているもので御参考です。資料1~資料3で御説明させていただきました。本日、御議論、取りまとめをお願いしたいのは、A型のH1N1、A型のH3N2、B型の山形系統とビクトリア系統、それぞれどの株を製造とするかということをお決めいただきたいということで、よろしくお願いします。以上です。
○坂元委員長 ただいまから質疑応答の時間とさせていただきます。御質問のある方がいらっしゃいましたら、画面上で挙手、ミュートを外してどうぞ御発言ください。よろしくお願いします。
○福島委員 大阪市立大学の福島です。御説明ありがとうございました。昨シーズンは全世界的にインフルエンザが流行しなかったので、株選定もどうなるのかと思ったのですが、僅かながらも分離された株で、WHOでも選定がなされて、それを基に感染研のセンターで、あるいは各国内メーカーで御検討いただいたという経緯がよく分かりました。ありがとうございました。
これは確認ぐらいのお話でお聞きしたいのですが、長谷川先生、あるいは日本ワクチン産業協会の中川様になりますでしょうか、名古屋議定書の問題ですが、私が記憶する限りでは、株選定にこの問題が影響したことというのはこれが初めてかなと思いますが、そういう認識でよろしいですか。
○長谷川参考人 今回が初めてこれに引っかかるものだと思います。
○福島委員 分かりました。今回まだカンボジアのほうから対価支払いについて明確な回答がないということでした。回答がないうちに選定してしまえば問題ないという話ではないということは雰囲気から分かるのですが、対価というのはどれぐらいのものを求められるものですか。
○長谷川参考人 それが相手国によっても条件は変わってきますし様々で、お金で求められる場合もありますし、最終産物の何パーセントを提供してくださいという形で求められることもありますし、様々な可能性があると考えています。
○福島委員 なるほど。最終産物というのは、ワクチンそのものを現物支給しなさいということですね。
○長谷川参考人 そうです。そうしますと、トータルの供給量に影響が出る可能性もあるということだと思います。
○福島委員 分かりました。ありがとうございます。
○坂元委員長 福島先生、よろしいですか。
○福島委員 はい。
○坂元委員長 ありがとうございました。ほかに何か御意見等ありますか。
○中野委員 川崎医大の小児科の中野です。私も福島先生と同様に、御参考程度にお聞かせいただきたいのですが、選定株に名古屋議定書の問題は国内ではそれが関連しているのは初の事案ということでしたが、海外でもいろいろなインフルエンザワクチン株が使われていると思いますが、名古屋議定書に懸念事項があった株がそのまま使われた例とか、あるいは使って何か問題が発生した例はあるのか、御参考までに教えていただければと思います。
○坂元委員長 これは長谷川先生、いかがですか。
○長谷川参考人 パンデミックポテンシャルのH5やH7などに関しては別の枠組みがあって動いております。季節性のインフルエンザワクチンに関しては、過去に引っかかった例はなくて、昨年も中国の株を使うに当たってぎりぎりまで交渉がされていて、最終的には問題ないということになったのです。ですから、世界的にも今回が初めてです。
○中野委員 どうもありがとうございました。臨床の現場にいる者にとって、ワクチンの供給の問題が生じるというのは非常に大きな混乱を来しますので、その対価の支払いが金銭なのか、ワクチンの現物なのかというお話が今ありましたが、特に後者であってもかなり大きな問題が生じますので、名古屋議定書の懸念事項のある株というのは選定しにくいなと臨床医としては思っています。以上です。
○坂元委員長 どうもありがとうございました。ほかの委員の先生方、いかがですか。今、名古屋議定書が話題になっていますが。この件、若しくはこの件以外でも結構ですが、何か御意見はありますか。
○石井委員 国立衛研の石井です。H3N2の候補株であるIVR-221に関して、継代により増殖性が改善されたという御説明を頂いたのですが、増殖性が改善されたということは、何か特性が変わってきていることだと思います。ワクチンとして持つべき本来の特性は維持されているのかということについて教えてください。また、これから実製造の規模になったときに、更に何か特性が変わってワクチンとして問題が生じるような懸念がないか、御説明をお願いできますか。
○坂元委員長 これは長谷川先生でよろしいですか。それとも中川様でしょうか。
○長谷川参考人 中川さんにお願いします。
○中川参考人 タスマニアIVR-221株を感染研から配布いただいて継代をしたのですが、卵で2、3代継代するまでは昨年の製造株に対して30~50%という低増殖でしたが、卵で5代程度以上継代しますと、昨年の製造株に対して70%以上ということで、少し増殖性が上がってきました。増殖性が上がった株について、メーカーにおきましてマウスの免疫血清を作りまして、その血清で感染研から配布いただいた株に対して抗原性が変わっていないかという試験を行っておりますが、この結果、抗原性としては特に変わっていないという結果になっておりましたので、大きく変化が起きているということは考えておりません。
○坂元委員長 石井先生、よろしいですか。
○石井委員 はい、ありがとうございました。
○坂元委員長 ほかの委員の皆様方、何か御意見はありますか。いかがですか。よろしいですか。特に御意見はありませんか。
○荒戸委員 1点お伺いしたいのですが、H3N2のほうで、中間評価までは4社分の平均となっていて、最終製品では3社での平均の形でも出されているのですが、それぞれ会社間で、実際にどのくらいばらつきがある数字になっているのかということを、教えていただきたいと思います。
○坂元委員長 中川参考人、お分かりになりますか。よろしくお願いします。
○中川参考人 4社の結果ですが、1社が低増殖の株を用いて生産性を評価しております。このときの生産性は66%ということでした。増殖性が改善された株を用いて生産性を評価したところ84%~106%ということで、平均で92%という結果になっています。
○坂元委員長 荒戸先生、今の御回答でよろしいですか。
○荒戸委員 はい、ありがとうございます。そうしますと、その低い1社を除けば、90%以上の数値は期待できるという理解でよろしいですね。
○坂元委員長 中川参考人、いかがですか。
○中川参考人 そうですね、平均で90%程度は生産性としてはあるということになっています。
○坂元委員長 荒戸先生、よろしいですか。
○荒戸委員 ありがとうございました。
○坂元委員長 ほかの先生方、何か御意見等ありますか。よろしいですか。それでは、早速ですが、審議に入りたいと思います。次のシーズンにインフルエンザワクチンの製造株として選定することが適当と考える株について御意見を頂きたいと思います。今までの質問とかぶる所もあるかと思いますが、どの株を選定するかという形で御意見を賜りたいと思います。よろしくお願いします。
○福島委員 H1N1については異論はないと思いますが、H3N2については、先ほど中野先生も発言されたように、あえてここでリスクを取る必要は全くないですし、タスマニア株でもほぼ同等の製造効率であり、トータルで見た場合、ワクチンとして問題なく生産していただけるということですので、そちらのほうがよろしいのではないかと私は考えます。
○坂元委員長 この点に関して、今、福島先生のほうから、まだカンボジアのほうから何ら返事が来ないという形でリスクがあるという中で、製造工程上問題のないタスマニアを選んだらいかがかという御提案がありましたが、これに関しては、皆様方はいかがですか。多分、今回の審議の山場がこれではないかと思いますが、いかがですか。カンボジアとタスマニアの2種類があるという形で、カンボジアは名古屋議定書の関係で、早い話、今後どういう見返りを要求されるか分からない。それによっては、もしかしますと供給の問題も生じるかもしれないとの懸念もあります。そういう中において、タスマニアを選んだらいいのではないかという御提案を頂きましたが、この御提案に関してはいかがですか。二者選択しかないのですが、いかがですか。
○脇田委員 今、福島先生が言われたとおりだと思いますので、今回の候補株の中で選択肢があるのはH3N2だけですので、こちらでタスマニア株を選ぶことは妥当だと考えます。以上です。
○坂元委員長 脇田先生、ありがとうございます。今、脇田先生からもタスマニアを選ぶのは妥当ではないかという御意見を頂きました。ほかにいかがですか。
○釜萢委員 今回はタスマニアとカンボジアの2つの選択肢を比較して、そんなに大きな優劣がなかったので、名古屋議定書に引っかからない安全なほうを選択できるということで、それに私も賛成ですが、これは今後の課題として、名古屋議定書に引っかかるものと、そうでないものとの間に非常に収量の差が出てきたような場合には、どういうふうな整理をしたらよいのかということについて、現時点での何か御示唆を頂ければ有り難いと思います。今回の件は問題ないと思います。以上です。
○坂元委員長 今、釜萢先生から、今回は差はなかったという形で、リスク回避の意味でタスマニアという御意見が出ていますが、今後、差が出た場合どう考えていくかということに関して、もし厚生労働省のほうで何かお考え、もちろん仮の話ですので、こうするという決まったことは難しいと思いますが、今の釜萢先生の御質問に関していかがですか。
○稲角予防接種室室長補佐 事務局です。そのときにどれぐらいの候補株があって、それぞれの収量にどれぐらいの差があるかというのは分からないという前提ですが、そのときの状況を見ながら考えるというのは模範回答になると思います。ただ、基本的な考え方は、期待される有効性と供給可能量、この2点を考えるということになりますので、供給可能量としてそれぞれどれぐらい見込まれるかということを考えて検討させていただいて、御議論いただく形になるかと思います。
○釜萢委員 今の御説明で私はもちろん納得するのですが、この候補は大体複数出てくると理解してよいのかどうか。議定書に引っかからないものが幾つか出てくればいいと思いますが、その辺りはやってみないと分からないことなのかどうかについて、教えていただきたいと思います。
○長谷川参考人 これは株を選定する段階で存在する高増殖株があるかどうかというのは、本当にそのときになってみないと分からないという状況です。
○釜萢委員 分かりました。どうもありがとうございます。
○坂元委員長 ほかに御意見はありますか。あとは選択をするところがこれだけですので、ほかはいかがですか。株は選択の余地がないということでタスマニアということ。将来こういう問題が出てきたらどうするのかという部分ですが、やはり、相手からわが国の供給量の一部を要求されますと、我が国の予防接種体制そのものがうまくゆかなくなってしまうので、そういうものも勘案しながら、将来、そういう事態が生じたときには考えていきたいという御意見もありました。ほかにいかがですか。
○福島委員 先ほど釜萢先生が言われたことに関連して、私の数年前の知識では、名古屋議定書問題は、アメリカやオーストラリアは今のところ関係ないという情報もありました。長谷川先生、それは今もそういう認識でよろしいのですか。
○長谷川参考人 はい。ですから、今アメリカやオーストラリア、若しくは日本もですが、分離された株については今までどおり使えるという認識です。ただ、発展途上国でのみ分離されているもの、あとはヨーロッパでも使用に関しては認めますが、その前に通知をするとか、手続きが必要な国もあります。実際に昨年、スイスやフランスで分離されたものに関しては、それを選ぶことによって時間が制約を受ける可能性があるものが存在していました。
○福島委員 ありがとうございます。多分、グローバルに広く流行すると、いろいろな地域から分離株が取れます。H3については高増殖株が最近少なくなっているという問題もあるのですが、今回はやはり全世界的にインフルエンザが流行しなかったため、以前から懸念されていた事項が出てきたということかなと思います。確かに委員の先生、皆様がお感じになられているとおり、今後考えていかなければいけない問題かと思いました。以上です。
○坂元委員長 ほかに委員の先生方、御意見はありますか。よろしいですか。皆様方、御議論をありがとうございました。本日の議論の取りまとめに移ります。A型のH1N1については、ビクトリア株(IVR-217)を選定すること。2番目として、A型のH3N2については、感染研の推奨する2種類のうち、つまり、タスマニアとカンボジアのうち、不確定要素の少ないタスマニア株を選定すること。3番目として、B型のビクトリア系統については、昨年度と同じく、ビクトリア株を選定すること。4番目として、B型の山形系統については、昨年度と同じくプーケット株を選定すること。以上、いかがですか。御異論はありませんか。よろしいですか。
御異議はないという形で、今述べさせていただいた4つのことを決めさせていただきます。本日予定した議事は以上で終了となります。その他、事務局から何かありますか。
○元村予防接種室室長補佐 ありがとうございます。次回の開催については、改めて御連絡させていただきます。事務局からは以上です。
○坂元委員長 本日の季節性インフルエンザワクチンの製造株について検討する小委員会を終了させていただきます。どうも皆様方、御審議、御協力を頂きましてありがとうございました。これにて終了させていただきます。どうも御苦労さまでした。
 
 

 
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