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2019年4月8日 第2回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産流通部会
季節性インフルエンザワクチンの製造株について検討する小委員会議事録

健康局健康課予防接種室

○日時

平成31年4月8日(月)16:00~

 

○場所

厚生労働省 専用第22会議室

○議事

○元村予防接種室長補佐 それでは定刻になりましたので、ただいまより「第2回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会季節性インフルエンザワクチンの製造株について検討する小委員会」を開催いたします。本日は御多忙のところを御出席いただき、誠にありがとうございます。本日の議事は公開ですが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきますので、プレス関係者の方々におかれましては御協力をお願いいたします。また、傍聴の方は、傍聴の際の留意事項の遵守をお願いいたします。なお、会議冒頭の頭撮りを除き、写真撮影、ビデオ撮影、録音をすることはできませんので、御留意ください。

 開会に先立ちまして、41日付けで事務局側に人事異動がございましたので、紹介させていただきます。予防接種室長が長谷川から林に交代となっております。それでは、林より御挨拶申し上げます。

○林予防接種室長 予防接種室長を拝命いたします林でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○元村予防接種室長補佐 続きまして、本日の委員の出欠状況について御報告いたします。中野委員から御欠席の連絡を受けております。また、脇田委員から、少々遅れて出席される旨、御連絡を受けております。現時点で、委員9名のうち7名に御出席いただいておりますので、厚生科学審議会令第7条の規定により、本日の会議は成立したことを御報告いたします。

 ここで、新しく就任された委員の方を御紹介いたします。川西委員の後任の石井委員です。また、本日は参考人としまして、元国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター長の小田切孝人参考人、保健医療経営大学学長の廣田良夫参考人、日本ワクチン産業協会インフルエンザ専門委員の中川幸毅参考人、同じく保澤崇夫参考人、同じく松浦健太参考人、同じく渡辺隆雄参考人、以上の方々に御出席いただいております。

 申し訳ございませんが、冒頭のカメラ撮りにつきましてはここまでとさせていただきますので、御協力をお願いいたします。また、これ以降は、写真撮影、ビデオ撮影、録音をすることはできませんので、御留意ください。それでは、ここからの進行は坂元委員長にお願いいたします。

○坂元委員長 皆様、私、先ほど開催されました、研究開発及び生産・流通部会の伊藤部会長により、委員長に指名を受けた坂元です。私は感染症の専門家ではなく、接種主体である自治体の保健医療行政の代表としてこの会に参加しております。厚生労働省のほうにはいつも、供給に関して文句を言っていたら、おまえ委員長をやれと言われてしまい、当惑している次第です。皆様方、御協力お願い申し上げたいと思います。

 では、本日からペーパーレス会議を行いますので、事務局より、タブレット端末の操作方法及び資料の説明をお願いいたします。

○元村予防接種室長補佐 厚生労働省におきましては、審議会等における資料のペーパーレス化を推進しており、原則ペーパーレスで実施することとなりました。本委員会におきましても、原則タブレットを用いて、ペーパーレスにより議事を進行させていただきます。お手元のタブレットを御覧ください。タブレットは縦置きとさせていただいておりますが、回転させて使用することも可能となっております。各資料のファイルをタッチすると資料が開きますので、議事の進行に合わせて資料ファイルを開いて、閲覧いただくようお願いいたします。また、開いた資料は、指を上下にスライドして、縦にページをスクロールすることができます。また、画面の表示については、2本の指を広げたり狭めたりすることで拡大や縮小をすることが可能です。開いた資料を閉じる際は、左上部のマイプライベートファイルをタッチすると最初の資料一覧の画面に戻ります。その他、タブレットの操作に関して使用方法を机上に配布しておりますが、御不明な点があれば事務局の者がまいりますので、遠慮なくお声掛けください。

 続きまして、本日の資料を確認します。タブレットには、番号01の「議事次第」から番号08の「寄付金等・資料作成関与者報告」のファイルを格納しております。不足の資料等があれば事務局にお申出ください。

○坂元委員長 それでは事務局から、審議参加に関する遵守事項について御報告をお願いいたします。

○元村予防接種室長補佐 審議参加の取扱いについて御報告いたします。本日御出席いただいた委員及び参考人から、予防接種・ワクチン分科会審議参加規程に基づき、ワクチンの製造販売業者からの寄付金等の受取状況、申請資料への関与について御申告を頂きました。各委員・参考人からの申告内容については、資料08の「寄付金等・資料作成関与者報告」のファイルにありますので、御確認ください。

 本日の議事内容において、個別に調査審議される品目はインフルエンザワクチンを予定しております。本日の出席委員及び参考人の寄付金等の受取状況から、参加規程第5条により、中川参考人及び渡辺参考人が調査審議を行う品目の申請書類に関与されておりますので、「審議時に退室」に該当いたします。また、参加規程第6条により、中川参考人、松浦参考人、保澤参考人及び渡辺参考人が、調査審議されるワクチンを製造販売する企業(開発している企業も含む)との間で特別な利害関係を有すると考えられますので、「審議時に退室」に該当いたします。また、中山委員が第8条により、「審議時に退室」に該当し、第9条により、「審議の際、議決に参加しない」に該当しますので、これらの取扱いについてお諮りいたします。なお、このほか、退室や、審議又は議決に参加しないに該当される委員はいらっしゃいません。以上です。

○坂元委員長 ただいま事務局から、本日の審議参加について御報告がありました。参加規程第5条により、中川参考人及び渡辺参考人が、参加規程第6条により、中川参考人、松浦参考人、保澤参考人及び渡辺参考人が、「審議時に退室」に該当いたします。また、中山委員が第8条により、「審議時に退室」に該当し、第9条により、「審議の際、議決に参加しない」に該当します。しかしながら、参加規程によりますと、審議会場から退室するとの取扱いについては、当該委員等の発言が特に必要であると委員会が認めた場合には出席し、意見を述べることができるとなっております。今回の会議では、私は委員長として、中山委員、中川参考人、松浦参考人及び渡辺参考人には、専門家としての意見を述べていただきたいこと、また、意見を述べることがあれば、公平な立場でお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。また、本委員会における意見の取りまとめは議決には当たらないとのことですが、審議参加の取扱いについて御報告があった中山委員におかれましては、第9条に準ずる形で、意見の取りまとめの際には参加いただかないことにしておりますが、いかがでしょうか。委員の皆様方、御意見をよろしくお願いいたします。

(異議なし)

○坂元委員長 よろしいでしょうか。では、異議なしという形でよろしくお願いいたします。以上、委員のほうから了承が得られたという形で、早速審議に入りたいと思います。

 委員の皆様方には議事次第を御覧いただければと思います。議題は「2019/20シーズン向けインフルエンザワクチンの製造株について」です。まず、事務局より御説明をお願いいたします。なお、質疑応答につきましては、全ての資料について御説明いただいた後にお時間を設けたいと思います。よろしくお願いいたします。

○賀登予防接種室長補佐 それでは、事務局から、資料1PDFの番号が04と書いてあるものに沿って御説明します。1ページ目、PDFで言うと2枚目ですが、そちらを御覧ください。まず最初に、株選定の基本的な考えなどについて、おさらいとして御説明します。インフルエンザワクチンの製造ですが、鶏の有精卵を使って、その中に製造用のウイルス株を接種し、そこで培養させて、その後、精製してワクチンを作っていくのが基本的な流れになります。この製造用のウイルス株に何を使うかについて、この会議で御議論いただきたいと考えております。基本的な考え方については、昨シーズンにこちらの会議で出した資料と同じですが、基本的にWHOが推奨する株の中から、期待される有効性とワクチンの供給可能量を踏まえた上で、双方を考慮した有益性が最大となるように検討を行うこととなっております。

 続きまして、2ページ目の資料をお願いいたします。株選定の基本的な流れについて御紹介します。最初に、WHOから複数株が推奨されることになります。その後に、国内メーカーで増殖性などの製造効率を御確認いただき、製造効率を含めて感染研で順位付けをしていただくプロセスになります。その後に、厚生労働省で単一株を検討するのですが、その場がこちらの場になります。決まった製造株をメーカーに通知して、メーカーで製造に着手していただいて、例年9月下旬から販売を開始していく流れになります。オレンジの吹出しを付けておりますが、WHOの最初の推奨の段階です。A型のH3N2以外は例年並みの221日に公表されたのですが、A型のH3N2については推奨が321日まで持ち越されたという事実がありましたので、御報告申し上げます。WHOの推奨概要などについては、後ほど小田切参考人から御説明があるかと思います。

 3ページ目に移ります。ワクチンを製造するときの特徴がインフルエンザワクチンにはありますので、ご紹介します。赤色の矢印があるように、23月頃から、メーカーに原液の製造に着手していただいて、その後、緑の矢印、製剤化や品質確認、これは国家検定も含みますが、そういったプロセスを経て、9月から市場への供給を開始していく流れになります。その際に、オレンジとピンクのもので作っておりますが、4価ワクチンですので、4つの原液を混ぜて1つのワクチンを作っていくことになります。その際に、4種類ごとに原液量の多少は出てきます。本数としては、原液の一番少ない量に制約がかかる形になって、供給量が決まってくることになります。このオレンジのものでいうと、H3N2の原液が一番多く余っておりますが、余りがたくさんあるからといってワクチンがたくさんできるわけではなく、下のピンクのもののように、例えば、H3N2の原液の量を減らしながら、代わりにH3N1の原液の量を増やすことができれば最低の量は増えますので、ワクチンの本数自体が増えてきます。とどのつまり、4つの原液を均等に製造できれば、同じ製造能力でもワクチンの供給量が増えますので、原液をバランスよく製造していただくことが重要かと考えております。

 続いて、4ページ目のスライドに移ります。その製造工程の部分をより詳しくしたものですが、23月辺りに、例えば、B型の山形系統だとか、B型のビクトリア系統だとか、そういった原液を作っていただいておりまして、45月にも製造すると。また、67月以降に、2巡目、3巡目というような形で、原液を製造しながら、並行して製剤化も進めていく流れになります。WHOで、ワクチンの製造株の推奨は、AH3N2に関しては当初より1か月後ろ倒しになった現状がありますので、その影響を最小限に抑えるためには、先ほど申し上げました、バランスよく作ることを担保することが重要でして、4月上旬には、A型のH1N1と、B型の山形・ビクトリア系統の製造株を決めていただき、また、4月下旬までにはA型のH3N2の製造株を確定すると、こういったタイムマネジメントも必要な状況かと考えておりますので、御報告させていただきます。一旦事務局からは、こちらでお願いいたします。

○坂元委員長 引き続きまして、2019/20シーズンのインフルエンザワクチンについて、国立感染症研究所の御意見を伺いたいと思います。小田切参考人から御説明、よろしくお願いいたします。

○小田切参考人 それでは、資料2-3に基づいて御説明させていただきます。この資料2-3にあります情報は、WHOのワクチン株選定会議で、各WHO協力センターが解析して、データを持ち寄って議論したときの情報、それから、その後に国内のインフルエンザの流行状況に関して国立感染症研究所が、更に追加でまとめた資料であります。

○坂元委員長 小田切先生ありがとうございます。では事務局から何か。

○賀登予防接種室長補佐 事務局から補足させていただきます。今、小田切参考人から御説明いただく資料については秘密情報が入っておりますので、去年もそうでしたけれども、会議の机上配布とさせていただいておりまして、会議が終わったら回収させていただきたいと思います。申し訳ございませんが、そのようなお取扱いでお願いいたします。なお、お配りしている机上配布のものは委員の先生方だけでして、傍聴の方々には配っておりませんので、御了承いただきたいと思います。申し訳ございません。

○坂元委員長 よろしくお願いいたします。

○小田切参考人 続きになりますが、資料の右下の所に1番と番号が振ってあります。この下のパネルが、2018/19シーズンの我が国のインフルエンザワクチンの製造株のコンポーネント、4価ワクチンの株についてです。その下にあるのがWHOのワクチン推奨株ですけれども、先ほど事務局から説明がありましたように、H3N2ワクチン株に関しては、1か月遅れたという事情がありまして、これは321日に最終的にWHOが決めたワクチン株のコンポーネントであります。このようなコンポーネントになった理由について、これから各亜型ウイルスごとに御説明申し上げたいと思います。

 次ページです。世界と日本の流行状況ということで、まず疫学的な情報について御報告いたします。下のほうのパネルは、北半球と南半球の流行したウイルスの亜型を、週ごとにWHOがまとめたものです。上のほうの北半球を見ますと、今シーズンは、いずれも青系統の棒グラフが立ち上がっていますように、ほとんどA型が流行している状況でした。茶色で示したのがB型に相当しますけれども、ほとんどB型は流行はなかったというパターンでした。このA型の流行の中では、どちらかというとH1N1pdm09が多くの国で流行の主流を占めているという状況でした。下のグラフは南半球のパターンですが、南半球も流行しているウイルスの系統は似ていまして、ほとんどがA型であったということです。

 次ページ、3番の上の円グラフを見ますと、これがグローバルに分離されたウイルスの亜型の比率をまとめています。H1N1pdm0938%、H3N211%、そして、B型の山形系統が1%、ビクトリア系統が1%というようにして、圧倒的にA型が多いというパターンでした。

 下の世界地図がありますが、これがそれぞれのリージョンにおける各亜型の検出状況です。B型は、今、申し上げましたように非常に少ないのですが、アフリカ地区、それから、南アメリカ地区は比較的B型も取れているという、茶色で示していますように、そういう状況でありますが、ほかのリージョンではほとんどが水色系、青色系なので、H1若しくはH3の混合流行であるという状況です。

 次ページ、4番のスライドの上のほうです。円グラフで見ますと、B型というのは、山形系統とビクトリア系統の2つの系統がありますが、今年の流行に関しては、世界的にそれぞれビクトリア系統も、山形系統もほぼ11の比率で流行しているというパターンでした。下の棒グラフはそれぞれのリージョンごとの山形系統、ビクトリア系統の比率を表したものです。

 次ページ、この円グラフは日本の状況です。下の棒グラフでもありますように、流行の初期はH1N1がほぼ主流でしたけれども、流行の後半になるにしたがってH3N2の流行が、かなり大きくなってきまして、最終的には逆転し、円グラフではH3N254%、H1N1pdm0944.5%という比率に最終的にはなっています。

 B型に関しては、それぞれ山形系統が0.6%、ビクトリア系統が0.9%ということで、日本はB型の流行がほぼないという状況でした。

 次ページです。ここからはそれぞれの亜型ごとのウイルスの特徴、流行の状況をお示しいたします。

 下に系統樹がありますが、これはH1N1ウイルスのHA遺伝子の系統樹でもってグループ分けしたものを、世界中の分離されたウイルスについてまとめたものです。色が付いているドットがたくさん並んでいますけれども、これが実際の検出されているウイルスの数と見ていただいて結構です。一番右端に行くにしたがって日にちが新しいので、20191月という状況ですけれども、ほとんどH1N1のウイルスというのは、グループでは6B.1A、そこに全て入ります。それを更に詳しく見るために、次ページの7番の上のパネルを御覧ください。

 これは感染研がまとめた系統樹です。今、申し上げましたように、ほぼ全ての検出されているH1N16B.1に入りまして、さらに今シーズンの特徴は、大多数のウイルスはHA183番目のアミノ酸がセリンからプロリンに変化している、こういう変異を持ったものが取れているというのが特徴です。さらに183Pというプロリンを持ったグループが、7つのグループに更に詳細に分かれます。それを表したのが183P-5というのが一番上にありますし、その下にはP-6P-1となって、7グループに分かれるということです。

 ちなみに、今シーズン使ったワクチン株、シンガポール/GP1908というのは、一番下の所に赤の矢印で示しています。今、流行しているのが、それとは違うグループに入っています。下の棒グラフでお示ししているのは日本で取れているグループですが、青色が183Pのグループ2というのが取れています。それから、赤色で示しているのが、グループ5ということで、日本はグループ2とグループ5が主に検出されていることが分かります。

 次ページ、8番目のスライドの上のパネルです。これは各WHOコラボレーティングセンターが、それぞれでH1N1のウイルスの抗原性を調べたものです。ワクチン株、ミシガン/45/2015が物差しになりますけれども、これに比べて流行しているウイルスがどれぐらい抗原性が似ているかどうかというのをまとめたのが、これです。各コラボレーティングセンターのCDC、チャイナCDC、それからロンドンセンター、感染研、そしてメルボルンセンターというように分かれていますが、ほぼどのセンターもワクチン株であるミシガン、若しくは日本で採用していますシンガポールと抗原性が96%類似しており、抗原性が違っているのは、たかだか4%ぐらいです。

 これがフェレットの感染血清を使った抗原性解析でありますが、その下のパネルにあるのは、ヒトの血清を使った場合の解析法です。これは、今シーズンのワクチンを接種した小児、成人、老人層のそれぞれの人に誘導された血清で流行株とどれぐらい反応するか、いわゆる流行株をワクチン接種後の抗体がどれぐらい抑えるか。それを調べたのがこのパネルです。

 一番上のパネルが小児、2段目のパネルがオールドペディアトリック、何歳ぐらいでしょうか、13歳ぐらいまでのところだと思います。それから、成人層、高齢者層と分かれます。

 これを見ますと、一番左端にあるワクチン株が物差しになるわけですが、これを100%として見た場合に、それぞれ解析したウイルスが、ヒトの血清とどれぐらい反応するかというのをパーセンテージで見ています。今年はウイルスの183番目のPというグループが流行していると申し上げましたとおり、183Pを持つグループというのは、ミシガン/45ライク、若しくはシンガポールライクのワクチンをした血清との反応性が、グッと下がっています。一応、目安としては50%の所に赤線を引いていますので、これよりも本当は上にあってほしいわけなのですが、大体今シーズンの流行しているウイルスは50%を切っているという状況、特に小児での反応性が極端に下がっているということが分かります。類似したパターンは成人層及び老人層でも見られます。これまで抗原性解析はフェレットの血清を使ってやってきていますが、流行株とワクチン株の違いを識別できなかった。しかしながら、ヒトの血清でやると、この抗原性の違いを識別できるようになってきているということで、データとしてはヒトの血清を使った反応のほうが、より優位であるとみなすことができます。これは何を意味しているかというと、今、使っているミシガン/45ライク、若しくはシンガポールライクのワクチン株から流行しているウイルスは抗原性が変わってきていると、いわゆるドリフトを起こしているということを示しています。それをヒトの血清がきれいに識別しているということを意味しています。

 次ページは、そのまとめになります。まとめは、今、説明したとおりなので省きます。

 10ページ、B型にいきます。まず山形系統を御説明申し上げます。山形系統は、昨シーズンから全く何も変わっていません。ほとんどデータとしてはここには載せていませんけれども、ワクチンに採用していますプーケット/3073/2013のウイルスと流行しているウイルスは、かなり数としては少ないのですが、抗原性は類似していますし、また、そのワクチンでもって得られたヒトの血清も流行株をよくカバーしています。

 11ページ、ビクトリア系統です。下のパネルですが、ビクトリア系統のそれぞれのウイルスのHAの系統樹を見ると、2016年の後半からアメリカ合衆国を中心にして、HAのタンパクに2つのアミノ酸の欠損変異株というのが流行し始めたわけですが、これがどんどん広がりまして、ヨーロッパにも広がり、アジアにも広がりということで、系統樹の下のアミノ酸欠損という所にドットがたくさん集まっているのが御覧いただけると思いますが、これぐらい、世界中に広がってきているということが分かります。さらに、3個のアミノ酸の欠損した3アミノ酸欠損株、これもアフリカや中国を中心に出現しているという状況で、欠損株の変異株が幾つか混合流行しているという状況であることがこれで分かります。

 次ページ、それぞれの2アミノ酸及び3アミノ酸欠損株がどれぐらいの比率で、それぞれのリージョンで流行しているかというのをまとめたのが、これであります。これはCDCがまとめた情報ですが、パイチャートを見ていただくと、まず黄色、これは2アミノ酸欠損株で、これが世界中に広がっている状況ですが、アジアでも32%ありますし、ヨーロッパでも38%、それから北アメリカが多くて52%、それから中南米はほぼ100%という状況で、グローバルに相当広がっていることが分かります。さらに、先ほど言いました3アミノ酸欠損株、これはアフリカとオセアニアで多いわけですが、いかんせん、分離している数がこれぐらいしかないので、この比率が果たして意味があるのか疑問ですが、この程度は取れているということです。

 折れ線グラフを見ていただくと、ほぼ2アミノ酸欠損が主流ですけれども、3アミノ酸欠損も徐々に増えてきているということで、下の世界地図を見ていただくと、赤で示したのが2アミノ酸欠損、それから、紫色で示したのは2アミノ酸欠損と3アミノ酸欠損が混合流行しているという地域でして、これを見てもグローバルに広がってきているということが分かります。2アミノ酸欠損株と3アミノ酸欠損株というのは抗原性が、かなり大きく違います。

 次ページ、まとめになります。H3N2に入る前に、一応、資料2-1でもって感染研のワクチン検討委員会がまとめました結論について、説明させていただきたいと思います。

○坂元委員長 タブレットのほうですね。

○小田切参考人 はい、タブレットに載っています。資料2-1です。H1N1pdm09のワクチンについては、御説明申し上げましたとおり、世界中で取れたウイルスの解析情報に基づきまして、WHOは、最初のパラグラフの下から4行目辺りに記載しましたが、最近の流行株はミシガン/45類似株から抗原変異している。その変化をヒトの血清が的確に捉えているということが分かってきました。このことからWHOは、来シーズンのH1N1ワクチン株として183Pを持つ流行株からワクチン株を選定するのが妥当だといった結論に至り、ワクチン株としてはブリスベン/02/2018類似株を推奨いたしました。

 これを受けまして、感染研の検討委員会としては、ブリスベン/02/2018の類似株からは、ワクチン製造候補株としてブリスベン/02/2018IVR-190が開発されていますので、国内のメーカーに依頼しまして、IVR-190の増殖性、製造効率、生産性について検討していただいたわけです。

 後でメーカーのほうから追加で実際の説明があると思いますが、先に結論を申し上げると、この検討していただいた製造候補株ブリスベン/02/2018IVR-190は比較的製造効率がよくて、ショ糖クッション法によるウイルスタンパク収量を基にした製造効率で見ると、前年度のワクチンに比べて123%、最終的な製造工程まで調べた生産性の評価においても、前年度の102%で良好であることを踏まえまして、委員会としては、ブリスベン/02/2018(IVR-190)を推奨するという結論に達しました。

 3ページ、B型です。山形系統です。先ほど説明しましたように、流行しているパターンが全く変わっていないので、ワクチン株を変更する理由が見当たらないというのが現状です。そこに書きましたように、ワクチン株としてはプーケット/3073/2013、これが今シーズン使われたわけですが、このワクチン株は今シーズンの製造実績もあることから、平成31年度も全く同じ株、プーケット/3073/2013、これを推奨するという結論に至りました。

 次は、ビクトリア系統です。ビクトリア系統は、これも昨シーズンと大きく変わっていないということで、第2パラグラフ、フェレット感染血清を用いた抗原性解析では、2アミノ酸欠損を持つ流行株はWHOのワクチン推奨株、コロラド/06/2017及び我が国のワクチン製造株のB/メリーランド/15/2016(NYMC BX-69A)、これを接種したヒトの血清、それぞれで比較的よく抑えられていることが1点。

 それから、3アミノ酸欠損株も出てきていますが、2アミノ酸欠損株を使ったワクチンで得られる抗体は、3アミノ酸欠損株もよく抑えることから、WHOとしてはワクチンの変更はせず、ビクトリア系統はコロラド/06/2017類似株を推奨しました。我が国も製造実績がある去年のワクチン株であるB/メリーランド/15/2016(NYMC BX-69A)、これを再びワクチン株として推奨するという結論に至りました。これがビクトリア系統であります。

 次は、H3N2です。H3N2は事務局も説明しましたけれども、今年は非常に異例な状況であって、WHOの推奨が1か月遅れたという状況にありました。それについて、今から御説明申し上げます。

 机上配布資料2-3に戻っていただきまして、14ページになります。まず上のパネルになりますが、これがH3N2HA遺伝子の系統樹によるグループ分けですけれども、今、世界中ではやっているウイルスは、3aというグループと、2a1bというグループと、2a2というグループに分かれます。ドットの数で見るとお分かりになりますように、一番特に最近、去年9月以降で多く取れているのが2a1b、その上にあります3aは急速に流行が広がってきているという状況にあります。

 下のパネルの円グラフにありますように、赤で示しているのが2a1bのグループですが、それぞれアフリカ、アジア、ヨーロッパ、オセアニアでは比較的2a1bが主流で流行しています。しかしながら、グリーンで示しました3aというグループについては、ヨーロッパも無視できないほど比率としては検出されていますし、特に北アメリカは50%を超えて、52%が3aというグループに入ります。それから、セントラルサウスアメリカも31%、これが3aというグループに入ってきているということで、下の折れ線グラフで示しますように、緑のグラフが急激に立ち上がってきているというのが、お分かりになると思います。

 次ページ、では、日本はどうかということで、棒グラフで示していますけれども、下に数字が書いてあるのは「月」です。特に12月以降を見ていただくと、ほとんど青色で示した2a1b131Kというグループに入るのが取れています。それから、赤色で示した2a1bも取れていますが、アメリカやヨーロッパ、中南米で取れているような3aグループは、日本では流行していません。これが疫学的な情報であります。

 その下のパネルは抗原解析を調べたものです。これはCDCのデータですが、2a1というグループは、今シーズン使っているワクチン株のシンガポールというグループがこれに当たるのですが、フェレットの抗血清を使ってみますと、2a1は、同じ流行株の2a1若しくは2a1bのグループにはよく反応する。黄色で囲った部分がそれです。しかしながら、急激に流行が広がってきている3aというグループとは余り反応していないと。

 今度は逆のほうから見ます。3aグループの代表株のカンザス/14で作った抗血清を流行株と当てて調べてみますと、3aグループに反応しますが、2a1bのグループに余り反応しない。グリーンで囲っている部分です。これは何を意味するかというと、2a1bのグループは2a1bしか反応しないし、3aのグループは3aしか反応せず、2a1b3aとは抗原性が、かなり大きく違うことを示しています。

 次は、ヒトの血清を使って調べた場合です。先ほどと同じように今シーズンにワクチンを接種して、小児と成人と老人層のそれぞれで誘導された抗体が流行している2a1bのウイルス若しくは3aのウイルスと、どれぐらい反応するかというのを棒グラフで示したのがこれです。一番左端が物差しになります。今シーズンのワクチン、シンガポールで見た場合を100%とした場合であります。ずっと横にたどっていただくと、下の所に2a1b若しくは2a1b+135K135Nという、これが2a1bに入るウイルスに対してですけれども、これらに対しては比較的よく反応しています。50%ラインを超えています。更にずっと横にいくと、赤で囲んだ3C.3aのグループに対して反応性を見ると、50%ラインを切っているということで、余りよく反応していないことが分かります。これは何を意味しているかというと、今シーズン使っているシンガポール2a1aグループのワクチンは、新たに流行が拡大してきている3aのグループとは余り反応しないので、有効性は余り期待できないだろうということを示しています。それをまとめたのが、まとめ-1と、まとめ-2の所に文章で書いてあります。それがWHOのワクチン選定会議で、それぞれ報告された状況でありました。

 なぜ、WHOH3N2のワクチン株選定が1か月保留になったかというと、まず1つは、3C.3aという新たに流行が拡大してきている流行状況は、地域によって全然違うということです。特にアジア地区は3aがほとんどない。日本は全くゼロであると、国によって事情が全く違うということなので、WHOのワクチン会議、221日の時点では、もう少しこの流行パターンを見極めたいというのが1つありました。

 もう1つは、もし新しい3aというグループにワクチン株を変更をする場合には、実際ワクチンの製造に使える製造株があるのかどうかという点が、問題になりました。WHOの会議をやっている時点では、まだ製造に使える株の開発が終わっていない状況で、もし、その開発に失敗した場合には、この新しい3aというグループに変更はできないのではないかという議論になりまして、3aのグループでワクチン製造用のウイルスが開発されるまで待ちましょうということになりまして、WHOとしては1か月、リコメンデーションを保留にして、最終的には321日にH3N2のワクチンの推奨をしたわけであります。先ほど資料の一番冒頭の所に示しましたように、321日の時点になりまして、3aのグループからワクチン製造候補株の開発に成功したことを踏まえて、WHOは、流行が広がってきている3a、しかも特に小児のワクチン接種後血清がほとんど反応していないことを重くとらえて、WHOとしては3C.3aのグループから、A/カンザス/14/2017類似株を推奨する結論に達したわけです。これがWHOワクチン株選定会議でありました。

 今度はそれを踏まえまして、国内のワクチン株選定検討会議ですが、通常、選定会議は3回開催し、3月末までに終わるのですが、こういうWHOの事情もありまして、今回は3回目を326日に開きましてこの時点では、H1B型の2株を推奨することができましたけれども、H3N2に関しては、ワクチン製造候補株カンザス/14/2017(X327)をワクチンメーカーで製造効率を見てもらい、その情報が出そろったところで結論を出したいということで、現在、H3N2は保留という状況になっています。ということで、推奨理由のH3N2は、現在、検討中となっています。以上であります。

○坂元委員長 小田切参考人、どうもありがとうございました。では、引き続きまして、参考人の日本ワクチン産業協会から御説明をお願いしたいと思います。

*

○松浦参考人 日本ワクチン産業協会インフルエンザ専門委員の松浦から、「2019/20年シーズンのインフルエンザHAワクチン製造候補株の検討成績」を報告いたします。資料3を御覧ください。2ページ目で製造候補株の製造適性評価の方法を簡単に説明させていただきます。製造候補株の製造適性評価は小スケールの実験系で、ワクチン製造と同じように発育鶏卵にウイルス株を接種して培養します。鶏卵からウイルス液を取りまして濃縮、しょ糖クッション遠心を行い、精製ウイルス液を得て、このウイルスタンパクの収量を評価します。これを中間評価と呼んでいます。2017/18シーズンまでは収量の評価は、この中間評価までだけだったのですが、2017/18シーズンの埼玉株におけるエーテルスプリット工程での収率低下を受けまして、2018/19シーズンからは小スケールの実験系でエーテルスプリット工程、そしてろ過工程を行い、模擬ワクチン原液まで作成して、ウイルスタンパク質の収量を評価するという方法に変更しています。これを最終評価というふうに呼んでいます。

 3ページ目は、H1N1候補株であるブリスベンIVR-190株の中間評価の結果となります。上段の表は昨シーズンのシンガポールIVR-180株に対しての中間評価の結果、下段の表はコントロールとして置いたH3N2香港株に対しての結果を示しています。中間評価では、4社の平均で昨年度のシンガポールIVR-180に対して、ブリスベンIVR-190123%収量という結果が得られています。

 4ページ目は、ブリスベンIVR-190株のウイルス粒子形状を電子顕微鏡で観察した画像になります。一部に細長いフィラメント状のウイルス粒子が観察されましたが、その割合はそれほど多くはございませんでした。

 5ページ目は、ブリスベンIVR-190株の最終評価の結果となります。最終評価の模擬ワクチン原液の段階では、昨シーズンのシンガポールIVR-180株に対して、このブリスベンIVR-190102%の収量という結果となりました。中間評価の結果が123%でしたので、エーテルスプリットやろ過工程で若干収率が低下したということになると思います。フィラメント状のウイルス粒子の割合が多い場合は、ワクチン製造のフィルターろ過工程で目詰まりが発生して生産性が低下することが懸念されますが、先ほどの4ページ目の電子顕微鏡の画像からも、このIVR-190はフィラメント状のウイルスをそれほど多く含んでいるわけではなく、過去の製造株の実績の範囲と考えています。やや、ろ過工程での収率低下が懸念されるものの、ワクチン製造の中で十分に吸収可能と我々は考えています。

 以上のことから、日本ワクチン産業協会としては、H1N1についてはブリスベンIVR-190株の製造適性は十分にあると結論付けました。是非とも、このIVR-190株を2019/20シーズンの製造株として選定いただきたいと考えています。

 6ページ目は、H3N2候補株であるカンザスNYMCX-327株の中間評価の結果です。これは3C.3aのクレードとなります。本日の段階では、まだ中間評価までしか終了できていませんが、4社の平均で、昨年度製造株IVR-186株に対して116%の収量という結果が得られています。現在、最終評価を進めていまして、418日までには全ての評価が終了する予定となっています。日本ワクチン産業協会としては、最終評価でもこの中間評価と同様の結果が得られるだろうと考えていますが、過去に埼玉株のエーテルスプリット工程で収率が低下したという経験がありますので、気を抜かず慎重にこの327株の評価を進めていきたいと考えています。

 なお、B型についてはWHO推奨株の変更がありませんでしたので、特に新しい候補株の評価というのは実施していません。日本ワクチン産業協会からの報告は以上となります。

○坂元委員長 松浦参考人、ありがとうございます。ここで事務局から何か補足等はございますか。

○賀登予防接種室長補佐 事務局から少し補足させていただきます。資料1をもう一度御覧ください。資料12ページ目の部分です。上に黄色の基本的な流れを書いているものですが、下の黒枠の所に、各4価の亜型ごとにWHOの推奨の概要と感染研での順位付けをまとめています。B型の2つ、山形系統とビクトリア系統につきましては小田切参考人からも御説明がございましたけれども、昨シーズンから変更がなかったので感染研でも同じものを推奨いただいています。A型のH1N1に関してはブリスベン株というものが1つ、例年、複数推奨されるものですけれども、今年は1つが推奨されていまして、感染研からもそれがいいのではないかという御意見を頂いています。A型のH3N2につきましてはカンザス株がWHOから推奨されている状況で、今、国内のメーカーで製造効率を確認中で、先ほど松浦参考人からは中間評価まで進んだという御発言をいただきました。

 続きまして、5ページ目、6ページ目の説明をさせていただきます。5ページ目のものは昨シーズンも御議論いただいたときに似た資料を出させていただきましたが、有効性に関して、まずワクチンの抗原相同性という所、これは※1に小さく書いていますけれども、ワクチン製造ウイルスによって、フェレットで誘導される抗体とよく反応する流行ウイルスの割合です。下の枠で2019/20シーズン、次の候補株ですけれども、AH1N1の今回候補になっているブリスベン株と、この前の冬、昨シーズン流行した流行株との抗原相同性という意味では、H1N1では99%、H3N2では27%という結果でした。その右のほうに、もう1つ抗原相同性と書いていますけれども、こちらにつきましては実際にワクチンを接種した後に流行した流行株との抗原相同性ということになり、2018/19シーズンで申し上げると、96%と6%という数字でした。さらに右のほうに置いてあるカラムにつきましてはヒト(6歳未満の小児)のデータですが、こちらの有効性ということで2018/19は、今、集計中です。17/18シーズンで申し上げると、当時はAH3N2B型山形の混合流行という話でしたけれども、H3N2につきましては67%、B型山形系統については60%の有効性があったと。これは、それぞれp0.05で有意差が付いているというデータです。

 続きまして、6ページのスライドで製造効率について御説明させていただきます。この場でこの株を決めると、この本数になりますよということまで御紹介できると非常にシンプルなのですが、AH3N2につきまして、今、未確定なものですので少し事務局で工夫させていただきました。製造本数を因数分解した場合、各製造株の製造効率は有精卵1つから生産される有効成分の量と、有精卵をどれだけ使えるかということ、さらにワクチン1本当たりの有効成分量で割り返すと、ワクチンの製造量ということになるかと思います。ここで御議論いただきたいのは、それぞれの株の製造効率を踏まえた選定ということですので、この青色の部分を比較していただくことで相対比較可能と考えています。

 そういった意味で申し上げますと、山形系統、ビクトリア系統につきましては、昨シーズンの製造効率がそれぞれ40.041.1でした。今シーズンにつきましては変更なしということであれば、それぞれその数字ですので対前年度比1.00ということになります。

 AH1については、WHOから推奨株が変更されていまして昨シーズンは33.4という数字、今シーズンについては32.9で、対前年度比が0.99ということになります。ここの数字ですが、先ほど業界から御説明いただいた数字は100数パーセントでしたけれども、何が違うかと言いますと、こちらのほうでは各メーカーごとの製造量のシェアごとに加重平均したもの、メーカーのほうは4社単純平均したものという違いがありますので、大きな違いはないと御理解いただければいいかと思います。補足の説明は以上です。

○坂元委員長 お二人の参考人と、ただいま事務局から簡単におまとめいただきました。これから質疑に入りたいと思います。御質問のある方は挙手でお願いしたいと思います。福島委員からお願いします。

○福島委員 御説明ありがとうございました。松浦参考人にお尋ねしたいのですが、御説明いただいた資料3の日本ワクチン産業協会資料で、H1の増殖性が最終評価も悪くなくよかったなと思うのですが、H3については今のところ中間評価の段階ということでした。最後のスライドで6ページ目になりますが、中間評価ということで、しょ糖クッション法による増殖性が116%、あるいは99%という数字が出ていて、こちらのほうに※でワクチンメーカー4社の相加平均値とあります。これは単純に足して4で割ったという感じですか。このばらつきとかはどんな感じでしょうか。丸めると100%近いのですが、極端に低い値などが含まれていなかったか、もし御存じでしたら差し支えない範囲でよろしくお願いします。

○松浦参考人 今、質問がありましたように、ここには4社の平均値を載せていますけれども、4社の実際の数値は大体110130ぐらいのところに結果が入っています。

○福島委員 ありがとうございます。同様にH1のほうも、それほどばらつきはなく、ということでよろしかったでしょうか。最終評価の数値で教えていただければと思います。

○松浦参考人 H1については85%から125%ぐらいのところで、こちらは少しばらつきがありました。

○福島委員 低く見積もった場合に85%ということですけれども、こちらは4社合わせてということですので問題ないという解釈でもよろしいのですね。

○松浦参考人 はい、そのように考えています。

○坂元委員長 中山委員、どうぞ。

○中山委員 小田切参考人にお伺いします。16ページの資料のものですが、これはCDCのデータで今シーズンのワクチンを打ったヒトの血清ということですね。

○小田切参考人 16ですか。これですか。

○中山委員 16ページの上の図ですけれども。

○小田切参考人 そうです、はい。

○中山委員 この今シーズンのもので見ると、アメリカのほうでは3aのものが流行っていたということなので、それを反映していると考えていいわけですか。

○小田切参考人 はい、そう思います。

○中山委員 そうすると、去年の流行が被っている場合にはこういう反応をするということで、例えば日本でこれをやるとレスポンスはどういうふうに考えられますか。

○小田切参考人 恐らく、これと非常に類似しているパターンになると思います。しかしながら、日本では実際に3aというのは流行していないのでデータは取れませんけれども、もし来シーズン、3aが日本でもかなりの規模で流行した場合に、恐らくこの2a1というワクチンを使った場合はこのようなパターンが出る。要するにあまり抑えないというふうになることが予想されます。

○中山委員 この3aという株は、かつて同じような抗原性を持ったものが流行したとか、そういうことはないですか。

○小田切参考人 類似したのはないです。同じ3aという遺伝的なグループに入るのはありましたけれども、今、流行している3aは抗原的に相当大きく違っています。

○中山委員 全然違うと考えていいですか。

○小田切参考人 全然違うと考えていいと思います。

○中山委員 ありがとうございます。

○坂元委員長 ほかに何か御意見はございますか。山口委員、どうぞ。

○山口委員 8ページのCDCの下のほうのデータですが、183Pでも確か小児は50は超えていないというか、なかなか反応性は悪いのですけれども、高齢者も50%を超えていない。実際、昨年からワクチンの接種は16歳以上で1回投与になっていますけれども、そういう意味で高齢者の適応というのを考えるとメモリーがなくなってしまっているのか。そういうふうに考えていいのであれば量が1回投与でいいのか。その辺が気になるのですが。

○小田切参考人 これは恐らく、あくまでも反応性なので1回投与とか免疫の強さとは必ずしも相関していないと思います。

○坂元委員長 ほかに何か御意見はございますか。脇田委員、どうぞ。

○脇田委員 松浦参考人にお尋ねします。H1N1の製造候補株の評価で電子顕微鏡観察がありますけれども、同じくH3株の候補株のほうでこの解析はまだ行われていないでしょうか。

○松浦参考人 今、速報の電子顕微鏡の結果が出てきていまして、ほぼIVR-190と同じような感じの画像が得られています。

○脇田委員 そうすると、フィラメント型がそれほど多くはないと観察されたという理解ですか。

○松浦参考人 はい、そのとおりです。

○坂元委員長 ほかに御意見はございますか。いかがでしょうか。

○石井委員 松浦参考人にお伺いしたいのですが、この抗原の量の定量には、どのような方法を用いておられますか。

○松浦参考人 これは、ローリー、タンパク含量で測定しています。

○石井委員 高次構造などの観点から抗原としての性質を考慮して、今、出てきているローリー法の定量値をそのまま考えて、これまでの経験上問題ないと考えてよろしいのでしょうか。

○松浦参考人 ワクチンの実際の有効成分はHAでして、力価試験としてSRD試験、一元放射免疫拡散試験というのが設定されていますけれども、この時点ではまだ測定することができませんで、抗血清を作成しないと力価試験の試薬がリリースされません。ただ、これまでHAワクチンを作ってきた実績がありますので、このタンパク質を指標にしてワクチンの製造効率を想定することは、我々としてはリーズナブルなものだと考えています。

○石井委員 ありがとうございます。

○坂元委員長 ほかに御意見はございますか。

○小田切参考人 1点だけコメントいたします。H3N2ワクチンは、皆さん御存じのように卵馴化ということで製造工程で卵に馴化させると抗原変異します。仮に今回の3aという新しいワクチン株にしたとしても、今シーズンのワクチンと同じぐらい卵馴化による変化が起こっています。したがってH3N2に関しては、この問題が解決されない限りワクチンの効果はある程度限定的なものであるということ。これをしっかり念頭に置いていただきたいと思います。以上です。

○坂元委員長 ありがとうございました。ほかに、廣田先生、せっかくお出でいただいておりますので何か御意見等ございますか。

○廣田参考人 小田切先生がおっしゃるとおりではないかと思います。

○坂元委員長 ほかに委員の皆様方から何か御意見はございますか。では、御意見は以上で締切りと言うのも変ですけれども、皆さんお忙しいと思いますので御意見がないということで、それでは審議に入りたいと思います。今、御提案がありましたのはB型山形系統・ビクトリア系統ワクチン、それからAH1N1のブリスベン、それとAH3N2に関してですが、いかがでしょうか。御審議願いたいと思います。山口委員、どうぞ。

○山口委員 この3つについてはこれで結構だと私は思います。ただ、ちょっと気になるのは最終製造されたときに、もし万が一、製造量が前のように下がった場合にどういう選択肢があるのか。その辺は事務局的にどう考えておられるか少し確認させていただきたい。

○賀登予防接種室長補佐 事務局でございます。今、先生がおっしゃったことは、まだ未確定のデータが出ていないH3N2の製造効率が、著しく悪かったというような世界かと思います。それにつきましては改めて、そのときのファクトを基にどういった対応が取れるか御議論いただきたいと思いますけれども、そのスケジュールとして4月の下旬にはメーカーで、今、中間評価が終わっているものですけれども、最終評価が出てきますので、直ちにこちらの部会で御議論いただきたいと考えています。

○坂元委員長 では、御審議いただいたということで本日の議論のまとめに移りたいと思います。1番、B型山形系統及びビクトリア系統のワクチン製造株の選定につきましては、WHOの推奨と同様に2018/19シーズンの製造株と同一株を選定することが適当である。これが1つです。もう1つが、AH1N1のワクチン製造株の選定につきましても、WHOの推奨と同様にブリスベン株を選定することが適当であり、もう1つ、議論になりましたAH3N2につきましては、今後の製造等も見て改めて御議論いただくという形で、いかがでしょうか。以上、3点につきまして皆様方の御意見を頂きたいと思います。いかがですか。よろしいでしょうか。

(異議なし)

○坂元委員長 では、以上、3点につきましては以上のとおりとさせていただきたいと思います。御審議ありがとうございました。では、事務局にお返ししたいと思います。

○元村予防接種室長補佐 次回の開催につきましては、追って事務局のほうから御連絡をさせていただきます。

○廣田参考人 質問してよろしいでしょうか。

○坂元委員長 どうぞ、廣田参考人。

○廣田参考人 小田切参考人にお伺いしたいのですが、このH33aですけれども、スライド番号の1415ぐらいになりますかね、この3aは日本ではまだ1株も取れていないのですか。

○小田切参考人 はい、現時点ではまだ取れていません。

○坂元委員長 廣田参考人、よろしいですか。それでは、本日の「第2回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会季節性インフルエンザワクチンの製造株について検討する小委員会」を終了とさせていただきます。皆様、御苦労さまでした。ありがとうございます。

 
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