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2018年4月11日 第1回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産流通部会季節性インフルエンザワクチンの製造株について検討する小委員会議事録

健康局健康課予防接種室

○日時

平成30年4月11日(水)16:00~

 

○場所

厚生労働省専用第15会議室

○議事

 

○事務局 定刻になりましたので、ただいまより「第1回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会季節性インフルエンザワクチンの製造株について検討する小委員会」を開催いたします。
本日は御多忙のところを御出席いただき、誠にありがとうございます。本日の議事は公開ですが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきます。プレス関係者の方々におかれましては御協力をお願いいたします。また、傍聴の方は、傍聴の際の留意事項の遵守をお願いいたします。
第1回の小委員会ですので、本日御出席の委員の方々を五十音順に御紹介申し上げます。公益社団法人日本医師会感染症危機管理対策担当常任理事の釜萢委員です。元国立医薬品食品衛生研究所所長の川西委員長です。なお、川西委員長におかれましては、厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会において伊藤部会長より委員長に指名されております。
続きまして、川崎市健康福祉局医務監の坂元委員です。大阪市立大学大学院医学研究科公衆衛生学教授の福島委員です。北里生命科学研究所ウイルス感染制御学Ⅱ特任教授の中山委員です。日本薬科大学客員教授の山口委員です。国立感染症研究所所長の脇田委員です。また、本日遅れていらっしゃるということですが、国立国際医療研究センター病院副院長の大曲委員です。また、本日は御欠席ですけれども、川崎医科大学小児科学教授の中野委員です。委員の方は以上です。
続いて、現在は控え席に着席いただいておりますけれども、本日御出席いただいております参考人につきまして御紹介をさせていただきます。国立感染症研究所感染症疫学センター長の大石参考人です。国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター長の小田切参考人です。保健医療経営大学学長の廣田参考人です。日本ワクチン産業協会インフルエンザ専門委員の中川参考人です。同じく保澤参考人です。同じく松浦参考人です。同じく渡辺参考人でございます。
現時点で委員9名のうち、7名の御出席を頂いてございますので、厚生科学審議会の規定により、定足数に達しましたので、本日の会議は成立したことを御報告申し上げます。
冒頭のカメラ撮りにつきましては、ここまでとさせていただきます。御協力をお願いいたします。なお、これ以降は写真撮影、ビデオ撮影、録音することはできませんので御留意ください。それでは、ここからの進行は川西委員長にお願いいたします。
○川西委員長 私は研究開発及び生産・流通部会の伊藤部会長より、この委員会の委員長に指名されました川西です。よろしくお願いします。
まず初めに、配布資料の確認を事務局からお願いします。
○事務局 議事に先立ち配布資料の確認をさせていただきます。議事次第、配布資料一覧、委員名簿、資料1-1と1-2、2-1から2-4、3-1から3-3、それから参考資料1から4まで御用意しております。配布資料一覧と照らして、不足している資料がございましたら事務局までおっしゃっていただければと思います。
なお、資料3-1の別添につきましては、小田切参考人より委員限りの資料の配布ということを求められておりますので、委員限りの配布となっておりますことを申し添えます。以上です。
○川西委員長 初めに、本小委員会の設置要綱によれば、委員長は副委員長を指名できるということです。山口委員を副委員長に指名したいと思いますが、よろしいでしょうか。
(異議なし)
○川西委員長 ありがとうございます。それでは山口委員、よろしくお願いいたします。
○山口委員 よろしくお願いします。
○川西委員長 それでは、事務局から審議参加に関する遵守事項について報告をお願いいたします。
○事務局 審議参加の取扱いについて御報告申し上げます。本日御出席いただきました委員及び参考人から、予防接種・ワクチン分科会審議参加規程に基づき、ワクチンの製造販売業者からの寄付金等の受取状況、申請資料への関与について御申告を頂きました。各委員、参考人からの申告内容につきましては机上に配布しておりますので、御確認いただければと思います。本日の出席委員及び参考人の寄付金等の受取状況から、参加規程第5条により、中川参考人及び渡辺参考人が、申請書類に関与されておりますので、審議時に「退室」に該当いたします。
次に参加規程第6条により、中川参考人、保澤参考人、松浦参考人及び渡辺参考人が、調査審議されるワクチンを製造販売する企業(開発している企業を含む)との間で特別な利害関係を有すると考えられますので、審議時に「退室」に該当いたします。また、第8条により中山委員が審議時に「退室」に該当し、第9条により中山委員が審議の際「議決に参加しない」に該当いたしますので、これらの取扱いについてお諮り申し上げます。このほか、「退室」や「議決に参加しない」に該当される委員はいらっしゃいません。
なお、本小委員会における意見の取りまとめにつきましては、参加規定における議決には当たらないものと考えております。寄付金等で御申告いただいた内容につきましては後日、Webサイト上で公開させていただきます。以上です。
○川西委員長 ありがとうございます。ただいまの御説明のとおりですが、参加規程第5条によって、中川参考人及び渡辺参考人が、また参加規程第6条によって中川参考人、保澤参考人、松浦参考人及び渡辺参考人が、それから参加規程第8条により中山委員が、審議時に「退室」に該当することになりますが、この部会全体の意見として必要であるということであれば、第6条及び第13条により、専門家としての意見を述べることができるとなっております。そういう視点から、今回の会議では私、委員長として、中山委員、それから中川参考人、保澤参考人、松浦参考人及び渡辺参考人には専門家としての意見を述べていただきたい、また意見を述べることがありましたら公平な立場でお願いしたいと思うところです。いかがでしょうか。
(異議なし)
○川西委員長 また、本委員会における意見の取りまとめは議決には当たらないということですが、審議参加の取扱いについて御報告のありました中山先生におかれましては、第9条に準ずる形で、委員の意見取りまとめの際には、それには参加いただかないということとしたいと思います。いかがでしょうか。
(異議なし)
○川西委員長 よろしいですか。それではそういうことで進めさせていただければと思います。中山委員及び参考人の皆様、どうぞよろしくお願いします。
それでは議事に入りたいと思います。委員の皆様方には議事次第を御覧いただければと思います。今日の議題は3点ございます。まず1番目、厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会季節性インフルエンザワクチンの製造株について検討する小委員会について、2番目、インフルエンザワクチンについて、3番目、その他、この3つが用意させていただいている議題です。
本日、まずは事務局や参考人の皆様から御説明いただいて、最後にまとめて質疑応答の時間を設けたいと考えております。参考人の皆様におかれましては関連する議題の質疑の際、前のテーブルに御着席いただくこととしたいと思います。まずは1番目の議題について、事務局から御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
○事務局 資料1-1と1-2につきまして御説明をさせていただきます。資料1-1を御覧いただければと思います。季節性インフルエンザワクチンの製造株について検討する小委員会、当委員会の設置要綱です。季節性インフルエンザワクチンについて有効なものが安定的に供給できるよう、ワクチンの製造株の選定について技術的な検討を行うため、厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会運営細則第5条に基づき、研究開発及び生産・流通部会の下に「季節性インフルエンザワクチンの製造株について検討する小委員会」、本委員会を設置することとなり、平成30年2月19日に行われました研究開発及び生産・流通部会において持ち回り審議で決定したところです。
次に資料1-2を御覧いただければと思います。予防接種・ワクチン分科会参加規程です。今回の小委員会の設置に当たり、第2条の適用対象部会のみを改正しております。こちらは平成30年3月1日、予防接種・ワクチン分科会において持ち回り審議で決定をしております。御説明は以上です。
○川西委員長 ありがとうございました。これは特に問題ないと思いますので、2番目の議題にまいります。2番目の議題、今日のメインの話題になろうかと思います。インフルエンザワクチンについてということです。まずは事務局から御説明いただければと思います。参考人の皆様方はそれぞれ、前のテーブルに御着席をお願いします。
○事務局 それでは事務局より御説明させていただきます。資料2-1を御覧いただければと思います。
今年前半までのシーズン、2017/18シーズンのインフルエンザワクチンに関する経緯について、まず事務局から概要等の御説明をさせていただければと思います。1枚目、1ページ、スライドの2番目を御覧いただければと思います。これまでのインフルエンザワクチン製造株決定プロセスを示した図がこちらの図になります。まず、健康局長から国立感染症研究所の所長に、次のシーズンのワクチン製造株の検討を依頼する。それから、感染研の中で製造株の中から製造株を選定いたしまして、選定した製造株を健康局長に回答いただき、健康局長は感染研の所長からの回答を踏まえ、ワクチンの製造株を決定するという旨の健康局長通知を発出することとなっておりました。
次のページをお願いいたします。上のスライドですが、その中で2017/18シーズンでは、先ほどの流れでお示しした感染研からの回答までは例年と同様に推移いたしまして、H3N2亜型株につきまして、A/埼玉という株が選定結果として感染研から回答があったところです。
しかし、その後、ワクチンの製造販売業者から、この埼玉株の増殖効率が想定より著しく悪いという旨の報告が厚生労働省にございました。このため、厚生労働省から感染研に対しまして、検討会議の結果を見直し、A/香港という株を使用可とすることについて、検討を依頼したところです。この再検討依頼に対し、感染研からA/香港株の使用を可とすることを了承するという旨の御回答を頂き、このことを踏まえてH3N2亜型のワクチン製造株として、A/香港株に決定するという旨の健康局長通知を発出することとなったところです。
少し飛びますがスライドの8番目を御覧いただければと思います。ページ番号で言うと4ページ目の下になります。課題となりましたH3N2亜型の製造株の決定に当たりましては、H3N2亜型以外のインフルエンザウイルスに対する効果を考慮すれば、ワクチンを接種する機会は幅広く確保することが非常に重要と考えられるということ、また、予想される製造量を考慮すると、H3N2亜型単独で考えた場合であっても疫学的観点からA/香港株としたほうがメリットが大きいという観点が検討され、最終的にA/香港株に決定されたところでございます。
次、5ページ目の上ですが、このような経緯となったことからインフルエンザワクチンの製造に一部遅延が発生し、当初の推定生産量見込みによれば、前のシーズンである2016/17シーズンの製造量よりも少し下回る可能性が示されました。このため、13歳以上の者が接種を受ける場合、医師は特に必要と認める場合を除き、1回注射であるということを周知徹底すること、昨年度以上にワクチンの効率的な活用を徹底すること等の対策を実施することにより、その1つ前のシーズン、2016/17シーズンと同等程度の接種者数を確保できると見込まれたところでございます。
6ページ目の下、12番目のスライドです。2017/18シーズン向けの安定供給対策といたしましては今申し上げましたものも含め、12番目に記載したようなものを実施したところです。また次、7ページ目の上ですが、スライドの13番目にお示ししたように、昨年8月の研究開発及び生産・流通部会における議論等も含め、通知、事務連絡の発出や情報提供を実施してまいったところです。
その下、7ページ目のグラフですが、平成30年3月現在の最新の状況を反映したグラフとなっております。当初、平成28年度の推定使用量、2,642万本という数、1mL換算ですが、これを生産量として下回る可能性が見込まれておりましたが、最終的には2,643万本と上回ることとなりました。最終的に推定使用量は2,491万本となったところです。資料2-1に関する御説明は以上です。
○川西委員長 ありがとうございます。これが昨シーズン、株の選定について、生産量との関係等々で問題が生じて、こういう対応を取ったということになった御報告です。香港株に変更したことについて、その検証に関して、次に廣田参考人からその結果といいますか、それを御報告いただくことになろうかと思います。その説明を廣田参考人から、よろしくお願いしたいと思います。
○廣田参考人 この研究デザインですが、前向き介入研究、単一施設、無作為化しております。使用ワクチンはA/埼玉株の単価ワクチンとA/香港株の単価ワクチンです。両ワクチンとも阪大微生物病研究会にて製造していただいています。抗体価測定は、ワクチン株の埼玉株・香港株及び流行株に対する中和抗体を測定しております。
20歳以上の男女100人を、埼玉株ワクチン接種群と香港株ワクチン接種群に50人ずつ無作為割り付けして、ワクチンを接種してペア血清を取っております。選択基準は本臨床研究参加について文書により同意した者、20歳以上の男女、2017/18シーズン用季節性ワクチンを接種していない者、研究ワクチン接種後から抗体価測定用採血時まで、2017/18シーズン用季節性ワクチンの接種を予定していない者です。除外基準は通常のインフルエンザワクチン接種の適用判断に基づいております。
情報収集ですが、ベースライン調査としては、自記式調査票で基礎疾患や接種歴等を尋ねています。また、副反応調査も自記式質問票で接種後1週間まで尋ねております。抗体価測定ですが、ワクチン株の埼玉株・香港株及び流行株に対する中和抗体を大阪健康安全基盤研究所のグループによって測定していただいております。
まずベースライン特性ですが、埼玉株ワクチン群と香港株ワクチン群で男女比は各々1:1、年齢を10歳階級別に見ますと分布は大体一緒です。接種前抗体価ですが、香港株と埼玉株と2017/18シーズンの大阪での分離株について、抗体レベルごとに分布を比較しますと、大体等しい。
ここで重要なところですが、香港株に対しては既に60%から80%が40倍以上の抗体を持っているわけです。埼玉株については30%から40%が接種前に既に40倍以上の抗体を持っている。一方、流行野性株については80%が10倍未満という状況でした。
同じくベースライン特性ですが、ワクチン接種歴を過去3シーズンで比べますと、埼玉株ワクチン接種群、香港株ワクチン接種群ともに「あり」が15%から20%ぐらいです。インフルエンザの罹患割合も過去3シーズンを調べますと、この両群とも10%から15%ぐらいです。分布は同様でした。
副反応ですが48時間以内の全身反応と局所反応を調べております。発熱、倦怠感、頭痛、下痢といった全身性の反応は大体5%以下、局所反応である発赤、腫脹、硬結、疼痛、掻痒感、熱感が大体15%以下で、この両群で差はございません。48時間以降、1週間以内でも、ほんの僅かながら、この反応を呈した人がいますが、これも両群間で差はございません。
中和抗体価ですが、ここに示していますのは幾何平均抗体価、接種前がS0、接種後がS1、それから平均上昇倍数、S1/S0です。抗体応答割合、これは4倍以上上昇した人の割合です。抗体保有割合は接種後40倍以上を獲得した人の割合です。この1:40というのは任意に設定しています。
まず、香港株に対する中和抗体ですが、香港株ワクチン接種群と埼玉株ワクチン接種群で、接種後の幾何平均抗体価が546と260、平均上昇倍数は5.5倍と4.5倍です。抗体応答割合は50%と40%、抗体保有割合は96%と92%です。また、埼玉株に対する中和抗体ですが、香港株ワクチン接種群と埼玉株ワクチン接種群で、接種後の幾何平均抗体価が116と61、平均上昇倍数は5.3倍と4.2倍、抗体応答割合は50%と46%、抗体保有割合は86%と68%です。このように香港株ワクチン接種群では、香港株に対しては当然のことながら、埼玉株に対しても、埼玉株ワクチン接種群に匹敵するぐらいの良好な免疫原性を示しております。
それから、このA/大阪/188/2017、大阪で分離された流行野性株に対する中和抗体です。香港株ワクチン接種群と埼玉株ワクチン接種群で、接種後の幾何平均抗体価が17と9、平均上昇倍数が2.7倍と1.3倍、抗体応答割合が32%と4%です。抗体保有割合1:20以上では36%と10%、1:40以上では28%と6%です。香港株ワクチン接種群では埼玉株ワクチン接種群を上回る流行株に対する抗体応答を認めております。
結論と考察ですが、無作為割り付けの結果、香港株ワクチン接種群と埼玉株ワクチン接種群の比較性は良好であった。両ワクチン間で接種後副反応の発現頻度に差を認めなかった。香港株ワクチンは、ホモである香港株に対してのみならず、ヘテロである埼玉株に対しても良好な免疫原性を示した。香港株ワクチンは流行野性株であるA/大阪/188/2017に対し、埼玉株ワクチンより良好な免疫原性を示した。
考察ですが、流行予測株とワクチン株との抗原性の合致度は、必ずしもワクチン有効性と相関する指標ではない。一般薬剤と同様に、ワクチンの有効性や安全性は、ヒトデータに基づいて判断しなければならない。こういう結果を得ました。以上です。
○川西委員長 ただいまの廣田先生の御報告は、昨年度、生産量を考えて香港株に変更したということがあって、実際に検証してみても特段に香港株のほうが効きが悪いということはなかったと、むしろ良かったという結果が得られたということかと思います。質問等は最後にまとめてさせていただきます。
続きまして、事務局から、次の資料2-3「季節性インフルエンザワクチン製造株決定の流れ」についての説明をお願いします。
○事務局 資料2-3を御覧ください。先ほど、2017/18シーズンのインフルエンザワクチンに関する経緯について、概要等を説明させていただきました。最終的に供給量が、前年度の推定使用量を上回っていたといっても、時点あるいは地域によっては、かなり需給が近接し、社会的な関心事項となったものと理解しております。こういった経験を踏まえて、この小委員会の設置も含め、株選定のプロセスの見直しや製造量の予測精度の向上など、総合的な対策を実施することといたしました。このうち、株選定プロセスの見直しに関してお示しした資料が資料2-3です。
上のほうを見ていただきますと、先ほど資料2-1でも御説明したところですが、これまでの流れは、健康局長からの依頼に基づき、国立感染症研究所が製造株を選定し、その選定結果を踏まえて健康局長が通知を発出するという流れでした。
その下の新しいスキームですが、2018/19シーズン向けからは、その流れを改めて、感染研において次のシーズン向けのワクチン製造候補株の特性について、御検討を頂き、場合によっては複数の推奨する株を本小委員会に提案いただきます。そして、感染研の提案を基に、各候補株について、有効性及び生産可能性の観点から小委員会において議論をし、小委員会として「次シーズンインフルエンザワクチン製造株として選定することが適当と考える株」について、意見集約を行っていただきます。そして、健康局長は小委員会の意見を踏まえ、ワクチン製造株を決定する旨の健康局長通知を発出する。このような流れに、プロセスの見直しを図ることとしたところです。資料2-3に関する御説明は以上です。
○川西委員長 昨年の経験を踏まえて、この小委員会を作ったということの御説明だったと思います。続いて、参考人の日本ワクチン産業協会から、株検討時に提示可能な製造効率データに関する技術的な検討事項について、資料2-4による説明をお願いいたします。よろしくお願いします。
○保澤参考人 日本ワクチン産業協会インフルエンザ専門委員を代表し、保澤から、昨年度のインフルエンザワクチン製造で起きた事例を踏まえて、今後のインフルエンザワクチンの製造候補株の評価方法改善に向けた取組について報告いたします。スライドの下のページを御確認ください。ワクチンメーカーでは感染研から配布される製造候補株の増殖性を評価し、インフルエンザワクチン株検討会議で報告しております。スライドの左側には、インフルエンザHAワクチンの製造方法の概要を示しております。右側は、製造候補株の増殖性評価方法である、しょ糖クッション法の概要を示しております。この方法は製造候補株を数十個の発育鶏卵に接種し、培養し、感染尿膜腔液を得て、しょ糖クッション遠心によりウイルスを簡易精製し、たん白質濃度を測定します。製造候補株と昨年度の製造株のたん白収量を比較することで、製造候補株のウイルス増殖性を評価します。ワクチンメーカーでは、しょ糖クッション法は、実製造の精製ウイルス液の出来高と、ある程度の相関が得られる方法として、これまでこの方法で製造候補株の増殖性を評価してきました。
次のスライドをご確認ください。このスライドは、過去製造株のしょ糖クッション法の増殖性評価と、実製造での精製ウイルス液のたん白質収量を示したものです。平成28/29年度のH3N2の製造株である香港株の、しょ糖クッション法及び実製造での精製ウイルス液の出来高をそれぞれ100%とした場合の、過去の製造株のウイルス収量を表しております。青色がしょ糖クッション法での結果、赤色が実製造での精製ウイルス液の出来高を示しております。平成24年度から平成27年度の製造株では、しょ糖クッション法と実製造での出来高にある程度相関性がある結果になっております。一方、赤線で囲んだ平成17年度のニューヨーク株と平成29年度の埼玉株では、しょ糖クッション法と実製造スケールでの出来高に大きな乖離が生じました。この原因の1つとして、これらの株ではしょ糖クョッション法で評価できない野性株特有のウイルス形状による影響を受け、実製造でウイルス収量が低下したと考えております。
次のスライドを御覧ください。このスライドは、過去製造株の実製造におけるスプリット化工程での収率を示したものになります。平成28/29年度製造株、香港でのスプリット化工程でのたん白質収率を100%とした場合の過去製造株の収率を比較したものです。これまでの製造株では、スプリット化工程での収率は安定しておりましたが、平成29年度埼玉株で想定外の著しい低下が生じておりました。
次のスライドを御覧ください。そこで、実製造では、A型の野性株特有のウイルス形状や埼玉株のように、スプリット化工程で収率の低下が起きる可能性があることから、製造候補株の評価方法を改善すべく、従前の増殖性評価であるしょ糖クッション法にろ過やスプリット化工程の操作を加えて、より実製造を反映した形で評価できるように検討してきました。スライドの右側で示したように、この方法を生産性評価法と呼んでいますが、しょ糖クッション法で評価したウイルス増殖性に加えて、エーテルによるスプリット化工程やろ過工程を小スケールで確認し、候補株の生産性を昨年度製造株と比較します。
次のスライドを御覧ください。昨年度、製造候補株の埼玉株について、生産性評価法での検討を行いました。香港株と比較した結果、生産性評価法では34%、実生産スケールでのたん白収量は33%となり、実生産スケールでの生産性を再現することができました。今後、生産本数の顕著な減少が見込まれるA型の野性株又は低増殖の製造候補株は、事前に生産性評価法で検討することで、より正確な生産性を評価できるものと考えております。以上が、インフルエンザワクチンの製造候補株の評価法改善に向けた取組についての報告になります。
○川西委員長 ありがとうございます。昨年度、当初の候補株としての埼玉株について、実生産をしようとしたら製造がそこまでいかない、効率が悪かったということについて、その評価法というのを見直して、より実製造に近い形の評価法を考えたということだったと思います。
では続いて、今シーズンはどうするかということに入っていきたいと思います。まず、国立感染症研究所から、今度のシーズンはどういうことを考えているかということで御意見を伺います。小田切参考人から説明をお願いいたします。
○小田切参考人 感染研の小田切です。先ほど、事務局から説明があったように、今年度からのワクチンの選定はメカニズムが少し変わり、感染研としては専門家集団としての検討を行い、その意見をこの小委員会に上げて、そこで議論をして、最終の決定のほうにいっていただくというシステムになりましたので、感染研では平成30年度用のワクチン製造株の推奨のために3回の会議を行いました。
その会議で科学的な根拠となる資料に基づいて議論したわけですが、WHOで2月に北半球用の推奨株のワクチン選定会議が行われて、これは全世界から流行しているウイルスの性状の解析データが全て集まります。そこには日本の成績として、感染研の成績も入っているので、全世界を網羅したデータが議論され、そこでWHOの推奨株が選定されます。国内のワクチン株の検討にあたってはWHOの推奨株を参考にしました。さらに、国内の流行株の解析状況の成績を参考にいたしました。
それから、昨年度に用いたワクチン接種後の人の血清抗体と、今シーズンの流行株との反応性について評価しました。また、ワクチン株を選定するに当たって、世界インフルエンザワクチン有効性評価ネットワーク(Global Influenza Vaccine Effectiveness)から供与されたワクチンの有効性データを参考にしてワクチン株の選定の議論を行いました。
資料3-1に、それぞれの亜型の製造用推奨株の結論をまとめています。その結論に至った根拠として、別添の資料を御覧ください。ここからはこの別添の資料に従って、この結論に至った根拠を説明いたします。
まず、別添資料の1ページの下のパネルを御覧ください。この一番上のカラムが、昨シーズンに我が国で使ったワクチンの製造株です。真ん中のカラムが、WHOが南半球用として推奨した株です。どこが変わったかと言うと、香港型H3N2のワクチンが、シンガポールというのに1つ変わったことです。それから、来シーズンの北半球向けのWHOのワクチン推奨株が一番下のカラムにありますが、H3N2のワクチン株、それからB型のビクトリア系統のワクチン株、この2つが変更になっています。
次のページを御覧ください。それでは、世界と日本の流行状況はどうだったかということです。下のパネルを御覧ください。今シーズンは世界的にも流行の規模が非常に大きくて、グラフに赤の実線で示したように、過去10年では一番大きな流行の規模であったということで、日本もそういう状況でした。
次のページの上のパネルを御覧ください。これはWHOが北半球と南半球での流行の状況をまとめたものです。上のカラムですが、北半球での特徴というのは、今シーズンはB型の流行が比較的早い時期から始まって、しかもB型の流行の規模が大きかったということで、これが例年とは違う流行のパターンです。下の円グラフは、グローバルな視点で見た、それぞれの亜型ウイルスの分離された比率を表しています。H3、B型、H1というのをそれぞれパーセンテージで示していますが、今言いましたように、今シーズンの特徴はB型の流行が大きかった、これが世界に共通したパターンです。
4ページは日本の流行の状況です。上の棒グラフは時系列で、週ごとのパターンです。下の円グラフのパターンは、比較的直近の最終的なまとめになります。日本でも、青で示した部分が53%となっていますが、これはB/山形系統です。これが流行の主流を占めたということで、そういう意味で日本も海外と同じように、B型山形系統が流行の主流であったということが特徴です。
5ページを御覧ください。ここから、各亜型ごとに流行株とワクチン株の抗原性の一致度についてのデータが出てきます。その前に円グラフの見方を簡単に御説明させていただきます。上の円グラフで、矢印でクルッと丸を描いた成績なのですが、これは基本的にはワクチン株と流行しているウイルスの抗原性がどれぐらいマッチしているかをパーセンテージで表したものです。ブルー系統が似ている、オレンジ・赤系統はワクチン株と流行株との抗原性はマッチしていないということで、眺めていただければと思います。
まず、H1N1pdmウイルスについてです。6ページの上のパネルを御覧ください。H1pdmウイルスの流行株は、遺伝子グループの6B.1に入る、国内も海外もこのグループに入るウイルスが流行していまして、その中に代表株として、ミシガン/45、これはWHOが推奨したワクチン株です。同じくそのグループに入る、シンガポール/GP1908/2015、これが日本で採用したワクチン株です。下のパネルに円グラフがあります。上の2つの円グラフのミシガン/45はWHOの推奨株ですが、流行株との抗原性の一致度は99%、ワクチンに使われる卵分離株が97%ということで、非常に流行株とワクチンのマッチングは高いです。それから、実際に日本でワクチンの製造に使われたのは、下の円グラフのシンガポール/GP1908(IVR-180)ですが、これもやはり流行株と99%、抗原性がマッチしていたということです。
ここで大事なのは、H1N1pdmのワクチンというのは、卵で増やしても抗原性が流行株とマッチしているということです。後で述べますが、H3N2で卵馴化による抗原変異というのが問題になりますが、H1N1ワクチンの場合は、卵馴化しても抗原変異は起こっていないということが、これで分かると思います。
7ページを御覧ください。それぞれの流行株とのマッチングです。下の表を御覧ください。実際、各WHO協力センターで、それぞれの担当している地域での流行株とのマッチングの状況を調べたものです。大体、どのセンターも共通して、ワクチンに用いられたミシガン/45類似株は、ほぼ流行株と98%抗原性が一致していたという成績です。
8ページを御覧ください。それを二次元で視覚的にグラフに表した、これをCartographyと言いますが、赤いドットがミシガン/45です。小さいドットが実際の流行株で、このワクチン株と小さなドットの距離が離れれば離れるほど、抗原変異しているという意味です。これは、どちらの方向に離れても構いません。これで見ると、ゴールドのポッチが今シーズンの流行株ですが、ほとんどミシガン/45周辺に配置されるということは、抗原性が類似しているということを意味しています。それをまとめたのが、下の文章ですが、割愛させていただきます。
少し飛びまして、24ページを御覧ください。これはワクチンの有効性を示したVaccine Effectivenessの成績です。これは、インターナショナルに大体共通したmethodでワクチンの有効性を評価しています。そこに図で表したように、Test-Negative Design法を用いてワクチンの有効性を評価していますが、簡単に御説明いたします。
インフルエンザ様疾患で、登録している病院を訪れた患者をランダムに、例えば1,000とか2,000人を選んで、その患者から臨床検体を取ります。それをPCRでインフルエンザが陽性なのか陰性なのかグループに分けます。それぞれに分けたグループの中で、インフルエンザワクチンをした人、していない人に更に分けます。それぞれのオッズ比を取りまして、最終的にVaccine Effectvenessのパーセンテージを下の式で求めます。
右にいくと、今年使ったH1N1pdmワクチン、これは先ほど言ったミシガン類似株ですが、これの有効性をパーセンテージで示しています。上が北半球機関から提供されたものですが、「All patients」は全年齢層という意味です。これを見ると、H1N1ワクチンは、69~72%の有効性があると。18~64歳で見ると、54~63%です。子供の年齢層になると83%となっていす。下のパネルは南半球機関が評価した成績ですが、All patientsでは50%、Adult Ageでは43%の有効性が示されています。比較的高い有効性が示されており、卵馴化による抗原変異が起こっていないワクチンは、これぐらいの有効性が得られるという評価です。
次に、H3N2です。これは9ページを御覧ください。今シーズンにH3N2の流行したウイルスの遺伝グループを系統樹で下のパネルに表していますが、全て世界で流行しているのは3C.2aに入って、その中で3C.2a1と3C.2a2に大別されます。日本を含むアジア地区で流行しているのは3C.2a1に入ります。それから、アメリカ、中央アメリカ、南アメリカ、ヨーロッパは3C.2a2に入ります。そのような傾向があります。そこに赤の矢印で示していますが、今年日本で使った香港/4801ワクチンは、その下のほうにグルーピングされるし、WHOが推奨したシンガポールワクチン株は3C.2a1に入る代表株です。
10ページにいきます。今シーズン流行したH3N2の抗原性と、それぞれ香港/4801ワクチン、シンガポールワクチンとの抗原性を調べたものです。比較的よく似ています。11ページの上のパネルが非常に大事な情報なのですが、実際にワクチンは卵で製造しますので、卵馴化という抗原変異を起こすのがH3N2の特徴で、これがワクチンにとっては致命的な欠点にもなっています。その2つの円グラフを御覧いただきますと、今年採用した香港/4801/2014ワクチンでは、流行株と94%抗原性がマッチしていません。一方、WHOが推奨したシンガポール/NFIMH-16-0019/2016ワクチン株ですと、マッチしていない比率が大体55%になり、香港/4801ワクチンに比べると比較的、卵馴化による抗原変異は軽微であることが分かります。
下の表が、各WHO協力センターで、香港株とシンガポールワクチン株で、それぞれ流行株とどれぐらい似ているか似ていないかを評価したものです。まず、HI試験で調べたのがこの表ですが、香港/4801の場合は、余り似ていないが56%です。シンガポール/16-0019は、余り似ていないが21%で、卵馴化の変異の程度が少ないこともありまして、シンガポールが流行株にはより近いこと。12ページの上の表は、中和法で同じく調べたものです。HI法と中和法でどこが違うかと言うと、中和法のほうがstrictに違いを評価できますので、これでも並行して実施しています。そうしてみると、香港/4801は余り似ていないが73%です。シンガポールワクチンは32%ということで、中和法ではより大きな違いが出ています。
13ページの下の円グラフを御覧ください。先ほど日本ワクチン産業協会からも御説明がありましたが、ワクチンの製造に野性株はあまり使うことがなくて、製造効率を上げるために高増殖株というものを野性株から作ります。実際に製造に使うのは、香港/4801の場合はX263というウイルスです。シンガポールの場合はIVR-186若しくはNIB-104というウイルスで、これを製造に使います。そうすると、香港/4801のX263の抗原性は流行株の90%とは違っているということが分かります。一方シンガポールの場合は、複数のフェレットの血清を作って調べましたが、IVR-186は、似ていないというパーセンテージは60~70%ぐらいとなります。NIB-104の場合は、似ていないが70%ぐらいという成績です。そういうことで、卵馴化の軽微なシンガポールのほうは、高増殖株にしても、香港株よりはかなりいいという状況になるということです。14ページに、要約をまとめましたが、説明は割愛します。
またページを飛んでいただきまして、ワクチンの有効性の所です。別添資料の25ページ目に飛んでいただきたいと思います。今回用いたH3N2ワクチンの有効性の評価をそこにまとめています。使ったワクチンは、日本でも今シーズンに採用した香港/4801です。北半球機関での成績が左側のパネルです。南半球機関での成績が右側です。まず、左側を見ていただきますと、この香港ワクチンの有効性はAll patientsでみると、それぞれの機関によって、少しずつ有効性のパーセンテージは違いますが、7%から52%という範囲です。それから、Adult Ageグループでは、4%から30%です。小児の年齢層になると、23%から62%です。南半球機関での成績は、All patientsは、有効性が9%、Adultsが19%、Elderlyではマイナス15%ということで、有効性が得られなかったという成績です。これがH3N2ワクチンの有効性です。
15ページに戻っていただいて、次はB型になります。下のグラフですが、冒頭にもお話をしましたように、今シーズンは世界的にB型の流行の規模が大きいということで、赤の実線で示しているように、検体数もかなり多いというのが特徴です。次のページにいきます。B型というのは2つの系統がありまして、山形系統とビクトリア系統がありますので、まず山形系統から御説明いたします。山形系統の流行株は、遺伝子系統のグループ3に、国内外とも全て入ります。その中には、ワクチンに採用しているプーケット/3073株もあり、矢印で示した位置になります。
17ページです。これが抗原性解析です。ワクチン株としては、プーケット/3073というのを使っていますが、卵の製造株にしても99%、水色が1%で、ほぼ100%の流行株と抗原性がマッチしています。下の表にもあるように、これは各WHO協力センターで得られた成績でも、ほぼ同様の成績が得られています。すなわち、山形系統のワクチン株は卵馴化していないことが、これではっきり分かります。ページをめくっていただきまして、Cartographyで二次元的に見ても、ワクチン株と流行株はほぼ抗原性がマッチしています。
また、ページを少し飛んでいただいて、ワクチンの有効性について御覧ください。26ページと27ページを御覧ください。26ページの右側のパネルが、山形系統のワクチンの有効性を示しています。All patientsでは30~70%、Adult Ageグループでは41~50%、小児では9%となっています。27ページは南半球機関での評価成績です。下のパネルが山形系統のワクチンの評価ですが、All patientsで47%、Adult Ageグループでは52%の有効性です。これが山形系統の流行状況と、今シーズンのワクチンの有効性の評価ということになります。
また戻っていただいて、19ページ目を御覧ください。最後はB型ビクトリア系統です。19ページの下のパネルが、実際に流行しているビクトリア系統のウイルスですが、今シーズンの特徴は、流行株の中に2アミノ酸欠損変異株、若しくは3アミノ酸欠損変異株というのが出現したということです。上のグループが、2アミノ酸欠損グループで、代表選手としてはコロラド/06/2017というのがあります。それから、その下にメリーランド/15もあります。3アミノ酸欠損は真ん中辺にグルーピングされます。下のグループは、今まで流行っていたビクトリア系統の流行株です。
20ページ、上に世界地図が載ったものを御覧ください。このビクトリア系統でアミノ酸の欠損したウイルスが出てきたのは、実は2016年の後半からで、アメリカ合衆国を中心に出現しまして、このレポーティング・ピリオドの2016年8月-2017年8月に近辺の国に少しずつ広がっているのが分かります。それ以降、2017年9月から今年の1月までになると、2アミノ酸欠損変異株が世界的に広がってきて、今ヨーロッパとアメリカでは、Bビクトリア系統の流行株としては、2アミノ酸欠損変異株が逆転するくらいの勢いで広がっています。
21ページの下のパネルの表を御覧ください。なぜこの2アミノ酸欠損変異株に注目するかと言うと、今まで流行していたビクトリア系統の流行株とは抗原性が全く違うウイルスだからです。したがって、今年度採用したワクチンは、もはやこの2アミノ酸欠損の流行株には全く効かないこと、そういう変異株が広がっており、日本でも2月以降に数株検出されています。
この表の下の部分の「卵分離株」とある所を御覧ください。このブリスベン/60というのは今シーズン採用したワクチンなのですが、2アミノ酸欠損株との反応性を見ると、94%似ていないということになります。そういう意味で欠損変異株は、これまでの流行株とは違うウイルスであることが分かります。真ん中のメリーランド/15が、2アミノ酸欠損の代表株であって、欠損変異株間では65%が抗原的に似ている、似ていないは35%で、メリーランド/15株は2アミノ酸欠損の代表選手であるということが分かります。同じく、コロラド/06/2017も、似ているは97%なので、これも2アミノ酸欠損の代表選手です。
22ページの上に円グラフが6つありますが、今まで使っていたブリスベン/60ワクチン株は、94%の2アミノ酸欠損と抗原性が違っているので、先ほど言ったことが推測されます。それに対して、2アミノ酸欠損の代表選手であるメリーランド若しくはコロラドは、2アミノ酸欠損の流行株との反応性を見ると、メリーランドが65%似ていると、コロラドは97%似ているということなので、よりコロラド/06/2017が2アミノ酸欠損の流行株の代表選手ということになると思います。以上の結果をそこにまとめています。
ということで、別添資料に示した分析結果に基づいて資料3-1に感染研の専門委員会の推奨理由をまとめました。H1N1pdmは、昨シーズンと同様のウイルスであるシンガポール/GP1908/2015(IVR-180)を推奨するという結論に達しました。3ページ目、H3N2ワクチンとしては、A/シンガポール/INFIMH-16-0019/2016(IVR-186)を推奨するという結論に達しました。5ページ、B型の山形系統のワクチンとしては、B/プーケット/3073/2013、これは野性株ですが、昨シーズンと同様のワクチン株で、変更なしという推奨です。その下にあるBビクトリア系統としては、2つの株を委員会としては推奨することになりました。1つは、コロラド/06/2017で、これは推奨順位の1位です。もう1つは、メリーランドから作成した高増殖株のNYMCBX-69Aで、これを推奨順位の2番目として推奨するという結論に達しました。
この推奨順位を1番と2番とした理由ですが、コロラド/06/2017のほうがより抗原性は流行株にマッチしています。それに対して、高増殖株のBX-69Aは、抗原性が少しずれてはいますが、製造効率が良好ということです。感染研としては、抗原性がより流行株にマッチしているコロラド/06を1番として推奨するという結論に達したわけです。以上です。
○川西委員長 ありがとうございます。最後のB型のビクトリア系統が2つ、第1、第2ということで推奨、それ以外は1つに絞れているという、そういうことだったかと思います。では続いて、生産性、増殖性、そういう視点からの検討として、参考人の日本ワクチン産業協会から、2018/19年シーズン向けインフルエンザワクチン製造候補株の増殖性・製造効率に関する製造販売業者からの補足ということで、御説明をお願いします。
○保澤参考人 それでは、日本ワクチン産業協会インフルエンザ専門委員を代表して保澤から、感染研から配布されています、H3N2とB型ビクトリア系統の製造候補株に関する検討成績について、御報告させていただきます。
資料3-2の下になりますが、H3N2の製造候補株は、シンガポール株のリアソータント株であるNIB-104とIVR-186の2株になります。上の表は、これらのリアソータント株が昨年度製造株の香港に対してどの程度のウイルス増殖性であるかを、しょ糖クッション法により評価した結果になります。NIB-104は、香港株に対して53%、IVR-186は、76%の増殖性でした。この結果から、NIB-104は非常に低増殖であるため、製造への適用は困難であると考えております。また、IVR-186についても、香港株に対して低増殖性を示していますので、先ほど説明しました生産性評価法でも評価を行いました。その結果、エーテルによるスプリット化工程等での大幅な収量低下は確認されず、昨年度製造株に対して68%の生産性であることが確認されました。これらの結果から、IVR-186が感染研から奨励されております。
なお、下の表は、今後、製造候補株の増殖性を客観的に評価できるように、全ワクチンメーカーが共通の株を使用して評価したものです。基準株として昨年度製造株の香港株を採用しておりますので、今年度は、上の表で示した増殖性の結果と同様の結果になっております。
次のページになります。次に、B型ビクトリア系統の製造候補株の検討結果を報告いたします。製造候補株は、コロラド野性株とメリーランド野性株、そのリアソータント株であるBX-69とBX-69Aが配布されております。これらの株の増殖性を昨年度製造株のテキサス株と比較した結果、コロラド株で76%、メリーランド株で64%、そのリアソータントBX-69で92%、BX-69Aで96%という結果が得られました。これらの結果と流行状況等を考慮して、コロラド株とメリーランドBX-69Aが感染研の推奨株に挙がっております。これらの2つの株を比較すると、コロラド株は昨年度製造株よりも増殖性が低く、メリーランドBX-69Aは昨年度製造株と同等であると予想しております。
なお、下の表は、基準株である香港株に対する増殖性を示しております。コロラド株とメリーランドBX-69Aは基準株に対して一定の増殖性を示し、低増殖性の製造株に当たらないと考えておりますが、念のため、一部のメーカーでコロラド株とメリーランドBX-69Aのスプリット化工程を小スケールで評価しました。その結果、問題となるような収量低下は確認されず、実生産においても、スプリット化工程での大幅な収率低下は生じないと予想しております。
次のスライドにいきます。感染研からのワクチン製造用推奨株について、以下の組合せで生産期間を最大限延長した場合の供給予想本数を試算しました。上の表ですが、H3N2がIVR-186に選定され、B型ビクトリア系統がコロラド株に選定された場合、供給予想本数は、2,602万本になる見込みです。また下の表ですが、B型ビクトリア系統がメリーランドBX-69Aに選定された場合、供給予想本数は、2,779万本になる見込みです。
なお、コロラド株が選定された場合は、近年でのワクチン最大使用本数である平成26年度の使用実績の2,649万本を下回る見込みです。一方、メリーランドBX-69Aが選定された場合は、この最大使用本数を上回る見込みです。メリーランドBX-69Aのほうが需要に応えることが可能と考えております。以上が平成30年度インフルエンザHAワクチン製造候補株の検討成績に関する報告になります。
○川西委員長 どうもありがとうございます。続きまして、今の感染研からの御報告、ワクチン産業協会からの補足も兼ね合わせて、事務局から、資料3-3「2018/19シーズン向けインフルエンザの製造候補株について」御説明をお願いします。
○事務局 それでは、資料3-3につきまして事務局より御説明させていただきます。2018/19シーズン向けのインフルエンザワクチン製造株に関する情報につきまして、感染研及び製造販売業者の皆様より具体的な御説明を頂いたところですが、詳細な議論に入る前に、ここで製造候補株の選定に際しての基本的な考え方につきまして改めて確認をしたいと思います。資料3-3の1ページ目の下を御覧いただければと思います。
昨年8月の研究開発及び生産・流通部会における香港株又は埼玉株の選択に関する議論においても、共通する考え方であったものではございますが、改めて申し上げますと、製造株の選定に当たっては、原則として世界保健機関(WHO)が推奨する株の中から、期待される有効性及びワクチンの供給可能量を踏まえた上で、双方を考慮した有益性、この有益性は4種類の製造株に係る有益性の総和ですが、これが最大となるよう検討を行うということではないかと考えます。
次のページに行っていただきまして、その考え方を念頭に、2018/19シーズン向けの製造候補株につきまして改めて状況を御説明したいと思います。2ページ目の上のスライド3番目では、今回、検討対象となった製造候補株を列挙してございますが、このうち、感染研が推奨した株を黒字で示しておりまして、その推奨順位も付してございます。A型H1N1pdm09亜型株及びB型山形系統株につきましては、WHO推奨株も昨シーズンと同じでして、国内向けとしても、昨シーズン、2017/18シーズンと同じ製造株で差し支えないと考えられております。A型H3N2亜型株につきましては、2つ候補株があったうち、生産可能性の観点から、A/シンガポール/INFIMH-16-0019/2016(IVR-186)株が推奨されたところです。一方、B型ビクトリア系統株につきましては、感染研から2つの推奨株が提示されました。2018/19シーズン向けには、この2株のどちらを選択すべきかが基本的な論点になると考えられます。
その下のスライドですが、B型ビクトリアの2株、それぞれについて、その特性を表にまとめました。コロラド株は、動物試験による抗原相同性が米国のデータとして97%である一方、現時点における推定最大生産量は、シーズンを通じて約2,602万本となっております。一方、メリーランドBX-69A 株につきましては、動物試験による抗原相同性が米国のデータとして65%である一方、現時点における推定の最大生産量は、シーズンを通じて約2,779万本となっております。このような特性を持つ2株につきまして、有効性の観点、すなわち動物試験、これはフェレットの感染血清を用いた抗原性解析ですが、こちらの結果と、疫学や臨床研究といったヒトにおける情報の観点、また、シーズン通算や12月中旬時点の需給状況の予測といったワクチンの供給可能量の観点、こういった観点から検討し、どちらを選択することが適当であるか議論を頂きたいと考えております。
3ページ目の上、5番目のスライドです。こちらに論点の1点目、期待される有効性に関する状況をお示ししました。左側の表は、直近の2017/18シーズンを除くここ4シーズンのワクチン株と流行割合、前シーズンの流行株に対する抗原相同性、これはフェレット感染血清を用いた動物試験の結果ですが、そして、ヒトでの有効性を1つの表にまとめたものです。この表でヒトでの有効性欄に記載した有効性は、6歳未満の小児のデータではございますが、動物試験結果である抗原相同性とヒトでの有効性には、一定の傾向は見られない状況です。また、右側の表は昨年8月の研究開発及び生産・流通部会におきまして廣田参考人が引用されていたデータですが、やはり、動物試験結果である抗原相同性とヒトでの有効性には一定の傾向がないという状況です。
今回、候補株となっております2アミノ酸欠損株ですが、全世界的に2017/18シーズンに初めて流行した株と考えられまして、これらを基に製造されたワクチンはありません。ヒトデータも存在しないというところです。また、2アミノ酸欠損株は我が国には2月以降、流入しはじめたというところでして、抗原性解析が十分に実施できていない現状があり、左の表の、今回、候補株として挙げた2株の抗原相同性は、いずれもCDCのデータとなっております。これらの状況から、Bビクトリア系統の2つの候補株につきまして、明らかに有効性が異なるというデータが存在するとは言えず、2つの候補株とも、ヒトで一定の有効性が期待できると考えられるものと整理してございます。本日の廣田参考人からの御発表にもございましたが、動物試験結果である抗原相同性とヒトでの有効性は必ずしも相関するものではなく、2017/18シーズンの状況を踏まえると、抗原相同性だけをもって判断するのではなくて、供給可能量も考慮して総合的に判断する必要性があるのではないかと考えております。
最後に、3ページ目の下のスライド6番目です。論点の2点目、ワクチンの供給可能量に関する状況等をお示しいたしました。現時点における粗々の生産量等の推定値でして、今後、変動があり得る数値であるということを考慮する必要がございますが、メーカーとして最大限生産した場合の見込みの数字といたしまして、通常の接種時期を考慮した12月中旬時点という左側の所では、コロラド株は約2,497万本、メリーランドBX-69A 株は約2,659万本となっております。シーズン通算で見ますと、表の右側ですが、コロラド株で約2,602万本、メリーランドBX-69A 株で約2,779万本となってございます。これを過去4シーズン分の値と照らし合わせたものがその下に載っている○と×の表ですが、12月中旬時点における過去4シーズンの同時期の医療機関納入量、これが需要量に相当しますが、この医療機関納入量との比較では、メリーランドBX-69A 株では全て上回る予測である一方、コロラド株では直近の2017/18シーズンを除く3シーズンで、いずれも下回る予想となっております。また、シーズン通算の推定使用量との比較では、メリーランドBX-69A 株では、平成8年度以降、最大の実績値であった2014/15シーズンも含めて、推定使用量の実績値のいずれも上回っております一方、コロラド株では、2016/17あるいは2014/15シーズンの実績値を下回っているという状況です。
なお、先ほどメーカーとして最大限生産した場合の見込みの数字ということで御説明したかと思いますが、昨年度シーズンを目安に、メーカーやあるいは関係者の皆様が最大限努力した場合の生産量の見込みとしての数字です。例えば更なる増産の依頼等を行った場合であっても、推定に基づくので誤差の範囲というのはもちろんあるわけですが、その範囲を超えた大幅な生産量の増加は見込めない状況となっております。
以上、2018/19シーズン向けのワクチン製造株に関する情報につきまして、論点を含め、御説明させていただきました。基本的な考え方に照らしまして、どの株を選定することが適切か、御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。
○川西委員長 ありがとうございます。では、2018/19シーズンのインフルエンザワクチンについて、これから委員の皆様方から御意見、コメント等を頂きたいと思いますが、今回は参考人もいらっしゃるということで、まずは参考人への質疑応答を行って、その後、委員のみで議論するというように2段階で議論させていただこうかなと思いますが、それでよろしいですか。ではそんな形で。委員のみで議論をする際は、参考人の皆様方には後ろの席にまたお移りいただくというようなことにしたいと考えております。では、まずは参考人に対する質疑応答に入りたいと思います。委員の皆様の御意見は後ほどお伺いしたいと思いますので、まず、質問ということで始めさせていただきます。どなたか、今の参考人の御説明に対して質問等はございますでしょうか。
○山口委員 廣田先生にちょっとお伺いしたいのですが。割と慎重な考察をしていただいているような気がするのですが、抗原性の合致度というのは、必ずしもその有効性と相関するわけではないけれども、今回、多分、本来、埼玉株を選択するはずだったのだけれども、香港株になってしまった。けれども、抗原性の一致度という感じ、臨床試験に相当するものでは、むしろ香港株のほうがいい成績の可能性はあったろう、ただ、それをもって有効性を評価するまでにはまだいけないという、そういう理解でよろしいでしょうか。
○廣田参考人 結構でございます。
○川西委員長 ほかに質問。
○山口委員 今、もう1つ、ついでにというか、小田切先生にもその点を。昔、タシロ先生などと話したときは、我々はフェレットのチャレンジテストがゴールデンスタンダードだと思っていたのですが、その点については、今、どのように考えたほうがよろしいのでしょうか、要するに有効性との関係を。今、事務局がまとめた中では有効性との関係は必ずしも明確でないというようなことになっていたかと思うのですけれども。
○小田切参考人 フェレットのチャレンジ実験は、こういう季節性ではやらなくて。先ほど事務局のほうで「動物試験」と言いましたが、これはあくまでも、流行株とワクチン株との間の抗原性を調べるために、フェレットにワクチン株を感染して作った抗体を使って、その抗体が流行株にどれぐらい反応するかというのを調べたものです。これを事務局が「動物試験」と言ったわけなのですが、チャレンジ実験はやっていません。
○山口委員 ありがとうございました。
○川西委員長 ほかに。
○脇田委員 廣田先生にお伺いしたいのですが。今回、香港株と埼玉株でこのような結果が出たわけですが、これまでに類似した、このようなスタディ、ほかの株を使ってその動物実験の抗原性とヒトでの流行性の相関といいますか、相違といいますか、それを見たような臨床実験というのはこれまでにもあるのでしょうか。
○廣田参考人 私が知る限り、ございません。
○脇田委員 ありがとうございます。
○川西委員長 ほかにいかがでしょうか。
○中山委員 また廣田先生にお伺いしたいのですが。最後の結論はヒトのデータでないと余りはっきり言えないということなのですが、そうすると、株選定会議をして、物が出来て、市場に出る前にヒトでこういう試験をやっておかなければいけないということでしょうか。
○廣田参考人 いいえ、違います。私は、株選定では今のやり方以外に方法はなかろうと考えております。ただし、株選定というのは流行予測株とそのワクチン株の抗原性の合致度を最高に持っていこうということであって、それ以上はできない。だから、そのときに一歩踏み込んで有効性と言ってしまうから、話がややこしくなるというように私は理解しております。
○小田切参考人 参考人ですが、意見をちょっと述べさせてください。先ほど感染研の資料で示しましたが、最近、WHOのワクチン選定会議にグローバル・インフルエンザワクチン有効性評価ネットワークからVaccine Effectivenessを評価したデータが、タイムリーに提供されます。このEffectiveness Studyもワクチン株の選定に間に合って議論されますので、重要な情報として考慮されます。
○川西委員長 ありがとうございます。
○福島委員 今、小田切先生が触れられたGIVEのデータについてお尋ねします。実は、このGIVEコラボレーションには私も昨年から、とあるルートで御紹介いただいて、廣田班でさせていただいている6歳未満小児のワクチン有効性のデータを提供させていただいております。本日、小田切先生が提出された資料には私のデータは載っていませんが、それはなぜかといいますと、北半球での中間推定値(Interium Estimate)を1月下旬に出してくださいと言われたのですが、私どものスタディでやっているPCRの測定が間に合いませんでしたので、ここには含められていないということなのです。ですが、参加者の一員として、私もこのリポートの結果は拝見しまして、やはりH3株に対するワクチン有効率は全体的に低いなという印象は受けました。例えばオーストラリアの有効率がすごく低いとか、カナダあるいは米国での有効率も50%を切っているなどです。その1つには、卵馴化の過程による抗原変異が重要な因子として影響しているのだろうとは、私も思うのです。
一方で、米国CDCによる中間報告の詳しい結果が、MMWRにパブリッシュされているのを見ました。それを見ますと、小児は結構、有効性が高いのです。50%ぐらいあります。ところが、大人になるにつれて、だんだん有効率が低くなっていくのです。2016年に「The Lancet Infectious Diseases」にパブリッシュされました論文で、世界の50編ぐらいのTND(Test-Negative Design)研究をメタアナリシスした結果によりますと、やはりH3株に関しては小児の有効性が一番高くて、大人になるとだんだん有効性が低くなるというのが出ています。ワクチン有効性を抗原の相同性だけで論じるのであれば、どの年齢も有効性が低い、という結果が私にとってはリーズナブルなのですが、なぜ小児ではH3株に対する有効性が高いのか。この理由として、例えば年齢が高いほど基礎免疫を持っていて、そもそも非接種者でも発病率が低くなるのでワクチン有効率が検出しにくくなっているとか、そのような議論がWHOであるのかどうかということをお聞きしたいと思います。すなわち、ウイルス学的な抗原性の合致度だけで説明できない何かがあるのではないかというspeculationが、WHOでもあるのかどうかということを教えてください。
○小田切参考人 WHOの会議では、今、先生が御指摘されたように、それぞれの年齢層によって反応性が少し違うということもやはり議論になります。なので、このEffectivenessの成績は、抗原性解析に加えた1つの参考データとして議論すると、だけどそのファクターとしてはやはり年齢層ごとにも、別のファクターの見方もするという、そういう議論はしています。
○福島委員 ありがとうございます。
○廣田参考人 このEffectiveness Studyですが、そのシーズンのいわゆる流行株とワクチン株との抗原解析の結果と、このEffectiveness Studyの結果を、シーズンごとにリンクさせるというのは、まだそこまではいってないのではないかと思うのです。というのは、このEffectiveness Studyは既に10年以上、ずっと続いているわけですが、今後ももっともっと続けていく。インフルエンザワクチンのスタディというのは、全てがその時と場所と対象者に特異的な結果でしかありませんので、Effectiveness Studyの結果を参考にするのはもちろんいいのですが、それをピンポイントでシーズンごとにその抗原解析の結果と有効性の度合いをリンクさせて考えるというのは、まだそこまではできないのではないかと思います。ずっと長いシーズンを見れば、抗原解析の結果とEffectivenessの結果は関連が認められるということになるでしょうけれども、各シーズンごとにマッチさせてこれを解釈するというのは、控えたほうがいいのではないかと思います。
○山口委員 私も、今、先生に御指摘を頂いたところが非常に重要なポイントかなと思っています。今回、候補に上っているものが2種類あっても、それの抗原一致度が97と60と、その差を今、先生の説だと、この有効性のその比率に置き換えるのはまだ難しいというように私は今、理解したのですが、それでよろしいでしょうか。
○廣田参考人 はい、それで結論付けるというのは、ちょっと無理だろうと思います。
○大石参考人 感染研の大石ですが、私もちょっと意見を述べさせていただきたいと思います。
流行前にワクチンの効果を予測するといいますか、WHOが行っているのは、このフェレットにワクチン株を免疫して、その抗体で流行株との一致を見るという方法で、事前にはこれしかないのだろうと思うのですが、今回ちょっと驚いたのは、廣田先生がお示しになったH3株の香港株と埼玉株のこの予想外の結果です。これはヒトで見ることが大事だということを教えてくれた1つの事例ではあると思うのですが、これはあくまで免疫原性であって、ですよね、抗体の応答ですので、これが患者さんでどれだけ効くかというのはまた違うのですよね。ですから、そこをしっかり区別していく。フェレット血清の意味付けと患者さんでの免疫原性、場合によってはそういうスタディも必要であるということと、私はこのVaccine Effectivenessは、毎年、日本でも見る必要があると。なぜならば、今年などもそうですが、海外で流行している株は相当違うわけで、海外のデータは、そのVaccine Effectivenessは、その計算式が書かれていましたが、あれも流行株によってかなり変わってくるわけで、日本ではどうかということを、フェレット血清、そして、このVaccine Effectivenessをタイムリーに、子供も大人もやはり定期的に見ていく必要があると。そういった中で、どこまで予測ができるか今は分かりませんが、安心したデータを提供していけるということが言えるのではないかと思います。今できることはそれがベストかなと思っています。以上です。
○川西委員長 ほかに、参考人を交えたという部分でありますか。
○釜萢委員 ワクチン産業協会の方にお伺いをしたいのですが、資料2-1の2ページ、スライド番号で言うと4になりますが、平成29年度の製造株がまず決まりました。これが1月23日となっています。その後ワクチンの製造メーカーのほうでいろいろ検討されて、結局、埼玉株では増えないと、収量が得られないということになって、その検討が始まったのが5月と書いてあります。それを受けて3ページのスライド6ですが、6月12日に厚労省のほうが、株の変更を念頭に、感染研に再検討を依頼しました。今は4月ですけれども、今回は大丈夫かもしれませんし、また新たなスプリットの検討が行われるということも今日伺いましたが、このワクチンの実際の収量がどうなのかというのは大体どの時点で分かってきて、遅れる場合にはどの辺りで分かるのかなというところが、医療現場では一番知りたいところです。
今日の資料2-1の7ページのグラフを見ると、赤の折れ線グラフは幸いに比較的それほどガクンと落ちないで済んだのだけれども、8ページのグラフを見ても分かりませんが、医療現場としては11月の初めにはパタッとワクチンの供給が止まって、患者さんに対する対応で大変苦労したと。12月の末になって、ようやく供給が円滑に行われるようになったという状況でした。
ですから、どこがどのように改善され、あるいは、もし収量が足りないから、また株を変えなければいけないというような事態が仮に起こった場合には、どの時点までにどう対応すれば現場の混乱が防げるのかを是非教えていただきたい。
○川西委員長 いかがでしょうか。
○事務局 事務局のほうから少し過去の経緯を、もう1回御説明申し上げたいと思います。資料2-1で説明したかったことですが、当初、毎年このぐらいの時期に製造見込みといったことも勘案した上で、株の選定を行うということだったわけです。しかし、昨年度は事前の実精査に入る前の評価の段階で想定していた実際の製造効率と、実際の実生産に移ったときの製造効率に乖離があることが後で分かったという、非常にまれな事態でした。それを受けて今年度行っているのは、昨年度のようなことを起こさないという観点で、昨年度のようなことが起こらないことを事前に確認する最善の努力をするということで、今回、製造効率の評価方法の見直しをしていただいたということです。
実際に実製造に入っていく中で、また今回の改良した製造方法によっても、なお予見できなかった製造効率の低下というのが起こらない保証はもちろんないわけですが、少なくとも昨年度に起こったようなことについては、未然に予見できているのではないかということで、今年度に関しては、これから実生産に入っていく中で想定外の収量の減というものが発見されて、株選定をやり直すということがないことを現時点では想定しているというものです。補足があればよろしくお願いします。
○川西委員長 いかがですか。
○松浦参考人 ワクチンの収量がどのぐらいの時期に分かるかという御質問に対してですが、およそ製造に着手してから1か月ぐらいのところで、実製造のデータがそろってきますので、その時期に分かることになると思います。
それと、いつまでに決めないと去年のようなことが起こるかということですけれども、およそ4月、できれば早めにというか、この会議で決めていただけると、11月の時点で医療機関にものが届かないということは回避できるのかなと思っていますけれども、時期によって、また製造株の生産性によってワクチンのできる量が違いますので、一概にこの時期ということは言えないかと思います。
○釜萢委員 ずっと毎年作っているわけですけれども、これまでの実生産に入る時期というのは何月になるのですか。
○松浦参考人 実生産でしょうか。
○釜萢委員 いや、実生産に入って1か月たつと、収量が極端に落ちるかどうかが分かると、今、御説明があったので、ではいつ入るのかと、それが増えないのが分かるのはいつなのかというところが聞きたいわけです。
○松浦参考人 実生産については、平成30年度の株選定においては、H1N1及び山形系統のほうが株変更はないということは、我々も感染研の株検討会議のほうに出ておりますので、そのことについては確認できておりましたので、もう正に今、製造は。
○釜萢委員 そのものは始まっていると。
○松浦参考人 もう始まっております。ただ、株が決まらないものについては決まってからと、株の変更があるものについては決まってからということで、今、正にBビクトリア系統については、まだ製造に着手できておりません。
○坂元委員 ワクチン産業の方にお聞きしたいのですけれども、推定最大生産量というのは、大体どの時期を想定していますか。今回は各自治体が任意で、国からも文書も出ましたけれども、1か月間、定期接種期間を延長いたしました。通常だと12月31日までのを1月31日まで延長した市町村は、多分かなりあるのではないかと思います。この推定最大生産量というのは、どの時点で想定されたものなのか、もしお分かりになればお教えいただきたいと思います。
○保澤参考人 12月末時点でのものになっております。
○事務局 補足させていただきますと、資料3-3の3ページ目の下に、12月中旬時点と推定最大生産量と2つお示ししましたが、12月中旬時点の数字と、推定最大生産量の数字が少し違っているのは、その差分というのは、12月中旬以降に供給される見込みということです。
○川西委員長 ほかに参考人を交えた議論としては。
○福島委員 小田切先生に再びお聞きしたいと思います。委員限り資料で配布いただいております資料の22ページ目の上のスライド43です。恐らく、メリーランド株、あるいはコロラド株を卵で分離した場合のフェレット血清と流行株との反応性、2アミノ酸欠損との抗原の合致度というものが、1つの焦点と思うのです。感染研のインフルエンザウイルスセンターとしては、ウイルス学的な観点からコロラド株の優先順位を高めるということは、ウイルス学的なサイエンスに基づいた御判断として、私は十分に納得できるのですが、メリーランド株と2アミノ酸欠損との反応性の乖離は、「受け入れ難い、というほどではない乖離」と解釈してよろしいのでしょうか。
○小田切参考人 微妙な質問になると思うのですけれども、この97%の類似性と65%の類似性の、この差をどう捉えるかというところだと思うのです。それほど大きくないと言えば大きくないかもしれませんが、やはりこの2つを比べた場合には、圧倒的にコロラド/06のほうが今の流行株を反映しているということが言えると思います。
それからもう1つ付け加えますけれども、メリーランドから作成されました高増殖株のBX-69Aを感染研は順位を2位で推奨していますけれども、69Aが流行株とどれくらい抗原性がマッチしているか現時点で全く情報がありません。69Aを選んだ場合には、あとからミスマッチであったということがわかるリスクを負うことになります。
○山口委員 ワクチン産業協会の方に確認させていただきたいのですが、厚労省が説明された資料3-3の3ページで、12月中旬時点で去年の投与実績だと間に合っているようになるのだけれども、それ前の3年間だと間に合っていないと。これのリアリティというのはどのようなものなのですか。要するに、先ほどのように実際に医療機関では一部には欠品が出るような、そういうリアリティなのか、それほど大きな影響はないずれなのか、その辺についてはいかがでしょうか。
○保澤参考人 ここで示した本数につきましては、3月末時点で試算した本数になっておりまして、今後、製造を開始してみて、十分変動する可能性があるものとして御理解いただきたいと思っております。
○山口委員 ちょっと分かりにくい御返答だったのですが。多分ワクチンの流通というのは割と地域性があるかと思うのですけれども、ある部分については、やはり欠品が出てしまうようなリアリティがあるのか、その辺について知りたいのですけれども。
○事務局 事務局からお答えいたしますが、例えばこの推定最大生産量を昨シーズン並みに最大限生産された量として、例えばコロラドの2,602万本という数字がありますけれど、今シーズンの最終的な生産量というのは2,643万本という数字でありましたから、今シーズンでそういう状況であったということは、事実関係としてあるのかと思います。
○事務局 資料3-3の3ページの下に示した表の御説明だと考えております。今シーズンに関しては、推定最大生産量を基に、必要な接種を賄える、ある程度効率的に行った場合に、その必要な接種が賄える一定の本数なのではないかということで、生産・流通部会のほうでも御議論を頂いたわけです。実際に先ほど釜萢委員のほうからも御紹介がありましたけれども、現場におきましては、やはりハイシーズンであります11月頃の状況というのは、非常に厳しいものだったという御意見も頂いているところです。
そういった観点から、今回は推定最大生産量ということだけではなくて、12月の中旬時点での推定供給量見込みというものも示して、過去のシーズン等の観点でどうかということでデータを示したという経緯です。
○川西委員長 では、そろそろ、これ以降は委員による議論に移りたいと思いますが、その前に是非とも聞いておきたいということがありますか。よろしいですか。では、すみませんが参考人の方々は後ろの席のほうにお移りいただければと思います。
では、引き続き委員の皆様から御意見を頂いて、恐らく結論を引き延ばすと、それだけ生産の開始が遅れるということもありますので、少し時間も押し迫っているのですけれども、極力結論は出していきたいと思います。
○事務局 先ほど御質問いただいた、資料3-3の3ページ目の下の表について、もう1回御説明を申し上げたいと思っております。今回この表では、ワクチンの供給可能量についてということで示したわけですけれども、この下に示す表はシーズンごとに、昨シーズン、その前のシーズン、その前のシーズンというふうに示しております。右側に示した推定最大生産量というものが、もともと示していた昨シーズンも御議論いただいたときの数字ですけれども、そのほかに時期としては12月の中旬時点での推定供給量見込みというのを、今回新たに示しております。
今回、候補株としてコロラド株とメリーランドBX-69A 株という2株があるということですけれども、メリーランドBX-69A 株のほうを選択した場合には、過去のシーズンを見た場合に、特に12月中旬時点での推定供給量見込みを見ていただきますと、そのいずれも充足できる供給量であるということでした。一方で、コロラド株のほうを選定した場合には、12月中旬時点の推定供給量見込みで見ていただきますと、昨シーズンの状況であれば回るということですけれども、その前の3シーズンに関しては、医療機関納入量を充足できていないという状態が発生いたしますので、供給量の関係に関しては、こういったデータを示しているということです。
○川西委員長 それでは、委員の間の議論に入りたいと思いますけれども、1つ、四価のワクチンに関してAのH1N1からAのH3N2、それからB型の山形系統に関しては、もうこれでいいということは、よろしいですよね。結局はB型のビクトリア系統で、Bのコロラドかメリーランドか。これに関して抗原性での、小田切先生がお示ししたものをやはり優先すべきか、もう1つは供給という点で、社会的な影響も含めて、どちらを選択するかというようなことではないかと私は理解しましたが、その辺りを中心に委員の先生方から御意見を頂ければと思います。いかがでしょうか。
○坂元委員 今回の埼玉株と香港株の議論ですが、自治体、つまり市町村側としてはあの議論が報道され、効かないワクチンではないかという問合せが来るのではないかという想定を少ししていたのですが、一部の専門家の間で議論されていただけで、実際の市町村現場にはその問合せはほとんどありませんでした。やはり供給量不足に関する問合せがかなり来たということでした。こういう言い方はちょっと誤解があるかもしれないですが、抗原性の一致ということには一般の市民の方は余り関心を持ちませんが、供給量にはかなり敏感に反応するというのは、我々が自治体の現場にいても感じています。
今回、例えばこれがどういう形で報道されるかだと思うのです。例えばコロラド株を選択した場合はこういう予測があるとなれば、このシーズンで不足があるということを市民の多くの方がかなり身を持って経験しているので、この形で報道されると、多分更にそれが大きなハレーションを生むのではないかと思います。これが、今冬の市町村の経験からの意見です。ですからある意味ではやはり供給量というのは、我々市町村にとってはかなり重要な判断のファクターであると考えております。以上です。
○川西委員長 ありがとうございます。
○山口委員 坂元先生の話と一緒で、多分、日経バイオなどでもこの経過が載っておりまして、私などもその議論がやはり結構気になったほうなのですけれども、今日の廣田先生の説明にもありましたように、その経緯と、それから実際に新たなデータが出てきたところというのは、従来のフェレットの抗原性だけでは、やはり判断できない部分もあるのかなという気がいたします。
それともう1つは、抗原性の獲得と有効性というのが、十分な相関がない、その辺は考慮せざるを得ないと。先ほど小田切先生にもお聞きしましたが、その差が本当にクリティカルかどうかというところが、ちょっと微妙な推移になってきているのかなと。ただ、供給が十分にあるのであれば、当然コロラド株にするのだろうと思うのですけれども、そうは判断しにくいところがあるのではないかと思います。
○川西委員長 ほかにはいかがでしょうか。
○中山委員 いつも供給量の問題になるわけですけれども、小児の使用量は違うのです。CDCのものを見ると、大体8歳で過去2年間に2回やっていれば1回でやっていますし、我々はずっとそういう調査をしていまして、大体子供たちで6歳以上のところでは、1回接種と2回接種というのには、免疫原性とか有効性において余り有意差はないのです。そうすると今は13歳までが2回となっている、この接種のスケジュール、接種のdose、使用量を、今回は無理かもしれないのですが、この先に向けて、要するに小児の年齢に応じた接種回数というのは、これから検討すべきではないかと思うのです。
いつも最終的には供給量の問題になってきますけれども、6歳から13歳のところの使用量が1回で済むのであれば、今の供給量でも十分足りるのではないかと思うのです。これは選定に関係なくて、これから先どうするかということで、そこのところの検討を、ほかの外国のスタンダードを検討していくべきだと思うのです。
○釜萢委員 今日の資料3-3の1ページの下、この基本的な考え方がやはり一番大事でありまして、下から3行目ですけれども、有益性という所に「4種類の製造株に係る有益性の総和」とありますので、そのことを考えますと、今回の選定株についてはコロラドでなくていいのではないかと感じております。
それからもう1点は、これは質問ということよりは今後の検討課題ですけれども、資料2-1の7ページの下ですが、赤の実線を使用量としておりまして、平成24年、25年、26年ぐらいのところは生産量が随分多いですね。この差が出たところは一体どうなってしまったのか。それをどう考えたらいいか、そこについてはしっかりと今後検討し、どのような対策が取れるかということを考えなければいけないと思うのです。
やはりワクチンの生産というのは十分余裕を持って、なるべく早く作っていただきたいという思いがあるのと、実際に使う量と生産量がピタッと一致するなどということはあり得ないわけですから、その安全域については、これはメーカーが被るべきというものではないと私は思うのです。国の政策として、やはり安全域を国のほうで見ていただくような仕組みが是非必要だろうと思いますので、それは今後の検討課題として事務局にも考えていただきたいと思います。以上です。
○脇田委員 今回、焦点になっています、このBビクトリア系統の株選定ですけれども、メリーランドそしてコロラドともに、これまでのワクチン株と比べますと大きく抗原性が変わってくるということです。もちろんこの2つともが推奨株として、感染研の委員会としても2つを推奨したところですので、これに変更する、どちらかに変更するということが重要であって、しかも多くの方にこれを接種していただくということが重要でありますので、やはり生産量等も勘案して、そこは決めていくべきかなと思っております。それで、いまだに日本で大流行しているわけではありませんので、今後の流行を注視していくということになろうかなと考えております。以上です。
○福島委員 実生産に入るまでの科学的な議論、それはウイルス学的な立場から、あるいは疫学的なデータを含めて、議論は十分尽くされたと私は思っています。その上で、今すぐにでも生産に入っていかなければならないということを考えますと、総合してネットベネフィットを考えたときに、私はメリーランド株に1票を入れたいと思います。やはりそれは国民の方に安心を届けるというところで供給が問題になってきますので、公衆衛生学的にはそのように考えます。
○川西委員長 大体、全体の傾向がでてきているようですが。どうぞ。
○山口委員 今、福島先生と私は同意見になってしまったのですが、もう1つだけ。これは事務局にお願いしたいのですけれども、廣田先生がやられた今回の臨床試験、これまでやられていなかったという、できればこういう臨床研究を何らかの予算でやっていただくというのは可能かどうか、今後検討いただけると有り難いと思います。
○川西委員長 それに対して何か、今、答えられることはありますか。
○事務局 今、インフルエンザの有効性に関しての一番大きな課題は、小児においてその有効性に関して研究班のほうで評価を頂いているのですけれども、例えばそれを成人であるとか高齢者であるとか、そういった幅広い年齢で評価するということの実施の可能性、これはなかなか体制も含めて非常に課題が大きいということで聞いております。そういった幅広い年代にわたる有効性の疫学研究というものを、日本でどのように充実させていくかという課題が1つあると思っております。
もう1つ、今、御指摘の点、抗原性の類似性が異なる2つの候補株があるときに、そのどちらを使うべきかということについての、特にその有効性を念頭に置いた疫学研究ということになりますと、なかなか実施の可能性が難しいかというところもありますが、インフルエンザワクチンに関する有効性の評価に関する研究の一層の充実という観点から、どういったことができるのか、それは先生方と御相談しながら検討していきたいと思っております。
○福島委員 山口先生がおっしゃった廣田先生の研究班での臨床試験ですけれども、これは私も一部携わらせていただきましたが本当に大変です。季節性ワクチン株に入っていない株を使って、研究用の単価ワクチンをメーカーさんに作っていただくわけですよね。それを流行前に、被験者の方に接種しないといけない。流行期に入ると普通のワクチンが出回ります。被験者の方には、通常のインフルエンザワクチンの接種機会も、倫理面では確保しないといけない。そうしますと、研究用ワクチンの製造スケジュール、倫理委員会での承認、そして臨床試験の実施と、非常に高いハードルがあります。さらにそこで得られた結果というのは、あくまでも免疫原性の結果でしかないわけです。それが有効性をダイレクトに反映するとは限らない。
そういう点を考えますと、このような試験を毎年実施するかについては、厚生労働省の事務局のほうに考えていただきたいのですけれども、私は先ほど事務局がおっしゃいましたように、今、廣田班で実施しているような、世界標準でのクオリティが担保できるようなTest-Negative Designによるインフルエンザワクチン有効性研究が、全年齢層でできるような仕組みを考えていただくほうがよろしいかなと思います。以上です。
○川西委員長 ありがとうございます。
○大曲委員 国際医療研究センターの大曲と申します。私自身は有効性に関する科学的な議論、その結果に関しては重々尊重したいと思いますし、その限界があるということもよく分かりました。一方で、この場が持たれた大きな理由の1つとしては、昨年ワクチンの供給についてやや騒がしくなりましたので、それをこれからはどのように静かにオペレーションしていくかということ、このように理解しております。
そういう意味では、新しい方法を用いて可能な限りその収量を予測して、最大の収量を確保する点からはメリーランドのほうを選ぶべきなのかなと思います。ただ、議論はこれで終わっているとは思いません。メリーランドの株を選んだにしても、今の予想では量が潤沢にあるわけではありません。数字が一人歩きして、議論を呼ぶだろうと思います。
昨年もその数字の理解に関しては、いろいろな通知が出たりして、現場の人間に理解を求めるような形で情報を頂いたわけですけれども、現場にはなかなかその情報がうまく伝わらないというところがありました。あとは現実として物が回ってこないことがあるということになると、やはり混乱は大きいわけです。現場として感じたのは、先ほど釜萢先生もおっしゃっていましたが、どの時期にどれぐらい物が来るのかといった見込みが伝わるようにして欲しいということです。また「ワクチンが足りない」と言い切るような報道もありましたので、そういったことが起こらないようなリスクコミュニケーションが、一方で非常に重要ではないかと思います。私からは以上です。
○川西委員長 ありがとうございました。委員の先生方の御意見が大体出たようですので、そろそろ議論をまとめたいと思いますが、冒頭にございましたように、中山先生においては、意見の集約にあたり、ご参加いただかないことと致します。
一応、今回、時間的な余裕がないということも含めて考えて、あとは供給ということに懸念があるということで言えば、今日の委員の先生方の御意見で、一部、別の考え方があるのではないかという意見があったにしろ、大勢はメリーランドで今年はいくべきだと。
ただ、中山先生がおっしゃった、もう少し節約する、これは去年も結局は2回ではなくて1回ということは強調して、それで今回、使用量も多少減ったということが、多少なりとも反映されて、それでやっと今回はコロラドのほうが○になっていると。そういうことの意味もあるので、中山先生がおっしゃった節約というポイントを併せて周知していくような手段も取っていくということで、インフルエンザの今回の株の選定としては、メリーランドのほうを選択するという結論にしたいと思いますが、よろしいですか。
○川西委員長
一応、今日の結論はそのようにしたいと思います。ただし付加的に、使用量も減らしていくということを続けていきましょうということも付記していただければと思います。ありがとうございます。その上で何かちょっと一言、言っておきたいことはありますか。
○廣田参考人 先ほど山口先生から、こういうスタディをちゃんとするような体制をというお話が出まして、福島先生からこの困難性について御説明いただきました。実はこの単価ワクチンを作っていただくときは、普通の四価の季節性ワクチンも作っている時期です。コンタミを起こすと大変なことになりますので、メーカーでは別ラインで作っていただいております。微研会で作っていただきましたけれども、ほかのメーカーからは全部断られております。
それと、この2つのワクチンですけれども、国家検定なしのワクチンですよね。言うなればFirst in humanの薬剤を2つ使う。それも厚労省の研究班ベースで、そういう大変なことをするというので、それを克服してやったスタディです。今後これをまたするとなると、それなりの覚悟をして取り組む必要があろうかと存じます。以上です。
○川西委員長 貴重な御意見ありがとうございます。インフルエンザについてはそこまでということで、では、その他で何かありますか。ないようでしたら、ちょっと私もホッとしました。これでまた結論が延びると、それだけ遅れるというようなこともあったのかと思っておりましたが、円滑な議論に御協力いただいたことに心から感謝申し上げます。また、参考人の先生方、それから感染研の貴重なデータ、本当にありがとうございます。これで第1回の小委員会を終わらせていただいてよろしいですね。どうもありがとうございました。

 
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