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2018年8月8日 第23回予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会議事録

 

○議事

○友永室長補佐 それでは、定刻より少し早いのですが、委員の先生方はおそろいですので、「第23回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会」を開催いたします。本日は御多忙のところ、またこのような悪天候の中御出席いただき、誠にありがとうございます。

 開会に先立ち、731日付けで事務局側に人事異動がありましたので、紹介をさせていただきます。健康局長が福田局長から宇都宮局長に、健康課長が正林課長から武井課長にそれぞれ交代となっております。それでは、武井課長より御挨拶を申し上げます。

○武井健康課長 731日付けで健康課長を拝命いたしました武井と申します。本日は、台風が接近中という非常に足元の悪い中、先生方には貴重なお時間を頂きまして、御参加いただき、誠にありがとうございます。また、平素より予防接種対策に御理解、御尽力を頂いていることに、この場を借りまして深く御礼を申し上げたいと思います。本部会は、御案内のとおり本日の開催をもちまして実は23回目となります。これまで予防接種基本計画の策定のほか、予防接種に関する多くの課題について、活発な御議論を頂いたところでございます。

 本日の審議事項ですが、お手元の資料にございますように、麻しん及び風しんに関する特定感染症予防指針の改正案について御議論いただくとともに、前回、6月の基本方針部会に引き続きまして、B型肝炎ワクチンの新規製剤について御議論を頂きたく、考えている次第です。各委員におかれましては、忌憚のない御意見を頂戴できればと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。厚生労働省といたしましても、今後とも予防接種施策の推進に取り組んでまいりますので、引き続き皆様方の御理解、御協力を賜ればと考えているところでございます。本日は、お忙しいところ大変ありがとうございました。どうぞよろしくお願いいたします。

○友永室長補佐 本日の議事は公開ですが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきますので、プレス関係者の方々におかれましては、御理解と御協力をお願いいたします。また、傍聴の方は、傍聴に関しての留意事項の遵守をお願いいたします。なお、会議冒頭の頭撮りを除き、写真撮影、ビデオ撮影、録音をすることはできませんので、御留意ください。

 前回の部会から委員の追加がありましたので、御紹介をいたします。国立感染症研究所の脇田隆字委員が新たに任命されております。

○脇田委員 感染研で4月から所長を拝命しています脇田と言います。どうぞよろしくお願いします。

○友永室長補佐 続いて、委員の出席状況について御報告いたします。中野委員、中山委員、宮﨑委員、山中委員から、御欠席の連絡を受けております。現在、委員11名のうち7名の委員に御出席いただいておりますので、厚生科学審議会令第7条の規定により、本日の会議は成立したことを御報告いたします。

 議事に先立ち、配布資料の確認をさせていただきます。議事次第、配布資料一覧、委員名簿、座席表、資料18まであります。加えて参考資料1、2、各委員からの審議参加に関する遵守事項の申告書となっております。配布資料一覧と合わせて御確認いただき、資料の不足がありましたら、事務局にお申出ください。

 申し訳ございませんが、冒頭のカメラ撮りについてはここまでとさせていただきますので、御協力をお願いいたします。なお、これ以降は、写真撮影、ビデオ撮影、録音をすることはできませんので、御留意を願います。

 それでは、ここからの議事の進行は、倉根部会長にお願いしたいと思います。倉根部会長、どうぞよろしくお願いいたします。

○倉根部会長 本日はよろしくお願いいたします。事務局から、審議参加に関する遵守事項等について報告をお願いします。

○友永室長補佐 審議参加の取扱いについて御報告いたします。本日、御出席いただきました委員から、予防接種・ワクチン分科会審議参加規程に基づき、ワクチンの製造販売業者からの寄附金等の受取状況、申請資料への関与について、申告を頂きました。各委員からの申告内容については、机上に配布しておりますので、御確認いただければと思います。本日、調査審議するワクチンは、MSD株式会社が製造するB型肝炎ワクチン(商品名:ヘプタバックス-)を予定しております。本日の出席委員の申出状況及び本日の議事内容から、「退室」や「審議又は議決に参加しない」、これらに該当する委員はいらっしゃいません。以上です。

○倉根部会長 ありがとうございました。それでは審議に入りたいと思います。本日、台風が近付いておりますので、要領よく審議を進めたいと思いますので、委員の先生方には是非よろしくお願いします。(1)「麻しん及び風しんに関する特定感染症予防指針の改正について」です。麻しん及び風しんに関する特定感染症予防指針の改正については、感染症部会と基本方針部会の両方にぶら下がる形で麻しん・風しんに関する小委員会を設置して、議論を行ってまいりました。感染症部会へは615日に改正案が報告されて了承されておりますが、本日は当部会で審議となります。

 それでは、資料15について、事務局からの説明をお願いします。

○野田結核感染症課長補佐 資料1について、結核感染症課より御説明をさせていただきます。麻しんの発生状況です。このグラフは、累積の各年ごとの麻しんの発生状況ですが、2018年の状況といたしましては、729日現在までの累積数といたしまして、202例出ている状況です。この影響といたしましては、ゴールデンウィーク辺りに特に多く症例が出ました沖縄の例が半分近くを占めている状況です。

 2ページは、風しんの発生状況です。風しんについては、同じく729日までの累積数といたしまして73例出ている状況でして、昨年の数は93例でしたので、まだそこまではいっていない状況です。

 なお、風しんについては、30週の数字ですが、3ページにありますが、千葉県においての発生が少し数が多い届出が出ている状況でしたので、少し詳しめの資料を3ページにお付けさせていただいております。具体的には、29週までは特に1例程度であったというところがありましたが、30週の段階で11例出てきたというところでして、このグラフにお示しをいたしていますように、男性で特に風しんの発生の届出は出てきているところです。千葉市で6例、その他各地域で12例出ている状況です。なお、ワクチン接種歴については、13例が不明で、1例は1回接種歴がありという状況でした。簡単ではありますが以上です。

○賀登室長補佐 続いて、資料2に沿って、乾燥弱毒生麻しん風しん混合ワクチン(MRワクチン)の需給状況等について、御説明させていただきます。1ページです。現行の麻しんに関する特定感染症予防指針において、感染力が非常に強い麻しん対策として、最も有効なのは、その発生の予防である。麻しんの接種に用いるワクチンは、風しん対策の観点も考慮し、原則として、麻しん風しん混合ワクチンとするものとするとされております。MRワクチンの需給状況の見込みについては、現時点において、MRワクチンの全国的な不足は生じない見込みであると考えております。

 具体的にはグラフでお示ししております。36月が実績値、7月以降は見込み値です。5月に需要のピークを迎えましたが、まだ対応できる余力はあるものと考えております。

 3ページ、6月末時点のMRワクチンの需給状況に関する情報ということでまとめております。スライドの中ほどにあります医療機関納入量実績対前年比%を御覧ください。4月、5月の医療機関納入量実績は、去年と比べて約2倍を超える増加となっておりました。流通過程上において存在すると考えられます在庫量については、約65万本となっておりますので、今後の見通しとして、現時点において全国的な不足は生じない見込みであると考えています。資料2については以上です。

○野田結核感染症課長補佐 続いて、資料345を適宜使い、麻しん及び風しんに関する特定感染症予防指針の改正について、御説明をさせていただきます。改正の背景といたしましては、麻しんに関する特定感染症予防指針及び風しんに関する特定感染症予防指針については、いわゆる感染症法第11条第1項に基づき作成をされております。また、麻しん、風しんの両指針については、少なくとも5年ごとに再検討を加え、必要があると認めるときには、変更していくというところでして、以前の感染症部会及び予防接種基本方針部会において小委員会を立ち上げ、議論を行い、改正を行うことが了承されていた状況です。それを踏まえ、小委員会において、24回に掛けて議論を行い、改正案が了承されていた状況です。その改正案を踏まえ、615日には感染症部会にお諮りをさせていただき、了承を得たということで、この予防接種基本方針部会においても御審議を頂きたいと考えております。

 指針改正案の主なポイントです。今回の指針改正のポイントとしては、大きい分では5つ、そして、その他の必要な事項の改正をするということで考えております。(1)です。定期の予防接種の実施率向上に向けた対策の強化です。国は、都道府県を通じ、各市町村に対して、第1期及び第2期の定期接種率がそれぞれ95%以上となるように働き掛けること、及び都道府県に設置されている麻しん・風しん対策会議が予防接種率の向上策について提言を行い、都道府県は当該提言を踏まえ各市町村に対して働き掛ける旨の記載を両指針に追加するということです。具体的には、麻しんの指針で言いますと、資料47ページと16ページに記載をさせていただいております。特に、16ページに関しては、この前、麻しんの対策会議の記載の所ですので、そこで提言を頂き、それで都道府県は対応を行っていくという記載になっております。

 (2)児童福祉施設等及び医療機関における対策の強化です。児童福祉施設等及び医療機関の職員等のうち、特に定期の予防接種の対象となる前であり、抗体を保有しない0歳児、免疫不全者及び妊婦等と接する機会の多い者に対し、予防接種を受けることを強く推奨する旨の記載を両指針に記載することを行わせていただいております。例えば、麻しんの予防指針で言いますと、9ページにそのような記載をさせていただいております。

 (3)輸入症例への対策の強化です。海外に渡航する者は、海外でり患者と接する機会があることから、本人が麻しんウイルスに感染すると、我が国に麻しんウイルスを流入させる可能性がある。また、海外からの渡航者と接する機会が多い空港職員等は、麻しんウイルスに感染する可能性が比較的高く、本人が麻しんを発症すると、我が国で感染が拡大する可能性及び海外へ流出させる可能性がある。このため、海外に渡航する者及び空港職員等に対し、麻しんの予防接種を受けることを推奨する旨の記載を両指針に追加させていただいております。具体的には、麻しんの予防指針で言いますと、11ページになります。

 (4)風しん抗体検査から予防接種への結び付け。こちらは、麻しんの特定予防指針には記載はなく、風しんの特定予防指針のみの改正です。風しん指針において、抗体検査の結果、陰性又は判定保留の結果が出た場合に、確実に予防接種に結び付けることが重要である趣旨の記載は追加することとさせていただいております。具体的には風しんの予防指針、資料5になりますが、こちらの6ページに記載の追加をさせていただいております。

 (5)広域感染発生時の対応の強化。国は、複数の都道府県等にまたがるような広域的な感染症が発生した場合に備え、都道府県等間での情報共有及び連携体制の方針を示し、技術的援助の役割を積極的に果たすとともに、各都道府県等においても、都道府県等相互の連携体制をあらかじめ構築していくことが必要である旨の記載を、両指針に追加をさせていただいております。例えば、これは麻しんの予防指針については、5ページに記載をさせていただきました。

 その他、麻しんと風しんの予防指針について、記載が多少違っていた部分もありましたので、そこについて平仄を合わせるなどの修正を今回させていただいております。

 以上、今回お示しをさせていただいております、麻しん及び風しんの特定感染症予防指針の改正について、御審議を頂ければと思います。

○倉根部会長 ありがとうございます。今、事務局から説明がありましたが、本議案について何か質問、御意見はありますか。

○多屋委員 今回、御紹介いただきました風しんのことについて、少し追加でコメントをさせていただきたいと思います。30週に千葉県から10人を超える風しんの患者さんがお届けされました。しかし、千葉県だけではなくて、近隣の首都圏からは、風しんの患者さんが断続的に報告されており、ほとんどが大人、8割以上が大人で、多くが成人男性という形態をとっていますので、201120122013年、20032004年にあったのと同じ風しん流行が危惧されることもありますので、そうならないために、早期の対策をとっていただきたい。そのためには、ワクチンを受けていただく手立てをとっていただきたいと思うのですが、そういったことは可能でしょうか。

○倉根部会長 今の御意見ですが、事務局何か。

○江浪予防接種室長 予防接種室長の江浪です。指針の議論をしていただいたときには、麻しんの関係の御関心が非常に高くて、麻しんに関しても抗体価を見れば、ほぼ全ての世代が高くなっているものの、1回接種世代ということで、1回接種の世代があるのではないかと。そこについての追加接種については、どう考えるかという御指摘を頂いております。本日、この予防接種の審議会で御議論いただくときには、ちょうど風しんの報告があり、風しん対策、これに関しても、かつて男の子が風しんの接種を受けていなかった世代の対策ということについて、御指摘を頂いているものだと考えております。実際に麻しん、風しんの対策に関しては、特に風しんに関しては排除を目指しており、麻しんに関しては排除自体を実施していくということで取り組んでいるものですので、今後どういった施策が必要になってくるかに関しては、今後も議論をしっかりとしていきたいと考えております。

○倉根部会長 よろしいですか。ほか、いかがですか。

○池田委員 改正案についてはこのようなことで結構だと思うのですが、市町村の定期接種率は、どの程度正確に把握できるのか。多分、分母・分子の関係で95%と定めたとしても、それが正しく取れているかどうかという問題があるのだったら、多屋先生が大変お詳しいかと思うのですが、この辺りはもっと精度を上げる方法とかはあるものなのでしょうか。

○江浪予防接種室長 麻しん、風しんに関しては、国全体の予防接種率だけではなくて、都道府県別の予防接種率、更に市町村別の予防接種率を集計し、御報告を公表させていただいております。この作業に関しては、感染症研究所の多屋先生に御尽力いただいておりますので、追加で御発言いただきたいと思いますが、分母・分子の関係に関しては、基準人口を定めて、その中で把握する形でやっているわけです。実際に予防接種率は、何を分母に置いて、何を分子に置いてというところで、いろいろ悩ましい点もありますので、その点については、これからもしっかり議論していきたいと思います。

○倉根部会長 多屋委員、追加なりコメントは何かありますか。

○多屋委員 接種率の計算方法は、全ての市区町村で同じやり方で必ず出せるという方法でないといけないと思っています。そのときに議論をしたのは、どこでも同じやり方で結果が出せるということから、第1期の対象者は101日現在の当該市区町村の1歳児人口。第2期は、41日時点のその対象者です。その学年の人口を分母にして、1年間に何人が接種したかという数を届けていただくことにしましたので、どこの市区町村でも同じやり方で必ず結果が出せる、それを見ていますので、かなりしっかりした結果ではないかと思っています。どうしても人口移動が多い所は、増減すると思うのですが、日本全体で見れば、人口分の分子の数はほぼ間違いなく把握できているのではないかと思っていますので、現時点でやれる方法としては最善かと思っています。

○倉根部会長 ありがとうございます。ほかには御質問、御意見はありますか。

○伊藤委員 風しんは抗体が低い人はワクチンを打ちましょうと書かれているのですが、問題は抗体が低いのか、高いのかを引っ掛ける方法が規定されてないと、そこにたどり着かないのではないかと思っておりますが、その点についてはいかがですか。

○野田結核感染症課長補佐 風しんについては検査の事業をやっておりますので、そこの中で検査をやっていただいて、その上で低かった場合には、ちゃんと予防接種につなげるという趣旨です。

○伊藤委員 抗体が低い人を見つけるためには、まずは抗体を測定する人をどの程度正確に補足できるのかが問題になるのかと思っておりますが、その点はいかがですか。

○野田結核感染症課長補佐 こちらは先にお示しをしましたように、風しんについて、抗体価を調べることを助成する制度をやっておりますので、その中でやっていただいて、その上で引っ掛かった場合には予防接種につなげるというところで、まずはもちろん大前提としては、風しんの抗体価を調べていただく事業に御参加を頂くという形になると思っております。

○伊藤委員 具体的にはどれぐらいの方が参加されているのか、教えていただけますか。

○野田結核感染症課長補佐 手元に資料がないのですが、確かに各都道府県によって多少やっている実績は違っている状況ですので、そこについてはまた周知はしていく必要はあると考えております。

○多屋委員 抗体検査事業については、この5年間随分苦労してやってくださったのですが、抗体保有率は全く変わっていないので、麻しん・風しんに関する小委員会のときにも申し上げたのですが、抗体検査を受けなくても予防接種を受けるほうに舵を切り直したほうがいいのではないかと思っています。もちろん、今回、風しんの抗体価が低いと分かった人が予防接種を受けるところまで行くと明記してくださったので、その分はすごくよかったと思っているのですが、抗体検査を受けようという人が、そもそもそれほど成人男性の中で多くない中、抗体検査を受けずにワクチンを受けるとしていただいてもいいのではないかというのが、1つあります。そして、24日に厚生労働省と一緒に風しん予防のために、風しんゼロに向けて啓発活動をさせてもらったのですが、そのときも100人ぐらい風しんの抗体検査を受けてくださったのです。その100人ぐらいの方の結果がどうだったのか、もしそこで陰性だった人はどれぐらいワクチンを受けたのか、そういうのはもし調べていらっしゃったら教えていただけますか。

○野田結核感染症課長補佐 まず、24日のイベントの結果について御説明させていただきます。これは成田空港でさせていただきました風しんのイベントというところで、その中で抗体検査についても実施をさせていただいたという状況です。具体的には89名の方が検査を受けていただき、そのうち7名の方が陰性であったということです。その方については、予防接種についての必要性について御説明させていただいたことです。その後、受けていただいたかということまでについてはなかなか、その場の部分のイベントでもありましたので、そこまでの追跡ができていない状況です。

○坂元委員 多屋先生にお聞きしたいのですが、自治体で抗体検査に関して補助対象者はよろしいのですが、補助対象ではない人から、抗体検査はお金が掛かるので、それをやらないで、いきなり打ってしまってもいいのですかという質問が結構あって、何と答えていいか困っています。ただ、今の先生の話を聞くと、いろいろ見ると、抗体検査をやらなくて、心配だったら打ってしまってもいいのかと思えるところもありますが、ただ、この指針を見ると、抗体検査はやった方がよいというふうに捉えられるところもあって、そういう質問が来たときに非常に答えにくい部分があるのですが、その辺、もし何かお分かりになったらお教えいただきたいと思います。

○倉根部会長 まず最初の部分です。抗体が分からずに打ったらどうだと。

○多屋委員 それについては、抗体をもし持っていた方が受けても、自分が持っている中和抗体で弱毒化されたワクチンウイルスは中和されてしまいますので、体には何も害がないと思います。そして、20082012年度まで5年間やった第34期のMRワクチンについては、誰も抗体検査などせずにワクチンの2回目を受けています。その子供たちは、今の成人男性よりもっと抗体価は高い集団の中で2回目をやったわけです。ですので、抗体検査をしなければワクチンを受けてはいけないのではないか、という一般の方々の意識を変えないといけないのではないかと思っています。

○坂元委員 今の多屋先生の貴重な御発言でも、ここに検査を受ける必要性について書けないのかもしれないということかと思います。つまり検査を受けなくてやっても問題ないという書き方はできないのかもしれないけれども、もし、そうすると、ここの書き方の工夫かと思います。例えば、抗体価が、ある人が接種を受けても特段副作用が出たというものはないとか、重篤なそういうものはないとか、何かちょっとした工夫がないと、このまま出ると、やはり問合わせとして、受けないでやってしまうとまずいのですかという質問が来そうな感じがするので、いかがでしょうか。

○倉根部会長 これは事務局、お願いします。

○野田結核感染症課長補佐 今回、記載を入れさせていただいた理由といたしまして、予防指針の改正の前に自治体に対してアンケート調査をさせていただきました。その結果を見て、小委員会の所にもお示しをさせていただいたのですが、その際に抗体検査をやっているけれども、やはりやりっ放しで、その後の予防接種にまでつながっていないというところで事例が多かったというところが御指摘があり、その観点で今回こういう記載を入れさせていただいたところです。一方では、抗体検査をやらずに予防接種を直接やるべきではないかというところについても、御議論はあったのですが、そこについては別途議論していくというところで、これまで議論としては出てきているという状況です。

○倉根部会長 ありがとうございます。それでは、多屋先生、お待たせしていたと思います。

○多屋委員 先ほどの坂元先生の御質問ですが、今回の特定感染症予防指針、例えば風しんの10ページの方向性(3)の赤囲みの所ですが、「風しんに未り患若しくは風しんのり患歴が不明であり、かつ、当該予防接種を必要回である二回受けていない若しくは」になっていますので、そこでも別に予防接種を受けることを推奨されていることになるような気がします。「若しくは風しんの予防接種歴が不明である者又は風しんの抗体検査の結果が陰性若しくは抗体価が低いと確認された者」と、全部or,orになっているので、抗体検査を受けて低い又は陰性だったら、それは強く勧めるけれども、抗体検査を受けずに予防接種歴、り患歴がない場合も、推奨になっていると読めるような気がします。

○倉根部会長 よろしいでしょうか。多屋委員、最初、手を挙げておられた。

○多屋委員 多分、先ほどの89人の方が抗体検査を受けられて、7人の方が陰性だったという結果だったので、1割ぐらいの方が陰性だったのかと思うのですが、今後は、この方々がきちんと予防接種を受けたというところまで確認をしていただけるようなお願いをされていると理解をしてよろしいですね。今までこの方々がほとんどお受けになってくださらなかったりしたことが多かったので、抗体保有率が多分変わってなかったのかと思いますので、是非よろしくお願いします。

○倉根部会長 ほかは何か意見ありますか。特にありませんか。よろしいですか。そうしますと、今回、議題(1)として出ております麻しん及び風しんに対する特定感染症予防指針の改正については、ただいま御意見あるいは御質問がいろいろありましたが、本部会で承認するという形でよろしいですか。

(異議なし)

○倉根部会長 それでは、特定感染症予防指針の改正については、本部会において了承ということにしたいと思います。ありがとうございます。

 それでは次の議題に移ります。議題(2)は「B型肝炎ワクチンについて」です。これは事務局から資料の説明をお願いします。

○黒崎室長補佐 事務局より御説明申し上げます。資料6から8を御覧ください。資料6は、「MSD社の製造するB型肝炎単抗原ワクチンについて」という資料です。1ページの経緯につきましては、前回の基本方針部会でも提示させていただいておりますが、改めて御説明します。1986年に米国メルク社製B型肝炎ワクチンが米国で承認され、その2年後、1988年にMSD社製B型肝炎ワクチンが日本で承認を受けて、これまで使われてきているところです。

 一方で、2000年に欧州において、HEXAVACという6種混合ワクチンが承認され、2001年から発売されているものがあります。こちらとPCV7の同時接種時における、B型肝炎の免疫原性の減弱に欧州医薬品委員会が懸念を示したということから、ここに関しては予防措置として、HEXAVACの販売を一時停止したということがあります。この原因究明を会社として行っていただいていたわけですが、米国メルク社での検討においては、アルミニウムヒドロキシフォスフェイト硫酸塩(アジュバント)の、リン酸塩、アルミニウムモル比を変更することにより、一貫した免疫原性が得られることを見いだし、アジュバントに関する製法変更を行うこととされたものです。

 一方で、B型肝炎の単抗原ワクチンについては、免疫原性のデータを欧州医薬品委員会に提出し、問題ない旨が了承されていたものですが、上記の製法変更を適用することとし、欧州医薬品委員会もこれに同意したということがあります。

 これを受けまして、2008年には、この製法変更製剤がヨーロッパで承認されています。続いて、2011年には米国のほうでも同様の製法変更が承認されています。

 日本におきましては、この欧州と米国と同様の製法変更を行うため、製法変更前後の製剤を用いて、品質、非臨床、臨床面からの同等性・同質性評価を開始しております。当初、バイアル製剤での一部変更申請として計画されていたものですが、医療現場からのニーズに応える形で、製法変更後の製剤をプレフィルドシリンジ製剤として開発したという経緯がございます。201712月に日本で承認されています。その製剤を定期接種で使えるワクチンとして位置付けるかどうかについて、第22回の基本方針部会において審議をしていただいたものです。

 次ページです。今回の変更に関する整理ということです。今回の変更に関しまして、従来製剤と今回の製法変更製剤で、変更のない点と変更された点について、再度事務局のほうで整理いたしましたので、御説明申し上げます。

 1番の下です。効能・効果及び用法・用量に関して、添付文書より転載していますが、従来製剤(バイアル製剤)と製法変更製剤(シリンジ製剤)で変更は全くありません。3つありますが、効能効果の1番目、B型肝炎の予防というところが定期接種で主に使うところに関係するところですが、用法・用量の中ほどのところに、10歳未満の者には、0.25mLずつを同様の投与間隔で皮下に注射するということで、定期接種で用いる0歳児の場合には、皮下で注射するということで、これは従来製剤も製法変更製剤においても変わらない点です。

 剤形変更についてですが、従来製剤は0.5mLのバイアル製剤1種類でしたが、製法変更製剤については、0.5mL0.25mL2つのシリンジ製剤へ変更となります。シリンジ製剤のメリットとしては、下に3つ挙げていますが、ラテックスフリー製剤であること、2番目として、過量接種やワクチン取り違えリスクの軽減に寄与するものであること、3番目として、調製のための作業、時間の短縮に寄与するものであることなどが挙げられています。

 3ページ目ですが、今回の製法変更というのは、具体的にどういうことであったのかということですが、アジュバント(アルミニウムヒドロキシフォスフェイト硫酸塩)の製法の変更が行われたということです。その製法変更によりまして、含まれるアルミニウムの量は変更はなく、アジュバントの総量としても変更はありませんが、アジュバントのリン酸/アルミニウムモル比が変更となったということです。

 製法の概要及び組成についても、添付文書より転載しています。従来製剤のヘプタバックスと、製法変更製剤の0.5mLの所を見比べていただきますと、ここに書くべきものとして、記載するものに関しては、全て変わりはありません。0.25mL製剤に関しては、0.5mL製剤の含まれる量のそれぞれ半分の量になっているということです。

 4ページ目です。国内製剤と海外製剤の違い、及び海外での販売実績についてです。国内製剤は、先ほどもありましたように、定期接種で用いる場合、皮下注射ですることになっています。

 一方で、海外製剤に関しては筋肉内注射で用いるのが一般的です。その観点から、液量に関しては国内製剤は海外製剤の1/2量です。図で示していますが。製法変更前でも製法変更後においても、海外では1mL、国内では0.5mLを用いるということになります。有効成分の含量は、10.0μgで、これは国内製剤と海外製剤で変更はありません。アジュバントの量に関しては、国内製剤で含まれる量が、アルミニウム換算として0.25mgであるのに対しまして、海外製剤はその液量に比例して0.5mgということで、国内製剤に含まれるアジュバントの量は海外製剤の同じものに比べて半量になっているということです。

 下の○ですが、海外市販後の使用経験につきまして、同じ製法変更を行ったB型肝炎単抗原ワクチンは、先ほども御説明させていただいたとおりで、2008年にヨーロッパで、また、2011年に米国で承認され、以来、新生児を含め広く使用されています。

 直近2年間(2016229日から2018228日まで)の全世界へのB型肝炎単抗原ワクチンの出荷数量に基づく接種可能延べ人数に関しましては、成人が596万人余り、小児においては1,255万人余りにこれまで使用された実績がありまして、特記すべき安全性に懸念を示すようなデータは報告されていないということです。

 前回の基本方針部会におきまして、現在ある、国内、海外のデータというのはどういうものがあるのかという御質問を頂いたところでしたので、国内及び海外におけるデータについても、簡単にまとめさせていただきました。国内におけるデータについては、先日の基本方針部会の中で、MSDの方にヒアリングしていただいたときの資料をサマリーして、お示ししているものです。承認審査においては、品質試験成績に加え、国内第Ⅲ相試験の結果が提出され、製法変更製剤と、従来製剤の同等・同質性はあると評価されています。MSD社は、品質試験成績に加え、国内第Ⅲ相試験の結果を申請資料として提出しており、第Ⅲ相試験に関しては、2035歳の健康若年成人を対象として、血清防御率、これはHBs抗体の値が10を超えたものの割合ですが、こちらを使用評価項目として、非劣勢試験のデザインで行われたものです。

 安全性につきましては、製法変更製剤投与群においては、従来製剤投与群と比較して、紅斑の部分で少し高い傾向を認めましたが、いずれも短期間で自然軽快しておりまして、それ以外の安全性のプロファイルにも大きな差はなかったということです。

 次は海外のデータです。海外におけるデータにつきましては、国内製剤と比較して、1回接種当たりの液量やアジュバント量が、先ほど御説明させていただいたとおり、2倍量となっておりますが、多くの使用実績がありまして、臨床試験においても、従来製剤と製法変更製剤で安全性プロファイルに大きな差異を認めていないということです。

 今回は、この4つの試験をサマリーさせていただいておりますが、海外では日本と同様の2035歳の成人、小児、及び50歳以上の成人を対象としたデータがあります。どの研究においても、従来製剤と製法変更製剤でSPRはほぼ同等で、安全性プロファイルについても、大きな差異は見られなかったということです。それぞれの試験の中で、対比をすると、従来製剤と製法変更製剤においては、有効性及び安全性プロファイルにおいて、大きな差がないというようなことを要約しています。

 最後のページです。対応方針案として、1番目の○ですが、製法変更製剤について、現時点で、安全性・有効性に関して、従来製剤と明らかに異なることを示唆するエビデンスは認められないことから、本剤をB型肝炎に対する定期の予防接種に使用できるワクチンとして位置付けることとしてはどうかと考えています。

 2番目の○ですが、医療現場におきまして、本剤を安心して接種に使用できるよう、以下のような取組を行うこととしてはどうかと、2点御提案させていただきたいと思います。1番目として、研究班におきまして、定期接種として製法変更製剤を投与した際の安全性に関する評価を並行して行い、その結果がまとまり次第、医療現場に情報提供するということを考えています。

 2番目として、B型肝炎ワクチンの副反応疑い報告の評価に際して、必要に応じて従来製剤によるものと製法変更製剤によるものを分けて評価を行うために、副反応疑い報告が従来製剤によるものか、製法変更製剤によるものかを適切に区別することができるよう、副反応疑い報告に必ずロット番号を記載いただくことを改めて周知を行いたいと考えています。

 引き続きまして、資料78について御説明を申し上げます。資料7に関しましては、前回の基本方針部会において、アジュバントの今回の変更がどのような意味を持つのかということに関して、御質問も出たというところから、多屋委員に御紹介いただきまして、医薬基盤・健康・栄養研究所ワクチン・アジュバント研究センターの石井健先生に、意見書を頂戴いたしましたので、こちらを読み上げさせていただきます。

アジュバントとは:

 アジュバントとは、ラテン語の「促進する」「増強する」という意味を持つ言葉を語源としている。アジュバントはワクチンン抗原とともに投与することで、その抗原に対する免疫原性を増強、加速、延長することができると考えられている。その特性により、標的抗原の必要量を減らせたり、接種回数を減らせたり、免疫力の弱い新生児や高齢者への効果を改善したりすることが可能となる。トキソイドや遺伝子組み換えタンパクを抗原とするワクチンでは抗原単独では低い抗体価しか誘導されないため、アジュバントの必要性が広く認められるようになったが、アジュバントの持つ強い生物活性は諸刃の剣にもなる危険性も有している。

アジュバントの作用機序

 アジュバントはワクチンの免疫賦活能を増強させる因子として、20世紀初頭から研究開発が行われてきた。当初はアジュバントによる免疫増強効果は、抗原を宿主免疫系に効率よく、かつ持続的に提示する「ワクチンデリバリー」が主であると考えられており、ワクチン開発は経験主義的に行われていた。しかしながら、状況が大きく変化したのは、1990年代に報告された、パターン認識受容体(pattern recognition receptor:PRR)とそのリガンドの同定である。興味深いことに、多くのアジュバントがPRRを介して自然免疫性を活性化することが明らかとなった。

 ワクチンによって獲得免疫を誘導するためには、自然免疫の活性化が重要である。マクロファージや樹状細胞をはじめとする自然免疫担当細胞は、細胞表面若しくは細胞質内に存在するPRRを介した刺激によって活性化する。PRRには、toll-like receptor(TLR)Nod-like receptor(NLR)C-type lectin receptor(CLR)、及びRIG-like receptor(RLR)4種類が存在する。これらPRRは病原体の膜成分や病原体由来の核酸などをはじめとする病原体関連分子パターン(pathogen associated molecular patterns:PAMPs)、あるいは傷害を受けた宿主細胞の成分(damage associated molecular patterns:DAMPs)により活性化される。PRRの活性化により、自然免疫担当細胞は獲得免疫系を活性化する種々のサイトカインや補助刺激分子群(costimulatory molecules)を誘導し、抗原特異的なT細胞及びB細胞を分化誘導する。アジュバントとして知られているPRRのリガンドとして、monophosphoryl lipid A(MPLTLR4のリガンド)RC529(TLR4のリガンド)R839(ImiquimodTLR7のリガンド)R848(ResimiquimodTLR7/8のリガンド)CpG7909(CpG-oligonucleotideTLR9のリガンド)FK565(Diaminopimelic acidNOD1のリガンド)などが挙げられる。また、アルミニウム塩(アラム)NLRの一つであるNLRP3インフラマソームを活性化することが報告されている。

日本で用いられているアジュバント(2011年時点)

 現在、日本で臨床使用されているのは主にはアルミニウム塩(通称アラム)であり、最近になり幾つかの新規アジュバント(AS01AS04)が新たに承認使用されるようになったにすぎない。アラムのアジュバント効果は1926年にGlennyらによって発見され、1934年にはワクチンアジュバントとしてヒトのジフテリアトキシンのワクチンに添加された。アラムの作用機序に関しては、アラムに吸着したワクチン抗原が接種部位において抗原を徐々に長時間放出し続けることで、免疫系を刺激する「depot効果」であると考えられていた。しかしながら、近年の自然免疫研究の発展により、アラムのアジュバント効果には、前述したNLRP3インフラマソームの活性化、レセプターの非依存的なアラムの取り込みによる樹状細胞の活性化、プロスタグランジンなどの脂質メディエーターの誘導、アラムによって傷害を受けた細胞から遊離した宿主DNAによる自然免疫系の活性化などが示されている。いずれの作用機序においても、自然免疫の活性化が重要であることが報告されている。

 アラムアジュバントは80年以上、多用途に使用されているアジュバントであり、日本においてもジフテリア・百日せき・破傷風ワクチン(三種混合ワクチン、DPTワクチン)のアジュバントとして添加され、幼年期から接種されている。アラムアジュバントは現時点では経験的にも安全なアジュバントであると言える。

意見:

 1)今回依頼された主たる質問である、アルミニウム塩アジュバントにおけるリン酸塩の役割と容量、またその比による人体への影響ですが、まず簡単なお答えとしては、そのような内容の研究、臨床上のエビデンスは存じ上げませんし、私のほうでは少なくとも把握しておりません。

 個人的な見解として、上記1)の補足をさせていただくならば、まず、作用機序からも大きな差は生まれにくいと思います。アルミニウム塩には多種多様の塩、そして製剤の形状があることが知られていますが、「リン酸アルミニウム塩」の特徴は、他のアルミニウム塩に比べタンパク抗原との相互作用が少ない傾向がある点です。抗原と結合能が低ければ免疫原性が低い、ということにはなりませんし、逆に混合ワクチン中のHBV抗原への抗原性が低かったものをリン酸塩を増量したところ、「一貫した免疫原性が得られる」というエビデンスの説明理由になる可能性もございます。リン酸塩の増量により、抗原との結合能が低下することが予想されますが、これにより、安全性に重大な懸念が生じるものとは、通常考えにくいと思います。

 2)アジュバントにおけるリン酸モル比の変更、バイアルからプレフィルドシリンジへの変更など、定期接種に使用できるワクチンとしての位置付けを妨げるほどの問題は存在しないと私は考えます。特に小児への更なる治験(それも数百人程度の追加データでは意味のある判断は困難)結果を要求するロジックが見つかりませんし、日本人特有の有害事象を検出するつもりならば販売後調査などビジランスの強化のほうが有効だと考えます。

 3)むしろ、承認されているHBVワクチンの中で有害事象は大して変わらないのにヘプタバックスⅡの免疫原性が低め、というデータが私は気になります。今回の臨床経験の規模から判断し、有効性に関する差異に関して定量的な評価は難しいのではないでしょうか。

 4)また、ワクチンの免疫原性や有効性、有用性において、容量依存性が余りなく、リニアになることの少ないという事実は一般的に受け入れられていると考えます。治験を行い有害事象や副反応の頻度に有意な差がないのであれば、アジュバントのリン酸塩モル比の変更が定期の予防接種に使用できるワクチンとして位置付けることを妨げる理由が見つかりません。

 以上、個人的な見解として述べさせていただきました。石井健国立研究開発法人医薬基盤健康栄養研究所 ワクチン・アジュバント研究センター センター長。

 続きまして、資料8について御説明申し上げます。前回、基本方針部会におきまして、中野委員のほうから、同時接種に対して、懸念を示す御質問がありました。中野委員は今回、残念ながら御欠席でございますので、その点に関して御意見をということで、意見書を同じように頂きましたので、こちらも事務局で読み上げさせていただきます。

 MSD社からシリンジ製剤として販売予定のB型肝炎ワクチンを定期の予防接種に使用できるワクチンとして位置付けてよいか。

 1. 201867日開催の第22回基本方針部会において、製造販売元のMSD社からHexavax7価肺炎球菌結合型ワクチンの併用試験において、同時接種した際に、B型肝炎ウイルスに対する免疫原性が低下した過去の成績が紹介された。日本小児科学会が推奨する同時接種に関する有効性の観点からの懸念事項に該当する可能性もあると考え、その詳細について質問した。

 後日、当該試験が報告されたVaccine 26:3142-3152,2008に掲載の論文“Immunogenicity,reactogenicity,and safety of a seven-valent pneumococcal conjugate vaccine(PCV7)concurrently administered with a fully liquid DTPa-IPV-HBV-Hib combination vaccine in healthy infants”の内容について吟味した。

 その結果、同時接種群と単独接種群でB型肝炎ウイルスに対する抗体保有率(抗体価10mIU/mL以上)に差異はなかった。また、B型肝炎ウイルスに限らず、ポリオウイルスなども獲得された幾何平均抗体価(GMT)の高さに一定の差があった。

 一般に、同時接種による複数の抗原に対する免疫原性の検討では、種類によって獲得された幾何平均抗体価(GMT)が低かったり、その後の追試で逆の結果だったりという報告が存在する。本研究では多価混合ワクチンを用いており、しばしば各抗原に対する免疫原性が不安定になる原因ともなり得る。

 また、製造販売予定のアジュバント中のリン酸塩/アルミニウムモル比の変更された製剤は、海外では、B型肝炎ウイルスに対するより高い免疫原性が報告されている。

 以上を踏まえて、Vaccine 26:3,142-3,152,2008に掲載されたた論文の結果が、当該B型肝炎ワクチンの有効性の懸念事項につながるものではなく、また、同時接種の有効性に疑問を投げかけるものではないと考える。

 2. シリンジ製剤は、従来のB型肝炎ワクチンと比較して、抗原含量、アジュバントであるアルミニウムの含量は変更されていないが、リン酸塩/アルミニウムモル比に関する製法変更、及びシリンジ製剤の剤形追加が行われた。

 我が国で定期接種対象の乳児に対する臨床試験は実施されていないが、医薬品医療機器法に基づいて申請され、審議の上、既承認のバイアル製剤と同一の効能・効果、用法・用量での使用が承認された。現行のバイアル製剤・シリンジ製剤ともに、生物学的製剤基準による一般名は「組換え沈降B型肝炎ワクチン(酵母由来)」であり、予防接種実施規則(省令)で、B型肝炎の定期予防接種に用いるワクチンとして規定されている。ワクチンを含めた医薬品の製法や剤形の変更時は、適切な薬事手続を取った上で、変更前の製品と同様に使用されると理解する。したがって、本製剤は、定期接種での使用が可能と考える。

 上記により、MSD社からシリンジ製剤として販売予定のB型肝炎ワクチンについては、定期の予防接種に使用できるワクチンであり、従来どおり、他のワクチンとの同時接種が可能であると考える。

 事務局より、以上でございます。

○倉根部会長 どうもありがとうございました。今回、事務局から前回の委員会のときに出ました質問に対して、追加の情報の提示がありまして、それからアジュバントというものの考え方については、専門家である石井健先生からの御意見、それから小児ワクチンの専門家でおられる中野先生、今日欠席ですが、中野先生からのコメントも頂いておるわけです。こういうことを基に事務局からは本製剤については、定期接種に位置付けることでいいのではないかという提案が出ているわけですが、委員会として、これに関してどのように考えるかについて、委員の先生方に御意見や質問を頂きたいと思います。よろしいですか。伊藤委員どうぞ。

○伊藤委員 前回、問題提議させていただいたので、いろんな資料を頂いたと思っております。中野先生や石井先生の意見に完全に納得しているわけではないのですが、どんな医薬品でも実際使ってみると随分違う。日本と海外とで違っているものには、ワクチンだけではなくて、リウマチの薬とか安全性の問題で我が国で使えていない薬は様々ありますので、実際使ってみるしか分からないのではないかと思っております。臨床試験のデータから見ると、一般的な医薬品の同等性の基準よりはるかに高い、有効性前の古い製剤に比べて有効性が高いですし、安全性でも大人の成績でも有害事象の局所反応の頻度は、免疫性が高くなれば当然のことですが、前の製剤よりも高く出るのだろうと思います。

 一番は、日本と海外との接種方法の違いがあって、海外は基本的に筋肉内投与ですので、少なくとも局所反応に関しては、我が国のほうが高く出るだろうとは十分に予測がつくと思います。

 そうは言っても、例えばインフルエンザのワクチンで3価が4価になって投与量が増えて、実際に臨床現場で少し痛くなったという話も聞かれはしますが、それでもそれほど問題はなく、今も実施されていることもありますので、杞憂かもしれないと思いますが、事務局から様々な御提案がある中で、安全性の情報に関しては、今後注意深く見ていくんだということで、最低限の担保はされたという気はします。そこはきちんとしていただくことを前提にして新しい製剤、とりわけシリンジ製剤は医療現場から見ると、冷蔵庫がふさがるとかという話はありますが、医療安全的にはいい方向だと思いますので、事務局の提案に対しては賛同します。

○倉根部会長 ありがとうございました。他に御意見はございますでしょうか。多屋委員どうぞ。

○多屋委員 感染研のほうでは、予防接種後副反応疑い報告を毎週集計をして、厚生労働省やPMDAの方々と情報を共有させていただき、3か月に1回は感染研内でも情報共有させていただいていますので、もし新しい製剤が使われるようになった場合は、比較的リアルタイムにその副反応の情報をサーベイランスできるのではないかなと考えております。

 前回の部会のときには、海外でも接種した人がほとんどいないというような御意見だったと思うのですが、今回4ページの資料を拝見しますと、小児でも筋注であるということで、投与方法が違うのですが、1,200万人以上の小児が受けていることが分かったことについては、一つ安心材料になったのかなと思います。

 ただし、伊藤先生のおっしゃるように副反応サーベイランスをしっかりやっていきますので、今日は脇田所長もいらっしゃいますし、情報としてはしっかりサーベイランスをやっていくことでよろしいですか。

○倉根部会長 脇田委員、どうぞ。

○脇田委員 これは小児で、しかも2か月の子どもたちに広く接種するというワクチンですので、非常に慎重にやっていくべきだなとは考えますので、今、多屋先生が言われたように、副反応のモニタリングはしっかりやっていくと。

 それから少ないのですが、バースドーズで24時間以内に打つ赤ちゃんも存在するということです。いずれにしても慎重に、副反応に関してはモニタリングしていきたいと思います。以上です。

○倉根部会長 ほかはいかがでしょうか。多屋委員、どうぞ。

○多屋委員 副反応疑い報告書は、手書きとアプリと両方あるのですが、感染研のほうで、先生方のパソコンで書いていただけるように作ったアプリも準備しておりますので、それですとB型肝炎ワクチンと入れていただいたら、自動的にメーカーがプルダウンで出てきて、選ぶだけで書かなくてもいいようになっているので、報告していただくときの省力化にもつながるかなということと、同時接種で接種された場合は、年月日とかも毎回書かなくてもいいように作り込んでいるので、もしよかったら活用いただければと思います。情報提供までです。

○倉根部会長 ありがとうございます。ほかに、坂元委員、どうぞ。

○坂元委員 細かいことで申し訳ないのですが、このロット番号を改めて記載するお願いですが、我々の範囲では接種記録や副作用情報は必ずロット番号を書くこととなっていると思っていましたので、その前に「従来より予防接種の副反応報告にはロット番号を記載することとなっておりますが」というのを入れた方がよいと思います。何かこれだけ特出しされると、今までは書かなくてよかったのかと勘違いする人がいると思います。従来からロット番号はちゃんと書くこととなっていますので、つまりそこが前段としてあるが、今後も特に注意してくださいということです。この周知を行う相手は、これは接種医に対して周知を行うのか、例えば自治体にも周知を行うのかと、ちょっとそこだけ教えていただければと思います。

○倉根部会長 事務局、いかがですか。

○江浪予防接種室長 今、坂元委員から御指摘があって、そのとおりでして、従来報告されている副反応疑い報告のほう、例えば2017年の1年間を見てみますと、医療機関報告で59例頂いているわけですが、ロット番号の記載、59例のうち56例は記載されていまして、95%既に記載されているところです。しかしながら可能な限りはっきりしていくところで、残りの数%部分について、主に医療機関のほうに関係団体のお力もお借りしながら周知をしていきたいなということです。

 一方で企業報告として集められているデータに関しましては、少しロット番号の把握ができていないケースもあるわけですが、そういった課題に関しても、取組をしながら適切な評価のほうもしていきたいと考えております。

○倉根部会長 坂元委員、どうぞ。

○坂元委員 そこらのことをきっちりやることで、確かに伊藤委員のおっしゃることももっともだと思いますが、このロット番号の記載に、今聞くとやっぱり漏れがあるということで、たまたま漏れたところに副作用が当たってしまうということもありますので、ロット番号の記載をきっちりやることでよろしいのではないかと思っております。

○倉根部会長 事務局どうぞ。

○江浪予防接種室長 ロット番号の記載に関しましては、可能な限りしっかり把握していくことで考えておりまして、それでもなおやはりロット番号がなかなか分からないケースもあるかと思います。その場合には患部分析のような形になろうかと思いますが、そういうことも考慮しながら評価のほうに努めていきたいと考えております。

○倉根部会長 ほかに意見ございますか。よろしいですか。特になければ、ここの議題(2)「B型肝炎ワクチンについて」は、今回のワクチンを定期接種に位置付けることについては、部会としても定期接種に使用できるワクチンとして位置付けることについてもこの委員会としては、了承することとしたいと思います。まずそれに先立って定期接種に位置付けることと並行して、研究班で安全性に関するデータ収集を十分行っていただくということ。それから報告頂く際に、今議論になりましたが、必ずロット番号を記載すると。そのような周知を行っていただくということをきちんとしていただくということにしたいと思います。それでは現在事務局から出ました対応方針について、定期接種に位置付けるということを承認したいと思います。

(承認)

○倉根部会長 ありがとうございます。それではこの内容で進めていただければと思います。ほかに何かその他ありますか。よろしいですか。なければ本日の議事としては以上です。事務局、何かございますか。

○友永室長補佐 次回の開催については、追って御連絡をいたします。事務局からは以上です。

○倉根部会長 それでは、今回第23回の予防接種基本方針部会を終了します。本日も活発な議論を頂きましてありがとうございます。足元が大分悪くなっておるかもしれませんので、是非気を付けてお帰りいただくようにお願いいたします。ありがとうございました。

 

(了)

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