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2018年6月7日 第22回予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会議事録

 

○議事

○友永室長補佐 それでは、ただいまから第22回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会を開催いたします。本日は、御多忙のところ御出席いただきまして、誠にありがとうございます。本日の議事は公開ですが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきます。プレス関係者の方々におかれましては、御理解と御協力をお願いいたします。また、傍聴の方は、傍聴に関しての留意事項を遵守の上、お願いいたします。なお、会議冒頭の頭撮りを除き、写真撮影、ビデオ撮影、録音をすることはできませんので御留意ください。

 続いて、本日の出欠状況について御報告いたします。現在、委員10名のうち9名に御出席いただいております。厚生科学審議会令第7条の規定により、本日の会議は成立したことを御報告いたします。また、本日は、株式会社日本リサーチセンター営業推進本部ソーシャルリサーチグループの河野繭美様、MSD株式会社グローバル研究開発本部クリニカルリサーチ領域統括部長の田中宜之様に参考人として御出席いただいております。

 それでは、議事に先立ちまして、配布資料の確認をさせていただきます。議事次第、配布資料一覧、委員名簿、座席表、資料1から資料5、参考資料1から参考資料3、各委員からの審議参加に関する遵守事項の申告書となっております。配布資料一覧と併せて御確認いただき、不足の資料等がありましたら、事務局にお申し出ください。それでは、申し訳ございませんが、冒頭のカメラ撮りは、ここまでとさせていただきます。御協力をお願いします。なお、これ以降は、写真撮影、ビデオ撮影、録音をすることはできませんので、御留意をお願いします。

 それでは、ここからの議事進行は、倉根部会長にお願いしたいと思います。倉根部会長、どうぞよろしくお願いいたします。

○倉根部会長 こんにちは。皆さん、本日もよろしくお願いいたします。事務局から審議参加に関する遵守事項等について報告をお願いします。

○友永室長補佐 審議参加の取扱いについて御報告いたします。本日御出席いただきました委員等から、予防接種・ワクチン分科会審議参加規程に基づき、ワクチンの製造販売業者からの寄附金等の受取状況、申請資料への関与について申告いただきました。各委員等からの申告内容については机上に配布しておりますので、御確認いただければと思います。

 本日、調査審議するワクチンは、MSD株式会社が製造するB型肝炎ワクチンを予定しております。中野委員より、MSD株式会社から50万を超えて500万以下の受取について申告を頂いております。本部会に出席し意見を述べることはできますが、B型肝炎ワクチンに関わる議決には加わらない、これに該当いたします。また、宮﨑委員及び田中参考人より、B型肝炎ワクチンの申請書類等の作成に関与しているとの申告を頂いておりますので、B型肝炎ワクチンについての審議又は議決が行われている間、審議会場から退室する、これに該当いたします。この取扱いについて、本部会にお諮りいたします。

 なお、このほか、退室や審議又は議決に参加しない、これに該当する委員はいらっしゃいません。以上です。

○倉根部会長 ただいま事務局から本日の審議参加に関しての報告がありました。中野委員におかれましては、部会に出席し意見を述べることができるが、B型肝炎ワクチンに関わる議決には加わらないということに該当します。それから、宮﨑委員及び田中参考人におかれましては、B型肝炎のワクチンについての審議又は議決が行われている間、審議会場から退室することに該当します。しかし、実は参加規程の中に、審議会場から退室するという取扱いについては、当該委員の発言が特に必要であると部会が認めた場合においては、出席して意見を述べることができるとなっています。宮﨑委員におかれては、臨床・研究を通じてワクチンに大変造詣の深い先生でいらっしゃいますし、それから、田中参考人は、当部会からB型肝炎ワクチンについて、資料の説明をお願いしていることから、退室せずに審議に御参加いただくと、ただ、議決の部分については加わらないということを御提案し、それがこの部会として議論を進めていくに当たって良いのではないかと考えておりますが、いかがでしょうか。

(異議なし)

○倉根部会長 それでは、委員から同意を得ましたので、そのような形で進めたいと思います。よろしくお願いいたします。

 では、議題1、「B型肝炎ワクチンについて」です。資料1については事務局から、資料2は、田中参考人から続けて御説明いただくことにいたします。まず、事務局にお願いします。

○黒崎予防接種室長補佐 資料1をお手元に御用意ください。MSD社の製造するB型肝炎ワクチンについてです。今回、このような議題を挙げさせていただくに至った経緯を御説明申し上げます。

 経緯です。1986年、MSD社製造のB型肝炎ワクチンが米国で承認を受け、その2年後、1988年には日本でも承認を受けて現在に至っているところです。2000年にヨーロッパにおいて6種混合ワクチンの発売が開始されておりますが、その6種混合ワクチンと肺炎球菌ワクチンであるPCV7を同時接種した場合に、B型肝炎の免疫原性の減弱というものがあるということに、欧州医薬品委員会が懸念を示したというところから、米国メルク社としても原因究明に努めていただいたと。その後、原因が解明できなかったこともあり、予防的措置として、6種混合ワクチンの販売を一時停止したと聞いております。その過程において、アジュバント、アルミニウムヒドロキシフォスフェイト硫酸塩のリン酸塩/アルミニウムモル比をこれまでの2倍に変更することで、一貫した高い免疫原性が得られるということを見いだしたことから、アジュバントに関する製法変更を行うことになったということです。

 一方で、B型肝炎の単抗原ワクチンについては、免疫原性について減弱するというデータがない旨、欧州医薬品委員会に提出し、問題ないということで了承されていたということですが、上記の製法変更を、こちらの単抗原ワクチンのほうにも適用することとし、欧州医薬品委員会もこれに同意したということがありまして、2008年には単抗原ワクチンの製法変更が欧州で承認されております。

 2011年の段階で日本においても同じようなことを申請することになったわけですが、欧米向けの製剤と、日本向け製剤においては液の量が異なるということがありますので、品質面においての同質性、同等性の検討に加えて、我が国での臨床試験を開始したと聞いております。こちらの経緯に関しては、この後、田中参考人より詳しくお話いただけるものと思います。また、医療現場からのニーズに応える形で製法変更の開発と変更をして、プレフィルドシリンジ製剤としての開発も行われ、201712月に我が国でシリンジ製剤の剤形変更も含めた承認がなされているところです。

 この後、田中参考人に御発表していただいた後、論点として、従来のB型肝炎ワクチンと比較して、抗原の含量、アルミニウムの量は変更されておりませんが、リン酸塩/アルミニウムモル比の変更に関する製法変更及びシリンジ製剤の剤形追加が行われましたことから、今後、本剤をB型肝炎に対する定期の予防接種に使用できるワクチンとして位置付けてよいかについて、御審議いただきたいと思います。事務局からは以上でございます。

○倉根部会長 それでは、田中参考人に御説明をお願いいたします。

○田中参考人 本日はお時間を頂き、ありがとうございます。弊社、組換え沈降B型肝炎ワクチン(酵母由来)ヘプタバックス-Ⅱの201712月に剤形追加の承認を頂いたシリンジ製剤について、本日はお話をさせていただこうと思います。私は、MSD株式会社グローバル研究開発本部クリニカルリサーチ領域統括部長をしております田中と言います。どうぞよろしくお願いいたします。

 本日のアジェンダですが、まずはシリンジ製剤の開発の経緯、先ほど概説がありましたけれども、もう少し詳細に製法変更の内容とか、剤形追加について御説明させていただこうと考えております。その後、国内で行われた臨床試験(062試験)について説明させていただいた後、最後に製品紹介として、組成・性状、製品写真等をお示しさせていただきたいと考えております。

 シリンジ製剤の開発経緯の中の製法変更の部分です。先ほど説明にありましたように、2005年に欧州医薬品委員会(CHMP)において、ワイス社が行ったHEXAVAC、これは6価の混合ワクチンでして、欧州域内で販売されていたものです、ジフテリア、破傷風、百日咳、B型肝炎、ポリオ及びヒブの成分を含む6種混合ワクチンとなっておりますが、それと、プレベナー7の併用試験において、B型肝炎抗体が少し低かったということが懸念として上がりました。その後、予防的措置としてHEXAVACの販売を一時停止するという勧告を受けました。

 免疫原性が低い原因として、製造品の品質のばらつきというものがCHMPのほうから言われましたので、本社のほうでそちらを徹底して調査いたしました。当時はSanofi-PasteurMSDが合弁会社を作っておりましたので、その合弁会社が製造販売業者としてこの調査を行ったということになりますが、残念ながら、ばらつきの原因に関しては特定できなかったということです。

 その原因の調査をしている中で、非臨床の実験でアルミニウムヒドロキシホスフェイト硫酸塩のホスフェイトの部分、リン酸塩とアルミニウムのモル比を2倍に変更するということで、ロットのばらつきの高いレベルのところで安定して製造できるのではないかということが見いだされましたので、このための製法変更を行うということになりました。

 同時期に製造されている単味のB型肝炎ワクチン、これはヨーロッパではHBVAXPROと呼ばれているものですが、そちらについても、もちろん安全性、免疫原性について調査を行いましたけれども、同時期に行われた臨床試験等々の有効性・安全性を見ましても、特に免疫原性の減弱や安全性の懸念等々は、単味の抗原に関しては見られなかったということです。しかし、Sanofi-Pasteur MSDとしては、より製剤を最適化するという目的のためにHBVAXPROの製法変更、先ほど申しましたアルミニウムアジュバントのリン酸モル比を、リン酸とアルミニウムモル比を上げるという製法変更を、ヨーロッパに、CHMPに提案しまして、2008年に欧州において承認を得ております。

 次に、この製法変更に当たりまして、もちろん2つの製法というのをずっと続けるというよりは、この新しい製法に世界的に統一するという動きの中にありまして、本邦でもその製法変更製剤というものを開発するということになりまして、医薬品医療機器総合機構と、2回に及ぶ面談を実施しております。我々のほうからは製剤の品質特性面から同等・同質であるという旨を、最初、20107月に行った医薬品品質相談で主張しましたけれども、やはり製剤の違いということがありまして、そこにお示ししておりますが、ヒトにおける免疫原性、安全性への影響を評価する必要があるという御指導を頂きまして、臨床試験の実施が必要という御助言を頂きました。これに従いまして、弊社は、20112月に医薬品第Ⅱ相試験終了後相談を行いまして、062試験、国内臨床試験のデザインについて合意して、201112月から201211月にかけて、062試験を日本人若年健康成人を対象として実施しました。

 次に、剤形追加に関してですが、製法変更製剤の開発の過程で、当初は、バイアルでの開発を考えていましたけれども、医療現場からのニーズに対応するために製法変更製剤をプレフィルドシリンジ製剤として開発すると社内で決定しまして、加えて、0.25mLの製剤も開発することとしました。現場からのニーズと申しますのは、やはり利便性の高いプレフィルドシリンジ、既にシリンジの中にワクチンが入っている剤形のものが良いというお声であったり、今、10歳未満の方々への接種というものは0.5cc0.5mLの製剤の中の0.25mLを抜き取って、あとは廃棄するということをお願いしているのですが、やはりもったいないと、0.25mLの製剤が欲しいという声も多数聞いておりました。あと、誤接種・過量接種のリスクを軽減したり、もう1つは、バイアル製剤は、ラテックスがキャップの部分に使用されていますので、先生方の中からラテックスアレルギーに対する御懸念というものも聞いておりましたので、このシリンジ製剤にするときにラテックスフリーの製剤を作るといったニーズを満たすという意味で、20171月にシリンジ製剤、0.5mL0.25mLの製剤の剤形追加の承認申請をしまして、201712月に承認を頂いております。

 次に臨床試験(062試験)についてです。簡単に説明させていただきます。日本人若年成人を対象として製法変更製剤の安全性と忍容性及び免疫原性を製法変更前製剤、ヘプタバックス-Ⅱと呼びますが、これと比較する無作為化、多施設共同、一部二重盲検比較試験を実施しております。主要目的は、7か月目、つまり、3回接種後1か月目の抗HBs抗体価が10mIU/mL以上、このスレッシュホールドを超えた被験者の割合、セロプロテクションレート(SPR)というものを計算して、この値をヘプタバックス-Ⅱ皮下注接種群と比較する非劣性試験という形のデザインにしております。当然ながら安全性と忍容性に関しても、製法変更製剤とヘプタバックス-Ⅱを比較するということを行っております。2035歳の若年成人が、製法変更後皮下接種群とヘプタバックス-Ⅱ皮下接種群、それと、製法変更後製剤の筋肉内接種群、この3群に331の比率で無作為に割り付けられました。ワクチン接種スケジュールはヘプタバックス-Ⅱと同じ、1日目、1か月目、6か月目の3回としております。

 こちらが組み入れられた被験者のデモグラフです。ほぼ均等に割り付けられておりますが、製法変更製剤皮下接種群の女性の割合が56.6%、ヘプタバックス-Ⅱ皮下注群と、製法変更後製剤の筋肉内注射群は45.3%、44.7%ということで、製法変更後の皮下注接種群の女性の割合が少し多くなっておりますが、それ以外は均等に割り付けられております。

 こちらが、臨床試験におけるプライマリーエンドポイントである免疫原性の試験結果です。SPRですが、製法変更後製剤の皮下注接種群で91.6%、ヘプタバックス-Ⅱの皮下注接種群で82.6%、製法変更後製剤筋肉内接種群で98.7%ということでした。製法変更後の皮下注接種群とヘプタバックス-Ⅱの差は8.9%で、95%信頼区間の下限が3.0ということで、非劣性マージンを-10%に置いておりましたので、それより上にあるということで、非劣性が証明されたという形になっております。

 付加的ではありますが、GMTに関しては、製法変更後皮下注接種群において231.4、ヘプタバックス-Ⅱ皮下注接種群において91.2、製法変更後の筋肉内接種群は1,064ということで、こちらも付加的ではありますが、筋肉内接種群はSPRGMTともに皮下注接種群に比べると高い値という形になっております。

 安全性の結果です。製法変更後皮下注群と、ヘプタバックス-Ⅱ皮下注群の間で大きな差はありませんけれども、数値的には製法変更後の皮下注接種群のほうが、やや有害事象が多いという形です。重篤な有害事象は認められておりませんし、死亡例に関しても認められておりません。1例、中止症例が出ておりますが、こちらは製法変更後皮下注接種群でして、出た有害事象としては、下痢、疲労、頭痛、発熱、注射部位の紅斑及び腫脹ということで、全て副反応という判定を受けております。

 次に、局所の有害事象に関してもう少し詳しく見たものです。注射部位の有害事象としては、ほとんどが軽度若しくは中等度のもので、重度のものは製法変更後に1例のみという形になっています。疼痛に関しても製法変更群のほうが69.5%、ヘプタバックス-Ⅱの皮下注群が62.2%という形で、若干、製法変更群のほうが多いですが、紅斑、腫脹の所を見ると、ほとんどの症例が1インチ、つまり2.5cm程度の紅斑及び腫脹を認めていまして、全ての紅斑、腫脹は軽快しておりますので、臨床的にはこの2群の差というものは大きなものではないと考えております。製法変更後製剤の筋肉注射群は全体的に低い、安全性の有害事象の発生頻度としては他の群に比べて低くなっております。

 安全性です。こちらは注射部位以外の有害事象、つまり、全身性の有害事象ということで、頻度の高い順に、頭痛、発熱、倦怠感ということが出ています。製法変更後の皮下注群とヘプタバックス-Ⅱ皮下注群を比較すると、ほとんど変わりません。こちらのほうは発熱に関しては、ヘプタバックス-Ⅱ群のほうが少し高めに出ています。こちらは口腔内最高体温を見てもヘプタバックス-Ⅱのほうが少し高いという結果になっておりますが、臨床的には差のない結果だと考えております。

 062試験のまとめです。国内第Ⅲ相試験において、抗体価、HBs抗体及びHBc抗体陰性の若年成人に製法変更後製剤の皮下注を3回行いました。製法変更後製剤の皮下注群の抗HBs抗体が10mIU/mL以上の被験者の割合、SPR91.6%でして、製法変更前のヘプタバックス-Ⅱの皮下注群と比べて非劣性でした。製法変更後の製剤の安全性はヘプタバックス-Ⅱとほぼ臨床的に同様であり、製法変更がその製剤に対する安全性に影響しないというように考えております。

 最後に製品の紹介と、組成・性状です。こちらはバイアルとシリンジを比較しています。見ていただいて分かるように、容量、含量、添加物ともにバイアルとシリンジ製剤で変更はありません。もちろん0.25mL製剤は全て半量になっているという形です。

 こちらが製品紹介です。製品写真、保存期間、有効期間ですが、バイアルのほうは、貯法は遮光、10℃以下、凍結を避けるということになっています。有効期間は検定合格日から2年、最終有効年月日は外箱に表示という形になっています。下段がシリンジ製剤です。貯法は遮光、28℃、凍結を避けるということになっています。有効期間は製造日から24か月、最終有効年月日は外箱に表示という形になっています。

 以上、我々の製法変更後の製剤に関して、説明をさせていただきました。シリンジ製剤になるということで、より利便性が増すということもあります。是非、本ワクチンを日本の皆様の肝炎予防のために活用いただけることを、弊社としては希望しております。以上です。

○倉根部会長 どうもありがとうございました。今、事務局及び田中参考人から御説明を頂きましたが、御意見、御質問はありますか。

○伊藤委員 試験結果を大変面白く見せていただきました。このワクチンですが、皮下と筋注の両方をおやりになっていて、筋注のほうが明らかに抗体価が高く、有害事象も少ないのです。しかし、これを我が国で使うときは皮下注を前提にされるのでしょうか。ヨーロッパは多分筋注でやられていて、その成績をもって皮下注でというのは、明らかに有害事象が多く、かつ、この成績を見る限り、有意差が付くくらい、はっきり抗体価の上がりが悪い方法を推奨するというのは、ちょっとどうかなと思います。

 もう1つは、これは定期接種の話で出てきていますけれども、もともと定期接種は小児ですよね。しかし、これには小児に関する臨床試験結果が提示されてないのです。それで定期接種の議論をここでされるのかということについて、教えていただけますか。

○田中参考人 まず前者においてですが、一応添付文書上は筋注も皮下注も、どちらも選んでいただけるようになっております。日本の今のプラクティスがどちらかという問題があるとは思いますけれども、実際に我々も試験計画段階では、筋注での比較を提案したのです。しかしPMDAとの相談の中で、やはり皮下注のほうが実臨床では多く使われているのではないかということだろうと思うのですが、皮下注での検討に落ち着きました。ただ、海外データと比較する上では、やはり海外が筋注で行っているということがありますので、筋注のアームも1つ設ける、そのことによって、海外の成績とブリッジするという発想でデザインしております。

 小児の試験成績に関しては、同様の試験が海外で行われております。製剤の用量は倍量になっていますけれども、抗原量は同じですし、小児で製造変更後と製造変更前の比較を行っており、そこでは非劣性が証明されて論文にもなっております。本日は用意しておりませんが、そちらのデータも提示することは可能だと考えております。

○伊藤委員 余り納得できる話ではないのです。というのは、小児に関しては海外での開発が筋注だけであるとすれば、ブリッジはかかりませんよね。どのようにお考えなのでしょうか。

○田中参考人 国内の試験で両製剤の品質が同じだということを示すのが、基本的な目的でしたので、それが示されることで基本的に同じ製剤と考えるという形で、ここまで開発を進めてきました。成人の結果ではありますが、それをもって両方の製剤は同等、同質であるという考え方に立っております。

○伊藤委員 小児科の先生方がたくさんいらっしゃるので、私が言うことではないと思うのですが、「大人の成績をそのまま子供に当てはめられます」と言われて、皆さん納得されるのか、多少気になります。

○倉根部会長 ほかの委員、いかがでしょうか。データとしてはあるけれども、日本におけるデータではないということですね。

○田中参考人 はい、そうです。

○坂元委員 筋注のN94というのは、筋注を選択しない人が多かったのか。この割付けが変更製剤前のヘプタバックス-Ⅱと、変更後の皮下注が279278で、筋肉注射が94という数の違いは、どのような形で生じたのでしょうか。お教えいただければと思います。

○田中参考人 こちらは試験デザインで説明させていただいたように、一応メインは皮下注での比較で構わないということでしたが、弊社のほうでやはり筋注のデータも欲しいということですから、一応331で割り付けるという形で試験をデザインして行っておりますので、その中で出てきた数字だと考えていただいたらよろしいかと思います。

○倉根部会長 ほかにいかがでしょうか。

○釜萢委員 これは事務局に教えていただきたいのですが、海外における小児に対する筋注のデータをもって、我が国においては成人の皮下注のデータをもって小児に接種するということを決めることに、事務局としては特に問題はないと思っておられるのかというのが1つです。

 もう1つは、これまでB型肝炎のワクチンは皮下に打つようにしてきましたが、添付文書に「皮下と筋注」と書かれた場合に、実際の現場ではどのように対応したらよいかということについて、事務局としてはどうお考えになるのか教えてください。

○倉根部会長 事務局、いかがでしょうか。

○江浪予防接種室長 今回のB型肝炎ワクチンの案件に関して、この審議会におかけしているのは、基本的に同じ製剤の一部変更承認のようなものであれば、自然に認めていただくというところでいけるだろうなと。今回、リン酸塩/アルミニウムモル比を変更するということで、新規承認のような形になったところで、この部会で改めて御議論いただく必要があると考えております。ただ、参考人のほうからも御説明があったとおり、基本的にこのワクチンの安全性・有効性に関しては、薬事承認の審査の中で確認していただくものだと考えております。そういった意味でこの製剤については、薬事承認を踏まえた上で定期接種のワクチンとして使うことについて、直ちに問題があるとは考えておりませんが、念のためにこの審議会でも御議論を頂ければということです。その接種方法に関しても同様に、薬事承認の内容を踏まえてということになりますので、医療現場のほうで接種を選んでいただくという形になろうかと考えております。

○倉根部会長 いかがでしょうか。今の事務局の御説明というのは、田中参考人にも伺いたいのですけれども、薬事承認の過程の中では当然、我が国において0.25を皮下でやっていないということ等の議論というか、質問と言ったほうがいいですかね、それがあったと思うのです。そこは承認の過程ではどのようになっていましたか。ここで承認のことを繰り返すわけではないのですが。

○田中参考人 今、予防接種室長から説明がありましたように、基本的には非常にマイナーなアジュバントの製法変更という理解で、最初は臨床試験なしで品質的な部分で説明できるのではないかと考えておりました。ところが、複合原料は一緒ですけれども、処方、剤形が日本のほうは半分になっていますし、ヒトでの免疫原性も確認しておいてほしいということで、一応念のために。我々の審査過程の中では、あくまでも同一の品質のものということを、どういうように証明するかというところに立って議論が進んでおりましたので、小児の接種群でどうだという議論は、余り活発には行っていなかったというように記憶しております。

○坂元委員 皮下注とヘプタバックス-Ⅱの間は、二重盲検という形でやられていますが、3番は筋注なので盲検というわけにはいかないと思うのです。この被験者には、米国の標準接種は筋注であるということを説明した上で筋注をやったのか、それとも説明しないでやったのかという点に関してお教えいただければと思います。

○田中参考人 先ほども申しましたように、あくまでも同一の品質であるということを証明するという立場で行っておりました。基本的には日本の添付文書に沿う形で行うという説明をしておりますので、皮下注と筋注の群があるという説明のみで、米国でどのような接種経路が標準かということは、インフォームドコンセントの中には盛り込んでおりません。

○釜萢委員 日本でこれをどうするかという先ほどの議論は、まだこの会で結論が出ていないというように認識しております。そのことも踏まえ、私は専門ではありませんが、アルミニウムとリン酸のモル比の変更というのは、どういう理由で抗体が上がるようになったと判断しておられるのですか。

○田中参考人 こちらの変更に関しては、まずはリン酸の電荷ということもありますけれども、リン酸を増やすということで、陰性にアジュバントがチャージするのです。簡単に言うとダマになりにくくなって、分かれやすくなると言いますか、そういうことで表面積が増えて、アジュバント効果が上がるというように考えております。あくまでも理論的な問題ですけれども、そういった理由でリン酸を増やすという発想になっていると理解しております。

○釜萢委員 これまでにも同様の事例があるのですか。

○田中参考人 ほかの製剤でも、やはり同じような検討がなされているということです。

○倉根部会長 ほかにいかがでしょうか。

○宮﨑委員 基本的なデータとして、今日示していただいた安全性・有効性のデータの中で、有意差があるものがどれで、有意差がないものがどれですか。

○田中参考人 安全性のデータでは、基本的に両群間に有意差のあったものはありません。

○宮﨑委員 有効性はいかがですか。

○田中参考人 有効性は、非劣性の検定をしております。有意差の検定はプロトコル内で規定しておりませんので、あくまでも非劣性の検定を行うという目的でやっております。優越性などを見るということでしたら、それはそれで試験デザインをし、十分なパワーを持たせないと言えませんので、この試験の結果から言えるのは、あくまでも非劣性のみと考えております。

○宮﨑委員 もう1つよろしいですか。皮下注と筋注の話が出ていました。もともとは筋注のほうがいいかもしれないのですが、日本では従来からワクチンをずっと皮下注でやってきたという歴史があって、逆に筋注をどう入れていくかという課題が大きく残っているわけです。もしも、この製剤が皮下でも筋注でもいい、それも年齢制限もないとすると、国としては定期接種実施要領等を書き直すのでしょうか。

○倉根部会長 事務局、いかがでしょうか。

○江浪予防接種室長 まずMSD株式会社のほうから、用法・用量に関する変更点について、御説明をお願いしたいと思います。

○田中参考人 用法・用量に関しては、現行のヘプタバックス-Ⅱと同じで、成人に関しては皮下注、筋注で0.5ccですけれども、10歳未満の方に関しては、0.25を皮下注のみとなっております。

○江浪予防接種室長 今の御説明の上に立ってですが、従来の予防接種実施要領についても、年齢によって接種方法が異なる場合があるということを踏まえての記載にしております。この部分に関して変更がないということであれば、この部分の変更そのものは必要ないかと考えております。

○釜萢委員 先ほどの田中参考人の説明では、いかにも小児に対しても筋注ができるように添付文書が作られるような説明だったから、私はびっくりしたのです。小児に対して筋注という選択肢がないのであれば、実施要領などを変える必要は全然ないわけです。

○田中参考人 私の説明不足で申し訳ありませんでした。小児に関しては皮下注のみということになっておりますので、そのように御理解していただければと思います。

○中野委員 少し異なる質問で、1点お教えください。スライドの3番です。HEXAVACとプレベナー7の併用試験結果において、B型肝炎抗体価が低かった懸念に関してお教えいただきたいのです。これは単アームで併用試験をやって、抗体価の獲得が不良だったのか、同時接種とHEXAVACだけの試験をやって、HEXAVACにおけるB型肝炎の抗体価の上昇が、プレベナー7の同時接種を行った群のほうが悪かったのか、これについてお教えください。

○田中参考人 こちらは2000年、2001年にヨーロッパで行われた臨床試験で、今分かるのは、post-dose3post-dose42つの群を作って、免疫原性を見ているというデータ、これは今持ち合わせているのですが、それ以上の情報は、今日は持ち合わせておりません。

○中野委員 了解いたしました。この記載と資料1の「同時接種群で」という記載ばかりが目に付くと、私たち日本小児科学会としては、同時接種は抗体価、有効性の点でも懸念がないということで推奨しておりますので、ここは明らかにしておいたほうがいいと思い、質問させていただきました。

○宮﨑委員 薬事承認が下りているということですので、任意にしろ定期にしろ使われていくことになると思うのですが、今回、小児の臨床試験はありませんので、その際に集中的な市販後調査が、小児で行われる予定があるかどうかをお聞かせください。

○田中参考人 今のところは求められておりませんので、これに関して特に集中的に市販後調査をするという計画はありません。

○倉根部会長 聞き忘れたか、先ほどおっしゃったかもしれないのですが、小児での0.25の有害事象は増加してない、対象とすべきものと同じというように考えてよろしいのですか。

○田中参考人 海外の臨床ということですか。

○倉根部会長 はい、そうです。

○田中参考人 はい、ほぼ同様であったと記憶しております。

○倉根部会長 ただ、それは筋注であったという話ですね。ほかに意見はいかがでしょうか。専門の立場から多屋先生、何かありますか。

○多屋委員 それでは1つ。このシリンジ製剤が市販されたら、バイアル製剤と併用して世の中に存在するものなのか、もうバイアル製剤は日本では使われなくなる方向になるのでしょうか。

○田中参考人 発売してから市場がどのように変化していくかも含めて見ていかないと。我々が急にバイアル製剤を撤収してしまうということは、もちろんありません。その動きを見ながらです。できればシリンジ製剤のほうに移行していければとは考えておりますが、どの時期にどういうようにというのは、実際の使われ方を見ながら判断していこうと考えております。

○多屋委員 ということは、しばらくは小児科の先生がどちらを選んでもいいようになっているということですか。

○田中参考人 はい。

○多屋委員 分かりました。

○倉根部会長 ほかにいかがでしょうか。池田委員、いかがですか。

○池田委員 普通に承認されて、有効性・安全性に関しては検討済みですので、特にそれに関しての意見はありません。

○倉根部会長 山中委員、何かありますか。

○山中委員 今までいろいろと御質問がありましたので、特にそれに加えての質問や意見はありません。

○釜萢委員 医薬品としての承認のステップと、当予防接種基本方針部会の役割が違いますので、承認のところに何か意見を申し述べるということではないけれども、基本方針部会として今日御説明を頂いた内容では、甚だ不十分、皆さんこれで良いというようには、なかなか思えないのではないだろうかと感じます。この製剤は優れているということで、安心して小児科の医療現場で定期接種に採用されるようにするためには、それをどういうようにするか、事務局とも相談をして。例えば、市販後調査をしっかりやって結果を早く出すとか、何か工夫をしないと、基本方針部会としては「これでいいですよ」とは、なかなか言えないのではないだろうかと私は感じますが、いかがでしょうか。

○倉根部会長 ほかにいかがでしょうか。

○伊藤委員 やはり海外のデータが筋注のデータで、特に1歳以下の子供に対しての皮下注のデータが全く欠如した段階で、いきなり「定期接種でいいですか」と言われても、なかなか勇気の要ることかなと思います。何らかの形で企業の方に対応していただかないと、ちょっとつらいんじゃないかなと思います。本質的には筋注と皮下注の日本の問題があるとは思っていますけれども、そうは言ってもワクチンに関しては慎重にならざるを得ない状況が今も起こっているので、委員の人たちと少し議論せざるを得ないのではないかと思いました。

○倉根部会長 事務局、何かコメントはありますか。

○江浪予防接種室長 資料を御用意する際に、今回の変更内容に関しては、アジュバントにおけるリン酸塩/アルミニウムモル比の変更であって、従来のB型肝炎ワクチンに関する安全性・有効性の議論の上に立ったものであるという理解で資料を御用意いただいた関係で、安全性・有効性に関する委員の皆様方の懸念を大分強く喚起してしまったかなと考えております。一方で、このワクチンに関しても経緯から御説明申し上げたとおり、2008年あるいは2011年に製造変更が承認されている中で、今回、日本で臨床試験を行ったための今の時期ということです。そういった意味で安全性・有効性に関する説明は追加で情報提供を、部会の先生方にしっかりと差し上げなければいけないと考えております。そうした追加での情報提供を前提とした上で、部会としてこのワクチンに関する使用の是非に関して、御意見を頂ければと考えているところです。

○倉根部会長 今おっしゃった追加のデータというのは、仮に今度どのようなものがありますか。

○江浪予防接種室長 日本での小児における追加の臨床データということになりますと、ここからまたどれほど掛かってということになってしまうのではないかと思いますが、薬事法における有効性あるいは安全性の確認の議論の中で、有効性・安全性について、一体どういうように担保するかということは、議論が尽くされていると思いますので、その点に関してはMSD株式会社からも追加で御説明を頂きたいと思います。

○倉根部会長 田中参考人から、何かコメントはありますか。

○田中参考人 繰り返しますが、今の日本の小児のデータというのは、品質面での相談の中から出てきたもので、成人のデータの臨床試験しかやっておりませんので、小児のデータを出すことは難しいと思います。もちろん海外のデータが必要ならば、それを提出することは可能ですが、日本人で皮下接種ということになると、現状では難しいと言わざるを得ないと思います。

○坂元委員 この接種は製造承認が取れているので、任意であればいかなる年齢でも構わない、つまり、任意であれば10歳以下は筋注は駄目ですよね。ところが10歳以上であれば、筋注も皮下注もOKだということ。そうすると10歳以下で任意であれば、皮下注で使ってもいいという解釈でよろしいのですか。

○田中参考人 我々製造販売業者としては、添付文書どおりに使っていただきたいということしか言えません。その範囲の中で安全性・有効性が担保されているということですので、そういった回答になるかと思います。

○倉根部会長 ほかに御質問はいかがでしょうか。多屋委員、いかがですか。

○多屋委員 特にありません。

○倉根部会長 そうすると今日、宮﨑委員と中野委員に決議に参加いただけないのですが、山中委員を含めて決を採るのか、更に釜萢委員や伊藤委員はどういうデータが必要だとお考えになるのか、御意見を頂けると有り難いと思います。

○伊藤委員 医薬品の開発に臨床データがないというのは。今、坂元先生がおっしゃったとおり、任意では使えるので、定期接種でなければ使えるだろうと思います。我が国ではこの製剤の1歳以下の子供に対する経験が全くないのに、「100万人に打っていいですよと、私たちが責任を持って言えますか」とは言えないのではないかと思うのです。どれぐらいのデータが必要かよく分かりませんけれども、少なくとも定期接種外、任意接種で小児の安全性のデータぐらいは集めてくる、若しくは集めてくることを前提にしない限り、「いいです」とはなかなか言いにくいのではないかと思います。それを定期接種として認める前にするのか、それともPMDAの承認条件というのは余り好きではないのですが、それと同じように、ある程度のデータは後になってきちんと報告するとかフォローをして、有害事象の発現が増えないことを担保しないと、この委員会としてゴーサインを出すのは厳しいのではないかという気がします。

○倉根部会長 釜萢委員はいかがですか。

○釜萢委員 今、伊藤先生のおっしゃったとおりです。

○倉根部会長 そうすると、ここで決を採るのか、あるいは皆様の。多屋委員はいかがお考えですか。今日は7人ですが。

○多屋委員 私がこの資料を見たときは、今の製剤とそんなに大きく変わるものではないと理解していましたので、そんなに懸念材料は持っていなかったのですけれども、今日の議論を聞いていて、データがない中で「100万人接種してもいいか」と言われると、先生方のおっしゃることもそのとおりかなと思いました。大きく変わってないというスタンスだったもので、余り心配はしていなかったのですが、それが今の意見です。

○倉根部会長 そうすると、何か更なるデータが必要になるのではないかという御意見ですか。

○多屋委員 もし、これが定期にならなかった場合に、現在使っているワクチンが世の中からなくなってしまうということではない、併存していくというように先ほど言われていましたので、それだったらすぐに定期に入らなくても、世の中には問題がないと思ったのです。ヘプタバックスがないと子供たちに使うものがないということだと、安定供給の観点でまた問題になってくると思ったのですが、それが大丈夫であれば。何人やったら大丈夫と言えるかどうかは難しいと思うのですけれども、何人かのお子さんで検討してみるというのは必要かと思いました。

○倉根部会長 供給の部分とこれとは少し違うと思いますが。坂元委員はどういうようにお考えですか。

○坂元委員 予防接種法の定期接種は市町村の自治事務であって、基本的に市町村が責任を負ってやるというように法的にはなっております。当然、どのワクチンを選ぶかというのは、多くの自治体では委託している接種医の判断に従うことになっておりますが、2種類のワクチンが出て、この違いは何なのかということを自治体側に求めてくることがあったときに、今まで委員が出されたことを自治体がうまく説明できるかということに懸かっております。今の段階で聞いた範囲では、多分、自治体側は説明に苦慮するのではないかと考えています。

○倉根部会長 池田委員、最後に御意見を頂けますか。

○池田委員 今、PMDAのサイトその他を見て、どのような経緯で承認されたのかなどを確認していたところです。私の意見としては有効性・安全性とその承認について、審査過程で特段重要な指摘はなかったように思います。そうしたことから考えますと、新たなデータをここで再度、企業側に出してくださいとお願いしたところで、多分存在してないと思います。ですから、こういった先生方の御懸念も勘案しますと、やはり市販後に十分な安全性に関する調査をするのと、こういった製剤であるということを接種対象者のほうに十分説明して、納得いただいた上で接種していくのが良いのかなと、個人的には思っておりますが、もちろん臨床の専門の先生方の御意見に従いたいと思います。

○倉根部会長 山中委員はどういう御意見ですか。

○山中委員 説明を伺った際は、製剤として特に大きな変化はないのだろうと思いましたけれども、やはりこれを使用される現場の先生方のお気持ちとか、製剤が変わるということの説明責任が、十分になされることが重要だと思いましたので、本日、早急に「これはいい」と言うより、条件をお願いしてその後にフォローアップをし、きちんとデータを出していただくといったことも必要ではないかと、この場で感じました。

○倉根部会長 そうしますと本日、議決権を有しておられる委員の皆様の御意見を伺うと、今日ここで承認というのは、なかなか難しいというように判断いたしますが、そのような判断でよろしいでしょうか。

○江浪予防接種室長 本日、この製剤に関する有効性・安全性に関して、十分委員の皆様方に御納得いただけるデータの提供の仕方になっていなかったことは、事務局としても大変反省しております。供給に関する御意見もありましたけれども、ワクチンの安全性・有効性の確認の話と、供給の話というのは、どっちがどっちを優先するというものでもないと考えますので、今回、安全性・有効性に関して、多くの不安を委員の先生方にお与えしてしまった点に関しては、どういうようにそれを払拭することができるかということを少し検討した上で、改めて委員の皆様方に御相談したいと考えます。

○坂元委員 今までの説明だと、新たに小児に使って小児のデータを取る計画がないという段階になると、このままストップしてしまう可能性もないわけではないので、自治体としては科学的な判断と言うより、もし定期にやるとすればちゃんと正直に、これに関して日本では小児の治験はないということを付帯条件として開示した上で、接種医の判断にゆだねるというのであれば、それはそれでありなのかなという感じはします。この問題をどう解決していくかということに対して、自治体としては唯一、そういう条件があれば、今までの先生の意見も反映されるし、受ける接種医も受けられる側も、それを承知した上でということになると思います。定期接種には今までそういうことはないのですけれども、それがあれば自治体としても心配しなくて済みます。これは意見です。

○倉根部会長 そうしますと、例えば本日出ていないデータにはどんなデータがあるのか、筋注とはいえ小児に打ったときにどんなデータがあるのか、使ったときにどのような市販後調査が考えられるかも含めて提示していただいて、その上でまた議論ということになるのか。さらに整理の仕方にもよるかと思いますが、メーカーとしてこれに付け加えるデータをどれだけお持ちなのか。それを示していただくのが一番いいのかなと思います。

○江浪予防接種室長 本日の御説明の過程の中で、この製剤に関する安全性・有効性に関して、非常に大きな不安を持たせてしまったかというところは、繰り返しになりますが、大変反省しております。もう一度、安全性・有効性について、どういうように御説明できるかをしっかり整理した上で、改めて委員の皆様方にお諮りしたいと思います。本日の議論はこれ以上、議決まで持って行っていただかなくて結構です。

○倉根部会長 それでは、今日の最初の議題については、更にデータの整理あるいは新たなデータの提示等を含めて、議論することとして、本日については、これを定期接種として承認することはしないというようにしたいと思います。ありがとうございました。

 次に議題2、「ワクチンの定期接種を議論する過程の更なる明確化について」です。これについて、事務局から資料の説明をお願いします。

○黒崎予防接種室長補佐 資料3をお手元に御用意ください。「ワクチンの定期接種化を議論する過程のさらなる明確化」と書かれている資料です。こちらを議題として挙げさせていただくことになった背景について御説明申し上げます。

 これまで、ワクチンギャップの解消に向けて取組を進めてきましたが、今後、新たなワクチンを定期接種に位置付けるに当たっては、強固な科学的論拠に基づきつつ、更なる議論の透明化、明確化に取り組む必要があると考えています。広く接種を促進する疾病・ワクチンに関する検討の進め方については、平成275月の本部会におきまして、参考資料1に基づいた審議を行い、ワクチンが新たに製造販売承認を得た際には、ワクチン評価に関する小委員会において予防接種法上の位置付けに関して審議を行うこと等が了承され、以降、順次検討を行っています。

 現在、定期接種化を検討しているワクチン及びその審議状況等については、平成2912月に開催いたしました第20回予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会におきまして報告を行わせていただきましたが、先般開催したワクチン評価に関する小委員会において、当面、参考資料2に従い検討を進めることとしております。

 ここで、参考資料2を御覧ください。参考資料2のワクチンの名称と委員からの主な意見・審議内容等、ここまでの所が第20回の基本方針部会で出されたもので、これまでの議論の一番最近のところをまとめています。今年の517日、当面の検討の進め方という部分を加えた資料を作成いたしまして、それぞれのワクチンについて、次回の小委員会におきましてヒアリング若しくは研究結果の御報告等を行いまして、議論を進めていくこととさせていただきました。

 資料3にお戻りください。なお、生産・流通部会における業界団体からのヒアリングにおいては、ワクチンの定期接種化を議論する過程について更なる明確化が要望されており、同部会における業界団体ヒアリングの中で行われましたドイツ予防接種常任諮問委員会(STIKO)の委員からのヒアリングにおいては、公的接種化を検討するための標準手順書を策定している等の取組が行われていること等が説明されています。STIKOの標準手順書については、参考資料3としてお付けしています。

 今回、この議題としましては、ワクチンを定期接種化する議論に関しまして、もちろん現在でもしっかりエビデンスに基づいた議論を行っていると考えておりますが、更にそこを強固にしていくことに関しまして、どのようなことを行っていけるのか、更なる明確化を図るために、事務局においては、まず、ワクチン関連団体からのヒアリングは今後も継続するということではありますが、諸外国における取組も参考にしまして、平成275月の本部会で提示した「広く接種を促進する疾病・ワクチンに関する検討の進め方について」の改正の必要性も含めて、本部会において議論を行っていただきたく、そこについて御審議をいただければと思います。事務局からは以上です。

○倉根部会長 ありがとうございました。ただいまの御説明に関して、いかがでしょうか。

○多屋委員 これまで多くのワクチンが新たに定期接種化されまして、数年前とは随分変わってきたのですが、定期接種化がされたことによって、良いこともたくさんあったと思いますので、定期接種化されて、こういう効果が見えたのだということを、しっかり検証することと、また、それによって、もし新たな課題が出てきているのであれば、それについてディスカッションをする機会を設けていただければと思いました。

 もう1つは、こういう基本方針部会のようなところで議論をするに当たって、今は定期的な開催ではなく行われていますが、ある程度、前を見据えて、計画立てて、何か月ごとに開催されるということが決まっていれば、それまでにこういうデータをまとめようとか、計画が立てられるので、できれば定期開催で、もう少し長い時間でもいいと思うのです。そういうことができれば。米国ACIPなどでは、年3回ですけれども、ほぼ1日、2日をまるまる掛けて議論がされているので、そういうこともあってもいいのではないか。以上2点、思いました。

○倉根部会長 先生の今の御意見は、もう少し回数を定期的に増やすべきだという御意見ですか。それとも、1回の会をもう少し長くするということですか。

○多屋委員 そうですね、両方といいますか、ある程度、この日にこの会があるというのが分かっていて、何時間か、もう少し長い時間でもあれば、予定も立てやすいと思うのですけれども。今は時々で、日程調整もすごく大変にされていると思いますので、もう少し頻回にといいますか、少なくとも四半期に1回とか、もう少し長い時間、このときはこのワクチンについて検討するという予定が立てられていると前を見据えられるのかなと思いました。

○倉根部会長 ほかに、いかがでしょうか。

○池田委員 今日、参考資料として配布いただいたドイツの標準手順書というのは、これは、ファクトシート作成の際にこれが有効といいますか、役立つだろうということですか。それとも、この委員会としての議論の際に、何かこういう標準手順書が参考になるということでしょうか。出していただいたこれは、どういうところに反映することを意図して示されているのかを、ちょっと教えてください

○黒崎予防接種室長補佐 今回の標準手順書に関しましては、あくまで御参考にということで提示させていただいたものですけれども、主にワクチンが薬事承認された場合、若しくは薬事承認が準備されている段階のものに関して、これをナショナル・プログラムとして採用していくかどうかという検討の過程を手順書としてまとめたものですので、我が国の場合に、もし同じように考えるということであれば、小委員会におけるワクチンの定期接種化の議論のときに有用なのではないかと考えています。

○倉根部会長 ほかに、いかがですか。

○伊藤委員 もともと、これは生産・流通部会で提示されたもので、池田先生を前にして余り言うこともないのでしょうけれども。STIKOで使われているこのGRADEシステムは診療ガイドラインの作り方そのもので、客観的なデータを用いてエビデンスに基づいて作るのと、もう1つはCOIをきちんと管理すること、その2点が大きいのです。単なる診療ガイドラインを作っているだけではなく、ドイツの場合は、この委員会において、ACIPと同じように、定期接種化に向けてのステップとして使われていると認識しています。それで、今回これを出すに当たって、事務局の方にもお話はしましたけれども、日本は感染研が大変努力をされて、ファクトシートを揺るぎのない形で作られていると思っています。ただ、GRADEシステムを当てはめようとすると、利益相反管理がされているかという点が、もしかすると欠けるかもしれない。

 もう1点、向こうの診療ガイドラインとかは、専門家だけではなくて、一般の方々の意見を聞く機会を必ず持っているので、そういったことに関しては、もしかすると参考になるかもしれない。そういう情報提供としては、意味を持つだろうと思っています。データをきちんと集めて、ファクトシートをお作りになられているという点に関しては、余りこれで改善点があると思ってはいません。

○池田委員 御説明ありがとうございました。私自身がこちらの参考資料を拝見して思いましたのは、確かに、感染研を中心に作られているファクトシートは非常に十分な内容を含んでいますし、プロセスとしても妥当だと思いますけれども、例えば文献のサーチ、何年何月までのものを網羅的に収集したのかとか、そこで得られた文献にこういうことが書いてあるけれども、それはどの程度のエビデンスなのかとか、そういったことについては、確かに今日配布いただいたもののような厳密な評価は必ずしも全部の文献にくっ付いていない。これを配布されたということは、そういった、これはRCTなのか、観察研究なのか、サーベイランスデータなのか、そのレビュー……はどうなのだというようなところを、もう少々そういった視点で定量的に客観的に評価するということが更に望まれるのかなと、勝手に解釈いたしました。

 あとは、ここは確かにGRADEシステムのことが非常に大きく書いてあるのですが、それ以外にも、疾病の負担や費用対効果とかは、実はこのGRADEシステムには載らない別の要素として更にあるというようなことも、この中に書いてあるので、非常に参考になる資料だと思います。是非、小委員会あるいはファクトシートの作成の際に、必要なものについては取り入れていけるといいとは感じました。

○倉根部会長 ほかにコメントございますか。よろしいですか。委員長という立場ではなく、ファクトシートを感染研で作っていたということがありまして、どの文献を主に入れるかというのは、やはりそこに専門家としての読みがあります。文献だとしても、議論が適切、まあ、適切ではないというより十分ではないというものもありましょうから、そこは、どれを入れるか、どれを入れないかという判断は、科学的な目で、専門家の目でやっているということだろうとは思います。どちらかというと作る立場もやっておられる多屋先生、いかがでしょうか。

○多屋委員 ファクトシートは100200個の論文を、全て最初にキーワード検索をして、全ての文献のアブストラクトを読み、その中からファクトを作るために必要な論文についてはフルペーパーを読み、それをまとめていっていますので、確かにアブストラクトを読んだ過程で、この文献を入れようとか、この文献は入れないというのは決めていると思うのですけれども、それを1つずつ、なぜこれを選んだか選んでいなかったかということを求められると、かなり負担が大きいです。本当にそれで十分かと言われると分かりませんが、作成側の立場としては、検索できる限りの文献は全て読んでいる現状となっております。

○江浪予防接種室長 今回、この定期接種化を議論する過程の明確化に関しましては、感染研で作成いただいておりますファクトシートの作成過程を論点にしたいということではありません。どちらかと言いますと、新しく薬事承認を受けたワクチンが、一体どういう感じのプロセスを経て、どういった基準、考え方で定期接種化されるのか、されないのかということの判断について、多屋委員からも少し御意見を頂きましたが、どういうふうに議論のプロセスを、時間的にもある程度明確にしながらやっていけるのかという点を課題として考えて、今回御提示したものです。我が国における定期接種化のプロセスに関しましては、いろいろな御意見はあるとは思いますが、事務局としては、平成25年予防接種法改正以降、審議会の体制も非常に充実した形になっていて、先生方にも御負担をお掛けしながらやってきたものだとは考えていますが、そういった前提の中で更に良くしていくという観点があるとすればどこなのか、この確認も含めて検討したいということです。すみません、御説明申し上げるまでもないとも思いましたけれども、改めてその点を申し上げたいと思います。

○倉根部会長 ですから、今日の議案は、まず、今どこを改めるというものではなく、これまで平成25年から徐々に変えてきた部分があるのだけれども、更にどこを変えるとより明確になっていくかということを少し事務局でも整理してもらい、そして、議論としてここに上げていただいて、ここでまた議論して、進めていきたい、そのプロセスを開始することに関して委員の皆様の了解を得たいと、そういうことです。でありますので、抜本的な改正を、今、提示しているのではなくて、更にどこを変えていくと、より明確に、クリアになるだろうか、それにおいては海外の取組も参考になるだろうし、いろいろな団体と申しますか、いろいろな所からのヒアリングも必要だろうということです。まずは事務局で、どこを変えるかということも整理していただきつつ、そして、このように変えるのがいいのではないかという御提示をここに頂くという、そのプロセスについて御賛同いただきたいということです。

○中野委員 事務局に、1点、お教えください。もちろん、この定期接種化を議論する過程の更なる明確化については賛同いたします。その上で、今、国民の皆さんや医療現場の関心事としては、次はどのワクチンが定期になるのだろうということ、これは結構大きな問題ですし、準備も必要ですし、皆そこに神経を尖らせていると思うのです。この明確化というのは、あくまでも、科学的にも、国民の皆さんの待望論としても、社会的にも、どれが一番順番がいいかという優先順位を付けることなのか、あるいは、今、定期のA類、B類と、ワクチン名ではなく疾病名で定期接種対象疾患が分かれていると思いますが、その枠組みや現在の分類をある程度変えることなども含めての議論なのか、それに関してちょっと教えていただいてよろしいでしょうか。

○江浪予防接種室長 個々のワクチンに関しましては、まず、それぞれのワクチンに期待される有効性と安全性に基づいた科学的な評価を、まず、ワクチン評価に関する小委員会でしっかりやっていただこうということです。本日、参考資料2にお示しておりますとおり、この部会にも御報告申し上げましたが、定期接種化について検討いただいているワクチンがいろいろありまして、それぞれについて現状どういうところまで来ているかということを、表の左から2つ目の列に、また、小委員会でこれからどのように検討を進めていくかを右側に書きまして、先日開催いたしました小委員会で御議論いただきました。それで、どういったワクチンについてどのように定期接種が図られるかということに関しましては、小委員会におきます有効性・安全性の評価を踏まえた上で、またこの部会におきましても御議論いただくということです。

 今回お示しいたしました、プロセスの明確化に関しましては、過去のこの部会の資料ですが、参考資料1「広く接種を促進する疾病・ワクチンに関する検討の進め方について」ということで、どのように評価を行っていくのかを過去1回整理されているわけですが、参考資料1のような手続に関して、より分かりやすく整理する必要があるかとか、定期接種化するときの基準ということで何か明確にできるものがあるのかというようなことで、個々のワクチンの優劣を付ける作業というよりは、どちらかというと、参考資料1のようなものについての議論であると考えています。

○中野委員 ありがとうございます。

○倉根部会長 ですから、プロセスの明確化ということだと思います。それでは、この委員会としては、まずは事務局に少し揉んでもらいまして、またこの委員会に提示いただき、そして、ここで議論することとしたいと思います。今後の進め方のところでも、議論を行うのはここで行うということですので、主語はそこになります。それでは、ここについては了解するということにしたいと思います。ありがとうございます。

 次に、報告事項です。予防接種に関する基本的な計画における記載内容及びこれまでの取組状況について、資料4については事務局から、資料5については河野参考人から説明をお願いしたいと思います。まず、事務局からお願いします。

○江浪予防接種室長 資料4を簡単に御説明いたします。本日は予防接種に関する基本的な計画に関して、そのうち予防接種に要する費用に関する事項というところで、昨年度にワクチンの購入価格に関する調査を行っていますので、その御報告ということです。資料4は、この予防接種に要する費用に関して、予防接種に関する基本的な計画にはどういった記載があるのかを整理し、それに対してこれまでにどういった取組をしてきたのかを整理した資料です。

 「予防接種に関する基本的な計画」を見ていただくと、その第四に、予防接種に要する費用の関係があり、その中でワクチンに関する価格調査の実施が書いてあります。現在の取組は、ワクチン価格調査に関しては、平成24年度に全国のワクチン購入価格を調査いただき、その結果を予防接種基本方針部会に御報告いたしました。また、下線を引いてありますが、本日、平成29年度における全国の医療機関におけるワクチン購入価格について御報告申し上げるところです。

 このワクチン価格調査以外に予防接種費の委託単価等調査というものもあり、それに関しては平成24年度に実施した実績があるということです。本日は、このワクチン価格調査の関係について、調査結果の御報告をいたします。よろしくお願いいたします。

○倉根部会長 それでは、河野参考人、お願いいたします。

○河野参考人 資料5「ワクチン価格調査」報告書に基づいて御報告いたします。1ページの調査概要について御説明いたします。目的としては、ワクチンの実勢価格を把握するということで、こちらの表にある定期接種及び任意接種の疾病に対するワクチンについて、実勢価格を記入していただくという調査を行いました。平成29年度4月以降に、卸売業者から購入した1包装単位当たりの税抜きの購入価格を単価で尋ねています。注意事項としては、複数の業者と取引がある場合は、取引が最も多い業者の価格を回答していただきました。また、時期によって価格が異なるという場合は、直近の購入価格を書いていただきました。また、自治体等から現物支給されている場合もありますので、その場合は価格の記入はなしという形にしています。

 調査対象についてです。まず、こちらの抽出の台帳としては、厚生労働省が全国から定期接種の実施医療機関として情報提供を受けた約67,000施設で、その中から、無作為抽出という形で行っております。抽出に当たっては、住民基本台帳の人口構成比に合わせて、県ごとに分けて、それぞれで無作為抽出を行っております。2ページの頭の所に、発信した数と回収した数をまとめています。全部で67,000施設の中から14,000施設を抽出しております。回収については、約5,800施設、回収率は約40%でした。

 調査方法は、郵送で調査票を送り、3つの回答方法を併用して行いました。具体的には、郵送されたアンケート用紙に記入して返送していただく方法、2つ目が、オンラインでweb上で回答していただく方法、3つ目がエクセルのファイルの中に書き込んでいただき、その電子ファイルをホームページにアップロードして返信していただくという方法を取りました。内訳については、郵送での回収がほとんどということで、9割以上を郵送で回収しました。ちなみに、今回、比較の対象として、前回行った日本医師会の調査があるのですが、そちらはネットでの回収を行っております。調査実施期間は平成301月に行いました。

 本報告書を読む際の注意として幾つか書いているのですが、(5)のデータの集計処理についてです。今回の調査は無記名式で実施しております。そのため、回答の匿名性・機密性を保護する必要から、回答施設への疑義照会は行っておりません。ただし、データが著しくおかしいものについては、こちらの集計資料に基づいてデータの整合性を整える作業はしております。

 実際の回答結果を御報告します。4ページを御覧ください。まず、回答機関の属性ということで、5ページ目以降にまとめています。まず、定期接種実施機関の施設区分ですが、全体の4分の3が入院施設を有しない診療所となっています。開設者についても、医療法人が全体の半分、残りの4割が個人ということで、医療法人と個人を合わせて全体の9割を占めております。

 続いて7ページを御覧ください。定期接種を実施している診療科を尋ねた結果です。内科が65%で最も多く、次いで小児科、整形外科、外科などが上位に挙がりました。続いて8ページを御覧ください。ワクチンなどの取引業者の数、卸売業者は何社と取引を行っているかということで、実際の社数を書いていただいた結果です。一番多いのが1社、続いて2社ということで、1社と2社を合わせて65%を占めています。1社から3社を合わせると83%ということで、この辺が中心の数になっております。

 9ページは、自治体からの現物支給の有無について聞いた結果です。こちらで御覧いただきますと、現物支給を受けているのが、全国で9%という結果になっております。こちらを県別に見た結果が下の表ですが、県によっては自治体からの現物支給率が高い所もあり、長野県、神奈川県、栃木県は、現物支給を受けている割合が20%を超えています。

 続いて10ページを御覧ください。こちらは、実際のワクチンの商品名を並べて、回答してくださった機関で使っているものに○を付けてもらった結果です。こちらの報告書では具体的な商品名を伏せているのですが、個々に聞いた結果になっています。こちらを見ていただくと、一番多かったのが、成人用肺炎球菌のワクチンで、こちらが7割ということで最も多い結果になっています。ただ、ほかの例えばインフルエンザなどは幾つかワクチンの種類があるので、こちらは全て足し合わせると割合としては多くなるのではないかと思います。

 11ページ目以降が実際の購入価格の結果をまとめたものです。実際の各ワクチンの結果については、結果を御覧いただくということで私から値段を読み上げることはいたしませんが、表の見方だけ簡単に説明いたします。

 まず12ページ目ですが、こちらは1包装単価当たりの税抜購入単価をまとめたものです。まず、ここに疾病の名前と購入単価が並べて書いてあるのですが、実際の調査票では具体的な商品名を挙げて聞いていますので、同じ疾病の中で包装単位が共通のものについては1つにまとめるという形で集計しております。左側の表が今回行った調査の結果です。右側の2列については、前回日本医師会で実施した調査結果です。前回の結果については、実際の生のデータは御提供いただけなかったので、医師会の出した報告書のグラフや平均値に基づいて結果を表示していまして、こちらで集計し直すということはしておりません。今年の結果については代表値として、平均値以外にも中央値と最頻値、さらに参考データとして25パーセンタイル(1四分位数)75パーセンタイル(3四分位数)ということで、代表値を幾つか載せております。この代表値を幾つか載せた意図ですが、先ほども御説明いたしましたが、今回は対象となる施設に疑義照会を行っておりませんので、実際に回答されたデータを見ると、これはちょっと書き間違えたのかなというような外れ値が幾つかありました。今回、その外れ値の処理をどうするかということの議論はしたのですが、結論としては外れ値も含めた形で集計しております。その場合に、外れ値があると平均値がそれに引っ張られて高くなってしまったり、低くなってしまったりするという問題があります。それを補足するために、中央値と最頻値のデータも載せております。さらに、第1四分位数、第3四分位数も載せておりますので、この第1四分位数と第3四分位数の差を見ていただくことで、データがどれぐらい散らばっているかという散らばり具合も確認できるかと思います。この12ページが、今回測定したワクチンの購入価格をまとめた総まとめの表になります。

 13ページ目以降は、各ワクチンについて、そのデータの分布を実際のグラフで表示したものです。このグラフの見方を簡単に御説明します。上にあるグラフですが、これは100円単位で区切って分布を出したものです。回答者数、平均値、中央値、最頻値を右上に表示しています。下半分が、今年の調査結果と前回(2013)の調査結果を比較できるようにグラフで並べたものです。下のほうは幅の関係もありまして、500円単位で区切っています。これを左と右でどのように差があるかという形で比較して御覧いただければと思います。簡単ではありますが、私からの報告は以上です。

○倉根部会長 資料5の説明を頂きました。御質問などはございますか。

○池田委員 御説明ありがとうございました。非常に膨大な資料でまとめるのが大変だったかと思います。質問が何点かございます。1点目は確認で、例えばMRだったら3販売名あって、それを13ページのグラフでは全ての銘柄を一緒にして集計したという理解でよろしいでしょうか。

○河野参考人 そうです。

○池田委員 ということは、元データがあるのだから、ばらして集計することも可能ということですね。

○河野参考人 そうです。

○池田委員 2つ目は、それぞれのワクチンによって大変価格差があるようなものもあって、それはなぜかなと感じるのですが、これは単純集計をされたわけですが、その後にいろいろと分析される予定があるのでしょうか。具体的には、購入数の多い所、大きな病院であれば安く買っているのかもしれないと通常は思うわけですが、そういう傾向はあるのかとか、地域差があるのかとか、あるいは銘柄によっても違うでしょうし、今後そうした分析をされて価格差に関する何らかの対応を提言されていく予定があるのか、それともこれはこれで終わりなのでしょうか。それを教えてください。

○倉根部会長 更なる解析があるのかということですが、いかがでしょうか。

○河野参考人 こちらの調査としては終了ということで、こちらとしては特に追加でこれ以上の分析をする予定は今のところはございません。

○倉根部会長 事務局からコメントはございますか。

○江浪予防接種室長 今回の価格に関する調査については、過去に1回行ったものについて再びやってみたということで、まず御報告ということです。いろいろと御意見を頂いた上で、今後どういった対応ができるかについて事務局で検討したいと考えています。

○宮﨑委員 1つは、現物支給の所がありましたが、それとそうでない所の傾向などは既に分かっておりますか。

○河野参考人 そこも特に差を検証するということは、今のところは行っておりません。

○宮﨑委員 検証まではなくても印象はどうですか。

○河野参考人 そこは見ていないです。

○坂元委員 川崎市はワクチンは現物支給で、予防接種は予算を組んでやっていますので、幾らで購入しているかは公開だと思います。だから、実際に自治体に請求すれば、委託の購入ワクチン単価は出てくると思います。川崎市のでよければ出せます。

○宮﨑委員 と言うか、傾向を知りたいのです。個々にやるのか、つまり、集中的に購入したほうが安くなるのかどうかという現状が知りたかったのと、もう1つは日本リサーチセンターではこれ以上の分析はされないということですが、このデータの所属場所は国でしょうか。それと、更なる分析をするとすれば、誰がどこでやるのでしょうか。

○倉根部会長 事務局いかがでしょうか。これらのデータの所属と更なる解析をするとすれば。

○江浪予防接種室長 2つお答えします。まず、1点目の自治体が一括購入している所との傾向の差ということですが、この調査においては一括購入されている場合には、価格を医療機関が御存じないということで、価格は書いていないので、そのデータは除外された形です。これは、各医療機関が実際に購入している場合に、どういう分布だったかということです。ですので、一括購入の場合の価格はどうなっているかということに関しては、この調査からだけでは出てこないということです。

 2点目の、このデータの関係ですが、この調査に関しては公募により補助金により実施いたしました。そういった中で、データの所属そのものに関しては、調査を実施された日本リサーチセンターのほうにあるということですが、一方で補助の要件としてデータの納品をお願いしておりますので、当方でも可能な分析があるのかなというところです。本日は、この調査の結果を踏まえて、一体どのような取組が今後必要なのかの具体的な御意見を頂きまして、どういったことができるかを検討していきたいと考えております。

○坂元委員 1つは、確か2015年に厚生労働省が全国1,700の市町村に、自治体が幾らワクチン代を払っているかという接種単価と、技術料の調査をした結果があって、公開されていると思うので、覚えている範囲では少し差があるかなと感じます。ただ、時代が違うので、ワクチンの価格そのものが違ってきているということもあるかと思うのですが、それと比べると購入価格と自治体が委託している単価との差というのが1つ出てくると思うのです。

 特に、例えば破傷風と四種混合については、2倍近い差で購入している所がある、当然これが出ればどういう理由なのかと聞かれると思います。今のリサーチセンターの方の御説明では、個々のバックグラウンドデータはないということで、この医療機関がどこの自治体であるかということは分からないということですね。分かれば、その自治体の委託接種単価との差を見ると、この価格が何であるかというのは、ある程度推察が付くと思うのですが、そこはもうそういう個々データはないということなので、いわゆる2倍に高い所では何でこういうことが生じるのかということは、疑問としては出ても結局は分からないということでよろしいのでしょうか。

○河野参考人 実際には回答された機関がどこであったのかというのは、内部の情報としては持っております。ただ、調査を行う上では匿名でやるということで言っておりますので、調査対象の方に、回答した結果についてコンタクトを取って聞き出すということは、今回はできないということになります。ただ、実際の回答したデータが、どこの都道府県のものかというデータはあります。

○池田委員 最初のほうで属性の集計をされているので、都道府県、開設者、定期接種をしている診療科、取引業者数などはデータとして存在して、それごとにクロス集計はできるのでしょうけれども、クロス集計を誰がやるかという問題と、クロス集計をやることによってどんどん施設が特定されやすくなっていくと。そういう点に留意しながら、是非追加的な集計をした上で、価格差の要因とか、できるだけ安い負担で接種できるような施策につなげていただけると、大変いいと思います。

○坂元委員 別に自治体名がどこかということではなくて、全般として、ワクチンの委託単価と購入単価との差が大きい場合はどれぐらいの差なのか、この幅は個々の開示にはならないので、それが解析できると自治体側としては非常に参考になるということですが、これは個々の情報には触れないと思いますが、いかがでしょうか。

○河野参考人 分析に必要なデータがそろっていれば、技術的には可能です。

○倉根部会長 いろいろと疑問が出て、できる解析とできない解析があろうかと思いますが、委員からはこのような幾つかの疑問なり、こういうことが有用ではないのかという御意見が出ましたので、またここについては事務局でも整理をしつつ、今後これをどのように生かしていくかということを考えていただくことかと思います。事務局どうぞ。

○江浪予防接種室長 坂元委員からの御質問の関係で、ワクチン購入価格がばらける理由として、自治体から医療機関に払われる予防接種費委託単価というのがどれぐらい影響を及ぼすのかというところは興味深いところではありますが、私の理解している範囲ですと、通常ワクチンに関してはある程度希望小売価格のようなものがありまして、基本的にそういったものを参照しながら、個々の医療機関において購入の価格の交渉というのが行われているものであって、その予防接種費委託単価がすごく高いので、ほかの地域よりも高い値段で買おうというインセンティブが医療機関にはないだろうと。そういうことを考えると、どちらかと言うと、購入価格の調査と予防接種費委託単価を関連づけて分析するというよりは、予防接種費委託単価に関しては予防接種費委託単価として、どういうような設定の仕方をしているのかとか、そういったことなどの議論の中でどのようにやっていけるかということかなとも思っております。

 ただ、一方でワクチン価格の差に関する分析もできないかということについては、引き続き検討していきたいと考えております。

○坂元委員 そういう意味で言ったわけではなくて、実際にうちで入札で購入したときと、入札ではなく購入したときの価格差というのは実際はそんなに大きくなくて、入札でやっても数パーセント安くなるぐらいなので、実態はそんなに安くなるものではないという感触は持っているのです。やはり自治体としては全国の接種単価がどういう状況になっているかというのはかなり関心のある事項なので、医療機関がそこでどうこうしているという意味で申し上げたわけではなくて、早い話ができるだけ安い費用でやりたいというのは自治体の願いでもありますので、そういう意味で質問させていただいたわけです。

○倉根部会長 それでは、ここの報告事項については終わりたいと思います。本日の議事は以上ですが、その他、事務局から何かございますか。

○黒崎予防接種室長補佐 次回の開催については追って御連絡を申し上げます。

○倉根部会長 それでは、第22回の予防接種基本方針部会を終了したいと思います。活発な議論をありがとうございました。それから、田中参考人、河野参考人におかれましては、お忙しい中お出でいただきましてありがとうございました。これで終了といたします。

(了)

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