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第1回 保健医療分野AI開発加速コンソーシアム 議事録

 

○ 日時 平成30年7月23日(月) 16:00~18:00
 
○ 場所 中央合同庁舎第5号館 厚生労働省 省議室(9階)
 
○ 出席者(50音順)
(構成員)北野構成員、末松構成員、田辺構成員、豊田構成員、西川構成員、羽鳥構成員、保科構成員、堀川構成員、松尾構成員、間野構成員、宮田構成員、山内構成員、山本構成員、米田構成員、渡部構成員
(代理人)市川構成員代理(辻井構成員の代理出席)
(参考人)岸本参考人、米澤参考人
(オブザーバー)葛西参与、西川課長、山田企画官

 

○ 議題
(1)座長選出等
(2)議事
  [1]保健医療分野におけるAI開発の方向性について
  [2]AIによる画像診断支援に向けた研究の進捗状況について
  [3]平成29年度 人工知能活用調査の結果について
  [4]論点整理等について
  [5]自由討議

 

○ 配布資料
資料1 保健医療分野AI開発加速コンソーシアム 開催要綱
資料2 保健医療分野におけるAI開発の方向性について
資料3 AIによる画像診断支援に向けた研究の進捗状況について(末松構成員 提出資料)
資料4 平成29年度 人工知能活用調査の結果について
((株)NTTデータ経営研究所 提出資料)
資料5 論点整理等について
参考資料1 保健医療分野AI活用推進懇談会 概要
参考資料2 保健医療分野AI活用推進懇談会 報告書

 
○ 議事
(事務局)定刻になりましたので、「第1回保健医療分野AI開発加速コンソーシアム」を開催させていただきます。構成員の皆様方におかれましては大変ご多忙にもかかわらず、ご出席いただきまして誠にありがとうございます。開会に当たりまして、佐原審議官よりご挨拶申し上げます。
(佐原審議官)皆さん、こんにちは。科学技術を担当しております、審議官の佐原といいます。どうぞよろしくお願いします。保健医療分野へのAIの活用が非常に大きく期待されております。このような中、AIの利活用に向けて様々な体制整備、あるいは研究開発を進める必要があると考えております。
このような背景から昨年の1月、厚生労働省では「保健医療分野におけるAI活用推進懇談会」を開催しまして、2つの視点、1つはわが国における医療技術の強みの発揮、もう1つは、わが国の保健医療分野の課題の解決、この2つの両面から、今後日本でAI開発を進めるべき重点6領域を選定しております。これは昨年の6月に報告書をまとめております。
しかしながら、近年のAIを巡る状況はめまぐるしく変化をしております。連日のようにAIのことがメディアでも取り上げられておりますし、また、海外でのAI開発の動きは非常に早いものがあります。日本においても諸外国に後れを取ることなく、産官学が一体となってAI開発や利活用に取り組むことが非常に重要なことだと考えております。
このような状況を踏まえまして、今般、改めて有識者の方々にお集まりいただきました。保健医療分野におけるAI開発および利活用の促進に向けて、日本において取り組むべき事項を幅広い観点からご議論いただきたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
(事務局)佐原審議官は豪雨災害対応の関係で、ここで退席をさせていただきます。
次に、本コンソーシアムの構成員をご紹介させていただきます。五十音順にご紹介をさせていただきます。まず、ソニーコンピュータサイエンス研究所 代表取締役社長の北野宏明構成員でございます。
(北野構成員)よろしくお願いします。
(事務局)次に国立研究開発法人日本医療研究開発機構 理事長の末松誠構成員でございます。
(末松構成員)末松です。よろしくお願いします。
(事務局)次に、独立行政法人情報処理推進機構 研究員の田辺里美構成員でございます。
(田辺構成員)田辺と申します。よろしくお願いいたします。
(事務局)次に、国立研究開発法人産業技術総合研究所人工知能研究センター 研究センター長の辻井潤一構成員の代理として、本日は市川類様にご出席をいただいております。
(市川構成員)代理の市川でございます。よろしくお願いします。
(事務局)次に、患者・家族と医療をつなぐNPO法人架け橋 理事長の豊田郁子構成員でございます。
(豊田構成員)豊田でございます。よろしくお願いします。
(事務局)次に、Preferred Networks代表取締役社長、最高経営責任者の西川徹構成員でございます。
(西川構成員)西川と申します。よろしくお願いいたします。
(事務局)次に、公益社団法人日本医師会 常任理事の羽鳥裕構成員でございます。
(羽鳥構成員)日本医師会の羽鳥です。よろしくお願いします。
(事務局)次に、アクセンチュア株式会社アクセンチュア・イノベーション・ハブ東京共同統括 マネジング・ディレクターの保科学世構成員でございます。
(保科構成員)保科と申します。よろしくお願いします。
(事務局)次に、日本製薬工業協会知的財産委員会 運営委員の堀川環構成員でございます。
(堀川構成員)堀川でございます。よろしくお願いします。
(事務局)次に、東京大学大学院工学系研究科 特任准教授の松尾豊構成員でございます。
(松尾構成員)松尾と申します。よろしくお願いします。
(事務局)次に、国立研究開発法人国立がん研究センター 研究所長の間野博行構成員でございます。
(間野構成員)間野でございます。よろしくお願いします。
(事務局)次に、慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室教授の宮田裕章構成員でございます。
(宮田構成員)よろしくお願いいたします。
(事務局)次に、聖路加国際病院 副院長の山内英子構成員でございます。
(山内構成員)よろしくお願いいたします。
(事務局)次に、国立循環器病研究センター臨床試験推進センター長・理事長特任補佐の山本晴子構成員でございます。
(山本構成員)山本でございます。よろしくお願いいたします。
(事務局)次に、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所理事長の米田悦啓構成員でございます。
(米田構成員)米田でございます。よろしくお願いいたします。
(事務局)次に、一般社団法人日本医療機器産業連合会 会長の渡部眞也構成員でございます。
(渡部構成員)よろしくお願いします。
(事務局)また、本日は参考人として、株式会社NTTデータ経営研究所の方にお越しいただいております。
(米澤参考人)よろしくお願いいたします。
(事務局)オブザーバーとして、健康・医療戦略室の山田企画官と、経済産業省 商務・サービスグループヘルスケア産業課の西川課長にご出席いただいております。また、厚生労働省データヘルス改革推進本部アドバイザリーグループ長の葛西重雄参与にご出席いただいております。
その他の事務局および関係部局等からの出席者については、事務局等出席者一覧に記載のとおりでございますので、個々の紹介は割愛させていただきます。それでは、カメラの頭撮りはここまでとさせていただきます。
次に、本コンソーシアムの座長を指名いたします。事務局としては北野宏明構成員にお願いしたいと考えておりますが、いかがでございましょうか。よろしければ拍手をお願いできればと思います。
(拍手)
(事務局)ありがとうございます。北野構成員は座長席へのご移動をお願いいたします。
それでは、以後の議事進行につきましては座長にお願いいたします。どうぞよろしくお願いいたします。
(北野座長)ご指名にあずかりました、座長、北野でございます。それでは議事を進めていきたいと思います。
プロトコルに従いまして副座長の指名を行います。資料の1の1ページ目をご覧ください。「3.運営」の(2)、「座長が会議に出席できない場合は、副座長が会議を統括する」とされております。副座長については米田構成員にお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。よろしければ拍手をお願いいたします。
(拍手)
(北野座長)それでは、米田構成員は副座長席へのご移動をよろしくお願いいたします。
(米田副座長)ただいまご指名いただきました、医薬基盤・健康・栄養研究所の米田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
(北野座長)それでは、議事に入る前に資料を確認いたします。事務局のほうからよろしくお願いします。
(事務局)事務局でございます。資料の確認をさせていただきます。まず、1枚目にコンソーシアムの座席表があるかと思います。次に、議事次第でございます。
資料1としまして開催要項でございます。資料2でございますが、「保健医療分野におけるAI開発の方向性について」というホチキス留めの資料でございます。資料3でございますが、「AIによる画像診断支援に向けた研究開発の進捗状況について」というAMEDの末松理事長からの提出資料でございます。資料4でございますが、「平成29年度人工知能活用調査報告書」、こちらはNTTデータさんのほうからの提出資料でございます。そして、資料5でございますが、「論点整理(案)」というペーパーでございます。
次に、当日配付資料としまして、北野構成員から「Medical AI Fast Trackの構築へ」という資料でございます。
続いて、参考資料1としまして「保健医療分野におけるAI活用推進懇談会」の概要版の資料でございます。参考資料2は、先ほどの懇談会の報告書でございます。
資料は以上でございますが、資料の不足等ございましたら挙手にてお願いできればと思います。よろしいでしょうか。以上でございます。
(北野座長)早速ですが議事に入らせていただきます。まず、資料2~5までをまとめてご説明申し上げたあとに自由討議の時間を約1時間程度設けたいと思います。2~5に関するご質問に関しては、自由討議の時に併せてお願いしたいと思います。
それでは資料2について、まず事務局からご説明をお願いします。
(事務局)厚生労働省のほうからの資料でございます。資料2の「保健医療分野におけるAIの方向性について」という資料をご覧いただければと思います。
○保健医療分野におけるAIの活用によって期待されること
医療現場では医療従事者の偏在の問題、あるいはヒューマンエラーなど様々な課題がございます。AIを活用することによりまして、どこでも最先端の医療を受けることができるようになったり、あるいは医療従事者の負担軽減、また、新たな治療法、診断法の開発につながるということが期待されているところでございます。
○海外におけるAI開発の最近の報告事例
こちらはご承知の方も多いかと思いますが、昨年JAMAで報告された病理画像認識のコンテストの結果でございます。優勝したAIチームの判別能が、病理医の成績を大きく上回ったというものでございます。AUCというのは、1に近ければ近いほど判別能が高いというものですが、病理医の場合は、時間制限有りのAUCが書かれています。
○保健医療分野におけるAI活用推進懇談会
このようにAIの画像認識の技術は大変進んでいるところでございまして、日本においても保健医療分野のAIの活用を進めていく必要があると考えておりまして、昨年、懇談会を立ち上げて議論をしていただきました。
○懇談会を踏まえた対応(1)
懇談会においては、開発すべき重点分野について、日本の医療技術の強みを発揮するという視点と、日本の保健医療分野の課題をAIで解決できないかという2つの視点で、ここに掲げている6つの領域、具体的にはゲノム医療、画像診断支援、診断・治療支援、医薬品開発、介護・認知症、手術支援という、6つの領域を重点分野として定めて、研究開発等の推進に取り組んでいるところでございます。
○(参考)AIの活用に向けた工程表
その工程表を参考までに提示をさせていただいております。
○懇談会を踏まえた対応(2)(例:画像診断支援)
具体的なものとしまして後ほど末松理事長のほうからお話があると思いますが、画像診断支援がございます。画像診断支援については、しっかりとした正解を付与する必要があるということでございますので、医学会を中心に、画像データのみではなくて、診断名などを付与して学会のデータベースに収集していきAIを開発していくという取り組みを、AMEDの研究事業で実施しているところでございます。
○懇談会を踏まえた対応(3)(例:医薬品開発)
こちらは医薬品の開発でございますが、医薬基盤・健康・栄養研究所において、創薬ターゲットを、AIを用いて効率的に探索する研究を進めようという計画を立てているところでございます。まずは肺線維症の創薬ターゲットを探索することとしています。
○懇談会を踏まえた対応(4)(例:制度面における対応)
研究推進の観点だけではなくて、制度面での検討が必要となっております。具体的には医薬品医療機器法との関係でございますが、AI技術を用いた製品のうち、どこからが医療機器であるかということや、あるいはAIの医療機器の場合、AI機能を搭載したまま市場に出してしまうと性能が下振れするリスクがあることから、市販後の安全性をどのように担保するのか、ディープラーニングのように結果に対する説明が困難な場合にどのように評価するのかといった整理が必要になっております。
また、医師法との関係でございますが、AIがミスを犯した場合の責任の所在は、基本的にはAIは医師の判断の補助であると現状では考えておりますので医師だというふうに考えておりますが、そういったことの整理が必要であると考えており、それぞれ各担当部局で検討しているような状況でございます。
○人工知能技術戦略会議について
厚生労働省の取り組みだけではなく、政府全体としても人工知能技術戦略会議を開催し、人工知能技術戦略を策定しているところでございます。
○人工知能技術戦略(H29年3月策定)
人工知能戦略の重点分野においては、健康、医療・介護分野というものも入っておりまして、もともとAI3センターを所管する基盤的な省庁である総務省、文科省、経産省が事務局を担っておりましたが、現在は我々厚生労働省をはじめとした出口省庁も参画しまして、政府全体でAI開発を進めていくという方針で取り組みを進めているところでございます。
厚労省から、資料2の説明は以上でございます。
(北野座長)ありがとうございました。続いて、資料3に関して末松構成員からご説明いただければと思います。
(末松構成員)資料の3の各論に入る前に、資料3の綴りのいちばん後ろの参考資料を、まずご覧いただきたいと思います。これからお話ししますのは、臨床現場で得られる主要な画像情報を扱っている複数の学会による連携で動かしておりますデータベースプラットフォーム事業です。
見ていただきたいのは、日本病理学会の病理専門医数が2,300名、消化器内視鏡学会が16,200名、医学放射線学会が6,300名ということでございます。新たに、眼科学会、皮膚科学会等が、今この枠組みの中に入っていただいております。真ん中の国立情報学研究所は、AI開発基盤の中核機関としてやっていこうということであります。
最初に申し上げました医師の数の問題は非常に大きな問題で、病理学の先生も内視鏡の先生も、病理は病理、内視鏡は内視鏡ということで、日々のルーティンワークで多忙の状態になっているのが現状です。一方、患者さんの目線からしますと、画像情報を研究開発に使う場合に1つの大きなハードルになっているのがインフォームドコンセントです。
包括合意を取っている医療機関以外では、いまだにそれぞれの画像のモダリティ、検査ごとに患者さんは長いインフォームドコンセントを読んで、それぞれに合意、同意を取るということがなされています。そういったところが患者さんの目線から見てもう少し共通化できないのかという問題意識を我々は持っています。
資料の3の頭からスタートしますが、AMEDでは現在、広い意味のAIを使った事業がいくつか個別に動いております。1つはドラッグディスカバリーの領域で、新薬の開発の時に、多くのものが非臨床の毒性試験、心毒性や腎毒性で脱落するものが非常にたくさんあります。我々は死蔵データと呼んでいるんですけれども、使わなくなるデータがあるわけです。そういったものを国内の製薬企業の協力の下に「反面教師データ」にして、新しく開発された化合物を効果的に、毒性の出そうなものを先にドロップアウトさせていく仕組みは、既に開発が進み始めています。
それから、先ほどの事務局からの資料にも書いていただいていますけれども、難病領域のいろんなデータの中の画像情報は非常に重要で、例えば骨格の異常を伴うような疾患を、人種の違いを越えて判別できるようなAIの開発も、研究レベルでは進みつつあります。以下資料の説明に入ります。
○AMEDにおける「骨太の取り組み」
AMEDにおける骨太の取り組みと呼ばれているものは7つございますけれども、AIを活用した先制医療・予防医療への取り組みというのはその1つになっております。
○AI等を活用した先制医療・予防医療への取り組み
現在の学会主導診療画像等データベースに、学会の力をいただいて、データをできるだけ悉皆性を持って集めようという目論見でこの6学会が参加をしておりますが、フォーマットの違い、それから、各学会がどういうところを狙ってAIを開発しているのか、お互いがお互いのことを全く知らない状態でしたので、現在の状況を互いに共有し、ソフトなども共有できる体制を立ち上げた段階にあります。
○臨床画像情報基盤の全体像
当初この6兄弟は、我々は画像3兄弟と呼んでいて、それがさっきの、消化器内視鏡学会と病理学会と医学放射線学会の3つでございました。ここに、眼科学会と皮膚科学会と超音波学会が入ってきています。それぞれの学会が企業等と個別のAIの研究を進めていることは従前から皆さんもよくご存じだと思いますけれども、我々は共通プラットフォームをAI関連の補助金を使って作っております。その共通プラットフォームのマネージメントをやっていただいているのが、国立情報学研究所です。
そういったところにデータを集めるわけですけれども、画像データにアノテーションがどれだけきちんとついているかということが、AIの開発の時に非常に重要なわけです。個々個別のことは申しませんけれども、内視鏡学会の先生がこういうアノテーションをつけてくれと言っている時に、病理の先生は別のことを考えている。そういう意識の微妙なずれを修正しつつ学会間で協力をすれば、今までできなかったようないろんなソリューションが出せることが期待されます。お互いにデータを出しにくいとか、交換しにくいという問題が現場ではあるわけでございます。
○共通プラットフォーム(NII:国立情報学研究所)の役割
共通プラットフォームを担っている国立情報学研究所にお願いしている役割を簡単に申し上げたいと思います。
各学会の先生方がみんなAIに詳しいわけではございません。一部の方が非常にAIのことに詳しいというのが実情です。各学会がAIにより実現したい内容の整理というところが1つあります。例えばルーチンのスクリーニングを正確かつ効率的にできるようなAIもあれば、専門家でも判別に困るような判断を可能とするようなAIの開発に対する期待もあるはずです。NIIの持っているリソース、経験値、セキュリティ技術などを踏まえて、事業をどういうふうにやっていくかということで、各々のニーズの方向性を判断していただく機能も持っています。
重要なことは、先ほど申しました、画像に付帯すべき関連情報(メタデータ)の種類と粒度の決定。これは目的によって異なることと、場合によっては、眼科以外の学会の方々は病理データがドクターオブドクターのデータになりますので、最初に粒度の細かいデータを取っておかないと二度手間、三度手間になることがあって、アノテーションをどういうふうにつけていくかというのは非常に難しい課題になっています。
それから、AIを用いた画像解析に必要なクラウド基盤の整備に関しても、情報研がいろんな技術供与をしています。ハード面の整備だけではなくて、メタデータの格納様式を可能なかぎり共通化できないだろうかということも検討していただいています。
今後は、民間との共同研究を阻害しない形でAIのプロトタイプを構築して、実際にワークしそうかどうかということを、先ほどの枠組みの中で試してみる。それを異なる学会同士で、この場合はどういうふうにアノテーションをつけるんだろうか、作ったプロトタイプが実際にどういうふうにワークしているかということを、可能なかぎり同じ土俵で、お互いの成功や失敗を出していこうということでございます。
○コンサルテーションの例:データのアノテーションについて
コンサルテーションの例ということで、画像では病変部位のマーキングが非常に重要になります。これを細胞レベルでやるのか、あるいは組織レベルなのか、そういったところのずれも学会間ではございます。同じ学会の中でも、例えば内視鏡学会で、どこをどういうふうにマーキングするかというようなことの認識を共有化していく必要があることは言うまでもありません。
○メタデータの粒度の違い(例)
メタデータの粒度の違いということで事例を示してあります。病理学会が扱う画像は不均一かつ複雑な画像であるということ。ただし、粒度の高いアノテーションをつけていけば、少数の標本で比較的精度の高いAIの開発が可能になるだろうというところが特徴です。消化器内視鏡学会の場合には、病変部は粗いマーキングで可能。多数のデータを学習させることで精度を向上させようという特徴があります。
そこには眼底の写真がありますけれども、眼科学会は眼圧測定ですとか、OCTですとか、新しいデバイスによるデジタル情報がどんどん今入ってきて、ここは病理とは関係なく、臨床タグ情報とどういうふうに連関をつけるかというところがキーポイントになっております。
○臨床画像情報基盤の採択状況
複数の学会で協力しながら、いろいろ課題を抽出して一歩一歩進んでいこうということで、スピードアップがなかなか難しいですけれども、いちばん難しいところは、やはり予算のやりくりであります。我々28年度の補正予算からそこに示しましたようなやり方で、最初は3兄弟から始まり、今、兄弟が増えた分、インテグレーションがしにくくなってきたところもあるんですけれども、こういう状況であります。経常的な予算は、平成30年度から少し長めの予算がついたということで、これから加速をしていきたいと考えています。
○平成29年度までの成果例
平成29年度までの成果を若干ご紹介したいと思います。5つ挙げられます。
○データベース基盤の整備(1) 病理
病理の画像情報。P-WSI、WSIという言葉が出てくるんですけれども、ホールスライドイメージということで、デジタルパソロジーの情報がこれだけの件数、病理学会で扱っておられているというのを、1つのポンチ絵にまとめさせていただきました。
これらのデータの一部が中央データベース、NIIのデータベースにシェアされています。ただし、病理の画像に関しては、1枚1枚のアノテーションに非常に時間がかかります。アノテーションしてないデータは送られているもののアノテーションをつけて送るというところがまだまだ足らない状況であります。
○データベース基盤整備(2) 放射線
医学放射線学会、11ページですけれども、画像の一元管理によるAI診断の教師データの作成補助をスタートしていますが、NIIとの情報共有は必ずしも十分ではありません。
○AI開発(2)
内視鏡のほうが少し先行していて、胃の内視鏡102,006画像を分類しまして、99.8%程度の分類精度、つまり、胃カメラの写真1枚を見てどこを映しているかということを判定できるところまで進んでいます。
○AI開発(3)
上部消化管内視鏡の自動部位特定システムを、今年度から企業と連携して製品開発を予定しているところです。内視鏡学会は、こういったノウハウを使ってスクリーニングの診断精度を上げたり、学会の専門医の教育用に使ったり、あるいは成績判定に使うことを今のところ考えておられるようです。
○学会間連携
学会間連携の取り組みが15ページにございますけれども、割愛させていただきます。
○共通プラットフォーム構築
共通プラットフォームを作っているNIIの医療画像データの受入実績を、各学会ごとに数値を示したものですけれども、先行してデータシェアをしていただいている消化器内視鏡の数がだいぶ増えてまいりました。医学放射線学会もCTならCT、MRIならMRIで、病変部位の判定に必要なアノテーションは今のところついているデータの収集はまだこれからで、そこをどう増やしていくかという段階であります。
○学会共通課題の解決への取り組み
29年度までの取り組みの中で、学会の共通課題の解決を最初は3つ、そのあと眼科が入りまして、画像を研究開発に使うためにどういう共通の認識が必要かということで、かなりインテンシブに議論をさせていただきました。学会共通課題として、先ほど申しましたように、倫理審査承認の遅延や複雑さが進捗のボトルネックとなっているという指摘がどの学会からも出ております。先に述べたように患者さんにとって理解しやすいしくみが必要と考えます。
AMEDでは学会横断的な取り組みとして、倫理審査の有識者を招いて、4学会間で以下の内容について一定のまとめ案を作成して参りました、これが全国でコンセンサスになるかというのはこれからでございます。
患者同意取得方法については医学系指針の第5章第12の7、このあとのスライド22に出てきますけれども、オプトアウトでの収集は可能であろう。それから、倫理審査委員会では社会的重要性の担保を審査するということを、各学会で認識しようということでございます。
画像情報の匿名化については、「人を対象とする医療系研究に関する倫理指針ガイダンス」に基づいて適切なマスキングがされていれば匿名化されていると解釈できる。これが個人を特定できる情報か否かは別問題である。あくまで研究の範疇であれば容認されるという点に注意が必要であるというところでございます。
○今後のAI開発ターゲット
AMEDで今支援しているものの中での今後のAI開発のターゲットを、病理学会、各学会ごとに列記させていただいております。
このへんも日進月歩の進捗があります。海外の論文で、これは本当にそうかどうかというのはこれからの評価だと思いますけれども、例えば眼科学会の緑内障の発生機序に関しては、視覚領野の大脳の視覚領野が関与するのではないだろうかという論文が最近出ています。今まで目の所見だけ取っていたものが、MRIとどういう関係があるのか。そういった視座がこれから出てくる。複数の学会ごとに協力する時に、そういった新しい知見が出た時にどういうふうに我々は考えていったらいいかということも、これから重要な視点ではないかと思います。
○データ共有に係る課題について
データ共有に関する課題については、教師データセットに係る障壁として、先ほどのアノテーションの問題と匿名化の問題があります。それから、データの第三者提供に係る障壁として、個人情報と倫理審査、それから、データセキュリティの問題、データ標準化の問題、知財の問題は、さらなる議論が必要と思われます。
○メタデータ付与(アノテーション)について
それぞれの課題に関する各論は20ページ。メタデータ付与、つまり、アノテーションをどういう粒度でやっていったらいいか。
○匿名化について
21ページは匿名化ということで、詳細な説明はここでは省かせていただきます。
○個人情報・倫理審査について
個人情報と倫理審査について、四角の中にインフォームドコンセントの手続き等の簡略化について書いています。各研究機関で患者さんに1つ1つ異なる検査ごとに精読していただくのは大変だという話もございます。そういったところで我々はお手伝いをしていきたいと考えております。
○データセキュリティについて
倫理審査とは全く別に、情報管理者による情報漏洩の監督が必要ということで、AMEDでは本年度から医療情報学会主導で、データセキュリティに関してご検討いただくことになっています。
○データの標準化について
民間の力を借りてAIの開発を推進する上で、学会内である程度規格を統一しても、現場全体の統一はなかなか難しいだろうと考えております。自由に作ってもらってばらばらのものができるのか、それとも、ある程度の枠組みを作って共通部分を少しずつ意識しながらやっていくのか、どちらがいいのかというところも専門の先生方のご意見をいただきたいと考えております。
○知的財産権について
先に述べたようにまだ議論の段階ですが、広範かつ公正な共有が求められるデータについて、学会等が所有する画像データ、学会等が作成したアノテーション済みの教師データセット、学会等が開発するアルゴリズムなどなどが挙げられますが、これらのデータセットが無償提供されることによって、アノテーターのモチベーションが思いきり下がる。今アノテーションが、すべてのボトルネックのいちばん大きなものの1つになっていますので、そこをどういうふうに考えていくかというところもご意見をいただきたいと思います。
収集画像データは学会の所有物ですけれども、データセットの所有権については今のところまだ定義が不明瞭であります。ある研究者が類似したアルゴリズムの特許権を取ってしまうことで、研究に支障が生じる可能性もあると考えております。
○課題解決に有用となる得る指針等(案)
課題解決に有用となり得る指針等ということで、最初のビュレットが倫理審査に係る課題について。2つ目が標準化に関する課題について。そして、第三者提供に係る課題というふうに整理させていただきまして、最後は公益性に係る課題について。優先的な開発を推奨するAI開発分野のうち、国の指針を策定することが望ましい領域があるかどうかを、きちんと検討する必要があるだろうと考えております。
参考資料の説明は冒頭で行いましたので、割愛させていただきます。以上です。
(北野座長)ありがとうございました。続きまして、資料4についてNTTデータ研究所さんからご説明いただければと思います。
(米澤参考人)NTTデータ経営研究所の米澤と申します。よろしくお願いいたします。私のほうからは、昨年度、厚労省の委託事業において実施いたしました、保健医療分野における人工知能活用調査についてご報告させていただきます。15分ほどいただきたいと思っております。
1.研究背景・目的
この調査は、先ほどご説明がございましたAI開発を進めるべき重点6領域を中心に、AI開発のニーズや課題を把握するために現状調査を実施しております。
2.調査概要
大きく2つの調査を実施しております。1つは諸外国における保健医療分野のAI研究開発政策についての文献調査になります。この調査はアメリカ、中国、ドイツ、フランス、イギリスの5か国を対象としております。
もう1つは、国内における研究開発の現状や課題、政府への期待に関するアンケート、それから、ヒアリングによる調査になります。AI研究開発を行う医療機関、保健医療分野の学会、医療・介護機器メーカーや製薬企業、IT企業、それから、学会に所属する医療従事者を対象としております。調査期間が年度末で大変短くございましたので、回収率は必ずしも高いとは言えませんけれども、比較的AI開発に関心が高い方がご回答いただいたのではないかと考えております。
3.海外調査(政策動向)~米国~
1つ目の海外調査のほうからご報告いたします。5か国全体の傾向を申しますと、各国の状況につきましては、皆様既にご存じのところも多いかと思いますけれども、それぞれ政府でAI研究開発活用に関して計画を策定されておりまして、その中に保健医療分野のAI開発が位置づけられています。各国、ポイントのみご説明させていただきたいと思います。
米国につきましては、2016年10月に「米国人工知能研究開発戦略計画」が策定されております。保健医療分野につきましては教育・生活の質向上分野に位置づけられておりまして、主な開発分野といたしましては、ゲノム研究、公衆衛生上の問題発見、診断・処方の意思決定支援システム、個人のための医薬品のカスタマイズ等が挙げられております。
3.海外調査(政策動向)~中国~
中国におきましても、2017年7月に「次世代AI発展計画」を公表されております。中国では研究開発予算が多額に投入されておりまして、4,500億円程度と、日本と比較すると相当大きな金額になっています。重点分野といたしましては、手術ロボットの開発ですとか、インテリジェント医療支援等が挙がっています。
3.海外調査(政策動向)~独国~
ドイツでは「デジタル・アジェンダ」が策定をされておりまして、その中のインダストリー4.0の中に医療AIが含まれています。ドイツの公的研究所において、医療画像を機械学習するような取り組みが実施をされています。
3.海外調査(政策動向)~仏国~
フランスでは、この3月にマクロン大統領が人工知能のための新たな国家戦略を発表してございます。アメリカや中国に追いつくことを目標とされておりまして、ヘルスケアはこの中で4つの重点分野に位置づけられております。予防医療や最適な個別化医療への期待が示されています。こちらも全体の予算として15億ユーロが予定をされているところでございます。
3.海外調査(政策動向)~英国~
イギリスでは、2017年10月に「英国における人工知能産業の成長」というものが発行されております。この中でヘルスケアが成長分野として挙げられておりまして、患者の健康データからの早期発見、あるいはパンデミック発生の追跡、放射線や病理の画像診断が有望な領域として挙げられています。また、プライバシー保護等への対応も、克服すべき課題として挙げられております。
以上、この5か国が海外調査の概要になりますが、各国で保健医療分野におけるAIが重点領域に挙げられているところが示されております。
4.アンケート調査 ~医療機関~
次にアンケート調査結果についてご報告をさせていただきます。まず、医療機関を対象としたアンケート調査になります。こちらは国立高度医療センターですとか、医学部付属病院を対象として実施をしております。医療機関の組織としての取り組み状況をお聞きしておりますので、少しアンケートの回答が難しかったのかなと思っておりますが、回答数は16機関となっております。回収率は割り引いて見ていただく必要はあるかと思いますけれども、回答のあった機関を母数といたしますと、その8割が研究開発を実際にしている、もしくは興味があるとの回答をいただいております。
その中で、製品化状況について尋ねております。こちらを見ますと、製品化にはまだ至ってはいないですが、製品化への意向があるところは多くございました。案件といたしましては、診断・治療支援、あるいは画像診断が多くなってございます。
4.アンケート調査 ~医療機関~
医療機関に対しましてAI研究開発を進める上での課題をお聞きしております。先ほどのお話にもございましたが、AI研究開発に向けたデータが不足をしている、ないしは人材が不足をしているというところに回答が多く挙がっております。
また、右のボックスは政府に期待する解決策を示しておりますが、データ環境の整備や費用への支援が多く挙がっています。データを生み出す医療機関であっても、データ自体があまり存在しないため、収集が困難であるとの回答がございまして、共有基盤等のAI研究開発を簡単に進められるような環境作りが必要であるということが言えるかと思います。
4.アンケート調査 ~企業~
次に、企業の状況になります。医療・介護機器メーカー、製薬企業、IT企業に、業界団体を通じてアンケートを実施しております。回答は114件ございまして、そのうちの4割が研究開発を実施しており、また、5割強は、研究開発をしていないものの興味があるという答えがございました。
製品化に向けては、既に製品化をしているところ、数年以内に製品化のめどが立っているところが多くありまして、分野といたしましては診断・治療支援や画像診断支援、介護・認知症分野に挙がってきております。医薬品開発では、まだ基礎研究段階が多いという状況でございました。
4.アンケート調査 ~企業~
企業の研究開発を進める上での課題です。企業におきましては、AI研究開発に向けたデータ不足や人材不足が課題として多く挙がっております。また、製品化に向けて、倫理審査委員会の申請の手続きや規制の確認が非常に煩雑であるとの回答も多く挙がっておりました。
また、政府に対しては、先ほどの回答と同様に、データ共有基盤の整備ですとか費用への支援が多く挙がってきております。コメントの中にも、データに関して、質の良いもの、形式を揃えて収集して利活用を推進することが必要であるということがございまして、データ整備への期待が示されているところでございます。
4.アンケート調査 ~医学会~
次は医学会に対しての調査でございます。保健医療系の医学会がAIについてどのような取り組みをしているかを尋ねております。この中では6割が、検討している、する可能性があると答えておりますが、取り組み内容といたしましては、ワーキンググループや研究班の立ち上げ、また、講演会、発表会が挙がってきておりまして、研究そのものは16%になっております。n数が少ないのでパーセンテージとしてはなかなか言いがたいと思いますが、このような数値となっております。
4.アンケート調査 ~学会員(医療従事者)~
こちらは、現場の医療従事者の方の声を拾うために、医学会を通じまして学会員の方にアンケートを実施しております。学会員の回答者の中で、医療従事者の方に限って集計をしています。回答は186件ありましたけれども、そのうちの9割が研究開発に関心があるとの回答をいただいております。前向きな回答が得られていると思います。
特に分野といたしましては、診断・治療支援、画像診断支援が多く挙がってきております。また、製品化に向けての実証を実施している段階であるという回答が多く挙がっております。これは右の棒グラフになります。
4.アンケート調査 ~学会員(医療従事者)~
医療従事者のAI研究開発の課題といたしまして、医療機関や企業と比べて相対的に人材不足ですとか、コストに関する課題が多く挙がってきているというところが見えております。
4.アンケート調査 ~AI活用の意向~
現場医療従事者に対しましては、研究開発だけではなくて、AI活用に関してどのような意向を持っているかということをお聞きしています。9割以上が利用者としてAIの活用に興味があるという回答がございました。興味がある領域を1位から3位まで選んでいただいております。その結果、左側のグラフにありますように、診断・治療支援、画像診断支援が多くありまして、次に介護・認知症という分野が挙がっております。
また、AI活用について現場に導入する際に想定する課題といたしましては、真ん中のグラフにありますように、費用対効果が分からない、リスク範囲が分からない。それから、医療従事者側の不安感の解消が課題として挙がってきております。
政府に期待する役割につきましては各ポイントについて挙がってきておりまして、費用対効果、エビデンスの収集、責任の所在、成功事例等、多岐にわたるところでの期待があるというところが見えてきております。
5.ヒアリング調査 ~対象調査~
こちらは実際に研究開発を実施しておられる事業者さんに対しまして、AI開発における現状や課題、解決に向けた取り組みなどをお聞きしております。お聞きをした対象は17ページのリストにあります9つのプロジェクトになります。
5.ヒアリング調査 ~結果のまとめ~
結果のまとめとしまして、1つ目は開発・研究立ち上げ時になります。研究メンバーを集めるための時間が非常にかかるということで、今後、オープンイノベーションを目指したマッチングなどの場が必要であるということが言えると思います。
2点目はデータ収集・活用についてですけれども、アンケートにもございましたが、収集データを活用するための基盤作り、活用しやすい仕組み作りが必要であるというような内容でございます。
ヒアリングの中で研究者の方から、データを集めるところにつきましては、実際の研究を始める時に、既に用意をした段階で始めますのであまり困ってはいないんですが、データを集め続けることが非常に難しい。医療機関との連携や患者同意に手間がかかったり、あるいはコストがかかるという声がございました。また、データの質という点では、先ほど末松先生のお話にもございましたが、アノテーションについての課題感が出ています。
また、製薬領域ではご承知のように、リアルワールドデータやPHRデータに関する期待も上がっていますが、そこでのデータの活用のしかたについても課題として声が上がっています。先ほどのアンケート結果も踏まえますと、質の高いデータを大量に収集し、活用ができるような基盤作りへのニーズが大きいということが言えるかと思います。
3点目は個人情報保護対策でございます。こちらも先ほどのお話にございましたが、医用画像データの個人情報の取り扱いについてのコメントがございました。例えば頭蓋骨が映っていると個人が特定されてしまいますが、どのように匿名化すべきか。そのあたりの統一的な見解が必要であるとのご意見が挙がっております。
5.ヒアリング調査 ~結果のまとめ~
4つ目のコメントになりますが、薬事申請手続きについて、AIの進化が非常に早い中で、審査を短期間にできるような規制緩和の取り組みをしてほしいといったコメントが挙がってきております。最後に、AIの信頼性評価でございます。AIの精度に対する信頼性をどう評価するか。また、結果説明ができるような透明性をどう提示をしていくかというところが課題になってございます。
以上、調査結果の報告とさせていただきます。ありがとうございました。
(北野座長)ありがとうございました。続いて、資料5について事務局のほうから説明をさせていただきます。よろしくお願いします。
(事務局)事務局でございます。資料5をご覧いただければと思います。「論点整理(案)」というものでございまして、本検討会でご議論いただきたい内容について事務局のほうで少し整理をさせていただいております。
現在の課題でございますが、特に海外において様々なAIを活用した診断・治療支援機器の開発が非常に速いスピードで進んでいますが、そのような中、昨年整理した重点6分野を、この方針のままやっていっていいのかどうかということでございます。
具体的には、重点6分野の絞り込みは必要ないのかどうか、あるいは新たな分野の設定が必要ないのか、そういったことをご議論いただきたいと考えております。また、(2)にございますが、特に画像認識については単なる異常発見のディテクションのAI開発はかなりやられておりますので、より付加価値をつけるために、例えばCTのデータだけではなくて、病理のデータを加える。同一患者さんの病理データを加えることで、異常発見AIではなくて、診断支援AIにつながっていくということでございますので、こうしたデータを連結させることを進めていくべきではないかと書かせていただいていますが、先ほど末松理事長のほうから、既にかなりAMEDのほうで検討されているというお話がございました。
3点目でございますが、現在は収集したデータを、基本的には研究機関に学術研究目的で提供してAI開発を行っていますが、民間企業含め、より広く公平性を担保しつつデータを提供する仕組みを構築してはどうかというものでございます。その際には、先ほど来からございますが、同意のあり方、匿名のあり方、あるいは個人情報のあり方、また、次世代医療基盤法との関連など、少しこの会議で整理をして、こういった場合であれば大丈夫ということを提示してはどうかと考えております。
そのほか、先ほど申し上げた医療機器の評価のあり方、医師法との関係について、ダイレクトにこの会議で決定するというものではないかもしれませんが、情報提供をさせていただいてご意見をいただいたり、あるいは重点6分野の取り組みの進捗確認なども、この会議でやってはどうかというふうに考えております。
○スケジュール(案)
具体的なスケジュールは、概ね10月までに3回程度開催をしまして、先ほど申し上げた重点分野の再検討、第三者提供のあり方などの整理をして中間的なとりまとめを行っていただいて、その結果を今後の研究等に結びつけていくことができたらと考えております。
その後は、その他の課題を議論し、進捗確認を行いながら年度末までに最終報告を出すようにしてはどうかというふうに考えております。これはあくまでも事務局のご提案でございますので、ぜひこれ以外にもご意見をいただければと思っております。以上でございます。
(北野座長)ありがとうございます。これから自由討議に入っていこうと思います。ご覧のように、日程的に今の予定では5回でまとめていくということと、かなりなボリュームのあるパッケージを1つの成果で出さないといけないので、システマティックに議論をする必要があると思います。
私の試案として、当日配付資料をご覧いただきたいと思います。「Medical AI Fast Trackの構築へ」ということですが、この手の話はいくつかやり方あります。今日もインフォームドコンセントやアノテーション、知財、いろんな話が出てきましたが、ロードブロックになっているところが次々に現れてくる。今日の議論でも、目の前にあるものがいくつか出てきています。
これを解決し始めると、次のロードブロック、次のロードブロックになっていくので、目の前のものを解決したらまた次が出てきたとなると、もう1回委員会を立ち上げてそれをやる。それでまた2年遅れるという話になりますから、ロードブロックの全体像をある程度分析して、共有しておく必要があると思っています。これをシステマティックに実行してできるだけ早く推進のパスを通してしまいたいと思います。
それと、戦略的な枠組みの構築が必要で、ロードブロックを解決するために、社会的な枠組み、技術的な枠組み、事業的な枠組みを構想していくことが重要です。それ以外にもやるべきことがあればやっていく。アクションプランをそれで決めていって、今度はタスクフォースなりに落とし込んでいくという作業が1つのやり方だと思います。
次のページにロードブロックのちょっとした、これは全部入れているわけではもちろんないですが、例えばIRBの問題であるとか、インフォームドコンセントの問題、アノテーション、データ移送、匿名化、場合によってはクラウドに上げてくれるなといった話は当然あり得て、それをどういうふうに解決するか。あと、臨床、承認、商用展開。機械学習の場合は、新しいデータで機械学習したものをアップデートするという話が当然出てくる。これをいちいち承認するのか、どうするのか、いろいろ出てきます。
この類のことをシステマティックに予測しながらイシューを同定して、アクションプランを作って実行する。おのおののアクションプランは個別に精密に定義していかなければいけない。それはタスクフォースにするとか、いろいろなやり方があると思いますが、何をしなければいけないかが分からないと話にならないので、1つのやり方として、これでやりましょうと私が決めているわけではありませんが、1つのたたき台としてこういう進め方もあるかなと、ご提案申し上げたいと思います。
それでは自由討論に入りたいと思いますが、私のほうから口火を切らせていただきたいと思います。末松先生にご質問があります。インフォームドコンセントとかデータの共有で、研究開発、研究向けにデータが取れて、それがNIIに集積されているというお話を伺いましたが、実際ディープラーニングとかデータに基づいたAIの機器は、機器メーカーが商用で使って実際に現場で使えるようになるというループだと思いますが、今のだと、研究では使えるけど、メーカーがそれを商用ベースで使うというふうにコンセンサスされているようには聞こえなかった。
今までの医療機器はデータドリブンな医療機器ではないので、そういうのを参考にしながら機器を作った場合でも、そこにデータが入っているわけではないのでいいですが、AIシステムの場合はデータがほぼ全てというか、データによって学習するということが根本なので、開発者の方にデータが入らないとそもそも開発ができない。
それを今度は、元のデータをどこかで返さなければいけない。何かあった時に信頼性の検証もできない。プロダクトライアビリティにほぼ応えられないという、結構厳しい状況になると思います。このへんの状況は今どういうふうになっているのか。それと、今後の見通し。そこがいちばん大きな疑問だったので、ご示唆いただければと思います。
(末松構成員)大変難しいご質問ありがとうございます。現時点ではひと言で申し上げにくいところもあるんですが、事例も挙げにくいし、何をやっているかよく分からないかもしれませんけれども。
画像のプロフェッショナルの大きな企業のやり方は、病院の中に入って、そこで研究開発用にICの取れたデータを画像のモダリティごとに個々にデータを収集して、企業の中でデータとして使えるようにしている会社もあるようです。
日本の病理診断のレベルは世界でも非常に高いと思います。病理の先生方は今だいぶ認識が深くなられたと思いますが、当初は暗黙知のいちばんの宝庫なのに、ご自分たちが培ってきた貴重な暗黙知や経験値がどれだけ価値のあることなのか必ずしもよくお分かりになってない方がまだ多いのではないかと思います。AMEDの「画像兄弟」はそういった認識をコミュニティに広めるために作りました。
価値があると分かった瞬間からみんな意識が変わるので、AMEDの中の画像兄弟では、まずそういう共通認識の下に民間活用を進めていくべきと思います。
(北野座長)2つだけ関連した追加質問させていただきます。今はそのやり方で、今後はそれを変えるという議論だと思いますが、そのやり方を今後も続けるとすると、NIIに集めたデータは商用には使われない。
(宮田構成員)画像コンソーシアムで集めた時に、外側から企業がデータを使わせてくれと言ってそれが容易かというと、必ずしもそうなってはいない。ここは越えるべき課題であろうと。
学術側が関心を感じる研究をやるとともに、いわゆる民間を巻き込んでこういった開発をしてくださいというような形で、民間との連携もミッションにした形でファンドを出すというのも1つかもしれないだろう。公的なお金を使うのであれば、民間の出口も一緒にサポートを想定するようなやり方。
先ほどおっしゃっていたように、データのチェックはどうするのか。匿名化データを、規約の中でうまく民間も使えるように継続的にサポートしていくことも必要だろうし、もう1つ重要なのは、学術だけでこれをやると、どうしても臨床医のちょっと先を切り開きたいというのが臨床側のニーズにはなりますが、例えばロボット手術の先には、自動手術というのが課題として出てきています。
そうなってくると臨床医が手術をしやすいものとは違う。臨床にとっては何の興味もない技術を不連続に積み上げる研究課題を作らなければいけない。そうなると、これは臨床がやりたい一環の中でデータを提供するだけではなくて、民間の開発課題主導でもデータを集めるような玉込めをしなくてはいけないだろう。なので、現場の中で進めていくものと、企業主導だからこそできるものを、うまく協調させながらやっていくことが必要だろうなと思います。
(北野座長)私が知るかぎりでは、少なくともオーストラリアは、アカデミアと一緒にやると企業はデータにアクセスできるなどの枠組みが出来ていたと思います。そういうやりかたもあるとは思います。では、それに関連して山本さんお願いします。
(山本構成員)私は同じAMEDの事業でクリニカルイノベーションネットワーク、CINという事業の研究班に入っておりまして、これはAIは関係ない、病院、ナショセンがメインですけれども、それとか、レジストリで集めている医療データを、医薬品とか医療機器、医療技術開発に使えないかということを検討しています。
その時に、病院の診療データを研究開発に使う、企業に渡して商用開発に使うというところで、倫理指針上、あるいは個人情報保護法上の問題があるかどうかということのサブで、研究倫理の専門家何人かで小さな班を作って、そこでご検討いただきました。彼らは、商用開発になった時点で、ただ単に匿名化してオプトアウトで渡すのは難しいという見解でした。現状どおり、倫理指針とか個人情報保護法の範疇で考えてしまうとそういう判断になってしまう。
現状、ナショセンが持っているバイオバンクのデータでも、ICはものすごく細かくなっていまして、基本的にオプトアウトではありませんし、フルで取っていますし、さらに、企業の商用開発に使えるかどうかというところもチェックを入れて取っているというのが、今のナショセンのバイオバンクのICの内容になっております。医療機関側としては重装備でやっていますので、そこについてAIの開発をどういうふうに進めるか。商用開発までシームレスにいくのであれば、法整備なのか、指針整備なのか、何か入れていかないと医療機関が独自に判断できる問題ではないだろうと思います。
(北野座長)医療機関は、どちらにせよ製品にならないと現場では使えないですから、データの価値は分かっているけど、今のICの個人情報保護、倫理指針の縛りがそのままでは、リスクが高すぎてオーケーとはできないということですね。
(山本構成員)誰もリスクの実際が何かが分かってない。法律がいろいろできてしまったために、みんな身を守るために若干過剰防衛能の可能性はありますけれども、そこは整理が必要だろうと思います。
(北野座長)まさにここで議論するべき課題ですよね。どこかで集中討議したいと思います。
(山内構成員)先ほどNTTの方からの発表にもありましたように、海外調査をしていただいて、アメリカの臨床現場ではかなりの確率でAIが取り込まれています。皆さんご存じのように、ゲノム医療におけるIBMワトソンとか、私の領域の乳がんの学会では、管の中でとどまっているがんを手術すべきか、すべきではないかということを、病理と多種類の画像の所見を併せて検討するというようなことも、どんどん学会で発表されてきています。
そういった中で、先ほど来皆さんがご議論していらっしゃる、アメリカ企業との共同開発のあり方がものすごくドラスティックに進んでいる。NTTの方にお聞きしたいのは、例えば企業とのデータのやり取り、今おっしゃっていたように、医療機関側がデータをやり取りする時にどういうふうなことでやっているのか、具体的なことを調べて分かったら教えていただきたい。
もう1点、資料4のページ4、アメリカで2016年12月にできた「The 21st Century Cures Acts」。これに関して確認したいんですけど、「AIを備えたソフトウェアは医療機器に該当しないことが明確化された」ということで、「医師支援のための診断支援システムに関してはFDAのレギュレーションから外す」ということになっています。
そういった状況の中、確かこのアクトはレギュレーションによって医療が進まないことを抑えるというか、できるだけ早く迅速化させる、加速化させるのがメインのアクトだと思ったんですけれども、そこにそういうことが書かれているとしたら、AIの診断支援システムはアメリカにおいてはFDAのレギュレーションから外す方向になっているとすると、今はどこがレギュレーションを持ってやっているのか、分かったら教えていただけますでしょうか。
(米澤参考人)ご質問ありがとうございます。十分な回答にはならないかもしれないですけれども、データのやり取りについて、回答を隣の者と併せてさせていただきたいと思います。
(岸本参考人)NTTデータ経営研究所の岸本と申します。アメリカでは法律上、民間のデータのやり取りも、今回あまり詳しくは調べていないんですけれども、そういった手続きが進んでいると聞いています。同じくイギリスも、民間のほうに医療データを提供する手続きがきちんと決まっていて、その手続きに則ってやるというふうになっております。フランスは3月に、国が持っている医療データを民間のほうに渡せるように、これから整備するという指針が出ております。
(北野座長)海外の事例で、イギリスでは、グーグルディープマインドがNHSの電カルシステムにほぼアクセスできるようになっているはずですが、あそこはどういう契約というか、どういうことになっているか調べられましたか。
(岸本参考人)はい。イギリスのほうは明確になっていたので。イギリスのNHSは研究に使うデータベースを作っていまして、そこに企業が申請して、日本でいう次世代基盤法みたいな感じなんですけれども、そこが研究用のデータを1回持ちまして、そこから企業のほうに渡すという手続きになっております。
(北野座長)日本は、それをNIIがやるというふうにする可能性もあるのですか?
(宮田構成員)さっきの末松先生の補足ですけれども、山本構成員がおっしゃったように新しいルールを作る。これも必ず必要になってくると思います。
一方で、現状でできることをできるかぎり迅速にやるというのももう一つ重要な視点です。例えば病理と放射線のケースが出ていたと思いますが、個別同意というのか、各病院の中でデータを連結して匿名化して出す分には現行でもできます。こういったネットワークを作りつつ、運用をしていきますというのが1つ。あるいは次世代基盤法。いわゆる丁寧なオプトアウトをすることによってある程度個人情報をつなげられるということの運用も、どの範囲まで有効かというのは難しいかもしれませんが、やってみると。
あとは、NIIの運用を考えてみると、先ほど座長がおっしゃっていただいたように、企業に対して何が必要なのか。個人情報にアクセスして何でもできるというのは確かにすばらしいですけれども、そうなるとリスクも高まってくるので、例えば共同開発をして、匿名加工をしっかりされた情報をある環境の中で分析をして、再現性のチェックが必要になった場合にそこにアクセスできる。こういうようなアクセス環境を保証することによって、現行の枠組みの中でも共同開発できる部分もあると思います。NIIはそういう意味では生かす道もあると思います。
(北野座長)そうすると、ここのデータのロードブロックは、インフォームドコンセントのやり方の1つですけど、データ自体は今すぐに出来ることと、法整備とか倫理規定を変えていくという、少し時間がかかるけどやるべき姿と、2段階、3段階に整理して、どんどん進めていくという対策はとれそうでしょうか。
(宮田構成員)おっしゃるとおりです。そういう形でロードマップを、いつかできることのためと、今すぐできること。特にFDAデジタルヘルスは今めざましい承認をしていると思いますが、ファストトラックを作って、企業と一緒に責任を取るという体制も、功罪あるとは思うんですけれども、見習うべきところはかなりあると思います。
(葛西参与)私は立場が皆様と違いまして、参与というのはあくまで民間から来ているアドバイザーでもあるんですけれども、一方で、データヘルス改革推進本部という、厚生労働省としてはまあまあ幅の広い事業をやっております。
ご説明しておきたいことの1つが、この手の議論をする際に、他の有識者会議であったり、他の委員会で議論しているものと重複があります。まず、同意の取り方とデータの匿名化、それから、ビッグデータのクリーニングをするやり方。それを法的にどう担保するかという議論は、実は他の医療と介護の連携有識者会議だったり、医療基盤連携関係の会議で同じ議論をしております。なので、この場で同じ議論をしてしまうと重複が起きます。
それから、NTTデータ経営研究所様のご説明に少し補足をさせてもらうと、例えば米国ですと当然HIPAA/HITECH(?)が先にあって、保健医療情報の取扱が明確化されております。その中の匿名化は、HIPAA/HITECHの場合は18情報取ってしまうか、もしくは有識者が決めろとなっているので、これは利活用できるのかという課題があります。
それから、NHSの場合ですと、実際にビッグデータとして活用することはNHS自身はやってなくて、別の組織にデータを渡して、そこで研究用のデータとしてあるプロシージャーに基づいて個別の契約取る、包括契約を取ることによって使えるとなっています。
このあたりは、データヘルス改革推進本部でも既に一定検証が終わっておりまして、何らか厚生労働省の中で皆様が使える状態、人工知能を促進できる状態で、開発を促進できるように整備をしなければいけないと認識しています。細かい制度論で新たな枠組みを考えようというのはどの会議でも実はやっておりますので、そのうち時間が過ぎてしまうのはあまり得策ではない。
もう1点重要なのが、私として気になっているのは、今回この人工知能関係では、成果管理は他の会議でも全く議論されておりません。座長が冒頭おっしゃられたとおり、特に研究開発は、私もかつて会計検査院にいたことがありますが、国の研究開発は成果が不透明だと言われがちで、もちろん研究者の皆様はご尽力いただいているのでそう簡単でないことは承知しているんですが、民間からすると、どうやって活用できるのか。特に人工知能を民間に提供できるのかというプロシージャーは全く議論されていないので、こういったところはぜひ議論いただけるとありがたいなという、このあたりを捕捉しておきたいと思います。
(北野座長)ここでは、最終的にはものにして使ってもらうという、商用化のところまでパイプラインを通さないと話にならないと思いますので、そこに向かってどうするかというところに集中したい。あと、ICとかデータのところはほかで議論して、それはこっちでやらなくても迅速に進みそうな状況ですか。進まないのであればここで早くやるということも。
(葛西参与)厚生労働省としてはしっかり頑張る。
(北野座長)頑張るのは勿論ですが、迅速に結果が出ると保証できるでしょうか。
(葛西参与)法的には手続きを踏まなければいけないので、省だけではできないですけれども、一歩一歩、公開はしておりますので。これは大臣名で公開する。
(北野座長)それはまた説明をお願いします。
(渡部構成員)医機連、医療機器産業の立場でお話をさせていただきます。今回、開発加速というコンソーシアムですけど、今、座長がおっしゃったように、社会実装というか、臨床の現場に届けるという視点での議論をぜひお願いをしたい。
画像診断のAIの先鞭として、CADというのがあるわけです。CADはそれなりに使われていますけれども、そんなに大きなインパクトのある分野でもない。今回、AIがそれと違ったものになるかというのはAIの技術的な可能性による。今回のブームは、60年代、80年代に続く3回目のブームですが、本物になるかどうかというのは技術が決めるということで、それはしっかりと評価をするということなんでしょう。
その期待を持った時にフラグメントしているいろんなニーズがあって、おそらくAIを使ったソリューションは、100だとか200だとか、ものすごい数ができると思うんです。そういったものがデリバーできるような仕組みであったり、価値によって保険償還だとか、あるいは医療側が経済性を感じるかというのが決まってくると思うんですけれども、そういった中でマーケットプレースの動きがアメリカにあったり、いろんなデリバーの仕組みはかなり先に進んでるので、そういうことを少し議論いただけるといいのかなというのが1つ。
もう1つは、そういう前提に立った時に、先ほどデータの、末松先生からあった6兄弟というのは、研究開発用ではなくて、産業界が使えるようなナショナルプラットフォームという位置づけで議論をしていただけるといいと思います。共通課題を、インフォームドコンセントだとかを解決していくということですけど、研究開発で1回やって、産業利用でもう1回やるというのは極めて非効率ですし、喜連川先生も、2年ぐらいしたら実用化してどこかに届けようかなとおっしゃっていますけど、先生おひとりではできないでしょうと。薬事を取るのはお手伝いしないといけないですよねと申し上げています。いまどこにいるかというと、400メートル走のバックストレッチを走っているんだと思うんですけど、産業化を視野に入れた議論をしていただければなと。
もう1つ、データをくっつけるというのはすごく価値があるわけで、名寄せをやれと言ったら技術的にできないわけではないですけど、医療IDに対して発信をしていくというのは大事じゃないかと思っています。
(北野座長)確かにこれはいろいろなところに使えるので、いろんなところから名寄せして、個人情報に注意しなければいけないようなデータグループになる時と、個別のところで画像がたくさんあってアノテーションがついてない、とか、個別の画像とアノテーションがしっかり出来ていて、それを使えばその領域でのシステムができるとか、いろんなタイプのものがあると思うので、それは整理しながらやる必要があると思います。
作る側からのご意見もお伺いしたいので、松尾さん、西川さん。
(松尾構成員)まず、誰も言わないので言いますけど、これはすごくいいことだと思います。昨年の初め、「保健医療分野におけるAI活用推進懇談会」に出させていただきましたが、そこで僕はディープラーニングをプレゼンして、正直そんなに進まないだろうなと半分諦めていたんですが、その時の懇談会も、委員の方々の理解の度合い、議論のレベル、非常に高いなと思ったんですが、そこからわずか1年でここまで来てるというのは、厚生労働省の方々、AMEDの方々、非常にご尽力があったんだなと思っておりまして、本当にすばらしいことだと思います。
事例としても精度が相当出ていますし、これだけのスピード感をもってデータを連携していること。それから、アノテーションが課題だという、きちんとそこまでこの短期間に至っているというのは本当にすばらしいと思っていまして、全省庁いろんなAIの取組がありますけれども、ここの取り組みが僕はいちばんすばらしい。こういうことをいろんな省庁でやってほしかったと思っておりまして、まさに模範例だなと思っています。
その上で、末松理事長の中でありましたデータフォーマットの問題。こういうのはとにかく決めてしまって、これでやってくたさいというふうにやったほうがいいと思っています。ITベンダーごとにフォーマットが違うのはむだですから、これは統一したほうがいい。これをきっかけに、ITのシステムがうまく連携してない問題に全部切り込んでいくべきだと思います。
2つ目に、データの活用の問題。これも皆さん言われたので付け加えることはありませんが、基本的には企業に開放すべきだと思います。その意図は、日本の医療従事者の方の高い暗黙知、熟練の技、経験値、こういったものをデータという形で海外にデリバーできる可能性があると思ってまして、まさに日本でデータを作って学習させ、その機器を海外に売る。これは新しい日本の産業競争力の作り方だと思っています。
そのためにも、国内はいろんな問題があると思いますけれども、少なくとも日本の事業者が海外に展開できるようにというところは、ぜひ前に進めていただければと思います。いろんなやり方はあると思いますけど、スピード感を持ってやっていただいて、これがいろんな産業の模範例になることを期待しております。
(北野座長)ありがとうございます。今の松尾先生のお話で1つ重要なポイントは、人工知能の今のディープラーニングのシステムは知的な機械を作るという側面が多いのですけど、実際には能力のポータビリティなのです。本質は、学習した能力をいろんなところにポータルブルする、融通させることができる。何を言っているかというと、日本のお医者さんの非常に高い能力を学習させて、それを海外にも展開する。能力をポータブルにするということは根本的に重要なところなので、そういう意味では非常に重要なことだと思います。
(西川構成員)私たちはAIを開発する立場として、1つ、アノテーションのデータが集まり始めているというのは大きいことだと思います。そもそもそういったデータを使って我々が研究するというのもこれまでできなかったことですし、データが集まるといったところでは進展を遂げていると思うんですけれども、ここで注意していただきたいのは、アノテーションをして終わりというわけではなくて、アノテーションはどんどん進化させていかないといけない。
1回アノテーションして、それをもとにモデルを作ります。それによって結果が出てくるわけですけれども、それがその分野において精度を出しているか、どういう特徴を取ればいいのかというのは、アノテーションによるところが大きいわけです。なので、アノテーションして出てきた結果をもとに、そこから専門性の高い知見を取り入れて、またアノテーションをリファインしていく。このサイクルが重要だと思っております。
そのためには、極論を申し上げてしまうとITベンダーと医師を分けない。要は医師の方々もディープラーニングを勉強して、我々機械学習屋も医学のことを勉強して、両方の専門知識を融合していかないと、質の良いアノテーションは今後生み出していけないんじゃないか。
そういう観点では、私たちは今、国立がん研究センター様と共同研究をしているんですけれども、そこでは相互に情報を交換し合って、知識を共有し合っていろいろ議論ができている。こういった枠組みをいろんなところで広げていく必要があると思います。そこが、いまおっしゃっていただいた、能力を広げるためにはアルゴリズムやモデルに能力を投影していかないといけないので、それをどうやって作っていくのか。その強固な連携が、これから極めて重要になってくるのではないかなと思っています。
(北野座長)アノテーションのところは、クオリティとインセンティブをうまく両立させないとちゃんとしたものが出てこないと思うんですけど、末松先生さっきインセンティブの問題をご指摘されましたけど、ここは新たな施策が必要なのか、現状で何とかなるのか、どうなのでしょう。
(末松構成員)学会によって異なると思いますけれども、現場がいちばん大変なんですね。現場の人たちは、あまりにも忙しくて、そういう仕事はやりたくてもできないのが現状です。
そこが全部の学会に共通しているところではないかなと思います。そこは申し訳ないけれども、今のところソリューションがない状態です。
それから、インセンティブとは違う考え方ですが、私の資料、資料3の4ページを見ていただきたいんですけど、共通プラットフォームと書いたところをもう1回繰り返させていただくと、アクセス環境を何とか作って、そこにできるだけアノテーションのついたデータを集めて民間の人たちと一緒に使えるようにとようということがやはり最終形である。そのときに公費をこういうところに使うことによって、企業に対する機会の公平性が必要と思います。AMEDにはデータシェリングポリシーというのがあります。データシェアオープン&クローズド戦略です。隠すべきところは隠して、オープンにするところはオープンにする。それから、ほかの学会の取組で自分のところに使えるものが、このアクセス環境、このコミュニティに入ってもらうと応用ができる。
そういう環境を作ることが我々の仕組みで、だから、どういう仕組みだったら民間の人たちが機会均等で参入できるかを皆さんからアイデア出しを、僕らも考えますけれども、それを作ってもらうのがこの4ページの左側、「半分、青い」と僕らは呼んでいます。産学連携がしっかりと環境として作れるような仕組みを、ぜひ僕らは作りたいと思っています。
(北野座長)それでは医師のお立場で、羽鳥先生お願いします。
(羽鳥構成員)日本医師会の羽鳥です。末松先生の24ページのデータの標準化、松尾先生もご指摘されましたけど、これはとても大事だと思います。前も内閣府のAIの委員会でお願いしましたけども、20年前に電子カルテとか電子レセプト請求ができた時に、データを統一化しなかった。厚労省の方がたくさんいらっしゃいますけど、その時にきちんと統一したデータフォーマットを各開発メーカーに指示していれば、今の様に普及した時代には多くのデータが容易に集められたはずです。そういう意味で、今回いいチャンスだと思いますので、付帯情報を含めて読影レポートのフォーマットや用語の統一をやってほしいと思います。
日本医師会で標準フォーマットということで、ある企業をベースに700万件のデータを集めて、それを実用化できるようにしています。そろそろ厚労省もお金を出していただくべきだなと思っています。「学会内である程度規格を統一しても、現場全体の統一は困難である」と書かれていますけど、これを統一化すれば仕事は非常に進むのではないかと思います。座長がロードブロックというページをお示しになりましたが、これがまさに、いわゆるネックになっているところの1つだと思いますので、これをできるだけアノテーションを含めて統一化してほしいと思います。
僕はこの委員会のほかに、難病の委員会とか、いろんなところに出ているんですけれども、難病の委員会でも、難病のデータベースと小児の慢性疾患のデータを統一しようとしているんですけど、個人情報保護のことを言ってデータをお互いに出せない。標準フォーマット、難病の大人のほうは輪切りでしか出てないし、小慢の方は親の同意がなければということで、研究も進むべきところが進まない。このへんを何とか解決してほしいと思いますので、ぜひお願いしたいと思います。
(北野座長)ありがとうございます。それは取り上げたいと思います。間野先生、そして、堀川さん、お願いします。
(間野構成員)メディカルAIは前回の懇談会の時から注目されていたんですが、ここ1年で本当に大きく様変わりしました。例えばバークシャーがIBMの株を売って、アマゾンと一緒に大量の医療情報をAIに取り組ませるという試みをしていたり、世界がものすごい勢いで動いています。
自分のことで恐縮ですけど、がんセンターにおいても、プリファードネットワーク様とか産総研の人工知能センターと一緒にメディカルAIの開発に取り組んでいます。皆さんおっしゃるとおり、企業の参画を認める形でないと、今の日本で使い物になるAIを作るのは難しいのではないかと思います。
AI研究者・開発者の層がアメリカや中国に比べて薄いので、日本のベストオブベストを集めてやるためには、その中には当然のことながら企業が入っていますので、例えば、これからAIを開発するためのデータを取る時には、そこに参画するアカデミアも企業利用を最初から盛り込んだICを作る必要があると思います。
例えば来年から始まるがんのゲノム医療に際して、そのデータを集めるためのがんゲノム情報管理センターというのを今作っているんですけど、最初から、集めるデータを企業が利活用して、新しいバイオマーカーとか治療標的を発見してもらうことを明確な目的としてますので、ICをこれから始めるようなプロジェクトに関しては、そういうICにしたものを一緒にやっていく形がいいんじゃないかと思います。
(北野座長)来年から始まるがんのゲノム医療はそういうICが前提ということは、我々もそれを参考にさせていただくことは可能ですか。ICのテンプレート自体。
(間野構成員)もちろんそうです。
(北野座長)よろしくお願いします。
(堀川構成員)先ほど末松先生、間野先生からもご説明がありましたように、国のほうで共通のデータのプラットフォームを作っていただいて、それに対して製薬企業がアクセスできる環境を整えていただけるというのは、日本の製薬産業にとっては非常に重要なことだと考えています。
なぜならば、医薬品の開発は非常に長い時間とお金がかかりますので、投資をする判断にしても、おそらく大きな判断がいると思うんです。それに反して、希少疾患とか、すぐにでも治療法が欲しいという患者さんがおられるのも事実でございまして、そのような創薬を効率的に行うためにはデータへのアクセスが必要ではないか。そこでの利益配分は当然議論されるべきだと思いますけれども、質の高いデータベースの構築、利活用の方法、アクセス方法などを決めていただける、そういう方向になれば非常にありがたいと考えております。
(保科構成員)開発している民間企業側の立場からお話しさせていただきたいんですけれども、私、立場的には、AIを開発してるいろんな企業さんとお話しするんですね。その中で、特に医療系はデータが重要ですと。今ここで検討させていただいていますけれども、早くここで方針を決めないと、民間企業さんから私が聞いているのは、データを求めて日本企業も海外に出て行くということをまさに進めている。NTTデータさんの資料の中で先進国の話がありましたけど、先進国だけではなくて、例えばインドとか、そういったところも含めて、日本企業さんがデータを求めてどんどん海外に出ているというのは、危機感を持たなくてはいけないのかなと思います。
では、データをどう集めるのか。キーワードとしては出ていますけれども、データを集めるには、データもそうですし、アノテーションもそうですけれども、インセンティブがないとデータは集まらない。これは医療分野に限らず、ほかの分野でもAIを活用するにはデータが必要で、データを集めるにはインセンティブがないと集まらないというお話があって、インセンティブというのは非常に重要なのかなと。
私からこの会を通じて皆さんにお伺いしたいのは、何が現場のインセンティブになるかというのは重要なポイントで、実際に誰でもアノテーションできるようなデータでもないので、その時にどういうインセンティブがあるとアノテーションしていただけるのか。そういったところをきちんと考えて、それを提供していくことが重要なのかなと感じています。
(山本構成員)1つは現場のインセンティブもそうですが、いちばん重要なのは患者さんというか、データを提供するのは患者さんですよね。患者さんと、ひょっとしたら健康人のデータも必要になってくると思います。
AIの話は一般の患者さんから見ると全く関係がないというか、自分たちにとってどういうインセンティブが働いているのかさっぱり分からないという感じだと思うんです。私、常は臨床試験をやってますが、臨床試験に参加するというのは、患者さん自身は身体的リスクがあります。でも、AIでデータを出すだけだったら身体的リスクはほとんどない。リスクをあまりかけないで、自分たちにとってもより診断精度の高い技術が出てくる、より見落としの少ないものが出てくるということを分かっていただいた上で、例えば商用利用も含めた包括的なICが取れるような、そういうコンセンサスを作っていかないといけない。
日本の中でちゃんとしたコンセンサスがあって、それで動きというふうにならないと、どこかの企業が儲かりますよ、医療現場が儲かりますよみたいなことでは動かないと思いますので、ぜひそれはそろそろやっていただきたいなと思います。
(西川課長)オブザーバーの立場で申し訳ないですけれども、経産省の西川といいます。今年に入ってから、「ヘルスケアIT研究会」というのを経産省でまわしていまして、お題はAIに限らず、民間投資をどうやったらデジタルヘルスに流していけるかというところを議論しています。そこの観点から何点かアドバイスというか、共有をしたいと思います。
1つは、民間といった時に、デジタルヘルス、特にAIを活性化していくためには、これまでずっとやってきていただいている方に加えて、新しいイノベーターを入れていかなければいけない。これは医師会の先生にも入ってやっていただいているんですけれども、誰が信頼できて、誰が信頼できないのかというところを、ある程度関連する民間企業に、守るべき規範とか、ちゃんと規範を守っているのかということを見える化していくことが大事だという議論させていただいて、クレディビリティマークみたいなものを第三者認証で作れないかというような話を今しています。これは1つご参考の話です。
2つ目に重要なところとして、民間のコンソーシアムを作ってやっていくのはすごく大事だと思うんですけれども、最後の出口のイメージを国が公共的なものを定めて、万人に対してきちんと提供する形にするのか、今日何人かの先生がご指摘いただいているように、いくつかの関連する、例えばそれはノウハウでも資金でもいいんですけれども、そういったものを提供した民間の間ではちゃんと情報を共有するような形にするかによって、大きく進め方が変わってくるのかなと。
最後は、今後の議論の部分で、いちばん最初に宮田先生がおっしゃった、いろんな段取りをつけてやらなければいけないというのはそのとおりだと思います。画像診断の話を中心にこれを民間転用していくというのは非常に重要な話だと思うんですけれども、これをコアにやるのか、一般論でやるのかというところで、倫理の話とか、個人情報の話とか、いろいろ出てくると思います。そのあたりは気づきの点でございます。以上でございます。
(北野座長)今の最後の部分は、今日の議論は画像診断が一番明確に戦略を描けますし、しかも非常にタンジブルですから、これは進めます。それ以外にやるべきことがあれば俎上に上げて進めたいと思いますが、一般論でやると進まないと思うのです。だから、具体的に行けるところからまずやって、だからといって画像だけをやるわけではないですけど、一般論ではまた抽象的な議論を、1年やっておしまいだと思うので、それでは意味が無いと思います。ですので、具体的な成果が出るようにやりたいと考えています。
まず宮田さん、そして、こちらのお三方、ご発言されていないので順番に行きたいと思います。よろしくお願いします。
(宮田構成員)先ほどからお話があったインセンティブ。私自身、5000以上の病院と連携して専門医と連動した臨床の運営を行っています。これは現場のcontributionが必要になってきますが、最も重要なのは、先ほど山本構成員もおっしゃっていた、患者さんのためにみんなで連携してやるということ。この志が共有できるどうかによって現場の方々のモチベーションが変わってくる。
今いくつかの学会と話しているのは、例えばAIの試作を作ってこれをフィードバックできれば、例えば見落としのチェックに使えるかもしれない。ここに参加していただくことによって患者さんの安全に、まずはわずかなものでしょうけど貢献していく。かつ、日常臨床全てアノテーションをつける。そんなクレイジーなことは求めていなくて、例えば胃がんのこのタイプの画像に関してアノテーションの付与への協力を、一定期間お願いしますと。
今、病理と眼科領域は、数十病院から前向きにデータを集められるネットワークを作っています。これは非常に強みになるところなので、開発課題を柔軟に設定しながら、アノテーションの質の高いものを振っていくことができる。こういったものはプラスになりうるので、全体のコントリビューションと、いわゆる負荷をある程度コントロールした上で、かつ論文の共著とか、そういった貢献を引き出していくということの設計は必要だろうと。制度的なものと、現実の、あるいは教育的な貢献が専門医のクレジットになるとか、これは学会とのガバナンスの話ですが、こういうことをしていく。
あるいは国際連携も既に始まっていますが、国際連携で、例えば病理診断を遠隔でやっても一文の得にもならない。これはODA費をうまく設計しながら病院に経費をフィードバックしていくとかが一案です。国際的な枠組みでの制度設計の議論も含めて、持続的に質の高いデータを回していけるような工夫を、AIの開発だけではなくて、ICT環境の運用として考えていくような立てつけが必要だろうと。
(豊田構成員)私だけ1人全く違う立場ですけれども、私は医療の資格を持たない立場で、病院の中で医療安全の相談窓口を担当しています。NPO以外の活動では院内で相談対応をしているんですけれども、患者さんが医療を受けるにあたっていちばん考えることは、安全面の問題であり、それから、自分が治療を受けるわけですから不安を感じることもありますので、それをいかに医療機関の医療者の皆さんが理解して、それに向けて応じていただけるかが大事だと思っています。
今回、AIについて私が無知な状態でお恥ずかしいところなんですけれども、日頃患者さんのお話を伺っていると、先ほどから出てきていますインフォームドコンセントの問題や、それから、病理検査や診断の部分において、もしかしたら医師以上に病気を見つけられるのではないかということは、お話を伺っていて想像できたんですけれども、私を含め一般の人たちからすると姿や形が全く想像できないと思いますので、先ほどから先生方がおっしゃられていますように、やはり何かモデルを見せていただくことを早い段階でお願いしたいと思いました。
それから、私ども患者団体は患者さんの相談で聞いているのは、見落としをされた方のお話などがあり、病変は見つけられるんだけれども、主治医が説明するまでの間にそれが漏れてしまって、実際には患者さんに伝わることなく亡くなってしまうことも事例としてあるわけです。ですから、医師、人間が関わるにはどの部分になるのかを、同時にご説明していただけるとありがたいと思いました。
(市川構成員)産総研AIセンターの市川と申します。私ども産総研ではAIの社会実証を進めているわけですけれども、その中で医療分野というのは、今後日本がまだ勝ちうる分野ではないかと思っています。
本日も議論に出ていますけれども、データが重要といっても、世界各国、例えば中国はAIがすごいといっても、こんなにデータを集めて、かつアノテーションしようとしている国はおそらくないと思います。アメリカもそんなに進んでいるわけはないと思います。そういった意味で、官民連携で強力にそこの分野をサポートしていくことは、非常に重要ではないかなと思っています。
その中で、今日AMEDさんからお話がありましたように、アノテーションをつけていくというのは、我々日本が持っている医療の知見をいかにコンピュータに落とし込んでいく作業であり、先ほど座長からありましたように、これをいかにポータブルなものにしていくかということをやっていかないといけない。
その際に、もちろん全体のインセンティブ構造を作ってAIの開発という視点を加えていくことは重要なのですが、我々も中で議論しているのは、これはAIの開発だけではなくて、おそらく今まで分散化されていた病理画像に関するそれぞれの知識が統合化されていく過程になるものであって、したがって、それは単なるAIの開発だけではなくて、医療のイノベーションの進歩にも使えるような形で進めていくことが重要でありその際、医療のデータなり、アノテーションの付け方も技術の進歩によって変わってくると思うので、そこらへんのフレキシビリティを持った、かつ、皆さんの議論があるような中で、フォーマットを決めて作っていく必要があるのではないかと思います。
また、これは、せっかくの日本の知見ですので、今まで議論になっておりますように、これをいかにオープンかつクローズドな戦略をしていくのかということが、日本全体としての戦略になるのではないかなと思っています。
あと、我々も、多くの医療関係の病院あるいは研究所と、画像診断も含めていろんな研究をさせていただいておりますけれども、今まで出てきておりますように、倫理関係のところが非常に煩雑になっております。例えば我々は病院と連携してやるわけですけども、病院ではオーケーが出たけど、我々のところはオーケーが出ないのでだめだというのが非常にたくさんあるので、そこらへんのガイドラインを作っていただけると非常にありがたいと思っています。
最後、実用化していくためには、現時点の機械学習の技術は、信頼性なり説明可能性がまだ不十分なところがあると思っています。こういったところをいかに人間と協調していくかというAIの技術に関しては、産総研全体としても取り組んでいきたいと思っています。以上でございます。
(田辺構成員)私は情報処理推進機構という情報処理を啓発する組織におりますが、今日のお話の中で、ロードブロックの中のデータ移送と匿名化のところに当たると思うんですが、ぜひセキュリティに関しても、皆様と一緒にご議論させていただければと思っております。
特に医療分野ですと、3省4ガイドラインという言葉はよく聞くんですが、これをざっと拝見するかぎり、日々使うITを、どのような技術を使うといいですよというところは出ていますが、残念ながら漏れてしまったらどうするというところの議論が入っていないと記憶している。
内閣のサイバーセキュリティセンターのほうで出している「政府セキュリティの統一基準」には、漏れたらどうするのということで、CSIRTというものを編成して、被害を極小化する体制を整えておきなさいという話が出ております。これを取り込むような形で、データ移送と匿名化の議論も進めていただければと思います。よろしくお願いします。
(末松構成員)手短に。我々はファンディングエージェンシーの立場で、先ほど羽鳥構成員からも話がありましたけど、これはAIとちょっとずれますけれども、難病のデータベース、紐つきデータですね。ゲノムの情報とフェノタイプという症状の紐つき情報に関しては、IRUD Exchangeというデータベースが非常にうまく動きだして、研究者のコミュニティの中では国内のケースマッチングが非常にうまくいき、海外にもそれが使われて、協定を結んでいる別の国との情報共有で診断に不可欠な2症例以上のケースマッチが数例出始めています。
これを一般の臨床家の先生方が使えるレベルまで、うまくこなれていくように僕らは持っていきたいと考えていますが、その時のいちばんのポイントは、トラックレコードでデータをシェアしたところにファンディングする。シェアをしなかったところにはファンディングしない。そういう取組も始めています。
問題は画像系のほうです。同じ戦略はなかなか採りにくいですけれども、ファンディングの仕組みをうまく工夫してアノテーションデータの提供への協力の度合いで次年度のファンディングを決める。得られた成果を民間と一緒に開発に使えるようにファンディングで誘導していくということを、我々はこれからも考えていきたい。
(北野座長)踏み込んだ意見ありがとうございました。
(米田副座長)時間が押していますので簡単に。今日議論いただきましたAIの重点6領域の中で、私どもの研究所が関係しておりますのは医薬品開発です。ほかの領域と少し違うかなと思っておりますのは、今、我々の研究所も含めて、製薬企業、IT企業とコンソーシアムを作ってAI創薬をやろうとしているところが、我々がいちばん気になるのは人材です。
持続可能な推進のためにはやはり人材が必要で、ほかの領域では、それほど人材は問題になってないのかどうかはわからないのですが、座長が言われている戦略的枠組みの中の1つに人材育成の枠組みがあってもいいように思いました。AIを活用できる人材をどう育てるかということを議論していただくのも1つかなと思います。
(北野座長)非常に重要な視点だと思います。時間になりましたので自由討議はここまでにしたいと思います。どういうふうにこの会議を進めていくかですが、議論しているだけでは政策になりませんから、具体的かつ包括的なものを出していければと思います。
まず今日、インフォームドコンセントであるとか、データであるとか、商用利用にどうなるかというところに議論が集中しまして、これはやらないと話にならないので、ここは具体的な枠組みを事務局と関係の先生方にヒアリングさせていただいて、または試案などをどんどん提示いただく形でまとめていければと思います。
それをたたき台にして一気に決めていくということで、特に個人情報保護法とか倫理規定を修正する必要が出てくるとポリシーインプリケーションが発生します。これは立法措置が必要なのか、省令なのか、何かのアクションが必要なのか。これは時間がかかりますから、まずここから入る必要あるだろうなと思います。あと、ほかでも進んでいるというのは、その状況をヒアリングさせていただいて、それはそこに任せていいのか、この委員会でやるのかどうかということも考える必要があると思います。
もう1つは、今はパイプラインのいちばん入り口のところ、ここはデータが来ないので、真っ先にやっていますけど、来た時に、次はどう計算して、承認をどうする。ここはイマジネーションが必要になってくるので、どれだけ精度の高い議論が今できるかというのはありますが、とは言ってもいずれ来るのは時間の問題なので、いろいろ考えながらそこもやっていく。
お願いしたいのは、事務局と私のほうに言っていただく、またはヒアリングさせていただく形で、ロードブロックは全部、ありとあらゆるものを投げこんでください。これを事務局と私を含めて整理をして、想定することがありうるとしたら何があるかを全部リストアップして、それを一気に潰しにいく必要があります。
入り口からやらないと、データが入ってこないと出口が出てこないので、まず具体案は入り口からどんどん入っていきますが、とはいっても入り口をやって終わりましたでは、次のロードブロックが来年発生して、また1年かけて議論するのでは話にならない。一斉に全部いきますので、そういう形で全部ご意見を寄せていただいて、ヒアリングもさせていただければと思いますので、よろしくお願いします。
第2回以降、事務局のほうからご案内はございますか。
(事務局)ただ今、座長からご指摘のとおり、少し事務局と座長とで整理をさせていただいて、次回以降の資料に反映していきたいと思います。次回の日程に関しましては追ってご連絡をさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。以上です。
(北野座長)今日はお忙しい中ありがとうございました。

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